説明

血球計数検査チップおよびこれを使用する血球計数検査装置

【課題】血球計数センサ、ヘモグロビン濃度測定センサおよび血液試料の容量秤量センサなどを小型化および集積化して、血液試料中の血球の計数およびヘモグロビン濃度の測定を簡便に行うことができると共に、POCT用小型検査装置を実現することができる、ディスポーザブル構造化した血球計数検査チップおよびこの血球計数検査チップを使用する血球計数検査装置を提供する。
【解決手段】少なくとも血球計数センサ部12、ヘモグロビン濃度測定センサ部14、血液試料の容量秤量センサ部14をマイクロチップ内に有し、血球計数検査装置に対して着脱自在に装着可能に構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液試料中の血球の計数およびヘモグロビン濃度の測定を行う血球計数検査装置に係り、特にこの種の装置においてPOCT(Point Of Care Testing:簡易迅速検査)用小型検査装置を実現するため、その要部となる血球計数センサ、ヘモグロビン濃度計測センサおよび血液試料容量秤量センサなどを小型化および集積化し、装置本体に対してディスポーザブル構造化した血球計数検査チップを得ると共に、この血球計数検査チップを使用する血球計数検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
血球計数検査は、高度医療現場から診療所に至る幅広い臨床現場で、頻繁に実施されている検査である。今日の血球計数検査においては、その計測プロセスが複雑であり、大別してそれぞれ血液試料に対し、希釈部、センサ部、定量部、吸引ポンプ部から構成される。
そして、これらの構成部からなる血球計数検査装置においては、前記各構成部において血液試料に対する一連の処理を行った後、計測した細胞の数および定量した試料の体積並びに希釈倍率の情報から、全血の細胞およびヘモグロビン濃度を演算処理することにより、それぞれ測定結果として出力表示するように設定されている。
【0003】
しかるに、従来の血球計数検査装置においては、前記計数プロセスを形成するための各構成部は、機械加工により製作したバルク部材で構成されており、部品点数が多く、装置全体の寸法が大きくなる等の問題がある。このため、POCT用として適するように、持ち運びが可能な小型検査装置として構成することは、困難である。
【0004】
このような観点から、検体血液のインピーダンス変化による血球計数の検出以外に、検体血液の採血、希釈および廃液溜めも行うことができ、しかもこれらの構成要素をカートリッジ化した測定部を備えたマイクロ血球カウンタが提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
すなわち、この特許文献1に記載のマイクロ血球カウンタは、希釈液で希釈された検体血液が流れる検出用流路に、所定間隔で配置された両電極間のインピーダンス変化を検出するための測定部を備え、該測定部からの検出信号に基づいて検体血液中の血球を測定するマイクロ血球カウンタであって、検体血液を定量採血するキャピラリーと、該キャピラリーの検体血液を所定の希釈手段により希釈して、前記検出用流路に導入し、測定が終わった希釈血液を廃液として溜める液溜用セルとを、前記測定部に設け、該測定部を取り替え可能なようにカートリッジ化した構成からなる。
【0006】
このような構成からなるマイクロ血球カウンタは、前記測定部において検体血液の定量採血と希釈と廃液溜めを行うことができるので、検体血液中の血球を測定する際に行われる前処理(検体血液の定量採血と希釈)および後処理(廃液溜め)に必要な器具や装置を設ける必要がなくなり、これにより、マイクロ血球カウンタを持ち運び可能なように小型化することができると共に、測定装置全体としてはコストダウンを図ることができる。
【0007】
そして、前記測定部を取り替え可能なようにカートリッジ化したことにより、前記測定部を使い捨てにすることができ、前記測定部を洗浄するための洗浄装置が不要となり、前述したように測定装置全体として小型化およびコストダウンを図ることができるものである。従って、このように小型化されたマイクロ血球カウンタは、持ち運びができるので、問診や緊急時に現場で検体血液の血球を測定することを、可能とするものである。
【0008】
また、本出願人は、前述したマイクロ血球カウンタや血球計数検査装置などに使用することができるマイクロ中空デバイスないしCBC(Complete Blood Count:血球計数)センサについて、従来の製造技術から飛躍的に製造コストや製造工程を削減することができ、しかも集積度を高くすることができるデバイスないしセンサの製造方法の開発に成功し、特許出願を行った(未公開の特許文献2)。
【0009】
すなわち、前記提案に係る特許文献2に記載のマイクロ中空デバイスないしCBCセンサは、ベース基板と、このベース基板上に形成された光硬化型樹脂からなる厚膜レジストと、この厚膜レジスト上に載置された現像液注入穴を設けた透明なカバー基板からなるマイクロ中空デバイスであって、前記ベース基板上には少なくとも2つ以上の電極を配置し、前記厚膜レジストには前記電極とそれぞれ対応して隣接するチャンバを形成すると共に前記隣接するチャンバの境界部に血液を流過させるアパーチャを設け、その下流側チャンバをディフューザ型または案内羽根型に構成したものである。
【0010】
このように構成されるマイクロ中空デバイスないしCBCセンサは、微細部品を組み立てるような細かな作業を必要としないため、工程数が少なく、加工時間が短くなる等、製品コストの低減に寄与する。そして、デバイスないしセンサとしての構成要素として、リアクタ、センサ、圧力チャンバ、ポンプ、これらを連結するチャネル、バルブ等の複数の要素の製作に対して、設計における制約が少ない状態で集積することが可能となる。
【0011】
【特許文献1】特開2004−257768号公報
【特許文献2】特願2005−238268号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1に記載のマイクロ血球カウンタは、その要部である測定部がアクリルなどの樹脂でカートリッジ化されており、この樹脂基板上には、ポンプ接続口に一端が接続される外部接続用流路と、この外部接続用流路の他端に接続され壁により部分的に仕切られて流路が形成された液溜用セルと、この液溜用セルに流路を介して接続される吸光度測定用セルと、この吸光度測定用セルに流路を介して接続される検出用流路と、この検出用流路にほぼS字状の流路を介して接続されるキャピラリーと、前記吸光度測定用セルの流路とS字状の流路間に設けられるセンサ取付部とから構成されている。
【0013】
そして、このように構成された樹脂基板には、前記キャピラリーの収容路にガラス製のキャピラリーが埋め込み固定されると共に、その一端に対してボトルガイドが貼り合わせられる。また、前記外部接続用流路には、ポンプ接続口が貼り合わせられ、ポンプとの接続を行うように構成される。さらに、前記センサ取付部には、センサチップを実装したセンサ基板が貼り付けられている。
【0014】
従って、このように構成されるマイクロ血球カウンタの測定部は、取り替え可能なようにカートリッジ化されて、使い捨てにすることができるものであるとしても、測定部の構成は、前述したように複雑であり、部品点数が多く、その製造に際しては、多くの組み立て工程を要し、製造コストも著しく増大する等の問題がある。
【0015】
これに対して、特許文献2として提案されたマイクロ中空デバイスないしCBCセンサは、前述したような従来の製造技術から飛躍的に製造コストや製造工程を削減することができ、しかも集積度を高くすることができる利点を有している。そして、特にCBCセンサとして提案された技術を適用すれば、血液試料中の血球の計数およびヘモグロビン濃度の測定を行う血球計数検査装置として、その要部となる血球計数センサ、ヘモグロビン濃度測定センサおよび血液試料の容量秤量センサなどを小型化および集積化することができると共に、低コストでディスポーザブルな血球計数検査チップの製造を可能とし、POCT用小型検査装置の実現を容易に可能とすることができる。
【0016】
そこで、本発明の目的は、血球計数センサ、ヘモグロビン濃度測定センサおよび血液試料の容量秤量センサなどを小型化および集積化して、血液試料中の血球の計数およびヘモグロビン濃度の測定を簡便に行うことができると共に、POCT用小型検査装置を実現することができる、ディスポーザブル構造化した血球計数検査チップおよびこの血球計数検査チップを使用する血球計数検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記の目的を達成するため、本発明に係る請求項1に記載の血球計数検査チップは、少なくとも血球計数センサ部、ヘモグロビン濃度測定センサ部、血液試料の容量秤量センサ部を、マイクロチップ内に有し、血球計数検査装置に対し着脱自在に装着可能としたことを特徴とする。
【0018】
本発明に係る請求項2に記載の血球計数検査チップにおいては、さらに血液試料導入部、配管部および廃液チャンバ部を形成することを特徴とする。
【0019】
本発明に係る請求項3に記載の血球計数検査チップにおいては、インピーダンスの変化を検出する血球計数センサ部と、吸光度を計測するヘモグロビン濃度測定センサ部と、血液試料の有無を光学的に検出すると共にその液量を秤量する血液試料の容量秤量センサ部とを、それぞれ光学セル、導波路および血液試料の配管部と共に、同一のマイクロチップ内に小型化および集積化して構成したことを特徴とする。
【0020】
本発明に係る請求項4に記載の血球計数検査チップは、血液試料の容量秤量センサ部を、単一の発光素子と受光素子とにより、ヘモグロビン濃度測定センサ部に対する血液試料の上流側と下流側のそれぞれ流れの有無を判定するように設定した液面検出センサとして構成してなることを特徴とする。
【0021】
本発明に係る請求項5に記載の血球計数検査チップは、導波路に光ファイバを使用し、マイクロチップの光学セルを形成するパターン部分にそれぞれ設定してなることを特徴とする。
【0022】
本発明に係る請求項6に記載の血球計数検査チップは、血球計数センサ部を設けたインピーダンス変化検出用レイヤと、ヘモグロビン濃度測定センサ部および血液試料の容量秤量センサ部を設けた光学的検出用レイヤとからなることを特徴とする。
【0023】
本発明に係る請求項7に記載の血球計数検査チップは、インピーダンス変化検出用レイヤと光学的検出用レイヤとを、平面的に結合ないし立体的に積層する構造からなることを特徴とする。
【0024】
本発明に係る請求項8に記載の血球計数検査装置は、請求項1ないし7のいずれかに記載の血球計数検査チップを着脱自在に装着するチップ・ホルダと、血球計数検査チップに供給する血液試料を調製する希釈部と、血球計数検査チップ内における血液試料を移動させる吸引ポンプと、電源用バッテリと、血球計数検査チップの各センサ部に対して、それぞれ計数ないし測定し得る光学的および電気的回路構成と、電源用バッテリと、前記各センサ部で計測ないし測定した結果を表示する液晶ディスプレイとを備えた構成からなる。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る請求項1および3に記載の血球計数検査チップによれば、血球計数センサ、ヘモグロビン濃度測定センサおよび血液試料の容量秤量センサなどを小型化および集積化して、血液試料中の血球の計数およびヘモグロビン濃度の測定を簡便に行うことができると共に、POCT用小型検査装置を実現することができる。
【0026】
本発明に係る請求項2に記載の血球計数検査チップによれば、血液試料の導入から血液試料の各種の計測検査を経て廃液に至るまでを、全てチップ内において適正にしかも外部に漏れることなく、簡便にしてディスポーザブルな使用ができる利点がある。
【0027】
本発明に係る請求項4および5に記載の血球計数検査チップによれば、血液試料のヘモグロビン濃度の測定および血液試料の容量秤量の測定を、血球の計数と同時に適正かつ円滑に行うことができる。
【0028】
本発明に係る請求項6および7に記載の血球計数検査チップによれば、血球計数センサ、ヘモグロビン濃度測定センサおよび血液試料の容量秤量センサなどを小型化および集積化を、容易に達成することができる。
【0029】
本発明に係る請求項8に記載の血球計数検査装置によれば、血球計数検査装置としての要部の構成を全て血球計数検査チップとして、小型化および集積化した構成とすることができ、しかもこの血球計数検査チップを着脱自在にしてディスポーザブルな使用ができるので、POCT用小型検査装置として簡便かつ有効に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
次に、本発明に係る血球計数検査チップおよびこの血球計数検査チップを使用する血球計数検査装置の実施例につき、添付図面を参照しながら以下詳細に説明する。
【0031】
図1は、本発明に係る血球計数検査チップと、これを使用する血球計数検査装置のシステム構成を示す系統説明図である。すなわち、図1において、本発明の血球計数検査チップ10は、血球計数(CBC)センサ部12と、ヘモグロビン(HGB)濃度測定センサ部14と、血液試料の容量秤量センサ部16とを備えると共に、前記各センサ部12、14、16へ血液試料を送液するための配管部18を備えるMEMS(Microelectromechanical System:超小型電子機械装置)チップ20を構成し、さらにこのMEMSチップ20に血液試料を供給するための血液試料導入部としてのサンプル・カップ11と、前記MEMSチップ20において使用された計数および測定した検査後の廃液となった血液試料を一時的に貯溜して置くための廃液チャンバ部19とを備えた構成からなる。
【0032】
そして、このように構成される血球計数検査チップ10は、前記血液試料導入部としてのサンプル・カップ11が、血球計数検査装置40に設けられる血液試料の希釈部32に対し着脱自在に接続されると共に、前記廃液チャンバ部19が吸引ポンプ34に対し着脱自在に接続されて、血球計数検査チップ10内における血液試料の移動を行うように構成される。従って、本発明に係る血球計数検査チップ10は、後述する血球計数検査装置40に対してディスポーザブルに装着して使用することができる。
【0033】
図2および図3は、本発明に係る血球計数検査チップ10としての前記MEMSチップ20の外観構成とその分解した構成の実施例をそれぞれ示す斜視図である。図2および図3において、本実施例の血球計数検査チップ10は、血液試料の導入口22および導出口23を備えると共に、血液試料のヘモグロビン濃度および容量秤量を光学的に測定するセンサ部(図示せず)を備える光学的検出用レイヤ24と、血球計数をインピーダンス変化として計数する血球計数センサ部12およびこのセンサ部12に対する一対の電極25a、25bを備えるインピーダンス検出用レイヤ26とを、積層体としたマイクロチップとして構成される。
【0034】
図4および図5は、前記実施例からなるMEMSチップ20の光学的検出用レイヤ24およびインピーダンス検出用レイヤ26において、それぞれ形成される血液試料の流路および各種のセンサ部の構成配置例を示すものである。図4において、光学的検出用レイヤ24には、血液試料の導入口22および導出口23を備えると共に、血液試料のヘモグロビン濃度測定センサ部14および血液試料の容量秤量センサ部16が、それぞれ図示のような配管部18の構成により設けられている。また、インピーダンス検出用レイヤ26には、前記血液試料の導入口22および導出口23に連通する開口22′および開口23′を備えると共に、血液試料の血球計数センサ部12が、それぞれ図示のような配管部18の構成により設けられている。
【0035】
前記構成からなるMEMSチップ20における血液試料の導入口22から導出口23に至る経路は、次のように形成される(図4参照)。すなわち、(a)光学的検出用レイヤ24の導入口22に供給された血液試料は、(b)インピーダンス検出用レイヤ26の開口22′を介して血球計数センサ部12に供給される。次いで、(c)血球計数センサ部12を流過した血液試料は、対応する光学的検出用レイヤ24の血液試料の容量秤量センサ部16の一部を経て、ヘモグロビン濃度測定センサ部14に供給される。このようにして、(d)ヘモグロビン濃度測定センサ部14を流過した血液試料は、対応するインピーダンス検出用レイヤ26の配管部18および開口23′を経て、(e)再び対応する光学的検出用レイヤ24の血液試料の容量秤量センサ部16の他の一部を経て、血液試料の導出口23に至り、(f)導出口23より廃液として導出される。
【0036】
しかるに、前記光学的検出用レイヤ24に対し、ヘモグロビン濃度測定センサ部14および血液試料の容量秤量センサ部16において、それぞれ血液試料の測定検査を行うに際しては、図5に示すように、それぞれ1対の発光素子および受光素子により、光学的に検出測定するように設定される。図5において、光学的検出用レイヤ24の血液試料の容量秤量センサ部16に対しては、図示のように1対の光ファイバ27a、27bを対称的に配置し、前記血液試料の容量秤量センサ部16と前記光ファイバ27a、27bとを介して、例えば波長935nmの発光ダイオードからなる発光素子33と、フォトトランジスタからなる受光素子35とを対向配置する。この場合、一方の光ファイバ27aの一端は、ヘモグロビン濃度測定センサ部14に対する血液試料の上流側で構成される血液試料の容量秤量センサ部16の一部に対向させ、他方の光ファイバ27bの一端は、ヘモグロビン濃度測定センサ部14に対する血液試料の下流側で構成される血液試料の容量秤量センサ部16の他の一部に対向させる。このようにして、前記1対の光ファイバ27a、27bを介して検出される光信号の変化により血液試料の容量秤量の検出測定を適正に行うことができる。
【0037】
また、前記ヘモグロビン濃度測定センサ部14に対しては、図示のように光ファイバ28を配置し、前記ヘモグロビン濃度測定センサ部14と前記光ファイバ28とを介して、例えば波長555nmの発光ダイオードからなる発光素子37と、フォトダイオードからなる受光素子39とを対向配置する。この場合、前記血液試料の容量秤量センサ部16に対する発光素子33と受光素子35との対向配置とは、相互に平行的でかつ逆配置であり、しかも異なる波長を使用することから、光信号の相互干渉を回避することができる。
【0038】
これに対し、インピーダンス検出用レイヤ26の血球計数センサ部12において、血液試料の血球計数を行うに際しては、図4に示すように、隣接する1対のチャンバ12a、12bの境界部にアパーチャ12cを形成し、前記チャンバ12a、12bに対応して設けた電極25a、25bにより、設定することができる。このように設定することにより、前記チャンバ12aからチャンバ12bへ流過する血液試料が、前記アパーチャ12cを通過する時に生じるインピーダンス変化を、電極25a、25bにより検出して、血球の計数を行うことができる。
【0039】
次に、図6の(a)〜(i)に基づいて、本発明に係る血球計数検査チップ10としての前記MEMSチップ20の製造工程について説明する。
【0040】
まず、図6の(a)に示すように、平坦度が確保された酸化ガラス基板等からなるベース基板BS上に、Pt電極25a、25bのパターニングを行う。次いで、図6の(b)に示すように、ベース基板BS1の反対側面に遮光層MLのスパッタを行う。遮光層MLとしては、Crを0.5μm成膜して形成することができる。このようにして、電極基板ERを製作する。
【0041】
一方、図6の(c)に示すように、前記と同じベース基板BS2上に、光硬化型樹脂SU−8を均一な膜厚(100μm)に塗布する。次いで、図6の(d)に示すように、前記光硬化型樹脂SU−8の上に、図6の(b)で製作した電極基板ERを、カバーとして設置する。その後、図6の(e)に示すように、基板を反転させて、前記光硬化型樹脂SU−8に対してインピーダンス検出用レイヤのパターンを露光し、ベーク処理する。この時点で、インピーダンス検出用レイヤの光硬化型樹脂SU−8は硬化する。
【0042】
図6の(f)に示すように、基板を再び反転させて、その上側面に光硬化型樹脂SU−8を均一な膜厚(250μm)に塗布する。さらに、図6の(g)に示すように、前記光硬化型樹脂SU−8の上に、トップカバー基板TCを載置して、封着する。そして、図6の(h)に示すように,前記光硬化型樹脂SU−8に対して光学的検出用レイヤのパターンを露光し、ベーク処理する。この時点で、光学的検出用レイヤの光硬化型樹脂SU−8は硬化する。
【0043】
最後に、図6の(i)に示すように、前記トップカバー基板TCに適宜設けられる血液試料の導入口および導出口から現像液を注入して、光硬化型樹脂SU−8の未硬化部分を溶解除去することにより、本発明に係る血球計数検査チップ10としての前記MEMSチップ20を完成することができる。なお、このように製造されたMEMSチップ20に対しては、前記トップカバー基板TCの血液試料の導入口および導出口に対して、血液試料導入部としてのサンプル・カップおよび廃液チャンバ部が適宜設けられる。
【0044】
図7の(a)、(b)は、前述した本発明に係る血球計数検査チップ10としての前記MEMSチップ20の製造工程において、光硬化型樹脂SU−8に対してそれぞれ露光形成する光学的検出用レイヤおよびインピーダンス検出用レイヤのパターンの好適な設計例を示すものである。なお、図7の(a)、(b)の実施例においては、説明の便宜上、前述した血球計数検査チップ10の実施例における構成要素と同一の構成要素について、それぞれ同一の参照符号を付して説明する。
【0045】
図7の(a)は、MEMSチップ20における光学的検出用レイヤ24のパターンを示す。また、図7の(b)は、MEMSチップ20におけるインピーダンス検出用レイヤ26のパターンを示す。本実施例において、光学的検出用レイヤ24には血液試料の導入口22と導出口23とが設けられ、前記血液試料の導入口22は直接インピーダンス検出用レイヤ26の血球計数センサ部12の一方のチャンバ12aに連通するように構成されている。そして、前記一方のチャンバ12aは、アパーチャ12cを介して他方のチャンバ12bに連通し、この他方のチャンバ12bから、光学的検出用レイヤ24の血液試料の容量秤量センサ部16の一部16aに連通するように構成されている。
【0046】
前記血液試料の容量秤量センサ部16の一部16aは、ヘモグロビン濃度測定センサ部14に連通し、さらにインピーダンス検出用レイヤ26の配管部18を介して光学的検出用レイヤ24の配管部18に連通して、前記血液試料の容量秤量センサ部16の他方の一部16bに連通するように構成されている。そして、この容量秤量センサ部16の他方の一部16bは、血液試料の導出口23に連通するように構成されている。
【0047】
さらに、図7の(a)において、光学的検出用レイヤ24のヘモグロビン濃度測定センサ部14に対しては、図示のように、光ファイバ28を設定するためのガイド部28aが設けられると共に、このガイド部28aと対向して発光ダイオードからなる発光素子37を設定するための凹部37aが設けられている。また、血液試料の容量秤量センサ部16に対しては、図示のように、1対の光ファイバ27a、27bを設定するためのガイド部27cが設けられると共に、このガイド部27cと対向して発光ダイオードからなる発光素子33を設定するための凹部33aが設けられている。なお、図示しないが、インピーダンス検出用レイヤ26において、血球計数センサ部12を形成する1対のチャンバ12a、12bに対しては、適宜1対の電極(25a、25b)の一端が接続されるように設定される。
【0048】
図8は、本発明に係る血球計数検査チップ10を使用する血球計数検査装置40の構成例を示すものである。すなわち、図8において、血球計数検査装置40には、血液試料導入部および廃液チャンバ部にそれぞれ連通する接続部21と、1対の電極端子25a、25bを備えた血球計数検査チップ10を、着脱自在に装着し得るチップ・ホルダ31が設けられている。そして、前記血球計数検査装置40には、血液試料を調製する希釈部32と、吸引ポンプ34と、電源用バッテリ36と、計数測定結果を表示する液晶ディスプレイ38とを設けた構成からなる。但し、血液試料を調製する希釈部32は、血球計数検査チップ10内に設けられてもよい。従って、本発明によれば、血球計数検査装置40の要部である血球計数検査チップ10を、従来技術に比べて著しく小型化および集積化することができることから、血液試料中の血球の計数およびヘモグロビン濃度の測定を簡便に行うことができる小型検査装置を、容易に実現することができる。
【0049】
以上、本発明の好適な実施例について説明したが、本発明は前述した実施例に限定されることなく、例えば血球計数検査チップの製造に際して、インピーダンス検出用レイヤ26と光学的検出用レイヤ24とは、実施例のように立体的な積層構造とするだけでなく、平面的な結合構造とすることができる等、本発明の精神を逸脱しない範囲内において、多くの設計変更を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係る血球計数検査チップを使用する血球計数検査装置のシステム構成を示す概略説明図である。
【図2】本発明に係る血球計数検査チップの一実施例としての外観構成を示す概略斜視図である。
【図3】図2に示す血球計数検査チップの積層構成からなる2種のレイヤを分離した状態を示す概略分解斜視図である。
【図4】本発明に係る血球計数検査チップの積層構成からなる複数のレイヤに形成されるセンサ部等のそれぞれ構成配置の一実施例を示す概略説明図である。
【図5】図4に示す血球計数検査チップにおいてそれぞれ形成された各センサ部に対する計測素子および検査素子の構成配置を示す概略説明図である。
【図6】(a)〜(i)は本発明に係る血球計数検査チップの製造方法の一実施例を示す概略工程説明図である。
【図7】(a)は本発明に係る血球計数検査チップの一方のレイヤにおける血液試料の流路系と各センサ部の構成例を示す説明図、(b)は本発明に係る血球計数検査チップの他方のレイヤにおける血液試料の流路系とセンサ部の構成例を示す説明図である。
【図8】は本発明に係る血球計数検査チップを使用する血球計数検査装置における血球計数検査チップの適用とその装着される状態を示す概略構造説明図である。
【符号の説明】
【0051】
10 血球計数検査チップ
11 サンプル・カップ(血液試料導入部)
12 血球計数センサ
12a、12b チャンバ
12c アパーチャ
14 ヘモグロビン濃度測定センサ
16 血液試料の容量秤量センサ
18 配管部
19 廃液チャンバ部
20 MEMSチップ
21 接続部
22 血液試料の導入口
23 血液試料の導出口
24 光学的検出用レイヤ
25a、25b 電極
26 インピーダンス検出用レイヤ
27a、27b 光ファイバ
28 光ファイバ
31 チップ・ホルダ
32 血液試料の希釈部
33 発光素子(容量秤量センサ用)
34 吸引ポンプ
35 受光素子(容量秤量センサ用)
36 バッテリ
37 発光素子(ヘモグロビン濃度測定センサ用)
38 液晶ディスプレイ
39 受光素子(ヘモグロビン濃度測定センサ用)
40 血球計数検査装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも血球計数センサ部、ヘモグロビン濃度測定センサ部、血液試料の容量秤量センサ部を、マイクロチップ内に有し、血球計数検査装置に対し着脱自在に装着可能としたことを特徴とする血球計数検査チップ。
【請求項2】
血球計数検査チップには、さらに血液試料導入部、配管部および廃液チャンバ部を形成することを特徴とする請求項1記載の血球計数検査チップ。
【請求項3】
血球計数検査チップにおいて、インピーダンスの変化を検出する血球計数センサ部と、吸光度を計測するヘモグロビン濃度測定センサ部と、血液試料の有無を光学的に検出すると共にその液量を秤量する血液試料の容量秤量センサ部とを、それぞれ光学セル、導波路および血液試料の配管部と共に、同一のマイクロチップ内に小型化および集積化して構成したことを特徴とする請求項1または2記載の血球計数検査チップ。
【請求項4】
血液試料の容量秤量センサ部は、単一の発光素子と受光素子とにより、ヘモグロビン濃度測定センサ部に対する血液試料の上流側と下流側のそれぞれ流れの有無を判定するように設定した液面検出センサとして構成してなることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の血球計数検査チップ。
【請求項5】
導波路には、光ファイバを使用し、マイクロチップの光学セルを形成するパターン部分にそれぞれ設定してなることを特徴とする請求項3または4記載の血球計数検査チップ。
【請求項6】
血球計数検査チップは、血球計数センサ部を設けたインピーダンス変化検出用レイヤと、ヘモグロビン濃度測定センサ部および血液試料の容量秤量センサ部を設けた光学的検出用レイヤとからなることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の血球計数検査チップ。
【請求項7】
血球計数検査チップは、インピーダンス変化検出用レイヤと光学的検出用レイヤとを、平面的に結合ないし立体的に積層する構造からなることを特徴とする請求項6記載の血球計数検査チップ。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の血球計数検査チップを着脱自在に装着するチップ・ホルダと、血球計数検査チップに供給する血液試料を調製する希釈部と、血球計数検査チップ内における血液試料を移動させる吸引ポンプと、電源用バッテリと、血球計数検査チップの各センサ部に対して、それぞれ計数ないし測定し得る光学的および電気的回路構成と、電源用バッテリと、前記各センサ部で計測ないし測定した結果を表示する液晶ディスプレイとを備えてなる血球計数検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−89382(P2008−89382A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−269553(P2006−269553)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000230962)日本光電工業株式会社 (179)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】