説明

血液由来インター−アルファ−阻害タンパク質の調製及び組成物。

本発明は概ね、血液からインター−アルファ−阻害タンパク質(IαIp)を精製する方法及びその組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、2008年5月28日付けで出願された、米国仮特許出願第61/130269号の優先権を主張し、その全ての内容は参照により本明細書に取り込まれている。
【0002】
(連邦支援研究によってなされた発明に関する権利の陳述)
本研究は、国立衛生研究所/国立総合医科学研究所(National Institute of Health/National Institute of General Medical Sciences)の助成、認可番号2R44GM65667−02及びIR43GM079071−01A1によって支援されている。政府はこの発明にある程度の権利を有している。
【背景技術】
【0003】
敗血症及び全身性炎症反応症候群(SIRS)の両者は、感染性因子(例えば、炭疽菌のような細菌毒素)への曝露によって、或いは損傷又は外傷に由来する重篤な生化学的な反応を示す。全身性の反応は敗血性ショックを誘発し、これは血圧の急落、心血管虚脱、及び/又は多臓器機能不全を特徴としている。50年以上前に抗生物質が導入されたのにも関わらず、敗血性ショックであると診断された対象の死亡率は30〜50%であって、乳癌、結腸癌、又は前立腺癌のそれより高い。1年当たり米国においておよそ800,000の敗血症の症例があり、17億ドルの費用が掛かっていて、世界のその他の地域においても同じ数である。敗血症及びSIRSは、抗生物質耐性及び増大する生物学的脅威によって世界中で増大している。世界的な流行病(例えば、鳥インフルエンザ)又はバイオテロリズムの潜在的な可能性を考えると、「危険性がある」集団は実質的により多い。バイオテロリズムにおいて、又は戦場に曝されると死亡率は更に高くなると思われる。迅速且つ確実に敗血症、SIRS、及び敗血性ショックを治療することは従来の薬物治療を用いては困難である。
【0004】
インター−アルファ−阻害タンパク質(IαIp)ファミリーは、敗血症、感染症、損傷、及び外傷を伴う重篤な全身性炎症に対する体の応答を調節する血漿に関連したセリンプロテアーゼ阻害剤の一群である。インター−アルファ−阻害タンパク質(IαIp)は、敗血症に罹っている;炭疽菌、エボラ又はデングウィルスに感染している;又は毒性化学物質又はイオン化照射に曝露して肺損傷を患っている試験動物の生存及び症状を改善するということが示されている。IαIpは、血液から単離された大きいタンパク質である。敗血症及びSIRSの治療において、インター−アルファ−阻害タンパク質の治療有用性により、IαIpを精製或いは調製する方法が緊急に必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以下に記載するように、本発明は、インター−アルファ−阻害タンパク質(IαIp)を精製する方法及び、敗血症、急性炎症性疾患、重篤なショック、敗血性ショック、関節リウマチ、癌、癌転移、感染症、及び早期陣痛のような疾患を包含する疾患又はそれらの症状を治療するため;又は敗血症、急性炎症性疾患、重篤なショック、敗血性ショック、関節リウマチ、癌、癌転移、感染症、及び早期陣痛に関わる死亡の危険性を減少するための使用に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様では、本発明は、インター−アルファ−阻害タンパク質(IαIp)を精製する方法を提供し、その方法は、IαIpタンパク質を約4.0又はそれ以下のpH(例えば、3、7、3.5、3.4、3.3、3.1、3.0、2.9、2.0)の条件に曝す工程を包含している。
【0007】
一態様では、本発明は、IαIpタンパク質を約4.0又はそれ以下のpHの条件に曝す工程を包含している方法に従って精製したIαIpタンパク質を含有してなる、組成物を提供する。
【0008】
別の態様では、本発明は、IαIpタンパク質を約4.0又はそれ以下のpHの条件に曝す工程を包含している方法に従って精製したIαIpタンパク質の有効量及び薬学的に許容される賦形剤を含有している、医薬組成物を提供する。
【0009】
更に別の態様では、本発明は、IαIpタンパク質を約4.0又はそれ以下のpHの条件に曝す工程を包含している方法に従って精製したIαIpタンパク質を含有している組成物を対象に投与することを含有してなる、対象における疾患又は疾患の症状を治療又は予防する方法を提供する。
【0010】
更にまた別の態様では、pHが約4.0又はそれ以下の少なくとも1つの緩衝溶液及びキットを使用するための使用説明書を有する、IαIpタンパク質を精製するためのキットを提供する。
一実施態様では、キットは、pHが約4.0又はそれ以下の洗浄緩衝液である少なくとも一つの緩衝溶液を有している。
別の実施態様では、キットは、pHが約4.0又はそれ以下の洗浄緩衝液である少なくとも二つの緩衝溶液を有しているものである。
ある特定の実施態様では、第1洗浄緩衝液が約4.0のpHを有し、そして第2洗浄緩衝液が約3.3のpHを有している。
別の特定な実施態様では、第1洗浄緩衝液が約4.0のpHを有し、そして第2洗浄緩衝液が約2.9のpHを有している。
【0011】
更なる態様では、本発明は、IαIpタンパク質を約4.0又はそれ以下のpHの条件に曝す工程を包含している方法に従って精製したIαIpタンパク質を含有している組成物を有している、治療的使用のためのキットを提供する。
【0012】
更なる態様では、本発明は、IαIpタンパク質を約4.0又はそれ以下のpHの条件に曝す工程を包含している方法に従って精製したIαIpタンパク質を含有している組成物を有している、分析的使用のためのキットを提供する。
【0013】
関連している態様では、本発明は、インター−アルファ−阻害タンパク質(IαIpタンパク質)を精製する方法を提供し、その方法は:血液、血液の血漿画分、又は中間血漿画分をクロマトグラフィーのカラム上に載せること;カラムを約4.0又はそれ以下の洗浄緩衝液にさらすことを含んでいる。
【0014】
更に別の関連している態様では、本発明は、IαIpタンパク質を約4.0又はそれ以下のpHの条件に曝して、そしてこのIαIpタンパク質が基準品と比較すると競合的酵素免疫測定法(ELISA)で増大した結合を達成する、工程を包含している方法によって作った、精製したインター−アルファ−阻害タンパク質(IαIpタンパク質)を提供する。
一実施態様では、IαIpタンパク質の結合は、基準品(例えば、低いpHで処理されていないIαIpタンパク質)と比較すると、1、1.5、2、3、4、5、又は10倍を越えるまでに増大されている。
【0015】
上記の態様の何れか又は本明細書で詳細に記載されている別の発明の何れかの多様な実施態様では、方法は、IαIpタンパク質を約3.6又はそれ以下のpH条件に曝す工程を包含している。
多様な実施態様では、方法は、IαIpタンパク質を約3.3又はそれ以下のpH条件に曝す工程を包含している。
多様な実施態様では、方法は、IαIpタンパク質を約3.3〜約3.1のpH条件に曝す工程を包含している。
多様な実施態様では、方法は、IαIpタンパク質を約3.1〜約2.9のpH条件に曝す工程を包含している。
【0016】
上記の態様の何れか又は本明細書で詳細に記載されている別の発明の何れかの多様な実施態様では、方法は、クロマトグラフィー工程又は固相抽出工程を包含している。
多様な実施態様では、クロマトグラフィー工程は、液体クロマトグラフィー、カラムクロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー、又はこれらの組み合わせを含んでいる。
多様な実施態様では、クロマトグラフィーは、モノリシック担体又は粒子ベース担体の使用を包含している。
多様な実施態様では、モノリシック担体又は粒子担体は、固定化陰イオンリガンドを包含している。
多様な実施態様では、固定化陰イオンリガンドは、ジエチルアミノエタン(DEAE)又は4級アミン(Q)である。
【0017】
上記の態様の何れか又は本明細書で詳細に記載されている別の発明の何れかの多様な実施態様では、方法は、少なくとも1つの緩衝液洗浄工程を包含していて、少なくとも1つの緩衝液洗浄工程の洗浄緩衝液は約4.0又はそれ以下のpHを有している。
多様な実施態様では、方法は、少なくとも1つの緩衝液洗浄工程を包含していて、少なくとも1つの緩衝液洗浄工程の洗浄緩衝液は約3.6又はそれ以下のpHを有している。
多様な実施態様では、方法は、少なくとも1つの緩衝液洗浄工程を包含していて、少なくとも1つの緩衝液洗浄工程の洗浄緩衝液は約3.3又はそれ以下のpHを有している。
多様な実施態様では、方法は、少なくとも1つの緩衝液洗浄工程を包含していて、少なくとも1つの緩衝液洗浄工程の洗浄緩衝液は約3.1又はそれ以下のpHを有している。
多様な実施態様では、方法は、少なくとも1つの緩衝液洗浄工程を包含していて、少なくとも1つの緩衝液洗浄工程の洗浄緩衝液は約3.1〜約2.9のpHを有している。
多様な実施態様では、インター−アルファ−阻害タンパク質(IαIpタンパク質)がカラムと結合する。
多様な実施態様では、インター−アルファ−阻害タンパク質(IαIpタンパク質)が単離される。
【0018】
上記の態様の何れか又は本明細書で詳細に記載されている別の発明の何れかの多様な実施態様では、方法は、IαIpタンパク質を約250mMのNaCL又はそれ以上(例えば、260、270、280、290mMのNaCl)の塩の濃度に曝す工程を包含している。
本明細書で詳細に記載されている上記の態様の何れかの多様な実施態様では、方法は、洗浄緩衝液が、約250mMのNaCL又はそれ以上(例えば、260、270、280、290mMのNaCl)の塩の濃度を有している、少なくとも1つの緩衝液洗浄工程を包含している。
【0019】
上記の態様の何れか又は本明細書で詳細に記載されている別の発明の何れかの多様な実施態様では、IαIpタンパク質は血液から精製される。
多様な実施態様では、IαIpタンパク質は血漿又は血漿画分から精製される。
多様な実施態様では、血漿は脱クリオ血漿(cryo-poor plasma)であるか、又は血漿画分は中間血漿画分である。
多様な実施態様では、中間血漿画分はIαIp含有画分である。
多様な実施態様では、血液、血漿画分、又は中間血漿画分は、ヒト、霊長類、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ネコ、イヌのもの又はそれらの組み合わせのものである。
【0020】
上記の態様の何れか又は本明細書で詳細に記載されている別の発明の何れかの多様な実施態様では、IαIpタンパク質は約60〜約280kDaの見かけ上の分子量を有している。
上記の態様の何れか又は本明細書で詳細に記載されている別の発明の何れかの多様な実施態様では、IαIpタンパク質又は組成物は、約85%〜約100%純粋な純度範囲を有している。
上記の態様の何れか又は本明細書で詳細に記載されている別の発明の何れかの多様な実施態様では、IαIpタンパク質又は組成物は、約85%〜約100%にわたる収率を有している。
ある実施態様では、IαIpタンパク質又は組成物を、分析に使用するために(例えば、未知IαIp濃度の試料中のIαIpを定量するために)用いることができる。
ある実施態様では、IαIpタンパク質又は組成物は生物活性を有している。
多様な実施態様では、生物活性がサイトカイン阻害活性、ケモカイン阻害活性、又はセリンプロテアーゼ阻害活性である。
多様な実施態様では、方法は、クロマトグラフィー工程の前後何れかに、ウィルス不活性化工程又はナノろ過工程を包含している。
【0021】
上記の態様の何れか又は本明細書で詳細に記載されている別の発明の何れかの多様な実施態様では、組成物又は医薬組成物はそれを必要としている対象の治療に向けられている。
多様な実施態様では、対象はこの組成物を用いて治療が必要であると判定される。
多様な実施態様では、対象は、急性炎症性疾患、敗血症、重篤なショック、敗血性ショック、関節リウマチ、癌、癌転移、損傷/外傷、感染症、又は早期陣痛について治療する必要があると判定される。
上記態様の何れかの多様な実施態様では、それを必要としている対象は、ヒト、霊長類、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ネコ、又はネコである。
【0022】
本発明は、血漿からインター−アルファ−阻害タンパク質(IαIp)を調製又は精製する方法を提供する。本発明のその他の特徴及び長所は、詳細な説明から、そして特許請求の範囲から明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1A】図1A〜1Bは、単一クロマトグラフィー工程を用いてヒト血漿からIαIpを精製するスキームを図示している。図1Aは、低pH洗浄工程を用いてヒト血漿からIαIpを精製するスキームを図示している。
【図1B】図1Bは、塩緩衝液洗浄工程及び低pH洗浄工程を用いてヒト血漿からIαIpを精製するスキームを図示している。
【図2】図2A〜2Cは、低pH洗浄工程を用いるDEAEクロマトグラフィーで血漿(画分D及び画分C)からIαIpタンパク質の精製を示す。 図2Aは、洗浄緩衝液(25mMのトリス、200mMのNaCl、pH7.8)による1回の洗浄工程及び溶出緩衝液(100mMのトリス、1000mMのNaCl、pH7.6)による溶出でのDEAEクロマトグラフィー(モノリシック担体、流速:5mL/分)によって分離した血漿(25mMのトリス、200mMのNaCl、pH7.8に1:100で希釈したもの、1mL)のUVトレースを示す。 図2Bは、低pH洗浄緩衝液(150mMの酢酸、pH4.0)を用いる1回の洗浄工程及び溶出緩衝液(100mMのトリス、1000mMのNaCl、pH7.6)を用いる溶出でのDEAEクロマトグラフィー(モノリシック担体、流速:5mL/分)によって分離した血漿(25mMのトリス、200mMのNaCl、pH7.8に1:100で希釈したもの、1mL)のUVトレースを示す。 図2Cは、低pH洗浄緩衝液(150mMの酢酸、pH3.3)を用いる1回の洗浄工程及び溶出緩衝液(100mMのトリス、1000mMのNaCl、pH7.6)による溶出でのDEAEクロマトグラフィー(モノリシック担体、流速:5mL/分)によって分離した血漿(25mMのトリス、200mMのNaCl、pH7.8に1:100で希釈したもの、1mL)のUVトレースを示す。
【図3】図3は、2つの低pH洗浄緩衝液(洗浄緩衝液#1:150mMの酢酸、pH4.0;洗浄緩衝液#2:200mMの酢酸、pH3.3)を用いる2回の洗浄工程及び100mMのトリス(+100mMのNaCl、pH7.6)による溶出でのDEAEクロマトグラフィー(モノリシック担体)によって分離した脱クリオ血漿(25mMのトリス、200mMのNaCl、pH7.8に1:100で希釈したもの、1mL)のUVトレースを示す。
【図4A−B】図4A〜4Dは、単回の低pH(pH3.3)洗浄工程又は2回の低pH(pH4.0及び3.3)洗浄工程を用いるDEAEクロマトグラフィーによる、中間血漿の分画(画分D及び画分C)を示す。 図4Aは、低pH洗浄緩衝液(洗浄緩衝液#1:150mMの酢酸、pH4.0)を用いる1回の洗浄工程及び溶出緩衝液(100mMのトリス、1000mMのNaCl、pH7.6)による溶出でのDEAEクロマトグラフィー(モノリシック担体、流速:5mL/分)によって分離した中間血漿(25mMのトリス、200mMのNaCl、pH7.8に1:200で希釈した画分D、1mL)のUVトレースを示す。 図4Bは、低pH洗浄緩衝液(洗浄緩衝液#1:150mMの酢酸、pH4.0)を用いる1回の洗浄工程及び溶出緩衝液(100mMのトリス、1000mMのNaCl、pH7.6)による溶出でのDEAEクロマトグラフィー(モノリシック担体1mL、流速:5mL/分)によって分離した中間血漿画分(25mMのトリス、200mMのNaCl、pH7.8)に1:200で希釈した画分C、1mL)のUVトレースを示す。
【図4C−D】図4Cは、2つの低pH洗浄緩衝液(洗浄緩衝液#1:150mMの酢酸、pH4.0;洗浄緩衝液#2:200mMの酢酸、pH3.3)を用いる2回の洗浄工程及び溶出緩衝液(100mMのトリス、1000mMのNaCl、pH7.6)による溶出でのDEAEクロマトグラフィー(モノリシック担体1mL、流速:5mL/分)によって分離した中間血漿(25mMのトリス、200mMのNaCl、pH7.8に1:200で希釈した画分D、1mL)のUVトレースを示す。 図4Dは、2つの低pH洗浄緩衝液(洗浄緩衝液#1:150mMの酢酸、pH4.0;洗浄緩衝液#2:200mMの酢酸、pH3.3)を用いる2回の洗浄工程及び溶出緩衝液(100mMのトリス、1000mMのNaCl、pH7.6)による溶出でのDEAEクロマトグラフィー(モノリシック担体1mL、流速:5mL/分)によって分離した中間血漿画分(25mMのトリス、200mMのNaCl、pH7.8に1:200で希釈した画分C、1mL)のUVトレースを示す。
【図5】図5は、DEAEモノリシックカラムクロマトグラフィーによるIαIpタンパク質の精製をウェスタンブロットで分析して示す。中間血漿画分(画分D及び画分C)由来の2つのクロマトグラフ分離物の分析を示している。それぞれのクロマトグラフ分離物について、出発材料(SM)、洗浄緩衝液#1画分(W#1)、洗浄緩衝液#2画分(W#2)、及び溶出液(E)のレーン毎に等量を負荷して、SDS−PAGE(6%、非変性)で分離した。脱クリオ血漿のクロマトグラフ分離物由来の溶出液(E)を比較のために示している。SDS−PAGEで分離したタンパク質をニトロセルロース膜へ移して、1次抗体として抗ヒトIαIp(MAb69.26)で精査した。
【図6A−B】図6A〜6Fは、2つの低pH洗浄工程(pH4.0及び3.3)を用いるDEAEクロマトグラフィーによる脱クリオ血漿又は中間血漿(画分D及び画分C)からIαIpタンパク質の精製が拡張可能であるということを示す。 図6Aは、2つの低pH洗浄緩衝液(洗浄緩衝液#1:150mMの酢酸、pH4.0;洗浄緩衝液#2:200mMの酢酸、pH3.3)を用いる2回の洗浄工程及び溶出緩衝液(100mMのトリス、1000mMのNaCl、pH7.6)による溶出でのDEAEクロマトグラフィー(モノリシック担体8mL、流速:40mL/分)によって分離した脱クリオ血漿(出発材料:25mMのトリス、200mMのNaCl、pH7.8に1:10で希釈した画分C、25mL)のUVトレースを示す。 図6Bは、SDS−PAGE(4〜20%の濃度勾配)で分析したDEAEモノリシッククロマトグラフィーによる脱クリオ血漿の分離物由来の画分(出発材料(SM)、洗浄緩衝液#1(W#1)、洗浄緩衝液#2(W#2)、及び溶出液(EL))を示す。
【図6C−D】図6Cは、2つの低pH洗浄緩衝液(洗浄緩衝液#1:150mMの酢酸、pH4.0;洗浄緩衝液#2:200mMの酢酸、pH3.3)を用いる2回の洗浄工程及び溶出緩衝液(100mMのトリス、1000mMのNaCl、pH7.6)による溶出でのDEAEクロマトグラフィー(モノリシック担体8mL、流速:40mL/分)によって分離した中間血漿(出発材料:25mMのトリス、200mMのNaCl、pH7.8に1:125で希釈した画分D、2mL)のUVトレースを示す。 図6Dは、SDS−PAGE(4〜20%の濃度勾配)で分析したDEAEモノリシッククロマトグラフィーによる中間血漿(画分D)の分離物由来の画分(出発材料(SM)、洗浄緩衝液#1(W#1)、洗浄緩衝液#2(W#2)、及び溶出液(EL))を示す。
【図6E−F】図6Eは、2つの低pH洗浄緩衝液(洗浄緩衝液#1:150mMの酢酸、pH4.0;洗浄緩衝液#2:200mMの酢酸、pH3.3)を用いる2回の洗浄工程及び溶出緩衝液(100mMのトリス、1000mMのNaCl、pH7.6)による溶出でのDEAEクロマトグラフィー(モノリシック担体8mL、流速:40mL/分)によって分離した中間血漿画分(出発材料:25mMのトリス、200mMのNaCl、pH7.8に1:125で希釈した画分C、2mL)のUVトレースを示す。 図6Fは、SDS−PAGE(4〜20%の濃度勾配)で分析したDEAEモノリシッククロマトグラフィーによる中間血漿(画分C)の分離物由来の画分(出発材料(SM)、洗浄緩衝液#1(W#1)、洗浄緩衝液#2(W#2)、及び溶出液(EL))を示す。
【図7】図7A及び7Bは、塩緩衝液(250mM以上のNaCl)での洗浄工程及び低pH洗浄工程(pH2.95)を用いるDEAEクロマトグラフィーによる脱クリオ血漿又は中間血漿画分からのIαIpタンパク質の精製を示す。 図7Aは、塩洗浄緩衝液(40mMのトリス−HCl、290mMのNaCl、pH7.6を10カラム容量)及び低pH洗浄緩衝液(200mMの酢酸−Na、pH2.95を10カラム容量)を用いる2回の洗浄工程及び高塩濃度の溶出緩衝液(40mMのクエン酸−Na、1000mMのNaCl,pH6.50を5カラム容量)による溶出でのDEAEクロマトグラフィー(モノリシック担体)によって分離した脱クリオ血漿(40mMのトリス、290mMのNaCl、pH7.6に1:10で希釈したものを12.5カラム容量;ろ過処理して0.2μM)のUVトレースを示す。 図7Bは、塩洗浄緩衝液(40mMのトリス−HCl、200mMのNaCl、pH7.6を10カラム容量)及び低pH洗浄緩衝液(200mMの酢酸−Na、pH2.95を10カラム容量)を用いる2回の洗浄工程及び高塩濃度の溶出緩衝液(40mMのクエン酸−Na、100mMのNaCl、pH6.50を5カラム容量)による溶出でのDEAEクロマトグラフィー(モノリシック担体)によって分離した中間血漿画分(画分D)(40mMのトリス、200mMのNaCl、pH7.6に1:10で希釈したものを2.5カラム容量;ろ過処理して0.2μM)のUVトレースを示す。 市販のDEAEモノリシックカラム(DEAE-CIM; BLA Separations)8mLを1分当たりカラム容量(CV)の2.5倍の流速で用いて、クロマトグラフィーを実行した。通過物を採取した。通過物のピークがベースラインに戻るまで、追加の負荷緩衝液をカラムに流した(例えば、図7Aにおいて、25mMのトリス、200mMのNaCl、pH7.6を7カラム容量)、洗浄液で溶出した全てのピークを採取した。高塩濃度の溶出緩衝液で溶出されたピークを採取して、この画分は高純度のIαIpを含有していた。
【図8】図8は、塩洗浄工程(290mMのNaCl)及び低pH洗浄工程(pH2.95)を含むIαIpタンパク質の精製で得られる画分のSDS−PAGE分析を、低pH洗浄工程(pH2.95)を用いるIαIpタンパク質の精製で得られる画分と比較して示す。画分はpH2.95の洗浄緩衝液(pH洗浄)で溶出され、洗浄緩衝液は290mMのNaClを含有し(塩洗浄)、溶出緩衝液は1000mMのNaClを含有して(溶出)、そしてSDS−PAGE(4〜12%の濃度勾配、非変性)で分離した。両方のクロマトグラフィー工程において、IαIpタンパク質を中間血漿画分(画分D)から精製した。比較のために標準分子量のタンパク質(StdMW)を流した。矢印−250kDaのインター−アルファ−阻害剤及び125kDaのプレ−アルファ−阻害剤。
【発明を実施するための形態】
【0024】
定義
本明細書で用いられる「変化」は、本明細書に記載されているような当該技術分野で公知の標準的な方法で検出されるような、収率、量、濃度、活性、純度、又はIαIpタンパク質のレベルが変わること(増大又は減少)を意味している。本明細書で用いられているように、変化は、収率、純度、又は活性の10%の変化、好ましくは発現レベルにおける、25%の変化、より好ましくは40%の変化、そして最も好ましくは50%又はそれ以上の変化を包含している。
【0025】
「類縁体」とは、参照するポリペプチド又は核酸分子の機能を有している、構造的に関連しているポリペプチド又は核酸分子を意味している。
【0026】
「化合物」とは、小分子の化学物質、抗体、核酸分子、又はポリペプチド、或いはこれらの断片の何れもを意味している。
【0027】
「減少する」又は「増加する」とは、少なくとも10%、25%、50%、75%、又は100%の、それぞれ負の変化又は正の変化を意味している。
【0028】
「対象」とは、これに限定されないが、ヒト又は非−ヒト哺乳類、例えば、霊長類、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ネコ、又はイヌのような哺乳類を意味している。
【0029】
本明細書で用いられる用語「治療する」、「治療すること」、「治療」などは、疾患及び/又はそれに伴う症状を減少又は改善することを示す。当然のことながら、排除はされないが、病気又は疾患の治療は、病気、疾患又はそれに関連する症状を完全に取り除くことを必要としていない。
【0030】
本明細書で用いられる用語「予防する」、「予防すること」、「予防」、予防的な治療」などは、病気又は疾患を有していないが、これを発症する危険性があるか或いはこれに感受性のある対象において、疾患又は病気の発症する確率を減少することを意味している。
【0031】
「基準」は、標準又は対照の条件を意味している。
【0032】
本願の開示において、「含有する」、「含有してなる」、「含有している」及び「有している」などは、米国特許法において、それらに帰している意味を有することができ、「包含する」、「包含している」などを意味することができる;「本質的に〜から成っている」、「本質的に存在する」は、米国特許法において、それらに帰している意味を有することができ、この用語は制約が無いものであって、先行技術の態様を排除するが、列挙されているもの以上の存在によって列挙されているものの基本的な或いは新規な特性を変更しない限り、列挙されているもの以上の存在を許容している。
【0033】
本発明は概ね、血漿からIαIpを精製する方法及び急性炎症性疾患、敗血症、重篤なショック、敗血性ショック、関節リウマチ、癌、癌転移、感染性疾患、及び早期陣痛によって特徴付けられる疾患、障害、又は損傷を治療するための治療用組成物を提供する。この方法は、IαIpをその精製中に低pHに曝すことを含んでいる。
【0034】
インター−アルファ−阻害タンパク質(IαIp)
本明細書で用いられる「インター−アルファ−阻害タンパク質(IαIp)」は、構造的に関連しているセリンプロテアーゼ阻害剤のファミリー中の大きい、多成分ポリペプチドを示す。「ポリペプチド」とは、長さ又は翻訳後修飾にかかわらず、何れかのアミノ酸の鎖を意味している。この複合体は、好中球エラスターゼ、プラスミン、トリプシン、キモトリプシン、カテプシンG、及びトリプシンタイプのプロテアーゼ阻害剤を含むアクロシンを包含するプロテアーゼの配列の阻害において重要であるということが示されている。ヒトの血漿中で、IαIpは比較的高濃度(400〜800mg/L)で見出されている。その他の阻害分子とは異なり、この阻害剤のファミリーは、コンドロイチン硫酸鎖によって固有に共有結合しているポリペプチド鎖(軽鎖及び重鎖)の組み合わせからなっている。
【0035】
インター−アルファタンパク質の重鎖(H1,H2及びH3)はヒアルロン酸(HA)結合タンパク質とも呼ばれている。ヒトの血漿中で見出される主な形態は、2本の重鎖(H1及びH2)及び1本の軽鎖(L)からなっている、インター−アルファ−阻害剤(IaI)、及び1本の重鎖(H3)及び1本の軽鎖(L)からなっている、プレ−アルファ−阻害剤(PaI)である。軽鎖(2つのクニツ(Kunitz)ドメインを有するビクニン(ビ−クニツ阻害剤)とも呼ばれる)は血漿セリンプロテアーゼを広く阻害することが知られている。血漿画分中に存在するIαI及びPαIは、約60kDa〜約280kDaの見掛け分子量を有している。分子量は、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)によって測定できる。IaI及びPaIは、IαIpの別の重鎖である、H4と複合することも見出されている。あらゆる特定の科学理論と結び付けるつもりはないが、IαIpの重鎖は、複合体から放出された後に、HA(ヒアルロン酸)と結合して、HAがその受容体である、CD44と結合するのを阻害すると考えられている。IαIpの重鎖が存在しないと、HAはCD44と結合して炎症促進因子、例えば、TNF−アルファの分泌を誘発して炎症を引き起こす。一方、IαIpの軽鎖は、複合体から放出されると、抗プロテアーゼ活性を示す。
【0036】
敗血症及び全身性炎症反応症候群(SIRS)
敗血症、及び全身性炎症反応症候群(SIRS)の両方は、感染性因子(例えば炭疽菌のような細菌毒素)に曝露されるか、或いは外傷/損傷に続き、重度の生理化学的応答を示す。敗血症は、通常は原因物質から直接生じない致命的な結果を潜在的に有する物質に対する個体の過剰反応である。敗血症は、処置しないと、患者を多臓器機能不全、ショック及び最終的には死へ進展する危険に追い込む生体組織への重度の損傷をもたらす。
【0037】
敗血症、SIRS、及び敗血性ショックは、先天性の免疫及び凝固系の活性化と関連している。敗血症及び敗血性ショックは臨床的に、全身性の炎症、凝固障害、低血圧及び多臓器機能不全を特徴としている(J.-L. Vincent et al., Annulas of Medicine 34 (2002) 606-613)。重篤な敗血症の間に、特定のプロテアーゼのネットワークが凝固、繊維素溶解及び補体因子を活性化する。これらのプロテアーゼは組織及び臓器の損傷も誘発して、血漿中の凝固及び補体因子の非特異的タンパク質分解を増大させる(J. Wite et al., Intensive Care Medicine 8 (1982) 215-222; S.J. Weiss, New England Journal of Medicine 320 (1989) 365-376)。「敗血症−様」症候群は、主に身体の重篤な全身性応答反応に起因する暴露群に観察される。過剰反応は通常、サイトカイン(「サイトカインストーム」)及び有毒なプロテアーゼの過剰産生、並びに多臓器機能不全をもたらす代謝、酸素化、凝固、及び血管の機能の障害を包含する。
【0038】
IαIpは、天然の血中タンパク質で、身体の先天的な免疫系の一部である。IαIpは、敗血症、感染症、外傷及び損傷を伴う重篤な全身性炎症に対する身体の応答を調節する。IαIpは、敗血症及びSIRSに対する生命の天然の防御であって、それ自身は全身性炎症の影響への「過剰反応」に対する身体の防御を調節する。IαIpは、凝固、炎症及び免疫応答を包含する各種の生理学的過程に関与するタンパク質消化酵素である、セリンプロテアーゼの阻害剤である。IαIpは、免疫応答調節因子(サイトカイン)、損傷又は炎症の部位へ白血球を引きつけるタンパク質(ケモカイン)、及び罹患患者における重篤罹患率及び過度の死亡率を引き起こす有害なプロテアーゼのような、分泌された炎症性物質の血中濃度を調節する広範囲な生体応答修飾因子として働く。IαIpタンパク質は、敗血症を引き起こして持続する、血中のサイトカイン、ケモカイン及びプロテアーゼに結合する。重篤な炎症過程の間に、IαIpの体内濃度は急速に激減して、制御されない疾患経過をもたらす。敗血症患者においてIαIpの血漿濃度と重症度及び死亡率の間に極めて有意な、逆相関が存在する(Lim et al., J Infect Dis 2003, 188:919-926)。
【0039】
IαIpは、敗血症に罹っている実験動物及び炭疽菌に感染している動物、更には有毒化学物質又は電離放射線に曝露された後の急性肺損傷に罹っている動物の生存率を有意に改善することが示されている(Yang et al., Crit Care Med 2002, 30(3):617-622; Lim et al., J Infect Dis 2003, 188:919-926; Wu et al., Crit care Med 2004, 32(8):1747-1752; Opal et al., Infect and Immun 2005, 73(8):5101-5105)。
凝固、代謝、肝臓損傷、炎症性サイトカイン、及び酸化機能に対する治療効果は、刺激物質及び原因物質とは無関係であった。IαIp濃度が大幅に激減する場合の急性炎症の重篤症例において、制御されない疾患経過の進行を、IαIpの外因性投与によって部分的或いは完全に阻止できる(Yang et al., Crit Care Med 2002, 30(3):617-622; Wu et al., Crit Care Med 2004, 32(8):1747-1752)。
血中のサイトカイン、ケモカイン、及びプロテアーゼをIαIpの投与によって除去或いは不活性化することができ、この除去或いは不活性化は、改善された生存率、減少した死亡率、及びあらゆる基礎疾患又は感染を治療する時間の増大をもたらす。
尿から単離されたIαIpのプロテアーゼ断片は敗血症患者の死亡率の減少に有意に効果があることが明らかにされている(Lin HY. Zhonghua Yi Xue Za Zhi. 2007 Feb 13; 87(7):451-7)。
回復制御により、IαIpによる補充療法は、生存率を改善し、死亡率を減少し、そして基礎疾患又は感染症を治療するための時間を提供する可能性を有している。IαIpは通常比較的高濃度で血中に存在しているので、補充療法は高い安全域を有している。
IαIpは、血行動態の安定性の保持、臓器損傷の予防、及び敗血症患者並びに「サイトカインストーム」に曝露された患者の生存率を改善するための有用で安全な薬剤である。
【0040】
治療方法
急性炎症性疾患、敗血症、重篤なショック、敗血性ショック、関節リウマチ、癌、癌転移、感染性疾患、及び早期陣痛を治療するために、対象に精製されたIαIpを投与する方法が本明細書に開示されている。本発明は、実質的に対象におけるインター−アルファ−阻害タンパク質(IαIp)の減少に関与する疾患の何れもを治療するために用いることができる。インター−アルファ−阻害タンパク質(IαIp)濃度の減少は、ケモカイン、サイトカイン、又はプロテアーゼの望ましくない減少と関連付けることができる。
例えば、哺乳動物は、ケモカイン、サイトカイン、又はプロテアーゼの望ましくない減少をもたらす疾患、障害、又は病気を有しうる。典型的な治療される疾患は、急性炎症性疾患、敗血症、重篤なショック、敗血性ショック、関節リウマチ、癌、癌転移、外傷/損傷、感染性疾患、又は早期陣痛を包含する。別の実施態様では、哺乳動物は、本方法によって遅延又は予防される疾患、障害、又は病気の発症の増大した危険性を有している。
【0041】
本発明の方法は、治療有効用量でのIαIpの投与を包含している。
多様な実施態様では、方法は、対象におけるIαIpの濃度を、対照と比較して、少なくとも5%、10%、25%、50%、75%、100%、200%、又は300%、400%、或いは500%までも増大する。
別の実施態様では、方法は、対象におけるサイトカイン、ケモカイン、又はプロテアーゼの濃度を、対照と比較して、少なくとも5%、10%、20%まで、より好ましくは少なくとも25%、30%、35%、40%、50%、60%まで、又は70%、80%、90%或いは100%までも減少する。
生体化合物の濃度を測定する方法は汎用のものであって、当業者に公知である(例えば、Guyton et al., Textbook of Medical Physiology, Tenth edition, W.B. Saunders Co., 2000)。
【0042】
特定の理論と結びついてはいないが、本明細書で言及している病状におけるサイトカイン、ケモカイン及びプロテアーゼの上昇した濃度は、結果として組織損傷をもたらす、局所的及び全身的な応答を引き起こす。組織損傷は臓器不全を誘発する。
好ましい実施態様では、本方法は、組織又は臓器の生物活性を、対応する自然の組織又は臓器と比較して、少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、150%まで、又は200%、300%、400%、或いは500%までも増大する。測定に適している組織又は臓器の生物学的機能は、消化、老廃物の排泄、分泌、電気活性、筋活性、ホルモン産生、或いはその他の代謝活性を包含している。組織及び臓器の生物学的活性を測定する方法は汎用のものであって、当業者に公知である(例えば、Guyton et al., Textbook of Medical Physiology, Tenth edition, W.B. Saunders Co., 2000)。
【0043】
本発明の方法は、患者(例えば、ヒト又は哺乳動物)において、組織又は臓器を侵す疾患、病気、又は障害を治療又は安定化するために有用である。例えば、治療される組織又は臓器(例えば、膀胱、骨、脳、胸部、軟骨、食道、卵管、心臓、膵臓、腸、胆嚢、腎臓、肝臓、肺、神経組織、卵巣、前立腺、骨格筋、皮膚、脊髄、脾臓、胃、睾丸、胸腺、甲状腺、気管、尿管、尿道、尿生殖路、及び子宮)の生物学的機能を測定して治療効果を随意に評価する。このような方法は当該技術分野において標準的なものである。例えば、膀胱機能は、尿の貯留及び排泄を測定して評価する。脳、脊髄又は神経組織の機能は、神経活性(例えば、電気的活性)を測定して評価する。食道機能は、食物を胃へ運ぶ食道の能力を測定して評価する。心臓の機能は心電図によって評価する。膵臓機能は、インスリン産生を測定して評価する。腸の機能は、腸の内容物が腸を通過する能力を測定して評価して、そしてバリウム注腸又は胃腸X線検査を用いて評価することもできる。胆嚢機能は、胆嚢放射性核種スキャンを用いて評価する。腎臓機能は、クレアチニン濃度、尿クレアチニン濃度を測定して、又はクレアチニンクリアランス、又は血中尿窒素についての臨床試験によって評価する。肝機能は、肝酵素濃度、ビリルビン濃度、及びアルブミン濃度を測定する肝機能試験又は肝臓パネルを用いて評価する。肺機能は、肺活量測定、肺容積、及び拡散容量試験を用いて評価する。卵巣の機能は、卵巣ホルモン(例えば、卵胞刺激ホルモン)の濃度を測定して評価する。前立腺異常は、前立腺特異抗原を測定して評価する。脾臓の機能は、肝臓−脾臓スキャンを用いて評価する。胃の機能は、胃酸試験を用いて、或いは胃内容排出アッセイによって評価する。睾丸の機能は、精巣ホルモン(例えば、テストステロン)の濃度を測定して評価する。臓器の機能を評価するその他の方法は当業者に公知であって、例えば、 Textbook of Medical Physiology, Tenth edition(Guyton et al., W.B. Saunders Co., 2000)に記載されている。
【0044】
IαIp組成物
本明細書で用いられている「IαIp組成物」は、IαI及びPαIを生理学的比率で含有している、IαIpタンパク質の調製物を示す。本明細書で用いられている、生理学的比率は、感染又は疾患を患っていないヒト又は動物中に見出される比率、及び/又はヒト血漿中に生来見られるIαIのPαIに対する比を包含するように意図されている。生理学的比率は通常、約60%〜約80%のIαI及び約40%〜約20%のPαIである。生理学的比率は、対象の遺伝子構造の正常な変動によって、これらの範囲から変化してもよい。
【0045】
本明細書で用いられている「IαIp複合体」は、欠損、挿入、付加、及び置換を含むタンパク質を包含している、IαIpタンパク質の全ての天然の生物活性変異体を包含するように意図されている。IαIpタンパク質の「自然変異体」は、1つ又はそれ以上のアミノ酸が変化している配列を有している血漿から得られたペプチドと定義されている。変異は、「同類」変化であってよく、ここでは置換されたアミノ酸は、類似の構造的又は化学的性質を有している(例えば、ロイシンをイソロイシンと置換)。別の実施態様では、変異は、「非同類」変化、例えば、グリシンをトリプトファンと置換、を有していてもよい。同様な変異は、アミノ酸欠損又は挿入、或いはその両方を含んでもよい。生物学的活性又は免疫活性を消失せずにどのアミノ酸残基を及びどれだけのアミノ酸残基を、置換、挿入又は欠損するかを決定するためのガイダンスは、当該技術分野で周知のコンピュータプログラム、例えば、DNASTARソフトウェアを用いて見出すことができる。本明細書で用いられる「機能的に均等物」は、本明細書に記載されているIαIpタンパク質と実質的に類似しているインビボ又はインビトロ活性を表わす、例えば、敗血症に減少をもたらすことができるあらゆるタンパク質を示す。
【0046】
本明細書で用いられている「インター−アルファ−阻害タンパク質(IαI)とプレ−アルファ−タンパク質(PαI)の混合物」は、IαI及びPαIの両方の複合体を含有している組成物を示す。混合物は、緩衝液、塩、又はIαIp複合体を単離するために用いられるその他の成分を含有していてもよい。ある特定の態様では、IαIとPαIが生理学的比率で混合物中に存在している。
【0047】
血漿画分に存在しているIαI及びPαIは、約60〜約280kDaの見かけの分子量を有している。分子量は、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動によって確認できる。
【0048】
本発明のIαIp組成物は、高いトリプシン阻害特異活性を有しうる。本発明によるIαIpの組成物のトリプシン阻害特異活性は、約100〜約200IU/mgの範囲でよい。好ましくはトリプシン阻害特異活性が120IU/mg以上であり、更により好ましくは150IU/mg以上である。トリプシン阻害特異活性は、例えば、基質としてL−BAPAを用いるトリプシン阻害アッセイによって、測定できる。H U Bergmeyer, ed: vol. 5, 3rd ed. 119 (1984) Verlag Chemie, Weinheim: Chomogenic substrate for the assay of trypsin: R. Geiger, H. Fritz, Methods of Enzymatic Analysis を参照されたい。
【0049】
IαIpの組成物は、IαIとPαIが当該混合物中に生理学的比率で存在していて、3本の重鎖H1、H2及びH3の少なくとも1本と結合しているインター−アルファ−阻害タンパク質の軽鎖を包含している、インター−アルファ−阻害タンパク質(IαI)とプレ−アルファ−タンパク質(PαI)の混合物であってよい。本発明による組成物は、4本の重鎖H1、H2、H3及びH4の少なくとも1本と結合しているインター−アルファ−阻害タンパク質の軽鎖を有していてもよい。IαIp複合体中のそれぞれのタンパク質の例は以下の通りであって、このそれぞれは参照により本明細書に取り込まれている:Bikunin GenBank 受入番号:AAB84031、P02760;H1 GenBank 受入番号:P19827、NP−−002206;H2 GenBank 受入番号:NP−−002207、P19823;H3 GenBank 受入番号:NP−−002208;H4 GenBank 受入番号:Q14624、NP−−002209。
【0050】
インター−アルファ−阻害タンパク質(IαI)の精製
IαIpはクロマトグラフィーで精製できる。本明細書で用いられる「精製すること」は、不要な或いは夾雑しているタンパク質又は成分をIαIpから除去して精製IαIpを作製する工程又は過程を示す。例えば、生理学的比率でIαIとPαIを含有している血漿画分を、少なくとも1つのクロマトグラフィー工程に流してIαIpを精製することができる。本明細書で用いられる「クロマトグラフィー」は、液体クロマトグラフィー又はカラムクロマトグラフィーを含むことができる。クロマトグラフィーは、互いに矛盾しない多くの種類及び/又は分類を有していることは当該技術分野で公知である。例えば、液体クロマトグラフィーはカラム上で実施できる。カラムクロマトグラフィーは陰イオン交換クロマトグラフィーを包含することができる。
【0051】
一般に、IαIpの調製は、試料の単離及び目的のタンパク質を含有していることが確認された画分の収集を含んでる。単離する方法は、例えば、固相抽出、クロマトグラフィー、例えば、陰イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ヘパリンクロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、順次抽出、ゲル電気泳動、及び液体クロマトグラフィーを包含する。調製は、精製工程を含んでいてもよく、これはクロマトグラフィー、例えばイオン交換クロマトグラフィー、ヘパリンクロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、順次抽出、ゲル電気泳動及び液体クロマトグラフィーの工程を含んでもよい。
【0052】
「固体担体」は、捕捉試薬と誘導体化できるか、さもなければそれと結合できる固体物質を示す。典型的な固体担体は、モノリシック担体、粒子ベースの担体、プローブ、及びマイクロタイタープレートを包含する。本明細書で用いられる「モノリシック担体」は、ワンピース型の多孔性固体担体を示す。本明細書で用いられる「粒子ベースの」担体は、クロマトグラフ樹脂を含む、クロマトグラフィーカラムを充填する均質な粒子を示す。
【0053】
「分析物」は、検出すべき試料の何れかの成分を示す。この用語は試料中の単一成分及び複数の成分を示すことができる。
【0054】
「吸着」は、分析物の吸着剤又は捕捉剤への検出可能な非共有結合を示す。吸着剤表面は、吸着剤(「捕捉剤」又は「親和性試薬」とも呼ばれる)が結合される表面を示す。
【0055】
クロマトグラフィー吸着剤はクロマトグラフィーで通常用いられる物質を示す。クロマトグラフィー吸着剤は、例えば、イオン交換物質、金属キレート(例えば、ニトリロ酢酸又はイミノ二酢酸)、固定化金属キレート、疎水性相互作用吸着剤、親水性相互作用吸着剤、染料、単純生体分子(例えば、ヌクレオチド、アミノ酸、単糖及び脂肪酸)及び混合形態の吸着剤(例えば、疎水性吸引/静電反発吸着剤)を包含する。
【0056】
生体特異性吸着剤は、生体分子、例えば、核酸分子(例えば、アプタマー)、ポリペプチド、多糖体、脂肪、ステロイド又はそれらの複合体(例えば、糖タンパク質、リポタンパク質、糖脂質、核酸(例えば、DNA)−タンパク質複合体)を含む吸着剤を示す。ある特定の例では、生体特異性吸着剤は多タンパク質複合体、生体膜又はウィルスのような高分子構造であってもよい。生体特異性吸着剤の例は、抗体、受容体タンパク質及び核酸である。生体特異性吸着剤は一般に、標的の分析物に対してクロマトグラフィー吸着剤より高い特異性を有している。
【0057】
「溶出液」又は「洗浄緩衝液」は、分析物の吸着剤表面への吸着に影響を及ぼすか或いは修飾し、そして/又は非結合物質を表面から除去するために用いられる試薬で、通常は溶液である。洗浄緩衝液又は溶出液の溶出特性は、例えば、pH、イオン強度、疎水性、カオトロピズム(chaotropism)の程度、洗浄強度及び温度によって決めることができる。
本発明のある実施態様では、精製方法は少なくとも1回の緩衝液洗浄工程を包含している。本発明の方法では、緩衝液洗浄工程は、低いpH(例えば、4.0、3.7、3.5、3.4、3.3、3.1、2.9、2.0)を有する洗浄緩衝液をカラムに適用することを包含する。一態様では、低pH洗浄緩衝液は約4.0未満のpHを有している。好ましい実施態様では、洗浄溶液は約3.6未満のpHを有している。更により好ましい実施態様では、洗浄溶液は約3.3未満のpHを有している。最も好ましくは、洗浄溶液は約3.3〜約2.9未満のpHを有している。
別の実施態様では、精製方法は1回より多い緩衝液洗浄工程を包含している。後の緩衝液洗浄工程が、先の緩衝液洗浄工程より低いpHを有していることが好ましい。一実施態様では、1回目の洗浄緩衝液が約4.0のpHを有し、2回目の洗浄緩衝液が約3.6のpHを有している。別の実施態様では、1回目の洗浄緩衝液が約4.0のpHを有し、2回目の洗浄緩衝液が約3.1のpHを有している。別の実施態様では、1回目の洗浄緩衝液が約4.0のpHを有し、2回目の洗浄緩衝液が約2.9のpHを有している。
本発明の実施態様では、洗浄緩衝液は酢酸又は酢酸ナトリウムである。本発明で用いるのに適している別の洗浄緩衝液は、クエン酸、グリシン又はリン酸緩衝液を包含している。
更に別の実施態様では、精製方法は、塩含有緩衝液を用いる洗浄工程を包含している。塩含有緩衝液の塩濃度が250mMのNaClより高い(例えば、260、270、280、290mMのNaCl)ことが好ましい。一実施態様では、1回目の洗浄緩衝液が290mMのNaCl塩濃度を有し、そして2回目の洗浄緩衝液が約2.9のpHを有している。
低pH工程を含む精製手順への塩洗浄工程の追加が、塩洗浄工程がない場合よりIαIpの収率及び純度を増大することが見出された。本発明の実施態様では、塩含有緩衝液中の塩は塩化ナトリウム(NaCl)である。本発明で用いるのに適しているその他の塩は塩化カリウム(KCl)である。
【0058】
陰イオン交換クロマトグラフィーは、モノリシック担体、例えば、DEAE−CIM又はQ−CIM(BIA Separations)のような、固定化陰イオン交換リガンドを有するCIMによって行える。陰イオン交換クロマトグラフィーは、粒子ベース担体、例えば、DEAEセファロース、DEAEセファデックスA50、トヨパールDEAE、TMAEフラクトゲル、DEAEフラクトゲル、又はQ−セファロースによっても行える。セファロース(SEPHAROSE)は、高分子のゲルろ過によって分離するための高分子物質についてのPhrmacia, Inc. of New Jersey の登録商標である。
陰イオン交換カラムは2つの成分、マトリックスとリガンドを有している。マトリックスは、例えば、セルロース、デキストラン、アガロース又はポリスチレンであってよい。固定化陰イオン交換リガンドは、ジエチルアミノエタン(DEAE)、ポリエチレンイミン(PEI)、又は4級アミン官能基(Q)であってよい。陰イオン交換カラムの強度はリガンドの電離状態を示す。4級アンモニウムリガンドを有しているもののような、強陰イオン交換カラムは、広いpH範囲に及ぶ永久正電荷を帯びている。DEAE及びPEIのような、弱陰イオン交換カラムでは、正電荷の存在はカラムのpHに依存している。QセファロースFF、又は金属キレートセファロース(例えば、Cu2+キレートセファロース)のような強陰イオン交換カラムが好ましい。陰イオン交換カラムには通常、精製するタンパク質のpI以上のpHの低塩緩衝液を充填する。緩衝液、緩衝液濃度、塩濃度、及び溶出液の選択は当該技術分野で公知である(例えば、"Protein Purification: Principles and Practice" Springer; 3rd ed. eddition (November 19, 1993)を参照されたい)。
【0059】
本発明の一実施態様では、試料を陰イオン交換クロマトグラフィーで精製できる。陰イオン交換クロマトグラフィーは、試料中のタンパク質をその電荷特性に従って粗く精製できる。例えば、Q陰イオン交換樹脂(例えば、Q HyperD F、 Biosepra)を用いることができて、異なったpHを有する溶出液で試料を順に溶出することができる。陰イオン交換クロマトグラフィーは、別のタイプの生体分子よりもより負に荷電している試料中の生体分子を分離できる。
高いpHを有する溶出液で溶出されるタンパク質は、弱く負に荷電されやすく、低いpHを有する溶出液で溶出される画分は強く負に荷電されやすい。従って、試料の複雑性を減少することに加えて、陰イオン交換クロマトグラフィーはタンパク質の結合特性に従ってタンパク質を分離する。
【0060】
更に別の実施態様では、試料をヘパリンクロマトグラフィーで更に精製することができる。ヘパリンクロマトグラフィーは、ヘパリンとの親和性相互作用及び電荷特性にも基づいて、試料中のIαIp複合体を更に精製できる。硫酸化ムコサッカリドである、ヘパリンは、正電荷の部位でIαIpと結合して、異なったpH及び塩濃度を有する溶出液で試料を連続して溶出できるだろう。低いpHを有している溶出液で溶出されるIαIp複合体は、より弱く正に荷電されやすい。高いpHを有している溶出液で溶出されるIαIp複合体は、より強く正に荷電されやすい。従って、ヘパリンクロマトグラフィーも、試料の複雑性を減少して、それらの結合特性に従ってIαIp複合体を分離する。
別の実施態様では、試料をヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーによって更に精製することができる。
更に別の実施態様では、試料を疎水性相互作用クロマトグラフィーで更に精製することができる。
【0061】
IαIp複合体を、バイオチップ、マルチウェルマイクロタイタープレート、樹脂、又はニトロセルロース膜の何れかのような、担体に固定化されている捕捉試薬で捕捉することができ、これらはその後タンパク質の存在について探索される。特に本発明のIαIp複合体は表面増強レーザ脱着/イオン化(SEDI)タンパク質バイオチップ上に捕捉される。捕捉はクロマトグラフィー表面又は生体特異的表面上で行える。反応性表面を有するあらゆるSELDIタンパク質バイオチップを、本発明のIαIp複合体を捕捉して検出するために用いることができる。これらのバイオチップをIαIp複合体を特異的に捕捉する抗体で誘導体化でき、或いはこれらを、免疫グロブリンを結合するプロテインA又はプロテインGのような捕捉試薬で誘導体化できる。次いで、特異抗体を用いてIαIp複合体を溶液中で捕捉して、捕捉試薬によってチップ上に捕捉されたIαIp複合体を単離することができる。
【0062】
IαIpの精製を、容量及び数量に基づいて拡張することができる。ある実施態様では、IαIpを精製するために1mL又は8mLのカラムが用いられる。別の実施態様では、80mL、800mLのカラム又は8LのカラムがIαIpを精製するために用いられる。
【0063】
通常は、カラムから溶出した後、精製したIαIpを緩衝液中へ交換して安定性又は活性を保持する。精製したIαIpを限外ろ過又は透析ろ過(diafiltration)で処理して、夾雑している低分子量のタンパク質を除去することもできる。
ある実施態様では、ウィルス不活性化工程が精製に組み込まれる。クロマトグラフィー分離の前に、血漿の溶媒及び洗浄剤処理をウィルス粒子を不活性化するために用いることができる。限外ろ過又は透析ろ過の後に、精製されたIαIpを更にナノろ過で処理できる(例えば、ウィルスを不活性化するために)。精製したIαIpを凍結乾燥して長期保存(貯蔵)のために包装することもできる。
【0064】
本発明のIαIp組成物は、約85%〜約100%純粋であることが好ましい。本明細書で用いられる「純粋な」は、その天然の環境から取り出され、単離又は分離されて、それが自然に結合していた他の成分を約85〜100%、好ましくは90%、より好ましくは95%含まない組成物を示す。好ましい実施態様では、実質的に精製したタンパク質は、組成物が85%、87.5%、90%、92.5%、95%、99%或いはそれ以上のタンパク質からなっている。
【0065】
本発明に適用されるような、「均一になるまで精製された」ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質は、ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質が他のタンパク質及び生体成分を実質的に含んでいないレベルの純度を有しているペプチド、ポリペプチド又はタンパク質を意味する。あらゆる適切な材料及び方法を、精製されたIαIpを得るための血漿の単離工程を実施するために用いることができる。
【0066】
タンパク質、ポリペプチド、又はペプチドの精製の程度を定量する多様な方法は、本開示を考慮すると、当業者には公知となるであろう。これらは、例えば、画分のタンパク質の比活性度を測定すること、又はゲル電気泳動で画分内のポリペプチド数を測定することを包含している。
用語「生物活性がある」は、天然のIαIp複合体の構造的、調整的或いは生物化学的機能を有していることを示す。
同様に、「免疫学的な活性がある」は、天然、組換え、或いは合成IαIp複合体、又はそれらの何れかのオリゴペプチドの、適当な動物又は細胞において特異的な免疫応答を誘発して特異抗体と結合する能力を定義している。
IαIp濃度は、Lim et al, (J. of Infectious Diseases, 2003)に記載されているように、Mab69.31を用いる、競合的酵素免疫測定法(ELISA)によって測定できる。競合的ELISAでは、IαIpの軽鎖に結合する抗体、例えば、Mab69.26及びMab69.31(Lim et al, J. of Infectious Diseases, 2003)をIαIpの活性部位が露呈しているか否かを検出するために用いることができる。競合的ELISAにおいてIαIpの軽鎖と結合する抗体を用いると、IαIpの活性部位が露呈していることを、タンパク質濃度が示すことによって予測するよりも、より正確な測定が得られる。競合的ELISAで測定すると、抗IαIp抗体の精製したIαIpへの結合が1、1.5、2、3、4、5、又は10倍より大きく増大する。タンパク質濃度の測定方法は当該技術分野で公知であって、市販のタンパク質アッセイ(ビシンコニン酸(BCA)タンパク質アッセイ;BioRad protein assay)によっても測定できる。IαIpの産物構造及び純度は、例えば、HPLC又は当業者が公知のその他のクロマトグラフィー方法で確認できる。
精製されたIαIpの比阻害活性は、発色基質であるL−BAPA(N(α)−ベンゾイル−L−アルギニン−4−ニトロアニリド塩酸(Fluka Chemicals))を用いるトリプシン阻害アッセイで測定できる。このアッセイは、L−BAPAの加水分解を阻害するIαIpの能力に基づいている。阻害は、410nmでのΔ吸光度/分の比率の減少によってモニターできる。
【0067】
精製されたIαIpは約60〜約280kDaの見掛け分子量を有している。分子量は、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動法によって確認できる。精製されたIαIpは、本明細書に記載されているか或いは当該技術分野で公知の方法によって確認できる生物活性(例えば、サイトカイン阻害活性、ケモカイン阻害活性、又はセリンプロテアーゼ阻害活性)も有している。精製されたIαIpは、血液、血漿、又は血漿画分に存在しているIαIpを含む、低pHで処理されていないIαIp、或いは別の方法で精製されたIαIpの活性と比較して、少なくとも同程度の生物活性を有している。
【0068】
方法は、IαIp濃度が未知の試料中のインター−アルファ−阻害タンパク質(IαIp)の定量にも役立つ。IαIp濃度が未知の試料をクロマトグラフィーのカラムに通す。ある実施態様では、クロマトグラフィーのカラムの容量は1mL未満である。試料を通したカラムを低pH(例えば、4.0未満のpH)の緩衝液で洗浄する。続いて、カラムを高塩濃度の緩衝液(例えば、>500mM)で溶出する。実質的にIαIpからなる(例えば、純度>90%)、溶出されたタンパク質をタンパク質濃度を確認するために当該技術分野で公知の方法で測定する。このような方法は、本明細書に記載のような、IαIp濃度を確認するための、UV吸収、タンパク質アッセイ、又は競合的ELISAを包含することができる。試料中に存在するIαIpの量は、タンパク質の定量値を1つ又はそれ以上の基準と比較して得ることができる。このような基準は、未知IαIp濃度の試料を処理するために用いられた方法で処理されているIαIpの既知定量値を含有している試料を包含する。
【0069】
血液、血漿、及び血漿画分
IαIpは血液中に豊富に含まれているので、IαIpは一般に、血液、血漿、又は血漿から単離される血漿画分から精製される。本明細書で用いられる「単離すること」は、血漿から、血漿画分を産出することを示し、これはIαIとPαIを生理学的比率で含有している。例えば、血漿画分の単離は、本発明に従い、血漿をクロマトグラフ処理することによって達成される。単離されたとは、その本来の環境(例えば、それが天然に存在するものであれば、自然環境)から取り出され、それによって「ヒトの手によって」その自然状態から変えられた、物質を示す。例えば、単離されたポリペプチド又はタンパク質は、血漿の一成分であり得るか、又はある細胞内に含まれ得て、血漿或いは特定の細胞がポリペプチドの本来の環境ではないかもしれないので、「単離された」と考えられ得る。
【0070】
本明細書で用いられる「血漿由来の」は、元々は血漿から単離又は精製されたことを示す。すなわち、この成分の天然の環境は血漿である。
【0071】
本明細書用いられる「血漿画分」は、単離又は精製工程、例えば、クロマトグラフィーからの画分で、元は血漿由来であったものである。本発明の血漿画分は、例えば、凝固因子IXの精製で得られる副画分、プロトロンビン複合体濃縮物の精製で得られる副画分、血漿の寒冷沈降反応による寒冷上清成分(Hoffer et al., Journal of Chromatography B 669 (1995) 187-196 に記載されている)、又は脱クリオ血漿であってよい。本明細書で用いられる「脱クリオ血漿」又は「寒冷上清成分」は、血漿の寒冷沈降反応から得られる上澄液である。脱クリオ血漿は、新鮮凍結血漿を解凍すること(例えば、4℃で、10k rpmで30分間遠心分離)によって製造できる。
【0072】
血漿の代わりに、IαIpを含有している血漿画分の何れにもこの精製手段を用いることができる。IαIpを含有している血漿画分は、凝固因子及びその他の血漿誘導体の工業処理中の、或いは凝固因子のようなその他の治療用タンパク質の精製過程中の、副画分又は血漿中間体を包含する。本発明の副画分の1例は、凝固因子IXの精製からえられるものである。IαI/PαIの混合物が、因子IX(FIX)の精製中に生じる副画分に存在していることが示されている。凝固因子IXの精製から得られる副画分を得る方法は、Hoffer et al., Journal of Chromatography B 669 (1995) 187-196 に記載されていて、これは参照により、その全てが本明細書に取り込まれている。
副画分のその他の例は、FIX精製からの副画分、又はD. Josic et al., Thrombosis Research 100 (200) 433-441(これは参照により、その全てが本明細書に取り込まれている)に記載されているような、プロトロンビン複合体濃縮物の精製からの副画分を包含する。副画分のその他の例は、本明細書で画分D及び画分Cと称するFIX精製からの副画分を包含する。画分D及び画分Cは、陰イオン交換クロマトグラフィーによる、FIX及びその他の凝固因子などの精製中に得られるIαIp含有画分を示す。画分Dは、高塩濃度条件下(例えば、>500mM NaCl)で陰イオン交換カラムから溶出されたIαIp含有画分である。画分Cは、陰イオン交換カラムから精製され、25mMのクエン酸塩、pH6.0、0.5MのNaClで溶出された血漿画分由来のIαIp含有画分である。画分Cは非結合性画分、すなわち陰イオン交換カラムからの溶出液(25mMのクエン酸塩、pH6.0、0.5MのNaCl中)を抗−因子IX親和性カラムに流入する、抗−因子IX親和性精製工程からの流入、である。
【0073】
副画分の1例は、血漿の寒冷沈降反応から得られる寒冷上澄液として単離された。例えば、適切な寒冷沈降反応の方法は、Hoffer et al., Journal of Chromatography B 669 (1995) 187-196 に記載されている。
【0074】
血液及び血漿は、ヒト、霊長類、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ネコ、又はイヌ供給源から得ることができる。血液は、例えば、血液銀行、病院、ホスピス、民間企業、研究財団、又はその他の何れかの血液供給源から入手及び/又は購入することができる。血漿は、例えば、血液銀行、病院、ホスピス、民間企業、研究財団、又はその他の何れかの血液供給源から入手及び/又は購入することができる。或いは、血漿は、血液を得た時点に血液から単離することもできる。血漿を単離する適切な方法は、重力及び遠心分離を包含する。本発明による血漿画分は、ヒト、霊長類、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ネコ、又はイヌ供給源由来でよい。
【0075】
以前の幾つかの副画分からのIαIp精製には、因子X(FX)による夾雑物が含まれていて、これはウェスタンブロット分析によって80kDaのバンドとして、或いは凝固アッセイで検出された。FXは血栓形成性でヒトに投与されると有害であるので、FXの除去は重要である。本明細書に記載されているIαIp精製方法は、FX夾雑物を除去する。また、クロマトグラフ分離前の血漿の溶媒及び洗浄剤処理は、血漿又は血漿画分に存在する何れものウィルスを不活性化するために実施できる。
【0076】
治療方法
本発明は、IαIp濃度の減少或いはケモカイン、サイトカイン、又はプロテアーゼの濃度の増大に関連する疾患又は障害の治療を提供する。細胞数の欠乏に関連する多くの疾患又は病気は、ケモカイン、サイトカイン、又はプロテアーゼの濃度の増大を特徴としている。このような疾患又は病態は、これに限定されないが、炎症、外傷/損傷、腫瘍浸潤、腫瘍転移、敗血症、敗血性ショック、又は感染性疾患を包含する。本発明の方法は、ケモカイン、サイトカイン、又はプロテアーゼの濃度又は活性を減少して、このような疾患、障害又は損傷を改善する。
【0077】
本発明は、本明細書記載の精製されたIαIpタンパク質を含有している医薬組成物の治療有効量を対象(例えば、ヒトのような哺乳動物)へ投与することを含有してなる、疾患及び/又は障害或いはそれらの症状を治療する方法を提供する。
従って、実施態様の1つは、IαIpの欠乏を特徴とする疾患、障害又はそれらの症状に罹っているか、或いは罹りやすい対象を治療する方法である。方法は、疾患又は障害或いはそれらの症状を治療するのに十分な本発明組成物の治療用量を、疾患又は障害を治療できるような条件下で、哺乳動物に投与する段階を含んでいる。
【0078】
多様な実施態様では、本発明の薬剤を、疾患又は損傷の部位への局所注射によって、持続点滴によって、又は手術条件下での顕微注射(Wolff et al., Science 247:1465, 1990)によって投与する。
別の実施態様では、薬剤をIαIp欠乏がある患者の組織又は臓器に全身投与する。
【0079】
本明細書に記載されている方法は、対象(このような治療が必要であると判定された対象を含んでいる)に、本明細書に記載されている精製されたIαIpタンパク質、又は本明細書に記載されている組成物の、このような効果を生じる有効量を投与することを含んでいる。このような治療の必要がある対象を判定することは、対象又は医療専門家の判断でよく、そして主観的(例えば、見解)又は客観的(例えば、試験により測定可能な又は診断の方法)でよい。
【0080】
本発明の治療方法(予防的な治療を含む)は一般に、本明細書に記載の式の化合物のような、本明細書に記載の化合物の治療有効量を、哺乳動物、特にヒトを含んでいる、それを必要としている対象(例えば、動物、ヒト)に投与することを含有している。対象は、霊長動物、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ネコ、又はイヌであってもよい。
IαIpで治療するのに適している対象は、炎症、外傷/損傷、腫瘍浸潤、腫瘍転移、敗血症、敗血性ショック、又は感染性疾患を有していると判定されていてよい。このような治療は、疾患、障害、又はそれらの症状に罹っている、有している、罹りやすい、或いはその危険性がある対象、特にヒトへ適切に投与されるだろう。「危険性がある」それらの対象の判定は、診断試験又は対象或いは医療提供者の見解(遺伝子試験、酵素又はタンパク質マーカー、マーカー(本明細書で定義されているような)、家族歴、など)によるあらゆる客観的及び主観的確認によってなされてよい。対象は、炎症、腫瘍浸潤、腫瘍転移、敗血症、敗血性ショック、又は感染性疾患を有していると自己判定しても、又は医師によって診断されていてもよい。対象は霊長動物、ヒト、又はその他の動物であってよい。本明細書に記載の組成物は、細胞数の欠乏が関わっているかもしれないその他の疾患の何れかの治療にも用いることができる。
【0081】
一実施態様では、本発明は治療の進行をモニターする方法を提供する。この方法は、IαIp濃度の欠乏、又はケモカイン、サイトカイン或いはプロテアーゼの濃度の増大に関連している障害又はそれらの症状に罹っているか、或いは罹りやすい対象において、診断マーカー(マーカー)(例えば、本明細書に記載されている化合物、タンパク質又はそれらの指標、等によって調節される本明細書で説明されているあらゆる標的)の濃度を測定する、或いは診断測定(例えば、スクリーニング、アッセイ)の工程を包含している。
対象は、疾患又はそれらの症状を治療するのに十分な本明細書に記載の化合物の治療用量を投与されていてもよい。本方法で測定されたマーカーの濃度を健常な正常対照又は別の疾患患者の何れかのマーカーの既知の濃度と比較して、対象の疾病状態を確立することができる。
好ましい実施態様では、対象における2回目のマーカーの濃度を、1回目の濃度測定よりも後の時点で測定し、2つの濃度を比較して疾患の経過又は治療効果をモニターする。ある特定の好ましい実施態様では、対象におけるマーカーの治療前濃度を、本発明の治療開始前に測定する;次いで、このマーカーの治療前濃度を治療開始後の対象のマーカーの濃度と比較して、治療の効果を確認することができる。
【0082】
医薬組成物
本発明は、サイトカイン、ケモカイン、及びプロテアーゼの濃度を減少するか、又はこれらを阻害することができる薬剤を含有している医薬製剤を特徴としている。このような製剤は、治療及び予防の両方の適用を有している。本明細書に記載されている方法で有用な薬剤は、サイトカイン、ケモカイン、又はプロテアーゼの濃度を減少するものを包含する。所望により、本発明の組成物は、対象の体内循環に存在しているサイトカイン、ケモカイン、及びプロテアーゼの濃度を減少させる薬剤と共に製剤化される。サイトカイン又はケモカインの反応を減少する薬剤は、これに限定されないが、抗−TNF−アルファ抗体又はTNF阻害剤を包含する。
【0083】
本発明の化合物を医薬組成物の一部として投与することができる。組成物は、滅菌されていて、対象に投与するのに適している単位重量或いは容量で本発明の薬剤の治療有効量を含有していなければならない。本発明の組成物及び併用剤を、それぞれの化合物が個々の用量で存在している、医薬パックの一部とすることができる。
【0084】
予防的又は治療的投与に用いるための本発明の医薬組成物は滅菌されていなければならない。滅菌は、滅菌ろ過膜(例えば、0.2μmの膜)を通すろ過によって、ガンマ線照射によって、又は当業者に公知のその他の適切な方法によって容易に行われる。治療用ポリペプチド組成物は通常、滅菌されたアクセスポートを有する容器、例えば、静脈投与溶液バッグ、又は皮下注射針で突き通せるストッパーを有しているバイアルに入れる。これらの組成物は通常、水性溶液又は再構成用凍結乾燥物として、単位用量又は多用量容器、例えば密封アンプル又はバイアル内で貯蔵されるだろう。
【0085】
組成物は、随意に、薬学的に許容される賦形剤と混合できる。本明細書で用いられる「薬学的に許容される賦形剤」は、ヒトに投与するのに適している、1つ又はそれ以上の混合可能な固体又は液体の増量剤、希釈剤又は封入剤を意味する。賦形剤が、等張性及び化学的安定性を増強する物質のような、少量の添加剤を含有していることが好ましい。このような物質は用いられる用量及び濃度で受容者に非毒性であって、リン酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、酢酸塩、乳酸塩、酒石酸塩及びその他の有機酸又はそれらの塩;トリス−ヒドロキシメチルアミノメタン(TRIS)、重炭酸塩、炭酸塩及びその他の有機塩基及びそれらの塩のような緩衝液;アスコルビン酸のような、抗酸化剤;低分子量(例えば、約10残基未満)ポリペプチド、例えば、ポリアルギニン、ポリリジン、ポリグルタミン酸塩及びポリアスパラギン酸塩;血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリンのような、タンパク質;ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリプロピレングリコール(PPGs)、及びポリエチレングリコール(PEGs)のような、親水性ポリマー;グリシン、グルタミン酸、アスパラギン酸、ヒスチジン、リジン、又はアルギニンのような、アミノ酸;セルロース又はその誘導体、ブドウ糖、マンノース、蔗糖、デキストリン、デキストリン又は硫酸化炭水化物誘導体(例えば、ヘパリン、コンドロイチン硫酸、デキストラン硫酸のような)を包含する、モノサッカリド、ジサッカリド及びその他の炭水化物;カルシウムイオン、マグネシウムイオン及びマンガンイオンを包含する2価金属イオンのような、多価金属イオン;エチレンジアミン四酢酸(EDTA)のようなキレート剤;マンニトール又はソルビトールのような、糖アルコール;ナトリウム又はアンモニウムのような、イオン対;及び/又はポリソルベート又はポロキサマーのような、非イオン界面活性剤を包含する。安定化剤、抗菌剤、不活性ガス、体液及び栄養補給剤(すなわち、リンゲルブドウ糖液)、電解質補給剤などのようなその他の添加剤も包含でき、これらは通常の量で存在できる。
【0086】
上記のような組成物は、有効量を投与できる。有効量は、投与方法、治療する特定の疾患及び所望する結果によって決まる。これは疾患の段階、対象の年齢及び体調、もしあるなら、併用治療の特性、及び医師に周知の同様な因子によっても決まる。治療適用に対して、それは医学的に望ましい結果を達成するのに十分な量である。
【0087】
IαIpの減少を特徴とする疾患又は障害を有する対象に関しては、有効量はケモカイン、サイトカイン又はプロテアーゼの濃度又は活性を減少するのに十分であるか、又は病状に関連する症状を安定化、遅延、又は減少するのに十分な量である。
本発明の組成物が、急性炎症性疾患、敗血症、重篤なショック、敗血性ショック、関節リウマチ、癌、癌転移、感染性疾患、又は早期陣痛を治療するために用いられることを直接確認できる。一般に、本発明の組成物の用量は、1日当たり約0.01mg/kg〜1日当たり1000mg/kgである。約50〜約2000mg/kgの範囲の用量が適切であろうと予想される。静脈内投与のような、ある特定の投与形態は低用量をもたらす。最初の用量を適用した時点で対象における応答が不十分である場合は、より高い用量(又は異なった、より局所的な送達経路による事実上高い用量)を患者の耐性が許容する範囲で採用することができる。本発明の組成物の適切な全身濃度をもたらすために、1日当たり複数回投与が考えられる。
【0088】
各種の投与経路を利用できる。一般的に言えば、本発明の方法は、臨床的に受け入れられない副作用を引き起こさずに活性化合物の有効濃度を生じる何れかの方法を意味している、医学的に許容される何れかの投与方法を用いて実施される。その他の投与方法は、経口、直腸内、局所、眼球内、口腔内、膣内、嚢内、脳室内、気管内、経鼻、経皮、移植片内/移植片上、又は非経口の経路を包含する。「非経口」は、皮下、くも膜下腔内、静脈内、筋肉内、腹腔内、又は点滴を包含する。患者への利便性更には投薬スケジュールのために、経口投与は予防治療に好ましい。
【0089】
本発明の医薬組成物は、所望により1つ又はそれ以上の追加のタンパク質を更に随意に含有することができる。適切なタンパク質又は生体物質は、当業者に公知で利用可能な精製方法の何れかによってヒト又は哺乳動物の血漿から;組み換え組織培養、ウィルス、酵母、細菌、又は標準的な組み換えDNA技術によって導入されたヒト又は哺乳動物のタンパク質を発現する遺伝子を含有している同様なものの上澄液、抽出物、又は溶解物から;又はヒトの体液(血液、乳、リンパ液、尿、等)から;又は標準的な組み換え技術によって導入されたヒトタンパク質を発現する遺伝子を含有している組み換え動物から得ることができる。
【0090】
本発明の医薬組成物は、約5.0〜約8.0の範囲のような、生理学的pHを示す所定の値に製剤のpHを保持するために、1つ又はそれ以上のpH緩衝化合物を含有できる。水性液体製剤中で用いられるpH緩衝化合物は、アミノ酸又はアミノ酸の混合物、例えばヒスチジン又はヒスチジンとグリシンのようなアミノ酸の混合物のようなものでよい。また、pH緩衝化合物は、製剤のpHを、約5.0〜約8.0の範囲のような、所定のレベルに保持し、そしてカルシウムイオンとキレートを形成しない物質が好ましい。このようなpH緩衝化合物の実例は、これに限定されないが、イミダゾール及び酢酸イオンを包含する。pH緩衝化合物は、製剤のpHを所定のレベルに保持するのに適している何れかの量で存在できる。
【0091】
本発明の医薬組成物は、1つ又はそれ以上の浸透圧調整剤、すなわち、製剤の浸透圧特性(例えば、張度、浸透性及び/又は浸透圧)を投与される個体の血流及び血液細胞が受容可能なレベルに調整する化合物、も含有できる。浸透圧調整剤は、カルシウムイオンとキレートを形成しない化合物でよい。浸透圧調整剤は、製剤の浸透圧特性を調整する、当業者に公知或いは利用可能な何れの化合物であってもよい。当業者は、本発明製剤で用いるための所定の浸透圧調整剤の適合性を経験的に確認することができる。浸透圧調整剤の適切なタイプの実例は:これに限定されないが、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウムのような、塩;蔗糖、ブドウ糖、及びマンニトールのような、糖;グリシンのような、アミノ酸;及びこれらの物質及び/又は物質のタイプの1つ又はそれ以上の混合物:を包含する。浸透圧調整剤(複数も含む)は、製剤の浸透圧特性を調整するのに十分な何れかの濃度で存在できる。
【0092】
本発明の化合物を含有している組成物は、カルシウムイオン、マグネシウムイオン及び/又はマンガンイオンのような、多価金属イオンを含有することができる。組成物の安定化に役立ち、そして投与される個体に悪影響を及ぼさない何れの多価金属イオンも使用できる。これらの2つの基準に基づいて、当業者は、適切な金属イオンを経験的に決定でき、そしてそのような金属イオンの適切な供給源は公知であって、無機及び有機の塩を包含する。
【0093】
本発明の医薬組成物は非水性の液体製剤であってもよい。そこに含まれている活性薬剤(複数も含む)に安定性をもたらす限り、何れの適切な非水性液体も使用できる。好ましくは、非水性液体は親水性液体である。適切な非水性液体の実例は:グリセロール;ジメチルスルホキシド(DMSO);ポリジメチルシロキサン(PMS);エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール(「PEG」)200、PEG300、及びPEG400のようなエチレングリコール;及びジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール(「PPG」)425、PPG725、PPG1000、PPG2000、PPG3000及びPPG4000のような、プロピレングリコール:を包含する。
【0094】
本発明の医薬組成物は、混合水性/非水性液体製剤であってもよい。混合水性/非水性液体製剤がそこに含まれている化合物に安定性をもたらす限り、上記のような適切な非水性液体製剤を、上記のような水性液体製剤に加えて使用することができる。好ましくは、そのような製剤中の非水性液体は親水性液体である。適切な非水性液体の実例は:グリコール;DMSO;PMS;PEG200、PEG300、及びPEG400のようなエチレングリコール;PPG425、PPG725、PPG1000、PPG2000、PPG3000及びPPG4000のような、プロピレングリコール:を包含する。
【0095】
適切な安定製剤は、凍結又は非凍結液体状態中で活性薬剤の貯蔵を可能にできる。安定な液体製剤は、少なくとも−70℃の温度で貯蔵できるが、組成物の性質次第で、少なくとも0℃より高い温度で、又は約0.1℃〜約42℃でも貯蔵できる。タンパク質及びポリペプチドが、pH、温度、及び治療効果に影響を及ぼす多様なその他の因子の変化に敏感であることが当業者に一般に知られている。
【0096】
その他の送達システムには、徐放性、遅延放出、持続放出型の送達システムを包含できる。このようなシステムは、本発明組成物の反復投与を避けることができ、対象及び医師の利便性を増大する。放出送達システムの多くのタイプは、入手可能で当業者に公知である。これらは、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号、ヨーロッパ特許第58,481号)、ポリ(ラクチド−グリコリド)、コポリオキサレート、ポリカプロラクトン、ポリエステラミド、ポリオルトエステル、ポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸のようなポリヒドロキシ酪酸(ヨーロッパ特許第133,988号)、L−グルタミン酸とガンマ−エチル−L−グルタメートのコーポリマー(Sidman, K.R. et al., Biopolymers 22:547-556)、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)又はエチレンビニル酢酸(Langer, R. et al., J. Biomed. Mater. Res. 15:267-277; Langer, R. Chem. Tech. 12:98-105)、及びポリアンヒドリドのような、ポリマーベースのシステムを包含する。
【0097】
持続放出型組成物のその他の例は、成型品の形態にある半透性ポリマーマトリクス、例えば、フィルム又はマイクロカプセルを包含する。送達システムは非ポリマーシステム、すなわち:コレステロール、コレステロールエステルのようなステロール、及び脂肪酸又はモノ−、ジ−及びトリ−グリセリドのような中性脂肪を包含する脂質;生物学的に誘導された生体吸収性ヒドロゲル(すなわち、キチンヒドロゲル又はキトサンヒドロゲル)のようなヒドロゲル放出システム;シラスティック(sylastic)システム;ペプチドベースのシステム;ワックスコーティング、従来の結合剤及び賦形剤を用いる圧縮錠剤;部分融合移植片;等:を包含する。特定の例は、これに限定されないが、(a)薬剤が、米国特許第4,452,775号、同第4,667,014号、同第4,748,034号及び同第5,239、660号に記載されているようなマトリックス内の形態に含有されている浸食システム及び(b)活性成分が、米国特許第3,832,253号、及び同第3,854,480号に記載されているようなポリマーから制御された速度で浸出する拡散システムを包含する。
【0098】
本発明の方法及び組成物と共に用いることができる送達システムの別のタイプは、コロイド分散システムである。コロイド分散システムは、水中油型エマルジョン、ミセル、混合ミセル、及びリポソームを包む脂質ベースのシステムを包含する。リポソームは、人工膜のベシクルで、インビトロ又はインビボにおける送達ベクターとして有用である。大きさが0.2〜4.0μmの範囲である、大単膜ベシクル(LUV)を水性内部にある巨大高分子に封入して、生体活性形態で細胞に送達することができる(Fraley, R., and Papahadjopoulos, D., Trends Biochem. Sci. 6:77-80)。
【0099】
リポソームを、モノクローナル抗体、糖、糖脂質、又はタンパク質のような特定のリガンドとカップリングさせることによって、リポソームが特定の組織を標的にすることができる。リポソームは、Gibco BRL から、例えば、N−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)−プロピル]−N,N、N−トリメチルアンモニウムクロライド(DOTMA)及びジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDAB)のような陽イオン性脂質から形成されている、LIPOFECTIN(登録商標)及びLIPOFECTACE(登録商標)として、市販されている。リポソームを作成する方法は、当該技術分野で周知であって、多くの刊行物、例えば、ドイツ特許第3,218,121号;Epstein et al., Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 82:3688-3692 (1985); Hwang et al., Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 77:4030-4034 (1980); ヨーロッパ特許第52,322号、 ヨーロッパ特許第36,676号、ヨーロッパ特許第88,046号、ヨーロッパ特許第143,949号、ヨーロッパ特許第142,641号、日本特許出願第83−118008号、米国特許第4,485,045号、同第4,544,545号;及びヨーロッパ特許第102,324号に記載されている。リポソームは、Gregoriadis, G., Trends Biotechnol., 3:235-241にも概説されている。
【0100】
賦形剤のその他のタイプは、生体適合性微小粒子又は受容哺乳動物内に移植するのに適している移植片である。この方法で有用な生体内分解性移植片の例は、PCT国際出願第PCT/US/03307号(公開第WO95/24929号、発明の名称「Polymeric Gene Delivery Sustem」)に記載されている。PCT国際出願第PCT/US/0307号は、適切なプロモーターの制御下で外来遺伝子を含有するための、生体適合性、好ましくは生体内分解性のポリマーマトリックスを記載している。このポリマーマトリックスは、対象において、外来遺伝子又は遺伝子産物の持続放出を達成するために用いることができる。
【0101】
ポリマーマトリックスは、微小球体(ここでは、薬剤が固体のポリマーマトリックスに渡って分散されている)又はマイクロカプセル(ここでは、薬剤がポリマーシェルの核内に貯蔵されている)のような微小粒子の形態にあることが好ましい。薬剤を含有している前記のポリマーのマイクロカプセルは、例えば、米国特許第5,075,109号に記載されている。薬剤を含有するためのポリマーマトリックスの別の形態は、フィルム、コーティング、ゲル、移植片及びステントを包含する。ポリマーマトリックス装置の大きさ及び組成は、マトリックスが導入される組織において有利な放出動態をもたらすように選択される。ポリマーマトリックスの大きさは、使用する送達方法に従っても選択される。好ましくは、エアロゾル経路が用いられる場合は、ポリマーマトリックス及び組成物は界面活性賦形剤中に含まれる。ポリマーマトリックス組成物は、有利な分解速度を有するように、及び移動有効性を更に増大するための生体接着性がある材料で形成されるようにも選択することができる。マトリックス組成物は、分解されずに、むしろ長期に渡る拡散によって放出するようにも選択することができる。送達システムは、局所、部位特定送達に適している生体適合性微小球体であってもよい。このような微小球体は、Chickering, D.E., et al., Biotechnol. Bioeng., 52:96-101; Mathiowitz, E., et al., Nature 386:410-414 に記載されている。
【0102】
非生体分解性及び生体分解性ポリマーマトリックスの両方を本発明の組成物を対象に送達するために用いることができる。このようなポリマーは天然のポリマーでも合成のポリマーでもよい。ポリマーは、放出が望まれる期間、一般に、数時間から1年又はそれより長いオーダーで、に基づいて選択される。通常、数時間と3〜12ヶ月の間の期間にわたる放出が最も望ましい。ポリマーは、その重量の最大約90%が水を占めているヒドロゲルの形態であってよく、更に多価イオン又は別のポリマーと架橋していてもよい。
【0103】
生体分解性送達システムを形成するために用いることができる典型的な合成ポリマーは:ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアルキレン、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンオキシド、ポリアルキレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、ポリ−ビニルハライド、ポリビニルピロリドン、ポリグリコリド、ポリシロキサン、ポリウレタン及びそれらのコーポリマー、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、セルロースエーテル、セルロースエーテル、ニトロセルロース、アクリル酸とメタアクリル酸エステルのポリマー、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシ−プロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、カルボキシルエチルセルロース、三酢酸セルロース、硫酸セルロースナトリウム塩、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)、ポリ(ヘキシルメタクリレート)、ポリ(イソデシルメタクリレート)、ポリ(ラウリルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリレート)、ポリ(イソブチルアクリレート)、ポリ(オクタデシルアクリレート)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリビニル酢酸、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、乳酸とグリコール酸のポリマー、ポリアンヒドリド、ポリ(オルト)エステル、ポリ(酪酸)、ポリ(バレリアン酸)、及びポリ(ラクチド−コカプロラクトン)、及びアルギニン酸塩及びデキストラン及びセルロースを包含するその他の多糖類、コラーゲン、それらの化学誘導体(化学基、例えば、アルキル、アルキレンの置換、付加、水酸化、酸化、及び当業者が通常行うその他の修飾)、アルブミン及びその他の親水性タンパク質、ゼイン及びその他のプロラミン及び親水性タンパク質、コポリマー及びこれらの混合物を包含する。一般に、これらの物質は、酵素加水分解又はインビボで水への曝露によって、或いは表面又は体積浸食によって崩壊する。
【0104】
当業者は、急性炎症性疾患、敗血症、重篤なショック、敗血性ショック、関節リウマチ、癌、癌転移、感染性疾患、又は早期陣痛を治療するために本発明の化合物を使用する最善の治療計画が直ちに決定できるということを認識できるだろう。これは、実験の問題ではなく、むしろ一種の最適化であり、これは医療において日常的に実施されている。ヌードマウスでのインビボ研究は、しばしば、用量及び送達計画を最適化して開始する出発時点を提供する。注入の頻度は、あるマウス研究でなされているように、最初は週に1回であろう。しかしながら、この頻度を、最初の臨床試験でえられた結果及び特定の患者の必要性に基づいて、1日〜2週間おき〜毎月へ最良に調節することができる。
【0105】
ヒトの投与量は最初、動物モデルと比較してヒトへの投与量を修正することが当該技術分野で通常のことであると当業者が認識しているように、マウスで用いられた化合物の量から推定して決定することができる。
ある特定の実施態様では、用量は、化合物約1mg/体重kg〜化合物約5000mg/体重kg;又は約5mg/体重kg〜約4000mg/体重kg;又は約10mg/体重kg〜約3000mg/体重kg;又は約50mg/体重kg〜約2000mg/体重kg;又は約100mg/体重kg〜約1000mg/体重kg;又は約150mg/体重kg〜約500mg/体重kg;まで変動してもよいと推測される。
別の実施態様では、この用量は約1、5、10、25、50、75、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、700、750、800、850、900、950、1000、1050、1100、1150、1200、1250、1300、1350、1400、1450、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000mg/体重kgであってよい。
別の実施態様では、より高い用量が用いられると推定され、そのような用量は、化合物約5mg/体重kg〜化合物約20mg/体重kgの範囲であってよい。
別の実施態様では、用量は8、10、12、14、16又は18mg/体重kgであってよい。
もちろん、最初の臨床試験結果及び特定の患者の必要性に基づいて、このような治療プロトコールで通常なされているように、投与量を上方又は下方に調整できる。
【0106】
併用療法
本発明の組成物及び方法を、当該技術分野で公知の標準的な治療法と併用して投与することができる。例えば、追加の治療薬は、抗癌剤、抗炎症剤、抗凝固剤又は免疫調節剤でよい。例えば、ジデオキシヌクレオシド、例えば、ジドブジン(AZT)、2’,3’−ジデオキシイノシン(ddI)及び2’,3’−ジデオキシシチジン(ddC)、ラミブジン(3TC)、スタブジン(d4T)、及びTRIZIVIR(アバカビル+ジドブジン+ラミブジン);非ヌクレオシド、例えば、エファビレンツ(DMP−266、DuPont Pharmaceuticas/Bristol Myers Squibb)、ネビラピン(Boehringer Ingleheim)、及びデラビリジン(Pharmacia-Upjohn);Ro3−3335及びRo24−7429のような、TAT拮抗薬;プロテアーゼ阻害剤、例えば、インディナビール(Merck)、リトナビール(Abbott)、サキナビール(Hoffmann LaRoche)、ネルフィナビール(Agouron Pharmaceuticals)、141W94(Glaxo-Wellcome)、アタザナビール(Bristol Myers Squibb)、アンプレナビール(GlaxoSmithKline)、フォサムプレナビール(GlaxoSmithKline)、ティプラナビール(Boehringer Ingleheim)、KALETIRA(ロピナビール+リトナビール、Abbott);及び9−(2−ヒドロキシエトキシメチル)グアニン(アシクロビル)、インターフェロン(例えば、アルファ−インターフェロン)インターロイキンII、及びホスホノホルメート(Foscarnet)のようなその他の薬剤;又は侵入阻害剤、例えば、T20(エンフュービルタイド、Roche/Trimeris)又はUK−427,857(Pfizer);レバミソール(levamisol)又はチモシン(thymosin)、シスプラチン、カルボプラチン(carboplatin)、ドセタキセル(docetaxel)、パクリタキセル(paclitaxel)、フルオロウラシル、カペシタビン(Capecitabine)、ゲムシタビン(gemcitabine)、イリノテカン(irinotecan)、トポテカン(topotecan)、エトポシド(etoposide)、マイトマイシン、ゲフィチニブ(gefitinib)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ドキソルビシン、シクロホスファミド、セレコキシブ(celecoxib)、ロフェコキシブ(rofecoxib)、バルデコキシブ(valdecoxib)、イブプロフェン、ナプロキセン、ケトプロフェン、デキサメタゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、ヒドロコルチゾン、アセトアミノフェン、ミソニダゾール(misonidazole)、アミフォスチン(amifostine)、タムスロシン(tamsulosin)、フェナゾピリジン(phenazopyridine)、オンダンセトロン(ondansetron)、グラニセトロン(granisetron)、アロステロン(alosetron)、パロノセトロン(palonosetron)、プロメタジン、プロクロルペラジン、トリメトベンザミド、アプレピタント、ジフェノキシレートとアトロピン、及び/又はロペラミド(loperamide)。アンチトロンビンIIIのような抗凝固剤、活性化プロテインC、及びフーリン阻害剤(furin inhibitors)のようなプロテアーゼ阻害剤。
【0107】
必要に応じて、組織の修復又は再生を誘発するか或いは細胞死を阻止する薬剤を、IαIpタンパク質と共に投与する。このような薬剤は、幹細胞、コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニン、インテグリン、血管新生因子、抗炎症因子、グリコサミノグリカン、ビトロジェン(vitrogen)、抗体及びその断片、これらの薬剤の機能的同等物、及びこれらの組み合わせを包含する。本発明の併用剤を同時に、又は互いに数時間、数日、又は数週間以内に投与することができる。ある方法では、組織の修復又は再生を誘発するか或いは細胞死を阻止する薬剤を、本明細書に記載されている従来の治療の投与の前に、それと同時に、又はその後に投与する。
【0108】
キット
本発明はIαIpタンパク質の精製キットを提供する。一実施態様では、キットはIαIpタンパク質のクロマトグラフィー精製のための試薬を含んでいる。ある実施態様では、キットは低pHの洗浄緩衝液(例えば、pH3.1〜4.0)を含有している滅菌容器を含有してなり;このような容器は、アンプル、ボトル、バイアル、チューブ、バッグ、袋、ブリスターパック、又は当該技術分野で公知のその他の適切な容器形態であってよい。このような容器はプラスチック、ガラス、又は試薬を保持するのに適切な材料から作られていてよい。
【0109】
必要に応じて、本発明のキットは、精製手順に関する使用説明書と共に、IαIpタンパク質を精製するための試薬を提供する。使用説明書は通常、精製手順で用いられる緩衝液の条件及び容量についての情報を含んでいる。別の実施態様では、使用説明書は、以下のものの少なくとも1つを含んでいる;試薬又は試薬の組み合わせの説明;注意;警告;科学的な調査報告;及び/又は参考文献。使用説明書は、別紙、パンフレット、カード又はホルダーとして、又は容器(存在するならば)若しくはキット中に又はキットと共に供給される容器に貼付されたラベルの上に直接印刷することができる。
【0110】
本発明は、対象におけるインター−アルファ阻害タンパク質(IαIp)の濃度を増大するか、或いは対象におけるサイトカイン、ケモカイン、又はプロテアーゼの濃度を減少するためのキットを提供する。本発明は、対象におけるIαIp濃度の減少、或いは対象におけるサイトカイン、ケモカイン、又はプロテアーゼの濃度の増大に関連する疾患、障害、又はそれらに伴う症状を治療又は予防するためのキットも提供する。疾患、障害、又はそれらに伴う症状は、急性炎症性疾患、敗血症、重篤なショック、敗血性ショック、関節リウマチ、癌、癌転移、外傷/損傷、感染性疾患、又は早期陣痛を包含できる。
一実施態様では、キットは精製されたIαIpの有効量を含有している医薬包装を包含している。組成物が単位剤形で存在していることが好ましい。
ある実施態様では、キットは治療用又は予防用組成物を含有している滅菌容器を含有していて;このような容器は、箱、アンプル、ボトル、バイアル、チューブ、バッグ、袋、ブリスターパック、又は当該技術分野で公知のその他の適切な容器形態であってよい。このような容器は、プラスチック、ガラス、ラミネート紙、金属箔、又は医薬品を保持するのに適しているその他の材料で作られていてよい。
【0111】
必要に応じて、本発明の組成物又はそれらの組合せを、それらを必要としている対象へそれらを投与する使用説明書と共に提供する。使用説明書は通常、IαIpでの治療に適している疾患又は障害(例えば、急性炎症性疾患、敗血症、重篤なショック、敗血性ショック、関節リウマチ、癌、癌転移、外傷/損傷、感染性疾患、又は早期陣痛)を治療又は予防するための化合物の使用についての情報を包んでいる。
別の実施態様では、使用説明書は以下のものの少なくとも1つを含んでいる:化合物又は化合物の組み合わせの説明;対象におけるIαIp濃度を増大する、及び/又は対象におけるサイトカイン、ケモカイン、又はプロテアーゼの濃度を減少するための投与計画及び投与;急性炎症性疾患、敗血症、重篤なショック、敗血性ショック、関節リウマチ、癌、癌転移、外傷/損傷、感染性疾患、又は早期陣痛或いはこれらの症状を治療するための投与計画及び投与;注意;警告;適応症;禁忌;過剰投与情報;副作用;動物での薬効薬理;臨床試験;及び/又は参考文献。使用説明書は、容器(存在するならば)上に直接、又は容器に貼付したラベルとして、又は容器内又は容器と共に提供される別紙、パンフレット、カード又はホルダーとして印刷されていてよい。
【0112】
本発明は、試料中のインター−アルファ−阻害タンパク質(IαIp)を分析するためのキットも提供する。一実施態様では、キットは既知の量の精製IαIpを含有している。精製IαIpの既知量は、IαIp濃度が未知の試料中のIαIpを測定するための分析基準として用いられる。組成物が一定分量で存在していることが好ましい。
ある実施態様では、キットは一定量の精製IαIpを含有している減菌容器を含んでいて;このような容器は、箱、アンプル、ボトル、バイアル、チューブ、バッグ、袋、ブリスターパック、又は当該技術分野で公知のその他の適切な容器形態であってよい。このような容器は、プラスチック、ガラス、ラミネート紙、金属箔、又は化合物又は溶液を保持するのに適しているその他の材料から作られていてよい。
別の態実施態様では、使用説明書が以下のものの少なくとも一つを包含している:化合物又は化合物の組み合わせの説明。使用説明書は容器(存在するならば)上に直接、又は容器に貼付したラベルとして、又は容器内又は容器と共に提供される別紙、パンフレット、カード又はホルダーとして印刷されていてよい。
【実施例】
【0113】
実施例1.低pH緩衝液による洗浄を含む単一クロマトグラフィー工程でIαIpを精製した。
単一クロマトグラフィー工程を用いるヒト血漿からIαIpの精製についてのスキームは、低pH洗浄を含んでいる(図1A)。低pH洗浄工程によるIαIp精製手順を用いて脱クリオ血漿からIαIpを精製した。脱クリオ血漿(25mMのトリス+200mMのNaCl中1:10に希釈、pH7.6、ろ過処理した0.2μM)。希釈した血漿(50カラム容量)を市販の1mLDEAEモノリシックカラム(DEAE−CIM;BIA Separations)に1分当たり5カラム容量(cv)の流速で流した。カラムの結合能力をカラム容量1mL当たり約50mL希釈血漿と推測した。通過液を採取した。追加の血漿希釈緩衝液(20カラム容量、25mMのトリス、200mMのNaCl、pH7.6)をカラムに流して、出発材料を完全にカラム通過させた。通過ピークがベースラインに戻った時に、カラムを洗浄緩衝液(150mMの酢酸、pH4.0、又は200mMの酢酸の5カラム容量、pH7.6)で洗浄して、ピークを採取した。低pH洗浄の後、溶出に備え、カラムを更に緩衝液で洗浄してpHを低pH洗浄前のそれにまで高くした。結合したタンパク質を高塩溶出緩衝液(15カラム容量、25mMのトリス、1000mMのNaCl、pH7.6)で溶出した。ピークを採取した。この画分が高純度のIαIpを含有していた。緩衝液を交換して低分子量の溶質及び塩を除去するために、30kDaに切り取った膜を用いて限外ろ過又は透析ろ過を実施した。精製したIαIpは凍結乾燥もできる。
【0114】
3つの異なった洗浄緩衝液を3つの個別分離で用いるDEAE モノリシッククロマトグラフィーによる同量血漿の分画を用いて、洗浄工程におけるIαIpタンパク質の精製に対するpHを低下させる効果を確認した。
低pH洗浄を用いないDEAE モノリシッククロマトグラフィーによる血漿の分画(pH7.6)は、1000mMのNaCl(pH7.6)で溶出すると比較的大きいピークの溶出をもたらした(図2A)。精製されたIαIpは、純度が約10〜15%のIαIpを95%を越える収率で有していた。低pH洗浄(pH4.0)を適用すると、1000mMのNaCl(pH7.6)による溶出前の低pH洗浄によって、更に夾雑物が分離されていることを示す大きいピークをもたらした。溶出された画分中に純度40〜45%のIαIpが約95%回収された(図2B)。洗浄工程のpHをpH3.3に低下させると、pH4.0のものと比較して溶出ピークの大きさの減少がもたらされた(図2C)。溶出による収率は、純度80〜90%で約90%IαIpであった(図2C)。これらの検討は、洗浄工程においてpHを低下させると、収率が僅かに減少するだけでより高い純度のIαIpがもたらされることを示している。
【0115】
脱クリオ血漿を、2つの低pH洗浄緩衝液(150mMの酢酸、pH4.0、及び200mMの酢酸、pH3.3)を用いるDEAEモノリシッククロマトグラフィーで分離して、タンパク質の分画に対する効果を実験するために用いた(図3)。それぞれの低pH洗浄はカラムから多量のタンパク質の除去をもたらした。2つの低pH洗浄緩衝液の適用に対応して2つのピークが観察されたことから、この結果は、pH3.3での2回目の低pH洗浄が、pH4.0での1回目の低pHで除去されなかった夾雑物をさらに除去できたことを示唆した。2回目の低pH洗浄工程で更なるタンパク質が除去されることを示す同様な結果が、画分D及び画分Cを出発材料として用いたときに観察された(図4A〜4D)。
【0116】
DEAE モノリシックカラムクロマトグラフィーによる、出発材料画分DからのIαIpタンパク質の精製から得られる画分も、ウェスタンブロットで分析した(図5)。第1回低pH洗浄(150mMの酢酸、pH4.0)で、IαIp(250kDa)が検出できた。第2回低pH洗浄(200mMの酢酸、pH3.3)で、幾らかのIαIp(250kDa及び125kDa)もカラムから解離して結合されない状態で溶出した。しかしながら、精製されたIαIpの過半量は溶出液中に検出された。2つの低pH洗浄液を用いるDEAE モノリシックカラムクロマトグラフィーによる、出発材料画分CからのIαIpタンパク質の精製について、同様な結果が観察された。
【0117】
2つの低pH洗浄工程(pH4.0及びpH3.3)を用いるDEAE モノリシックカラムクロマトグラフィー(DEAE−CIM;BIA Separations)による、出発材料画分Dの分離から得られる画分に対しても、収率及び純度の定量を行った(表1)。
【0118】
【表1】

【0119】
出発材料中の99%を越えるIαIpが、25mMのトリス、200mMのNaCl、pH7.6のカラムに結合して、総IαIpの約0.007%が流出液中に検出された。1回目の洗浄工程(150mMの酢酸、pH4.0)のカラムへの適用は、幾らかのIαIpの損失(総IαIpの4.4%)を伴う大量の夾雑物の除去(総タンパク質の〜50%)をもたらした。2回目の洗浄工程(200mMの酢酸、pH3.3)のカラムへの適用は、容認可能なIαIpの損失(総IαIpの15%)を伴う大量の夾雑物のさらなる除去(総タンパク質の〜19%)をもたらした。残余の結合タンパク質の高塩濃度(25mMのトリス+1000mMのNaCl)による溶出は、純度90%の総IαIpの76%の収率を生じた。画分の分析は同様の画分のウェスタンブロットと相関していた(図5)。この分析は、低pH緩衝液を用いる洗浄による単一クロマトグラフィー工程で、IαIpが実質的に精製されたことを示している。
【0120】
実施例2.低pH洗浄を用いるIαIpタンパク質のクロマトグラフィー精製はスケールアップできる。
低pH洗浄工程を用いるIαIp洗浄手順をより大きいカラム容量にスケールアップできるか否かを確認するために、脱クリオ血漿及び中間血漿画分(画分D及び画分C)のクロマトグラフィーを8mLのDEAEモノリシックカラム上で行った。UVは、1mLのDEAEモノリシックカラムで分離した脱クリオ血漿及び中間血漿画分と同様であった(図6A、6C、及び6E)。それぞれのクロマトグラフィー分離で得られる画分も、非変性SDS−PAGEで分析した(図6B、6D、及び6F)。多様な出発材料の精製に関する溶出画分が、IαIpタンパク質の分子量に対応する、250kDaバンド及び125kDaバンドの存在を示した。従って、IαIpの精製を8倍大きいカラム容量にスケールアップできた。この結果は、IαIpタンパク質が、より大きいスケール(例えば、800mLカラム及び8Lカラム)上で低pH洗浄方法を用いて精製できることを示唆している。
【0121】
実施例3.低pH洗浄工程で精製されたIαIpタンパク質が、競合的ELISAアッセイにおいて、抗体のヒトIαIpへの増大した結合を示した。
低pH洗浄を用いないものと比較した、低pH洗浄を用いたDEAEモノリシックカラムクロマトグラフィーで精製したIαIpの定量と定性を確認するために、両条件下で精製したIαIpの濃度を、Lim et al. (J. of Infectious Diseases, 2003)に記載のようにして、MAb69.31を用いる競合的酵素免疫測定法(ELISA)によって分析した。精製された画分も、市販のビシンコニン酸(BCA)タンパク質アッセイで定量的に測定して、総タンパク質濃度を確認した。驚いたことに、pH3.3の洗浄条件を用いて精製したIαIpについて、競合的ELISAによって測定したIαIp濃度が、BCAタンパク質アッセイによって測定した総タンパク質濃度と比べてもより高かった。低pH洗浄を用いて精製されたIαIpを、競合的ELISAで観察すると、カラムに付した出発材料に相当する量又は低pH洗浄を用いない条件で精製したIαIpに相当する量の何れかと比較した場合に、予測値より300%高い濃度を有していた。競合的ELISAにおいて増大した見かけ上のIαIp濃度は、pH3.6及び3.3の条件の低pH洗浄を用いて精製されたIαIpに対しても観察されたが、pH4.0の条件の洗浄を用いて精製されたIαIpに対しては観察されなかった。
【0122】
競合的ELISAでアッセイされた試料中に総タンパク量が保持されたままであったので、この結果は、精製中に幾らかの変化、又は活性化までが引き起こされたかもしれないということを示唆した。あらゆる特定の理論と結び付けるものではないが、IαIpの活性部位が低pHの条件によって曝露されると考えられる。競合的ELISAで用いられるMAb69.31抗体は、分子の活性部位に位置しているエピトープを認識する。活性部位が曝露されると、競合的ELISAから得られる濃度は、測定するタンパク質の量を制御すると、低pH条件下で精製されたIαIpについては増大すると考えられるだろう。従って、低pH条件がはIαIpの阻害活性を妨害し、それによって活性を増大させるのだろう。
【0123】
IαIpの阻害活性が低pH条件によって変化したか否かを確認するために、発色基質L−BAPA(N(アルファ)−ベンゾイル−L−アルギニン−4−ニトロアニリド塩酸、Fluka Chemicals)を用いるトリプシン阻害アッセイで、IαIpの生物活性を測定した。このアッセイは、L−BAPAの加水分解を阻害するIαIpの能力に基づいて、特異的阻害活性を測定している。410nmにおけるΔ吸収/分の比の増加によって、阻害をモニターできる。低pH洗浄を用いて精製したIαIpの特異的阻害活性を計算して、低pH洗浄を用いずに精製したIαIpのそれと比較した。クロマトグラフィー中の低pH条件(即ち、約3.3より高いpH)は、精製したIαIpの生物活性を、低pHを用いないで精製したIαIpと比較して、不活性化しない或いは低下させなかった。これらの結果は、低pH洗浄工程で精製したIαIpは、低pH条件を用いずに精製したIαIpと少なくとも同程度に生物活性であることを示した。
【0124】
実施例4.塩を含有する緩衝液及び低pHの緩衝液での洗浄を含む単一クロマトグラフィー工程でIαIpを精製した。
塩緩衝液洗浄工程及び低pH洗浄工程を含む単一クロマトグラフィー工程を用いる、ヒト血漿からのIαIpの精製についてのスキーム(図1B)。
塩緩衝液洗浄工程及び低pH洗浄工程を用いるIαIp精製手順を、脱クリオ血漿からIαIpを精製するために用いた(図7A)。脱クリオ血漿(40mMのトリス+200mMのNaCl、pH7.6に1:10で希釈したものの12.5カラム容量;ろ過処理して0.2μM)。希釈した血漿を市販の8mLDEAEモノリシックカラム(DEAE−CIM;BIA Separations)に、1分当たり2.5カラム容量(cv)の流速で流した。通過液を採取した。追加のローディング緩衝液(25mMのトリス、200mMのNaCl、pH7.6の7カラム容量)をカラムに流して、出発材料を完全にカラム通過させた。通過ピークがベースラインに戻ったら、カラムを塩含有洗浄緩衝液(40mMのトリス−HCl、290mMのNaCl、pH7.6の10カラム容量)で洗浄して、ピークを採取した。塩洗浄の後、低pH緩衝液(200mMの酢酸ナトリウム、pH2.95の10カラム容量)でカラムを更に洗浄してピークを採取した。第2回目の洗浄に続いて、結合したタンパク質を高塩溶出緩衝液(40mMクエン酸ナトリウム、pH6.50、1000mMのNaClの5カラム容量)で溶出した。ピークを採取した。この画分は高純度のIαIpを含有していた。
【0125】
塩緩衝液洗浄工程及び低pH洗浄工程を用いるIαIp精製手順を、中間血漿画分(画分D)からIαIpを精製するために用いた(図7B)。中間血漿画分(2.5カラム容量、40mMのトリス+200mMのNaCl、pH7.6に1:10で希釈;ろ過して0.2μM)を市販の8mLDEAEモノリシックカラム(DEAE−CIM;BIA Separations)に、1分当たり2.5カラム容量(cv)の流速で流した。通過液を採取した。ローディング緩衝液をカラムに流して、出発材料を完全にカラム通過させた。通過ピークがベースラインに戻ったら、塩含有洗浄緩衝液(40mMのトリス−HCl、290mMのNaCl、pH7.6の10カラム容量)でカラムを洗浄して、ピークを採取した。塩洗浄の後、低pH緩衝液(200mMの酢酸ナトリウム、pH2.95の10カラム用量)でカラムを更に洗浄して、ピークを採取した。第2回の洗浄に続いて、結合したタンパク質を高塩溶出緩衝液(40mMのクエン酸ナトリウム、pH6.50、1000mMのNaClの5カラム用量)で溶出した。ピークを採取した。この画分は高純度のIαIpを含有していた。
【0126】
塩含有緩衝液(290mMのNaCl)洗浄工程及び低pH(pH2.95)洗浄工程を用いる、DEAEモノリシックカラムクロマトグラフィー(DEAE−CIM;BIA Separations)によって、出発材料画分Dの分離で得られた画分についても、収率及び純度の定量を行って確認した(表2)。
【0127】
【表2】

【0128】
この分析は、低pH緩衝液洗浄工程を含む精製手順への塩緩衝液洗浄工程の追加が、血漿画分から精製されたIαIpを88.2%の収率でもたらすことを示している。表1の結果と比較して、低pH緩衝液洗浄工程を含む精製手順への塩緩衝液洗浄工程の追加は、血漿又は血漿画分から精製されたIαIpの収率を増大する。
【0129】
更に、2つの方法の画分のSDS−PAGE分析が、低pH洗浄工程(pH2.95)を実施した時の溶出画分中には〜75〜80kDaバンドが存在したが、塩洗浄工程(290mMのNaCl)及び低pH工程(pH2.95)の両方を実施した時には存在しなかったことを示した(図8)。塩洗浄工程及び低pH工程によるIαIp精製手順の溶出画分は、インター−アルファ阻害剤(250kDa)及びプレ−アルファ阻害剤(125kDa)に対応する、実質的に2つのタンパク質バンドからなっていた。従って、塩洗浄工程と低pH工程を含む精製手順の場合の溶出画分は高純度のIαIpを含有していた。
【0130】
その他の実施態様
上記説明より、本明細書に記載されている発明に各種の用途及び条件を採用するために改変及び修正を行えることは明らかである。このような実施態様も以下の特許請求の範囲の範囲内である。
【0131】
本明細書の可変用語の定義の何れかにおける要素の列挙の説明は、単一の要素又は列挙された要素の組み合わせ(又は準組み合わせ)の何れかとしての可変用語の定義を包含している。本明細書の実施態様の列挙は単一の実施態様又はその他の何れもの実施態様或いはそれらの一部分との組み合わせとしての実施態様を包含している。
【0132】
本明細書で述べられている全ての特許及び刊行物は、それぞれの独立した特許及び刊行物が参照により取り込まれることが具体的にかつ個別に示されていたのと同様の範囲を参照することにより、本明細書に取り込まれている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
方法が、IαIpタンパク質を約4.0以下のpHの条件に曝露する工程を含有してなる、インター−アルファ−阻害タンパク質(IαIpタンパク質)を精製する方法。
【請求項2】
IαIpタンパク質を約3.6以下のpHの条件に曝露する工程を含有してなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
IαIpタンパク質を約3.3以下のpHの条件に曝露する工程を含有してなる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
IαIpタンパク質をpH約3.3〜約2.9の条件に曝露する工程を含有してなる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
クロマトグラフィー工程又は固相抽出工程を含有してなる、請求項1〜4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
クロマトグラフィー工程が、液体クロマトグラフィー、カラムクロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー、又はこれらの組み合わせを含有している、請求項1〜5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
クロマトグラフィーが、モノリシック担体又は粒子ベースの担体の使用を含有している、請求項1〜6の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
モノリシック担体又は粒子ベースの担体が固定化陰イオン交換リガンドを含有している、請求項1〜7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
固定化陰イオン交換リガンドが、ジエチルアミノエタン(DEAE)又は4級アミン(Q)である、請求項1〜8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つの緩衝液洗浄工程を含有してなり、そこで少なくとも1つの緩衝液洗浄工程の洗浄緩衝液が約4.0以下のpHを有している、請求項1〜9の何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも1つの緩衝液洗浄工程を含有してなり、そこで少なくとも1つの緩衝液洗浄工程の洗浄緩衝液が約3.6以下のpHを有している、請求項1〜10の何れか一項に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも1つの緩衝液洗浄工程を含有してなり、そこで少なくとも1つの緩衝液洗浄工程の洗浄緩衝液が約3.3以下のpHを有している、請求項1〜11の何れか一項に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも1つの緩衝液洗浄工程を含有してなり、そこで少なくとも1つの緩衝液洗浄工程の洗浄緩衝液がpH約3.3〜約2.9を有している、請求項1〜12の何れか一項に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも1つの緩衝液洗浄工程を含有してなり、そこで少なくとも1つの緩衝液洗浄工程の洗浄緩衝液が約250mM NaCL以上の塩濃度を有している、請求項1〜13の何れか一項に記載の方法。
【請求項15】
IαIpタンパク質が血液から精製される、請求項1〜14の何れか一項に記載の方法。
【請求項16】
IαIpタンパク質が血漿又は血漿画分から精製される、請求項1〜15の何れか一項に記載の方法。
【請求項17】
血漿が脱クリオ血漿であるか、或いは血漿画分が中間血漿画分である、請求項1〜16の何れか一項に記載の方法。
【請求項18】
中間血漿画分がIαIp含有画分である、請求項1〜17の何れか一項に記載の方法。
【請求項19】
血液、血漿画分、又は中間血漿画分が、ヒト、霊長類、ウシ、ウマ、ブタ、ヤギ、ネコ、イヌのもの又はそれらの組み合わせである、請求項1〜18の何れか一項に記載の方法。
【請求項20】
IαIpタンパク質が約60〜280kDaの見掛けの分子量を有している、請求項1〜19の何れか一項に記載の方法。
【請求項21】
IαIpが生物活性を有している、請求項1〜20の何れか一項に記載の方法。
【請求項22】
生物活性が、サイトカイン阻害活性、ケモカイン阻害活性、又はセリンプロテアーゼ阻害活性である、請求項1〜21の何れか一項に記載の方法。
【請求項23】
方法が、約85%〜約100%のIαIpタンパク質の収率を有している、請求項1〜22の何れか一項に記載の方法。
【請求項24】
ウィルス不活性化工程又はナノろ過工程を更に含有してなる、請求項1〜23の何れか一項に記載の方法。
【請求項25】
ウィルス不活性化工程又はナノろ過工程が、クロマトグラフィー工程の前に存在する、請求項1〜24の何れか一項に記載の方法。
【請求項26】
ウィルス不活性化工程又はナノろ過工程が、クロマトグラフィー工程の後に存在する、請求項1〜25の何れか一項に記載の方法。
【請求項27】
請求項1〜26に記載の方法によって精製されたIαIpタンパク質を含有してなる、組成物。
【請求項28】
請求項1〜26の何れか1項に記載の方法によって精製されたIαIpタンパク質の有効用量及び薬学的に許容される賦形剤を含有してなる医薬組成物。
【請求項29】
それを必要としている対象を処置するための、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項30】
それを必要としている対象が、ヒト、霊長類、ウシ、ウマ、ブタ、ヤギ、ネコ、又はイヌである、請求項29に記載の医薬組成物。
【請求項31】
それを必要としている対象が、急性炎症性疾患、敗血症、重度のショック、敗血性ショック、関節リウマチ、癌、癌転移、外傷/損傷、感染性疾患、又は早期陣痛の治療が必要であると判定されたヒトである、請求項30に記載の医薬組成物。
【請求項32】
対象に請求項28に記載の組成物を投与することを含有してなる、対象における疾患又は疾患の症状を治療又は予防する方法。
【請求項33】
対象が、請求項27に記載の組成物で治療することが必要であると判定されている、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
対象が、、急性炎症性疾患、敗血症、重度のショック、敗血性ショック、関節リウマチ、癌、癌転移、外傷/損傷、感染性疾患、又は早期陣痛の治療が必要であると判定されている、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
約4.0以下のpHを有する少なくとも1つの緩衝溶液及びキットを使用するための説明書を含有してなる、IαIpタンパク質を精製するためのキット。
【請求項36】
少なくとも1つの緩衝溶液が約4.0以下のpHを有する洗浄緩衝液である、請求項35に記載のキット。
【請求項37】
少なくとも2つの緩衝溶液が約4.0以下のpHを有する洗浄緩衝液である、請求項35に記載のキット。
【請求項38】
第1洗浄緩衝液が約4.0のpHを有し、そして第2洗浄緩衝液が約2.9のpHを有している、請求項37に記載のキット。
【請求項39】
250mM Nacl以上の塩濃度を有している、少なくとも1つの緩衝溶液をさらに含有してなる、請求項35に記載のキット。
【請求項40】
請求項26に記載の組成物及び治療用途についての使用説明書を含有してなる、キット。
【請求項41】
請求項26に記載の組成物及び分析用途についての使用説明書を含有してなる、キット。
【請求項42】
方法が:
血液、血漿画分、又は中間血漿画分をクロマトグラフィーカラムに付すこと、
カラムを約4.0以下のpHを有する洗浄緩衝液に曝すこと:
を含有してなる、インター−アルファ−阻害タンパク質(IαIpタンパク質)を精製する方法。
【請求項43】
インター−アルファ−阻害タンパク質(IαIpタンパク質)がカラムに結合する、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
インター−アルファ−阻害タンパク質(IαIpタンパク質)が単離される、請求項42〜43の何れか一項に記載の方法。
【請求項45】
請求項1〜26の何れか一項に記載の方法で作られた、精製したインター−アルファ−阻害タンパク質(IαIpタンパク質)。
【請求項46】
IαIpタンパク質が、競合的酵素免疫測定法(ELISA)で対照と比較して増大した結合を有していると測定される、請求項42に記載のIαIpタンパク質。
【請求項47】
結合が、対照と比較して、1、1.5、2、3、4、5、又は10倍を越えて増大している、請求項46に記載のIαIpタンパク質。
【請求項48】
IαIpタンパク質が約85%〜約100%純粋な純度範囲を有している、請求項45に記載のIαIpタンパク質。
【請求項49】
請求項45〜48の何れか一項に記載のIαIpタンパク質及び分析用途についての使用説明書を含有してなる、キット。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4A−B】
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【図4C−D】
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【図5】
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【図6A−B】
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【図6C−D】
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【図6E−F】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2011−524343(P2011−524343A)
【公表日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−511643(P2011−511643)
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際出願番号】PCT/US2009/003291
【国際公開番号】WO2009/154695
【国際公開日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【出願人】(510314220)プロセラ バイオロジクス, エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】