説明

血液測定装置

【課題】血液測定装置の容器を用いて必要な洗浄液を生成し、適切な洗浄を行う。
【解決手段】アパーチャ(23)を介して連通し、測定用の希釈血液が入れられる第1及び第2の容器(21、22)と、前記アパーチャ23を挟んで対向するように設けられる第1及び第2の電極(24、25)と、前記第1の容器(21)に希釈血液が入れられると共に前記第2の容器(22)に希釈液が入れられた状態において、前記第1及び第2の電極(24、25)に電圧を印加して電気分解を行い、アパーチャを隔壁として用いることで、洗浄液を生成し、生成された洗浄液を用いて、少なくとも前記アパーチャ(23)と前記第1及び第2の容器(21、22)との洗浄を行う制御部(30)を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電気抵抗法による血液測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電気抵抗法による血球計数装置は知られており、アパーチャ(小孔)を介して連通し、それぞれに測定用の希釈血液が入れられる第1及び第2の容器を備え、二つの容器それぞれに電極を設けて血球計数の測定を行うものである(特許文献1参照)。
【0003】
上記装置においては、アパーチャと第1及び第2の容器の内部に血液中のタンパク質が付着し、特にアパーチャにおいては、濡れ性が悪くなり、気泡が付着すると、測定の際、流体振動により測定の外乱となって適切な測定結果が得られなくなる。また、いったんアパーチャ付近に気泡が付着すると、水流ではなかなか取り除くことができない。
【0004】
そこで、測定装置の外部からタンパクを分解する塩素系の洗剤を吸引して洗浄を行っていた。しかしながら、塩素系洗剤は空気に触れると分解する性質から使用期限があり管理が煩わしい。しかも、塩素系洗剤について輸入規制を行っている国もあり、測定装置に付帯させるなどした場合には、装置自体が輸入規制されることになる。
【0005】
また、酵素系の洗剤を用いることも行われているが、酵素系の洗剤は、液温度を一定に保持した状態において洗浄する必要があり、時間を要するという問題があった。
【0006】
一般的に血液以外の血液を測定する装置においてもタンパク質等の付着を洗浄する場合に、同様の問題が生じる。
【0007】
また、洗浄液を食塩水の電気分解に基づき作製して、反応容器を洗浄する自動分析装置が知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第2656508号明細書
【特許文献2】特開平11−153604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記のような血液測定装置の現状に鑑みてなされたもので、その目的は、血液測定装置の容器を用いて必要な洗浄液を生成し、適切な洗浄を行うことのできる血液測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る血液測定装置は、アパーチャを介して連通する第1及び第2の容器と、前記アパーチャを挟んで対向するように、それぞれ第1の容器と第2の容器に設けられる第1及び第2の電極と、制御部とを具備し、前記制御部は、前記第1の容器に希釈血液が入れられると共に前記第2の容器に希釈液が入れられた状態において、前記第1及び第2の電極間に電流を流して血液測定を行い、前記第1及び第2の容器に血液の希釈液が入れられた状態において、前記第1及び第2の電極に電圧を印加して電気分解を行い、アパーチャを隔壁として用いることで、洗浄液を生成すると共に、生成された洗浄液を用いて、少なくとも前記アパーチャと前記第1及び第2の容器との洗浄を行うことを特徴とする。
【0011】
本発明に係る血液測定装置は、更に、洗浄指示を行う入力手段を備え、制御部は、洗浄指示を受けると、指定濃度の洗浄液を生成及び該洗浄液を用いた洗浄を行うことを特徴とする。
【0012】
本発明に係る血液測定装置では、制御部は、洗浄が必要なときを検出し、洗浄液の生成及び該洗浄液を用いた洗浄を行うことを特徴とする。
【0013】
本発明に係る血液測定装置では、制御部は、所定時刻に洗浄液の生成及び該洗浄液を用いた洗浄を行うことを特徴とする。
【0014】
本発明に係る血液測定装置では、制御部は、前記第1の容器と第2の容器とのいずれかに生成された洗浄液を用いた洗浄を行うことを特徴とする。
【0015】
本発明に係る血液測定装置では、印加電圧、印加時間又は極性の少なくとも一つを任意に設定できることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る血液測定装置によれば、希釈血液が入れられる第1及び第2の容器や電極を用いて洗浄液を生成するので、洗浄液を作製する容器や構成を別途設ける必要がなく、小型化できると共にコストの低減を図ることができる。また、電気分解の際には、アパーチャがイオンを通過させるが液体の移動を妨げる作用を有するので、効果なイオン通過などの隔壁を別途設ける必要がなく、洗浄に必要なpHの値を有する洗浄液を得ることができる。
【0017】
本発明に係る血液測定装置によれば、洗浄の指示を行う入力手段による洗浄の指示を受けると、洗浄液の生成及び該洗浄液を用いた洗浄を行うので、所望のときに洗浄を行うことができ便利である。また、本発明に係る血液測定装置によれば、洗浄が必要なときを検出し、洗浄液の生成及び該洗浄液を用いた洗浄を行うので、自動的に必要な時期に洗浄が行われて便利である。
【0018】
本発明に係る血液測定装置によれば、所定時刻に洗浄液の生成及び該洗浄液を用いた洗浄を行うので、夜間などの測定が行われない時刻に洗浄がなされて便利である。
【0019】
本発明に係る血液測定装置によれば、第1の容器と第2の容器とのいずれかに生成された洗浄液を用いた洗浄を行うので、塩素系の洗浄液またはアルカリ性の洗浄液とにより適切に洗浄が行われる。
【0020】
本発明に係る血液測定装置では、制御部は、印加電圧、印加時間又は極性の少なくとも一つを任意に設定できるので、洗浄液の濃度を変えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る血液測定装置の実施形態のブロック図。
【図2】本発明に係る血液測定装置の動作を説明するためのフローチャート。
【図3】本発明に係る血液測定装置の動作を説明するためのフローチャート。
【図4】本発明に係る血液測定装置の動作を説明するための工程図。
【図5】本発明に係る血液測定装置の動作を説明するためのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下添付図面を参照して、本発明に係る血液測定装置の実施形態を説明する。各図において同一の構成要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。図1には、本発明に係る血液測定装置の実施形態のブロック図が示されている。この装置は、電気抵抗法により血液の血球数を測定する。
【0023】
血液測定装置は、希釈液槽11、希釈血液作製部12、第1の容器21と第2の容器22から構成される容器20、廃液槽13、空気源14、制御部30などを構成要素としている。
【0024】
希釈液槽11は、供給路41を介して第1の容器21へ希釈液(生理的食塩水)を供給し、供給路42を介して第1の容器22へ希釈液を供給する。このときバルブ41a、42aは、制御部30により開閉制御される。
【0025】
希釈血液作製部12は、制御部30の制御によって希釈血液である希釈血液を作製するもので、検体である血液をキャピラリーなどにより外部から供給され、流路43を介して希釈液を希釈液槽11から取り込み、所定濃度の希釈血液を作製する。
【0026】
希釈血液作製部12は、制御部30の制御によって、希釈血液を流路44を介して第1の容器21へ供給する。
【0027】
第1の容器21と第2の容器22との間は、アパーチャ23により連通しており、アパーチャ23を介して第1の電極24と第2の電極25が対向して設けられている。第1の電極24と第2の電極25は、制御部30に接続されている。
【0028】
第1の容器21と廃液槽13との間は流路26により結合され、第2の容器22と廃液槽13との間は流路27により結合されている。制御部30は、バルブ26a、27aを制御することにより第1の容器21と第2の容器22との液体を廃液槽13へ排出させる。
【0029】
空気源14は、パイプ15を介して第1の容器21と接続され、また、パイプ16を介して第2の容器22と接続されている。制御部30は、空気源14を制御してパイプ15を介して第1の容器21との間において排気と吸気を行い、また、パイプ16を介して第2の容器22との間において排気と吸気を行う。
【0030】
制御部30には、各種のキーにより構成される操作部31とLEDなどにより構成される表示部32が接続されている。制御部30は、上記の制御を行う他、血球測定、洗浄液生成、洗浄処理の制御行う。
【0031】
制御部30は、第1の容器21に希釈血液が入れられ、第2の容器22に希釈液が入れられた状態において、第1の電極24と第2の電極25の間に微小電流を流して血液測定を行うものである。即ち、第1の電極24と第2の電極25の間に微小電流を流すことにより、アパーチャ23の間における血球の存在により変化する抵抗値を電圧として制御部30が検出し、検出された電圧に応じて血球のカウントを行う。
【0032】
制御部30は、第1の容器21及び第2の容器22に血液の希釈液が入れられた状態において、第1の電極24及び第2の電極25に電圧を印加(電圧および極性は任意に設定可能)して電気分解を行い、洗浄液を生成するものである。希釈液は生理的食塩水であるため、第2の電極25の陽極側には洗浄殺菌効果のある酸性水(次亜塩素水)が生成され、第1の電極24の陰極側には殺菌効果のあるアルカリ水が生成される。この洗浄液の生成過程において、アパーチャ23は、イオンは通過させるが液体の移動を阻止する隔壁として機能する。よって、イオン通過膜などの特殊膜を用いることなく、濃度の高い酸性水及びアルカリ水を生成することが可能である。具体的には、20Vで約1mAの電圧電流下において通電した結果、陽極室にはpH2の強酸性水が生成され、陰極室にはpH12の強アルカリ水が生成された。
【0033】
前述したように血液測定装置を操作する者が印加電圧、印加時間および極性の少なくとも一つを設定してもよいし、印加時間の異なる「通常洗浄モード(弱アルカリ水、弱酸性水による洗浄)」と「強力洗浄モード(強アルカリ水、強酸性水による洗浄)」を用意し、選択するようにしてもよい。
【0034】
制御部30は、上記のように生成された洗浄液を用いて、少なくともアパーチャ23と第1の容器21及び第2の容器22との洗浄を行うものである。
【0035】
前述の操作部31には、測定スタートスイッチと、洗浄の指示を行う洗浄開始スイッチが備えられている。洗浄開始スイッチは、洗浄の指示を行う入力手段である。制御部30は、洗浄開始スイッチによる洗浄の指示を受けると、前述のようにして生成された洗浄液を用いて洗浄を行うものである。また、制御部30は、洗浄が必要なときを検出し、前述のようにして生成された洗浄液を用いて洗浄を行うものである。
【0036】
以上の通りに構成された血液測定装置においては、制御部30が図2のフローチャートに対応するプログラムにより測定処理を行い、また、図3のフローチャートに基づき洗浄液生成及び洗浄の動作を行うので、この動作を説明する。
【0037】
測定スタートスイッチがオン操作されると、制御部30は、第1の電極24と第2の電極25の間に微小電流を流して血液測定を行う(S11)。測定結果は、表示部32に表示するなどの出力が行われる。測定スタートスイッチがオフ操作されると、測定が終了する。
【0038】
測定スタートスイッチがオフ操作されると、測定回数を1増加させて、この値をレジスタに保持し(S21)、所定時刻となったかを検出する(S22)。この所定時刻は、通常、測定を行わない夜間の時刻などと希望の時刻に設定することができる。ステップS22においてNOと判定すると終了となるが、YESと判定すると測定回数が所定回数nより大であるか検出する(S23)。所定回数nは、測定結果に悪影響が生じる程度にタンパク質等が容器20内に付着すると予測される回数とすることができる。
【0039】
ステップS23において測定回数が所定回数n以下であることが検出されると、終了となる。測定回数が所定回数nより大である場合、レジスタに保持していた測定回数を0として(S24)、ステップS25へ進む。洗浄開始スイッチがオンとなされた場合にも、ステップS25へ進み、制御部30は洗浄液生成及び生成された洗浄液を用いた洗浄を行う。
【0040】
ステップ25において、制御部30は、バルブ41a、42aを制御して希釈液槽11から希釈液を第1の容器21及び第2の容器22へ入れて、第1の電極24及び第2の電極25に電圧を印加して電気分解を行い、洗浄液を生成する(S25)。設定時間にわたって電圧の印加がなされたかを検出し(S26)、所要濃度の洗浄液生成を行う。
【0041】
ステップS26において設定時間の経過を検出すると、第1の電極24及び第2の電極25への電圧印加を終了し、第1の容器21及び第2の容器22のいずれかの洗浄液を残すようにバルブ26a、27bの制御を行う。酸性水による洗浄とアルカリ水による洗浄を行う場合には、ステップS29の終了の後にステップS25へ戻り洗浄液を生成して、1回目と異なる洗浄液を残す。
【0042】
ステップS27に続いてステップS28において洗浄を実行する(S28)。例えば、図4(a)に示すように、第1の電極24を陰極とし、第2の電極25を陽極として洗浄液を生成した場合には、第1の容器21にアルカリ水が生成され、第2の容器22に酸性水が生成される。そこで、第1の容器21に生成されたアルカリ水を残す場合、バルブ26aを閉じた状態でバルブ27aを開放して第2の容器22の酸性水を排除する。次に、図4(b)に示すようにバルブ26a、27aを閉じた状態で、空気源14を制御してパイプ16から吸気を行い、パイプ15に排気を行って、第1の容器21に生成されたアルカリ水をアパーチャ23を介して第2の容器22へ移動させる。一定時間後に更に、空気源14を制御してパイプ15から吸気を行い、パイプ16に排気を行うことで、上記とは逆方向にアルカリ水を移動させる。上記アルカリ水の移動を何度か繰り返して、洗浄殺菌完了とする。
【0043】
また、第2の容器22に生成された酸性水を残す場合、図4(a)の状態からバルブ27aを閉じた状態でバルブ26aを開放して第1の容器21のアルカリ水を排除する。次に、図4(c)に示すようにバルブ26a、27aを閉じた状態で、空気源14を制御してパイプ15から吸気を行い、パイプ16に排気を行って、アパーチャ23を介して酸性水を第1の容器21へ移動させる。一定時間後に更に、空気源14を制御してパイプ16から吸気を行い、パイプ15に排気を行うことで、上記とは逆方向に酸性水を移動させる。上記酸性水の移動を何度か繰り返して、殺菌完了とする。
【0044】
ステップS28の洗浄や殺菌処理が終了すると、バルブ26a、27aを開放して洗浄液を廃液槽13へ廃棄した後、バルブ26a、27aを閉じてバルブ41a、42aを開放して希釈液槽11から第1の容器21及び第2の容器22に希釈液を入れて図4(d)に示す状態として終了する。
【0045】
図5は、制御部30が、測定回数に基づき洗浄が必要なときを検出する以外に、測定結果を用いて洗浄が必要なときを検出する一例をフローチャートにより示したものである。即ち、血液の測定終了(或いは測定中)において、測定した電圧をサンプリングして(S31)、所定時間内の変動の最大値と最小値の幅である変動幅を求め(S32)、変動幅が所定V以上であるか検出する(S33)。変動幅が所定Vより小さければ終了となり、変動幅が所定V以上であれば、第1の容器21及び第2の容器22の希釈血液を廃棄し(S34)、図3のステップS25へ進む。これ以降の処理は既述の通りである。
【0046】
以上のように、本実施形態によって、高価なイオン通過膜などを用いることなく、血液測定装置の容器を用いて必要な洗浄液を生成し、適切な洗浄を行うことができる。
【符号の説明】
【0047】
11 希釈液槽
12 希釈血液作製部
13 廃液槽
14 空気源
15、16 パイプ
20 容器
21 第1の容器
22 第2の容器
23 アパーチャ
24 第1の電極
25 第2の電極
30 制御部
31 操作部
32 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アパーチャを介して連通する第1及び第2の容器と、
前記アパーチャを挟んで対向するように、それぞれ第1の容器と第2の容器に設けられる第1及び第2の電極と、
制御部と、
を具備し、
前記制御部は、
前記第1の容器に希釈血液が入れられると共に前記第2の容器に希釈液が入れられた状態において、前記第1及び第2の電極間に電流を流して血液測定を行い、
前記第1及び第2の容器に血液の希釈液が入れられた状態において、前記第1及び第2の電極に電圧を印加して電気分解を行い、アパーチャを隔壁として用いることで、洗浄液を生成すると共に、生成された洗浄液を用いて、少なくとも前記アパーチャと前記第1及び第2の容器との洗浄を行うことを特徴とする血液測定装置。
【請求項2】
更に、洗浄指示を行う入力手段を備え、
制御部は、洗浄指示を受けると、洗浄液の生成及び該洗浄液を用いた洗浄を行うことを特徴とする請求項1に記載の血液測定装置。
【請求項3】
制御部は、洗浄が必要なときを検出し、洗浄液の生成及び該洗浄液を用いた洗浄を行うことを特徴とする請求項2に記載の血液測定装置。
【請求項4】
制御部は、所定時刻に洗浄液の生成及び該洗浄液を用いた洗浄を行うことを特徴とする請求項2に記載の血液測定装置。
【請求項5】
制御部は、前記第1の容器と第2の容器とのいずれかに生成された洗浄液を用いた洗浄を行うことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の血液測定装置。
【請求項6】
制御部は、印加電圧、印加時間又は極性の少なくとも一つを任意に設定できることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の血液測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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