説明

血液透析装置

【解決手段】 血液透析装置1は透析液フィルタを備え、その流入側の空間または排出側の空間のいずれか一方の空間から液を排出する検査用通路と、他方の空間を大気開放する開放手段42と、上記一方の空間の圧力変動を検出する圧力検出手段と、該圧力変動に基づいて透析液フィルタの良否を判定する判定手段54とを備えている。
制御手段は、透析液ポンプ52により検査用通路を介して一方の空間から透析液を排出するとともに開放手段42により他方の空間を大気開放し、一方の空間が第1陰圧まで減圧されると除水手段により第2陰圧まで減圧する。
判定手段は、圧力検出手段が第2陰圧からの圧力変動を検出しない場合には透析液フィルタが良品であると判定し、圧力変動を検出した場合には不良であると判定する。
【効果】 透析液フィルタのリークチェックを迅速かつ正確に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は血液透析装置に関し、詳しくは透析液回路に設けられるとともに内部が透析液を浄化する濾過膜によって透析液の流入側の空間および排出側の空間に区画された透析液フィルタを備えた血液透析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来血液透析装置として、血液透析を行う透析器と、新鮮な透析液を透析器に供給する透析液供給通路および上記透析器を通過した使用済みの透析液を回収する透析液回収通路からなる透析液回路とを備えたものが知られている。
このような血液透析装置では、使用する透析液内のエンドトキシン等を除去するため、内部が透析液を浄化する濾過膜によって透析液の流入側の空間および排出側の空間に区画された透析液フィルタを備え、この透析液フィルタについては、透析治療を行う際にあらかじめリークチェックが行われている。
上記リークチェックを行う際、上記透析液フィルタにおける一方の空間と他方の空間との間に差圧を発生させるようになっており、このような差圧を発生させるために、上記透析液回収通路に設けられて上記使用済みの透析液を送液する透析液ポンプや(特許文献1)、上記透析液回路を陰圧にして除水を行う除水手段を用いるものが知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4267197号公報
【特許文献2】特公平5−80234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1にかかる透析液ポンプは、流量が大きいものの高い陰圧を発生させることができず、上記透析液フィルタを検査するために十分な陰圧が得られないという問題があった。
また特許文献2にかかる除水手段は、高い陰圧を発生させることができるものの、送液量が小さいことから、検査に必要な陰圧が得られるために時間がかかり、検査時間が長くなるという問題があった。
このような問題に鑑み、本発明は上記透析液フィルタのリークチェックを高精度にかつ迅速に行うことが可能な血液透析装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、請求項1にかかる血液透析装置は、血液透析を行う透析器と、新鮮な透析液を透析器に供給する透析液供給通路および上記透析器を通過した使用済みの透析液を回収する透析液回収通路からなる透析液回路と、上記透析液回収通路に設けられて上記使用済みの透析液を送液する透析液ポンプと、透析器を介して血液から除水をするための除水手段と、内部が濾過膜により流入側の空間と排出側の空間とに区画されて上記透析液供給通路から流入する新鮮な透析液を浄化して排出する透析液フィルタと、上記透析液ポンプおよび除水手段の作動を制御する制御手段とを備えた血液透析装置において、
上記透析液フィルタの流入側の空間または排出側の空間のいずれか一方の空間と上記透析液回収通路とを接続する検査用通路と、上記透析液フィルタの上記一方の空間とは反対側の他方の空間を大気開放する開放手段と、上記一方の空間の圧力変動を検出する圧力検出手段と、該圧力検出手段の検出結果に基づいて透析液フィルタの良否を判定する判定手段とを備え、
上記透析液フィルタの良否を判定する際には、上記制御手段は、上記開放手段により上記他方の空間を大気開放するとともに、上記透析液ポンプを作動させて上記検査用通路を介して上記一方の空間内の液を吸引し、上記圧力検出手段によって所定の第1陰圧まで減圧されたことが検出されると上記透析液ポンプを停止し、引き続き上記除水手段により上記一方の空間内から吸引して、該一方の空間が上記第1陰圧よりも低圧の所定の第2陰圧まで減圧されたことが上記圧力検出手段により検出されると、上記除水手段の作動を停止し、
上記判定手段は、第2陰圧まで減圧された上記一方の空間内の圧力変動を上記圧力検出手段により監視し、圧力の上昇が検出された場合には、透析液フィルタが不良であると判定することを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
上記発明によれば、透析液フィルタの一方の空間に接続した検査用通路を介して透析液を排出させるとともに、他方の空間を開放手段によって開放することで、上記一方の空間と他方の空間との間に差圧を発生させ、これにより透析液フィルタのリークチェックを行うものとなっている。
その際、送液量の大きい透析液ポンプによって迅速に第1陰圧まで減圧してから、高い陰圧を発生させる除水手段によって第2陰圧まで減圧するため、迅速かつ正確なリークチェックを行うことが可能となっている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本実施例にかかる血液透析装置の外観図
【図2】上記血液透析装置の液回路図
【図3】透析液回路における圧力の状態を示すグラフ
【図4】第1透析液フィルタのリークチェックを行う際の液回路図
【図5】第2透析液フィルタのリークチェックを行う際の液回路図
【図6】第2実施例にかかる血液透析装置の液回路図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下図示実施例について説明すると、図1は透析治療を行う血液透析装置1の外観を、図2は該血液透析装置1の内部に設けた液回路を示し、この血液透析装置1は病院のコンセントCなどの電源から給電されて作動し、また内部に設けた制御手段1aによって制御されるようになっている。
上記血液透析装置1は、本体部1bの外部に保持された透析器2と、該透析器2に接続された血液回路3と、透析器2に接続されるとともに本体部1bの内部に設けられた透析液回路4と、上記透析液回路4から血液回路3へと透析液を補液する補液通路5とを備えている。
また、上記制御手段1aは画面表示式の操作パネル1cを備え、画面には操作に必要なボタンやアイコン、メッセージが表示され、装置の操作および各種パラメータの設定を行うことができる。また後述する透析液フィルタの良否を判定する判定手段54を内蔵しており、判定結果に基づく警告等も表示されるようになっている。
上記透析器2は、樹脂製の外装ケース2aと、該外装ケース2aの内部に設けた多数の中空糸2bとから構成され、上記中空糸2bの内部は上記血液回路3と連通して血液が流通し、外装ケース2aと中空糸2bとの間には上記透析液回路4が連通して透析液が血液とは逆方向に流通するようになっている。
【0009】
上記血液回路3は、患者の血管に接続されて上記透析器2に血液を供給する動脈側通路11と、透析器2から患者に血液を戻す静脈側通路12とから構成され、これら通路はシリコーン製のチューブで構成されている。
動脈側通路11には、その一端に患者の血管に穿刺される穿刺針11aが設けられるとともに他端が透析器2に接続され、上記穿刺針11aから順に、動脈側通路11を閉鎖するクランプ13と、血液を送液する血液ポンプ14と、ドリップチャンバ15とが配置されている。
上記血液ポンプ14は、チューブをしごいて送液するローラポンプであって、上記制御手段1aによって作動を制御されて患者から透析器2へ血液を送液することが可能となっている。
上記ドリップチャンバ15には、該ドリップチャンバ15内の圧力を計測する圧力計15aと、該ドリップチャンバ15における液面を調整するための液面調整手段16とが設けられている。
上記液面調整手段16は、プライミングを行ってドリップチャンバ15内が生理食塩液等のプライミング液で満たされた状態から、エアポンプPにより空気を流入させて液面を所定の高さに調整するものとなっている。
【0010】
上記静脈側通路12は、その一端が上記透析器2に接続されるとともに他端に患者の血管に穿刺される穿刺針12aが設けられており、上記透析器2から順に、ドリップチャンバ17および静脈側通路12を閉鎖するクランプ18が配置されている。
上記ドリップチャンバ17には、該ドリップチャンバ17内の圧力を計測する圧力計17aが設けられるとともに上記補液通路5の一端が接続されており、透析液回路4内を送液された新鮮な透析液が補液通路5を介してドリップチャンバ17に供給されると、この透析液が静脈側通路12を介して患者に補液されるようになっている。
【0011】
透析液回路4は、第1透析液チャンバ21または第2透析液チャンバ22から新鮮な透析液を透析器2に供給する透析液供給通路23と、透析器2を通過した使用済みの透析液を第1透析液チャンバ21または第2透析液チャンバ22に回収する透析液回収通路24とから構成され、これら通路はシリコーン製のチューブで構成されている。
上記透析液供給通路23と透析液回収通路24の先端には、透析器2と接続するためのカプラ23A、24Aが備えられ、透析液回路4の洗浄時や後述する透析液フィルタの検査時には、図2に点線で示すように、カプラ23A、24Aを接続して透析器2を介することなく連通させることが可能となっている。
第1透析液チャンバ21および第2透析液チャンバ22は同形であり、内部がダイアフラムによって2室に区画され、一方を新鮮な透析液を作製して供給するための供給室21a,22aとし、他方を使用済みの透析液を回収するための回収室21b、22bとしている。
上記第1、第2透析液チャンバ21、22の供給室21a,22aには浄水を供給する給水通路25が接続され、回収室21b、22bには使用済みの透析液を排出するための排液通路26が接続されている。
【0012】
上記給水通路25は、その上流部分にRO水などの浄水を供給する図示しない給水手段が接続され、下流部分は2方向に分岐してそれぞれ上記第1、第2透析液チャンバ21、22の供給室21a,22aに接続され、それぞれ制御手段1aの制御によって開閉される給液弁V1,V2が設けられている。
上記給水通路25には上記浄水を送液する浄水ポンプ31が設けられ、この浄水ポンプ31と分岐部分との間には、透析液の原液であるA液を供給するA液供給手段32と、透析液の原液であるB液を供給するB液供給手段33とが接続されている。
【0013】
上記透析液供給通路23は、その上流部分が2方向に分岐してそれぞれ上記第1、第2透析液チャンバ21、22の供給室21a,22aに接続され、下流部分が上記透析器2に接続されており、上記分岐部分にはそれぞれ制御手段1aの制御によって開閉される供給弁V3,V4が設けられている。
また透析液供給通路23には、上記分岐点から透析器2にかけて、透析液の有害成分を除去する第1透析液フィルタ41と、透析液回路4を大気開放する開放手段42と、上記制御手段1aの制御によって開閉される第1開閉弁V5とが設けられている。
上記第1透析液フィルタ41は、上記透析器2と同様、樹脂製の外装ケースと、該外装ケースの内部に設けた多数の中空糸からなる濾過膜41aとから構成されている。
具体的には、外装ケース内における中空糸の外側の空間は、透析液供給通路23の上流側部分が接続される透析液の流入側の空間41bを構成し、中空糸の内部の空間は、透析液供給通路23の下流側部分が接続される透析液の排出側の空間41cを構成している。つまり上記透析液が中空糸の外側から内側、つまり透析液の流入側から排出側へと通過する際に、エンドトキシン等を除去して透析液を浄化するものとなっている。
なお、上記第1透析液フィルタ41の排出側の空間41cを形成する中空糸は、一端が透析液供給通路23と接続され、他端はキャップで閉塞されている。
また上記第1透析液フィルタ41における流入側の空間41bには、他端が透析液回収通路24に接続された第1検査用通路としての第1バイパス通路43が接続され、該第1バイパス通路43には上記制御手段1aの制御によって開閉される第2開閉弁V6が設けられている。
上記第1バイパス通路43は、例えば透析治療中に透析液の不良が検出された場合や、濾過膜41aである中空糸の外表面を洗い流す(フラッシング)場合に、上記制御手段1aが上記第2開閉弁V6を開放することで透析液供給通路23の不良透析液や洗浄液を透析液回収通路24を介して排液するものとなっている。
また後述する第1透析液フィルタ41のリークチェックを行う際には、同じく上記制御手段1aが上記第2開閉弁V6を開放することで、上記第1バイパス通路43を介して上記流入側の空間41bから液を排出させ、第1透析液フィルタ41の内部に差圧を発生させるものとなっている。
【0014】
上記開放手段42は、透析液供給通路23における上記第1透析液フィルタ41と上記第1開閉弁V5との間に設けられた開放通路44に、上記制御手段1aの制御によって開閉される第3開閉弁V7と、透析液の流出を阻止する逆止弁45と、流入する大気を清浄化するエアフィルタ46とを設けた構成を有している。
上記第3開閉弁V7が開放されると、閉回路を構成する透析液回路4に外気の流入が許容され、特に上記第1透析液フィルタ41における上記排出側の空間41cと、後述する第2透析液フィルタ63における流入側の空間63bとを大気開放するようになっている。
その際、大気開放により透析液回路4に流入する大気は、エアフィルタ46によって清浄化され、また上記逆止弁45は透析液の流出を阻止するようになっている。
【0015】
上記透析液回収通路24は、上流部分が上記透析器2に接続されるとともに、下流部分が2方向に分岐してそれぞれ上記第1、第2透析液チャンバ21、22の回収室21b、22bに接続され、この分岐部分にはそれぞれ制御手段1aの制御によって開閉される回収弁V8,V9が設けられている。
また透析液回収通路24には、透析液回路4内の圧力を測定する圧力センサ51と、透析液を送液する透析液ポンプ52が設けられ、透析液ポンプ52と上記第1、第2透析液チャンバ21、22の間には、透析液回収通路24を流通する透析液の気泡を除去する脱気槽53が設けられている。
上記透析液ポンプ52が作動されると、透析液回収通路24における透析液ポンプ52よりも上流側の液が吸引されて下流側に吐出されるが、この透析液回収通路24に液が供給されない状態では、透析液ポンプ52の上流側を陰圧とすることができる。
しかしながら上記透析液ポンプ52は、いわゆるギアポンプによって構成されており、その特徴としては送液量が高いものの、噛み合った2つの歯車で送液するため、液のない状態では歯車が摩耗するため使用できず、そもそも送気を目的にしたものではなく気密性が低くいことから、透析液回路4内を高い陰圧にすることができないものとなっている。
上記脱気槽53は、送液された透析液から生じる気泡を除去し、この脱気槽53には、上記排液通路26と連通する分岐通路としての第2バイパス通路55が接続され、該第2バイパス通路55には制御手段1aの制御によって開閉される第4開閉弁V10が設けられている。
上記排液通路26は、その上流部分が2方向に分岐してそれぞれ上記第1、第2透析液チャンバ21、22の回収室21b、22bに接続され、下流部分は医療機関に設備された図示しない排液管に接続され、上記分岐部分にはそれぞれ制御手段1aの制御によって開閉される排液弁V11,V12が設けられている。
【0016】
上記透析液回収通路24には排液通路26と連通する除水通路56が接続されており、その上流部分は上記透析液回収通路24における透析液ポンプ52と分岐点との間に接続され、下流部分は上記排液通路26における分岐点の下流側に接続されている。
そして上記除水通路56には透析液回収通路24から使用済の透析液を排出させて限外濾過を行う除水ポンプ57が設けられている。
上記除水ポンプ57はいわゆるプランジャーポンプとなっており、シリンダへの吸込みと吐出しを繰り返すようになっており、送液量を精密に設定可能であるとともに透析液回路4内に高い陰圧を発生させることができるものの、送液量が低いものとなっている。
【0017】
上記補液通路5は、透析液供給通路23と透析液回収通路24との間に配設された接続通路61と上記血液回路3における静脈側通路12のドリップチャンバ17との間に配設され、該補液通路5には上記血液ポンプ14と略同様のチューブポンプからなる補液ポンプ62が設けられている。
上記接続通路61おける透析液供給通路23側の端部は、上記第1開閉弁V5と透析器2との間に接続され、また透析液回収通路24側の端部は該透析液回収通路24における透析器2と上記圧力センサ51との間に接続されている。
そして上記接続通路61には、透析液供給通路23から順に、透析液の有害成分を除去する第2透析液フィルタ63と、上記補液通路5を着脱可能に接続する接続ポート64と、制御手段1aによって制御される第5開閉弁V13とが設けられている。
上記第2透析液フィルタ63は上記第1透析液フィルタ41と同様、中空糸からなる濾過膜63aによって、外装ケース内の中空糸の外側となる流入側の空間63bおよび中空糸の内部からなる排出側の空間63cに区画され、接続通路61から流入される透析液を中空糸の内部から流出させるようになっており、補液を行う際には上記第1透析液フィルタ41によって浄化された透析液をさらに浄化してから、該透析液を上記補液通路5を介して血液回路3へと供給するようになっている。
ここで、上記第2透析液フィルタ63の流入側の空間63bは、上記接続通路61の流入区間61Aを介して透析液供給通路23と接続され、上記第1透析液フィルタ41の排出側の空間41cと連通されている。
また、上記接続通路61における、第2透析液フィルタ63の排出側の空間63cと透析液回収通路24とを連通させる排出区間61Bは、該第2透析液フィルタ63のリークチェックを行うための第2検査用通路として使用され、リークチェックを行う際にはこの排出側の空間63cを介して上記透析液回収通路24へと透析液を排出するようになっている。
さらに上記第2透析液フィルタ63における流入側の空間63bには、濾過膜63aの洗浄(フラッシング)を行うための第3バイパス通路65が接続され、この第3バイパス通路65の他端は上記透析液回収通路24に接続されるとともに、制御手段1aによって制御される第6開閉弁V14が設けられている。
また、透析液回収通路24には、接続通路61の接続位置よりも透析器2側(カプラ24A側)に、上記制御手段1aによって制御される第7開閉弁V15が設けられている。
【0018】
以下、上記構成を有する血液透析装置1の使用方法を、図2〜図5を用いて説明する。ここでは透析治療を行う前に、上記第1、第2透析液フィルタ41、63の濾過膜の漏れを検査するリークチェックを行う際の操作方法を説明する。
血液透析装置1は、前回の治療後の洗浄によるすすぎ液が透析液回路4を満たしており、透析器2、血液回路4、補液通路5は接続されておらず、透析液供給通路23と透析液回収通路24は、上記カプラ23A、24Aによって相互に連通した状態にある。
制御手段1aは上記給液弁V1,V2、供給弁V3,V4、回収弁V8,V9、排液弁V11,V12のすべてを閉鎖した状態において、上記透析液供給通路23の第1開閉弁V5を閉鎖し、第1バイパス通路43の第2開閉弁V6を開放し、第2バイパス通路55の第4開閉弁V10を開放し、接続通路61の第5開閉弁V13を閉鎖する。
なお以下の説明において、上記第3バイパス通路65の第6開閉弁V14、透析液回収通路24の第7開閉弁V15は常時閉鎖されているものとする。
さらに、上記制御手段1aは、上記開放手段42における上記第3開閉弁V7を開放し、これにより開放手段42に連通している上記第1透析液フィルタ41の排出側の空間41cは大気解放されることとなる。
この状態で透析液ポンプ52を作動させると、透析液回路4の液は図2に太線で示した経路で排液され、第1透析液フィルタ41の流入側の空間41bから液が吸引され、濾過膜41aを通して流出側の空間41eからも液が吸引される。
しかしながら、空気は上記濾過膜41aを通過することができないことから、さらに上記透析液ポンプ52が流入側の空間41bから液を吸引しようとすることで、流入側の空間41bの陰圧と排出側の空間41cの大気圧との差圧が増大することとなる。
【0019】
図3は上記透析液回収通路24に設けた圧力センサ51が検出する透析液の圧力の推移をグラフにしたものとなっており、横軸が時間、縦軸が透析液の圧力を示している。
図3に示すように、上記透析液ポンプ52によって液を送液すると、透析液回路4の内部をある程度の陰圧にすることができるものの、上記透析液ポンプ52を構成するギアポンプは液の流通しない状態では使用できず、さらに低圧の陰圧を発生させることはできない。
そこで、上記透析液ポンプ52によって透析液回収通路24内の圧力が所定の第1陰圧(例えば−150Torr)まで減圧され、これを上記圧力センサ51が検出すると、上記制御手段1aは透析液ポンプ52を停止させ、続いて上記除水通路56の除水ポンプ57を作動させる。
図4に示すように、除水ポンプ57が残りの液を除水通路56を介して排液通路26に排液すると、さらに空間41bが吸引される。上述したように上記除水ポンプ57はさらに低圧の陰圧を発生させることができることから、上記第1透析液フィルタ41における流入側の空間41bの陰圧と排出側の空間41cの大気圧との差圧をさらに増大させることができる。
その結果、図3に示すように透析液回路4における陰圧を上記第1陰圧よりも低圧の所定の第2陰圧(例えば−300Torr)まで減圧することができ、上記圧力センサ51が当該第2陰圧を検出すると、制御手段1aは除水ポンプ57を停止させる。
制御手段1aは、このように上記透析液ポンプ52および除水ポンプ57が停止した液の流通しない静止状態を所定時間維持し、その間の圧力変動を監視する。
そして判定手段54は、上記静止状態の間、上記第2陰圧が維持されれば、上記濾過膜41aにおいて空気が排出側の空間41cから流入側の空間41bへと漏れていないものとして、上記第1透析液フィルタ41に漏れがないものと判定する。
一方、想像線で示すように静止状態の間に第2陰圧が陽圧側に上昇するような圧力変動が検出されると、判定手段54は上記濾過膜41aにおいて空気が排出側の空間41cから流入側の空間41bへと漏れているとして、上記第1透析液フィルタ41に漏れが存在するものとして不良と判定する。
そして制御手段1aは、このような第1透析液フィルタ41のリークチェックの結果を上記操作パネル1cに表示するともに、漏れが検出された場合には所定の警告を発生させる。
【0020】
このようにして第1透析液フィルタ41のリークチェックが終了すると、制御手段1aの制御により続いて上記第2透析液フィルタ63のリークチェックが行われる。
制御手段1aは、上記透析液供給通路23の第1開閉弁V5を開放し、上記第1バイパス通路43の第2開閉弁V6を閉鎖し、接続通路61の第5開閉弁V13を開放する。
この状態から制御手段1aは上記透析液ポンプ52を作動させると、図5に示した経路で排液され、第2透析液フィルタ63の流出側の空間63cから液が吸引され、濾過膜63aを通して流入側の空間63bからも液が吸引される。
しかしながら、空気は上記濾過膜63aを通過することができないことから、さらに上記透析液ポンプ52が排出側の空間63cから液を吸引しようとすることで、流入側の空間63bの大気圧と排出側の空間63cの陰圧との差圧が増大することとなる。
その後は、上記第1透析液フィルタ41のリークチェックを行った際と同様に、制御手段1aは透析液回収通路24内の圧力が上記第1陰圧まで減圧された時点で透析液ポンプ52を停止し、上記除水ポンプ57を作動させ、上記第2陰圧まで減圧されると除水ポンプ57を停止させて上記静止状態を維持する。
そして上記制御手段1aに設けた判定手段54は、この静止状態における透析液回収通路24内の圧力変動を監視して、第2透析液フィルタ63の漏れの有無を判定する。
【0021】
上記実施例によると、第1、第2透析液フィルタ41、63のリークチェックを行うために流入側の空間41b、63bと排出側の空間41c、63cとの間に差圧を発生させているが、その際に上記透析液ポンプ52によって第1陰圧まで減圧してから、上記除水ポンプ57によって第2陰圧まで減圧することで、正確かつ迅速な判定を行うことが可能となっている。
つまり、上記透析液ポンプ52は十分な陰圧を発生することができないものの、透析液の送液能力が高いことから、除水ポンプ57のみで第2陰圧まで減圧する場合に比べて迅速に減圧することができる。
一方、上記除水ポンプ57は送液能力が低いものの、十分な陰圧を発生することができることから、上記透析液回収通路24内の圧力を第2陰圧まで減圧することにより第1、第2透析液フィルタ41,63の内部にで濾過膜41a、63aを挟んで十分な差圧を発生させ、透析液ポンプ52のみで陰圧を発生させる場合に比べて確実にリークチェックを行うことができる。
また本実施例の場合、透析液供給通路23における第1、第2透析液フィルタ41、63の間に上記開放手段42を設けており、これにより上記第1、第2透析液フィルタ41、63のリークチェックを行う際の大気開放を、1つの開放手段42によって兼用することが可能となっている。
つまり、上記実施例において例えば第2透析液フィルタ63において、第1透析液フィルタ41のリークチェック時と同様、排出側の空間63cを大気開放するような構成とすることも可能であるが、その場合には例えば透析液回収通路24に別途開放手段を設ける必要がある。
【0022】
上記実施例における血液透析装置1はいわゆる個人用透析装置となっているが、透析液供給装置から供給される透析液を用いて血液透析を行ういわゆる透析用監視装置であっても良く、また、プランジャポンプとは異なる除水手段を備えたものであっても良い。
具体的に説明すると、図6は第2実施例にかかる血液透析装置1を示し、この血液透析装置1における透析液回路4には、それぞれ2枚のダイアフラムによって3つの部屋に区画された第1、第2透析液チャンバ21、22が設けられており、これら第1、第2透析液チャンバ21、22には、上記新鮮透析液を供給するための上記供給室21a,22aと使用済み透析液を回収するための回収室21b、22bとシリコーンオイルが充填され中間室21c、22cが形成されており、これら中間室21cと中間室22cとの間には各中間室21c、22c間でシリコーンオイルを送液させる除水手段としてのシリコーンオイルポンプ71が設けられている。
例えばシリコーンオイルポンプ71が第1透析液チャンバ21の中間室21cから第2透析液チャンバ22の中間室22cへとシリコーンオイルを送液すると、上記中間室21cの容積が減少してその分だけ回収室21bの容積が増大するため、これにより透析液回収通路24が減圧され、透析器2では血液から透析液へと除水が行われるものとなっている。
【0023】
そして、このような構成を有する除水手段を備えた血液透析装置1において上記第1、第2透析液フィルタ41、63のリークチェックを行う場合、まずは上記第1実施例と同様、透析液ポンプ52を用いて第1透析液フィルタ41の流入側の空間41bおよび流出側の空間41cから液を吸引し、透析液回収通路24内を第1陰圧まで減圧する。
この状態から図6に示した例では、第2透析液チャンバ22の回収弁V9と第1透析液チャンバ21の排液弁V11を開放し、上記シリコーンオイルポンプ71を作動させ、中間室22cから中間室21cへシリコーンオイルを移動させて透析液回収通路24内をさらに減圧し、上記第1陰圧よりも低圧の第2陰圧まで減圧する。
そして上記実施例同様、上記制御手段1aの判定手段54は第1透析液フィルタ41の漏れの有無の判定を行う。さらに、上記第1実施例および本実施例の第1透析液フィルタ41における場合と同様にして、第2透析液フィルタ63の漏れの有無の判定を行うことができる。
【0024】
なお、上記実施例では透析液ポンプ52を停止させてから除水ポンプ57やシリコーンオイルポンプ71を作動させているが、透析液ポンプ52の作動中からこれらを作動させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0025】
1 血液透析装置 1a 制御手段
2 透析器 3 血液回路
4 透析液回路 5 補液通路
11 動脈側通路 12 静脈側通路
23 透析液供給通路 24 透析液回収通路
41 第1透析液フィルタ 41a 濾過膜
41b 流入側の空間 41c 排出側の空間
42 開放手段
43 第1バイパス通路(第1検査用通路)
51 圧力センサ(圧力検出手段) 52 透析液ポンプ
54 判定手段 57 除水ポンプ
61 接続通路 61B 排出区間(第2検査用通路)
63 第2透析液フィルタ 63a 濾過膜
63b 流入側の空間 63c 排出側の空間
71 シリコーンオイルポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液透析を行う透析器と、新鮮な透析液を透析器に供給する透析液供給通路および上記透析器を通過した使用済みの透析液を回収する透析液回収通路からなる透析液回路と、上記透析液回収通路に設けられて上記使用済みの透析液を送液する透析液ポンプと、透析器を介して血液から除水をするための除水手段と、内部が濾過膜により流入側の空間と排出側の空間とに区画されて上記透析液供給通路から流入する新鮮な透析液を浄化して排出する透析液フィルタと、上記透析液ポンプおよび除水手段の作動を制御する制御手段とを備えた血液透析装置において、
上記透析液フィルタの流入側の空間または排出側の空間のいずれか一方の空間と上記透析液回収通路とを接続する検査用通路と、上記透析液フィルタの上記一方の空間とは反対側の他方の空間を大気開放する開放手段と、上記一方の空間の圧力変動を検出する圧力検出手段と、該圧力検出手段の検出結果に基づいて透析液フィルタの良否を判定する判定手段とを備え、
上記透析液フィルタの良否を判定する際には、上記制御手段は、上記開放手段により上記他方の空間を大気開放するとともに、上記透析液ポンプを作動させて上記検査用通路を介して上記一方の空間内の液を吸引し、上記圧力検出手段によって所定の第1陰圧まで減圧されたことが検出されると上記透析液ポンプを停止し、引き続き上記除水手段により上記一方の空間内から吸引して、該一方の空間が上記第1陰圧よりも低圧の所定の第2陰圧まで減圧されたことが上記圧力検出手段により検出されると、上記除水手段の作動を停止し、
上記判定手段は、第2陰圧まで減圧された上記一方の空間内の圧力変動を上記圧力検出手段により監視し、圧力の上昇が検出された場合には、透析液フィルタが不良であると判定することを特徴とする血液透析装置。
【請求項2】
上記透析液フィルタとして、上流側に位置する第1フィルタと下流側に位置する第2フィルタを備え、
上記第1フィルタの流入側の空間と透析液回収通路とを第1検査用通路によって接続するとともに、上記第2フィルタの排出側の空間と透析液回収通路とを第2検査用通路によって接続し、また上記第1フィルタの排出側の空間と上記第2フィルタの流入側の空間とを上記透析液供給通路により連通させて、
該第1フィルタと第2フィルタとの間の透析液供給通路に、上記開放手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載の血液透析装置。
【請求項3】
上記透析液回収通路から使用済み透析液を回収する透析液チャンバと、該透析液チャンバから使用済み透析液を排液させる排液通路とを備え、
上記透析液回収通路における上記透析液ポンプと上記透析液チャンバとの間に上記排液通路と連通する分岐通路を設け、
上記透析液フィルタの良否を判定する際には、上記透析液ポンプにより吸引した液を該分岐通路から排液通路へと排液させることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の血液透析装置。
【請求項4】
透析液を給排する2つの透析液チャンバを備え、各透析液チャンバの内部は、新鮮な透析液を供給するための供給室と、使用済みの透析液を回収するための回収室と、これら供給室と回収室との間に形成されてシリコーンオイルの充填された中間室とに区画され、
さらに上記2つの透析液チャンバにおける各中間室間でシリコーンオイルを送液させるシリコーンオイルポンプを備え、
上記除水手段として、上記シリコーンオイルポンプによって中間室の容積を変化させて除水することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の血液透析装置。
【請求項5】
上記透析液回収通路に除水通路を接続するとともに、該除水通路に使用済み透析液を排出させる除水ポンプを備え、
上記除水手段として、上記除水ポンプによって除水することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の血液透析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−191992(P2012−191992A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56611(P2011−56611)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000253019)澁谷工業株式会社 (503)
【Fターム(参考)】