説明

血清尿酸低減組成物

本発明は、プリン体に対する分解能を有し、血清尿酸値の低減作用を有する乳酸菌または酵母、およびこれらの微生物から選ばれる少なくとも1種を含有する組成物、殊に、飲食品または医薬品としての該組成物を提供するものであって、該組成物は、高尿酸血症の予防及び改善に有効である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、プリン体を分解して血清尿酸値の低減を図る作用を奏する新規な乳酸菌および酵母並びにこれらを含有する組成物(飲食品形態および医薬品形態)に関する。
【背景技術】
高尿酸血症は、血液中の尿酸値が正常範囲を越えて病的に高い異常な状態が続く疾患である。該高尿酸血症患者では、結晶化した尿酸が炎症を引き起こして激痛をもたらす痛風を初めとして、腎障害、尿路結石、心血管障害、脳血管障害などの惹起されるおそれが多分にある。また、高尿酸血症は、動脈硬化のリスクファクターの一つとも考えられている。
高尿酸血症は、体内における尿酸合成が亢進することにより、また腎臓や胆嚢から体外への尿酸の排泄が低下することにより起こると考えられている。尿酸は、生体に摂取されたアデノシン、グアノシンなどのプリン体が、体内細胞の新陳代謝、エネルギー消費などによって代謝されて生成する代謝産物(老廃物)である。従って、プリン体が多く含まれる食品を摂取することによって、血清尿酸値は上昇する。
高尿酸血症の治療・予防は、古くから、食事中のプリン体を制限する食事指導によって行われている。しかしながら、全ての動植物細胞はプリンを含んでおり、殆どの食品は、これらの動植物細胞を含むことから、プリン体を含んでいる。それ故、厳密なプリン体の摂取制限は、非常に困難であり、食事から摂取される栄養バランスの保持をも困難とする。また、プリン体の一つであるイノシン酸は旨味成分として知られており、プリン酸摂取制限は該イノシン酸の摂取制限をも意味し、食事の旨味を低下させる。このため、プリン体を制限する食事を長期間持続させることは不可能に近い。
【発明の開示】
本発明の目的は、新しい高尿酸血症の予防・治療法を確立すること、即ち、食事によるプリン体の摂取を制限するのではなくて、プリン体を分解する乳酸菌、酵母などの微生物を経口的に摂取させて、腸管内で食事から摂取されたプリン体を分解し、その体内への吸収を減少させ、かくして、血清尿酸値を低減させる新しい高尿酸血症の予防・治療方法を確立すること、並びにこの方法に有効な飲食品(発酵乳、乳酸菌飲料など)および医薬品を提供することにある。
本発明者は、上記目的を達成するために、まず、多種多数の微生物について、それらのプリン体分解能を検索した。次いで、検索されたプリン体分解能を有する微生物を実験動物に経口摂取させて、該実験動物の血清尿酸値を測定した。その結果、ある種の乳酸菌または酵母が、所望の血清尿酸値低減作用を奏するという新しい事実を見出した。本発明は、この知見を基礎として更に研究を重ねた結果、完成されたものである。
本発明は、下記項1−項9に記載の組成物、項10−項13に記載の微生物、項14−16に記載の血清尿酸値の低減方法および項17−19に記載の組成物などの使用を提供する。
項1.プリン体に対する分解能を有し、血清尿酸値の低減作用を有する乳酸菌および酵母からなる群から選ばれる少なくとも1種の微生物を含有する組成物。
項2.血清尿酸低減組成物である項1に記載の組成物。
項3.飲食品形態である請求項1または項2に記載の組成物。
項4.発酵乳、乳酸菌飲料、発酵野菜飲料、発酵果実飲料または発酵豆乳飲料である項3に記載の組成物。
項5.医薬組成物である項1または2に記載の組成物。
項6.微生物が、ラクトバチルス属に属する乳酸菌である項1−5のいずれかに記載の組成物。
項7.乳酸菌が、ラクトバチルスONRIC b0185(FERM BP−10004)、ラクトバチルスONRIC b0193(FERM BP−10005)、ラクトバチルスONRIC b0195(FERM BP−10006)およびラクトバチルスONRIC b0223(FERM BP−10007)からなる群から選択される少なくとも1種である項6に記載の組成物。
項8.微生物が、サッカロマイセス属に属する酵母である項1−5のいずれかに記載の組成物。
項9.酵母が、サッカロマイセスONRIC y0046(FERM BP−10008)である項8に記載の組成物。
項10.プリン体に対する分解能を有し、血清尿酸値の低減作用を有するラクトバチルス属に属する乳酸菌。
項11.ラクトバチルスONRIC b0185(FERM BP−10004)、ラクトバチルスONRIC b0193(FERM BP−10005)、ラクトバチルスONRIC b0195(FERM BP−10006)またはラクトバチルスONRIC b0223(FERM BP−10007)である項10に記載の乳酸菌。
項12.プリン体に対する分解能を有し、血清尿酸値の低減作用を有するサッカロマイセス属に属する酵母。
項13.サッカロマイセスONRIC y0046(FERM BP−10008)である項12に記載の酵母。
項14.血清尿酸値の低減処置を要求される患者に、項1−9のいずれかに記載の組成物を摂取させる、血清尿酸値の低減方法。
項15.血清尿酸値の低減処置を要求される患者に、項10または項11に記載の乳酸菌を摂取させる、血清尿酸値の低減方法。
項16.血清尿酸値の低減処置を要求される患者に、項12または項13に記載の酵母を摂取させる、血清尿酸値の低減方法。
項17.血清尿酸値の低減のための項1−9のいずれかに記載の組成物の使用。
項18.請求項1−9のいずれかに記載の組成物の製造のための項10または項11に記載の乳酸菌の使用。
項19.請求項1−9のいずれかに記載の組成物の製造のための項12または項13に記載の酵母の使用。
本発明血清尿酸低減組成物の有効成分は、プリン体に対する分解能を有し、これに基づいて血清尿酸値低減作用を有する乳酸菌または酵母であることを必須とする。該乳酸菌または酵母は、後述するスクリーニング法により、天然物から分離・採取することができる。
本明細書において「乳酸菌」とは、乳酸発酵ができる微生物を指す。該微生物中、乳酸菌には、ラクトバチラス属、ラクトコッカス属、ストレプトッコカス属、エンテロコッカス属、ビフィドバクテリウム属、ペディオコッカス属およびリューコノストック属に属する乳酸菌が包含される。また、酵母には、サッカロマイセス属に属する酵母が包含される。
プリン体を分解して血清尿酸値を低減させる作用を有する乳酸菌または酵母の好ましい例としては、ラクトバチルス属、ペディオコッカス属およびリューコノストック属に属する乳酸菌およびサッカロマイセス属に属する酵母を挙げることができる。これらの内でも本発明者らが新たにスクリーニングし且つ寄託したラクトバチルスONRIC b0185(FERM BP−10004)、ラクトバチルスONRIC b0193(FERM BP−10005)、ラクトバチルスONRIC b0195(FERM BP−10006)、ラクトバチルスONRIC b0223(FERM BP−10007)およびサッカロマイセスONRIC y0046(FERM BP−10008)は、特に好ましい。
本明細書においてプリン体とは、プリン骨格を有する物質をいい、これには代表的にはプリンヌクレオチド、プリンヌクレオシドおよびプリン塩基が含まれる。プリンヌクレオチドには、アデニル酸、グアニル酸、イノシン酸などが含まれる。プリンヌクレオシドには、アデノシン、グアノシンおよびイノシンが含まれる。プリン塩基には、アデニン、グアニン、ヒポキサンチンおよびキサンチンが含まれる。また、プリン体には、核酸(AおよびG)を含むオリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチドも包含される。
以下、本発明に係る乳酸菌または酵母およびそれらを含む本発明血清尿酸低減組成物につき詳述する。
(1)微生物のスクリーニング
(1−1)起源微生物
起源微生物としては、大塚製薬株式会社大津栄養製品研究所で保存しており、ヒト腸内容物、植物性発酵物および動物性食品発酵物から分離された乳酸菌および酵母を利用する。
(1−2)スクリーニング方法
目的とする乳酸菌および酵母のスクリーニングは、(1)プリン体(イノシン、グアノシン、ヒポキサンチン、キサンチン)に対する分解能、および(2)高尿酸モデルラットの血清尿酸値低下作用を指標として実施する。該スクリーニングの各操作などの詳細は、例えば後記する実施例1および2に示すとおりである。
(2)スクリーニングされた微生物
(2−1)L.fermentum ONRIC b0185
(a)肉眼的特徴
(a−1) MRS寒天培地
円形からやや不規則、低凸状隆起、平滑からやや粗造、中央部白色、周縁部白色から無色。
(a−2) BL寒天培地
不規則,低凸状隆起、平滑からやや粗造、中央部黄褐色,周縁部白褐色。
(b) 顕微鏡的特徴
桿菌で運動性を持たない。芽胞は形成しない。
(c) 生育温度
30〜37℃で良好に生育する。
(d) 生理学的、生化学的特徴
グラム染色性 +
Glycerol −
Erythritol −
D−Arabinose −
L−Arabinose +
Ribose +
D−Xylose +
L−Xylose −
Adonitol −
β−Methyl−D−Xyloside −
Galactose +
D−Glucose +
D−Fructose +
D−Mannose ±
L−Sorbose −
Rhamnose −
Dulcitol −
Inositol −
Mannitol ±
Sorbitol −
α−Methyl−D−Mannoside −
α−Methyl−D−Glucoside −
N−Acetyl−Glucosamine −
Amygdalin −
Arbutin −
Esculin −
Salicin −
Cellobiose −
Maltose +
Lactose +
Melibiose +
Saccharose +
Trehalose +
Inulin −
Melezitose −
D−Raffinose +
Starch −
Glycogen −
Xylitol −
β−Gentiobiose −
D−Turanose −
D−Lyxose −
D−Tagatose −
D−Fucose −
L−Fucose −
D−Arabitol −
L−Arabitol −
Gluconate +
2−Keto−Gluconate −
5−Keto−Gluconate −
以上の諸性質から、バージィーズ・マニュアル・オブ・システマティック・バクテリオロジー(Bergey’s Manual of Systematic Bacteriology)に照らし、本菌株をLactobacillus fermentumに属する菌株と同定し、Lactobacillus ONRIC b0185と命名した。該菌株は、平成15年4月15日に、日本国茨城県つくば市東1−1−1 中央第6に住所を有する独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに、寄託番号FERM P−19312として寄託された。また、このものは平成16年4月7日に国際寄託に移管されており、その寄託番号はFERM BP−10004である。
(2−2)L.fermentum ONRIC b0193
(a) 肉眼的特徴
(a−1) MRS寒天培地
円形,円錐、平滑からやや粗造、白色。
(a−2) BL寒天培地
円形,凸状隆起、平滑からやや粗造、褐色。
(b) 顕微鏡的特徴
桿菌で運動性を持たない。芽胞は形成しない。
(c) 生育温度
30〜37℃で良好に生育する。
(d) 生理学的、生化学的特徴
グラム染色性 +
Glycerol −
Erythritol −
D−Arabinose −
L−Arabinose −
Ribose +
D−Xylose ±
L−Xylose −
Adonitol −
β−Methyl−D−Xyloside −
Galactose +
D−Glucose +
D−Fructose +
D−Mannose +
L−Sorbose −
Rhamnose −
Dulcitol −
Inositol −
Mannitol −
Sorbitol −
α−Methyl−D−Mannoside −
α−Methyl−D−Glucoside −
N−Acetyl−Glucosamine −
Amygdalin −
Arbutin −
Esculin −
Salicin −
Cellobiose −
Maltose +
Lactose +
Melibiose +
Saccharose +
Trehalose −
Inulin −
Melezitose −
D−Raffinose +
Starch −
Glycogen −
Xylitol −
β−Gentiobiose −
D−Turanose −
D−Lyxose −
D−Tagatose −
D−Fucose −
L−Fucose −
D−Arabitol −
L−Arabitol −
Gluconate −
2−Keto−Gluconate −
5−Keto−Gluconate −
以上の諸性質から、バージィーズ・マニュアル・オブ・システマティック・バクテリオロジー(Bergey’s Manual of Systematic Bacteriology)に照らし、本菌株をLactobacillus fermentumに属する菌株と同定し、Lactobacillus ONRIC b0193と命名した。該菌株は、平成15年4月15日に、日本国茨城県つくば市東1−1−1 中央第6に住所を有する独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに、寄託番号FERM P−19313として寄託された。また、このものは平成16年4月7日に国際寄託に移管されており、その寄託番号はFERM BP−10005である。
(2−3)L.fermentum ONRIC b0195
(a) 肉眼的特徴
(a−1) MRS寒天培地
円形、半球形、平滑からやや粗造、白色。
(a−2) BL寒天培地
円形、凸状隆起、平滑からやや粗造、中央部赤褐色、周縁部白褐色。
(b) 顕微鏡的特徴
桿菌で運動性を持たない。芽胞は形成しない。
(c) 生育温度
30〜37℃で良好に生育する。
(d) 生理学的、生化学的特徴
グラム染色性 +
Glycerol −
Erythritol −
D−Arabinose −
L−Arabinose −
Ribose +
D−Xylose +
L−Xylose −
Adonitol −
β−Methyl−D−Xyloside −
Galactose +
D−Glucose +
D−Fructose +
D−Mannose +
L−Sorbose −
Rhamnose −
Dulcitol −
Inositol −
Mannitol −
Sorbitol −
α−Methyl−D−Mannoside −
α−Methyl−D−Glucoside −
N−Acetyl−Glucosamine −
Amygdalin −
Arbutin −
Esculin −
Salicin −
Cellobiose −
Maltose +
Lactose +
Melibiose +
Saccharose +
Trehalose −
Inulin −
Melezitose −
D−Raffinose +
Starch −
Glycogen −
Xylitol −
β−Gentiobiose −
D−Turanose −
D−Lyxose −
D−Tagatose −
D−Fucose −
L−Fucose −
D−Arabitol −
L−Arabitol −
Gluconate +
2−Keto−Gluconate −
5−Keto−Gluconate −
以上の諸性質から、バージィーズ・マニュアル・オブ・システマティック・バクテリオロジー(Bergey’s Manual of Systematic Bacteriology)に照らし、本菌株をLactobacillus fermentumに属する菌株と同定し、Lactobacillus ONRIC b0195と命名した。該菌株は、平成15年4月15日に、日本国茨城県つくば市東1−1−1 中央第6に住所を有する独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに、寄託番号FERM P−19314として寄託された。また、このものは平成16年4月7日に国際寄託に移管されており、その寄託番号はFERM BP−10006である。
(2−4)L.pentosus ONRIC b0223
(a) 肉眼的特徴
(a−1) MRS寒天培地
円形、半球形、平滑、白色。
(a−2) BL寒天培地
円形からやや不規則、台状、平滑からやや粗造、中央部褐色、周縁部白褐色。
(b) 顕微鏡的特徴
桿菌で運動性を持たない。芽胞は形成しない。
(c) 生育温度
30〜37℃で良好に生育する。
(d) 生理学的、生化学的特徴
グラム染色性 +
Glycerol +
Erythritol ±
D−Arabinose +
L−Arabinose +
Ribose +
D−Xylose +
L−Xylose +
Adonitol ±
β−Methyl−D−Xyloside ±
Galactose +
D−Glucose +
D−Fructose +
D−Mannose +
L−Sorbose +
Rhamnose +
Dulcitol ±
Inositol ±
Mannitol +
Sorbitol +
α−Methyl−D−Mannoside +
α−Methyl−D−Glucoside +
N−Acetyl−Glucosamine +
Amygdalin +
Arbutin +
Esculin +
Salicin +
Cellobiose +
Maltose +
Lactose +
Melibiose +
Saccharose +
Trehalose +
Inulin ±
Melezitose ±
D−Raffinose +
Starch ±
Glycogen ±
Xylitol ±
β−Gentiobiose +
D−Turanose +
D−Lyxose ±
D−Tagatose ±
D−Fucose −
L−Fucose +
D−Arabitol +
L−Arabitol −
Gluconate +
2−Keto−Gluconate −
5−Keto−Gluconate −
以上の諸性質から、バージィーズ・マニュアル・オブ・システマティック・バクテリオロジー(Bergey’s Manual of Systematic Bacteriology)に照らし、本菌株をLactobacillus pentosusに属する菌株と同定し、Lactobacillus ONRIC b0223と命名した。該菌株は、平成15年4月15日に、日本国茨城県つくば市東1−1−1 中央第6に住所を有する独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに、寄託番号FERM BP−19315として寄託された。また、このものは平成16年4月7日に国際寄託に移管されており、その寄託番号はFERM BP−10007である。
(2−5)S.cerevisiae ONRIC y0046
(a)肉眼的特徴(YM寒天培地)
円形、凸状隆起、やや粗造から粗造、白色。
(b)顕微鏡所見
(b−1)細胞形態
レモン形。
(b−2)子嚢胞子形成
形成する。
(b−3)子嚢形状
球形。
(c)生育温度
30℃で良好に生育する。
(d)生理学的、生化学的特徴
Galactose +
Cyclohexamide −
Saccharose +
N−Acetyl−Glucosamine −
Lactic acid ±
Arabinose −
Cellobiose −
Raffinose +
Maltose +
Trehalose −
2−Keto−Calcium Gluconate −
α−Methyl−α−D−Glucoside −
Mannitol −
Lactose −
Inositol −
以上の諸性質から、バージィーズ・マニュアル・オブ・システマティック・バクテリオロジー(Bergey’s Manual of Systematic Bacteriology)に照らし、本菌株をSaccharomyces cerevisiaeに属する菌株と同定し、Saccharomyces ONRIC y0046と命名した。該菌株は、平成15年4月15日に、日本国茨城県つくば市東1−1−1 中央第6に住所を有する独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに、寄託番号FERM BP−19316として寄託された。また、このものは平成16年4月7日に国際寄託に移管されており、その寄託番号はFERM BP−10008である。
(3)本発明組成物
本発明組成物は、プリン体を分解して血清尿酸値を低減する作用を有する乳酸菌および酵母からなる群から選ばれる少なくとも1種の微生物(以下「本発明微生物」ということがある)をその有効成分として含有することを必須の要件とする。
該組成物は、通常の食品組成物乃至医薬組成物と同様に、適当な可食性担体(食品素材)および/または製剤学的に許容される賦型剤乃至希釈剤を利用して、適当な食品形態乃至医薬品形態に調製される。
本発明組成物中に配合される本発明微生物は、生菌そのものであるのが一般的であるが、特にこれに限定されず、例えば各微生物の培養液、培養物(菌体)の粗精製品乃至精製品、それらの凍結乾燥品などであってもよい。
上記微生物の培養液は、例えば次の如くして調製することができる。即ち、本発明微生物を嫌気培養するために酸素吸着剤と共に密閉容器に入れ、各微生物に適した培地、例えば乳酸菌の場合はMRS培地、酵母の場合はYM培地などを用いて、28℃で48時間程度培養することにより得ることができる。また、菌体は、上記培養後に、例えば培養液を3000回転/分、4℃、10分間遠心分離して集菌することによって得ることができる。これらは常法に従い精製することができる。また、上記培養液及び培養物(菌体)は、凍結乾燥することもできる。かくして得られる凍結乾燥品、凍結乾燥菌体も、本発明組成物の有効成分として利用することができる。
本発明組成物は、上記培養液、培養物(菌体)、それらの精製品及び凍結乾燥品そのものからなっていてもよく、必要に応じて、更に、本発明微生物の維持、増殖などに適した栄養成分を含有させてなっていてもよい。該栄養成分の具体例としては、前述したように各微生物の培養のための培養培地を挙げることができる。その他の栄養成分としては、例えば乳果オリゴ糖、大豆オリゴ糖、ラクチュロース、ラクチトール、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖などの各種オリゴ糖を例示できる。これらのオリゴ糖の配合量は、特に限定されるものではないが、通常本発明組成物中に1−3重量%程度が含まれる量範囲から選ばれるのが好ましい。
また、本発明組成物中には、必要に応じて、各種ビタミン類、微量金属元素などを適宜添加配合することもできる。該ビタミン類としては、例えばビタミンB、ビタミンD、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンKなどを例示できる。微量金属元素としては、例えば亜鉛、セレンなどを例示できる。
飲食品形態の本発明組成物の具体例としては、例えば発酵乳、乳酸菌飲料、発酵野菜飲料、発酵果実飲料、発酵豆乳飲料等を挙げることができる。ここで「発酵乳」および「乳酸菌飲料」なる用語は、旧厚生省「乳及び乳製品の成分等に関する省令」第二条37「はつ酵乳」および38「乳酸菌飲料」の定義に従うものとする。即ち、「発酵乳」とは、乳または乳製品を乳酸菌または酵母で発酵させた糊状または液状にしたものをいう。従って該発酵乳には飲料形態と共にヨーグルト形態が包含される。また「乳酸菌飲料」とは、乳または乳製品を乳酸菌または酵母で発酵させた糊状または液状にしたものを主原料としてこれを水に薄めた飲料をいう。発酵野菜飲料、発酵果実飲料および発酵豆乳飲料については後述するとおりである。
本発明組成物がとり得る他の飲食品形態の例としては、菌含有マイクロカプセル形態、固形食品形態(顆粒、粉末(発酵乳凍結乾燥粉末などを含む)、錠剤、発泡製剤、ガム、グミ、プディングなど)、前記発酵乳および乳酸菌飲料以外の乳製品などを挙げることができる。
これらの飲食品形態の本発明組成物中には、該組成物に飲食に適した味などを付与するための、可食性担体、例えば好ましくは甘味料などの口当たりのよい味覚改善効果のある担体を適宜添加配合することができる。
医薬品形態の具体例としては、製剤学的に許容される賦形剤、希釈剤などの担体を配合してなる経口投与用製剤形態(水溶液、乳化液、顆粒、粉末、カプセル、錠剤など)を挙げることができる。
これら各形態への調製は、常法に従うことができる。各形態への調製およびその際利用される可食性担体乃至製剤学的に許容される担体などの詳細は、後記(4)および(5)に記述する。
本発明組成物中への微生物の配合量は、一般には、本発明組成物100g中に、菌数が10〜1011個前後(生菌数として)となる量から適宜選択することができる。該菌数の測定は、菌培養用の寒天培地に希釈した試料を塗布して37℃下で嫌気培養を行い、生育したコロニー数を計測することにより算出するものである。上記微生物の配合量は、上記量を目安として、調製される本発明組成物の形態、利用する微生物の種類などに応じて適宜変更することができる。
尚、上記の通り、本発明組成物は、微生物(主に生菌)を含有させるものであるため、該組成物の製品化に当たっては、加熱、加圧などの条件の採用はあまり好ましくない。本発明組成物を例えば固形食品形態に調整するに当たっては、微生物を凍結乾燥菌体として直接処方するか、凍結乾燥菌体を適当なコーティング剤で加工して用いるのが好ましい。
(4)飲食品形態組成物
本発明血清尿酸低減組成物のとり得る好ましい飲食品形態としては、代表的には発酵乳、乳酸菌飲料、発酵野菜飲料、発酵果実飲料、発酵豆乳飲料などを挙げることができる。以下、発酵野菜飲料、発酵果実飲料および発酵豆乳飲料につき詳述すれば、これら各形態への調製は、微生物の栄養源を含む適当な発酵用原料物質、例えば野菜類、果実類、豆乳(大豆乳化液)などの液中で、微生物を培養して該原料物質を発酵させることによって行うことができる。発酵用原料物質としての野菜類および果実類には、各種野菜および果実の切断物、破砕物、磨砕物、搾汁、酵素処理物、それらの希釈物および濃縮物が含まれる。野菜類には、カボチャ、ニンジン、トマト、ピーマン、セロリ、ホウレンソウ、有色サツマイモ、コーン、ビート、ケール、パセリ、キャベツ、ブロッコリーなどが含まれる。果実類にはリンゴ、モモ、バナナ、イチゴ、ブドウ、スイカ、オレンジ、ミカンなどが含まれる。
野菜および果実の切断物、破砕物および磨砕類は、例えば上記野菜類または果実類を洗浄後、必要に応じて熱湯に入れるなどのブランチング処理した後、クラッシャー、ミキサー、フードプロセッサー、パルパーフィッシャー、マイコロイダーなどを用いて切断、破砕、磨砕することによって得ることができる。搾汁は、例えばフィルタープレス、ジューサーミキサーなどを用いて調製することができる。また上記磨砕物を濾布などを用いて濾過することによっても搾汁を調製することができる。酵素処理物は、上記切断物、破砕物、磨砕物、搾汁などにセルラーゼ、ペクチナーゼ、プロトペクチン分解酵素などを作用させることによって調製できる。希釈物には水で1−50倍に希釈したものが含まれる。濃縮物には、例えば凍結濃縮、減圧濃縮などの手段によって1−100倍に濃縮したものが含まれる。
発酵用原料物質の他の具体例である豆乳は、常法に従い、大豆原料から調製することができる。該豆乳には、例えば、脱皮大豆を水に浸漬後、コロイドミルなどの適当な粉砕機を用いて湿式粉砕処理後、常法に従いホモジナイズ処理した均質化液、水溶性大豆蛋白質を水中に溶解した溶解液なども包含される。
微生物を利用した発酵は、予めバルクスターターを用意し、これを発酵用原料物質に接種して発酵させる方法が推奨される。ここでバルクスターターとしては、例えば代表的には予め90−121℃、5−20分間通常の殺菌処理を行った発酵用原料物質、酵母エキスを添加した10%脱脂粉乳などに、本発明菌体を接種して同様の条件で培養したものを挙げることができる。このようにして得られるバルクスターターは、通常、本発明微生物を10−10個/g培養物程度含んでいる。
バルクスターターに用いる発酵用原料物質には、必要に応じて本発明微生物の良好な生育のための発酵促進物質、例えばグルコース、澱粉、蔗糖、乳糖、デキストリン、ソルビトール、フラクトースなどの炭素源、酵母エキス、ペプトンなどの窒素源、ビタミン類、ミネラル類などを加えることができる。
微生物の接種量は、一般には発酵用原料物質含有液1cc中に菌体が約1×10個以上、好ましくは1×10個前後含まれるものとなる量から選ばれるのが適当である。培養条件は、一般に、発酵温度20−45℃程度、好ましくは25−37℃程度、発酵時間5−72時間程度から選ばれる。
尚、上記の如くして得られる乳酸発酵物は、カード状形態(ヨーグルト様乃至プディング用形態)を有している場合があり、このものはそのまま固形食品として摂取することもできる。該カード状形態の乳酸発酵物は、これを更に均質化することにより、所望の飲料形態とすることができる。この均質化は、一般的な乳化機(ホモジナイザー)を用いて実施することができる。具体的には、該均質化は、例えばガウリン(GAULIN)社製高圧ホモジナイザー(LAB40)を用いて、約200−1000kgf/cm、好ましくは約300−800kgf/cmの条件で、或いは三和機械工業社製ホモジナイザー(品番:HA×4571,H20−A2など)を用いて、150kg/cmまたはそれ以上の条件で実施することができる。この均質化によって、優れた食感、とくに滑らかさを有する飲料を得ることができる。尚、この均質化にあたっては、必要に応じて適当に希釈したり、pH調整のための有機酸類を添加したり、また、糖類、果汁、増粘剤、界面活性剤、香料などの飲料の製造に通常用いられる各種の添加剤を適宜添加することもできる。好ましい添加剤とその添加量(カード状発酵物重量に対する重量%)の一具体例としては、例えばグルコース8%(重量%、以下同じ)、砂糖8%、デキストリン8%、クエン酸0.1%、グリセリン脂肪酸エステル0.2%および香料0.1%を挙げることができる。
かくして得られる本発明飲料は、適当な容器に無菌的に充填して製品とすることができる。該製品は、滑らかな喉ごしの食感および風味を有している。
その投与(摂取)量は、これを摂取する生体の年齢、性別、体重、疾患の程度などに応じて適宜決定され、特に限定されるものではない。一般には微生物量が約10−10個/mLとなる範囲から選ばれるのがよい。該製品は一般にその約50−1000mLを摂取、服用させればよい。
また、食品形態の本発明組成物の他の具体例としては、発泡製剤形態のそれを挙げることができる。このものは、本発明微生物(菌体凍結乾燥物)0.01−50%(重量%、以下同じ)に、炭酸ナトリウムおよび(または)炭酸水素ナトリウム10−35%と中和剤20−70%とを発泡成分として配合することによって調製できる。ここで用いられる中和剤は、上記炭酸ナトリウムおよび炭酸水素ナトリウムを中和させて炭酸ガスを発生させ得る酸性化合物である。該化合物には、例えば代表的にはL−酒石酸、クエン酸、フマル酸、アスコルビン酸などの有機酸が包含される。
上記発泡成分の本発明発泡製剤中への配合割合は、得られる本発明製剤を水に溶解させた場合に、溶液が酸性、特にpH約3.5−4.6程度の酸性を呈するものとなる割合とするのがよい。より具体的には上記割合は炭酸ナトリウムおよび(または)炭酸水素ナトリウム10−35%および中和剤20−70%の範囲から選択されるのがよい。特に炭酸ナトリウムは11−31%、好ましくは22−26%、炭酸水素ナトリウムは10−35%、好ましくは20−30%の範囲から選ばれるのがよい。その内でも炭酸水素ナトリウムを単独で20−25%の範囲で用いるのが最も好ましい。また中和剤は、20−70%、好ましくは30−40%の範囲から選択され、特にL−酒石酸を20−25%およびアスコルビン酸を8−15%の範囲内で使用するのが最も好ましい。
本発泡製剤は、本発明微生物および発泡成分を必須成分として、他に通常知られている各種の添加剤成分、例えば賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、増粘剤、表面活性剤、浸透圧調節剤、電解質、甘味料、香料、色素、pH調節剤などを必要に応じて適宜添加配合されていてもよい。上記添加剤としては、例えば小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、デキストリンなどの澱粉類;ショ糖、ブドウ糖、果糖、麦芽糖、キシロース、乳糖などの糖類;ソルビトール、マンニトール、マルチトール、キシリトールなどの糖アルコール類;カップリングシュガー、パラチノースなどの糖転位配糖体;リン酸カルシウム、硫酸カルシウムなどの賦形剤;澱粉、糖類、ゼラチン、アラビアガム、デキストリン、メチルチセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、キサンタンガム、ペクチン、トラガントガム、カゼイン、アルギン酸などの結合剤乃至増粘剤;ロイシン、イソロイシン、L−バリン、シュガーエステル、硬化油、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、タルク、マクロゴールなどの滑沢剤;結晶セルロース(旭化成社製「アビセル」)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC−Na)、カルボキシメチルセルロースカルシウム(CMC−Ca)などの崩壊剤;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(ポリソルベート)、レシチンなどの表面活性剤;アスパラテーム、アリテームなどのジペプチド;その他ステビア、サッカリンなどの甘味料などを例示できる。これらは必須成分との関係や製剤の性質、製造法などを考慮してその適当量を適宜選択して用いることができる。
更に、本発明発泡製剤中には、ビタミン類、特にシアノコバラミンやアスコルビン酸(ビタミンC)などの適当量を添加配合することができる。その配合割合は、特に限定はないが、通常ビタミンCでは30%までの量、好ましくは約5−25%の範囲から選ばれるのが好ましい。
本発明発泡製剤の製造法は、基本的には通常のこの種発泡錠剤の製造法と同様とすることができる。即ち、発泡錠剤形態の本発明製剤は、所定量の各成分を秤量、混合し、直接粉末圧縮法、乾式または湿式顆粒圧縮法などに従って調製することができる。
かくして得られる本発明製剤は、これを水中に投入するだけで、経口投与に適した飲料形態となり、これは経口投与される。
その投与(摂取)量は、これを適用すべき生体の年齢、性別、体重、疾患の程度などに応じて適宜決定され、特に限定されるものではないが、一般には1錠約1.5−6.0gに調製された本発明発泡錠剤の1−2錠を1回に水100−300mLに溶かして服用させればよい。
(5)医薬品形態組成物
本発明血清尿酸低減組成物は、有効成分とする本発明微生物と共に、製剤学的に許容される適当な担体を用いて、一般的な医薬製剤組成物の形態に調製されて実用される。該担体としては、通常、この分野で使用されることの知られている充填剤、増量剤、結合剤、付湿剤、崩壊剤、表面活性剤、滑沢剤などの希釈剤あるいは賦形剤を例示できる。これらは得られる製剤の投与単位形態に応じて適宜選択使用される。
上記医薬製剤の投与単位形態としては、各種の形態が選択できる。その代表的なものとしては錠剤、丸剤、散剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤、カプセル剤などが挙げられる。
錠剤の形態に成形するに際しては、上記製剤担体として例えば乳糖、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、尿素、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、結晶セルロース、ケイ酸、リン酸カリウムなどの賦形剤;水、エタノール、プロパノール、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン溶液、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどの結合剤;カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、ラミナラン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウムなどの崩壊剤;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリドなどの界面活性剤;白糖、ステアリン、カカオバター、水素添加油などの崩壊抑制剤;第4級アンモニウム塩基、ラウリル硫酸ナトリウムなどの吸収促進剤;グリセリン、デンプンなどの保湿剤;デンプン、乳糖、カオリン、ベントナイト、コロイド状ケイ酸などの吸着剤;精製タルク、ステアリン酸塩、ホウ酸末、ポリエチレングリコールなどの滑沢剤などを使用できる。
更に錠剤は必要に応じ通常の剤皮を施した錠剤、例えば糖衣錠、ゼラチン被包錠、腸溶被錠、フィルムコーティング錠あるいは二重錠、多層錠とすることができる。
丸剤の形態に成形するに際しては、製剤担体として例えばブドウ糖、乳糖、デンプン、カカオ脂、硬化植物油、カオリン、タルクなどの賦形剤;アラビアゴム末、トラガント末、ゼラチン、エタノールなどの結合剤;ラミナラン、カンテンなどの崩壊剤などを使用できる。
更に、本発明製剤中には、必要に応じて着色剤、保存剤、香料、風味剤、甘味剤などや他の医薬品を含有させることもできる。
本発明製剤中に含有されるべき本発明微生物の量は、特に限定されず広範囲より適宜選択される。通常、医薬製剤中に約10−1012個/投与単位形態程度含有されるものとするのがよい。
上記医薬製剤の投与方法は特に制限がなく、各種製剤形態、患者の年齢、性別その他の条件、疾患の程度などに応じて決定される。例えば錠剤、丸剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤及びカプセル剤は経口投与される。
上記医薬製剤の投与量は、その用法、患者の年齢、性別その他の条件、疾患の程度などにより適宜選択されるが、通常有効成分である本発明微生物の量が1日当り体重1kg当り約0.5−20mg程度とするのがよく、該製剤は1日に1−4回に分けて投与することができる。
尚、本発明組成物はその摂取(投与)によって、該組成物中の微生物が下部消化管に到達して増殖し、常在菌として定着し、かくして所期の効果を奏し得る。特に好ましい製剤は、腸溶性錠剤形態であり、これによれば胃酸による侵襲を受けることなく微生物を腸に到達させることができる。
本発明によれば、高尿酸血症の予防・改善に有効な新しい組成物、殊に食品または医薬品形態の該組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
図1及び図2は、本発明実施例2に従う試験における実験動物の血清尿酸値の推移を示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
以下本発明を更に詳しく説明するため実施例を挙げる。
【実施例1】
(1) 本発明微生物のプリン体分解能試験
下記方法により、本発明微生物のプリン体に対する分解能を測定、評価した。
(1−a) 本発明微生物(ONRIC b0185(FERM BP−10004)、ONRIC b0193(FERM BP−10005)、ONRIC b0195(FERM BP−10006)およびONRIC b0223(FERM BP−10007))のそれぞれを、嫌気培養するために酸素吸着剤(「アネロパック」(三菱ガス株式会社製))と共に密閉容器に入れ、乳酸菌はMRS培地、酵母はYM培地を用いて、28℃にて48時間嫌気培養した。培養後、培養液を3,000回転/分、4℃、10分間遠心分離して集菌した。得られた全菌体にイノシンおよびグアノシンをそれぞれ1.25mMの濃度で含む0.1Mリン酸カリウム溶液(pH7.0)2mLを添加し、得られる菌体懸濁液を「アネロパック」と共に密閉容器に入れ、37℃で30分間、120回転/分で振とう培養した。
(1−b) (1−a)で得られた培養液を3,000回転/分、4℃、10分間遠心分離し、上清90μLに反応停止液として0.1M HClO 10μLを添加し、その後該液をHPLCに供した。尚、HPLCは以下の条件で実施した。
〈分析機器〉
高速液体クロマトグラフィー:LC−6A(島津製作所製)
〈分析条件〉
カラム:Cosmosil 5C18−AR(4.6×250mm;Nacalai Tesque,Japan)
キャリアー・バッファー:100mM NaClO(1% HPOを含む)
オーブン温度:40℃
流速:1mL/min
波長:254nm
サンプル量:10mL
イノシン、グアノシンおよびこれらの代謝物であるキサンチン、ヒポキサンチン、グアニンおよび尿酸を、HPLC保持時間により決定した。またこれら各化合物の定量を、HPLCチャートのピーク面積値に基づき行った。更に、イノシンおよびグアノシンの各分解率を下式に従い算出した。
分解率=[(1.25(mM)−A(mM))/1.25(mM)]×100
A:反応後の培養上清におけるイノシンまたはグアノシンの濃度
(1−c) 結果を下記表1に示す。

表1に示される結果から、本発明微生物はいずれもプリン体分解能を有することが明らかである。
(2) 本発明微生物のプリン体分解能試験
下記方法により、本発明微生物のプリン体に対する分解能を測定、評価した。
(2−a) 本発明微生物(ONRIC b0223(FERM BP−10007))を、嫌気培養するために酸素吸着剤(「アネロパック」(三菱ガス株式会社製))と共に密閉容器に入れ、MRS培地を用いて28℃にて48時間嫌気培養した。培養後、培養液を3,000回転/分、4℃、10分間遠心分離して集菌した。得られた菌体全部にヒポキサンチンおよびグアニンをそれぞれ0.25mMの濃度で含む0.1Mリン酸カリウム溶液(pH7.0)2mLを添加し、得られる菌体懸濁液を「アネロパック」と共に密閉容器に入れ、37℃で120分間、120回転/分で振とう培養した。
(2−b) (2−a)で得られた培養液を3,000回転/分、4℃、10分間遠心分離し、上清90μLに反応停止液として0.1M HClO 10μLを添加し、その後該液をHPLCに供した。尚、HPLCは以下の条件で実施した。
〈分析機器〉
高速液体クロマトグラフィー:LC−6A(島津製作所製)
〈分析条件〉
カラム:Cosmosil 5C18−AR(4.6×250mm;Nacalai Tesque,Japan)
キャリアー・バッファー:100mM NaClO(1% HPOを含む)
オーブン温度:40℃
流速:1mL/min
波長:254nm
サンプル量:10mL
ヒポキサンチン、グアニンおよびこれらの代謝物であるキサンチンおよび尿酸を、HPLC保持時間により決定した。またこれら各化合物の定量を、HPLCチャートのピーク面積値に基づき行った。更に、ヒポキサンチンおよびグアニンの各分解率を下式に従い算出した。
分解率=[(0.25(mM)−A(mM))/0.25(mM)]×100
A:反応後の培養上清におけるヒポキサンチンまたはグアニンの濃度
(2−c) 結果を下記表2に示す。

表2に示す結果から、本発明微生物はプリン体分解能(ヒポキサンチン、グアニンおよびこれらの代謝物であるキサンチンおよび尿酸の分解能)を有することが明らかである。
【実施例2】
この例は、文献記載の方法(Clinical Toxicology,13(1),47−74(1978))に従い食餌性高尿酸血症モデル動物を作出し、該動物の血清尿酸値に及ぼす本発明微生物の影響を検討したものであり、以下の通り実施された。
尚、本発明微生物としては、ONRIC b0185(FERM BP−10004)、ONRIC b0193(FERM BP−10005)、ONRIC b0195(FERM BP−10006)、ONRIC b0223(FERM BP−10007)およびONRIC y0046(FERM BP−10008)を利用した。
1.実験動物
6週齢のWisterラット(各群5匹)を用いた。
2.飼育条件
実験動物を搬入後、1週間の検疫を行った。検疫中、飼料としてはMF固形飼料(オリエンタル酵母社製)を与えた。飲水は水道水を自由摂取させた。飼育はステンレス製金網ケージを使用して、1ケージ当たり1匹を飼育した。明暗サイクルは、明期を6:00−18:00とした。
検疫終了後、6日間の予備飼育を行った。予備飼育中、実験動物にはAIN−93G(American Institute of Nutrition(1993)AIN−93 purified diets for laboratory rodents:final report of the American Institute of Nutrition ad hoc writing committee on the reformulation of the AIN−76A rodent diet.,J.Nutr.,123:1939−1951)に準拠して調製した飼料(下記表1の標準飼料)を自由摂取させた。飲水は水道水を自由摂取させた。
3.試験スケジュール
予備飼育後、各群の平均体重が同じになるように8群に群分けした各群実験動物(7週齢)を、下記標準飼料およびオキソネート+RNA飼料のそれぞれを用いて8日間飼育した。
即ち、(1)標準飼料群(1群および2群)では飼料としてAIN−93G(標準飼料)を用いた(予備飼育と変化なし)。(2)オキソネート+RNA飼料群(3−9群)では、標準飼料中のコーンスターチの一部をオキソネートカリウムとRNAとに代えて、飼料当たりオキソネートカリウムが2.5w/w%およびRNAが1.0w/w%含まれるように調製したオキソネート−RNA飼料を利用した。各飼料の組成を下記表3に示す。

AIN−93Gビタミン混合は、20gの重酒石酸コリン/kgを含む。
RNAはシグマアルドリッチ社製カタログ番号R6625を使用した。
5−9群の実験動物には、試験期間中毎日1回、一夜培養した菌体(b0185、b0193、b0195、b0223およびy0046株のそれぞれ、各菌体投与群をそれぞれb0185群(5群)、b0193群(6群)、b0195群(7群)、b0223群(8群)およびy0046群(9群)という)を遠心後、沈殿を1.0×10CFU/mlになるように生理食塩水で調製した菌体懸濁液の1.0mlを強制的に経口投与した。尚、3群および4群(対照群)では上記菌体懸濁液の強制的経口投与は行わなかった。
4.採血
試験飼育0日目、2日目および5日目に、各群実験動物の尾静脈よりシリンジを用いて採血した。得られた血液は1,500×gで20分間遠心分離後、血清を分取し、−80℃で保存した。
5.血清尿酸値測定
血清尿酸値は、ウリックアシッド−テストワコー(和光純薬工業株式会社製)を用いて、リンタングステン酸法にて測定した。
6.統計処理
結果は平均値±標準偏差で示した。血清尿酸値は対応のないStudentのt検定を行った。危険率5%未満を有意とした。
7.結果
図1および図2に血清尿酸値の結果を示す。
この結果より、食餌性高尿酸モデル動物の血清尿酸値に対して、b0185株、b0193株、b0195株、b0223株およびy0046株をそれぞれ投与したラットは、有意に低値を示すことが明らかとなった。
【実施例3】
以下、本発明組成物の処方例を実施例として示す。
(1) 発酵豆乳飲料の調製
下記処方の各成分を秤量混合して、飲料形態の本発明組成物を調製した。
ラクトバチルスONRICb0185発酵豆乳 100mL
乳果オリゴ糖(55%含量) 10.0g
ビタミン・ミネラル 適量
香料 適量
水 適量
全量 150mL
上記ラクトバチルスONRICb0185発酵豆乳は、豆乳(蛋白質含量5g/100mL程度)1Lに、ラクトバチルスONRICb0185(FERM BP−10004)を10個加えて、37℃で48時間発酵させたものである。その菌体含量は1×10個/mLである。
(2) 発酵乳の調製
下記処方の各成分を秤量混合して、発酵乳形態の本発明組成物を調製した。
乳果オリゴ糖(55%含量) 10.0g
ラクトバチルスONRICb0193発酵乳 100mL
ビタミン・ミネラル 適量
香料 適量
水 適量
全量 150mL
尚、ラクトバチルスONRICb0193発酵乳は、牛乳1LにラクトバチルスONRICb0193(FERM BP−10005)を10個を加え、37℃で24時間発酵させたものである。その菌体含量は1×10個/mである。
(3) 発酵乳凍結乾燥粉末の調製
ラクトバチルスONRICb0195(FERM BP−10006)約10個/mLの1mLを用いて、牛乳100gを37℃で24時間乳酸発酵させた後、得られた発酵産物(菌体を含む)を凍結乾燥して粉末とした。
上記粉末を用いて、下記処方の各成分を秤量混合して、発酵乳凍結乾燥粉末形の本発明組成物を調製した。その菌体含量は1×10個/gである。
ラクトバチルスONRICb0195発酵乳凍結乾燥粉末 2.2g
賦形剤 適量
ビタミン・ミネラル 適量
香料 適量
全量 20g
尚、賦形剤としては、コーンスターチ17gを用いた。
(4) 粉末の調製
下記処方の各成分を秤量混合して、粉末形態の本発明組成物を調製した。
カゼイン 4.5g
乳果オリゴ糖(55%含量) 10.0g
ラクトバチルスONRICb0223凍結乾燥粉末 1.0g
ビタミン・ミネラル 適量
香料 適量
全量 20g
尚、ラクトバチルスONRICb0223凍結乾燥粉末は、ラクトバチルスONRICb0223(FERM BP−10007)を増殖可能な発酵用原料物質である10%スキムミルク水溶液中で培養(37℃、24−48時間)した後、凍結乾燥することによって得られたものであり、その菌体含量は10−1010個/gである。
(5) 顆粒の調製
下記処方の各成分を秤量混合して、顆粒形態の本発明組成物を調製した。
乳果オリゴ糖(55%含量) 10.0g
ラクトバチルスONRICb0223凍結乾燥粉末 1.0g
ソルビトール 適量
ビタミン・ミネラル 適量
香料 適量
全量 20g
尚、ラクトバチルスONRICb0223凍結乾燥粉末としては、実施例3−(4)と同一のものを用いた。
(6) 菌含有マイクロカプセル
サッカロマイセスONRIC y0046(FERM BP−10008)を実施例3−(4)と同様にして凍結乾燥して得られた凍結乾燥粉末6×1010個/gを、融点34℃のヤシ硬化油を融解した中に乳果オリゴ糖と共に分散して、微生物、油脂およびオリゴ糖の混合比が25%、70%および5%である融解物を調製した。このものを同心三重ノズルの内側ノズルから平均流速0.3m/sで、更にその外側の中間ノズルから融点43℃のヤシ硬化油と大豆硬化油との混合物の融解液を平均流速0.3m/sで、また最外側ノズルから皮膜となるゼラチン/ペクチン溶液(85/15v/v)を平均流速0.3m/sで、それぞれ冷却され流動している油中に同時に滴下させることにより直径2.5mmの三層構造のシームレスカプセル(1.4×10個/gカプセル)を試作した。
このものの内容物、内皮膜および該皮膜の重量比は35:35:30であった。
このカプセルを通気乾燥後、更に真空乾燥または真空凍結乾燥を行うことによりカプセル中の水分活性をAw値0.20以下および熱伝導率0.16kcal/mh℃以下にまで低下させた。尚、Aw値は電気抵抗式水分活性測定装置(Awメーター、WA−360、株式会社芝浦電子製作所)にて測定されたものである。また、熱伝導率はフィッチ(Fitch)法で測定したものである。
【産業上の利用可能性】
本発明は、プリン体を分解して血清尿酸値の低減を図る作用を奏する新規な乳酸菌および酵母並びにこれらを含有する飲食品形態および医薬品形態の組成物を提供するものであり、この組成物は、高尿酸血症の予防および治療に有効である。
【図1】

【図2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリン体に対する分解能を有し、血清尿酸値の低減作用を有する乳酸菌および酵母からなる群から選ばれる少なくとも1種の微生物を含有する組成物。
【請求項2】
血清尿酸低減組成物である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
飲食品形態である請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
発酵乳、乳酸菌飲料、発酵野菜飲料、発酵果実飲料または発酵豆乳飲料である請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
医薬組成物である請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
微生物が、ラクトバチルス属に属する乳酸菌である請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
乳酸菌が、ラクトバチルスONRIC b0185(FERM BP−10004)、ラクトバチルスONRIC b0193(FERM BP−10005)、ラクトバチルスONRIC b0195(FERM BP−10006)およびラクトバチルスONRIC b0223(FERM BP−10007)からなる群から選択される少なくとも1種である請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
微生物が、サッカロマイセス属に属する酵母である請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
酵母が、サッカロマイセスONRIC y0046(FERM BP−10008)である請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
プリン体に対する分解能を有し、血清尿酸値の低減作用を有するラクトバチルス属に属する乳酸菌。
【請求項11】
ラクトバチルスONRIC b0185(FERM BP−10004)、ラクトバチルスONRIC b0193(FERM BP−10005)、ラクトバチルスONRIC b0195(FERM BP−10006)またはラクトバチルスONRIC b0223(FERM BP−10007)である請求項10に記載の乳酸菌。
【請求項12】
プリン体に対する分解能を有し、血清尿酸値の低減作用を有するサッカロマイセス属に属する酵母。
【請求項13】
サッカロマイセスONRIC y0046(FERM BP−10008)である請求項12に記載の酵母。
【請求項14】
血清尿酸値の低減処置を要求される患者に、請求項1に記載の組成物を摂取させる、血清尿酸値の低減方法。
【請求項15】
血清尿酸値の低減処置を要求される患者に、請求項10に記載の乳酸菌を摂取させる、血清尿酸値の低減方法。
【請求項16】
血清尿酸値の低減処置を要求される患者に、請求項12に記載の酵母を摂取させる、血清尿酸値の低減方法。
【請求項17】
血清尿酸値の低減のための請求項1に記載の組成物の使用。
【請求項18】
請求項1に記載の組成物の製造のための、請求項10に記載の乳酸菌の使用。
【請求項19】
請求項1に記載の組成物の製造のための、請求項12に記載の酵母の使用。

【国際公開番号】WO2004/112809
【国際公開日】平成16年12月29日(2004.12.29)
【発行日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−507319(P2005−507319)
【国際出願番号】PCT/JP2004/009212
【国際出願日】平成16年6月23日(2004.6.23)
【出願人】(000206956)大塚製薬株式会社 (230)
【Fターム(参考)】