説明

血液浄化器

【課題】ポリスルホン系ポリマーとポリビニルピロリドンからなる中空糸膜を有する血液浄化器であって、血液中不純物の除去性能が高く、且つアルブミン透過率並びに低分子タンパク質の吸着量が低い血液浄化器を提供する。
【解決手段】中空糸膜は、膜内表面から膜外表面に向かって連続的に孔径が大きくなる構造を有し、放射線照射後の該血液浄化器のビタミンB12のクリアランス値が膜面積1.5m2当たり/又は膜面積1.5m2換算値で152ml/分以上であり、ビタミンB12の吸着率が25%以下、かつミオグロビンの吸着率が25%以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリビニルピロリドンを含む中空糸膜を有する血液浄化器であって、血液中不純物の除去性能が高く、且つアルブミン透過率が低い血液浄化器に関する。
【背景技術】
【0002】
慢性腎不全患者に対する維持療法として血液透析が行われてきている。また、近年、急性腎不全や敗血症などの重篤な病態の患者に対して、急性血液浄化療法として、持続血液濾過、持続血液濾過透析、持続血液透析などの療法の実施例が増大しつつある。これらの療法に使用される血液浄化膜の素材としては、セルロース、セルロース誘導体などの天然由来の素材と、ポリスルホン系樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、エチレンビニルアルコール共重合体などの合成高分子素材が利用されている。中でも、ポリスルホン系樹脂からなる膜は、良好な機械的特性、耐熱性、生体適合性などの長所を持つことから、近年特に注目されている。
【0003】
ポリスルホン系樹脂は比較的疎水性が強いため、血液と接触した際に、血漿タンパク質を吸着しやすい傾向がある。このためポリスルホン系樹脂で血液浄化膜を製造する場合には、親水性を付与して血液適合性を向上させるため、親水性高分子を添加するのが一般的である。
【0004】
また、前述のとおり疎水性の強い材料は血漿タンパクを吸着しやすいので、長時間にわたって血液と接触して使用した場合には、表面に吸着した血漿タンパクの影響で膜性能が経時的に低下してしまう。親水性の付与によって血漿タンパクの吸着が低減されるので、親水性高分子添加は血液適合性向上のほか、膜として安定した溶質除去性能を発揮するためにも有効である。
【0005】
こういった目的で使用される親水性高分子としては、ポリビニルピロリドンが一般的である。しかしながら、親水性高分子を用いると水溶液中で膨潤し膜の孔を閉塞して、透過性能が低下する傾向にあった。
【0006】
特許文献1では、基材ポリマーであるポリスルホン系ポリマーのみを残存させて、ポリビニルピロリドンの一部を次亜塩素酸ナトリウム水溶液で分解除去してしまう膜の製造方法が記載されている。しかしながら、本方法では、親水化剤であるポリビニルピロリドンを除去してしまうので、膜の親水性が低下してしまう問題があった。
【0007】
血液浄化用中空糸膜においては、主に中空糸膜の膜構造、膜組成および膜物性を検討して特定物質の透過性を改善する検討が数多くなされている。具体的には、尿毒症蛋白質(低分子量蛋白質とも称される)を除去するための膜の大孔径化、さらには、生体に有用なアルブミンの透過またはロスを抑制しつつ、それより分子量の小さい低分子量蛋白質を透過させるような分画性の改善、あるいは、低分子量蛋白質に限らず、荷電を有する低分子の非蛋白性尿毒症物質をより選択的に透過させるための膜表面特性の改善等を例示することができる。
【0008】
透析治療の長期化により顕在化する合併症で、尿毒性の低分子量蛋白質に起因する合併症の代表的な例として、透析アミロイドーシスがよく知られている。これに対しては、生体に有用なアルブミンの透過を抑制しつつ、透析アミロイドーシスの原因物質であるβ2−マイクログロブリンの除去性能を向上させるべく、中空糸膜の分画性をシャープにするための改善が種々検討されている。また、透析アミロイドーシスをさらに効果的に改善するために、β2−マイクログロブリンと同様に尿毒性の低分子量蛋白質であるα1−マイクログロブリンも除去しようとする検討もなされている。
【0009】
例えば、特許文献2には、膜内表面近傍の緻密層に親水性高分子を集中させ、膜の透過のバランスを改善し、高い透水性を有するにもかかわらず蛋白のリークが少ない膜が開示されている。
【0010】
特許文献3並びに特許文献4には、ポリスルホン系ポリマー、ポリビニルピロリドン、溶剤及び水からなる4成分の製膜原液から得られた中空糸膜からなる透析器が開示されている。製膜原液中に水を添加することはポリスルホン系ポリマー中の不純物であるサイクリックダイマーを析出しやすくする。したがって、製膜原液中の不純物が多くなるので長期間安定的に製造するには不適である。血液中の不純物の除去性能の指標となるビタミンB12のクリアランス性能が開示されているが、透水性能だけが異常に高い膜である。
【0011】
特許文献5及び特許文献6には、ビタミンB12のみのクリアランス性能が開示されている。
【0012】
特許文献7には、ポリビニルピロリドンを膜内表面にコーティングする技術が開示されている。ビタミンB12のクリアランス性能が開示されているが、ビタミンB12の吸着量並びにミオグロビンの吸着量については記載がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平05-161833公報
【特許文献2】特開平4−300636号公報
【特許文献3】特開2001−170172号公報
【特許文献4】特開2001−170167号公報
【特許文献5】特開平11−178919号公報
【特許文献6】特開平11−347117号公報
【特許文献7】特開平6−238139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
これまでの透析用の血液浄化器のビタミンB12のクリアランスは、かなり血液中の不純物の除去性能が高いものであってもビタミンB12のクリアランスに関しては135ml/分程度が限界であった。
【0015】
本発明は、ポリスルホン系ポリマーとポリビニルピロリドンからなる中空糸膜を有する血液浄化器であって、血液中不純物の除去性能が高く、且つアルブミン透過率並びに低分子タンパク質の吸着量が低い血液浄化器を提供することをその目的とする。特に、破断強度並びに破断伸度が高い、膜厚の薄い中空糸膜からなる血液浄化器であって、ビタミンB12のクリアランス値が高く、ビタミンB12の吸着量が低い点において特に優れた血液浄化器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、以下のとおりである。
(1)ポリスルホン系ポリマーとポリビニルピロリドンからなる中空糸膜を有する血液浄化器であって、前記中空糸膜は、膜内表面から膜外表面に向かって連続的に孔径が大きくなる構造を有し、放射線照射後の該血液浄化器のビタミンB12のクリアランス値が膜面積1.5m2当たり/又は膜面積1.5m2換算値で152ml/分以上であり、ビタミンB12の吸着率が25%以下、かつミオグロビンの吸着率が25%以下であることを特徴とする血液浄化器。
(2)アルブミンの透過率が0.35%以下であることを特徴とする(1)に記載の血液浄化器。
(3)前記血液浄化器の容器がポリプロピレン系ポリマーからなることを特徴とする(1)又は(2)に記載の血液浄化器。
(4)前記中空糸膜中のポリビニルピロリドンの架橋度が80%以上100%未満であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の血液浄化器。
(5)前記血液浄化器の開口端から架橋度調整剤溶液を中空糸膜内に注入し、次いでその架橋度調整剤溶液を中空糸膜内から取り除き、その後中空糸膜に放射線照射することによって、前記中空糸膜中のポリビニルピロリドンの架橋度が80%以上100%未満になっていることを特徴とする(4)に記載の血液浄化器。
(6)前記放射線照射時には、前記血液浄化器内の酸素濃度が0.01体積%以上10体積%以下に設定されていることを特徴とする(5)に記載の血液浄化器。
(7)前記中空糸膜の膜厚が25μm以上40μm以下であることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の血液浄化器。
(8)前記中空糸膜は、膜厚が35μm以下であって、破断強度が7MPa以上、且つ破断伸度が65%以上であるか、又は、膜厚が30μm以下であって、破断強度が7.5MPa以上、且つ破断伸度が70%以上であることを特徴とする請求項7に記載の血液浄化器。
【発明の効果】
【0017】
本発明の血液浄化器は、血液中不純物の除去性能が高く、且つアルブミン透過率が低いことから医療用途に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】ポリビニルピロリドン溶液を動的光散乱装置にて測定した粒径分布の例である。
【図2】本発明の血液浄化器に用いられる中空糸膜のクリンプ形状を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の血液浄化器の構成について詳細に説明する。本発明にかかる血液浄化器は、ポリスルホン系ポリマーとポリビニルピロリドンからなる中空糸膜を有している。中空糸膜は、膜内表面から膜外表面に向かって連続的に孔径が大きくなる構造を有し、放射線照射後の該血液浄化器のビタミンB12のクリアランス値が膜面積1.5m2当たり/又は膜面積1.5m2換算値で152ml/分以上であり、ビタミンB12の吸着率が25%以下、かつミオグロビンの吸着率が25%以下である。
【0020】
(膜の外表面から内表面に向かって孔径が連続的に小さくなるスポンジ構造について)
透析用途では血液を中空部(膜内表面側)に流すことが主流である。膜内表面に血液中のタンパク質等が膜の孔を塞ぎ難いように、膜内表面に高濃度のポリビニルピロリドンを保持させると同時に透析による濾過における物質移動をスムースにするために中空糸膜の構造を膜の外表面から内表面に向かって孔径が連続的に小さくなる構造にすることが好ましい。さらに、中空糸膜の構造はスポンジ構造であることが好ましい。ここで、スポンジ構造とは膜断面に孔径(二軸平均径、すなわち、短径と長径の平均値をいう。ここで、短径、長径とは、それぞれ、ボイドに外接する面積が最小となる外接長方形の短辺、長辺とする)が5μm以上のボイドを有さない構造をいう。
【0021】
(ビタミンB12のクリアランスについて)
本発明の血液浄化器はビタミンB12のクリアランスとリンのクリアランスが高いことから、血液中の不純物の除去性能が高い。本発明の血液浄化器のビタミンB12のクリアランスは、膜面積1.5m2当たり/又は膜面積1.5m2換算値で152ml/分以上である。より好ましくは、155ml/分以上である。粒径分布が300nmを超えると152ml/分以上とすることが難しい傾向にある。これまでの透析用の血液浄化器のビタミンB12のクリアランスは、かなり血液中の不純物の除去性能が高いものであってもビタミンB12のクリアランスに関しては135ml/分程度が限界であった。本実施の形態では、ポリビニルピロリドンの分子レベルでの存在状態に着目して、これと血液中の不純物の除去性能との関係を解析した結果、ビタミンB12の除去性能が特に高い血液浄化器を実現している。尚、ここで、膜面積とは中空糸膜の内径側の面積をいう。
【0022】
(クリアランスの測定及び換算方法について)
本発明の血液浄化器のクリアランスの測定は、中空糸膜を所定の膜面積になるように血液浄化器化し、血液浄化器とした上で、ダイアライザー性能評価基準(昭和57年9月日本人工臓器学会編)に準じて実施する。製品についてはそのまま測定する。
【0023】
本発明の血液浄化器のビタミンB12のクリアランス測定は、血液側にビタミンB121.2gを生理食塩水60リットルに溶解した溶液を血液側流量200mL/分で循環し、透析液側には生理食塩水を透析液側流量500mL/分で流して濾過がない条件で透析を行い、血液入口側および出口側から循環液をサンプリングして、以下の式(1)によりクリアランスを算出する。なお、乾燥状態にある血液処理器については、前掲のダイアライザー性能評価基準に準じて湿潤化処理を行い60分経過した後測定に使用する。
クリアランス(mL/分)=[(CB(in)−CB(out))/CB(in)]×QB (1)
B(in):血液浄化器入口側のビタミンB12濃度
B(out):血液浄化器出口側のビタミンB12濃度
B:血液側流量(mL/分)=200
【0024】
クリアランスの換算(膜面積換算)は次の式(2)を用いて行う。
L'= (1−Z)/(1/QD'−Z/QB') (2)
ここで、Z=exp[K×A'×(1/QB'−1/QD')]
(expは指数関数を意味する)
K=Ln[(1−CL/QD)/(1−CL/QB)]/[A×(1/QB−1/QD)]
(Lnは自然対数を意味する)
L:測定して得られたクリアランス値(mL/分)
L':換算して求めたいクリアランス値(mL/分)
A:クリアランス測定に使用した血液浄化器の有効膜面積(cm2)
A':換算する血液浄化器の有効膜面積(cm2)
(本発明では1.5m2
B:クリアランス測定に使用した血液浄化器の血液側流量(mL/分)
B': 換算する血液浄化器の血液側流量(mL/分)
(本発明では200mL/分で換算する)
D:クリアランス測定に使用した血液浄化器の透析液側流量(mL/分)
D': 換算する血液浄化器の透析液側流量(mL/分)
(本発明では500mL/分で換算する)
【0025】
(ミオグロビンの吸着率について)
本発明の血液浄化器は、ミオグロビンの吸着率が25%以下である。ミオグロビンは血液中では処理できず、腎臓に入り込むと腎臓を破壊する物質を生じるので、早急に処置をしないと腎不全を起こして腎臓を破壊してしまうことが知られている。クラッシュ症候群に例示されるように、筋肉を構成しているミオグロビンが大量に遊離して腎臓の尿細管を詰まらせ急性腎不全を起こす場合がある。重篤な尿細管障害を治療するためには血液浄化器を用いた人工透析が最も好ましく、血液中のミオグロビン(分子量17,500ダルトン)を効率良く除去できる膜が本来必要である。しかしながら、ミオグロビンの様な低分子タンパク質は血液浄化器に吸着しやすく、血液浄化器の除去性能を低下させる働きがある。したがって、重篤な尿細管障害を治療するためにはミオグロビンの吸着率は、25%以下であることが好ましい。より好ましくは20%以下、さらに好ましくは10%以下である。ミオグロビンの吸着率が25%を超えると血液浄化器の除去性能が急激に低下する傾向にあるので好ましくない。
【0026】
(ビタミンB12の吸着率について)
本発明の血液浄化器は、ビタミンB12の吸着率が25%以下である。ビタミンB12についても血液浄化器のクリアランス性能を152mL/分以上にするには、ビタミンB12の吸着率は25%以下であることが好ましい。より好ましくは20%以下、さらに好ましくは10%以下である。ビタミンB12の吸着率が25%を超えると血液浄化器のビタミンB12クリアランス性能が透析開始以降経時的に急激に低下する傾向にあるので好ましくない。
【0027】
(吸着率の測定方法)
牛血清(凍結品:Valley Biomedical,Inc)を37℃で
加温溶解した後、総蛋白量が6.5g/dLとなるように生理食塩水で希釈する。
この血清にビタミンB12を20ppmとミオグロビン100ppmを溶解して、試験液とする。膜面積1.5m2のモジュールで測定する。血液側の流速は200±1mL/分、透析液側の流速は500±10mL/分とし、37℃で液を流した。流し始めてから1分後に3分間透析液側の液をサンプリング、その間血液側(out)の液のサンプリングを1分間、2回行い、それぞれの液についてビタミンB12の濃度は360nmで、ミオグロビンの濃度は波長408nmの吸光度で測定する。
【0028】
中空糸膜への吸着率(%)=(1−Qf/(Qbi−Qbo))×100 (3)
上記(3)式にて中空糸膜への吸着率を算出する。ここでQfは透析液側の濃度、Qbiは循環液の初期濃度、Qboは血液側(out)の液の濃度である。
血液浄化器の性能(例えば、透析用の血液浄化器であれば不純物除去性能)は、血液浄化器の形状によって大きく変化する。例えば、血液浄化器の両端間の距離が極端に短くて中空糸膜の本数が多いタイプと血液浄化器の両端間の距離が極端に長くて中空糸膜の本数が少ないタイプとでは同一の膜面積にしても全く異なる血液浄化器性能となる。これは、濾過時において、血液浄化器の形状が流体の圧力分布に影響を及ぼすからである。したがって、糸束を容器に装填して、その両端部をウレタン樹脂で接着固定し、両端面を切断して得られた中空糸膜の2つの開口端の間の距離と該2つの開口端(円形状)の平均直径との関係が下記の式(4)の関係にあることが好ましい。
2つの開口端の間の距離/2つの開口端の平均直径
=4.5〜6.5 (4)
【0029】
血液浄化器の容器(ハウジング)の素材には、例えばポリスチレン系ポリマー、ポリスルホン系ポリマー、ポリエチレン系ポリマー、ポリプロピレン系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマー、及びスチレン・ブタジエンブロックコポリマーの様な混合樹脂を用いることができる。素材のコストの観点からポリエチレン系ポリマー、ポリプロピレン系ポリマーが好ましく用いられる。ポリウレタン系の接着剤と相性と容器の強度から特にポリプロピレン系ポリマーが好ましい。ポリプロピレン系ポリマーを容器の素材に用いる場合、ポリウレタン系の接着剤との接着性を向上させるために本発明では容器をコロナ放電処理することが好ましい。さらに接着性を向上させるには、容器のみならず糸束にもコロナ放電処理することがより好ましい。糸束へのコロナ放電は、接着部位のみをおこなう。
【0030】
本発明の中空糸膜は、ポリビニルピロリドン(以下単に「PVP」ともいう)とポリスルホンから実質的になる。
【0031】
本実施の形態では、ポリビニルピロリドンとして、動的光散乱法により測定した時の粒径分布において最も大粒径側のピークのモード径が300nm以下であるものを用いる。このポリビニルピロリドンを用いることにより血液中の不純物の除去性能が高くアルブミンの透過率が低い膜を得ることが可能である。ポリビニルピロリドンはポリスルホン系ポリマー等の中空糸膜の骨格を構成する疎水性ポリマーを親水化にすることに寄与する。しかしながら、ポリビニルピロリドンは必ずしも疎水性高分子化合物の骨格の周りを均一に被っているわけではなく、塊状で存在する。そして、この塊状のポリビニルピロリドンが膜の濾過抵抗を上げることから、膜の透過性能を低下させることがある。本実施の形態では、例えばポリビニルピロリドンの粒径分布を300nm以下にして、膜の親水性を付与しながら、血液中の不純物の除去性能を向上させる。
なお、ポリビニルピロリドンは、動的光散乱法により測定した時の粒径分布において最も大粒径側のピークのモード径が好ましくは200nm以下、より好ましくは60nm以下であってもよい。
【0032】
一般に、ポリビニルピロリドン溶液中に存在するポリビニルピロリドンの粒径分布を動的光散乱装置にて測定すると、粒径値が1〜5,000nmの範囲では、2つのピークが観察される(図1参照)。ここで、大粒径側から順に、二次ピーク(B)、一次ピーク(A)とする。
一次ピークは、協同拡散モードであり、通常の高分子濃厚溶液で観察されるピークである(『ドジャン 高分子の物理学』久保亮五監修、高野宏、中西秀共訳、吉岡書店出版、1997、pp208−210)。協同拡散モードのピークは、ポリビニルピロリドン溶液をフィルター濾過しても濾過の前後で出現するピーク位置は変化しない。
これに対して、二次ピークはポリビニルピロリドン溶液で見られる特有のピークである。本発明者の研究によれば、二次ピークのモード径(ピークにおける粒子径)(モード径)が小さいほど不純物除去性能が向上し、特に二次ピークのモード径を300nm以下にすると、ビタミンB12のクリアランス値が150ml/分以上という、極めて優れた不純物除去性能が得られることが判明した。二次ピークのモード径は小さいほど好ましく、二次ピークが存在しないポリビニルピロリドンを使用することがさらに好ましい(この場合、「動的光散乱法により測定される粒径分布において最も大粒径側にあるピーク」は、一次ピークとなる)。
故に、理想的なポリビニルピロリドンの粒径分布は60nm以下である。
なお、以上では、ポリビニルピロリドンの動的光散乱法により測定される粒径分布においてピークの数が2つである場合(典型的な例)を例にとって説明したが、中空糸膜中のポリビニルピロリドンは、動的光散乱法により測定される粒径分布においてピークの数が2つであるものには限られず、最も大粒径側にあるピークのモード径が300nm以下であるという条件を満たしている限り、3つ以上のピークが存在していてもよい。
【0033】
本実施の形態において、ポリビニルピロリドンの動的光散乱法により測定される粒径分布において最も大粒径側にあるピークのモード径は、ポリビニルピロリドンが5.0重量%の濃度になるように調整したジメチルアセトアミド溶液(ポリビニルピロリドン溶液)を、動的光散乱装置(大塚電子(株)社製 FPAR−1000又は同等機)を用いて、25℃の温度で測定することにより求められる。解析条件は、NNLS(非負拘束最少自乗法)を用い、ヒストグラム範囲の設定は自動設定で行なう。但し、粒径値が1〜5,000nmの範囲で得られたピークのみを解析する。また、ポリビニルピロリドン溶液の粘度、屈折率の値としては、25℃のジメチルアセトアミドの物性値を用いる。
【0034】
ここで、中空糸膜中のポリビニルピロリドンの動的光散乱法により測定される粒径分布において最も大粒径側にあるピークのモード径とは、中空糸膜からエタノール用いて抽出したエタノール可溶性ポリビニルピロリドンの動的光散乱法により測定される粒径分布において最も大粒径側にあるピークのモード径をいう。
【0035】
エタノールを用いた中空糸膜からのエタノール可溶性ポリビニルピロリドンの抽出は、下記の方法で行う。
血液浄化器を純水で洗浄し、血液浄化器中の水分量が中空糸膜に対して0.3重量%以下になるまで乾燥する。なお、純水での洗浄は、血液浄化器から架橋度調整剤等が抽出されなくなるまで行う。具体的には、血液浄化器の開口端から純水を注入して血液浄化器の内部を純水で充填し、3分間振とうした後、純水を排出する、という操作を10回繰り返す。次に、50℃のエタノール中に血液浄化器を浸漬して中空糸膜の外表面側から内表面側に該エタノールを3時間濾過循環させる。エタノールの循環には、循環回路にコンタミネーションの無いチューブとジョイント並びにエアポンプを使用する。濾過循環量は30ml/分とする。この時、血液浄化器全体がエタノールに浸漬していることを確認する。3時間後、中空糸膜中を循環したエタノールを、5μmのフィルター(富士フィルター(株)社製、FD−5、有効濾過面積40cm2)で濾過し、エバポレーターを用いて濾液のエタノールのみを蒸発させてエタノール可溶性ポリビニルピロリドンを得る。エバポレーターでの加熱は50℃以下で行う。動的光散乱装置にて測定できる量の可溶性ポリビニルピロリドンが得られるまで、同じ種類(製造ロット)の中空糸膜を有する複数の血液浄化器を用いて上記の操作を繰り返す。
【0036】
(ポリビニルピロリドンの架橋度について)
本実施の形態において、中空糸膜中のポリビニルピロリドンの架橋度は、80%以上100%未満であることが好ましく、好ましくは80%以上99%以下、より好ましくは85%以上95%以下である。
中空糸膜中のPVPの架橋度が80%未満であると、中空糸膜中に存在して中空糸膜の親水化に寄与しているポリビニルピロリドンが膜から溶出する可能性がある。一方、架橋度を100%にしてしまうと、溶出量を低減できる一方で、透析時にロイコペニア症状が観察されることがある。
【0037】
ポリビニルピロリドンの架橋度は、下記の式(5)で定義される。
PVPの架橋度(%)
=水に不溶であるPVP量/全PVP量×100 (5)
ここで、水に不溶であるPVP量とは、全ポリビニルピロリドンの量(全PVP量)から水に可溶であるPVP量を差し引いたものである。
そして、中空糸膜中のポリビニルピロリドンの架橋度は、単位重量の中空糸膜に含まれる、全PVP量と、(そのうちの)水に不溶であるPVP量から求めることができる。単位重量の中空糸膜中の全PVP量は、乾燥した中空糸膜0.2〜0.5mgを横型反応炉(800〜950℃)で気化・酸化させ生成した一酸化窒素の濃度を化学発光法で測定し(装置は三菱化学製TN−10を使用)、得られた濃度から単位重量の中空糸膜中に含まれるPVP量に換算する。定量に際しては、予め、含窒素ポリマーの標準試料を用いて作成した検量線を用意し、これを用いて濃度を決定する。また、水に可溶であるPVP量は、以下の方法により求めることができる。
すなわち、単位質量の中空糸膜を水分量が0.3重量%以下になるように乾燥し、これをN−メチル−2−ピロリドンに、2.5重量%の濃度になるように溶解し、溶液を作成する。その溶液に、その体積の1.7倍の量の水を添加して10分間攪拌することにより、中空糸膜中のポリスルホン系ポリマーを十分に析出させる。水に可溶であるPVPは、析出したポリスルホン微粒子とともに溶液中に含まれる。次いで、溶液中のポリスルホン微粒子をHPLC(高速液体クロマトグラフィー)用の非水系フィルター(東ソー製、孔径:2.5μm)で濾過して除去し、濾液中に含まれるポリビニルピロリドンをHPLCにて定量する(装置:Waters、GPC−244、カラム:TSKgelGMPWXL2本、溶媒:0.1M塩化アンモニウム(0.1Nアンモニア)、pH9.5の塩化アンモニウム水溶液,流速:1.0ml/分、温度:23℃)。以上のようにして定量した濾液中に含まれるポリビニルピロリドンの量が、中空糸膜の単位重量当たりに含まれる水に可溶であるPVP量である。尚、PVPの架橋度を算出する際の水に可溶であるPVP量としては、上記の測定を10回測行い、最大値と最小値を除いた8点の値の平均値を用いる。
【0038】
(中空糸膜の形状について)
中空糸膜の形態は特に限定する必要はなく、いわゆるストレート糸であっても良いが、血液透析に用いる際の拡散効率の観点から、クリンプが付与されている方が好ましい。図2に示すようにクリンプの形状は波長(1)と振幅(2)で定義する。波長は2mm以上20mmが好ましく、より好ましくは4mm以上8mm以下である。一方、振幅は0.1mm以上5mm以下が好ましく、より好ましくは0.2mm以上1mm以下である。波長が短い程血液浄化器への充填率が高くなるので良いが、2mm未満の波長にするのが難しい傾向にある。波長が20mmを超えるとクリンプの効果が出にくい傾向にある。振幅が0.1mm未満でもクリンプの効果が出にくい傾向にあり、5mmを超えると接着時の血液浄化器化が難しい傾向にある。
【0039】
(中空糸膜の膜厚について)
本発明において、血液浄化器に用いられる中空糸膜の膜厚は25μm以上40μm以下が好ましい。より好ましくは、25.5μm以上35μm以下である。膜厚が薄い程ろ過抵抗が低くなるので透析血液浄化器のクリアランス性能が高くなる傾向にある。しかしながら、膜厚が25μm未満では接着時に中空糸膜の糸潰れが多発するために好ましくない。糸潰れにより性能不良を起こすので、結果として透析用血液浄化器のクリアランス性能が低下する傾向にある。膜厚が40μmを超えると透析用血液浄化器のクリアランス性能を高性能化でき難い傾向にあるので好ましくない。尚、本発明でいう膜厚(膜内径、膜外径)とは、中空糸膜100本の膜厚の平均値である。
【0040】
また、中空糸膜は、内径が160μm以上190μm以下であることが好ましい。さらに好ましくは内径が170μm以上190μm以下である。内径が160μm未満では、中空糸膜の中空部内に血液を流したときに、剪断速度や圧力損失が上がることによって溶血する傾向にあるので好ましくない。また、内径が190μmを超えると、低分子タンパク質の総括物質移動係数が低下する傾向にあるので好ましくない。
【0041】
(膜孔保持材について)
なお、本発明の中空糸膜は膜孔保持材を用いてない。
膜孔保持剤とは、乾燥時の性能低下を防ぐために乾燥前までの製造過程で膜中の空孔部分に詰めておく物質である。膜孔保持剤を含んだ溶液に湿潤膜を浸漬することによって膜中の空孔部分に該保持剤を詰めることが可能である。乾燥後も膜孔保持剤を洗浄・除去さえすれば、膜孔保持剤の効果により湿潤膜と同等の透水量、阻止率等の性能を保持することが可能である。しかしながら、膜孔保持剤が膜中及び/又は血液浄化器封入液中に微量に存在することにより、膜孔保持剤との化学反応により生成した様々な誘導体を問題視する報告があり、本発明の膜はこの膜孔保持剤を製造工程で使用していないことから、膜孔保持剤由来の溶出物は存在しない。
本実施の形態の中空糸膜の溶出物試験液の吸光度は0.1以下であり、且つ該試験液中に膜孔保持剤を含まない。ここで、溶出物試験液とは、人工腎臓装置承認基準に基づき調整したものであり、2cmに切断した乾燥中空糸状膜1.5gと注射用蒸留水150mLを日本薬局方の注射用ガラス容器試験のアルカリ溶出試験に適合するガラス容器に入れ、70±5℃で1時間加温し、冷却後膜を取り除いた後蒸留水を加えて150mLとしたものを意味する。吸光度は220〜350nmでの最大吸収波長を示す波長にて紫外吸収スペクトルで測定する。人工腎臓装置承認基準では吸光度を0.1以下にすることが定められているが、本発明の膜は膜孔保持剤を保持しないことから0.04未満を達成することが可能である。また、膜孔保持剤の有無については、該試験液を濃縮又は水分除去したものをガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、示差屈折計、紫外分光光度計、赤外線吸光光度法、核磁気共鳴分光法、及び元素分析等の公知の方法により測定することにより検知可能である。また、膜中に膜孔保持剤を含むか否かについてもこれらの測定方法により検知可能である。
膜孔保持剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2−ブチン−1,4−ジオール、2−メチル−2,4−ペンタジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、グリセリン、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール200、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400等のグリコール系又はグリセロール系化合物及び蔗糖脂肪酸エステル等の有機化合物および塩化カルシウム、炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、塩化亜鉛等の無機塩を挙げることができる。
【0042】
(アルブミンの測定方法について)
アルブミン(以下、単に「Alb.」ともいう。)の透過率は、以下のような方法で測定することが可能である。血液浄化器から取り出した中空糸膜を100本束ねて有効長18cmのミニモジュールを作製する。
生理食塩水を加えて総タンパク濃度を6.5g/dLに調整した牛血清を元液とし、そのアルブミンの濃度を予めBCG法によって求めておく。これを線速0.4cm/秒でミニモジュールに通液し、膜間圧力差25mmHgの圧力をかけて濾液を採取する。元液と測定環境の温度は25℃とする。なお、ミニモジュールを構成する中空糸膜は湿潤状態でも乾燥状態でも構わない。続いて、濾液のアルブミンの濃度をBCG法によって求め、次の式(6)で求められる値をアルブミンの透過率と定義する。
Alb.の透過率(%)
=濾液のAlb.濃度/元液のAlb.濃度×100 (6)
ここで、透過率は60分間通液後の値を使用する。
【0043】
(中空糸膜の破断強度/破断伸度について)
本発明の中空糸膜の膜厚は好ましい態様では25μm以上40μm以下と薄いので、糸の長手方向の破断強度は6MPa以上、糸の長手方向の破断伸度は60%以上であることが好ましい。膜厚が薄い程膜の絶対強度が低くなるので、接着時に中空糸膜が接着剤の圧力で潰れる危険性がある。したがって、膜厚が薄くなるにつれて破断強度を高くする必要がある。膜厚が35μm以下であれば破断伸度は7MPa以上が好ましく、膜厚が30μm以下であれば破断伸度は7.5MPa以上が好ましい。また、膜厚が薄いと接着剤界面で膜が切れる危険性がある。したがって、膜厚が35μm以下であれば破断伸度は65%以上が好ましく、膜厚が30μm以下であれば破断伸度は70%以上が好ましい。
【0044】
(血液浄化器の用途について)
一般に、血液浄化器は、血液中の尿素、水分等の不要物の除去並びに血液、血漿からの病気原因物質等の除去のために用いられる。例えば、高脂血病患者であれば、血液から血漿のみを取り出して、該血漿から脂質を除去することも可能である。本発明の血液浄化器は、特に透析用途に用いることが好ましい。
【0045】
(フィブリルについて)
血液浄化器に用いる中空糸膜が外表面から内表面に向かって孔径が連続的に小さくなるスポンジ構造である場合、膜厚部の大部分に「フィブリル」という網目状の骨格部分を有する。中空糸膜中に存在する全フィブリルの平均太さは100nm以上200nm以下であることが好ましい。全フィブリルの平均太さが100nm未満では、破断強度と破断伸度が低下する傾向にあるので好ましくない。
全フィブリルの平均太さが200nmを超えると本発明の中空糸膜を透析使用時にアルブミンの透過率が0.35%を超えるので好ましくない。人体に有用であるアルブミン(分子量:67,000)をほとんど透過させない分画性を有する膜が求められているが、本発明における中空糸膜は、牛血漿アルブミンの透過率が0.35%以下を実現できる。アルブミンの透過率が0.35%を超えることは体内に有効なアルブミンを大きく損失することを意味することから透析用の膜としては好ましくない。アルブミンの生体内貯蔵量は成人男子で約300g(4.6g/kg)で、全体の約40%は血管内に、残りの60%は血管外に分布し、相互に交換しながら平衡状態を保っている。アルブミンの分解は筋肉、皮膚、肝、腎などで行われ、1日のアルブミンの分解率は生体内貯蔵量のほぼ4%(0.18g/kg/日)である。また生体内でのアルブミンの半減期は約17日である。一方、アルブミンの生成は主に肝臓(0.20g/kg/日)で行われている。したがって、生体内でのアルブミンの収支は±0に近い状態である。一般に透析患者は週に3回の人工透析により血液浄化を受けている。したがって、アルブミン透過率が0.35%の膜で人工透析を受けると約0.02g/kg/週のアルブミン損失となる。故に、アルブミン透過率が0.35%を超えると生体内でのアルブミンの平衡状態が崩れ他の疾病を引き起こす原因ともなり、好ましくない。
【0046】
さらに本発明においては、中空糸膜の膜厚方向の外側にあるフィブリルの平均太さYと膜厚方向の内側にあるフィブリルの平均太さXの比(Y/X)が大きいと、不純物除去性能が向上することも分かった。具体的にはY/Xが1.2以上2.0以下であることが好ましい。膜厚方向の外側にあるフィブリルの平均太さと膜厚方向の内側にあるフィブリルの平均太さの比は1.2未満では、膜の外表面から内表面に向かって孔径が連続的に小さくなる傾斜度が小さいためにビタミンB12やリンのクリアランスが小さくなる傾向にあり、さらに、アルブミンの透過率が0.35%を超える傾向にあるので好ましくない。膜厚方向の外側にあるフィブリルの平均太さと膜厚方向の内側にあるフィブリルの平均太さの比が大きい程濾過速度(例えば透析でいう不純物除去性能)を向上させるのみではなく、アルブミンの透過率も低く抑えることが可能であるので好ましい。もっとも、2.0を超える膜は後述する(紡速とエアギャップ)並びに(紡口吐出断面積と膜面積)との関係である(Ga/Vs´×Am/As)において製造しにくい条件にあるので好ましくない。
【0047】
フィブリル(網目状の骨格)の太さは、以下の方法により測定する。対象となる中空糸膜を水で膨潤させた後、−30℃で凍結させた状態で長手方向に垂直に割断することにより、横断面割断試料を得る。走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて得られた試料の断面を撮影する。撮影は、加速電圧10kV、撮影倍率10,000倍で行う。この条件により、膜厚方向の断面の部の幅15μm相当の構造を観察できる。
膜厚部の最内側(膜内表面側)を視野の端に合わせてSEM写真を撮影し、これを用いて、膜厚方向の内側にあるフィブリルの平均太さを測定する。次に、最外側を視野の端に合わせてSEM写真を撮影し、これを用いて、膜厚方向の外側にあるフィブリルの平均太さを測定する。
全フィブリルの平均太さは、膜厚が30μm以下の中空糸膜の場合には、上記の2枚の写真を用いて測定する。一方、膜厚が30μmを超える中空糸膜の場合には、上記2枚の写真ではカバーされない(撮影できていない)部分があるので、膜厚方向において膜内表面と膜外表面からの距離が等しい点である中心点を決めた後、視野の中央をその中心点に合わせてSEM写真を撮影することによって上記2枚の写真で撮影ができない部分を撮影し、これを用いて膜厚方向の中心部にあるフィブリルの平均太さを測定する。
但し、膜厚方向の中心部にあるフィブリルの太さを求めるときは、膜内表面と膜外表面側の写真に含まれない部分を用いる。
【0048】
ここで定義するフィブリル(網目状の骨格)の太さとは、前記写真で観察される各フィブリルの中央部付近の最も細くなっている部分の太さ、すなわちフィブリル同士の接合部と接合部の間で最も幅が狭い部分の太さを、フィブリルの長手方向に対して垂直の角度で読み取ったものである。
フィブリルの太さを測定する部位は、幅15μm相当を撮影した各部位の断面SEM写真において、膜厚方向の中央部幅5μm相当の領域帯とし、その領域帯にあるフィブリルを任意に100本選択して太さを測定する。これを各部位の断面SEM写真それぞれについて実施する。それぞれの100本の値の平均値を、各部位(膜厚方向の外側、内側及び中心部(膜厚が30μmを超えるときのみ))のフィブリルの平均太さとする。また各平均値を相加平均した値を全フィブリルの平均太さとする。
【0049】
(中空糸膜の製造方法について)
本実施の形態において、中空糸膜中のポリビニルピロリドンの動的光散乱法により測定される粒径分布において最も大粒径側にあるピークのモード径を300nm以下にする方法の具体例としては、中空糸膜を製造する際に用いるポリビニルピロリドン溶解液を、予めフィルターを用いて濾過しておくことが挙げられる。その際、ビニルピロリドン溶解液に超音波振動を加えながら濾過することも可能である。
ポリビニルピロリドン溶解液中のポリビニルピロリドン濃度は、用いるポリビニルピロリドンの分子量により異なるが、重量平均分子量1,200,000のポリビニルピロリドンであれば0.1〜15重量%であることが好ましい。0.1重量%未満では実用的でなく、15重量%を超えるとフィルター濾過後のポリビニルピロリドンの粒径が300nmを超えるため好ましくない。
ポリビニルピロリドン溶解液の温度は、用いる溶剤及びフィルターの材質により異なるが、35〜120℃であることが好ましい。35℃未満では、フィルター濾過後のポリビニルピロリドンの粒径が300nmを超えることもあり、120℃以上で長時間保温するとポリビニルピロリドンが架橋または変性する恐れがあり好ましくない。
ポリビニルピロリドン溶解液の濾過流量は、0.01〜3mL(ミリリットル)/(分(単位時間)・cm2(フィルター単位有効濾過面積あたり))であることが好ましい。0.01mL/(分・cm2)未満では濾過流量が遅いため実用的でなく、3mL/(分・cm2)を超えるとフィルター濾過後のポリビニルピロリドンの粒径が300nmを超えることがあるため好ましくない。
フィルターの最小孔径(以下、単に「孔径」という)は0.01〜3μmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜2.5μm、さらに好ましくは0.1〜2μmである。フィルターの孔径が3μmより大きくなると、動的光散乱法により測定される粒径分布において最も大粒径側にあるピークのモード径を300nm以下にするのが難しく、孔径が0.01μm未満では濾過速度が低くて実用的でない。
フィルター濾過時にポリビニルピロリドン溶解液に加える超音波振動の周波数は、20kHz以上1000kHz以下であることが好ましく、より好ましくは40kHz以上100kHz以下である。20kHz未満では効果が低い傾向にあるので好ましくない。1000kHzを超えると繰返し長時間超音波振動を与えたときにフィルター並びにフィルターハウジングが破損する怖れがあるので好ましくない。
【0050】
中空糸膜の製膜原液は、温調可能な容器に、必要に応じて超音波振動を加えながら、ポリビニルピロリドン溶解液と、その他の材料(例えば、ポリスルホン系ポリマー(又はポリスルホン系ポリマーと溶剤))を入れ、攪拌機またはヘンシルミキサー等の混合機を用いて溶解することにより製造することができる。
ポリスルホン系ポリマー等中にも不純物等が混入している可能性があることから、製膜原液を調製後、不純物又は未溶解物等を取り除くために孔径40μm以下程度のフィルターで濾過することも可能である。
【0051】
本発明で用いることのできるポリスルホン系ポリマーとしては、下記の式(7)、または式(8)で示される繰り返し単位を有するものが挙げられる。なお、式中のArはパラ位での2置換のフェニル基を示し、重合度や分子量については特に限定しない。
−O−Ar−C(CH32−Ar−O−Ar−SO2−Ar− (7)
−O−Ar−SO2−Ar− (8)
ポリビニルピロリドン溶解液や製膜原液の溶剤としては、ポリビニルピロリドンとその他の膜の材料を溶解するものであれば良く、例えば、ポリスルホン系ポリマーを用いる場合であれば、溶剤はN−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド等が用いられる。
【0052】
本発明で用いられるポリビニルピロリドンの重量平均分子量は、1,000〜2,000,000の範囲であることが好ましく、10,000〜1,300,000の範囲であることがより好ましい。本発明は、特に重量平均分子量800,000以上の高分子量のポリビニルピロリドンを用いる場合に有効であり、重量平均分子量800,000以上の高分子量のポリビニルピロリドンを用いてもピンホールや膜破れ等の欠陥部が少ない。
【0053】
製膜原液中の疎水性高分子化合物(ポリスルホン系ポリマー等)の濃度は、該原液からの製膜が可能で、かつ得られた膜が膜としての性能を有するような濃度の範囲であれば特に制限されず、1〜50重量%、好ましくは10〜35重量%、より好ましくは10〜30重量%である。高い透水性能又は大きな分画分子量を達成するためには、ポリマー濃度は低い方が良く、10〜25重量%が好ましい。また、製膜原液には、原液粘度、溶解状態を制御する目的で、水、塩類、アルコール類、エーテル類、ケトン類、グリコール類等の非溶剤を複数添加することも可能であり、その種類、添加量は組み合わせにより随時決定すればよい。
製膜原液中のポリビニルピロリドンの量は、1〜30重量%、好ましくは1〜20重量%であるが、用いるポリビニルピロリドンの分子量により最適濃度が決定される。
【0054】
中空糸膜は、例えば、上記の製膜原液を、内部液とともに2重環状ノズルから凝固浴中に同時に吐出させ、凝固させることにより製造することができる。
中空糸膜の製造に用いられる内部液は、中空糸膜の中空部を形成させるために用いるものである。外表面に緻密層を形成させる場合は、内部液としてジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等からなる郡より選ばれる溶剤の高濃度水溶液を用いることができる。内表面に緻密層を形成させる場合は、内部液には後述する凝固浴に記載したものを採用することができる。また、内部液の粘性を制御する目的でテトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール類及びグリセリン等の非溶剤を加えることも可能である。
【0055】
中空糸膜は、公知のチューブインオリフィス型の2重環状ノズルを用いて製膜することができる。より具体的には、前述の製膜原液と内部液とをこの2重環状ノズルから同時に吐出させ、エアギャップを通過させた後、凝固浴で凝固させることにより本発明の中空糸膜を得ることができる。
ここで、エアギャップとは、ノズルと凝固浴との間の距離(隙間)を意味する。膜の外表面から内表面に向かって孔径が連続的に小さくなるスポンジ構造を有する膜を得るためには、紡速(m/分)に対するエアギャップ(m)の比率が極めて重要である。何故ならば膜の外表面から内表面に向かって孔径が連続的に小さくなるスポンジ構造は、内部液中の非溶剤が製膜原液と接触することによって該製膜原液の内表面部位から外表面部位側へと経時的に相分離が誘発され、さらに該製膜原液が凝固浴に入るまでに膜内表面部位から外表面部位までの相分離が完了しなければ、得られないからである。
紡速(Vs)に対するエアギャップ(Ga)の比率(Ga/Vs)は、中空糸膜の膜厚が34μm以上である場合には0.01〜0.1m/(m/分)であることが好ましく、さらに好ましくは0.01〜0.05m/(m/分)である。紡速に対するエアギャップの比率が0.01m/(m/分)未満では、膜の外表面から内表面に向かって孔径が連続的に小さくなるスポンジ構造の膜を得ることが難しく、0.1m/(m/分)を超える比率では、膜へのテンションが高いことからエアギャップ部で膜切れを多発し、製造しにくい傾向にある。一方、膜厚が34μm未満である場合には製膜原液中の良溶剤量が少ないのでGa/Vsが低くても膜の外表面から内表面に向かって孔径が連続的に小さくなるスポンジ構造を得ることが可能である。膜厚が34μm未満である場合には、Ga/Vsが0.001〜0.01m/(m/分)であることが好ましい。
ここで、紡速(Vs)(m/分)とはノズルから内部液とともに吐出した製膜原液がエアギャップを通過して凝固浴にて凝固した膜が巻き取られる中空糸膜の一連の製造工程における膜の移動速度をいい、延伸操作がある場合には延伸操作をする前までの中空糸膜の移動速度を意味する。
また、エアギャップを円筒状の筒などで囲み、一定の温度と湿度を有する気体を一定の流量でこのエアギャップに流すと、より安定した状態で中空糸膜を製造することができる。
【0056】
さらに、製膜原液が吐出する紡口の断面積(As)と得られた膜の断面積(Am)の関係がフィブリルの太さに影響することが分かった。Am/Asは単位時間当たりの製膜原液の吐出量に対する膜形成ポリマーの残存率を意味する。したがって、Am/Asが大きい程フィブリルの太い膜が得られる。本発明ではGa/Vs´(ここで、Vs´(m/秒)は前述の紡速Vs(分速)を、秒速に換算した値である。)とAm/Asの積(単位:m/(m/秒))が0.15以上0.75以下であれば、膜の外表面から内表面に向かって孔径が連続的に小さくなるスポンジ構造であって、膜厚方向の外側にあるフィブリルの平均太さと膜厚方向の内側にあるフィブリルの平均太さの比が1.2以上2.0以下である膜構造にすることが可能である。Ga/Vs´とAm/Asの積が0.15未満では膜厚方向の外側にあるフィブリルの平均太さと膜厚方向の内側にあるフィブリルの平均太さの比は1.2未満となりGa/Vs´とAm/Asの積が0.75を超えると膜厚方向の外側にあるフィブリルの平均太さと膜厚方向の内側にあるフィブリルの平均太さの比は2.0未満を超える傾向にある。
さらに、本発明ではGa/Vs´とAm/Asの積の関係と他の製膜条件を調整することにより全フィブリルの平均太さを100nm以上200nm以下に調整することが可能である。
凝固浴としては、例えば、水;メタノール、エタノール等のアルコール類;エーテル類;n−ヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素類など重合体を溶解しない、製膜原液に対して相分離を誘発させる液体(非溶剤)が用いられるが、水を用いることが好ましい。また、凝固浴に前記重合体の良溶剤を添加することにより凝固速度をコントロールすることも可能である。
凝固浴の温度は、−30〜100℃、好ましくは0〜98℃、さらに好ましくは10〜95℃である。凝固浴の温度が100℃を超えたり、又は、−30℃未満であると、凝固浴中の膜の表面の状態が安定しにくい。
中空糸膜に電子線及びガンマー線等の放射線を照射することにより、膜中のPVPを架橋することが可能である。放射線の照射は、中空糸膜を血液浄化器化前又は血液浄化器化後のどちらでも良い。
【0057】
(ポリビニルピロリドンの架橋度の調整方法について)
中空糸膜に架橋度調整剤を付着した状態で放射線照射することにより、中空糸膜中のポリビニルピロリドンの架橋度を適宜調整することが可能である。
架橋度調整剤としては、放射線照射に対してポリビニルピロリドンの架橋反応を阻害するものであれば特に限定されるものではない。しかしながら、血液浄化用途に用いる際は、その安全性を考慮する必要があるため、生理的水溶液で洗浄しやすく、且つ毒性の低いものが好適に用いられる。なかでも水溶性ビタミン、グリセリン、マンニトール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テロラエチレングリコール等のグリコール類、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール等のポリグリコール類、エタノール等のアルコール類、ポリエチレンイミン、ポリフェノール、トレハロース、グルコースなどの糖類、ピロ亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどの無機塩、二酸化炭素などが挙げられ、好適に使用される。これらの架橋度調整剤は単独で用いても良いし、2種類以上混合して用いても良い。
中空糸膜に付着させる架橋度調整剤の量や種類並びに中空糸膜の周りに存在させる架橋度調整剤の水溶液中の濃度については、放射線照射線量並びに照射時間、目的とする架橋度により適宜調整することが可能である。
【0058】
ポリビニルピロリドンを架橋させるには、血液浄化器の開口端から架橋度調整剤溶液をいったん中空糸膜内に注入してから、該中空糸膜内の架橋度調整剤溶液を取り除き、その後、血液浄化器内の酸素濃度を0.01体積%以上10体積%以下にして、放射線することが好ましい。より好ましくは0.1体積%以下5体積%以下である。血液浄化器内の酸素濃度が0.01体積%未満になると、容器やヘッダーの着色が付き、製品外観が悪くなるので好ましくない。一方、血液浄化器内の酸素濃度が10体積%を超えると、空気中の酸素からラジカルが発生し、中空糸膜中のポリビニルピロリドンが分解してしまうと考えられ、溶出物が増加する傾向にある。
本発明でいう放射線照射とは、電子線、ガンマー線等を用いた放射線照射をいい、その線量は5kGy以上50kGy以下であり、好ましくは15kGy以上30kGy以下、より好ましくは25kGy付近である。
【0059】
(PVP内部コートについて)
ポリビニルピロリドンの架橋度が高い膜では血液適合性が低くなる傾向にある。血液浄化器では膜の内表面に血液を流すのが一般的である。本実施の形態では、例えばポリビニルピロリドンを含む膜を製造した後、さらに膜の内表面にポリビニルピロリドンをコートする。膜の内表面にポリビニルピロリドンをコートすることにより、ポリビニルピロリドンの架橋度が高くても膜内表面に存在するポリビニルピロリドンの量が多いので血液適合性が向上する傾向にある。
【0060】
中空糸膜を血液浄化器に成型してから該中空糸膜の内表面にポリビニルピロリドンを接触させるには、上述した架橋度調整剤溶液にポリビニルピロリドンを溶解した水溶液を中空糸膜内に注入してから、該中空糸膜内の水溶液を取り除いた後に放射線照射することにより行う。使用するポリビニルピロリドンの分子量は上述した製膜原液に使用するポリビニルピロリドンと同様である。溶液中のポリビニルピロリドンの濃度は、ポリビニルピロリドンの分子量に影響されるが、0.01重量%以上20重量%以下が好ましく、より好ましくは0.05重量%以上5重量%以下であり、さらに好ましくは0.1重量%以上5重量%以下である。溶液中のポリビニルピロリドンの濃度が0.01重量%未満では、コートの効果がない傾向にある。一方、溶液中のポリビニルピロリドンの濃度が20重量%を超えると膜の透過性能が大きく低下する傾向にあり、好ましくない。また、中空糸膜内部へのポリビニルピロリドンのコーティングの際の放射線照射と、上述のポリビニルピロリドン架橋の際の放射線照射を同時に行うべく、ポリビニルピロリドンを含むコーティング溶液及び架橋度調整剤溶液をこの順で中空糸膜内に注入し、これらの溶液を中空糸膜内から取り除いた後に、放射線照射を行うこともできる。コーティング溶液と架橋度調整剤溶液の混合液を中空糸膜内に注入し、この混合液を中空糸膜内から取り除いた後に、放射線照射を行うこともできる。
【実施例】
【0061】
以下にこの発明の実施例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。各測定方法は、下記のとおりである。
なお、測定サンプルとして使用した中空糸膜は、すべて十分に水を含浸させた状態のものを用いた。
膜の破断強度は、(株)島津製作所製のオートグラフAGS−5Dを使用し、サンプル長さ30mm、25℃、引っ張りスピード50mm/分で測定した。
破断強度は、中空糸膜1本当たりの破断時荷重を、引っ張る前の膜断面積当たりの算出(kgf/cm2)で表し、破断伸度(伸び)は、元の長さに対する破断までに伸びた長さ(%)で表した。
【0062】
(実施例1)
(ポリビニルピロリドン溶解液の作製及び該溶解液の濾過)
100℃以下の温度での乾燥により含水率を0.3重量%以下としたポリビニルピロリドン(BASF社製、K90、重量平均分子量1,200,000)84gをジメチルアセトアミド1576gに溶解して均一な溶液(ポリビニルピロリドン溶解液)とした(ポリビニルピロリドン濃度5.06重量%)。
この溶液を70℃に保温して孔径2μmのステンレス製の焼結フィルター(日本精線(株)社製、NS−02S2、有効濾過面積20cm2)を用いて濾過流量2mL/(分・cm2)にて濾過した。濾過中は焼結フィルターを超音波洗浄機中に浸漬して、ポリビニルピロリドン溶解液に常時59kHz(出力3kW)の超音波振動を付与した。フィルター濾過後のポリビニルピロリドン溶解液を5.0重量%の濃度になるように調整して、動的光散乱装置にて測定したときのポリビニルピロリドンの粒径分布において最も大粒径側にあるピークのモード径は、130nmであった。当該モード径は、10回測定した平均値を用いた。尚、平均値の算出時には、最大値と最小値を除いた8点の値を用いた。
(製膜原液の作製及び製膜)
上記のフィルター濾過後の溶液(ポリビニルピロリドン溶解液)830gに芳香族ポリスルホン(Amoco Engineering Polymers社製 P−1700)170gを添加して溶解することにより均一な溶液(製膜原液)を作製した。ポリスルホンの未溶解物等を除去するために、この製膜原液を孔径5μmのフィルター(富士フィルター(株)社製、FD−5、有効濾過面積40cm2)を用いて濾過した。
この溶液(製膜原液)を脱泡後60℃に保ち、ジメチルアセトアミド54重量%と水46重量%との混合溶液からなる内部液とともに、紡口(2重環状ノズル 0.1mm−0.2mm−0.3mm)から吐出(内部液は内壁直径0.1mmの環状ノズルから吐出、製膜原液は外壁直径0.2mmと内壁直径0.3mmの間から吐出)させ、380mmのエアギャップを通過させて70℃の水からなる凝固浴に浸漬させた。この時、紡口から凝固浴までを円筒状の筒で囲み、筒の中のエアギャップの湿度を100%、温度を45℃に制御した。紡速は27m/分に固定した。得られた中空糸膜を巻取る前にクリンパー(中空糸膜へのクリンプ付与装置)で波長6mm、振幅0.6mmのクリンプを付与した。クリンパーでの乾燥温度を155℃、乾燥時間を120秒に設定した。巻き取った9600本の中空糸膜からなる束を、中空糸膜の有効膜面積が1.5m2となるように設計したポリプロピレン製筒状容器に装填し、その両端部をウレタン樹脂で接着固定し、両端面を切断して中空糸膜の開口端を形成した。さらに、両端部にヘッダーキャップを取り付けた。
2gのポリビニルピロリドンK90(BASF社製、K90、重量平均分子量1,200,000)を70℃の純水1,998gに溶解した溶液(PVPコーティング溶液)を作成した。この溶液を70℃に保温して孔径2μmのステンレス製の焼結フィルター(日本精線(株)社製、NS−02S2、有効濾過面積20cm2)を用いて濾過流量2mL/(分・cm2)にて濾過した。尚、濾過中は焼結フィルターを超音波洗浄機中に浸漬して、ポリビニルピロリドン溶解液に常時59kHz(出力3kW)の超音波振動を付与した。この溶液を開口端から中空糸膜の中空部に2.3秒間注入し、0.3MPaのエアーで10秒間フラッシュさせた。
さらに、グルコース(和光純薬社製、特級)360gを70℃の純水1,640gに溶解した架橋度調整剤溶液を作成した。
この溶液を開口端から中空糸膜の中空部に2.3秒間注入し、0.3MPaのエアーで10秒間フラッシュさせた後、両端部にヘッダーキャップを取り付けた。血液流出入側ノズルに栓を施した後、滅菌袋に脱酸素剤(三菱ガス化学社製 エージレス(登録商標))と共に入れ、酸素濃度を3.5%に調整後、電子線を20kGy照射した。この血液浄化器のα1マイクログロブリンの総括物質移動係数並びに吸着量は、それぞれ、0.0046[cm/分]、0.49[mg/m2]であった。
尚、放射線照射後の血液浄化器から抽出した可溶性ポリビニルピロリドンの動的光散乱装置にて測定した時の粒径分布において最も大粒径側にあるピークのモード径は、130nmであった。この中空糸膜の性能を表1に示す。尚、本中空糸膜を1.5m2の血液浄化器に作成して放射線照射後にビタミンB12のクリアランス値並びにリンのクリアランス値を測定した値は、それぞれ158ml/分、188ml/分であった。また、アルブミンの透過率は、0.25%であった。また、ビタミンB12並びにミオグロビンの吸着率は、23%、20%であった。また、膜孔保持材を有していない中空糸膜であって、人工腎臓装置承認基準に基づいた溶出物試験液で溶出がなく且つ該溶出物試験で溶出物試験液中に膜孔保持材を含まなかった。
高破断強度、高破断伸度で且つ溶出量が少なく、α1マイクログロブリンの総括物質移動係数が高く、アルブミンの透過率が低い中空糸膜であることが明らかとなった。
【0063】
(実施例2)
内部液濃度を51重量%にした以外は実施例1と同様な操作を行った。膜厚は40.0μmであった。尚、本中空糸膜を1.5m2の血液浄化器に作成して放射線照射後にビタミンB12のクリアランス値は、154ml/分であった。また、アルブミンの透過率、ビタミンB12並びにミオグロビンの吸着率は、それぞれ0.20%、18%、15%であった。この血液浄化器の性能を表1に示す。
破断強度並びに破断伸度が高い、膜厚の薄い中空糸膜からなる血液浄化器であって、血液中不純物の除去性能が高く、且つアルブミン透過率並びに低分子タンパク質の吸着量が低く、更にビタミンB12のクリアランス値が高く、ビタミンB12の吸着量が低いことが分かった。
【0064】
(実施例3)
内部液濃度を53重量%、エアギャップを180mm、紡速を39m/分にした以外は実施例1と同様な操作を行った。(Ga/Vs´×Am/As)の値は0.159であった。この血液浄化器の性能を表1に示す。尚、本中空糸膜を1.5m2の血液浄化器に作成して放射線照射後にビタミンB12のクリアランス値は、154ml/分であった。また、アルブミンの透過率、ビタミンB12並びにミオグロビンの吸着率は、それぞれ0.35%、25%、25%であった。この血液浄化器の性能を表1に示す。
破断強度並びに破断伸度が高い、膜厚の薄い中空糸膜からなる血液浄化器であって、血液中不純物の除去性能が高く、且つアルブミン透過率並びに低分子タンパク質の吸着量が低く、更にビタミンB12のクリアランス値が高く、ビタミンB12の吸着量が低いことが分かった。
【0065】
(実施例4)
内部液濃度を53重量%、エアギャップを615mm、紡速を36m/分にした以外は実施例1と同様な操作を行った。(Ga/Vs´×Am/As)の値は0.728であった。この血液浄化器の性能を表1に示す。尚、本中空糸膜を1.5m2の血液浄化器に作成して放射線照射後にビタミンB12のクリアランス値は、153ml/分であった。また、アルブミンの透過率、ビタミンB12並びにミオグロビンの吸着率は、それぞれ0.18%、15%、12%であった。この血液浄化器の性能を表1に示す。
破断強度並びに破断伸度が高い、膜厚の薄い中空糸膜からなる血液浄化器であって、血液中不純物の除去性能が高く、且つアルブミン透過率並びに低分子タンパク質の吸着量が低く、更にビタミンB12のクリアランス値が高く、ビタミンB12の吸着量が低いことが分かった。
【0066】
(実施例5)
内部液濃度を53重量%、エアギャップを210mm、紡速を33m/分にした以外は実施例1と同様な操作を行った。膜厚は25.5μmであった。この血液浄化器の性能を表1に示す。尚、本中空糸膜を1.5m2の血液浄化器に作成して放射線照射後にビタミンB12のクリアランス値は、163ml/分であった。また、アルブミンの透過率、ビタミンB12並びにミオグロビンの吸着率は、それぞれ0.33%、22%、19%であった。この血液浄化器の性能を表1に示す。
破断強度並びに破断伸度が高い、膜厚の薄い中空糸膜からなる血液浄化器であって、血液中不純物の除去性能が高く、且つアルブミン透過率並びに低分子タンパク質の吸着量が低く、更にビタミンB12のクリアランス値が高く、ビタミンB12の吸着量が低いことが分かった。
【0067】
(実施例6)
架橋度調整剤中のグルコース濃度を2重量%にした以外は、実施例1と同様な操作を行った。中空糸膜中のポリビニルピロリドンの架橋度は99.2%であった。尚、本中空糸膜を1.5m2の血液浄化器に作成して放射線照射後にビタミンB12のクリアランス値は、158ml/分であった。また、アルブミンの透過率、ビタミンB12並びにミオグロビンの吸着率は、それぞれ0.25%、23%、20%であった。この血液浄化器の性能を表1に示す。
破断強度並びに破断伸度が高い、膜厚の薄い中空糸膜からなる血液浄化器であって、血液中不純物の除去性能が高く、且つアルブミン透過率並びに低分子タンパク質の吸着量が低く、更にビタミンB12のクリアランス値が高く、ビタミンB12の吸着量が低いことが分かった。
【0068】
(実施例7)
架橋度調整剤中のグルコース濃度を5重量%にした以外は、実施例1と同様な操作を行った。中空糸膜中のポリビニルピロリドンの架橋度は94.3%であった。尚、本中空糸膜を1.5m2の血液浄化器に作成して放射線照射後にビタミンB12のクリアランス値は、158ml/分であった。また、アルブミンの透過率、ビタミンB12並びにミオグロビンの吸着率は、それぞれ0.25%、23%、20%であった。この血液浄化器の性能を表1に示す。
破断強度並びに破断伸度が高い、膜厚の薄い中空糸膜からなる血液浄化器であって、血液中不純物の除去性能が高く、且つアルブミン透過率並びに低分子タンパク質の吸着量が低く、更にビタミンB12のクリアランス値が高く、ビタミンB12の吸着量が低いことが分かった。
【0069】
(実施例8)
架橋度調整剤中のグルコース濃度を40重量%にした以外は、実施例1と同様な操作を行った。中空糸膜中のポリビニルピロリドンの架橋度は80.7%であった。尚、本中空糸膜を1.5m2の血液浄化器に作成して放射線照射後にビタミンB12のクリアランス値は、158ml/分であった。また、アルブミンの透過率、ビタミンB12並びにミオグロビンの吸着率は、それぞれ0.25%、23%、20%であった。この血液浄化器の性能を表1に示す。
破断強度並びに破断伸度が高い、膜厚の薄い中空糸膜からなる血液浄化器であって、血液中不純物の除去性能が高く、且つアルブミン透過率並びに低分子タンパク質の吸着量が低く、更にビタミンB12のクリアランス値が高く、ビタミンB12の吸着量が低いことが分かった。
【0070】
(実施例9)
架橋度調整剤中のグルコース濃度を30重量%にした以外は、実施例1と同様な操作を行った。中空糸膜中のポリビニルピロリドンの架橋度は85.8%であった。尚、本中空糸膜を1.5m2の血液浄化器に作成して放射線照射後にビタミンB12のクリアランス値は、158ml/分であった。また、アルブミンの透過率、ビタミンB12並びにミオグロビンの吸着率は、それぞれ0.25%、23%、20%であった。この血液浄化器の性能を表1に示す。
破断強度並びに破断伸度が高い、膜厚の薄い中空糸膜からなる血液浄化器であって、血液中不純物の除去性能が高く、且つアルブミン透過率並びに低分子タンパク質の吸着量が低く、更にビタミンB12のクリアランス値が高く、ビタミンB12の吸着量が低いことが分かった。
【0071】
(実施例10)
ポリビニルピロリドン溶解液の濾過に用いるフィルターを孔径3μmのステンレス製の焼結フィルター(日本精線(株)社製、NS−03S2、有効濾過面積20cm2)にした以外は実施例2と同様な操作を行った。フィルター濾過後のポリビニルピロリドン溶解液を希釈して、動的光散乱装置にて測定した時のポリビニルピロリドンの粒径分布において最も大粒径側にあるピークのモード径は、290nmであった。尚、本中空糸膜を1.5m2の血液浄化器に作成して放射線照射後にビタミンB12のクリアランス値は、153ml/分であった。また、アルブミンの透過率、ビタミンB12並びにミオグロビンの吸着率は、それぞれ0.27%、21%、24%であった。この血液浄化器の性能を表1に示す。
破断強度並びに破断伸度が高い、膜厚の薄い中空糸膜からなる血液浄化器であって、血液中不純物の除去性能が高く、且つアルブミン透過率並びに低分子タンパク質の吸着量が低く、更にビタミンB12のクリアランス値が高く、ビタミンB12の吸着量が低いことが分かった。
【0072】
(実施例11)
フィルター濾過時のポリビニルピロリドン溶解液の温度を90℃にした以外は実施例2と同様な操作を行った。フィルター濾過後のポリビニルピロリドン溶解液を希釈して、動的光散乱装置にて測定した時のポリビニルピロリドンの粒径分布において最も大粒径側にあるピークのモード径は、40nmであった。尚、本中空糸膜を1.5m2の血液浄化器に作成して放射線照射後にビタミンB12のクリアランス値は、162ml/分であった。また、アルブミンの透過率、ビタミンB12並びにミオグロビンの吸着率は、それぞれ0.27%、15%、13%であった。この血液浄化器の性能を表1に示す。
破断強度並びに破断伸度が高い、膜厚の薄い中空糸膜からなる血液浄化器であって、血液中不純物の除去性能が高く、且つアルブミン透過率並びに低分子タンパク質の吸着量が低く、更にビタミンB12のクリアランス値が高く、ビタミンB12の吸着量が低いことが分かった。
【0073】
(実施例12)
PVPコーティング溶液中のポリビニルピロリドン濃度を0.5重量%にした以外は、実施例1と同様な操作を行った。本中空糸膜を1.5m2の血液浄化器に作成して放射線照射後にビタミンB12のクリアランス値は、158ml/分であった。また、アルブミンの透過率、ビタミンB12並びにミオグロビンの吸着率は、それぞれ0.25%、10%、9%であった。この血液浄化器の性能を表1に示す。この中空糸膜のα1マイクログロブリンの総括物質移動係数並びに吸着量は、それぞれ、0.0056[cm/分]、0.39[mg/m2]であった。また、膜孔保持材を有していない中空糸膜であって、人工腎臓装置承認基準に基づいた溶出物試験液で溶出がなく且つ該溶出物試験で溶出物試験液中に膜孔保持材を含まなかった。
高破断強度、高破断伸度で且つ溶出量が少なく、α1マイクログロブリンの総括物質移動係数が高く、アルブミンの透過率が低い中空糸膜であることが明らかとなった。
【0074】
(実施例13)
PVPコーティング溶液中のポリビニルピロリドン濃度を1.0重量%にした以外は、実施例1と同様な操作を行った。本中空糸膜を1.5m2の血液浄化器に作成して放射線照射後にビタミンB12のクリアランス値は、158ml/分であった。また、アルブミンの透過率、ビタミンB12並びにミオグロビンの吸着率は、それぞれ0.25%、5%、3%であった。この血液浄化器の性能を表1に示す。この中空糸膜のα1マイクログロブリンの総括物質移動係数並びに吸着量は、それぞれ、0.0069[cm/分]、0.28[mg/m2]であった。また、膜孔保持材を有していない中空糸膜であって、人工腎臓装置承認基準に基づいた溶出物試験液で溶出がなく且つ該溶出物試験で溶出物試験液中に膜孔保持材を含まなかった。
高破断強度、高破断伸度で且つ溶出量が少なく、α1マイクログロブリンの総括物質移動係数が高く、アルブミンの透過率が低い中空糸膜であることが明らかとなった。
【0075】
(比較例1)
ポリビニルピロリドン溶解液の濾過に用いるフィルターを孔径5μmのステンレス製の焼結フィルター(富士フィルター(株)社製、FD−5、有効濾過面積40cm2)にしてポリビニルピロリドン溶解液に超音波振動を与えない以外は実施例2と同様な操作を行った。フィルター濾過後のポリビニルピロリドン溶解液を希釈して、動的光散乱装置にて測定した時のポリビニルピロリドンの粒径分布において最も大粒径側にあるピークのモード径は、550nmであった。この血液浄化器の性能を表2に示す。血液中の不純物の除去性能が低いことが明らかとなった。
【0076】
(比較例2)
内部液濃度を51重量%にした以外は実施例1と同様な操作を行った。膜厚は40.8μmであった。この血液浄化器の性能を表2に示す。破断強度が6.0MPa未満、破断伸度が60未満であった。
【0077】
(比較例3)
内部液濃度を53重量%、エアギャップを180mm、紡速を39m/分にした以外は実施例1と同様な操作を行った。(Ga/Vs´×Am/As)の値は0.145であった。この血液浄化器の性能を表2に示す。アルブミンの透過率が0.35%を超える性能であった。
【0078】
(比較例4)
内部液濃度を53重量%、エアギャップを585mm、紡速を24m/分にした以外は実施例1と同様な操作を行った。(Ga/Vs´×Am/As)の値は0.755であった。この血液浄化器の性能を表2に示す。膜切れが多発して、長時間安定的な生産が困難な結果となった。
【0079】
(比較例5)
内部液濃度を53重量%、エアギャップを210mmにした以外は実施例1と同様な操作を行った。この血液浄化器の性能を表2に示す。膜厚は25μm未満であった。
【0080】
(比較例6)
ポリビニルピロリドン溶解液に超音波振動を与えない以外は実施例10と同様な操作を行った。フィルター濾過後のポリビニルピロリドン溶解液を希釈して、動的光散乱装置にて測定した時のポリビニルピロリドンの粒径分布において最も大粒径側にあるピークのモード径は、320nmであった。この血液浄化器の性能を表2に示す。血液中の不純物の除去性能が低いことが明らかとなった。
【0081】
(製造例1)
放射線照射するときの、血液浄化器に封入する水溶液を純水にして、水溶液中の酸素を除去しない以外は、実施例1と同様な操作を行った。中空糸膜中のポリビニルピロリドンの架橋度は100%であった。この血液浄化器の性能を表2に示す。この血液浄化器を臨床血液評価したところ、透析患者の白血球数が一時的に低下するロイコペニア症状が観察された。
【0082】
(製造例2)
架橋度調整剤中のグルコース濃度を45重量%にした以外は、実施例1と同様な操作を行った。中空糸膜中のポリビニルピロリドンの架橋度は77.9%であった。この血液浄化器の性能を表2に示す。中空糸膜中のポリビニルピロリドンの架橋度は80%未満であった。ポリビニルピロリドンが高架橋度である中空糸膜が得られなかった。
【0083】
【表1】

【0084】
【表2】

【符号の説明】
【0085】
A 一次ピーク
B 二次ピーク
1 波長
2 振幅





【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリスルホン系ポリマーとポリビニルピロリドンからなる中空糸膜を有する血液浄化器であって、
前記中空糸膜は、膜内表面から膜外表面に向かって連続的に孔径が大きくなる構造を有し、
放射線照射後の該血液浄化器のビタミンB12のクリアランス値が膜面積1.5m2当たり/又は膜面積1.5m2換算値で152ml/分以上であり、ビタミンB12の吸着率が25%以下、かつミオグロビンの吸着率が25%以下であることを特徴とする血液浄化器。
【請求項2】
アルブミンの透過率が0.35%以下であることを特徴とする請求項1に記載の血液浄化器。
【請求項3】
前記血液浄化器の容器がポリプロピレン系ポリマーからなることを特徴とする請求項1又は2に記載の血液浄化器。
【請求項4】
前記中空糸膜中のポリビニルピロリドンの架橋度が80%以上100%未満であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の血液浄化器。
【請求項5】
前記血液浄化器の開口端から架橋度調整剤溶液を中空糸膜内に注入し、次いでその架橋度調整剤溶液を中空糸膜内から取り除き、その後中空糸膜に放射線照射することによって、前記中空糸膜中のポリビニルピロリドンの架橋度が80%以上100%未満になっていることを特徴とする請求項4に記載の血液浄化器。
【請求項6】
前記放射線照射時には、前記血液浄化器内の酸素濃度が0.01体積%以上10体積%以下に設定されていることを特徴とする請求項5に記載の血液浄化器。
【請求項7】
前記中空糸膜の膜厚が25μm以上40μm以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の血液浄化器。
【請求項8】
前記中空糸膜は、膜厚が35μm以下であって、破断強度が7MPa以上、且つ破断伸度が65%以上であるか、又は、膜厚が30μm以下であって、破断強度が7.5MPa以上、且つ破断伸度が70%以上であることを特徴とする請求項7に記載の血液浄化器。

【図2】
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【図1】
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【公開番号】特開2010−233987(P2010−233987A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−88174(P2009−88174)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000116806)旭化成クラレメディカル株式会社 (133)
【Fターム(参考)】