説明

血管拡張剤

【課題】新たな血管拡張剤を提供すること。
【解決手段】オスベキン酸またはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含有する血管拡張剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な血管拡張剤に関する。具体的には、本発明は、血管を拡張させる働きを示す新規な有効成分に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、メタボ検診として政府管掌による予防医療が盛んにおこなわれるようになってきている。そして、薬物治療の対象となるメタボリックシンドロームとして、肥満症、高血圧、高脂血症、糖尿病などの生活習慣病が挙げられている。
これら生活習慣病に対しては薬物治療が行われており、高血圧の治療薬として知られる血管拡張薬には、ヒドララジン、ミノキシジル、および硝酸イソソルビドなどの合成医薬品が臨床応用されている。
【0003】
特許文献1には、ソバ属植物に由来する血管拡張作用を有する飲食品用非ルチン分画組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4211995号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、臨床応用されている血管拡張薬は、SLE様症状、うっ血性心不全、狭心症発作誘発等の副作用を奏することが知られており、また、これら血管拡張薬の中には、劇薬指定されているものも存在するところ、高血圧の予防・治療には永続的な服薬が必要であるため、これらの血管拡張薬による高血圧の予防・治療には、安全性の点で問題がある。
したがって、血管拡張作用を示すが、安全性の高い物質が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意検討を重ねた結果、オスベキン酸を有効成分とする新規な血管拡張剤を見出し、本発明を完成した。
【0007】
本発明は、以下のとおりである。
[1]
オスベキン酸またはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含有する血管拡張剤。
[2]
前記オスベキン酸がオスベキン酸ダイマーである、[1]に記載の血管拡張剤。
[3]
前記オスベキン酸がソバ属植物由来である、[1]又は[2]に記載の血管拡張剤。
[4]
前記ソバ属植物がソバまたはダッタンソバである、[3]に記載の血管拡張剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、新たな血管拡張剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】逆相HPLCのクロマトグラムを示す。
【図2】画分X(オスベキン酸)および5−ヒドロキシメチル−2−フランカルボン酸の血管張力測定の結果を示す。
【図3】画分Xの質量分析の結果を示す。
【図4】オスベキン酸のモノマーが生成することを示す図である。
【図5】4℃、2時間静置後における画分Xの逆相HPLCの測定結果を示す。
【図6】90℃、90分静置後における画分Xの逆相HPLCの測定結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0011】
本発明の血管拡張剤は、オスベキン酸(Osbeckic acid)を有効成分として含有するものである。
本発明において、オスベキン酸とは、下記構造を有する化合物である。
【化1】

オスベキン酸は、下記構造で示されるオスベキン酸ダイマーであってもよい。構造中、破線部分は、水素結合を意味する。
【化2】

【0012】
本発明におけるオスベキン酸として、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、カルシウムなどのアルカリ土類金属との塩であってもよく、また、アンモニウム塩等の4級アンモニウム塩であってもよい。
オスベキン酸の塩として、その薬学的に許容可能な塩であってもよく、生体内でオスベキン酸を生成する化合物であってもよい。
生体内でオスベキン酸を生成する誘導体としては、水酸基やカルボン酸基がエステル基などにより置換され、生体内や製剤調整時において、該エステル基などの置換基が切り離されるプロドラッグなどが挙げられる。
エステル基としては、プロドラッグとして用いられる公知の基であれば特に限定されず、例えば、アセチル基など、水溶性を付与するために用いられる、リン酸エステル、硫酸エステルなどが挙げられる。
【0013】
オスベキン酸としては、オスベキン酸を含んでいれば特に限定されるものではないが、合成品であってもよく、天然素材由来のオスベキン酸、例えば、天然素材から単離されるオスベキン酸であってもよい。
【0014】
本発明において、血管拡張剤とは、血管拡張作用を示すことを意味する。血管拡張作用とは、血管を拡張させる働きを示し、血液循環機能が関与する症状の軽減及び/又は緩和を促す作用をいう。血管拡張剤は、血圧低下、肩こり、頭痛、脳循環、お血の軽減及び/又は緩和(治療または予防)に有効であり、血圧低下作用により、高血圧等の予防・治療にも用いることができる。
【0015】
本発明の血管拡張剤として用いられるオスベキン酸は、オスベキン酸を含む天然素材であれば特に限定されるものではないが、ソバ属植物由来であることが一例として挙げることができる。
ソバは食品として供されているタデ科に属する1年草の草木植物であり、ソバ属植物として、普通種(Fagopyrum esculentum)やダッタン種(Fagopyrum tataricum)等が挙げられる。
ソバ属植物として使用可能な部位としては、葉部、茎部、花部、実等が挙げられるが、実が好適な部位として挙げられる。
【0016】
オスベキン酸が、ソバ属植物由来成分である場合、以下の方法によりソバ属植物から抽出することができる。
ソバ属植物から抽出する際に用いる浸出媒体としては、親水性(水に可溶)溶媒を用いることができる。親水性溶媒は、単独で用いてもよく、混合溶媒の形態で用いてもよい。混合溶媒としては、例えば、水と親水性溶剤との混合溶媒や複数種の親水性溶剤の混合物であってもよく、混合溶媒として親水性であるならば、親水性溶媒以外の溶媒を含んでいてもよい。
親水性溶剤としては、例えば、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のモノアルコール類;エチレングリコール、グリセリン等のジオール及びポリオール類;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)等の低級脂肪族ケトン類;アセトニトリル等の低級脂肪族ニトリル;ジメチルホルムアミド(DMF);ジメチルスルホキシド(DMSO)等の極性有機溶剤が挙げられるが、摂食に用いる旨を考慮する場合は食品衛生法等、各用途に定められた範囲内での溶剤を用いることが好適であり、好ましくは水である。
浸出媒体の浸出温度を上げることによってオスベキン酸の浸出効率を上げることができ、例えば、水を用いる場合、約50〜100℃、好ましくは90〜100℃の熱水によって良好に浸出することができる。
浸出媒体による浸出時間は浸出温度を考慮しつつ適した時間を選択すればよいが、例えば、水を用いる場合、90〜100℃の場合は1〜60分、好ましくは5〜30分である。複数の異なる親水性溶媒又は同じ親水性溶媒を用いて繰り返し浸出操作を行ってもよく、例えば、水又は熱水で浸出した後の残渣を更にアルコール等で浸出し、両浸出物を併せて浸出液とすることができる。使用する浸出溶媒の割合がソバ属植物の乾燥重量に対して5〜100倍程度となるようにすることによって好適にオスベキン酸を抽出することができる。
【0017】
ソバ属植物として実を用いた場合には、必要に応じて、目の粗いろ紙や篩などで濾過して実を取り除き、必要に応じさらに遠心分離にかけて微粉を濾過により除去する。得られた濾過液は、そのまま又は濃縮して、不要物質を除去するための吸着処理に供される。吸着処理は、常法に従って行うことができ、例えば活性炭、シリカゲルまたは多孔質セラミンなどによる吸着処理;スチレン系のデュオライトS−861(商標、Duolite,U.S.A.ダイヤモンド・シャムロック社製、以下同じ)、デュオライトS−862、デュオライトS−863、およびデュオライトS−866;芳香族系(架橋スチレン系)のセパビーズSP70(商標、三菱化学(株)製、以下同じ)、セパビーズSP700、およびセパビーズSP825;ダイヤイオンHP10(商標、三菱化学(株)製、以下同じ)、ダイヤイオンHP20、ダイヤイオンHP21、ダイヤイオンHP40、およびダイヤイオンHP50;アンバーライトXAD−4(商標、オルガノ製、以下同じ)、アンバーライトXAD−7、ならびにアンバーライトXAD−2000などの合成吸着樹脂を用いた吸着処理を挙げることができるが、当該処理によって、親水性溶媒による浸出液からルチン及び低極性成分などを吸着除去させることが可能な吸着処理媒体が使用されることが好ましい。
【0018】
吸着処理後の溶出液を通常の手段により濃縮、凍結乾燥して、粗精製物を得ることができる。ここで得られる粗精製物は、緩やかな血管拡張作用を有する。吸着処理後の溶出液としては、上記吸着処理を行って、不純物を吸着するために用いた吸着処理媒体を濾過などにより除去した溶液を溶出液として用いてもよく、吸着処理媒体を充填したカラムからの溶出液を用いてもよい。
【0019】
ソバ属植物からの抽出工程における分画は、例えば、以下の手順に従って行うことができる。
粗精製物に、塩酸、酢酸などの酸性水溶液を添加して溶解又は懸濁させ、次いで酢酸エチルや2−ブタノン等の水とは混和しない極性有機溶媒を加えて液液分配を行う。得られた有機層に、炭酸水素ナトリウム水溶液などのアルカリ性水溶液を加えて液液分配を行う。得られた水層に塩酸、酢酸などの酸性水溶液を添加して、次いで極性有機溶媒を加えて液液分配を行う。得られた有機層の有機溶媒を除去して酸性画分を得る。
次いで、得られた酸性画分から、従来公知の精製方法により、オスベキン酸画分を精製する。
【0020】
本発明において、オスベキン酸画分を血管拡張剤として用いる場合、他の結合剤などと組み合わせていわゆる医薬組成物として使用することができる。
また、医薬品とする場合は、適当な賦形剤、崩壊剤、結合剤と組み合わせて経口固形剤として、イオン交換水又は生理的食塩水と組み合わせて経口液剤又は注射剤として使用できる。
【0021】
本発明で用いられるオスベキン酸は、ソバ属植物由来成分である場合、安全性が高く、ソバ属植物、好ましくは、ソバ又はダッタンソバの抽出物としてのオスベキン酸を用いることができる。
血管拡張剤としてのオスベキン酸は、市販品を用いてもよく、従来公知の方法によりソバ属植物原料から抽出したものを用いてもよい。
【0022】
本発明の血管拡張剤は、医薬品として用いることができる。
【0023】
本発明において、血管拡張剤は、医薬品として、薬学的に許容可能な賦形剤を添加して、医薬製剤として用いることができる。
【0024】
医薬製剤としては、粉末、顆粒、錠剤等の公知の剤型に製剤化して用いることができ、液体、ペースト等の液剤として用いることもできる。
医薬製剤としては、錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、チュアブル、トローチ等の固形製剤、液剤、シロップ剤、水剤、懸濁剤、乳剤等液剤などの経口剤、軟膏剤、ゲル剤、クリーム剤、貼付剤等の外用剤、注射剤、舌下剤、吸入剤、点眼剤、坐剤などの剤型として用いることができる。
【0025】
医薬製剤は、動物、中でも哺乳類において、血管拡張剤として有用であり、動物、中でも哺乳類に投与することができる。
哺乳類としては、ヒトや、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ等の家畜動物などが挙げられ、ヒトであることが好ましい。
【0026】
本発明の血管拡張剤は、オスベキン酸の血管拡張作用を発揮させる摂取量又は投与量を達成できるように、医薬品として、他の添加物と適宜混合した血管拡張作用を有する組成物とすることができる。
オスベキン酸の投与量は、用途に応じて適宜調整することができるが、好ましくは1回1〜10000mgであり、より好ましくは1回5〜1000mg、さらに好ましくは1回10〜500mgである。
投与回数は、特に限定されないが、好ましくは1日1〜3回であり、必要に応じて投与回数を増減してもよい。
【0027】
本発明のオスベキン酸を含有する血管拡張剤は、血管拡張作用を示し、血管拡張作用により、血液循環機能が関与する症状の軽減及び/又は緩和を促すものであり、血圧低下、肩こり、頭痛、脳循環、お血の軽減及び/又は緩和(治療または予防)に有効であり、血圧低下作用により、高血圧等の予防・治療にも用いることができる。また、本発明の血管拡張剤は、オスベキン酸を有効成分とするので、安全性の高いものである。
【実施例】
【0028】
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0029】
実施例1
[ダッタンソバ酸性画分の調製]
市販ダッタンソバ茶原料(日穀製粉製)1kgを、12Lの熱水(水温95〜100℃)で20分間浸出した後、濾過して実を取り除いた。得られた母液を遠心分離(3000rpm、10分)して、得られた上清液を2号ろ紙(東洋濾紙社製)で濾過して濾過液(約8L)を得た。濾過液にSP70樹脂(三菱化学社製、400mL)を投入し、2時間攪拌後、濾過により樹脂を除去し、非吸着画分(TBSP)として得られた溶出液を凍結乾燥して粉末状の粗精製物61gを得た。該粗精製物5gに50mM塩酸を25mL添加して溶解した後、等量の酢酸エチルを加えて酢酸エチル/水で液液分配を行った。得られた有機層に5%炭酸水素ナトリウム水溶液を50mL添加して液液分配した後、水層に5M塩酸を添加してpH3とした後、酢酸エチル100mL添加して酢酸エチル/水で液液分配した。得られた有機層の溶媒を留去して、酸性画分(TBSP−A)を得た。
【0030】
[逆相HPLCによるオスベキン酸の単離]
得られた酸性画分を、分取用のカラムCOSMOSIL 5C18−AR−II(ナカライテスク社製、φ10mm×250mm)を用いて、0〜20%アセトニトリル/0.1%TFA溶液によりグラジエントをかけて溶出し、ピーク毎に画分として分取し、乾固して、保持時間22.0分のピークより精製画分X、また、保持時間34.0分のピークより5−ヒドロキシメチル−2−フランカルボン酸を得た。逆相HPLCにおけるクロマトグラムを図1に示す。
逆相HPLC
ポンプ:LC−10AD(島津製作所社製)
デガッサー:DGU−12A
グラジエントミキサー:FCV−11AL
カラムオーブン:CTO−10A(島津製作所社製)
検出器:UV−2075(JASCO社製)
分析条件
流速:2.0mL/min
インジェクションボリューム:250μL(ループインジェクション)
検出波長:260nm
【0031】
[血管張力測定]
8〜10週齢のSDラットの胸部大動脈を2〜3mmに切断し、リン酸緩衝液4.5mLを満たした微小マグヌス実験装置(MTOB−1Z、ラボサポート社製)に付し、2gの張力を負荷した。平衡化して張力のベースラインが安定した後、収縮剤として300mM 塩化カリウム(KCl)または1.0 μMフェニレフリン(phe)を0.5mL添加した(終濃度KCl 30mM、phe 0.1μM)。張力が上昇して一定となった後、画分Xの30mM 塩化カリウム溶液を低濃度から追加的に添加した。X画分の添加による張力の減少量を、X画分を添加していない場合を100とした時の百分率、すなわち弛緩率で示した。結果を表1および図2に示す。また、画分Xと同様に、ダッタンソバの酸性画分から得られた5−ヒドロキシメチル−2−フランカルボン酸画分についても、血管張力を測定した。
【0032】
【表1】

【0033】
上記実験結果から、画分XのEC50は、0.25mg/mLであることが分かった。
【0034】
[DPPH(Diphenylpicrylhydrazyl)を用いたラジカル捕捉能の測定]
画分Xを、適当な濃度に溶解させたエタノール溶液0.4mLに、0.1M MESバッファー(pH6.8)1.6mLを添加し、次いで、0.4mM DPPH溶液1.2mLを添加した。得られた混合液を十分に混和させた。
DPPH溶液の添加1分後をスタート時点として、吸光度(517nm)を経時的に測定し、DPPHラジカル減少速度(単位U=mmol/mL・min)を求め、DPPHラジカル捕捉活性(U/g)を求めたが、活性は認められなかった。
【0035】
上記実験により、画分Xが血管弛緩作用を示すことがわかった。一方、抗酸化活性は認められなかった。
【0036】
分取した画分Xを、ESI−MS質量分析、H−NMR、及び13C−NMR測定を行った。画分Xの質量分析測定結果を図3に示す。
【0037】
なお、質量分析には、イオントラップ型質量分析装置esquire 6000−KY(BRUKER DALTONICS社製)を用いた。イオン化法は、エレクトロスプレーイオン化法(ESI法)により、検出法はネガティブイオンモードで行った。溶媒として、メタノール/0.1%ギ酸(MERCK社製)を用いた。
H−NMR及び13C−NMR測定には、JNM−A400 FT NMR SYSTEM(JEOL社製)、Superconducting Magnet 400MHz(JEOL社製)を用い、DO(和光純薬工業社製)中測定した。内部標準として、2−トリメチルシリル−1−プロパンスルホン酸ナトリウム(DSS、和光純薬工業社製)を用いた。
【0038】
画分XのH−NMR及び13C−NMR測定結果と、オスベキン酸のNMRデータ文献値(F. W. Lichtenthaler et al., Tetrahedron Asymmetry、14、3973−3986(2003).)との比較を表2に示す。以上の機器分析の測定結果から、画分Xをオスベキン酸とした。
【0039】
【表2】

【0040】
質量分析の結果では、オスベキン酸の2倍の分子量にピークが観察されたことから、当該画分の詳細を調べるため、画分Xをジメチルスルホキシドに溶解し、逆相HPLCピークパターンを確認した。測定結果を図4に示す。図4において、溶媒種によりピークパターンが異なる様子が観察されたことから、水溶液中でダイマー構造を形成していると推定した。
逆相HPLC
ポンプ:LC−10AD(島津製作所社製)
デガッサー:DGU−12A(島津製作所社製)
グラジエントミキサー:FCV−11AL(島津製作所社製)
カラムオーブン:CTO−10A(島津製作所社製)
検出器:UV−2075(JASCO社製)
カラム:COSMOSIL 5C18−AR−II(ナカライテスク社製、φ10mm×250mm)
分析条件
流速:2.0mL/min
イソクラティック溶出:0.1% TFA、60min
検出波長:260nm
【0041】
なお、画分X以外に得られた保持時間34.0分の成分(5−ヒドロキシメチル−2−フランカルボン酸)の構造は、オスベキン酸と同様に機器分析結果の解析により決定した。なお、5−ヒドロキシメチル−2−フランカルボン酸はオスベキン酸と類似の構造を有しているが、図2に示すように血管弛緩活性が弱い。
【0042】
実施例2
[安定性試験]
実施例1と同様にして分取した画分Xを0.1% トリフルオロ酢酸溶液または超純水に溶解した。
画分X(evaporated)、0.1%トリフルオロ酢酸溶液に画分Xを溶解したもの(0.1%TFA)、超純水に画分Xを溶解したもの(milliQ)を各々、4℃で2時間または90℃で90分間苛酷条件とした後、逆相HPLCを測定して、画分Xの安定性を確認した。測定結果を図5および図6に示す。
画分X、すなわちオスベキン酸は、上記条件下において安定に存在することから、安定性の高い血管拡張剤として用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の血管拡張剤は、オスベキン酸の血管拡張作用により、医薬品及び食品用途における産業上の利用可能性を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オスベキン酸またはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含有する血管拡張剤。
【請求項2】
前記オスベキン酸がオスベキン酸ダイマーである、請求項1に記載の血管拡張剤。
【請求項3】
前記オスベキン酸がソバ属植物由来である、請求項1又は2に記載の血管拡張剤。
【請求項4】
前記ソバ属植物がソバまたはダッタンソバである、請求項3に記載の血管拡張剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−219408(P2011−219408A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−89646(P2010−89646)
【出願日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(591014972)株式会社 伊藤園 (213)
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【Fターム(参考)】