説明

血液透析回路の穿刺側チューブ支持器具

【課題】血液透析では透析回路チューブを患者が親指で挟んで保持しているため、チューブとその中の血液の重さが治療中患者の手にかかり続けるので、患者は手を上から押し付けられたような圧迫感があり、また、クッションとしてタオルを用いると、腕にかかる反力が大きく、治療中の疲労原因となっているため、患者の手の圧迫感を開放し、また、腕にかかる反力を低減することで、治療中の患者の疲労を和らげるチューブの支持器具を提供する。
【解決手段】以下のどちらかの器具と低反発ウレタンチップを詰めたクッションを特徴とする、血液透析回路の穿刺側チューブ支持器具。(イ)基台部1に側壁部2を設け、側壁部先端に溝3を設け、それに嵌合するクリップ4から成る器具。(ロ)基台部に直立した2本の支柱を設け、両支柱の先端にワイヤを取り付け、両支柱からのワイヤの中間にフックを取り付けた器具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液透析(Hemodialysis:HD)治療時の血液回路の穿刺側チューブの支持器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
血液透析においては、患者の腕に二本の針を穿刺して血液透析装置との間をチューブで接合する。穿刺側のチューブは患者の腕に数カ所テープで固定され、手のひらを通して患者が自身の親指で挟んで支持するようセッティングされる。腕の下には、タオルを折り畳んで置き、クッションとする。
先行技術文献は特になし。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】NPO法人 東京腎臓病協議会ホームページ http://www.toujin.jp/html/kidney01.htm
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
透析チューブは患者の手のひらに固定されるため、通常1回4時間の血液透析治療中、チューブとその中の血液の重さが患者の手にかかり続ける。そのため、患者は手を上から押さえつけられたような圧迫感があり、治療中の疲労の原因のひとつとなっている。
また、タオルのクッションは比較的硬いため、長時間におよぶ治療中の患者の疲労原因のひとつとなっている。

本発明は、器具で透析チューブを支えることと、柔らかなクッションを用いることで患者の疲労を軽減することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
基台と、基台の上に置いて患者の腕をのせるクッションと、基台の片端にそれと角度を持って設けられた側壁と、チューブを側壁に固定するためのクリップで構成され、側壁にはチューブを通すための溝を有する。
透析回路の穿刺部付近のチューブは、従来通り数カ所患者の腕にテープで固定するが、従来手のひら側を通して患者が親指で挟んで支持していた部分を、手の甲側を通して配索し、上記側壁の溝に通して、そこにクリップを嵌合させることで固定する。
【発明の効果】
【0006】
従来は、チューブとその中の血液の重さが患者の手にかかり、上から押さえつけられたような圧迫感があったが、本発明では重さは側壁で支持されるため、患者の手や腕に負担がかからなくなり、圧迫感が無くなる。
また、低反発ウレタンチップのクッションを用いることで、腕にかかる負荷が緩和され、治療中の疲労を軽減できる。
従来固定のため使用していた布鉗子は、使用する必要がなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の構造図
【図2】クリップ詳細図
【図3】本発明の実施例
【図4】従来の透析チューブ固定方法
【図5】溝の形状と寸法
【図6】本発明の別構造図
【図7】フック詳細図
【発明を実施するための形態】
【0008】
実施例1として、基台部(1)の先端部に、(1)と60°以上120°以下の角度で側壁部(2)を設け、側壁部(2)の先端部に溝(3)を設ける。溝(3)の形状は、V字形、U字形、長方形などである。
基台部(1)の長さは略500mm、側壁部(2)の高さは150mm以上200mm以下、また、幅は共に100mm以上150mm以下、厚さは共に3mm以上10mm以下である。材料に関しては、基台部(1)、側壁部(2)共、樹脂またはステンレス鋼である。
【0009】
実施例2として、上記の構造に加え、十字形の溝(5)を持ったクリップ(4)を、側壁部(2)に溝(3)が中心となるように嵌合させる。クリップは図2bのような構造も考えられるが、堅牢性から図2aの方が優れている。
側壁部(2)の溝(3)の寸法は図5に示すとおりで、チューブ(11)の外径をdとすると、溝の深さhは、V字形溝の場合1.2d以上1.7d以下、U字形および長方形溝の場合1.5d以上2.0d以下である。また、V字形溝の先端角度は60°以上90°以下、U字形および長方形溝の幅wはd+αで、αは1mm以上2mm以下である。
同じく、クリップ(4)の十字形の溝(5)の寸法は図5に示すとおりで、チューブ(11)の外径をdとすると、溝の深さHは、V字形溝の場合1.7d、U字形および長方形溝の場合2.0dである。また、溝の幅Wは、V字形溝の場合2d+α、U字形および長方形溝の場合d+2αで、αは1mm以上2mm以下である。また、側壁部(2)の板厚をtとすると、溝の奥行きDは、溝の形状にかかわらずt+αで、αは1mm以上2mm以下である。
クリップ(4)の材料は樹脂である。
【0010】
実施例3として、基台部(1)の上にクッション(7)を置く。クッション(7)は、低反発ウレタンチップを袋に詰めたものである。クッション(7)の厚さは10mm以上40mm以下、中に入れる低反発ウレタンチップの大きさは略30mm立方の立方体または直方体である。
低反発ウレタンチップとは、低反発ウレタンフォームを小さな直方体に切断したもので、クッションとして使用した場合、点や線で体と接触するため、面で接触するタオルや低反発ウレタンフォーム(塊)よりソフトな感触が得られる。
【0011】
実施例4として、図6のような構造も可能である。基台部(1)の先端部に直立した2本の支柱(8)を設け、両支柱の先端にワイヤ(10)を取り付ける。両支柱からのワイヤ(10)の中間にフック(9)を取り付ける。
支柱(8)の長さは150mm以上200mm以下である。
フック(9)の形状は、溝(3)と同様、V字形、U字形、長方形などである。また、その寸法は図7に示す通りで、チューブ(11)の外径をdとすると、フックの深さhは、V字形溝の場合2.2d、U字形および長方形溝の場合2.5dである。また、V字形溝の先端角度は60°以上90°以下、U字形および長方形溝の幅wはd+αで、αは1mm以上2mm以下である。
支柱(8)、フック(9)、ワイヤ(10)の材料は、樹脂またはステンレス鋼である。
【0012】
本発明は以上のような構造である。
本発明を使用するときは、ベッドの本体またはベッドのアームレスト(6)の上に基台(1)を載せ、その上に低反発ウレタンチップのクッション(7)を置く。その上に患者の腕を置き、二本の透析針を患者の腕に穿刺して、透析回路チューブ(11)をそれぞれの針に接続し、穿刺位置から手首までのチューブを、穿刺側テープ(12)で数カ所腕に固定するところは従来と同じである。
本発明では、手首から先のチューブを手の甲側を通して配索し、テープでの固定はせず、側壁部(2)の溝(3)を通し、溝のところでクリップ(4)を側壁部(2)に嵌合させて固定する。また、図6に示す別構造の場合は、溝(3)の代わりにフック(9)を通し、クリップはしない。
【実施例】
【0013】
本発明の実施例を 図3 に示す。
また、従来の血液透析での穿刺側の実施例を 図4 に示す。
【符号の説明】
【0014】
1 基台、 2 側壁、 3 溝、 4 クリップ、 5 十字形溝、 6 ベッドのアームレスト、 7 クッション、 8 支柱、 9 フック、 10 ワイヤ、 11 透析回路チューブ、 12 穿刺側固定テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台部に側壁部を設け、側壁部先端に溝部を設けたことを特徴とする血液透析回路の穿刺側チューブ支持器具
【請求項2】
側壁とそれに直角方向に配索されるチューブを、側壁先端の溝と、それに嵌合するクリップで固定することを特徴とする、血液透析回路の穿刺側チューブ支持器具
【請求項3】
クッションとして、低反発ウレタンチップを詰めた袋を用いる血液透析回路の穿刺側チューブ支持器具
【請求項4】
基台部の先端両側に直立した2本の支柱を設け、両支柱の先端にワイヤを取り付け、両支柱からのワイヤの中間にフックを取り付けたことを特徴とする血液透析回路の穿刺側チューブ支持器具

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−59358(P2013−59358A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−197768(P2011−197768)
【出願日】平成23年9月11日(2011.9.11)
【出願人】(711009534)
【Fターム(参考)】