血球計数を行い血液塗抹標本の形態を判定する方法
全血試料中の血球を計数する方法。本方法は、(a)全血試料を提供するステップ、(b)全血試料をスライド、例えば、顕微鏡スライド上に置くステップ、(c)スプレッダーを使用して血液塗抹標本を作製するステップ、(d)血液塗抹標本をスライド上で乾燥させるステップ、(e)スライド上の血液塗抹標本における赤血球中のヘモグロビンに起因する光の吸収または反射率を測定するステップ、(f)分析に適切な厚さであるとステップ(e)における測定により同定された分析領域の拡大2次元デジタル画像を記録するステップ、ならびに(g)拡大2次元デジタル画像からデータを回収、分析および保存するステップを含む。場合によって、血球をスライドに固定および染色するステップが、本方法において使用され得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液塗抹標本を用いて血球計数を行う方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血球の自動計数は、既知容積を有する全血試料が得られ、この後に適切な希釈剤で希釈された後、血球を計数することを典型的には必要とする。試料の最初の容積およびこの後の希釈程度についての知見は、最初の全血試料の任意の容積における種々の種類の細胞の数を定量できるようにする。例えば、1マイクロリットルの全血が1000マイクロリットルの容積を得るように希釈される場合、希釈比は1:1000と言われ、希釈係数は1000と言われる。血液のこの希釈試料に関する血球計数が、1マイクロリットルあたり5000赤血球あることを示す場合、最初の非希釈血液試料中の赤血球数は1000と5000の積に等しい、すなわち、5,000,000である。故に、非希釈試料の実際の血球数は、1マイクロリットルあたり5,000,000赤血球である。
【0003】
血球を検出し計数する幾つかの物理的方法(例えば、直流信号または高周波信号のどちらかを用いた血球のインピーダンス特性の分析、染色されているまたは天然に近い状態にある細胞が、光散乱特性、吸光度特性、蛍光特性、または前述のものの任意の組み合わせを用いて調べられる光学フローサイトメトリーの使用など)が使用されている。フローサイトメトリーを介した血球の顕微鏡画像、または規定寸法を有するチャンバーで血球が懸濁される間の血球の顕微鏡画像の分析と併用した血球の直接撮像により、血球が定量化できることも示唆されている。血液の希釈または非希釈試料のどちらかを寸法が知られている血球計算盤に導入することができ、および血球計数をデジタル画像の分析により生成することができる機器が開発されている。これらのアプローチは全て、血球計数のパラメータを生成するのに使用することができる。
【0004】
血球計数が前述の方法の1つにより完了された後、幾つかの血液試料は、血液塗抹標本の調製、染色および調査を伴う工程を用いた別の分析を典型的には必要とする。血液塗抹標本を分析する工程は、手動、自動化または半自動化技法を含むさまざまな技法を使用することができる。血液塗抹標本の分析は、血球計数の正確さを確認し、潜在的な妨害材料を検出し、血球計数の従来の分析により検出または解釈することができない細胞の微細な細胞内の特徴の幾つかを検出するのに使用することができる。
【0005】
血球は均質ではない。血球は、細胞自体より小さい細胞内の特徴を含有する。このような細胞内の特徴には、核、核小体、顆粒および細胞膜が含まれる。細胞内の特徴の分析の特定例には、赤血球の形状および赤血球の形状の変異の調査が含まれる。例えば、細胞自体のサイズに対する細胞の核のサイズの比を、各々(すなわち、細胞の核および細胞自体)の断面積を測定し、および測定値を除算して判定することが可能である。この比およびさまざまな他のパラメータは、血球の正常度を判定するのに使用することができる。
【0006】
潜在的な妨害材料には、鎌状細胞、溶解耐性赤血球(lyse−resistant red blood cell)、さまざまな理由のため凝集する細胞、有核赤血球および異常に高い脂質濃度が含まれるが、これらに限定されない。一般的に、これらの妨害材料は血液成分(複数可)の構造(複数可)の異常であり、異常は血液成分の正常な反射および吸収特性を変化させ、正常な特性は血液パラメータの測定を可能にする。
【0007】
血液塗抹標本の分析に関して、血液塗抹標本が調製された後、血球の形態学的特性および血球の細胞内の特徴を同定するために、血液塗抹標本は少なくとも1つの適切な染色剤を用いて染色され得る。同定の工程は、手動であり得または自動化され得る。典型的には、染色血液塗抹標本は、細胞の形態学的外観を主観的に評価して種々の白血球の比率の定量的印象、または形態学的異常の程度の半定量的印象のどちらかを提供するヒト形態学者により調べられる。デジタル画像でのパターンを認識して白血球を分類するだけでなく形態学的変化の解釈も提供する自動化された顕微鏡およびソフトウェアを用いて、血液塗抹標本を分析する工程を自動化する試みも行われた。
【0008】
故に、血球計数の実施および血液試料のこの後の形態学的分析は、自動化血球計数装置を通した血液試料の処理、手動でのまたは自動化装置を用いた血液試料の血液塗抹標本の形成および染色、これに続く手動でのまたは自動化装置を用いた染色血液塗抹標本の形態学的再検討を伴い得る別々のステップを必要とする。
【0009】
以前に記載された実践は広く用いられているが、および細胞の半定量的評価は形態学的再検討により可能であるが、血液塗抹標本で定量的全血球計数を行うことは、示唆されたことがない。このような工程は、2つの固有の限界がある。血液塗抹標本を形成するのに血液試料が拡散される場合、血液塗抹標本を形成するのに使用される血液の容積は、血液の容積を正確に推定できるところまで十分にコントロールすることができず、この結果、血液塗抹標本に存在する細胞の絶対数を判定することができない。さらに、血液試料の単層を置くことができる装置が開発されたが、これらの装置は、長方形をした顕微鏡スライドの表面にわたって均等に細胞を分布させる遠心分離に依存している。図1Aでは、顕微鏡スライドは参照番号10で表され、血液一滴は参照番号12aで表されている。図1Bでは、顕微鏡スライドは参照番号10で表され、血液塗抹標本は参照番号12bで表されている。矢印14は、遠心分離工程中の顕微鏡スライド10の回転の方向を表す。典型的には、血液試料の幾らかの未知の容積が、遠心分離工程中に顕微鏡スライドから失われる。失われた細胞の量は未知であり予測できないため、分析の終わりに顕微鏡スライド上に残っている血液の容積を正確に推定することができない。したがって、限られた情報のみが血液試料中の細胞の比率に関して得られ、血液試料の全容積についての知見を必要とする情報は作成することができない。事実上、細胞の濃度を判定するための測定は行うことができない。
【0010】
血液塗抹標本の調製に現在使用される2つの代替アプローチがある。第1のアプローチ(広く用いられてはいない)は、カバースリップ方法である。この方法では、血液試料一滴が顕微鏡スライド上に置かれる。この一滴はカバースリップで覆われ、血液塗抹標本がこの後、顕微鏡スライドおよびカバースリップを反対の方向に動かし、これにより試料を効果的に塗り付けて形成される。図2Aでは、顕微鏡スライドは参照番号20で表され、血液一滴は参照番号22aで表され、カバースリップは参照番号24で表されている。図2Bでは、顕微鏡スライドは参照番号20で表され、血液塗抹標本は参照番号22bで表され、カバースリップは参照番号24で表されている。矢印26は、カバースリップ24の動きの方向を表す。
【0011】
第2のアプローチは(はるかにより広く使用されている)は、ウェッジ(wedge)またはプッシュ(push)塗抹標本である。この方法では、血液試料一滴は第1のガラススライド、典型的には顕微鏡スライド上に置かれる。スミアラー(smearer)またはスプレッダーと呼ばれる第2のガラススライドは、最初に血液試料一滴の下流に置かれ、次いで血液試料一滴まで引き戻され、これにより血液試料一滴が血液試料一滴と第2のガラススライドの間の接触ラインにわたって拡散される。第2のガラススライド、すなわちスプレッダーは、次いで1回の迅速だが優しい直線運動で前方、すなわち下流方向へ押し出され、これにより血液試料一滴がスプレッダーの後ろに引きずられ、血液塗抹標本を形成する。例えば、参照により本明細書に組み込まれている、Automatic Working Area Classification in Peripheral Blood Smears Using Spatial Distribution features Across Scales、W. Xiongら;LET’S OBSERVE THE BLOOD CELLS、D. Tagliasacchiら、1997年4月、http://www.funsci.com/fun3_en/blood/blood.htmを参照のこと。図3Aでは、第1のガラススライドは参照番号30で表され、血液一滴は参照番号32aで表され、第2のガラススライド、すなわちスプレッダーは参照番号34で表されている。図3Bでは、第1のガラススライドは参照番号30で表され、血液塗抹標本は参照番号32bで表されている。矢印36は第2のガラススライド34の動きの方向を表す。得られた血液塗抹標本では、血液試料は、ウェッジの中に第1のガラススライド上に置かれ、ウェッジの厚い末端は、第1のガラススライド上の血液試料一滴の最初の接触点に位置し、ウェッジの厚い末端の下流に位置するウェッジの薄い末端は、単層の細胞を含有する。しかし、ウェッジまたはプッシュ塗抹標本は、形態学的分析が、真の単層またはほぼ単層に細胞がきわめて薄く分布されている血液塗抹標本の領域に限定されることを必要とする。図4では、顕微鏡スライドは参照番号40で表されている。血液塗抹標本の厚い部分は参照番号42で表され、血液塗抹標本の薄い部分は参照番号44で表され、細胞の計数に適した血液塗抹標本の部分、すなわち真の単層またはほぼ単層は参照番号46で表されている。血液塗抹標本の厚い部分では、自動化機器またはヒト形態学者が細胞の形態を確実に同定および記録することができないような程度まで、細胞が重なり合っている可能性がある。細胞を上から見た場合、上の層に分布した細胞は、下の層の細胞の2次元画像を塞ぎがちである。細胞の縁が重なっている場合、観察者には、細胞の複数の層が単一の大きな、不規則な形状をした領域のように見える。例えば、2次元撮像アルゴリズムは、2つの小さな重なり合っている細胞と不規則な形状を有する1つのより大きな細胞の違いを識別するのが困難である。この問題は、血液塗抹標本中の白血球、赤血球および血小板の数の定量的分析を行う能力を打ち消すように思われる。理由は、血液塗抹標本の厚さおよび長さに関して細胞計数に適した血液塗抹標本の領域が、血液試料ごとに予測不可能に異なるはずだからである。このようなばらつきは、図5A、5B、5Cおよび5Dに示されている。図5Aでは、スライドは参照番号50aで表され、血液塗抹標本は参照番号52aで表され;血液塗抹標本が、図5Aで示された血液塗抹標本との形状の違いを示す図5Bでは、スライドは参照番号50bで表され、血液塗抹標本は参照番号52bで表され;血液塗抹標本が、図5Aで示された血液塗抹標本との長さの違いを示す図5Cでは、スライドは参照番号50cで表され、血液塗抹標本は参照番号52cで表され;血液塗抹標本が、図5Aで示された血液塗抹標本との幅の違いを示す図5Dでは、スライドは参照番号50dで表され、血液塗抹標本は参照番号52dで表されている。要するに、同じ容積の血液試料が血液塗抹標本を形成するのに使用されたとしても、細胞を計数するのに評価される領域は試料ごとに異なる。血液塗抹標本の厚さおよび長さを判定する主な要因は、試料の全体的な粘度になる可能性があり、同様に該粘度は、試料中のヘモグロビンの濃度により主に決定される可能性がある。
【0012】
血液塗抹標本を調べる方法に関する追加の情報は、例えば、Peripheral Blood smear−Clinical Methods−NCBI Bookshelf、Clinical methods、The History、Physical and Laboratory Examinations、第3版、H. Kenneth Walker、W. Dallas hall、J. Willis Hurst、Butterworths、Peripheral Blood Smear、Edward C. Lynch、http://www.ncbi.nlm.nih.qov/bookshelf/br.fcgi?book=cm&part=A4584;Hematology Laboratory: Proper Preparation of a Peripheral Blood Smear, Slide Staining with Wright’s Stain;Now peripheral blood smears preparation doesn’t depend on laboratory technician’s mastery、Scientific and practical magazine <<Clinical laboratory consultation>> No. 6、2005年2月: yahoo answers、http://answers.yahoo.com/question/index?qid=20090824032133AAEtfnf;およびEvaluation of the Blood Smear、M. Christopher、University of California Davis、Department of Pathology、Microbiology and Immunology School of Veterinary Medicine、Davis CA、USA、http://www.vin.com/proceedings/Proceedings. plx?CID=WSAVA2004&PID=8610&Print=1&O=Genericにおいて見出されることができ、これらの全ては参照により本明細書に組み込まれている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Automatic Working Area Classification in Peripheral Blood Smears Using Spatial Distribution features Across Scales、W. Xiongら
【非特許文献2】LET’S OBSERVE THE BLOOD CELLS、D. Tagliasacchiら、1997年4月、http://www.funsci.com/fun3_en/blood/blood.htm
【非特許文献3】Peripheral Blood smear−Clinical methods−NCBI Bookshelf、Clinical methods、The History、Physical and Laboratory Examinations、第3版、H. Kenneth Walker、W. Dallas hall、J. Willis Hurst、Butterworths、Peripheral Blood Smear、Edward C. Lynch、http://www.ncbi.nlm.nih.qov/bookshelf/br.fcgi?book=cm&part=A4584
【非特許文献4】Hematology Laboratory: Proper Preparation of a Peripheral Blood Smear, Slide Staining with Wright’s Stain
【非特許文献5】Now peripheral Blood smears preparation doesn’t depend on laboratory technician’s mastery、Scientific and practical magazine <<Clinical laboratory consultation>> No. 6、2005年2月: yahoo answers、http://answers.yahoo.com/question/index?qid=20090824032133AAEtfnf
【非特許文献6】Evaluation of the Blood Smear、M. Christopher、University of California Davis、Department of Pathology、Microbiology and Immunology School of Veterinary Medicine、Davis CA、USA、http://www.vin.com/proceedings/Proceedings. plx?CID=WSAVA2004&PID=8610&Print=1&O=Generic
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
1つの態様では、本発明は、全血試料中の血球を計数する方法を提供する。方法は、
(a)全血試料を提供するステップ、
(b)全血試料をスライド、例えば、顕微鏡スライド上に置くステップ、
(c)スプレッダーを使用して血液塗抹標本を作製するステップ、
(d)血液塗抹標本をスライド上で乾燥させるステップ、
(e)スライド上の血液塗抹標本における赤血球中のヘモグロビンに起因する光の吸収または反射率を測定するステップ、
(f)分析に適切な厚さであるとステップ(e)における測定により同定された分析領域の拡大2次元デジタル画像を記録するステップ、ならびに
(g)拡大2次元デジタル画像からデータを回収、分析および保存するステップ
を含む。
場合によって、血球をスライド上に固定および染色する方法ステップが、前述の方法において使用され得る。
【0015】
全血試料は、混合全血試料であることが好ましい。血液塗抹標本を形成するのに使用される全血試料の容積は、血液試料の既知容積をスライドに適用して直接的に、またはスライド上の血液塗抹標本の光学密度もしくは反射率の測定と、こうして得られた値を、例えば、自動化血液分析器もしくは分光計などの機器により行われたヘモグロビンの独立した測定により容積尺度に変換することにより、スライドに適用された血液の容積を判定して間接的に判定することができる。
【0016】
全血試料中のヘモグロビンの濃度は、典型的には、例えば、ガラス毛細管などの光学的に透明なサンプリングプローブにおける血液試料の反射率測定により、吸引時点で直接判定することができる。あるいは、全血試料中のヘモグロビンの濃度は、試料の希釈後に従来の吸光度測定により直接判定することができる。さらに別の代替では、全血試料中のヘモグロビンの濃度は、スライド上の血液塗抹標本における赤血球中のヘモグロビンに起因する光の吸収または反射率を測定して判定することができる。ヘモグロビンの濃度が既知である場合、血液塗抹標本は、血液塗抹標本中の血液の光学密度を判定するのに弱拡大撮像装置によりスキャンされてもよい。この測定は、血液塗抹標本を形成するのに使用される全血試料中のヘモグロビンの量を効果的に判定するであろうことから、実際に吸引されスライド上に置かれる全血の容積が計算され得る。
【0017】
別の態様では、本発明は、全血試料中の血球を計数する装置を提供する。装置は、
(a)全血試料を含有する容器を吸引/分注装置に提示するホルダー、容器から全血試料を引き出し、および全血試料をスライド、例えば、顕微鏡スライド上に置く吸引/分注装置、
(b)全血試料をスライドにわたって拡散させて血液塗抹標本を作製するスプレッダー、
(c)血液塗抹標本をスライド上で乾燥させる乾燥機、
(d)スライド上の血液塗抹標本における赤血球中のヘモグロビンのため、光の吸収または反射率を測定することができる第1の撮像システム、
(e)分析に適切な厚さであると第1の撮像システムにより同定された分析領域の拡大2次元デジタル画像を記録することができる第2の撮像システム、ならびに
(f)拡大2次元デジタル画像の結果を回収、分析および保存するためのコンピューター
を含む。
場合によって、装置は、血液塗抹標本のさらなる処理を可能にするようにスライドを配置する位置決め装置を使用することができる。
【0018】
本明細書に記載された方法および装置は、単一の機器において血液塗抹標本の血球計数および再検討のプロセスを統合することができる。本明細書に記載された方法および装置は、ごく少数の試薬を必要とし、該試薬は安価である。本明細書に記載された方法および装置は、単一の非希釈容積の全血のみが使用されることから、技術的な意味で複雑ではない。
【0019】
本明細書に記載された方法および装置は、従来の血液分析器により現在検出できない異常を検出することができる。このような異常には、異常な赤血球のつながり(連銭および凝集)、ハウエルジョリー小体およびマラリア原虫などの赤血球封入体が含まれる。本明細書に記載された方法および装置は、急性骨髄性白血病で見られるアウエル小体または芽細胞で見られる核小体などの、白血球における細胞内変化を示すこともできる。最後に、本明細書に記載された方法および装置は、例えば、異常タンパク血症のケースで見られ得るタンパク質レベルの増加などの、血漿異常を検出することができる。
【0020】
血球数および血液塗抹標本の分析は、同じ全血試料で行うことができ、これにより細胞の分類についての機器の解釈を直接再検討する機会を利用者に提供する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1A】血液塗抹標本を調製する1つの方法、すなわち、遠心分離方法を例示する図である。図1Aは、遠心分離前にスライド上に置かれた全血一滴を示すスライドの平面図を示す図である。
【図1B】血液塗抹標本を調製する1つの方法、すなわち、遠心分離方法を例示する図である。図1Bは、遠心分離方法を用いて形成された血液塗抹標本を示す図1Aのスライドの平面図を示す図である。
【図2A】血液塗抹標本を調製する第2の方法、すなわち、カバースリップ方法を例示する図である。図2Aは、血液塗抹標本の形成前にスライド上に置かれた全血一滴を示すスライドの平面図を示す図である。
【図2B】血液塗抹標本を調製する第2の方法、すなわち、カバースリップ方法を例示する図である。図2Bは、カバースリップ方法を用いて形成された血液塗抹標本を示す図2Aのスライドの平面図を示す図である。
【図3A】血液塗抹標本を調製する第3の方法、すなわち、ウェッジまたはプッシュ方法を例示する図である。図3Aは、血液塗抹標本の形成前にスライド上に置かれた全血一滴を示すスライドの正面側面図を示す図である。
【図3B】血液塗抹標本を調製する第3の方法、すなわち、ウェッジまたはプッシュ方法を例示する図である。図3Bは、ウェッジまたはプッシュ方法を用いて形成された血液塗抹標本を示す図3Aのスライドの平面図を示す図である。
【図4】ウェッジを示す血液塗抹標本を例示するスライドの平面図を示す図である。ウェッジは、3つの異なる領域を有し、1つの領域での血液塗抹標本は形態学的再検討に所望されるものより厚く、第2の領域での血液塗抹標本は所望されるものより薄く、第3の領域での血液塗抹標本は実際に所望される。
【図5A】血液塗抹標本が、長さ、幅および形状に関してどのように異なるかを例示するスライド上の血液塗抹標本の平面図を示す図である。
【図5B】血液塗抹標本が、長さ、幅および形状に関してどのように異なるかを例示するスライド上の血液塗抹標本の平面図を示す図である。
【図5C】血液塗抹標本が、長さ、幅および形状に関してどのように異なるかを例示するスライド上の血液塗抹標本の平面図を示す図である。
【図5D】血液塗抹標本が、長さ、幅および形状に関してどのように異なるかを例示するスライド上の血液塗抹標本の平面図を示す図である。
【図6A】本明細書に記載された方法を実施するのに使用される血液塗抹標本の部分内に含有された全血試料の部分の容積を計算するため、血液塗抹標本を形成するのに使用される全血試料の既知容積と併用して、血液塗抹標本の全領域の光学密度の弱拡大スキャンがどのように使用され得るかを例示するスライド上の血液塗抹標本の平面図を示す図である。
【図6B】本明細書に記載された方法を実施するのに使用される血液塗抹標本の部分内に含有された全血試料の部分の容積を計算するため、血液塗抹標本を形成するのに使用される全血試料の既知容積と併用して、血液塗抹標本の全領域の光学密度の弱拡大スキャンがどのように使用され得るかを例示するスライド上の血液塗抹標本の平面図を示す図である。
【図6C】本明細書に記載された方法を実施するのに使用される血液塗抹標本の部分内に含有された全血試料の部分の容積を計算するため、血液塗抹標本を形成するのに使用される全血試料の既知容積と併用して、血液塗抹標本の全領域の光学密度の弱拡大スキャンがどのように使用され得るかを例示するスライド上の血液塗抹標本の平面図を示す図である。
【図7】スライド上への全血試料の既知容積の分注を例示する概要図を示す図である。
【図8A】血液塗抹標本にわたる血液試料の容積分布を確立し、これにより形態および細胞計数について調べられる血液塗抹標本の領域内に含有された血液の容積を判定できるようにするため、ヘモグロビンの異なる厚みプロファイルおよび濃度を有する血液塗抹標本が、弱拡大撮像によりどのようにスキャンされ得るかを示す図である。図8Aは、10個のスライドの平面図であり、各スライドはこの上に形成された血液塗抹標本を有する。
【図8B】血液塗抹標本にわたって血液試料の容積分布を確立し、これにより形態および細胞計数について調べられる血液塗抹標本の領域内に含有された血液の容積を判定できるようにするため、ヘモグロビンの異なる厚みプロファイルおよび濃度を有する血液塗抹標本が、弱拡大撮像によりどのようにスキャンされ得るかを例示する図である。図8Bは、10個のスライドの平面図であり、各スライドはこの上に形成された血液塗抹標本を有する。
【図8C】血液塗抹標本にわたって血液試料の容積分布を確立し、これにより形態および細胞計数について調べられる血液塗抹標本の領域内に含有された血液の容積を判定できるようにするため、ヘモグロビンの異なる厚みプロファイルおよび濃度を有する血液塗抹標本が、弱拡大撮像によりどのようにスキャンされ得るかを示す図である。図8Cは、図8Aおよび8Bに示された血液塗抹標本のプロファイルを例示する10個のグラフ(スライドごとに1個のグラフ)から成る。
【図8D】血液塗抹標本にわたって血液試料の容積分布を確立し、これにより形態および細胞計数について調べられる血液塗抹標本の領域内に含有された血液の容積を判定できるようにするため、ヘモグロビンの異なる厚みプロファイルおよび濃度を有する血液塗抹標本が、弱拡大撮像によりどのようにスキャンされ得るかを示す図である。図8Dは、血液塗抹標本のプロファイルを示すグラフである。図8Dにおけるグラフは、再検討に適している血液塗抹標本の部分、すなわち、血球が計数される部分を表す。
【図8E】血液塗抹標本にわたって血液試料の容積分布を確立し、これにより形態および細胞計数について調べられる血液塗抹標本の領域内に含有された血液の容積を判定できるようにするため、ヘモグロビンの異なる厚みプロファイルおよび濃度を有する血液塗抹標本が、弱拡大撮像によりどのようにスキャンされ得るかを示す図である。図8Eは、スキャニングによる光学密度の判定が、従来の自動化血液分析器を用いて行われたヘモグロビン濃度の推定と相関することがどのように示されるかを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本明細書では、表現「全血」は、栄養、電解質、ホルモン、ビタミン、抗体、熱および酸素を身体組織に運搬する心臓動脈、静脈および毛細血管を通して循環させる生体組織を意味する。全血は、血漿と呼ばれる体液に浮遊した赤血球、白血球および血小板を含有する。本明細書では、表現「血液試料(sample of blood)」は、表現「血液試料(blood sample)」と同義である。本明細書では、表現「全血試料(sample of whole blood)」は、表現「全血試料(whole blood sample)」と同義である。本明細書では、表現「血液塗抹標本」は、これに含有された個々の細胞の顕微鏡画像分析を目的として調製される、通常は顕微鏡スライド上の、および永続性を与えるために場合によって染色または混合された、血液の薄膜を意味する。本明細書では、表現「混合全血試料」は、均一混合物に細胞を再懸濁するために混合された全血試料を意味する。患者から直接採取された全血試料由来の血球は、さらなる処理がない場合、採取後一定期間にわたって定着する傾向がある。したがって、全血試料は、検査される前に混合される。本明細書では、表現「全血球計数」は、患者の血液における細胞について情報を提供する医師または他の医療専門家により要請される検査を意味する。血流中に循環する細胞は、一般的に3つのタイプ、すなわち、白血球(white blood cell)(白血球(leukocyte))、赤血球(red blood cell)(赤血球(erythrocyte))および血小板(platelet)(血小板(thrombocyte))に分けられる。追加の情報については、参照により本明細書に組み込まれている、全血球計数−無料の百科事典、ウィキペディア、http://en.wikipedia.org/wiki/Complete blood countを参照のこと。本明細書では、用語「スライド」は、顕微鏡下で調べられる標本を載せるための小さなガラス板を意味する。
【0023】
本明細書では用語「メタメーター(metameter)」は、直接測定されたものと対照をなして変換値を意味する。本明細書では、表現「赤血球分布幅」は、細胞サイズの分布による赤血球集団の健康の尺度である。任意の全血試料由来の赤血球集団の細胞サイズが測定され、細胞サイズの関数としての任意のサイズの細胞数でヒストグラムにプロットされるならば、結果は、ほぼ正常な分布である、細胞のサイズについての赤血球分布となる。したがって、表現「赤血球分布幅」は、赤血球の分布の標準偏差を赤血球の分布の平均で除した商を意味し、通常は100%を乗じて商をパーセント(%)に変換する。
【0024】
本明細書では、表現「平均赤血球容積」(MCV)は、フェムトリットル単位で測定される赤血球の平均容積を意味する。本明細書では、表現「平均赤血球ヘモグロビン濃度」(MCHC)は、パーセント(%)単位で測定される、任意の容積の赤血球中のヘモグロビンの平均量を意味する。本明細書では、表現「ヘモグロビンの濃度」は、g/dL単位で測定される、血液の容積におけるヘモグロビンの量を意味する。本明細書では、表現「平均赤血球ヘモグロビン」(MCH)は、ピコグラム単位で測定される、平均赤血球中のヘモグロビンの平均量を意味する。
【0025】
本明細書では、表現「細胞質比」は、細胞の全容積に対する細胞中の細胞質の容積の比を意味する。本明細書では、表現「核比」は、細胞の全容積に対する細胞中の核の容積の比を意味する。
【0026】
本明細書では、表現「接触ライン」は、ウェッジまたはプッシュ塗抹標本を形成するプロセスを指す。このタイプの血液塗抹標本を形成するには、全血試料一滴がガラススライドの末端付近に置かれる。直線縁を有するスミアラーまたはスプレッダーが、ガラススライドに接触され、全血一滴に押し込まれ、これによりスミアラーまたはスプレッダーとガラススライドの間の接触ラインにわたって該一滴を拡散させる。次いでスミアラーまたはスプレッダーの方向が反転され、スミアラーまたはスプレッダーはガラススライドの長さに沿って引っ張られ、これにより全血一滴のラインをスミアラーまたはスプレッダーで引っ張る。血液は、血液が使い果たされるまで薄膜内でガラススライド上に拡散され、この結果、血液のウェッジがスライド上に残る。本明細書では、用語「ウェッジ」は、血液の薄膜、すなわち、血液塗抹標本がスライドの一端において他端より厚くなっているという観察を指す。上から見ると、血液の薄膜、すなわち、血液塗抹標本は長方形のように見える。しかし、長方形は、ガラススライドの一端でより暗く、血液の薄膜、すなわち、血液塗抹標本がより薄くなるにつれて、長方形の色はガラススライドの他端に行くほど徐々に明るくなる。
【0027】
本明細書では、用語「吸光度」は光学密度を意味する。吸光度は、式
Aλ=−log10(I/Io)
(式中、Iは、特定の波長λにおける試料を通過した光の強度(透過光強度)を表し、Ioは、光が試料に入る前の光の強度、すなわち入射光強度を表す)により表される。試料の吸光度は、厚さおよび濃度により対数的に変化する試料の透過率I/Ioと対照をなして、試料の厚さおよび試料中の吸収種の濃度に比例することから、吸光度測定は分析化学において実施されることが多い。
【0028】
本明細書では、用語「反射率(reflectance)」は、特定の界面により反射される入射電磁放射線の尺度を意味する。該用語は反射性(reflectivity)と近縁関係にあるが、反射率は薄い反射物体により適用される。反射率は、表面の厚さのばらつきのため薄い物体については変化する可能性があり、表面がより厚くなるにつれて反射性に近づく。反射率は、反射される放射量を入射放射量と比較して計算することができる。
【0029】
本明細書では、表現「弱拡大撮像」等は、顕微鏡の10×対物レンズが使用される撮像を指す。本明細書では、表現、「強拡大撮像」等は、40×から100×の倍率が使用される撮像を指す。40×の倍率が油浸を必要としないのに対し、100×の倍率は好ましくは油浸を使用することは注意されるべきである。油浸は、顕微鏡の解像度を増加させるのに使用される技法である。解像度の増加は、対物レンズおよび標本の両方を高屈折率の透明な油に浸漬して達成され、これにより対物レンズの開口数を増加させる。油浸は、参照により本明細書に組み込まれている、油浸−無料の百科事典、ウィキペディア、http://en.wikipedia.org/wiki/Oil immersion objectiveにより詳細に記載されている。弱拡大撮像の目的は、細胞が計数されるスライドの部分を判定することであるため、弱拡大撮像が本明細書に記載された方法および器具において使用される場合、高解像度は必要とされないことは注意されるべきである。細胞が計数されるスライドの部分は、真の単層またはほぼ真の単層である。対照的に、強拡大撮像が本明細書に記載された方法および器具において使用される場合、さまざまなタイプの血球が個々に計数され得るように、弱拡大撮像機能により提供されるものより高い解像度が必要とされることは注意されるべきである。「弱拡大撮像」は比較的低い倍率(例えば、10×)と同義であり、「強拡大撮像」は比較的高い倍率(例えば、40×から100×)と同義であることも注意されるべきである。強拡大撮像が、弱拡大撮像が提供するより実質的に高い倍率、すなわち、適切な解像度と共に少なくとも約4:1を提供する限り、本明細書に記載されたもの以外の倍率が使用され得る。顕微鏡の倍率およびその他の特性(例えば、解像度など)の追加の論述は、参照により本明細書に組み込まれている、顕微鏡−無料の百科事典、ウィキペディア、http://en.wikipedia.org/wiki/Microscope、および参照により本明細書に組み込まれている、顕微鏡法−無料の百科事典、ウィキペディア、http://en.wikipedia.org/wiki/Microscopyに見出すことができる。
【0030】
本明細書に記載された方法は、
(a)全血試料を提供するステップ、
(b)全血試料をスライド、例えば、顕微鏡スライド上に置くステップ、
(c)スプレッダーを使用して血液塗抹標本を作製するステップ、
(d)血液塗抹標本をスライド上で乾燥させるステップ、
(e)スライド上の血液塗抹標本における赤血球中のヘモグロビンに起因する光の吸収または反射率を測定するステップ、
(f)分析に適切な厚さであるとステップ(e)における測定により同定された分析領域の拡大2次元デジタル画像を記録するステップ、ならびに
(g)拡大2次元デジタル画像からデータを回収、分析および保存するステップ
を含む。
【0031】
場合によって、血球をスライド上に固定および染色する方法ステップが、前述の方法において使用され得る。前述の方法に基づくと、方法を実施する装置は、
(a)全血試料を含有する容器を吸引/分注装置に提示するホルダー、容器から全血試料を引き出し、および全血試料をスライド、例えば、顕微鏡スライド上に置く吸引/分注装置、
(b)全血試料をスライドにわたって拡散させて血液塗抹標本を作製するスプレッダー、
(c)血液塗抹標本をスライド上で乾燥させる乾燥機、
(d)スライド上の血液塗抹標本における赤血球中のヘモグロビンのため、光の吸収または反射率を測定することができる第1の撮像システム、
(e)分析に適切な厚さであると第1の撮像システムにより同定された分析領域の拡大2次元デジタル画像を記録することができる第2の撮像システム、ならびに
(f)拡大2次元デジタル画像の結果を回収、分析および保存するためのコンピューター
を含むことになる。
【0032】
場合によって、装置は、血液塗抹標本のさらなる処理を可能にするようにスライドを配置する位置決め装置を含むことができる。
【0033】
拡大2次元画像の大きい次元は、典型的にはスライドの長いほうの縁に平行であり、拡大2次元画像の小さい次元は、典型的にはスライドの短いほうの縁に平行である。
【0034】
血液塗抹標本中の血球は、拡散の前後に、例えば、ライト染色、メイ−グリュンワルド−ギムザ染色、新メチレンブルー、フィールド染色、ペルオキシダーゼまたは蛍光染色などの、例えば細胞化学染色により染色することができる。幾つかの例では、染色手順は必要とされない。
【0035】
染色が必要とされる場合、スライドは、装置の撮像コンポーネント(複数可)に届けられる前に適切に処理することができる。撮像コンポーネント(複数可)は、分析を行うのに必要とされる解像度に適切なレベルの倍率で、スライド全体またはスライドの選択領域(複数可)をスキャンする。本明細書での使用に適した撮像コンポーネント(複数可)は、参照により本明細書に組み込まれている、http://www.aperio.com/pathology−services/index−solutions−software.aspに記載されている。
【0036】
細胞が単層で分布され得るスプレッダーが使用される場合、血液塗抹標本における血液試料に覆われる全領域が判定され得る。スライド全体における細胞エレメントが、全血球数を提供するため次いで計数され得る。あるいは、試料の単層に覆われる領域の部分のみにおける細胞エレメントが計数されてもよく、および適切な計算が、スキャンされる血液塗抹標本全体の部分に基づき全血球数を判定するのに実施されてもよい。図1Aおよび1Bは、細胞を単層に分布させる従来の方法を例示している。
【0037】
血液塗抹標本を作製するためのウェッジまたはプッシュアプローチが使用される場合、血液塗抹標本の光学密度または光吸収度のスキャンが行われ得る。血液塗抹標本の任意の領域に関する光学密度または吸光度の値は、この任意の領域の血液塗抹標本の長さおよび幅に沿った血液塗抹標本の厚さに比例する。血液塗抹標本の全光学密度についての知見は、次いで、確実に再検討され得る血液塗抹標本の領域内に含有された血液の容積を計算するのに使用することができる。このプロセスは、血液塗抹標本の特定の部分(例えば、血液塗抹標本の全領域の一部)で測定された光学密度の値を記録すること、この値を血液塗抹標本全体(すなわち、血液塗抹標本の全領域)の光学密度と比較すること、次いで血液塗抹標本を形成する血液の容積(すなわち、既知である値または血液塗抹標本の全領域から判定され得る値)を明らかにしつつ、血液塗抹標本全体(すなわち、血液塗抹標本の全領域)の光学密度に対する、血液塗抹標本の特定の部分(例えば、血液塗抹標本の全領域の一部)で測定された光学密度の値の比に基づき血球数を判定することにより、異なる血液塗抹標本の全体寸法の差から生じる血液塗抹標本と、形態学的再検討に適した領域の間の差に対処する。任意の血液塗抹標本では、血液塗抹標本の厚い部分は、血液塗抹標本の薄い部分より高いヘモグロビンの濃度を有する。さらに、血液塗抹標本の厚い部分は、血液塗抹標本の薄い部分より高い血液の容積を有する。血液塗抹標本の薄い部分における単位面積あたりに見られるより多くの白血球が、血液塗抹標本の厚い部分における単位面積あたりに見られることが予想されよう。換言すると、任意の血液塗抹標本の部分(すなわち、厚い部分)が、任意の血液塗抹標本の別の部分(すなわち、薄い部分)の2倍厚いならば、血液塗抹標本の薄い部分で見られる白血球の2倍の白血球が、血液塗抹標本の厚い部分で見られることが予想されよう。
【0038】
次に血液塗抹標本の一例を例示する図6A、6Bおよび6Cを参照すると、スライドは参照番号60で表され、血液塗抹標本の厚い部分は参照番号62で表され、血液塗抹標本の薄い部分は参照番号64で表され、使用可能な血液塗抹標本の部分は参照番号66で表されている。血液塗抹標本全体は、例えば、X軸に平行な複数の格子線およびY軸に平行な複数の格子線を用いて、より小さな区画68に分割される。スライド60のスキャンは、スライド60のより小さな区画68それぞれの光学密度を示す。より小さな区画68それぞれの光学密度を表す数字が、図6Cのより小さな区画ごとに刻まれている。これらの数字は、0から90までの範囲である。しかし、これらの数字は測定された数字ではなく、仮想の数にすぎない。さらに、これらの数字は実際にはスライド60上に存在しない。これらの数字はより小さな区画68の光学密度を表しているにすぎない。スライド60の使用可能な部分は、より小さな区画68の測定された光学密度の値が、(a)低いカットオフ値を上回る、および(b)高いカットオフ値を上回らない、の両方であるような部分である。図6Cに示されている通り、低いカットオフ値はゼロ(0)に選択され、高いカットオフ値は約38に選択される。したがって、スライド60の使用可能な部分66のより小さな区画68は、1から38までの範囲の光学密度値を有する。
【0039】
本明細書に記載された方法および装置は、全血試料中の各成分を認識するのにスキャニングデジタル顕微鏡法を好ましくは使用する。スキャニングデジタル顕微鏡法の特別なクラス、デジタルパソロジー(digital pathology)は、参照により本明細書に組み込まれている、デジタルパソロジー−無料の百科事典、ウィキペディア、http://en.wikipedia.org/wiki/Digital pathology、およびこれに追加された参考文献およびリンクにより詳細に記載されている。スキャニングデジタル画像に関する追加の情報については、参照により本明細書に組み込まれている、スキャニングベーシックス101−デジタル画像の全て、http://www.scantips.com/index.html、およびこれに追加された参考文献およびリンクも参照のこと。スライド上に置かれた全血試料の容積の値から、方法および装置は、下記のパラメータを判定することができる。全ヘモグロビンは、血液塗抹標本自体から判定することができる。例えば、血液塗抹標本を作製するのに2マイクロリットルの血液が分注され、およびスライド上のヘモグロビンの全体測定が20gである場合、血液塗抹標本の任意の領域における血液の絶対容積は、この血液塗抹標本の任意の領域で測定されたヘモグロビンに基づき判定することができる。この同じ血液塗抹標本の任意の領域で計数された白血球数は、単位面積あたりの細胞として計数され、次いでマイクロリットルあたりの細胞に換算される。
【0040】
ヘモグロビンの濃度は、スキャンされた血液塗抹標本全体の光学密度から計算することができる。光学密度の判定は、ヘモグロビンの最大吸光度である540nmの波長を有する光を用いて実施することができる。しかし、異なる波長(または波長の組み合わせ)が使用され得る(それを所望であれば)。光学密度を判定するための同じスキャンが、赤血球の選択、および赤血球の直径を測定して平均細胞直径の測定を提供するのに使用され得、細胞容積のメタメーターとして使用され得る。平均細胞直径の変動性は、細胞のサイズの変動性を評価して赤血球分布幅に等しいパラメータを提供するのに使用することができる。ヘモグロビン含量に関する各赤血球の吸光度は、細胞ごとならびに平均のヘモグロビン含量(平均赤血球ヘモグロビン)およびヘモグロビン濃度(平均赤血球ヘモグロビン濃度)の導出を可能にする。吸光度(または光学密度)の測定により、スライド全体のヘモグロビンの濃度が判定され得る。測定に望まれる領域における各赤血球中のヘモグロビンの量(または赤血球の統計的に有意な数)が、測定され得る。この測定は、赤血球あたりのヘモグロビンの量またはヘモグロビン含量(CH)を提供する。平均値が次いで計算され得る(MCH)。分析される各赤血球の2次元領域についての知見を有することにより、個々の赤血球の容積が計算され得る。個々の赤血球の容積が分かった後、平均細胞容積が計算され得る。赤血球あたりのヘモグロビンの濃度の平均値であるMCH値を用いて、およびMCV値を用いて、赤血球の任意の容積におけるヘモグロビの平均濃度であるMCHC値、すなわち、MCH/MCVが計算され得る。
【0041】
赤血球のスキャンは、鎌状細胞、赤血球断片、涙滴奇形赤血球、有棘赤血球、ウニ状赤血球等などの異常な形状をした細胞の有意な集団の存在を判定するのに使用することができる。スキャンは、例えば、ハウエルジョリー小体、マラリア原虫等などの細胞封入体を認識する能力を有する。連銭形成および寒冷凝集素症で見られるような赤血球の異型凝集も、検出することができる。ヘモグロビン分布の異常パターンは、球状赤血球または標的細胞が存在するケースで検出され得る。蛍光色素染色または超生体染色は、網赤血球を検出するのに使用することができる。
【0042】
白血球の検出に関して、本明細書に記載された方法および装置は、血液塗抹標本全体中の白血球の染色特性を使用して白血球の計数を実施することができる。血液塗抹標本のより小さな領域、すなわち、白血球の形態学的特性が容易に同定され得る該領域が、白血球の差異を判定、ならびに有核赤血球を検出および計数するのに使用され得る。有核赤血球は、サイズ、小葉性(lobularity)、粒度(すなわち、顆粒の程度およびタイプ)、ならびに核と細胞質比および形態学的特性のような特徴に基づき同定することができる。
【0043】
血小板は、サイズおよび染色剤の取り込みといった特徴に基づき計数することができる。さらに、衛星現象、およびより一般には凝集に起因した血小板数への干渉も、認識することができる。衛星現象は、血小板を好中球に付着させる異常な免疫応答を意味する。染色および撮像されたとき、血小板は好中球の周囲の衛星のように見える。試料中の白血球の老化、慢性リンパ球性白血病におけるよごれ(smear)/破損(smudge)細胞、異常タンパク血症のケースで見られるバックグラウンド染色といった要因の結果生じる人為産物もスクリーニングすることができる。よごれ/破損細胞は、CLL患者の血液塗抹標本に現れる断裂された慢性リンパ球性白血病(CLL)細胞である。
【0044】
本明細書に記載された方法および装置は、蛍光色素検出を使用するのに適応することができ、これにより免疫蛍光染色へのアクセスおよび有核細胞の検出に使用され得る他の蛍光色素線量の取り込みを提供する。
【0045】
形態スキャニングおよび細胞認識を行える装置が存在して数年間が経過した。例えば、参照により本明細書に組み込まれている、http://www.cellavision.com/?sid=459を参照のこと。
【0046】
以下の非限定例は、本明細書に記載された方法を実施するための特定の技法を例示している。
【実施例】
【0047】
[実施例1]
この例は、本明細書に記載された血液塗抹標本技法を使用して定量的血球計数を実施するための1つのアプローチを例示する。
【0048】
次に図7を参照すると、試料管「S」から採取されおよび既知容積を有する全血試料100は、最初の一滴120、例えば、50マイクロリットルで顕微鏡スライド110上に置かれる。血液塗抹標本を作製する過程で血液は失われていないことが仮定される。したがって、血液試料中の全ての細胞が、血液塗抹標本において占められる。弱拡大撮像装置は、血液塗抹標本の領域全体にわたるピースワイズ様式(piece−wise fashion)で(すなわち、画素により)、ヘモグロビンによって生じる光学密度または反射率を測定する。弱拡大撮像装置は、顕微鏡の10×対物レンズであってもよい。画像の各ピース(すなわち、画素)の光学密度または反射率値は、各ピースにおける赤血球の量に比例することが仮定される。用語「ピース」は、図6Bおよび6Cに示されたより小さな区分68と同義である。故に、各ピース(またはより小さな区分68)を測定するのに同じ方法が使用される限り、10光学密度単位または反射率単位の任意の応答値を有するピース(またはより小さな区分68)は、5光学密度単位または反射率単位の応答値を有するピース(またはより小さな区分68)の2倍の赤血球を含有することになる。血液塗抹標本の領域全体で記録された測定単位(例えば、光学密度単位または反射率単位)の数字を加算して、血液塗抹標本中のヘモグロビンの量を表す数字を得、この結果、血液塗抹標本中の血液の合計量が分かる。例えば、全ての非ゼロ画素の合計は、合計10,000,000光学密度単位または反射率単位になってもよい。
【0049】
容積計算の次のステップは、血液塗抹標本のどの領域が撮像による分析に適しているかを判定することである。血液塗抹標本のより厚い部分は、計数するには多すぎる細胞を含有している。より厚い部分は、より多くのヘモグロビンも含有しており、したがって画素あたりのより高い光学密度測定値または反射率測定値を有することになる。弱拡大撮像の撮像アルゴリズムは、どの領域が、強拡大撮像によるこの後の分析に許容できる範囲を示すかを判定するのに使用することができる。例えば、1単位から38単位までの範囲で画素値を有する領域は、血球を計数するための血液塗抹標本の正しい厚さを表すこと、39単位以上の画素値を有する領域は、血球を計数するには厚すぎる血液塗抹標本の部分を表すこと、1単位未満の範囲で画素値を有する領域は、血球を計数するには薄すぎる血液塗抹標本の部分を表すことが、経験的に判定されてもよい。アルゴリズムは、次いで、血液塗抹標本の厚さが1単位から38単位までの範囲で画素測定値を提供する、血液塗抹標本の領域の境界を同定する。これらの境界は、次いで、境界内のこの領域のみが、細胞計数する目的のため強拡大撮像により分析される強拡大撮像ステップで使用される。
【0050】
有界測定領域内の全ての画素の画素参照値は、ヘモグロビンの合計量に比例する数字を得、この結果、測定領域によって囲まれた血液の合計量を得るために加算することができる。例えば、該領域における全ての画素の合計値は、合計3,000,000光学密度単位または反射率単位になってもよい。塗抹標本全体における全ての画素の合計値が、以前に示された計算から10,000,000であったならば、分析されている領域は10,000,000で除された3,000,000の分数を表し、これは血液の合計量の30%、すなわち血液塗抹標本中の血液の合計量の0.3倍に等しい。血液塗抹標本全体で50マイクロリットルの血液試料があることが既知であるため、同定された測定領域は、50マイクロリットルの0.3倍、すなわち15マイクロリットルを含有する。この容積は、次いで、顕微鏡撮像システムが、同定された測定領域におけるさまざまな細胞を記録および計数する後の時点で使用される。故に、このシステムが、血球を記録および計数するのに適していると同定された領域における75,000,000赤血球があると判定するならば、この血液試料の赤血球数は、15マイクロリットルあたり75,000,000、すなわちマイクロリットルあたり5,000,000赤血球となる。同じ計算は、測定領域で計数される全ての他のタイプの細胞について、血液試料のマイクロリットルあたりの血球数を得るのに使用することができる。
【0051】
この例に記載された方法を実施する代替方法では、スライドに適用される全血試料の容積が分からない場合、適用される全血試料の容積は、ヘモグロビンの濃度を判定する独立した方法により見出すことができる。例えば、合計Xグラムのヘモグロビンが、血液塗抹標本の光学密度単位または反射率単位の測定によりスライド上で測定される場合、および自動化血液分析器または分光計により行われるヘモグロビンの独立した測定が、ヘモグロビンの濃度がXg/dLであることを示す場合、単純な計算が、スライドに適用される全血試料の容積は1dLであることを示す。ヘモグロビンの濃度がどのように測定されるかにかかわらず、ひとたびヘモグロビンの濃度の値が分かれば、本明細書に記載された方法を、全血球計数を行うのに実施することができる。
【0052】
[実施例2]
次に図8Aを参照すると、幾つかの異なる血液塗抹標本(全部で10)が示されている。これらの血液塗抹標本は、血液塗抹標本の全体の光学密度または反射率の強さの違いをもたらすさまざまな量のヘモグロビンを含有する種々の全血試料で作製された血液塗抹標本を表す。図8Bは、図8Aの各血液塗抹標本の厚い末端および各血液塗抹標本の薄い末端を示す。適切なスキャニング手順により、光学密度プロファイルをグラフにすることができる。グラフのX軸上の各点は、スライド上の全血一滴の起始点から測定した、スライド上の血液塗抹標本の1点の距離を表す。グラフのY軸は、全血一滴の起始点から測定した、スライド上の血液塗抹標本の任意の点における光学密度または反射率を表す。図8Cは、図8Bにおける血液塗抹標本の光学密度プロファイルまたは反射率プロファイルを示す。図8Dは、血球を計数する領域が、血球が計数されない領域と区別された、全体的な光学密度プロファイルまたは反射率プロファイルを示す。図8Eは、自動化血液分析器により測定されたヘモグロビンと、血液塗抹標本をスキャンして計算されたヘモグロビンの間の相関を示すグラフを例示する。
【0053】
[実施例3]
本例は、顕微鏡スライドの短軸の狭い部分のみが使用される、血球数を判定する技法を例示する。実施例1に記載されたアプローチを用いる代わりに、スライドの中央ではあるが一本線の画素に対応する値を、弱拡大撮像システムにより測定することができる。スキャンされる線は2次元を有するが、線の小さい次元は、実施例1でスキャンされる小さい次元よりはるかに狭いことは注意されるべきである。この技法は、装置が単一検出ビームを使用する場合に用いることができ、光学密度値または反射率値が記録される間に、該ビームを通ってスライドが動かされる、すなわち、スキャンされる。真の撮像システムではないものの、同じ結果が、より大きな領域を構成するのに必要とされる複数の線というよりむしろ一本線をスキャンしてもたらされる。この実施形態は、以前に記載された実施形態よりも安価であることが考えられる。
【0054】
スキャンされる線に沿った画素値、例えば、反射率または光学密度が、測定が行われる位置の関数としてプロットされる場合、スライドの中央でのグラフが得られる。横座標(X軸)は、血液塗抹標本の真ん中を通る線上の直線位置または距離を表し、縦座標(Y軸)は、線上のこの直線位置で測定された相対的な光学密度単位または反射率単位を表す。グラフ上のプロファイルは、次いで、血液塗抹標本が、強拡大撮像システムによる血球の記録および計数を可能にするのに十分薄くなる点を同定するのに使用することができる。反射率の測定値が特定の値より下に下がるプロファイル上の点は、同定された測定領域の境界が設定される点である。この点は、本明細書ではカットオフ点と呼ばれる。この情報は、次いで強拡大撮像システムに送信され、該システムは、次いでこの境界により設定された血液塗抹標本の領域における細胞のみを記録および計数する。換言すると、スライド上の「再検討される領域」は、測定プロファイルが得られた線に垂直な、スライドを横切る線に前縁で囲まれている。スライドを横切る垂直な線は、カットオフ点として同定された点を通過する。血液塗抹標本において下流にある血液塗抹標本上の全ての点(すなわち、血液塗抹標本のより薄い部分にある点)が記録および計数される。
【0055】
記録される領域の容積および血球が計数される位置は、以前に記載された実施形態で使用されるものと似た方法で計算される。スキャン線上の全ての画素反射率測定値が、血液塗抹標本中のヘモグロビンの合計量を表す数字を得るために加算、すなわち、積算される。血液塗抹標本中の血液の量は、血液塗抹標本中のヘモグロビンの合計量から得ることができる。実施例1に記載された実施形態で使用されたのと同じタイプの測定および計算が、再検討のために同定された領域におけるプロファイル上の全ての点について実施される。この場合もやはり、再検討領域で表される最初の試料由来の血液の比は、血液塗抹標本の特定の部分(例えば、血液塗抹標本の全領域の一部)で測定された光学密度の値を記録すること、この値を血液塗抹標本全体(すなわち、血液塗抹標本の全領域)の光学密度と比較すること、次いで血液塗抹標本を形成する血液の容積(すなわち、既知である値または血液塗抹標本の全領域から判定され得る値)を明らかにしつつ、血液塗抹標本全体(すなわち、血液塗抹標本の全領域)の光学密度に対する、血液塗抹標本の特定の部分(例えば、血液塗抹標本の全領域の一部)で測定された光学密度の値の比に基づき血球数を判定することにより判定される。この実施形態について行われた仮定は、血液塗抹標本の厚さは、スライドの短軸、すなわち、プロファイルを測定するのに弱拡大撮像システムにより使用されたスキャン線に垂直な次元、に沿って均一であるということである。この軸に沿ったいずれの非対称性または均一性も、血液塗抹標本を貫く単一の軸線から得られた容積の判定にエラーをもたらす。
【0056】
本明細書に記載された方法および装置は、単一の機器において血液塗抹標本の血球計数および再検討のプロセスを統合することができる。方法および装置は、ごく少数の試薬のみを必要とし、該試薬は安価である。方法および装置は、単一の非希釈容積の全血のみが使用されることから、技術的な意味で複雑ではない。
【0057】
例えば、溶解耐性赤血球などの妨害材料は、問題にならないであろう。使い捨てコンポーネントは、単一のガラススライドである。装置は、この成果を電子画像として保存できる。光学は、蛍光検出を可能にするように配置することができる。必要とされる試料の容積は、きわめて少ない。
【0058】
試料の全てが分析に使用されることになるため、特に体液の試料、より好ましくは、血液の試料が分析される場合、精度は高い。対象材料は、参照塗抹標本の使用に限定され得る。本明細書に記載された方法および装置は、従来の血液分析器により現在検出できない異常を検出することができる。このような異常には、異常な赤血球のつながり(連銭および凝集)、ハウエルジョリー小体およびマラリア原虫などの赤血球封入体が含まれる。本明細書に記載された方法および装置は、急性骨髄性白血病で見られるアウエル小体または芽細胞で見られる核小体などの、白血球における細胞内変化を示すこともできる。最後に、本明細書に記載された方法および装置は、例えば、異常タンパク血症のケースで見られ得るタンパク質レベルの増加などの、血漿異常を検出することができる。
【0059】
血球数および血液塗抹標本の分析は、同じ全血試料で行うことができ、これにより細胞の分類についての機器の解釈を直接再検討する機会を利用者に提供する。
【0060】
本発明のさまざまな変更および改変は、本発明の範囲および趣旨から逸脱することなく当業者に明らかとなり、本発明が、本明細書に記載された例示的実施形態に過度に限定されるものではないことが理解されるべきである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液塗抹標本を用いて血球計数を行う方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血球の自動計数は、既知容積を有する全血試料が得られ、この後に適切な希釈剤で希釈された後、血球を計数することを典型的には必要とする。試料の最初の容積およびこの後の希釈程度についての知見は、最初の全血試料の任意の容積における種々の種類の細胞の数を定量できるようにする。例えば、1マイクロリットルの全血が1000マイクロリットルの容積を得るように希釈される場合、希釈比は1:1000と言われ、希釈係数は1000と言われる。血液のこの希釈試料に関する血球計数が、1マイクロリットルあたり5000赤血球あることを示す場合、最初の非希釈血液試料中の赤血球数は1000と5000の積に等しい、すなわち、5,000,000である。故に、非希釈試料の実際の血球数は、1マイクロリットルあたり5,000,000赤血球である。
【0003】
血球を検出し計数する幾つかの物理的方法(例えば、直流信号または高周波信号のどちらかを用いた血球のインピーダンス特性の分析、染色されているまたは天然に近い状態にある細胞が、光散乱特性、吸光度特性、蛍光特性、または前述のものの任意の組み合わせを用いて調べられる光学フローサイトメトリーの使用など)が使用されている。フローサイトメトリーを介した血球の顕微鏡画像、または規定寸法を有するチャンバーで血球が懸濁される間の血球の顕微鏡画像の分析と併用した血球の直接撮像により、血球が定量化できることも示唆されている。血液の希釈または非希釈試料のどちらかを寸法が知られている血球計算盤に導入することができ、および血球計数をデジタル画像の分析により生成することができる機器が開発されている。これらのアプローチは全て、血球計数のパラメータを生成するのに使用することができる。
【0004】
血球計数が前述の方法の1つにより完了された後、幾つかの血液試料は、血液塗抹標本の調製、染色および調査を伴う工程を用いた別の分析を典型的には必要とする。血液塗抹標本を分析する工程は、手動、自動化または半自動化技法を含むさまざまな技法を使用することができる。血液塗抹標本の分析は、血球計数の正確さを確認し、潜在的な妨害材料を検出し、血球計数の従来の分析により検出または解釈することができない細胞の微細な細胞内の特徴の幾つかを検出するのに使用することができる。
【0005】
血球は均質ではない。血球は、細胞自体より小さい細胞内の特徴を含有する。このような細胞内の特徴には、核、核小体、顆粒および細胞膜が含まれる。細胞内の特徴の分析の特定例には、赤血球の形状および赤血球の形状の変異の調査が含まれる。例えば、細胞自体のサイズに対する細胞の核のサイズの比を、各々(すなわち、細胞の核および細胞自体)の断面積を測定し、および測定値を除算して判定することが可能である。この比およびさまざまな他のパラメータは、血球の正常度を判定するのに使用することができる。
【0006】
潜在的な妨害材料には、鎌状細胞、溶解耐性赤血球(lyse−resistant red blood cell)、さまざまな理由のため凝集する細胞、有核赤血球および異常に高い脂質濃度が含まれるが、これらに限定されない。一般的に、これらの妨害材料は血液成分(複数可)の構造(複数可)の異常であり、異常は血液成分の正常な反射および吸収特性を変化させ、正常な特性は血液パラメータの測定を可能にする。
【0007】
血液塗抹標本の分析に関して、血液塗抹標本が調製された後、血球の形態学的特性および血球の細胞内の特徴を同定するために、血液塗抹標本は少なくとも1つの適切な染色剤を用いて染色され得る。同定の工程は、手動であり得または自動化され得る。典型的には、染色血液塗抹標本は、細胞の形態学的外観を主観的に評価して種々の白血球の比率の定量的印象、または形態学的異常の程度の半定量的印象のどちらかを提供するヒト形態学者により調べられる。デジタル画像でのパターンを認識して白血球を分類するだけでなく形態学的変化の解釈も提供する自動化された顕微鏡およびソフトウェアを用いて、血液塗抹標本を分析する工程を自動化する試みも行われた。
【0008】
故に、血球計数の実施および血液試料のこの後の形態学的分析は、自動化血球計数装置を通した血液試料の処理、手動でのまたは自動化装置を用いた血液試料の血液塗抹標本の形成および染色、これに続く手動でのまたは自動化装置を用いた染色血液塗抹標本の形態学的再検討を伴い得る別々のステップを必要とする。
【0009】
以前に記載された実践は広く用いられているが、および細胞の半定量的評価は形態学的再検討により可能であるが、血液塗抹標本で定量的全血球計数を行うことは、示唆されたことがない。このような工程は、2つの固有の限界がある。血液塗抹標本を形成するのに血液試料が拡散される場合、血液塗抹標本を形成するのに使用される血液の容積は、血液の容積を正確に推定できるところまで十分にコントロールすることができず、この結果、血液塗抹標本に存在する細胞の絶対数を判定することができない。さらに、血液試料の単層を置くことができる装置が開発されたが、これらの装置は、長方形をした顕微鏡スライドの表面にわたって均等に細胞を分布させる遠心分離に依存している。図1Aでは、顕微鏡スライドは参照番号10で表され、血液一滴は参照番号12aで表されている。図1Bでは、顕微鏡スライドは参照番号10で表され、血液塗抹標本は参照番号12bで表されている。矢印14は、遠心分離工程中の顕微鏡スライド10の回転の方向を表す。典型的には、血液試料の幾らかの未知の容積が、遠心分離工程中に顕微鏡スライドから失われる。失われた細胞の量は未知であり予測できないため、分析の終わりに顕微鏡スライド上に残っている血液の容積を正確に推定することができない。したがって、限られた情報のみが血液試料中の細胞の比率に関して得られ、血液試料の全容積についての知見を必要とする情報は作成することができない。事実上、細胞の濃度を判定するための測定は行うことができない。
【0010】
血液塗抹標本の調製に現在使用される2つの代替アプローチがある。第1のアプローチ(広く用いられてはいない)は、カバースリップ方法である。この方法では、血液試料一滴が顕微鏡スライド上に置かれる。この一滴はカバースリップで覆われ、血液塗抹標本がこの後、顕微鏡スライドおよびカバースリップを反対の方向に動かし、これにより試料を効果的に塗り付けて形成される。図2Aでは、顕微鏡スライドは参照番号20で表され、血液一滴は参照番号22aで表され、カバースリップは参照番号24で表されている。図2Bでは、顕微鏡スライドは参照番号20で表され、血液塗抹標本は参照番号22bで表され、カバースリップは参照番号24で表されている。矢印26は、カバースリップ24の動きの方向を表す。
【0011】
第2のアプローチは(はるかにより広く使用されている)は、ウェッジ(wedge)またはプッシュ(push)塗抹標本である。この方法では、血液試料一滴は第1のガラススライド、典型的には顕微鏡スライド上に置かれる。スミアラー(smearer)またはスプレッダーと呼ばれる第2のガラススライドは、最初に血液試料一滴の下流に置かれ、次いで血液試料一滴まで引き戻され、これにより血液試料一滴が血液試料一滴と第2のガラススライドの間の接触ラインにわたって拡散される。第2のガラススライド、すなわちスプレッダーは、次いで1回の迅速だが優しい直線運動で前方、すなわち下流方向へ押し出され、これにより血液試料一滴がスプレッダーの後ろに引きずられ、血液塗抹標本を形成する。例えば、参照により本明細書に組み込まれている、Automatic Working Area Classification in Peripheral Blood Smears Using Spatial Distribution features Across Scales、W. Xiongら;LET’S OBSERVE THE BLOOD CELLS、D. Tagliasacchiら、1997年4月、http://www.funsci.com/fun3_en/blood/blood.htmを参照のこと。図3Aでは、第1のガラススライドは参照番号30で表され、血液一滴は参照番号32aで表され、第2のガラススライド、すなわちスプレッダーは参照番号34で表されている。図3Bでは、第1のガラススライドは参照番号30で表され、血液塗抹標本は参照番号32bで表されている。矢印36は第2のガラススライド34の動きの方向を表す。得られた血液塗抹標本では、血液試料は、ウェッジの中に第1のガラススライド上に置かれ、ウェッジの厚い末端は、第1のガラススライド上の血液試料一滴の最初の接触点に位置し、ウェッジの厚い末端の下流に位置するウェッジの薄い末端は、単層の細胞を含有する。しかし、ウェッジまたはプッシュ塗抹標本は、形態学的分析が、真の単層またはほぼ単層に細胞がきわめて薄く分布されている血液塗抹標本の領域に限定されることを必要とする。図4では、顕微鏡スライドは参照番号40で表されている。血液塗抹標本の厚い部分は参照番号42で表され、血液塗抹標本の薄い部分は参照番号44で表され、細胞の計数に適した血液塗抹標本の部分、すなわち真の単層またはほぼ単層は参照番号46で表されている。血液塗抹標本の厚い部分では、自動化機器またはヒト形態学者が細胞の形態を確実に同定および記録することができないような程度まで、細胞が重なり合っている可能性がある。細胞を上から見た場合、上の層に分布した細胞は、下の層の細胞の2次元画像を塞ぎがちである。細胞の縁が重なっている場合、観察者には、細胞の複数の層が単一の大きな、不規則な形状をした領域のように見える。例えば、2次元撮像アルゴリズムは、2つの小さな重なり合っている細胞と不規則な形状を有する1つのより大きな細胞の違いを識別するのが困難である。この問題は、血液塗抹標本中の白血球、赤血球および血小板の数の定量的分析を行う能力を打ち消すように思われる。理由は、血液塗抹標本の厚さおよび長さに関して細胞計数に適した血液塗抹標本の領域が、血液試料ごとに予測不可能に異なるはずだからである。このようなばらつきは、図5A、5B、5Cおよび5Dに示されている。図5Aでは、スライドは参照番号50aで表され、血液塗抹標本は参照番号52aで表され;血液塗抹標本が、図5Aで示された血液塗抹標本との形状の違いを示す図5Bでは、スライドは参照番号50bで表され、血液塗抹標本は参照番号52bで表され;血液塗抹標本が、図5Aで示された血液塗抹標本との長さの違いを示す図5Cでは、スライドは参照番号50cで表され、血液塗抹標本は参照番号52cで表され;血液塗抹標本が、図5Aで示された血液塗抹標本との幅の違いを示す図5Dでは、スライドは参照番号50dで表され、血液塗抹標本は参照番号52dで表されている。要するに、同じ容積の血液試料が血液塗抹標本を形成するのに使用されたとしても、細胞を計数するのに評価される領域は試料ごとに異なる。血液塗抹標本の厚さおよび長さを判定する主な要因は、試料の全体的な粘度になる可能性があり、同様に該粘度は、試料中のヘモグロビンの濃度により主に決定される可能性がある。
【0012】
血液塗抹標本を調べる方法に関する追加の情報は、例えば、Peripheral Blood smear−Clinical Methods−NCBI Bookshelf、Clinical methods、The History、Physical and Laboratory Examinations、第3版、H. Kenneth Walker、W. Dallas hall、J. Willis Hurst、Butterworths、Peripheral Blood Smear、Edward C. Lynch、http://www.ncbi.nlm.nih.qov/bookshelf/br.fcgi?book=cm&part=A4584;Hematology Laboratory: Proper Preparation of a Peripheral Blood Smear, Slide Staining with Wright’s Stain;Now peripheral blood smears preparation doesn’t depend on laboratory technician’s mastery、Scientific and practical magazine <<Clinical laboratory consultation>> No. 6、2005年2月: yahoo answers、http://answers.yahoo.com/question/index?qid=20090824032133AAEtfnf;およびEvaluation of the Blood Smear、M. Christopher、University of California Davis、Department of Pathology、Microbiology and Immunology School of Veterinary Medicine、Davis CA、USA、http://www.vin.com/proceedings/Proceedings. plx?CID=WSAVA2004&PID=8610&Print=1&O=Genericにおいて見出されることができ、これらの全ては参照により本明細書に組み込まれている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Automatic Working Area Classification in Peripheral Blood Smears Using Spatial Distribution features Across Scales、W. Xiongら
【非特許文献2】LET’S OBSERVE THE BLOOD CELLS、D. Tagliasacchiら、1997年4月、http://www.funsci.com/fun3_en/blood/blood.htm
【非特許文献3】Peripheral Blood smear−Clinical methods−NCBI Bookshelf、Clinical methods、The History、Physical and Laboratory Examinations、第3版、H. Kenneth Walker、W. Dallas hall、J. Willis Hurst、Butterworths、Peripheral Blood Smear、Edward C. Lynch、http://www.ncbi.nlm.nih.qov/bookshelf/br.fcgi?book=cm&part=A4584
【非特許文献4】Hematology Laboratory: Proper Preparation of a Peripheral Blood Smear, Slide Staining with Wright’s Stain
【非特許文献5】Now peripheral Blood smears preparation doesn’t depend on laboratory technician’s mastery、Scientific and practical magazine <<Clinical laboratory consultation>> No. 6、2005年2月: yahoo answers、http://answers.yahoo.com/question/index?qid=20090824032133AAEtfnf
【非特許文献6】Evaluation of the Blood Smear、M. Christopher、University of California Davis、Department of Pathology、Microbiology and Immunology School of Veterinary Medicine、Davis CA、USA、http://www.vin.com/proceedings/Proceedings. plx?CID=WSAVA2004&PID=8610&Print=1&O=Generic
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
1つの態様では、本発明は、全血試料中の血球を計数する方法を提供する。方法は、
(a)全血試料を提供するステップ、
(b)全血試料をスライド、例えば、顕微鏡スライド上に置くステップ、
(c)スプレッダーを使用して血液塗抹標本を作製するステップ、
(d)血液塗抹標本をスライド上で乾燥させるステップ、
(e)スライド上の血液塗抹標本における赤血球中のヘモグロビンに起因する光の吸収または反射率を測定するステップ、
(f)分析に適切な厚さであるとステップ(e)における測定により同定された分析領域の拡大2次元デジタル画像を記録するステップ、ならびに
(g)拡大2次元デジタル画像からデータを回収、分析および保存するステップ
を含む。
場合によって、血球をスライド上に固定および染色する方法ステップが、前述の方法において使用され得る。
【0015】
全血試料は、混合全血試料であることが好ましい。血液塗抹標本を形成するのに使用される全血試料の容積は、血液試料の既知容積をスライドに適用して直接的に、またはスライド上の血液塗抹標本の光学密度もしくは反射率の測定と、こうして得られた値を、例えば、自動化血液分析器もしくは分光計などの機器により行われたヘモグロビンの独立した測定により容積尺度に変換することにより、スライドに適用された血液の容積を判定して間接的に判定することができる。
【0016】
全血試料中のヘモグロビンの濃度は、典型的には、例えば、ガラス毛細管などの光学的に透明なサンプリングプローブにおける血液試料の反射率測定により、吸引時点で直接判定することができる。あるいは、全血試料中のヘモグロビンの濃度は、試料の希釈後に従来の吸光度測定により直接判定することができる。さらに別の代替では、全血試料中のヘモグロビンの濃度は、スライド上の血液塗抹標本における赤血球中のヘモグロビンに起因する光の吸収または反射率を測定して判定することができる。ヘモグロビンの濃度が既知である場合、血液塗抹標本は、血液塗抹標本中の血液の光学密度を判定するのに弱拡大撮像装置によりスキャンされてもよい。この測定は、血液塗抹標本を形成するのに使用される全血試料中のヘモグロビンの量を効果的に判定するであろうことから、実際に吸引されスライド上に置かれる全血の容積が計算され得る。
【0017】
別の態様では、本発明は、全血試料中の血球を計数する装置を提供する。装置は、
(a)全血試料を含有する容器を吸引/分注装置に提示するホルダー、容器から全血試料を引き出し、および全血試料をスライド、例えば、顕微鏡スライド上に置く吸引/分注装置、
(b)全血試料をスライドにわたって拡散させて血液塗抹標本を作製するスプレッダー、
(c)血液塗抹標本をスライド上で乾燥させる乾燥機、
(d)スライド上の血液塗抹標本における赤血球中のヘモグロビンのため、光の吸収または反射率を測定することができる第1の撮像システム、
(e)分析に適切な厚さであると第1の撮像システムにより同定された分析領域の拡大2次元デジタル画像を記録することができる第2の撮像システム、ならびに
(f)拡大2次元デジタル画像の結果を回収、分析および保存するためのコンピューター
を含む。
場合によって、装置は、血液塗抹標本のさらなる処理を可能にするようにスライドを配置する位置決め装置を使用することができる。
【0018】
本明細書に記載された方法および装置は、単一の機器において血液塗抹標本の血球計数および再検討のプロセスを統合することができる。本明細書に記載された方法および装置は、ごく少数の試薬を必要とし、該試薬は安価である。本明細書に記載された方法および装置は、単一の非希釈容積の全血のみが使用されることから、技術的な意味で複雑ではない。
【0019】
本明細書に記載された方法および装置は、従来の血液分析器により現在検出できない異常を検出することができる。このような異常には、異常な赤血球のつながり(連銭および凝集)、ハウエルジョリー小体およびマラリア原虫などの赤血球封入体が含まれる。本明細書に記載された方法および装置は、急性骨髄性白血病で見られるアウエル小体または芽細胞で見られる核小体などの、白血球における細胞内変化を示すこともできる。最後に、本明細書に記載された方法および装置は、例えば、異常タンパク血症のケースで見られ得るタンパク質レベルの増加などの、血漿異常を検出することができる。
【0020】
血球数および血液塗抹標本の分析は、同じ全血試料で行うことができ、これにより細胞の分類についての機器の解釈を直接再検討する機会を利用者に提供する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1A】血液塗抹標本を調製する1つの方法、すなわち、遠心分離方法を例示する図である。図1Aは、遠心分離前にスライド上に置かれた全血一滴を示すスライドの平面図を示す図である。
【図1B】血液塗抹標本を調製する1つの方法、すなわち、遠心分離方法を例示する図である。図1Bは、遠心分離方法を用いて形成された血液塗抹標本を示す図1Aのスライドの平面図を示す図である。
【図2A】血液塗抹標本を調製する第2の方法、すなわち、カバースリップ方法を例示する図である。図2Aは、血液塗抹標本の形成前にスライド上に置かれた全血一滴を示すスライドの平面図を示す図である。
【図2B】血液塗抹標本を調製する第2の方法、すなわち、カバースリップ方法を例示する図である。図2Bは、カバースリップ方法を用いて形成された血液塗抹標本を示す図2Aのスライドの平面図を示す図である。
【図3A】血液塗抹標本を調製する第3の方法、すなわち、ウェッジまたはプッシュ方法を例示する図である。図3Aは、血液塗抹標本の形成前にスライド上に置かれた全血一滴を示すスライドの正面側面図を示す図である。
【図3B】血液塗抹標本を調製する第3の方法、すなわち、ウェッジまたはプッシュ方法を例示する図である。図3Bは、ウェッジまたはプッシュ方法を用いて形成された血液塗抹標本を示す図3Aのスライドの平面図を示す図である。
【図4】ウェッジを示す血液塗抹標本を例示するスライドの平面図を示す図である。ウェッジは、3つの異なる領域を有し、1つの領域での血液塗抹標本は形態学的再検討に所望されるものより厚く、第2の領域での血液塗抹標本は所望されるものより薄く、第3の領域での血液塗抹標本は実際に所望される。
【図5A】血液塗抹標本が、長さ、幅および形状に関してどのように異なるかを例示するスライド上の血液塗抹標本の平面図を示す図である。
【図5B】血液塗抹標本が、長さ、幅および形状に関してどのように異なるかを例示するスライド上の血液塗抹標本の平面図を示す図である。
【図5C】血液塗抹標本が、長さ、幅および形状に関してどのように異なるかを例示するスライド上の血液塗抹標本の平面図を示す図である。
【図5D】血液塗抹標本が、長さ、幅および形状に関してどのように異なるかを例示するスライド上の血液塗抹標本の平面図を示す図である。
【図6A】本明細書に記載された方法を実施するのに使用される血液塗抹標本の部分内に含有された全血試料の部分の容積を計算するため、血液塗抹標本を形成するのに使用される全血試料の既知容積と併用して、血液塗抹標本の全領域の光学密度の弱拡大スキャンがどのように使用され得るかを例示するスライド上の血液塗抹標本の平面図を示す図である。
【図6B】本明細書に記載された方法を実施するのに使用される血液塗抹標本の部分内に含有された全血試料の部分の容積を計算するため、血液塗抹標本を形成するのに使用される全血試料の既知容積と併用して、血液塗抹標本の全領域の光学密度の弱拡大スキャンがどのように使用され得るかを例示するスライド上の血液塗抹標本の平面図を示す図である。
【図6C】本明細書に記載された方法を実施するのに使用される血液塗抹標本の部分内に含有された全血試料の部分の容積を計算するため、血液塗抹標本を形成するのに使用される全血試料の既知容積と併用して、血液塗抹標本の全領域の光学密度の弱拡大スキャンがどのように使用され得るかを例示するスライド上の血液塗抹標本の平面図を示す図である。
【図7】スライド上への全血試料の既知容積の分注を例示する概要図を示す図である。
【図8A】血液塗抹標本にわたる血液試料の容積分布を確立し、これにより形態および細胞計数について調べられる血液塗抹標本の領域内に含有された血液の容積を判定できるようにするため、ヘモグロビンの異なる厚みプロファイルおよび濃度を有する血液塗抹標本が、弱拡大撮像によりどのようにスキャンされ得るかを示す図である。図8Aは、10個のスライドの平面図であり、各スライドはこの上に形成された血液塗抹標本を有する。
【図8B】血液塗抹標本にわたって血液試料の容積分布を確立し、これにより形態および細胞計数について調べられる血液塗抹標本の領域内に含有された血液の容積を判定できるようにするため、ヘモグロビンの異なる厚みプロファイルおよび濃度を有する血液塗抹標本が、弱拡大撮像によりどのようにスキャンされ得るかを例示する図である。図8Bは、10個のスライドの平面図であり、各スライドはこの上に形成された血液塗抹標本を有する。
【図8C】血液塗抹標本にわたって血液試料の容積分布を確立し、これにより形態および細胞計数について調べられる血液塗抹標本の領域内に含有された血液の容積を判定できるようにするため、ヘモグロビンの異なる厚みプロファイルおよび濃度を有する血液塗抹標本が、弱拡大撮像によりどのようにスキャンされ得るかを示す図である。図8Cは、図8Aおよび8Bに示された血液塗抹標本のプロファイルを例示する10個のグラフ(スライドごとに1個のグラフ)から成る。
【図8D】血液塗抹標本にわたって血液試料の容積分布を確立し、これにより形態および細胞計数について調べられる血液塗抹標本の領域内に含有された血液の容積を判定できるようにするため、ヘモグロビンの異なる厚みプロファイルおよび濃度を有する血液塗抹標本が、弱拡大撮像によりどのようにスキャンされ得るかを示す図である。図8Dは、血液塗抹標本のプロファイルを示すグラフである。図8Dにおけるグラフは、再検討に適している血液塗抹標本の部分、すなわち、血球が計数される部分を表す。
【図8E】血液塗抹標本にわたって血液試料の容積分布を確立し、これにより形態および細胞計数について調べられる血液塗抹標本の領域内に含有された血液の容積を判定できるようにするため、ヘモグロビンの異なる厚みプロファイルおよび濃度を有する血液塗抹標本が、弱拡大撮像によりどのようにスキャンされ得るかを示す図である。図8Eは、スキャニングによる光学密度の判定が、従来の自動化血液分析器を用いて行われたヘモグロビン濃度の推定と相関することがどのように示されるかを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本明細書では、表現「全血」は、栄養、電解質、ホルモン、ビタミン、抗体、熱および酸素を身体組織に運搬する心臓動脈、静脈および毛細血管を通して循環させる生体組織を意味する。全血は、血漿と呼ばれる体液に浮遊した赤血球、白血球および血小板を含有する。本明細書では、表現「血液試料(sample of blood)」は、表現「血液試料(blood sample)」と同義である。本明細書では、表現「全血試料(sample of whole blood)」は、表現「全血試料(whole blood sample)」と同義である。本明細書では、表現「血液塗抹標本」は、これに含有された個々の細胞の顕微鏡画像分析を目的として調製される、通常は顕微鏡スライド上の、および永続性を与えるために場合によって染色または混合された、血液の薄膜を意味する。本明細書では、表現「混合全血試料」は、均一混合物に細胞を再懸濁するために混合された全血試料を意味する。患者から直接採取された全血試料由来の血球は、さらなる処理がない場合、採取後一定期間にわたって定着する傾向がある。したがって、全血試料は、検査される前に混合される。本明細書では、表現「全血球計数」は、患者の血液における細胞について情報を提供する医師または他の医療専門家により要請される検査を意味する。血流中に循環する細胞は、一般的に3つのタイプ、すなわち、白血球(white blood cell)(白血球(leukocyte))、赤血球(red blood cell)(赤血球(erythrocyte))および血小板(platelet)(血小板(thrombocyte))に分けられる。追加の情報については、参照により本明細書に組み込まれている、全血球計数−無料の百科事典、ウィキペディア、http://en.wikipedia.org/wiki/Complete blood countを参照のこと。本明細書では、用語「スライド」は、顕微鏡下で調べられる標本を載せるための小さなガラス板を意味する。
【0023】
本明細書では用語「メタメーター(metameter)」は、直接測定されたものと対照をなして変換値を意味する。本明細書では、表現「赤血球分布幅」は、細胞サイズの分布による赤血球集団の健康の尺度である。任意の全血試料由来の赤血球集団の細胞サイズが測定され、細胞サイズの関数としての任意のサイズの細胞数でヒストグラムにプロットされるならば、結果は、ほぼ正常な分布である、細胞のサイズについての赤血球分布となる。したがって、表現「赤血球分布幅」は、赤血球の分布の標準偏差を赤血球の分布の平均で除した商を意味し、通常は100%を乗じて商をパーセント(%)に変換する。
【0024】
本明細書では、表現「平均赤血球容積」(MCV)は、フェムトリットル単位で測定される赤血球の平均容積を意味する。本明細書では、表現「平均赤血球ヘモグロビン濃度」(MCHC)は、パーセント(%)単位で測定される、任意の容積の赤血球中のヘモグロビンの平均量を意味する。本明細書では、表現「ヘモグロビンの濃度」は、g/dL単位で測定される、血液の容積におけるヘモグロビンの量を意味する。本明細書では、表現「平均赤血球ヘモグロビン」(MCH)は、ピコグラム単位で測定される、平均赤血球中のヘモグロビンの平均量を意味する。
【0025】
本明細書では、表現「細胞質比」は、細胞の全容積に対する細胞中の細胞質の容積の比を意味する。本明細書では、表現「核比」は、細胞の全容積に対する細胞中の核の容積の比を意味する。
【0026】
本明細書では、表現「接触ライン」は、ウェッジまたはプッシュ塗抹標本を形成するプロセスを指す。このタイプの血液塗抹標本を形成するには、全血試料一滴がガラススライドの末端付近に置かれる。直線縁を有するスミアラーまたはスプレッダーが、ガラススライドに接触され、全血一滴に押し込まれ、これによりスミアラーまたはスプレッダーとガラススライドの間の接触ラインにわたって該一滴を拡散させる。次いでスミアラーまたはスプレッダーの方向が反転され、スミアラーまたはスプレッダーはガラススライドの長さに沿って引っ張られ、これにより全血一滴のラインをスミアラーまたはスプレッダーで引っ張る。血液は、血液が使い果たされるまで薄膜内でガラススライド上に拡散され、この結果、血液のウェッジがスライド上に残る。本明細書では、用語「ウェッジ」は、血液の薄膜、すなわち、血液塗抹標本がスライドの一端において他端より厚くなっているという観察を指す。上から見ると、血液の薄膜、すなわち、血液塗抹標本は長方形のように見える。しかし、長方形は、ガラススライドの一端でより暗く、血液の薄膜、すなわち、血液塗抹標本がより薄くなるにつれて、長方形の色はガラススライドの他端に行くほど徐々に明るくなる。
【0027】
本明細書では、用語「吸光度」は光学密度を意味する。吸光度は、式
Aλ=−log10(I/Io)
(式中、Iは、特定の波長λにおける試料を通過した光の強度(透過光強度)を表し、Ioは、光が試料に入る前の光の強度、すなわち入射光強度を表す)により表される。試料の吸光度は、厚さおよび濃度により対数的に変化する試料の透過率I/Ioと対照をなして、試料の厚さおよび試料中の吸収種の濃度に比例することから、吸光度測定は分析化学において実施されることが多い。
【0028】
本明細書では、用語「反射率(reflectance)」は、特定の界面により反射される入射電磁放射線の尺度を意味する。該用語は反射性(reflectivity)と近縁関係にあるが、反射率は薄い反射物体により適用される。反射率は、表面の厚さのばらつきのため薄い物体については変化する可能性があり、表面がより厚くなるにつれて反射性に近づく。反射率は、反射される放射量を入射放射量と比較して計算することができる。
【0029】
本明細書では、表現「弱拡大撮像」等は、顕微鏡の10×対物レンズが使用される撮像を指す。本明細書では、表現、「強拡大撮像」等は、40×から100×の倍率が使用される撮像を指す。40×の倍率が油浸を必要としないのに対し、100×の倍率は好ましくは油浸を使用することは注意されるべきである。油浸は、顕微鏡の解像度を増加させるのに使用される技法である。解像度の増加は、対物レンズおよび標本の両方を高屈折率の透明な油に浸漬して達成され、これにより対物レンズの開口数を増加させる。油浸は、参照により本明細書に組み込まれている、油浸−無料の百科事典、ウィキペディア、http://en.wikipedia.org/wiki/Oil immersion objectiveにより詳細に記載されている。弱拡大撮像の目的は、細胞が計数されるスライドの部分を判定することであるため、弱拡大撮像が本明細書に記載された方法および器具において使用される場合、高解像度は必要とされないことは注意されるべきである。細胞が計数されるスライドの部分は、真の単層またはほぼ真の単層である。対照的に、強拡大撮像が本明細書に記載された方法および器具において使用される場合、さまざまなタイプの血球が個々に計数され得るように、弱拡大撮像機能により提供されるものより高い解像度が必要とされることは注意されるべきである。「弱拡大撮像」は比較的低い倍率(例えば、10×)と同義であり、「強拡大撮像」は比較的高い倍率(例えば、40×から100×)と同義であることも注意されるべきである。強拡大撮像が、弱拡大撮像が提供するより実質的に高い倍率、すなわち、適切な解像度と共に少なくとも約4:1を提供する限り、本明細書に記載されたもの以外の倍率が使用され得る。顕微鏡の倍率およびその他の特性(例えば、解像度など)の追加の論述は、参照により本明細書に組み込まれている、顕微鏡−無料の百科事典、ウィキペディア、http://en.wikipedia.org/wiki/Microscope、および参照により本明細書に組み込まれている、顕微鏡法−無料の百科事典、ウィキペディア、http://en.wikipedia.org/wiki/Microscopyに見出すことができる。
【0030】
本明細書に記載された方法は、
(a)全血試料を提供するステップ、
(b)全血試料をスライド、例えば、顕微鏡スライド上に置くステップ、
(c)スプレッダーを使用して血液塗抹標本を作製するステップ、
(d)血液塗抹標本をスライド上で乾燥させるステップ、
(e)スライド上の血液塗抹標本における赤血球中のヘモグロビンに起因する光の吸収または反射率を測定するステップ、
(f)分析に適切な厚さであるとステップ(e)における測定により同定された分析領域の拡大2次元デジタル画像を記録するステップ、ならびに
(g)拡大2次元デジタル画像からデータを回収、分析および保存するステップ
を含む。
【0031】
場合によって、血球をスライド上に固定および染色する方法ステップが、前述の方法において使用され得る。前述の方法に基づくと、方法を実施する装置は、
(a)全血試料を含有する容器を吸引/分注装置に提示するホルダー、容器から全血試料を引き出し、および全血試料をスライド、例えば、顕微鏡スライド上に置く吸引/分注装置、
(b)全血試料をスライドにわたって拡散させて血液塗抹標本を作製するスプレッダー、
(c)血液塗抹標本をスライド上で乾燥させる乾燥機、
(d)スライド上の血液塗抹標本における赤血球中のヘモグロビンのため、光の吸収または反射率を測定することができる第1の撮像システム、
(e)分析に適切な厚さであると第1の撮像システムにより同定された分析領域の拡大2次元デジタル画像を記録することができる第2の撮像システム、ならびに
(f)拡大2次元デジタル画像の結果を回収、分析および保存するためのコンピューター
を含むことになる。
【0032】
場合によって、装置は、血液塗抹標本のさらなる処理を可能にするようにスライドを配置する位置決め装置を含むことができる。
【0033】
拡大2次元画像の大きい次元は、典型的にはスライドの長いほうの縁に平行であり、拡大2次元画像の小さい次元は、典型的にはスライドの短いほうの縁に平行である。
【0034】
血液塗抹標本中の血球は、拡散の前後に、例えば、ライト染色、メイ−グリュンワルド−ギムザ染色、新メチレンブルー、フィールド染色、ペルオキシダーゼまたは蛍光染色などの、例えば細胞化学染色により染色することができる。幾つかの例では、染色手順は必要とされない。
【0035】
染色が必要とされる場合、スライドは、装置の撮像コンポーネント(複数可)に届けられる前に適切に処理することができる。撮像コンポーネント(複数可)は、分析を行うのに必要とされる解像度に適切なレベルの倍率で、スライド全体またはスライドの選択領域(複数可)をスキャンする。本明細書での使用に適した撮像コンポーネント(複数可)は、参照により本明細書に組み込まれている、http://www.aperio.com/pathology−services/index−solutions−software.aspに記載されている。
【0036】
細胞が単層で分布され得るスプレッダーが使用される場合、血液塗抹標本における血液試料に覆われる全領域が判定され得る。スライド全体における細胞エレメントが、全血球数を提供するため次いで計数され得る。あるいは、試料の単層に覆われる領域の部分のみにおける細胞エレメントが計数されてもよく、および適切な計算が、スキャンされる血液塗抹標本全体の部分に基づき全血球数を判定するのに実施されてもよい。図1Aおよび1Bは、細胞を単層に分布させる従来の方法を例示している。
【0037】
血液塗抹標本を作製するためのウェッジまたはプッシュアプローチが使用される場合、血液塗抹標本の光学密度または光吸収度のスキャンが行われ得る。血液塗抹標本の任意の領域に関する光学密度または吸光度の値は、この任意の領域の血液塗抹標本の長さおよび幅に沿った血液塗抹標本の厚さに比例する。血液塗抹標本の全光学密度についての知見は、次いで、確実に再検討され得る血液塗抹標本の領域内に含有された血液の容積を計算するのに使用することができる。このプロセスは、血液塗抹標本の特定の部分(例えば、血液塗抹標本の全領域の一部)で測定された光学密度の値を記録すること、この値を血液塗抹標本全体(すなわち、血液塗抹標本の全領域)の光学密度と比較すること、次いで血液塗抹標本を形成する血液の容積(すなわち、既知である値または血液塗抹標本の全領域から判定され得る値)を明らかにしつつ、血液塗抹標本全体(すなわち、血液塗抹標本の全領域)の光学密度に対する、血液塗抹標本の特定の部分(例えば、血液塗抹標本の全領域の一部)で測定された光学密度の値の比に基づき血球数を判定することにより、異なる血液塗抹標本の全体寸法の差から生じる血液塗抹標本と、形態学的再検討に適した領域の間の差に対処する。任意の血液塗抹標本では、血液塗抹標本の厚い部分は、血液塗抹標本の薄い部分より高いヘモグロビンの濃度を有する。さらに、血液塗抹標本の厚い部分は、血液塗抹標本の薄い部分より高い血液の容積を有する。血液塗抹標本の薄い部分における単位面積あたりに見られるより多くの白血球が、血液塗抹標本の厚い部分における単位面積あたりに見られることが予想されよう。換言すると、任意の血液塗抹標本の部分(すなわち、厚い部分)が、任意の血液塗抹標本の別の部分(すなわち、薄い部分)の2倍厚いならば、血液塗抹標本の薄い部分で見られる白血球の2倍の白血球が、血液塗抹標本の厚い部分で見られることが予想されよう。
【0038】
次に血液塗抹標本の一例を例示する図6A、6Bおよび6Cを参照すると、スライドは参照番号60で表され、血液塗抹標本の厚い部分は参照番号62で表され、血液塗抹標本の薄い部分は参照番号64で表され、使用可能な血液塗抹標本の部分は参照番号66で表されている。血液塗抹標本全体は、例えば、X軸に平行な複数の格子線およびY軸に平行な複数の格子線を用いて、より小さな区画68に分割される。スライド60のスキャンは、スライド60のより小さな区画68それぞれの光学密度を示す。より小さな区画68それぞれの光学密度を表す数字が、図6Cのより小さな区画ごとに刻まれている。これらの数字は、0から90までの範囲である。しかし、これらの数字は測定された数字ではなく、仮想の数にすぎない。さらに、これらの数字は実際にはスライド60上に存在しない。これらの数字はより小さな区画68の光学密度を表しているにすぎない。スライド60の使用可能な部分は、より小さな区画68の測定された光学密度の値が、(a)低いカットオフ値を上回る、および(b)高いカットオフ値を上回らない、の両方であるような部分である。図6Cに示されている通り、低いカットオフ値はゼロ(0)に選択され、高いカットオフ値は約38に選択される。したがって、スライド60の使用可能な部分66のより小さな区画68は、1から38までの範囲の光学密度値を有する。
【0039】
本明細書に記載された方法および装置は、全血試料中の各成分を認識するのにスキャニングデジタル顕微鏡法を好ましくは使用する。スキャニングデジタル顕微鏡法の特別なクラス、デジタルパソロジー(digital pathology)は、参照により本明細書に組み込まれている、デジタルパソロジー−無料の百科事典、ウィキペディア、http://en.wikipedia.org/wiki/Digital pathology、およびこれに追加された参考文献およびリンクにより詳細に記載されている。スキャニングデジタル画像に関する追加の情報については、参照により本明細書に組み込まれている、スキャニングベーシックス101−デジタル画像の全て、http://www.scantips.com/index.html、およびこれに追加された参考文献およびリンクも参照のこと。スライド上に置かれた全血試料の容積の値から、方法および装置は、下記のパラメータを判定することができる。全ヘモグロビンは、血液塗抹標本自体から判定することができる。例えば、血液塗抹標本を作製するのに2マイクロリットルの血液が分注され、およびスライド上のヘモグロビンの全体測定が20gである場合、血液塗抹標本の任意の領域における血液の絶対容積は、この血液塗抹標本の任意の領域で測定されたヘモグロビンに基づき判定することができる。この同じ血液塗抹標本の任意の領域で計数された白血球数は、単位面積あたりの細胞として計数され、次いでマイクロリットルあたりの細胞に換算される。
【0040】
ヘモグロビンの濃度は、スキャンされた血液塗抹標本全体の光学密度から計算することができる。光学密度の判定は、ヘモグロビンの最大吸光度である540nmの波長を有する光を用いて実施することができる。しかし、異なる波長(または波長の組み合わせ)が使用され得る(それを所望であれば)。光学密度を判定するための同じスキャンが、赤血球の選択、および赤血球の直径を測定して平均細胞直径の測定を提供するのに使用され得、細胞容積のメタメーターとして使用され得る。平均細胞直径の変動性は、細胞のサイズの変動性を評価して赤血球分布幅に等しいパラメータを提供するのに使用することができる。ヘモグロビン含量に関する各赤血球の吸光度は、細胞ごとならびに平均のヘモグロビン含量(平均赤血球ヘモグロビン)およびヘモグロビン濃度(平均赤血球ヘモグロビン濃度)の導出を可能にする。吸光度(または光学密度)の測定により、スライド全体のヘモグロビンの濃度が判定され得る。測定に望まれる領域における各赤血球中のヘモグロビンの量(または赤血球の統計的に有意な数)が、測定され得る。この測定は、赤血球あたりのヘモグロビンの量またはヘモグロビン含量(CH)を提供する。平均値が次いで計算され得る(MCH)。分析される各赤血球の2次元領域についての知見を有することにより、個々の赤血球の容積が計算され得る。個々の赤血球の容積が分かった後、平均細胞容積が計算され得る。赤血球あたりのヘモグロビンの濃度の平均値であるMCH値を用いて、およびMCV値を用いて、赤血球の任意の容積におけるヘモグロビの平均濃度であるMCHC値、すなわち、MCH/MCVが計算され得る。
【0041】
赤血球のスキャンは、鎌状細胞、赤血球断片、涙滴奇形赤血球、有棘赤血球、ウニ状赤血球等などの異常な形状をした細胞の有意な集団の存在を判定するのに使用することができる。スキャンは、例えば、ハウエルジョリー小体、マラリア原虫等などの細胞封入体を認識する能力を有する。連銭形成および寒冷凝集素症で見られるような赤血球の異型凝集も、検出することができる。ヘモグロビン分布の異常パターンは、球状赤血球または標的細胞が存在するケースで検出され得る。蛍光色素染色または超生体染色は、網赤血球を検出するのに使用することができる。
【0042】
白血球の検出に関して、本明細書に記載された方法および装置は、血液塗抹標本全体中の白血球の染色特性を使用して白血球の計数を実施することができる。血液塗抹標本のより小さな領域、すなわち、白血球の形態学的特性が容易に同定され得る該領域が、白血球の差異を判定、ならびに有核赤血球を検出および計数するのに使用され得る。有核赤血球は、サイズ、小葉性(lobularity)、粒度(すなわち、顆粒の程度およびタイプ)、ならびに核と細胞質比および形態学的特性のような特徴に基づき同定することができる。
【0043】
血小板は、サイズおよび染色剤の取り込みといった特徴に基づき計数することができる。さらに、衛星現象、およびより一般には凝集に起因した血小板数への干渉も、認識することができる。衛星現象は、血小板を好中球に付着させる異常な免疫応答を意味する。染色および撮像されたとき、血小板は好中球の周囲の衛星のように見える。試料中の白血球の老化、慢性リンパ球性白血病におけるよごれ(smear)/破損(smudge)細胞、異常タンパク血症のケースで見られるバックグラウンド染色といった要因の結果生じる人為産物もスクリーニングすることができる。よごれ/破損細胞は、CLL患者の血液塗抹標本に現れる断裂された慢性リンパ球性白血病(CLL)細胞である。
【0044】
本明細書に記載された方法および装置は、蛍光色素検出を使用するのに適応することができ、これにより免疫蛍光染色へのアクセスおよび有核細胞の検出に使用され得る他の蛍光色素線量の取り込みを提供する。
【0045】
形態スキャニングおよび細胞認識を行える装置が存在して数年間が経過した。例えば、参照により本明細書に組み込まれている、http://www.cellavision.com/?sid=459を参照のこと。
【0046】
以下の非限定例は、本明細書に記載された方法を実施するための特定の技法を例示している。
【実施例】
【0047】
[実施例1]
この例は、本明細書に記載された血液塗抹標本技法を使用して定量的血球計数を実施するための1つのアプローチを例示する。
【0048】
次に図7を参照すると、試料管「S」から採取されおよび既知容積を有する全血試料100は、最初の一滴120、例えば、50マイクロリットルで顕微鏡スライド110上に置かれる。血液塗抹標本を作製する過程で血液は失われていないことが仮定される。したがって、血液試料中の全ての細胞が、血液塗抹標本において占められる。弱拡大撮像装置は、血液塗抹標本の領域全体にわたるピースワイズ様式(piece−wise fashion)で(すなわち、画素により)、ヘモグロビンによって生じる光学密度または反射率を測定する。弱拡大撮像装置は、顕微鏡の10×対物レンズであってもよい。画像の各ピース(すなわち、画素)の光学密度または反射率値は、各ピースにおける赤血球の量に比例することが仮定される。用語「ピース」は、図6Bおよび6Cに示されたより小さな区分68と同義である。故に、各ピース(またはより小さな区分68)を測定するのに同じ方法が使用される限り、10光学密度単位または反射率単位の任意の応答値を有するピース(またはより小さな区分68)は、5光学密度単位または反射率単位の応答値を有するピース(またはより小さな区分68)の2倍の赤血球を含有することになる。血液塗抹標本の領域全体で記録された測定単位(例えば、光学密度単位または反射率単位)の数字を加算して、血液塗抹標本中のヘモグロビンの量を表す数字を得、この結果、血液塗抹標本中の血液の合計量が分かる。例えば、全ての非ゼロ画素の合計は、合計10,000,000光学密度単位または反射率単位になってもよい。
【0049】
容積計算の次のステップは、血液塗抹標本のどの領域が撮像による分析に適しているかを判定することである。血液塗抹標本のより厚い部分は、計数するには多すぎる細胞を含有している。より厚い部分は、より多くのヘモグロビンも含有しており、したがって画素あたりのより高い光学密度測定値または反射率測定値を有することになる。弱拡大撮像の撮像アルゴリズムは、どの領域が、強拡大撮像によるこの後の分析に許容できる範囲を示すかを判定するのに使用することができる。例えば、1単位から38単位までの範囲で画素値を有する領域は、血球を計数するための血液塗抹標本の正しい厚さを表すこと、39単位以上の画素値を有する領域は、血球を計数するには厚すぎる血液塗抹標本の部分を表すこと、1単位未満の範囲で画素値を有する領域は、血球を計数するには薄すぎる血液塗抹標本の部分を表すことが、経験的に判定されてもよい。アルゴリズムは、次いで、血液塗抹標本の厚さが1単位から38単位までの範囲で画素測定値を提供する、血液塗抹標本の領域の境界を同定する。これらの境界は、次いで、境界内のこの領域のみが、細胞計数する目的のため強拡大撮像により分析される強拡大撮像ステップで使用される。
【0050】
有界測定領域内の全ての画素の画素参照値は、ヘモグロビンの合計量に比例する数字を得、この結果、測定領域によって囲まれた血液の合計量を得るために加算することができる。例えば、該領域における全ての画素の合計値は、合計3,000,000光学密度単位または反射率単位になってもよい。塗抹標本全体における全ての画素の合計値が、以前に示された計算から10,000,000であったならば、分析されている領域は10,000,000で除された3,000,000の分数を表し、これは血液の合計量の30%、すなわち血液塗抹標本中の血液の合計量の0.3倍に等しい。血液塗抹標本全体で50マイクロリットルの血液試料があることが既知であるため、同定された測定領域は、50マイクロリットルの0.3倍、すなわち15マイクロリットルを含有する。この容積は、次いで、顕微鏡撮像システムが、同定された測定領域におけるさまざまな細胞を記録および計数する後の時点で使用される。故に、このシステムが、血球を記録および計数するのに適していると同定された領域における75,000,000赤血球があると判定するならば、この血液試料の赤血球数は、15マイクロリットルあたり75,000,000、すなわちマイクロリットルあたり5,000,000赤血球となる。同じ計算は、測定領域で計数される全ての他のタイプの細胞について、血液試料のマイクロリットルあたりの血球数を得るのに使用することができる。
【0051】
この例に記載された方法を実施する代替方法では、スライドに適用される全血試料の容積が分からない場合、適用される全血試料の容積は、ヘモグロビンの濃度を判定する独立した方法により見出すことができる。例えば、合計Xグラムのヘモグロビンが、血液塗抹標本の光学密度単位または反射率単位の測定によりスライド上で測定される場合、および自動化血液分析器または分光計により行われるヘモグロビンの独立した測定が、ヘモグロビンの濃度がXg/dLであることを示す場合、単純な計算が、スライドに適用される全血試料の容積は1dLであることを示す。ヘモグロビンの濃度がどのように測定されるかにかかわらず、ひとたびヘモグロビンの濃度の値が分かれば、本明細書に記載された方法を、全血球計数を行うのに実施することができる。
【0052】
[実施例2]
次に図8Aを参照すると、幾つかの異なる血液塗抹標本(全部で10)が示されている。これらの血液塗抹標本は、血液塗抹標本の全体の光学密度または反射率の強さの違いをもたらすさまざまな量のヘモグロビンを含有する種々の全血試料で作製された血液塗抹標本を表す。図8Bは、図8Aの各血液塗抹標本の厚い末端および各血液塗抹標本の薄い末端を示す。適切なスキャニング手順により、光学密度プロファイルをグラフにすることができる。グラフのX軸上の各点は、スライド上の全血一滴の起始点から測定した、スライド上の血液塗抹標本の1点の距離を表す。グラフのY軸は、全血一滴の起始点から測定した、スライド上の血液塗抹標本の任意の点における光学密度または反射率を表す。図8Cは、図8Bにおける血液塗抹標本の光学密度プロファイルまたは反射率プロファイルを示す。図8Dは、血球を計数する領域が、血球が計数されない領域と区別された、全体的な光学密度プロファイルまたは反射率プロファイルを示す。図8Eは、自動化血液分析器により測定されたヘモグロビンと、血液塗抹標本をスキャンして計算されたヘモグロビンの間の相関を示すグラフを例示する。
【0053】
[実施例3]
本例は、顕微鏡スライドの短軸の狭い部分のみが使用される、血球数を判定する技法を例示する。実施例1に記載されたアプローチを用いる代わりに、スライドの中央ではあるが一本線の画素に対応する値を、弱拡大撮像システムにより測定することができる。スキャンされる線は2次元を有するが、線の小さい次元は、実施例1でスキャンされる小さい次元よりはるかに狭いことは注意されるべきである。この技法は、装置が単一検出ビームを使用する場合に用いることができ、光学密度値または反射率値が記録される間に、該ビームを通ってスライドが動かされる、すなわち、スキャンされる。真の撮像システムではないものの、同じ結果が、より大きな領域を構成するのに必要とされる複数の線というよりむしろ一本線をスキャンしてもたらされる。この実施形態は、以前に記載された実施形態よりも安価であることが考えられる。
【0054】
スキャンされる線に沿った画素値、例えば、反射率または光学密度が、測定が行われる位置の関数としてプロットされる場合、スライドの中央でのグラフが得られる。横座標(X軸)は、血液塗抹標本の真ん中を通る線上の直線位置または距離を表し、縦座標(Y軸)は、線上のこの直線位置で測定された相対的な光学密度単位または反射率単位を表す。グラフ上のプロファイルは、次いで、血液塗抹標本が、強拡大撮像システムによる血球の記録および計数を可能にするのに十分薄くなる点を同定するのに使用することができる。反射率の測定値が特定の値より下に下がるプロファイル上の点は、同定された測定領域の境界が設定される点である。この点は、本明細書ではカットオフ点と呼ばれる。この情報は、次いで強拡大撮像システムに送信され、該システムは、次いでこの境界により設定された血液塗抹標本の領域における細胞のみを記録および計数する。換言すると、スライド上の「再検討される領域」は、測定プロファイルが得られた線に垂直な、スライドを横切る線に前縁で囲まれている。スライドを横切る垂直な線は、カットオフ点として同定された点を通過する。血液塗抹標本において下流にある血液塗抹標本上の全ての点(すなわち、血液塗抹標本のより薄い部分にある点)が記録および計数される。
【0055】
記録される領域の容積および血球が計数される位置は、以前に記載された実施形態で使用されるものと似た方法で計算される。スキャン線上の全ての画素反射率測定値が、血液塗抹標本中のヘモグロビンの合計量を表す数字を得るために加算、すなわち、積算される。血液塗抹標本中の血液の量は、血液塗抹標本中のヘモグロビンの合計量から得ることができる。実施例1に記載された実施形態で使用されたのと同じタイプの測定および計算が、再検討のために同定された領域におけるプロファイル上の全ての点について実施される。この場合もやはり、再検討領域で表される最初の試料由来の血液の比は、血液塗抹標本の特定の部分(例えば、血液塗抹標本の全領域の一部)で測定された光学密度の値を記録すること、この値を血液塗抹標本全体(すなわち、血液塗抹標本の全領域)の光学密度と比較すること、次いで血液塗抹標本を形成する血液の容積(すなわち、既知である値または血液塗抹標本の全領域から判定され得る値)を明らかにしつつ、血液塗抹標本全体(すなわち、血液塗抹標本の全領域)の光学密度に対する、血液塗抹標本の特定の部分(例えば、血液塗抹標本の全領域の一部)で測定された光学密度の値の比に基づき血球数を判定することにより判定される。この実施形態について行われた仮定は、血液塗抹標本の厚さは、スライドの短軸、すなわち、プロファイルを測定するのに弱拡大撮像システムにより使用されたスキャン線に垂直な次元、に沿って均一であるということである。この軸に沿ったいずれの非対称性または均一性も、血液塗抹標本を貫く単一の軸線から得られた容積の判定にエラーをもたらす。
【0056】
本明細書に記載された方法および装置は、単一の機器において血液塗抹標本の血球計数および再検討のプロセスを統合することができる。方法および装置は、ごく少数の試薬のみを必要とし、該試薬は安価である。方法および装置は、単一の非希釈容積の全血のみが使用されることから、技術的な意味で複雑ではない。
【0057】
例えば、溶解耐性赤血球などの妨害材料は、問題にならないであろう。使い捨てコンポーネントは、単一のガラススライドである。装置は、この成果を電子画像として保存できる。光学は、蛍光検出を可能にするように配置することができる。必要とされる試料の容積は、きわめて少ない。
【0058】
試料の全てが分析に使用されることになるため、特に体液の試料、より好ましくは、血液の試料が分析される場合、精度は高い。対象材料は、参照塗抹標本の使用に限定され得る。本明細書に記載された方法および装置は、従来の血液分析器により現在検出できない異常を検出することができる。このような異常には、異常な赤血球のつながり(連銭および凝集)、ハウエルジョリー小体およびマラリア原虫などの赤血球封入体が含まれる。本明細書に記載された方法および装置は、急性骨髄性白血病で見られるアウエル小体または芽細胞で見られる核小体などの、白血球における細胞内変化を示すこともできる。最後に、本明細書に記載された方法および装置は、例えば、異常タンパク血症のケースで見られ得るタンパク質レベルの増加などの、血漿異常を検出することができる。
【0059】
血球数および血液塗抹標本の分析は、同じ全血試料で行うことができ、これにより細胞の分類についての機器の解釈を直接再検討する機会を利用者に提供する。
【0060】
本発明のさまざまな変更および改変は、本発明の範囲および趣旨から逸脱することなく当業者に明らかとなり、本発明が、本明細書に記載された例示的実施形態に過度に限定されるものではないことが理解されるべきである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)全血試料を提供するステップ、
(b)全血試料をスライド上に置くステップ、
(c)スプレッダーを使用して血液塗抹標本を作製するステップ、
(d)血液塗抹標本をスライド上で乾燥させるステップ、
(e)スライド上の血液塗抹標本における赤血球中のヘモグロビンに起因する光の吸収または反射率を測定するステップ、
(f)分析に適切な厚さであるとステップ(e)における測定により同定された分析領域の拡大2次元デジタル画像を記録するステップ、ならびに
(g)2次元デジタル画像からデータを回収、分析および保存するステップ
を含む、全血試料中の血球を計数する方法。
【請求項2】
血球をスライド上に固定および染色するステップを通してスライドを処理するステップをさらに含む、請求項1の方法。
【請求項3】
全血試料のヘモグロビンの濃度が、スライド上に置かれた血液の既知容積から得られる、請求項1の方法。
【請求項4】
全血試料のヘモグロビンの濃度が試料の吸引時点で計算され、および試料から調製された血液塗抹標本の光学密度が測定され、これによりスライド上に置かれた全血試料の容積についての知見を提供する、請求項1の方法。
【請求項5】
白血球数が血液塗抹標本から計算される、請求項1の方法。
【請求項6】
血小板数が血液塗抹標本から計算される、請求項1の方法。
【請求項7】
赤血球数が血液塗抹標本から計算される、請求項1の方法。
【請求項8】
全血球計数が血液塗抹標本から計算される、請求項1の方法。
【請求項9】
定量的血球計数情報が、血液塗抹標本の厚さが、上のカットオフ値より下および下のカットオフ値より上である血液塗抹標本の領域の分析により血液塗抹標本から得られる、請求項1の方法。
【請求項10】
弱拡大デジタル画像が作製される、請求項1の方法。
【請求項11】
強拡大デジタル画像が作製される、請求項1の方法。
【請求項12】
全血試料中の血球を計数する装置であって、
(a)全血試料を含有する容器を吸引/分注装置に提示するホルダー、容器から全血試料を引き出し、および全血試料をスライド、例えば、顕微鏡スライド上に置く吸引/分注装置、
(b)全血試料をスライドにわたって拡散させて血液塗抹標本を作製するスプレッダー、
(c)血液塗抹標本をスライド上で乾燥させる乾燥機、
(d)スライド上の薄膜における赤血球中のヘモグロビンのため、光の吸収または反射率を測定することができる第1の撮像システム、
(e)分析に適切な厚さであると第1の撮像システムにより同定された分析領域の拡大2次元デジタル画像を記録することができる第2の撮像システム、ならびに
(f)拡大2次元デジタル画像の結果を回収、分析および保存するためのコンピューター
を含む、全血試料中の血球を計数する前記装置。
【請求項13】
血液塗抹標本のさらなる処理を可能にするようにスライドを配置する位置決め装置をさらに含む、請求項12の装置。
【請求項14】
全血試料のヘモグロビンの濃度が、スライド上に置かれた血液の既知容積から得られる、請求項12の装置。
【請求項15】
全血試料のヘモグロビンの濃度が試料の吸引時点で計算され、および試料から調製された血液塗抹標本の光学密度が測定され、これによりスライド上に置かれた全血試料の容積についての知見を提供する、請求項12の装置。
【請求項16】
白血球数が血液塗抹標本から計算される、請求項12の装置。
【請求項17】
血小板数が血液塗抹標本から計算される、請求項12の装置。
【請求項18】
赤血球数が血液塗抹標本から計算される、請求項12の装置。
【請求項19】
全血球計数が血液塗抹標本から計算される、請求項12の装置。
【請求項20】
定量的血球計数情報が、血液塗抹標本の厚さが、上のカットオフ値より下および下のカットオフ値より上である血液塗抹標本の領域の分析により血液塗抹標本から得られる、請求項12の装置。
【請求項21】
弱拡大デジタル画像が作製される、請求項12の装置。
【請求項22】
強拡大デジタル画像が作製される、請求項12の装置。
【請求項1】
(a)全血試料を提供するステップ、
(b)全血試料をスライド上に置くステップ、
(c)スプレッダーを使用して血液塗抹標本を作製するステップ、
(d)血液塗抹標本をスライド上で乾燥させるステップ、
(e)スライド上の血液塗抹標本における赤血球中のヘモグロビンに起因する光の吸収または反射率を測定するステップ、
(f)分析に適切な厚さであるとステップ(e)における測定により同定された分析領域の拡大2次元デジタル画像を記録するステップ、ならびに
(g)2次元デジタル画像からデータを回収、分析および保存するステップ
を含む、全血試料中の血球を計数する方法。
【請求項2】
血球をスライド上に固定および染色するステップを通してスライドを処理するステップをさらに含む、請求項1の方法。
【請求項3】
全血試料のヘモグロビンの濃度が、スライド上に置かれた血液の既知容積から得られる、請求項1の方法。
【請求項4】
全血試料のヘモグロビンの濃度が試料の吸引時点で計算され、および試料から調製された血液塗抹標本の光学密度が測定され、これによりスライド上に置かれた全血試料の容積についての知見を提供する、請求項1の方法。
【請求項5】
白血球数が血液塗抹標本から計算される、請求項1の方法。
【請求項6】
血小板数が血液塗抹標本から計算される、請求項1の方法。
【請求項7】
赤血球数が血液塗抹標本から計算される、請求項1の方法。
【請求項8】
全血球計数が血液塗抹標本から計算される、請求項1の方法。
【請求項9】
定量的血球計数情報が、血液塗抹標本の厚さが、上のカットオフ値より下および下のカットオフ値より上である血液塗抹標本の領域の分析により血液塗抹標本から得られる、請求項1の方法。
【請求項10】
弱拡大デジタル画像が作製される、請求項1の方法。
【請求項11】
強拡大デジタル画像が作製される、請求項1の方法。
【請求項12】
全血試料中の血球を計数する装置であって、
(a)全血試料を含有する容器を吸引/分注装置に提示するホルダー、容器から全血試料を引き出し、および全血試料をスライド、例えば、顕微鏡スライド上に置く吸引/分注装置、
(b)全血試料をスライドにわたって拡散させて血液塗抹標本を作製するスプレッダー、
(c)血液塗抹標本をスライド上で乾燥させる乾燥機、
(d)スライド上の薄膜における赤血球中のヘモグロビンのため、光の吸収または反射率を測定することができる第1の撮像システム、
(e)分析に適切な厚さであると第1の撮像システムにより同定された分析領域の拡大2次元デジタル画像を記録することができる第2の撮像システム、ならびに
(f)拡大2次元デジタル画像の結果を回収、分析および保存するためのコンピューター
を含む、全血試料中の血球を計数する前記装置。
【請求項13】
血液塗抹標本のさらなる処理を可能にするようにスライドを配置する位置決め装置をさらに含む、請求項12の装置。
【請求項14】
全血試料のヘモグロビンの濃度が、スライド上に置かれた血液の既知容積から得られる、請求項12の装置。
【請求項15】
全血試料のヘモグロビンの濃度が試料の吸引時点で計算され、および試料から調製された血液塗抹標本の光学密度が測定され、これによりスライド上に置かれた全血試料の容積についての知見を提供する、請求項12の装置。
【請求項16】
白血球数が血液塗抹標本から計算される、請求項12の装置。
【請求項17】
血小板数が血液塗抹標本から計算される、請求項12の装置。
【請求項18】
赤血球数が血液塗抹標本から計算される、請求項12の装置。
【請求項19】
全血球計数が血液塗抹標本から計算される、請求項12の装置。
【請求項20】
定量的血球計数情報が、血液塗抹標本の厚さが、上のカットオフ値より下および下のカットオフ値より上である血液塗抹標本の領域の分析により血液塗抹標本から得られる、請求項12の装置。
【請求項21】
弱拡大デジタル画像が作製される、請求項12の装置。
【請求項22】
強拡大デジタル画像が作製される、請求項12の装置。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図8E】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図8E】
【公表番号】特表2013−515264(P2013−515264A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−546011(P2012−546011)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【国際出願番号】PCT/US2010/059885
【国際公開番号】WO2011/078980
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【国際出願番号】PCT/US2010/059885
【国際公開番号】WO2011/078980
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【Fターム(参考)】
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