説明

血漿カリクレインの阻害薬のプロドラッグ

本発明は、血漿カリクレイン(PK)の活性を阻害する化合物のプロドラッグ、ならびに血漿カリクレイン依存性の疾患または病状、例えば糖尿病性黄斑浮腫を、式(I)を有するプロドラッグによって予防および治療する方法を提供する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2009年12月18日に提出された米国特許仮出願第61/284478号、および2010年5月14日に提出された米国特許仮出願第61/34504号の恩典を主張し、それらの内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
連邦政府の援助を受けた研究または開発の下で行われた発明に対する権利に関する申立
本発明は、National Institutes of HealthによりActiveSite Pharmaceuticals, Inc.に対して授与された助成金R44EY019629の下で、米国政府の支援を受けて行われた。米国政府は本発明に対して一定の権利を有する。
【0003】
コンパクトディスクにより提出した「配列表」、表またはコンピュータプログラムリスト出力の添付物の参照
該当なし
【背景技術】
【0004】
発明の背景
本発明は、セリンプロテアーゼ血漿カリクレイン(PK)の阻害薬であることが公知である化合物のプロドラッグである、薬学的に有用な新たな化合物を提供する。血漿カリクレイン阻害薬によって治療しうる疾患または病状を有する対象に投与されると、それらはインビボで活性化合物に変換され、そのため医薬として有益な特性を有するようになる。本発明はまた、血漿カリクレインを阻害する強い効力を示し、しかもインビボで投与された場合に薬理学的に望ましい特性も示すという点で、この酵素の阻害薬として特に有用な新たな化合物も提供する。
【発明の概要】
【0005】
1つの局面において、本発明は、以下の式を有する化合物:

式中、Arは結合、またはベンゼン、ピリジンおよびピリミジンからなる群より選択される芳香環であり;添字mは0から5までの整数であり;各Raはシクロアルキル、ハロアルキル、ハロゲン、-OH、-OR1、-OSi(R1)3、-OC(O)O-R1、-OC(O)R1、-OC(O)NHR1、-OC(O)N(R1)2、-SH、-SR1、-S(O)R1、-S(O)2R1、-SO2NH2、-S(O)2NHR1、-S(O)2N(R1)2、-NHS(O)2R1、-NR1S(O)2R1、-C(O)NH2、-C(O)NHR1、-C(O)N(R1)2、-C(O)R1、-C(O)H、-C(=S)R1、-NHC(O)R1、-NR1C(O)R1、-NHC(O)NH2、-NR1C(O)NH2、-NR1C(O)NHR1、-NHC(O)NHR1、-NR1C(O)N(R1)2、-NHC(O)N(R1)2、-CO2H、-CO2R1、-NHCO2R1、-NR1CO2R1、-R1、-CN、-NO2、-NH2、-NHR1、-N(R1)2、-NR1S(O)NH2、-NR1S(O)2NHR1、-NH2C(=NR1)NH2、-N=C(NH2)NH2、-C(=NR1)NH2、-NH-OH、-NR1-OH、-NR1-OR1、-N=C=O、-N=C=S、-Si(R1)3、-NH-NHR1、-NHC(O)NHNH2、NO、-N=C=NR1および-S-CNからなる群より独立に選択され、ここで各R1は独立にアルキルまたはアリールであり;
Lは結合、CH2およびSO2からなる群より選択される連結基であり;
Qa、QbおよびQcはそれぞれ、N、S、OおよびC(Rq)からなる群より独立に選択されるメンバーであり、ここで各RqはH、C1-8アルキルおよびフェニルからなる群より独立に選択され;
YはCおよびNからなる群より選択されるメンバーであり;かつQa、Qb、QcおよびYを環の頂点として有する環は2つの二重結合を有する5員環であり;
Arが結合である場合にはmは1であり;Arが芳香環である場合にはmは0〜5の整数であり;
XはH、C1-8アルキルおよびフェニルからなる群より選択される;ならびにそれらの薬学的に許容される塩、を提供する。
【0006】
一般式Iの化合物は、一般式IIの血漿カリクレイン阻害薬化合物のプロドラッグである(WO 2008/016883号および米国特許第7,625,944号を参照)。血漿カリクレイン阻害薬による治療を必要とする対象に投与されると、本発明の化合物はインビボで一般式IIの化合物に変換され、そのため医薬として有益な特性を有するようになる。

【0007】
一般式IIにおける記号Qa、Qb、Qc、Y、L、Ar、Raおよびmは、一般式Iにおけるものと同じ意味を有する。
【0008】
以下は、一般式Iの特に好ましい化合物の例として挙げられる:
(a)(Z)-ヘキシルアミノ-(4-((1-ベンジルピラゾール-4-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメート
(b)(Z)-ヘキシルアミノ-(4-((2,5-ジメチル-1-(4-ピリジルメチル)ピロール-3-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメート
(c)(Z)-ヘキシルアミノ-(4-((1-4-フルオロフェニル-2,5-ジメチル-ピロール-3-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメート
(d)(Z)-ヘキシルアミノ-(4-((1-4-クロロフェニル-2,5-ジメチル-ピロール-3-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメート
(e)(Z)-ヘキシルアミノ-(4-((1-4-メトキシフェニル-2,5-ジメチル-ピロール-3-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメート
(f)(Z)-メチルアミノ-(4-((1-4-メトキシフェニル-2,5-ジメチル-ピロール-3-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメート
(g)(Z)-メチルアミノ-(4-((1-4-クロロフェニル-2,5-ジメチル-ピロール-3-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメート
(h)(Z)-メチルアミノ-(4-((1-4-フルオロフェニル-2,5-ジメチル-ピロール-3-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメート
(i)(Z)-メチルアミノ-(4-((2,5-ジメチル-1-4-ピリジルメチルピロール-3-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメート
(j)(Z)-メチルアミノ-(4-((1-ベンジルピラゾール-4-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメート
(k)(Z)-ベンジルアミノ-(4-((1-ベンジルピラゾール-4-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメート
(l)(Z)-ベンジルアミノ-(4-((1-ベンジルピラゾール-4-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメート
(m)(Z)-ベンジルアミノ-(4-((1-(4-フルオロフェニル)-2,5-ジメチル-ピロール-3-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメート
(n)(Z)-ベンジルアミノ-(4-((1-(4-クロロフェニル)-2,5-ジメチル-ピロール-3-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメート
(o)(Z)-ベンジルアミノ-(4-((1-(4-メトキシフェニル)-2,5-ジメチル-ピロール-3-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメート
(p)(Z)-エチルアミノ-(4-((1-(4-メトキシフェニル)-2,5-ジメチル-ピロール-3-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメート
(q)(Z)-エチルアミノ-(4-((1-(4-クロロフェニル)-2,5-ジメチル-ピロール-3-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメート
(r)(Z)-エチルアミノ-(4-((1-(4-フルオロフェニル)-2,5-ジメチル-ピロール-3-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメート
(s)(Z)-エチルアミノ-(4-((2,5-ジメチル-1-(4-ピリジルメチル)ピロール-3-カ ルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメート
(t)(Z)-エチルアミノ-(4-((1-ベンジルピラゾール-4-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメート
(u)(Z)-プロピルアミノ-(4-((1-(4-メトキシフェニル)-2,5-ジメチル-ピロール-3-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメート
(v)(Z)-プロピルアミノ-(4-((1-(4-クロロフェニル)-2,5-ジメチル-ピロール-3-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメート
(w)(Z)-プロピルアミノ-(4-((1-(4-フルオロフェニル)-2,5-ジメチル-ピロール-3-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメート
(x)(Z)-プロピルアミノ-(4-((2,5-ジメチル-1-(4-ピリジルメチル)ピロール-3-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメート
(y)(Z)-プロピルアミノ-(4-((1-ベンジルピラゾール-4-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメート。
【0009】
もう1つの局面において、本発明は、以下の式を有する化合物:

式中、添え字mは0から5までの整数であり;添え字nは0から4までの整数であり;添え字qは0から1までの整数であり;Lは結合、CH2およびSO2からなる群より選択される連結基であり;RbおよびRcのそれぞれは、シクロアルキル、ハロアルキル、ハロゲン、-OH、-OR2、-OSi(R2)3、-OC(O)O-R2、-OC(O)R2、-OC(O)NHR2、-OC(O)N(R2)2、-SH、-SR2、-S(O)R2、-S(O)2R2、-SO2NH2、-S(O)2NHR2、-S(O)2N(R2)2、-NHS(O)2R2、-NR2S(O)2R2、-C(O)NH2、-C(O)NHR2、-C(O)N(R2)2、-C(O)R2、-C(O)H、-C(=S)R2、-NHC(O)R2、-NR2C(O)R2、-NHC(O)NH2、-NR2C(O)NH2、-NR2C(O)NHR2、-NHC(O)NHR2、-NR2C(O)N(R2)2、-NHC(O)N(R2)2、-CO2H、-CO2R2、-NHCO2R2、-NR2CO2R2、-R2、-CN、-NO2、-NH2、-NHR2、-N(R2)2、-NR2S(O)NH2、-NR2S(O)2NHR2、-NH2C(=NR2)NH2、-N=C(NH2)NH2、-C(=NR2)NH2、-NH-OH、-NR2-OH、-NR2-OR2、-N=C=O、-N=C=S、-Si(R2)3、-NH-NHR2、-NHC(O)NHNH2、NO、-N=C=NR2および-S-CNからなる群より独立に選択され、ここで各R2は独立にアルキルまたはアリールであり;qが0である場合にはZはO、SおよびNRdからなる群より選択されるメンバーであり、ここでRdはHまたはC1-C8アルキルであり;qが1である場合にはZはNであり;
XはH、C1-8アルキルおよびフェニルからなる群より選択される;
ならびにそれらの薬学的に許容される塩、を提供する。
【0010】
一般式IIIの化合物は、一般式IVの血漿カリクレイン阻害薬化合物のプロドラッグである(WO 2008/016883号および米国特許第7,625,944号を参照)。血漿カリクレイン阻害薬による治療を必要とする対象に投与されると、それらはインビボで一般式IVの化合物に変換され、そのため医薬として有益な特性を有するようになる。

一般式IVにおける記号Rb、Rc、L、Z、m、nおよびqは、一般式IIIにおけるものと同じ意味を有する。
【0011】
以下は、一般式IIIの特に好ましい化合物の例として挙げられる:
(a)(Z)-メチルアミノ(4-((1-ベンジルインドール-3-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメート
(b)(Z)-メチルアミノ(4-((1-(ベンゼンスルホニル)インドール-3-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメート
(c)(Z)-エチルアミノ(4-((1-ベンジルインドール-3-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメート
(d)(Z)-エチルアミノ(4-((1-(ベンゼンスルホニル)インドール-3-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメート。
【0012】
もう1つの局面において、本発明は、一般式Vの化合物を提供する:

式中、Arはベンゼン、ピリジン、ピリミジンまたはヘテロアリール5員環から選択される環であり、Raは一般式Iにおけるものと同じ意味を有し、mはArがベンゼンである場合には1〜5の整数、Arがピリジンである場合には0〜4の整数、Arがピリミジンである場合には0〜3の整数であり、Arがヘテロアリール5員環である場合には0〜2の整数である。
【0013】
以下は、一般式Vの特に好ましい化合物の例として挙げられる:
(a)N-[(4-(カルバムイミドイルフェニル)メチル]-1-(4-フルオロフェニル)-2,5-ジメチル-ピロール-3-カルボキサミド
(b)N-[(4-カルバムイミドイルフェニル)メチル]-1-(2-フルオロフェニル)-2,5-ジメチル-ピロール-3-カルボキサミド
(c)N-[(4-カルバムイミドイルフェニル)メチル]-1-(4-メトキシフェニル)-2,5-ジメチル-ピロール-3-カルボキサミド
(d)N-[(4-カルバムイミドイルフェニル)メチル]-1-(4-クロロフェニル)-2,5-ジメチル-ピロール-3-カルボキサミド
(e)N-[(4-カルバムイミドイルフェニル)メチル]-1-(2,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジオキシン-6-イル)-2,5-ジメチル-ピロール-3-カルボキサミド
(f)N-[(4-カルバムイミドイルフェニル)メチル]-2,5-ジメチル-1-(3-ピリジル)ピロール-3-カルボキサミド
(g)N-[(4-カルバムイミドイルフェニル)メチル]-2,5-ジメチル-1-(2-ピリジル)ピロール-3-カルボキサミド
(h)N-[(4-カルバムイミドイルフェニル)メチル]-2,5-ジメチル-1-チアゾール-2-イル-ピロール-3-カルボキサミド。
【0014】
さらにもう1つの局面において、本発明は薬学的組成物を提供する。本組成物は、式I、IIIまたはVの化合物を、薬学的に許容される添加剤との組み合わせで含む。
【0015】
1つのさらなる局面において、本発明は、糖尿病および高血圧と関連のある病状、例えば、網膜症、黄斑浮腫、腎症、ニューロパチーおよび血圧上昇などを治療する方法を提供する。
【0016】
もう1つの局面において、本発明は、過度の血管透過性およびその結果として起こる浮腫によって引き起こされるかまたは悪化する臨床的病状、例えば、虚血性および出血性の脳卒中、糖尿病性黄斑浮腫、類嚢胞黄斑浮腫、網膜静脈閉塞、加齢性黄斑変性症、頭部外傷、毛細血管漏出症候群ならびに多形性膠芽腫などを治療する方法を提供する。
【0017】
なおもう1つの局面において、本発明は、それを必要とする対象における血漿カリクレインに関連した障害または病状を治療する方法を提供する。本方法は、式I、IIIまたはVの化合物の対象に投与する段階を含む。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の選択された化合物の構造を提示している。
【図2】本発明の選択された化合物の構造を提示している。
【図3】図1に提示した選択された化合物の互変異性体構造を提示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
発明の詳細な説明
I.定義
別に指定する場合を除き、本明細書および特許請求の範囲において用いる以下の用語は、以下に提示する意味を有する。
【0020】
化合物の名称は、ソフトウエアプログラム、ChemBioDraw、Level Ultra、バージョン11.0.1を用いて生成させた。
【0021】
「アルキル」という用語は、単独で、または別の置換基の一部として、指定された数の炭素原子を有する(すなわち、C1-8は1〜8個の炭素を意味する)、直鎖状または分枝鎖状の炭化水素基のことを意味する。アルキル基の例には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチルなどが含まれる。本明細書における定義のそれぞれに関して(例えば、アルキル、アルコキシ、アルキルアミノ、アルキルチオ、アルキレン、ハロアルキル)、アルキル部分における主鎖炭素原子の数を示す接頭辞が含まれない場合には、基またはその部分は12個またはそれ未満の主鎖炭素原子を有する。
【0022】
「アルキレン」という用語は、単独で、または別の置換基の一部として、-CH2CH2CH2CH2-によって例示されるようなアルカンに由来する二価基のことを意味する。典型的には、アルキル(またはアルキレン)基は1個から24個までの炭素原子を有すると考えられ、10個またはそれ未満の炭素原子を有するそのような基が本発明において好ましい。「低級アルキル」または「低級アルキレン」とは、一般に4個またはそれ未満の炭素原子を有する、より短鎖のアルキルまたはアルキレン基のことである。
【0023】
「シクロアルキル」という用語は、指示された数の環原子(例えば、C3-6シクロアルキル)を有し、かつ完全に飽和しているか環の頂点間に1つを超えない二重結合を有する炭化水素環のことを指す。1個または2個のC原子がカルボニルによって置換されてもよい。「シクロアルキル」は、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビシクロ[2.2.2]オクタンなどの、二環式および多環式の炭化水素環も指すものとする。シクロアルキルにおける環炭素原子の数を示す接頭辞が含まれない場合には、基またはその部分は8個またはそれ未満の環炭素原子を有する。
【0024】
「アルコキシ」、「アルキルアミノ」および「アルキルチオ」(またはチオアルコキシ)という用語は、それらの従来の意味で用いられ、それぞれ酸素原子、アミノ基またはイオウ原子を介して、分子の残りの部分と結びついたアルキル基のことを指す。さらに、ジアルキルアミノ基に関しては、アルキル部分は同じでも異なってもよく、それぞれに結びついた窒素原子と3〜7員環を形成するように組み合わされてもよい。したがって、-NRaRbとして表される基には、ピペリジニル、ピロリジニル、モルホリニル、アゼチジニルなども含まれるものとする。
【0025】
「ハロ」または「ハロゲン」という用語は、別に指定する場合を除き、単独で、または別の置換基の一部として、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素原子のことを意味する。さらに、「ハロアルキル」などの用語は、モノハロアルキルおよびポリハロアルキルを含むものとする。例えば、「C1-4ハロアルキル」という用語は、トリフルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、4-クロロブチル、3-ブロモプロピルなどを含むものとする。
【0026】
「アリール」という用語は、5〜14個の環原子を有する一価の単環式、二環式または多環式の芳香族炭化水素基のことを意味し、これは置換されていないか、またはアルキル、シクロアルキル、シクロアルキル-アルキル、ハロ、シアノ、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、アシルアミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ハロアルキル、ハロアルコキシ、ヘテロアルキル、COR(ここでRは水素、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキル-アルキル、フェニルまたはフェニルアルキル、アリールまたはアリールアルキルである)、-(CR'R'')n-COOR(ここでnは0から5までの整数であり、R'およびR''は独立に水素またはアルキルであり、Rは水素、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、フェニルまたはフェニルアルキル、アリールまたはアリールアルキルである)、もしくは-(CR'R'')n-CONRaRb(ここでnは0から5までの整数であり、R'およびR''は独立に水素またはアルキルであり、およびRaおよびRbは互いに独立に水素、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、フェニルまたはフェニルアルキル、アリールもしくはアリールアルキルである)から選択される1〜4個の置換基、好ましくは1個、2個もしくは3個の置換基によって独立に置換されている。より具体的には、アリールという用語には、フェニル、ビフェニル、1-ナフチルおよび2-ナフチル、ならびにそれらの置換形態が非限定的に含まれる。同様に、「ヘテロアリール」という用語は、例えばピリジル、キノリニル、キナゾリニル、チエニルなどのように、1〜5個のヘテロ原子またはヘテロ原子官能基が、芳香族特性を保ちながら環炭素を置換しているアリール基のことを指す。ヘテロ原子はN、OおよびSから選択され、ここで窒素およびイオウ原子は酸化されてもよく、窒素原子は四級化されてもよい。ヘテロアリール基は、ヘテロ原子を通じて分子の残りの部分と結びつくことができる。アリール基の非限定的な例にはフェニル、ナフチルおよびビフェニルが含まれ、ヘテロアリール基の非限定的な例には、ピリジル、ピリダジニル、ピラジニル、ピリミジニル、トリアジニル、キノリニル、キノキサリニル、キナゾリニル、シンノリニル、フタラジニル(phthalaziniyl)、ベンゾトリアジニル、プリニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾピラゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンズイソキサゾリル、イソベンゾフリル、イソインドリル、インドリジニル、ベンゾトリアジニル、チエノピリジニル、チエノピリミジニル、ピラゾロピリミジニル、イミダゾピリジン、ベンゾチアキソリル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、インドリル、キノリル、イソキノリル、イソチアゾリル、ピラゾリル、インダゾリル、プテリジニル、イミダゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、チアジアゾリル、ピロリル、チアゾリル、フリル、チエニルなどが含まれる。簡略化のために、アリールという用語は、他の基(例えば、アリールオキシ、アリールアルキル)と組み合わせて用いられる場合には、上記のようなアリール基およびヘテロアリール基の両方を含むものとする。
【0027】
アリール基に対する置換基はさまざまであり、一般に以下のもの:ハロゲン、-OR'、-OC(O)R'、-NR'R''、-SR'、-R'、-CN、-NO2、-CO2R'、-CONR'R''、-C(O)R'、-OC(O)NR'R''、-NR''C(O)R'、-NR''C(O)2R'、,-NR'-C(O)NR''R''、-NH-C(NH2)=NH、-NR'C(NH2)=NH、-NH-C(NH2)=NR'、-S(O)R'、-S(O)2R'、-S(O)2NR'R''、-NR'S(O)2R''、-N3、パーフルオロ(C1-C4)アルコキシおよびパーフルオロ(C1-C4)アルキルから選択され、その数はゼロから芳香環系の空き原子価(open valence)の総数までの範囲にわたる;かつ、R'、R''およびR'''は、水素、C1-8アルキル、C3-6シクロアルキル、C2-8アルケニル、C2-8アルキニル、非置換アリールおよびヘテロアリール、(非置換アリール)-C1-4アルキル、ならびに非置換アリールオキシ-C1-4アルキルから独立に選択される。
【0028】
アリールまたはヘテロアリール環の隣接原子上の置換基の2つは式-T-C(O)-(CH2)q-U-の置換基によって置換されてもよく、式中、TおよびUは独立に-NH-、-O-、-CH2-または単結合であり、qは0から2までの整数である。または、アリールまたはヘテロアリール環の隣接原子上の置換基の2つは式-A-(CH2)r-B-の置換基によって置換されてもよく、式中、AおよびBは独立に-CH2-、-O-、-NH-、-S-、-S(O)-、-S(O)2-、-S(O)2NR'-または単結合であり、rは1から3までの整数である。そのようにして形成された新たな環の単結合の1つは二重結合によって置換されてもよい。または、アリールまたはヘテロアリール環の隣接原子上の置換基の2つは式-(CH2)s-W-(CH2)t-の置換基によって置換されてもよく、式中、sおよびtは独立に0から3までの整数であり、Wは-O-、-NR'-、-S-、-S(O)-、-S(O)2-または-S(O)2NR'-である。-NR'-および-S(O)2NR'-における置換基R'は水素または非置換C1-6アルキルから選択される。
【0029】
本明細書で用いる場合、「ヘテロ原子」という用語は、酸素(O)、窒素(N)、イオウ(S)およびケイ素(Si)を含むものとする。
【0030】
「薬学的に許容される塩」という用語は、本明細書に記載した化合物上に見いだされる具体的な置換基に依存して比較的無毒性である酸または塩基とともに調製される活性化合物の塩を含むものとする。本発明の化合物が比較的酸性の官能性を含む場合には、中性型のそのような化合物を、溶媒を加えていない、または適した不活性溶媒中にある十分な量の所望の塩基と接触させることによって塩基付加塩を得ることができる。薬学的に許容される無機塩基に由来する塩の例には、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、第二鉄、第一鉄、リチウム、マグネシウム、第二マンガン、第一マンガン、カリウム、ナトリウム、亜鉛などが含まれる。薬学的に許容される有機塩基に由来する塩には、置換アミン、環状アミン、天然アミンなどを含む第一級、第二級および第三級アミン、例えばアルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N'-ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2-ジエチルアミノエタノール、2-ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N-エチルモルホリン、N-エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペラヂン(piperadine)、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミンなどが含まれる。本発明の化合物が比較的塩基性の官能性を含む場合には、天然型のそのような化合物を、溶媒を加えていない、または適した不活性溶媒中にある十分な量の所望の酸と接触させることによって酸付加塩を得ることができる。薬学的に許容される酸付加塩の例には、塩酸、臭化水素酸、硝酸、炭酸、一水素炭酸(monohydrogen carbonic)、リン酸、一水素リン酸(monohydrogen phosphoric)、二水素リン酸(dihydrogen phosphoric)、硫酸、一水素硫酸(monohydrogen sulfuric)、ヨウ化水素酸または亜リン酸などのような無機酸に由来する塩、ならびに酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p-トリルスルホン酸、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸などのような比較的無毒性の有機酸に由来するものが含まれる。同じく含まれるものには、アルギネート(arginate)などのアミノ酸の塩、およびグルクロン酸またはガラクツロン酸(galactunoric acid)などのような有機酸の塩がある(例えば、Berge, S.M., et al, "Pharmaceutical Salts", Journal of Pharmaceutical Science, 1977, 66, 1-19を参照)。本発明のある種の化合物は、化合物が塩基付加塩または酸付加塩のいずれに変換されることも可能にする、塩基性および酸性の官能性の両方を含む。
【0031】
「薬学的に許容される」という用語は、担体、希釈剤または添加剤が、製剤の他の成分と適合性であって、かつそのレシピエントに対して有害でない必要があることを意味する。
【0032】
本明細書で用いる「組成物」という用語は、指定された成分を指定された量で含む製造物、ならびに、指定された量の指定された成分の組み合わせを直接的または間接的に結果としてもたらす任意の製造物を包含することを意図している。
【0033】
本明細書で用いる「対象」という用語は、霊長動物(例えば、ヒト)、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、マウスなどを非限定的に含む哺乳動物などの動物を含むものとする。
【0034】
II.概論
本発明は、血漿カリクレイン依存性の疾患または病状の予防および治療のために化合物および薬学的組成物を用いる方法に関する。このため、本発明の化合物を用いて治療しうる疾患または病状には、虚血性脳卒中、出血性脳卒中、高血圧およびその血管合併症(特に網膜症および腎症)、脳血管性浮腫、肺性高血圧、炎症、疼痛、急性心筋梗塞(MI)、深部静脈血栓症(DVT)、脳卒中後またはMI後の線溶治療(組織プラスミノーゲンアクチベーター、ストレプトキナーゼなどを用いる)による合併症、狭心症、血管性浮腫、敗血症、関節炎、心肺バイパスの合併症、毛細血管漏出症候群、炎症性腸疾患、糖尿病およびその血管合併症(特に網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、腎症およびニューロパチー)、加齢性黄斑変性症、網膜静脈閉塞、脳浮腫、虚血-再灌流傷害、血管新生(例えば、癌における)、喘息、アナフィラキシー、ならびに神経学的病状(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、CNS感染症および多形性膠芽腫)の脳血管合併症が非限定的に含まれる。
【0035】
III.化合物
1つの局面において、本発明は、以下の式を有する化合物を提供する:

式中、Arは結合、またはベンゼン、ピリジンおよびピリミジンからなる群より選択される芳香環である。Arが結合である場合にはmは1である。Arが芳香環である場合にはmは0〜5の整数である。1つの態様において、Arはベンゼンまたはピリジンである。もう1つの態様において、Arは結合である。
【0036】
XはH、C1-8アルキルおよびフェニルからなる群より選択されるメンバーである。1つの態様において、XはHである。もう1つの態様において、XはC5アルキルである。なおもう1つの態様において、Xはフェニルである。
【0037】
添え字mは0〜5の整数である。1つの態様において、mは0である。
【0038】
各Raは、シクロアルキル、ハロアルキル、ハロゲン、-OH、-OR1、-OSi(R1)3、-OC(O)O-R1、-OC(O)R1、-OC(O)NHR1、-OC(O)N(R1)2、-SH、-SR1、-S(O)R1、-S(O)2R1、-SO2NH2、-S(O)2NHR1、-S(O)2N(R1)2、-NHS(O)2R1、-NR1S(O)2R1、-C(O)NH2、-C(O)NHR1、-C(O)N(R1)2、-C(O)R1、-C(O)H、-C(=S)R1、-NHC(O)R1、-NR1C(O)R1、-NHC(O)NH2、-NR1C(O)NH2、-NR1C(O)NHR1、-NHC(O)NHR1、-NR1C(O)N(R1)2、-NHC(O)N(R1)2、-CO2H、-CO2R1、-NHCO2R1、-NR1CO2R1、-R1、-CN、-NO2、-NH2、-NHR1、-N(R1)2、-NR1S(O)NH2、-NR1S(O)2NHR1、-NH2C(=NR1)NH2、-N=C(NH2)NH2、-C(=NR1)NH2、-NH-OH、-NR1-OH、-NR1-OR1、-N=C=O、-N=C=S、-Si(R1)3、-NH-NHR1、-NHC(O)NHNH2、NO、-N=C=NR1および-S-CNからなる群より独立に選択され、ここで各R1は独立にアルキルまたはアリールである。1つの態様において、R1はC1-C8アルキルである。もう1つの態様において、R1はフェニルもしくはピリジルなどの非置換アリール、または置換フェニルもしくは置換ピリジルなどの置換アリールである。
【0039】
1つの態様において、各Raは、C1-C8アルキル、C1-C8アルコキシ、アリール、アリール(C1-C8アルキル)、ハロゲン、-NH2、-NH(C1-C8アルキル)、-N(C1-C8アルキル)2、-CN、-C(=O)(C1-C8アルキル)、-(C=O)NH2、-(C=O)NH(C1-C8アルキル)、C(=O)N(C1-C8アルキル)2、-OH、-COOH、-COO(C1-C8アルキル)、-OCO(C1-C8アルキル)、-O(C=O)O(C1-C8アルキル)-NO2、-SH、-S(C1-C8アルキル)、-NH(C=O)(C1-C8アルキル)、-NH(C=O)O(C1-C8アルキル)、-O(C=O)NH(C1-C8アルキル)、-SO2(C1-C8アルキル)、-NHSO2(C1-C8アルキル)および-SO2NH(C1-C8アルキル)からなる群より独立に選択される。もう1つの態様において、各Raは、C1-C8アルキル、C1-C8アルコキシ、フェニル、フェニル(C1-C8アルキル)、ハロゲン、-CN、-NH2、-NH(C1-C8アルキル)、-N(C1-C8アルキル)2、-(C=O)CH3、-(C=O)NH2、-OH、-COOH、-COO(C1-C8アルキル)、-OCO(C1-C8アルキル)、-O(C=O)O(C1-C8アルキル)、-NO2、-SH、-S(C1-C8アルキル)および-NH(C=O)(C1-C8アルキル)からなる群より独立に選択される。さらにもう1つの態様において、各Raは、C1-C8アルキル、C1-C8アルコキシ、フェニル、フェニル(C1-C8アルキル)、フェノキシ、アリールオキシ、ハロゲン、-CN、-NH2、-NH-アリール、-(C=O)CH3、-(C=O)NH2、-OH、-COOH、-COO(C1-C8アルキル)、-OCO(C1-C8アルキル)、-COO-アリール、-OC(O)-アリール、-O(C=O)O(C1-C8アルキル)-NO2、-SH、-S(C1-C8アルキル)、-NH(C=O)(C1-C8アルキル)などからなる群より独立に選択される。例えば、RaはCl、BrまたはIなどのハロゲンである。
【0040】
Lは、結合、CH2およびSO2からなる群より選択される連結基である。
【0041】
Qa、QbおよびQcはそれぞれ、N、S、OおよびC(Rq)からなる群より独立に選択されるメンバーであり、ここで各RqはH、C1-8アルキル、ハロゲン、およびフェニルからなる群より独立に選択される。
【0042】
YはCおよびNから選択され;かつQa、Qb、QcおよびYを環の頂点として有する環は2つの二重結合を有する5員環である。
【0043】
第1の群の態様において、QaはNであり、QbおよびQcはそれぞれN、OおよびC(Rq)から独立に選択される。ある特定の場合には、QaはNであり、QcおよびQbはそれぞれNおよびC(Rq)から独立に選択される。他のある特定の場合には、QaはNであり、QcおよびQbはそれぞれC(Rq)およびOから選択される。さらに他のある特定の場合において、QaはNであり、QcはNおよびOから選択されるメンバーであり、QbはNおよびOから選択される他方のメンバーである。
【0044】
第2の群の態様において、QaはOであり、QbおよびQcはそれぞれN、OおよびC(Rq)から選択される。ある特定の場合には、QaはOであり、QcおよびQbはそれぞれNおよびC(Rq)から独立に選択される。
【0045】
第3の群の態様において、QaはC(Rq)であり、QbおよびQcはそれぞれN、OおよびC(Rq)から選択される。ある特定の場合には、QaはC(Rq)であり、QbおよびQcはそれぞれNおよびOから独立に選択される。他のある特定の場合には、QaはC(Rq)であり、QbおよびQcはそれぞれNおよびC(Rq)から独立に選択される。さらに他のある特定の場合には、QaはC(Rq)であり、QbおよびQcはそれぞれOおよびC(Rq)から独立に選択される。1つの発現(occurrence)において、QaはC(Rq)であり、QbはOであり、Qcは(CRq)である。
【0046】
1つの態様において、YはCであり、QaはSであり、Arはフェニルまたはピリジルから選択される。もう1つの態様において、YはNであり、Qa、QbおよびQcはそれぞれ独立にC(Rq)であり、ここでRqはHまたはC1-8アルキルである。1つの場合には、YはNであり、QaおよびQcはC(Rq)であり、QbはCHである。好ましい態様において、YはNである。
【0047】
1つの態様において、Lは結合であり、YはNである。もう1つの態様において、Lは結合であり、YはNであり、Arはベンゼン環である。さらにもう1つの態様において、LはCH2であり、YはNである。なおもう1つの態様において、Lは結合であり、YはCである。さらなる態様において、LはSO2であり、YはNである。
【0048】
1つの好ましい態様において、Qa、QbおよびQcはそれぞれ独立にCRqである。もう1つの好ましい態様において、Lは結合またはCH2である。さらにもう1つの好ましい態様において、Arはベンゼンである。なおもう1つの好ましい態様において、Raは-HおよびC1-C8アルキルである。
【0049】
上記の諸態様のそれぞれにおいて、Xは、H、C1-8アルキルおよびフェニルからなる群より選択されるメンバーである。
【0050】
もう1つの態様において、式Iの化合物は部分式(subformula)Ia:

を有し、式中、Rq、LおよびXは上記に定義した通りである。1つの場合には、Rqは独立に-HまたはC1-8アルキルであり、Lは結合または-CH2-である。もう1つの場合には、RaはC1-C8ハロアルキルである。例えば、Raは-CF3または-CH2CF3である。
【0051】
1つの態様において、式Iの化合物は部分式Ib:

を有し、式中、Arは芳香環である。1つの場合には、各Rqは独立にH、C1-C8アルキルまたはハロゲンである。もう1つの場合には、Lは結合またはCH2である。さらにもう1つの場合には、Arはベンゼンである。なおもう1つの場合には、mは0である。1つの状況では、各RqはHであり、LはCH2であり、Arはベンゼンであり、mは0である。もう1つの状況では、各RqはHであり、Lは結合であり、Arはベンゼンであり、mは0である。それぞれの場合または状況において、XはH、C1-8アルキルおよびフェニルからなる群より独立に選択される。
【0052】
以下は、一般式Iの特に好ましい化合物の例として挙げられる:
(a)(Z)-ヘキシルアミノ-(4-((1-ベンジルピラゾール-4-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメート
(b)(Z)-ヘキシルアミノ-(4-((2,5-ジメチル-1-(4-ピリジルメチル)ピロール-3-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメート
(c)(Z)-ヘキシルアミノ-(4-((1-(4-フルオロフェニル)-2,5-ジメチル-ピロール-3-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメート
(d)(Z)-ヘキシルアミノ-(4-((1-(4-クロロフェニル)-2,5-ジメチル-ピロール-3-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメート
(e)(Z)-ヘキシルアミノ-(4-((1-(4-メトキシフェニル)-2,5-ジメチル-ピロール-3-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメート
(f)(Z)-メチルアミノ-(4-((1-(4-メトキシフェニル)-2,5-ジメチル-ピロール-3-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメート
(g)(Z)-メチルアミノ-(4-((1-(4-クロロフェニル)-2,5-ジメチル-ピロール-3-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメート
(h)(Z)-メチルアミノ-(4-((1-(4-フルオロフェニル)-2,5-ジメチル-ピロール-3-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメート
(i)(Z)-メチルアミノ-(4-((2,5-ジメチル-1-(4-ピリジルメチル)ピロール-3-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメート
(j)(Z)-メチルアミノ-(4-((1-ベンジルピラゾール-4-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメート
(k)(Z)-ベンジルアミノ-(4-((1-ベンジルピラゾール-4-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメート
(l)(Z)-ベンジルアミノ-(4-((2,5-ジメチル-1-(4-ピリジルメチル)ピロール-3-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメート
(m)(Z)-ベンジルアミノ-(4-((1-(4-フルオロフェニル)-2,5-ジメチル-ピロール-3-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメート
(n)(Z)-ベンジルアミノ-(4-((1-(4-クロロフェニル)-2,5-ジメチル-ピロール-3-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメート
(o)(Z)-ベンジルアミノ-(4-(1-(4-メトキシフェニル)-2,5-ジメチル-ピロール-3-カルボニルアミノ)フェニル)メチレンカルバメート
(p)(Z)-エチルアミノ-(4-((1-(4-メトキシフェニル)-2,5-ジメチル-ピロール-3-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメート
(q)(Z)-エチルアミノ-(4-((1-(4-クロロフェニル)-2,5-ジメチル-ピロール-3-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメート
(r)(Z)-エチルアミノ-(4-((1-(4-フルオロフェニル)-2,5-ジメチル-ピロール-3-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメート
(s)(Z)-エチルアミノ-(4-((2,5-ジメチル-1-(4-ピリジルメチル)ピロール-3-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメート
(t)(Z)-エチルアミノ-(4-((1-ベンジルピラゾール-4-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメート
(u)(Z)-プロピルアミノ-(4-((1-(4-メトキシフェニル)-2,5-ジメチル-ピロール-3-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメート
(v)(Z)-プロピルアミノ-(4-((1-(4-クロロフェニル)-2,5-ジメチル-ピロール-3-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメート
(w)(Z)-プロピルアミノ-(4-((1-(4-フルオロフェニル)-2,5-ジメチル-ピロール-3-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメート
(x)(Z)-プロピルアミノ-(4-((2,5-ジメチル-1-(4-ピリジルメチル)ピロール-3-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメート
(y)(Z)-プロピルアミノ-(4-((1-ベンジルピラゾール-4-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメート。
【0053】
もう1つの局面において、本発明は、式:

を有する化合物、およびそれらの薬学的に許容される塩を提供し、式中、添え字mは0から5までの整数である。添え字nは0から4までの整数である。添え字qは0から1までの整数である。1つの態様において、添え字mは0である。もう1つの態様において、添え字nは0〜2の整数である。さらにもう1つの態様において、添え字qは0である。さらにもう1つの態様において、添え字qは1である。
【0054】
Lは結合、CH2およびSO2からなる群より選択される連結基である。1つの態様において、LはCH2またはSO2である。XはH、C1-8アルキルおよびフェニルからなる群より選択されるメンバーである。
【0055】
RbおよびRcのそれぞれは、シクロアルキル、ハロアルキル、ハロゲン、-OH、-OR2、-OSi(R2)3、-OC(O)O-R2、-OC(O)R2、-OC(O)NHR2、-OC(O)N(R2)2、-SH、-SR2、-S(O)R2、-S(O)2R2、-SO2NH2、-S(O)2NHR2、-S(O)2N(R2)2、-NHS(O)2R2、-NR2S(O)2R2、-C(O)NH2、-C(O)NHR2、-C(O)N(R2)2、-C(O)R2、-C(O)H、-C(=S)R2、-NHC(O)R2、-NR2C(O)R2、-NHC(O)NH2、-NR2C(O)NH2、-NR2C(O)NHR2、-NHC(O)NHR2、-NR2C(O)N(R2)2、-NHC(O)N(R2)2、-CO2H、-CO2R2、-NHCO2R2、-NR2CO2R2、-R2、-CN、-NO2、-NH2、-NHR2、-N(R2)2、-NR2S(O)NH2、-NR2S(O)2NHR2、-NH2C(=NR2)NH2、-N=C(NH2)NH2、-C(=NR2)NH2、-NH-OH、-NR2-OH、-NR2-OR2、-N=C=O、-N=C=S、-Si(R2)3、-NH-NHR2、-NHC(O)NHNH2、NO、-N=C=NR2および-S-CNからなる群より独立に選択され、ここで各R2は独立にアルキルまたはアリールである。1つの態様において、R2はC1-C8アルキルである。もう1つの態様において、R2はフェニルもしくはピリジルなどの非置換アリール、または置換フェニルもしくは置換ピリジルなどの置換アリールである。
【0056】
1つの態様において、RbおよびRcのそれぞれは、C1-C8アルキル、C1-C8アルコキシ、アリール、アリール(C1-C8アルキル)、ハロゲン、-NH2、-NH(C1-C8アルキル)、-N(C1-C8アルキル)2、-CN、-C(=O)(C1-C8アルキル)、-(C=O)NH2、-(C=O)NH(C1-C8アルキル)、C(=O)N(C1-C8アルキル)2、-OH、-COOH、-COO(C1-C8アルキル)、-OCO(C1-C8アルキル)、-O(C=O)O(C1-C8アルキル)-NO2、-SH、-S(C1-C8アルキル)、-NH(C=O)(C1-C8アルキル)、-NH(C=O)O(C1-C8アルキル)、-O(C=O)NH(C1-C8アルキル)、-SO2(C1-C8アルキル)、-NHSO2(C1-C8アルキル)および-SO2NH(C1-C8アルキル)からなる群より独立に選択される。もう1つの態様において、RbおよびRcのそれぞれは、C1-C8アルキル、C1-C8アルコキシ、フェニル、フェニル(C1-C8アルキル)、ハロゲン、-CN、-NH2、-NH(C1-C8アルキル)、-N(C1-C8アルキル)2、-(C=O)CH3、-(C=O)NH2、-OH、-COOH、-COO(C1-C8アルキル)、-OCO(C1-C8アルキル)、-O(C=O)O(C1-C8アルキル)、-NO2、-SH、-S(C1-C8アルキル)および-NH(C=O)(C1-C8アルキル)からなる群より独立に選択される。さらにもう1つの態様において、RbおよびRcのそれぞれは、C1-C8アルキル、C1-C8アルコキシ、フェニル、フェニル(C1-C8アルキル)、フェノキシ、アリールオキシ、ハロゲン、-CN、-NH2、-NH-アリール、-(C=O)CH3、-(C=O)NH2、-OH、-COOH、-COO(C1-C8アルキル)、-OCO(C1-C8アルキル)、-COO-アリール、-OC(O)-アリール、-O(C=O)O(C1-C8アルキル)-NO2、-SH、-S(C1-C8アルキル)、-NH(C=O)(C1-C8アルキル)などからなる群より独立に選択される。
【0057】
qが0である場合には、ZはO、SおよびNRdからなる群より選択されるメンバーであり、ここでRdはHまたはC1-C8アルキルである。qが1である場合にはZはNである。1つの態様において、添字qは0であり、ZはO、SおよびNHからなる群より選択される。1つの場合には、添字nは0、1または2である。1つの状況では、ZはOまたはSである。もう1つの態様において、添字qは1である。1つの場合には、LはCH2またはSO2である。
【0058】
それぞれの場合または状況において、XはH、C1-8アルキルおよびフェニルからなる群より独立に選択されるメンバーである。
【0059】
1つの態様において、式IIIの化合物は部分式IIIa:

を有する。
【0060】
置換基RbおよびRc、ならびに添え字mおよびnは上記に定義した通りである。1つの場合には、LはCH2である。もう1つの場合には、LはSO2である。さらにもう1つの場合には、mは0である。なおもう1つの場合には、nは0である。
【0061】
もう1つの態様において、式IIIの化合物は部分式IIIa-1:

を有する。
【0062】
以下は、一般式IIIの特に好ましい化合物の例として挙げられる:
(a)(Z)-メチルアミノ-(4-((1-ベンジルインドール-3-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメート
(b)(Z)-メチルアミノ-(4-(1-(ベンゼンスルホニル)インドール-3-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメート
(c)(Z)-エチルアミノ-(4-((1-ベンジルインドール-3-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメート
(d)(Z)-エチルアミノ-(4-(1-(ベンゼンスルホニル)インドール-3-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメート。
【0063】
もう1つの局面において、本発明は、一般式V:

の化合物を提供し、
式中、Arはベンゼン、ピリジン、ピリミジンまたはヘテロアリール5員環から選択される環であり、Raは一般式Iにおけるものと同じ意味を有し、mはArがベンゼンである場合には1〜5の整数、Arがピリジンである場合には0〜4の整数、Arがピリミジンである場合には0〜3の整数であり、Arがヘテロアリール5員環である場合には0〜2の整数である。
【0064】
以下は、一般式Vの特に好ましい化合物の例として挙げられる:
(a)N-[(4-カルバムイミドイルフェニル)メチル]-1-(4-フルオロフェニル)-2,5-ジメチル-ピロール-3-カルボキサミド
(b)N-[(4-カルバムイミドイルフェニル)メチル]-1-(2-フルオロフェニル)-2,5-ジメチル-ピロール-3-カルボキサミド
(c)N-[(4-カルバムイミドイルフェニル)メチル]-1-(4-メトキシフェニル)-2,5-ジメチル-ピロール-3-カルボキサミド
(d)N-[(4-カルバムイミドイルフェニル)メチル]-1-(4-クロロフェニル)-2,5-ジメチル-ピロール-3-カルボキサミド
(e)N-[(4-カルバムイミドイルフェニル)メチル]-1-(2,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジオキシン-6-イル)-2,5-ジメチル-ピロール-3-カルボキサミド
(f)N-[(4-カルバムイミドイルフェニル)メチル]-2,5-ジメチル-1-(3-ピリジル)ピロール-3-カルボキサミド
(g)N-[(4-カルバムイミドイルフェニル)メチル]-2,5-ジメチル-1-(2-ピリジル)ピロール-3-カルボキサミド
(h)N-[(4-カルバムイミドイルフェニル)メチル]-2,5-ジメチル-1-チアゾール-2-イル-ピロール-3-カルボキサミド。
【0065】
一般式Vの化合物は、本明細書に記載された方法によって調製すること、および米国特許第7,625,944号に記載された方法によって補うことができる。上記に開示された化合物(a)〜(h)は、それらが血漿カリクレイン(PK)に対して10-7M(Ki<0.1μM)未満の阻害定数(Ki)を示し、それ故にこの酵素の特に強力な阻害薬であるという点で、PKの阻害薬として予想外の並外れた特性を有している。
【0066】
当業者は、式I、Ia、Ib、III、IIIaおよびIIIa-1の化合物が以下に示したような互変異性体形態で存在することができ、かついずれの形態も表記された一般式の範囲内にあると判断されることを理解するであろう:

式中、波線は、化合物(式I、Ia、Ib、III、IIIaまたはIIIa-1における)の残りの部分との結びつきを指し示している。
【0067】
化合物の調製
当業者が本発明の化合物および中間体を調製しうる合成経路にはさまざまなものがある。以下に示されたスキームは、そのような例示的な経路の1つを提示している。他の経路または経路の改変物も当業者には直ちに明らかであると考えられ、本発明の範囲内にあると考えられる。
【0068】
スキーム1.一般式Iの化合物の調製
一般式IIの化合物1mmolおよび炭酸カリウム6mmolを、水6mlおよびテトラヒドロフラン(THF)30mlの中に溶解させる。この混合物を激しく撹拌し、Cl-C(=O)-O-CH2-X 1mmolを添加する(X=H、C1-8アルキルまたはフェニル。撹拌を60分間続け、続いて有機層を取り出して減圧下で乾燥させ、対応する一般式Iの化合物を得る。

【0069】
上記の反応において、一般式Iの化合物上に存在する任意の反応基、例えばヒドロキシル基、カルボキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基またはイミノ基などを、反応の間は当業者に周知の従来の保護基によって保護し、その後、反応が完了した後にそれを周知の化学的方法によって除去してもよい。
【0070】
IV.薬学的組成物
ヒトおよび動物における血漿カリクレインに関連した疾患または病状の予防および治療のための組成物は、上記に提示した式IおよびIIIの化合物を有することに加えて、典型的には薬学的担体、添加剤および希釈剤も含む。
【0071】
本発明の化合物の投与のための薬学的組成物は、単位用量形態(unit dosage form)として都合良く提供することができ、薬学および薬物送達の技術分野で周知である方法のいずれかによって調製しうる。いずれの方法も、活性成分を、1つまたは複数の補助成分から構成される担体と一緒に合わせる段階を含む。一般に、組成物は、有効成分を、液体担体、微細化された固体担体またはその両方と均一かつ密接に合わせた上で、必要に応じて生成物を成形して所望の製剤にすることによって調製される。薬学的組成物中に、活性目標化合物は、疾患の過程または状態に対して所望の効果を生じさせるのに十分な量で含められる。
【0072】
有効成分を含む薬学的組成物は、例えば、錠剤、トローチ剤、ロゼンジ剤、水性または油性の懸濁剤、分散性の散剤または顆粒剤、乳剤および米国特許出願第2002-0012680号に記載されているような自己乳化剤、硬カプセル剤または軟カプセル剤、シロップ剤、エリキシル剤、液剤、口腔内パッチ(buccal patch)、経口ゲル、チューインガム、チュアブル錠、発泡散剤および発泡錠として、経口用途のために適した形態にあってよい。経口用途を意図する組成物は、薬学的組成物の製造のための当技術分野で公知の任意の方法に従って調製することができ、そのような組成物は、薬学的に洗練された風味の良い調製物を得るために、甘味剤、香味剤、着色剤、抗酸化剤および保存料からなる群より選択される1つまたは複数の作用物質を含むことができる。錠剤は、錠剤の製造に適した無毒性の薬学的に許容される添加剤と混合された有効成分を含む。これらの添加剤は、不活性希釈剤、例えばセルロース、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、グルコース、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、リン酸カルシウムまたはリン酸ナトリウムなど;粒状化剤および崩壊剤、例えばコーンスターチまたはアルギン酸など;結合剤、例えばPVP、セルロース、PEG、デンプン、ゼラチンまたはアラビアゴムなど;ならびに潤滑剤、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルクなどでありうる。これらの錠剤はコーティングされていなくても、または、胃腸管における崩壊および吸収を遅延させ、それによってより長期間にわたる持続的作用を与えるための公知の手法によって、腸溶性または別の様式でコーティングされていてもよい。例えば、モノステアリン酸グリセリンまたはジステアリン酸グリセリンなどの時間遅延性材料を用いてもよい。米国特許第4,256,108号;第4,166,452号および第4,265,874号に記載された手法によってそれらをコーティングして、制御放出のための浸透圧治療錠剤(osmotic therapeutic tablet)を形成することもできる。
【0073】
経口用途のための製剤はまた、有効成分が不活性の固体希釈剤、例えば炭酸カルシウム、リン酸カルシウムもしくはカオリンなどと混合されている硬ゼラチンカプセル、または有効成分が水もしくは油性媒質、例えば落花生油、流動パラフィンもしくはオリーブ油などと混合されている軟ゼラチンカプセルとして提示されてもよい。さらに、乳剤は非水性の混和性成分、例えば油などとともに調製し、モノジグリセリド、PEGエステルなどの表面活性剤によって安定化することができる。
【0074】
水性懸濁剤は、水性懸濁剤の製造のために適した添加剤と混合された活性材料を含む。そのような添加剤は、懸濁化剤、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、オレアジノ(oleagino)-プロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニル-ピロリドン、トラガカントゴムおよびアラビアゴムなど;分散剤または湿潤剤は、天然ホスファチド、例えばレシチン、またはアルキレンオキシドと脂肪酸との縮合物、例えばステアリン酸ポリオキシエチレン、またはエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合物、例えばヘプタデカエチルエノキシセタノール、またはエチレンオキシドと脂肪酸およびヘキシトール由来の部分エステルとの縮合物、例えばポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート、またはエチレンオキシドと脂肪酸およびヘキシトール無水物由来の部分エステルとの縮合物、例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートでありうる。水性懸濁剤はまた、1つまたは複数の保存料、例えばエチルもしくはn-プロピル、p-ヒドロキシ安息香酸、1つまたは複数の着色剤、1つまたは複数の香味剤、およびスクロースもしくはサッカリンなどの1つまたは複数の甘味剤も含みうる。
【0075】
油性懸濁剤は、有効成分を植物油、例えば落花生油、オリーブ油、ゴマ油もしくはココナッツ油、または流動パラフィンなどの鉱油中に懸濁化することによって製剤化することができる。油性懸濁剤は、増粘剤、例えば蜜蝋、固形パラフィンまたはセチルアルコールを含みうる。風味の良い経口用調製物を得るために、上に示したもののような甘味剤、および香味剤を添加することもできる。これらの組成物を、アスコルビン酸などの抗酸化剤の添加によって保存することもできる。
【0076】
水の添加による水性懸濁剤の調製のために適した分散性の散剤または顆粒剤は、分散剤または湿潤剤、懸濁化剤および1つもしくは複数の保存料と混合された有効成分を与える。適した分散剤または湿潤剤、および懸濁化剤は、既に上述したものによって例示される。そのほかの添加剤、例えば甘味剤、香味剤および着色剤も存在してよい。
【0077】
本発明の薬学的組成物が、水中油型乳剤の形態にあってもよい。油相は、植物油、例えばオリーブ油もしくは落花生油、または鉱油、例えば流動パラフィン、またはこれらの混合物であってよい。適した乳化剤は、天然ゴム、例えばアラビアゴムまたはトラガカントゴム、天然ホスファチド、例えばダイズ、レシチン、ならびに脂肪酸およびヘキシトール無水物由来のエステルまたは部分エステル、例えばソルビタンモノオレエート、および前記部分エステルとエチレンオキシドとの縮合物、例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートであってよい。乳剤はまた、甘味剤および香味剤も含みうる。
【0078】
シロップ剤およびエリキシル剤は、甘味剤、例えばグリセロール、プロピレングリコール、ソルビトールまたはスクロースとともに製剤化することができる。そのような製剤はまた、粘滑剤、保存料、ならびに香味剤および着色剤も含みうる。経口用液剤は、例えばシクロデキストリン、PEGおよび表面活性剤と組み合わせて調製することができる。
【0079】
薬学的組成物が、滅菌注射用の水性または油脂性の懸濁剤の形態にあってもよい。この懸濁剤は、公知の技術に従って、上述した適した分散剤または湿潤剤および懸濁化剤を用いて製剤化することができる。滅菌注射用の調製物は、無毒性の非経口に許容される希釈剤または溶媒中にある、例えば1,3-ブタンジオール中の溶液としての、滅菌注射用の溶液または懸濁液であってもよい。用いうる許容される媒体および溶媒には、水、リンゲル液および等張塩化ナトリウム溶液がある。さらに、滅菌固定油も溶媒または懸濁化媒質として慣例的に用いられる。この目的には、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含む、任意の無刺激性固定油を用いうる。さらに、オレイン酸などの脂肪酸も注射剤の調製に用いられる。
【0080】
本発明の化合物を、薬物の直腸投与用の坐剤の形態で投与することもできる。これらの組成物は、薬物を、常温では固体であるが直腸温度では液体であり、そのため直腸内で融解して薬物を放出すると考えられる適した非刺激性添加剤と混合することによって調製することができる。そのような材料には、カカオ脂およびポリエチレングリコールが含まれる。さらに、化合物を、液剤または軟膏による眼への送達を介して投与することもできる。さらになお、対象化合物の経皮的送達を、イオン導入パッチ(iontophoretic patch)によって達成することもできる。局所用途のためには、本発明の化合物を含む、クリーム剤、軟膏、ゼリー剤、液剤または懸濁剤などが用いられる。本明細書で用いる場合、局所適用は、含嗽剤およびうがい薬、ならびに眼科用途のための点眼剤の使用も含むものとする。
【0081】
本発明の化合物を、体腔内に配置したり永続的に植え込むことのできる、さまざまな従来のグラフト、ステントグラフトを含むステント、カテーテル、バルーン、バスケットまたは他のデバイスのうち任意のものが含まれうる、医用デバイス中に付着させるために製剤化することもできる。1つの特定の例としては、本発明の化合物を、インターベンション手法によって治療された身体領域に送達することのできるデバイスおよび方法があれば望ましいと考えられる。
【0082】
例示的な態様において、本発明の阻害薬は、ステントなどの医用デバイスの内部に付着させて、身体の一部分の治療のために治療部位に対して到達することができる。
【0083】
ステントは、治療薬(すなわち、薬物)の送達媒体として用いられている。静脈内ステントは一般に、冠血管または末梢血管内に永続的に植え込まれる。ステンドのデザインには、米国特許第4,733,655号(Palmaz)、第4,800,882号(Gianturco)または第4,886,062号(Wiktor)のものが含まれる。そのようなデザインには、金属製およびポリマー製のステントの両方、ならびに自己拡張性およびバルーン拡張式ステントが含まれる。また、例えば、米国特許第5,102,417号(Palmaz)に、ならびに国際特許出願第WO 91/12779号(Medtronic, Inc.)および第WO 90/13332号(Cedars-Sanai Medical Center)、米国特許第5,419,760号(Narciso, Jr.)および米国特許第5,429,634号(Narciso, Jr.)に開示されているように、ステントを血管構造との接触部位で薬物を送達するために用いることもできる。ステントはまた、1996年11月8日に提出された米国特許出願第08/746,404号(Donovan et al.)に開示されているように、遺伝子送達のために内腔壁にウイルスを送達するためにも用いられている。
【0084】
「付着した(deposited)」という用語は、阻害薬が、当技術分野で公知の方法によってデバイス内にコーティングされる、吸着される、位置される、または別の様式で組み入れられることを意味する。例えば、阻害薬を、医用デバイスを覆うかその範囲に広がっているポリマー材料の中に埋め込んでその内部から放出させる(「マトリックス型」)か、それに周りを囲ませてそこを通して放出させる(「リザーバー型」)ことができる。後者の例では、当技術分野で公知のそのような材料を生成させるための方法の1つまたは複数を用いて、阻害薬をポリマー材料の内部に捕捉すること、またはポリマー材料とカップリングさせることができる。他の製剤においては、阻害薬は、分離可能な結合および経時的な放出によってコーティングの必要なしに医用デバイスの表面に連結させてもよく、能動的な力学的もしくは化学的過程によって除去することもでき、または植え込み部位で阻害薬を提示する永続的に固定化された形態にある。
【0085】
1つの態様において、阻害薬は、ステントなどの医用デバイスに対する生体適合性コーティングの形成時にポリマー組成物とともに組み入れられる。これらの構成要素から生じるコーティングは典型的には均質であり、植え込み用に設計された多数のデバイスのコーティングのために有用である。
【0086】
ポリマーは、所望の放出速度または所望のポリマー安定性の度合いに応じて生体安定性(biostable)または生体吸収性ポリマーのいずれであってもよいが、この態様に関しては生体吸収性ポリマーが好ましく、その理由は、生体安定性ポリマーとは異なり、それは植え込み後に長くは存在しないため、任意の有害で慢性的な局所反応を引き起こさないと考えられるためである。用いうると考えられる生体吸収性ポリマーには、ポリ(L-乳酸)、ポリカプロラクトン、ポリグリコリド(PGA)、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLLA/PGA)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ヒドロキシブチレート-co-バレレート)、ポリジオキサノン、ポリオルトエステル、ポリ酸無水物、ポリ(グリコール酸)、ポリ(D-乳酸)、ポリ(L-乳酸)、ポリ(D,L-乳酸)、ポリ(D,L-ラクチド)(PLA)、ポリ(L-ラクチド)(PLLA)、ポリ(グリコール酸-co-トリメチレンカーボネート)(PGA/PTMC)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリジオキサノン(PDS)、ポリホスホエステル、ポリホスホエステルウレタン、ポリ(アミノ酸)、シアノアクリレート、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ(イミノカーボネート)、コポリ(エーテル-エステル)(例えば、PEO/PLA)、ポリアルキレンオキサレート、ポリホスファゼン、ならびにフィブリン、フィブリノーゲン、セルロース、デンプン、コラーゲンおよびヒアルロン酸などの生体分子、ポリε-カプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロピラン、ポリシアノアクリレート、ヒドロゲルの架橋性または両親媒性のブロックコポリマー、ならびに当技術分野で公知のその他の適した生体吸収性ポリマーが非限定的に含まれる。また、例えばポリウレタン、シリコンおよびポリエステルのように慢性的組織反応性が比較的低い生体安定性ポリマーを用いることもでき、それらが溶解して医用デバイス上で硬化または重合することができるならば、ポリオレフィン、ポリイソブチレンおよびエチレン-αオレフィンコポリマー;アクリルポリマーおよびコポリマー、ハロゲン化ビニルポリマー、例えばポリ塩化ビニルなど;ポリビニルピロリドン;ポリビニルエーテル、例えばポリビニルメチルエーテルなど;ポリハロゲン化ビニリデン、例えばポリフッ化ビニリデンおよびポリ塩化ビニリデンなど;ポリアクリロニトリル、ポリビニルケトン;ポリビニル芳香族、例えばポリスチレン、ポリビニルエステル、例えばポリ酢酸ビニル;ビニルモノマーとそれ同士およびオレフィンとのコポリマー、例えばエチレン-メタクリレート酸メチルコポリマー、アクリロニトリル-スチレンコポリマー、ABS樹脂およびエチレン-酢酸ビニルコポリマーなど;ピランコポリマー;ポリヒドロキシ-プロピル-メタクリルアミド-フェノール;ポリヒドロキシエチル-アスパルトアミド-フェノール;パルミトイル残基によって置換されたポリエチレンオキシド-ポリリジン;ポリアミド、例えばナイロン66(Nylon 66)およびポリカプロラクタムなど;アルキド樹脂、ポリカーボネート;ポリオキシメチレン;ポリイミド;ポリエーテル;エポキシ樹脂、ポリウレタン;レーヨン;レーヨン-トリアセテート;セルロース、酢酸セルロース、セルロースブチレート;酢酸セルロースブチレート;セロファン;硝酸セルロース;プロピオン酸セルロース;セルロースエーテル;ならびにカルボキシメチルセルロースなどの他のポリマーを用いることもできると考えられる。
【0087】
ポリマーおよび半透性ポリマーマトリックスを、弁、ステント、チューブ、装具のような造形品として形成することもできる。
【0088】
本発明の1つの態様において、本発明の阻害薬は、ステントまたはステント-グラフトデバイスとして形成されたポリマーまたは半透性ポリマーマトリックスにカップリングされる。
【0089】
典型的には、ポリマーは、植え込み型デバイスの表面に対してスピンコーティング、浸漬または吹き付けによって塗布される。当技術分野で公知のそのほかの方法を、この目的のために利用することもできる。吹き付けの方法には、慣習的な方法、ならびにインクジェット型のディスペンサーを用いるマイクロデポジション法が含まれる。さらに、ポリマーをデバイスの特定の部分のみに配置するために光パターン形成を用いて、ポリマーを植え込み型デバイス上に付着させることもできる。デバイスのこのコーティングは、デバイスの周りに均一な層を与え、それはデバイスのコーティングを通してのさまざまな分析物の拡散の改善を可能にする。
【0090】
本発明の好ましい態様において、阻害薬は、医用デバイスが配置される環境中へのポリマーコーティングからの放出のために製剤化される。好ましくは、阻害薬は、溶出を制御するためのポリマー担体または層を伴ういくつかの周知の手法のうち少なくとも1つを用いて、長期的な時間枠(例えば、数カ月)にわたって、制御された様式で放出される。これらの手法のいくつかは、以前に米国特許出願第20040243225A1号に記載されており、その開示内容はすべてその全体が組み入れられる。
【0091】
さらに、例えば、その全体が本明細書に組み入れられる米国特許第6,770,729号に記載されているように、試薬およびポリマー組成物の反応条件を、ポリマーコーティングからの阻害薬の放出が制御可能になるように操作することもできる。例えば、1つまたは複数のポリマーコーティングの拡散係数を、ポリマーコーティングからの阻害薬の放出を制御するために調節することができる。この主題の1つの変形物においては、医用デバイスが配置される環境に存在する分析物(例えば、ポリマーのある部分の崩壊または加水分解を促進する分析物)が、ポリマー組成物の内部の1つまたは複数の構成要素に接近する能力(そして例えば、それによってポリマーコーティングからの阻害薬の放出を調節する能力)を調節するために、1つまたは複数のポリマーコーティングの拡散係数を制御することができる。本発明のさらにもう1つの態様は、それぞれが複数の拡散係数を有する複数のポリマーコーティングを有するデバイスを含む。本発明のそのような態様において、ポリマーコーティングからの阻害薬の放出は、その複数のポリマーコーティングによって調節することができる。
【0092】
さらにもう1つの態様において、ポリマーコーティングからの阻害薬の放出は、1つまたは複数の内因性もしくは外因性化合物の存在、またはポリマー組成物のpHといった、ポリマー組成物の特性の1つまたは複数を調節することによって制御される。例えば、ポリマー組成物のpHの低下に応じて阻害薬を放出するように、ある種のポリマー組成物を設計することができる。または、過酸化水素の存在に応じて阻害薬を放出するように、ある種のポリマー組成物を設計することもできる。
【0093】
V.血漿カリクレイン依存性の疾患または病状
不活性酵素原前駆体である血漿プレカリクレイン(プレPK)として血漿中に存在するセリンプロテアーゼである血漿カリクレイン(PK)は、FXIIaによるタンパク質分解によって活性化される。正のフィードバックループの中で、PKは酵素原FXIIをタンパク質分解によって活性化してさらなるFXIIa形成を招き、自らの活性化をさらに増幅する。FXIIaは酵素原FXIも活性化して活性FXIaにし、それは血液凝固の内因性(接触)経路の惹起をもたらし、その結果、トロンビンの生成およびフィブリノーゲンの切断をもたらす。重要なこととして、PKは高分子量キニノーゲン(HMWK)を切断してブラジキニンを生成させる。ブラジキニンは、内皮細胞の表面上に存在するその受容体B1およびB2を活性化することによって血管の内層を覆う内皮細胞間の密着結合を開裂させ、それ故に体液および血漿タンパク質が組織中に血管外遊出する、血管透過性増大として知られる状態を起こさせる。血液脳関門の密着結合の破壊、およびその結果起こる血漿およびタンパク質の脳内への漏出(浮腫)は、アルツハイマー病、パーキンソン病および多発性硬化症(MS)などの神経変性疾患、ならびにCNS感染症および脳腫瘍と関連づけられている。例えば、腫瘍周囲脳浮腫は、多形性膠芽腫の患者の予後をさらに不良にする(Schoenegger K, Oberndorfer S, EurJ Neurol. 2009 Jul;16(7):874-8)。ブラジキニン形成によって引き起こされた血管透過性増大は、血管性浮腫、類嚢胞黄斑浮腫、糖尿病性黄斑浮腫、網膜静脈閉塞後の黄斑浮腫、脳卒中後または頭部外傷後の脳血管性浮腫、および毛細血管漏出症候群といったさまざまな疾患において、多くの組織および臓器における過剰な体液の蓄積(浮腫)をもたらす。例えば、PK阻害薬ASP-440(WO 2008/016883号および米国特許第7,625,944号により既に公知)は、BK受容体拮抗薬Hoe-140と同様に、アンジオテンシン-IIを投与した齧歯動物における網膜血管透過性を低下させることが示されている(Phipps, J.A., et al. (2009) Hypertension 53: 175-181)。プレPKおよび接触系の活性化は、異物混入ヘパリンが投与された患者などで、アナフィラキシーの原因になることも示されている(Kishimoto, T.K., et al. (2008) N. Engl. J. Med. 358: 2457-2467)。
【0094】
例えば、血管原性浮腫におけるBKの重要性は、PKの主な内因性阻害因子である機能的C1-インヒビターを個体がほとんどまたは全く持たない遺伝性血管性浮腫に、さらに如実に現れている。これらの個体ではブラジキニンが高レベルで生成され、その結果、血漿から軟部組織中への体液およびタンパク質の血管外遊出が起こり、それ故に生命に危険のある浮腫が引き起こされる。
【0095】
例えば、ブラジキニンおよびその受容体は、腫瘍血管新生(Ikeda, Y., et al. (2004) Cancer Research 64: 5178-5185)、肺性高血圧(Taraseviciene-Stewart, L., et al. (2005) Peptides 26: 1292-1300)、および喘息(Barnes, P.J., (1992) Recent Progress on Kinins, AAS38/III, Birkhauser Verlag Basel)に関与することが示されている。
【0096】
例えば、C1-インヒビターは、加齢性黄斑変性症(Ennis, S., et al (2008) Lancet 372: 1828-1834)、および臓器移植後または心筋梗塞後の虚血-再灌流傷害(Inderbitzin, D., et al. (2004) Eur. Surg. Res. 36: 142-147;Horstick, G., et al. (2001) Circulation 104: 3125-3131)の病態にも関与することが知られている。
【0097】
例えば、血管性浮腫性病状の患者において、PKの低分子ポリペプチド阻害薬(DX-88、エカランチド(ecallantide))は、遺伝性血管性浮腫の患者における浮腫を緩和する(Williams, A. et al. (2003) Transfus. Apher. Sci. 29:255-258;Schneider, L. et al. (2007) J Allergy Clin Immunol. 120(2):416-22;Levy, J.H. et al. (2006) Expert Opin. Invest. Drugs 15: 1077-1090)。ブラジキニンB2受容体拮抗薬であるイカチバント(icatibant)も、遺伝性血管性浮腫の治療に有効である(Bork, K. et al. (2007) J. Allergy Clin. Immunol. 119: 1497-1503)。PKはブラジキニンを生成させるため、PKの阻害によってブラジキニン産生が阻害されると考えられる。
【0098】
例えば、線溶治療(組織プラスミノーゲンアクチベーター、ストレプトキナーゼなど)に起因する血栓形成に関しては、線維素溶解を受けている患者でより高いレベルのPKが認められる(Hoffmeister, H.M. et al. (1998) J. Cardiovasc. Pharmacol. 31: 764-72)。血漿中および血液中ではプラスミンを介した内因性経路の活性化が起こることが示されており、内因性経路の構成成分のいずれかが欠損した個体の血漿中ではそれが顕著に弱まっていた(Ewald, G.A. et al. (1995) Circulation 91:28-36)。
【0099】
例えば、急性MIを過去に経験した個体では、活性化PKおよびトロンビンのレベルの上昇が見いだされている(Hoffmeister, H.M., et al (1998) Circulation 98: 2527-33)。
【0100】
例えば、DX-88は、虚血性脳卒中の動物モデルにおいて脳浮腫、梗塞体積および神経学的欠陥を減少させた(Storini, C., et al. (2006) J. Pharm. Exp. Ther. 318:849-854)。C1-INHは、中大脳動脈閉塞のマウスモデルにおいて梗塞サイズを減少させた(De Simoni, M.G., et al. (2004) Am. J. Pathol. 164:1857-1863;Akita, N., et al. (2003) Neurosurgery 52: 395-400)。例えば、PK阻害薬ASP-440は、虚血性脳卒中のラットモデルにおける梗塞体積および脳血管性浮腫、ならびに出血性脳卒中のモデルにおける脳内出血の広がりを減少させることが示された(Methods for Treatment of Kallikrein-Related Disorders, WIPO, PCT WO 2009/0971号)。B2受容体拮抗薬は、虚血性脳卒中の動物モデルにおいて梗塞体積、脳腫脹および好中球蓄積を減少させることが見いだされており、神経保護的であった(Zausinger, S., et al.,(2003) Acta Neurochir. Suppl. 86: 205-207;Lumenta, D.B., et al. (2006) Brain Res. 1069: 227-234;Ding-Zhou, L., et al. (2003) Br. J. Pharmacol 139: 1539-1547)。
【0101】
心肺バイパス(CPB)術に伴う合併症に関しては、CPBの際に接触系が活性化され(Wachtfogel, Y.T. (1989) Blood 73:468)、その結果、血漿ブラジキニンの最大20倍の上昇がもたらされることが見いだされている(Cugno, M. et al. (2006) Chest 120: 1776-1782;およびCampbell, D.J. et al. (2001) Am. J. Physiol. Reg. Integr. Comp. Physiol 281: 1059-1070)。CPBに伴う毛細血管漏出症候群は、PK阻害薬を用いて軽減することができる(Mojcik, C.F., Levy, J.H., Ann Thorac Surg. 2001 Feb;71(2):745-54)。
【0102】
例えば、PK阻害薬であるP8720およびPKSI-527は、関節炎のラットモデルにおける関節腫脹も軽減することが見いだされている(De La Cadena, R.A. et al (1995) FASEB J. 9: 446-452;Fujimori, Y. (1993) Agents Action 39: 42-48)。また、関節炎の動物モデルにおける炎症に、接触系の活性化が随伴することも見いだされている(Blais, C. Jr. et al.(1997)Arthritis Rheum. 40:1327-1333)。
【0103】
例えば、PK阻害薬P8720は、炎症性腸疾患IBDの急性および慢性のラットモデルにおいて炎症を軽減することが見いだされている(Stadnicki, A. et al. (1998) FASEB J, 12(3):325-33;Stadnicki, A. et al. (1996) Dig. Dis. Sci. 41: 912-920;De La Cadena, R.A., et al. (1995) FASEB J. 9: 446-452)。急性および慢性の腸炎の際には接触系が活性化される(Sartor, R.B. et al. (1996) Gastroenterology 110: 1467-1481)。B2受容体拮抗薬、高分子量キニノーゲンに対する抗体、またはキニノーゲンレベルの低下により、IBDの動物モデルにおける臨床病態が軽減されることが見いだされている(Sartor, R.B. et al. (1996) Gastroenterology 110:1467-1481;Arai, Y. et al. (1999) Dig. Dis. Sci. 44: 845-851;Keith, J.C. et at (2005) Arthritis Res. Therapy 7: R769-R776)。
【0104】
例えば、PKおよびFXIIaの阻害薬であるH-D-Pro-Phe-Arg-CMK、ならびにC1-インヒビターは、動物において複数の臓器における血管透過性を低下させ、LPSまたは細菌により誘発される敗血症における障害を軽減することが示されている(Liu, D. et al. (2005) Blood 105: 2350-2355;Persson, K. et al. (2000) J. Exp. Med. 192: 1415-1424)。C1-インヒビターを投与された敗血症患者では臨床的改善が観察され(Zeerleder, S. et al. (2003) Clin. Diagnost. Lab. Immunol. 10: 529-535;Caliezi, C., et al. (2002) Crit. Care Med. 30: 1722-8;およびMarx, G. et al. (1999) Intensive Care Med. 25: 1017-20)。致死的な敗血症の症例では、接触活性化の度合いがより高いことが見いだされている(Martinez-Brotons, F. et al. (1987) Thromb. Haemost. 58: 709-713;Kalter, E.S. et al. (1985) J. Infect. Dis. 151: 1019-1027)。
【0105】
例えば、糖尿病患者、特に増殖性網膜症を有する者ではプレPKレベルがより高く、フルクトサミンレベルと相関することが見いだされている(Gao, B.-B., et al. (2007) Nature Med. 13: 181-188;Kedzierska, K. et al. (2005) Archives Med. Res. 36: 539-543)。プレPKが糖尿病患者で上昇していて、感覚運動ニューロパチーを有する者で最も高値であることも見いだされている(Christie, M. et al. (1984) Thromb. Haemostas. 52:221-223)。プレPKレベルは糖尿病患者で上昇しており、血圧上昇と関連があり、アルブミン排泄率と独立に相関し、かつマクロアルブミン尿症を有する糖尿病患者で上昇しており、これらのことはプレPKが進行性腎症のマーカーとなる可能性を示唆する(Jaffa, A.A. et al. (2003) Diabetes 52: 1215-1221)。B1受容体拮抗薬は、ストレプトゾシン誘発糖尿病を有するラットにおいて、増大した血管透過性を低下させ、皮膚および網膜を含むさまざまな臓器内への血漿漏出を減少させることが見いだされている(Lawson, S.R. et al. (2005) Eur. J. Pharmacol. 514: 69-78;Lawson SR. Gabra BH, et al (2005) Regul Pept. 124:221-4)。B1受容体拮抗薬はまた、ストレプトゾシン投与マウスが高血糖症および腎機能不全を発症するのも防止する(Zuccollo, A., et al. (1996) Can. J. Physiol. Pharmacol. 74:586-589)。
【0106】
このため、本発明の化合物を用いて治療しうる疾患または病状には、虚血性脳卒中、出血性脳卒中、高血圧およびその血管合併症(特に網膜症および腎症)、脳血管性浮腫、肺性高血圧、炎症、疼痛、急性心筋梗塞(MI)、深部静脈血栓症(DVT)、脳卒中後またはMI後の線溶治療(組織プラスミノーゲンアクチベーター、ストレプトキナーゼなどを用いる)による合併症、狭心症、血管性浮腫、敗血症、関節炎、心肺バイパスの合併症、毛細血管漏出症候群、炎症性腸疾患、糖尿病およびその血管合併症(特に網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、腎症およびニューロパチー)、加齢性黄斑変性症、網膜静脈閉塞、脳浮腫、虚血-再灌流傷害、血管新生(例えば、癌における)、喘息、アナフィラキシー、ならびに神経学的病状(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、CNS感染症および多形性膠芽腫)の脳血管合併症が非限定的に含まれる。
【0107】
それを必要とする対象に投与されると、本発明の一般式IおよびIIIのプロドラッグ化合物はインビボでPK阻害薬に変換され、そのため、血液凝固の内因性経路、ならびに高分子量キニノーゲンからのブラジキニンの形成の両方の阻害を招くと考えられる。この点に関して、本発明のプロドラッグ化合物には多くの薬学的利点がある。1つの利点は、臨床的に最も有用な経路、例えば経口、皮下、局所(眼科用点眼剤を含む)、硝子体内などを介した、対象へのそれらの投与が、対応するPK阻害薬化合物(WO 2008/016883号および米国特許第7,625,944号により既に公知)の同程度の用量での投与と比較して、血漿中または疾患に罹患した臓器(例えば、眼)におけるPK阻害薬化合物のより高いレベルをもたらすと考えられる点にある。このことはインビボでのPKのより高度の阻害をもたらし、そのため、より大きな治療効果をもたらすと考えられる。もう1つの利点は、皮下、筋肉内または局所などの経路を介したそれらの投与が、血漿中または疾患に罹患した臓器(例えば、眼)におけるPK阻害薬化合物のより緩徐な出現をもたらし、そのため、インビボで化合物の治療的に有用なレベルが維持される期間が有効に延長されると考えられる点である。このため、PK阻害薬による治療を必要とする対象における治療的レベルを維持するために必要な投薬はより低い頻度で済むと考えられる。
【0108】
本発明で提供される一般式Vの化合物は、WO 2008/016883号および米国特許第7,625,944号に開示された化合物を上回る多くの利点および新規特性も有する。特に、そのような化合物は、PKに対する高い阻害活性を有し、そのため、脳卒中または網膜静脈閉塞などのように、PK活性の強力な阻害を必要とするPKに関連した疾患病状の治療のために用いることができる。それらはまた、皮下経路を介して投与された場合に血漿からのより長いインビボ排出半減期も示し、それ故に、糖尿病性黄斑浮腫のような、PK活性の持続的阻害を必要とするPKに関連した疾病状態を治療するために有用な可能性がある。
【実施例】
【0109】
以下の例は、本発明のさまざまな局面を例示するために提示される。
【0110】
実施例1
(Z)-ヘキシルアミノ-(4-((1-ベンジルピラゾール-4-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメートの調製
塩酸1-ベンジル-N-[(4-カルバムイミドイルフェニル)メチル)ピラゾール-4-カルボキサミド30mgおよび炭酸カリウム35mgを、水0.4mlおよびテトラヒドロフラン2mlの中に溶解させた。この混合物を室温で撹拌し、クロロギ酸n-ヘキシル(Sigma-Aldrich)0.013mlを添加した。撹拌を1時間続け、その後に有機層を取り出して減圧下で乾燥させ、合成目標物を得た(収率90%超)。化合物の質量をLC/MS/MSを用いて確かめた。
算出質量:461.6;実測質量(m+1):462.5
【0111】
実施例2
(Z)-ヘキシルアミノ-(4-((1-(4-フルオロフェニル)-2,5-ジメチル-ピロール-3-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメートの調製
塩酸N-[(4-カルバムイミドイルフェニル)メチル]-1-(4-フルオロフェニル)-2,5-ジメチル-ピロール-3-カルボキサミド48mgおよび炭酸カリウム50mgを、水0.6mlおよびテトラヒドロフラン3mlの中に溶解させた。この混合物を室温で撹拌し、クロロギ酸n-ヘキシル(Sigma-Aldrich)0.019mlを添加した。撹拌を1時間続け、その後に有機層を取り出して減圧下で乾燥させ、合成目標物を得た(収率90%超)。化合物の質量をLC/MS/MSを用いて確かめた。
算出質量:492.6;実測質量(m+1):493.3
【0112】
実施例3
(Z)-メチルアミノ-(4-((1-ベンジルピラゾール-4-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメートの調製
塩酸1-ベンジル-N-[(4-カルバムイミドイルフェニル)メチル]ピラゾール-4-カルボキサミド57mgおよび炭酸カリウム59mgを、水0.72mlおよびテトラヒドロフラン3.6mlの中に溶解させた。この混合物を室温で撹拌し、クロロギ酸メチル(Sigma-Aldrich)0.012mlを添加した。撹拌を1時間続け、その後に有機層を取り出して減圧下で乾燥させ、合成目標物を得た。化合物の質量をLC/MS/MSを用いて確かめた。
算出質量:391.2;実測質量(m+1):392.2
【0113】
実施例4
(Z)-メチルアミノ-(4-((1-(4-フルオロフェニル)-2,5-ジメチル-ピロール-3-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメートの調製
塩酸N-[(4-カルバムイミドイルフェニル)メチル]-1-(4-フルオロフェニル)-2,5-ジメチル-ピロール-3-カルボキサミド75mgおよび炭酸カリウム78mgを、水0.95mlおよびテトラヒドロフラン4.75mlの中に溶解させた。この混合物を室温で撹拌し、クロロギ酸メチル(Sigma-Aldrich)0.016mlを添加した。撹拌を1時間続け、その後に有機層を取り出して減圧下で乾燥させ、合成目標物を得た。化合物の質量をLC/MS/MSを用いて確かめた。
算出質量:422.2;実測質量(m+1):423.2
【0114】
実施例5
(Z)-エチルアミノ-(4-((1-(4-フルオロフェニル)-2,5-ジメチル-ピロール-3-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメートの調製
塩酸N-[(4-カルバムイミドイルフェニル)メチル]-1-(4-フルオロフェニル)-2,5-ジメチル-ピロール-3-カルボキサミド130mgおよび炭酸カリウム130mgを、水1.6mlおよびテトラヒドロフラン8mlの中に溶解させた。この混合物を室温で撹拌し、クロロギ酸エチル(Sigma-Aldrich)0.031mlを添加した。撹拌を1時間続け 、その後に有機層を取り出して減圧下で乾燥させ、合成目標物を得た。化合物の質量をLC/MS/MSを用いて確かめた。
算出質量:436.2;実測質量(m+1):437.2
【0115】
実施例6
(Z)-プロピルアミノ-(4-((1-(4-フルオロフェニル)-2.5-ジメチル-ピロール-3-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメートの調製
塩酸N-[(4-カルバムイミドイルフェニル)メチル]-1-(4-フルオロフェニル)-2,5-ジメチル-ピロール-3-カルボキサミド120mgおよび炭酸カリウム120mgを、水1.5mlおよびテトラヒドロフラン7.5mlの中に溶解させた。この混合物を室温で撹拌し、クロロギ酸プロピル(Sigma-Aldrich)0.034mlを添加した。撹拌を1時間続け、その後に有機層を取り出して減圧下で乾燥させ、合成目標物を得た。化合物の質量をLC/MS/MSを用いて確かめた。
算出質量:450.2;実測質量(m+1):451.2
【0116】
実施例7
(Z)-ベンジルアミノ-(4-((1-(4-フルオロフェニル)-2,5-ジメチル-ピロール-3-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメートの調製
塩酸N-[(4-カルバムイミドイルフェニル)メチル]-1-(4-フルオロフェニル)-2,5-ジメチル-ピロール-3-カルボキサミド115mgおよび炭酸カリウム115mgを、水1.4mlおよびテトラヒドロフラン7mlの中に溶解させた。この混合物を室温で撹拌し、クロロギ酸ベンジル(Sigma-Aldrich)0.04mlを添加した。撹拌を1時間続け、その後に有機層を取り出して減圧下で乾燥させ、合成目標物を得た。化合物の質量をLC/MS/MSを用いて確かめた。
算出質量:498.2;実測質量(m+1):499.2
【0117】
実施例8
(Z)-エチルアミノ-(4-((1-ベンジルピラゾール-4-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメートの調製
二酢酸1-ベンジル-N-[(4-カルバムイミドイルフェニル)メチル]ピラゾール-4-カルボキサミド65mgおよび炭酸カリウム65mgを水0.75mlおよびテトラヒドロフラン3.75mlの中に溶解させた。この混合物を室温で撹拌し、クロロギ酸エチル(Sigma-Aldrich)0.015mlを添加した。撹拌を1時間続け、その後に有機層を取り出して減圧下で乾燥させ、合成目標物を得た。化合物の質量をLC/MS/MSを用いて確かめた。
算出質量:405.2;実測質量(m+1):406.2
【0118】
実施例9
(Z)-ヘキシルアミノ-(4-((1-ベンジルピラゾール-4-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメートの、インビボでの1-ベンジル-N-[(4-カルバムイミドイルフェニル)メチル]ピラゾール-4-カルボキサミドへの変換
本発明のプロドラッグがインビボで公知のPK阻害薬に変換されることを実証するために、若齢雄性Sprague-Dawleyラットに対して、プロドラッグ化合物(Z)-ヘキシルアミノ-(4-((1-ベンジルピラゾール-4-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメートを、水性溶媒中に5mg/kgとして経口投与した。さまざまな時間間隔で動脈カテーテルを介して血液を採取して、クエン酸を加えた収集管に入れ、遠心分離によって血漿を生成させた。血漿試料中の活性化合物1-ベンジル-N-[(4-カルバムイミドイルフェニル)メチル]ピラゾール-4-カルボキサミドの濃度をLC/MS/MSを用いて判定したところ、ピークレベルは平均でおよそ60nMであることが明らかになった。血漿中の活性化合物の出現は、プロドラッグ化合物がインビボで活性化合物に変換されたことを実証している。
【0119】
実施例10
(Z)-エチルアミノ-(4-((1-(4-フルオロフェニル)-2,5-ジメチル-ピロール-3-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメートの、インビボでのN-[(4-カルバムイミドイルフェニル)メチル]-1-(4-フルオロフェニル)-2,5-ジメチル-ピロール-3-カルボキサミドへの変換
若齢雄性Sprague-Dawleyラットに対して、プロドラッグ化合物(Z)-エチルアミノ-(4-((1-(4-フルオロフェニル)-2,5-ジメチル-ピロール-3-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメートを、水性溶媒中に5mg/kgとして経口投与した。さまざまな時間間隔で動脈カテーテルを介して血液を採取して、クエン酸を加えた収集管に入れ、遠心分離によって血漿を生成させた。血漿試料中の活性化合物N-[(4-カルバムイミドイルフェニル)メチル]-1-(4-フルオロフェニル)-2,5-ジメチル-ピロール-3-カルボキサミドの濃度をLC/MS/MSを用いて判定したところ、ピークレベルは平均でおよそ120nMであることが明らかになった。血漿中の活性化合物の出現は、プロドラッグ化合物がインビボで活性化合物に変換されたことを実証している。
【0120】
実施例11
N-[(4-カルバムイミドイルフェニル)メチル]-1-(4-フルオロフェニル)-2,5-ジメチル-ピロール-3-カルボキサミドの合成
1-(4-フルオロフェニル)-2,5-ジメチル-ピロール-3-カルボン酸(Enamine, Kiev, Ukraine)808mg(4mmol)を塩化メチレン100mlおよびジメチルスルホキシド30mlの中に溶解させ、撹拌しながらPS-カルボジイミド(Biotage, Charlotte, NC, USA)4g、換算値1.33mmol/gに添加し、塩化メチレン40mlにより湿化させた。塩酸4-(アミノメチル)ベンズアミド(Astatech, Bristol, PA, USA)892mg(4mmol)およびHOBt 540mgをジメチルスルホキシド50mlの中に溶解させて、撹拌混合物に添加し、その後にジイソプロピルエチルアミン(Sigma-Aldrich)1.4mlを添加した。この混合物を室温で7日間撹拌し、その後に消費後の樹脂を除去するために濾過した。水50mlを濾液150mlに添加して、10分間激しく撹拌し、続いて20分間静置して塩化メチレンから水相を分離させた。水相を注意深く取り出し、Tris塩基を最終濃度20mMまで添加することによって中和し、続いて、20mM Tris-HCl、pH 8で平衡化したベッド容積20mlのCM-Sepharose(Sigma-Aldrich)陽イオン交換カラムに適用した。カラムをメタノール40mlで洗浄し、続いてギ酸5%を含むメタノール40mlで溶出させた。蒸発による溶媒の除去後に、標的化合物は黄色がかった油状固形物として回収された。化合物の質量をLC-MS/MSによって確かめた。
算出質量:364.2;実測質量(m+1):365.2。
【0121】
実施例12
N-[(4-カルバムイミドイルフェニル)メチル]-1-(4-クロロフェニル-2,5-ジメチル-ピロール-3-カルボキサミドの合成
出発カルボン酸として1-(4-クロロフェニル)-2,5-ジメチル-ピロール-3-カルボン酸(Enamine, Kiev, Ukraine)を用いた点を除き、実施例7に記載した通りに、これを合成した。
算出質量:380.1;実測質量(m+1):381.1。
【0122】
実施例13
N-[(4-カルバムイミドイルフェニル)メチル]-1-(4-メトキシフェニル)-2,5-ジメチル-ピロール-3-カルボキサミドの合成
出発カルボン酸として1-(4-メトキシフェニル)-2,5-ジメチル-ピロール-3-カルボン酸(Enamine, Kiev, Ukraine)を用いた点を除き、実施例8に記載した通りに、これを合成した。
算出質量:376.2;実測質量(m+1):377.1。
【0123】
実施例14
ヒト血漿カリクレイン(PK)をEnzyme Research Laboratories(Gary, Indiana)から入手した。PKの酵素活性は合成ペプチド基質H-D-Pro-Phe-Arg-pNA(Bachem, Peninsula City, California)を用いてアッセイし、この際、酵素による基質の切断の結果として起こるA405の増加をMolecular Devices Vmax Kinetic Microplate Readerを用いて測定した。PKの非阻害下の(対照)活性は、個々のマイクロタイタープレートウェル中で、PK溶液(0.05M HEPES、pH 7.5、0.01% Triton X-100中、2nM)190μlを、H-D-Pro-Phe-Arg-pNA(DMSO中、2mM)10μlに添加し、直ちに振盪して、405nmでの吸光度(A405)の増加速度を120〜180秒にわたり求めることによって求めた。並行して、別のウェルの中で一般式Vの化合物を合成基質と混合し、最終的な200μlの反応混合物における最終濃度が0.01〜10μMに達するようにした上で、PK溶液190μlの添加によって反応を開始させた。一般式Vの化合物の存在下における切断速度の減少はPK活性の阻害を表し、相互作用の見かけの阻害定数(Ki,app)は、以下の計算式を用いることによって求めることができる‐
Ki,app=[I]/(PKcontrol/PKI-1)
式中、[I]=阻害化合物の濃度であり、PKcontrol=非阻害下のPKによる基質切断速度であり、PKI=阻害化合物の存在下におけるPKによる基質切断率である。
【0124】
相互作用のKiの補正値は、算出されたKi,appから、以下のようにして得ることができる‐
Ki=Ki,app/([S]/Km+1)
式中、[S]=合成基質の濃度であり、Km=合成基質のPKに対するミカエリス定数であって、この場合、これらの条件下では0.33mMであることが実験的に求められている。
【0125】
以下の表は、この方法を用いて求めた、一般式Vの選択された化合物のKi値を示している。

【0126】
実施例15
皮下に植え込んだAlzetミニポンプを用いた、Sprague-Dawleyラットへの血管収縮性ペプチド、アンジオテンシン-IIの3〜7日間にわたる持続注入は血圧上昇をもたらし、これは網膜血管透過性の増大を伴うが、それは先行技術において記載された硝子体フルオレセイン蛍光測定法の手法を用いて測定することができる(Clermont, A.C., et al (2006) Invest Ophthalmol Vis Sci.;47: 2701-8)。血漿カリクレイン阻害薬ASP-440(米国特許第7,625,944号)は、この動物モデルにおいて網膜血管透過性を低下させるのに有効であることが示されている(Phipps, J.A., et al. (2009) Hypertension 53: 175-181)。経口、皮下、局所または硝子体内の経路を介した本発明の化合物の投与後の、この動物モデルにおける過剰な網膜血管透過性の阻害は、したがって、インビボでの血漿カリクレインの阻害の証拠となる。例えば、この動物モデルにおける、(Z)-メチルアミノ-(4-((1-(4-フルオロフェニル)-2,5-ジメチル-ピロール-3-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメートの5日間にわたる1日2回の経口胃管投与は、網膜血管透過性の55%の低下をもたらした。エチル型プロドラッグである(Z)-エチルアミノ-(4-((1-(4-フルオロフェニル)-2,5-ジメチル-ピロール-3-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメートは同程度の活性レベルを示した。
【図1−1】

【図1−2】

【図2−1】

【図2−2】

【図3−1】

【図3−2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式を有する化合物およびその薬学的に許容される塩:

式中、Arは結合、またはベンゼン、ピリジンおよびピリミジンからなる群より選択される芳香環であり、ここでArが結合である場合にはmは1であり、Arが芳香環である場合にはmは0〜5の整数であり;
XはH、C1-8アルキルおよびフェニルからなる群より選択され;
各Raはシクロアルキル、ハロアルキル、ハロゲン、-OH、-OR1、-OSi(R1)3、-OC(O)O-R1、-OC(O)R1、-OC(O)NHR1、-OC(O)N(R1)2、-SH、-SR1、-S(O)R1、-S(O)2R1、-SO2NH2、-S(O)2NHR1、-S(O)2N(R1)2、-NHS(O)2R1、-NR1S(O)2R1、-C(O)NH2、-C(O)NHR1、-C(O)N(R1)2、-C(O)R1、-C(O)H、-C(=S)R1、-NHC(O)R1、-NR1C(O)R1、-NHC(O)NH2、-NR1C(O)NH2、-NR1C(O)NHR1、-NHC(O)NHR1、-NR1C(O)N(R1)2、-NHC(O)N(R1)2、-CO2H、-CO2R1、-NHCO2R1、-NR1CO2R1、-R1、-CN、-NO2、-NH2、-NHR1、-N(R1)2、-NR1S(O)NH2、-NR1S(O)2NHR1、-NH2C(=NR1)NH2、-N=C(NH2)NH2、-C(=NR1)NH2、-NH-OH、-NR1-OH、-NR1-OR1、-N=C=O、-N=C=S、-Si(R1)3、-NH-NHR1、-NHC(O)NHNH2、NO、-N=C=NR1および-S-CNからなる群より独立に選択され、ここで各R1は独立にアルキルまたはアリールであり;
Lは結合、CH2およびSO2からなる群より選択される連結基であり;
Qa、QbおよびQcはそれぞれ、N、S、OおよびC(Rq)からなる群より独立に選択されるメンバーであり、ここで各RqはH、C1-8アルキル、ハロゲンおよびフェニルからなる群より独立に選択され;
YはCまたはNであり;かつQa、Qb、QcおよびYを環の頂点として有する環は2つの二重結合を有する5員環である。
【請求項2】
XがH、メチル、エチルおよびペンチルからなる群より選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
QaがNであり;かつQbおよびQcがそれぞれN、OおよびC(Rq)から選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
QaがNであり、かつQbおよびQcがそれぞれNおよびC(Rq)から選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項5】
YがNであり、かつQa、QbおよびQcがそれぞれ独立にC(Rq)であって、ここで各Rqが独立にHまたはC1-8アルキルである、請求項1記載の化合物。
【請求項6】
YがNであり、QaおよびQcがC(Rq)であり、かつQbがCHである、請求項1記載の化合物。
【請求項7】
YがNであり、かつQbがNである、請求項1記載の化合物。.
【請求項8】
Lが結合であり、かつYがNである、請求項1記載の化合物。
【請求項9】
Lが結合であり、YがNであり、かつArがベンゼン環である、請求項1記載の化合物。
【請求項10】
Lが結合である、請求項1記載の化合物。
【請求項11】
Lが-SO2-である、請求項1記載の化合物。
【請求項12】
RaがHまたはC1-C8アルキルである、請求項1記載の化合物。
【請求項13】
QaがOであり;かつQbおよびQcがそれぞれN、OおよびC(Rq)から選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項14】
QaがOであり;かつQbおよびQcがそれぞれNおよびC(Rq)から選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項15】
以下の式を有する、請求項1記載の化合物:


【請求項16】
各RqがHおよびC1-C8アルキルからなる群より独立に選択され;かつLが結合または-CH2-である、請求項15記載の化合物。
【請求項17】
RaがC1-C8ハロアルキルである、請求項15記載の化合物。
【請求項18】
Raが-CF3または-CH2CF3である、請求項15記載の化合物。
【請求項19】
以下の式を有する、請求項1記載の化合物:

式中、Arは芳香環であり、かつXはH、C1-C8アルキルおよびフェニルからなる群より選択される。
【請求項20】
各RqがH、ハロゲンおよびC1-C8アルキルからなる群より独立に選択される、請求項19記載の化合物。
【請求項21】
Lが結合および-CH2-からなる群より選択される、請求項19記載の化合物。
【請求項22】
Arがベンゼン環である、請求項19記載の化合物。
【請求項23】
Arがベンゼン環であり、mが0であり、各RqがHであり、かつLが結合である、請求項19記載の化合物。
【請求項24】
Arがベンゼン環であり、mが0であり、各RqがHであり、かつLが-CH2-である、請求項19記載の化合物。
【請求項25】
以下のものからからなる群より選択される、請求項1記載の化合物:
(a)(Z)-ヘキシルアミノ-(4-((1-ベンジルピラゾール-4-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメート
(b)(Z)-ヘキシルアミノ-(4-((2,5-ジメチル-1-(4-ピリジルメチル)ピロール-3-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメート
(c)(Z)-ヘキシルアミノ-(4-((1-4-フルオロフェニル-2,5-ジメチル-ピロール-3-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメート
(d)(Z)-ヘキシルアミノ-(4-((1-4-クロロフェニル-2,5-ジメチル-ピロール-3-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメート
(e)(Z)-ヘキシルアミノ-(4-((1-4-メトキシフェニル-2,5-ジメチル-ピロール-3-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメート
(f)(Z)-メチルアミノ-(4-((1-4-メトキシフェニル-2,5-ジメチル-ピロール-3-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメート
(g)(Z)-メチルアミノ-(4-((1-4-クロロフェニル-2,5-ジメチル-ピロール-3-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメート
(h)(Z)-メチルアミノ-(4-((1-4-フルオロフェニル-2,5-ジメチル-ピロール-3-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメート
(i)(Z)-メチルアミノ-(4-((2,5-ジメチル-1-4-ピリジルメチルピロール-3-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメート
(j)(Z)-メチルアミノ-(4-((1-ベンジルピラゾール-4-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメート
(k)(Z)-ベンジルアミノ-(4-((1-ベンジルピラゾール-4-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメート
(l)(Z)-ベンジルアミノ-(4-((1-ベンジルピラゾール-4-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメート
(m)(Z)-ベンジルアミノ-(4-((1-(4-フルオロフェニル)-2,5-ジメチル-ピロール-3-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメート
(n)(Z)-ベンジルアミノ-(4-((1-(4-クロロフェニル)-2,5-ジメチル-ピロール-3-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメート
(o)(Z)-ベンジルアミノ-(4-((1-(4-メトキシフェニル)-2,5-ジメチル-ピロール-3-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメート
(p)(Z)-エチルアミノ-(4-((1-(4-メトキシフェニル)-2,5-ジメチル-ピロール-3-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメート
(q)(Z)-エチルアミノ-(4-((1-(4-クロロフェニル)-2,5-ジメチル-ピロール-3-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメート
(r)(Z)-エチルアミノ-(4-((1-(4-フルオロフェニル)-2,5-ジメチル-ピロール-3-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメート
(s)(Z)-エチルアミノ-(4-((2,5-ジメチル-1-(4-ピリジルメチル)ピロール-3-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメート
(t)(Z)-エチルアミノ-(4-((1-ベンジルピラゾール-4-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメート
(u)(Z)-プロピルアミノ-(4-((1-(4-メトキシフェニル)-2,5-ジメチル-ピロール-3-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメート
(v)(Z)-プロピルアミノ-(4-((1-(4-クロロフェニル)-2,5-ジメチル-ピロール-3-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメート
(w)(Z)-プロピルアミノ-(4-((1-(4-フルオロフェニル)-2,5-ジメチル-ピロール-3-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメート
(x)(Z)-プロピルアミノ-(4-((2,5-ジメチル-1-(4-ピリジルメチル)ピロール-3-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメート
(y)(Z)-プロピルアミノ-(4-((1-ベンジルピラゾール-4-カルボニルアミノ)メチル)フェニル)メチレンカルバメート。
【請求項26】
以下の式を有する化合物およびその薬学的に許容される塩:

式中、添え字mは0から5までの整数であり、添え字nは0から4までの整数であり、添え字qは0から1までの整数であり;
Lは結合、CH2およびSO2からなる群より選択される連結基であり;
XはH、C1-8アルキルおよびフェニルからなる群より選択され;
RbおよびRcのそれぞれは、シクロアルキル、ハロアルキル、ハロゲン、-OH、-OR2、-OSi(R2)3、-OC(O)O-R2、-OC(O)R2、-OC(O)NHR2、-OC(O)N(R2)2、-SH、-SR2、-S(O)R2、-S(O)2R2、-SO2NH2、-S(O)2NHR2、-S(O)2N(R2)2、-NHS(O)2R2、-NR2S(O)2R2、-C(O)NH2、-C(O)NHR2、-C(O)N(R2)2、-C(O)R2、-C(O)H、-C(=S)R2、-NHC(O)R2、-NR2C(O)R2、-NHC(O)NH2、-NR2C(O)NH2、-NR2C(O)NHR2、-NHC(O)NHR2、-NR2C(O)N(R2)2、-NHC(O)N(R2)2、-CO2H、-CO2R2、-NHCO2R2、-NR2CO2R2、-R2、-CN、-NO2、-NH2、-NHR2、-N(R2)2、-NR2S(O)NH2、-NR2S(O)2NHR2、-NH2C(=NR2)NH2、-N=C(NH2)NH2、-C(=NR2)NH2、-NH-OH、-NR2-OH、-NR2-OR2、-N=C=O、-N=C=S、-Si(R2)3、-NH-NHR2、-NHC(O)NHNH2、NO、-N=C=NR2および-S-CNからなる群より独立に選択され、ここで各R2はアルキルおよびアリールから独立に選択され;
qが0である場合にはZはO、SおよびNRdからなる群より選択されるメンバーであり、ここでRdはHまたはC1-C8アルキルであり;
qが1である場合にはZはNである。
【請求項27】
以下の式を有する、請求項26記載の化合物:


【請求項28】
Lが-CH2-である、請求項27記載の化合物。
【請求項29】
Lが-SO2-である、請求項27記載の化合物。
【請求項30】
mが0である、請求項27記載の化合物。
【請求項31】
nが0である、請求項27記載の化合物。
【請求項32】
以下のものからなる群より選択される、請求項26記載の化合物:
(a)メチルN-[4-[[(1-ベンジルインドール-3-カルボニル)アミノ]メチル]ベンゼン-カルボキシイミドイル]カルバメート;および
(b)メチルN-[4-[[[1-(ベンゼンスルホニル)インドール-3-カルボニル]アミノ]メチル]ベンゼン-カルボキシイミドイル]カルバメート、
(c)エチルN-[4-[[(1-ベンジルインドール-3-カルボニル)アミノ]メチル]ベンゼン-カルボキシイミドイル]カルバメート;および
(d)エチルN-[4-[[[1-(ベンゼンスルホニル)インドール-3-カルボニル]アミノ]メチル]ベンゼン-カルボキシイミドイル]カルバメート。
【請求項33】
以下の式を有する化合物およびその薬学的に許容される塩:

式中、Arはベンゼン、ピリジン、ピリミジンおよびヘテロアリール5員環からなる群より選択される環であり;
添え字mは、Arがベンゼンである場合には1〜5の整数、Arがピリジンである場合には0〜4の整数、Arがピリミジンである場合には0〜3の整数であり、Arがヘテロアリール5員環である場合には0〜2の整数であり;
各Raは、シクロアルキル、ハロアルキル、ハロゲン、-OH、-OR1、-OSi(R1)3、-OC(O)O-R1、-OC(O)R1、-OC(O)NHR1、-OC(O)N(R1)2、-SH、-SR1、-S(O)R1、-S(O)2R1、-SO2NH2、-S(O)2NHR1、-S(O)2N(R1)2、-NHS(O)2R1、-NR1S(O)2R1、-C(O)NH2、-C(O)NHR1、-C(O)N(R1)2、-C(O)R1、-C(O)H、-C(=S)R1、-NHC(O)R1、-NR1C(O)R1、-NHC(O)NH2、-NR1C(O)NH2、-NR1C(O)NHR1、-NHC(O)NHR1、-NR1C(O)N(R1)2、-NHC(O)N(R1)2、-CO2H、-CO2R1、-NHCO2R1、-NR1CO2R1、-R1、-CN、-NO2、-NH2、-NHR1、-N(R1)2、-NR1S(O)NH2、-NR1S(O)2NHR1、-NH2C(=NR1)NH2、-N=C(NH2)NH2、-C(=NR1)NH2、-NH-OH、-NR1-OH、-NR1-OR1、-N=C=O、-N=C=S、-Si(R1)3、-NH-NHR1、-NHC(O)NHNH2、NO、-N=C=NR1および-S-CNからなる群より独立に選択され、ここで各R1は独立にアルキルまたはアリールである。
【請求項34】
Arがベンゼンである、請求項33記載の化合物。
【請求項35】
Arがピリジンである、請求項33記載の化合物。
【請求項36】
以下のものからなる群より選択される、請求項33記載の化合物:
(a)N-[(4-カルバムイミドイルフェニル)メチル]-1-(4-フルオロフェニル)-2,5-ジメチル-ピロール-3-カルボキサミド;
(b)N-[(4-カルバムイミドイルフェニル)メチル]-1-(2-フルオロフェニル)-2,5-ジメチル-ピロール-3-カルボキサミド;
(c)N-[(4-カルバムイミドイルフェニル)メチル]-1-(4-メトキシフェニル)-2,5-ジメチルピロール-3-カルボキサミド;
(d)N-[(4-カルバムイミドイルフェニル)メチル]-1-(4-クロロフェニル)-2,5-ジメチル-ピロール-3-カルボキサミド;
(e)N-[(4-カルバムイミドイルフェニル)メチル]-1-(2,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジオキシン-6-イル)-2,5-ジメチル-ピロール-3-カルボキサミド;
(f)N-[(4-カルバムイミドイルフェニル)メチル]-2,5-ジメチル-1-(3-ピリジル)ピロール-3-カルボキサミド;
(g)N-[(4-カルバムイミドイルフェニル)メチル]-2,5-ジメチル-1-(2-ピリジル)ピロール-3-カルボキサミド;および
(h)N-[(4-カルバムイミドイルフェニル)メチル]-2,5-ジメチル-1-チアゾール-2-イル-ピロール-3-カルボキサミド。
【請求項37】
血漿カリクレイン依存性の疾患または病状を治療する方法であって、それを必要とする対象に対して、請求項1〜36のいずれか一項記載の化合物の薬学的有効量を投与する段階を含む方法。
【請求項38】
疾患または病状が虚血性脳卒中、出血性脳卒中、高血圧性網膜症、高血圧性腎症、脳血管性浮腫、炎症、疼痛、急性心筋梗塞(MI)、深部静脈血栓症(DVT)、脳卒中後またはMI後の組織プラスミノーゲンアクチベーター、ストレプトキナーゼを用いた線溶治療による合併症、血管性浮腫、敗血症、関節炎、心肺バイパス術の合併症、毛細血管漏出症候群、炎症性腸疾患、糖尿病性黄斑浮腫、糖尿病性腎症、糖尿病性ニューロパチー、加齢性黄斑変性症、網膜静脈閉塞、脳浮腫、虚血-再灌流傷害、血管新生(例えば、癌における)、喘息、アナフィラキシー、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、CNS感染症および多形性膠芽腫などの神経学的病状の脳血管合併症からなる群より選択され、それを必要とする対象に対して請求項1〜37のいずれか一項記載の化合物を投与する段階を含む、請求項37記載の方法。
【請求項39】
疾患または病状が糖尿病性黄斑浮腫である、請求項38記載の方法。
【請求項40】
薬学的に許容される添加剤および請求項1〜36のいずれか一項記載の化合物を含む組成物。
【請求項41】
化合物が請求項1記載の化合物である、請求項40記載の組成物。
【請求項42】
化合物が請求項26記載の化合物である、請求項40記載の組成物。
【請求項43】
化合物が請求項25記載の化合物である、請求項40記載の組成物。

【公表番号】特表2013−515000(P2013−515000A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−544914(P2012−544914)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【国際出願番号】PCT/US2010/061122
【国際公開番号】WO2011/075684
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(509031073)アクティベサイト ファーマシューティカルズ インコーポレイティッド (2)
【Fターム(参考)】