説明

血液酸素加装置

【課題】ガス交換能力を向上できる血液酸素加装置を提供する。
【解決手段】血液酸素加装置1は、血液に酸素を加えるとともに血液中の二酸化炭素を除去するガス交換を行う酸素付加部2と、筒状に形成された本体部5を持ち、酸素付加部2を収容するハウジング4とを備え、ハウジング4には、酸素付加部2の外周側から血液を流入させる血液流入部21と、本体部5の内周面よりも内側に位置し、酸素付加部2を経由した血液を流出させる血液流出部22とが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液に酸素を加えるとともに血液中の二酸化炭素を除去するガス交換を行う酸素付加部を備えた血液酸素加装置に関する。
【背景技術】
【0002】
血液を体外で循環させる体外循環回路に用いられる血液酸素加装置として、酸素付加部が収容されたハウジングの中心から血液を流入させて血液を放射状に流れるようにし、酸素付加部によりガス交換が行われた血液をハウジングの外周側から流出させる装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、他の血液酸素加装置としては、酸素付加部が収容された直方体のハウジングの一方の側面から血液を流入させて血液が直線的に流れるようにし、酸素付加部を通過した血液を反対側の他方の側面から流出させる装置も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−306592号公報
【特許文献2】特開2010−200884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
血液の酸素飽和度は、ガス交換を行う酸素付加部と血液との接触時間の経過とともに上昇し、その上昇速度は接触時間の経過とともに遅くなる。したがって、血液酸素加装置のガス交換能力を高めるには酸素飽和度の低い状態の血液をできるだけ長く酸素付加部に接触させることが有利である。特許文献1の装置のように、血液がハウジングの中心から放射状に流れるタイプの装置は血液の流路断面積がハウジングの中心から外側へ離れるほど広がる。そのため、このタイプの血液酸素加装置はハウジング内の血液の流速が中心から外側へ離れるほど遅くなる流速分布を有する。この流速分布を考慮した場合、ハウジングの中心に配置された入口の近くに存在し酸素飽和度が低い状態の血液と、酸素付加部との接触時間を稼ぎにくい。
【0005】
そこで、本発明は、ガス交換能力を向上できる血液酸素加装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の血液酸素加装置は、血液に酸素を加えるとともに血液中の二酸化炭素を除去するガス交換を行う酸素付加部と、筒状に形成された本体部を持ち、前記酸素付加部を収容するハウジングとを備え、前記ハウジングには、前記酸素付加部の外周側から血液を流入させる血液流入口と、前記本体部の内周面よりも内側に位置し、前記酸素付加部を経由した血液を流出させる血液流出口とが形成されているものである(請求項1)。
【0007】
この血液酸素加装置によれば、酸素付加部の外周側から血液が流入して、ハウジングの本体部の内周面よりも内側から血液が流出する。すなわち、ハウジング内の血液の流れが外周側から内側へ向かう。したがって、血液の流路断面積が本体部の中央に近づくほど狭まる。そのため、この血液酸素加装置は、ハウジング内の血液の流速が内側に向かうに従って速まる流速分布を持つ。これにより、酸素付加部の外周側の流速が内側の流速よりも遅くなるので、血液流入口に近く酸素飽和度が低い状態の血液と酸素付加部との接触時間を稼ぐことが容易になる。したがって、本発明の血液酸素加装置は、血液がハウジングの中心から放射状に流れるタイプの血液酸素加装置と同じ流量で血液を処理した場合と比べて、ガス交換能力を向上させることができる。血液処理に伴う圧損上昇は酸素付加部の入口付近に微小な血栓が付着することが原因の一つとして考えられる。本発明の血液酸素加装置は、酸素付加部の入口側の通路断面積が広いので血栓が付着し難い。このため、血液処理に伴う圧損を低減することができる。
【0008】
本発明の血液酸素加装置の一態様として、前記ハウジングの前記本体部が円筒状に形成され、かつ前記血液流出口が前記本体部の中心線上に位置してもよい(請求項2)。この態様によれば、ハウジングの本体部が円筒状に形成され、かつ血液流出口が本体部の中心線上に位置しているので、ハウジング内の流れが偏り難くなる。そのため、酸素付加部のガス交換能力を効率よく発揮させることができる。
【0009】
この態様においては、前記酸素付加部に対して血液が斜め方向に流入するように、前記血液流入口が前記ハウジングに形成されてもよい(請求項3)。この場合は、流入した血液が酸素付加部の一部に集中することを回避して酸素付加部の外周に回り込み易くなるので、酸素付加部の全域でガス交換が行われ易くなる。
【0010】
また、前記血液流入口が前記中心線の方向の一端側に、前記血液流出口が前記中心線の方向の他端側にそれぞれ位置するように、前記血液流入口及び前記血液流出口が前記ハウジングに形成されてもよい(請求項4)。この場合には、血液流入口及び血液流出口が中心線方向に関して互いに離れるため、中心線方向に関する血液の流れの偏りが低減する。このため、中心線方向に関する酸素付加部の使用領域に偏りが生じ難い。
【0011】
本発明の血液酸素加装置の一態様として、前記酸素付加部を囲むように形成され、血液と熱媒体との間で熱交換を行う熱交換部を更に備え、前記熱交換部が前記ハウジングに収容されてもよい(請求項5)。この態様によれば、ハウジングに流入した血液の温度調整を熱交換部で行いつつガス交換を酸素付加部で行うことができる。
【0012】
この態様においては、前記ハウジングの前記本体部が円筒状に形成され、前記酸素付加部及び前記熱交換部のそれぞれが円筒状に形成され、かつ前記本体部の中心線を基準とした同心状に配置され、前記血液流出口が前記中心線上に位置してもよい(請求項6)。この態様によれば、ハウジングの本体部が円筒状に形成され、かつ血液流出口が本体部の中心線上に位置しているので、ハウジング内の流れが偏り難くなる。しかも、酸素付加部と熱交換部とが同心状に配置されているため、酸素付加部のガス交換能力及び熱交換部の熱交換能力のそれぞれを十分に発揮させることができる。
【0013】
また、前記熱交換部の外周側を覆うように配置され、血液に含まれる気泡を捕捉する気泡捕捉部材を更に備えてもよい(請求項7)。この場合には、血液流入口から流入した血液に含まれる気泡を気泡捕捉部材にて除去できるので、熱交換部及び酸素付加部にて処理された血液内に気泡が混入することを防止できる。特に、熱交換部として、熱媒体が供給される多数の管が並べられて互いに接続されたシート状の管集合体の外部に血液を流して熱交換を行う外部灌流型の熱交換部を適用した場合、管集合体に含まれる管と管とが重なり合う箇所に気泡が付着するとその気泡の除去が困難である。気泡捕捉部材は血液が熱交換部に流入する前に気泡を捕捉できるので、気泡の除去が困難な上記箇所に気泡が付着することを未然に防止できる。気泡捕捉部材は、熱交換部の外側に配置されるため、例えば熱交換部の内側などに配置される場合に比べて表面積を確保することが容易である。すなわち、気泡捕捉部材に対してプリーツ加工等の表面積を拡大させる処理を行わずとも十分な表面積を確保できる。
【0014】
この場合、前記気泡捕捉部材と前記ハウジングとの間には、前記本体部の内周面に沿って延びている空間が形成されており、前記ハウジングには、前記空間と通じる気泡排出口が形成されてもよい(請求項8)。この場合、気泡捕捉部材で捕捉された気泡を上記空間に集めて気泡排出口から外部に逃がすことができる。このため、気泡捕捉部材で捕捉された気泡がハウジング内に過剰に溜まることを防止できる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明の血液酸素加装置によれば、ハウジング内の血液の流れが外周側から内側へ向かい、酸素付加部の外周側の流速が内側の流速よりも遅くなるので、血液流入口に近く酸素飽和度が低い状態の血液と酸素付加部との接触時間を稼ぐことが容易になる。これにより、血液がハウジングの中心から放射状に流れるタイプの血液酸素加装置と同じ流量で血液を処理した場合よりも、ガス交換能力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一形態に係る血液酸素加装置の外観を示した斜視図。
【図2】図3のII−II線に沿った血液酸素加装置の断面図。
【図3】図2のIII−III線に沿った血液酸素加装置の断面図。
【図4】ハウジング内を流れる各種流体の流れの経路を示した説明図。
【図5】ハウジング内の血液の流速分布の一例を示した説明図。
【図6】血液と酸素付加部との接触時間と、血液の酸素飽和率との関係を示した説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1〜図3に示された血液酸素加装置1は、補助循環や開心術等のために血液を体外で循環させる体外循環回路に組み込まれて人工肺として機能する。血液酸素加装置1は血液に酸素を加えるとともに血液中の二酸化炭素を除去するガス交換を行う酸素付加部2と、血液と熱媒体との間で熱交換を行い血液の温度を調整する熱交換部3とを有する。酸素付加部2及び熱交換部3はハウジング4に収容されている。ハウジング4は、円筒状に形成された本体部5と、本体部5の上部を塞ぐ上蓋6と、本体部5の下部を塞ぐ下蓋7とを有している。酸素付加部2及び熱交換部3は本体部5の中心線CLを基準とした同心状に配置されている。なお、中心線CLは本体部5の円筒部分に関する中心線である。即ち、中心線CLの位置は、本体部5のうち円筒部分から径方向に突出する血液流入部21等(図3参照)の存在が考慮されずに設定されている。
【0018】
酸素付加部2は円筒状のコア10の外周に中空糸膜11が巻き付けられることにより全体として円筒状に形成される。酸素付加部2の中空糸膜11は、周知のように疎水性及び通気性を有する多数の中空糸の集合体として構成される。このように構成された酸素付加部2に酸素飽和度の低い状態の血液が接触すると、中空糸膜11を通じて酸素が血液に拡散し、血液内の二酸化炭素が中空糸膜11の内部へ除去されるためガス交換ができる。コア10には血液を通過させる複数の通過孔10aが周方向に並ぶように形成されており、各通過孔10aはコア10の半径方向に延びてコア10を貫通する。また、図3に示したように、コア10の外周には、酸素付加部2を経由した血液を各通過孔10aへ誘導する複数の誘導溝10bが周方向に並ぶように形成されており、各誘導溝10bは中心線CLと平行に上下方向に延びている。
【0019】
熱交換部3はいわゆる外部灌流型の熱交換部として構成されている。熱交換部3は樹脂製の多数の樹脂管(不図示)が並べられて互いに接続されたシート状の管集合体15を有している。熱交換部3はその管集合体15が丸められた状態で酸素付加部2の外周に装着されたスペーサ16にて支持されることによって全体として円筒状に形成される。熱交換部3の各樹脂管には熱媒体が供給される。したがって、血液が樹脂管の外部を流れることにより、その血液と樹脂管の内部を流れる熱媒体との間で熱交換が行われる。なお、熱媒体としては例えば水が使用される。この水温を調整することにより血液の冷却や保温及び加温が行われる。スペーサ16は酸素付加部2と熱交換部3との間隔を維持する機能を持つとともに、血液の通過を許容できるように網目状に形成されている。
【0020】
血液酸素加装置1は、血液に含まれる気泡を捕捉する気泡捕捉部材としてのスクリーン18を更に備えている。スクリーン18は赤血球等の血液成分を通過させるが気泡を通過させない程度の大きさを有する細孔が多数形成されたシート状部材であり、ポリエチレンテレフタレート等のプラスチックを素材として形成されている。スクリーン18の細孔の大きさは20〜30μmの範囲内に調整されている。スクリーン18は熱交換部3の外周側を覆うように配置されていて、熱交換部3の外周面に接触している。外部灌流型の場合は、樹脂管同士が重なる箇所に気泡が付着するとその気泡の除去が困難である。スクリーン18が熱交換部3の外周側に配置されることで血液が熱交換部3に流入する前に気泡を捕捉できるので、気泡の除去が困難な上記箇所に気泡が付着することを未然に防止できる。また、スクリーン18は熱交換部3の内側などに配置される場合に比べて表面積を確保することが容易である。すなわち、スクリーン18に対してプリーツ加工等の表面積を拡大させる処理を行わずとも十分な表面積を確保できる。したがって、スクリーン18としてはプリーツ等のない平坦なものを採用できる。ハウジング4の本体部5の内周面とスクリーン18との間にはその内周面に沿って延びている空間Sが形成されており、その空間Sは気泡排出口19に接続されている。したがって、スクリーン18に捕捉された気泡は空間Sを介して気泡排出口19から排出されるため、ハウジング4内に気泡が過剰に溜まることを防止できる。
【0021】
図2に示したように、互いに組み合わされた酸素付加部2、スペーサ16、熱交換部3及びスクリーン18はハウジング4の本体部5に収められた状態で、これらの上部及び下部がポリリウレタン製のシール材20にてそれぞれ封止される。ただし、酸素付加部2の中空糸膜11に酸素を供給するため、中空糸膜11の各中空糸はシール材20の上端面20a及び下端面20bのそれぞれに開口する。同様に、熱交換部3の管集合体15に熱媒体を供給するため、管集合体15の各樹脂管はシール材20の上端面20a及び下端面20bのそれぞれに開口する。
【0022】
ハウジング4には、その内部に血液を流入させる血液流入部21と血液を外部に流出させる血液流出部22とがそれぞれ形成されている。血液流入部21は本体部5の下端部に配置され、酸素付加部2や熱交換部3に対して斜め方向に血液が流入するように開口している(図3参照)。そのため、流入した血液が酸素付加部2又は熱交換部3の一部に集中することを回避してこれらの外周に回り込み易くなる。したがって、酸素付加部2の全域でガス交換が行われ易くなるとともに、熱交換部3の全域で熱交換が行われ易くなる。血液流入部21の開口部が血液流入口に相当する。なお、血液流入部21には不図示の血液送血ポンプからの回路が接続される。
【0023】
図2に示すように、血液流出部22はハウジング4とは別部品である。血液流出部22は、酸素付加部2のコア10の上部に形成された窪み10cに嵌め込まれた状態でドーナツ状の上蓋6が本体部5に装着されることによって、ハウジング4に取り付けられかつ本体部5の中心線CL上に位置決めされる。血液流出部22はコア10の通過孔10aの近辺に開口し、その開口部が血液流出口に相当する。ハウジング4の本体部5が円筒状に形成され、かつ血液流出部22が本体部5の中心線CL上に位置しているので、ハウジング4内の流れが偏り難くなる。しかも、酸素付加部2及び熱交換部3が中心線CLを基準とした同心状に配置されているので、酸素付加部2のガス交換能力及び熱交換部3の熱交換能力のそれぞれを効率よく発揮させることができる。なお、図1に示したように、血液流出部22は大小2つの出口22a、22bを有し、小さい出口22aは心筋保護回路等に接続され、大きい出口22bは患者送血回路に接続される。各出口22a、22bには血液流入部21に取り付けられた回路チューブとの接続部品21a(図1参照)が同様に取り付けられる。
【0024】
図1に示されたように、血液流入部21がハウジング4の下端部に、血液流出部22がハウジング4の上部にそれぞれ配置されて、これらがハウジング4の上下方向に関して互いに離れている。そのため、ハウジング4の上下方向(中心線方向)に関する血液の流れの偏りが低減するため、中心線CL方向に関する酸素付加部2の使用領域に偏りが生じ難い。
【0025】
図2に示すように、ハウジング4の上蓋6には、シール材20の上端面20aとの間に形成される空間を、酸素付加部2と通じるガス流出室30と、熱交換部3と通じる媒体流出室31とに区分する仕切壁6aが設けられている。仕切壁6aの端部はシール材20の上端面20aに食い込むように密着する。これによりガス流出室30と媒体流出室31とは完全に隔離される。同様に、ハウジング4の下蓋7には、シール材20の下端面20bとの間に形成される空間を、酸素付加部2と通じるガス流入室32と、熱交換部3と通じる媒体流入室33とに区分する仕切壁7aが設けられている。仕切壁7aの端部はシール材20の下端面20bに食い込むように密着している。これによりガス流入室32と媒体流入室33とは完全に隔離される。ガス流入室32にはガス流入口32aが、ガス流出室30にはガス流出口30aがそれぞれ形成されている。ハウジング4の下蓋7には媒体流入室33と通じる媒体流入部35が、ハウジング4の上蓋6には媒体流出室31と通じる媒体流出部36がそれぞれ形成されている。媒体流入部35及び媒体流出部36は不図示の媒体供給装置に接続されていて、これらが媒体供給装置に接続されることにより熱媒体の循環回路が形成される。
【0026】
以上の構成を有することによって、血液酸素加装置1は血液、ガス及び熱媒体の各種流体が図4に示した経路で流れる。すなわち、血液は実線の矢印で示すように、ハウジング4に形成された血液流入部21から酸素付加部2及び熱交換部3を含む血液処理ユニットの外周側へ流入し、ハウジング4の中央へ向かって熱交換部3及び酸素付加部2を通過する。酸素付加部2を通過する血液はコア10の誘導溝10b(図3も参照)に沿って上方に導かれる。誘導溝10bに導かれた血液はコア10の通過孔10aを通過して、血液流出部22の開口部に達し、各出口22a、22bから流出する。酸素付加部2に供給される酸素を含むガスは、破線の矢印で示すように、ガス流入口32aを介してガス流入室32に導かれ、ガス流入室32に開口する中空糸膜11の各中空糸に流入する。そのガスが中空糸を流れる間に酸素付加部2を通過する血液に対してガス交換が行われ、ガス交換後のガスはガス流出室30に導かれる。ガス流出室30に導かれたガスはガス流出口30aを介して流出する。熱媒体は、一点鎖線の矢印で示すように、媒体流入部35によって媒体流入室33に導かれ、媒体流入室33に開口する管集合体15の各樹脂管に流入する。その熱媒体が樹脂管を流れる間に熱交換部3を通過する血液と熱交換が行われ、熱交換後の熱媒体は媒体流出室31に導かれる。媒体流出室30に導かれた熱媒体は媒体流出部36から流出する。なお、破線の矢印で示したガスの流れ方向が逆向きとなるように、ガス流出室30とガス流入室32とを入れ替えて実施することもできる。同様に、一点鎖線の矢印で示した熱媒体の流れ方向が逆向きとなるように、媒体流出室31と媒体流入室33とを入れ替えて実施することもできる。
【0027】
血液酸素加装置1においては、ハウジング4内の血液の流れが外周側から内側へ向かう。したがって、血液の流路断面積がハウジング4の本体部5の中央に近づくほど狭まる。そのため、図5に示すように、血液酸素加装置1はハウジング4内の血液の流速が内側に向かうに従って速まる流速分布を持つ。また、図6に示すように、血液の酸素飽和率は酸素付加部2との接触時間の経過とともに上昇し、その上昇速度は接触時間の経過とともに遅くなる。血液酸素加装置1は、流速が中央よりも遅い外周側に血液流入部21が設けられているため、その血液流入部21に近く酸素飽和度が低い状態の血液(例えば図6の領域Aの血液)と酸素付加部2との接触時間を稼ぐことが容易になる。したがって、血液酸素加装置1は、血液がハウジングの中心から放射状に流れるタイプの血液酸素加装置と同じ流量で血液を処理した場合と比べて、ガス交換能力を向上させることができる。
【0028】
血液処理に伴う圧損上昇は酸素付加部2の入口付近に微小な血栓が付着することが原因の一つとして考えられる。血液酸素加装置1は、酸素付加部2の入口側の通路断面積が広いので血栓が付着しても有効な通路断面積に余裕がある。このため、血液処理に伴う圧損を低減することができる。
【0029】
本発明は上記形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内において種々の形態にて実施できる。上記形態はハウジング内に酸素付加部とともに熱交換部が収容されるものであるが、本発明はハウジング内に酸素付加部が単独で収容されている形態や、酸素付加部に熱交換機能が付加されていて、酸素付加部と熱交換部とを区別できないような形態として実施することも可能である。また、ハウジングの本体部が円筒状であることは一例にすぎない。筒状であればその横断面形状が矩形や楕円形等の他の形状でも構わない。酸素付加部及び熱交換部についても同様である。また、酸素付加部が中実状に形成されていても構わない。
【0030】
血液流出口の位置は必ずしも、ハウジングの中心に位置していなくてもよい。血液が外周側から内側に向かって流れる限りにおいて、血液流出口がハウジングの中心からずれた位置に配置されていてもよい。
【符号の説明】
【0031】
1 血液酸素加装置
2 酸素付加部
3 熱交換部
4 ハウジング
5 本体部
18 スクリーン(気泡捕捉部材)
19 気泡排出口
21 血液流入部(血液流入口)
22 血液流出部(血液流出口)
CL 中心線
S 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液に酸素を加えるとともに血液中の二酸化炭素を除去するガス交換を行う酸素付加部と、筒状に形成された本体部を持ち、前記酸素付加部を収容するハウジングとを備え、
前記ハウジングには、前記酸素付加部の外周側から血液を流入させる血液流入口と、前記本体部の内周面よりも内側に位置し、前記酸素付加部を経由した血液を流出させる血液流出口とが形成されている血液酸素加装置。
【請求項2】
前記ハウジングの前記本体部が円筒状に形成され、かつ前記血液流出口が前記本体部の中心線上に位置する請求項1の血液酸素加装置。
【請求項3】
前記酸素付加部に対して血液が斜め方向に流入するように、前記血液流入口が前記ハウジングに形成されている請求項2の血液酸素加装置。
【請求項4】
前記血液流入口が前記中心線の方向の一端側に、前記血液流出口が前記中心線の方向の他端側にそれぞれ位置するように、前記血液流入口及び前記血液流出口が前記ハウジングに形成されている請求項2又は3の血液酸素加装置。
【請求項5】
前記酸素付加部を囲むように形成され、血液と熱媒体との間で熱交換を行う熱交換部を更に備え、前記熱交換部が前記ハウジングに収容されている請求項1の血液酸素加装置。
【請求項6】
前記ハウジングの前記本体部が円筒状に形成され、
前記酸素付加部及び前記熱交換部のそれぞれが円筒状に形成され、かつ前記本体部の中心線を基準とした同心状に配置され、
前記血液流出口が前記中心線上に位置する請求項5の血液酸素加装置。
【請求項7】
前記熱交換部の外周側を覆うように配置され、血液に含まれる気泡を捕捉する気泡捕捉部材を更に備える請求項5の血液酸素加装置。
【請求項8】
前記気泡捕捉部材と前記ハウジングとの間には、前記本体部の内周面に沿って延びている空間が形成されており、
前記ハウジングには、前記空間と通じる気泡排出口が形成されている請求項7の血液酸素加装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−56027(P2013−56027A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195865(P2011−195865)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【出願人】(000200677)泉工医科工業株式会社 (56)
【Fターム(参考)】