血漿メタネフリンを検出するための装置および方法
本発明の実施形態は、選択的サンプル一掃および褐色細胞腫の指標としてのHILIC化学をもたらす、弱カチオン抽出媒体を用いる、サンプル予備処理を最小限に止めた、ヒト血漿原液中のノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミンの決定を特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府の支援に関する宣言
本発明は連邦政府の資金なしになされた。
【0002】
本発明の実施形態は褐色細胞腫の診断のための血漿中のメタネフリンの検出に向けられる。
【背景技術】
【0003】
褐色細胞腫は副腎髄質の腫瘍である。これらの腫瘍はカテコールアミンを産生し、これらは血流中に放出される。血流中で、これらのカテコールアミンは個人に高血圧を経験させて大いに苦しめる。高血圧は慢性的な状態もしくは腫瘍がこれらのカテコールアミンを放出する様式に対応する偶発的なものとして起こり得る。比較的希にではあるが、高血圧患者の治療に先立ち、褐色細胞腫の存在もしくは不在を診断することが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
褐色細胞腫の検出方法は扱いにくく、時間のかかるものであった。この方法は偽陽性および偽陰性の結果に悩まされてもいる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態は血漿中のノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミンのレベルを決定するための方法および装置に向けられる。「ノルメタネフリン」、「メタネフリン」および「3−メトキシチラミン」という用語はこのような化合物が当分野において知られるような通常の化学的な意味で用いられる。「血漿」という用語もこのような用語が当分野において知られるように用いられる。ノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミンはカテコールアミン代謝物である。この文書ではこのような化合物を指すのに「3−メトキシチラミン」という用語を用いる。血漿中のノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミンの存在および異常濃度はカテコールアミン分泌性腫瘍を潜在的に示すものである。
【0006】
本発明の実施形態は、被験者から血漿を得る工程並びに、存在するのであれば、ノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミンを弱カチオン交換樹脂で血漿タンパク質および構成物質から分離して、存在するのであれば、保持されたノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミンの少なくとも1つを形成する工程を含む方法に向けられる。保持されたノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミンは弱カチオン交換樹脂から酸移動相で溶出して少なくとも1つのノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミン溶出物を形成する。ノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミン溶出物は、オンライン親水性相互作用液体クロマトグラフィーにより、少なくとも1つの高純度ノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミン溶出物に分離する。ノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミンからなる群の少なくとも1つの存在に対応する1以上のピークを示す高純度ノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミン溶出物を質量分析計に導入し、ノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミンからなる群の少なくとも1つの存在および量に関連する質量対電荷信号(mass to charge signal)を生成する。ノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミンの群の少なくとも1つの存在および異常量はカテコールアミンを分泌する腫瘍の存在もしくは不在を示すものである。
【0007】
好ましくは、弱カチオン交換樹脂は1以上の弱カチオン交換官能基を有する水湿潤性有機ポリマーである。好ましい有機ポリマーは、少なくとも1つの親水性モノマーおよび少なくとも1つの疎水性モノマーより選択されるモノマーから誘導される。限定なしの例として、好ましい疎水性モノマーの1つはジビニルベンゼンである。好ましい親水性モノマーにはN−ビニルピロリドンおよびビニルピリジンが含まれる。好ましい弱カチオン交換基の1つはカルボキシルである。
【0008】
好ましくは、この方法は内部標準をサンプルに添加する工程をさらに含む。内部標準は、好ましくは、ノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミンを含む群の少なくとも1つの重水素化形態の少なくとも1つの公知量である。好ましくは、カテコールアミン代謝物の血漿レベルは、非標識ノルメタネフリンレベル、非標識メタネフリンレベルおよび非標識3−メトキシチラミンレベルをサンプル中の重水素化ノルメタネフリン、重水素化メタネフリンおよび重水素化3−メトキシチラミン濃度と比較することによって決定する。
【0009】
好ましくは、質量分析計は正イオン化モードで作動させる。メタネフリンはプロトン化して質量対電荷198のイオンを形成する。ノルメタネフリンはプロトン化して質量対電荷184のイオンを形成する。3−メトキシチラミンはプロトン化して168の質量電荷比(mass to charge ration)のイオンを形成する。メタネフリンは、典型的に、水を失って180の質量対電荷を有するイオンを形成する。ノルメタネフリンは、典型的に、水を失って166の質量対電荷を有するイオンを形成する。3−メトキシチラミンは、典型的に、アンモニアを失って151の質量電荷比を有するイオンを形成する。
【0010】
好ましくは、質量分析計は衝突フラグメンテーションを用いて、148の質量対電荷を有するメタネフリンの1以上のイオンフラグメント、134の質量対電荷を有するノルメタネフリンの1以上のイオンフラグメントおよび119の質量電荷比を有する3−メトキシチラミンの1以上のイオンフラグメントを形成する。
【0011】
質量分析計によって決定されるフラグメントもしくは分子全体の存在および濃度がサンプルに関係する。これらの濃度は比較された対照値である。約0.3nmol毎リットルを上回るメタネフリンの濃度は褐色細胞腫を示唆する。約1.2nmol毎リットルを上回るノルメタネフリンの濃度は褐色細胞腫を示唆する。約0.2nmol毎リットルを上回る3−メトキシチラミンの濃度は褐色細胞腫を示唆する。
【0012】
本発明のさらなる実施形態は、血漿中のノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミンを検出するための装置に向けられる。繰り返しになるが、ノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミンの存在および異常濃度はカテコールアミン分泌性腫瘍を潜在的に示すものである。
【0013】
この装置は、ノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミンの群の少なくとも1つを弱カチオン交換樹脂で血漿タンパク質および構成物質から分離して保持されたノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミンの群の少なくとも1つを形成し、並びに保持されたノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミンを酸移動相で弱カチオン交換樹脂から溶出してノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミン溶出物の群の少なくとも1つを形成するための分離および溶出手段を含む。分離および溶出手段は1以上の血漿サンプルを1以上の被験者から受けるものであり、液体クロマトグラフィー手段と液通する。分離および溶出手段は制御手段と通信状態にあり、サンプル識別子(identifier)信号を送信する。この装置は、ノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミン溶出物の群の少なくとも1つをオンライン親水性相互作用液体クロマトグラフィーによって高純度ノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミン溶出物を含む群の少なくとも1つに分離するための液体クロマトグラフ手段をさらに含む。高純度ノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミン溶出物はメタネフリン、ノルメタネフリンおよび3−メトキシチラミンからなる群の少なくとも1つの存在に対応する1以上のピークを示す。液体クロマトグラフ手段は質量分析計手段と液通し、制御手段と通信状態にある。液体クロマトグラフは高純度ノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミン溶出物をサンプル識別子信号と関連付けて維持する。この装置は、高純度ノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミン溶出物の少なくとも1つを受けてノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミンからなる群の少なくとも1つの存在および量に関連する少なくとも1つの質量対電荷信号を生成するための質量分析計手段をさらに含む。質量分析計手段は制御手段と通信状態にある。この装置は、サンプル識別子信号および質量対電荷信号を受信し、質量対電荷信号をサンプル識別子信号に関連付けるための制御手段をさらに含む。制御手段は質量対電荷信号を対照値と比較してカテコールアミンを分泌する腫瘍の存在もしくは不在を被験者に示唆する。
【0014】
分離および溶出手段は、本発明の脈絡においては、非常に異なる保持特性を有する化合物の分離に用いられるサンプル調製システムを指す。液体クロマトグラフ手段は分析レベルで分離が可能な分離システムを指す。質量分析計手段は質量分析計のあらゆる形態、例えば、例として、イオントラップ・シングル質量分析計、二連および三連四重極質量分析計並びに飛行時間型(TOF)質量分析計を指す。本明細書で用いられる場合、「液通」という用語は流体を受容もしくは移送するように配管されていることを指し、内外への流体の注入を包含する。「通信」状態という用語は、ワイヤ、光ファイバもしくはワイヤレス無線通信によりデータもしくは指示もしくは命令を電磁気的、光学的様式で受信もしくは送信する信号の伝達を指す。
【0015】
本発明のさらなる実施形態は、メタネフリン、ノルメタネフリンおよび3−メトキシチラミンから選択される、血漿中の天然カテコールアミンの代謝物の群の少なくとも1つの分析を実施するためのキットに向けられる。このキットは、分析を実施するための質量分析計の標準およびキャリブレータをこれらの使用に適する取扱説明書と共に含む。このキットは、好ましくは、提供される試薬および物質に適する包装および封入物を有する。
【0016】
これらの、および他の特徴および利点は、図を閲覧し、以下の詳細な説明を読むことで明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の特徴を具現する機器の模式図を示す。
【図2】本発明の特徴を具現するキットを示す。
【図3A】質量分析測定によって得られるノルメタネフリンの生成物イオンスペクトルを示す。
【図3B】質量分析測定によって得られるメタネフリンの生成物イオンスペクトルを示す。
【図4A】メタネフリンを添加した血漿サンプルを注入することによって得られるキャリブレーション線を示す。
【図4B】ノルメタネフリンを添加した血漿サンプルを注入することによって得られるキャリブレーション線を示す。
【図5A】0.16nmol/Lメタネフリンおよびd3−メタネフリン約1nmol/Lを含有する血漿サンプルの多反応監視クロマトグラムを示す。
【図5B】0.16nmol/Lメタネフリンおよびd3−メタネフリン約1nmol/Lを含有する血漿サンプルの多反応監視クロマトグラムを示す。
【図5C】0.38nmol/Lノルメタネフリンおよび3−ノルメタネフリン約1nmol/Lを含有する血漿サンプルの多反応監視クロマトグラムを示す。
【図5D】0.38nmol/Lノルメタネフリンおよび3−ノルメタネフリン約1nmol/Lを含有する血漿サンプルの多反応監視クロマトグラムを示す。
【図6A】健康であると推察される患者から得られる血漿サンプルの小セット(n=102)からのメタネフリンの参照範囲を示す。
【図6B】健康であると考えられる患者から得られる血漿サンプルの小セット(n=102)からのノルメタネフリンの参照範囲を示す。
【図7A】液体クロマトグラフィーおよびMRMモードのMS/MSによる、遊離血漿メタネフリン、ノルメタネフリンおよび3−メトキシチラミン並びにこれらの重水素化内部標準のクロマトグラムを示す。
【図7B】液体クロマトグラフィーおよびMRMモードのMS/MSによる、遊離血漿メタネフリン、ノルメタネフリンおよび3−メトキシチラミン並びにこれらの重水素化内部標準のクロマトグラムを示す。
【図7C】液体クロマトグラフィーおよびMRMモードのMS/MSによる、遊離血漿メタネフリン、ノルメタネフリンおよび3−メトキシチラミン並びにこれらの重水素化内部標準のクロマトグラムを示す。
【図7D】液体クロマトグラフィーおよびMRMモードのMS/MSによる、遊離血漿メタネフリン、ノルメタネフリンおよび3−メトキシチラミン並びにこれらの重水素化内部標準のクロマトグラムを示す。
【図7E】液体クロマトグラフィーおよびMRMモードのMS/MSによる、遊離血漿メタネフリン、ノルメタネフリンおよび3−メトキシチラミン並びにこれらの重水素化内部標準のクロマトグラムを示す。
【図7F】液体クロマトグラフィーおよびMRMモードのMS/MSによる、遊離血漿メタネフリン、ノルメタネフリンおよび3−メトキシチラミン並びにこれらの重水素化内部標準のクロマトグラムを示す。
【図7G】液体クロマトグラフィーおよびMRMモードのMS/MSによる、遊離血漿メタネフリン、ノルメタネフリンおよび3−メトキシチラミン並びにこれらの重水素化内部標準のクロマトグラムを示す。
【図7H】液体クロマトグラフィーおよびMRMモードのMS/MSによる、遊離血漿メタネフリン、ノルメタネフリンおよび3−メトキシチラミン並びにこれらの重水素化内部標準のクロマトグラムを示す。
【図7I】液体クロマトグラフィーおよびMRMモードのMS/MSによる、遊離血漿メタネフリン、ノルメタネフリンおよび3−メトキシチラミン並びにこれらの重水素化内部標準のクロマトグラムを示す。
【図7J】液体クロマトグラフィーおよびMRMモードのMS/MSによる、遊離血漿メタネフリン、ノルメタネフリンおよび3−メトキシチラミン並びにこれらの重水素化内部標準のクロマトグラムを示す。
【図7K】液体クロマトグラフィーおよびMRMモードのMS/MSによる、遊離血漿メタネフリン、ノルメタネフリンおよび3−メトキシチラミン並びにこれらの重水素化内部標準のクロマトグラムを示す。
【図7L】液体クロマトグラフィーおよびMRMモードのMS/MSによる、遊離血漿メタネフリン、ノルメタネフリンおよび3−メトキシチラミン並びにこれらの重水素化内部標準のクロマトグラムを示す。
【図8A】120名の個人からの参照サンプル中の分画血漿遊離メタネフリンの分布をnmol毎リットルで示す。
【図8B】120名の個人からの参照サンプル中の分画血漿遊離ノルメタネフリンの分布をnmol毎リットルで示す。
【図8C】120名の個人からの参照サンプル中の分画血漿遊離3−メトキシチラミンの分布をnmol毎リットルで示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態を、血漿中のノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミンから選択される化合物の群の少なくとも1つを検出するための方法および装置並びに血漿中のノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミンから選択される化合物の群の少なくとも1つを検出するためのキットに関して説明する。これらの装置、キットおよび方法は血漿中のノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミンから選択される化合物の群の少なくとも1つの存在および異常濃度の検出についての有用性を有する。血漿中のノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミンの異常増加はカテコールアミン分泌性腫瘍を潜在的に示すものである。当業者は、褐色細胞腫およびカテコールアミン分泌性腫瘍に関連する他の疾患状態の診断に対する本発明の実施形態の診断上の有用性を認める。
【0019】
数字11によって一般的に示される、血漿中のノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミンから選択される化合物の群の少なくとも1つを検出するための装置が図1に示される。この装置は以下の主要機素を含む。即ち、分離および溶出手段13、液体クロマトグラフ手段15、質量分析計手段17並びに制御手段19である。
【0020】
分離および溶出手段13は、ノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミンを各々他者から、並びに血漿タンパク質および構成物質から分離するためのものである。分離および溶出手段は、シリンジ23によって模式的に示されるように、患者から得られる1以上のサンプルを受ける。サンプルは血液サンプルとして得、遠心によって処理して血球を血漿から分離する。
【0021】
好ましくは、サンプルは、標識ノルメタネフリン、標識メタネフリンおよび標識3−メトキシチラミン既知量を含有する標準希釈溶液で希釈する。好ましい標識ノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミンは重水素化ノルメタネフリン、重水素化メタネフリンおよび重水素化3−メトキシチラミンであり、これらは内部標準としての役割を果たす。標識ノルメタネフリン、標識メタネフリンおよび標識3−メトキシチラミンは、質量分析計手段17による非標識ノルメタネフリン、非標識メタネフリンおよび非標識3−メトキシチラミンの定量を可能にする。
【0022】
希釈した血漿サンプルは、円形トレー25におけるネスティング(nesting)として示されるバイアルまたは抽出カートリッジ[図示せず]またはマルチウェルプレートのトレー[図示せず]に入れる。抽出カートリッジおよびマルチウェルプレートは当分野において周知である。サンプルは、光学的もしくは電子的手段、例えば、バーコード、磁気ストライプもしくはメモリーチップによってバイアルまたはウェルもしくはトレー位置を患者に結びつけることができるように索引を作成し、制御手段19に入力する。
【0023】
血漿は分離および溶出手段内の弱カチオン交換樹脂を強制通過させ、存在するのであれば、少なくとも1つの保持されたノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミンを形成する。弱カチオン交換樹脂はカートリッジカラム、バイアルもしくはマルチウェルプレート内または分離および溶出手段内の分離カラム内に保持される。図示されるように、バイアルは分離および溶出手段13内に支持され、アリコートが引き出されてカラム27に導入される。
【0024】
カラム27、カートリッジカラム、バイアルもしくはマルチウェルプレートには弱カチオン交換樹脂を充填する。好ましくは、弱カチオン交換樹脂は、この媒体を湿潤および再湿潤させることを可能にする水湿潤性である。好ましい樹脂は有機ポリマー組成物を有する水湿潤性弱カチオン交換樹脂である。好ましい有機ポリマーは少なくとも1つの親水性モノマーおよび少なくとも1つの疎水性モノマーから選択されるモノマーから誘導される。限定なしの例として、好ましい疎水性モノマーの1つはジビニルベンゼンである。好ましい親水性モノマーにはN−ビニルピロリドンおよびビニルピリジンが含まれる。好ましい弱カチオン交換基の1つはカルボキシルである。好ましいポリマー組成物はOASIS(登録商標)WCX(Waters Corporation、Milford、マサチューセッツ州、USA)の商品名で販売される。
【0025】
分離および溶出手段13は、好ましくは、サンプル処理のためのオンライン固相抽出システムである。これらのシステムは幾つかの製造供給元から入手可能であり、例えば、Spark Holland(Emmen、オランダ)によって販売されるSymbiosis(登録商標)Pharma Systemがある。分離および溶出手段13は制御手段19と通信状態にあり、液体クロマトグラフ手段15と液通する。
【0026】
制御手段19は索引データを分離および溶出手段13から受信し、下流構成要素からのデータをサンプルを引き出した個々の被験者に遡って関連付けることを可能にする。制御手段19はコンピュータ型装置、例えば、装置11に組み込まれたコンピュータ処理ユニット(CPU)または、適切なソフトウェア制御を備えるメインフレームコンピュータ、ポータブル、デスクトップ、ラップトップもしくはサーバ型コンピュータを限定なしの例として含む、コンピュータである。コンピュータは多数の製造供給元、例えば、USA、カリフォルニア州、CupertinoのApple Computers,IncもしくはUSA、テキサス州、HoustonのDell Corporationによって販売されている。好ましいソフトウェアシステムには、Spark Hollandから入手可能なSparklink v.3.0およびWaters Corporationから入手可能なMassLynx v.4.0が含まれる。
【0027】
分離および溶出手段は酸移動相の源[図示せず]と液通する。ノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミンの少なくとも1つは、存在するのであれば、カラム27に保持され、他の血漿構成物質は廃棄物[図示せず]に導かれる。制御手段は、カラム27を通して酸移動相を汲み上げ、ノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミン溶出物の少なくとも1つを、このような化合物がサンプル中に元来存在するのであれば形成するように、分離および溶出手段13に指示する。
【0028】
ノルメタネフリン、メタネフリンおよび/もしくは3−メトキシチラミン溶出物は液体クロマトグラフ手段15に導入される。液体クロマトグラフ手段15は、ノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミン溶出物をオンライン親水性相互作用液体クロマトグラフィーによって少なくとも1つの高純度ノルメタネフリン溶出物、高純度メタネフリン溶出物および高純度3−メトキシチラミン溶出物にそれぞれ分離するためのものである。液体クロマトグラフ手段15は幾つかの製造供給元から入手可能であり、例えば、Waters Corporationから入手可能なALLIANCE(登録商標)分離モジュールおよびACQUITY(登録商標)分離モジュール並びにAgilent Corporation(Palo Alto、カリフォルニア州、USA)から入手可能な1100 Chromatography Systemがある。
【0029】
本明細書で用いられる場合、「オンライン」という用語は、分離が高速クロマトグラフィーによって行われることを意味する。親水性相互作用クロマトグラフィーは、親水性を高めるため、疎水性もしくはほとんど有機物の移動相を中性親水性固定相を横切って通過させ、溶液中の化合物を溶出させることによって化合物を分離する分離技術である。
【0030】
液体クロマトグラフィー手段15は親水性相互作用クロマトグラフィーを行う微細カラム29を有する。微細カラム29は幾つかの製造供給元から入手可能であり、好ましいカラム29は、シリカ粒子が充填された、Waters Corporationから入手可能なATLANTIS(登録商標)Brandカラムである。好ましいカラムは3ミクロン粒子を有し、2.1mm×50mmである。しかしながら、異なる粒子サイズおよびカラム径を有するカラムを容易に代用することもできる。
【0031】
高純度ノルメタネフリン溶出物、高純度メタネフリン溶出物および高純度3−メトキシチラミン溶出物はそれぞれメタネフリン、ノルメタネフリンおよび3−メトキシチラミンからなる群の少なくとも1つの存在に対応する1以上のピークを示す。液体クロマトグラフ手段15は質量分析計手段17と液通し、制御手段19と通信状態にある。液体クロマトグラフ手段17は、高純度ノルメタネフリン溶出物、高純度メタネフリン溶出物および高純度3−メトキシチラミン溶出物をそれぞれ、制御手段19がデータとして維持するサンプル識別子信号と関連付けて維持する。
【0032】
質量分析計手段17は高純度ノルメタネフリン、高純度メタネフリン溶出物および/もしくは高純度3−メトキシチラミン溶出物を受け取り、ノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミンからなる前記群の少なくとも1つの存在および量に関係する少なくとも1つの質量対電荷信号を生成する。質量分析計手段17は制御手段19と通信状態にある。質量分析計手段17は質量分析計のあらゆる形態、例えば、例として、イオントラップ・シングル質量分析計、二連および三連四重極質量分析計、飛行時間型(TOF)質量分析計である。好ましい質量分析計手段17はWaters Corporationが販売するQUATTRO MICRO(登録商標)タンデム型質量分析計である。
【0033】
制御手段19はサンプル識別子信号および質量対電荷信号を受信し、質量対電荷信号を前記サンプル識別子信号に関連付ける。制御手段は質量対電荷信号を対照値と比較してカテコールアミンを分泌する腫瘍の存在もしくは不在を被験者に示唆し、これらの結果をスクリーンディスプレイ、プリンタ出力またはオペレータへの他の光学的もしくは音響的伝達によって記録および表示する。
【0034】
好ましくは、分離および溶出手段13は内部標準を受け取り、この内部標準は、装置11による同定および定量化を容易にするため、分析に先立ち、もしくはこれと同時に、液体クロマトグラフ手段15および質量分析計手段17によって処理され、導入される。内部標準は、好ましくは、ノルメタネフリン、メタネフリンおよび/もしくは3−メトキシチラミンの重水素化形態の少なくとも1つの既知量である。
【0035】
好ましくは、カテコールアミンの血漿レベルは、非標識ノルメタネフリンレベル、非標識メタネフリンレベルおよび非標識3−メトキシチラミンレベルをサンプル中の対応する重水素化ノルメタネフリン、重水素化メタネフリンおよび重水素化3−メトキシチラミン濃度と比較することによって決定する。
【0036】
好ましくは、質量分析計は正イオン化モードで作動させる。メタネフリンはプロトン化して198の質量対電荷のイオンを形成する。ノルメタネフリンはプロトン化して184の質量対電荷のイオンを形成する。3−メトキシチラミンはプロトン化して168の質量電荷比のイオンを形成する。メタネフリンは、典型的に、水を失って180の質量対電荷を有するイオンを形成する。ノルメタネフリンは、典型的に、水を失って166の質量対電荷を有するイオンを形成する。3−メトキシチラミンは、典型的に、アンモニアを失って151の質量電荷比を有するイオンを形成する。
【0037】
好ましくは、質量分析計は衝突フラグメンテーションを用いて、148の質量対電荷を有するメタネフリンの1以上のイオンフラグメント、および134の質量対電荷を有するノルメタネフリンの1以上のイオンフラグメント、および119の質量電荷比を有する3−メトキシチラミンの1以上のイオンフラグメントを形成する。
【0038】
質量分析計によって決定されるフラグメントもしくは分子全体の存在および濃度がサンプルに関係する。これらの濃度は制御手段19もしくはオペレータによって比較された対照値である。約0.3nmol毎リットルを上回るメタネフリンの濃度は褐色細胞腫を示唆する。約1.2nmol毎リットルを上回るノルメタネフリンの濃度は褐色細胞腫を示唆する。約0.2nmol毎リットルを上回る3−メトキシチラミンの濃度は褐色細胞腫を示唆する。
【0039】
ここで図2を見ると、数字51によって一般に示される、メタネフリン ノルメタネフリンおよび3−メトキシチラミンから選択される血漿中の天然カテコールアミンの代謝物の群の少なくとも1つの分析を実施するためのキットが示される。このキットは装置11用の内部標準および試薬を含む。
【0040】
キット51は、メタネフリン、ノルメタネフリンをそれぞれ収容する、1以上のバイアルもしくは容器13a、13bおよび13cを有する。これらの化合物は、標識もしくは非標識形態にあるノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミンの既知量を含有するキャリブレーション溶液の形成に用いられる。キット51は、好ましくは、カラム27および微細カラム29を有する。好ましくは、キット51は分析を行うための取扱説明書を有する。このキットは、好ましくは、適切な包装、例えば、箱55を有する。
【0041】
方法に向けられた本発明の実施形態を以下の実施例に関して説明する。
【実施例1】
【0042】
患者サンプル
6名の健常ボランティアからの血漿サンプルがMedeval Laboratories(Manchester、UK)によって提供され、これらをアッセイの性能特性の評価およびキャリブレータの調整に用いた。さらに102の血漿サンプルをメタネフリンおよびノルメタネフリンの参照範囲の予備調査において用いた。これらは健康と推察される患者から収集し、UMC Groningen(Groningen、オランダ)によって提供されたものである。
【0043】
標準、キャリブレータおよび品質管理
ノルメタネフリンおよびメタネフリンはSigma Aldrich Ltd(Poole、UK)からD,L−メタネフリン.HClおよびD,L−ノルメタネフリン.HClとして購入した。重水素化内部標準α,α,β−d3−メタネフリン.HClおよびα,α,β−d3−ノルメタネフリン.HClは、それぞれ、Cambridge Isotopes Inc.(Andover、MA、USA)およびMedical Isotopes Inc.(Pelham、NH、USA)から購入した。
【0044】
キャリブレータは、1mL血漿サンプルに、十分な混合に先立って0.1M HCl中に作製されたノルメタネフリンおよびメタネフリン(10μL)を添加することによって調製した。QCサンプルは、キャリブレータの調製に用いられるものとは無関係であるMおよびNMの原液を用いて、同様の様式で調製した。
【0045】
質量分析
Z SPRAYイオン源を有するQuattroマイクロタンデム型質量分光計をすべての分析に用いた(Waters Corporation、Manchester、UK)。この機器は正イオン化モードで稼働させ、Symbiosis(登録商標)Pharma(Spark Holland、Emmen、オランダ)オンライン固相抽出−液体クロマトグラフィーシステムに直接連結させた。MSシステムの制御およびデータ取得はMassLynx v4.0ソフトウェアをQuanLynx Application Managerによる自動データ処理と共に用いて行った。Symbiosisシステムの制御はSparkLink v3.0ソフトウェアを用いて行った。
【0046】
正イオン化モードにおいては、ノルメタネフリンおよびメタネフリンをプロトン化して、それぞれ、m/z198およびm/z184の[M+H]+の形態のイオンを生成する。これらのイオンは水10の容易な喪失を生じることが公知であり、イオン源の条件は[M+H−H2O]+の形態のこれらの生じるイオン(M=m/z180;NM=m/z166)に対して最適化する。衝突誘起解離(CID)で、これらの前駆体イオンは、図3aおよび3bにおいて最もよく分かるように、MおよびNMメタネフリンおよびノルメタネフリンに対して、それぞれ、m/z148およびm/z134の特徴的な生成物イオンを生成した。
【0047】
これらの実験からの情報を用いて、表1に示されるMS法を、0.07秒の滞留時間を用いるMRMモードでのノルメタネフリンおよびメタネフリン並びにこれらの重水素化類似体の監視に用いた。
【0048】
【表1】
【0049】
オンライン固相抽出
サンプル体積:40μL(IS水溶液での血漿の1:1希釈液)
カートリッジ:Waters 10mm×1mm Oasis(登録商標)WCX
溶媒和:1mLアセトニトリル 5mL/分
平衡化:1mL水 5mL/分
サンプルローディング:1mL水 2mL/分
洗浄1:1mL水 5mL/分
洗浄2:1mLアセトニトリル 5mL/分
溶出持続時間:LC移動相で2分
合計抽出時間:バルブ洗浄を含めて2分55秒
合計サイクル時間:サンプルあたり7分40秒
液体クロマトグラフィー条件
カラム:Waters 2.1mm×50mm HILIC;3μm
移動相A:アセトニトリル
移動相B:100mM ギ酸アンモニア@pH3
【0050】
【表2】
【0051】
結果
キャリブレーション線は、図4aおよび4bにおいて最もよく分かるように、ノルメタネフリンおよびメタネフリンについて>0.999の相関係数で試験した範囲にわたって直線であった。
【0052】
MおよびNMの定量化の下限(信号対雑音比≧10)は、図5a、5b、5cおよび5dにおいて最もよく分かるように、それぞれ0.04および0.16nmol/Lであった。
【0053】
MおよびNMの抽出回収率は、Symbiosis(登録商標)Pharmaシステムの自動Method Development機能を用いて、≧90%であることが見出された。
【0054】
アッセイ内変動はQCサンプルをMおよびNMについて3つのレベルで用いて算出した。これはすべてのレベルで<6%であることが見出された(表2)。
【0055】
【表3】
【0056】
アッセイ間変動は3レベルのQCサンプル(n=10)および数回のアッセイにわたる患者サンプルからの結果(n=7)を用いて算出した。両者の場合において、アッセイ間精度は≦15%であることが見出された(表3)。
【0057】
【表4】
【0058】
MおよびNMノルメタネフリンおよびメタネフリンの参照間隔の暫定的な見積もりは、健康であると推測された102名の患者のサンプル分析に基づくものであった。参照間隔は、図6aおよび6bにおいて最もよく分かるように、患者サンプル中に見出されるMおよびNMノルメタネフリンおよびメタネフリンの平均濃度±2標準偏差を用いて算出した。
【0059】
LC−MS/MSに連結されているオンライン固相抽出技術の使用は、感度、選択性が改善され、サンプルの取扱が大幅に減少したPFMアッセイをもたらすことが示されている。重水素化内部標準を含有する水での血漿サンプルの単純な希釈とこれに続く遠心が退屈なオフライン抽出法に置き換わる。
【0060】
高選択性抽出プロセスは弱カチオン交換(WCX)媒体を用いて達成する。伝統的に、強塩基は強カチオン交換(SCX)媒体を用いて抽出し、そこでは塩基は中和によって溶出しなければならない。四級アミンの場合、これはしばしば不可能であり、より一般的には、塩基性分析物の安定性が損なわれる。Waters Oasis(商標)WCX媒体を用いると、強塩基はpH>5でカートリッジ内のカルボキシルイオン交換体に結合し、関心分析物を溶出することなしにカートリッジを水および100%アセトニトリルで洗浄することが可能となる。その後、クロマトグラフィー法において酸性移動相を用いることを許容することにより、カートリッジの溶出を行う。
【0061】
極性塩基の分析へのHILIC化学の使用は、エレクロトスプレーイオン化を用いるときに伝統的な逆相法よりも高い感度を有する、LC−MS/MSアッセイをもたらす。関心分析物は高濃度の有機溶媒(約75%)で溶出し、脱溶媒和プロセスはより効率的である。
【0062】
アッセイの妥当性の暫定的な指標として、患者サンプル(n=102)の小群におけるMおよびNMノルメタネフリンおよびメタネフリンレベルを仮参照間隔の算出に用いた(図6aおよび6b)。MおよびNMについて、それぞれ、0.05から0.47nmol/Lおよび0.12から1.1nmol/Lの参照範囲を示唆する、従来の研究10におけるものに非常に一致することが見出された。検体収集策、特に、血液サンプルを得るときの患者の位置がMおよびNMノルメタネフリンおよびメタネフリンレベルに対する重要な因果関係を有し得ることに注意すべきである。
【0063】
SPARK SYMBIOSIS(登録商標)pharmaシステムおよびwaters QUATTRO MICRO(商標)を用いる、サンプル予備処理を最小限に止めたヒト血漿原液中のノルメタネフリンおよびメタネフリンの決定を示した。Water Oasis(商標)WCX抽出媒体の使用は複合マトリックス中の高度に塩基性の分析物に選択的なサンプル一掃をもたらすのに用いることができる。waters HILIC化学と共に用いられるWATERS QUATTRO MICRO(商標)は高極性塩基性分析物低レベルの高感度分析法をもたらし得る。
【実施例2】
【0064】
この実施例ではメタネフリンに対して「MN」、ノルメタネフリンに対して「NMN」および3−メトキシチラミンに対して「3−MT」の略語を用いる。
【0065】
材料および方法
試薬
HPLC級アセトニトリルおよびメタノールはRathburn Chemicals Ltd(Walkerburn、スコットランド)から入手した;リン酸アンモニウム99.995+%および二ナトリウムEDTAはSigma−Aldrich Ltd(Steinheim、ドイツ)から購入した。ギ酸98から100%超純粋はBDH Laboratory Supplies(Poole、UK)から供給された;オルト−リン酸95%(p.a.)、2−プロパノール(p.a.)およびメタ亜硫酸水素ナトリウム(Na2S2O5)はすべてMerck KGaA(Darmstadt、ドイツ)から購入した。水酸化ナトリウム(NaOH)および塩酸は自家製造であった。Barnstead systemから入手した試薬級水を全体を通して用いた。
【0066】
D,L−メタネフリン.HCl、D,L−ノルメタネフリン.HClおよびD,L−3−メトキシチラミン.HClはSigma−Aldrich Ltd(Poole、UK)から購入した。重水素化内部標準α,α,β−d3−メタネフリン.HClおよびα,α,β,β−d4−3−メトキシチラミン.HClはCambridge Isotopes Inc.(Andover、MA)から購入した;α,α,β−d3−ノルメタネフリン.HClはMedical Isotopes Inc.(Pelham、NH)から購入した。
【0067】
原液およびサンプル
原液は0.1mol/L HCl中に調製した。原液は連続的に希釈し、キャリブレータ並びに添加によりプールされた血漿において低、中および高品質対照サンプルを形成するのに用いた。キャリブレータの濃度範囲はすべての分析物について生理学的レベル(0から1nmol/L)から約20nmol/Lまでであった。健常対照者および褐色細胞腫が確認された患者(尿分画メタネフリンに日常的に用いられるGC−MS法および病理報告による確証)からの血漿サンプルは、オランダ、GroningenのUniversity of Grotingen、University Medical Center(UMCG)に由来するものであった。血液サンプルは、患者を座位にして静脈穿刺により、K2EDTA溶液を抗凝血剤として収容する10mL Vacutainer Tubes(Becton and Dickinson、Franklin Lakes、NJ)内に収集した。遠心後、得られた血漿を、150mg Na2S2O5を保存剤として収容するガラス管に移した。サンプルは分析まで−20℃で保存した。
【0068】
分析に先立ち、血漿サンプルのアリコート(500μL)を100μL内部標準原液(希釈酸中に4.95nmol/L)と混合し、400μL水で希釈した。サンプルバイアルをオートサンプラに入れ、各サンプル100μL(血漿50μLに等価)を注入した。
【0069】
分析および定量
計測器具。Spark Holland Symbiosis(登録商標)(Spark Holland、Emmen、オランダ)オンライン固相抽出システムをすべての分析に用いた。このシステムは温度制御オートサンプラ(温度は10℃に維持される。)、SPE制御器ユニット(自動カートリッジ交換器;ACE)、溶媒送達ユニット(2台の高圧ディスペンサ)およびHPLCポンプからなる。ACEモジュールは2つの連結可能な6方向バルブおよびSPEカートリッジ交換モジュールを含んでいた。高圧ディスペンサはSPEカートリッジに状態調節、平衡化、サンプル適用および洗浄用の溶媒をもたらす。用いられる一体型HPLCポンプは二元高圧勾配ポンプであった。
【0070】
Oasis(登録商標)WCX(弱カチオン交換)10mm×1mm SPEカートリッジ(Waters Corporation、Milford、MA)をサンプル抽出に用いた。HPLCはAtlantis HILIC Silicaカラム(粒子サイズ3μm;2.1mm I.D.×50mm;Waters)を用いて行った。カラムの温度はMistral Column Oven(Spark Holland)で制御した。検出は、正エレクトロスプレーイオン化モードで稼働するZ Spray(登録商標)イオン源を備えるQuattro(登録商標)Premierタンデム型質量分析計(Waters)で行った。システム操作およびデータ取得のすべての状況はMassLynx v4.1ソフトウェアをQuanLynx Application Managerを用いる自動データ処理と共に用いて制御した。
【0071】
オンライン−SPE。オンラインSPEはKemaら(17)によって記載されるものに類似する方法に従って行った。Symbiosis(登録商標)システムは、一連のプログラム可能な所定作業(その最中にSPEカートリッジが装着され、洗浄され、溶出される。)を通して自動的に進行するように設計した。分析物は分析カラム上で直接希釈し、表4において指定される。
【0072】
【表5】
【0073】
第1工程において、SPEカートリッジは状態調節および平衡化のために左クランプに自動的に装着された。これに続いて、水をローディング溶媒として用いてサンプルが抽出カートリッジ上に渡され、洗浄溶媒が適用された。次に、抽出カートリッジが、カートリッジにクロマトグラフィー移動相を2分間通過させることによって分析物を分析カラム上に直接溶出するため、右クランプに自動的に移送された。溶出の後、分析カラムでのクロマトグラフィー分離が生じ、カートリッジを収容する右クランプがフラッシュされた。次の血漿サンプルの処理が平行して行われた。
【0074】
液体クロマトグラフィー。ギ酸でpH3.0に調整した水中の100mmol/Lギ酸アンモニウム(溶離液A)およびアセトニトリル(溶離液B)からなる二元勾配系。勾配溶出は以下の溶出プログラムに従って行った。0から6分、5%A、95%B;6から7分 20%A、80%B;7から8分 20%A、80%B;8から9分 5%A、95%B;9から10分 5%A、95%Bで再平衡化。適用される勾配は直線であった;流速は0.400ml/分であった。カラム温度は20℃で保持した。
【0075】
質量分析。正イオン化モードにおいて、MN、NMNおよび3−MTはプロトン化されて[M+H]+の形態でイオンを生成する。これらのイオンはイオン源内で水の容易な喪失を受けることが公知である。源条件はこれらの[M+H−H2O]+の形態の生じるイオンに対して最適化した。MN:m/z180;NMN:m/z166および3−MT:m/z151)。衝突誘起解離(CID)で、これらの前駆体イオンは、それぞれ、m/z148、m/z134およびm/z91の特徴的な生成物イオンを生成した。40msの滞留時間および10msのチャンネル間遅延を用いて多反応監視(MRM)法を開発した。
【0076】
品質管理および方法の妥当性
選択性。サンプルMN、NMNおよび3−MTピークの同定は、キャリブレータの添加(標準添加)の後の化合物特異的質量スペクトルの分析によって検証した。
【0077】
検出限界。血漿について、MN、NMNおよび3−MTを含有する連続希釈サンプルを注入することによって検出限界(LOD)および定量限界(LOQ)を決定した。LODは3の信号対雑音比を生じる注入量と定義した。LOQは10の信号対雑音比を生じる注入量と定義した。新規SPEカートリッジで行った連続分析間の持ち越しのパーセンテージは、ブランクおよびメタネフリン高濃度を含む血漿サンプルを交互に注入することによって見積もった。
【0078】
直線性および精度。分析物ピーク面積の内部標準ピーク面積に対する比を8つの濃度のメタネフリンに対して、MNについては0.26から18.21nmol/L、NMNについては0.82から18.21nmol/L、および3−MTについては0.58から19.93nmol/Lの範囲でプロットした。異なる7日に新たなキャリブレーション線を作成して測定した。線はExcelソフトウェアにより最小二乗直線回帰を用いて算出した。Clinical and Laboratory Standards Institute(CLSI;以前はNCCLS)EP−6Pプロトコルをこの方法の直線性の試験に適用した。アッセイの希釈直線性は添加血漿サンプルを水で連続希釈することによって2回行った。アッセイ内およびアッセイ間変動は、メタネフリンを低、中および高濃度(それぞれ、MNについては0.26、1.55および11.57nmol/L;NMNについては0.82、1.82および21.31nmol/L、3−MTについては0.58、1.41および6.16nmol/L)で含む3つのプールされたサンプルを用いることによって決定した。アッセイ内精度は一続きで測定された6回の反復測定から得た。アッセイ間精度は3週間にわたって異なる6日で評価した。
【0079】
回収率。メタネフリンを血漿に低、中および高濃度で添加することによって平均相対回収率を見積もった。回収率は、直列に配置される2つのカートリッジを用いて、これらのサンプルの6回の反復測定で測定した。
【0080】
安定性。添加メタネフリン・サンプル(低、中および高)を異なる保存状態の後に3回測定した。第1セットは直ちにアッセイし、参照点として役立てた;他のセットは10℃(オートサンプラ温度)および4℃で16時間、24時間、48時間および7日並びに室温で24時間保存した。残りのサンプルは−20℃で凍結させ、1から3回の凍結−解凍サイクルの後に安定性を調べた。
【0081】
生物学的変動、参照値および患者サンプル。生物学的日内および日間変動は、座位にある10名の健常人(男性5名、女性5名、年齢範囲20から56歳、中央値年齢35.0)から、連続する5日に1日に5回、それぞれ得た血漿を分析することによって決定した。メタネフリン参照間隔は、PREVEND研究(19;20)の最中に、座位にある健常対照者(男性63名、女性57名、年齢範囲36から81歳、中央値年齢54.5)から引き出した120の血漿サンプルの分析に基づくものであった。両研究は本発明者らの施設の医学倫理委員会によって認可され、ヘルシンキ宣言の指針に従って実施された。すべての参加者にはインフォームド・コンセントの書面が渡された。参照間隔はCLSIによって推奨されるEP Evaluator(21)を用いて算出した。
【0082】
この方法の診断上の価値を説明するため、組織学的に立証された褐色細胞腫を有する10名の患者からの血漿サンプルを分析した。
【0083】
結果
品質管理および方法の妥当性
クロマトグラフィーおよび選択性。抽出を含む合計サンプル分析時間は11分である。質量分析計が親に加えて娘イオンを高い分析特異性で監視するため、メタネフリンの完全な時間のかかるクロマトグラフィー分離は必要ではなく、重水素化内部標準を用いることができる。MRMでのXLC−MS/MSによって得られるクロマトグラムを図7に示す。化合物の素性は特異的質量スペクトルによって確認した。図7AからCにおける質量クロマトグラムは健常対照者におけるMN、NMNおよび3−MT並びにそれぞれの重水素化内部標準に対する応答を示し、一方、図7DからFは組織学的に立証された褐色細胞腫を有する患者からの応答が高まったクロマトグラムを示す。すべての褐色細胞腫患者の血漿遊離3−MTレベルが増加しているわけではない。健常対照者からのクロマトグラムを褐色細胞腫患者のものと比較することで、患者サンプルにおけるMN(それぞれ、ピーク面積3609および17034)およびNMN濃度(ピーク面積1082および99150)の顕著な増加が明らかである。健常対照者においては、MNおよびNMNの両者が少ないが定量可能な量で存在する。
【0084】
検出限界。LODは、MNについて0.05nmol/L、NMNについて0.05nmol/L、および3−MTについて0.07nmol/Lであった。(10の信号対ノイズ比の)定量限界は、それぞれ、0.10、0.10および0.15nmol/Lであった。
【0085】
カートリッジは、この方法に追加の洗浄工程を適用することにより、新規もしくは再利用SPEカートリッジで行われる連続分析の間に観察される持ち越しなしに、数回再利用することが可能であった。
【0086】
直線性および精度。血漿キャリブレーション曲線および対照サンプルは患者サンプルのあらゆるバッチで実施した。直線性は0から20nmol/Lのキャリブレーション範囲にわたって優秀であり、3つすべての化合物について対応する相関係数(R2)は一貫して>0.99であった。血漿キャリブレーション曲線は日間でR2>0.99で再現可能であった。低、中および高濃度の添加され、プールされた血漿の平均分析的アッセイ内およびアッセイ間反復性および再現性を表5に示す。
【0087】
【表6】
【0088】
アッセイ内CV(n=6)は2.0から2.9%(MN)、2.0から4.7%(NMN)および2.1から3.7%(3−MT)であった。アッセイ間CV(n=6)は1.6から9.4%(MN)、2.4から8.9%(NMN)および3.5から13.5%(3−MT)であった。再現性、確度および精度は、匹敵する結果(データは示さず)をもたらす、水性キャリブレーション曲線と同じ方法で測定した。キャリブレーション範囲を超える高メタネフリン濃度を有する血漿サンプルは100倍まで希釈することができる。
【0089】
回収率。回収率は94.4から99.6%(MN)、74.5から99.1%(NMN)および81.4から98.5%(3−MT)の範囲であり、これらが低、中および高濃度レベルについて表6に示される。
【0090】
【表7】
【0091】
安定性。メタネフリンは10℃もしくは4℃で7日まで保存したヒト血漿中で安定であった。室温では、血漿メタネフリンは24時間まで安定であった。1、2もしくは3回の凍結−解凍サイクルが施されている血漿中では測定された濃度に変化は観察されなかった。安定性データ(n=3)は示されていない。
【0092】
生物学的変動、参照値および患者サンプル。生物学的日内および日間CV(n=10)は、表2に示されるように、それぞれ、9.4および8.4%(MN)、15.2%および13.4%(NMN)並びに44.9%および23.2%(3−MT)であった。120の参照値の分布は、図8a、8bおよび8cに示されるように、3種類のメタネフリンすべてで右シフトする。従って、参照間隔は、CLSI C28−A2(22)に従い、EPエバリュエータ(evaluator)を用いて変形パラメータ様式(transformed parametric manner)で算出した。参照間隔は0.07から0.33nmol/L(MN)、0.23から1.07nmol/L(NMN)および<0.17nmol/L(3−MT)であった。XLC−MS/MSで測定した、組織学的に立証された褐色細胞腫を有する10名の患者の上昇した血漿遊離NMNおよび/もしくはMN濃度は0.11から17.93(平均7.26)nmol/L(MN)および4.05から70.10(平均25.84)nmol/L(NMN)の範囲であった。
【0093】
このように、本発明者らは血漿遊離メタネフリンを測定するための方法および装置を説明している。これらの方法および装置は高スループットで正確、精確および線形である。これは、短い分析時間のために大サンプル系列の測定を可能にしながら、分析的変動並びにサンプル調製時間および経費に関してオフライン法を上回る利点を提供する。さらに、この方法は、XLC−MS/MSおよびナノモル濃度範囲での測定を用いることにより、高い感度および特異性を有する。
【0094】
本発明者らは、本発明の好ましい実施形態を、このような実施形態が本明細書での教示から逸脱することなしに修正および変更が可能であるという理解を伴って、詳細に説明している。従って、本発明は詳細そのものに限定されるべきではなく、以下の特許請求の範囲の主題およびこれらの等価物が包含されるべきである。
【技術分野】
【0001】
連邦政府の支援に関する宣言
本発明は連邦政府の資金なしになされた。
【0002】
本発明の実施形態は褐色細胞腫の診断のための血漿中のメタネフリンの検出に向けられる。
【背景技術】
【0003】
褐色細胞腫は副腎髄質の腫瘍である。これらの腫瘍はカテコールアミンを産生し、これらは血流中に放出される。血流中で、これらのカテコールアミンは個人に高血圧を経験させて大いに苦しめる。高血圧は慢性的な状態もしくは腫瘍がこれらのカテコールアミンを放出する様式に対応する偶発的なものとして起こり得る。比較的希にではあるが、高血圧患者の治療に先立ち、褐色細胞腫の存在もしくは不在を診断することが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
褐色細胞腫の検出方法は扱いにくく、時間のかかるものであった。この方法は偽陽性および偽陰性の結果に悩まされてもいる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態は血漿中のノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミンのレベルを決定するための方法および装置に向けられる。「ノルメタネフリン」、「メタネフリン」および「3−メトキシチラミン」という用語はこのような化合物が当分野において知られるような通常の化学的な意味で用いられる。「血漿」という用語もこのような用語が当分野において知られるように用いられる。ノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミンはカテコールアミン代謝物である。この文書ではこのような化合物を指すのに「3−メトキシチラミン」という用語を用いる。血漿中のノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミンの存在および異常濃度はカテコールアミン分泌性腫瘍を潜在的に示すものである。
【0006】
本発明の実施形態は、被験者から血漿を得る工程並びに、存在するのであれば、ノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミンを弱カチオン交換樹脂で血漿タンパク質および構成物質から分離して、存在するのであれば、保持されたノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミンの少なくとも1つを形成する工程を含む方法に向けられる。保持されたノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミンは弱カチオン交換樹脂から酸移動相で溶出して少なくとも1つのノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミン溶出物を形成する。ノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミン溶出物は、オンライン親水性相互作用液体クロマトグラフィーにより、少なくとも1つの高純度ノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミン溶出物に分離する。ノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミンからなる群の少なくとも1つの存在に対応する1以上のピークを示す高純度ノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミン溶出物を質量分析計に導入し、ノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミンからなる群の少なくとも1つの存在および量に関連する質量対電荷信号(mass to charge signal)を生成する。ノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミンの群の少なくとも1つの存在および異常量はカテコールアミンを分泌する腫瘍の存在もしくは不在を示すものである。
【0007】
好ましくは、弱カチオン交換樹脂は1以上の弱カチオン交換官能基を有する水湿潤性有機ポリマーである。好ましい有機ポリマーは、少なくとも1つの親水性モノマーおよび少なくとも1つの疎水性モノマーより選択されるモノマーから誘導される。限定なしの例として、好ましい疎水性モノマーの1つはジビニルベンゼンである。好ましい親水性モノマーにはN−ビニルピロリドンおよびビニルピリジンが含まれる。好ましい弱カチオン交換基の1つはカルボキシルである。
【0008】
好ましくは、この方法は内部標準をサンプルに添加する工程をさらに含む。内部標準は、好ましくは、ノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミンを含む群の少なくとも1つの重水素化形態の少なくとも1つの公知量である。好ましくは、カテコールアミン代謝物の血漿レベルは、非標識ノルメタネフリンレベル、非標識メタネフリンレベルおよび非標識3−メトキシチラミンレベルをサンプル中の重水素化ノルメタネフリン、重水素化メタネフリンおよび重水素化3−メトキシチラミン濃度と比較することによって決定する。
【0009】
好ましくは、質量分析計は正イオン化モードで作動させる。メタネフリンはプロトン化して質量対電荷198のイオンを形成する。ノルメタネフリンはプロトン化して質量対電荷184のイオンを形成する。3−メトキシチラミンはプロトン化して168の質量電荷比(mass to charge ration)のイオンを形成する。メタネフリンは、典型的に、水を失って180の質量対電荷を有するイオンを形成する。ノルメタネフリンは、典型的に、水を失って166の質量対電荷を有するイオンを形成する。3−メトキシチラミンは、典型的に、アンモニアを失って151の質量電荷比を有するイオンを形成する。
【0010】
好ましくは、質量分析計は衝突フラグメンテーションを用いて、148の質量対電荷を有するメタネフリンの1以上のイオンフラグメント、134の質量対電荷を有するノルメタネフリンの1以上のイオンフラグメントおよび119の質量電荷比を有する3−メトキシチラミンの1以上のイオンフラグメントを形成する。
【0011】
質量分析計によって決定されるフラグメントもしくは分子全体の存在および濃度がサンプルに関係する。これらの濃度は比較された対照値である。約0.3nmol毎リットルを上回るメタネフリンの濃度は褐色細胞腫を示唆する。約1.2nmol毎リットルを上回るノルメタネフリンの濃度は褐色細胞腫を示唆する。約0.2nmol毎リットルを上回る3−メトキシチラミンの濃度は褐色細胞腫を示唆する。
【0012】
本発明のさらなる実施形態は、血漿中のノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミンを検出するための装置に向けられる。繰り返しになるが、ノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミンの存在および異常濃度はカテコールアミン分泌性腫瘍を潜在的に示すものである。
【0013】
この装置は、ノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミンの群の少なくとも1つを弱カチオン交換樹脂で血漿タンパク質および構成物質から分離して保持されたノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミンの群の少なくとも1つを形成し、並びに保持されたノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミンを酸移動相で弱カチオン交換樹脂から溶出してノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミン溶出物の群の少なくとも1つを形成するための分離および溶出手段を含む。分離および溶出手段は1以上の血漿サンプルを1以上の被験者から受けるものであり、液体クロマトグラフィー手段と液通する。分離および溶出手段は制御手段と通信状態にあり、サンプル識別子(identifier)信号を送信する。この装置は、ノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミン溶出物の群の少なくとも1つをオンライン親水性相互作用液体クロマトグラフィーによって高純度ノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミン溶出物を含む群の少なくとも1つに分離するための液体クロマトグラフ手段をさらに含む。高純度ノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミン溶出物はメタネフリン、ノルメタネフリンおよび3−メトキシチラミンからなる群の少なくとも1つの存在に対応する1以上のピークを示す。液体クロマトグラフ手段は質量分析計手段と液通し、制御手段と通信状態にある。液体クロマトグラフは高純度ノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミン溶出物をサンプル識別子信号と関連付けて維持する。この装置は、高純度ノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミン溶出物の少なくとも1つを受けてノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミンからなる群の少なくとも1つの存在および量に関連する少なくとも1つの質量対電荷信号を生成するための質量分析計手段をさらに含む。質量分析計手段は制御手段と通信状態にある。この装置は、サンプル識別子信号および質量対電荷信号を受信し、質量対電荷信号をサンプル識別子信号に関連付けるための制御手段をさらに含む。制御手段は質量対電荷信号を対照値と比較してカテコールアミンを分泌する腫瘍の存在もしくは不在を被験者に示唆する。
【0014】
分離および溶出手段は、本発明の脈絡においては、非常に異なる保持特性を有する化合物の分離に用いられるサンプル調製システムを指す。液体クロマトグラフ手段は分析レベルで分離が可能な分離システムを指す。質量分析計手段は質量分析計のあらゆる形態、例えば、例として、イオントラップ・シングル質量分析計、二連および三連四重極質量分析計並びに飛行時間型(TOF)質量分析計を指す。本明細書で用いられる場合、「液通」という用語は流体を受容もしくは移送するように配管されていることを指し、内外への流体の注入を包含する。「通信」状態という用語は、ワイヤ、光ファイバもしくはワイヤレス無線通信によりデータもしくは指示もしくは命令を電磁気的、光学的様式で受信もしくは送信する信号の伝達を指す。
【0015】
本発明のさらなる実施形態は、メタネフリン、ノルメタネフリンおよび3−メトキシチラミンから選択される、血漿中の天然カテコールアミンの代謝物の群の少なくとも1つの分析を実施するためのキットに向けられる。このキットは、分析を実施するための質量分析計の標準およびキャリブレータをこれらの使用に適する取扱説明書と共に含む。このキットは、好ましくは、提供される試薬および物質に適する包装および封入物を有する。
【0016】
これらの、および他の特徴および利点は、図を閲覧し、以下の詳細な説明を読むことで明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の特徴を具現する機器の模式図を示す。
【図2】本発明の特徴を具現するキットを示す。
【図3A】質量分析測定によって得られるノルメタネフリンの生成物イオンスペクトルを示す。
【図3B】質量分析測定によって得られるメタネフリンの生成物イオンスペクトルを示す。
【図4A】メタネフリンを添加した血漿サンプルを注入することによって得られるキャリブレーション線を示す。
【図4B】ノルメタネフリンを添加した血漿サンプルを注入することによって得られるキャリブレーション線を示す。
【図5A】0.16nmol/Lメタネフリンおよびd3−メタネフリン約1nmol/Lを含有する血漿サンプルの多反応監視クロマトグラムを示す。
【図5B】0.16nmol/Lメタネフリンおよびd3−メタネフリン約1nmol/Lを含有する血漿サンプルの多反応監視クロマトグラムを示す。
【図5C】0.38nmol/Lノルメタネフリンおよび3−ノルメタネフリン約1nmol/Lを含有する血漿サンプルの多反応監視クロマトグラムを示す。
【図5D】0.38nmol/Lノルメタネフリンおよび3−ノルメタネフリン約1nmol/Lを含有する血漿サンプルの多反応監視クロマトグラムを示す。
【図6A】健康であると推察される患者から得られる血漿サンプルの小セット(n=102)からのメタネフリンの参照範囲を示す。
【図6B】健康であると考えられる患者から得られる血漿サンプルの小セット(n=102)からのノルメタネフリンの参照範囲を示す。
【図7A】液体クロマトグラフィーおよびMRMモードのMS/MSによる、遊離血漿メタネフリン、ノルメタネフリンおよび3−メトキシチラミン並びにこれらの重水素化内部標準のクロマトグラムを示す。
【図7B】液体クロマトグラフィーおよびMRMモードのMS/MSによる、遊離血漿メタネフリン、ノルメタネフリンおよび3−メトキシチラミン並びにこれらの重水素化内部標準のクロマトグラムを示す。
【図7C】液体クロマトグラフィーおよびMRMモードのMS/MSによる、遊離血漿メタネフリン、ノルメタネフリンおよび3−メトキシチラミン並びにこれらの重水素化内部標準のクロマトグラムを示す。
【図7D】液体クロマトグラフィーおよびMRMモードのMS/MSによる、遊離血漿メタネフリン、ノルメタネフリンおよび3−メトキシチラミン並びにこれらの重水素化内部標準のクロマトグラムを示す。
【図7E】液体クロマトグラフィーおよびMRMモードのMS/MSによる、遊離血漿メタネフリン、ノルメタネフリンおよび3−メトキシチラミン並びにこれらの重水素化内部標準のクロマトグラムを示す。
【図7F】液体クロマトグラフィーおよびMRMモードのMS/MSによる、遊離血漿メタネフリン、ノルメタネフリンおよび3−メトキシチラミン並びにこれらの重水素化内部標準のクロマトグラムを示す。
【図7G】液体クロマトグラフィーおよびMRMモードのMS/MSによる、遊離血漿メタネフリン、ノルメタネフリンおよび3−メトキシチラミン並びにこれらの重水素化内部標準のクロマトグラムを示す。
【図7H】液体クロマトグラフィーおよびMRMモードのMS/MSによる、遊離血漿メタネフリン、ノルメタネフリンおよび3−メトキシチラミン並びにこれらの重水素化内部標準のクロマトグラムを示す。
【図7I】液体クロマトグラフィーおよびMRMモードのMS/MSによる、遊離血漿メタネフリン、ノルメタネフリンおよび3−メトキシチラミン並びにこれらの重水素化内部標準のクロマトグラムを示す。
【図7J】液体クロマトグラフィーおよびMRMモードのMS/MSによる、遊離血漿メタネフリン、ノルメタネフリンおよび3−メトキシチラミン並びにこれらの重水素化内部標準のクロマトグラムを示す。
【図7K】液体クロマトグラフィーおよびMRMモードのMS/MSによる、遊離血漿メタネフリン、ノルメタネフリンおよび3−メトキシチラミン並びにこれらの重水素化内部標準のクロマトグラムを示す。
【図7L】液体クロマトグラフィーおよびMRMモードのMS/MSによる、遊離血漿メタネフリン、ノルメタネフリンおよび3−メトキシチラミン並びにこれらの重水素化内部標準のクロマトグラムを示す。
【図8A】120名の個人からの参照サンプル中の分画血漿遊離メタネフリンの分布をnmol毎リットルで示す。
【図8B】120名の個人からの参照サンプル中の分画血漿遊離ノルメタネフリンの分布をnmol毎リットルで示す。
【図8C】120名の個人からの参照サンプル中の分画血漿遊離3−メトキシチラミンの分布をnmol毎リットルで示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態を、血漿中のノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミンから選択される化合物の群の少なくとも1つを検出するための方法および装置並びに血漿中のノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミンから選択される化合物の群の少なくとも1つを検出するためのキットに関して説明する。これらの装置、キットおよび方法は血漿中のノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミンから選択される化合物の群の少なくとも1つの存在および異常濃度の検出についての有用性を有する。血漿中のノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミンの異常増加はカテコールアミン分泌性腫瘍を潜在的に示すものである。当業者は、褐色細胞腫およびカテコールアミン分泌性腫瘍に関連する他の疾患状態の診断に対する本発明の実施形態の診断上の有用性を認める。
【0019】
数字11によって一般的に示される、血漿中のノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミンから選択される化合物の群の少なくとも1つを検出するための装置が図1に示される。この装置は以下の主要機素を含む。即ち、分離および溶出手段13、液体クロマトグラフ手段15、質量分析計手段17並びに制御手段19である。
【0020】
分離および溶出手段13は、ノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミンを各々他者から、並びに血漿タンパク質および構成物質から分離するためのものである。分離および溶出手段は、シリンジ23によって模式的に示されるように、患者から得られる1以上のサンプルを受ける。サンプルは血液サンプルとして得、遠心によって処理して血球を血漿から分離する。
【0021】
好ましくは、サンプルは、標識ノルメタネフリン、標識メタネフリンおよび標識3−メトキシチラミン既知量を含有する標準希釈溶液で希釈する。好ましい標識ノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミンは重水素化ノルメタネフリン、重水素化メタネフリンおよび重水素化3−メトキシチラミンであり、これらは内部標準としての役割を果たす。標識ノルメタネフリン、標識メタネフリンおよび標識3−メトキシチラミンは、質量分析計手段17による非標識ノルメタネフリン、非標識メタネフリンおよび非標識3−メトキシチラミンの定量を可能にする。
【0022】
希釈した血漿サンプルは、円形トレー25におけるネスティング(nesting)として示されるバイアルまたは抽出カートリッジ[図示せず]またはマルチウェルプレートのトレー[図示せず]に入れる。抽出カートリッジおよびマルチウェルプレートは当分野において周知である。サンプルは、光学的もしくは電子的手段、例えば、バーコード、磁気ストライプもしくはメモリーチップによってバイアルまたはウェルもしくはトレー位置を患者に結びつけることができるように索引を作成し、制御手段19に入力する。
【0023】
血漿は分離および溶出手段内の弱カチオン交換樹脂を強制通過させ、存在するのであれば、少なくとも1つの保持されたノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミンを形成する。弱カチオン交換樹脂はカートリッジカラム、バイアルもしくはマルチウェルプレート内または分離および溶出手段内の分離カラム内に保持される。図示されるように、バイアルは分離および溶出手段13内に支持され、アリコートが引き出されてカラム27に導入される。
【0024】
カラム27、カートリッジカラム、バイアルもしくはマルチウェルプレートには弱カチオン交換樹脂を充填する。好ましくは、弱カチオン交換樹脂は、この媒体を湿潤および再湿潤させることを可能にする水湿潤性である。好ましい樹脂は有機ポリマー組成物を有する水湿潤性弱カチオン交換樹脂である。好ましい有機ポリマーは少なくとも1つの親水性モノマーおよび少なくとも1つの疎水性モノマーから選択されるモノマーから誘導される。限定なしの例として、好ましい疎水性モノマーの1つはジビニルベンゼンである。好ましい親水性モノマーにはN−ビニルピロリドンおよびビニルピリジンが含まれる。好ましい弱カチオン交換基の1つはカルボキシルである。好ましいポリマー組成物はOASIS(登録商標)WCX(Waters Corporation、Milford、マサチューセッツ州、USA)の商品名で販売される。
【0025】
分離および溶出手段13は、好ましくは、サンプル処理のためのオンライン固相抽出システムである。これらのシステムは幾つかの製造供給元から入手可能であり、例えば、Spark Holland(Emmen、オランダ)によって販売されるSymbiosis(登録商標)Pharma Systemがある。分離および溶出手段13は制御手段19と通信状態にあり、液体クロマトグラフ手段15と液通する。
【0026】
制御手段19は索引データを分離および溶出手段13から受信し、下流構成要素からのデータをサンプルを引き出した個々の被験者に遡って関連付けることを可能にする。制御手段19はコンピュータ型装置、例えば、装置11に組み込まれたコンピュータ処理ユニット(CPU)または、適切なソフトウェア制御を備えるメインフレームコンピュータ、ポータブル、デスクトップ、ラップトップもしくはサーバ型コンピュータを限定なしの例として含む、コンピュータである。コンピュータは多数の製造供給元、例えば、USA、カリフォルニア州、CupertinoのApple Computers,IncもしくはUSA、テキサス州、HoustonのDell Corporationによって販売されている。好ましいソフトウェアシステムには、Spark Hollandから入手可能なSparklink v.3.0およびWaters Corporationから入手可能なMassLynx v.4.0が含まれる。
【0027】
分離および溶出手段は酸移動相の源[図示せず]と液通する。ノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミンの少なくとも1つは、存在するのであれば、カラム27に保持され、他の血漿構成物質は廃棄物[図示せず]に導かれる。制御手段は、カラム27を通して酸移動相を汲み上げ、ノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミン溶出物の少なくとも1つを、このような化合物がサンプル中に元来存在するのであれば形成するように、分離および溶出手段13に指示する。
【0028】
ノルメタネフリン、メタネフリンおよび/もしくは3−メトキシチラミン溶出物は液体クロマトグラフ手段15に導入される。液体クロマトグラフ手段15は、ノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミン溶出物をオンライン親水性相互作用液体クロマトグラフィーによって少なくとも1つの高純度ノルメタネフリン溶出物、高純度メタネフリン溶出物および高純度3−メトキシチラミン溶出物にそれぞれ分離するためのものである。液体クロマトグラフ手段15は幾つかの製造供給元から入手可能であり、例えば、Waters Corporationから入手可能なALLIANCE(登録商標)分離モジュールおよびACQUITY(登録商標)分離モジュール並びにAgilent Corporation(Palo Alto、カリフォルニア州、USA)から入手可能な1100 Chromatography Systemがある。
【0029】
本明細書で用いられる場合、「オンライン」という用語は、分離が高速クロマトグラフィーによって行われることを意味する。親水性相互作用クロマトグラフィーは、親水性を高めるため、疎水性もしくはほとんど有機物の移動相を中性親水性固定相を横切って通過させ、溶液中の化合物を溶出させることによって化合物を分離する分離技術である。
【0030】
液体クロマトグラフィー手段15は親水性相互作用クロマトグラフィーを行う微細カラム29を有する。微細カラム29は幾つかの製造供給元から入手可能であり、好ましいカラム29は、シリカ粒子が充填された、Waters Corporationから入手可能なATLANTIS(登録商標)Brandカラムである。好ましいカラムは3ミクロン粒子を有し、2.1mm×50mmである。しかしながら、異なる粒子サイズおよびカラム径を有するカラムを容易に代用することもできる。
【0031】
高純度ノルメタネフリン溶出物、高純度メタネフリン溶出物および高純度3−メトキシチラミン溶出物はそれぞれメタネフリン、ノルメタネフリンおよび3−メトキシチラミンからなる群の少なくとも1つの存在に対応する1以上のピークを示す。液体クロマトグラフ手段15は質量分析計手段17と液通し、制御手段19と通信状態にある。液体クロマトグラフ手段17は、高純度ノルメタネフリン溶出物、高純度メタネフリン溶出物および高純度3−メトキシチラミン溶出物をそれぞれ、制御手段19がデータとして維持するサンプル識別子信号と関連付けて維持する。
【0032】
質量分析計手段17は高純度ノルメタネフリン、高純度メタネフリン溶出物および/もしくは高純度3−メトキシチラミン溶出物を受け取り、ノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミンからなる前記群の少なくとも1つの存在および量に関係する少なくとも1つの質量対電荷信号を生成する。質量分析計手段17は制御手段19と通信状態にある。質量分析計手段17は質量分析計のあらゆる形態、例えば、例として、イオントラップ・シングル質量分析計、二連および三連四重極質量分析計、飛行時間型(TOF)質量分析計である。好ましい質量分析計手段17はWaters Corporationが販売するQUATTRO MICRO(登録商標)タンデム型質量分析計である。
【0033】
制御手段19はサンプル識別子信号および質量対電荷信号を受信し、質量対電荷信号を前記サンプル識別子信号に関連付ける。制御手段は質量対電荷信号を対照値と比較してカテコールアミンを分泌する腫瘍の存在もしくは不在を被験者に示唆し、これらの結果をスクリーンディスプレイ、プリンタ出力またはオペレータへの他の光学的もしくは音響的伝達によって記録および表示する。
【0034】
好ましくは、分離および溶出手段13は内部標準を受け取り、この内部標準は、装置11による同定および定量化を容易にするため、分析に先立ち、もしくはこれと同時に、液体クロマトグラフ手段15および質量分析計手段17によって処理され、導入される。内部標準は、好ましくは、ノルメタネフリン、メタネフリンおよび/もしくは3−メトキシチラミンの重水素化形態の少なくとも1つの既知量である。
【0035】
好ましくは、カテコールアミンの血漿レベルは、非標識ノルメタネフリンレベル、非標識メタネフリンレベルおよび非標識3−メトキシチラミンレベルをサンプル中の対応する重水素化ノルメタネフリン、重水素化メタネフリンおよび重水素化3−メトキシチラミン濃度と比較することによって決定する。
【0036】
好ましくは、質量分析計は正イオン化モードで作動させる。メタネフリンはプロトン化して198の質量対電荷のイオンを形成する。ノルメタネフリンはプロトン化して184の質量対電荷のイオンを形成する。3−メトキシチラミンはプロトン化して168の質量電荷比のイオンを形成する。メタネフリンは、典型的に、水を失って180の質量対電荷を有するイオンを形成する。ノルメタネフリンは、典型的に、水を失って166の質量対電荷を有するイオンを形成する。3−メトキシチラミンは、典型的に、アンモニアを失って151の質量電荷比を有するイオンを形成する。
【0037】
好ましくは、質量分析計は衝突フラグメンテーションを用いて、148の質量対電荷を有するメタネフリンの1以上のイオンフラグメント、および134の質量対電荷を有するノルメタネフリンの1以上のイオンフラグメント、および119の質量電荷比を有する3−メトキシチラミンの1以上のイオンフラグメントを形成する。
【0038】
質量分析計によって決定されるフラグメントもしくは分子全体の存在および濃度がサンプルに関係する。これらの濃度は制御手段19もしくはオペレータによって比較された対照値である。約0.3nmol毎リットルを上回るメタネフリンの濃度は褐色細胞腫を示唆する。約1.2nmol毎リットルを上回るノルメタネフリンの濃度は褐色細胞腫を示唆する。約0.2nmol毎リットルを上回る3−メトキシチラミンの濃度は褐色細胞腫を示唆する。
【0039】
ここで図2を見ると、数字51によって一般に示される、メタネフリン ノルメタネフリンおよび3−メトキシチラミンから選択される血漿中の天然カテコールアミンの代謝物の群の少なくとも1つの分析を実施するためのキットが示される。このキットは装置11用の内部標準および試薬を含む。
【0040】
キット51は、メタネフリン、ノルメタネフリンをそれぞれ収容する、1以上のバイアルもしくは容器13a、13bおよび13cを有する。これらの化合物は、標識もしくは非標識形態にあるノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミンの既知量を含有するキャリブレーション溶液の形成に用いられる。キット51は、好ましくは、カラム27および微細カラム29を有する。好ましくは、キット51は分析を行うための取扱説明書を有する。このキットは、好ましくは、適切な包装、例えば、箱55を有する。
【0041】
方法に向けられた本発明の実施形態を以下の実施例に関して説明する。
【実施例1】
【0042】
患者サンプル
6名の健常ボランティアからの血漿サンプルがMedeval Laboratories(Manchester、UK)によって提供され、これらをアッセイの性能特性の評価およびキャリブレータの調整に用いた。さらに102の血漿サンプルをメタネフリンおよびノルメタネフリンの参照範囲の予備調査において用いた。これらは健康と推察される患者から収集し、UMC Groningen(Groningen、オランダ)によって提供されたものである。
【0043】
標準、キャリブレータおよび品質管理
ノルメタネフリンおよびメタネフリンはSigma Aldrich Ltd(Poole、UK)からD,L−メタネフリン.HClおよびD,L−ノルメタネフリン.HClとして購入した。重水素化内部標準α,α,β−d3−メタネフリン.HClおよびα,α,β−d3−ノルメタネフリン.HClは、それぞれ、Cambridge Isotopes Inc.(Andover、MA、USA)およびMedical Isotopes Inc.(Pelham、NH、USA)から購入した。
【0044】
キャリブレータは、1mL血漿サンプルに、十分な混合に先立って0.1M HCl中に作製されたノルメタネフリンおよびメタネフリン(10μL)を添加することによって調製した。QCサンプルは、キャリブレータの調製に用いられるものとは無関係であるMおよびNMの原液を用いて、同様の様式で調製した。
【0045】
質量分析
Z SPRAYイオン源を有するQuattroマイクロタンデム型質量分光計をすべての分析に用いた(Waters Corporation、Manchester、UK)。この機器は正イオン化モードで稼働させ、Symbiosis(登録商標)Pharma(Spark Holland、Emmen、オランダ)オンライン固相抽出−液体クロマトグラフィーシステムに直接連結させた。MSシステムの制御およびデータ取得はMassLynx v4.0ソフトウェアをQuanLynx Application Managerによる自動データ処理と共に用いて行った。Symbiosisシステムの制御はSparkLink v3.0ソフトウェアを用いて行った。
【0046】
正イオン化モードにおいては、ノルメタネフリンおよびメタネフリンをプロトン化して、それぞれ、m/z198およびm/z184の[M+H]+の形態のイオンを生成する。これらのイオンは水10の容易な喪失を生じることが公知であり、イオン源の条件は[M+H−H2O]+の形態のこれらの生じるイオン(M=m/z180;NM=m/z166)に対して最適化する。衝突誘起解離(CID)で、これらの前駆体イオンは、図3aおよび3bにおいて最もよく分かるように、MおよびNMメタネフリンおよびノルメタネフリンに対して、それぞれ、m/z148およびm/z134の特徴的な生成物イオンを生成した。
【0047】
これらの実験からの情報を用いて、表1に示されるMS法を、0.07秒の滞留時間を用いるMRMモードでのノルメタネフリンおよびメタネフリン並びにこれらの重水素化類似体の監視に用いた。
【0048】
【表1】
【0049】
オンライン固相抽出
サンプル体積:40μL(IS水溶液での血漿の1:1希釈液)
カートリッジ:Waters 10mm×1mm Oasis(登録商標)WCX
溶媒和:1mLアセトニトリル 5mL/分
平衡化:1mL水 5mL/分
サンプルローディング:1mL水 2mL/分
洗浄1:1mL水 5mL/分
洗浄2:1mLアセトニトリル 5mL/分
溶出持続時間:LC移動相で2分
合計抽出時間:バルブ洗浄を含めて2分55秒
合計サイクル時間:サンプルあたり7分40秒
液体クロマトグラフィー条件
カラム:Waters 2.1mm×50mm HILIC;3μm
移動相A:アセトニトリル
移動相B:100mM ギ酸アンモニア@pH3
【0050】
【表2】
【0051】
結果
キャリブレーション線は、図4aおよび4bにおいて最もよく分かるように、ノルメタネフリンおよびメタネフリンについて>0.999の相関係数で試験した範囲にわたって直線であった。
【0052】
MおよびNMの定量化の下限(信号対雑音比≧10)は、図5a、5b、5cおよび5dにおいて最もよく分かるように、それぞれ0.04および0.16nmol/Lであった。
【0053】
MおよびNMの抽出回収率は、Symbiosis(登録商標)Pharmaシステムの自動Method Development機能を用いて、≧90%であることが見出された。
【0054】
アッセイ内変動はQCサンプルをMおよびNMについて3つのレベルで用いて算出した。これはすべてのレベルで<6%であることが見出された(表2)。
【0055】
【表3】
【0056】
アッセイ間変動は3レベルのQCサンプル(n=10)および数回のアッセイにわたる患者サンプルからの結果(n=7)を用いて算出した。両者の場合において、アッセイ間精度は≦15%であることが見出された(表3)。
【0057】
【表4】
【0058】
MおよびNMノルメタネフリンおよびメタネフリンの参照間隔の暫定的な見積もりは、健康であると推測された102名の患者のサンプル分析に基づくものであった。参照間隔は、図6aおよび6bにおいて最もよく分かるように、患者サンプル中に見出されるMおよびNMノルメタネフリンおよびメタネフリンの平均濃度±2標準偏差を用いて算出した。
【0059】
LC−MS/MSに連結されているオンライン固相抽出技術の使用は、感度、選択性が改善され、サンプルの取扱が大幅に減少したPFMアッセイをもたらすことが示されている。重水素化内部標準を含有する水での血漿サンプルの単純な希釈とこれに続く遠心が退屈なオフライン抽出法に置き換わる。
【0060】
高選択性抽出プロセスは弱カチオン交換(WCX)媒体を用いて達成する。伝統的に、強塩基は強カチオン交換(SCX)媒体を用いて抽出し、そこでは塩基は中和によって溶出しなければならない。四級アミンの場合、これはしばしば不可能であり、より一般的には、塩基性分析物の安定性が損なわれる。Waters Oasis(商標)WCX媒体を用いると、強塩基はpH>5でカートリッジ内のカルボキシルイオン交換体に結合し、関心分析物を溶出することなしにカートリッジを水および100%アセトニトリルで洗浄することが可能となる。その後、クロマトグラフィー法において酸性移動相を用いることを許容することにより、カートリッジの溶出を行う。
【0061】
極性塩基の分析へのHILIC化学の使用は、エレクロトスプレーイオン化を用いるときに伝統的な逆相法よりも高い感度を有する、LC−MS/MSアッセイをもたらす。関心分析物は高濃度の有機溶媒(約75%)で溶出し、脱溶媒和プロセスはより効率的である。
【0062】
アッセイの妥当性の暫定的な指標として、患者サンプル(n=102)の小群におけるMおよびNMノルメタネフリンおよびメタネフリンレベルを仮参照間隔の算出に用いた(図6aおよび6b)。MおよびNMについて、それぞれ、0.05から0.47nmol/Lおよび0.12から1.1nmol/Lの参照範囲を示唆する、従来の研究10におけるものに非常に一致することが見出された。検体収集策、特に、血液サンプルを得るときの患者の位置がMおよびNMノルメタネフリンおよびメタネフリンレベルに対する重要な因果関係を有し得ることに注意すべきである。
【0063】
SPARK SYMBIOSIS(登録商標)pharmaシステムおよびwaters QUATTRO MICRO(商標)を用いる、サンプル予備処理を最小限に止めたヒト血漿原液中のノルメタネフリンおよびメタネフリンの決定を示した。Water Oasis(商標)WCX抽出媒体の使用は複合マトリックス中の高度に塩基性の分析物に選択的なサンプル一掃をもたらすのに用いることができる。waters HILIC化学と共に用いられるWATERS QUATTRO MICRO(商標)は高極性塩基性分析物低レベルの高感度分析法をもたらし得る。
【実施例2】
【0064】
この実施例ではメタネフリンに対して「MN」、ノルメタネフリンに対して「NMN」および3−メトキシチラミンに対して「3−MT」の略語を用いる。
【0065】
材料および方法
試薬
HPLC級アセトニトリルおよびメタノールはRathburn Chemicals Ltd(Walkerburn、スコットランド)から入手した;リン酸アンモニウム99.995+%および二ナトリウムEDTAはSigma−Aldrich Ltd(Steinheim、ドイツ)から購入した。ギ酸98から100%超純粋はBDH Laboratory Supplies(Poole、UK)から供給された;オルト−リン酸95%(p.a.)、2−プロパノール(p.a.)およびメタ亜硫酸水素ナトリウム(Na2S2O5)はすべてMerck KGaA(Darmstadt、ドイツ)から購入した。水酸化ナトリウム(NaOH)および塩酸は自家製造であった。Barnstead systemから入手した試薬級水を全体を通して用いた。
【0066】
D,L−メタネフリン.HCl、D,L−ノルメタネフリン.HClおよびD,L−3−メトキシチラミン.HClはSigma−Aldrich Ltd(Poole、UK)から購入した。重水素化内部標準α,α,β−d3−メタネフリン.HClおよびα,α,β,β−d4−3−メトキシチラミン.HClはCambridge Isotopes Inc.(Andover、MA)から購入した;α,α,β−d3−ノルメタネフリン.HClはMedical Isotopes Inc.(Pelham、NH)から購入した。
【0067】
原液およびサンプル
原液は0.1mol/L HCl中に調製した。原液は連続的に希釈し、キャリブレータ並びに添加によりプールされた血漿において低、中および高品質対照サンプルを形成するのに用いた。キャリブレータの濃度範囲はすべての分析物について生理学的レベル(0から1nmol/L)から約20nmol/Lまでであった。健常対照者および褐色細胞腫が確認された患者(尿分画メタネフリンに日常的に用いられるGC−MS法および病理報告による確証)からの血漿サンプルは、オランダ、GroningenのUniversity of Grotingen、University Medical Center(UMCG)に由来するものであった。血液サンプルは、患者を座位にして静脈穿刺により、K2EDTA溶液を抗凝血剤として収容する10mL Vacutainer Tubes(Becton and Dickinson、Franklin Lakes、NJ)内に収集した。遠心後、得られた血漿を、150mg Na2S2O5を保存剤として収容するガラス管に移した。サンプルは分析まで−20℃で保存した。
【0068】
分析に先立ち、血漿サンプルのアリコート(500μL)を100μL内部標準原液(希釈酸中に4.95nmol/L)と混合し、400μL水で希釈した。サンプルバイアルをオートサンプラに入れ、各サンプル100μL(血漿50μLに等価)を注入した。
【0069】
分析および定量
計測器具。Spark Holland Symbiosis(登録商標)(Spark Holland、Emmen、オランダ)オンライン固相抽出システムをすべての分析に用いた。このシステムは温度制御オートサンプラ(温度は10℃に維持される。)、SPE制御器ユニット(自動カートリッジ交換器;ACE)、溶媒送達ユニット(2台の高圧ディスペンサ)およびHPLCポンプからなる。ACEモジュールは2つの連結可能な6方向バルブおよびSPEカートリッジ交換モジュールを含んでいた。高圧ディスペンサはSPEカートリッジに状態調節、平衡化、サンプル適用および洗浄用の溶媒をもたらす。用いられる一体型HPLCポンプは二元高圧勾配ポンプであった。
【0070】
Oasis(登録商標)WCX(弱カチオン交換)10mm×1mm SPEカートリッジ(Waters Corporation、Milford、MA)をサンプル抽出に用いた。HPLCはAtlantis HILIC Silicaカラム(粒子サイズ3μm;2.1mm I.D.×50mm;Waters)を用いて行った。カラムの温度はMistral Column Oven(Spark Holland)で制御した。検出は、正エレクトロスプレーイオン化モードで稼働するZ Spray(登録商標)イオン源を備えるQuattro(登録商標)Premierタンデム型質量分析計(Waters)で行った。システム操作およびデータ取得のすべての状況はMassLynx v4.1ソフトウェアをQuanLynx Application Managerを用いる自動データ処理と共に用いて制御した。
【0071】
オンライン−SPE。オンラインSPEはKemaら(17)によって記載されるものに類似する方法に従って行った。Symbiosis(登録商標)システムは、一連のプログラム可能な所定作業(その最中にSPEカートリッジが装着され、洗浄され、溶出される。)を通して自動的に進行するように設計した。分析物は分析カラム上で直接希釈し、表4において指定される。
【0072】
【表5】
【0073】
第1工程において、SPEカートリッジは状態調節および平衡化のために左クランプに自動的に装着された。これに続いて、水をローディング溶媒として用いてサンプルが抽出カートリッジ上に渡され、洗浄溶媒が適用された。次に、抽出カートリッジが、カートリッジにクロマトグラフィー移動相を2分間通過させることによって分析物を分析カラム上に直接溶出するため、右クランプに自動的に移送された。溶出の後、分析カラムでのクロマトグラフィー分離が生じ、カートリッジを収容する右クランプがフラッシュされた。次の血漿サンプルの処理が平行して行われた。
【0074】
液体クロマトグラフィー。ギ酸でpH3.0に調整した水中の100mmol/Lギ酸アンモニウム(溶離液A)およびアセトニトリル(溶離液B)からなる二元勾配系。勾配溶出は以下の溶出プログラムに従って行った。0から6分、5%A、95%B;6から7分 20%A、80%B;7から8分 20%A、80%B;8から9分 5%A、95%B;9から10分 5%A、95%Bで再平衡化。適用される勾配は直線であった;流速は0.400ml/分であった。カラム温度は20℃で保持した。
【0075】
質量分析。正イオン化モードにおいて、MN、NMNおよび3−MTはプロトン化されて[M+H]+の形態でイオンを生成する。これらのイオンはイオン源内で水の容易な喪失を受けることが公知である。源条件はこれらの[M+H−H2O]+の形態の生じるイオンに対して最適化した。MN:m/z180;NMN:m/z166および3−MT:m/z151)。衝突誘起解離(CID)で、これらの前駆体イオンは、それぞれ、m/z148、m/z134およびm/z91の特徴的な生成物イオンを生成した。40msの滞留時間および10msのチャンネル間遅延を用いて多反応監視(MRM)法を開発した。
【0076】
品質管理および方法の妥当性
選択性。サンプルMN、NMNおよび3−MTピークの同定は、キャリブレータの添加(標準添加)の後の化合物特異的質量スペクトルの分析によって検証した。
【0077】
検出限界。血漿について、MN、NMNおよび3−MTを含有する連続希釈サンプルを注入することによって検出限界(LOD)および定量限界(LOQ)を決定した。LODは3の信号対雑音比を生じる注入量と定義した。LOQは10の信号対雑音比を生じる注入量と定義した。新規SPEカートリッジで行った連続分析間の持ち越しのパーセンテージは、ブランクおよびメタネフリン高濃度を含む血漿サンプルを交互に注入することによって見積もった。
【0078】
直線性および精度。分析物ピーク面積の内部標準ピーク面積に対する比を8つの濃度のメタネフリンに対して、MNについては0.26から18.21nmol/L、NMNについては0.82から18.21nmol/L、および3−MTについては0.58から19.93nmol/Lの範囲でプロットした。異なる7日に新たなキャリブレーション線を作成して測定した。線はExcelソフトウェアにより最小二乗直線回帰を用いて算出した。Clinical and Laboratory Standards Institute(CLSI;以前はNCCLS)EP−6Pプロトコルをこの方法の直線性の試験に適用した。アッセイの希釈直線性は添加血漿サンプルを水で連続希釈することによって2回行った。アッセイ内およびアッセイ間変動は、メタネフリンを低、中および高濃度(それぞれ、MNについては0.26、1.55および11.57nmol/L;NMNについては0.82、1.82および21.31nmol/L、3−MTについては0.58、1.41および6.16nmol/L)で含む3つのプールされたサンプルを用いることによって決定した。アッセイ内精度は一続きで測定された6回の反復測定から得た。アッセイ間精度は3週間にわたって異なる6日で評価した。
【0079】
回収率。メタネフリンを血漿に低、中および高濃度で添加することによって平均相対回収率を見積もった。回収率は、直列に配置される2つのカートリッジを用いて、これらのサンプルの6回の反復測定で測定した。
【0080】
安定性。添加メタネフリン・サンプル(低、中および高)を異なる保存状態の後に3回測定した。第1セットは直ちにアッセイし、参照点として役立てた;他のセットは10℃(オートサンプラ温度)および4℃で16時間、24時間、48時間および7日並びに室温で24時間保存した。残りのサンプルは−20℃で凍結させ、1から3回の凍結−解凍サイクルの後に安定性を調べた。
【0081】
生物学的変動、参照値および患者サンプル。生物学的日内および日間変動は、座位にある10名の健常人(男性5名、女性5名、年齢範囲20から56歳、中央値年齢35.0)から、連続する5日に1日に5回、それぞれ得た血漿を分析することによって決定した。メタネフリン参照間隔は、PREVEND研究(19;20)の最中に、座位にある健常対照者(男性63名、女性57名、年齢範囲36から81歳、中央値年齢54.5)から引き出した120の血漿サンプルの分析に基づくものであった。両研究は本発明者らの施設の医学倫理委員会によって認可され、ヘルシンキ宣言の指針に従って実施された。すべての参加者にはインフォームド・コンセントの書面が渡された。参照間隔はCLSIによって推奨されるEP Evaluator(21)を用いて算出した。
【0082】
この方法の診断上の価値を説明するため、組織学的に立証された褐色細胞腫を有する10名の患者からの血漿サンプルを分析した。
【0083】
結果
品質管理および方法の妥当性
クロマトグラフィーおよび選択性。抽出を含む合計サンプル分析時間は11分である。質量分析計が親に加えて娘イオンを高い分析特異性で監視するため、メタネフリンの完全な時間のかかるクロマトグラフィー分離は必要ではなく、重水素化内部標準を用いることができる。MRMでのXLC−MS/MSによって得られるクロマトグラムを図7に示す。化合物の素性は特異的質量スペクトルによって確認した。図7AからCにおける質量クロマトグラムは健常対照者におけるMN、NMNおよび3−MT並びにそれぞれの重水素化内部標準に対する応答を示し、一方、図7DからFは組織学的に立証された褐色細胞腫を有する患者からの応答が高まったクロマトグラムを示す。すべての褐色細胞腫患者の血漿遊離3−MTレベルが増加しているわけではない。健常対照者からのクロマトグラムを褐色細胞腫患者のものと比較することで、患者サンプルにおけるMN(それぞれ、ピーク面積3609および17034)およびNMN濃度(ピーク面積1082および99150)の顕著な増加が明らかである。健常対照者においては、MNおよびNMNの両者が少ないが定量可能な量で存在する。
【0084】
検出限界。LODは、MNについて0.05nmol/L、NMNについて0.05nmol/L、および3−MTについて0.07nmol/Lであった。(10の信号対ノイズ比の)定量限界は、それぞれ、0.10、0.10および0.15nmol/Lであった。
【0085】
カートリッジは、この方法に追加の洗浄工程を適用することにより、新規もしくは再利用SPEカートリッジで行われる連続分析の間に観察される持ち越しなしに、数回再利用することが可能であった。
【0086】
直線性および精度。血漿キャリブレーション曲線および対照サンプルは患者サンプルのあらゆるバッチで実施した。直線性は0から20nmol/Lのキャリブレーション範囲にわたって優秀であり、3つすべての化合物について対応する相関係数(R2)は一貫して>0.99であった。血漿キャリブレーション曲線は日間でR2>0.99で再現可能であった。低、中および高濃度の添加され、プールされた血漿の平均分析的アッセイ内およびアッセイ間反復性および再現性を表5に示す。
【0087】
【表6】
【0088】
アッセイ内CV(n=6)は2.0から2.9%(MN)、2.0から4.7%(NMN)および2.1から3.7%(3−MT)であった。アッセイ間CV(n=6)は1.6から9.4%(MN)、2.4から8.9%(NMN)および3.5から13.5%(3−MT)であった。再現性、確度および精度は、匹敵する結果(データは示さず)をもたらす、水性キャリブレーション曲線と同じ方法で測定した。キャリブレーション範囲を超える高メタネフリン濃度を有する血漿サンプルは100倍まで希釈することができる。
【0089】
回収率。回収率は94.4から99.6%(MN)、74.5から99.1%(NMN)および81.4から98.5%(3−MT)の範囲であり、これらが低、中および高濃度レベルについて表6に示される。
【0090】
【表7】
【0091】
安定性。メタネフリンは10℃もしくは4℃で7日まで保存したヒト血漿中で安定であった。室温では、血漿メタネフリンは24時間まで安定であった。1、2もしくは3回の凍結−解凍サイクルが施されている血漿中では測定された濃度に変化は観察されなかった。安定性データ(n=3)は示されていない。
【0092】
生物学的変動、参照値および患者サンプル。生物学的日内および日間CV(n=10)は、表2に示されるように、それぞれ、9.4および8.4%(MN)、15.2%および13.4%(NMN)並びに44.9%および23.2%(3−MT)であった。120の参照値の分布は、図8a、8bおよび8cに示されるように、3種類のメタネフリンすべてで右シフトする。従って、参照間隔は、CLSI C28−A2(22)に従い、EPエバリュエータ(evaluator)を用いて変形パラメータ様式(transformed parametric manner)で算出した。参照間隔は0.07から0.33nmol/L(MN)、0.23から1.07nmol/L(NMN)および<0.17nmol/L(3−MT)であった。XLC−MS/MSで測定した、組織学的に立証された褐色細胞腫を有する10名の患者の上昇した血漿遊離NMNおよび/もしくはMN濃度は0.11から17.93(平均7.26)nmol/L(MN)および4.05から70.10(平均25.84)nmol/L(NMN)の範囲であった。
【0093】
このように、本発明者らは血漿遊離メタネフリンを測定するための方法および装置を説明している。これらの方法および装置は高スループットで正確、精確および線形である。これは、短い分析時間のために大サンプル系列の測定を可能にしながら、分析的変動並びにサンプル調製時間および経費に関してオフライン法を上回る利点を提供する。さらに、この方法は、XLC−MS/MSおよびナノモル濃度範囲での測定を用いることにより、高い感度および特異性を有する。
【0094】
本発明者らは、本発明の好ましい実施形態を、このような実施形態が本明細書での教示から逸脱することなしに修正および変更が可能であるという理解を伴って、詳細に説明している。従って、本発明は詳細そのものに限定されるべきではなく、以下の特許請求の範囲の主題およびこれらの等価物が包含されるべきである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
存在がカテコールアミン分泌性腫瘍を潜在的に示すものである、血漿中のノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミンから選択される化合物の群の少なくとも1つを検出する方法であって、
a.被験者から血漿サンプルを得る工程;
b.ノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミンの少なくとも1つを弱カチオン交換樹脂で血漿タンパク質および構成物質から分離して少なくとも1つの保持されたノルメタネフリン、メタネフリンもしくは3−メトキシチラミンを形成する工程;
c.少なくとも1つの保持されたノルメタネフリン、保持されたメタネフリンおよび保持された3−メトキシチラミンを酸移動相で弱カチオン交換樹脂から溶出して少なくとも1つのノルメタネフリン溶出物、メタネフリン溶出物および3−メトキシチラミン溶出物を形成する工程;
d.少なくとも1つのノルメタネフリン溶出物、メタネフリン溶出物および3−メトキシチラミン溶出物をオンライン親水性相互作用液体クロマトグラフィーによって少なくとも1つの高純度ノルメタネフリン溶出物、高純度メタネフリン溶出物および高純度3−メトキシチラミン溶出物に分離し、前記高純度ノルメタネフリン溶出液、高純度メタネフリン溶出物および高純度3−メトキシチラミン溶出物はメタネフリンおよびノルメタネフリンからなる群の少なくとも1つの存在に対応する1以上のピークを示す工程;
e.前記高純度ノルメタネフリンおよびメタネフリン溶出液を質量分析計に導入してノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミンからなる前記群の少なくとも1つの存在および量に関係する信号を生成し、前記存在および量はカテコールアミンを分泌する腫瘍の存在もしくは不在を示すものである工程、
を含む方法。
【請求項2】
内部標準を前記サンプルに添加する工程をさらに含む、請求項1の方法。
【請求項3】
前記内部標準がノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミンからなる群より選択される化合物の重水素化形態の少なくとも1つの既知量である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記弱カチオン交換樹脂が1以上の弱カチオン交換官能基を有する水湿潤性有機ポリマーである、請求項1の方法。
【請求項5】
前記有機ポリマーが少なくとも1つの親水性モノマーおよび少なくとも1つの疎水性モノマーから選択されるモノマーより誘導される、請求項4の方法。
【請求項6】
前記疎水性モノマーがジビニルベンゼンである、請求項5の方法。
【請求項7】
前記親水性モノマーがN−ビニルピロリドンおよびビニルピリジンからなるモノマーの対から選択される、請求項5の方法。
【請求項8】
前記弱カチオン交換基がカルボキシルである、請求項4の方法。
【請求項9】
非標識ノルメタネフリンレベルを前記サンプル中の重水素化ノルメタネフリン濃度と比較することによってカテコールアミンの前記血漿レベルを決定する、請求項3の方法。
【請求項10】
非標識メタネフリンレベルを前記サンプル中の重水素化メタネフリン濃度と比較することによってカテコールアミンの前記血漿レベルを決定する、請求項3の方法。
【請求項11】
前記質量分析計を正イオン化モードで稼働させる、請求項1の方法。
【請求項12】
メタネフリンをプロトン化して質量対電荷198のイオンを形成する、請求項11の方法。
【請求項13】
前記ノルメタネフリンをプロトン化して質量対電荷184のイオンを形成する、請求項11の方法。
【請求項14】
3−メトキシチラミンをプロトン化して質量電荷比(m/z)168のイオンを形成する、請求項11の方法。
【請求項15】
前記メタネフリンが水を失って180の質量対電荷を有するイオンを形成する、請求項12の方法。
【請求項16】
前記ノルメタネフリンが水を失って166の質量対電荷を有するイオンを形成する、請求項13の方法。
【請求項17】
前記3−メトキシチラミンがアンモニウムを典型的に失って151の質量電荷比を有するイオンを形成する、請求項14の方法。
【請求項18】
前記質量分析計が衝突フラグメンテーションを用いてメタネフリンの1以上のイオンフラグメントを形成する、請求項1の方法。
【請求項19】
メタネフリンの前記フラグメントが148の質量対電荷を有する、請求項18の方法。
【請求項20】
前記質量分析計が衝突フラグメンテーションを用いてノルメタネフリンの1以上のイオンフラグメントを形成する、請求項1の方法。
【請求項21】
ノルメタネフリンの前記フラグメントが134の質量対電荷を有する、請求項20の方法。
【請求項22】
前記質量分析計が衝突フラグメンテーションを用いて3−メトキシチラミンの1以上のイオンフラグメントを形成する、請求項1の方法。
【請求項23】
3−メトキシチラミンの前記フラグメントが119の質量電荷比を有する、請求項22の方法。
【請求項24】
約0.3nmol毎リットルを上回るメタネフリンの濃度が褐色細胞腫を示唆する、請求項1の方法。
【請求項25】
約1.2nmol毎リットルを上回るノルメタネフリンの濃度が褐色細胞腫を示唆する、請求項1の方法。
【請求項26】
約0.2nmol毎リットルを上回る3−メトキシチラミンの濃度が褐色細胞腫を示唆する、請求項1の方法。
【請求項27】
非標識3−メトキシチラミンレベルを前記サンプル中の重水素化3−メトキシチラミン濃度と比較することによってカテコールアミンの前記血漿レベルを決定する、請求項3の方法。
【請求項28】
存在がカテコールアミン分泌性腫瘍を潜在的に示すものである、血漿中のノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミンから選択される化合物の群の少なくとも1つを検出するための装置であって、
a.ノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミンから選択される化合物の群の少なくとも1つを弱カチオン交換樹脂で血漿タンパク質および構成物質から分離して保持されたノルメタネフリン、保持されたメタネフリンおよび保持された3−メトキシチラミンの少なくとも1つを形成し、並びに保持されたノルメタネフリン、保持されたメタネフリンおよび保持された3−メトキシチラミンの少なくとも1つを酸移動相で弱カチオン交換樹脂から溶出してノルメタネフリン溶出物、メタネフリン溶出物および3−メトキシチラミン溶出物の少なくとも1つを形成するための分離および溶出手段であって、前記分離および溶出手段は1以上の血漿サンプルを1以上の被験者から受け取り、液体クロマトグラフ手段と液通し、および制御手段と通信状態にあり、前記分離および溶出手段はサンプル識別子信号を前記制御手段に送信する手段;
b.ノルメタネフリン溶出物、メタネフリン溶出物および3−メトキシチラミン溶出物の少なくとも1つをオンライン親水性相互作用液体クロマトグラフィーによって少なくとも1つの高純度ノルメタネフリン溶出物、高純度メタネフリン溶出物および高純度3−メトキシチラミン溶出物に分離するための液体クロマトグラフ手段であって、前記少なくとも1つの高純度ノルメタネフリン溶出物、高純度メタネフリン溶出物および高純度3−メトキシチラミン溶出物はメタネフリン、ノルメタネフリンおよび3−メトキシチラミンからなる群の少なくとも1つの存在に対応する1以上のピークを示し、前記液体クロマトグラフ手段は質量分析計手段と液通し、および制御手段と通信状態にあり、前記液体クロマトグラフは前記少なくとも1つの高純度ノルメタネフリン溶出物、高純度メタネフリン溶出物および高純度3−メトキシチラミン溶出物を前記サンプル識別子信号と関連付けて維持する手段;
c.前記少なくとも1つの高純度ノルメタネフリン溶出物、高純度メタネフリン溶出物および高純度3−メトキシチラミン溶出物を受けてノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミンからなる前記群の少なくとも1つの存在および量に関連する少なくとも1つの質量対電荷信号を生成するための質量分析計手段であって、前記質量分析計手段は制御手段と通信状態にある手段;
d.前記サンプル識別子信号および質量対電荷信号を受信し、前記質量対電荷信号を前記サンプル識別子信号に関連付け、前記質量対電荷信号を対照値と比較してカテコールアミンを分泌する腫瘍の存在もしくは不在を被験者に示唆するための制御手段、
を含む装置。
【請求項29】
存在がカテコールアミン分泌性腫瘍を潜在的に示すものである、血漿中のノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミンから選択される化合物の群の少なくとも1つを検出するためのキットであって、化合物ノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミンの少なくとも1つ並びに血漿サンプルへの添加および質量分析計のキャリブレーションのための標準を形成するための取扱説明書を含むキット。
【請求項1】
存在がカテコールアミン分泌性腫瘍を潜在的に示すものである、血漿中のノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミンから選択される化合物の群の少なくとも1つを検出する方法であって、
a.被験者から血漿サンプルを得る工程;
b.ノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミンの少なくとも1つを弱カチオン交換樹脂で血漿タンパク質および構成物質から分離して少なくとも1つの保持されたノルメタネフリン、メタネフリンもしくは3−メトキシチラミンを形成する工程;
c.少なくとも1つの保持されたノルメタネフリン、保持されたメタネフリンおよび保持された3−メトキシチラミンを酸移動相で弱カチオン交換樹脂から溶出して少なくとも1つのノルメタネフリン溶出物、メタネフリン溶出物および3−メトキシチラミン溶出物を形成する工程;
d.少なくとも1つのノルメタネフリン溶出物、メタネフリン溶出物および3−メトキシチラミン溶出物をオンライン親水性相互作用液体クロマトグラフィーによって少なくとも1つの高純度ノルメタネフリン溶出物、高純度メタネフリン溶出物および高純度3−メトキシチラミン溶出物に分離し、前記高純度ノルメタネフリン溶出液、高純度メタネフリン溶出物および高純度3−メトキシチラミン溶出物はメタネフリンおよびノルメタネフリンからなる群の少なくとも1つの存在に対応する1以上のピークを示す工程;
e.前記高純度ノルメタネフリンおよびメタネフリン溶出液を質量分析計に導入してノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミンからなる前記群の少なくとも1つの存在および量に関係する信号を生成し、前記存在および量はカテコールアミンを分泌する腫瘍の存在もしくは不在を示すものである工程、
を含む方法。
【請求項2】
内部標準を前記サンプルに添加する工程をさらに含む、請求項1の方法。
【請求項3】
前記内部標準がノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミンからなる群より選択される化合物の重水素化形態の少なくとも1つの既知量である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記弱カチオン交換樹脂が1以上の弱カチオン交換官能基を有する水湿潤性有機ポリマーである、請求項1の方法。
【請求項5】
前記有機ポリマーが少なくとも1つの親水性モノマーおよび少なくとも1つの疎水性モノマーから選択されるモノマーより誘導される、請求項4の方法。
【請求項6】
前記疎水性モノマーがジビニルベンゼンである、請求項5の方法。
【請求項7】
前記親水性モノマーがN−ビニルピロリドンおよびビニルピリジンからなるモノマーの対から選択される、請求項5の方法。
【請求項8】
前記弱カチオン交換基がカルボキシルである、請求項4の方法。
【請求項9】
非標識ノルメタネフリンレベルを前記サンプル中の重水素化ノルメタネフリン濃度と比較することによってカテコールアミンの前記血漿レベルを決定する、請求項3の方法。
【請求項10】
非標識メタネフリンレベルを前記サンプル中の重水素化メタネフリン濃度と比較することによってカテコールアミンの前記血漿レベルを決定する、請求項3の方法。
【請求項11】
前記質量分析計を正イオン化モードで稼働させる、請求項1の方法。
【請求項12】
メタネフリンをプロトン化して質量対電荷198のイオンを形成する、請求項11の方法。
【請求項13】
前記ノルメタネフリンをプロトン化して質量対電荷184のイオンを形成する、請求項11の方法。
【請求項14】
3−メトキシチラミンをプロトン化して質量電荷比(m/z)168のイオンを形成する、請求項11の方法。
【請求項15】
前記メタネフリンが水を失って180の質量対電荷を有するイオンを形成する、請求項12の方法。
【請求項16】
前記ノルメタネフリンが水を失って166の質量対電荷を有するイオンを形成する、請求項13の方法。
【請求項17】
前記3−メトキシチラミンがアンモニウムを典型的に失って151の質量電荷比を有するイオンを形成する、請求項14の方法。
【請求項18】
前記質量分析計が衝突フラグメンテーションを用いてメタネフリンの1以上のイオンフラグメントを形成する、請求項1の方法。
【請求項19】
メタネフリンの前記フラグメントが148の質量対電荷を有する、請求項18の方法。
【請求項20】
前記質量分析計が衝突フラグメンテーションを用いてノルメタネフリンの1以上のイオンフラグメントを形成する、請求項1の方法。
【請求項21】
ノルメタネフリンの前記フラグメントが134の質量対電荷を有する、請求項20の方法。
【請求項22】
前記質量分析計が衝突フラグメンテーションを用いて3−メトキシチラミンの1以上のイオンフラグメントを形成する、請求項1の方法。
【請求項23】
3−メトキシチラミンの前記フラグメントが119の質量電荷比を有する、請求項22の方法。
【請求項24】
約0.3nmol毎リットルを上回るメタネフリンの濃度が褐色細胞腫を示唆する、請求項1の方法。
【請求項25】
約1.2nmol毎リットルを上回るノルメタネフリンの濃度が褐色細胞腫を示唆する、請求項1の方法。
【請求項26】
約0.2nmol毎リットルを上回る3−メトキシチラミンの濃度が褐色細胞腫を示唆する、請求項1の方法。
【請求項27】
非標識3−メトキシチラミンレベルを前記サンプル中の重水素化3−メトキシチラミン濃度と比較することによってカテコールアミンの前記血漿レベルを決定する、請求項3の方法。
【請求項28】
存在がカテコールアミン分泌性腫瘍を潜在的に示すものである、血漿中のノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミンから選択される化合物の群の少なくとも1つを検出するための装置であって、
a.ノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミンから選択される化合物の群の少なくとも1つを弱カチオン交換樹脂で血漿タンパク質および構成物質から分離して保持されたノルメタネフリン、保持されたメタネフリンおよび保持された3−メトキシチラミンの少なくとも1つを形成し、並びに保持されたノルメタネフリン、保持されたメタネフリンおよび保持された3−メトキシチラミンの少なくとも1つを酸移動相で弱カチオン交換樹脂から溶出してノルメタネフリン溶出物、メタネフリン溶出物および3−メトキシチラミン溶出物の少なくとも1つを形成するための分離および溶出手段であって、前記分離および溶出手段は1以上の血漿サンプルを1以上の被験者から受け取り、液体クロマトグラフ手段と液通し、および制御手段と通信状態にあり、前記分離および溶出手段はサンプル識別子信号を前記制御手段に送信する手段;
b.ノルメタネフリン溶出物、メタネフリン溶出物および3−メトキシチラミン溶出物の少なくとも1つをオンライン親水性相互作用液体クロマトグラフィーによって少なくとも1つの高純度ノルメタネフリン溶出物、高純度メタネフリン溶出物および高純度3−メトキシチラミン溶出物に分離するための液体クロマトグラフ手段であって、前記少なくとも1つの高純度ノルメタネフリン溶出物、高純度メタネフリン溶出物および高純度3−メトキシチラミン溶出物はメタネフリン、ノルメタネフリンおよび3−メトキシチラミンからなる群の少なくとも1つの存在に対応する1以上のピークを示し、前記液体クロマトグラフ手段は質量分析計手段と液通し、および制御手段と通信状態にあり、前記液体クロマトグラフは前記少なくとも1つの高純度ノルメタネフリン溶出物、高純度メタネフリン溶出物および高純度3−メトキシチラミン溶出物を前記サンプル識別子信号と関連付けて維持する手段;
c.前記少なくとも1つの高純度ノルメタネフリン溶出物、高純度メタネフリン溶出物および高純度3−メトキシチラミン溶出物を受けてノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミンからなる前記群の少なくとも1つの存在および量に関連する少なくとも1つの質量対電荷信号を生成するための質量分析計手段であって、前記質量分析計手段は制御手段と通信状態にある手段;
d.前記サンプル識別子信号および質量対電荷信号を受信し、前記質量対電荷信号を前記サンプル識別子信号に関連付け、前記質量対電荷信号を対照値と比較してカテコールアミンを分泌する腫瘍の存在もしくは不在を被験者に示唆するための制御手段、
を含む装置。
【請求項29】
存在がカテコールアミン分泌性腫瘍を潜在的に示すものである、血漿中のノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミンから選択される化合物の群の少なくとも1つを検出するためのキットであって、化合物ノルメタネフリン、メタネフリンおよび3−メトキシチラミンの少なくとも1つ並びに血漿サンプルへの添加および質量分析計のキャリブレーションのための標準を形成するための取扱説明書を含むキット。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図7F】
【図7G】
【図7H】
【図7I】
【図7J】
【図7K】
【図7L】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図7F】
【図7G】
【図7H】
【図7I】
【図7J】
【図7K】
【図7L】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【公表番号】特表2010−527452(P2010−527452A)
【公表日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−508534(P2010−508534)
【出願日】平成20年5月13日(2008.5.13)
【国際出願番号】PCT/US2008/063510
【国際公開番号】WO2008/144301
【国際公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(509307794)ウオーターズ・テクノロジーズ・コーポレイシヨン (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月13日(2008.5.13)
【国際出願番号】PCT/US2008/063510
【国際公開番号】WO2008/144301
【国際公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(509307794)ウオーターズ・テクノロジーズ・コーポレイシヨン (2)
【Fターム(参考)】
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