説明

血管性頭痛、神経疾患、および神経変性疾患を治療又は緩和する植物性組成物

本発明は、血管性頭痛、神経疾患、神経変性疾患を治療または緩和する、ワサビノキ科に属するワサビノキ(モリンガ・オレイフェラ(Moringa Oleifera))、コショウ科に属するコショウ(Piper Nigrum)、ナス科に属するタバコ(Nicotiana Tabacum)の植物抽出物より成る植物性組成物に関する。さらに、本発明は、上記組成物の調製方法および使用方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管性頭痛と、神経疾患と、神経変性疾患とを治療または緩和するための、植物の抽出物から作られる組成物、及び方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、偏頭痛、パーキンソン病、アルツハイマー病、緑内障、癲癇、慢性的鬱病、及び血管拡張、神経細胞死、脳内における電気的活動の変化により起こされる症状を治療する、ワサビノキ(モリンガ・オレイフェラ(Moringa Oleifera))、コショウ(Piper Nigrum)、タバコ(Nicotina Tabacum)、及び薬学的に許容できる植物を含む組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
概して2600万人の米国人、このうち70%は女性、が偏頭痛に悩まされている。偏頭痛とは、通常、小児期の初期又は青年期から起こる再発性のあるズキズキする頭痛で、通常は頭の片側で感じられるものである。偏頭痛は、脳内の急速な血管の拡張及び収縮により血管壁の痛覚線維が圧迫され、深刻な頭痛を引き起こすものである。偏頭痛を引き起こす要素としてよく知られるものは、空腹、気候の急激な変化、疲労、情緒的ストレス、経口避妊薬が挙げられる。
【0003】
しかしながら、患者によってこの偏頭痛が引き起こる要素は様々であり、研究者及び医師らは、偏頭痛は結局のところ、一つ又はそれ以上の重複した神経生物学的なメカニズム(one or more overlapping neurobiological mechanism)を含む神経疾患であると考えている。偏頭痛の病理生理学(the pathophysiology)には中枢神経系と抹消経路が関与している。抹消経路には血管、中枢神経系経路には脳皮質、縫線核(raphae nuclei)、尾状三叉神経核(trigeminal caudate nucleus)が含まれている。偏頭痛は、大脳皮質領域において電気的活動にある変化が起こると発生することが観察されている。そして広域なセロトニン作動性のプロジェクション(maximum serotonergic projections)を有する脳細胞領域へと下降していく。脳細胞領域である尾状三叉神経核は頭痛に深く関わっており、偏頭痛時にも影響を受ける。三叉知覚神経線維が活性化されることにより、髄膜の脈管構造に有通性の神経原性炎症(neurogenic inflammation)が引き起こされる。これが三叉知覚神経線維から血管拡張性と血漿タンパク放出作用をもつ神経ペプチドの放出を引き起こす。したがって、最終的には抹消経路である血管の変化が認められるのであるが、それに至るまでに脳内では大脳皮質から始まり様々な経路を含む多くの組織に影響を及ぼす一連の出来事と神経伝達物質の放出が見て取れる。
【0004】
血中のセロトニン濃度は頭痛の開始時に変化するが、偏頭痛発症中は正常に保たれている。セロトニンは中枢神経に存在し、機能時は抑制性をもつ神経伝達物質である。セロトニンは5-ヒドロキシトリプタン(5-HT)として広く知られており、神経細胞で神経シグナルを抑制する。偏頭痛はセロトニンを欠乏させる薬剤レセルピンにより促されることがあり、またレセプターと結合しセロトニン活性を模倣するセロトニン作用薬によって緩和される。血管に富んだ組織(vascular tissue)においては、スマトリプタン及び他のトリプタン系薬剤は大脳領域で血管を収縮させ、偏頭痛発症中には血管付近において神経性炎症を緩和することが知られている。
【0005】
偏頭痛の原因及び治療法については数多くの研究が行われてきたが、偏頭痛の治癒法は未だ発見されていない。数ある薬剤の中では、トリプタンと呼ばれる種類の薬剤がもっとも効果的である。トリプタン系薬剤の基本的な作用機構は、特定のセロトニンレセプターサブタイプ、主として血管に存在する5HT-1Bレセプター、及び抹消、中枢神経系の神経細胞末端に認められる5HT-1Dレセプターを選択的に活性化することによると知られている。トリプタンは慢性的な血管肥大を抑え、偏頭痛を和らげ痛みを取り除くことが知られている。しかしながら、偏頭痛発症中に血液脳関門を開くことはトリプタンが脳に進入することになり、その結果神経が有害な反応にさらされる結果となることも知られている。
【0006】
トリプタンは偏頭痛に対し広く用いられているが、すべての患者に効果を発揮するわけではない。20〜25%の偏頭痛患者にトリプタンが作用しないことや、以前に同種の薬剤が有効であった患者の40%において薬剤が効力を発揮していないことが知られている。これ以外にも、偏頭痛患者へ処方される現行薬剤には下記の問題点がある。(1)頭痛に対し使用される単なる鎮痛薬は偏頭痛を治癒するものではなく、これら薬剤の常用は胃潰瘍の原因になる。(2)トリプタンを繰り返し服用することは、再発的で慢性的な頭痛を引き起こす。(3)トリプタン系薬剤は心血管障害、高血圧、脳卒中といった副作用を有する。(4)その他にも、頭、顎及び腕部の不快感と硬直感(tightening)又は刺痛感、喉の不快感、筋肉の痙攣、顔面紅潮といった副作用がある。
【0007】
偏頭痛の治療の欠点や偏頭痛に関する知識の欠如は、米国特許第6068999号にも記されている。また多くの人が偏頭痛に苦しんでおり、安全で効果的な偏頭痛の治療法の発見が急務となっている。
【0008】
アルツハイマー病は、最も複雑かつ難解な神経変性疾患であり、記憶障害、言語障害、空間視覚能力の低下、判断力の低下、無関心と特徴付けられる。なお、アルツハイマー病では運動機能は損なわれない。前脳基底核とコリン作動系がアルツハイマー病における主要対象である。同疾病の患者は、視界及び記憶能低下の進行に苦しんでいる。
【0009】
現在、アルツハイマー病の治癒法は存在しておらず、いかなる処置も病状の進行を止めることができない。アルツハイマー病の初期及び中期段階においては、タクリン、ドネペジル、リバスチグミンなどの薬剤が一時的に病状の進行を食い止める可能性があるが、これら全ての薬剤には副作用がある。タクリンは吐き気、嘔吐、下痢、腹痛、皮膚発疹、さらに肝臓へ障害を引き起こす可能性がある。ドネペジルの副作用には、吐き気、嘔吐、下痢、不眠症、食欲不振が挙げられる。
【0010】
現在のアルツハイマー病の治療は、鬱、心的動揺(agitation)、睡眠障害、幻覚、妄想といった付随症状の緩和に焦点を当てている。コリン、レクチン、ムスカリンアゴニスト(muscuranic agonists)といった前駆物質の投与は効果がないことが証明されている。アルツハイマー病については活発に研究が行われており、多くの新薬について、病状の進行を食い止める又は遅らすことができるかという試験が行われている。
【0011】
パーキンソン病も、高齢者の間で見られる神経変性疾患の一つとして広く知られている。米国内のみで、新たに約5万件の発症が報告されている。主な症状には、(bradekinesia)(随意運動障害)、硬直、体の震え、姿勢の不安定さと平衡障害が挙げられる。中脳領域の黒質緻密部(substantia nigra)の色素性神経細胞(pigmented neurons)が損失することがパーキンソン病の特徴である。また、同条件下において黒質緻密部及のドーパミンニューロン及び脳幹のその他カテコールアミンニューロンも選択的に損失される。この細胞死及び細胞損傷の原因は知られていない。
【0012】
現在、パーキンソン病を治癒することはできない。症状を緩和する薬剤は利用可能であり、パーキンソン病を薬剤で処置するにあたっては、大きく分けて二つの方法がある。まず一つ目は、脳内のドーパミンの損失を遅らせる方法で、もう一方はパーキンソン病の症状をその他の手法で処置する方法である。ドーパミン作用薬の短期的副作用としては、吐き気、嘔吐、めまい、浮遊感、錯乱、幻覚がある。抗コリン作用薬は、アセチルコリンを減少させることにより、脳神経伝達物質であるドーパミンとアセチルコリンのバランスを回復するために用いられる、これによりパーキンソン病患者の体の震えや筋硬直を抑えることができる。しかしながら、これらの薬剤は特に高齢者の記憶及び思考力に障害を及ぼすため、現在これら薬剤はほとんど使用されていない。
【0013】
パーキンソン病の全ての症状に対して有効ではないが、レバドーパ(Levadopa)はパーキンソン病に対して広く用いられる薬剤である。この薬剤は、一連の患者を衰弱させる症状の発生を一時的に遅らせる。レバドーパにも副作用があり、吐き気、嘔吐、低血圧、不随意運動、情動不安が副作用として挙げられる。
【0014】
三叉神経痛は頭部の三叉神経に影響を与える。三叉神経は触覚、痛覚、圧力、温度などの刺激を顔から脳に送る役割を果たしている。この疾病は顔の一方に突然刺されるような痛みを感じることが特徴であるが、死にいたるものではない。しかし、断続的な再発と沈静もこの疾病の特徴であり、患者にとっては耐え難いものである可能性がある。この疾病の処置法には、カルバマゼピンやフェニトインなどの抗痙攣薬が挙げられる。これら薬剤が効果を発しない場合には、外科手術が行われるべきである。
【0015】
緑内障は世界中で約600万人が感染しており、大きな公衆衛生問題の一つである。米国内の患者だけでも、その数は約300万人に上る。
【0016】
緑内障は視覚の損失及び失明を引き起こす視神経変性疾病である。緑内障は網膜神経節細胞の進行性細胞死が特徴である。多くの場合、これは眼内圧力の増加することにより引き起こされ、視神経の軸索変性及び神経節細胞の損失の原因となる。
【0017】
緑内障の治療には、早期診断が非常に重要である。緑内障の治癒法は存在しないが、手術と薬剤の使用により幾分症状を緩和することが可能である。しかし、長期間にわたる薬剤の使用が必要とされ、この薬剤の幾つかは頭痛を引き起こす可能性があり、また他の器官にも影響を与える副作用を有している。そのため、神経節細胞死を止める新しい薬剤の発見が急務となっている。
【0018】
上記のように、脳の疾病は一般的に治癒が不可能である。現在利用できる治療法は全て対症的で、その効果も限定的である。また、長期にわたる薬剤の使用は患者に様々な副作用をもたらす。外科手術に踏み切ることも多いが、侵襲的手法(invasive procedures)には常にリスクが付きまとい、回復不能な被害を残す場合もある。米国特許第6405079号も神経症などの処置法の不足を論じているが、結局は生涯に渡り体内に電極を埋め込むという侵襲的手法を提案するにとどまっている。米国特許第6277372号も神経変性疾患の治療法が広く欠乏していることを論じている。そして、これらの疾患は神経回路の欠陥であることに行き着き、豚の神経細胞を人間に移植することでこれら疾患を治療する方法を提案している。しかし、このような手法は非常に高度な医療技術を要求し、またその費用も莫大なものとなる。また、同特許で述べられているように、このような治療法において免疫抑制剤が投与される可能性が高い。さらに、異種由来の神経片を移植することを安全かつ許容できる治療法として認めるかどうかにはまだまだ議論の余地がある。
【0019】
本発明は、前述の現在利用できる治療法の問題点を克服し、神経系に影響を及ぼす疾病を治療するため、安全で自然な組成物を提供することを目的とする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
神経状態や神経疾患に対する現在利用可能な処置法は、治癒力を有していないことは既に述べた。最先端の研究の結果作り出された薬剤でさえ、治癒力に関しては不完全である。多くの場合外科手術が勧められるが、外科手術によって疾病が完全に治癒することはない。外科手術というのはある程度の成果を享受する一方で、脳外科手術に関しては安全性が完全ではないことを理解しておかなくてはならない。脳外科手術は回復不能な障害を引き起こし、患者の人生を破滅的なものにする危険性がある。
【0021】
そこで、本発明は、自然の組成物を提供するとともに、血管性の頭痛、神経疾患、及び神経変性疾患の治療法を提供することを目的とする。
【0022】
また、本発明は、安全に長期に渡って使用できる治療法を提供することをさらなる目的とする。
【0023】
また、本発明は、侵襲的でない治療法を提供することにより、患者の負担を軽減することをさらなる目的とする。
【0024】
また、本発明は、生産及び使用が容易であるな治療のための組成物及び方法を提供することをさらなる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明は、血管性頭痛や神経疾患、神経変性疾患を治療または緩和するための、植物の抽出物から成る組成物及び方法に関するものである。実施例においては、ワサビノキ(Moringa Oleifera)、コショウ(Piper Nigrum)、タバコ(Nicotiana Tabacum)、及び薬学的に許容できる植物由来の治療的に活性のある抽出物を含む組成物である。さらに、実施例では、本発明に係る組成物は、点眼など治療に必要な方法により対象に投与される。
【0026】
本発明によって治療できる神経疾患及び疾病には、偏頭痛、群発性頭痛、パーキンソン病、アルツハイマー病、三叉神経痛、緑内障、癲癇といった具体的な疾病が含まれる。本発明は、上記以外にも血管拡張、ニューロン活動の変化、神経変性、神経痛、神経伝達物質の濃度変化によって示される症状を治療する上で非常に有用である。
【0027】
本発明は、インドやその他各地で食料や香辛料として使われる自然の植物由来の原料を含む。タバコ(Nicotina Tabacum)を長期にわたり常用することによる発癌性はよく知られているが、実施例において示された方法でこの抽出物を少量使用することは治療的特性を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明は、植物抽出物よりなる組成物を血管性頭痛、神経疾患、神経変性疾患の治療又は緩和に用いる方法に関する。
【実施例】
【0029】
本実施例において、本発明に係る組成物はワサビノキ(モリンガ・オレイフェラ(Moringa Oleifera))、コショウ(Piper Nigrum)、タバコ(Nicotiana Tabacum)、及び薬学的に許容できる植物由来の治療的に活性のある抽出物より成る。
【0030】
ワサビノキ(モリンガ・オレイフェラ)は、英語ではドラムスティックツリー(drumstick tree)、ヒンドゥー語では「Sajhna」として知られ、時によりモリンガ・プテリゴスペルマ(Moringa Pterygosperma)と称されることもあり、14の種を有するワサビノキ科(Moringaceae)に属している。同科の中でもワサビノキは最も広く知られるもので、原産地はインドである。また、アフリカ、アラブ、アジアやその他の地域の国々においても土着の植物である。ワサビノキの成木は5から12mの高さで、幅1〜2cmの小葉を有する常緑又は落葉性複葉を有し、白色又はクリーム色の花をつける。果実(さや)は緑色で、120cmにまで成長する。
【0031】
ワサビノキの抽出物の抗菌活性について多くの研究が行われている。種子と果実は水の浄化に有用であることが示されている。また、ワサビノキの葉は非常に栄養価が高く、栄養補助食品として高い可能性を有している。
【0032】
コショウ(Piper Nigrum)は、英語ではブラックペッパー(black pepper)、ヒンドゥー語ではGol Mirchとして知られ、コショウ科(Piperaceae)に属している。コショウは熱帯蔓性常緑木本で、インド及び東南アジアで広く栽培されている。熟した果実は赤色である。果実は完全に熟する前に収穫され、天日干にされ、赤色が失われ萎んで黒くなる。コショウは調理用香辛料として広く用いられ、又伝統的にはアユルヴェーダ(インドの漢方薬)として喘息、慢性消化不良、大腸毒素(Colon Toxins)、肥満、副鼻腔のうっ血、間欠熱、末端冷え性、疝痛、コレラ、胃の不快感、下痢、痔、寄生虫病、咽頭炎の治療手段として使用されていた。
【0033】
タバコ(Nicotina Tabacum)は煙草(タバコ)として広く知られており、ナス科(Solanaceae)に属している。数あるタバコ属の中でも、タバコ(Nicotina Tabacum)は世界中で栽培され煙草の製造に使用される主要商業作物である。
【0034】
ワサビノキ、コショウ、タバコは、神経疾患を緩和するうえで、それぞれある程度は治療的な活性を有している。しかしながら、本発明の実施例に示する、これら三種の植物の抽出物からできた組成物は、前述の疾病や病状を治療する上で非常に有効であることが証明された。また、本発明で論じている植物と同属に属する様々な植物種が、本発明と類似した特性をもつ組成物を作ることに利用できることをここに記されねばならない。
【0035】
本発明の大きな優位点の一つに、組成物を準備することの容易さがある。様々な手法を用いて治療的に活性のある成分を植物より抽出することができる。非経口投与、人体医薬用の形態、又は長期保存を目的とした組成物の調整には、近代的方法を用いる必要に迫られる可能性があるが、古くからある植物処理法を効果的な手法として用いることができる。その手法のうちの一つを下記に示す。
【0036】
上記の組成物は、新鮮な又は乾燥された植物の一部分又は全体を用いて作ることができる。実施例では、新鮮なワサビノキの葉、乾燥されたコショウの実、乾燥されたタバコの葉を用いている。水は担体として用いられる。なお、所望の効果を得るために、原料の組み合わせは如何に変更しても構わない。以下に実施例における、各原料のおおよその量を示す。すなわち、ワサビノキ140g、コショウ1.5g、タバコ3.5g、水400mlとすることができる。
【0037】
不純物や異物を取り除き、十分に清潔で新鮮なワサビノキの葉を用意する。数時間、それを水に侵す(この過程は任意のものである)。葉を水より取り出し、粗いペースト状になるまで機械的に葉をすり潰す。乾燥したコショウの実と乾燥したタバコの葉を上記のペーストにくわえ、なめらかなペーストとなるまでさらにこれをすり潰す。材料をペースト状にするのを容易にするため、水を加えても構わない。先にワサビノキの葉を侵した水又は新鮮な水を用いて低温で煮て、ペーストの全体量を約100mlまで減少させる。得られた液体が冷やす。適当なフィルター手法を用いて、この液体から特定の物質を分離する。
【0038】
上記の又はその他の手段によって得られた組成物は、対象となる人間や動物に経口又は非経口で投与することができる。目薬として使用することができ、また、経口溶液、飲料、カプセル剤、又はシロップ剤として提供することができる。また、静脈注射、筋肉注射、皮下注射に用いる注射液としても用いることができる。軟膏、ローション、スプレー等として製造することで、抽出物を局部的に使用することもできる。
【0039】
点眼及び注射により投与された上記組成物の効果は、様々な神経症(neurological affliction)に苦しむ人間及び動物の被験体において調査された。その結果は以下の(1)〜(8)のようにまとめられる。
(1)被験体は、組成物の適用後、偏頭痛を引き起こす要因とされる極端な外的環境の変化にさらされた。極端な気候の変化、蛍光照明、強烈な臭いなどのは、偏頭痛の症状を引き起こす要因とはならなかった。
(2)偏頭痛被験体の磁気映像共鳴法(MRI)試験により、組成物を適用後、脳内の血管拡張が減少することが示された。
(3)本発明の組成物は、トリプタンなどのセロトニン作用薬を模倣することが確認された。
(4)上記の組成物を適用後、少数の被験体に対してポジトロ放出断層撮影(PET)が行われた。その結果、大脳皮質表面及び頭頂部及び側頭葉の領域で脳血流量(CBF)が減少することが確認された。これら領域における高い脳血流量は、頭痛やアルツハイマー病の症状として広く知られている。
(5)上記の組成物を適用された被験体は、パーキンソン病や偏頭痛の重要な因子である神経細胞の活性に大きな変化が現れることが示された。
(6)アルツハイマー病や緑内障といった神経変性疾患を引き起こす要因の中で、最も一般的なものは神経細胞死である。上記の組成物は、特定の疾病に関連した領域において細胞死を減少させることが知られており、したがって治療的効果を有する。
(7)鬱病は神経生理学的メカニズムに関係する心理状態であると知られている。上記の組成物は、このような疾病症状に対しても有効な薬剤として利用できる。
(8)上記の組成物の適用により、顔面の非感受性、痺れを減少し、発作的な激しい痛み、顎の筋肉の虚弱といった三叉神経痛の特徴的症状が減少する。
【0040】
様々な実験を通じて、本発明の手法が、様々な神経系の疾病に対する効果的な治療法であると証明された。本発明は安全かつ容易な手法であるだけでなく、高額な薬剤、外科手術、又はその両方を伴う現在の処置法に代わる有効な代替案として提供されるものである。さらに重要なことに、実施例に示された組成物は、現在使用されている薬剤により引き起こされる副作用を全く生じない。要約すれば、この組成物は様々な神経症の治療に多大な効果を発するものであり、その治療的作用は以下の(1)〜(5)ように分類できる。
(1)血管拡張を減少させることができる。
(2)血管性頭痛の場合、セロトニン作用薬に類似した作用を発揮することができる。
(3)神経変性疾患の場合、細胞死を減少させることができる。
(4)神経疾患の特徴である、変異した神経細胞活動を、ほぼ正常にまで回復させることができる。
(5)いくつかの神経疾患において多く見られる鬱を減少させることができる。
【0041】
本発明の説明には多くの特性が含まれる。しかしながら、これらが本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の実施形態を例証しているに過ぎない。本発明は、本発明の請求の範囲及び特性から逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。例えば、ワサビノキは他のワサビノキ科の種(Moringa Concanensis Nimmoなど)と置き換えることが可能であるし、又は、実施例において示した量は当業者によって様々に変更することが可能であるが、行き着く先は本発明と類似した作用をもつ組成物である。
【0042】
したがって、本発明の範囲は、記述された実施例ではなく、後述の請求の範囲及びその法的価値により決定されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療的活性を示す量のワサビノキ属の植物材料(具体的には、モリンガ・オレイフェラが好適であるがこれに限定されるものではない)、又は、
治療的活性を示す量の、上記ワサビノキ属の植物材料と、薬学的に許容できる担体との抽出物が含まれていることを特徴とする植物性組成物。
【請求項2】
さらに、治療的活性を示す量の、コショウ属の植物材料(具体的には、コショウが好適であるがこれに限定されるものではない)、又は当該コショウ属の植物材料の抽出物が含まれていることを特徴とする請求項1に記載の植物性組成物。
【請求項3】
さらに、治療的活性を示す量の、タバコ属の植物材料(具体的には、タバコが好適であるがこれに限定されるものではない)、又は当該タバコ属の植物材料の抽出物が含まれていることを特徴とする請求項1に記載の植物性組成物。
【請求項4】
上記植物材料又は上記抽出物は、当該植物の全体又は一部分から得られたものであることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の植物性組成物。
【請求項5】
上記植物材料又は上記抽出物は、新鮮な植物又は乾燥した植物から得られたものであることを特徴とする請求項4に記載の植物性組成物。
【請求項6】
請求項1から3の何れか1項に記載の植物性組成物を、治療を必要とする人に対して、治療に有効な量投与することを特徴とする血管性頭痛と、神経疾患と、神経変性疾患とを治療又は緩和する方法。
【請求項7】
上記の組成物は、経口投与できる又は非経口投与できるように形成されることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
上記の組成物は、錠剤、カプセル、補助食品、液体、又は炭酸水の形態として形成されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
上記の組成物は、筋肉内投与、静脈内投与、又は皮下投与できるように形成されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項10】
上記の組成物は、目薬、又は眼への軟膏の形態として形成されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項11】
上記の組成物は、部分的に投与できる軟膏、ローション、オイル、クリーム、又はスプレーの形態として形成されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項12】
上記の組成物は、鼻への拡散噴射、又は吸入用スプレーの形態として形成されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項13】
上記血管性頭痛と、神経疾患と、神経変性疾患とは、偏頭痛と、群発性頭痛と、アルツハイマー病と、パーキンソン病と、三叉神経痛と、緑内障と、癲癇と、慢性鬱病と、神経変性により特徴付けられる疾病と、変異した神経細胞活動により特徴付けられる疾病と、脳内の血管拡張により特徴付けられる症状と、鬱と、痴呆とから包括的に選択されるものであることを特徴とする請求項6に記載の方法。

【公表番号】特表2006−508902(P2006−508902A)
【公表日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−517516(P2004−517516)
【出願日】平成15年4月24日(2003.4.24)
【国際出願番号】PCT/US2003/012593
【国際公開番号】WO2004/002507
【国際公開日】平成16年1月8日(2004.1.8)
【出願人】(504472798)
【出願人】(504472802)
【Fターム(参考)】