説明

血液測定装置

【課題】アパーチャを通過した血球が検知領域に舞い戻ることを防ぎ、これによって誤測定を防止する。
【解決手段】境界壁に形成されたアパーチャを介して連通する第1及び第2の容器(11、12)と、それぞれ第1の容器(11)と第2の容器(12)に設けられる第1及び第2の電極(41、42)と、前記第1の容器(11)に希釈血液が入れられると共に前記第2の容器(12)に希釈液が入れられた状態において、前記第1及び第2の電極(41、2)間に微小電流を流して血液測定を行う測定手段と、境界壁の周縁に近接する第2の容器(12)側の内壁に沿って希釈液を供給し、旋回流を生じさせる希釈液供給手段と、アパーチャ(14)と対向する第2の容器(12)の壁部から、希釈液を吸引する吸引手段を構成する液吸引部30とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電気抵抗法を用いて血液測定を行う血液測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の血液測定装置は、図5に示すよう構成されていた。第1の容器71と第2の容器72の間に、微細孔により構成されるアパーチャ73が設けられている。第1の容器71には電極74が設けられ、第2の容器72には電極75が設けられている。また、第1の容器71には希釈血液が入れられ、第2の容器72には希釈液が入れられている。
【0003】
上記のような状態の血液測定装置において、アパーチャ73を介し電極74と電極75の間に微小電流を流し、電極74と電極75の間に存在する血球による抵抗変化を電位変化として捕らえ、この電位変化に基づき血液測定(血球数測定)を行うものである。
【0004】
第1の容器71側からアパーチャ73を介し第2の容器72へ流れる希釈血液は、第2の容器72側に入ってから一定程度の距離においてアパーチャ73側へ向かう水流76に乗って電極74と電極75とによる検知領域へ舞い戻る。このため、検知領域には、舞い戻りによる血球が存在し、アパーチャ73を通過する血球のみの抵抗変化を捕らえることができず、誤カウントが生じる虞があった。
【0005】
また、アパーチャ73付近には、液体が流れない止水域が発生するため、アパーチャ73が形成されている検知領域である壁部に気泡が付着し、圧力変化や水流状況の変化によって気泡の付着状況が変化し、測定時のノイズの原因となる問題があった。
【0006】
血球計数測定において、細孔通過直後の渦流形成による再検出誤差を防止する手法として、バックシース技術が知られている(特許文献1の第1頁右欄参照)。ただし、この技術を採用するには装置の構造が複雑となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭61−159134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記のような血液測定装置における現状に鑑みなされたもので、その目的は、アパーチャを通過した血球が検知領域に舞い戻ることがなく、これによって誤測定を防止することができる血液測定装置を提供することである。また、アパーチャが形成されている検知領域である壁部に気泡が付着し難く、測定時のノイズ発生を防ぐことのできる血液測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る血液測定装置は、境界壁に形成されたアパーチャを介して連通する第1及び第2の容器と、それぞれ第1の容器と第2の容器に設けられる第1及び第2の電極と、前記第1の容器に希釈血液が入れられると共に前記第2の容器に希釈液が入れられた状態において、前記第1及び第2の電極間に電流を流して血液測定を行う測定手段と、境界壁の周縁に近接する第2の容器側の内壁に沿って希釈液を供給し、旋回流を生じさせる希釈液供給手段と、アパーチャと対向する第2の容器の壁部から、希釈液を吸引する吸引手段とを具備することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る血液測定装置は、第2の容器が円筒形であって、希釈液の吸引部分が境界壁部分より細径とされていることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る血液測定装置は、第2の容器の所定部から希釈液の吸引部分へ向かって徐々に細径に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る血液測定装置によれば、境界壁の周縁に近接する第2の容器側の内壁に沿って希釈液を供給し、旋回流を生じさせるので、旋回流によって血球が取り囲まれて拡散することがない。また、アパーチャと対向する第2の容器の壁部から、希釈液を吸引するので、旋回流によって希釈血液が旋回中心に集められながら吸引方向へ吸引されてゆき、検知領域へ希釈血液中の血球の舞い戻りを防止し、アパチャー付近には常にきれいな希釈液が流れるため正確な計測を行うことが可能である。また、旋回流によって境界壁の検知領域に気泡が付着し難く、ノイズ発生を防いで正確な測定を行うことができる。
【0013】
本発明に係る血液測定装置によれば、第2の容器は円筒形であるため、供給される希釈液が円筒内の円周壁に沿ってスムーズに周回し、旋回流を適切に生じさせることができる。また、希釈液の吸引部分が境界壁部分より細径とされているので、旋回流により旋回中心に集められた希釈血液が加速されて吸引される。
【0014】
本発明に係る血液測定装置によれば、第2の容器の所定部から希釈液の吸引部分へ向かって徐々に細径に形成されているので、旋回流により旋回中心に集められた希釈血液が加速されて吸引され、正確な計測を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る血液測定装置の実施形態を示す構成図。
【図2】本発明に係る血液測定装置の実施形態の要部における縦断面図。
【図3】図2のA−A断面図。
【図4】本発明に係る血液測定装置の実施形態の要部の変形例を示す縦断面図。
【図5】従来の血液測定装置を説明するための概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して本発明に係る血液測定装置の実施形態を説明する。各図において、同一の構成要素には同一の符号を付して重複する説明を省略する。図1は、血液測定装置における実施形態のブロック図を示す。この血液測定装置は、第1の容器11と第2の容器12を備える。第1の容器11と第2の容器12は、図の横方向を軸とする円筒(真円筒または楕円筒)の形状である。第2の容器12は、左右の概ね中央部分から右端部に向かって徐々に細径とされたテーパ形状に形成されている。
【0017】
第1の容器11と第2の容器12の間には、垂直に境界壁13が設けられている。境界壁13の中央部には、微細孔によるアパーチャ14が形成され、第1の容器11と第2の容器12はアパーチャ14によって連通している。
【0018】
第1の容器11は、希釈血液作成供給部21に接続されている。希釈血液作成供給部21は、サンプル血液を吸引により取り込み、希釈液(生理的食塩水等)により希釈して希釈血液を作成し、第1の容器11にパイプ22を介して供給する。パイプ22には、バルブ23が設けられている。
【0019】
第2の容器12は、バルブ15が設けられたパイプ24を介して希釈液供給部25に接続されている。希釈液供給部25は希釈液を蓄積している。図2と図3に示すように、パイプ24は、第2の容器12の側壁に設けられたフィッティング部27に結合している。フィッティング部27内の流路27aは、境界壁13の周縁に近接する第2の容器12側の内壁に向かって延びている。
【0020】
希釈液供給部25は希釈液に所定の圧力を加えて供給する。供給された希釈液は上記流路27aを介して、境界壁13の周縁に近接する第2の容器12側の内壁に沿って流れ込むので、第2の容器12に希釈液が満たされている状況で旋回流Sを生じさせる。このように、希釈液供給部25とフィッティング部27内の流路27aは、境界壁13の周縁に近接する第2の容器12側の内壁に沿って希釈液を供給し、旋回流を生じさせる希釈液供給手段として機能する。
【0021】
第2の容器12における境界壁13に対向する側の端部には、外側に真っ直ぐに突出するフィッティング部28が設けられ、その内部に排出口28aが形成されている。フィッティング部28は、バルブ31が設けられたパイプ32を介して吸引手段を構成する液吸引部30に接続されている。
【0022】
液吸引部30は、吸引ポンプなどにより構成され、第2の容器12内の液体を吸引する。このため、アパーチャ14から第2の容器12側へ流出した希釈血液中の血球は、前述の通りにして生じた旋回流によって旋回の中心に集められた状態のまま、周囲に拡散することなくまた舞い戻りが生じることなく、液吸引部30へ吸引されることになる。吸引後の液は、液吸引部30に接続された廃液部に貯留される。
【0023】
図4は、フィッティング部28の変形例を示している。第2の容器12の境界壁13と対向する側の端部には、端部の壁に垂直な上方へ突出してフィッティング部28が設けられている。フィッティング部28の突出方向には特に制限がない。
【0024】
第1の容器11は、バルブ36が設けられたパイプ34を介して廃液部35が接続されている。廃液部35は、第1の溶器11内の希釈血液を取り込み希釈血液を貯液するタンクにより構成されている。
【0025】
第1の容器11には第1の電極41が設けられている。第2の容器12には第2の電極42が設けられている。第1の電極41と第2の電極42は、アパーチャ14を挟んで対向している。
【0026】
第1の電極41と第2の電極42は、制御部50に接続されている。制御部50は、文字等の表示やプリントを行う出力部とキーが設けられた操作部とを有する操作出力部51に接続されている。制御部50は、前述の全てのバルブの開閉制御を行うと共に、第1の容器11に希釈血液が入った状態とすると共に第2の容器12に希釈液が入った状態として、第1の電極41及び第2の電極42間に微小電流を流して血液測定を行う測定手段として機能する。
【0027】
制御部50は、第1の容器11からアパーチャ14を介して第2の容器12へと流れ、第1の電極41と第2の電極42との間に存在する希釈血液中の血球による抵抗変化を電位変化として捕らえ、この電位変化に基づき血球計数の測定を行う。そして、測定結果を操作出力部51から出力する。
【0028】
更に、上記測定の際に制御部50は、バルブ22を開放して、希釈血液作成供給部21から希釈血液を供給し、第1の容器11からアパーチャ14を介して第2の容器12へと流れるように制御を行うと共に、バルブ15を開放して、希釈液が希釈液供給部25からフィッティング部27の流路27aを介し境界壁13の周縁に近接する第2の容器12側の内壁に向かって射出し、旋回流を発生させる。
【0029】
旋回流は、アパーチャ14から第2の容器12側へ流出した希釈血液を旋回の中心へ集めるように機能する。このときに、制御部50はバルブ31を開放している。これによって、液吸引部30が第2の容器12の液体を吸引するので、旋回流によって旋回の中心へ集められた希釈血液は、旋回の中心に集められた状態のままフィッティング部28を介し液吸引部30へと引き込まれる。従って、アパーチャ14から第2の容器12側へ流出した希釈血液は、部分的に僅かに湾曲している一条の水流となってアパーチャ14から液吸引部30へ向かう。
【0030】
以上のように本実施形態の血液測定装置による処理が行われるために、検知領域へ血球の舞い戻りを防止することができ、適切な計測を行うことが可能である。また、上記旋回流によって境界壁13の検知領域に気泡が付着し難く、ノイズ発生を防いで正確な測定を行うことができる。
【符号の説明】
【0031】
11 第1の容器
12 第2の容器
13 境界壁
14 アパーチャ
21 希釈血液作成供給部
25 希釈液供給部
30 液吸引部
35 廃液部
41 第1の電極
42 第2の電極
50 制御部
51 操作出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
境界壁に形成されたアパーチャを介して連通する第1及び第2の容器と、
それぞれ第1の容器と第2の容器に設けられる第1及び第2の電極と、
前記第1の容器に希釈血液が入れられると共に前記第2の容器に希釈液が入れられた状態において、前記第1及び第2の電極間に電流を流して血液測定を行う測定手段と、
境界壁の周縁に近接する第2の容器側の内壁に沿って希釈液を供給し、旋回流を生じさせる希釈液供給手段と、
アパーチャと対向する第2の容器の壁部から、希釈液を吸引する吸引手段と
を具備することを特徴とする血液測定装置。
【請求項2】
第2の容器は円筒形であって、希釈液の吸引部分が境界壁部分より細径とされていることを特徴とする請求項1に記載の血液測定装置。
【請求項3】
第2の容器の所定部から希釈液の吸引部分へ向かって徐々に細径に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の血液測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−127680(P2012−127680A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−276908(P2010−276908)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【出願人】(000230962)日本光電工業株式会社 (179)
【Fターム(参考)】