説明

血管内皮機能改善剤、一酸化窒素産生促進剤、及び飲食品

【課題】血管内皮機能改善や一酸化窒素産生促進を行える新たな材料を提案するとともに、内皮由来弛緩因子のうち、一酸化窒素産生をさらに促進することのできる血管内皮機能改善剤、一酸化窒素産生促進剤、及び飲食品を提供すること。
【解決手段】ブドウ由来のポリフェノールは、ワイン製造時に発生する澱(おり)から水、エタノール、又は水−エタノールにより抽出してなるブドウ由来のポリフェノールと、L−アルギニンとを有効成分として配合して血管内皮機能改善剤、一酸化窒素産生促進剤、及び飲食品を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管内皮機能改善剤、一酸化窒素産生促進剤、及び飲食品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
肥満や高血圧等の生活習慣病は動脈硬化症の危険因子として知られている。生活習慣病については、従来、食生活の改善や適度な運動以外に有効な治療法が確立されていなかったが、近年、動脈硬化症の要因の一つに血管内皮細胞の内皮機能低下が関与していることが判明しつつある。すなわち、血管内皮細胞は、内皮由来弛緩因子の放出等による血管拡張調節や、血液凝固抑制物質の放出による血液凝固調節等により、血液の単球接着や血栓形成を防止し、動脈硬化を抑制していることから、血管内皮細胞の内皮機能が低下すると、動脈硬化が発生するというものである。従って、血管内皮細胞の機能を改善すれば、動脈硬化症を改善できることになる。
【0003】
ここで、血管内皮機能改善作用を有する成分として、柑橘類由来のポリフェノールが着目されている。また、柑橘類由来のポリフェノールは、内皮由来弛緩因子の一つである一酸化窒素の放出を促進させる機能を有している点に着目されている。一酸化窒素は、血管平滑筋弛緩作用、プロスタグランジンI2の産生促進による血小板凝集抑制作用、及び血栓の原因とされる細胞接着因子の発現を抑制する作用等、血管内皮機能を改善して動脈硬化症を抑制する。かかる一酸化窒素は、生体内において一酸化窒素合成酵素によりアルギニンから合成されるが、柑橘類由来のポリフェノールは、一酸化窒素合成酵素の活性を高めると指摘されている(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−298429号公報
【特許文献2】特開2009−13080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここに本願発明者は、柑橘類由来のポリフェノールの他に、血管内皮機能改善作用や一酸化窒素産生促進作用を有する成分や、これらの作用をさらに高めることのできる組成を提案するものである。
【0006】
すなわち、本発明の課題は、血管内皮機能改善や一酸化窒素産生促進を行える新たな材料を提案するとともに、内皮由来弛緩因子のうち、一酸化窒素産生をさらに促進することのできる血管内皮機能改善剤、一酸化窒素産生促進剤、及び飲食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解消するために、本発明に係る血管内皮機能改善剤、一酸化窒素産生促進剤、及び飲食品は、L−アルギニンとブドウ由来のポリフェノールとを有効成分として含有することを特徴とする。本発明における飲食品は、各種の飲料や食品に対してL−アルギニンとブドウ由来のポリフェノールとを含有させた健康飲料や健康食品、あるいはL−アルギニンとブドウ由来のポリフェノールとを含有させた液状あるいは固体状のサプリメントとして構成される。
【0008】
ブドウ由来のポリフェノールは、血管内皮細胞での内皮由来弛緩因子や血液凝固抑制物質の放出機能を高めるため、動脈硬化症を改善することができる。また、ブドウ由来のポリフェノールはトランス−レスベラトロールを比較的多量に含有しており、かかるトランス−レスベラトロールは、一酸化窒素合成酵素作用を高めて、内皮由来弛緩因子の一つである一酸化窒素の放出を促進する効果が高いので、動脈硬化症を改善する効果が高い。さらに、一酸化窒素は、生体内において一酸化窒素合成酵素によりアルギニンから合成されるが、本発明に係る血管内皮機能改善剤、一酸化窒素産生促進剤、及び飲食品は、L−アルギニンも含有しているため、一酸化窒素を効率よく合成することができる。
【0009】
本発明において、前記ブドウ由来のポリフェノールは、ブドウ発酵液由来のポリフェノールであることが好ましい。赤ワイン製造時にブドウを発酵させてなる液(ブドウ発酵液)には、ポリフェノールが多量に含まれているので、ポリフェノールを効率よく抽出することができるという利点がある。より具体的には、固定相を充填したカラム内に、赤ワイン製造時のブドウ発酵液を通してポリフェノール類及び澱(おり)を固定相に保持させた後、水、エチルアルコール、あるいは水−エチルアルコール混合溶媒をカラム内に通過させてポリフェノール溶液を回収し、しかる後に、濃縮、スプレードライ等による粉体化を行うことによって赤ワインエキスの粉体を得ることができる。
【0010】
本発明において、前記ブドウ由来のポリフェノールは、ブドウの果実、果皮、種子、新芽及び茎のうちの少なくとも一つを水、エタノール、又は水−エタノールにより抽出してなる構成を採用することができる。
【0011】
このように水やエタノールにより抽出したものを用いれば、水にスムーズに溶けるので、摂取しやすいという利点がある。
【0012】
本発明に係る血管内皮機能改善剤、一酸化窒素産生促進剤、及び飲食品は、ブドウ由来のポリフェノールのうち、トランス−レスベラトロールを配合した構成であってもよい。すなわち、本発明に係る血管内皮機能改善剤、一酸化窒素産生促進剤、及び飲食品は、L−アルギニンとトランス−レスベラトロールとを有効成分として含有することを特徴とする。
【0013】
ブドウ由来のポリフェノールのうち、トランス−レスベラトロールは、血管内皮細胞での内皮由来弛緩因子や血液凝固抑制物質の放出機能を高めるため、動脈硬動脈硬化症を改善することができる。特に、トランス−レスベラトロールは、一酸化窒素合成酵素作用を高めて、内皮由来弛緩因子の一つである一酸化窒素の放出を促進する。従って、動脈硬化症を改善する効果が高い。さらに、一酸化窒素は、生体内において一酸化窒素合成酵素によりアルギニンから合成されるが、本発明に係る血管内皮機能改善剤、一酸化窒素産生促進剤、及び飲食品は、L−アルギニンも含有しているため、一酸化窒素を効率よく合成することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、血管内皮機能を改善して動脈硬化症を抑制することのできる血管内皮機能改善剤、一酸化窒素産生促進剤、及び飲食品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】各グループの実験体におけるe塩化アセチルコリンの累積負荷量と胸部大動脈の血管弛緩度(内皮依存性の弛緩度)との関係を測定した結果を比較して示すグラフである。
【図2】各グループの実験体における血液流量を測定した結果を比較して示すグラフである。
【図3】各グループの実験体における血管内膜へのプラーク介入率を測定した結果を比較して示すグラフである。
【図4】各グループの実験体における血管断面のプラーク占有率を測定した結果を比較して示すグラフである。
【図5】各グループの実験体における血管内の内膜/中膜の比を測定した結果を比較して示すグラフである。
【図6】各グループの実験体の胸部大動脈におけるeNOSへの影響を測定した結果を比較して示すグラフである。
【図7】各グループの実験体の胸部大動脈における活性酸素量を測定した結果を比較して示すグラフである。
【図8】各グループの実験体の胸部大動脈におけるElk-1量を測定した結果を比較して示すグラフである。
【図9】各グループの実験体の胸部大動脈におけるp-CREB量を測定した結果を比較して示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[血管内皮機能改善剤等の組成]
本発明に係る血管内皮機能改善剤、一酸化窒素産生促進剤、及び飲食品は、L−アルギニンとブドウ由来のポリフェノールとを有効成分として含有しており、ブドウ由来のポリフェノールは、トランス−レスベラトロールを含有している。
【0017】
血管内皮機能改善剤、一酸化窒素産生促進剤、及び飲食品にブドウ由来のポリフェノールを含有させるにあたっては、ブドウ果実、果皮、種子、新芽又は茎の1つあるいは複数からなる素材をそのまま有効成分として配合する方法、水、エタノール等の低級アルコールからなる極性溶媒、水とエタノールとの混合溶媒などを用いて上記素材からポリフェノールを抽出する方法等が挙げられる。
【0018】
また、ブドウ由来のポリフェノールを効率的よく入手するという観点からすれば、ブドウ発酵液由来のポリフェノールを用いることが好ましい。より具体的には、固定相を充填したカラム内に赤ワイン製造時のブドウ発酵液を通してポリフェノール類及び澱(おり)を固定相に保持させた後、水、エチルアルコール、あるいは水−エチルアルコール混合溶媒をカラム内に通過させてポリフェノール溶液(抽出液)を回収し、しかる後に、濃縮、スプレードライ等による粉体化を行えば、赤ワインエキスの粉体を得ることができる。なお、ポリフェノールとしては、抽出液の状態、濃縮液の状態、あるいは抽出液をスプレードライなどの方法で粉体化した状態のいずれを用いてもよく、後述する実験では、抽出液をスプレードライにより粉体化したものを赤ワインエキスとして用いている。かかる粉体状の赤ワインエキスは、例えば、ポリフェノールを30〜80質量%含有している。
【0019】
このような構成の血管内皮機能改善剤、一酸化窒素産生促進剤、及び飲食品によれば、以下に説明するように、動脈硬化を予防、改善することができる。
【0020】
血管内皮細胞は、流動性の維持・調節機能や細胞の移動調節機能等、血管の恒常性を維持する機能を担っている。これらの機能のうち、流動性の維持・調節機能は、血管内皮細胞による血管の弛緩・収縮調節機能の他、血液凝固促進・抑制物質の放出による血液凝固の調節機能によって行なわれる。また、細胞の移動調節は、血管接着因子の発現調節等の機能によって行なわれる。かかる血管内皮細胞に対して、本発明に係る血管内皮機能改善剤、一酸化窒素産生促進剤、及び飲食品が含有するブドウ由来のポリフェノールは、血管内皮細胞での内皮由来弛緩因子や血液凝固抑制物質の放出機能を高める。
【0021】
また、ブドウ由来のポリフェノールは、一酸化窒素の放出を促進する。一酸化窒素は、生体内においてアルギニンから一酸化窒素合成酵素により合成される。ここで、一酸化窒素は、グアニレートシクラーゼの活性化、サイクリックグアノシン3′,5′−一リン酸(cGMP)の上昇、細胞外へカルシウムイオンの流出、血管平滑筋弛緩等の情報伝達系によって、血管平滑筋の弛緩作用による血管を拡張させ、降圧作用を発揮する。また、一酸化窒素は、プロスタグランジンI2産生促進による血小板凝集抑制作用、及び血栓の原因となる細胞接着因子の発現を抑制する作用等により血管内皮機能の改善作用を発揮し、動脈硬化を予防、改善する。
【0022】
特に、本発明に係る血管内皮機能改善剤、一酸化窒素産生促進剤、及び飲食品が含有するブドウ由来のポリフェノールはトランス−レスベラトロールを比較的高い割合で含有しており、かかるトランス−レスベラトロールは、一酸化窒素合成酵素作用を効果的に高め、一酸化窒素の放出を促進する。また、本発明に係る血管内皮機能改善剤、一酸化窒素産生促進剤、及び飲食品は、一酸化窒素の産生に必要なL−アルギニンも含有している。それ故、本発明に係る血管内皮機能改善剤、一酸化窒素産生促進剤、及び飲食品によれば、動脈硬化を改善することができる。
【0023】
以下、本発明に係る血管内皮機能改善剤、一酸化窒素産生促進剤、及び飲食品の評価結果を以下に説明する。以下の実験においては、ブドウ由来のポリフェノールは粉状の赤ワインエキスとして投与され、かかる赤ワインエキスは、トランス−レスベラトロールを含むポリフェノールを30〜80質量%含有している。
【0024】
1.実験プロトコル
ニュージーランドマウス オス 48匹
年齢:生後3-4ヶ月
体重:2.0-2.4kg
(1)実験条件
試験期間:12週間
飼育温度:20±3℃
摂餌量:120g/匹・日
摂水量:自由(平均摂水量:165mL/匹・日)
(2)実験グループ(各6匹)
グループ:G1(比較例1)
高コレステロール食
グループ:G2(比較例2)
高コレステロール食+L−アルギニン
グループ:G3(比較例3)
高コレステロール食+赤ワインエキス
グループ:G4(実施例1)
高コレステロール食+L−アルギニン+赤ワインエキス
グループ:G5(比較例4)
高コレステロール食+V.C.+V.E.
グループ:G6(比較例5)
高コレステロール食+L−アルギニン+V.C.+V.E.
グループ:G7(実施例2)
高コレステロール食+L−アルギニン+赤ワインエキス+V.C.+V.E.
グループ:G8(比較例6)
標準食(コントロール)
なお、「高コレステロール食」は標準食よりもコレステロール量が+5%になっている。「L−アルギニン」は飲料用水に2.5%w/wとなるように調整してある。「赤ワインエキス」は飲料用水に5%w/wとなるように調整してある。ここで、「赤ワインエキス」は、ブドウ由来のポリフェノールに相当し、かかるポリフェノールはトランス−レスベラトロールを5%w/w程度含有している。「V.C.」はアスコルビン酸ナトリウムを飲料用水に0.25%w/wとなるように調整してある。「V.E.」はDL−αトコフェロールを150mg/kg強制経口投与した。
(3)採血
摂餌後24時間後に行った。
【0025】
2.血漿脂質、一酸化窒素(NO)、サイクリックグアノシン3′,5′−一リン酸(cGMP)の測定方法
コレステロール:トリグリセリド
HDL−コレステロール・・リン酸タングステンMgで沈殿
プラズマNO2-とNO3-(総称NOx)・・NO detector 高速液体クロマトグラフィ(HPLC)
プラズマcGMP濃度・・Specific RIA
【0026】
3.血管弛緩度測定
試験期間終了後の実験体に麻酔(ペントバビタール)→全採血→胸部大動脈2mm切断。血管断面はプロスタグランジンF2αを使用し最大化で解析した。内皮依存性の弛緩は塩化アセチルコリンで誘発し定量した。内皮非依存性の弛緩はニトログリセリンで誘発し定量した。なお、他の報告に基づいて、試験60分前にインドメタシン投与し、プロスタノイド排除(筋肉の緊張誘発)を行った。
【0027】
4.血流測定
実験体の右耳中心動脈
Laser Doppler imaging system を用いて2Dマッピングした。
【0028】
5.動脈硬化の組織学的評価
各実験体から採取した大動脈を染色法により評価した。
【0029】
6.大動脈中の過酸化酸素測定
染色発光法により行った。
【0030】
7.一酸化窒素合成酵素(eNOS)、etsドメインタンパク質(Elk-1)、リン酸化状態の転写因子(p-CREB)測定
5mm片をホモジナイズ→Western Blotting→ニトロセルロースメンブレンにBlot→モノクローナル抗体と培養(500倍希釈、1.5h室温)の手順で行った。
【0031】
染色発光法
8.データ解析
得られた数値は統計学的に処理し、有意差の有無を評価した。
【0032】
9.結果
(1)検体の状態と血液の化学的性質
表1に各グループの実験体の実験後の平均体重、NO(NO2-とNO3-)、cGMPを測定した結果を示す。
【0033】
【表1】

【0034】
実験体の健康状態は概ね良好であり、グループ内での大きな体重差は見られなかった。G7とG4はG1と比較するとNOxとcGMPが顕著に増加していた。G2、G3、G5、G6では大きな差は無し。よって、L−アルギニンと赤ワインエキスの組み合わせは、NO及びcGMPの産生効果を高める可能性ありと判定することができる。
【0035】
(2)胸部大動脈と血流における高コレステロール食とNO産生促進剤による内皮依存性血管弛緩への影響
図1は、各グループの実験体におけるe塩化アセチルコリンの累積負荷量と胸部大動脈の血管弛緩度(内皮依存性の弛緩度)との関係を測定した結果を比較して示すグラフである。なお、図1において、グループG1の結果は太い点線で示し、グループG2の結果は細い点線で示し、グループG3の結果は細い実線で示し、グループG4の結果は太い一点鎖線で示し、グループG5の結果は太い二点鎖線で示し、グループG6の結果は太い実線で示し、グループG7の結果は細い一点鎖線で示し、グループG8の結果は細い二点鎖線で示してある。図2は、各グループの実験体における血液流量を測定した結果を比較して示すグラフである。
【0036】
拡張率
G7はG1とは顕著な差が見られた。G2、G3、G4、G6はG1より良好であった。
インドメタシンは弛緩には影響なし。
【0037】
血流
G4、G7は顕著に良く、vitroデータとも合致する。よって、L−アルギニン + 赤ワインエキスはNO産生効果ありと判定することができる。
【0038】
(3)胸部大動脈における高コレステロール食とNO産生促進剤による血管内膜プラークへの影響
図3、図4及び図5は各々、各グループの実験体における血管内膜へのプラーク介入率、血管断面のプラーク占有率、及び血管内の内膜/中膜の比を測定した結果を比較して示すグラフである。
【0039】
血管内膜へのプラーク介入率及び血管断面のプラーク占有率のいずれに関しても、G4、G7はG1に比べ顕著に改善(50%以上)されている。また、内膜/中膜比も同様である。よって、初期段階のプラーク形成阻害にはL−アルギニン+赤ワインエキスが効果的であると判定することができる。
【0040】
(4)胸部大動脈における高コレステロール食とNO産生促進剤によるeNOSへの影響
図6は、各グループの実験体の胸部大動脈におけるeNOSへの影響を測定した結果を比較して示すグラフである。
【0041】
eNOSへの影響に関して、G3、G4、G7はG1に比べ顕著に増加している。なお、G2よりG3のほうが効果は高かった。よって、NO産生促進剤はeNOSに対しても効果的であると判定することができる。
【0042】
(5)高コレステロール血症ラビットの大動脈におけるNO産生促進剤の活性酸素増加抑制作用ならびにElk-1及びp-CREB発現
図7、図8及び図9は、各グループの実験体の胸部大動脈における活性酸素量、Elk-1量及びp-CREB量を測定した結果を比較して示すグラフである。
【0043】
活性酸素量に関して、G2、G3、G4では多少抑制できたが、G6、G7はG1に比べ明らかに抑制できた。高コレステロール血症と酸化ストレスの関係は周知の事実で、G1とG8のように高コレステロール食がElk-1及びp-CREBを増加させることは明らかである。また、G4、G7では高コレステロール食でも発現を減少させている。よって、L−アルギニン+赤ワインエキスは高コレステロール血症に対して効果的であると判定することができる。
【0044】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、L−アルギニンと赤ワインエキスとを投与すると、高コレステロール血症に対して効果的である等、動脈硬化の予防や改善を行うことができる。それ故、L−アルギニンと赤ワインエキス(ブドウ由来のポリフェノール)とを含有する血管内皮機能改善剤、一酸化窒素産生促進剤、及び飲食品は、動脈硬化症改善剤又は動脈硬化症予防剤として利用することができる。すなわち、本形態の血管内皮機能改善剤、一酸化窒素産生促進剤、及び飲食品は、ブドウ由来のポリフェノールを含有しているため、摂取により血管内皮機能改善作用を有効に発揮するとともに、内皮由来弛緩因子(一酸化窒素)の産生を促進し、血管拡張作用(降圧作用)、血小板凝集抑制作用、及び抗血栓作用(抗動脈硬化作用)を発揮する。また、本発明に係る血管内皮機能改善剤、一酸化窒素産生促進剤、及び飲食品は、一酸化窒素の産生に必要なL−アルギニンも含有している。それ故、本形態に係る血管内皮機能改善剤、一酸化窒素産生促進剤、及び飲食品は、動脈硬化症改善剤又は動脈硬化症予防剤として利用することができる。しかも、本形態に係る血管内皮機能改善剤、一酸化窒素産生促進剤、及び飲食品が含有するブドウ由来のポリフェノールはトランス−レスベラトロールを含有しており、かかるトランス−レスベラトロールは、一酸化窒素合成酵素作用を効果的に高め、一酸化窒素の放出を促進する。
【0045】
それ故、本形態によれば、血管内皮機能を改善するための血管内皮機能改善剤、一酸化窒素産生を促進するための一酸化窒素産生促進剤、及びこれらの作用を有する飲食品を提供することができる。よって、本形態の血管内皮機能改善剤、一酸化窒素産生促進剤、及び飲食品を医薬品、医薬部外品、健康食品、健康飲料、栄養補助食品として人に投与すれば、ヒトの動脈硬化等を改善することができる。また、本形態の血管内皮機能改善剤、一酸化窒素産生促進剤、及び飲食品を医薬品や飼料等として、ウマ、ウシ、ブタ等の家畜、ニワトリ等の家禽、犬、猫等のペットに投与すれば、これらの動物の動脈硬化等を改善することができる。
【0046】
なお、本形態の血管内皮機能改善剤、一酸化窒素産生促進剤、及び飲食品を粉剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、液剤等として提供する場合、賦形剤、基剤、乳化剤、溶剤、安定剤等の添加剤を配合してもよい。
【0047】
また、本形態の血管内皮機能改善剤及び一酸化窒素産生促進剤を医薬品として使用する場合は、経口摂取により投与する場合の他、血管内投与、経皮投与等の方法で投与してもよい。
【0048】
また、本形態の血管内皮機能改善剤、及び一酸化窒素産生促進剤を飲食品として提供する場合、種々の食品素材又は飲料品素材に添加し、粉末状、錠剤状、顆粒状、液状、カプセル状、ゼリー状、キャンディー状等の形態からなる健康食品製剤、栄養補助食品等の飲食品として提供してもよい。
【0049】
さらに、本形態の血管内皮機能改善剤、一酸化窒素産生促進剤、及び飲食品を調製するにあたっては、L−アルギニンと赤ワインエキス(ブドウ由来のポリフェノール)とを配合したが、かかる構成に代えて、赤ワインエキス等のブドウ由来のポリフェノールからトランス−レスベラトロールを抽出し、L−アルギニンとトランス−レスベラトロールとを配合して血管内皮機能改善剤、一酸化窒素産生促進剤、及び飲食品を構成してもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
L−アルギニンとブドウ由来のポリフェノールとを有効成分として含有することを特徴とする血管内皮機能改善剤。
【請求項2】
前記ブドウ由来のポリフェノールは、ブドウ発酵液由来のポリフェノールであることを特徴とする請求項1に記載の血管内皮機能改善剤。
【請求項3】
前記ブドウ由来のポリフェノールは、ブドウの果実、果皮、種子、新芽、及び茎のうちの少なくとも一つから水、エタノール、又は水−エタノールにより抽出してなることを特徴とする請求項1に記載の血管内皮機能改善剤。
【請求項4】
L−アルギニンとトランス−レスベラトロールとを有効成分として含有することを特徴とする血管内皮機能改善剤。
【請求項5】
L−アルギニンとブドウ由来のポリフェノールとを有効成分として含有することを特徴とする一酸化窒素産生促進剤。
【請求項6】
前記ブドウ由来のポリフェノールは、ブドウ発酵液由来のポリフェノールであることを特徴とする請求項5に記載の一酸化窒素産生促進剤。
【請求項7】
前記ブドウ由来のポリフェノールは、ブドウの果実、果皮、種子、新芽、及び茎のうちの少なくとも一つから水、エタノール、又は水−エタノールにより抽出してなることを特徴とする請求項5に記載の一酸化窒素産生促進剤。
【請求項8】
L−アルギニンとトランス−レスベラトロールとを有効成分として含有することを特徴とする一酸化窒素産生促進剤。
【請求項9】
L−アルギニンとブドウ由来のポリフェノールとを有効成分として含有することを特徴とする飲食品。
【請求項10】
前記ブドウ由来のポリフェノールは、ブドウ発酵液由来のポリフェノールであることを特徴とする請求項9に記載の飲食品。
【請求項11】
前記ブドウ由来のポリフェノールは、ブドウの果実、果皮、種子、新芽、及び茎のうちの少なくとも一つから水、エタノール、又は水−エタノールにより抽出してなることを特徴とする請求項9に記載の飲食品。
【請求項12】
L−アルギニンとトランス−レスベラトロールとを有効成分として含有することを特徴とする飲食品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−41296(P2012−41296A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−183658(P2010−183658)
【出願日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(305020240)メディエンス株式会社 (2)
【出願人】(501459402)
【Fターム(参考)】