説明

血液細胞の新規分類法ならびにそれを利用したテイラーメード治療および予防

【課題】本発明は、白血病などの疾患に対する、より有効な治療法を提示するための診断技術を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、細胞の分化成熟段階を識別する方法であって、 A)少なくとも1つの細胞マーカーの発現レベルを測定する工程;およびB)該発現レベルに基づき、該細胞の分化成熟段階を決定する工程;を包含する、方法を提供する。本発明はさらに、細胞の分化成熟段階に応じて被検体を処置する方法であって、ここで、A)少なくとも1つの細胞マーカーの発現レベルを測定する工程;B)該発現レベルに基づき、該細胞の分化成熟段階を決定する工程;および C)決定された分化成熟段階に適切な処置を該被検体に施す工程、を包含する、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞の分類法に関する。より詳細には、本発明は、細胞の分化過程に応じて詳細に分類する方法およびそのための関連技術に関する。
【背景技術】
【0002】
フローサイトメトリー技術を用いて種々の細胞の解析が行われるようになっている。特に、血液細胞の分化の判定が、フローサイトメトリー技術により可能となっている。このような分化判定は、白血病細胞の分析にも応用され、診断にも応用されるようになってきている。
【0003】
フローサイトメトリーの利点としては、例えば、芽球の占める割合を把握しやすいこと、特異性および感度が高いこと、再現性が高いこと、多数の細胞を解析することができること、所要時間が短いことなどが挙げられる。しかし、他方、ある白血病のみに特異的な抗原はほとんどないこと、ある系統のみに特異的な抗原はほとんどないこと、白血病細胞によって抗原の発現の仕方または密度が異なることなどの白血病細胞の特徴がデータ判定を困難にさせていることも事実であるとされている。
【0004】
これまでの白血病細胞解析では、白血病細胞の系統(lineage)を明確にすることを念頭にパネルが作成されてきた。このパネル作成では、種々のCD抗原が組み合わされて使用されている。これらのCD抗原を組み合わせることによって、白血病を、前駆体B−ALL、前駆体A−ALL、B−CLL、AML、混合系統白血病(Mixed Lieange Leukemia)、非ホジキンリンパ腫などに分類することが可能であるとされてきた。例えば、Bリンパ球抗原とTリンパ球抗原と、リンホイド抗原と骨髄球抗原となどを組み合わせることが提唱されている。
【0005】
しかし、これらのCD抗原は、正常細胞にも発現されている。白血病細胞が大半を占める治療前の検体では、この方法でも診断は可能であるが、白血病細胞比率が少なくなった後の治療後の検体では、正常細胞と白血病細胞との判別が非常に困難であり、事実上不可能であった。
【0006】
正常血液細胞においては、分化成熟に応じて種々の細胞があるとされている。しかし、これまでに、そのような分化成熟を正確に判定する技術は存在していなかった。
【0007】
従来から造血幹細胞移植治療は行われていたが、天然の細胞を濃縮したものを使用していたことから、種々の副作用があった。例えば、大量抗癌剤または放射線照射を用いた移植前処置による副作用(RRT)が存在していた。また、前処置による骨髄抑制中の細菌・真菌感染症、出血;他人からの移植の場合、ドナーの白血球が生着して増えてきた時に患者臓器を異物(他人)とみなして攻撃する反応(移植片対宿主病=GVHD);サイトメガロウィルス(CMV)肺炎を中心とする様々な肺合併症;血管内皮細胞(血管の内側を覆っている細胞)の障害による種々の内臓障害;生着後にも遷延する免疫抑制状態(少なくとも1〜2年)の間に罹患する様々な感染症;遷延し様々な症状を呈する慢性GVHD;二次性発癌、性腺機能障害、不妊などの晩期障害などの副作用があった。
【0008】
以上のような合併症のために、移植を行ったがために、かえって一時的に全身状態が悪くなるということはしばしば起こる。また、合併症のために死亡する患者も、自家移植でも10〜20%、他人からの移植では20〜40%程度認められる。また、これらの合併
症を乗り越えても、もとの病気が再発する可能性があり、現在の移植治療の限界があった。
【0009】
骨髄移植後の合併症による早期死亡を予防することを目的に幹細胞を分離・純化し、生体外で幹細胞から前駆細胞を大量に産生し、それを幹細胞とともに移植することによって行う治療法が登場し、すでに臨床試験が試みられようとしている。
【0010】
FACS(fluorescence activated cell sorter)が1980年代に提唱されて以来、FACSを使用した方法が造血幹細胞の濃縮・純化に多用されている。多重染色した骨髄球からCD34−KSL細胞を分離することによって純度の高い造血幹細胞が得られることが明らかになっている。このように分化したかどうかについては、種々のマーカーを用いられている。ただし、マーカーによる選択が100%移植適合性または幹細胞の未分化性と相関しているとはいえないことから、治療効果が必ずしも充分ではないと言うことも指摘されている。
【0011】
幹細胞の分化を調節する機構として種々のタンパク質が重要な役割を果たす。例えば、幹細胞因子(stem cell factorまたはsteel factor;SCFともいう)は、造血幹細胞では注目されている因子である。
【0012】
SCFは、骨髄ストローマ細胞により生成され、多能性幹細胞、CFU−GMのCFU−M、CFU−Megなどの骨髄球系細胞、リンパ系幹細胞に作用し、これらの分化を支持する。すなわち造血幹細胞から分化細胞へのほぼすべての系統の分化段階の細胞に作用して、他のサイトカインによる最終分化段階への分化誘導する作用を助けるとされる(非特許文献1)。しかし、このような分化因子は、マーカーとはなりえない。
【0013】
CD34、Lin(lineageマーカー)、c−KitおよびSca−1といった細胞表面マーカーは、幹細胞を識別するために一般に用いられている。しかし、これらのマーカーは、特異性が弱く、しかも単独では移植適合性、幹細胞未分化性を判断するには不十分であるという点が欠点として挙げられている。また、これらのマーカーを組み合わせても、幹細胞を100%近く分離することができるかどうかについては疑問がある。特に、移植適合性を考えるとき、これらのすべてのマーカーを使用したとしても、移植適合性を有する細胞とそうでない細胞とが混合したものしか識別することしかできない。骨髄移植がうまくいく人とそうでない人とがいるのは、こうした移植適合性のマーカーがないことによるところが大きい。特に、造血幹細胞の幹細胞性および移植適合性については、適切なマーカーは未だにないというのが現状であるといえる。
【0014】
造血器腫瘍(白血病、リンパ腫、各種血液疾患)細胞の新しく有用な検査方法である骨髄モニタリング検査(Multi Diensioal FlowCytometry:MDF)により、近年の造血器腫瘍治療分野の進歩により、現在では大半の症例を寛解に導入することが可能となってきた。
【0015】
しかし、再発による死亡率は依然として高く、治癒率はまだ低いままである。治療の各過程において患者の血液中の細胞を詳しくモニタリングすることができれば、臨床的に非常に有用である。現在、日本国内で行われているFCMを用いた造血器腫瘍細胞の解析としては、1)治療前の症例分類、2)幹細胞移植術に必要な幹細胞数定量などが行われている。しかし、最も重要な3)患者体内の麟細胞のモニ列ングによる治療効果判定、再発の予知・予防に関する検査方法は確立されていない。MDFを用いることによって、幹細胞移植後の骨髄中において、1)移植された造血幹細胞が生着したか、2)骨髄の正常再構築が順調に進んでいるか、3)再発の前兆となる骨髄球の異常な動態が起こっていないかという点にフォーカスを当てた解析が可能になる。日本国内でもFCMを用いた造血器
腫瘍解析は行われている。しかしそれらは、治療前の症例分類にフォーカスを当てた検査方法であり、モニタリングに用いても威力を発揮することが出来ない方法である。しかも、それらの検体のほとんどは、効率化および自動化のみを追求した大手検査センターによって臨床的に全く役に立たないデータを提供されているだけである。最も危惧すべきことは、多くの造血器腫瘍の患者が、その役に立たないデータのために命を落とし続けているということである。
【0016】
現在、日本国内には、白血病3万人、リンパ腫5万人の患者がいるとされている。FCMを用いた治療前の症例分類を行われている症例はその内の一部であり、まして治療後のモニタリングを行われている症例は殆どいない。また、5万人いるとされる骨髄異形成症候群に関しては、治療前の症例分類さえ行われていない。
【0017】
従来のFCM検査は役に立たないという認識があるからである。
【非特許文献1】北村聖(S.Kitamura)、サイトカインの最前線、羊土社、平野俊夫(T.Hirano)編、174頁〜187頁、2000
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
上記問題点を考慮し、本発明は、白血病などの疾患に対するより有効な治療法を提示するための診断技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、鋭意検討した結果、細胞マーカーの発現レベルの分析結果により幹細胞などの分化成熟段階をより詳細に識別でき、従来知られていなかった成熟段階があること、およびそのような成熟段階に応じて適切な処置法を見出すことができることが判明したことによって、上記課題を解決した。従って、本発明は、以下を提供する。
(1)細胞の分化成熟段階を識別する方法であって、
A)少なくとも1つの細胞マーカーの発現レベルを測定する工程;および
B)上記発現レベルに基づき、上記細胞の分化成熟段階を決定する工程;
を包含する、方法。
(2)上記細胞マーカーの発現レベルは、相対レベルである、項目1に記載の方法。
(3)上記細胞マーカーの発現レベルは、絶対レベルである、項目1に記載の方法。
(4)上記細胞マーカーとして、少なくとも2つの細胞マーカーが使用される、項目1に記載の方法。
(5)上記細胞マーカーとして、少なくとも3つの細胞マーカーが使用される、項目1に記載の方法。
(6)上記細胞マーカーとして、少なくとも4つの細胞マーカーが使用される、項目1に記載の方法。
(7)上記細胞マーカーは、以下:
CD1a、CD2、CD3、CD4、CD5、CD7、CD8、CD10、CD11b、CD13、CD14、CD15、CD16、CD19、CD20、CD22、CD23、CD33、CD34、CD45、TdT、FMC7およびHLA−DRからなる群より選択される、項目1に記載の方法。
(8)上記細胞は、造血幹細胞を含む、項目1に記載の方法。
(9)上記細胞は、単球系細胞、骨髄球系細胞、Bリンパ球系細胞、Tリンパ球系細胞および骨髄球系細胞からなる群より選択される細胞を含む、項目1に記載の方法。
(10)上記分化成熟段階は、単球系について、Stage1、Stage2およびStage3を含む、項目1に記載の方法。
(11)上記分化成熟段階は、骨髄球系統について、Stage1、Stage2、Stage3、Stage4およびStage5を含む、項目1に記載の方法。
(12)上記分化成熟段階は、Bリンパ球系統について、Stage1、Stage2、Stage3およびStage4を含む、項目1に記載の方法。
(13)上記分化成熟段階は、Tリンパ球系統について、Stage1、Stage2、Stage3およびStage4を含む、項目1に記載の方法。
(14)上記細胞マーカーは、系統別CD抗原の組み合わせを含む、項目1に記載の方法。
(15)上記細胞マーカーは、系統別CD抗原ではない抗原の組み合わせを含む、項目1に記載の方法。
(16)上記細胞マーカーは、Bリンパ球系統について、CD10とCD19とCD34とCD45との組み合わせ、CD10とCD20とCD5とCD45との組み合わせ、CD19とCD23とCD5とCD45との組み合わせ、CD10とCD20とCD34とCD45との組み合わせ、およびCD5とCD19とCD34とCD45との組み合わせからなる群より選択される、項目1に記載の方法。
(17)上記細胞マーカーは、Tリンパ球系統について、CD1aとCD3とCD10とCD45との組み合わせ、CD4とCD8とCD7とCD45との組み合わせ、CD1aとCD3とCD34とCD45との組み合わせ、およびCD4とCD8とCD10とCD45からなる群より選択される、項目1に記載の方法。
(18)上記細胞マーカーは、骨髄球系統または単球系統について、HLA−DRとCD11bとCD10とCD45との組み合わせ、CD16とCD13とCD33とCD45との組み合わせ、CD14とCD33とCD11bとCD45との組み合わせ、CD4とCD10とCD34とCD45との組み合わせ、CD11bとCD13とCD16とCD45との組み合わせ、およびCD10とCD4とCD14とCD45との組み合わせからなる群より選択される、項目1に記載の方法。
(19)細胞の分化成熟段階を識別するシステムであって、
A)少なくとも1つの細胞マーカーの発現レベルを測定するための手段と、
B)上記発現レベルに基づき、上記細胞の分化成熟段階を決定する手段と、
を備える、システム。
(20)上記測定手段は、細胞マーカーの発現レベルを相対レベルで測定する、項目19に記載のシステム。
(21)上記測定手段は、細胞マーカーの発現レベルを絶対レベルで測定する、項目19に記載のシステム。
(22)上記測定手段は、細胞マーカーに特異的な因子を含む、項目19に記載のシステム。
(23)上記細胞マーカーは、少なくとも2つの細胞マーカーを含む、項目22に記載のシステム。
(24)上記細胞マーカーは、少なくとも3つの細胞マーカーを含む、項目22に記載のシステム。
(25)上記細胞マーカーは、少なくとも4つの細胞マーカーを含む、項目22に記載のシステム。
(26)上記細胞マーカーは、以下:
CD1a、CD2、CD3、CD4、CD5、CD7、CD8、CD10、CD11b、CD13、CD14、CD15、CD16、CD19、CD20、CD22、CD23、CD33、CD34、CD45、TdT、FMC7およびHLA−DRからなる群より選択される、項目22に記載のシステム。
(27)上記細胞は、造血幹細胞を含む、項目19に記載のシステム。
(28)上記細胞は、単球系細胞、Bリンパ球系細胞、Tリンパ球系細胞および骨髄球系細胞からなる群より選択される細胞を含む、項目19に記載のシステム。
(29)上記分化成熟段階は、単球系について、Stage1、Stage2およびStage3を含む、項目19に記載のシステム。
(30)上記分化成熟段階は、骨髄球系統について、Stage1、Stage2、St
age3、Stage4およびStage5を含む、項目19に記載のシステム。
(31)上記分化成熟段階は、Bリンパ球系統について、Stage1、Stage2、Stage3およびStage4を含む、項目19に記載のシステム。
(32)上記分化成熟段階は、Tリンパ球系統について、Stage1、Stage2、Stage3およびStage4を含む、項目19に記載のシステム。
(33)上記細胞マーカーは、系統別CD抗原である抗原の組み合わせを含む、項目22に記載のシステム。
(34)上記細胞マーカーは、系統別CD抗原ではない抗原の組み合わせを含む、項目22に記載のシステム。
(35)上記細胞マーカーは、Bリンパ球系統について、CD10とCD19とCD34とCD45との組み合わせ、CD10とCD20とCD5とCD45との組み合わせ、CD19とCD23とCD5とCD45との組み合わせ、CD10とCD20とCD34とCD45との組み合わせ、およびCD5とCD19とCD34とCD45との組み合わせからなる群より選択される、項目22に記載のシステム。
(36)上記細胞マーカーは、Tリンパ球系統について、CD1aとCD3とCD10とCD45との組み合わせ、CD4とCD8とCD7とCD45との組み合わせ、CD1aとCD3とCD34とCD45との組み合わせ、およびCD4とCD8とCD10とCD45からなる群より選択される、項目22に記載のシステム。
(37)上記細胞マーカーは、骨髄球系統または単球系統について、HLA−DRとCD11bとCD10とCD45との組み合わせ、CD16とCD13とCD33とCD45との組み合わせ、CD14とCD33とCD11bとCD45との組み合わせ、CD4とCD10とCD34とCD45との組み合わせ、CD11bとCD13とCD16とCD45との組み合わせ、およびCD10とCD4とCD14とCD45との組み合わせからなる群より選択される、項目22に記載のシステム。
(38)上記測定する手段は、フローサイトメーターを含む、項目19に記載のシステム。
(39)細胞の分化成熟段階を決定する方法であって、
A)上記細胞の正常な分化成熟段階をとるものについて、少なくとも1つの細胞マーカーの発現レベルのフローサイトメトリーにおける測定パターン(「正常パターン」)を提供する工程;および
B)上記細胞について、上記細胞マーカーの発現レベルのフローサイトメトリーにおけるパターンと、上記正常パターンと比較して、上記細胞の分化成熟段階を決定する工程;を包含する、方法。
(40)細胞の分化成熟段階を決定するシステムであって、
A)上記細胞の正常な分化成熟段階をとるものについて、少なくとも1つの細胞マーカーの発現レベルのフローサイトメトリーにおける測定パターン(「正常パターン」)を提供する手段;および
B)上記細胞について、上記細胞マーカーの発現レベルのフローサイトメトリーにおけるパターンと、上記正常パターンと比較して、上記細胞の分化成熟段階を決定する手段;を備える、システム。
(41)細胞の分化成熟段階が正常であるかどうか判定する方法であって、
A)少なくとも1つの細胞マーカーの発現レベルをフローサイトメトリーで測定する工程;および
B)上記発現レベルのフローサイトメトリーにおけるパターンと、正常な分化成熟段階にある細胞が示すフローサイトメトリーにおける上記細胞マーカーの発現レベルのパターンとを比較して、相違があれば、正常でない細胞が含まれると判定する工程;
を包含する、方法。
(42)細胞の分化成熟段階が正常であるかどうか判定するシステムであって、
A)少なくとも1つの細胞マーカーの発現レベルをフローサイトメトリーで測定する手段;および
B)上記発現レベルのフローサイトメトリーにおけるパターンと、正常な分化成熟段階にある細胞が示すフローサイトメトリーにおける上記細胞マーカーの発現レベルのパターンとを比較して、相違があれば、正常でない細胞が含まれると判定する手段、
を備える、システム。
(43)細胞の分化成熟段階に応じて被検体を処置する方法であって、
A)少なくとも1つの細胞マーカーの発現レベルを測定する工程;
B)上記発現レベルに基づき、上記細胞の分化成熟段階を決定する工程;および
C)決定された分化成熟段階に適切な処置を上記被検体に施す工程、
を包含する、方法。
(44)白血病の処置後に、細胞の分化成熟段階に応じて被検体を処置する方法であって、
A)少なくとも1つの細胞マーカーの発現レベルを測定する工程;
B)上記発現レベルに基づき、上記細胞の分化成熟段階を決定する工程;および
C)決定された分化成熟段階と、上記細胞が正常な場合にとる分化成熟段階とを比較した結果に基づいて適切な処置を上記被検体に施す工程、
を包含する、方法。
(45)上記適切な処置は、
i)上記細胞の決定された分化成熟段階について、正常細胞が存在する、存在する細胞が正常未熟細胞であると判定される場合、現治療法の継続あるいは投薬等の治療を終了し経過観察のみに留めるという処置を含み、
ii)上記細胞の決定された分化成熟段階について、存在する細胞が異常細胞であると判定される場合、現治療法の強化または変更を行うという処置を含む、
項目44に記載の方法。
(46)上記細胞の決定された分化成熟段階について、存在する細胞が正常未熟細胞であると判定された場合においても、元幹細胞の枯渇、あるいは分化成熟の進行の停止等の異常が認められる場合は、幹細胞の追加移植等を行うという処置を含む、項目44に記載の方法。
(47)細胞の分化成熟段階に応じて被検体を処置するシステムであって、
A)少なくとも1つの細胞マーカーの発現レベルを測定する手段;
B)上記発現レベルに基づき、上記細胞の分化成熟段階を決定する手段;および
C)決定された分化成熟段階に適切な処置を上記被検体に施す手段、
を備える、システム。
(48)細胞の分化成熟段階に応じた処置を被検体に提供するシステムであって、
A)少なくとも1つの細胞マーカーの発現レベルを測定する手段;
B)上記発現レベルに基づき、上記細胞の分化成熟段階を決定する手段;および
C)決定された分化成熟段階に適切な処置を上記被検体に提供する手段、
を備える、システム。
(49)白血病の処置後に、細胞の分化成熟段階に応じて被検体を処置するシステムであって、
A)少なくとも1つの細胞マーカーの発現レベルを測定する手段;
B)上記発現レベルに基づき、上記細胞の分化成熟段階を決定する手段;および
C)決定された分化成熟段階と、上記細胞が正常な場合にとる分化成熟段階とを比較した結果に基づいて適切な処置を上記被検体に施す手段、
を備える、システム。
(50)白血病の処置後に、細胞の分化成熟段階に応じた処置を被検体に提供するシステムであって、
A)少なくとも1つの細胞マーカーの発現レベルを測定する手段;
B)上記発現レベルに基づき、上記細胞の分化成熟段階を決定する手段;および
C)決定された分化成熟段階と、上記細胞が正常な場合にとる分化成熟段階とを比較した結果に基づいて適切な処置を上記被検体に提供する手段、
を備える、システム。
(51)項目1に記載の方法によって作成された細胞の分化成熟段階のパターン。
【0020】
本発明者らの提供するMDFを用いていれば白血病の再発を予知することができる。本発明を用いれば、従来の役に立たないと考えられていたFCM検査はを用いて、白血病などの疾患を正確に把握することが可能である。従って、3万人、5万人の患者がいるとされている白血病、リンパ腫などについて、FCMを用いた治療前の正確な症例分類を行うことが可能であり、5万人いるとされる骨髄異形成症候群に関してについても、治療指針を与えるに十分な診断結果を提供することが可能である。
【0021】
正常血液細胞の分化成熟パターンに基づいた解析パネル正常骨髄血中の血液細胞は正確に制御された分化過程を経て成熟している。特定のCD抗原を組み合わせて骨髄血↓末梢血、リンパ節に存在する正常細胞の各種抗原量の定量と分布をFCMで解析すると、それらの細胞表面抗原の発現と消失が一本の道として示される。この正常経路(Normal
Pathway)は全ての血液細胞に認められ、年齢や治療に影響を受けることなく、正常細胞であれば全ての人において同じパターンを示すことが本発明において判明した。
【0022】
そのデータを基礎にして種々の白血病細胞の解析を行うと、白血病細胞は決して正常細胞と同じような抗原分布を示さないことが判った。つまり、各抗原の発現量を測定し、多次元空間にプロットすると、白血病細胞は必ず正常細胞とは異なる空間に位置するということである。これは白血病細胞が正常骨髄血中または正常末梢血中細胞には存在しないが白血病細胞には存在する抗原発現異常(抗原発現系統不全:lineage infidelity;抗原発現不整、Maturational Asynchrony;抗原欠損:Antigenic Absence、および抗原発現量異常:Quantitation Abnormalities)を持っていることに由来している。分化成熟段階にある正常未熟細胞と白血病細胞を、CD抗原が陽性か陰性かという解析では、判別は非常に困難である。しかし、本発明では、この正常経路に基づいた解析を行うことによって、種々の検出が可能となることが判明した。
【0023】
正常経路(Normal Pathway)はそれぞれの細胞の系絃ごとに異なる。Bリンパ球、Tリンパ球、骨髄球、単球、赤血球などは、それぞれ独自の正常経路および経路を有している。これらのすべてのPathwayには個人差はないとされている。
【0024】
従来の方法では、正常経路を捕らえようとする試みがなされてはいるが、このような方法では解明できていない詳細なPathwayが存在する。本発明の方法では、このような詳細なPathwayを解明することができる。
【0025】
従来の方法では、フローサイトメトリ(FCM)から得られる細胞のデータは、細胞の大きさ(Forward Scatter;FSC)、細胞の内部構造(Side Scatterl;SSC)、抗原の蛍光(Fluorescence;FL−1,FL−2、FL−3、FL−4)が存在する。従来法では、FSC×SSCのパラメータから、目的となる細胞を探し出し、その細胞の各FLが陽性であるかまたは陰性であるかを見ていた。このFLにおいて用いられていたモノクローナル抗体(CD)は、「Tリンパ球系またはBリンパ球系」、「リンパ球系または骨髄球系」などを分けるための組み合わせであった。これらのCDには系統的な相関関係はないことから、データを展開して意味のあるパラメータは、せいぜい、FSC×SSC、FL×FLといった程度しか得られない。もちろん、腫瘍細胞はそのような単純なものではないことから、分類自体が全く役に立っていなかった。これは、形態学的検査でも指摘されていたことであった。
【0026】
ところが、本発明のMDFでは、代表的には、CD抗体として各細胞の系統ごとに関連
のあるものを用いる。たとえば、骨髄球系細胞の分化成熟過程で発現の強度が異なるのはCD11b。CD13、CD14、CD15、CD16、CD33、HLA−DRなどである。これらのCDのすべてが同じ系統の細胞において発現していることから、すべてのデータが相関を持っている。従って、このような例示的な例では、展開できるパラメータとしては、5データ×4データ×測定CDという数になる。これらのパラメータがあることによって、正常経路をより詳細に見ることができる。
【0027】
本発明では、一つの特徴として、CDとして、細胞の系統に関連を有するものを選択して使用することが特徴である。
【0028】
また、パラメータの数を多くして、解析することによって、このような系統における分化段階をより詳細に分析することが可能である。
【0029】
(MDFの技術的な説明)
血液細胞は、幹細胞から様々な細胞へと分化成熟する。分化成熟の過程を詳細に検索すると、必ず1本の分化成熟の道(正常経路=Normal Pathway)というものが見えてくる。この正常経路には、年齢および性差などの個人差はもちろん、治療による影響さえ認められないことが本発明において判明した。つまり、もともと身体の中にあった幹細胞であろうと、他から移植された幹細胞であろうと、全く同じ道を適って分化していくことになる。この正常経路を見つけるための方法が本発明のMDFの一つの形態であるといえる。その例を図1A−Sに示す。
【0030】
Normal Pathwayという定義はLokenらによって形作られてきた。彼らは血液細胞が未熟な段階から成熟名段階に分化成熟していく間の各種CDマーカーの発現を調べた結果、それらのCDマーカーが規則正しく増減を行っていることを見出した。彼らは、各種細胞を3色のCDマーカーを用いて多次元解析し、Normal Pathwayを見出した。彼らは、異常な細胞(腫瘍細胞等)がNormal Pathway上とは異なる空間に出現することを見出し、特に治療後の微小残存病変の検出に応用してきた。
しかし彼らの見出したNormal Pathwayは予測で成り立っている部分が多くあり、また同定できた分化成熟stageも大まかなものであった。原因は、やはり技術的な問題(3カラー染色による限界)と、それ詳細にstageを同定するためのCDマーカーの組み合わせが出来なかったことによる。特に、彼らが最終的に目指したものは微小残存病変の検出という、言い換えれば従来より行われてきた腫瘍細胞の分類や検出法と同じ目的であったため、選別されたCDマーカーが腫瘍細胞を検出するには適しているが、詳細なPathwayを解析できるものではなかった。
【0031】
本発明では、まず前述の技術的問題点を解決するために4色のCDマーカーを用いた多次元解析を行った。これによって、解析できるパラメーターが大幅に増え、より多次元な解析が可能となった。用いたCDマーカーは、詳細なNormal Pathwayを検出することを目的として選別し、適切な組み合わせを作成した。これによって、従来のPathway解析ではstageを把握できなかった細胞集団を、詳細にstage分けすることが可能となった(例えば、単球系細胞におけるstage 2とstage3、骨髄球系細胞におけるstage3、stage4、およびstage5の同定)。
【0032】
MDFの具体的手法としては、以下の通りである。
【0033】
1)移植された幹細胞は、必ず幹細胞の位置に現れる。現われない場合は、移植自体が失敗の可能性がある。
【0034】
2)正常の幹細胞の位置に現れた幹細胞から正常経路上に分化成熟する細胞が現れてきたら、骨髄再構築が始まったことを示す。
【0035】
3)正常な骨髄再構築が進んだ場合、幹細胞から分化成熟過程にある様々な細胞、および成熟細胞の全てが揃う。
【0036】
4)もし、分化成熟した細胞ばかりになり、幹細胞や分化成熟過程にある細胞が認められなくなってきた場合は、移植された幹細胞が生着せずに単純に分化成熟しただけである可能性がある。そのままでは、幹細胞が枯渇し、骨髄再構築は途絶える。
【0037】
5)もし、分化成熟過程にある細胞がその先の成熟段階へと進まなかった場合、その時点での骨髄再構築異常が起こっていると考えられる。
【0038】
6)残存している腫瘍細胞は、正常幹細胞と全く別の位置に現れる。治療後の未熟細胞が残存している腫瘍細胞なのか、あるいは正常幹細胞なのかを区別することは非常に困難であったが、本発明のMDFではこの位置の違いを利用して判別ができる。
【0039】
7)腫瘍細胞が微量残存していても、正常な骨髄再構築が起こっていれば、強力な追加治療をしなくても、免疫能等で治癒していく。しかし、腫瘍細胞が微量残存していて、正常な骨髄再構築が行われない場合、腫瘍細胞の増殖を止める要因は無くなり、再発の危険性が出てくる。
【0040】
これまでFCMで調べられてきたのは、腫瘍細胞の表面マーカーを探すことであった。しかし、腫瘍細胞に特異的なマーカーというものは一部の症例にのみ認められただけであった。腫瘍細胞に認められるFCMマーカーは、正常細胞にも同じように認められる。陽性または陰性という従来の方法では、両方とも同じ結果になる。
【0041】
例えば、骨髄異形性症候群ではCD13が認められることが多いのであるが、CD13は正常幹細胞や正常未熟骨髄球にも認めらる。従来の方法では、この時点で「この細胞はCD13が陽性」という結果を報告していた。これでは、臨床医はこれが異常なのか正常なの判断できなかった。
【0042】
本発明のMDFを用いると、同じCD13陽性であっても、それが正常経路上の陽性なのか、あるいは外れているのかが判る。その結果、「これは正常」あるいは「これは異常」という報告が可能となった。
【0043】
従来の方法が、なぜそのようなものであったかというと、FCMの歴史が関係しているといえる。もともと、FCMは基礎研究機器として開発された。しかしAIDSの流行およびATLの発見が引き金となり、臨床検査の分野に広がった。AIDSの場合は、末梢血のリンパ球中にCD8陽性細胞がどれだけ存在するかを請べるだけである程度の知見が得られた。またATLも同様に、末梢血のリンパ球中のCD3やCD4陽性細胞がどれだけ存在するかを調べるだけである程度の知見が得られた。この発想が、そのまま造血器腫瘍細胞の解析に持ち込まれたのが従来のFCM検査である。リンパ球サブセット検査と言われるこれらの検査は、単純に陰性コントロールと比較して陽性または陰性を判断するもので、非常に明確に解析を行えるのではあるが、結果的には治療方針を左右する程の情報を得られるものではなかった。
【0044】
その次に目を付けられたのが、造血器腫瘍細胞の解析であった。それまでの、人が顕微鏡で見て判定していた場合より、短時間で大量の細胞を検査できるということが利点であった。しかし、解析方法は何も変わらなかったので、結果的には得られた情報は、従来の形態学的判定を行う場合、自信が無い症例に関してのみ補助的なデータとして用いられるという程度のものであった。造血器腫瘍細胞の解析には専用の方法が必要だという認識はかなり広まっている。その方法の検討もたくさん行われてきたが、腫瘍細胞に特異的なマーカーを探すという発想から抜け出ることは出来なかった。なかには、マニアックな方法で微量な腫瘍細胞を検出することを報告している研究者もいる。従来の方法より、臨床的な有用性はあるようにみえる。しかし、最大の問題は、腫瘍細胞のみに焦点を当てていることである。「腫瘍細胞が残っている」という報告を受けると、医者は治療を行うことになる。しかし、骨髄は様々な血液細胞の集合体である。その他の細胞の動態を考えずに、腫瘍細胞のみに焦点を当てて治療を行うと、せっかく正常に再構築してきた他の細胞を排除することになる。従って、本発明は、1つの実施形態では、再生してきた他の細胞を活かすことができる治療を提供することになる。
【0045】
以下に、本発明の好ましい実施形態を示すが、当業者は本発明の説明および当該分野における周知慣用技術からその実施形態などを適宜実施することができ、本発明が奏する作用および効果を容易に理解することが認識されるべきである。
【発明の効果】
【0046】
従って、本発明は、白血病治療などにおいて、再生してきた他の細胞を活かすことができる治療を提供することになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
以下に本発明を、必要に応じて、添付の図面を参照して例示の実施例により記載する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0048】
(定義)
以下に本明細書において特に使用される用語の定義を列挙する。
【0049】
本明細書において使用される「細胞」は、当該分野において用いられる最も広義の意味と同様に定義され、多細胞生物の組織の構成単位であって、外界を隔離する膜構造に包まれ、内部に自己再生能を備え、遺伝情報およびその発現機構を有する生命体をいう。本明細書において使用される細胞は、天然に存在する細胞であっても、人工的に改変された細胞(例えば、融合細胞、遺伝子改変細胞)であってもよい。細胞の供給源としては、例えば、単一の細胞培養物であり得、あるいは、正常に成長したトランスジェニック動物の胚、血液、または体組織、または正常に成長した細胞株由来の細胞のような細胞混合物が挙げられるがそれらに限定されない。
【0050】
本明細書において「幹細胞」とは、自己複製能を有し、多分化能(すなわち多能性)(「pluripotency」)を有する細胞をいう。幹細胞は通常、組織が傷害を受けたときにその組織を再生することができる。本明細書では幹細胞は、胚性幹(ES)細胞または組織幹細胞(組織性幹細胞、組織特異的幹細胞または体性幹細胞ともいう)であり得るがそれらに限定されない。また、上述の能力を有している限り、人工的に作製した細胞(たとえば、本明細書において記載される融合細胞、再プログラム化された細胞など)もまた、幹細胞であり得る。胚性幹細胞とは初期胚に由来する多能性幹細胞をいう。胚性幹細胞は、1981年に初めて樹立され、1989年以降ノックアウトマウス作製にも応用されている。1998年にはヒト胚性幹細胞が樹立されており、再生医学にも利用されつつある。組織幹細胞は、胚性幹細胞とは異なり、分化の方向が限定されている細胞であり、組織中の特定の位置に存在し、未分化な細胞内構造をしている。従って、組織幹細胞は多能性のレベルが低い。組織幹細胞は、核/細胞質比が高く、細胞内小器官が乏しい。組織幹細胞は、概して、多分化能を有し、細胞周期が遅く、個体の一生以上に増殖能を維持する。
【0051】
由来する部位により分類すると、組織幹細胞は、例えば、皮膚系、消化器系、骨髄球系、神経系などに分けられる。皮膚系の組織幹細胞としては、表皮幹細胞、毛嚢幹細胞などが挙げられる。消化器系の組織幹細胞としては、膵(共通)幹細胞、肝幹細胞などが挙げられる。骨髄球系の組織幹細胞としては、造血幹細胞、間葉系幹細胞などが挙げられる。神経系の組織幹細胞としては、神経幹細胞、網膜幹細胞などが挙げられる。
【0052】
本明細書において「体細胞」とは、卵子、精子などの生殖細胞以外の細胞であり、そのDNAを次世代に直接引き渡さない全ての細胞をいう。体細胞は通常、多能性が限定されているかまたは消失している。本明細書において使用される体細胞は、天然に存在するものであってもよく、遺伝子改変されたものであってもよい。
【0053】
細胞は、由来により、外胚葉、中胚葉および内胚葉に由来する幹細胞に分類され得る。外胚葉由来の細胞は、主に脳に存在し、神経幹細胞などが含まれる。中胚葉由来の細胞は、主に骨髄に存在し、血管幹細胞、造血幹細胞および間葉系幹細胞などが含まれる。内胚葉由来の細胞は主に臓器に存在し、肝幹細胞、膵幹細胞などが含まれる。本明細書では、体細胞はどのような胚葉由来でもよい。好ましくは、体細胞は、リンパ球、脾臓細胞または精巣由来の細胞が使用され得る。
【0054】
本明細書において「単離された」とは、通常の環境において天然に付随する物質が少なくとも低減されていること、好ましくは実質的に含まないをいう。従って、単離された細胞とは、天然の環境において付随する他の物質(たとえば、他の細胞、タンパク質、核酸など)を実質的に含まない細胞をいう。核酸またはポリペプチドについていう場合、「単離された」とは、たとえば、組換えDNA技術により作製された場合には細胞物質または培養培地を実質的に含まず、化学合成された場合には前駆体化学物質またはその他の化学物質を実質的に含まない、核酸またはポリペプチドを指す。単離された核酸は、好ましくは、その核酸が由来する生物において天然に該核酸に隣接している(flanking)配列(即ち、該核酸の5’末端および3’末端に位置する配列)を含まない。
【0055】
本明細書において、「樹立された」または「確立された」細胞とは、特定の性質(例えば、多分化能)を維持し、かつ、細胞が培養条件下で安定に増殖し続けるようになった状態をいう。したがって、樹立された幹細胞は、多分化能を維持する。本発明では、樹立された幹細胞を使用することは、宿主から新たに幹細胞を採取するという工程を回避することができるので好ましい。
【0056】
本明細書において「経路(pathway)」とは、細胞の分化成熟において用いられ、分化成熟の際にともなって変動する細胞マーカーの発現レベルのプロファイルを言う。
【0057】
本明細書において「正常経路(Normal Pathway)」とは、細胞の分化成熟において用いられ、正常な分化成熟を生じる場合に発現される細胞マーカーの発現レベルのプロファイルをいう。このようなプロファイルは、フローサイトメトリーを用いることによって表現することができる。
【0058】
本明細書において「分化(した)細胞」とは、機能および形態が特殊化した細胞(例え
ば、筋細胞、神経細胞など)をいい、幹細胞とは異なり、多能性はないか、またはほとんどない。分化した細胞としては、例えば、表皮細胞、膵実質細胞、膵管細胞、肝細胞、血液細胞、心筋細胞、骨格筋細胞、骨芽細胞、骨格筋芽細胞、神経細胞、血管内皮細胞、色素細胞、平滑筋細胞、脂肪細胞、骨細胞、軟骨細胞などが挙げられる。
【0059】
本明細書において、「分化」または「細胞分化」とは、1個の細胞の分裂によって由来した娘細胞集団の中で形態的および/または機能的に質的な差をもった二つ以上のタイプの細胞が生じてくる現象をいう。従って、元来特別な特徴を検出できない細胞に由来する細胞集団(細胞系譜)が、特定のタンパク質の産生などはっきりした特徴を示すに至る過程も分化に包含される。現在では細胞分化を,ゲノム中の特定の遺伝子群が発現した状態と考えることが一般的であり、このような遺伝子発現状態をもたらす細胞内あるいは細胞外の因子または条件を探索することにより細胞分化を同定することができる。細胞分化の結果は原則として安定であって、特に動物細胞では,別のタイプの細胞に分化することは例外的にしか起こらない。
【0060】
本明細書において「多能性」または「多分化能」とは、互換可能に用いられ、細胞の性質をいい、1以上、好ましくは2以上の種々の組織または臓器に分化し得る能力をいう。従って、「多能性」および「多分化能」は、本明細書においては特に言及しない限り「未分化」と互換可能に用いられる。通常、細胞の多能性は発生が進むにつれて制限され、成体では一つの組織または器官の構成細胞が別のものの細胞に変化することは少ない。従って多能性は通常失われている。とくに上皮性の細胞は他の上皮性細胞に変化しにくい。これが起きる場合通常病的な状態であり、化生(metaplasia)と呼ばれる。しかし間葉系細胞では比較的単純な刺激で他の間葉性細胞にかわり化生を起こしやすいので多能性の程度は高い。胚性幹細胞は、多能性を有する。組織幹細胞は、多能性を有する。本明細書において、多能性のうち、受精卵のように生体を構成する全ての種類の細胞に分化する能力は全能性といい、多能性は全能性の概念を包含し得る。ある細胞が多能性を有するかどうかは、たとえば、体外培養系における、胚様体(Embryoid Body)の形成、分化誘導条件下での培養等が挙げられるがそれらに限定されない。また、生体を用いた多能性の有無についてのアッセイ法としては、免疫不全マウスへの移植による奇形腫(テラトーマ)の形成、胚盤胞への注入によるキメラ胚の形成、生体組織への移植、腹水への注入による増殖等が挙げられるがそれらに限定されない。
【0061】
従って、本明細書において「胚性幹細胞」または「ES細胞」とは、、交換可能に用いられ、初期胚に由来する任意の多能性幹細胞をいう。通常胚性幹細胞は、全能性またはほぼ全能性を有するとされる。この胚性幹細胞を正常な宿主胚盤胞へ導入し仮親子宮へ戻すことによってキメラ作製を行ったところ、高いキメラ形成能を持つ、生殖系列キメラ(胚性幹細胞由来の機能的生殖細胞を持つキメラマウス)が得られた(A.Bradley et al.:Nature,309,255,1984)。胚性幹細胞株は、培養下で、種々の遺伝子導入法(例えばリン酸カルシウム法、レトロウイルスベクター法、リポゾーム法、エレクトロポレーション法等)の適用が可能である。また、遺伝子が組込まれた細胞を選別する方法を工夫し、相同遺伝子組換え(homologous recombination)を利用し、特定の遺伝子を狙って改変(置換、欠失、挿入)させた細胞のクローンを得ることもできる。インビトロでこのような処理をした胚性幹細胞株は生殖系列への分化能を保持することから、ある特定の遺伝子の機能を個体レベルで調べる研究が現在盛んに行われている(M.R.Capecchi:Science,244,1288,1989)。胚性幹細胞を利用したトランスジェニックマウス作出法は、ある特定の遺伝子のみを任意に改変させた個体を得ることを可能にした点でマイクロインジェクション法によるトランスジェニック動物作出法にはない多くの利点が考えられる。特に、特定の遺伝子を不活化させたノックアウト動物を作出できるようになり、遺伝子の機能を解明したり、外来性の遺伝子のみを発現させることができる。従って、胚性幹細胞の樹立が容易になれば、その効果は図り知れない。このような胚性幹細胞は、受精3.5日目のマウス胚盤胞の内部細胞塊の細胞をインビトロ培養に移し,細胞塊の解離と継代を繰り返すことにより,多分化能を保持し,正常核型を維持したまま無制限に増殖しつづける幹細胞を樹立することに作製することができる。通常、胚性幹細胞の多分化能を維持するには、STO細胞株および/またはマウス胎仔から調製した初代培養繊維芽細胞などのフィーダー細胞層上で胚性幹細胞を培養することが好ましいとされる。
【0062】
本明細書において「造血幹細胞」とは、造血組織および腸上皮組織などの細胞新生系において細胞生産のもとになる細胞をいう。この幹細胞は、自己を保存するとともに、すべての血液系細胞に分化することができる。そのような血液細胞としては、例えば、単球系幹細胞、Bリンパ球系幹細胞、Tリンパ球系幹細胞、骨髄球系幹細胞、Tリンパ系細胞、Bリンパ系細胞、血小板系細胞、赤血球系細胞、単球系細胞などを挙げることができることが理解される。
【0063】
造血細胞は骨髄の中でつくられ、分化して、赤血球、血小板、白血球などになり末梢血液の中を流れる。骨髄球系細胞の分化を見ると、一番大元には多能性幹細胞があり、次に造血系細胞に特化した造血幹細胞があり、多能性前駆細胞へと分化し、さらに骨髄球系前駆細胞およびリンパ球系前駆細胞へと分化する。
骨髄球系では多能性幹細胞からCFU−GEMMという細胞へ分化する。そのCFU−GEMという細胞からCFU−GMという細胞へ、次いで骨髄芽球、前骨髄球、骨髄球という形で分化する。これらは骨髄中に存在する細胞であり、これが分化すると好中球となって末梢血中を流れる。次のラインへいくと、CFU−GMという細胞から単球の方へ行き、単芽球、前単球、単球と分化する。この単球が末梢血へあらわれる。3番目のラインでは、CFU−GEMMという細胞からBFU−E細胞へと分化し、それから前赤芽球、赤芽球、赤血球へと分化する。また、巨核球系というものもあり、CFU−Meg(メガカリオサイトの略)、巨核芽球、巨核球、血小板へと分化する。
【0064】
このような分化の過程で白血病は、多能性幹細胞の異常に起因する。したがって、本発明は、このような異常を改善するという意味で白血病の治療にも応用され得る。
【0065】
リンパ球系では、多能性幹細胞からリンパ系の幹細胞へと分化し、Bリンパ球系とTリンパ球系とに分かれる。それと別個にNK細胞の方へ分かれていくというラインが存在する。Bリンパ球系のラインとしては前駆Bリンパ球、前駆前駆Bリンパ球(pre−pre−B−cell)、初期Bリンパ球(early−B−cell)などへと分化し、中間Bリンパ球(intermediate− B−cell) 、成熟Bリンパ球(matureB−cell )、形質球様細胞(plasmacytoid− B−cell) 、形質細胞(plasma−cell)へと分化する。Tリンパ球系としては、胸腺前駆細胞、未成熟胸腺細胞、共通胸腺細胞(common thymocyte)、成熟胸腺細胞へと分化する。別のルートとしてヘルパー/インデューサーTリンパ球へいく系統と、成熟胸腺細胞から抑制/細胞傷害性Tリンパ球へと分化する系統が存在する。したがって、これらのTリンパ球および/またはBリンパ球の異常の処置または予防についても本発明の因子または組成物は有効であり得る。このような分化に関する模式的スキームを図1A−Aに示す。図1A−Aでは、分化において有用なマーカーも記載されている。このような分化に関するより詳細な説明については、赤司浩一、最新医学 56(2)、15−23,2001を参照のこと。この文献は、本明細書において参考として援用される。
【0066】
(造血幹細胞の同定法)
以下に代表的な造血幹細胞の同定法を説明する。
【0067】
a.脾コロニー形成法
致死量放射線照射したマウスに同系マウスの造血細胞を静注すると、8〜14日目に脾臓表面に隆起(コロニー)が認められる。各々のコロニーが種々の血液細胞から成っているが、1個のコロニーは1個の幹細胞に由来しており、この脾コロニーを形成する母細胞はCFU−S(colony forming unit in spleen)と呼ばれる。8日目に形成される脾コロニー(Day 8 CFU−S)を形成する細胞は赤芽球が主体であるのに対し、12日目形成される脾コロニー(Day 12 CFU−S)は、赤芽球のほかに顆粒球および巨核球、さらにはBリンパ球まで含み増殖能も高く、多能性幹細胞に由来している。Day 12 CFU−Sは多能性幹細胞の指標として用いられている。また、抗癌剤である5−fluoro−uracil(5−FU)投与後に残存する造血幹細胞は非常に高い増殖能を示すことより、CFU−Sの母細胞にあたるpre−CFU−Sと呼ばれる。当初未分化な造血幹細胞の指標になると思われたDay 12 CFU−Sも実は不均一な細胞集団であり、必ずしも未分化な造血幹細胞の指標にはなりえない。
【0068】
b.長期骨髄再構築能
移植した細胞により致死量放射線照射されたマウスの造血系を再構築し、長期間維持する事ができるか否かを観察する方法である。現在、造血幹細胞の多分化能と自己複製能をみる上で最も信頼性が高い。マーカーとしては、ネオマイシン耐性遺伝子の発現、雄雌の性染色体、コンジェニックマウス等が用いられている。この方法では定量化が困難であったが、最近ではドナーの造血細胞とともにレシピエントの造血細胞を移植し、その再構築の割合を調べる競合再集団アッセイが用いられるようになった。また、ヒトにおいてはマウスのようにin vivoの移植実験系を組むことは困難であるので、リンパ球が欠如するために拒絶反応を起こさない免疫不全マウス(scid mouse)にヒトの造血幹細胞を移植する Scid−huマウスが用いられる。この系では、マウスの中で長期間ヒトの造血機構を維持することができる。
【0069】
c.インビトロコロニー法
造血細胞(骨髄球・脾細胞等)を各種サイトカイン存在下にメチルセルロース、軟寒天等の半固形培地中で培養し、形成された細胞集団(コロニー)から造血幹細胞の数および性質を推定する方法である。このコロニーを分析することにより、in vitroにおいて種々の造血前駆細胞および造血幹細胞の分化・増殖過程の観察や測定が可能になっている。混合コロニー(CFU−Mix,CFU−GEMM)および分化能の高いコロニー(HPP−CFC;high proliferative potential colony forming cells)は、単系統のコロニーを形成する細胞(CFU−GM, BFU−E)等より未分化であり、芽球コロニー形成細胞(CFU−blast)は最も未分化であるとされている。この方法によりin vitroにおいて造血幹細胞や前駆細胞の増殖・分化過程をとらえることができる。さらに、近年では無血清培地を用いたり造血幹細胞の単細胞培養を行うことにより、造血に関与する種々のサイトカインの作用を推定することができる。
【0070】
d.間質細胞との共培養系
造血幹細胞の分化・増殖には造血微小環境が密接に関与している。1977年Dexterらは、骨髄間質(ストロマ)細胞上で造血幹細胞が数ヵ月以上の長期間にわたって培養可能であることを示した(Dexter培養法)が、その後造血を維持する間質細胞株が次々に樹立され、in vitro において造血微小環境の再現が可能になった。この培養系では、造血前駆細胞は早期にコロニー形成能を失うのに対して、未分化な造血幹細胞は長期間コロニー形成能や骨髄再構築能を維持できる。このため、未分化な造血幹細胞活性の測定にも用いられる。特にヒトにおいてはin vivoの系が用いにくいため、間質細胞上で長期間コロニー形成能を維持できる細胞をLTC−IC(Long term culture−initiating cells)として未分化な造血幹細胞の指標として用いられている。
【0071】
このように、本発明の診断において、当該分野において公知の技法を用いて診断、検出の補助とすることができる。
【0072】
本明細書において遺伝子、ポリヌクレオチド、ポリペプチドなどの「発現」とは、その遺伝子などがインビボで一定の作用を受けて、別の形態になることをいう。好ましくは、遺伝子、ポリヌクレオチドなどが、転写および翻訳されて、ポリペプチドの形態になることをいうが、転写されてmRNAが作製されることもまた発現の一態様であり得る。より好ましくは、そのようなポリペプチドの形態は、翻訳後プロセシングを受けたものであり得る。好ましい実施形態では、そのような発現されたポリペプチドは、糖鎖修飾されたCD抗原であり得る。本発明では、発現は、転写および翻訳の両方を含むことが理解される。したがって、本発明のCD抗原の遺伝子の発現を確認する場合、転写物の存在および翻訳物の存在の両方またはその一方を確認することが企図されることが理解されるべきである。
【0073】
本明細書において「発現」は、直接標識抗体(例えば、fluorescein isothiocyanate:FITC標識CD抗体、phycoerythrin:PE標識CD抗体、peridinin chlorophyll protein:PerCP標識CD抗体、allophycocyanin:APC標識CD抗体)、一次抗体(例えば、ビオチン化抗CD抗体)および二次抗体(例えば、フィコエリトリン(PE)標識ストレプトアビジン)を用いた際の蛍光強度(FI)で示すことができる。このような表示は、絶対レベルまたは相対レベルで表すことができる。
【0074】
mRNAレベルの発現強度は、RT−PCRまたはマイクロアレイを用いた発現分析を用いることができる。RT−PCRを用いた場合は、相対的にデンシトメーターを用いて定量化することができ、より詳細に数値化する場合は、マイクロアレイにおいてハウスキーピング遺伝子であるHRPTに対してそれより少ない発現は陰性、同等を弱陽性およびそれより強い(統計学的に強い)レベルを強陽性であらわすことができる。
【0075】
本明細書において「発現レベル」とは、目的の細胞などにおいて、ポリペプチドまたはmRNAが発現されるレベルをいう。そのような発現レベルとしては、本発明の抗体を用いてELISA法、RIA法、蛍光抗体法、ウェスタンブロット法、免疫組織染色法などの免疫学的測定方法を含む任意の適切な方法により評価される本発明ポリペプチドのタンパク質レベルでの発現レベル、またはノーザンブロット法、ドットブロット法、PCR法などの分子生物学的測定方法を含む任意の適切な方法により評価される本発明のポリペプチドのmRNAレベルでの発現レベルが挙げられる。「発現レベルの変化」とは、上記免疫学的測定方法または分子生物学的測定方法を含む任意の適切な方法により評価される本発明のポリペプチドのタンパク質レベルまたはmRNAレベルでの発現量が増加あるいは減少することを意味する。発現レベルは、絶対レベルまたは相対レベルで評価され得る。
【0076】
本明細書において「相互作用」とは、2つの物質についていうとき、一方の物質と他方の物質との間で力(例えば、分子間力(ファンデルワールス力)、水素結合、疎水性相互作用など)を及ぼしあうこという。通常、相互作用をした2つの物質は、会合または結合している状態にある。したがって、あるマーカーの存在を確認するために、そのマーカーに特異的な因子を使用する場合、その因子とマーカーとの相互作用を確認することによって、そのマーカーの存在を確認することができる。
【0077】
本明細書中で使用される「結合」は、2つのタンパク質もしくは化合物のような物質または関連するタンパク質もしくは化合物のような物質の間、あるいはそれらの組み合わせ
の間での、物理的相互作用または化学的相互作用を意味する。結合には、イオン結合、非イオン結合、水素結合、ファンデルワールス結合、疎水性相互作用などが含まれる。物理的相互作用(結合)は、直接的または間接的であり得、間接的なものは、別のタンパク質または化合物の効果を介するかまたは起因する。直接的な結合とは、別のタンパク質または化合物の効果を介してもまたはそれらに起因しても起こらず、他の実質的な化学中間体を伴わない、相互作用をいう。
【0078】
本明細書において「プローブ」とは、インビトロおよび/またはインビボなどのスクリーニングなどの生物学的実験において用いられる、検索の手段となる物質をいい、例えば、特定の塩基配列を含む核酸分子または特定のアミノ酸配列を含むペプチドなどが挙げられるがそれに限定されない。
【0079】
通常プローブとして用いられる核酸分子としては、目的とする遺伝子の核酸配列と相同なまたは相補的な、少なくとも8の連続するヌクレオチド長の核酸配列を有するものが挙げられる。そのような核酸配列は、好ましくは、少なくとも9の連続するヌクレオチド長の、より好ましくは少なくとも10の連続するヌクレオチド長の、さらに好ましくは少なくとも11の連続するヌクレオチド長の、少なくとも12の連続するヌクレオチド長の、少なくとも13の連続するヌクレオチド長の、少なくとも14の連続するヌクレオチド長の、少なくとも15の連続するヌクレオチド長の、少なくとも20の連続するヌクレオチド長の、少なくとも25の連続するヌクレオチド長の、少なくとも30の連続するヌクレオチド長の、少なくとも40の連続するヌクレオチド長の、少なくとも50の連続するヌクレオチド長の、少なくとも核酸配列であり得る。プローブとして使用される核酸配列には、上述の配列に対して、少なくとも70%相同な、より好ましくは、少なくとも80%相同な、さらに好ましくは、少なくとも90%相同な、少なくとも95%相同な核酸配列が含まれる。好ましくは、プローブは標識で標識され得る。
【0080】
プローブとして通常用いられるタンパク質としては、例えば、抗体またはその誘導体が挙げられるがそれらに限定されない。プローブとして、タンパク質が用いられる場合も、直接または間接的に標識で標識され得る。
【0081】
本明細書において「標識」とは、目的となる分子または物質を他から識別するための存在(たとえば、物質、エネルギー、電磁波など)をいう。そのような標識方法としては、RI(ラジオアイソトープ)法、蛍光法、ビオチン法、化学発光法等を挙げることができる。上記の核酸断片および相補性を示すオリゴヌクレオチドを何れも蛍光法によって標識する場合には、蛍光発光極大波長が互いに異なる蛍光物質によって標識を行う。蛍光発光極大波長の差は、10nm以上であることが好ましい。蛍光物質としては、核酸の塩基部分と結合できるものであれば何れも用いることができるが、シアニン色素(例えば、CyDyeTMシリーズのCy3、Cy5等)、ローダミン6G試薬、N−アセトキシ−N2−
アセチルアミノフルオレン(AAF)、AAIF(AAFのヨウ素誘導体)等を使用することが好ましい。蛍光発光極大波長の差が10nm以上である蛍光物質としては、例えば、Cy5とローダミン6G試薬との組み合わせ、Cy3とフルオレセインとの組み合わせ、ローダミン6G試薬とフルオレセインとの組み合わせ等を挙げることができる。本発明では、このような標識を利用して、使用される検出手段に検出され得るように目的とする対象を改変することができる。そのような改変は、当該分野において公知であり、当業者は標識におよび目的とする対象に応じて適宜そのような方法を実施することができる。
【0082】
本明細書において「対応する」アミノ酸または核酸とは、あるポリペプチド分子またはポリヌクレオチド分子において、比較の基準となるポリペプチドまたはポリヌクレオチドにおける所定のアミノ酸またはヌクレオチドと同様の作用を有するか、または有することが予測されるアミノ酸またはヌクレオチドをいい、特に酵素分子にあっては、活性部位中
の同様の位置に存在し触媒活性に同様の寄与をするアミノ酸をいう。例えば、アンチセンス分子であれば、そのアンチセンス分子の特定の部分に対応するオルソログにおける同様の部分であり得る。また、本発明で使用されるヒトCD抗原では、対応するアミノ酸は、例えば、別の種の対応する抗原の同様の部位であり得る。このような「対応する」アミノ酸または核酸は、一定範囲にわたる領域またはドメインであってもよい。従って、そのような場合、本明細書において「対応する」領域またはドメインと称される。
【0083】
本明細書において「対応する」遺伝子(例えば、ポリペプチド分子またはポリヌクレオチド分子)とは、ある種において、比較の基準となる種における所定の遺伝子と同様の作用を有するか、または有することが予測される遺伝子(例えば、ポリペプチド分子またはポリヌクレオチド分子)をいい、そのような作用を有する遺伝子が複数存在する場合、進化学的に同じ起源を有するものをいう。従って、ある遺伝子に対応する遺伝子は、その遺伝子のオルソログであり得る。したがって、マウスのCD抗原などの遺伝子に対応する遺伝子は、他の動物(ヒト、ラット、ブタ、ウシなど)においても見出すことができる。そのような対応する遺伝子は、当該分野において周知の技術を用いて同定することができる。したがって、例えば、ある動物における対応する遺伝子は、対応する遺伝子の基準となる遺伝子(例えば、マウスのCD抗原などの遺伝子)の配列をクエリ配列として用いてその動物(例えばヒト、ラット)の配列データベースを検索することによって見出すことができる。そのようなCD抗原は、当業者が本明細書において記載されるような表をもとに、検索することが可能である。
【0084】
本明細書において「細胞マーカー」とは、細胞を識別することができる任意のマーカーを言う。代表的には、タンパク質(例えば、CD抗原など)などを挙げることができる。
【0085】
本明細書において「CD抗原」とは、CDに対する任意の抗原をいう。ここで、CDとは、分化クラスターの省略形であり、ヒトの白血球分化抗原に対するモノクローナル抗体を,特性によって分類した群をいう。
【0086】
CD抗原は、国際ワークショップによって,主にそれが認識する抗原の生化学的特徴(とくに分子量)を基準として群別(cluster)して分類する(clustering)ことが合意された.これがCD分類(CD classification)とよばれるもので,これにより特定の白血球分化抗原を認識する多くの種類のモノクローナル抗体は,CDに続けて番号すなわちCD番号(CD number)をつけた形(例えばCD1,CD2など)の統一的な名称がつけられている。本明細書において使用される代表例の説明を以下に示す。
【0087】
CD1(4.3〜4.9):β2ミクログロブリンと非共有結合するMHCクラスI様分子(いわゆるMHCクラスIb抗原の一つ)。一部のTリンパ球への抗原提示を有する。CD1a,b,c,dの4種類があり,各々特有の臓器分布を示す。
【0088】
CD2(5)免疫グロブリンファミリーの膜貫通のタンパク質。LFA−3受容体で,ヒツジ赤血球とのロゼット形成に関与.Tリンパ球とNK細胞に発現する。
【0089】
CD3(1.6〜2.6):Tリンパ球抗原受容体に会合するシグナル伝達分子である。γ,δ,ε,ζ,ηの5種類分子種からなり,1分子のTCRにつきγ,δ,ε2,ζ2(またはζ,η)の6分子が会合し,機能的な抗原受容体複合体を形成.もっぱらTリンパ球に発現する。
【0090】
CD4(6.2)抗原提示細胞上のMHCクラスII分子に結合しTリンパ球抗原受容体複合体の共受容体として機能する。MHCクラスII拘束性のヘルパーTリンパ球に発
現する。
【0091】
CD5:Tリンパ球表面糖タンパク質 CD5 (リンパ球糖タンパク質 T1/Leu-1)である。
【0092】
CD7:Tリンパ球抗原 CD7 (Gp40) (Tリンパ球白血病抗原) (Tp41) (Leu-9)である

【0093】
CD8(6.4):α鎖とβ鎖のS−S結合による二量体タンパク質である。抗原提示細胞上のMHCクラスI分子に結合し,Tリンパ球抗原受容体複合体の共受容体として機能する。MHCクラスI拘束性のキラーTリンパ球に発現する。
【0094】
CD10:ネプリリシン (EC 3.4.24.11) (中性エンドペプチダーゼ) (NEP) (エンケファリナーゼ) (共通急性リンパ性白血病抗原)(CALLA)である。
【0095】
CD11(18):白血球の接着因子β2インテグリン(α鎖とβ鎖からなる二量体)のα鎖である。ICAM−1、C3bi、フィブリノゲンなどの受容体として機能し、白血球の接着・遊走・貪食などに関与する。a(LFA−1),b(Mac−1),c(p150/90)の3種類が存在する。単球・顆粒球・リンパ球などに広く発現する。
【0096】
CD13:アミノペプチダーゼ N (EC 3.4.11.2) (ミクロソーム アミノペプチダーゼ)
(Gp150)である。
【0097】
CD14:単球分化抗原 CD14 (骨髄性細胞特異的 ロイシンリッチ糖タンパク質) (LPSレセプター)である。
【0098】
CD15:非タンパク質: Sialyl Lewis (sLE)である。
【0099】
CD16(5〜7):IgGに対するFc受容体タイプ_.膜貫通型と脂質結合型が存在するが,前者はNK細胞に発現され,抗体依存性細胞傷害活性を媒介する。
【0100】
CD19:B-リンパ球抗原CD19 (B-リンパ球表面抗原 B4) (Leu-12)である。
【0101】
CD20:B-リンパ球抗原CD20 (B-リンパ球表面抗原 B1) (Leu-16) (Bp35)である。
【0102】
CD22:B-細胞レセプターCD22 (Leu-14) (B-リンパ球細胞 接着分子) (BL-CAM)である。
【0103】
CD23(4.5):細胞外にレクチンドメインをもつ膜貫通タンパク質だが,一部は遊離型として血中にも存在し,IgEに結合.リンパ球・単球・血小板などに広く発現する。
【0104】
CD33:骨髄性細胞表面抗原 CD33 (Gp67)である。
【0105】
CD34(10.5〜12) 膜貫通性糖タンパク質であり、造血幹細胞に選択的に発現されることから,マーカーとしてその同定や分離に汎用されている。
【0106】
CD45(18〜20):大きな膜貫通タンパク質で細胞外には多くの糖鎖を,細胞内にはチロシン脱燐酸化活性ドメインをもつ。すべての白血球に発現される主要なタンパク質であり、各種の膜受容体からチロシンキナーゼを介するシグナル伝達の制御に関与する。少なくとも3種類(RO,RA,RB)のイソフォームがあり,各々異なった分布様式を示す。
【0107】
TdT:末端デオキシヌクレオチド転移酵素(Terminal Transferase;BD Pharmingなどから入手可能)
FMC7:105kDaの膜糖タンパク質であり、Bリンパ球のサブセットにおいて発現される。正常な成体の50%以上の末梢Bリンパ球がこのFMC7抗原を有する。Becton Dicknson Immunocytometry Systemsから入手可能。
【0108】
HLA−DR:ヒト白血球抗原の一種。HLA抗原は、クラスI抗原とクラスII抗原の2群に大別される。クラスI抗原としては、例えば、HLA−A、HLA−B、HLA−C、HLA−E、HLA−F、HLA−Gなどが挙げられる。クラスI抗原は、ほとんどすべての有核細胞上に発現している。クラスI抗原は、細胞内で産生されるペプチドと複合体を形成し、その複合体を、CD8陽性細胞傷害性Tリンパ球の抗原特異的Tリンパ球受容体に提示する。クラスII抗原としては、例えば、HLA−DR、HLA−DQ、HLA−DPなどが挙げられる。
【0109】
上記抗原は、具体的には、BD Biosciences Pharmingen(USA;www.bdbiosciences.com)、Beckton Dickinson Immuno
cytometry Systems(San Jose,CA,USA)などから購入することができる。
【0110】
あるCD抗原がある細胞系統に特有かどうかは、その発現パターンを見て増減があるかないかをみることによって判別することができる。その方法は、以下の通りである。細胞は、その大きさと内部構造によって、リンパ球、単球、顆粒球、血小板、赤血球の系統に大別できる。任意のCD抗体を用いて、それぞれの細胞系統ごとに任意のCD抗体が反応して蛍光を発しているかどうかを検出する。本発明によれば、例示されるCD抗原の組み合わせ以外にも、このようなCD抗原から、ある細胞系(Tリンパ球、Bリンパ球、血小板、赤血球、単球など)に特有なCD抗原を同定することによって、種々の分析を行うことが可能であることが理解される。
【0111】
各種CD抗原の遺伝子配列などの特徴を示す説明は以下のとおりである。
【0112】
【表1−1】

【0113】
【表1−2】

【0114】
【表1−3】

【0115】
【表1−4】

【0116】
【表1−5】

【0117】
【表1−6】

【0118】
【表1−7】

【0119】
【表1−8】

【0120】
【表1−9】

【0121】
【表1−10】

【0122】
【表1−11】

【0123】
【表1−12】

【0124】
【表1−13】

【0125】
【表1−14】

本明細書において「分化成熟段階」とは、ある細胞系統について言及するとき、その系統が、幹細胞から、分化細胞へと分化していく段階(レベル)をいう。従来は、このような分化レベルは、測定されていなかったが、本発明では、このような分化成熟段階を同定
することができるようになり、正常な分化経路をたどっているかどうかを判定することが可能となったことから、テイラーメイドの治療を提供することができる。
【0126】
(Stageの分類)
以下のマーカーに従って、本発明では、各種Stageに分類することができる。ここで、より多くのマーカーを使用すれば、Stageの分類はより正確に行うことができることが理解される。従って、好ましくは、すべてのCDマーカーを使用することができるが、それには限定されない。
【0127】
本明細書では、単球系は、Stage1、Stage2およびStage3に分けることができる。
【0128】
単球系Stage1は、HLA−DRが陽性、CD11bが陰性、CD45が弱陽性、CD10が陰性、CD16が陰性、CD13が弱陽性、CD14が陰性という特徴を有し、FSC高レベルSSC中等度、かつ、FSC高レベルHLA−DR陽性領域、かつ、FSC高レベルCD11b陰性領域、かつ、FSC高レベルCD45弱陽性領域、かつ、FSC高レベルCD10陰性領域、かつ、FSC高レベルCD16陰性領域、かつ、FSC高レベルCD13弱陽性領域、かつ、FSC高レベルCD14陰性領域、かつ、SSC中等度HLA−DR陽性領域、かつ、SSC中等度CD11b陰性領域、かつ、SSC中等度CD45弱陽性領域、かつ、SSC中等度CD10陰性領域、かつ、SSC中等度CD16陰性領域、かつ、SSC中等度CD13弱陽性領域、かつ、SSC中等度CD14陰性領域、かつ、CD45弱陽性領域HLA−DR陽性領域、かつ、CD45弱陽性領域CD11b陰性領域、かつ、CD45弱陽性領域CD10陰性領域、かつ、CD45弱陽性領域CD16陰性領域、かつ、CD45弱陽性領域CD13弱陽性領域、かつ、CD45弱陽性領域CD14陰性領域、かつ、HLA−DR陽性陽性CD11b陰性領域、かつ、CD10陰性CD11b陰性領域、かつ、CD10陰性HLA−DR陽性領域、かつ、CD16陰性CD13弱陽性領域、かつ、CD11b陰性CD13弱陽性領域、かつ、CD11b陰性CD16陰性領域、かつ、CD16陰性CD14陰性領域、かつ、CD10陰性CD14陰性領域、かつ、CD10陰性CD16陰性領域という形態で同定される(図1A−Bを参照)。
【0129】
単球系Stage2は、HLA−DRが陽性、CD11bが陽性、CD45が陽性、CD10が陰性、CD16が陰性、CD13が陽性、CD14が弱陽性という特徴を有し、FSC高レベルSSC中等度、かつ、FSC高レベルHLA−DR陽性領域、かつ、FSC高レベルCD11b陽性領域、かつ、FSC高レベルCD45陽性領域、かつ、FSC高レベルCD10陰性領域、かつ、FSC高レベルCD16陰性領域、かつ、FSC高レベルCD13陽性領域、かつ、FSC高レベルCD14弱陽性領域、かつ、SSC中等度HLA−DR陽性領域、かつ、SSC中等度CD11b陽性領域、かつ、SSC中等度CD45陽性領域、かつ、SSC中等度CD10陰性領域、かつ、SSC中等度CD16陰性領域、かつ、SSC中等度CD13陽性領域、かつ、SSC中等度CD14弱陽性領域、かつ、CD45陽性領域HLA−DR陽性領域、かつ、CD45陽性領域CD11b陽性領域、かつ、CD45陽性領域CD10陰性領域、かつ、CD45陽性領域CD16陰性領域、かつ、CD45陽性領域CD13陽性領域、かつ、CD45陽性領域CD14弱陽性領域、かつ、HLA−DR陽性CD11b陽性領域、かつ、CD10陰性CD11b陽性領域、かつ、CD10陰性HLA−DR陽性領域、かつ、CD16陰性CD13陽性領域、かつ、CD11b陽性CD13陽性領域、かつ、CD11b陽性CD16陰性領域、かつ、CD16陰性CD14弱陽性領域、かつ、CD10陰性CD14弱陽性領域、かつ、CD10陰性CD16陰性領域という形態で同定される(図1A−Cを参照)。
【0130】
単球系Stage3は、HLA−DRが陽性、CD11bが陽性、CD45が陽性、CD10が陰性、CD16が陰性から弱陽性、CD13が陽性、CD14が陽性という特徴を有し、FSC高レベルSSC中等度、かつ、FSC高レベルHLA−DR陽性領域、かつ、FSC高レベルCD11b陽性領域、かつ、FSC高レベルCD45陽性領域、かつ、FSC高レベルCD10陰性領域、かつ、FSC高レベルCD16陰性から弱陽性領域、かつ、FSC高レベルCD13陽性領域、かつ、FSC高レベルCD14陽性領域、かつ、SSC中等度HLA−DR陽性領域、かつ、SSC中等度CD11b陽性領域、かつ、SSC中等度CD45陽性領域、かつ、SSC中等度CD10陰性領域、かつ、SSC中等度CD16陰性から弱陽性領域、かつ、SSC中等度CD13陽性領域、かつ、SSC中等度CD14陽性領域、かつ、CD45陽性HLA−DR陽性領域、かつ、CD45陽性CD11b陽性領域、かつ、CD45陽性CD10陰性領域、かつ、CD45陽性CD16陰性から弱陽性領域、かつ、CD45陽性CD13陽性領域、かつ、CD45陽性CD14陽性領域、かつ、HLA−DR陽性CD11b陽性領域、かつ、CD10陰性CD11b陽性領域、かつ、CD10陰性HLA−DR陽性領域、かつ、CD16陰性から弱陽性CD13陽性領域、かつ、CD11b陽性CD13陽性領域、かつ、CD11b陽性CD16陰性から弱陽性領域、かつ、CD16陰性から弱陽性CD14陽性領域、かつ、CD10陰性CD14陽性領域、かつ、CD10陰性CD16陰性から弱陽性領域という形態で同定される(図1A−Dを参照)。
【0131】
骨髄球系Stage1は、HLA−DRが弱陽性から陽性、CD11bが陰性、CD45が弱陽性、CD10が陰性、CD16が陰性から弱陽性、CD13が弱陽性、CD14が陰性という特徴を有し、FSC高レベルSSC高レベル、かつ、FSC高レベルHLA−DR弱陽性から陽性領域、かつ、FSC高レベルCD11b陰性領域、かつ、FSC高レベルCD45弱陽性領域、かつ、FSC高レベルCD10陰性領域、かつ、FSC高レベルCD16陰性から弱陽性領域、かつ、FSC高レベルCD13弱陽性領域、かつ、FSC高レベルCD14陰性領域、かつ、SSC高レベルHLA−DR弱陽性から陽性領域、かつ、SSC高レベルCD11b陰性領域、かつ、SSC高レベルCD45弱陽性領域、かつ、SSC高レベルCD10陰性領域、かつ、SSC高レベルCD16陰性から弱陽性領域、かつ、SSC高レベルCD13弱陽性領域、かつ、SSC高レベルCD14陰性領域、かつ、CD45弱陽性HLA−DR弱陽性から陽性領域、かつ、CD45弱陽性CD11b陰性領域、かつ、CD45弱陽性CD10陰性領域、かつ、CD45弱陽性CD16陰性から弱陽性領域、かつ、CD45弱陽性CD13弱陽性領域、かつ、CD45弱陽性CD14陰性領域、かつ、HLA−DR弱陽性から陽性CD11b陰性領域、かつ、CD10陰性CD11b陰性領域、かつ、CD10陰性HLA−DR弱陽性から陽性領域、かつ、CD16陰性から弱陽性CD13弱陽性領域、かつ、CD11b陰性CD13弱陽性領域、かつ、CD11b陰性CD16陰性から弱陽性領域、かつ、CD16陰性から弱陽性CD14陰性領域、かつ、CD10陰性CD14陰性領域、かつ、CD10陰性CD16陰性から弱陽性領域という形態で同定される(図1A−Eを参照)。
【0132】
骨髄球系Stage2は、HLA−DRが陰性から弱陽性、CD11bが弱陽性、CD45が弱陽性、CD10が陰性、CD16が弱陽性、CD13が弱陽性、CD14が陰性という特徴を有し、FSC高レベルSSC高レベル、かつ、FSC高レベルHLA−DR陰性から弱陽性領域、かつ、FSC高レベルCD11b弱陽性領域、かつ、FSC高レベルCD45弱陽性領域、かつ、FSC高レベルCD10陰性領域、かつ、FSC高レベルCD16弱陽性領域、かつ、FSC高レベルCD13弱陽性領域、かつ、FSC高レベルCD14陰性領域、かつ、SSC高レベルHLA−DR陰性から弱陽性領域、かつ、SSC高レベルCD11b弱陽性領域、かつ、SSC高レベルCD45弱陽性領域、かつ、SSC高レベルCD10陰性領域、かつ、SSC高レベルCD16弱陽性領域、かつ、SSC高レベルCD13弱陽性領域、かつ、SSC高レベルCD14陰性領域、かつ、CD45弱陽性HLA−DR陰性から弱陽性領域、かつ、CD45弱陽性CD11b弱陽性領域、かつ、CD45弱陽性CD10陰性領域、かつ、CD45弱陽性CD16弱陽性領域、かつ、CD45弱陽性CD13弱陽性領域、かつ、CD45弱陽性CD14陰性領域、かつ、HLA−DR陰性から弱陽性CD11b弱陽性領域、かつ、CD10陰性CD11b弱陽性領域、かつ、CD10陰性HLA−DR陰性から弱陽性領域、かつ、CD16弱陽性CD13弱陽性領域、かつ、CD11b弱陽性CD13弱陽性領域、かつ、CD11b弱陽性CD16弱陽性領域、かつ、CD16弱陽性CD14陰性領域、かつ、CD10陰性CD14陰性領域、かつ、CD10陰性CD16弱陽性領域という形態で同定される(図1A−Fを参照)。
【0133】
骨髄球系Stage3は、HLA−DRが陰性から弱陽性、CD11bが陽性、CD45が弱陽性から陽性、CD10が陰性、CD16が弱陽性、CD13が弱陽性、CD14が陰性という特徴を有し、FSC高レベルSSC高レベル、かつ、FSC高レベルHLA−DR陰性から弱陽性領域、かつ、FSC高レベルCD11b陽性領域、かつ、FSC高レベルCD45弱陽性から陽性領域、かつ、FSC高レベルCD10陰性領域、かつ、FSC高レベルCD16弱陽性領域、かつ、FSC高レベルCD13弱陽性領域、かつ、FSC高レベルCD14陰性領域、かつ、SSC高レベルHLA−DR陰性から弱陽性領域、かつ、SSC高レベルCD11b陽性領域、かつ、SSC高レベルCD45弱陽性から陽性領域、かつ、SSC高レベルCD10陰性領域、かつ、SSC高レベルCD16弱陽性領域、かつ、SSC高レベルCD13弱陽性領域、かつ、SSC高レベルCD14陰性領域、かつ、CD45弱陽性から陽性HLA−DR陰性から弱陽性領域、かつ、CD45弱陽性から陽性CD11b陽性領域、かつ、CD45弱陽性から陽性CD10陰性領域、かつ、CD45弱陽性から陽性CD16弱陽性領域、かつ、CD45弱陽性から陽性CD13弱陽性領域、かつ、CD45弱陽性から陽性CD14陰性領域、かつ、HLA−DR陰性から弱陽性CD11b陽性領域、かつ、CD10陰性CD11b陽性領域、かつ、CD10陰性HLA−DR陰性から弱陽性領域、かつ、CD16陰性CD13弱陽性領域、かつ、CD11b陽性CD13弱陽性領域、かつ、CD11b陽性CD16陰性領域、かつ、CD16陰性CD14陰性領域、かつ、CD10陰性CD14陰性領域、かつ、CD10陰性CD16陰性領域という形態で同定される(図1A−Gを参照)。
【0134】
骨髄球系Stage4は、HLA−DRが陰性から弱陽性、CD11bが陽性、CD45が弱陽性から陽性、CD10が弱陽性、CD16が陽性、CD13が陽性、CD14が陰性という特徴を有し、FSC高レベルSSC高レベル、かつ、FSC高レベルHLA−DR陰性から弱陽性領域、かつ、FSC高レベルCD11b陽性領域、かつ、FSC高レベルCD45弱陽性から陽性領域、かつ、FSC高レベルCD10弱陽性領域、かつ、FSC高レベルCD16陽性領域、かつ、FSC高レベルCD13陽性領域、かつ、FSC高レベルCD14陰性領域、かつ、SSC高レベルHLA−DR陰性から弱陽性領域、かつ、SSC高レベルCD11b陽性領域、かつ、SSC高レベルCD45弱陽性から陽性領域、かつ、SSC高レベルCD10弱陽性領域、かつ、SSC高レベルCD16陽性領域、かつ、SSC高レベルCD13陽性領域、かつ、SSC高レベルCD14陰性領域、かつ、CD45弱陽性から陽性HLA−DR陰性から弱陽性領域、かつ、CD45弱陽性から陽性CD11b陽性領域、かつ、CD45弱陽性から陽性CD10弱陽性領域、かつ、CD45弱陽性から陽性CD16陽性領域、かつ、CD45弱陽性から陽性CD13陽性領域、かつ、CD45弱陽性から陽性CD14陰性領域、かつ、HLA−DR陰性から弱陽性CD11b陽性領域、かつ、CD10弱陽性CD11b陽性領域、かつ、CD10弱陽性HLA−DR陰性から弱陽性領域、かつ、CD16陽性CD13陽性領域、かつ、CD11b陽性CD13陽性領域、かつ、CD11b陽性CD16陽性領域、かつ、CD16陽性CD14陰性領域、かつ、CD10弱陽性CD14陰性領域、かつ、CD10弱陽性CD16陽性領域という形態で同定される(図1A−Hを参照)。
【0135】
骨髄球系Stage5は、HLA−DRが陰性から弱陽性、CD11bが陽性、CD4
5が陽性、CD10が陽性、CD16が陽性、CD13が陽性、CD14が陰性という特徴を有し、FSC高レベルSSC高レベル、かつ、FSC高レベルHLA−DR陰性から弱陽性領域、かつ、FSC高レベルCD11b陽性領域、かつ、FSC高レベルCD45陽性領域、かつ、FSC高レベルCD10陽性領域、かつ、FSC高レベルCD16陽性領域、かつ、FSC高レベルCD13陽性領域、かつ、FSC高レベルCD14陰性領域、かつ、SSC高レベルHLA−DR陰性から弱陽性領域、かつ、SSC高レベルCD11b陽性領域、かつ、SSC高レベルCD45陽性領域、かつ、SSC高レベルCD10陽性領域、かつ、SSC高レベルCD16陽性領域、かつ、SSC高レベルCD13陽性領域、かつ、SSC高レベルCD14陰性領域、かつ、CD45陽性領域HLA−DR陰性から弱陽性領域、かつ、CD45陽性領域CD11b陽性領域、かつ、CD45陽性領域CD10陽性領域、かつ、CD45陽性領域CD16陽性領域、かつ、CD45陽性領域CD13陽性領域、かつ、CD45陽性領域CD14陰性領域、かつ、HLA−DR陰性から弱陽性CD11b陽性領域、かつ、CD10陽性CD11b陽性領域、かつ、CD10陽性HLA−DR陰性から弱陽性領域、かつ、CD16陽性CD13陽性領域、かつ、CD11b陽性CD13陽性領域、かつ、CD11b陽性CD16陽性領域、かつ、CD16陽性CD14陰性領域、かつ、CD10陽性CD14陰性領域、かつ、CD10陽性CD16陽性領域という形態で同定される(図1A−Iを参照)。
【0136】
Bリンパ球系Stage1は、CD20が陰性、CD10が陽性、CD45が弱陽性、CD34が陽性、CD5が陰性、CD19が弱陽性から陽性という特徴を有し、FSC低レベルSSC低レベル、かつ、FSC低レベルCD20陰性領域、かつ、FSC低レベルCD10陽性領域、かつ、FSC低レベルCD45弱陽性領域、かつ、FSC低レベルCD34陽性領域、かつ、FSC低レベルCD5陰性領域、かつ、FSC低レベルCD19弱陽性から陽性領域、かつ、SSC低レベルCD20陰性領域、かつ、SSC低レベルCD10陽性領域、かつ、SSC低レベルCD45弱陽性領域、かつ、SSC低レベルCD34陽性領域、かつ、SSC低レベルCD5陰性領域、かつ、SSC低レベルCD19弱陽性から陽性領域、かつ、CD45弱陽性CD20陰性領域、かつ、CD45弱陽性CD10陽性領域、かつ、CD45弱陽性CD34陽性領域、かつ、CD45弱陽性CD5陰性領域、かつ、CD45弱陽性CD19弱陽性から陽性領域、かつ、CD20陰性CD10陽性領域、かつ、CD34陽性CD10陽性領域、かつ、CD34陽性CD20陰性領域、かつ、CD5陰性CD19弱陽性から陽性領域、かつ、CD34陽性CD19弱陽性から陽性領域、CD34陽性CD5陰性領域という形態で同定される(図1A−Jを参照)。
【0137】
Bリンパ球系Stage2は、CD20が弱陽性、CD10が陽性、CD45が弱陽性から陽性、CD34が陰性、CD5が陰性、CD19が弱陽性から陽性という特徴を有し、FSC低レベルSSC低レベル、かつ、FSC低レベルCD20弱陽性領域、かつ、FSC低レベルCD10陽性領域、かつ、FSC低レベルCD45弱陽性から陽性領域、かつ、FSC低レベルCD34陰性領域、かつ、FSC低レベルCD5陰性領域、かつ、FSC低レベルCD19弱陽性から陽性領域、かつ、SSC低レベルCD20弱陽性領域、かつ、SSC低レベルCD10陽性領域、かつ、SSC低レベルCD45弱陽性から陽性領域、かつ、SSC低レベルCD34陰性領域、かつ、SSC低レベルCD5陰性領域、かつ、SSC低レベルCD19弱陽性から陽性領域、かつ、CD45弱陽性から陽性CD20弱陽性領域、かつ、CD45弱陽性から陽性CD10陽性領域、かつ、CD45弱陽性から陽性CD34陰性領域、かつ、CD45弱陽性から陽性CD5陰性領域、かつ、CD45弱陽性から陽性CD19弱陽性から陽性領域、かつ、CD20弱陽性CD10陽性領域、かつ、CD34陰性CD10陽性領域、かつ、CD34陰性CD20弱陽性領域、かつ、CD5陰性CD19弱陽性から陽性領域、かつ、CD34陰性CD19弱陽性から陽性領域、CD34陰性CD5陰性領域という形態で同定される(図1A−Kを参照)。
【0138】
Bリンパ球系Stage3は、CD20が陽性、CD10が陰性から弱陽性、CD45
が陽性、CD34が陰性、CD5が弱陽性、CD19が陽性という特徴を有し、FSC低レベルSSC低レベル、かつ、FSC低レベルCD20陽性領域、かつ、FSC低レベルCD10陰性から弱陽性領域、かつ、FSC低レベルCD45陽性領域、かつ、FSC低レベルCD34陰性領域、かつ、FSC低レベルCD5弱陽性領域、かつ、FSC低レベルCD19陽性領域、かつ、SSC低レベルCD20陽性領域、かつ、SSC低レベルCD10陰性から弱陽性領域、かつ、SSC低レベルCD45陽性領域、かつ、SSC低レベルCD34陰性領域、かつ、SSC低レベルCD5弱陽性領域、かつ、SSC低レベルCD19陽性領域、かつ、CD45陽性CD20陽性領域、かつ、CD45陽性CD10陰性から弱陽性領域、かつ、CD45陽性CD34陰性領域、かつ、CD45陽性CD5弱陽性領域、かつ、CD45陽性CD19陽性領域、かつ、CD20陽性CD10陰性から弱陽性領域、かつ、CD34陰性CD10陰性から弱陽性領域、かつ、CD34陰性CD20陽性領域、かつ、CD5弱陽性CD19陽性領域、かつ、CD34陰性CD19陽性領域、CD34陰性CD5弱陽性領域という形態で同定される(図1A−Lを参照)。
【0139】
Bリンパ球系Stage4は、CD20が陽性、CD10が陰性、CD45が陽性、CD34が陰性、CD5が陰性、CD19が陽性という特徴を有し、FSC低レベルSSC低レベル、かつ、FSC低レベルCD20陽性領域、かつ、FSC低レベルCD10陰性領域、かつ、FSC低レベルCD45陽性領域、かつ、FSC低レベルCD34陰性領域、かつ、FSC低レベルCD5陰性領域、かつ、FSC低レベルCD19陽性領域、かつ、SSC低レベルCD20陽性領域、かつ、SSC低レベルCD10陰性領域、かつ、SSC低レベルCD45陽性領域、かつ、SSC低レベルCD34陰性領域、かつ、SSC低レベルCD5陰性領域、かつ、SSC低レベルCD19陽性領域、かつ、CD45陽性CD20陽性領域、かつ、CD45陽性CD10陰性領域、かつ、CD45陽性CD34陰性領域、かつ、CD45陽性CD5陰性領域、かつ、CD45陽性CD19陽性領域、かつ、CD20陽性CD10陰性領域、かつ、CD34陰性CD10陰性領域、かつ、CD34陰性CD20陽性領域、かつ、CD5陰性CD19陽性領域、かつ、CD34陰性CD19陽性領域、CD34陰性CD5陰性領域という形態で同定される(図1A−Mを参照)。
【0140】
Tリンパ球系Stage1は、CD1aが陰性から弱陽性、CD34が陰性から弱陽性、CD45が弱陽性、CD3が陰性、CD8が陰性、CD10が陽性、CD4が陰性という特徴を有し、FSC低レベルSSC低レベル、かつ、FSC低レベルCD1a陰性から弱陽性領域、かつ、FSC低レベルCD34陰性から弱陽性領域、かつ、FSC低レベルCD45弱陽性領域、かつ、FSC低レベルCD3陰性領域、かつ、FSC低レベルCD8陰性領域、かつ、FSC低レベルCD10強陽性領域、かつ、FSC低レベルCD4陰性領域、かつ、SSC低レベルCD1a陰性から弱陽性領域、かつ、SSC低レベルCD34陰性から弱陽性領域、かつ、SSC低レベルCD45弱陽性領域、かつ、SSC低レベルCD3陰性領域、かつ、SSC低レベルCD8陰性領域、かつ、SSC低レベルCD10強陽性領域、かつ、SSC低レベルCD4陰性領域、かつ、CD45弱陽性CD1a陰性から弱陽性領域、かつ、CD45弱陽性CD34陰性から弱陽性領域、かつ、CD45弱陽性CD3陰性領域、かつ、CD45弱陽性CD8陰性領域、かつ、CD45弱陽性CD10強陽性領域、かつ、CD45弱陽性CD4陰性領域、かつ、CD1a陰性から弱陽性CD34陰性から弱陽性領域、かつ、CD3陰性CD34陰性から弱陽性領域、かつ、CD3陰性CD1a陰性から弱陽性領域、かつ、CD8陰性CD10強陽性領域、かつ、CD4陰性CD10強陽性領域、かつ、CD4陰性CD8陰性領域という形態で同定される(図1A−Nを参照)。
【0141】
Tリンパ球系Stage2は、CD1aが陽性、CD34が陰性、CD45が弱陽性、CD3が陰性、CD8が弱陽性から陽性、CD10が弱陽性から陽性、CD4が弱陽性から陽性という特徴を有し、FSC低レベルSSC低レベル、かつ、FSC低レベルCD1
a陽性領域、かつ、FSC低レベルCD34陰性領域、かつ、FSC低レベルCD45弱陽性領域、かつ、FSC低レベルCD3陰性領域、かつ、FSC低レベルCD8弱陽性から陽性領域、かつ、FSC低レベルCD10弱陽性から陽性領域、かつ、FSC低レベルCD4弱陽性から陽性領域、かつ、SSC低レベルCD1a陽性領域、かつ、SSC低レベルCD34陰性領域、かつ、SSC低レベルCD45弱陽性領域、かつ、SSC低レベルCD3陰性領域、かつ、SSC低レベルCD8弱陽性から陽性領域、かつ、SSC低レベルCD10弱陽性から陽性領域、かつ、SSC低レベルCD4弱陽性から陽性領域、かつ、CD45弱陽性CD1a陽性領域、かつ、CD45弱陽性CD34陰性領域、かつ、CD45弱陽性CD3陰性領域、かつ、CD45弱陽性CD8弱陽性から陽性領域、かつ、CD45弱陽性CD10弱陽性から陽性領域、かつ、CD45弱陽性CD4弱陽性から陽性領域、かつ、CD1a陽性CD34陰性領域、かつ、CD3陰性CD34陰性領域、かつ、CD3陰性CD1a陽性領域、かつ、CD8弱陽性から陽性CD10弱陽性から陽性領域、かつ、CD4弱陽性から陽性CD10弱陽性から陽性領域、かつ、CD4弱陽性から陽性CD8弱陽性から陽性領域という形態で同定される(図1A−Oを参照)。
【0142】
Tリンパ球系Stage3は、CD1aが弱陽性、CD34が陰性、CD45が陽性、CD3が弱陽性、CD8が陽性、CD10が弱陽性、CD4が陽性という特徴を有し、FSC低レベルSSC低レベル、かつ、FSC低レベルCD1a弱陽性領域、かつ、FSC低レベルCD34陰性領域、かつ、FSC低レベルCD45陽性領域、かつ、FSC低レベルCD3弱陽性領域、かつ、FSC低レベルCD8陽性領域、かつ、FSC低レベルCD10弱陽性領域、かつ、FSC低レベルCD4陽性領域、かつ、SSC低レベルCD1a弱陽性領域、かつ、SSC低レベルCD34陰性領域、かつ、SSC低レベルCD45陽性領域、かつ、SSC低レベルCD3弱陽性領域、かつ、SSC低レベルCD8陽性領域、かつ、SSC低レベルCD10弱陽性領域、かつ、SSC低レベルCD4陽性性領域、かつ、CD45陽性CD1a弱陽性領域、かつ、CD45陽性CD34陰性領域、かつ、CD45陽性CD3弱陽性領域、かつ、CD45陽性CD8陽性領域、かつ、CD45陽性CD10弱陽性領域、かつ、CD45陽性CD4陽性領域、かつ、CD1a弱陽性CD34陰性領域、かつ、CD3弱陽性CD34陰性領域、かつ、CD3弱陽性CD1a弱陽性領域、かつ、CD8陽性CD10弱陽性領域、かつ、CD4陽性CD10弱陽性領域、かつ、CD4陽性CD8陽性領域という形態で同定される(図1A−Pを参照)。
【0143】
Tリンパ球系Stage4は、CD1aが陰性、CD34が陰性、CD45が陽性、CD3が陽性、CD10が陰性、CD4とCD8は陽性であるが両陽性細胞は認められなくなるという特徴を有し、FSC低レベルSSC低レベル、かつ、FSC低レベルCD1a陰性領域、かつ、FSC低レベルCD34陰性領域、かつ、FSC低レベルCD45陽性領域、かつ、FSC低レベルCD3陽性領域、かつ、FSC低レベルCD10陰性領域、かつ、SSC低レベルCD1a陰性領域、かつ、SSC低レベルCD34陰性領域、かつ、SSC低レベルCD45陽性領域、かつ、SSC低レベルCD3陽性領域、かつ、SSC低レベルCD10陰性領域、かつ、CD45陽性CD1a陰性領域、かつ、CD45陽性CD34陰性領域、かつ、CD45陽性CD3陽性領域、かつ、CD45陽性CD10陰性領域、かつ、CD1a陰性CD34陰性領域、かつ、CD3陽性CD34陰性領域、かつ、CD3陽性CD1a陰性領域、かつ、CD4とCD8がそれぞれ陽性領域という形態で同定される(図1A−Qを参照)。
【0144】
本発明において使用され得るマーカーとしては、例えば、CD1a、CD2、CD3、CD4、CD5、CD7、CD8、CD10、CD11b、CD13、CD14、CD15、CD16、CD19、CD20、CD22、CD23、CD33、CD34、CD45、TdT、FMC7およびHLA−DRなどを挙げることができるがそれらに限定されない。
【0145】
本発明において使用され得る細胞マーカーは、Bリンパ球系統について、CD10とCD19とCD34とCD45との組み合わせ、CD10とCD20とCD5とCD45との組み合わせ、CD19とCD23とCD5とCD45との組み合わせ、CD10とCD20とCD34とCD45との組み合わせ、およびCD5とCD19とCD34とCD45との組み合わせからなる群より選択され得るがそれらに限定されない。
【0146】
本発明において使用され得る細胞マーカーは、Tリンパ球系統について、CD1aとCD3とCD10とCD45との組み合わせ、CD4とCD8とCD7とCD45との組み合わせ、CD1aとCD3とCD34とCD45との組み合わせ、およびCD4とCD8とCD10とCD45からなる群より選択され得るがそれらに限定されない。
【0147】
本発明において使用され得る細胞マーカーは、骨髄球系統または単球系統について、HLA−DRとCD11bとCD10とCD45との組み合わせ、CD16とCD13とCD33とCD45との組み合わせ、CD14とCD33とCD11bとCD45との組み合わせ、CD4とCD10とCD34とCD45との組み合わせ、CD11bとCD13とCD16とCD45との組み合わせ、およびCD10とCD4とCD14とCD45との組み合わせからなる群より選択され得るがそれらに限定されない。
【0148】
このような細胞マーカーは、その発現レベルを測定することによって、Stageを同定することができることが理解される。このようなレベルは、絶対レベルまたは相対レベルで評価され得る。
【0149】
(スクリーニング)
本明細書において「スクリーニング」とは、目的とするある特定の性質をもつ生物または物質などの標的を、特定の操作/評価方法で多数を含む集団の中から選抜することをいう。スクリーニングのために、本発明の方法またはシステムを使用することができる。
【0150】
本明細書において、免疫反応を利用してスクリーニングを行うことを、「免疫表現型分類(immunophenotyping)」ともいう。この場合、本発明の抗体または単鎖抗体は、細胞株および生物学的サンプルの免疫表現型分類のために利用され得る。本発明の遺伝子の転写産物・翻訳産物は、細胞特異的マーカーとして、あるいはより詳細には、特定の細胞型の分化および/または成熟の種々の段階で示差的に発現される細胞マーカーとして有用である。特異的エピトープ、またはエピトープの組み合わせに対して指向されるモノクローナル抗体は、マーカーを発現する細胞集団のスクリーニングを可能とする。種々の技術が、マーカーを発現する細胞集団をスクリーニングするために、モノクローナル抗体を用いて利用され得、そしてその技術には、抗体でコーティングされた磁気ビーズを用いる磁気分離、固体マトリクス(すなわち、プレート)に付着した抗体を用いる「パニング(panning)」、ならびにフローサイトメトリーが挙げられる(例えば、米国特許第5,985,660号;およびMorrisonら、Cell,96:737−49(1999)を参照)。
【0151】
(フローサイトメトリを用いたヒト末梢血白血球の分離と、フローサイトメトリ法によるリンパ球サブセットの計測例)
本明細書において「フローサイトメトリ」とは、液体中に懸濁する細胞,個体およびその他の生物粒子の粒子数,個々の物理的・化学的・生物学的性状を計測する技術をいう。この技術を用いた装置は、「フローサイトメーター」という。フローサイトメーターは、細胞の均一な浮遊液より、浮遊物(細胞)の光学特性を測定する機器である。細胞は液流に乗ってレーザー光の焦点を通過するが、その通過時に毎秒 500−4,000個の細胞より前方散乱光、側方散乱光、及び3つの異なる波長の蛍光の計5種類の光学特性を、個々の細胞について同時に測定し、それら細胞のの大きさ、内部構造、及び細胞膜・細胞
質・核内に存在する種々の抗原あるいは核酸量等の、生物学的特性を迅速、かつ正確に測定することができる。
【0152】
散乱光とは、レーザーが細胞に当たって周囲に散乱した光である。前方散乱光(Forward Scatter:FSC)はレーザー光軸に対して前方で検出し、散乱光強度は細胞の表面積に比例する。すなわち、相対的にFSCの値が大きければ細胞も大きく、FSCの値が小さければ細胞も小さいと考えられる。側方散乱光(Side Scatter:SSC)はレーザー光軸に対して90度(直角)の位置で検出し、細胞の顆粒や細胞内構造の状態に散乱光強度が比例する。すなわち、相対的にSSCの値が大きければ細胞の内部構造は複雑であり、SSCの値が小さければ細胞の内部構造は単純であると考えられる。
【0153】
フローサイトメトリの結果は、代表的には、FSCをX軸に、SSCをY軸にとったドットプロットとして表現され得る。各細胞は図の中の一つのドット(点)で示されており、それらの位置は、FSCとSSCとの相対値によって決められる。比較的サイズが小さく内部構造が単純なリンパ球は左下部に、サイズが大きく内部に顆粒を持つ顆粒球は右上部に、またサイズは大きいが内部構造が単純な単球はリンパ球と顆粒球の間に、それぞれお互いに分離した集団を作って表示される。
【0154】
蛍光とは、細胞に標識されている蛍光色素が照射されたレーザー光によって励起され、エネルギーを放出する際生じた光をいう。フローサイトメーター(例えば、製品名:Becton & Dickinson FACSCalibur)は、代表的には、488nmの単一波長レーザー光と635nmの単一波長レーザー光とを照射する。細胞はそれ自体も弱い蛍光を発する性質を有しているが(自家蛍光)、実際に細胞の持つ分子を蛍光を用いて特異的に検出しようとする場合は、あらかじめ何らかの形で細胞あるいはその持つ分子に蛍光色素 を結合させる必要がある。例えば、FITC(Fluorescein isothiocyanate)は、488nmの励起光を吸収し、主に530nmの蛍光(緑色)を発する。抗体にあらかじめFITCを標識しておけば、細胞の表面に存在する抗原量に応じて結合する抗体量に差が生じ、その結果FITCの蛍光強度が異なってくるため、その細胞の表面に存在する抗原量を推定することができる。例示的に使用され得るFACSCaliburは、異なる蛍光波長域を検出できる4本の蛍光検出器を搭載しており、異なった波長の光を発する複数の蛍光色素を用意しておけば、最大4つの異なる抗原を同時に検出することが可能である。488nmの単一波長レーザー光によって励起されるFITC以外の蛍光色素として、PE(phycoerythrin)は主に585nmの蛍光を発し、PerCP(peridinin chlorophyll protein)およびPE−Cy5(carbocyanin−5)は主に670nmの蛍光を発する。635nmの単一波長レーザー光によって励起される蛍光色素であるAPC(allophycocyanin)は、主に670nmの蛍光を発する。これらの蛍光色素が種々の抗体と組み合わされ、細胞の二重染色や三重染色に用いられる。Bリンパ球表面に発現しているCD19分子など、およびTリンパ球の表面に発現しているCD4およびCD8分子などを、これらと特異的に反応するモノクローナル抗体で検出することができる。
【0155】
厳密にいうと、フローサイトメトリは、FACS(fluorescence−activated cell sorter)が発展したものである。「FACS」とは、レーザー光線を使ってリンパ球などの遊離細胞の表面抗原の解析をしたり表面抗原の有無などによって細胞を分離および解析する方法およびこの方法において用いられる装置をいう。
【0156】
フローサイトメトリの結果は、ヒストグラム、ドットプロットなどで表すことができる

【0157】
本明細書において「ヒストグラム」とは、フローサイトメーターを用いた蛍光測定において、各パラメーターの光信号の強度をX軸に、細胞数をY軸にとったグラフをいう。このような形態により、総計で1万個以上の細胞を計数することが可能である。
【0158】
本明細書において「ドットプロット」とは、二種類の蛍光色素の蛍光強度をX軸とY軸にとったプロットという。二重染色および三重染色をした場合には、それぞれの蛍光強度をXあるいはY軸におき、個々の細胞が二次元グラフ上の一つ一つの点に対応するような表示方法を用いて解析することができる。
【0159】
例えば、末梢血もしくは骨髄液を採取後、溶血法か比重遠心法にて赤血球を除いた後に蛍光標識抗体(目的とする抗原に対する抗体とそのコントロール抗体)と反応させ、十分に洗浄してからフローサイトメトリを用いて観察することができいる。検出された散乱光や蛍光は電気信号に変換されコンピューターにより解析される。その結果は、FSCの強さは細胞の大きさを表しSSCの強さは細胞内構造を表すことによりリンパ球、単球、顆粒球を区別することが可能である。その後、必要に応じて目的とする細胞集団をゲートしそれらの細胞における抗原発現様式を検討する。
【0160】
代表的な例として、ヒト末梢血単核白血球(単核球)の分離と生細胞数の算出は、フローサイトメトリーを用いて、例えば以下のようなプロトコルをもとに行うことができる。
【0161】
採血:採血者は供血者の静脈穿刺部位より5cm以上近位に駆血帯をかけ、静脈を怒張させ固定させる。このとき、供血者に拳を握らせる。静脈穿刺部位を酒精綿でやや強くこするように消毒してから採血を行う。注射器に6mlの採血が終了したら駆血帯を外し、すばやく針を抜き、ただちに穿刺部位を酒精綿で圧する。出血がある程度止まったら、救急絆創膏を貼る。注射針を適切に処理し、採取した血液とヘパリン(または他の抗凝固剤)とを混和させるために注射器を数回転倒させる。
【0162】
血液希釈:採血した血液を注射器から15ml遠心分離管に移す。6mlのPBBS(0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)を含むリン酸緩衝化生理食塩水;組成: NaCl7.20g、KCl 0.320g、NaHPO 1.15g、KHPO 0.20g、CaCl 0.140g、MgCl・6HO 0.20g、MgSO・7HO 0.20g、グルコース 1.00g、フェノールレッド 0.010g。精製水で総量を 1リットルとする。)を加えて血液を2倍量に希釈する(採血量が6ml以下の場合は、添加するPBBSを増やすことにより、希釈後の液量を12mlに調整する)。希釈血液はピペッティングにより、泡が立たないように攪拌する。
【0163】
比重遠心法による単核細胞の分離:予めリンパ球分離液(例えば、Ficoll−Paque;3ml)が入った遠心分離管を2本調製しておく。上記のように調製した希釈血液の6mlを、各遠心分離管のリンパ球分離液の上に、パスツールピペットを用いて静かに、分離液と希釈血液との界面を乱さないように重層する。分離液に希釈血液を重層させた遠心分離管を遠心分離器により1500rpmにて30分間遠心分離する。
【0164】
単核細胞の回収:リンパ球および単球を含む末梢血単核細胞は、血漿(黄色味を帯びる)と分離液(透明)との中間に、白い帯状の層として観察される。一方、赤血球および顆粒球は、遠心分離管の底に沈む。白い帯状の単核細胞層をパスツールピペットで吸い上げるように回収し、それを新しい15ml遠心分離管(細胞洗浄用)に入れる。2本の遠心分離管から回収した単核細胞浮遊液を同一の洗浄用遠心管にまとめ、それら細胞浮遊液に適宜PBBSを加えて、全液量を12mlにする。ピペッティングにより泡立てないように攪拌した後、1500rpm、10分間遠心分離することで細胞をペレット化する。遠心分離後、流しのアスピレーターで上清を吸引除去する。細胞ペレットにPBBSを10ml加えて、駒込ピペットで細胞を丁寧に再浮遊させ、再び1500rpm、10分間遠心した後、上清を吸引することにより、細胞からリンパ球分離液を完全に洗浄除去する。
【0165】
必要に応じて生細胞数の算定する。上清を吸引除去した細胞ペレットに、ショートピペットでPBBSを3ml加え、パスツールピペットを用いて細胞を再浮遊させる(細胞の固まりがなくなるまで十分攪拌する)。
【0166】
先端にチップを着けたマイクロピペットで遠心管の細胞浮遊液50μlを取り(浮遊液中の細胞が重力で下に沈まないよう、素早く操作する)、エッペンドルフチューブに移し、このチューブにあらかじめ入れてある0.1%トリパンブルー溶液(50μl)と細胞浮遊液を、ピペッティングにより丁寧に攪拌する。
【0167】
これは、例えば、Burker−Turk血球計算盤にカバーガラスを載せ、計算盤とカバーガラスの隙間に、マイクロピペットでトリパンブルー液と混ぜた細胞浮遊液を入れる(毛細管現象で吸い込まれる)。計算盤とカバーガラスの隙間に入れる液量として、およそ7lが適量であるが、カバーガラスの着け方(計算盤との位置関係)によっては、その液量を必要に応じて微調整する。液量が適当であれば、計算盤とカバーガラスの密着面にニュートンリングが確認できる。
【0168】
Burker−Turk計算盤を顕微鏡に載せ、コンデンサーの絞りを絞って目盛が見えるようにする。このタイプの血球計算盤には、右の図のように一辺1mmの正方形が9つある。細かく区画された中央の正方形は赤血球を数えるのに使う。今回は白血球を数えるので、四隅にある区画の大きい正方形のどれか一つを使う。外側を区画する三重線の一番外までが1mmの辺であることに注意する。
【0169】
1mm四方の正方形の中に含まれる細胞数を数えるが、青く染まっているのは死細胞、丸く透明に見えるのが生細胞である。1mm四方中の生細胞数と死細胞数の両方を数えよ。
【0170】
計算盤の目盛面とカバーガラスの間の隙間は0.1mmになるように作られている。従って、ここで数えた細胞の数は、底面が一辺1mmの正方形で、高さが0.1mmの直方体に相当する体積の浮遊液中にある細胞数となる。
【0171】
必要に応じて細胞浮遊液の濃度調整する。上で計算した細胞密度を基に、最終的な細胞濃度が1.0×10個/mlになるように、細胞浮遊液にPBSを加えて調整する。細胞浮遊液は冷蔵庫に保存する。
【0172】
上記のように調製したヒト末梢血単核細胞浮遊液(1×10/mlに調整済み)を用いて、以下の分析を行う。
【0173】
FITC標識抗CD抗体(例えば、FITC標識抗ヒトCD4抗体)(10μg/mlに調整済み):20μl
PE標識抗CD抗体(例えば、PE標識CD8抗体)(10μg/mlに調整済み):20μl 0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)入りリン酸緩衝平衡塩類溶液(PBS)
マイクロピペッター、マイクロピペッター用チップ、エッペンドルフチューブ、ショートピペット、パスツールピペット、駒込ピペットなど
水流式アスピレーター
エッペンドルフチューブ用マイクロ遠心分離機。
【0174】
(操作手順)
A)エッペンドルフチューブを2本用意し、蓋にA、Bと記入し、上記のごとく作製した末梢血単核細胞の浮遊液をそれぞれのチューブに1mlずつ入れる(1チューブあたり1×10個の細胞が入ることになる)。マイクロ遠心分離機にて3,000rpmで3分間遠心して、細胞ペレットを残して上清のみを吸引除去する。
【0175】
B)Aと記入したチューブに、先端にチップを着けたマイクロピペッターで抗CD4抗体液を50μl添加し、その同じチップのままでピペッティングにより、泡を立てずに、細胞を再浮遊させる。次に、マイクロピペッターのチップを新しいものに交換し、同じチューブに適切な、例えば、抗ヒトCD8抗体液を50μl添加し、同様にして抗体液と細胞浮遊液を撹拌混合する。その後、チューブは氷上に置いて抗体を細胞に結合させる。
【0176】
C)Bと記入したチューブにマイクロピペットで、例えば、抗ヒトCD19抗体液を100μl添加し、同様にして抗体液と細胞浮遊液を撹拌した後、チューブを氷上に置く。
【0177】
D)チューブを氷上においてから30分が経過したら、それぞれのチューブに駒込ピペットでPBBSを1mlずつ加え、マイクロ遠心分離機にて3,000rpm、3分間遠心分離して、上清を吸引除去する。
【0178】
E)細胞ペレットのみを残して上清を吸引した各チューブに、先端が細胞に触れないように注意しながら駒込ピペットでPBBSを1mlずつ加え、パスツールピペットを使って Aのチューブの細胞に液を吹きかけるようにして丁寧に浮遊させる。次にパスツールピペットを新しいものに換えて、Bのチューブの細胞を浮遊させる。マイクロ遠心機にて3,000rpm、3分間遠心し、上清を吸引除去する。
【0179】
F)細胞ペレットのみを残して上清を吸引した各チューブに、先端が細胞に触れないように注意しながら駒込ピペットでPBBSを0.5mlずつ加える。チューブを氷上に置く。
【0180】
G)細胞の浮遊液を目の粗いフィルターに通過させ、細胞の凝集塊などの大きなかたまりを除くと同時に、細胞浮遊液をフローサイトメーター解析用チューブに移し、蓋をする。再び細胞浮遊液の入ったチューブを氷上に置く。
【0181】
H)フローサイトメーターによって10,000個の単核細胞を解析し、データ解析ソフトウェア(例えば、CellQuest(登録商標))を用いて染色データを可視化する。チューブAはFITCとPEとの2重染色なのでドットプロットで解析し、CD4陽性細胞とCD8陽性細胞の割合を調べる。チューブBは単染色なのでヒストグラムで解析し、細胞表面CD19陽性細胞の割合を調べる。
【0182】
(診断)
本明細書において「診断」とは、被検体における疾患、障害、状態などに関連する種々のパラメータを同定し、そのような疾患、障害、状態の現状を判定することをいう。本発明の方法、装置、システムを用いることによって、体内の細胞の分化段階を調べることができ、そのような情報を用いて、被検体における疾患、障害、状態、投与すべき処置または予防のための処方物または方法などの種々のパラメータを選定することができる。
【0183】
本発明の診断方法は、原則として、身体から出たものを利用することができることから、医師などの医療従事者の手を離れて実施することができることから、産業上有用である

【0184】
本明細書において「治療」とは、ある疾患または障害について、そのような状態になった場合に、そのような疾患または障害の悪化を防止、好ましくは、現状維持、より好ましくは、軽減、さらに好ましくは消長させることをいう。
【0185】
本明細書において「被検体」とは、本発明の処置が適用される生物をいい、「患者」ともいわれる。患者または被検体は好ましくは、ヒトであり得る。
【0186】
本発明が対象とする「疾患」は、細胞の分化段階が関連するかまたは処置時にその分化段階が関連する、任意の疾患であり得る。そのような疾患としては、貧血、がん(例えば、癌、白血病、リンパ腫など)、免疫疾患などが挙げられるがそれらに限定されない。
【0187】
本発明が対象とする「障害」は、分化段階が関連する任意の障害であり得る。
【0188】
そのような疾患、障害または状態の具体例としては、例えば、循環器系疾患(貧血(例えば、再生不良性貧血(特に重症再生不良性貧血)、がん性貧血など)、がんまたは腫瘍(例えば、白血病、多発性骨髄腫)など);免疫系疾患(Tリンパ球欠損症、白血病など);呼吸器系疾患(肺がん、気管支がんなど);消化器系疾患(原発性肝がんなど);泌尿器系疾患(膀胱がんなど);生殖器系疾患(男性生殖器疾患(前立腺がん、精巣がんなど)、女性生殖器疾患(子宮がん、卵巣がんなど)など)などが挙げられるがそれらに限定されない。
【0189】
本明細書において「がん」または「癌」は、互換可能に用いられ、異型性が強く、増殖が正常細胞より速く、周囲組織に破壊性に浸潤し得あるいは転移をおこし得る悪性腫瘍またはそのような悪性腫瘍が存在する状態をいう。本発明においては、がんは固形がんおよび造血器腫瘍を含むがそれらに限定されない。
【0190】
本明細書において「白血病」または「造血器腫瘍」とは、交換可能に用いられ、未熟な造血細胞の腫瘍性増殖を伴う疾患を総称して言う。増殖する白血球細胞が骨髄球系かリンパ系かにより,骨髄性白血病とリンパ性白血病とに大別される。
【0191】
本明細書において「骨髄性白血病(myelogenous leukemia)」とは、臨床的に急性と慢性に分類される.未熟な白血球の腫瘍性増殖と蓄積を伴うだけでなく,正常の骨髄球の増殖や分化過程も抑制することが知られる。慢性骨髄性白血病は骨髄幹細胞の腫瘍化によると考えられ,腫瘍細胞は多分化能をもち,さまざまな分化段階の腫瘍細胞が認められる。
【0192】
本明細書において「慢性骨髄性白血病」は骨髄幹細胞の腫瘍化によるものが多いと考えられる。腫瘍細胞は多分化能をもち,さまざまな分化段階の腫瘍細胞が認められるている。従って、分化段階を種々に判定することは、テイラーメイド治療には必要である。
【0193】
本明細書において「急性骨髄性白血病」は白血球の各成熟段階の未熟骨髄球の腫瘍性増殖からなり,その特殊なものとして,急性前骨髄球性白血病や急性単球性白血病などがある。慢性骨髄性白血病と同様,骨髄・肝臓・脾臓などを侵し,一般に予後不良.急性骨髄性白血病は家族集積性も報告されており,さまざまな染色体異常を伴うことが知られている。従って、分化段階を種々に判定することは、テイラーメイド治療には必要である。特に、多くの場合、赤血球、白血球、血小板の3系統のうち1〜3系統の細胞数が減少するこ
とが知られており、貧血や感染症にかかりやすくなったり、出血が止まらなくなるという症状が起こることも頻繁に生じることから、系統に応じた治療を行うことが重要である。
【0194】
本明細書において「リンパ性白血病(lymphocytic leukemia)」とは、若年者にみられることが多く,その大部分は急性リンパ性白血病である.腫瘍細胞はBリンパ球(Bリンパ球)またはTリンパ球(Tリンパ球)の形質を示すものと,それをもたないものに大別される.日本の九州地方やカリブ海沿岸諸国にみられる成人Tリンパ球白血病(adult T cell leukemia, ATL)は50歳前後の成人にみられる慢性リンパ性白血病である。HTLV−IがCD4リンパ球に感染して発生する.主な感染経路は母子感染で,現在日本には約100万人の感染者が存在し,約100人に1人の割合で成人Tリンパ球白血病が発生すると考えられている。療法としては,代謝拮抗剤・アルキル化剤・一部の抗生物質・植物アルカロイド・副腎皮質ホルモンなどの投与が行われる。
【0195】
造血器腫瘍、特に白血病の分類はFAB(French−American−British classificaton)による形態学的・細胞化学的分類によってなされていたが、近年では白血病の病因・病態をより反映しうる特徴的な染色体異常によって層別化されている(WHO分類)。しかし、白血病は非常に多様な疾患が混在しており、これらの分類だけではその白血病細胞の特性を正確に理解することは困難である。したがって、表面抗原、免疫遺伝子解析、特異的遺伝子変異の検索、などは白血病細胞の特性のみならず、治療戦略を考える上でも重要であり、本発明を利用した分析およびその結果を利用することは重要であると考えられる。フローサイトメトリを用いた腫瘍細胞の表面抗原発現様式の検討は、細胞のクロナリティ、細胞起源、診断、治療法、予後予測のためには不可欠な検査となっているが、その検査法における長所と短所を十分理解している必要がある。
【0196】
長所としては多数の細胞を短時間で検索できるのみならず、多重染色をすることにより1個の細胞に発現している複数の抗原を同時に検索することが可能である。この制限を少しでも緩和する目的で導入されたのが、CD45blast gating法(宮崎年恭,ほか!フローサイトメトリ一法による急性白血病表面マーカー解析におけるCD45抗体を用いたgating法.臨床血液37:214〜220,1996)である。CD45抗原は白血球共通抗原であり、全ての系統の白血球に発現しているが、各系統の種類によって発現量に差が認められる。また、その発現量は未熟な分化成熟段階にある白血球では少なく、分化成熟が進むにつれ増大する。
【0197】
このような細胞表面のCD45抗原の発現量を利用して、骨髄血中の細胞は各系統別に、また分化成熟段階別に分類され、細胞表面抗原の発現パターンが詳細に調べることが可能となる。しかし、ほとんど増殖していないような腫瘍細胞ではCD45の発現が高値であること、ウイルス感染時の活性化Tリンパ球や、化学療法後の骨髄回復期ではCD45弱発現正常細胞の出現が見られることを留意する必要がある。急性骨髄性白血病(acute myeloid 1eukemia(AML))においては、CD45 Blast Gating法によるデータ表示とFAB分類の間に相関が見られる。他方、急性リンパ性白血病(ALL)では、CD45抗原の発現強度に一定のパターンは認められないばかりでなく、ではCD45陰性の症例も認められることが報告されている。
【0198】
白血病細胞の検索は、骨髄液もしくは末梢血より溶血法を用いて白血球分離後または比重遠心分離法を用いて、単核球細胞を分離後にフローサイトメトリにより表面抗原発現様式により行うことができる。診断のためには細胞の系統(lineage)、分化段階(stage)に関与するCD抗原などに対するモノクローナル抗体を用いる。特にFCMを用いた白血病細胞の解析は、どのようなCD抗原を、どのように組み合わせるかということが重要であり、白血病細胞の特徴を考えて解析パネル(抗体の組み合わせ〕を作成することが重要である。
【0199】
代表的な抗原は幹細胞抗原としてはCD34、CD117、骨髄球系としてはCD33、CD13、CD15、CD16、CDllb、単球系細胞としては、CD14、Bリンパ球系としては、CDI9、CD10、CD20、CD21、CD22、Tリンパ球系としてはCD7、CD2、CD3、CD4、CD8、CDla、NK細胞系としては、CD56がありこれらの抗原発現様式にて白血病細胞のlinageを決定することができる。これに加え、本発明において同定されるような他の抗原を用いることが可能である。
【0200】
さらに細胞質内myeloperoxidaso(MPO)、CD3、CD22およびCD79の発現、ならびに免疫グロブリン遺伝子やTリンパ球受容体遺伝子のクローナルな再構成、染色体分析などの結果とあわせることによって、より的確な診断が可能となる。AMLまたはALLを対象とする場合は、白血病細胞の系統(lineage)を明確にすることを念頭にパネルを作成することによって、病型をさらに詳細に分類することも可能である。
【0201】
時に白血病細胞では2種類以上の系統にわたる表面抗原を発現する場合が存在する(Lineage infidelity、1ineage promiscuity)。個々の白血病細胞に特異的なCD抗原を用いて解析パネルを作成することにより微小残存病変(Minimal Residual Disease:MRD)の検出も可能となる。
【0202】
その代表的な白血病である抗原発現異常白血病(aberrant antigen expression leukemia)を、その細胞学的・臨床病態的特性を簡潔に説明する。
【0203】
CD7+急性骨髄性白血病(acutemyeloid leukemia(AML)):CD7は汎Tリンパ球抗原であり、その発現はTリンパ球性白血病に見られるが、AMLの一部にも発現している。したがって、MPOと細胞質内CD3の双方が陰性の場合はAML(MO)とT-ALLの鑑別が必要であり注意を要す。AMLにおけるCD7の発現は約40%に見られ、その発現は予後不良因子である可能性が報告されているが、別の検討では予後に差異は見られなかったとされている。おそらく、CD7+AMLは多彩な白血病の集団であり、その発現はdenovoAMLのみならずMDSより移行したAMLにおいて高頻度で見られ、これらのMDS/AMLは難治性であることがCD7+AMLの病態に影響を及ぼしている可能性が推測される。また、慢性骨髄性白血病からの骨髄性急性転化例では高頻度にCD34、CD7の発現が認められることが報告されている。これらのことは幹細胞レベルの細胞が腫瘍化した場合にCD7が出現することを意味するようである。
【0204】
CD19+AML:CD19は汎Bリンパ球抗原であるが、CD7と同様にAMLにもその発現を見る場合がある。CD7+AMLが多彩な白血病細胞の集団であるのと異なり、CD19+AMLのほとんどが染色体異常であるt(8;21)(q22;q22)を持ち、多くはFAB分類上M2に分類される。CD19 AMLは、成人によく見られ、白血病細胞は分化傾向を持ち、好酸球増加、予後良好などの特徴を持つ、またWHO分類では予後良好な単一疾患とされている。しかし、一部には予後不良群も存在しており、不良因子としてCD56の発現、付加的染色体異常、髄外腫瘤の存在などが示唆されている。
【0205】
CD56+AML:CD56はNK細胞に見られる抗原であるぷAML細胞に発現していることがある。上記のようにt(8;21)AMLにおけるCD56の発現は予後不良因子である可能性が示唆されているが、AMLM3に対する全トランスレチノイン酸(all−trans retinoic acid)を用いた治療においても予後不良因子
であるようである。
【0206】
CD15+CD117+AML:CD15は頼粒球や単球に発現する一方、CD117は幹細胞抗原であり未分化細胞に発現する。双方の発現は正常細胞で同一細胞に見られることはないが、一部のAMLではそれらの発現が見られることがあり、これらの白血病は予後良好であるようである。
【0207】
CD33/CD13+急性リンパ性白血病(acute lymphoid leukemia(ALL)):CD33、CD13はともに骨髄球系抗原であるが、ALLにそれらの発現が見られる症例があり、これらは骨髄球系抗原(myeloid antigen)+ALLと呼ばれている。発現機序は不明であるものの臨床病態に差異はないとされている。また、Tリンパ球抗原であるCD2がB−ALLに見られることがあるが、このB−ALLは小児では予後良好であるとされている。
【0208】
CD4+白血病:CD4はTリンパ球抗原のひとつであり、白血病細胞ではTリンパ球性腫瘍に見られる。しかし、MPO陽性白血病(CD4+AML〕にも見られることがある。これらの白血病の多くはMO、M1、M4、M5(FAB分類)であり、未分化単球系細胞の腫瘍化である可能性が示唆されている。しかし、CD4+AMLが疾患特異的な病態を示すかどうかは明らかではなく今後の解析が必要である。他方、MPO陰性であり、CD3、CD117、CD33、CD13抗原が全て陰性であるCD4+CD56+Leukemiaが報告されている。この表現型よりdendritic cell(メラニン形成細胞)の白血化が推測されている。この種の白血病は髄外(リンパ節、皮膚)に再発をきたしやすいとされている。
【0209】
CD56+CD33+CD7+白血病:MPO陰性であり、CD56+CD33+CD7+CD3−の表現型を示す一群の白血病(骨髄球/NK細胞急性白血病=myeloid/NK cell acute leukemia)が存在することが報告されている。これらの白血病はリンパ節などの髄外腫瘤を高頻度に認め予後不良な疾患群である可能性が推測されている。
【0210】
抗原発現系統不全に基づいたAMLおよびALL細胞のフローサイトメトリを用いたMRD解析が可能である。そのような解析は、正常骨髄血中または正常末梢血中細胞には存在しないが白血病細胞には存在する抗原発現異常(aberrant antigen expression)として前述した抗原発現不整、抗原欠損、抗原発現量異常、抗原発現系統不全(lineage infidelity)がある。これの抗原発現系統不全が認められる症例においては、その抗原発現系統不全をマーカーとして用いることによって、MRDの検出が行える。一方、AMLでは85%の症例において骨髄球系(myeloid)抗原〔CD13、CD33、CD34、HLA−DR)とリンパ球系(lymphoid)抗原またはNK細胞抗原(CD2,CD5,CD7,CDIO,CD19,CD25,CD56)が同時発現しており、ALLでは113の症例においてmyeloid抗原が発現している。また特異的なマーカーとしては、フィラデルフィア(Philadelphia:Ph1)染色体陽性ALLにおいて、正常骨髄血中には存在しないCD19+/KOR−SA3544+細胞がほぼ全症例において見られる。このような抗原発現系統不全は白血病細胞の特異的マーカーと考えることができ、それらをマーカーとして高精度かつ高感度なMRDの検出が容易に行える(図2を参照)。
【0211】
抗原発現不整、抗原欠損、抗原発現藍異常に基づいたFCMを用いた骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndrome(MDS))細胞の解析は、代表的に以下のように行うことができる。MDSを対象とする場合は、白血病細胞の抗原発現不整(Maturational Asynchrony)、抗原欠損(Antigen
ic Absence)、および抗原発現量異常(Quantitation Abnormalities)を明確にすることを念頭にパネルを作成する。正常骨髄血中の血液細胞は正確に制御された分化過程を経て成熟している(図3を参照)。特定のCD抗原を組み合わせて骨髄血、末梢血、リンパ節に存在する正常細胞の各種抗原量の定量と分布をFCMで解析すると、それらの細胞表面抗原の発現と消失が一本の道(Normal Pathway)として示される。この正常経路は全ての血液細胞に認められ、年齢や治療に影響を受けることなく、正常細胞であれば全ての人において同じパターンを示す。そのデータを基礎にして種々の白血病細胞の解析を行うと、白血病細胞は決して正常細胞と同じような抗原分布を示さないことが判る。つまり、各抗原の発現量を測定し、多次元空間にプロットすると、白血病細胞は必ず正常細胞とは異なる空間に位置するということである。これは前述したように、白血病細胞が抗原発現異常を持っていることに由来している。MDSは、CD抗原が陽性か陰性かという解析では、正常細胞との判別は非常に困難であるが、このNomlal Pathwayに基づいた解析を行うことによって、検出が可能となる(図4を参照)。これらを捉えるためのパネルを以下の表に記載する。
【0212】
(表2)
Bリンパ球成熟
CD20×CD10×CD34×CD45
CD5×CD19×CD34×CD45
CD10×CD19×CD34×CD45
CD10×CD20×CD5×CD45
CD19×CD23×CD5×CD45
Tリンパ球成熟
CD1a×CD3×CD10×CD45
CD1a×CD3×CD34×CD45
CD4×CD8×CD10×CD45
CD4×CD8×CD7×CD45
骨髄球/単球成熟
HLA−DR×CD11b×CD10×CD45
CD16×CD13×CD33×CD45
CD16×CD13×CD11b×CD45
CD16×CD14×CD10×CD45
CD14×CD33×CD11b×CD45
CD4×CD10×CD34×CD45。
【0213】
それぞれのCD抗原の組み合わせによって、各血液細胞の分化成熟段階を反映したPathwayの検出が可能となる(図7)。このパネルはAMLおよびALLを解析する場合にも有用である。本発明のフローサイトメトリーを用いた表面抗原発現様式の検索は白血病細胞の特性を理解する上で非常に有用である。
【0214】
本明細書において「キット」とは、通常2つ以上の区画に分けて、提供されるべき部分(例えば、抗体、標識など)が提供されるユニットをいう。混合されて提供されるべきでなく、使用直前に混合して使用することが好ましいような組成物の提供を目的とするときに、このキットの形態は好ましい。そのようなキットは、好ましくは、提供される部分(例えば、試薬をどのように処理すべきかを記載する説明書を備えていることが有利である。本明細書においてキットが試薬キットとして使用される場合、キットには、通常、抗体などを記載した指示書などが含まれる。
【0215】
本明細書において「指示書」は、本発明の試薬の使用方法、反応方法、測定方法などを使用者に対して記載したものである。この指示書は、本発明の酵素反応などの手順を指示
する文言が記載されている。この指示書は、必要に応じて本発明が実施される国の監督官庁が規定した様式に従って作成され、その監督官庁により承認を受けた旨が明記される。指示書は、いわゆる添付文書(package insert)であり、通常は紙媒体で提供されるが、それに限定されず、例えば、瓶に貼り付けられたフィルム、電子媒体(例えば、インターネットで提供されるホームページ(ウェブサイト)、電子メール)のような形態でも提供され得る。本発明のキットは、フローサイトメトリの反応のための試薬をさらに含む。
【0216】
本明細書において用いられる分子生物学的手法、生化学的手法、微生物学的手法は、当該分野において周知であり慣用されるものであり、例えば、Sambrook J.et
al.(1989).Molecular Cloning: A Laboratory Manual,Cold Spring Harborおよびその3rd Ed.(2001);Ausubel,F.M.(1987).Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.AssociatESand Wiley−Interscience;Ausubel,F.M.(1989).Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates and Wiley−Interscience;Innis,M.A.(1990).PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications,Academic Press;Ausubel,F.M.(1992).Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates;Ausubel,F.M.(1995).Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates;Innis,M.A.et al.(1995).PCR Strategies,Academic Press;Ausubel,F.M.(1999).Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Wiley,and annual updates;Sninsky,J.J.et al.(1999).PCR Applications: Protocols for Functional Genomics,Academic Press、別冊実験医学「遺伝子導入&発現解析実験法」羊土社、1997などに記載されており、これらは本明細書において関連する部分(全部であり得る)が参考として援用される。
【0217】
人工的に合成した遺伝子を作製するためのDNA合成技術および核酸化学については、例えば、Gait,M.J.(1985).Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach,IRLPress;Gait,M.J.(1990).Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach,IRL Press;Eckstein,F.(1991).Oligonucleotides and Analogues:A Practical Approac,IRL Press;Adams,R.L.etal.(1992).The Biochemistry of the Nucleic Acids,Chapman&Hall;Shabarova,Z.et al.(1994).Advanced Organic Chemistry of Nucleic Acids,Weinheim;Blackburn,G.M.et al.(1996).Nucleic Acids in Chemistry and Biology,Oxford University Press;Hermanson,G.T.(I996).Bioconjugate Techniques,Academic Press、Immunophenotyping.Edited by Carlton C.Stewart,Janet K.Nicholson.Wiley−Liss,2000.などに記載されており、これらは本明細書において関連する部分が参考として援用される。
【0218】
(好ましい実施形態の説明)
以下に本発明の好ましい実施形態を説明する。以下に提供される実施形態は、本発明のよりよい理解のために提供されるものであり、本発明の範囲は以下の記載に限定されるべきでないことが理解される。従って、当業者は、本明細書中の記載を参酌して、本発明の範囲内で適宜改変を行うことができることは明らかである。
【0219】
1つの局面において、本発明は、幹細胞の分化成熟段階を識別する方法を提供する。この方法は、A)少なくとも1つの細胞マーカーの発現レベルを測定する工程;およびB)該発現レベルに基づき、該幹細胞の分化成熟段階を決定する工程;を包含する。このような発現レベルは、フローサイトメトリーなどの免疫学的な方法を用いて測定することができる。使用される細胞マーカーは、対象となる幹細胞の分化成熟段階に関連するマーカーであることが好ましい。そのような関連するマーカーは、本明細書における開示をもとに同定することができることが理解される。そのような同定方法としては、例えば、ある幹細胞およびある細胞マーカーについてフローサイトメトリーを行い、予め分化段階を示すことがわかっている他の指標(例えば、本明細書に記載されるCD抗原)を参酌してその分化段階とその細胞マーカーとを関連付けることによって同定することができる。そのような段階は、さらに細分化されてもよい。分化段階に関係がなかったCD抗原は、その細胞については用いられないことが好ましい。調べられる発現レベルは、相対レベルまたは絶対レベルで表現され得る。
【0220】
使用される細胞マーカーは、好ましくは、少なくとも2つ、より好ましくは少なくとも3つ、さらに好ましくは少なくとも4つの、さらにより好ましくは少なくとも5つの細胞マーカーが使用される。そのように多量の細胞マーカーを用いることにより、より詳細な分化成熟段階を調査することができることが理解される。
【0221】
そのような細胞マーカーの例としては、例えば、CD1a、CD2、CD3、CD4、CD5、CD7、CD8、CD10、CD11b、CD13、CD14、CD15、CD16、CD19、CD20、CD22、CD23、CD33、CD34、CD45、TdT、FMC7およびHLA−DRなどを挙げることができるがそれらに限定されない。このような細胞マーカーは、分析対象となる細胞(例えば、造血幹細胞)の種類、系統に応じて当業者が適切に選択できることが理解される。
【0222】
1つの実施形態では、本発明が対象とする幹細胞は、造血幹細胞を含む。そのような代表的な幹細胞としては、例えば、単球系幹細胞、Bリンパ球系幹細胞、Tリンパ球系幹細胞および骨髄球系幹細胞などを挙げることができるがそれらに限定されない。
【0223】
別の実施形態では、本発明が分析し得る分化成熟段階は、単球系について、Stage1、Stage2およびStage3を含む。
【0224】
別の実施形態では、本発明が分析し得る分化成熟段階は、骨髄球系統について、Stage1、Stage2、Stage3、Stage4およびStage5を含む。
【0225】
別の実施形態では、本発明が分析し得る分化成熟段階は、Bリンパ球系統について、Stage1、Stage2、Stage3およびStage4を含む。
【0226】
別の実施形態では、本発明が分析し得る分化成熟段階は、Tリンパ球系統について、Stage1、Stage2、Stage3およびStage4を含む。
【0227】
好ましい実施形態では、本発明において使用される細胞マーカーは、系統別CD抗原の組み合わせを含むがこれに限定されず、系統別CD抗原ではない抗原の組み合わせを含んでいてもよい。そのような系統別のCD抗原は、以下の表に表すことができる。
【0228】
(表3)
Tリンパ球:CD1a・b・c、CD2、CD2R、CD3、CD4、CD5、CD6、CD7、CD8、CD27、CD28、CD29、CDw60、CD98、CD99、C99R、CD100、CD152、CD153、CD154
Bリンパ球:CD10、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD24、CD37、CD38、CD39、CD40、CD72、CD73、CD74、CDw75、CDw76、CD77、CDw78、CD79a・b、CD80、CD81、CD82、CD83、CDw84、CD85、CD86、CD138、CD139、CDw150
骨髄球・単球:CDw12、CD13、CD14、CD15、CD15s、CD16a・b、CDw17、CD32、CD33、CD34、CD35、CD64、CD65、CD65s、CD66、CD68、CD86、CD87、CD88、CD89、CD91、CDw92、CD93、CD101、CD114、CD115、CD155、CD156、CD157、CD163、
血小板:CD9、CDw17、CD31、CD36、CD41、CD42a・b・c・d、CD63、CD107a・b、CD151
NK:CD16a・b、CD56、CD57、CD94、CD95、CD161
活性化抗原:CD25、CD26、CD30、CD69、CD70、CD71、CD96、CD97
内皮細胞:CD105、CD106、CDw109、CD140a・b、CD141、CD142、CD143、CD144、CDw145、CD146、CD147
細胞接着分子:CD11a・b・c、CD18、CD29、CD29、CD46a・b・c・d・e・f、CD50、CD51、CD54、CD56、CD58、CD62P、CD62E、CD62L、CD102、CD103、CD104、CDw108、CD162、CD164、CD165、CD166
サイトカインレセプター:CD25、CD116、CD117、CDw119、CD120a・b、CD121a、CDw121b、CD122、CDw123、CD124、CD126、CD127、CDw128、CD130、CD131、CD132、CD134、CD135、CDw136、CDw137
non−lineage:CD43、CD44、CD44R、CD45、CD45RA、CD45RB、CD45RO、CD46、CD47、CD48、CD52、CD53、CD55、CD59、CD148、CDw149
図1B〜1Dには、それぞれ、成熟とCD抗原の発現の変化の関係、リンパ球の分化に伴う表面抗原の変化、骨髄系細胞の分化と表面マーカーとの関係を示す。
【0229】
特定の実施形態では、本発明において使用される細胞マーカーは、Bリンパ球系統について、CD10とCD19とCD34とCD45との組み合わせ、CD10とCD20とCD5とCD45との組み合わせ、CD19とCD23とCD5とCD45との組み合わせ、CD10とCD20とCD34とCD45との組み合わせ、およびCD5とCD19とCD34とCD45との組み合わせなどを挙げることができる。
【0230】
特定の実施形態では、本発明において使用される細胞マーカーは、Tリンパ球系統について、CD1aとCD3とCD10とCD45との組み合わせ、CD4とCD8とCD7とCD45との組み合わせ、CD1aとCD3とCD34とCD45との組み合わせ、およびCD4とCD8とCD10とCD45などを挙げることができる。
【0231】
特定の実施形態では、本発明において使用される細胞マーカーは、好中球系統または単球系統について、HLA−DRとCD11bとCD10とCD45との組み合わせ、CD16とCD13とCD33とCD45との組み合わせ、CD14とCD33とCD11bとCD45との組み合わせ、CD4とCD10とCD34とCD45との組み合わせ、CD11bとCD13とCD16とCD45との組み合わせ、およびCD10とCD16とCD14とCD45との組み合わせなどを挙げることができる。
【0232】
別の局面において、本発明は、幹細胞の分化成熟段階を識別するシステムを提供する。このシステムは、A)少なくとも1つの細胞マーカーの発現レベルを測定するための手段と、B)該発現レベルに基づき、該幹細胞の分化成熟段階を決定する手段と、を備える。測定手段としては、例えば、フローサイトメーターを挙げることができる。分化段階の決定は、発現レベルに基づいて、CPUなどに搭載されたプログラムによって実行することができる。
【0233】
本発明において使用される測定手段は、細胞マーカーの発現レベルを相対レベルまたは絶対レベルで測定することができる。
【0234】
別の実施形態では、測定手段は、細胞マーカーに特異的な因子を含む。そのような因子としては、例えば、抗体を挙げることができるがそれらに限定されない。
【0235】
本発明において使用される細胞マーカーは、少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つの、より好ましくは少なくとも4つの、さらに好ましくは少なくとも5つの細胞マーカーを含む。4つの細胞マーカーを用いることによって、従来は実現できなかった細分類が可能になった。
【0236】
本発明のシステムにおいて使用される前記細胞マーカーとしては、例えば、CD1a、CD2、CD3、CD4、CD5、CD7、CD8、CD10、CD11b、CD13、CD14、CD15、CD16、CD19、CD20、CD22、CD23、CD33、CD34、CD45、TdT、FMC7およびHLA−DRなどを挙げることができるがそれらに限定されない。
【0237】
本発明のシステムの1つの実施形態では、本発明が対象とする幹細胞は、造血幹細胞を含む。そのような代表的な幹細胞としては、例えば、単球系幹細胞、Bリンパ球系幹細胞、Tリンパ球系幹細胞および骨髄球系幹細胞などを挙げることができるがそれらに限定されない。
【0238】
本発明のシステムの別の実施形態では、本発明が分析し得る分化成熟段階は、単球系について、Stage1、Stage2およびStage3を含む。
【0239】
本発明のシステムの別の実施形態では、本発明が分析し得る分化成熟段階は、骨髄球系統について、Stage1、Stage2、Stage3、Stage4およびStage5を含む。
【0240】
本発明のシステムの別の実施形態では、本発明が分析し得る分化成熟段階は、Bリンパ
球系統について、Stage1、Stage2、Stage3およびStage4を含む。
【0241】
本発明のシステムの別の実施形態では、本発明が分析し得る分化成熟段階は、Tリンパ球系統について、Stage1、Stage2、Stage3およびStage4を含む。
【0242】
本発明のシステムの好ましい実施形態では、本発明において使用される細胞マーカーは、系統別CD抗原の組み合わせを含むがこれに限定されず、系統別CD抗原ではない抗原の組み合わせを含んでいてもよい。
【0243】
本発明のシステムの特定の実施形態では、本発明において使用される細胞マーカーは、Bリンパ球系統について、CD10とCD19とCD34とCD45との組み合わせ、CD10とCD20とCD5とCD45との組み合わせ、CD19とCD23とCD5とCD45との組み合わせ、CD10とCD20とCD34とCD45との組み合わせ、およびCD5とCD19とCD34とCD45との組み合わせなどを挙げることができる。
【0244】
本発明のシステムの特定の実施形態では、本発明において使用される細胞マーカーは、Tリンパ球系統について、CD1aとCD3とCD10とCD45との組み合わせ、CD4とCD8とCD7とCD45との組み合わせ、CD1aとCD3とCD34とCD45との組み合わせ、およびCD4とCD8とCD10とCD45などを挙げることができる。
【0245】
本発明のシステムの特定の実施形態では、本発明において使用される細胞マーカーは、好中球系統または単球系統について、HLA−DRとCD11bとCD10とCD45との組み合わせ、CD16とCD13とCD33とCD45との組み合わせ、CD14とCD33とCD11bとCD45との組み合わせ、CD4とCD10とCD34とCD45との組み合わせ、CD11bとCD13とCD16とCD45との組み合わせ、およびCD10とCD16とCD14とCD45との組み合わせなどを挙げることができる。
【0246】
別の局面において、本発明は、幹細胞の分化成熟段階を決定する方法を提供する。この方法は、A)該幹細胞の正常な分化成熟段階をとるものについて、少なくとも1つの細胞マーカーの発現レベルのフローサイトメトリーにおける測定パターン(「正常パターン」)を提供する工程;およびB)該幹細胞について、該細胞マーカーの発現レベルのフローサイトメトリーにおけるパターンと、該正常パターンと比較して、該幹細胞の分化成熟段階を決定する工程;を包含する。この方法において使用される技法は、本明細書において上述されるように任意の技法を用いることができる。正常パターンの例示としては、例えば、図1E、図1F、図1Gに示される正常パターンがあり、図1Hおよび図1Iには、Normal Pathwayの例を示す。各細胞の特徴および同定の方法は、本明細書において(Stageの分類)に記載されるように実施することができる。図1A−Sには、骨髄球Normal Pathwayにおいて、従来のNormal Pathwayと本発明のNormal Pathwayとを比較したものを示す。
【0247】
別の局面において、本発明は、幹細胞の分化成熟段階を決定するシステムを提供する。
【0248】
このシステムは、A)該幹細胞の正常な分化成熟段階をとるものについて、少なくとも1つの細胞マーカーの発現レベルのフローサイトメトリーにおける測定パターン(「正常パターン」)を提供する手段;およびB)該幹細胞について、該細胞マーカーの発現レベルのフローサイトメトリーにおけるパターンと、該正常パターンと比較して、該幹細胞の分化成熟段階を決定する手段;を備える。この方法において使用される技法は、本明細書
において上述されるように任意の技法を用いることができる。
【0249】
他の局面において、本発明は、幹細胞の分化成熟段階が正常であるかどうか判定する方法を提供する。この方法は、A)少なくとも1つの細胞マーカーの発現レベルをフローサイトメトリーで測定する工程;およびB)該発現レベルのフローサイトメトリーにおけるパターンと、正常な分化成熟段階にある細胞が示すフローサイトメトリーにおける該細胞マーカーの発現レベルのパターンとを比較して、相違があれば、正常でない細胞が含まれると判定する工程;を包含する。この方法において使用される技法は、本明細書において上述されるように任意の技法を用いることができる。
【0250】
別の局面において、本発明は、幹細胞の分化成熟段階が正常であるかどうか判定するシステムでを提供する。このシステムは、A)少なくとも1つの細胞マーカーの発現レベルをフローサイトメトリーで測定する手段;およびB)該発現レベルのフローサイトメトリーにおけるパターンと、正常な分化成熟段階にある細胞が示すフローサイトメトリーにおける該細胞マーカーの発現レベルのパターンとを比較して、相違があれば、正常でない細胞が含まれると判定する手段、を備える。このシステムにおいて使用される技法は、本明細書において上述されるように任意の技法を用いることができる。
【0251】
別の局面において、本発明は、幹細胞の分化成熟段階に応じて被検体を処置する方法を提供する。この方法は、A)少なくとも1つの細胞マーカーの発現レベルを測定する工程;
B)該発現レベルに基づき、該幹細胞の分化成熟段階を決定する工程;およびC)決定された分化成熟段階に適切な処置を該被検体に施す工程、を包含する。この方法において使用される技法は、本明細書において上述されるように任意の技法を用いることができる。
【0252】
別の局面において、本発明は、白血病の処置後に、幹細胞の分化成熟段階に応じて被検体を処置する方法を提供する。この方法は、A)少なくとも1つの細胞マーカーの発現レベルを測定する工程;B)該発現レベルに基づき、該幹細胞の分化成熟段階を決定する工程;およびC)決定された分化成熟段階と、該幹細胞が正常な場合にとる分化成熟段階とを比較した結果に基づいて適切な処置を該被検体に施す工程、を包含する。この方法において使用される技法は、本明細書において上述されるように任意の技法を用いることができる。
【0253】
好ましい実施形態では、この適切な処置は、i)前記幹細胞の決定された分化成熟段階について、正常細胞が存在する、存在する細胞が正常未熟細胞であると判定される場合、現治療法の継続あるいは投薬等の治療を終了し経過観察のみに留めるという処置を含み、ii)前記幹細胞の決定された分化成熟段階について、存在する細胞が異常細胞であると判定される場合、現治療法の強化または変更を行うという処置を含む。
【0254】
別の実施形態では、上記幹細胞の決定された分化成熟段階について、存在する細胞が正常未熟細胞であると判定された場合においても、元幹細胞の枯渇、あるいは分化成熟の進行の停止等の異常が認められる場合は、幹細胞の追加移植等を行うという処置を含む。
【0255】
別の局面において、本発明は、幹細胞の分化成熟段階に応じて被検体を処置するシステムを提供する。このシステムは、A)少なくとも1つの細胞マーカーの発現レベルを測定する手段;B)該発現レベルに基づき、該幹細胞の分化成熟段階を決定する手段;およびC)決定された分化成熟段階に適切な処置を該被検体に施す手段、を備える。このシステムにおいて使用される技法は、本明細書において上述されるように任意の技法を用いることができる。
【0256】
別の局面において、本発明は、幹細胞の分化成熟段階に応じた処置を被検体に提供するシステムを提供する。このシステムは、A)少なくとも1つの細胞マーカーの発現レベルを測定する手段; B)該発現レベルに基づき、該幹細胞の分化成熟段階を決定する手段;およびC)決定された分化成熟段階に適切な処置を該被検体に提供する手段、を備える。このシステムにおいて使用される技法は、本明細書において上述されるように任意の技法を用いることができる。
【0257】
別の局面において、本発明は、白血病の処置後に、幹細胞の分化成熟段階に応じて被検体を処置するシステムを提供する。このシステムは、A)少なくとも1つの細胞マーカーの発現レベルを測定する手段;B)該発現レベルに基づき、該幹細胞の分化成熟段階を決定する手段;およびC)決定された分化成熟段階と、該幹細胞が正常な場合にとる分化成熟段階とを比較した結果に基づいて適切な処置を該被検体に施す手段、を備える。このシステムにおいて使用される技法は、本明細書において上述されるように任意の技法を用いることができる。
【0258】
他の局面において、本発明は、白血病の処置後に、幹細胞の分化成熟段階に応じた処置を被検体に提供するシステムを提供する。このシステムは、A)少なくとも1つの細胞マーカーの発現レベルを測定する手段;B)該発現レベルに基づき、該幹細胞の分化成熟段階を決定する手段;およびC)決定された分化成熟段階と、該幹細胞が正常な場合にとる分化成熟段階とを比較した結果に基づいて適切な処置を該被検体に提供する手段、を備える。このシステムにおいて使用される技法は、本明細書において上述されるように任意の技法を用いることができる。
【0259】
他の局面において、本発明は、本発明の方法によって作成された幹細胞の分化成熟段階のパターン、およびそのパターンが記録された記録媒体、伝送媒体などを提供する。
【0260】
本明細書において引用された、科学文献、特許、特許出願などの参考文献は、その全体が、各々具体的に記載されたのと同じ程度に本明細書において参考として援用される。
【0261】
以上、本発明を、理解の容易のために好ましい実施形態を示して説明してきた。以下に、実施例に基づいて本発明を説明するが、上述の説明および以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本発明を限定する目的で提供したのではない。従って、本発明の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例】
【0262】
以下に実施例を示して本発明をさらに詳しく説明するが、この発明は以下の例に限定されるものではない。以下の実施例において用いられる試薬などは、例外を除き、Sigma(St.Louis,USA)、和光純薬(大阪、日本)、などから市販されるものを用いた。動物の取り扱いは、厚生労働省などにおいて規定される規準を遵守して行った。
【0263】
(実施例1:正常骨髄血中の未熟細胞表面抗原の解析)
(方法)
1. 対象
正常骨髄血中の未熟細胞表面抗原の解析には、インフォームド・コンセントを行った後の患者より採取された骨髄血を用いた。骨髄血はヘパリン採取後、10%牛血清(FCS)加培養液(RPMI−1640)に浮遊させ、4℃にて保存し、48時間以内に細胞表面抗原の解析を行った。
【0264】
2. モノクローナル抗体
以下のCD抗体については、Becton Dickinson Immunocytometry Systems(BDIS:San Jose, CA)社から入手したフルオレセインイソシアネート(fluorescein isothiocyanate=FITC)標識を用いた:CD5、CD7、CD8、CD14、CD19、CD20、HLA−DR抗体。
【0265】
以下のCD抗体ついては、Becton Dickinson Immunocytometry Systems(BDIS:San Jose, CA)社から入手したフィコエリトリン(phycoerythrin=PE)標識を用いた:マウスIgG2a、CD4、CD8、CD11b、CD13,CD14、CD19、CD33、CD34抗体。
【0266】
以下のCD抗体ついては、Becton Dickinson Immunocytometry Systems(BDIS:San Jose, CA)社から入手したペリジニンクロロフィルタンパク質(peridinin chlorophyll protein=PerCP)標識を用いた:CD45抗体。
【0267】
以下のCD抗体ついては、Becton Dickinson Immunocytometry Systems(BDIS:San Jose, CA)社から入手したアロフィコシアニン(allophycocyanin=APC)標識を用いた:マウスIgG2a、CD4、CD10、CD33抗体。
【0268】
以下のCD抗体ついては、BD Bioscienses−Permingen(PerMingen: SanDiego、CA)社から入手したFITC標識を用いた:マウスIgG1、CD1a、CD16、CD34抗体
以下のCD抗体ついては、BD Bioscienses−Permingen(PerMingen: SanDiego、CA)社から入手したAPC標識を用いた:CD3、CD5、CD11b、CD34抗体。
【0269】
以下のCD抗体ついては、DakoCytomation(DaKo:DK−2600、Glostrup)社から入手したFITC標識を用いたCD23抗体およびPE標識を用いたCD10抗体を使用した。
【0270】
3. 染色および測定
検体中の白血球濃度を測定し、2〜5×10細胞/mlになるようにリン酸緩衝生理食塩水(PBS:0.1%BSA,0.1%アジ化ナトリウム)を用いて調製を行った。それぞれのチューブに必要な抗体を添加した後、濃度調製した検体を100μlずつサンプリングし、よく混和させ、室温、遮光にて20分間インキュベーションを行った。その後、溶血剤(8.26g NHCl,1.00g KHCO,EDTA−4Na 0.037g/L 蒸留水)を添加し、室温にて5分間インキュベーションを行い、混入赤血球の溶血操作を行った。さらにPBSにて洗浄を行い、1%パラホルムアルデヒド(CellFIX:BDIS)を用いて固定した。
【0271】
4. 測定方法
測定はFACSCalibur−4A(BDIS)を用いて行った。機器の設定はCaliBRITE beads(BDIS)を用いて、FACSComp softwareのLyse−Wash modeにて行った。機器の安定性の確認は、SPHEROTM Rainbow Calibration Particles(RCP: PerMingen)を用いて行った。細胞の取り込みはCellQuest softwar
eを用いて行い、1万細胞を測定しList Mode Dataとして保存した。
【0272】
5. 正常骨髄血中の細胞表面抗原発現強度の解析
保存したList Mode DataはWinList(Verity Software House, Inc.) software Version 3.0を用いて、任意のパラメータを設定し、Dot−Plotに展開して、各ステージ細胞毎にポジションの同定を行った。詳細なパラメータおよびゲート設定を以下に示す:
用いるパラメーターは、細胞の大きさを反映するforward scatter(FSC)、細胞の構造を反映するside scatter(SSC)、FITC標識抗体の反応を反映するFL−1、PE標識抗体の反応を反映するFL−2、PerCP標識抗体の反応を反映するFL−3、APC標識抗体の反応を反映するFL−4である。
【0273】
各パラメーターの組み合わせは、FSC−FL−1、FSC−FL−2、FSC−FL−3、FSC−FL−4、SSC−FL−1、SSC −FL−2、SSC −FL−3、SSC −FL−4、FL−3−FL−1、FL−3−FL−2、FL−3−FL−4、FL−1−FL−2、FL−4−FL2、FL4−FL−1、およびFSC−SSCである。ゲートの設定は、Page34の各細胞の同定の方法に従った位置に設定し、全てのゲート条件を満たす細胞を抽出した。
【0274】
(結果)
Bリンパ球系、Tリンパ球系、好中球系および単球系の各幹細胞について、各Stageにおける各CD抗原の発現レベルの推移を示すグラフを図2に示す。
【0275】
図2に示されるように、以下のCD抗原が少なくとも各系統の造血幹細胞およびその子孫細胞についての分化成熟段階の分類に使用され得ることが理解される。
【0276】
Bリンパ球系:
TdT、CD34、CD10、CD45、CD19、CD20、CD22、CD5、FMC7、CD5、CD23。
【0277】
Tリンパ球系:
CD34、CD1a、CD5、CD45、CD10、CD3、CD7、CD4、CD8、CD2。
【0278】
骨髄球系:
CD34、CD15、HLA−DR、CD11b、CD13、CD33、CD16、CD45。
【0279】
単球系:
CD33、CD34、CD13、CD11b、CD15、HLA−DR、CD45、CD14。
【0280】
図2からも明らかであるが、例えば、Bリンパ球系について、CD10などの抗原の発現レベルを観察する場合、その1種類のみの観察で、すべてのStageに分類可能であることが分かる。逆に、単球系細胞におけるCD15およびHLA−DRのように、Stage2とStage3では同じ挙動を採るようなCD抗原であれば、2種類では足りず、CD14などのStage2とStage3とを見分けることができるCD抗原を観察することが必要であることがわかる。
【0281】
これらをまとめると、図1A−Rに示されるような分化成熟段階があることが分かる。
【0282】
(実施例2)
次に、正常な骨髄球系細胞および骨髄異形成症候群の骨髄球系細胞について、CD13(PE標識)およびCD16(FITC標識)を用いて実施例1に示したように観察を行った後、ドットプロットを行って、Normal Pathwayを描いた。
【0283】
その結果を、図3に示す。図3には、正常骨髄球(左)および骨髄異形成症候群(右)についての、Pathwayを示す。正常骨髄球を用いた場合は、左に示すように、常に、一定のPathwayが示された。他方、骨髄異形成症候群患者の骨髄球系細胞を用いた場合は、Normal Pathwayとは全く異なるPathwayが観察された。このように骨髄異形成症候群の患者が有する骨髄球系細胞では、異常な細胞ばかりが含まれていることが分かる。
【0284】
(実施例3)
次に、同様の実験を行い、Bリンパ球系、Tリンパ球系、骨髄球系および単球系の細胞の成熟段階におけるNormal Pathwayを同定した。
【0285】
実施例1に記載されるような方法に基づき、Bリンパ球系細胞については、CD10(PE標識)およびCD20(FITC標識)を用い、Tリンパ球系細胞については、CD4(PE標識)およびCD8(FITC標識)を用い、骨髄球系および単球系の細胞については、双方ともCD13(PE標識)およびCD16(FITC標識)を用いた。
【0286】
結果を図4に示す。解析した結果、図中の矢印で示されるようなNormal Pathwayが同定された。
【0287】
このような実験を繰り返したところ、以下のような代表的なNormal Pathway解析パネルが見出された。
【0288】
Bリンパ球成熟
CD20×CD10×CD34×CD45
CD5×CD19×CD34×CD45
CD10×CD19×CD34×CD45
CD10×CD20×CD5×CD45
CD19×CD23×CD5×CD45
Tリンパ球成熟
CD1a×CD3×CD10×CD45
CD1a×CD3×CD34×CD45
CD4×CD8×CD10×CD45
CD4×CD8×CD7×CD45
好中球/単球成熟
HLA−DR×CD11b×CD10×CD45
CD16×CD13×CD33×CD45
CD16×CD13×CD11b×CD45
CD16×CD14×CD10×CD45
CD14×CD33×CD11b×CD45
CD4×CD10×CD34×CD45。
【0289】
(実施例5)
実施例1に記載の方法に基づき、患者を診断し、適宜治療に供した。
【0290】
患者名:Y.S.急性白血病
2003/12/02 Ja−0028(再発時検査):1.2%リンパ球,0.0%単球,2.6%骨髄形態,および94.4%異常リンパ芽球。急性白血病細胞が全白血球中に94.4%認められた。
【0291】
2003/12/17 Ja−0034(寛解導入療法2回終了時):73.9%リンパ球,1.1%単球,7.4%骨髄形態,および8.6%異常リンパ芽球。急性白血病細胞が全白血球中に8.6%認められた。
【0292】
2004/01/05 Ja−0041(寛解導入後):2.8%リンパ球,1.6%単球,92.7%骨髄形態,0.1%リンパ芽球および0.4%骨髄芽球。急性白血病細胞は認められなかった。骨髄芽球は正常な分化成熟パターンを示していた。成熟骨髄性細胞が多く認められたが、それに比較して未熟骨髄性細胞の数が少量であった。急速な骨髄再構築が起こっている。
【0293】
2004/02/03 Ja−0052(末梢血幹細胞移植 1週間後):0.6%リンパ球,3.1%単球,95.2%骨髄形態,0.1%リンパ芽球および0.5%骨髄芽球。急性白血病細胞は認められなかった。骨髄芽球は正常な分化成熟パターンを示していた。
【0294】
2004/03/08 Ja−0069(末梢血幹細胞移後 経過観察):6.0%リンパ球、5.9%単球、61.9%骨髄形態、14.6%リンパ芽球および3.1%骨髄芽球。非常に微量のため詳細な確認はできないが、急性白血病細胞らしき2〜3個/10,000個のドットプロットを確認した。Lymph芽球と骨髄芽球に異常は認められなかったが、骨髄性細胞のPathwayに若干乱れが認められた。再発の予兆と考えられる。
【0295】
2004/04/19 Ja−0095(経過観察):2.5%リンパ球,5.5%単球,66.6%骨髄形態,13.6%リンパ芽球,および2.9%骨髄芽球。急性白血病細胞が0.7%認められた。再発の前兆。寛解維持強化療法が必要。
【0296】
2004/05/24 Ja−0111(第二回目 同種骨髄移植の前処置開始):10.0%リンパ球,5.9%単球,62.0%骨髄形態,8.6%リンパ芽球,および1.6%骨髄芽球。急性白血病細胞が0.06%認められた。
【0297】
代表例として、Ja−0095の段階のStage−2 Mono(CD34×CD4×CD45×CD10)(図5)、Stage−2 Mono(CD14×CD33×CD45×CD11b)(図6)、Ja−0096の段階のStage−1およびStage−2 B−Lymph(CD19×CD10×CD45×CD34)(図7)、Stage−2 Myelo(HLA−DR×CD10×CD11b)(図8)およびStage−4 Myelo(HLA−DR×CD10×CD45×CD11b)(図9)、ならびにJa−0099の段階のStage−1およびStage−2 B−Lymph(CD19×CD10×CD45×CD34)(図10)およびStage−2 Myelo(HLA−DR×CD10×CD11b)(図11)を示す。
【0298】
示されるように、Ja−0095において急性白血病細胞が0.7%認められることが明らかに分かる。Ja−0104以降の患者状態。
【0299】
Ja−0095以降の患者状態については、2004/05/24(Ja−0111)、急性白血病細胞が0.06%残存しているが、その他の骨髄血細胞が正常に再構築し始
める。2004/07/01(Ja−0131)、急性白血病細胞は検出されず、未熟な骨髄血細胞が認められる。これらの細胞は全てNormal Pathway上に存在しており、急速な骨髄再構築が始まっていると考えられる。2004/07/28現在、当患者は無症状にて存命中である。
【0300】
このように、詳細な診断を行うことにより、適切な治療を行うことが可能となる。
【0301】
(実施例6)
別の患者において、同様の診断および治療を行った。この患者は、急性白血病に罹患している。
【0302】
2004/01/20 Ja−0048(寛解療法中):2.1%リンパ球、2.3%単球、51.9%骨髄形態、31.6%リンパ芽球および4.2%骨髄芽球。急性白血病細胞は認められなかった。多くのリンパ芽球が認められた。形態学的検査では、骨髄中の芽球が5%以下の状態を寛解と定義しており、今回のデータ(芽球 31.6%)は再発疑いとなり、追加治療を受けることになりかねない。MDFを用いた抗原発現パターンの解析より、これらの芽球は正常未熟細胞であるStage−1 Bリンパ芽球、Stage−2 B リンパ芽球と判定できた。骨髄の急速な再構築が起こっている。強力な追加治療は不要で(命を奪いかねない)、現行の治療を継続すべき。
【0303】
2004/03/16 Ja−0073(経過観察中)34.8%リンパ球、8.9%単球、22.1%骨髄形態、10.8%リンパ芽球および12.1%骨髄芽球。急性白血病細胞は認められなかった。前回検査時と同じく多くのリンパ芽球が認められたが、抗原発現パターンより正常未熟細胞であるStage−1 Bリンパ芽球と判定できた。同様に多くの骨髄芽球が認められた。成熟骨髄性細胞は少なく、まだ前骨髄球の分化成熟段階にある。骨髄の急速な再構築が始まったところである。今後、これらのStage−1 B リンパ芽球がStage−2 Bリンパ芽球へ、骨髄芽球および前骨髄球が成熟骨髄球へ分化成熟していくことを確認する必要がある。
【0304】
2004/05/12 Ja−0104(寛解維持療法開始前):5.4%リンパ球、5.2%単球、48.4%骨髄形態、23.1%リンパ芽球,および5.5%骨髄芽球。大半の芽球は正常パターンを示していた。しかし、急性白血病細胞の可能性がある細胞が0.3%認められた。寛解維持療法の早急な開始が必要である。未検査だが、2004/07/28現在、当患者は無症状にて存命中。
【0305】
このように、詳細な診断を行うことにより、適切な治療を行うことが可能となる。
【0306】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0307】
本発明は、白血病などの疾患に関して、より適切な診断を行うための情報を提供することができ、従って、医薬および医療に関連する種々の産業において有用性が認められるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0308】
【図1A−A】図1A−Aは、造血幹細胞の分化の代表的スキームである。
【図1A−B】図1A−Bは、単球系Stage1の同定のための図を示す。
【図1A−C】図1A−Cは、単球系Stage2の同定のための図を示す。
【図1A−D】図1A−Dは、単球系Stage3の同定のための図を示す。
【図1A−E】図1A−Eは、骨髄球系Stage1の同定のための図を示す。
【図1A−F】図1A−Fは、骨髄球系Stage2の同定のための図を示す。
【図1A−G】図1A−Gは、骨髄球系Stage3の同定のための図を示す。
【図1A−H】図1A−Hは、骨髄球系Stage4の同定のための図を示す。
【図1A−I】図1A−Iは、骨髄球系Stage5の同定のための図を示す。
【図1A−J】図1A−Jは、Bリンパ球系Stage1の同定のための図を示す。
【図1A−K】図1A−Kは、Bリンパ球系Stage2の同定のための図を示す。
【図1A−L】図1A−Lは、Bリンパ球系Stage3の同定のための図を示す。
【図1A−M】図1A−Mは、Bリンパ球系Stage4の同定のための図を示す。
【図1A−N】図1A−Nは、Tリンパ球系Stage1の同定のための図を示す。
【図1A−O】図1A−Oは、Tリンパ球系Stage2の同定のための図を示す。
【図1A−P】図1A−Pは、Tリンパ球系Stage3の同定のための図を示す。
【図1A−Q】図1A−Qは、Tリンパ球系Stage4の同定のための図を示す。
【図1A−R】図1A−Rは、本発明によって同定された、造血幹細胞から各種細胞へ分化する際の分化成熟段階の模式図を示す。
【図1A−S】図1A−Sは、骨髄球のNormal Pathwayを示す。骨髄球Normal Pathwayにおいて、従来のNormal Pathwayと本発明のNormal Pathwayとを比較したものを示す。
【図1B】図1Bは、成熟段階と分化マーカーとの関係を示す。
【図1C】図1Cは、リンパ球の分化に伴う表面抗原の変化を示す。
【図1D】図1Dは、骨髄系細胞の分化と表面マーカーとの関係を示す。
【図1E】図1Eは、骨髄球系Normal Pathwayを示す。
【図1F】図1Fは、単球系Normal Pathwayを示す。
【図1G】図1Gは、Bリンパ球系Normal Pathwayを示す。
【図1H】図1Hは、本発明による造血幹細胞移植後の骨髄再構築のモニタリング例を示す。
【図1I1】図1I1は、骨髄球のNormal Pathwayの1例を示す。
【図1I2】図1I2は、骨髄球のNormal Pathwayの別の例を示す。
【図1I3】図1I3は、単球のNormal Pathwayの1例を示す。
【図1I4】図1I4は、単球のNormal Pathwayの別の例を示す。
【図1I5】図1I5は、Tリンパ球のNormal Pathwayの1例を示す。
【図1I6】図1I6は、Bリンパ球のNormal Pathwayの1例を示す。
【図2】図2は、各種細胞における分化成熟段階の各種CD抗原の発現レベルを示す。
【図3】図3は、Normal Pathwayを用いたMDS細胞の解析を示す。
【図4】図4は、Normal Pathway用パネルを用いた骨髄血中細胞の解析を示す。
【図5】図5は、Ja−0095の段階のStage−2 Mono(CD34×CD4×CD45×CD10)を示す。
【図6】図6は、Ja−0095の段階のStage−2 Mono(CD14×CD33×CD45×CD11b)を示す。
【図7】図7は、Ja−0096の段階のStage−1およびStage−2 B−Lymph(CD19×CD10×CD45×CD34)を示す。
【図8】図8は、Ja−0096の段階のStage−2 Myelo(HLA−DR×CD10×CD11b)を示す。
【図9】図9は、Ja−0096の段階のStage−4 Myelo(HLA−DR×CD10×CD45×CD11b)を示す。
【図10】図10は、Ja−0099の段階のStage−1およびStage−2 B−Lymph(CD19×CD10×CD45×CD34)を示す。
【図11】図11は、Ja−0099の段階のStage−2 Myelo(HLA−DR×CD10×CD11b)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞の分化成熟段階を識別する方法であって、
A)少なくとも1つの細胞マーカーの発現レベルを測定する工程;および
B)該発現レベルに基づき、該細胞の分化成熟段階を決定する工程;
を包含する、方法。
【請求項2】
前記細胞マーカーの発現レベルは、相対レベルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記細胞マーカーの発現レベルは、絶対レベルである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記細胞マーカーとして、少なくとも2つの細胞マーカーが使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記細胞マーカーとして、少なくとも3つの細胞マーカーが使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記細胞マーカーとして、少なくとも4つの細胞マーカーが使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記細胞マーカーは、以下:
CD1a、CD2、CD3、CD4、CD5、CD7、CD8、CD10、CD11b、CD13、CD14、CD15、CD16、CD19、CD20、CD22、CD23、CD33、CD34、CD45、TdT、FMC7およびHLA−DRからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記細胞は、造血幹細胞を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記細胞は、単球系細胞、骨髄球系細胞、Bリンパ球系細胞、Tリンパ球系細胞および骨髄球系細胞からなる群より選択される細胞を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記分化成熟段階は、単球系について、Stage1、Stage2およびStage3を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記分化成熟段階は、骨髄球系統について、Stage1、Stage2、Stage3、Stage4およびStage5を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記分化成熟段階は、Bリンパ球系統について、Stage1、Stage2、Stage3およびStage4を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記分化成熟段階は、Tリンパ球系統について、Stage1、Stage2、Stage3およびStage4を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記細胞マーカーは、系統別CD抗原の組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記細胞マーカーは、系統別CD抗原ではない抗原の組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記細胞マーカーは、Bリンパ球系統について、CD10とCD19とCD34とCD45との組み合わせ、CD10とCD20とCD5とCD45との組み合わせ、CD19と
CD23とCD5とCD45との組み合わせ、CD10とCD20とCD34とCD45との組み合わせ、およびCD5とCD19とCD34とCD45との組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記細胞マーカーは、Tリンパ球系統について、CD1aとCD3とCD10とCD45との組み合わせ、CD4とCD8とCD7とCD45との組み合わせ、CD1aとCD3とCD34とCD45との組み合わせ、およびCD4とCD8とCD10とCD45からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記細胞マーカーは、骨髄球系統または単球系統について、HLA−DRとCD11bとCD10とCD45との組み合わせ、CD16とCD13とCD33とCD45との組み合わせ、CD14とCD33とCD11bとCD45との組み合わせ、CD4とCD10とCD34とCD45との組み合わせ、CD11bとCD13とCD16とCD45との組み合わせ、およびCD10とCD4とCD14とCD45との組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
細胞の分化成熟段階を識別するシステムであって、
A)少なくとも1つの細胞マーカーの発現レベルを測定するための手段と、
B)該発現レベルに基づき、該細胞の分化成熟段階を決定する手段と、
を備える、システム。
【請求項20】
前記測定手段は、細胞マーカーの発現レベルを相対レベルで測定する、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記測定手段は、細胞マーカーの発現レベルを絶対レベルで測定する、請求項19に記載のシステム。
【請求項22】
前記測定手段は、細胞マーカーに特異的な因子を含む、請求項19に記載のシステム。
【請求項23】
前記細胞マーカーは、少なくとも2つの細胞マーカーを含む、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記細胞マーカーは、少なくとも3つの細胞マーカーを含む、請求項22に記載のシステム。
【請求項25】
前記細胞マーカーは、少なくとも4つの細胞マーカーを含む、請求項22に記載のシステム。
【請求項26】
前記細胞マーカーは、以下:
CD1a、CD2、CD3、CD4、CD5、CD7、CD8、CD10、CD11b、CD13、CD14、CD15、CD16、CD19、CD20、CD22、CD23、CD33、CD34、CD45、TdT、FMC7およびHLA−DRからなる群より選択される、請求項22に記載のシステム。
【請求項27】
前記細胞は、造血幹細胞を含む、請求項19に記載のシステム。
【請求項28】
前記細胞は、単球系細胞、Bリンパ球系細胞、Tリンパ球系細胞および骨髄球系細胞からなる群より選択される細胞を含む、請求項19に記載のシステム。
【請求項29】
前記分化成熟段階は、単球系について、Stage1、Stage2およびStage3
を含む、請求項19に記載のシステム。
【請求項30】
前記分化成熟段階は、骨髄球系統について、Stage1、Stage2、Stage3、Stage4およびStage5を含む、請求項19に記載のシステム。
【請求項31】
前記分化成熟段階は、Bリンパ球系統について、Stage1、Stage2、Stage3およびStage4を含む、請求項19に記載のシステム。
【請求項32】
前記分化成熟段階は、Tリンパ球系統について、Stage1、Stage2、Stage3およびStage4を含む、請求項19に記載のシステム。
【請求項33】
前記細胞マーカーは、系統別CD抗原である抗原の組み合わせを含む、請求項22に記載のシステム。
【請求項34】
前記細胞マーカーは、系統別CD抗原ではない抗原の組み合わせを含む、請求項22に記載のシステム。
【請求項35】
前記細胞マーカーは、Bリンパ球系統について、CD10とCD19とCD34とCD45との組み合わせ、CD10とCD20とCD5とCD45との組み合わせ、CD19とCD23とCD5とCD45との組み合わせ、CD10とCD20とCD34とCD45との組み合わせ、およびCD5とCD19とCD34とCD45との組み合わせからなる群より選択される、請求項22に記載のシステム。
【請求項36】
前記細胞マーカーは、Tリンパ球系統について、CD1aとCD3とCD10とCD45との組み合わせ、CD4とCD8とCD7とCD45との組み合わせ、CD1aとCD3とCD34とCD45との組み合わせ、およびCD4とCD8とCD10とCD45からなる群より選択される、請求項22に記載のシステム。
【請求項37】
前記細胞マーカーは、骨髄球系統または単球系統について、HLA−DRとCD11bとCD10とCD45との組み合わせ、CD16とCD13とCD33とCD45との組み合わせ、CD14とCD33とCD11bとCD45との組み合わせ、CD4とCD10とCD34とCD45との組み合わせ、CD11bとCD13とCD16とCD45との組み合わせ、およびCD10とCD4とCD14とCD45との組み合わせからなる群より選択される、請求項22に記載のシステム。
【請求項38】
前記測定する手段は、フローサイトメーターを含む、請求項19に記載のシステム。
【請求項39】
細胞の分化成熟段階を決定する方法であって、
A)該細胞の正常な分化成熟段階をとるものについて、少なくとも1つの細胞マーカーの発現レベルのフローサイトメトリーにおける測定パターン(「正常パターン」)を提供する工程;および
B)該細胞について、該細胞マーカーの発現レベルのフローサイトメトリーにおけるパターンと、該正常パターンと比較して、該細胞の分化成熟段階を決定する工程;
を包含する、方法。
【請求項40】
細胞の分化成熟段階を決定するシステムであって、
A)該細胞の正常な分化成熟段階をとるものについて、少なくとも1つの細胞マーカーの発現レベルのフローサイトメトリーにおける測定パターン(「正常パターン」)を提供する手段;および
B)該細胞について、該細胞マーカーの発現レベルのフローサイトメトリーにおけるパ
ターンと、該正常パターンと比較して、該細胞の分化成熟段階を決定する手段;
を備える、システム。
【請求項41】
細胞の分化成熟段階が正常であるかどうか判定する方法であって、
A)少なくとも1つの細胞マーカーの発現レベルをフローサイトメトリーで測定する工程;および
B)該発現レベルのフローサイトメトリーにおけるパターンと、正常な分化成熟段階にある細胞が示すフローサイトメトリーにおける該細胞マーカーの発現レベルのパターンとを比較して、相違があれば、正常でない細胞が含まれると判定する工程;
を包含する、方法。
【請求項42】
細胞の分化成熟段階が正常であるかどうか判定するシステムであって、
A)少なくとも1つの細胞マーカーの発現レベルをフローサイトメトリーで測定する手段;および
B)該発現レベルのフローサイトメトリーにおけるパターンと、正常な分化成熟段階にある細胞が示すフローサイトメトリーにおける該細胞マーカーの発現レベルのパターンとを比較して、相違があれば、正常でない細胞が含まれると判定する手段、
を備える、システム。
【請求項43】
細胞の分化成熟段階に応じて被検体を処置する方法であって、
A)少なくとも1つの細胞マーカーの発現レベルを測定する工程;
B)該発現レベルに基づき、該細胞の分化成熟段階を決定する工程;および
C)決定された分化成熟段階に適切な処置を該被検体に施す工程、
を包含する、方法。
【請求項44】
白血病の処置後に、細胞の分化成熟段階に応じて被検体を処置する方法であって、
A)少なくとも1つの細胞マーカーの発現レベルを測定する工程;
B)該発現レベルに基づき、該細胞の分化成熟段階を決定する工程;および
C)決定された分化成熟段階と、該細胞が正常な場合にとる分化成熟段階とを比較した結果に基づいて適切な処置を該被検体に施す工程、
を包含する、方法。
【請求項45】
前記適切な処置は、
i)前記細胞の決定された分化成熟段階について、正常細胞が存在する、存在する細胞が正常未熟細胞であると判定される場合、現治療法の継続あるいは投薬等の治療を終了し経過観察のみに留めるという処置を含み、
ii)前記細胞の決定された分化成熟段階について、存在する細胞が異常細胞であると判定される場合、現治療法の強化または変更を行うという処置を含む、
請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記細胞の決定された分化成熟段階について、存在する細胞が正常未熟細胞であると判定された場合においても、元幹細胞の枯渇、あるいは分化成熟の進行の停止等の異常が認められる場合は、幹細胞の追加移植等を行うという処置を含む、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
細胞の分化成熟段階に応じて被検体を処置するシステムであって、
A)少なくとも1つの細胞マーカーの発現レベルを測定する手段;
B)該発現レベルに基づき、該細胞の分化成熟段階を決定する手段;および
C)決定された分化成熟段階に適切な処置を該被検体に施す手段、
を備える、システム。
【請求項48】
細胞の分化成熟段階に応じた処置を被検体に提供するシステムであって、
A)少なくとも1つの細胞マーカーの発現レベルを測定する手段;
B)該発現レベルに基づき、該細胞の分化成熟段階を決定する手段;および
C)決定された分化成熟段階に適切な処置を該被検体に提供する手段、
を備える、システム。
【請求項49】
白血病の処置後に、細胞の分化成熟段階に応じて被検体を処置するシステムであって、
A)少なくとも1つの細胞マーカーの発現レベルを測定する手段;
B)該発現レベルに基づき、該細胞の分化成熟段階を決定する手段;および
C)決定された分化成熟段階と、該細胞が正常な場合にとる分化成熟段階とを比較した結果に基づいて適切な処置を該被検体に施す手段、
を備える、システム。
【請求項50】
白血病の処置後に、細胞の分化成熟段階に応じた処置を被検体に提供するシステムであって、
A)少なくとも1つの細胞マーカーの発現レベルを測定する手段;
B)該発現レベルに基づき、該細胞の分化成熟段階を決定する手段;および
C)決定された分化成熟段階と、該細胞が正常な場合にとる分化成熟段階とを比較した結果に基づいて適切な処置を該被検体に提供する手段、
を備える、システム。
【請求項51】
請求項1に記載の方法によって作成された細胞の分化成熟段階のパターン。


【図1A−R】
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【図1A−A】
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【図1A−B】
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【図1A−C】
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【図1A−D】
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【図1A−E】
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【図1A−F】
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【図1A−G】
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【図1A−H】
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【図1A−I】
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【図1A−J】
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【図1A−K】
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【図1A−L】
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【図1A−M】
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【図1A−N】
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【図1A−O】
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【図1A−P】
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【図1A−Q】
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【図1A−S】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図1F】
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【図1G】
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【図1H】
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【図1I1】
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【図1I2】
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【図1I3】
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【図1I4】
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【図1I5】
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【図1I6】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−194901(P2006−194901A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−35813(P2006−35813)
【出願日】平成18年2月13日(2006.2.13)
【分割の表示】特願2004−254890(P2004−254890)の分割
【原出願日】平成16年9月1日(2004.9.1)
【出願人】(504333411)株式会社エイチ・ジェイ・エル (2)
【Fターム(参考)】