説明

血液流動性改善剤

【課題】経口摂取することにより効果を発揮する、血液流動性改善剤の提供。
【解決手段】大麦黒酢を有効成分として含有する、血液流動性改善剤。大麦黒酢とは、穀物酢のうち、原材料として大麦のみを使用したもので、大麦の使用量が穀物酢1Lにつき180g以上であって、かつ、発酵及び熟成によって褐色又は黒褐色に着色したものであり、上記の大麦黒酢を有効成分として含有する血液流動性改善剤を経口的に摂取することにより、効果的に血液の流動性を改善することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大麦黒酢を有効成分として含有する、経口用血液流動性改善剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食生活の欧米化、運動不足、過度なストレスなどの生活環境の変化によって、動脈硬化症、脳梗塞などの血液や循環器系に関連した疾患、ならびに高脂血症、糖尿病などの血液循環へ悪影響を及ぼす疾患が増加してきている。これらの疾患は、微小血管や毛細血管の血流の低下を起こすため、生体に様々な悪影響を与える危険性が指摘されている。また、血流が、皮膚のかゆみ、疲労、高血圧などと関係があることも、指摘されている。
【0003】
一般に、血液の循環、すなわち血流は、(1)高脂質、高血糖により血液の流動性が悪くなること、(2)血球の流動性、すなわち赤血球や白血球の柔軟性の低下や粘着性が増大すること、(3)血小板の凝集能が高まること、などによって影響を受けて低下する。特に、赤血球および白血球などの血球は、血液の体積の約40%を占めるといわれ、微細な血管においては特に血液の流動性に影響を与える。このような血流が低下している状態が長く続くと、例えば、血管の柔軟性が失われる、赤血球の柔軟性が悪くなる、微小血管において赤血球または白血球が詰まりやすくなる、血栓を形成しやすくなるなどの現象を引き起こし、上記循環器系疾患の発症の一因となる。重篤な場合は、血液の流れが止まり、その周辺部での組織の壊死が起こる。それゆえ、「生体内の血液の流れやすさ」は、健康を維持する上で重要視されるようになっている。
【0004】
これまでに、血流を改善する可能性がある食品および食品成分が多数報告されている。例えば、身近な食材では、黒酢、梅干しなどが挙げられ、特許文献1および非特許文献2には、米黒酢を使用した血流改善効果について記載されている。しかしながら、これまで大麦を原料とした大麦黒酢に関する血流改善効果はこれまで報告されていなかった。
【特許文献1】特開2003−73296号公報
【非特許文献1】Food Style 21 7(4) 78−81 2003
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、大麦黒酢を有効成分として含有する血液流動性改善剤を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記目的を達成すべく、血液流動性改善効果について鋭意研究を重ねた結果、大麦から製した大麦黒酢が、意外にも、従来知られていた米黒酢と比べて血液流動性が高いことを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)大麦黒酢を有効成分として含有する、経口用血液流動性改善剤、
(2)(1)の経口用血液流動性改善剤を含む、医薬組成物、
(3)(1)の経口用血液流動性改善剤を含む、食品組成物、
である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の血液流動性改善剤は、経口摂取することにより効果的に血液の流動性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下本発明を説明する。なお、本発明において「%」は「質量%」、「部」は「質量部」を意味する。
【0009】
本発明の血液流動性改善剤の有効成分である大麦黒酢とは、穀物酢のうち、原材料として大麦のみを使用したもので、大麦の使用量が穀物酢1Lにつき180g以上であって、かつ、発酵及び熟成によって褐色又は黒褐色に着色したものをいう(食酢品質表示基準の大麦黒酢に準じる)。上記の大麦黒酢を有効成分として含有する血液流動性改善剤を経口的に摂取することにより、効果的に血液の流動性を改善することが可能である。
【0010】
本発明の血液流動性改善剤の摂取量は、大麦黒酢として1日あたり5〜50mLであることが好ましく、10〜25mLであることがより好ましい。摂取量が上記範囲以下であると、血液流動性改善効果が得られ難い場合がある。また、上記範囲の摂取により十分な血液流動性改善効果が得られるため、上記範囲以上に摂取しても、摂取量の増加に見合った血液流動性の改善効果の増加が得られない可能性がある。また、本発明の血液流動性改善剤の摂取頻度は、1日1回以上であることが好ましい。
【0011】
本発明の血液流動性改善剤の摂取期間は、好ましくは継続した2週間以上、より好ましくは継続した4週間以上の期間であり、本発明の血液流動性改善剤を上記の期間継続して経口摂取することにより、特に効果的に血液の流動性を改善することができる。
【0012】
本発明の一実施形態に係る医薬組成物は、本発明の血液流動性改善剤を含有する。すなわち、本発明の血液流動性改善効果を有する医薬組成物は、大麦黒酢を含む。本発明の医薬組成物に添加する大麦黒酢の形態は、用途に応じて選択することができる。上記医薬組成物の態様は特に限定されないが、例えば、液剤、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、トローチ剤、内服液剤、チュアブル剤等が挙げられる。
【0013】
また、本発明の一実施形態に係る医薬組成物には、本発明の血液流動性改善剤の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の成分を含有することができる。上記のような成分としては、例えば、結合剤、賦形剤、膨化剤、滑沢剤、甘味剤、香味剤などを含むことができる。ここで、錠剤は、シェラックまたは砂糖で被覆することもできる。また、カプセル剤は、上記の材料にさらに油脂などの液体担体を含有させることができる。シロップ剤およびドリンク剤には、甘味剤、防腐剤、色素香味剤などを含有させてもよい。さらに、その他の血液流動性改善成分を含むこともできる。
【0014】
本発明の一実施形態に係る食品組成物は、本発明の血液流動性改善剤を含有する。すなわち、本発明の血液流動性改善効果を有する食品組成物は、大麦黒酢を含む。本発明の食品組成物に添加する大麦黒酢の形態は、用途に応じて選択することができる。
【0015】
上記食品組成物の態様は特に限定されないが、例えば、主食である米飯加工食品、製パン類等、副食であるレトルト缶詰、冷凍食品、惣菜、乾燥食品等、マヨネーズ等調味料、飲料、菓子、デザート類、液状,ゲル状またはソフトカプセル状等のサプリメント類等の一般食品全般、生理機能を表現することを許可された特定保健用食品全般を挙げることができ、血液流動性改善剤の有効成分である大麦黒酢そのものであってもよい。サプリメントを調製する場合、種々の食品素材または飲料品素材を添加することによって、例えば、粉末状、錠剤状、カプセル状、液状(ドリンク剤など)などの形態の食品製剤とすることができる。また、この食品製剤には、基材、賦形剤、添加剤、副素材、増量剤などを適宜添加してもよい。さらに、その他の血液流動性改善成分を含むこともできる。
【0016】
次に、本発明を実施例、比較例および試験例に基づき、さらに詳細に説明する。なお、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0017】
[実施例]
健常成人22名から血液を採取し、以下の方法で血液の流動性を測定した。採取した血液各100μLをとり、血液流動性測定装置KH−7(株式会社日立ハイテクマニファクチャ&サービス製)、チップBloody7−7(流路7854本、流路長30ミクロン、流路深4.5ミクロン設定)に供し、全ての血液が通過し終わるまでの時間を測定した。この血液流動性測定試験により、血液の通過時間の平均値がほぼ同じになるように、上記健常成人22名を11人ずつの2群に分け、本発明の血液流動性改善剤(大麦黒酢15mLを水で5倍に希釈したもの)または対照品(米黒酢15mLを水で5倍に希釈したもの)を毎日摂取させた。なお、上記大麦黒酢の酢酸含量は2.8g/100gであり、上記米黒酢の酢酸含量は4.3g/100gであった。
【0018】
4週間の継続摂取の後、再度血液を採取し、採取した血液各100μLをとり、上記の血液流動性測定を実施した。両群の摂取前および摂取後の血液の通過時間の平均値を表1に示す。
【0019】
【表1】

【0020】
表1に示すように、本発明の血液流動性改善剤の摂取により、摂取前に比べて血液の流動性が有意(危険率5%以下)に改善されていることが確認できる。一方、対照品である米黒酢の摂取により血液の流動性に改善傾向はみられたが、有意差はみられなかった。
【0021】
以上の結果から、本発明の血液流動性改善剤の摂取により、効果的に血液の改善効果が得られることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明の血液流動性改善剤は、経口摂取することにより、手軽にかつ効果的に血液の流動性を改善することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大麦黒酢を有効成分として含有する、経口用血液流動性改善剤。
【請求項2】
請求項1の経口用血液流動性改善剤を含む、医薬組成物。
【請求項3】
請求項1の経口用血液流動性改善剤を含む、食品組成物。


【公開番号】特開2011−57579(P2011−57579A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−206648(P2009−206648)
【出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 〔研究集会名〕 日本食品科学工学会 第56回大会 〔主催者名〕 社団法人 日本食品科学工学会 〔開催日〕 平成21年9月10日〜12日
【出願人】(000001421)キユーピー株式会社 (657)
【出願人】(591112371)キユーピー醸造株式会社 (17)
【Fターム(参考)】