説明

血管内留置用カテーテル

【課題】血管内に留置された1本のアウターカテーテルに様々な目的に適した形状及び本数のインナーカテーテルの選択的装着が可能で、閉塞等のトラブルが生じた時には新たなインナーカテーテルを簡便に、かつ必要な数だけ交換が可能な血管内留置用カテーテルを提供する。
【解決手段】アウターカテーテル1と、該アウターカテーテルのルーメン内に挿通され該アウターカテーテルと着脱可能に嵌合するインナーカテーテル2とからなる血管内留置用カテーテルにおいて、該インナーカテーテルが2以上の単層ルーメンカテーテルまたは1もしくは2以上の複層ルーメンカテーテルからなることを特徴とする血管内留置用カテーテル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管内留置用カテーテルに関するものであり、さらに詳しくは、血液浄化、輸液・薬液の投与、採血、脈圧・血流量の測定、電気生理学的検査または一時的、短期的な体外式心臓ペーシング等、様々な医療上の診断や治療の目的で使用される血管内留置用カテーテルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、輸液・薬液の投与を必要とする患者に対しては、中心静脈留置用カテーテルが使用されている(非特許文献1参照)。また、腎不全、糖尿病、薬物中毒、全身性炎症反応症候群(SIRS)、急性呼吸促拍症候群(ARDS)、多臓器不全(MOF)、肝炎、膵炎等の疾病のために血液浄化を必要とする患者に対しては、血管内にカテーテルを留置して血液を脱送血するブラッドアクセスカテーテルが使用されている(非特許文献2参照)。さらに、中心静脈圧・血流量の測定を必要とする患者に対しては、血管内に留置し静脈圧を測定する脈圧測定用カテーテル、心拍出量等血流量を測定するサーモダイリューションカテーテルが使用されている(非特許文献3参照)。また、心臓ペースメーカーの短期的体外式電極として使用する短期ペーシング用カテーテルなども開発され今日の臨床現場において広く普及している。
【0003】
上記した従来のカテーテルは通常、目的に応じて1本のカテーテルの内腔が単層あるいは複数層に分かれた構造をしており、それぞれの内腔に薬液や血液等が流れる他、脈圧や血流量を測定するセンサーとして電気的信号が流れる構造になっている。
【0004】
さらに、血液透析等において使用されるブラッドアクセスカテーテルにおいては、図5に示すようなアウターカテーテルの内腔に着脱式のインナーカテーテルを挿入したコアクシャル型のカテーテルが開発されており、アウターカテーテルで脱血し、インナーカテーテルで送血して用いられ、非使用時に挿入するオブチュレーター(内栓)と共に臨床現場に普及している(非特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】日本静脈経腸栄養学会編集:コメディカルのための静脈・経腸栄養ガイドライン,43,南江堂(2000)
【非特許文献2】平沢由平:透析療法マニュアル(改訂第5版),170,日本メディカルセンター(1999)
【非特許文献3】鶴田早苗,原田和子:術後処理マニュアル,66,照林社(1991)
【非特許文献4】宮形滋,本郷隆二,松崎章,加藤隆三,小林浩悦,原田忠,土田正義:ダブルルーメン型UKカテーテルの考案,日本透析医会雑誌5(4),220(1990)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した1本のカテーテルの内腔が単層のカテーテルは、単独使用の目的で作られ、その目的に応じてカテーテルの留置または交換を必要とし、結果的に患者への頻回の穿刺が不可欠となっていた。また、複数の目的で内腔が複数層に分かれた1本のカテーテルを使用した場合でも、内腔が血液や薬液で閉塞したり、カテーテルの側孔から血液を吸引する際に血管壁にへばりついて吸引できなくなるなど目的を果たせなくなるトラブルが発生した場合、例えば目的とするルーメン以外の他のルーメンが使用できたとしても留置したカテーテル全体を交換する必要があり、医療従事者、患者双方に肉体的、精神的に多大な負担を強いるものであるばかりでなく、医療経済上も大きな損失を招くものであった。
【0007】
また、このようなトラブルによる頻回のカテーテル交換は、病原菌の侵入に伴う感染の危険性や血管自体の閉塞の可能性が高まり、全身性炎症反応症候群、急性呼吸促拍症候群、多臓器不全、白血病など元来免疫機能が低下して感染リスクの高い患者や、血管の脆弱な老人、血管が細く未発達の乳幼児、小児にとっては特に重大な問題となっていた。
【0008】
さらに上記したコアクシャル型カテーテルについても先に示したカテーテルと同様、閉塞によりインナーカテーテルが使用できなくなったとしても、交換は可能であるが、アウターカテーテルが閉塞または脱血不良となった際は、アウターカテーテル自体を抜去することすなわちカテーテル全体を交換することを余儀なくされていた。
【0009】
本発明は、血管内に留置された1本のアウターカテーテルに様々な目的に適した形状及び本数のインナーカテーテルの選択的装着が可能で、閉塞等のトラブルが生じた時には長さあるいは太さ等が異なる新たなインナーカテーテルを簡便に、かつ必要な数だけ交換が可能であり、結果的に長期にわたり継続的に留置できる血管内留置用カテーテルを提供することを目的とするものである。特にアウターカテーテルについてはそれ自身に問題が起こらない限り基本的に目的が終了するまで継続して利用できるので、1ヶ月、1年単位の長期にわたり使用される中心静脈栄養用をはじめとして様々な目的に有用である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の目的を達成するために鋭意検討した結果、血管内に留置するアウターカテーテルの内腔に着脱可能かつ様々な目的に応じた複数のインナーカテーテルを組み合わせて留置することにより上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
【0011】
すなわち、本発明は、アウターカテーテルと、該アウターカテーテルのルーメン内に挿通され該アウターカテーテルと着脱可能に嵌合するインナーカテーテルとからなる血管内留置用カテーテルにおいて、該インナーカテーテルが2以上の単層ルーメンカテーテルまたは1もしくは2以上の複層ルーメンカテーテルからなることを特徴とする血管内留置用カテーテルを要旨とするものであり、好ましくは、インナーカテーテルを構成する2以上の単層ルーメンカテーテルまたは複層ルーメンカテーテルが各々別個に着脱可能である前記の血管内留置用カテーテルである。
【0012】
また、本発明の好ましい形態は、インナーカテーテルのルーメンを通じて治療用又は診断用センサーが装着されている、治療用又は診断用センサー機能を併せ持つ前記の血管内留置用カテーテルであり、さらに、インナーカテーテルのルーメンを通じて心臓ペースメーカー用の電極が装着されている、心臓ペーシング機能を併せ持つ前記の血管内留置用カテーテルである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、血管内に留置された1本のアウターカテーテルに様々な目的に適した形状及び本数のインナーカテーテルの選択的装着が可能で、閉塞等のトラブルが生じた時には新たなインナーカテーテルを簡便に交換でき、更に、不要時にはオブチュレーター(内栓)を挿入し内腔全体を内封することが可能となる。また、留置中にカテーテルの外周または内腔に形成された血栓を除去または回収する手段を有するデバイスを挿入することもできるため、長期にわたるカテーテルの留置が可能である。
【0014】
また、感染を防止するためインナーカテーテルの定期的交換が簡便に行える。また、アウターカテーテルにカフを設けたものは皮下組織と密着させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のカテーテルにおけるアウターカテーテルと2本の単層ルーメンカテーテルからなるインナーカテーテルを接続する一例を示す概略図である。(A)全体形状の一例を示す概略図(B)カテーテルA−A’部分断面図
【図2】本発明におけるアウターカテーテルのコネクター部内面を示す断面図の一例を示す概略図である。(A)コネクター部の横面図(B)カテーテルB−B’部分断面図
【図3】本発明におけるアウターカテーテルにおける2本のインナーカテーテルを装着する一例を示す概略図である。(A)全体形状の一例を示す概略図(B)カテーテルA−A’部分断面図
【図4】本発明におけるアウターカテーテルにおける3本のインナーカテーテルを装着するためのコネクター部形状の一例を示す概略図である。(A)横面図(B)上面図
【図5】従来技術であるコアクシャル型ブラッドアクセスカテーテルの形状の概略図である。(A)全体形状を示す概略図(B)カテーテルA−A’部分の断面図
【図6】本発明におけるインナーカテーテルのアダプター部構造の一例を示す概略図である。(A)横面図(B)横面の透視図
【図7】本発明における2本のインナーカテーテルを装着するためアウターカテーテルのコネクター部に嵌合させるアタッチメントの一例を示す概略図である。(A)2本のインナーカテーテルを装着するためのアタッチメントの横から見た図(B)2本のインナーカテーテルを装着するためのアタッチメントの上から見た図
【図8】本発明における3本のインナーカテーテルを装着するためアウターカテーテルのコネクター部に嵌合させるアタッチメントの一例を示す概略図である。(A)3本のインナーカテーテルを装着するためのアタッチメントの横から見た図(B)3本のインナーカテーテルを装着するためのアタッチメントの上から見た図
【図9】本発明におけるダブルルーメン形状のインナーカテーテルを装着するためアウターカテーテルのコネクター部に嵌合させるアタッチメントの一例を示す概略図である。(A)全体形状を示す概略図(B)アタッチメントの構造を示す概略図
【図10】本発明におけるアウターカテーテルに装着したインナーカテーテルの長さを微調整することができるネジ式アタッチメント53の構造の一例を示す概略図である。(A)アウターカテーテルとインナーカテーテルを装着した全体形状を示す概略図(B)アタッチメントの構造を示す概略図
【図11】本発明におけるアウターカテーテルに装着したインナーカテーテルの長さを微調整することができる蛇腹式アタッチメント54の構造の一例を示す概略図である。(A)アウターカテーテルとインナーカテーテルを装着した全体形状を示す概略図(B)アタッチメントの構造を示す概略図
【図12】本発明におけるアウターカテーテルに装着したインナーカテーテルの長さを微調整することができる組合せ式アタッチメント55の構造の一例を示す概略図である。(A)アウターカテーテルとインナーカテーテルを装着した全体形状を示す概略図(B)アタッチメントの構造を示す概略図
【図13】本発明におけるアウターカテーテルに装着したインナーカテーテルの長さを微調整することができる締め付け固定式アタッチメント56の構造の一例を示す概略図である。(A)アウターカテーテルとインナーカテーテルを装着した全体形状を示す概略図(B)アタッチメントの構造を示す概略図(C)アタッチメントにインナーカテーテルのロックリング24が嵌合している概略図(D)アタッチメントの内腔の構造を示す概略図
【図14】本発明におけるインナーカテーテル非使用時にアウターカテーテルに装着し内腔の血栓形成を防止するためのオブチュレーター(内栓)の一例を示す概略図である。
【図15】本発明におけるアウターカテーテルの内腔に形成された血栓を物理的に除去するためのデバイスの形状の一例を示す概略図である。
【図16】本発明における皮下組織に密着させるためアウターカテーテルにカフを取り付けたカテーテルの概略図である。
【図17】本発明における側注部を取り外し交換できるアウターカテーテルの一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0017】
本発明においては、2以上の単層ルーメンカテーテルまたは1もしくは2以上の複層ルーメンカテーテルから構成されるインナーカテーテルがアウターカテーテルと着脱可能に嵌合していることを最大の特徴としている。
【0018】
本発明で用いられるアウターカテーテルは、従来のコアクシャル型カテーテルにおけるアウターカテーテルとして知られているものが同様に使用できる。
【0019】
本発明においてインナーカテーテルとアウターカテーテルを着脱可能に嵌合するための手段としては、次のように種々の方法が採用できる。
a)複数本のインナーカテーテルが貫通し固定されたアダプター部をアウターカテーテルのコネクター部に嵌め込み、さらに嵌合部をロックリング部でネジ締めする方法
b)一本毎にインナーカテーテルが貫通し固定されたアダプター部を、アウターカテーテルのコネクター部にインナーカテーテル毎に対応して形成した一体化した接続部に嵌め込み、ロックリングでネジ締めする方法
c)b)における接続部がアタッチメントを介してアウターカテーテルのコネクター部にネジ止めする方法
d)インナーカテーテルのY管部が挿入できるテーパー状の内孔を有する弾性ゴム製アタッチメントをアウターカテーテルのコネクター部にネジ止めし、その内孔にインナーカテーテルを押し込む方法
以下図面を用いて説明する。
【0020】
図1は、上記のa)の方法により着脱可能に嵌合した本発明の血管留置用カテーテルの全体図を示している。図1は、嵌合方法を説明する便宜上、インナーカテーテルのアダプター部をアウターカテーテルのコネクター部から外した状態を示している。インナーカテーテル2はアダプター部23に貫通して固定されており、アダプター部23の下部は雄ルアーテーパー25となっている(図6参照)。アウターカテーテル1のコネクター部11はインナーカテーテル2を固着したアダプター部23と嵌合・接続できるように、内腔は図2(A)に示すようなルアーテーパー構造26を有している。
【0021】
アウターカテーテル1のコネクター部11の上部の接続部20にはネジ部19が形成され、ロックリング部24でネジ締めされることによりアダプターブ23がコネクター部11と着脱可能に嵌合することができる。
【0022】
本発明の血管留置用カテーテルにおける前記以外の構成は、従来の血管留置用カテーテル(図5参照)と同様なものが採用できる。すなわち、アウターカテーテルには血液の脱血または送血のルーメンとして使用することができる側注部14、カテーテルと皮膚とを縫合糸で固定するための糸掛部13を備えている。また、インナーカテーテル2の手元側チューブおよびアウターカテーテル1の側注部14に接続するチューブには、体外循環回路などのラインやシリンジ等に接続するためのハブ15が設けられ、また内腔を一時的に遮断するためのクランプ16が備わっている。
【0023】
また、本発明のアウターカテーテルは図17に一例を示す様に、長期間の繰り返し使用が可能となるよう破損などトラブルの起こりやすい側注部のクランプチューブ部12、クランプ16、ハブ15部分を取り外し交換できる構造をとることもできる。この場合、アウターカテーテル1は糸掛部13、クランプチューブ部12、コネクター部11からなる。
【0024】
本発明においてインナーカテーテルは、目的に応じて本数、長さ、ルーメンの数が選択される。例えば、中心静脈栄養用のカテーテルとして使用する場合は、インナーカテーテルに輸液が投与される。一方、血液浄化などの体外循環に使用する場合は、図1に示した様に、脱送血のための長さの異なる2本(21および22)のインナーカテーテル2を接続して、血液を循環させることができる。
【0025】
さらに、本発明においては、インナーカテーテル2には、そのルーメンを通じて脈圧、血流量等の各種センサーおよび心臓ペーシング用の電極が装着されていてもよく、そのような血管内留置用カテーテルは、治療用途、診断用途としても利用できる。センサーとしては、カテーテルの内腔に埋め込み電気信号等を感知する金属線状のものが挙げられる。
【0026】
サーモダイリューションカテーテルを例にとると、血流量を測定する場合にはカテーテルの手元側から氷冷した生理食塩水を流し先端側のセンサーで温度を測定した時の血液の温度希釈度により測定する。圧力測定に関しては、カテーテル先端に設けられたバルーン内に空気を注入し、バルーンにかかる圧を手元側の圧力センサーで測定する方法もある。
【0027】
心臓ペーシング用電極としては、カテーテルの先端と手元側の2カ所に設けられて、電極は体外部の体外式ぺースメーカーのジェネレーターに接続することによりぺーシングを行う。
【0028】
クランプ16の形状については指で押さえてチューブを閉止させるピンチ式、または板状のものに幅が段階的に狭くなるスリットが入り、スリットをスライドさせることによりチューブを閉止するスリット式などの形状があるが、チューブを閉塞させる機能を有するものであれば形状は問わない。
【0029】
また、図2(B)に示すように、インナーカテーテル2またはオブチュレーター3を装着する際に血液が体外に洩れることをできる限り抑える逆流防止弁の構造18を採ることが好ましいが、なくても使用は可能である。逆流防止弁の構造は、例えばスリットの入った弾性ゴムの厚みをもつ層であることもあるが、血液等の液体が漏れない構造のものであれば材質、構造は特に限定するものではない。
【0030】
本発明のカテーテルの材質は、体内、特に血管内に留置して安全な弾性のある材質であれば良く、例えば、ポリウレタン、シリコーン、ポリ塩化ビニル、ポリブタジエン、ポリアミド、エチレンー酢酸ビニル共重合体等が挙げられるが、好ましくは体外では硬度を保ち体内で柔軟性をもつ性質をもつポリウレタンが好ましい。
【0031】
本発明のアウターカテーテル1は、図16に示したような、皮下組織8と密着させる機能を有するカフ52が皮膚7刺入部から血管9刺入部までの間のカテーテル部分の1箇所、または2箇所以上取り付けられているものであってもよい。
【0032】
カフの形状としては、繊維の綿状のもの、スポンジ状のもの、カテーテルの一部が盛り上がったもの等が挙げられ、材質としては、ポリエステル、ナイロン、アクリル等の合成高分子化合物または綿、絹、キチンなどの天然高分子化合物等が挙げられる。
【0033】
本発明における他の嵌合方法としては、上記b)のように、一本毎にインナーカテーテルが貫通し固定されたアダプター部を、アウターカテーテルのコネクター部にインナーカテーテル毎に対応して形成した一体化した接続部20に嵌め込み、ロックリングでネジ締めする方法が採用できる。具体的には図3および図4に示されている。図3はインナーカテーテルが2本の場合、図4はインナーカテーテルが3本の場合を示している。接続部20は、アウターカテーテル1のコネクター部11の上部に、インナーカテーテル2の1本ごとに対応して形成されており、コネクター部11と一体化している。接続部20の口部にはロックリング24がネジ締めされるようにネジ19が形成されている。図3または図4に示した血管内留置用カテーテルでは、インナーカテーテル2を洗浄あるいは交換のために取り外すときには、目的のインナーカテーテルのロックリング24を外すことで可能となる。
【0034】
本発明における別の嵌合方法としては、上記c)のように、b)における接続部がアタッチメントを介してアウターカテーテルのコネクター部11に直接ネジ止めする方法が挙げられる。具体的には、図7および図8に示されており、図7はインナーカテーテルが2本の場合、図8はインナーカテーテルが3本の場合を示している。この態様では、インナーカテーテル2毎に対応して形成される接続部20がアタッチメントと一体化しており、このアタッチメントの内腔にはネジが切られ、アウターカテーテルのコネクター部の口部にネジ止めされる。
【0035】
さらに、本発明における別の嵌合方法としては、上記d)のように、インナーカテーテルのY管部が挿入できるテーパー状の内孔を有する弾性ゴム製アタッチメントをアウターカテーテルのコネクター部にネジ止めし、その内孔にインナーカテーテルを押し込む方法が挙げられる。具体的には、図9に示されている。図9には一般的なダブルルーメンカテーテル5のY管部51の形状とほぼ合致するような構造をもつアタッチメント6をアウターカテーテルのコネクター部11に接続することができる。このアタッチメント6の嵌合部の一部である弾性ゴム層27の形状を、装着するそれぞれのカテーテルのY管部51の形状に合わせることにより、様々な形状をもつカテーテルを本発明のアウターカテーテル1に接続することが可能となる。
【0036】
本発明においては、アウターカテーテル1とインナーカテーテル2を接続するアタッチメントを工夫することにより、アウターカテーテル1に接続した状態でインナーカテーテルの長さを微調整できる構造とすることもできる。
【0037】
そのような一例として、図10にはアタッチメント本体部分をネジ構造53として、これに嵌合するロックリング24部分を回転させてアウターカテーテル1に嵌合する長さを調節するものを示している。この他、インナーカテーテル2のアダプター部23のロックリング部分24を回転させてアタッチメントの長さを調節する方法もある。
【0038】
インナーカテーテルの長さの微調整はカテーテルの先端が血管壁に対して接触しない位置に変更する等の目的で行われるが、微調整する長さは5cm以内が好ましいが、1〜2cmの範囲で機能を果たすことがさらに好ましい。
【0039】
インナーカテーテルの長さを微調整する他の方法としては、図11に示すような蛇腹式のアタッチメント54の他、図12に示すような複数の着脱式アタッチメント55の組合せであってもよく、さらに図13に示すようなロックリングを締め付けながら長さを調整および固定するアタッチメント56であってもよい。長さの微調整の範囲は先述した通りである。
【0040】
インナーカテーテルの長さを微調整するための方法としては、上記のアタッチメントの他、アタッチメントの構造がアウターカテーテル1のコネクター部と一体化していてもよい。
【0041】
本発明の血管内留置用カテーテルにおいては、インナーカテーテル2の未使用時にアウターカテーテル内腔に血栓が形成されて閉塞することを防止するために、図14に示すようなオブチュレーター(内栓)3を装着することもできる。
【0042】
オブチュレーター3の構造としては、アウターカテーテルの内腔閉塞させる太さの棒状オブチュレーター本体31とアウターカテーテル1に装着させるためのアダプター23の構造を有していればよい。アダプター23の構造はインナーカテーテル2のものと基本的には同じでよい。
【0043】
一方、オブチュレーター3を使用せずにヘパリン等の抗凝固剤をアウターカテーテル1の内腔に充填することも可能であるが、万一、血栓が形成された場合、一例として、図15に示すような血栓を除去または回収するデバイス4を装着して血栓を物理的に除去または回収することも可能である。
【0044】
血栓を除去または回収するデバイスの構造としては、その一例として血栓等の目的物をつかむためのループ状のワイヤー部41が挙げられるが、ワイヤー部41の形状は血栓を除去または回収できる構造をとるものであれば特に問わない。またワイヤー部41を実際にカテーテルから出し入れするための操作部42があり、アウターカテーテルのコネクター部11に嵌合させるためのアダプター部23を有する。アダプター部23の構造はインナーカテーテル2のものと基本的には同じでよい。
【0045】
また、血栓を除去または回収するデバイス4の構造はワイヤー状以外にも吸引力により血栓を除去または回収する方法であってもよい。
【0046】
本発明の血管内留置用カテーテルは、留置中に血液に接触して血栓が形成されるのを防ぐために、抗血栓性処理が施されていてもよい。
【0047】
抗血栓性処理には、ウロキナーゼ等のプラスミノーゲンアクチベーターを化学結合法により基材のカテーテル表面に固定化する方法(詳細は、特許1406830号参照)、ヘパリン等の抗凝固因子をカテーテル表面にコーティングする方法等様々な方法が開発されているが、特定の方法に限定されるものではない。
【0048】
また、抗血栓性処理の範囲は血液に接触する部分であればカテーテルの外面、内面またはその両方であってもよい。
【0049】
本発明の血管内留置用カテーテルは、カテーテル留置中に細菌や真菌、ウィルスなどに感染することを防止するため、基材のカテーテルの全体または一部の表面に抗菌剤や抗生物質などがコーティングしているもの(例えば、特開2001−276210号公報参照)や、抗菌剤が基材に直接混練されているもの(例えば、特開平8−157641号公報参照)であってもよい。
【0050】
本発明の血管内留置用カテーテルは、皮下組織または血管への挿入を容易にするため、基材表面を親水性高分子化合物でコーティングするなどの潤滑性処理が施されているもの(例えば、特開平10−248919号公報参照)であってもよい。潤滑性処理する方法は多くの方法が開発されているが、特にどの方法を選択してもよい。また、潤滑性処理の範囲は人体に接触する部分、またはカテーテルを留置する用具等に接触する部分であれば特にどの部分であってもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 アウターカテーテル
2 インナーカテーテル
3 オブチュレーター(内栓)
4 血栓を除去または回収するためのデバイス
5 ダブルルーメン型カテーテル
6 アタッチメント
7 皮膚
8 皮下組織
9 血管
11 コネクター部
12 クランプチューブ部
13 糸掛部
14 側注部
15 ハブ
16 クランプ
18 逆流防止弁
19 ネジ部
20 接続部
21 長さが短い方のインナーカテーテル
22 長さが長い方のインナーカテーテル
23 アダプター部
24 ロックリング部
25 雄ルアーテーパー部
26 雌ルアーテーパー部
27 弾性ゴム
28 インナーカテーテルの先端
29 ロックリング内側のネジ形状
31 棒状オブチュレーター本体
41 ループ状ワイヤー
42 操作部
43 シース部
44 延長部
51 Y管部
52 カフ
53 長さの微調整が可能なネジ式アタッチメント
54 長さの微調整が可能な蛇腹式アタッチメント
55 長さの微調整が可能な組合せ式アタッチメント
56 長さの微調整が可能な締め付け固定式アタッチメント
61 アタッチメント本体のネジ構造
62 アタッチメント本体の伸縮自在の蛇腹式アタッチメント
63 複数の組合せ式アタッチメント
64 アタッチメント本体の溝付ネジ構造
65 インナーカテーテル締め付け用ロックリング
66 溝部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アウターカテーテルと、該アウターカテーテルのルーメン内に挿通され該アウターカテーテルと着脱可能に嵌合するインナーカテーテルとからなる血管内留置用カテーテルにおいて、該インナーカテーテルが2以上の単層ルーメンカテーテルまたは1もしくは2以上の複層ルーメンカテーテルからなることを特徴とする血管内留置用カテーテル。
【請求項2】
インナーカテーテルを構成する2以上の単層ルーメンカテーテルまたは複層ルーメンカテーテルが各々別個に着脱可能であることを特徴とする請求項1記載の血管内留置用カテーテル。
【請求項3】
インナーカテーテルのルーメンを通じて治療用又は診断用センサーが装着されている、治療用又は診断用センサー機能を併せ持つ請求項1又は2記載の血管内留置用カテーテル。
【請求項4】
インナーカテーテルのルーメンを通じて心臓ペースメーカー用の電極が装着されている、心臓ペースメーカー機能を併せ持つ請求項1又は2記載の血管内留置用カテーテル。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2011−143258(P2011−143258A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−40045(P2011−40045)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【分割の表示】特願2004−172729(P2004−172729)の分割
【原出願日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【出願人】(397048379)
【出願人】(504224588)
【出願人】(504224603)
【Fターム(参考)】