説明

血管新生性のヘパリン結合エピトープ、ペプチド両親媒性物質、自己集合組成物、および関連する使用法

硫酸化グリコサミノグリカンのような、しかしそれに限定されない硫酸化多糖を含むペプチド両親媒性物質および関連組成物、ならびに、血管新生増殖因子の封入および/または制御された放出に関連する使用法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2005年3月4日に提出された仮出願第60/658,503号の優先権恩典を主張し、その全体は参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
米国政府は、Northwestern UniversityへのNational Institutes of Healthからの助成金第R01 EB003806-01号、およびU.S. Army Medical Research and Material Command - Telemedicine and Advanced Technology Research Centerの奨学金第W81XWH-05-1-0381(OSR奨学金第32199号)からの契約により、本発明に一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
現存する血管から新たな血管を形成する過程である血管新生は、通常の創傷治癒に不可欠であり、かつ、体によって適切に調節されている。不適切な血管新生は、慢性皮膚創傷および心筋梗塞を含む、様々な疾患条件をもたらし得る。血管新生は、組織工学にとってますます重要になるであろう。なぜなら、移植された骨格(scaffold)は、自己細胞を送達しようと、または宿主細胞の浸潤をリクルート(recruit)しようと、生組織の形成を支持するために血液供給を有することが必要だからである。このゴールに向かって、関心事は、適切な修飾で、組織の治癒および組織の増殖双方を促進する血管化(vascularizing)骨格として使用され得るような、設計された化学的および構造的融通性を有する、血管新生を能動的に促進し得る生体適合性マトリックスの開発である。更に、そのようなマトリックスはまた、心筋梗塞の後、および慢性皮膚創傷において見られるような虚血性創傷の治癒を促進するのに有用であろう。そのような系の開発および履行は、当技術分野において継続している関心事である。しかしながら、以前に採られた様々なアプローチは、引き続きの改善の必要を示唆し、かつ、更なる努力および革新に向けて起動力を提供する。
【発明の開示】
【0004】
発明の概要
前記を考慮して、両親媒性ペプチド化合物、関連するヘパリン結合組成物、および/または、一つまたは複数の血管新生方法におけるそれらの使用の範囲を提供し、それによって上記で概観されたものを含む先行技術の様々な欠陥および短所を克服することが、本発明の目的である。本発明の一つまたは複数の局面は、一定の目標を達成し得、一方、一つまたは複数の他の局面は、一定の他の目標を達成し得ることが、当業者によって理解されるであろう。各目標は、そのすべての点において、本発明のあらゆる局面に均等にあてはまらなくてもよい。そのように、以下の目的は、本発明の任意の一つの局面に関しては、代替案において見られ得る。
【0005】
一つまたは複数の硫酸化グリコサミノグリカン成分と相互作用する種々の構造的に多様な両親媒性ペプチド化合物を提供することが、本発明の目的であり得、ここで、そのような相互作用が、そのような成分の血管新生増殖因子に対する親和性に関して有利に先行技術と比較される。
【0006】
一つまたは複数の前述の組成物に関連して、一つまたは複数の血管新生増殖因子の活性化、結合、送達、および/または放出を提供することが、本発明のもう一つの目的であり得る。
【0007】
組織の治癒および/または増殖を促進するために、血管新生を誘導する、一つまたは複数の方法、およびそれに関連して有用な組成物を提供することが、本発明のもう一つの目的であり得る。
【0008】
本発明の他の目的、特徴、恩典、および利点は、本概要、および以下の一定の態様の説明から明白であろうし、かつ、様々なペプチド両親媒性物質、硫酸化多糖結合組成物、および/または血管新生の促進におけるそれらの使用の知識を有する同業者には、直ちに明白であろう。そのような目的、特徴、恩典、および利点は、添付の実施例、データ、図、およびそれらから引き出されるすべての妥当な推論を、単独で、または本明細書に組み入れられる参照文献の考慮とともに考えるとき、上記から明白であろう。
【0009】
部分的に、本発明は、疎水性成分およびペプチド成分を含む両親媒性ペプチド化合物に方向付けられ得る。疎水性成分は、ペプチド成分のC末端またはN末端いずれかで、その近くで、またはその辺りで、ペプチド成分と共役し得る。ペプチド成分は、硫酸化多糖との非共有結合性の相互作用または結合が可能である、少なくとも一つの残基を含み得る。非限定的に、そのような残基は、ヘパリン硫酸、ヘパラン硫酸、およびそれらの組み合わせを含むがそれらに限定されない硫酸化グリコサミノグリカン成分と相互作用し得る、または、それに対する非共有結合性の結合親和性を有し得る。本明細書における他の場所で例証されるように、および、本明細書の下文に組み入れられる一つまたは複数の参照文献においてより完全に説明されるように、そのような化合物の疎水性成分は、約C4または約C6〜約C22またはより高い範囲に渡るような部分を含み得る。
【0010】
とにかく、相互作用する残基は、アラニン、グリシン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、プロリン、バリン、およびそれらの組み合わせより選択され得る残基のような、Xと称され得る少なくとも一つの疎水性残基を含み得る。同様に、残基Xの同一性に関して非限定的に、ペプチド成分は、アルギニン、ヒスチジン、およびリジンを含むがそれらに限定されない、Bと称され得る少なくとも一つの塩基性残基を含み得る。一定の態様において、相互作用する残基は、XBBBXXBX、XXXXBBBB、XXXXBBB、XXXXBB、およびXXXXBより選択されるがそれらに限定されない配列を含み得、ここで、XおよびBが、前述の疎水性および塩基性残基の任意よりそれぞれ独立して選択され得る。例えば、そのような化合物のペプチド成分は、LRKKLGKAおよびLLGARKKKより選択される配列を含む残基を含み得る。とにかく、ペプチド成分はまた、下記で説明される、または組み入れられる参照文献の一つまたは複数においてより完全に議論される種類の、一つまたは複数の生理活性エピトープ配列を含み得る。一定の他の態様において、そのような生理活性エピトープを伴って、または伴わず、かつ、相互作用する残基配列に関して非限定的に、ペプチド成分のC末端は、アミドまたはカルボキシル部分のいずれかを含み得る。
【0011】
部分的に、本発明はまた、硫酸化多糖、および、上記で説明された種類の一つまたは複数の両親媒性ペプチド化合物を含む組成物に方向付けられ得る。そのような硫酸化多糖成分の両親媒性ペプチド化合物との非共有結合性の相互作用は、適切な媒質において、ミセル配置を誘導し得る。例えば、一つまたは複数の前述のペプチド成分のヒドロゲルは、硫酸化グリコサミノグリカンとの接触またはその組み入れによって、水性媒質において誘導され得る。一定の他の態様において、下記に例証されるように、そのような組成物はまた、血管新生増殖因子を含み得る。そのような増殖因子は、理解されるであろうように当業者によって知られたまたは決定されたもの、現今公知のものから選択され得る典型的な非限定的な例、および、後にそうであると決定されてもよいように、VEGFおよびFGF-2、およびそれらの組み合わせと称されるものを含むがそれらに限定されない、ヘパリン結合またはヘパラン結合増殖因子を含む。
【0012】
部分的に、本発明はまた、血管新生を誘導する方法に方向付けられ得る。そのような方法は、順序および経過に関して非限定的に、以下の段階を含み得る:上記で説明された種類の一つまたは複数の両親媒性ペプチド化合物を提供する段階;それに硫酸化グリコサミノグリカンを組み入れる段階;および、結果として生じる組成物を細胞培地および/または血管新生増殖因子と接触させる段階。細胞培地との接触は、少なくとも部分的に血管新生に十分である時間、ならびに、組成物および/または増殖因子の量においてであり得る。
【0013】
そのような両親媒性化合物、または結果として生じる組成物のペプチド成分は、XBBBXXBX、XXXXBBBB、XXXXBBB、XXXXBB、およびXXXXBより選択される配列を含む残基を含み得、ここで、Xが、アラニン、グリシン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、プロリン、およびバリンより独立して選択され得る。同様に、残基Xの同一性に関して非限定的に、残基Bは、アルギニン、ヒスチジン、およびリジンより独立して選択され得る。配列にかかわらず、そのような残基は、ヘパリン硫酸、ヘパラン硫酸、およびそれらの組み合わせのような、しかしそれらに限定されない、公知の硫酸化グリコサミノグリカン成分の範囲の任意の一つまたは複数と相互作用し得る。本明細書における他の場所で例証されるように、そのようなグリコサミノグリカン成分の組み入れは、結果として生じる組成物にミセル配置を提供するために、ペプチド化合物のゲル化を誘導するために使用され得る。従って、そのような組み入れ、および結果として生じるゲル化は、細胞培地との接触に先立って実施され得る。代替案において、両親媒性ペプチド化合物は、細胞培地に導入され得る、またはそれと接触され得る。その後、グリコサミノグリカン成分の組み入れが、細胞培地において、その上で、またはその中で、インサイチューゲル化を誘導し得る。
【0014】
部分的に、本発明はまた、血管新生増殖因子を活性化するために両親媒性ペプチド組成物を使用する方法に方向付けられ得る。そのような方法は、インビトロ、インビボにおいて血管新生を誘導するために本明細書の他の場所において例証されるように、または、そのような増殖因子の活性化の表示として当業者によって別の方法で認識されるであろうように、以下の段階を含み得る:上記で説明された種類の両親媒性ペプチド‐硫酸化多糖組成物を提供する段階;および、そのような組成物を血管新生増殖因子と相互作用させる段階。
【0015】
一定の態様において、そのような相互作用は、組成物と細胞培地との接触の前または後のいずれかに、そのような組成物への一つまたは複数の増殖因子の導入を含み得る。そのような方法論の一定の他のインビボの態様において、相互作用は、細胞培地について、外因性の増殖因子が実質的に存在しないことが可能である。下記で例証されるように、そのような態様の典型であるインビボ血管新生は、細胞接触の後、血管新生増殖因子の導入または添加無しで観察され得る。従って、本方法論の様々な態様が、血管新生増殖因子を活性化し、血管新生を誘導または促進し、および、哺乳動物虚血性組織を処置するために使用され得る。
【0016】
一定の態様の詳細な説明
本発明の一定の態様を例証するとき、一つまたは複数のペプチド両親媒性物質(PA)化合物が、自己集合する血管新生性骨格を産生するための化学的プラットホームとして使用され得る。そのようなペプチド両親媒性物質は、水性溶液において自己集合を誘導してナノファイバーになるように、親水性ペプチド頭部群および疎水性脂肪酸尾部を含み得る。例えば、一定の態様に適用可能であり得るように、ゲルまたはヒドロゲルネットワークが、pHまたはイオン強度における適切な変化の利用を通して作製され得る。全体として参照により本明細書に組み入れられる、Hartgerink, J. D., E. Beniash and S. I. Stupp; "Self-assembly and mineralization of peptide-amphiphile nanofibers." Science 294, (2001) 1684-1688を参照されたい。
【0017】
ペプチド配列の変更は、結果として生じるナノファイバーに独特の生物学的機能性を与えるために使用され得る。例えば、細胞外マトリックスにおいて通常見出されるヘパラン硫酸様グリコサミノグリカン(HSPG)と呼ばれる関連するグリコサミノグリカンの群の一部であるヘパリンが、血管新生において役割を果たすと信じられているため、ヘパリン結合頭部群を有するペプチド両親媒性物質が使用され得る。HSPGは、ヘパリン硫酸およびその近似した構造上の類似体であるヘパラン硫酸を含む硫酸化グリコサミノグリカンを含む。HSPGは、多くの血管新生増殖因子、特に、血管内皮増殖因子(VEGF)および繊維芽細胞増殖因子-2(FGF-2)に結合し、かつ活性化する。例えば、それぞれが全体として本明細書に組み入れられる、以下を参照されたい。Keyt, B. A., L. T. Berleau, H. V. Nguyen, H. Chen, H. Heinsohn, R. Vandlen and N. Ferrara; "The carboxyl-terminal domain (111-165) of vascular endothelial growth factor is critical for its mitogenic potency." Journal of Biological Chemistry 271, (1996) 7788-7795. Herr, A. B., D. M. Ornitz, R. Sasisekharan, G. Venkataraman and G. Waksman; "Heparin-induced self-association of fibroblast growth factor-alpha - evidence for two oligomerization processes." Journal of Biological Chemistry 272, (1997) 16382-16389. Schlessinger, J., A. N. Plotnikov, O. A. Ibrahimi, A. V. Eliseenkova, B. K. Yeh, A. Yayon, R. J. Linhardt and M. Mohammadi; "Crystal structure of a ternary fgf-fgfr-heparin complex reveals a dual role for heparin in fgfr binding and dimerization." Molecular Cell 6, (2000) 743-750. HSPGが、異なる系に渡って多くの器官形成増殖因子に結合し、かつ活性化することが可能であるため、このアプローチは、結果として生じるマトリックスに融通性を与える。様々な他の硫酸化多糖は、有用なペプチド配列の設計に関連して考慮され得る。例えば、本明細書と一致して、カラギーナンと相互作用する残基は、ペプチド成分中に組み入れられる。
【0018】
広い範囲のペプチドエピトープがナノファイバーの表面に組み入れられ得、かつ、分子の賢明な設計は、異なるエピトープを有する多数のPAのヒドロゲルへの共集合を可能にし得るため、融通性のもう一つのレベルは、ペプチド両親媒性物質自体によって提供される。(Niece, K. L., J. D. Hartgerink, J. Donners and S. I. Stupp; "Self-assembly combining two bioactive peptide-amphiphile molecules into nanofibers by electrostatic attraction." Journal of the American Chemical Society 125, (2003) 7146-7147、全体として参照により本明細書に組み入れられる。)
【0019】
前述と関連して、-XBBBXXBX-を含むがそれに限定されない独特のヘパリン結合配列が合成され得、ここで、Xが疎水性アミノ酸残基より独立して選択され得、かつ、Bが塩基性アミノ酸残基より独立して選択され得る。このモチーフにおいて最も共通に存在するアミノ酸は、天然に存在するヘパリン結合タンパク質の群より決定され得る。(Cardin, A. D. and H. J. R. Weintraub; "Molecular modeling of protein-glycosaminoglycan interactions." Arteriosclerosis 9, (1989) 21-32.)本発明のヘパリン結合ペプチド両親媒性物質(HBPA)は、本明細書において、ヘパリンまたはヘパランの添加とともに自己集合し、ゲルの形成を導くことが示される。更に、結果として生じる組成物性マトリックスは、その中に挟まれた内皮細胞を、三次元において連続的な管腔を有する高度に組織化された毛細血管様構造を形成するように誘導する能力を有する;および、結果として生じるヘパランを伴うマトリックスは、増殖因子を伴わないとしても虚血性創傷治癒を有意に改善することが示されており、これは任意の他のマトリックスタイプについての文献において観察されない。
【0020】
一つの局面において、本発明の化合物は、そのような結合配列を組み入れるペプチド両親媒性物質;すなわち、以下の形態の、任意のヘパリン結合ペプチド両親媒性物質を含み得る:
(疎水性物質)‐(スペーサー)‐XBBBXXBX‐(末端)
ここで、疎水性物質成分は、任意の飽和または不飽和アルカン、または他の疎水性部分であり、(スペーサー)は、任意のアミノ酸配列を含む任意の成分であり、Xは、アラニン、グリシン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、プロリン、およびバリンより独立して選択され得、ならびに、Bは、アルギニン、ヒスチジン、およびリジンより独立して選択され得、ならびに、(末端)は、アミドもしくはカルボキシル末端アミノ酸残基、または配列、または、RGD、IKVAV、およびビオチンのような、しかしそれらに限定されない、生理活性を有することが公知である、または決定されてもよい他のエピトープである。様々な他のエピトープが、当技術分野において、および/または、組み入れられる参照文献の一つまたは複数において説明されるように、公知である。
【0021】
非限定的に、本発明の一つのHBPA化合物は、脂肪酸、例えばパルミチン酸部分、または、さもなければ、任意でアミド末端化された末端アラニン残基を有する、AAAAGGGLRKKLGKAのようなペプチド配列と共有結合性に連結される、または共役する疎水性成分を含み得る。疎水性物質の存在は、ヘパリンの添加のような適切な刺激でトリガーされた際に、水性溶液においてナノファイバーへの自己集合を誘導する。更に、ヘパリン、ヘパラン、または同様の高度に電荷を有するポリマーの添加を伴う適切な濃度のHBPAは、ナノファイバーの束の絡み合いのために、自己支持ヒドロゲルの形成を引き起こす。このHBPA‐ヘパリン相互作用は、非共有結合性であり、非共有結合性の相互作用がヘパリンの細胞外マトリックスへの生物学的相互作用を刺激するため、現今の共有結合性に結合されたヘパリンマトリックスを超える改善である。非共有結合性の相互作用はまた、ヘパリンが、血管内皮増殖因子(VEGF)および繊維芽細胞増殖因子(FGF-2)のような血管新生性ヘパリン結合増殖因子に結合し、かつ活性化し、かつ、マトリックスからのそれらの放出を制御することを可能にする。
【0022】
特に、本発明の一定の態様は、新規であり、かつ、ヘパリン、またはヘパリン様ポリマーの結合が望ましい、広い範囲の生理活性ポリマー、骨格、および、組織または細胞培養基質への、共有結合性または非共有結合性付着に潜在的に有用である、アミノ酸配列、-LRKKLGKA-を含むヘパリン結合ペプチドを含み得る。更に、ヘパリンとヘパリン結合ペプチド両親媒性物質との間の非共有結合性相互作用の大部分は、少なくとも部分的に、静電引力によって説明され得るため、他の関連する配列はまた、以下の一般形式である、ペプチド両親媒性物質の形態において調製されてきた:(疎水性物質)‐(スペーサー)‐XXXXBBBB‐(末端);(疎水性物質)‐(スペーサー)‐XXXXBBB‐(末端);(疎水性物質)‐(スペーサー)‐XXXXBB‐(末端)、および(疎水性物質)‐(スペーサー)‐XXXXB‐(末端)。ここで、疎水性物質成分、任意の(スペーサー)成分、X、B、および(末端)は上記で定義されたのと同様である。
【0023】
具体的には、一つのそのようなペプチド両親媒性物質は、構造:アミド末端を伴うパルミトイル‐AAAAGGGLLGARKKKを含むが、それに限定されない。とにかく、本発明で有用な両親媒性化合物のペプチド成分は、本明細書における説明に従って、もしくはそれと一致して、または、本発明に気づいた当業者によって推論されるであろうように、ヘパリン、および/または機能的に同等のヘパリン誘導体もしくはその類似体に結合する、および/または利用する能力によってのみ限定される。
【0024】
ヘパリン結合能力にかかわらず、本発明のペプチド両親媒性物質は、ナノファイバー形成途上での分子間相互作用または結合のための望ましい柔軟性、電荷、および/または能力に依存して、様々な長さまたは配列のペプチド成分を含み得る。そのような化合物の疎水性成分はまた、変動し得(例えば、約C4または約C6〜約C22以上よりも大きいものまでの範囲の、アルキルまたは置換されたアルキル、飽和または不飽和、の部分など)、そのような成分は、結果として生じる両親媒性性質およびそのような化合物の組成物または集合への影響によってのみ限定される。
【0025】
本発明に関連して使用される様々なペプチド両親媒性化合物は、任意の一つまたは複数の先行する問題点を考慮して、同時係属中の、2002年11月14日に提出された出願第10/294,114号(国際公開番号第WO 03/054146号)、および2003年2月18日に提出された第10/368,517号(国際公開番号第WO 03/070749号)(それぞれは全体として参照により本明細書に組み入れられる)において開示されるものを含めて、当業者に周知である予備技術、および、文献において公知であり、かつ、本明細書における他の場所で参照されるようなそれらの技術の改変を使用して合成され得る。そのような参照文献および同時係属中の出願において示される合成スキームが、本発明に適用されてもよい。ペプチド両親媒性物質は、完全プロトン化、部分的プロトン化、または、酸もしくは塩基添加塩としてであってもよい。一般に、そのようなペプチド両親媒性物質は、ペプチド成分のN末端での、またはその近くでの、疎水性尾部または成分の添加を含む、標準的固相ペプチド化学を用いて調製され得る。そのような合成技術の改変は、2004年12月6日に提出された同時係属中の出願第11/005,314号および11/005,552号(それぞれ国際公開番号第WO 05/056576号および第WO 05/056039号)(それぞれは全体として参照により本明細書に組み入れられる)において説明された手順および対応するペプチド両親媒性部分、化合物、関連組成物、および配置または集合を用いるような、当業者および本発明に気づいた人々に公知であろうように、作製され得る。
【0026】
HBPA化合物は、例えば、パルミチン酸由来の脂肪酸尾部、4個のアラニンおよび3個のグリシンのリンカーペプチド、ならびに、アミド末端配列LRKKLGKA(今後HBPA-1と称される)、またはアミド末端配列LLGARKKK(今後HBPA-2と称される)を含む新規のヘパリン結合ペプチド頭部群を含み得る(図1参照)。HBPA-1およびHBPA-2双方は、水に容易に可溶性であり、かつ、溶液において自己集合してナノファイバーの束を形成する。2種類のHBPAの6ミリモーラーを超える濃度で、ヘパリンまたはヘパランの添加はゲル形成を引き起こした。これらのナノファイバーの束は、図2Aに示された透過型電子顕微鏡観察によって、HBPA-1ナノファイバーを修飾するように見られる金粒子に付加されたヘパリンで、可視化された(図2B)。更に、蛍光共焦点顕微鏡観察は、図2Cに示されるように、フルオレセインに付加されたヘパリンによって染色されるHBPA-1ファイバーの束を示した。周波数掃引振動レオロジー(frequency sweep oscillating rheology)により、これらの材料についての粘弾性のゲル様挙動が、貯蔵(storage)(G’)および損失(loss)(G”)率(modulus)の双方が主として角周波数から独立しており、かつ、G'が一貫してG”より高いことと共に明らかになった(図3Aおよび3B参照)。HBPAはまた、上昇したpH(塩基トリガー)、およびリン酸水素二ナトリウムの添加の双方で、ゲル化した。更に、ヘパリントリガーゲルの弾性率は、増加した剛性を示す、対応する塩基トリガーゲルと比較されたとき、双方の例において統計学的により高かった(図3Aおよび3B)。
【0027】
HBPAの円偏光二色性(CD)分光法は、優勢なαへリックス含有量を有するCDサインを示した。これは、ヘパリンの添加で、それぞれ218 nmおよび192 nmで典型的な負のおよび正の極大を有するβシート形態を示唆するサインへ変化した(図3Cおよび3D参照)。等温滴定熱量測定法が、双方のHBPAへのヘパリンの増加を独立的に滴定するために使用され、かつ、結合時に放出された熱をモル比の関数として測定した。取得されたデータは、以前に記述されたように(Fromm, J. R., et al, "Differences in the Interaction of Heparin with Arginine and Lysine and the Importance of These Basic-Amino-Acids in the Binding of Heparin to Acidic Fibroblast Growth-Factor" Arch. Biochem. Biophys. 323 (1997) 279)、積分され、かつ、非直線関数に適合され、双方の例において、107の会合定数を得た(図3Eおよび3F参照)。結合定数における類似性にもかかわらず、HBPA-1およびHBPA-2の結合相互作用は、エネルギー的に非常に異なっていた。HBPA-1およびヘパリンの相互作用はエントロピー変化によって主に駆動されていると考えられるのに対し、HBPA-2‐ヘパリン相互作用は主にエンタルピー的であった(表3G)。そのような結果は、それぞれの構造と関連して説明され得る。HBPA-1は、ペプチド鎖の表面に疎水性残基を有し、エントロピーにおける増加は、ヘパリン相互作用時のこれらの残基からの溶媒水分子の置換による可能性がある。他方、HBPA-2は、表面に荷電塩基残基を有し、負に荷電したヘパリンとの強い静電力を導き、およびそのために相互作用におけるエンタルピー要素の優勢を導く。
【0028】
HBPA-1‐ヘパリンゲルからの繊維芽細胞増殖因子-2(FGF-2)の放出プロファイルが決定され、本発明のもう一つの局面を例証した。ローダミン(544/576 nmでex/em 最大)に共有結合性に連結されたFGF-2が、ヘパリンまたはリン酸水素二ナトリウムの添加いずれかで調製されたHBPA-1ヒドロゲルに組み入れられた。放出媒質が交換され、かつ、一連の時間点で保管された。FGF-2ローダミンの受動的累積放出プロファイルにより、ヘパリンの非存在下では、初めの5分間で34.1%のFGF-2がゲルから放出され、かつ、10日までに98.3%が放出されることが明らかとなった。ヘパリンの存在は、10日までに合計57.1%へと、速度、およびFGF-2の絶対的放出を減少させた(図4参照)。
【0029】
インビトロ血管新生を説明するために、ウシ肺動脈内皮細胞(bPAEC)が、8穴ウェルチャンバーカバーガラスにおいて、双方のタイプのHBPA‐ヘパリンゲルの層の上にコンフルエンスになるように増殖され、かつその後、同一のゲルのもう一つの層の適用によって挟まれた。いくつかのゲルは、その中に組み入れられたVEGFおよびFGF-2の組み合わせを有した。4種類の対照が使用された:補足的なヘパリンまたは増殖因子が添加されていない、I型コラーゲンゲルの二層の間に挟まれたbPAEC;補足的なヘパリン単独;増殖因子単独;またはヘパリンおよび増殖因子双方が各培地交換時に添加されたもの。bPAECはシート状に増殖し、かつ、増殖因子を伴うHBPA-1‐ヘパリンゲルにおいて第二層の添加後早くも一日で、分岐した吻合するネットワークを示した。この組織化は続き、7日までにはゲルの厚みを通して貫通する連続的な管腔を有する組織化された管状構造の形成を示した(図5A参照)。増殖因子を伴わないHBPA-1‐ヘパリンゲルは、もっと遅い3日目にいくらかの分岐を示し始めた。7日目に、これらのゲルは、増殖因子を伴うHBPA-1‐ヘパリンゲルにおいて見られるものよりも少ない細管を有するのが見られたが、双方のタイプのゲルにおける個々の細管は、著しい類似性を示した(図5B)。HBPA-2ヘパリンゲルの場合には、細胞は、増殖因子を伴う、および伴わないゲルにおいて、10日の終わりに見られた副次的な間隙様管腔および稀な管状構造を有して三次元にシート状に増殖した(図5CおよびD)。補足的なヘパリンまたは増殖因子を伴わないコラーゲンゲルは、特定の組織化無しにゲル中至るところに増殖するbPAECの存在を示した。補足的なヘパリン、増殖因子、または双方を伴う3タイプのゲルは、領域のいくらかにおいて分岐した吻合するネットワークの存在を示した。いずれも連続的な管腔を有する組織化された管状構造の形成は示さなかった(図5E〜H)。
【0030】
最後に、そのような組成物およびマトリックス配置のインビボにおける機能的効力を説明するために、ウサギの耳の創傷治癒モデルが選択された。(例えば、Ahn ST, Mustoe TA. "Effects of ischemia on ulcer wound healing: a new model in the rabbit ear." Ann Plast Surg. 24 (1990) 17-23参照、その全体は参照により本明細書に組み入れられる。)これは、通常のウサギの耳に血液を供給する3種類の動脈のうち2種類を縛って血行を止め、かつ、耳の基部で周囲に渡って皮膚の循環を妨害することによって外科的に虚血を誘導する、確立されたモデルである。その後、円形の6 mm生検パンチを用いて、耳の腹側の面に、軟骨膜に至るまで、かつそれを含んで、4箇所の創傷が作製される。この場合における望ましい材料、場合により増殖因子(VEGFおよびFGF-2)を伴う、および伴わないHBPA-1ヘパランゲルが塗布され、創傷はポリウレタンフィルム包帯で覆われて、12日間結果を追跡調査される。12日の終わりに、動物は安楽死させられ、創傷の周りの100%の7 mm生検を用いて、創傷が採取される。試料は、創傷治癒の組織学的証拠について解析される。この治癒過程は、二分された創傷において治癒の縁の間の上皮の間隙を測定することによって定量化され得る。4種類の対照材料、すなわち、増殖因子を伴うHBPA-1、増殖因子を伴うヘパラン、増殖因子単独、および緩衝溶液単独(上記の材料の溶媒)がまた、使用された。
【0031】
創傷の縁の結果を解析したところ、HBPA-1‐ヘパランゲルが、いずれの対照よりも統計学的に有意に高い創傷治癒を誘導することが見出された。外因性、または導入された増殖因子の存在は、創傷治癒を誘導するマトリックスの能力に影響を及ぼすために必要ではないようであった(図6参照)。増殖因子を使用せずに虚血性創傷において誘導された創傷治癒は、以前に報告されていない。実施の任意の一つの理論または形態に非限定的に、そのような観察は、組成物および結果として生じるマトリックス配置において、細胞培地中に局所的に見出される内因性増殖因子をリクルートし、かつ活性化するヘパランの能力による可能性がある。
【0032】
ヘパリンおよびヘパランは、血管新生増殖因子に結合し、かつ活性化する能力のために、血管新生の重要なプロモーターである。他の研究は、マトリックスへ共有結合性に結合させて、物理的にマトリックス中にトラップすることによって、または、ヘパリンを有するマトリックスの表面をコーティングすることによって、血管新生増殖因子を放出するためにヘパリンを使用してきた。その技術と対照的に、本発明は、細胞外マトリックスにおけるヘパリンの機能を模倣する様式で、細胞に増殖因子をリクルート、活性化、および/または送達する可能性を有するヒドロゲルを形成するために、ペプチド両親媒性物質上のコンセンサスヘパリン結合配列(HBPA)を用いて、ヘパリンおよび、またはヘパランを非共有結合性に組み入れた。
【0033】
ゲルを形成するように絡み合う、ナノファイバーへの他のペプチド両親媒性分子の自己集合は、以前に記述されている。例えば、Hartgerink, J. D., E. Beniash and S. I. Stupp; "Peptide-amphiphile nanofibers: A versatile scaffold for the preparation of self-assembling materials." Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 99, (2002) 5133-5138を参照されたい。簡潔には、実施の任意の一つの理論または形態に非限定的に、溶液のpHが酸性である場合、HBPAは静電気的な反発を通して自己集合を阻害する正味の正電荷を有すると信じられている。溶液のpHが上昇するにつれて、正電荷が中和され、疎水性崩壊を通した凝集および水素結合ペプチド二次構造の形成が促進される。ゲルの形成は、ナノファイバーの絡み合いによって起こり、かつ、HBPAの適切な濃度を必要とする。単純な無機対イオンはまた、恐らく同様の電荷を保護する役割のために、この自己集合およびゲル形成を促進することが示されてきた。ここで、自己集合は、Na2HPO4由来の無機陰イオンの添加、または複合ポリマー陰イオン、すなわち、グリコサミノグリカン、ヘパリン硫酸、およびヘパラン硫酸のいずれかで観察される。ヘパリントリガー自己集合およびゲル形成は、(1)超分子自己集合をトリガーするポリマー物質の最初に記述された例であるため、および、(2)ペプチド成分がそのようなグリコサミノグリカンに結合するように具体的に設計されたため、興味深い。ヘパリンは、単純な電荷を保護する役割を果たすだけでなく、また、ナノファイバーの間の非共有結合性の架橋を形成することに関与すると考えられ得る。そのように、ヘパリンは、異なる疎水性成分または残基配列の多数のHBPA分子に結合し得、かつ、従って混合超分子自己集合を鋳型にし得た。
【0034】
HBPAのヘパリンとの相互作用は、CD分光法および等温熱量測定法によって、更に確認される。100 nMのITCによって取得された結合定数は、強い結合を示し、かつ、他の合成ヘパリン結合ペプチドとヘパリンとの間で取得されたものに匹敵する。同時に、これは、FGF-2のようなヘパリン結合増殖因子に対するヘパリンの結合定数よりも2桁分弱く、そのために、ヒドロゲルを含むヘパリンは、HBPA単独よりも、より長い時間FGF-2を保持し、かつヒドロゲルからの放出を遅くすることが可能である。
【0035】
細胞サンドイッチインビトロアッセイは、HBPA-1‐ヘパリンゲルの厚みを通して貫通する連続的な管腔を有する高度に組織化された管状構造の存在を示した。見られた構造は、以前には報告されていない組織化の程度を有し、インビボの毛細血管ネットワークによく似ていた。この挙動は、HBPA-1‐ヘパリンゲルにおいてのみ見られた。増殖因子を伴うHBPA-1‐ヘパリンゲルは、増殖因子を伴わないゲルより速やかに、かつ、より大きな領域に渡って組織化することが観察された。加えられた増殖因子の存在が初期の吻合を誘導したが、増殖因子を伴わないゲルもまた、恐らく、ゲルにおいて非共有結合性に結合されたヘパリンの、血清からの増殖因子および細胞自身によって合成される増殖因子をリクルートし、かつ活性化する能力のために、同様の組織化を示す。これは、増殖因子を伴う、および伴わない双方のHBPA-1‐ヘパリンゲルにおける管状過程の質的類似性、および、増殖因子を伴わないHBPA-1‐ヘパリンゲルにおける細胞の組織化の遅延を説明するであろう。表面に非共有結合性にヘパリンを提示するナノファイバーの束の形成は、この特定の適用についてのヘパリンの生理活性を最適化することが仮定され得る。対照的に、HBPA-2ヘパリンゲルは、対照のコラーゲンゲルと同様の、副次的な非連続的細隙様管腔を示す。これは、最初の例におけるコンセンサス形式の存在が、ヘパリンのこの特定の生理活性を最適化するためであり得る。天然のヘパリン結合タンパク質のコンセンサスヘパリン結合配列は、ヘパリンの負に荷電した繰り返し単位の周囲に20 Aの正に荷電したαターンを形成すると考えられる。(Margalit, H., N. Fischer and S.A. Bensasson; "Comparative-analysis of structurally defined heparin-binding sequences reveals a distinct spatial-distribution of basic residues." Journal of Biological Chemistry 268, (1993) 19228-19231.)
【0036】
最後に、ウサギの耳における虚血性創傷治癒のインビボモデルが、HBPA-1ヘパランゲルが増殖因子無しでさえも、局所的に改善された血管新生に起因するであろう創傷治癒を有意に誘導することを示す。著しい注目点は、血管新生増殖因子無しでさえもこの創傷治癒が為し遂げられたという事実である。これは恐らく、HBPA-1ヘパランマトリックスによってリクルートされ、かつ活性化されている、創傷部位における内因性増殖因子の存在による。これは、完全に新規の結果であり、かつ実際に、以前の研究は、マイクログラムの増殖因子の使用を伴ってのみ、本モデルにおける創傷治癒で部分的な改善を示している(Corral CJ, Siddiqui A, Wu L, Farrell CL, Lyons D, Mustoe TA. "Vascular endothelial growth factor is more important than basic fibroblastic growth factor during ischemic wound healing." Arch Surg. 134 (1999), 200-205)。
【0037】
従って、本発明は、自己集合し、かつ、ヘパリン、ヘパラン、および他の硫酸化グリコサミノグリカンに非共有結合性に結合して、インビトロおよびインビボで特徴付けられた血管新生性ヒドロゲルを生じさせる、新規の種類のペプチド両親媒性生体分子を提供し得る。そのような化合物は、溶液からゲルへ自己集合するために、HSGAGのようなポリマー物質でトリガーされ得る。生物学的には、本発明の他の組成物および配置的マトリックスを代表するHBPA‐ヘパリン/ヘパランゲルは、内皮細胞が、培養において三次元に連続的な管腔を有する高度に組織化された毛細血管様細管を形成するのを誘導し、かつ、最も重要なことに外因性の増殖因子無しで虚血性創傷治癒を誘導する独特の能力を有する。
【0038】
発明の実施例.
以下の非限定的な実施例およびデータは、本明細書において説明された方法論を通して利用可能であるように、ヘパリン結合ペプチド両親媒性物質の自己集合、ならびに、ヘパリン、ヘパラン、および/または関連する増殖因子の対応する送達を含んで、本発明の両親媒性化合物、ナノファイバー、ゲル、組成物、および/または方法に関連する様々な局面および特徴を例証する。先行技術と比較して、本方法、化合物、および組成物は、驚くべき、予想外の、かつ、先行技術に反する結果およびデータを提供する。本発明の有用性が、いくつかの両親媒性化合物およびそれらの成分の使用を通して例証されるが、本発明の範囲に比例するように、匹敵する結果が様々な他の両親媒性化合物、および/または組成物を用いて取得可能であることが、当業者によって理解されるであろう。
【0039】
実施例1
HBPA ゲル形成.
すべての試薬はFisherより購入され、かつ、他の方法で明記されない限りは受領された通り使用された。HBPAは、前述の組み入れられた参照文献において記述された方法を用いて合成された。本発明に従って、他の残基および/または疎水性成分を含む様々な他の両親媒性ペプチド組成物は、その中でまた記述されたように調製され得る。簡潔には、ペプチドは、標準的なフルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)化学のために適切に保護されたアミノ酸(Novabiochem)で、自動固相ペプチド合成機(Applied Biosystems- 733A)を用いてRinkアミド樹脂上に構築された。ペプチドのN末端はアルキル化反応を用いてパルミチン酸でキャッピングされ、続いて、トリフルオロ酢酸(TFA)、水、およびトリシオプロピルシラン(trisiopropylsilane)を用いて、脱保護および樹脂からのHBPAの切断が為された。TFAが回転蒸発によって除去されて、冷たいジエチルエーテルを用いてHBPA産物が粉砕され、その後、濾過され、真空乾燥された。HBPAの分子量は、エレクトロスプレーイオン化質量分析法によって特徴付けられた。残留TFA対イオンを減少させ、かつ、それらを塩化物イオンに置換するために、HBPAは室温で1時間、1 Mの塩酸に溶解され、その後続いて、凍結乾燥された。HBPAは、必要に応じて1 Mの水酸化ナトリウムを用いて、30 mg/mLでpH 7.4で(他の方法で明記されない限り)、脱イオン水に再溶解された。HBPAゲルは、等用量の上記のように作製されたHBPA溶液およびゲルトリガー、すなわち、20 mg/mLの濃度のヘパリンナトリウムまたはヘパランナトリウム(Sigma)(HBPA:ヘパリン/ヘパランについて1:1.84の化学量論を得るために)、または、1.5 w/v % HBPAゲルの最終産物を得るために、11 mg/mlの濃度の溶液中のリン酸水素二ナトリウムのいずれかを混合することによって形成された。より低い重量パーセントのゲルが作製されるときは必ず、ヘパリン、ヘパラン、およびホスフェートは、化学量論を維持するために適切に、率に応じて減じられた。
【0040】
実施例2
自己集合の評価.
ヘパリン‐金染色HBPA試料が、以前に記述されたように、透過型電子顕微鏡観察(TEM)のために調製された。(Sanantonio, J.D., A. D. Lander, M. J. Karnovsky and H. S. Slayter; "Mapping the heparin-binding sites on type-I collagen monomers and fibrils." Journal of Cell Biology 125, (1994) 1179-1188.)簡潔には、穴の開いた炭素コート銅グリッドが、HBPA‐1(水において0.1 w/v%)の溶液に20秒間、2回浸されて、推奨緩衝液(Sigma)で1:20に希釈されたコロイド状10 nm金が付加されたヘパリン‐アルブミン溶液で30分間、4℃で染色され、リン酸緩衝生理食塩水(PBS- Gibco)における4 v/v%ホルムアルデヒド(Sigma)で室温で20分間固定され、かつその後、段階の間に0.5 w/v%ウシ血清アルブミンおよび0.05 v/v% Tween 20(Sigma)を含む0.1 Mカコジル酸緩衝液での2回の洗浄を伴って、2 w/v%酢酸ウラニルで45分間、室温で対比染色された。HBPA-2の場合には、穴の開いた炭素コート銅グリッドが、1% HBPA-2‐ヘパリンゲル懸濁液に20秒間、2回浸され、かつその後、リンタングステン酸(Sigma)で室温で染色された。TEMは、Hitachi 8100 顕微鏡で、200 kVの加速電圧で行われた。共焦点蛍光顕微鏡観察は、水溶液における0.04 w/v% のHBPA-1、およびフルオレセイン‐ヘパリン(Sigma)の水における0.03 w/v%の溶液のそれぞれ10μLを混合し、かつ、Leicaレーザー共焦点走査型顕微鏡(DM IRE2)で画像化することによって、行われた。画像は、Leica LCS画像化ソフトウェアを用いて解析された。20 mmのステンレススチール平行プレートを有するPaar Physica MCR300レオメーターが、80μLの水における2 w/v%のHBPA、および、80μLの水における1 mgのヘパリンまたは0.5 mgのリン酸水素二ナトリウムのいずれかを混合することによって、または、80μLの0.25 M NaOHを添加することによってインサイチューで調製され、かつ、22℃に温度を維持されたゲルに対して、振動レオロジー実験を行うために使用された。周波数掃引実験は、0.1〜10 rad/sの角周波数の間に17データポイントを取得するために、10分の待ち時間を伴う3%のひずみ(strain)(双方は、振幅掃引および時間ひずみ実験を独立して行うことによって決定された)で行われた。CDスペクトルは、以下の4種類の試料から、0.1 cmパスの長さの石英キュベットを用いて、Jasco J-715 CD分光計で収集された:それぞれpH 7の350μLの水におけるブランク対照、0.105 mgのHBPA-1またはHBPA-2、0.07 mgのヘパリン、ならびに、別々の0.105 mgの2種類のHBPAと0.07 mgのヘパリンとの混合物。等温熱量測定法(Microcal-ITC)は、101.5 μg/mL溶液のストック溶液から40.1 μg/mlのHBPA-1またはHBPA-2溶液(すべての溶液は水における)へ、4μLのアリコートでヘパリンを滴定することによって行われた。バックグラウンドの値を得るために、同一の量のヘパリンが、ブランク溶液へ滴定された。生データは、二つの間の結合によって放出された熱対それらのモル比に関して取得され、以前に記述され、上記で参照されたように、結合定数を得るために、データが積分され、かつ、単一のタイプの結合部位についての曲線に適合された。
【0041】
実施例3
HBPA-1‐ヘパリンゲルからのFGF-2の放出プロファイル.
FGF-2(Peprotech)は、市販されているローダミンタンパク質標識化キット(Pierce Biotechnology)を用いて、エステル結合によって、N-ヒドロキシスクシンイミド‐ローダミンへ共有結合性に連結され、12.5 ngのこのFGF-2ローダミンが、水における20 mg/mlヘパリンまたは11 mg/mlリン酸水素二ナトリウムいずれかの100μlの溶液に添加された。FGF-2ローダミンを伴うHBPA-1‐ヘパリンまたはHBPA-1‐ホスフェートゲルをそれぞれ取得するために、水における3 w/v%のHBPA-1溶液の100μlの溶液へ、これらの溶液が添加された。ゲルは、100μlの水で覆われて、インキュベーター中(5% CO2)で37℃でインキュベーションされ、初めに5分で、その後続いて10日間毎日交換された。交換された水が収集され、Gemini EM蛍光プレートリーダー(ex/em最大544/576 nm)を用いて解析された。ヘパリンまたはホスフェート溶液における元のFGF-2のアリコートの蛍光が測定され、この値が放出されたパーセンテージを得るために使用された。
【0042】
実施例4
インビトロ血管新生アッセイ.
PAECは、20% v/vウシ胎児血清、1% v/vペニシリン‐ストレプトマイシン、2% v/v L-グルタミン、ならびに各1 mMのピルビン酸ナトリウムおよび変法イーグル培地アミノ酸を含む、フェノールレッドフリーダルベッコ変法イーグル培地で、継代14または15まで培養された(血清はHycloneより取得され、一方培地および他の添加物はGibcoより取得された)。凍結培地は、上記の培地に5 v/v%のジメチルスルホキシド(Sigma)を添加することによって作製された。細胞は、細胞培養インキュベーターにおいて37C、5% CO2で培養された。サンドイッチゲルは、8ウェルチャンバーカバーグラス(Nalge Nunc)容器において作製された。HBPA‐ヘパリンゲルの第一層は、pH 7の水における30 mg/ml HBPA-1またはHBPA-2の100μlを、各12.5 ng(ウェルにおいて31.25 ng/mlの総濃度を与えるように)のFGF-2およびVEGF(双方ともPeprotech由来)を伴う、または伴わない上記の細胞培養培地における20 mg/mlヘパリンの100μlと混合することによって作製された。200μlの3 w/v%コラーゲンゲルは、I型ラット尾部コラーゲン(Roche)を用いて作製され、塩基チャンバーにおいてゲル化され、かつその後、7.4のpHを取得するように上記の培地で平衡化された。ゲルは、室温で一晩放置することによって、凝固するようにされた。続いて、ウェルあたり750,000個のbPAECが培養培地中にプレーティングされ、細胞がゲルの厚みを通してコンフルエンスになるよう増殖するまで(通常5日まで)、1日おきに培地交換をしてインキュベーターにおいて追跡調査された。過剰の培地が除去され、ゲルの第二層がちょうど前の通りに細胞層の上部に添加された。コラーゲンゲルは、分離した8ウェルチャンバースライドにおいて作製され、かつその後、前の通りpH平衡化の後に細胞層の上部に配置された。30分間の室温での待機の後、培地が添加され、ウェルは37 Cでインキュベーションされ、かつその後、1日おき毎に培地を交換された。具体的に定義されたコラーゲンゲル対照に、上記と同一の濃度での増殖因子を伴って、または伴わずに、補足的なヘパリンが添加された。本発明者らは、いずれの種類のHBPA‐ヘパリンゲルにも、培地におけるヘパリンまたは増殖因子を補足しなかった。従って、増殖因子を伴う双方のHBPA‐ヘパリンゲルにとって、補足的な増殖因子の唯一の供給源は、二つのゲル層由来であった。細胞培養は、光学顕微鏡観察を用いて毎日観察された。7日目に、細胞はフルオレセインベースの細胞トレーサー(Vybrant CFDA SE cell tracer- Molecular Probes)で20μMの濃度で染色され、ゲルを通してz系列を取得するために、Leicaレーザー共焦点走査型顕微鏡(DM IRE2)を用いて画像化された。z系列画像の3-Dレンダリング(rendering)のために、VolocityおよびNIH ImageJソフトウェアが使用された。
【0043】
実施例5
ウサギの耳の虚血性創傷治癒アッセイ.
虚血性領域において創傷治癒を誘導するマトリックスの能力を測定するために、アッセイが使用された(Ahn ST, Mustoe TA. "Effects of ischemia on ulcer wound healing: a new model in the rabbit ear." Ann Plast Surg. 24 (1990) 17-23)。プロトコルは、Northwestern's Animal Care and Usage Committeeによって認可された。動物は、ケタミンおよびキシラジンで麻酔され、耳の根元の1 cm遠位に無菌の外科的切り込みが作製された。それぞれの静脈を無傷のままにしておくように気をつけながら、中央および吻側(rostral)の動脈が同定され、4-0エチロンで結紮されて、中断された。耳への血液供給の唯一の源として細い尾側の動脈をそのままにして、皮膚の循環を中断するように、切り込みが耳の基部の周囲に延長され、かつその後、接するように縫合された。腹側の表面に、露出した軟骨を創傷の基部とするように、軟骨膜に至るまでの、かつそれを含んだ4個の円形の創傷を作製するため、6 mmの生検パンチが使用された。必要な材料は、明記されたインサイチューでゲル化されたHBPA‐ヘパランとともに塗布された。創傷は、薄いポリウレタン創傷包帯(Tegaderm(商標))で覆われ、動物は適切な手術後無痛法を施された。動物は、12日間、適切な施設に収容された。12日の終わりに、動物は麻酔され、かつその後、心臓内Euthasol(商標)で安楽死させられ、続いて、安楽死を確認するために気胸の外科的誘導が為された。7 mm生検パンチを使用して、背側の皮膚を貫通して正常な組織の1 mmのカフ(cuff)を伴って、創傷が採取された。これらの創傷は、緩衝ホルマリン中に置かれ、固定され、パラフィン包埋され、かつ、二分された後にマッソン三色(Masson's trichrome)によって染色された。創傷治癒を定量化する(ゼロの測定が完全な治癒を示す)ために、上皮の先導する縁の間の間隙が、各創傷において測定された。結果が集計され、同等でない分散を仮定する二試料t検定を用いて統計学的に解析された。
【0044】
本発明の主件が、具体的な態様と関連して説明されてきたが、これらの説明が、実施例としてのみ加えられ、かつ、決して本発明の範囲を限定するようには意図されないことが、明らかに理解されるべきである。例えば、一定の態様が、以前に報告されなかった内皮細胞の組織化の程度で毛細血管様構造を促進する一定の血管新生増殖因子に結合し、かつ、その送達を制御し得る組成物性マトリックスを提供するとして説明されてきた。しかしながら、そのような血管化マトリックスはまた、様々な他の増殖因子の制御された送達および放出のために使用され得る。同様に、そのような組成物またはマトリックスは、液体の前駆体化合物または成分の細胞培地への導入または注入時に、インサイチューで形成され得る。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の一定の態様に従った、HBPA-1(上)およびHBPA-2(下)両親媒性ペプチド化合物の構造。
【図2】HBPA-2(2A、スケールバー50 nm)およびHBPA-1(2B、スケールバー40 nm)の、ヘパリントリガーのナノファイバーの束の、透過型電子顕微鏡写真。2Bはまた、ナノファイバーを修飾する、金のナノ粒子(黒色の点)に付加されたヘパリンを示す。2Cは、HBPA-1繊維の束を染色する、フルオレセインヘパリンの共焦点蛍光顕微鏡写真を示す(スケールバー100μm)。
【図3】HBPA-1および2のヘパリンとの相互作用。3Aおよび3Bは、ヘパリンおよび塩基トリガーのHBPA-1ゲル(3A)およびHBPA-2ゲル(3B)の、振動レオメトリーを示す。双方の図における黒色の曲線はヘパリントリガーゲルの、および、灰色の曲線は塩基トリガーゲルのものであり、四角は弾性率を、および三角は粘性率を示す。すべてのゲルの弾性率は、粘性率よりも統計学的により高く、かつ、更に、ヘパリントリガーゲルは、双方の場合において、塩基トリガーゲルよりも統計学的により高い(p<0.05、値は平均および標準偏差を示す)。3Cおよび3Dは、HBPA-1溶液(3C)およびHBPA-2溶液(3D)の円偏光二色性スペクトルが優勢なαへリックスコンフォメーション(灰色)を示し、双方の場合においてヘパリンが加えられた後に、大部分はβシートコンフォメーション(黒色)へ変化することを示す。3Eおよび3Fは、対応するKaを取得するためにHBPAに対するヘパリンのモル比に対してプロットされた、HBPA-1(3E)およびHBPA-2(3F)の溶液へのヘパリンの添加の増加時に取得された熱変化の積分された値(黒色の点)および適合する線(線)を示す。表3Gは、HBPA-1およびHBPA-2のヘパリンとの相互作用の熱力学的特性を比較する。双方の場合においてΔGは同様であるが、ΔHはSPAヘパリン相互作用において優勢であり、エントロピー的に駆動される反応を示し、一方、−TΔSはHBPAヘパリン相互作用において優勢であり、エンタルピー的に駆動される反応を示す。
【図4】HBPA-1‐ヘパリンゲルのネットワークからのローダミン‐FGF-2の緩慢な放出(灰色の曲線)対、HBPA-1‐Na2HPO4ゲルからのより急速な放出(黒色の曲線)(バーは標準偏差である)。
【図5】インビトロ血管新生アッセイ。増殖因子を伴う(A)および伴わない(B)ヘパリンの核を有するHBPA-1ゲルにおける、Vybrant CFDAで染色されたbPAECの蛍光共焦点顕微鏡写真。黒色のチャンネルは、三次元に広がる連続的な管腔である((A)におけるスケールグリッドの各辺は75μmであり、および(B)においては37μmである)。増殖因子を伴う(C)および伴わない(D)HBPA-2‐ヘパリンゲルに対応する試料(スケールバー=80μm)は、副次的な細隙様管腔を示す(矢印)。コラーゲンゲル中に組み入れられた増殖因子を伴うコラーゲン対照ゲル(E)は、特定の配向無しに増殖する細胞を示す;他方、補足的なヘパリンを伴う(F)、補足的な増殖因子を伴う(G)、ならびに、補足的なヘパリンおよび増殖因子双方を伴う(H)コラーゲンゲルはすべて、副次的な細隙様管腔を有する、吻合するネットワークを示す(矢印)(C〜Fについてのスケールバー=40μm)。
【図6】インビボ虚血性創傷治癒アッセイ。虚血性のウサギの耳に6 mmの創傷を作製した12日後に測定された上皮の間隙。増殖因子を伴う、および伴わないHBPA-1‐ヘパランゲルは、すべての他の対照と比較されるとき統計学的に有意な創傷治癒を誘導した(p<0.05、グラフは、平均および95%信頼水準を示す)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
疎水性成分およびペプチド成分を含み、該疎水性成分が、該ペプチド成分とそのC末端およびN末端の一つで共役し、該ペプチド成分が、硫酸化多糖との非共有結合性の相互作用が可能である残基を含む、両親媒性ペプチド化合物。
【請求項2】
ペプチド成分が、ヘパリン硫酸、ヘパラン硫酸、およびそれらの組み合わせより選択される硫酸化グリコサミノグリカンと相互作用する残基を含む、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
疎水性成分が、約C6〜約C22の範囲のアルキル部分を含む、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
相互作用する残基が、アラニン、グリシン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、プロリン、バリン、およびそれらの組み合わせより選択される少なくとも一つの疎水性残基(X)、ならびに、アルギニン、ヒスチジン、およびリジンより選択される少なくとも一つの塩基性残基(B)を含む、請求項1記載の化合物。
【請求項5】
相互作用する残基が、XBBBXXBX、XXXXBBBB、XXXXBBB、XXXXBB、およびXXXXBより選択される配列を含み、XおよびBが、疎水性残基および塩基性残基よりそれぞれ独立して選択される、請求項4記載の化合物。
【請求項6】
相互作用する残基が、LRKKLGKAおよびLLGARKKKより選択される配列を含む、請求項5記載の化合物。
【請求項7】
ペプチド成分が、C末端アミド、生理活性エピトープ配列、およびそれらの組み合わせより選択される部分を含む、請求項5記載の化合物。
【請求項8】
硫酸化多糖との、ミセル配置を含む組成物における、請求項6記載の化合物。
【請求項9】
組成物における多糖が、ヘパリン硫酸、ヘパラン硫酸、およびそれらの組み合わせより選択される硫酸化グリコサミノグリカンである、請求項8記載の化合物。
【請求項10】
組成物が、血管新生増殖因子と相互作用する、請求項9記載の化合物。
【請求項11】
増殖因子が、ヘパリン結合増殖因子、ヘパラン結合増殖因子、およびそれらの組み合わせより選択される、請求項10記載の化合物。
【請求項12】
硫酸化多糖ならびに、疎水性成分およびペプチド成分を含む両親媒性ペプチドを含み、該疎水性成分が、該ペプチド成分とそのC末端およびN末端の一つで共役し、該ペプチド成分が、該多糖との非共有結合性の相互作用が可能である残基を含む組成物であって、ミセル配置を含む、組成物。
【請求項13】
多糖が、ヘパリン硫酸、ヘパラン硫酸、およびそれらの組み合わせより選択される硫酸化グリコサミノグリカンである、請求項12記載の組成物。
【請求項14】
相互作用する残基が、XBBBXXBX、XXXXBBBB、XXXXBBB、XXXXBB、およびXXXXBより選択される配列を含み、Xが、アラニン、グリシン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、プロリン、およびバリンより独立して選択され、ならびに、Bが、アルギニン、ヒスチジン、およびリジンより独立して選択される、請求項12記載の組成物。
【請求項15】
ヘパリン結合増殖因子、ヘパラン結合増殖因子、およびそれらの組み合わせより選択される血管新生増殖因子を含む、請求項14記載の組成物。
【請求項16】
因子が、VEGFおよびFGF-2より選択される、請求項15記載の組成物。
【請求項17】
内皮細胞と接触する、請求項16記載の組成物。
【請求項18】
相互作用する残基が、LRKKLGKAおよびLLGARKKKより選択される配列を含む、請求項17記載の組成物。
【請求項19】
哺乳動物虚血性皮膚創傷と接触する、請求項14記載の組成物。
【請求項20】
相互作用する残基が、LRKKLGKAおよびLLGARKKKより選択される配列を含む、請求項19記載の組成物。
【請求項21】
血管新生増殖因子を活性化するために両親媒性ペプチド組成物を使用する方法であって、以下の段階を含む方法:
疎水性成分およびペプチド成分を含み、該疎水性成分が、該ペプチド成分とそのC末端およびN末端の一つで共役し、該ペプチド成分が、硫酸化グリコサミノグリカンとの非共有結合性の相互作用が可能である残基を含む、両親媒性ペプチド化合物を提供する段階;
硫酸化グリコサミノグリカンを該ペプチド化合物に組み入れる段階であって、該グリコサミノグリカンが、ヘパリン硫酸、ヘパラン硫酸、およびそれらの組み合わせより選択される、段階;および
該ペプチド組成物を血管新生増殖因子と相互作用させる段階。
【請求項22】
相互作用する残基が、XBBBXXBX、XXXXBBBB、XXXXBBB、XXXXBB、およびXXXXBより選択される配列を含み、Xが、アラニン、グリシン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、プロリン、およびバリンより独立して選択され、ならびに、Bが、アルギニン、ヒスチジン、およびリジンより独立して選択される、請求項21記載の方法。
【請求項23】
相互作用が、インビボである、請求項22記載の方法。
【請求項24】
相互作用が、実質的に外因性増殖因子が存在しない、請求項23記載の方法。
【請求項25】
相互作用する残基が、LRKKLGKAおよびLLGARKKKより選択される配列を含む、請求項24記載の方法。
【請求項26】
哺乳動物虚血性組織と接触する、請求項23記載の方法。
【請求項27】
血管新生を誘導する方法であって、以下の段階を含む方法:
請求項1記載の両親媒性ペプチド化合物を提供する段階;
硫酸化多糖を該ペプチド化合物に組み入れる段階;および、
組成物を細胞培地および血管新生増殖因子と接触させる段階であって、該培地との接触が、少なくとも部分的に血管新生に十分である、時間、ならびに、該組成物および該増殖因子の少なくとも一つの量においてである、段階。
【請求項28】
相互作用する残基が、XBBBXXBX、XXXXBBBB、XXXXBBB、XXXXBB、およびXXXXBより選択される配列を含み、Xが、アラニン、グリシン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、プロリン、およびバリンより独立して選択され、ならびに、Bが、アルギニン、ヒスチジン、およびリジンより独立して選択され;ならびに、多糖が、ヘパリン硫酸、ヘパラン硫酸、およびそれらの組み合わせより選択される硫酸化グリコサミノグリカンである、請求項27記載の方法。
【請求項29】
増殖因子が、培地に対して外因性である、請求項28記載の方法。
【請求項30】
グリコサミノグリカンの組み入れに先立って、ペプチド化合物および培地を接触させる、請求項28記載の方法。
【請求項31】
接触が、インビボである、請求項30記載の方法。
【請求項32】
哺乳動物虚血性組織を接触させる、請求項31記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−531733(P2008−531733A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−558319(P2007−558319)
【出願日】平成18年3月6日(2006.3.6)
【国際出願番号】PCT/US2006/007864
【国際公開番号】WO2006/096614
【国際公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【出願人】(507294960)ノースウエスタン ユニバーシティ (10)
【Fターム(参考)】