説明

血液浄化装置及び血液浄化システム

【課題】治療の途中で使用する溶液を切り替えたい場合であっても、比較的容易に対応可能な血液浄化装置を提供する。
【解決手段】動脈側回路上の血液を血液浄化器に向けて送るための血液ポンプ81と、透析液回路上の透析液を血液浄化器に向けて送るための透析液ポンプ82と、廃液回路上の廃液を送り出すための廃液ポンプ83と、第1回路上の第1の液体を静脈側回路に向けて送るための第1ポンプ84と、第2回路上の第2の液体を静脈側回路に向けて送るための第2ポンプ85と、これらのポンプの駆動を制御する制御部90とを備える血液浄化装置80。制御部90は、第1ポンプ84が駆動しているか否かに応じて、第2ポンプ85の駆動の可否を決定するポンプ駆動判断部F5を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液浄化装置及び血液浄化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば急性腎不全等の患者の血液を浄化するための血液浄化療法として、持続的血液濾過透析(Continuous Hemodiafiltration:CHDF)などの治療法が行われており、そのような血液浄化療法に用いる血液浄化装置が数多く開発されている(例えば、特許文献1及び2参照。)。例えばCHDF対応の従来の血液浄化装置には、4つのポンプ(血液ポンプ、透析液ポンプ、濾液ポンプ及び補充液ポンプ)が配設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−541号公報
【特許文献2】特開2003−126247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、そのような持続的血液浄化療法を行う現場においては、治療の途中で例えば補充液又は置換液を別の種類や異なる濃度のものに切り替えたい場合がある。
【0005】
しかしながら、従来の血液浄化装置においては、補充液を送るためのポンプが1つしか配設されていないため、そのような補充液又は置換液の切替えを行うには、装置を一旦停止した上で補充液又は置換液を入れた貯留バッグをその都度回路から取り外して新たなものに付け替えなければならず、作業が非常に煩わしい。
【0006】
なお、補充液又は置換液の切替えに限らず、例えば透析液を治療の途中で別の種類や異なる濃度のものに切り替えたい場合であっても、上記した補充液又は置換液の場合と同様、従来の血液浄化装置では容易に対応できるとは言い難い。すなわち、従来の血液浄化装置は、使用する溶液の切替えを行うには不向きなものであった。
【0007】
このような使用する溶液の切替え作業の煩雑性の問題は、CHDF対応の血液浄化装置に限ったものではなく、例えば、単純血漿交換(Plasma Exchange:PE)対応の血液浄化装置など、持続的血液浄化療法以外の血液浄化療法に用いる血液浄化装置においても同様に生じ得るものである。
【0008】
そこで、本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、治療の途中で使用する溶液を切り替えたい場合であっても、比較的容易に対応可能な血液浄化装置及び血液浄化システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の血液浄化装置(80)は、内部が血液流路(13)と他の流路(14)に区画されるとともに、前記血液流路(13)の一端に通じる第1流入部(15)、前記血液流路(13)の他端に通じる第1流出部(16)、前記他の流路(14)に通じる第2流出部(18)を少なくとも有する血液浄化器(10)と、前記第1流入部(15)に接続される動脈側回路(20)と、前記第1流出部(16)に接続される静脈側回路(30)と、前記第2流出部(18)に接続され、前記第2流出部(18)からの廃液が通液する廃液回路(50)と、前記静脈側回路(30)に接続され、第1の液体が通液する第1回路(60)と、前記動脈側回路(20)、前記静脈側回路(30)又は前記第1回路(60)に接続され、第2の液体が通液する第2回路(70)とを少なくとも備える血液浄化システムに用いられる血液浄化装置であって、複数のポンプ及び当該複数のポンプの駆動を制御する制御部(90)を有し、前記複数のポンプとして、前記動脈側回路(20)上の血液を前記血液浄化器(10)に向けて送るための血液ポンプ(81)と、前記廃液回路(50)上の前記廃液を送り出すための廃液ポンプ(83)と、前記第1回路(60)上の前記第1の液体を前記静脈側回路(30)に向けて送るための第1ポンプ(84)と、前記第2回路(70)上の前記第2の液体を前記静脈側回路(30)又は前記第1回路(60)に向けて送るための第2ポンプ(85)とを少なくとも有し、前記制御部(90)は、前記第1ポンプ(84)が駆動しているか否かに応じて、前記第2ポンプ(85)の駆動の可否を決定するポンプ駆動判断部(F5)を有することを特徴とする。
【0010】
このため、本発明の血液浄化装置によれば、上記した第1ポンプ及び第2ポンプが装置に組み込まれており、制御部が上記したポンプ駆動判断部を有しているため、例えば第1の液体とは別の種類(又は異なる濃度)のものを第2の液体として準備し、それぞれ第1回路及び第2回路に接続した上で第1ポンプ及び第2ポンプにセットしておきさえすれば、治療の途中で使用する溶液を切り替えたいときに、非常にスムーズな切替えを行うことができる。
【0011】
したがって、本発明の血液浄化装置は、治療の途中で使用する溶液を切り替えたい場合であっても、比較的容易に対応可能な血液浄化装置となる。
【0012】
なお、この明細書において「第1の液体」及び「第2の液体」とは、患者の血液とは異なる液体のことをいう。
【0013】
本発明の血液浄化装置(80)においては、前記ポンプ駆動判断部は、前記第1ポンプ(84)が駆動状態である場合には前記第2ポンプ(85)を停止状態にし、前記第1ポンプ(84)が停止状態である場合には前記第2ポンプ(85)を駆動状態にすることが好ましい。
【0014】
このように構成することにより、第1ポンプによって第1の液体が送られているときには第2ポンプによる第2の液体の送液は停止され、第2ポンプによって第2の液体が送られているときには第1ポンプによる第1の液体の送液は停止されるようになる。
【0015】
本発明の血液浄化装置においては、前記ポンプ駆動判断部は、前記第1ポンプが駆動状態である場合には前記第2ポンプを駆動状態にし、前記第1ポンプが停止状態である場合には前記第2ポンプを停止状態にし、前記制御部はさらに、前記第1ポンプ及び前記第2ポンプがともに駆動状態である場合には、前記第1ポンプと前記第2ポンプの流量を連動して制御することが好ましい。
【0016】
このように構成することにより、第1の液体を送液しているときに第2の液体も送液することができるため、例えばあるタイミングにおいて2種類の溶液を送りたいという要望があったとしても、本発明の血液浄化装置であれば比較的容易に対応可能である。
【0017】
本発明の血液浄化装置(80)においては、前記制御部(90)はさらに、前記第1ポンプ(84)及び前記第2ポンプ(85)のうち駆動状態にある少なくとも一方のポンプの流量と前記廃液ポンプ(83)の流量とを連動して制御することが好ましい。
【0018】
このように構成することにより、廃液ポンプの流量変動に応じて、第1ポンプ及び第2ポンプの流量調整を自動的に行うことが可能となる。
【0019】
本発明の血液浄化装置(80)においては、前記制御部(90)はさらに、前記第1ポンプ(84)及び前記第2ポンプ(85)のうち駆動状態にある少なくとも一方のポンプの流量と前記血液ポンプ(81)の流量とを連動して制御することが好ましい。
【0020】
このように構成することにより、血液ポンプの流量変動に応じて、第1ポンプ及び第2ポンプの流量調整を自動的に行うことが可能となる。
【0021】
本発明の血液浄化装置(80)においては、各ポンプの流量を設定入力するための設定入力部(87)をさらに有し、前記制御部(90)はさらに、前記設定入力部(87)に入力された設定値に基づいて、各ポンプの流量を調整することが好ましい。
【0022】
このように構成することにより、例えば第1ポンプの流量は一定のままで第2ポンプの流量を変更することができたり(すなわち第1ポンプと第2ポンプの流量比の変更)、すべてのポンプの流量比を揃えた状態で血液浄化器に流す血液量を変更することができたりするなど、使用者の意図に幅広く応じることが可能な優れた血液浄化装置となる。
【0023】
本発明の血液浄化システム(1)は、内部が血液流路(13)と他の流路(14)に区画されるとともに、前記血液流路(13)の一端に通じる第1流入部(15)、前記血液流路(13)の他端に通じる第1流出部(16)、前記他の流路(14)の一端に通じる第2流入部(17)及び前記他の流路(14)の他端に通じる第2流出部(18)を有する血液浄化器(10)と、前記第1流入部(15)に接続される動脈側回路(20)と、前記第1流出部(16)に接続される静脈側回路(30)と、前記第2流入部(17)に接続される透析液回路(40)と、前記第2流出部(18)に接続され、前記第2流出部(18)からの廃液が通液する廃液回路(50)と、前記静脈側回路(30)に接続され、第1の液体が通液する第1回路(60)と、前記動脈側回路(20)、前記静脈側回路(30)又は前記第1回路(60)に接続され、第2の液体が通液する第2回路(70)と、本発明の血液浄化装置(80)とを備え、前記血液浄化装置(80)が、前記透析液回路(40)上の透析液を前記血液浄化器(10)に向けて送るための透析液ポンプ(82)をさらに有することを特徴とする。
【0024】
このため、本発明の血液浄化システムによれば、上述の優れた血液浄化装置を備えているため、CHDF、CHD(Continuous Hemodialysis,持続的血液透析)、CHF(Continuous Hemofiltration,持続的血液濾過)等を実施する場合において、補充液又は置換液の切替えを比較的容易に行うことが可能な優れた血液浄化システムとなる。
【0025】
本発明の血液浄化システム(2)は、内部が血液流路(213)と他の流路(214)に区画されるとともに、前記血液流路(213)の一端に通じる第1流入部(215)、前記血液流路(213)の他端に通じる第1流出部(216)、前記他の流路(214)の一端に通じる第2流出部(218)を有する血液浄化器(210)と、前記第1流入部(215)に接続される動脈側回路(20)と、前記第1流出部(216)に接続される静脈側回路(30)と、前記第2流出部(218)に接続され、前記第2流出部(218)からの廃液が通液する廃液回路(50)と、前記静脈側回路(30)に接続され、第1の液体が通液する第1回路(260)と、前記動脈側回路(20)、前記静脈側回路(30)又は前記第1回路(260)に接続され、第2の液体が通液する第2回路(270)と、本発明の血液浄化装置(280)とを備えることを特徴とする。
【0026】
このため、本発明の血液浄化システムによれば、上述の優れた血液浄化装置を備えているため、異なる2つの補充液又は置換液を必要に応じて切り替えるなどする施行方法を比較的容易に行うことが可能な、優れた血液浄化システムとなる。
【0027】
本発明の血液浄化システム(3)は、内部が血液流路(13)と他の流路(14)に区画されるとともに、前記血液流路(13)の一端に通じる第1流入部(15)、前記血液流路(13)の他端に通じる第1流出部(16)、前記他の流路(14)の一端に通じる第2流入部(17)及び前記他の流路(14)の他端に通じる第2流出部(18)を有する血液浄化器(10)と、前記第1流入部(15)に接続される動脈側回路(20)と、前記第1流出部(16)に接続される静脈側回路(30)と、前記第2流入部(17)に接続される第1透析液回路(360)と、前記第2流出部(18)に接続され、前記第2流出部(18)からの廃液が通液する廃液回路(50)と、前記第1透析液回路(360)に接続される第2透析液回路(370)と、本発明の血液浄化装置(380)とを備え、前記第1透析液回路(360)には、前記第1の液体としての第1の透析液が通液するように構成されており、前記第2透析液回路(370)には、前記第2の液体としての第2の透析液が通液するように構成されており、前記第1ポンプ(84)が、前記第1透析液回路(360)上の前記第1の透析液を前記血液浄化器(10)に向けて送るためのポンプであり、前記第2ポンプ(85)が、前記第2透析液回路(370)上の前記第2の透析液を前記第1透析液回路(360)に向けて送るためのポンプであることを特徴とする。
【0028】
このため、本発明の血液浄化システムによれば、上述の優れた血液浄化装置を備えているため、CHDF、CHD等を実施する場合において、透析液の切替えを比較的容易に行うことが可能な優れた血液浄化システムとなる。
【0029】
なお、特許請求の範囲及び本欄(課題を解決するための手段の欄)に記載した各部材等の文言下に括弧をもって付加された符号は、特許請求の範囲及び本欄に記載された内容の理解を容易にするために用いられたものであって、特許請求の範囲及び本欄に記載された内容を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】第1実施形態に係る血液浄化システム1の構成を示す図。
【図2】血液浄化器10を説明するために示す図。
【図3】第1実施形態に係る血液浄化装置80の電気的構成を示すブロック図。
【図4】制御部90のポンプ駆動制御部F5を説明するために示す図。
【図5】第2実施形態に係る血液浄化システム2の構成を示す図。
【図6】血液浄化器210を説明するために示す図。
【図7】第2実施形態に係る血液浄化装置280の電気的構成を示すブロック図。
【図8】第3実施形態に係る血液浄化システム3の構成を示す図。
【図9】第3実施形態に係る血液浄化装置380の電気的構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の血液浄化装置及び血液浄化システムについて、図に示す実施の形態に基づいて説明する。
【0032】
[第1実施形態]
まず、血液浄化を行うための血液浄化システム1の構成について、図1〜図3を用いて説明する。
【0033】
図1は、第1実施形態に係る血液浄化システム1の構成を示す図である。
図2は、血液浄化器10を説明するために示す図である。図2(a)は血液浄化器10の構成を説明するために示す図であり、図2(b)は血液浄化器10の内部構造を示す概念図である。なお、図2(b)においては、発明の理解を容易にするため、本来は血液浄化器10内に複数配置されている選択性分離膜12のうち、1つの選択性分離膜12のみを模式的に図示している。
図3は、第1実施形態に係る血液浄化装置80の電気的構成を示すブロック図である。
【0034】
第1実施形態に係る血液浄化システム1は、図1に示すように、血液浄化器10と、血液浄化器10の第1流入部15に接続される動脈側回路20と、血液浄化器10の第1流出部16に接続される静脈側回路30と、血液浄化器10の第2流入部17に接続される透析液回路40と、透析液を貯留可能な透析液貯留容器42と、血液浄化器10の第2流出部18に接続され、第2流出部18からの廃液が通液する廃液回路50と、静脈側回路30に接続され、第1の液体が通液する第1回路60と、第1の液体を貯留可能な第1貯留容器62と、静脈側回路30に接続され、第2の液体が通液する第2回路70と、第2の液体を貯留可能な第2貯留容器72と、血液浄化装置80とを備える。
【0035】
血液浄化器10は、図2に示すように、筒状のハウジング部11と、ハウジング部11の内部に配置された選択性分離膜12と、ハウジング部11の一方端部に設けられた第1流入部15と、ハウジング部11の他方端部に設けられた第1流出部16と、ハウジング部11の側面のうち第1流出部16寄りの位置に設けられた第2流入部17と、ハウジング部11の側面のうち第1流入部15寄りの位置に設けられた第2流出部18とを有する。
【0036】
選択性分離膜12は、例えば中空糸膜からなる。図示による説明は省略するが、ハウジング部11の内部には、ハウジング部11の長手方向に沿って複数の選択性分離膜12が延在配置されている。
【0037】
血液浄化器10の内部は、図2(b)に示すように、選択性分離膜12によって血液流路13と他の流路14に区画されている。すなわち、選択性分離膜12の内側が血液流路13となり、選択性分離膜12の外側が他の流路14となる。第1流入部15及び第1流出部16は血液流路13に通じており、第2流入部17及び第2流出部18は他の流路14に通じている。血液浄化器10は、血液浄化時において血液流路13の流れる向き(図2(b)の黒矢印方向)と他の流路14の流れる向き(図2(b)の白抜き矢印方向)とが逆方向となるように(すなわち対向流となるように)構成されている。
【0038】
動脈側回路20の途中には、図1に示すように、エアトラップ22と、ローリングチューブ部24とが設けられている。なお、図1には記載していないが、動脈側回路20の途中には、抗凝固剤を回路内に導入するための抗凝固剤注入ラインが接続されるとともに、動脈側回路20内の圧力を検知するための圧力検知器が設けられている。
【0039】
静脈側回路30の途中には、エアトラップ32が設けられている。なお、図1には記載していないが、静脈側回路30の途中には気泡検知器が設けられており、エアトラップ32には静脈圧センサが接続されている。
【0040】
透析液回路40及び廃液回路50の途中には、ローリングチューブ部44,54がそれぞれ設けられている。なお、図1には記載していないが、廃液回路50の途中には、廃液回路50内の圧力を検知するための圧力検知器が設けられている。
【0041】
第1回路60及び第2回路70の途中には、ローリングチューブ部64,74がそれぞれ設けられている。第1回路60の端部は、静脈側回路30のうち血液浄化器10との接続部分からエアトラップ32までの位置に接続されている。第2回路70の端部は、静脈側回路30のエアトラップ32に接続されている。
【0042】
透析液貯留容器42、第1貯留容器62及び第2貯留容器72はそれぞれ、透析液回路40、第1回路60及び第2回路70の端部に着脱自在で交換可能に取り付けられている。透析液貯留容器42、第1貯留容器62及び第2貯留容器72は、例えばプラスチック製の貯留バッグである。透析液貯留容器42に貯留する透析液、第1貯留容器62に貯留する第1の液体としては、例えばサブラッドBS(「サブラッド」は扶桑薬品工業株式会社の登録商標)などを好適に用いることができる。第2貯留容器72に貯留する第2の液体としては、例えばビカーボン輸液(「ビカーボン」は味の素株式会社の登録商標)などを好適に用いることができる。なお、透析液、第1の液体及び第2の液体としては、ここで例示したもの以外を用いてもよいことは言うまでもない。
【0043】
血液浄化装置80は、図1及び図3に示すように、動脈側回路20上の血液を血液浄化器10に向けて送るための血液ポンプ81と、透析液回路40上の透析液を血液浄化器10に向けて送るための透析液ポンプ82と、廃液回路50上の廃液を送り出すための廃液ポンプ83と、第1回路60上の第1の液体を静脈側回路30に向けて送るための第1ポンプ84と、第2回路70上の第2の液体を静脈側回路30に向けて送るための第2ポンプ85と、血液浄化装置80内の各部に電力を供給するための電源部86と、血液浄化装置80の筐体外面に配置され、操作者からの入力を受け付ける設定入力部87と、血液浄化装置80の筐体外面に配置され、回路内を流れる血液等の温度情報や静脈圧センサによって測定された静脈圧情報等の各種情報を表示する表示部88と、使用される血液浄化器の性能データ等を記憶する記憶部89と、血液浄化装置80内の各部を統括制御する制御部90とを備える。
なお、図1において、制御部90から各ポンプ81〜85に延びる線は信号線を表す。
【0044】
血液ポンプ81、透析液ポンプ82、廃液ポンプ83、第1ポンプ84及び第2ポンプ85は、いわゆるローラーポンプである。図示による説明は省略するが、血液ポンプ81のローラ部が動脈側回路20のローリングチューブ部24と接触した状態で回転する(ローリングチューブ部24を扱く)ことにより、動脈側回路20内の液体(血液)を所定の方向に送液することができる。他のポンプ82〜85の機能についても、血液ポンプ81の場合と同様である。
【0045】
設定入力部87は、図示による説明は省略するが、各ポンプの流量、ポンプ同士の流量連動比率その他の設定値を入力できるように構成されている。なお、設定入力部87及び表示部88は、別体として構成されていてもよいし、例えば入力部分と表示部分とが一体化されたタッチパネル式ディスプレイであってもよい。
【0046】
制御部90は、図3に示すように、5つのポンプ81〜85の駆動を制御するポンプ駆動制御部F1と、設定入力部87に入力された設定値に基づいて、各ポンプの流量を調整するポンプ流量調整部F2と、第1ポンプ84又は第2ポンプ85の流量と血液ポンプ81の流量とを連動して制御する第1連動制御部F3と、第1ポンプ84又は第2ポンプ85の流量と廃液ポンプ83の流量とを連動して制御する第2連動制御部F4と、第1ポンプ84が駆動しているか否かに応じて、第2ポンプ85の駆動の可否を決定するポンプ駆動判断部F5とを少なくとも備える。
【0047】
ポンプ駆動制御部F1は、記憶部89に記憶された5つのポンプ81〜85の流量情報を読み出し、当該情報に基づいて各ポンプ81〜85の駆動を制御する。つまり、あらかじめ記憶部89に記憶された各ポンプ81〜85の設定流量に基づき、各ポンプ81〜85の回転駆動を制御する。
【0048】
設定入力部87は、入力された設定値に関する設定値情報を生成する。ポンプ流量調整部F2は、設定入力部87で生成された設定値情報を受け取り、当該設定値情報に基づいて各ポンプ81〜85の流量を調整する。
【0049】
第1連動制御部F3は、血液ポンプ81の流量の調整に合わせて、第1ポンプ84及び第2ポンプ85のうちの少なくとも一方のポンプの流量を連動して制御する。
例えば、チューブのキンク等によって陰圧が発生し、動脈側回路20に設けられた圧力検知器によって動脈側回路20の圧力変動が検知されると、当該検知情報がポンプ駆動制御部F1に送られる。ポンプ駆動制御部F1は、記憶部89に記憶された流量情報を読み出し、当該情報に基づいて、血液ポンプ81がより安全な流量で回転するように血液ポンプ81の駆動を制御する。血液ポンプ81の流量を調整したことによって、脱血される血液量と補充/置換される液量とのバランスが崩れるのを避けるために、第1連動制御部F3が第1ポンプ84又は第2ポンプ85の流量を連動して制御する。
また、ポンプ流量調整部F2により血液ポンプ81の流量を調整した際も、第1連動制御部F3は第1ポンプ84又は第2ポンプ85の流量を連動して制御することができる。すなわち、設定入力部87によって血液ポンプ81の流量を設定するだけで、第1ポンプ84又は第2ポンプ85の流量も変更される。ポンプ流量調整部F2により血液ポンプ81の流量を調整するケースとしては、例えば、患者の状態を見て脱血量を変えたいときなどが挙げられる。
【0050】
第2連動制御部F4は、廃液ポンプ83の流量の調整に合わせて、第1ポンプ84又は第2ポンプ85の流量を連動して制御する。
例えば、血液浄化器の目詰まりが発生し、廃液回路50に設けられた圧力検知器によって廃液回路50の圧力変動が検知されると、当該検知情報がポンプ駆動制御部F1に送られる。ポンプ駆動制御部F1は、記憶部89に記憶された流量情報を読み出し、当該情報に基づいて、廃液ポンプ83が適した流量で回転するように廃液ポンプ83の駆動を制御する。廃液ポンプ83の流量を調整したことによって、廃液量と補充/置換される液量とのバランスが崩れるのを避けるために、第2連動制御部F4が第1ポンプ84又は第2ポンプ85の流量を連動して制御する。
また、ポンプ流量調整部F2により廃液ポンプ83の流量を調整した際も、第2連動制御部F4は第1ポンプ84又は第2ポンプ85の流量を連動して制御することができる。すなわち、設定入力部87によって廃液ポンプ83の流量を設定するだけで、第1ポンプ84又は第2ポンプ85の流量も変更される。ポンプ流量調整部F2により廃液ポンプ83の流量を調整するケースとしては、例えば、患者の血圧低下等、コンディションの変化によって除水量を変えたいときなどが挙げられる。
【0051】
ポンプ駆動判断部F5は、第1ポンプ84が駆動しているか否かに応じて、第2ポンプ85の駆動の可否を決定する。具体的にいえば、ポンプ駆動判断部F5は、第1ポンプ84が駆動状態である場合には第2ポンプ85を停止状態にし、第1ポンプ84が停止状態である場合には第2ポンプ85を駆動状態にする。
【0052】
図4は、制御部90のポンプ駆動制御部F5を説明するために示す図である。図4(a)においては第1ポンプ84が駆動状態にある場合の各回路の流れを矢印で示しており、図4(b)においては第1ポンプ84が停止状態にある場合の各回路の流れを矢印で示している。
【0053】
例えば、図4(a)に示すように、第1ポンプ84が駆動状態である場合、ポンプ駆動判断部F5は、第2ポンプ85を停止状態にする。第2ポンプ85が停止状態となると、静脈側回路30には、第1貯留容器62に貯留された第1の液体が通液することとなる。
【0054】
一方、図4(b)に示すように、第1ポンプ84が停止状態である場合、ポンプ駆動判断部F5は、第2ポンプ85を駆動状態にする。第2ポンプ85が駆動状態となると、静脈側回路30には、第2貯留容器72に貯留された第2の液体が通液することとなる。
【0055】
以上のように構成された第1実施形態に係る血液浄化装置80によれば、上記した第1ポンプ84及び第2ポンプ85が装置に組み込まれており、制御部90が上記したポンプ駆動判断部F5を有しているため、第1の液体とは別の種類のものを第2の液体として準備し、それぞれ第1回路60及び第2回路70に接続した上で第1ポンプ84及び第2ポンプ85にセットしておきさえすれば、治療の途中で使用する溶液を切り替えたいときに、非常にスムーズな切替えを行うことができる。
【0056】
したがって、第1実施形態に係る血液浄化装置80は、治療の途中で使用する溶液を切り替えたい場合であっても、比較的容易に対応可能な血液浄化装置となる。
【0057】
第1実施形態に係る血液浄化装置80においては、ポンプ駆動判断部F5は、第1ポンプ84が駆動状態である場合には第2ポンプ85を停止状態にし、第1ポンプ84が停止状態である場合には第2ポンプ85を駆動状態にする。これにより、第1ポンプ84によって第1の液体が送られているときには第2ポンプ85による第2の液体の送液は停止され、第2ポンプ85によって第2の液体が送られているときには第1ポンプ84による第1の液体の送液は停止されるようになる。
【0058】
第1実施形態に係る血液浄化装置80においては、制御部90は、上記した第1及び第2連動制御部F3,F4をさらに有するため、血液ポンプ81又は廃液ポンプ83の流量変動に応じて、第1ポンプ84及び第2ポンプ85の流量調整を自動的に行うことが可能となる。
【0059】
第1実施形態に係る血液浄化システム1によれば、上述の優れた血液浄化装置80を備えているため、CHDF、CHD、CHF等を実施する場合において、補充液又は置換液の切替えを比較的容易に行うことが可能な優れた血液浄化システムとなる。
【0060】
[第2実施形態]
図5は、第2実施形態に係る血液浄化システム2の構成を示す図である。
図6は、血液浄化器210を説明するために示す図である。図6(a)は血液浄化器210の構成を説明するために示す図であり、図6(b)は血液浄化器210の内部構造を示す概念図である。なお、図6(b)においては、発明の理解を容易にするため、本来は血液浄化器210内に複数配置されている選択性分離膜212のうち、1つの選択性分離膜212のみを模式的に図示している。
図7は、第2実施形態に係る血液浄化装置280の電気的構成を示すブロック図である。
なお、図5及び図7において、図1及び図3と同一の部材については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0061】
第2実施形態に係る血液浄化システム2は、基本的には第1実施形態に係る血液浄化システム1と同様の構成を有するが、血液浄化器の構成及び透析液回路が設けられていない点で、第1実施形態に係る血液浄化システム1とは異なる。
【0062】
すなわち、第2実施形態に係る血液浄化システム2は、図5に示すように、血液浄化器210と、血液浄化器210の第1流入部215に接続される動脈側回路20と、血液浄化器210の第1流出部216に接続される静脈側回路30と、血液浄化器210の第2流出部218に接続され、第2流出部218からの廃液が通液する廃液回路50と、静脈側回路30に接続され、第1の液体が通液する第1回路260と、第1の液体を貯留可能な第1貯留容器262と、静脈側回路30に接続され、第2の液体が通液する第2回路270と、第2の液体を貯留可能な第2貯留容器272と、血液浄化装置280とを備える。
【0063】
血液浄化器210は、図6に示すように、筒状のハウジング部211と、ハウジング部211の内部に配置された選択性分離膜212と、ハウジング部211の一方端部に設けられた第1流入部215と、ハウジング部211の他方端部に設けられた第1流出部216と、ハウジング部211の側面のうち第1流入部215寄りの位置に設けられた第2流入部217と、ハウジング部211の側面のうち第1流出部216寄りの位置に設けられた第2流出部218とを有する。血液浄化器210の第2流入部217は、栓219をすることによって外部と通液しないように構成されている。
【0064】
選択性分離膜212は、例えば中空糸膜からなる。図示による説明は省略するが、ハウジング部211の内部には、ハウジング部211の長手方向に沿って複数の選択性分離膜212が延在配置されている。
【0065】
血液浄化器210の内部は、図6(b)に示すように、選択性分離膜212によって血液流路213と他の流路214に区画されている。すなわち、選択性分離膜212の内側が血液流路213となり、選択性分離膜212の外側が他の流路214となる。第1流入部215及び第1流出部216は血液流路213に通じており、第2流入部217及び第2流出部218は他の流路214に通じている。血液浄化時において、動脈側回路20から送られた血液は血液流路213内を図6(b)の黒矢印方向に流れる。このとき、血液流路213を流れる血液のうち選択性分離膜212を通過する血液成分は、他の流路214を通じて第2流出部218から排出される(図6(b)の白抜き矢印参照。)。
【0066】
第2実施形態に係る血液浄化システム2においては、第1の液体と第2の液体とは、互いに組成の異なる溶液である。
【0067】
第2実施形態に係る血液浄化装置280は、図7に示すように、基本的には第1実施形態に係る血液浄化装置80(図3参照。)と同様の構成を有するが、透析液ポンプを備えていない点で、第1実施形態に係る血液浄化装置80とは異なる。
【0068】
制御部290は、図7に示すように、4つのポンプ81,83〜85の駆動を制御するポンプ駆動制御部F1と、設定入力部87に入力された設定値に基づいて、各ポンプの流量を調整するポンプ流量調整部F2と、第1ポンプ84又は第2ポンプ85の流量と血液ポンプ81の流量とを連動して制御する第1連動制御部F3と、第1ポンプ84又は第2ポンプ85の流量と廃液ポンプ83の流量とを連動して制御する第2連動制御部F4と、第1ポンプ84が駆動しているか否かに応じて、第2ポンプ85の駆動の可否を決定するポンプ駆動判断部F5とを少なくとも備える。
【0069】
このように、第2実施形態に係る血液浄化装置280は、第1実施形態に係る血液浄化装置80とは血液浄化器の構成及び透析液ポンプを備えていない点で異なるが、第1実施形態に係る血液浄化装置80の場合と同様に、第1ポンプ84及び第2ポンプ85が装置に組み込まれており、制御部290が上記したポンプ駆動判断部F5を有しているため、第1の液体とは別の種類のものを第2の液体として準備し、それぞれ第1回路260及び第2回路270に接続した上で第1ポンプ84及び第2ポンプ85にセットしておきさえすれば、治療の途中で使用する溶液を切り替えたいときに、非常にスムーズな切替えを行うことができる。
【0070】
したがって、第2実施形態に係る血液浄化装置280は、治療の途中で使用する溶液を切り替えたい場合であっても、比較的容易に対応可能な血液浄化装置となる。
【0071】
第2実施形態に係る血液浄化装置280は、血液浄化器の構成及び透析液ポンプを備えていない点以外では、第1実施形態に係る血液浄化装置80と同様の構成を有するため、第1実施形態に係る血液浄化装置80が有する効果のうち該当する効果をそのまま有する。
【0072】
第2実施形態に係る血液浄化システム2によれば、上述の優れた血液浄化装置280を備えているため、異なる2つの補充液又は置換液を必要に応じて切り替えるなどする施行方法を比較的容易に行うことが可能な、優れた血液浄化システムとなる。
【0073】
[第3実施形態]
図8は、第3実施形態に係る血液浄化システム3の構成を示す図である。
図9は、第3実施形態に係る血液浄化装置380の電気的構成を示すブロック図である。
なお、図8及び図9において、図1及び図3と同一の部材については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0074】
第3実施形態に係る血液浄化システム3は、基本的には第1実施形態に係る血液浄化システム1と同様の構成を有するが、一部の回路構成が、第1実施形態に係る血液浄化システム1とは異なる。
【0075】
すなわち、第3実施形態に係る血液浄化システム3は、図8に示すように、血液浄化器10と、第1流入部15に接続される動脈側回路20と、第1流出部16に接続される静脈側回路30と、静脈側回路30に接続される他の回路340と、他の回路340を流れる第3の液体を貯留可能な第3貯留容器342と、第2流入部17に接続される第1透析液回路360と、第1の透析液を貯留可能な第1貯留容器362と、第2流出部18に接続され、第2流出部18からの廃液が通液する廃液回路50と、第1透析液回路360に接続され、第2の透析液が通液する第2透析液回路370と、第2の透析液を貯留可能な第2貯留容器372と、血液浄化装置380とを備える。
【0076】
第3実施形態に係る血液浄化システム3においては、第1の液体としての第1の透析液、第2の液体としての第2の透析液及び第3の液体は、それぞれ異なる種類の溶液である。第1の透析液、第2の透析液及び第3の液体としては、治療目的に応じて種々の溶液を用いることができる。
【0077】
第2透析液回路370の端部は、第1透析液回路360のうち第2流入部17との接続部分からローリングチューブ部364までの位置に接続されている。
【0078】
第3実施形態に係る血液浄化装置380は、図9に示すように、基本的には第1実施形態に係る血液浄化装置80(図3参照。)と同様の構成を有するが、一部のポンプの機能及び構成が、第1実施形態に係る血液浄化装置80とは異なる。
【0079】
すなわち、第3実施形態に係る血液浄化装置380は、5つのポンプとして、動脈側回路20上の血液を血液浄化器10に向けて送るための血液ポンプ81と、他の回路340上の第3の液体を静脈側回路30に向けて送るための他のポンプ382と、廃液回路50上の廃液を送り出すための廃液ポンプ83と、第1透析液回路360上の第1の透析液を血液浄化器10に向けて送るための第1ポンプ84と、第2透析液回路370上の第2の透析液を第1透析液回路360に向けて送るための第2ポンプ85とを備える。
【0080】
他のポンプ382は、いわゆるローラーポンプである。図示による説明は省略するが、他のポンプ382のローラ部が他の回路340のローリングチューブ部344と接触した状態で回転する(ローリングチューブ部344を扱く)ことにより、他の回路340内の第3の液体を所定の方向に送液することができる。
【0081】
制御部390は、図9に示すように、5つのポンプ81,382,83〜85の駆動を制御するポンプ駆動制御部F1と、設定入力部87に入力された設定値に基づいて、各ポンプの流量を調整するポンプ流量調整部F2と、第1ポンプ84又は第2ポンプ85の流量と血液ポンプ81の流量とを連動して制御する第1連動制御部F3と、第1ポンプ84又は第2ポンプ85の流量と廃液ポンプ83の流量とを連動して制御する第2連動制御部F4と、第1ポンプ84が駆動しているか否かに応じて、第2ポンプ85の駆動の可否を決定するポンプ駆動判断部F5とを少なくとも備える。
【0082】
このように、第3実施形態に係る血液浄化装置380は、第1実施形態に係る血液浄化装置80とは一部のポンプの機能及び構成が異なるが、第1実施形態に係る血液浄化装置80の場合と同様に、第1ポンプ84及び第2ポンプ85が装置に組み込まれており、制御部390が上記したポンプ駆動判断部F5を有しているため、第1の透析液とは別の種類のものを第2の透析液として準備し、それぞれ第1透析液回路360及び第2透析液回路370に接続した上で第1ポンプ84及び第2ポンプ85にセットしておきさえすれば、治療の途中で透析液を切り替えたいときに、非常にスムーズな切替えを行うことができる。
【0083】
したがって、第3実施形態に係る血液浄化装置380は、治療の途中で透析液を切り替えたい場合であっても、比較的容易に対応可能な血液浄化装置となる。
【0084】
第3実施形態に係る血液浄化装置380は、一部のポンプの機能及び構成が異なる点以外では、第1実施形態に係る血液浄化装置80と同様の構成を有するため、第1実施形態に係る血液浄化装置80が有する効果のうち該当する効果をそのまま有する。
【0085】
第3実施形態によれば、上述の優れた血液浄化装置380を備えているため、CHDF、CHD等を実施する場合において、透析液の切替えを比較的容易に行うことが可能な優れた血液浄化システムとなる。
【0086】
以上、本発明の血液浄化装置及び血液浄化システムを上記の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0087】
(1)上記第1及び第2実施形態においては、第2回路70,270が静脈側回路30の途中(エアトラップ32)に接続されている場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。第2回路は、第1回路60の端部(静脈側回路30との接続部分)からローリングチューブ部64(第1ポンプ84の配設位置)までのいずれかの位置に接続されていてもよいし、動脈側回路20のいずれかの位置に接続されていてもよい。
【0088】
(2)上記各実施形態においては、血液浄化器として、中空糸膜からなる選択性分離膜を有する血液浄化器を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば平膜(平板状膜を複数積層したもの)やチューブラー膜など、中空糸膜以外の選択性分離膜で構成された血液浄化器においても本発明は適用可能である。
【0089】
(3)上記第2実施形態においては、血液浄化器210の第2流入部217に栓219をすることによって、外部と通液しない構成としている場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、第2流入部に該当する口部が初めから設けられていない血液浄化器を用いてもよい。
【0090】
(4)上記第1実施形態においては、透析液貯留容器42と第1貯留容器62が分かれている場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、透析液貯留容器の内容物と第1貯留容器又は第2貯留容器の内容物が同一であれば、両者を一体化させて用いてもよい。第3実施形態においても同様に、第1貯留容器又は第2貯留容器の内容物と第3貯留容器の内容物が同一であれば、両者を一体化させてもよい。
【0091】
(5)上記実施形態においては、第1貯留容器及び第2貯留容器にそれぞれ貯留された第1の液体及び第2の液体の種類が異なる場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。第1の液体及び第2の液体として、例えば、同じ種類であって異なる濃度のものや、濃度も種類も全く同じものを用いてもよい。
【0092】
(6)上記実施形態においては、貯留容器が空になったこと検知する容器状態検知部(例えば、重量計や超音波センサ等)が血液浄化装置にさらに設けられており、当該容器状態検知部による検知情報に基づいて、空になった貯留容器のポンプの駆動を停止させるように構成されていてもよい。この場合、例えば第1の液体及び第2の液体として濃度も種類も全く同じものを用いたときには、容器状態検知部が第1貯留容器又は第2貯留容器が空になったことを検知すると、当該検知情報に基づいて、空になった貯留容器に対応するポンプ(一方のポンプ)の駆動を停止させる。当該一方のポンプの駆動が停止すると、制御部のポンプ駆動判断機能によって他方のポンプが駆動状態へと移行し、空ではない貯留容器から液体が回路内に送られることとなる。つまり、第1貯留容器が空になったら第2貯留容器に切り替え、第2貯留容器が空になったら第1貯留容器に切り替えるというように、2つの貯留容器を切り替えながら治療を続けることができ、第1貯留容器及び第2貯留容器として大容量のものを使わなくても済むという効果がある。第1の液体及び第2の液体として濃度や種類が異なるものを用いたときであっても同様に、一方の貯留容器が空になったことを容器状態検知部が検知することによって他方の貯留容器に切り替えることができるため、例えば一方の貯留容器に満たされた液体を流し終わった後で他方の貯留容器に満たされた液体を流したいときなどに都合がよい装置となる。
なお、上記した容器状態検知部は、血液浄化装置とは別体として血液浄化システム内に配設されていてもよい。
【0093】
(7)上記第3実施形態においては、回路内の所定位置の圧力を測定する圧力検出部と、圧力検出部の測定情報に基づいて血液浄化器の膜間圧力差(TMP)を算出する膜間圧力差算出部が血液浄化装置に設けられており、算出された膜間圧力差が所定値を超えたときに、第1ポンプ又は第2ポンプの駆動を停止させるように構成されていてもよい。膜間圧力差が所定値を超えるということは、血液浄化器の選択性分離膜がタンパク質等による目詰まりを起こしている可能性があることから、例えば、第1貯留容器又は第2貯留容器のいずれか一方に目詰まり解消効果を奏する液体を予め充填しておけば、膜間圧力差が所定値を超えたときに、そのような目詰まり解消効果を奏する液体を回路内に送ることができ、選択性分離膜の目詰まりを解消することができる。
なお、上記した圧力検出部及び膜間圧力差算出部は、血液浄化装置とは別体として血液浄化システム内に配設されていてもよい。
【0094】
(8)上記実施形態においては、貯留容器からの送液開始時から現在までの経過時間を測定する経過時間測定部と、送液を開始してから送液停止するまでの時間(送液時間)を設定する送液時間設定部とが血液浄化装置に設けられており、測定された経過時間が送液時間を超えたときに、一方のポンプの駆動を停止させるように構成されていてもよい。または、貯留容器からの送液開始時から現在までの送液量(実量)を測定する実量測定部と、送液を開始してから送液停止するまでの送液量(基準量)を設定する基準量設定部とが血液浄化装置に設けられており、測定された実量が基準量を超えたときに、一方のポンプの駆動を停止させるように構成されていてもよい。この場合、経過時間又は送液量に応じて第1貯留容器又は第2貯留容器からの送液を切り替えることができる。
なお、上記した経過時間測定部及び送液時間設定部又は実量測定部及び基準量設定部は、血液浄化装置とは別体として血液浄化システム内に配設されていてもよい。
【0095】
(9)上記実施形態においては、各ポンプの回転数を検出する回転数検出部及び検出されたポンプの回転数が所定の数値範囲(例えば、設定入力部に入力された設定値を含む範囲)内にあるか否かを判定する判定部が血液浄化装置に設けられており、検出された各ポンプの回転数が所定の数値範囲内にはないと判定されたときに、第1ポンプ又は第2ポンプの駆動を停止させるように構成されていてもよい。検出された各ポンプの回転数が所定の数値範囲内にはないと判定されるということは、そのポンプが例えば故障している可能性があることから、この場合、仮に一方のポンプが故障したとしても、故障していない他方のポンプに切り替えることが可能となる。
なお、上記した回転数検出部及び判定部は、血液浄化装置とは別体として血液浄化システム内に配設されていてもよい。
【0096】
(10)上記実施形態においては、回路内の所定位置の圧力を測定する圧力検出部が血液浄化装置に設けられており、測定された回路内圧力が所定値を超えたときに、第1ポンプ又は第2ポンプの駆動を停止させるように構成されていてもよい。回路内圧力が所定値を超えるということは、チューブがキンクしているなど、回路内に不具合が発生している可能性があることから、この場合、仮に一方のポンプが配設された回路に不具合が発生したとしても、不具合が発生していない回路に配設された他方のポンプに切り替えることが可能となる。
なお、上記した圧力検出部は、血液浄化装置とは別体として血液浄化システム内に配設されていてもよい。
【0097】
(11)上記第1実施形態においては、制御部90が、ポンプ駆動制御部F1、ポンプ流量調整部F2、第1及び第2連動制御部F3,F4並びにポンプ駆動判断部F5を備える場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、これらに加えて、例えば、第1ポンプ84及び第2ポンプ85の流量を透析液ポンプ82の流量と連動して制御する第3連動制御部を備えていてもよい。この場合には、透析液ポンプの流量変動に応じて、第1ポンプ及び第2ポンプの流量調整を自動的に行うことが可能となる。
【0098】
(12)上記実施形態においては、ポンプ駆動判断部が、第1ポンプ84が駆動状態である場合には第2ポンプ85を停止状態にし、第1ポンプ84が停止状態である場合には第2ポンプ85を駆動状態にする場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、第1ポンプが駆動状態である場合には第2ポンプを駆動状態にし、第1ポンプが停止状態である場合には第2ポンプを停止状態にするものであり、さらに制御部が、第1ポンプ及び第2ポンプがともに駆動状態である場合には、第1ポンプと第2ポンプの流量を連動して制御してもよい。この場合、第1の液体(第1の透析液)を送液しているときに第2の液体(第2の透析液)も送液することができるため、例えばあるタイミングにおいて2種類の溶液を送りたいという要望があったとしても、本発明の血液浄化装置であれば比較的容易に対応可能である。このときの2種類の溶液の送り方については、2種類の溶液をそれぞれ別のルートから送るものであってもよいし、2種類の溶液を所定の割合で混合させた状態で1つのルートから送るものであってもよい。
【0099】
(13)上記実施形態においては、各ポンプとして、いわゆるローラーポンプを用いた場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばシリンジポンプなど、公知である他の送液手段を用いてもよい。
【0100】
(14)上記実施形態においては、1つの血液浄化器を備える血液浄化システムを例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば二重膜濾過血漿交換法(Double Filtration Plasmapheresis:DFPP)に対応した血液浄化システムのように、選択性分離膜を有する血液浄化器を2つ備える血液浄化システムなど、2つ以上の血液浄化器を備える血液浄化システムについても、本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0101】
1,2,3 血液浄化システム
10,210 血液浄化器
11,211 ハウジング部
12,212 選択性分離膜
13,213 血液流路
14,214 他の流路
15,215 第1流入部
16,216 第1流出部
17,217 第2流入部
18,218 第2流出部
20 動脈側回路
22,32 エアトラップ
24,44,54,64,74,264,274,344,364,374 ローリングチューブ部
30 静脈側回路
40 透析液回路
42 透析液貯留容器
50 廃液回路
60,260 第1回路
62,262,362 第1貯留容器
70,270 第2回路
72,272,372 第2貯留容器
80,280,380 血液浄化装置
81 血液ポンプ
82 透析液ポンプ
83 廃液ポンプ
84 第1ポンプ
85 第2ポンプ
86 電源部
87 設定入力部
88 表示部
89 記憶部
90,290,390 制御部
219 栓
340 他の回路
342 第3貯留容器
360 第1透析液回路
370 第2透析液回路
382 他のポンプ
F1 ポンプ駆動制御部
F2 ポンプ流量調整部
F3 第1連動制御部
F4 第2連動制御部
F5 ポンプ駆動判断部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部が血液流路(13)と他の流路(14)に区画されるとともに、前記血液流路(13)の一端に通じる第1流入部(15)、前記血液流路(13)の他端に通じる第1流出部(16)、前記他の流路(14)に通じる第2流出部(18)を少なくとも有する血液浄化器(10)と、
前記第1流入部(15)に接続される動脈側回路(20)と、
前記第1流出部(16)に接続される静脈側回路(30)と、
前記第2流出部(18)に接続され、前記第2流出部(18)からの廃液が通液する廃液回路(50)と、
前記静脈側回路(30)に接続され、第1の液体が通液する第1回路(60)と、
前記動脈側回路(20)、前記静脈側回路(30)又は前記第1回路(60)に接続され、第2の液体が通液する第2回路(70)とを少なくとも備える血液浄化システムに用いられる血液浄化装置であって、
複数のポンプ及び当該複数のポンプの駆動を制御する制御部(90)を有し、
前記複数のポンプとして、
前記動脈側回路(20)上の血液を前記血液浄化器(10)に向けて送るための血液ポンプ(81)と、
前記廃液回路(50)上の前記廃液を送り出すための廃液ポンプ(83)と、
前記第1回路(60)上の前記第1の液体を前記静脈側回路(30)に向けて送るための第1ポンプ(84)と、
前記第2回路(70)上の前記第2の液体を前記静脈側回路(30)又は前記第1回路(60)に向けて送るための第2ポンプ(85)とを少なくとも有し、
前記制御部(90)は、前記第1ポンプ(84)が駆動しているか否かに応じて、前記第2ポンプ(85)の駆動の可否を決定するポンプ駆動判断部(F5)を有する、血液浄化装置(80)。
【請求項2】
請求項1に記載の血液浄化装置において、
前記ポンプ駆動判断部は、
前記第1ポンプ(84)が駆動状態である場合には前記第2ポンプ(85)を停止状態にし、前記第1ポンプ(84)が停止状態である場合には前記第2ポンプ(85)を駆動状態にする、血液浄化装置(80)。
【請求項3】
請求項1に記載の血液浄化装置において、
前記ポンプ駆動判断部は、
前記第1ポンプが駆動状態である場合には前記第2ポンプを駆動状態にし、前記第1ポンプが停止状態である場合には前記第2ポンプを停止状態にし、
前記制御部はさらに、前記第1ポンプ及び前記第2ポンプがともに駆動状態である場合には、前記第1ポンプと前記第2ポンプの流量を連動して制御する、血液浄化装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の血液浄化装置において、
前記制御部(90)はさらに、前記第1ポンプ(84)及び前記第2ポンプ(85)のうち駆動状態にある少なくとも一方のポンプの流量と前記廃液ポンプ(83)の流量とを連動して制御する、血液浄化装置(80)。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の血液浄化装置において、
前記制御部(90)はさらに、前記第1ポンプ(84)及び前記第2ポンプ(85)のうち駆動状態にある少なくとも一方のポンプの流量と前記血液ポンプ(81)の流量とを連動して制御する、血液浄化装置(80)。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の血液浄化装置において、
各ポンプの流量を設定入力するための設定入力部(87)をさらに有し、
前記制御部(90)はさらに、前記設定入力部(87)に入力された設定値に基づいて、各ポンプの流量を調整する、血液浄化装置(80)。
【請求項7】
内部が血液流路(13)と他の流路(14)に区画されるとともに、前記血液流路(13)の一端に通じる第1流入部(15)、前記血液流路(13)の他端に通じる第1流出部(16)、前記他の流路(14)の一端に通じる第2流入部(17)及び前記他の流路(14)の他端に通じる第2流出部(18)を有する血液浄化器(10)と、
前記第1流入部(15)に接続される動脈側回路(20)と、
前記第1流出部(16)に接続される静脈側回路(30)と、
前記第2流入部(17)に接続される透析液回路(40)と、
前記第2流出部(18)に接続され、前記第2流出部(18)からの廃液が通液する廃液回路(50)と、
前記静脈側回路(30)に接続され、第1の液体が通液する第1回路(60)と、
前記動脈側回路(20)、前記静脈側回路(30)又は前記第1回路(60)に接続され、第2の液体が通液する第2回路(70)と、
請求項1〜6のいずれか一項に記載の血液浄化装置(80)とを備え、
前記血液浄化装置(80)が、前記透析液回路(40)上の透析液を前記血液浄化器(10)に向けて送るための透析液ポンプ(82)をさらに有する、血液浄化システム(1)。
【請求項8】
内部が血液流路(213)と他の流路(214)に区画されるとともに、前記血液流路(213)の一端に通じる第1流入部(215)、前記血液流路(213)の他端に通じる第1流出部(216)、前記他の流路(214)の一端に通じる第2流出部(218)を有する血液浄化器(210)と、
前記第1流入部(215)に接続される動脈側回路(20)と、
前記第1流出部(216)に接続される静脈側回路(30)と、
前記第2流出部(218)に接続され、前記第2流出部(18)からの廃液が通液する廃液回路(50)と、
前記静脈側回路(30)に接続され、第1の液体が通液する第1回路(260)と、
前記動脈側回路(20)、前記静脈側回路(30)又は前記第1回路(260)に接続され、第2の液体が通液する第2回路(270)と、
請求項1〜6のいずれか一項に記載の血液浄化装置(280)とを備える、血液浄化システム(2)。
【請求項9】
内部が血液流路(13)と他の流路(14)に区画されるとともに、前記血液流路(13)の一端に通じる第1流入部(15)、前記血液流路(13)の他端に通じる第1流出部(16)、前記他の流路(14)の一端に通じる第2流入部(17)及び前記他の流路(14)の他端に通じる第2流出部(18)を有する血液浄化器(10)と、
前記第1流入部(15)に接続される動脈側回路(20)と、
前記第1流出部(16)に接続される静脈側回路(30)と、
前記第2流入部(17)に接続される第1透析液回路(360)と、
前記第2流出部(18)に接続され、前記第2流出部(18)からの廃液が通液する廃液回路(50)と、
前記第1透析液回路(360)に接続される第2透析液回路(370)と、
請求項1〜6のいずれか一項に記載の血液浄化装置(380)とを備え、
前記第1透析液回路(360)には、前記第1の液体としての第1の透析液が通液するように構成されており、
前記第2透析液回路(370)には、前記第2の液体としての第2の透析液が通液するように構成されており、
前記第1ポンプ(84)が、前記第1透析液回路(360)上の前記第1の透析液を前記血液浄化器(10)に向けて送るためのポンプであり、
前記第2ポンプ(85)が、前記第2透析液回路(370)上の前記第2の透析液を前記第1透析液回路(360)に向けて送るためのポンプである、血液浄化システム(3)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−52229(P2013−52229A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−174205(P2012−174205)
【出願日】平成24年8月6日(2012.8.6)
【出願人】(000200035)川澄化学工業株式会社 (103)
【Fターム(参考)】