説明

血液試料採取装置及び方法

【課題】血液試料を、実質的に周囲空気に汚染されることなく収集する。
【解決手段】血液試料を、実質的に周囲空気に汚染されることなく収集することができ、その結果、酸素及び二酸化炭素のような気体成分を正確に分析することができるようになる装置を提供する。該装置の実施形態は、一体的な動作、ランシング、及び試料収集構成要素を有し、これらの幾つかの実施形態では小型及び/又は使い捨てである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
血液試料の生化学的分析は、患者の状態を判定するための重要な診断手段である。血液試料のグルコースレベルの分析は、疾患の長期間にわたる有害な作用を最小限にするためにグルコースレベルを厳重にコントロールする必要がある糖尿病患者のための強力な手段を提供することができる。現時点では、非侵襲的血液分析技術では、臨床検査に必要な正確さ及び特異性が得られないため、検査試料は、主に、血液、間質液、尿又は唾液から採られる。医療検査の多くの段階は、直接、毛細血管の全血に関して行われ、この血液は、典型的には手持ち型のランシング(穿刺)装置を用いて指を小さく切開することにより得られる。手持ち型のランシング装置は、通常素早く動いて指を突き刺し、小さな創傷を形成するランセット(刺針)を含み、該ランセットを切開部から離すと、この傷から皮膚の表面に血液小滴が形成される。一般に、血液小滴は、試料分析部片上に載置されて、この試料分析部片を、測定装置を用いて分析する。
【背景技術】
【0002】
これらの従来の装置を用いて血液試料を収集して検査する工程には、痛みを伴い、多数の段階が必要であることが多く、その結果、疾患の管理に必要な頻回の自己検査計画を遵守する患者が減少することになる。痛みがあり、自己検査用の一式品が必要であることに加えて、適切な血液試料の獲得に成功する率は、100%ではない。この成功率は、用いるランシング技術の再現性(皮膚水和及び厚さのばらつき、皮膚肥厚による)のほか、切開部から血液小滴を得る能力により影響される可能性がある。現在の業界の標準的なランセット及びランシング装置では、指先から血液試料を生成する成功率は、50%程の低さである。糖尿病患者が好ましくは一日に5〜6回の自己検査計画を遵守しようと思えば、実質的に、必要な血液試料を得るためだけに平均10〜12回ランシングする必要があることになる。成功率の高いランシング装置は、実際には、成功率80〜90%である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
必要とされているのは、シームレスで費用効率がよく、結果として、患者側で血液試料を抽出及び分析する簡単な処置となる、体液を試料採取して分析するための改善された方法である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の実施形態では、血液試料をシームレスに、即ち、実質的に周囲空気から汚染されることなく収集し、その結果、血液試料の酸素及び二酸化炭素のような気体成分を正確に分析することができるようにすることができる。本発明の実施形態は、一体化した動作、ランシング、及び試料収集構成要素を有し、任意的に、小型化及び/又は使い捨てとすることができる。試料血液は、実質的に周囲空気に汚染されることなく収集され、分析又は貯蔵装置に輸送することができる。
使い捨ての試料収集モジュールの実施形態では、一体化した様式で試料を收集することができる。幾つかの実施形態を動作する際には、使用者の指を試料採取部位に載置し、一体化したランシング及び試料収集工程を通して指を置いたままとする。
本発明の特定の実施形態では、適切な試料の量の分析を容易にするために、3つの方法を記載するが、このうち1つの方法を用いることもでき、いずれか2つ又は3つ全ての方法を合わせて用いることもできる。第1の方法では、支持材料を表面処理して湿潤能力に差を生じさせることを記載している。第2の方法では、血液を試料リザーバに引き入れると共に、血液をリザーバから付加的な部位に分配するための毛管力に加えて、活性ポンプ装置を記載している。第3の方法は、第1の試料リザーバを隔離して第2のランシング及び収集段階を起動し、第2の「予備」試料リザーバを満たすことにより第1の試料リザーバ内の不適切な試料容量を補償する装置の利用を含む。
【0005】
本発明の一実施形態は、小型ランシング及び血液採取装置に関する。少量の血液(約1ミリリットル未満)の分析は、血液の微量試料を收集して試料貯蔵域又は分析部位に輸送することにより達成される。採取血液は、確実に、過剰な乱流やキャビティ化を起こさず、また、細胞構成要素を損傷することなく輸送することができる。更に、検体の検出は、血液試料が適切な検査部位に確実に到達して飽和することにより達成される。本発明の実施形態では、糖尿病のような慢性状態の定期モニタリングに用いることができるようなその構成成分の1つ又はそれ以上を測定するためにヒト血液の試料を抽出するための技術が提供される。本発明の実施形態の技術では、血液試料の抽出及び移送が簡単になり、この工程の不都合さが軽減される。この技術は、例えば、上に説明したように血中グルコースモニタリングに用いるのを有利とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本発明の特徴を有する血液試料採取システムの図である。
【図2A】図2Bの線Aを通る断面図である。
【図2B】本発明の実施形態による試料収集モジュールを幾分詳細に示す図である。
【図3】試料リザーバの別の実施形態を示す試料収集モジュールの一部の概略図である。
【図4】試料収集ポートを囲む使い捨ての試料収集モジュールの一部の図である。
【図5A】ランセットドライバの使用中の時点でのランセットドライバの一実施方法の断面図である。
【図5B】ランセットドライバの使用中の時点でのランセットドライバの一実施方法の断面図である。
【図5C】ランセットドライバの使用中の時点でのランセットドライバの一実施方法の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
詳細な説明および添付の図面から、本発明の目的、利点及び特徴を容易に理解できる。
米国特許第3,030,059号明細書、第3,626,929号明細書、第4,360,016号明細書、第4,608,997号明細書、第4,622,974号明細書、第4,627,445号明細書、第4,637,403号明細書、第4,648,408号明細書、第4,653,513号明細書、第4,873,993号明細書、第4,883,068号明細書、第4,895,147号明細書、第4,920,977号明細書、第5,047,044号明細書、第5,871,494号明細書、第5,971,941号明細書、及び国際特許WO97/42882号明細書を、本明細書に援用する。
本発明の別の様態及び利点は、一部は以下の説明において示されるが、一部は、この説明から明らかになるか、本発明を実施することにより容易に明らかになると考える。前述の一般的な説明及び以下の詳細な説明は、いずれも単に例示的でかつ説明のためのものであり、請求の範囲に記載された本発明を制限するものでないことは当然理解される。
【0008】
「一体化された」とは、本明細書で用いる場合、2つ又はそれ以上の機能が、使用者に介入されることなく行われることを意味する。即ち、「一体化された」ハウジングは、複数の機能、例えば、再現可能なランシング(穿刺)、血液試料の貯蔵、及び(任意的に)分析のための機構を含み、機能の組み合わせは、使用者による単一の開始動作の結果として起こる(即ち、各機能を別個に開始する必要がない)。「開始動作」とは、使用者が行う動作であり、これによって、複数の動作(例えば、採血、貯蔵、及び分析)が、使用者の付加的な動作を必要とすることなく、血液採取装置により行われることになる。組み合わせたランセット(刺針)ドライバ/試料収集モジュールにおいては、一体化とは、ランセットドライバの駆動、皮膚のランシング、並びに試料の收集及び貯蔵の全てが、例えば試料採取を行う皮膚に装置を押し付けることのような使用者の単一の簡単な動き(開始動作)の結果として起こることができることを意味する。使い捨てができ、使用中には再使用可能なランセットドライバに取り付けられるように構成された試料収集モジュールにおいては、一体化とは、皮膚のランシング、試料収集、及び試料貯蔵の全てが、例えば試料採取を行う皮膚に装置を押し付けることのような使用者の単一の簡単な動きの結果として起こることができることを意味する。装置が、「一体化段階A、B、及びCを可能にするように構成」されている場合、段階A、B、及びCは、全て単一の開始動作の結果として起こる。この文脈での「再現可能」とは、ランシングが制御され、深さ、予荷重が調節可能であり、(任意的に)確実に十分な血液試料を得るために複数のランシングを行う機会も有することを意味する。「予荷重」とは、ランセットを発射操作を行う前に装置により使用者の皮膚に加えられる必要がある力の量の尺度であり、「調節可能な予荷重」により、使用者は予荷重の量を選択することが可能になり、これは予荷重の設定を再調節しない限り、装置が続けて使用される毎に選択した量の予荷重が一貫して付与されることになるような方法で行われる。
【0009】
「シームレス」とは、本明細書で用いる場合、実質的に汚染空気に暴露されないことを意味し、従って、「シームレス試料採取」とは、実質的に周囲空気に汚染されずに、血液試料を得ること、試料を貯蔵すること、及び(任意的に)血液試料を分析することを含む。この文脈での「実質的に」又は「実質的な」は、本明細書に記載された方法又は装置を用いて得た血液試料から得られる分析結果が、周囲空気で汚染されることなく、血液試料を分析するための当技術分野の従来の方法を用いて得られる分析結果から、約10%を超えて、より好ましくは5%より大きくはずれていないことを意味する。「任意的な」又は「任意的に」とは、後続の記載状況が起こる場合もあり、起こらない場合もあることを意味し、従って、この記載は、その状況が起こる場合の例と起こらない場合の例とを含む。
例えば、装置が任意的に血液試料を分析する機能を含むとすると、これは、分析機能が存在する場合もあれば、存在しない場合もあることを意味し、従って、この記載は、装置が分析機能を有する構造と分析機能が存在しない構造とを含む。
【0010】
「検査手段」とは、血液試料に関する情報を得るために、化学検査試薬及び方法、電気検査回路及び方法、物理検査構成要素及び方法、光学検査構成要素及び方法、及び生物学的検査試薬及び方法を単独又は組み合わせて用いることを意味する。このような方法は、当技術分野では公知であり、例えば、Tietz Textbook of Clinical Chemistry、第3版第2巻776〜78ページ(Burtis&Ashwood編、W.B.Saunders Company(フィラデルフィア)1999年)、Chrismore他に付与された(1999年12月7日)米国特許第5,997,817号明細書、Phillips他に付与された(1991年10月22日)米国特許第5,059,394号明細書、Wagner他に付与された(1991年3月19日)米国特許第5,001,054号明細書、及びNakamura他に付与された(1983年7月12日)米国特許第4,392,933号明細書の教示に基づくものとすることができる。これらの教示を、他と同様、本明細書に援用する。検査手段は、血液の電気化学的特性を検査する試料リザーバ内にセンサを含んでもよく、又は血液の光学的特性(例えば酸素飽和レベル)を検知するための光学的手段を含んでもよく、或いは血液の特性(例えば抗原の存在)を検知するための生化学的試薬(例えば抗体)を含んでもよい。
前記検査手段は、例えば「検査部位」又は「分析部位」に存在させることができる。
【0011】
「ランセット」とは、血管を切り、血液を皮膚の表面に流出させる目的で皮膚を刺すために用いられる何らかの鋭い部材を意味する。ランセットは、部材の断面積を定める直径又は幅、及び部材の遠位端又は前部ランシング端の形状を定める幾何学的構造のような特定のパラメータを有する。「ランセットドライバ」とは、ランセットを皮膚に刺すように推進させる何らかの手段を意味する。ランセット及びランセットドライバの実施例は、当該技術分野では公知であり、本発明に関連して本明細書で説明される。
【0012】
小型ランシング及び駆動器システム
図1を参照すると、使い捨ての試料収集モジュール100、ランセットドライバ102、及び任意的な付属モジュール104を組み込んだ血液試料採取システムが示される。任意的な付属モジュールは、試料収集モジュール100を格納するための貯蔵キャビティ108を有するケース本体106を含む。このキャビティに対するカバーは、理解し易いように取り外している。付属モジュールは、更に、ランセットドライバ102を保持するためのチャンバ110を含む。ランセットドライバは、予荷重調節ノブ112を有し、これによってランセットドライバの起動ポイントを調節することができる。これにより、皮膚の表面に再現可能な張力が確実に生じ、穿通の深さ及び出血量の制御が良好になる。一実施形態では、図示するように、試料収集モジュール100は、取り外し自在にランセットドライバ102に取り付けられるため、試料収集モジュール100は使い捨てであり、ランセットドライバ102は再利用可能となる。別の実施形態では、試料収集モジュール及びランセットドライバは、単一の組み合わせハウジングに収容され、組み合わせ試料収集モジュール/ランセットドライバは使い捨てとなる。試料収集モジュール100は、試料採取部位114を含み、これは、くぼんだ凹部116即ちクレードルを有し、使用者の指又は他の解剖学的特徴部(図示せず)の形状に一致するようにすることが好ましい。試料採取部位は、更に、くぼんだ凹部内に配置された開口118を含む。ランセットドライバ102は、試料収集モジュール100内に収容され、該試料収集モジュールにより案内されるランセットを発射するのに用いられ、指が試料採取部位114に置かれると、使用者の指に切開を形成する。一実施形態では、皮膚が試料採取部位にしっかりと押し付けられると、試料採取部位は、開口において実質的に気密シールを形成し、試料採取部位は、付加的に、開口の周りに柔らかな圧縮可能な材料を有し、血液試料が周囲空気により汚染されるのを更に制限することもできる。「実質的に気密性」とは、この場合は、通常の作業条件では、無視することができる量の周囲空気しかシールを通過して漏れないことを意味し、実質的に気密シールにより、血液をシームレスに收集することができる。
【0013】
図2は、試料収集モジュールの一実施形態の幾つかの細部を示している。図2Aは、図2Bの線Aに沿った断面図である。ランセット200は、使用者の指又は他の身体部分を位置決めするためのクレードル204と、該クレードル204内の試料採取ポート206と、得られる血液試料を收集するための試料リザーバ208とを備える一体化ハウジング202内で保護されている。ランセット200は、遠位端210が尖鋭化しており、最低限の疼痛で切開を形成するシャフトである。ランセット200は更に、遠位端の反対側にある拡大された近位端212を有する。当技術分野では、同様のランセットが一般に知られている。鋭い端部を有するシャフトに限定されることなく、ランセットは、当技術分野で公知の種々の構成を有することができ、試料採取ポートから出て創傷を作り、その傷から血液試料を得ることができる鋭い器具を有するこのような他のランセット構成を収容するためにシステムに適切な変更を行うことができる。この図では、ランセット200は、ハウジング202のランセットガイド214内に摺動自在に配置され、ランセットガイド214内のランセット200の動きは、ランセットの横方向の動きを低減するように厳密に制御され、これによりランス棒の痛みを少なくする。また、試料収集モジュールは、ランセットを試料収集モジュール内に留める戻り止め228も含む。試料収集モジュールは、ランセットドライバを取り付けるための取り付け部位232を有する。
【0014】
試料収集モジュールは更に、深度選択装置を含み、使用者が幾つかのランシング深度設定の1つを選択することができるようにする。図2では、深度選択装置は、段階的な表面を有する多位置サムホイール216として示されている。サムホイール216を回転させることにより、使用者は、段階的な表面のどの部分をランセットの拡大近位端212に接触させるかを選択して、ランセットガイド214内でのランセット200の動きを制限する。サムホイールは、該サムホイール216内の幾つかの凹部220(例えばくぼみ、溝、又はスロット)の少なくとも1つに係合する突出した丸みのついた表面を有する保持器218により選択した位置に維持される。凹部220は、サムホイール216の段階的傾斜に対応するように空間的に位置合わせされ、サムホイール216が回転すると、選択した特定の深度設定に対応する凹部220に係合する保持器218により、深度設定が選択され、維持されるようにする。別の実施形態では、保持器が深度選択装置上に配置され、深度設定に一致する凹部がハウジングに配置されて、保持器が凹部に機能的に係合することができるようにされる。構成要素を位置合わせして維持するための他の同様の装置は当技術分野で公知であり、これを用いることもできる。更に別の実施形態では、深度選択装置は、ランセットの拡大した近位端に接触する段階的な傾斜を有するくさびの形をとることもでき、該くさびは、ハウジングの溝によって保持される。
【0015】
試料リザーバ208は、試料収集モジュールのハウジング202内に細長い丸みを帯びたチャンバ222を含む。チャンバ222は、平坦又は僅かに球形状であり、チャンバの少なくとも片方の側部は、好ましくは鋭い角がない滑らかなポリマーで形成される。また、試料リザーバ208は、試料採取ポート206と流体的に連通するチャンバ222への入り口224と、チャンバを出るベント226とを含む。カバー(図示せず)は、好ましくは、プラスチックのような透明な材料であり、ランセット200を位置決めし、チャンバ208を閉鎖し、チャンバ208の反対側の側部を形成する。カバーが透明な実施形態においては、該カバーは検査手段として機能することができ、これによって、カバーを通じた光学的検知技術によりリザーバ内で試料を分析することができる。また、透明なカバーであれば、試料リザーバが血液試料で満たされたときを検査により測定することにおいて役立つことになる。
【0016】
図3は、試料リザーバの別の実施形態を図示する試料収集モジュールの一部を示している。試料リザーバは、チャンバ300を血液輸送毛管チャネル304に接続する入り口302を有するチャンバ300を有し、チャンバ300はまた、ベント306も有する。チャンバは、鋭い角がない平坦又は僅かに球形状であり、滑らかなポリマーで形成された第1の側面308を有する。エラストマー隔膜310をチャンバ300の周囲に取り付けるが、これは、チャンバ308の第1の側面にぴったりと適合可能であるのが好ましい。血流の方向を制御するために、試料リザーバには、該試料リザーバの入り口302に配置される第1のチェックバルブ312、及びベント306に配置される出口チャネル316につながる第2のチェックバルブ314を備える。或いは、単一のチェックバルブを(312の位置に)設けて、血液輸送毛管チャネル304を介してチャンバ300に入る流れと、チャンバ300から任意的な別の出口チャネル318内に出て行く流れの両方を制御することができる。試料リザーバは、隔膜310の移動を容易にする可変圧力源に連結された導管320を有する。隔膜310がチャンバ308の第1の側面から離れて撓む(圧力源から導管320を介して供給される低圧力)と、第1のチェックバルブ312が開いて第2のチェックバルブ314が閉じ、続いて血液試料が試料リザーバ内に吸引される。隔膜310がチャンバ308の第1の側面の方向に撓み(圧力源から導管320を介して供給される高圧力)、第1のチェックバルブ312が閉じて第2のチェックバルブ314が開くと、血液は、チャンバ300から強制的に排出される。隔膜310の移動方向及び動作速度は、圧力源により制御することができ、従って、試料の流れを加速又は減速することができる。この機構により、血液細胞への損傷を低減させるだけでなく、チャンバ300が満たされる速度の制御も行うことができる。この実施形態では、空気圧手段を介した隔膜310の制御を説明しているが、代わりに機械的手段を用いることもできる。本質的に、この微小隔膜ポンプにより、吸引、貯蔵及び送出機能が実現する。隔膜310は、本質的に、血液を移送させて必要な全ての領域に容易に到達させるためのポンプとして用いることができる。このような必要な領域は、血液を化学的センサ又は他の検査手段に分析試験又は暴露するための更に下流側の単純な試料貯蔵域とすることもできる。血液の送出は、試料収集モジュール内の部位まで又は試料収集モジュールの外側の部位、即ち、別個の分析装置までとすることができる。別の実施形態では、化学的センサ又は他の検査手段が、試料収集モジュール内に配置され、血液は、試料リザーバと流体的に連通する血液移送チャネルを介して化学的センサ又は他の検査手段に送出される。試料収集モジュールの構成要素は、射出成形することができ、隔膜は、一体化構成要素として溶融又はインサート成形することができる。
【0017】
図4は、試料採取部位クレードル表面402の一部を含み、試料採取ポート400を囲む使い捨ての試料収集モジュールの一部を示す。試料収集モジュールのハウジングは、試料採取ポートを試料リザーバに連結する主毛管チャネル404を含む。主毛管チャネル404は、主チャネル内腔表面406と主チャネル入り口408とを含み、主チャネル入り口408は、試料採取ポート400に開口する。試料収集モジュールは、任意的に、補助チャネル内腔表面412と補助チャネル入り口414とを有する補助毛管チャネル410を含むことができ、この補助チャネル入り口414は、試料採取ポート400に開口する。主毛管チャネル404は、補助毛管チャネル410より、少なくとも2倍だけ断面積が大きいのが好ましい。従って、補助毛管チャネル410は、主毛管チャネル404より速く流体を引き出す。血液の最初の液滴が試料採取ポート400に受け入れられると、この液滴の大部分は、補助毛管チャネル410を通して引かれる。しかしながら、補助毛管チャネル410の容量は限定されており、最初の血液滴で満杯又はほぼ満杯になるため、血液が、継続して切開部から試料採取ポート400に流れ込むと、この血液の大部分は、主毛管チャネル404を通じて引かれる。この2重の毛管チャネル構成は、例えば、ランセットがぶつかることによる破片又は(特に血液ガス検査の場合)空気による試料の汚染の懸念がある検査を行うときに特に有用である。
【0018】
血液滴の流れを改善するために、場合によっては毛管流工程を始めるの、に表面に血液で呼び水又は吸い上げをすることが必要である。試料採取ポート400及び主毛管チャネル404及び補助毛管チャネル410(存在する場合)の表面の一部を処理し、これらの表面を親水性にする。表面の改質は、機械的処理、化学的処理、コロナ処理、又はプラズマ処理を用いて達成することができる。このようなコーティーング及び方法の例は、AST Products(マサチューセッツ州ビルリカ)及びSpire Corporation(マサチューセッツ州ベッドフォード)により市販されている。しかしながら、表面を完全にブランケット処理すると、血液が表面全体に無差別に流れ、毛管チャネルを優先的に通って流れないようになることにより、弊害が生じる可能性がある。これは、最終的には、血液の損失につながる。処理を受ける特定の表面を選択し、試料採取部位クレードル表面402上の切開した指から試料採取ポート400及び毛管チャネル404、410の少なくとも1つを通って試料リザーバまでの血液の流れを改善する。このように、処理工程は、選択した表面だけをマスクせず、そこに限定する必要がある。試料採取表面を選択的に疎水性から親水性に改質するマスキング工程は、金属遮蔽のような機械的マスキング技術、誘電的又は導電的に堆積したフィルム、又は電気的遮蔽手段により行うことができる。幾つかの実施形態では、処理される表面は、1つ又はそれ以上の次の表面に限定される。即ち、試料採取部位クレードルと主及び補助毛管チャネルとの間にある試料採取ポートの表面、主及び/又は補助毛管チャネル408、414への入り口すぐに隣接する表面(いずれも試料採取ポート及び毛管チャネル内にある)、及び主及び/又は補助毛管チャネル406、412の内腔表面である。血液は、切開部から出ると直ぐに、優先的に試料採取ポート400を通って補助毛管チャネル410(存在する場合)内及び主毛管チャネル404内に移動して試料リザーバに至り、血液が効率的に取り込まれることになる。或いは、基材材料は、親水性又は疎水性であるように選択することができ、基材材料の表面の一部を反対の特性となるように処理することもできる。
【0019】
引き続き図4を見ると、好ましい実施形態では、試料採取ポート400の底部にある膜416は、ランセット418の引き込まれた尖鋭化遠位端と毛管チャネル408、414への入り口との間に位置付けられる。膜416は、血液がランセット420の遠位端を囲む領域418に流れ込まないようにすることにより、血液試料が毛管チャネル404、410を通って流れることを容易にする。従って、血液は、優先的に試料リザーバ内に流れる。ある実施形態では、膜416は、疎水性の性質を有するように処理される。別の実施形態では、膜416は、シリコーンベースのゲル424でコートされたポリマーベースのフィルム422で作られる。例えば、膜構造は、商標MYLARで販売されているフィルムのようなポリエチレンテレフタレートから構成されたポリマーベースのフィルム422を含むことができる。膜構造は、更に、フィルムの少なくとも1つの表面上に、商標SYLGARDで販売されているゲルのようなシリコーンベースのゲル424の薄いコーティーングを含むことができる。このようなフィルムの有用性は、ランセットが侵入した後に、ランセットの切断先端及び縁に物理的な影響を及ぼすことなく、再シールが可能であることである。MYLARフィルムは、構造的安定性を提供し、薄いSYLGARDシリコーン積層体は、その形状を保持し、MYLARフィルムに作られた穴を覆って閉じるのに十分な可撓性がある。本実施形態の膜の製造には、構造的安定性及び可撓性の機能を実現する他の同様の材料を用いることもできる。
【0020】
膜416は、ランセット420の尖鋭化された遠位端が試料採取ポート400内及びそれを通過して進むときに、ランセット420の尖鋭化された遠位端が膜を突き刺すことができるように動作する。最も好ましい実施形態では、膜416のシリコーンベースのゲル424は、ランセットが突き刺すことにより生じた切れ目を自動的にシールする。従って、使用者の指を切開した後、切開部からの血液は、膜416を通って流れないようにされ、これにより、血液が主毛管チャネル404を通って試料リザーバ内に蓄積するのを助ける。従って、フィルムにより、血液がランセット装置組立体内に流れ込まないようにされ、血液汚染及びランセット装置機構キャビティ内への流出が防止される。再シール層424が無い場合でも、疎水性膜416により膜416を通過する血液の流れが阻止され、主毛管チャネル404を通る流れが改善すると共に、突き刺した膜416を通る流れが減少又は排除されることになる。
【0021】
図5A、5B、及び5Cは、ランセットドライバの使用中の3つの異なる時点におけるランセットドライバの一実施例を示す。このランセットドライバの説明では、近位とは、試料収集モジュールの取り付け部位に比較的近い位置を意味し、逆に、遠位とは、試料収集モジュールの取り付け部位から比較的遠い位置を意味する。ランセットドライバは、円筒形ウェル502を形成するドライバハンドル本体500を有し、該円筒形ウェル内には予荷重ばね504が配置される。予荷重ばね504に近接してドライバスリーブ506があり、これは、ウェル502内にぴったり嵌合すると共に摺動可能に配置される。ドライバスリーブ506は、円筒形ドライバチャンバ508を定め、中に駆動ばね510が配置されている。駆動ばね510に近接してプランジャスリーブ512があり、これは、ドライバスリーブ506内にぴったり嵌合すると共に摺動可能に配置される。
【0022】
ドライバハンドル本体500は遠位端514を有し、該遠位端は予荷重ねじ518が嵌合するねじ付き通路516を形成する。予荷重ねじは、カウンタボア520を形成する。
予荷重ねじ518は、予荷重調節ノブ524に取り付けられた遠位端522と、穿孔528を形成する近位端526とを有する。ドライバスリーブ506は、キャッチ取付具532に取り付けられた遠位端530を有する。キャッチ取付具532は、キャッチ穴534を形成する。ドライバスリーブ506は、該ドライバスリーブの近位端536の内側表面を円周状に囲む傾斜のついたリング体538を備えた近位端536を有する。
【0023】
ランセットドライバは、近位端540及び遠位端542を有するプランジャステム538を含む。遠位端542では、プランジャステム538は拡大プランジャヘッド544により終端する。近位端540では、プランジャステム538は、拡大プランジャベース546によって終端する。プランジャヘッド544とプランジャベース546との間のプランジャステム538上に、プランジャフック548が配置される。プランジャベース546は、プランジャスリーブ512に固定して取り付けられ、プランジャヘッド544は、予荷重ねじ518により定められるカウンタボア520内に摺動可能に配置される。プランジャステム538は、プランジャヘッド544から、予荷重ねじの近位端526により定められた孔528を通り、そこからキャッチ取付具532内の穴534を通り、プランジャベース546まで延びている。プランジャベース546は、プランジャスリーブ512の近傍を通って延び、プランジャ先端550を形成する。組み立てるために、プランジャベース546は、プランジャスリーブ512内に組み込むことができ、プランジャステム538は、圧着、加締め、接着、溶接、又は他の手段によりプランジャベース546に取り付けることができる。
【0024】
以下、図1〜図5を参照して、血液試料採取システムの動作を説明する。動作時には、新しい試料採取モジュール100を貯蔵キャビティ108から取り外し、多位置決めサムホイール216を用いて望ましい深度設定に調節する。次に、ランセットドライバ102の端部に試料収集モジュール100を載置する。予荷重設定を確認することができるが、一度好ましい設定が見出されれば、サイクル毎に変更することはない。必要であれば、予荷重設定は、予荷重調節ノブ112を用いて調節することができる。次いで、組み合わせた試料収集モジュール及びランセットドライバ組立体を、滑らかな動きで予め設定した起動ポイントに到達するまで使用者の指(又は他の選択した解剖学的特徴部)に押し付ける。起動ポイントは、ドライバを作動させてランセットを皮膚に向かって前進させるために越えるべき予荷重の量に一致する。予荷重ねじにより、使用者は、一定の予め設定された(使用者によって)予荷重の量が、ランシングが行われる度に試料採取部位114に印加されるように予荷重設定を調節することができる。
【0025】
組立体を使用者の指に押し付ける動きが始まると(図5A参照)、プランジャフック548は、キャッチ取付具532に係合して駆動ばね510をセット位置に保持し、この間、ドライバスリーブ506が予荷重ばね504を圧縮し続けるため、指に対する力が大きくなる。最終的に(図5B参照)プランジャフック548の傾斜した背部が、予荷重ねじ526の近位端の穴528に滑り込み、キャッチ取付具532から係合解除される。プランジャスリーブ512は、プランジャフック548が外れると、近位方向に自由に動き、プランジャ先端550がランセット212の拡大した近位端に当たるまで、駆動ばね510により加速される。ランセット212の拡大した近位端に当たると、作動されたランセットドライバのプランジャ先端550は、ランセット212の拡大した近位端に可逆的に係合する。これは、例えば、ランセット212の拡大した近位端の相補的嵌合に取り外し可能に係合するプランジャ先端550に取り付けられた取付具などの機械的手段により達成することもでき、又はランセット212の拡大した近位端を接着剤でコーティングし、この接着剤が、作動されたランセットドライバのプランジャ先端550に接着することもできる。プランジャ先端550が係合すると、ランセット200は、ランセットガイド214内で摺動し、ランセット210の尖鋭化した遠位端が、試料採取ポート206を通ってハウジング202から現れ、使用者の指に切開を形成する。プランジャ先端550がランセット212の拡大した近位端に接触する地点近傍では、駆動ばね510は弛緩した状態であり、プランジャ先端550は最大速度で移動する。伸長行程中は、駆動ばね510が伸長し、プランジャ先端550及びランセット200の速度を遅くする。ランセット212の拡大した近位端が、多位置決めサムホイール216に当たると、行程は終わる(図5C参照)。ランセット200の動く方向が逆向きになり、次に、伸長した駆動ばねにより、ランセット210の尖鋭化した遠位端が、試料採取ポート206を通して素早く引き込まれる。戻り行程の終わりには、ランセット200は、戻り止め228により、プランジャ先端550から剥離される。接着剤により、戻り止め228が接着され、ランセットが安全な位置に保持される。
【0026】
血液は、創傷から染み出ると、試料採取ポート206を満たし、毛管作用により試料リザーバ208に引き出される。この実施形態では、創傷には減圧又は真空は存在しない、即ち、創傷は周囲大気圧であるが、例えば、シリンジ又はポンプによりもたらされる吸引により血液試料を引き出す実施形態を用いてもよい。ベント226により、毛管作用は、チャンバ全体が満たされるまで進行することができ、他の器具により血液を分析するための移送ポートが設けられる。指は、試料リザーバに試料が完成したのが観察されるまで、試料収集モジュールに接触させたまま保持する。試料収集モジュール100がランセットドライバ102から取り外されると、戻り止め228構造の一部であるラッチ230が、ランセットドライバ102の内側の傾斜したリング体538に係合する。ランセットドライバ102が試料収集モジュール100から取り外されると、ラッチは、戻り止め228をランセット200に向かって回転させ、戻り止めを曲げて安全な位置にロックし、再使用できないようにする。
【0027】
試料収集モジュール100がランセットドライバ102から取り外されると、ドライバスリーブ506は、予荷重ばね504に蓄えられたエネルギーにより、ドライバハンドル本体500に強制的に滑り込む。ドライバスリーブ506、プランジャスリーブ512、及び駆動ばね510は、プランジャステム538上のプランジャヘッド544が、予荷重ねじ526の近位端のカウンタボア520の底部に接触するまで、共に外向きに移動する。予荷重ねじ504は、プランジャフック548がキャッチ取付具532内の穴534を通過するまで、ドライバスリーブ506を外向きに移動し続けて駆動ばね510を圧縮する。最終的に、2つのばねは、平衡に達し、プランジャスリーブ512は、曲がった状態になる。
【0028】
試料収集モジュール100は、ランセットドライバ102から取り外された後に、血液化学読み取り値を得るために、別個の分析装置内に配置することができる。好ましい実施形態では、試料収集モジュール100の一体化ハウジング202又は試料リザーバ208は、別個の分析装置から電力供給され、及び/又は読み取られる少なくとも1つのバイオセンサを含む。別の実施形態では、分析装置は、試料収集モジュールの透明のプラスチックカバーを通して直接血液試料の光学的分析を行う。或いは、血液試料は、試料収集モジュールから分析装置に移送し、種々の分析工程に分配することもできる。
【0029】
本発明の別の実施形態では、試料採取の成功率を改善し、これにより、不適切な容量充填に起因する試料貯蔵リザーバ又は分析モジュールの無駄な提供が低減される。別の実施形態では、十分な血液が收集されたことを自動的に確認した後に、試料採取部位から皮膚を外してもよいことを示す信号(例えば信号灯又は可聴警報による)を使用者に送ることが可能となる。このような別の実施形態では、1つ又はそれ以上の付加的なランセット(予備ランセットと表される)及び/又はランセットドライバ(予備ランセットドライバと表される)及び/又は試料リザーバ(予備試料リザーバと表される)が、「主」試料収集モジュールと共に存在する。このような好ましい一実施形態では、不適切な血液試料量の検出(例えば光又は電子的方法による)に続いて、予備試料採取サイクルが自動的に開始される。「予備試料採取サイクル」には、簡単な弁システムを介して主試料リザーバを取り外す段階と、予備構成要素を稼働させる段階と、皮膚をランシングする段階と、血液を収集する段階と、該血液を予備試料リザーバに移動する段階とを含む。血液は、必要な量が得られるまで予備試料リザーバに流れ込む。サイクルは、正確な量が得られるまで必要であれば繰り返される。この時に試料リザーバは、測定に用いるため又は他の用途のために試料採取した血液源として利用可能である。一連のリザーバ及び/又はランセット及び/又はランセットドライバは、同じハウジング内で容易に製造することができ、使用者には透明とすることができる。一実施形態では、単一の試料収集モジュールに3つまでの試料リザーバ(主リザーバと2つの予備リザーバ)が存在し、各試料リザーバは、毛管チャネル/弁システムを介して1つ又はそれ以上の試料採取ポートに連結される。別の実施形態では、単一の試料収集モジュール内に4つの試料リザーバ(主リザーバ+3つの予備リザーバ)を有し、各試料リザーバは、毛管チャネル/弁システムを介して1つ又はそれ以上の試料採取ポートに連結される。3つ又は4つの試料リザーバを備えると、幾つかの実施形態においては少なくとも80%の試料収集成功率を達成することができる。
【0030】
別の実施形態は、小型のランセット装置を含む。小型ランセットの幾つかは、単一の試料採取部位に配置され、血液を1つ又はそれ以上のリザーバに移送するための対応する毛管チャネルを備えることができる。毛管チャネルは、任意的に血流を制御するための弁を有することができる。また、装置は、血液の存在を検出するための1つ又はそれ以上のセンサを含み、例えば、十分な量の血液が得られたかどうかを判別することができる。このような実施形態では、組み合わせた血液試料収集システム−使い捨ての試料収集モジュール、ランセットドライバ、及び任意的な補足モジュールは、長さ約150mm、幅60mm、及び厚さ25mm以下の寸法を有することになる。別の実施形態では、使い捨ての試料収集モジュール、ランセットドライバ、及び任意的な補足モジュールを含む、組み合わせた血液試料採取システムの大きさは、長さ約100mm、幅約50mm、厚さ約20mm以下の寸法を有することになり、更に別の実施形態では、長さ約70mm、幅約30mm、及び厚さ約10mm以下の寸法となる。使い捨ての試料収集モジュール、ランセットドライバ、及び任意的な補足モジュールを含む、組み合わせた血液試料採取システムの大きさは、一般に少なくとも長さ約10mm、幅約5mm、及び厚さ約2mmとされることになる。
【0031】
別の小型の実施形態では、補足モジュール又は試料収集モジュールを含まないランセットドライバの寸法は、長さ約80mm、幅10mm、及び厚さ10mm以下、詳細には、長さ約50mm、幅7mm、及び厚さ7mm以下、更に詳細には、長さ約15mm、幅5mm、及び厚さ3mm以下であり、補足モジュール又は試料収集モジュールを含まないランセットドライバの寸法は、一般に、少なくとも長さ約1mm、幅0.1mm、及び厚さ0.1mm、詳細には、少なくとも長さ約2mm、幅0.2mm、及び厚さ0.2mm、更に詳細には、少なくとも長さ約4mm、幅0.4mm、及び厚さ0.4mmである。更に別の小型の実施形態では、ランセットドライバ又は補足モジュールを含まない小型試料収集モジュールの寸法は、長さ約15mm、幅約10mm、厚さ約10mm以下、又は長さ約10mm、幅約7mm、及び厚さ約7mm以下、又は長さ約5mm、幅約3mm及び厚さ約2mm以下であり、ランセットドライバ又は補足モジュールを含まない小型試料収集モジュールの寸法は、一般に、少なくとも長さ約1mm、幅0.1mm、及び厚さ0.1mm、詳細には、少なくとも長さ約2mm、幅0.2mm、及び厚さ0.2mm、更に詳細には、少なくとも長さ約4mm、幅0.4mm、及び厚さ0.4mmである。
【0032】
別の実施形態では、小型試料収集モジュール及びランセットドライバは、共有のハウジングを有する単一のユニットを形成し、この組み合わせた試料収集モジュール/ランセットドライバユニットは使い捨てである。このような組み合わせたユニットは、長さ約80mm、幅約30mm、及び厚さ約10mm以下、詳細には、長さ約50mm、幅約20mm、及び厚さ約5mm以下、更に詳細には、長さ約20mm、幅約5mm、及び厚さ約3mm以下であり、この組み合わせたユニットは、一般に、少なくとも長さ約2mm、幅約0.3mm、及び厚さ約0.2mm、詳細には、少なくとも長さ約4mm、幅0.6mm、及び厚さ0.4mm、更に詳細には、少なくとも長さ約8mm、幅1mm、及び厚さ0.8mmである。
【0033】
本発明の上述の実施形態を詳細に記載したが、当業者には、前述の説明及び添付の図面から本発明の種々の変更形態が明らかになり、これらの変更形態も、請求の範囲によってのみ限定されることになる本発明の範囲に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0034】
100 試料収集モジュール
102 ランセットドライバ
104 付属モジュール
106 ケース本体
108 貯蔵キャビティ
110 チャンバ
112 予荷重調節ノブ
114 試料採取部位
116 クレードル
118 開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の皮膚から血液を收集するための装置であって、
試料採取部位を有するハウジングを備え、前記試料採取部位は、開口を形成し、かつ、凹状のくぼみすなわちクレードルを有し、
前記開口に隣接するランセット先端を有するランセットと、
前記ランセットに作動的に配置され、作動時に前記開口を通って前記ランセット先端を前進させて、皮膚をランシングするランセットドライバと、
試料収集モジュールと、をさらに備え、前記試料収集モジュールは、前記ランセットと、試料リザーバと、バイオセンサとを含み、前記試料収集モジュールは、該試料収集モジュールが使い捨てであり、かつ、前記ランセットドライバが再使用可能となるように、前記ランセットドライバに取り外し可能に結合されており、
前記ハウジングの外面に配置された手動調節可能な穿刺部材深度選択器をさらに備え、前記穿刺部材深度選択器は、使用者がランセットの穿刺深度を制限するためのいくつかの穿刺深度設定の1つを選択することを可能にし、
前記装置は、前記ランセットドライバの作動、皮膚のランシング、血液の收集、及び血液の前記試料リザーバまでの移動を一体化することができるように構成されている、
ことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記試料採取部位が、前記患者の皮膚の外形に一致し、前記皮膚が前記試料採取部位にしっかりと押し付けられたときに、前記開口に実質的に気密シールを形成するように構成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
試料採取ポートと、
突き通し可能な膜と、
を更に備え、前記試料採取ポートが、前記開口に接触する第1の端部と、前記第1の端部と反対側にあり、該第1の端部よりも前記ランセット先端に比較的近接した第2の端部とを有し、前記突き通し可能な膜が、前記ランセット先端と前記開口との間の前記第2の端部に隣接する、
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記膜が、再シール可能である、
ことを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記試料採取ポートが表面を有し、該試料採取ポート表面の少なくとも一部が、親水性である、
ことを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項6】
前記膜が表面を有し、該膜表面の少なくとも一部が、疎水性である、
ことを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項7】
前記開口及び前記試料リザーバと流体的に連通する少なくとも1つの毛管チャネルを更に含み、前記毛管チャネルが表面を有し、該毛管チャネル表面の少なくとも一部が親水性である、
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項8】
少なくとも2つの毛管チャネルを有し、該毛管チャネルの少なくとも1つが主毛管チャネルであり、前記毛管チャネルの少なくとも1つが補助毛管チャネルであり、前記毛管チャネルの各々が断面積を有し、前記少なくとも1つの主毛管チャネルの断面積が、前記少なくとも1つの補助毛管チャネルの断面積の少なくとも2倍である、
ことを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記装置が更に、前記開口と流体的に連通する検査手段を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記装置の寸法が、約80mm×30mm×10mmより小さい、
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記試料採取部位に作動的に配置された予備ランセットを更に備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項12】
予備ランセット先端を有する予備ランセットを更に備え、該予備ランセットが前記ハウジング内に維持され、前記試料採取部位が前記予備ランセット先端に隣接する予備開口を定め、該予備開口が前記試料リザーバと流体的に連通する、
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記試料採取部位と流体的に連通する予備リザーバを更に備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項14】
予備ランセット先端を有する予備ランセットを更に備え、該予備ランセットが前記ハウジング内に維持され、前記試料部位が前記予備ランセット先端に隣接する予備開口を定め、前記試料収集モジュールが前記予備開口と流体的に連通する予備リザーバを更に含む、 ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項15】
前記凹状のくぼみは、周囲空気からの実質的な汚染なしに血液を収集することができるように指先と実質的に気密のシールを形成するように寸法形状決めされている、
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項16】
患者の皮膚から血液を收集するための装置であって、
試料採取部位を有するハウジングを備え、前記試料採取部位は、開口を形成し、かつ、凹状のくぼみすなわちクレードルを有し、
前記開口に隣接するランセット先端を有するランセットと、
前記ランセットに作動的に配置され、作動時に前記開口を通って前記ランセット先端を前進させて、皮膚をランシングするランセットドライバと、
試料収集モジュールと、をさらに備え、前記試料収集モジュールは、前記ランセットと、試料リザーバと、バイオセンサとを含み、前記試料収集モジュールは、該試料収集モジュールが使い捨てであり、かつ、前記ランセットドライバが再使用可能となるように、前記ランセットドライバに取り外し可能に結合されており、
前記ハウジングの外面に配置された手動調節可能な穿刺部材深度選択器をさらに備え、 前記装置は、前記ランセットドライバの作動、皮膚のランシング、血液の收集、及び血液の前記試料リザーバまでの移動を一体化することができるように構成されており、
前記開口及び前記試料リザーバと流体的に連通する少なくとも1つの毛管チャネルを更に備え、前記毛管チャネルが表面を有し、該毛管チャネル表面の少なくとも一部が親水性である、
ことを特徴とする装置。
【請求項17】
前記試料リザーバが、前記開口と流体的に連通するチャンバを備え、該チャンバが、周囲と、該周囲に取り付けられた可撓性の隔膜とを有し、前記可撓性の隔膜が、圧力源の作用により前記チャンバ内で動くことができ、前記隔膜の移動が、前記少なくとも1つの毛管チャネルを通る血液の輸送を容易にするのに役立つ、
ことを特徴とする請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記試料採取部位が、前記患者の皮膚の外形に一致し、前記皮膚が前記試料採取部位にしっかりと押し付けられたときに、前記開口に実質的に気密シールを形成するように構成されている、
ことを特徴とする請求項16に記載の装置。
【請求項19】
試料採取ポートと、
突き通し可能な膜と、
を更に備え、前記試料採取ポートが、前記開口に接触する第1の端部と、前記第1の端部と反対側にあり、該第1の端部よりも前記ランセット先端に比較的近接した第2の端部とを有し、前記突き通し可能な膜が、前記ランセット先端と前記開口との間の前記第2の端部に隣接する、
ことを特徴とする請求項16に記載の装置。
【請求項20】
前記膜が、再シール可能である、
ことを特徴とする請求項19に記載の装置。
【請求項21】
前記試料採取ポートが表面を有し、該試料採取ポート表面の少なくとも一部が、親水性である、
ことを特徴とする請求項19に記載の装置。
【請求項22】
前記膜が表面を有し、該膜表面の少なくとも一部が、疎水性である、
ことを特徴とする請求項19に記載の装置。
【請求項23】
少なくとも2つの毛管チャネルを有し、該毛管チャネルの少なくとも1つが主毛管チャネルであり、前記毛管チャネルの少なくとも1つが補助毛管チャネルであり、前記毛管チャネルの各々が断面積を有し、前記少なくとも1つの主毛管チャネルの断面積が、前記少なくとも1つの補助毛管チャネルの断面積の少なくとも2倍である、
ことを特徴とする請求項16に記載の装置。
【請求項24】
前記装置が更に、前記開口と流体的に連通する検査手段を備える、
ことを特徴とする請求項16に記載の装置。
【請求項25】
前記装置の寸法が、約80mm×30mm×10mmより小さい、
ことを特徴とする請求項16に記載の装置。
【請求項26】
前記試料採取部位に作動的に配置された予備ランセットを更に備える、
ことを特徴とする請求項16に記載の装置。
【請求項27】
予備ランセット先端を有する予備ランセットを更に備え、該予備ランセットが前記ハウジング内に維持され、前記試料採取部位が前記予備ランセット先端に隣接する予備開口を定め、該予備開口が前記試料リザーバと流体的に連通する、
ことを特徴とする請求項16に記載の装置。
【請求項28】
前記試料採取部位と流体的に連通する予備リザーバを更に備える、
ことを特徴とする請求項16に記載の装置。
【請求項29】
予備ランセット先端を有する予備ランセットを更に備え、該予備ランセットが前記ハウジング内に維持され、前記試料部位が前記予備ランセット先端に隣接する予備開口を定め、前記試料収集モジュールが前記予備開口と流体的に連通する予備リザーバを更に含む、 ことを特徴とする請求項16に記載の装置。
【請求項30】
前記凹状のくぼみは、周囲空気からの実質的な汚染なしに血液を収集することができるように指先と実質的に気密のシールを形成するように寸法形状決めされている、
ことを特徴とする請求項16に記載の装置。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【公開番号】特開2012−223612(P2012−223612A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−160633(P2012−160633)
【出願日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【分割の表示】特願2009−8662(P2009−8662)の分割
【原出願日】平成14年6月12日(2002.6.12)
【出願人】(512177838)サノフィ−アヴェンティス ドイチュランド ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1)
【Fターム(参考)】