説明

血液透析治療現場で発生するガス・粉塵の処理方法および処理装置

【課題】血液透析治療に際し、血液透析装置や透析液調製装置等、血液透析治療に使用する装置の内部に発生する微量なガスや、その治療環境に飛散した粉塵を処理するための方法、および処理装置を提供する。
【解決手段】アスピレータ1と開閉弁V1を備えた給水ライン2と、開閉弁V2を備えた吸引ライン3と、開閉弁V3を備えた排出ライン4とを含んでなり、給水ライン2には開閉弁V1の上流側で開閉弁V4を有する洗浄水供給ライン5が分岐され、吸引ライン3上の開閉弁V2の下流側でこの開閉弁V2に近接する部分に接続されている。また、この洗浄水供給ライン5にはそれぞれ開閉弁V5、V6を備えた洗浄ライン61、62が分岐されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液透析治療に際し、血液透析装置や透析液調製装置等、血液透析治療に使用する装置の内部に発生する微量なガスや、その治療環境に飛散した製剤の微量粉末からなる粉塵を処理するための方法、および処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、腎不全の患者や、術後の薬液注入によって水分過多症になった患者などの重篤な状態を改善するために、血液透析装置を使用する血液透析や血液濾過が行われている。
血液透析治療に使用する装置には、例えば特許文献1に記載されているような、粉末状の透析原液製剤をサブホッパに貯蔵しておき、使用毎にホッパに指定量の製剤を切り出し、その後この製剤をスクリューフィーダーによりホッパから溶解用のタンクに切り出して溶解する透析液調製装置がある。このような透析液調整装置においては、ホッパおよびタンクへの切り出し時には、粉末製剤の微粉末が舞い上がり粉塵として装置の隙間から周囲に飛散することがある。また、溶解のために給水されるRO水も、水温と室温の間に差があった場合は、湯気として舞い上がり、製剤を固着させる虞がある。また、湿気などにより粉末製剤から塩化水素などのガスが発生し、装置内に拡散していくことがある。そして、これらの微粉末やガスは、装置の重要な構成要素であるステンレスを錆びさせるだけでなく、使用部品や装置の基板にまで影響を及ぼすことがあった。
【0003】
【特許文献1】特開2001−218835号公報
【0004】
また、多人数用透析液供給装置においては、消毒時に、配管に使用しているチューブから微量の塩素ガスが漏れ、装置内に溜まることがあり、これらのガスは空気より重いことが多く、装置下部に滞留して部品や装置の基板に影響を及ぼす事があった。
また、個人用透析装置や透析用監視装置、多用途透析装置でも同様に、消毒時に配管のチューブから微量に漏れ出たガスが滞留することがある。これらのガスは空気より重いことが多く、装置下部に滞留して部品や装置の基板に影響を及ぼすことがあった。
一方、機械室に於いては、消毒液として多用される次亜塩素酸ナトリウムをタンクに移し替える際に出るガスや、粉末製剤をサブホッパ等に投入する際に出る微粒子の粉末が漂っていることも多く、作業者への影響も懸念される。
【0005】
従来、血液透析治療の現場で発生するガスや粉塵の処理装置は無く、単にファンを使用しての換気に頼るのが一般的であった。
しかしながら、この方法は、確実にガスや粉塵を処理できるものではなく、また、単に室内のガスや粉塵を室外へまき散らすことになり、好ましい解決策とは言えない。
また、RO水製造の過程で生じるRO膜濃縮排水は、従来不要物として捨てていたが、近年、その有効利用が検討されつつある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、血液透析治療に際し、血液透析装置や透析液調製装置等、血液透析治療に使用する装置の内部に発生する微量なガスや、その治療環境に飛散した粉塵を処理するための方法、および処理装置を提供することを目的とする。また、RO水製造の過程で生じるRO膜濃縮排水を有効に利用できる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の血液透析治療現場で発生するガスや粉塵の処理方法は、発生したガスや粉塵を、アスピレータで吸引し、このアスピレータに供給された水に溶解させて排出することを特徴とする。ここで、水として、従来捨てていたRO水製造の過程で生じるRO膜濃縮排水を利用してもよい。
【0008】
また、本発明の血液透析治療現場で発生するガス・粉塵の処理装置は、アスピレータと、このアスピレータに水を供給する、開閉弁を備えた給水ラインと、一端がガスや粉塵の発生箇所に開口し、他端が前記アスピレータの吸引口に接続された、開閉弁を備えた吸引ラインと、前記アスピレータ内で水に溶解されたガスや粉塵を排出する排出ライン、とを含んでなることを特徴とする。
ここで、給水ラインの開閉弁の上流側と、吸引ライン上開閉弁の下流側のこの開閉弁に近接する部分との間に、開閉弁を備えた洗浄水供給ラインが設けられていてもよい。また、更に、洗浄水供給ライン上開閉弁より下流側に、開閉弁を備えた複数の洗浄ラインが分岐されるとともに、排出ラインに開閉弁が設けられていてもよい。
【0009】
また、本発明の血液透析治療現場で発生するガス・粉塵の処理装置は、底面に排水口を有する貯液槽と、この貯液槽に水を供給する給水ラインと、前記排水口に接続された開閉弁を備えた排水ラインと、ポンプとアスピレータを備え、前記貯水槽の水をポンプからアスピレータ、貯水槽と循環させる循環ラインと、一端がガスや粉塵の発生箇所に開口し、他端が前記アスピレータの吸引口に接続された、開閉弁を備えた吸引ライン、とを含んでなることを特徴とする。
ここで、貯液層が、給水口とエア抜き口と循環ライン挿通孔を備えた天面を有しており、前記給水口に給水ラインが接続されていてもよい。この天面は必ずしも必要なものではないが、貯液層への異物の混入を防ぐためには天面を設けるのが好ましい。貯液層の洗浄のために天面を取り外し可能な蓋にしてもよい。また、給水ラインの開閉弁の上流側と吸引ラインの開閉弁の下流側の該開閉弁に近接する部分との間に、開閉弁を備えた洗浄水供給ラインが設けられていてもよい。また、更に、洗浄水供給ライン上開閉弁より下流側に、開閉弁を備えた複数の洗浄ラインが分岐されるとともに、アスピレータと貯液層の間の循環ラインに開閉弁が設けられていてもよい。
尚、アスピレータの吸引口には逆止弁が設けられていてもよい。また、洗浄ラインの設置場所は、洗浄水供給ライン上開閉弁の上流でも構わないが、この場合、排出ラインの開閉弁は必ずしも必要としない。
【0010】
以上、一般的に本発明を記述したが、より一層の理解は、いくつかの特定の実施例を参照することによって得ることができる。これらの実施例は、本明細書に例示の目的のためにのみ提供されるものであり、他の旨が特定されない限り、限定的なものではない。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、以下のような効果が期待できる。すなわち、本発明の処理装置は、発生したガスや粉塵を、アアスピレータで吸引し、このアスピレータに供給された水に溶解させて排出するように構成しているので、血液透析治療現場で発生するガスや粉塵を効率よく除去することができる。また、水として、従来捨てていたRO水製造の過程で生じるRO膜濃縮排水を利用すれば、RO膜濃縮排水を有効利用することができる。また、電装部から発生する熱をアスピレータで吸引することができるので、電装部の設けられた基盤の冷却効果を期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の処理装置の実施例を示す概略説明図である。
【図2】図1に示す処理装置におけるガスや粉塵の処理操作を示す説明図である。
【図3】図1に示す処理装置における吸引ラインの洗浄操作を示す説明図である。
【図4】本発明の処理装置の他の実施例を示す概略説明図である。
【図5】図4に示す処理装置におけるガスや粉塵の処理操作を示す説明図である。
【図6】図4に示す処理装置における吸引ラインの洗浄操作を示す説明図である。
【符号の説明】
【0013】
1 アスピレータ
11 吸引口
2 給水ライン
V1 開閉弁
3 吸引ライン
31 アスピレータ1と開閉弁V2までの間の吸引ライン
V2 開閉弁
4 排出ライン
V3 開閉弁
5 洗浄水供給ライン
V4 開閉弁
61、62 洗浄ライン
V5、V6 開閉弁
7 貯水槽
71 排水口
72 給水口
73 エア抜き口
74 循環ライン挿通口
8 循環ライン
V7 開閉弁
9ポンプ
10 排水ライン
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
アスピレータと、このアスピレータに水を供給する、開閉弁を備えた給水ラインと、一端がガスや粉塵の発生箇所に開口し、他端が前記アスピレータの吸引口に接続された、開閉弁を備えた吸引ラインと、前記アスピレータ内で水に溶解されたガスや粉塵を排出する排出ラインとを含み、給水ラインの開閉弁の上流側と、吸引ライン上開閉弁の下流側のこの開閉弁に近接する部分との間に、開閉弁を備えた洗浄水供給ラインが設けられている。また、更に、洗浄水供給ライン上開閉弁より下流側に、開閉弁を備えた複数の洗浄ラインが分岐されるとともに、排出ラインに開閉弁が設けられている。
【0015】
(実施例1)
次に、本発明の実施例1について、図1〜図3を用いて説明する。
図1は本発明の一実施例を示す処理装置の概略説明図である。
図1に示す処理装置は、アスピレータ1と開閉弁V1を備えた給水ライン2と、開閉弁V2を備えた吸引ライン3と、排出ライン4とを含んでなり、給水ライン2には開閉弁V1の上流側で開閉弁V4を有する洗浄水供給ライン5が分岐され、吸引ライン3上開閉弁V2の下流側でこの開閉弁V2に近接する部分に接続されている。また、この洗浄水供給ライン5にはそれぞれ開閉弁V5、V6を備えた洗浄ライン61、62が分岐されている。
【0016】
図2はガスや粉塵の処理操作を示す説明図である。操作前には開閉弁は全て閉じている。吸引ライン3は、一端がガスや粉塵の発生する箇所に開口しており、他端はアスピレータ1の吸引口に接続されている。また、洗浄ラインは、混合タンクやサブホッパ、ホッパ等の洗浄のためのラインである。開閉弁V1、V2、V3が開くと、給水ライン2からアスピレータ1に水が供給される。するとアスピレータ1に陰圧が生じ、発生したガスや粉塵が吸引ライン3を通って吸引口11からアスピレータ1内に吸引されるとともに、アスピレータ1に供給された水と混合されこれに溶解されて、排出ライン4を通って排出される。
【0017】
図3はアスピレータ1と開閉弁V2までの間の吸引ライン31の洗浄操作を示す説明図である。開閉弁V1、V2が閉じ、開閉弁V4が開くと、洗浄水供給ライン5から吸引ライン31に供給された水は吸引ライン31を洗浄し、アスピレータ1を通り排出ライン4を通って排出される。
尚、洗浄操作が終了し、排水ライン4の開閉弁V3が閉じ、洗浄ライン61、62の開閉弁V5、V6が開くと、例えばサブホッパやホッパに水が供給され、これらの内部が洗浄される。
【0018】
(実施例2)
次に、本発明の実施例2について、図4〜図6を用いて説明する。
図4は本発明の一実施例を示す処理装置の概略説明図である。
図4に示す処理装置は、底面に排水口71を有する貯液槽7と、この貯液槽7に水を供給する給水ライン2と、排水口71に接続された開閉弁V3を備えた排水ライン10と、ポンプ9とアスピレータ1を備え、貯水槽7の水をポンプ9からアスピレータ1、貯水槽7と循環させる循環ライン8と、一端がガスや粉塵の発生箇所に開口し、他端がアスピレータ1の吸引口11に接続された、開閉弁V2を備えた吸引ライン3、とを含んでいる。また、貯液層7は、給水口72とエア抜き口73と循環ライン挿通孔74を備えた天面を有しており、給水口72には給水ライン2が接続されている。この天面は必ずしも必要なものではないが、貯液層7への異物の混入を防ぐためには天面を設けるのが好ましい。貯液層7の洗浄のために天面を取り外し可能な蓋にしてもよい。また、給水ライン2には開閉弁V1の上流側で開閉弁V4を有する洗浄水供給ライン5が分岐され、吸引ライン3の開閉弁V2の下流側でこの開閉弁V2に近接する部分に接続されている。また、この洗浄水供給ライン5にはそれぞれ開閉弁V5、V6を備えた洗浄ライン61、62が分岐されており、アスピレータ1と貯液層7の間の循環ライン8には開閉弁V7が設けられている。
尚、循環ライン8は、図5ではアスピレータ1と貯水槽7を結ぶ一端が貯水槽7の液面下に在り、ポンプ9と貯水槽7を結ぶ他端が貯水槽7の底面に開口しているが、必ずしもこれに限定するものではなく、要は、水がポンプ9からアスピレータ1、貯水槽7と循環できればよく、例えば、アスピレータ1と貯水槽7を結ぶ一端が貯水槽7の液面上に在ってもよく、ポンプ9と貯水槽7を結ぶ他端が貯水槽7の側面に開口していてもよい。
【0019】
図5はガスや粉塵の処理操作を示す説明図である。操作前には開閉弁は全て閉じている。吸引ライン3は、一端がガスや粉塵の発生する箇所に開口しており、他端はアスピレータ1の吸引口に接続されている。また、洗浄ライン61、62は、混合タンクやサブホッパ、ホッパ等の洗浄のためのラインである。給水ライン2の開閉弁V1、が開き、排水ライン10の開閉弁V3が閉じると、給水ライン2から貯水槽7に水が供給される。このときの水位はフロート弁などを用いれば適当に決めることができる。次いで、給水ライン2の開閉弁V1が閉じ、吸引ライン3の開閉弁V2と循環ライン8の開閉弁V7が開き、ポンプ9が駆動すると、水が貯水槽7からポンプ9、アスピレータ1、貯水槽7と循環する。このときアスピレータ1を通る水によってアスピレータ1に陰圧が生じ、血液透析治療現場に発生したガスや粉塵が吸引ライン3を通って吸引口11からアスピレータ1内に吸引されるとともに、アスピレータ1に供給された水と混合されこれに溶解されて、循環ライン8内を循環し貯液層7内に移される。処理操作が終了したら、吸引ライン3の開閉弁V2が閉じ、排水ライン10の開閉弁V3が開き、ポンプ9が停止して、ガスや粉塵の溶解された水が貯水槽7の排水口71から排水ライン10を通って排出される。尚、循環ライン8内の水は、貯液層7の水が排出された後、ポンプ9を駆動することにより排出することができる。
【0020】
図6はアスピレータ1と開閉弁V2までの間の吸引ライン31の洗浄操作を示す説明図である。洗浄水供給ライン5の開閉弁V4が開くと、洗浄水供給ライン5から吸引ライン31に供給された水は吸引ライン31を洗浄し、アスピレータ1を通って貯水槽7に注入され、次いで、貯水槽7の排水口71から排水ライン10を通って排出される。
尚、吸引ライン31の洗浄操作が終了した後、洗浄ライン61、62の開閉弁V5、V6が開き、循環ライン8の開閉弁7が閉じると、例えばサブホッパ、ホッパに水が供給され、これらの内部が洗浄される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発生したガスや粉塵を、アスピレータで吸引し、該アスピレータに供給された水に溶解させて排出することを特徴とする、血液透析治療現場で発生するガス・粉塵の処理方法。
【請求項2】
前記水がRO水製造の過程で生じるRO膜濃縮排水である請求項1に記載の処理方法。
【請求項3】
アスピレータと、該アスピレータに水を供給する、開閉弁を備えた給水ラインと、一端がガスや粉塵の発生箇所に開口し、他端が前記アスピレータの吸引口に接続された、開閉弁を備えた吸引ラインと、前記アスピレータ内で水に溶解されたガスや粉塵を排出する排出ライン、とを含んでなる、血液透析治療現場で発生するガス・粉塵の処理装置。
【請求項4】
前記給水ラインの開閉弁の上流側と、前記吸引ライン上開閉弁の下流側の該開閉弁に近接する部分との間に、開閉弁を備えた洗浄水供給ラインが設けられてなる請求項3に記載の処理装置。
【請求項5】
前記洗浄水供給ライン上開閉弁より下流側に、開閉弁を備えた複数の洗浄ラインが分岐されるとともに、前記排出ラインに開閉弁が設けられてなる請求項4に記載の処理装置。
【請求項6】
底面に排水口を有する貯液槽と、該貯液槽に水を供給する給水ラインと、前記排水口に接続された開閉弁を備えた排水ラインと、ポンプとアスピレータを備え、前記貯水槽の水をポンプからアスピレータ、貯水槽と循環させる循環ラインと、一端がガスや粉塵の発生箇所に開口し、他端が前記アスピレータの吸引口に接続された、開閉弁を備えた吸引ラインと、を含んでなる血液透析治療現場で発生するガス・粉塵の処理装置。
【請求項7】
前記貯液層が、給水口とエア抜き口と循環ライン挿通孔を備えた天面を有しており、前記給水口に給水ラインが接続されてなる請求項7に記載の処理装置。
【請求項8】
前記給水ラインの開閉弁の上流側と吸引ラインの開閉弁の下流側の該開閉弁に近接する部分との間に、開閉弁を備えた洗浄水供給ラインが設けられてなる請求項7に記載の処理装置。
【請求項9】
前記洗浄水供給ライン上開閉弁より下流側に、開閉弁を備えた複数の洗浄ラインが分岐されるとともに、前記アスピレータと前記貯液層の間の循環ラインに開閉弁が設けられてなる請求項4に記載の処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate