説明

血管狭窄の視覚化及びナビゲーションのシステム及び方法

【課題】効率のよい態様で血管の病理学的状態を自動的に識別して表示する。
【解決手段】CTシステム(10)はまた、ROIについてのCT画像データを取得し、CT画像データから複数の血管の3D画像を再構成し、複数の血管の病理学的状態を自動的に検出して、病理学的状態の重症度を3D画像に指示した状態で3D画像において複数の血管の病理学的状態を識別するようにプログラムされているコンピュータ(36)を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の各実施形態は一般的には、診断撮像に関し、さらに具体的には、血管の病理学的状態を自動的に識別して診断することを可能にする方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
典型的には、計算機式断層写真法(CT)イメージング・システムでは、X線源が被検体へ向けてファン(扇形)形状のビームを放出する。ビームは被検体によって減弱された後に放射線検出器のアレイに入射する。検出器アレイにおいて受光される減弱後のビーム放射線の強度は典型的には、被検体によるX線ビームの減弱量に依存する。検出器アレイの各々の検出器素子が、各々の検出器素子によって受光される減弱後のビームを示す別個の電気信号を発生する。電気信号はデータ処理システムへ伝送されて解析され、これにより最終的に画像を形成する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一つの特定的な応用では、CT撮像を用いて冠動脈、脳動脈、又は他の血管若しくは動脈のような血管の局所的狭隘化(狭窄としても公知)を視覚化することができる。狭窄の診断、及び臨床的に侵襲処置すべきか否か、又は如何に臨床的に侵襲処置すべきかについての関連する判断はしばしば、血管の隣接する部分と比較した断面積の減少百分率のような狭隘化程度の評価に基づく。しかしながら、現行のCT撮像方法を用いると、かかる狭窄診断は、医療人員の一部に長時間を割くことを要求し得る。すなわち、既存のCT画像データの解析方法は半自動式であり、放射線科医が段階を追って一連の手順を実行することを要求する。例えば、放射線科医は血管を一本ずつ、血管腔を目視検査して病理学的状態を探すことにより解析する。この作業は、手間が掛かり、誤りを起こし易く、時間消費的な工程であって、診断の組成に患者当たり20分乃至35分掛かることも珍しくない。殆どの医師は優先度判定に基づく診療(トリアージュ)に主に従事しているため、医師はリスクを解消し、健全な患者は受け付けないように主に努めており、従ってこのように長時間にわたる診断時間は、患者スループットに悪影響があるため極めて望ましくない。
【0004】
従って、診断時間を最短化するように効率のよい態様で血管の病理学的状態を自動的に識別して表示する方法及びシステムが求められている。さらに、血管の狭窄のレベルを自動的に定量化する方法及びシステムが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の各実施形態は、正確な血管狭窄の視覚化及びナビゲーションを提供する方法及び装置に関わるものである。
【0006】
本発明の一観点によれば、CTシステムが、走査される患者を収容する開口を有する回転式ガントリと、回転式ガントリに配置されており、複数の血管を含む患者の着目部位へ向けてX線を投射するように構成されているX線源と、回転式ガントリに配置されており、X線源によって放出されて着目部位によって減弱されたX線を受光するように配置されているX線検出器と、X線検出器に接続されて動作するデータ取得システム(DAS)とを含んでいる。このCTシステムはまた、着目部位についてのCT画像データを取得し、CT画像データから複数の血管の3D(三次元)画像を再構成し、複数の血管の病理学的状態を自動的に検出して、病理学的状態の重症度を3D画像に指示した状態で3D画像において複数の血管の病理学的状態を識別するようにプログラムされているコンピュータを含んでいる。
【0007】
本発明のもう一つの観点によれば、コンピュータ・プログラムを記憶した非一時的なコンピュータ可読の記憶媒体が提供され、コンピュータ・プログラムはコンピュータによって実行されると、計算機式断層写真法(CT)システムのX線源に、走査手順の間に患者へ向けてX線を放出させて、走査から、患者の大動脈及び冠動静脈を含めて心臓部位を含む患者の着目部位についてのCT画像データを取得することをコンピュータに行なわせる命令を含んでいる。命令はまた、CT画像データから患者の大動脈及び冠動静脈を含む冠動静脈枝の3D画像を形成して表示し、大動脈及び冠動静脈の各々の管腔面を検出して、理想的な管腔面をモデル化するために大動脈及び冠動静脈の各々の管腔面を歪処理することをコンピュータに行なわせる。命令はさらに、それぞれの検出された管腔面と理想的な管腔面との比較に基づいて大動脈及び冠動静脈の各々の狭窄状態を決定して、冠動静脈枝の3D画像において大動脈及び冠動静脈の各々の狭窄状態を指示することをコンピュータに行なわせる。
【0008】
本発明のさらにもう一つの観点によれば、計算機式断層写真法(CT)撮像の方法が、血管構造を内部に含む患者の着目部位についてのCT画像データを取得するステップと、着目部位の血管構造に対応するボクセルを識別するためにCT画像データを解析するステップと、識別されたボクセルから患者の3D動脈枝画像を形成するステップとを含んでいる。この方法はまた、動脈枝の各々の血管の管腔面を検出するステップと、理想的な管腔面をモデル化するために各々の血管の管腔面を歪処理するステップとを含んでいる。この方法はさらに、それぞれの検出された管腔面と理想的な管腔面との比較に基づいて血管の狭窄部位を識別するステップと、識別された狭窄部位の各々の狭窄重症度を3D動脈枝画像に指示するステップとを含んでいる。
【0009】
他の様々な特徴及び利点が、以下の詳細な説明及び図面から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図面は、発明を実施するために現状で思量される好ましい各実施形態を示す。
【図1】本発明の各実施形態と共に用いられるCTイメージング・システムの見取り図である。
【図2】図1に示すシステムのブロック概略図である。
【図3】図1及び図2のCTイメージング・システムによって形成される3D冠動静脈枝の図形的表現である。
【図4】図3の3D冠動静脈枝の利用者選択部分の図形的表現である。
【図5】本発明の一実施形態による狭窄の識別及び診断のためのCT撮像の手法の流れ図である。
【図6】本発明の一実施形態による管腔面及び追尾中心線を示す血管の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の動作環境を64スライス型計算機式断層写真法(CT)システムに関して説明する。しかしながら、当業者には、本発明がシングル・スライス型構成又は他のマルチ・スライス型構成での利用にも同等に適用可能であることが認められよう。また、本発明をX線の検出及び変換に関して説明する。しかしながら、当業者はさらに、本発明が他の高周波電磁エネルギの検出及び変換にも同等に適用可能であることを認められよう。一つの実装形態は、「第三世代」CTスキャナ及び/又は他のCTシステムと共に利用可能である。
【0012】
図1には、計算機式断層写真法(CT)イメージング・システム10が、「第三世代」CTスキャナに典型的なガントリ12を含むものとして示されている。本発明の実施形態の一例によれば、CTシステム10は、GE HealthcareのGemstone Spectral Imaging(GSI)二重エネルギCTシステムとして提供される。ガントリ12はX線源14を有し、X線源14は、ガントリ12の反対側に位置する検出器アセンブリ又はコリメータ18へ向けてX線のビーム16を投射する。ここで図2を参照すると、検出器アセンブリ18は、複数の検出器20及びデータ取得システム(DAS)32によって形成されている。複数の検出器20は、患者22を通過した投射X線16を感知し、各々の検出器20が、入射X線ビームの強度を表わし従って患者22を通過した減弱後のビームを表わすアナログ電気信号を発生する。DAS32は続いて、後の処理のためにアナログ電気信号をディジタル信号へ変換し、このディジタル信号を本書ではCT画像データと呼ぶ。
【0013】
X線投影データを取得するための1回の走査の間に、ガントリ12及びガントリ12に装着されている構成部品は回転中心24の周りを回転する。ガントリ12の回転及びX線源14の動作は、CTシステム10の制御機構26によって制御される。制御機構26は、X線源14に電力信号及びタイミング信号を供給するX線発生器28と、ガントリ12の回転速度及び位置を制御するガントリ・モータ制御器30とを含んでいる。画像再構成器34が、標本化されてディジタル化されたX線データをDAS32から受け取って高速再構成を実行する。再構成された画像はコンピュータ36への入力として印加され、コンピュータ36は大容量記憶装置38に画像を記憶させる。
【0014】
コンピュータ36はまた、キーボード、マウス、音声作動式コントローラ、又は他の任意の適当な入力装置のような何らかの形態の操作者インタフェイスを有するコンソール40を介して、操作者から命令及び走査用パラメータを受け取る。付設されている表示器42によって、操作者は、再構成された画像及びコンピュータ36からの他データを観察することができる。操作者が供給した命令及びパラメータはコンピュータ36によって用いられて、DAS32、X線発生器28及びガントリ・モータ制御器30に制御信号及び情報を供給する。加えて、コンピュータ36は、電動テーブル46を制御するテーブル・モータ制御器44を動作させて、患者24及びガントリ12を配置する。具体的には、テーブル46は患者22を図1のガントリ開口48を通して全体として又は部分的に移動させる。
【0015】
本発明の各実施形態によれば、コンピュータ36はさらに、取得されたCT画像データに追加の処理及び解析を施すようにプログラムされている。さらに明確に述べると、コンピュータ36は、血管構造の解析に関連する作用を自動的に実行して、冠動脈又は冠静脈の部分的狭窄のような血管構造の病理学的状態をプラーク沈着から識別/検出するようにプログラムされている。コンピュータ36はさらに、冠動脈の狭窄患部が心筋梗塞のリスクの増大を招き得ることを識別し得るように、血管狭窄の重症度を決定して、重症度に関する自動化診断を出力する。
【0016】
コンピュータ36はさらに、血管の解析及び識別結果の利用者への提示に関わる作用を実行するようにプログラムされている。すなわち、コンピュータ36は(画像再構成器34と共に)、冠動静脈枝の3D画像を形成して、表示器42等に画像を表示させる。図3に、冠動静脈枝50の3D画像の一例を掲げる。冠動静脈枝50の3D画像を表示するときに、コンピュータ36はさらに、画像の大動脈及び冠動静脈を個々にラベルするようにプログラムされている。このように、例えば、冠動静脈枝において左前下行枝動脈(LAD)、左回旋枝動脈(LCx)、後下行枝動脈(PDA)、後側壁枝(PLB)、及び大動脈を他の冠動脈又は冠静脈と共にラベルすることができる。
【0017】
図3にさらに示すように、冠動静脈枝の3D画像は、血管構造において識別/検出されて重要であると看做されるあらゆる狭窄患部を表わす強調部位52を含んでいる。強調部位52はまた、識別/検出された狭窄患部の重症度に関する情報を含んでいる。本発明の実施形態の一例によれば、血管構造において識別/検出された狭窄患部を表わす強調部位52を、予め決められた色分け方式に従って所定色数の一つで表示器に表示する。例えば、検出された狭窄患部を強調するために、「低」重症度を有する狭窄患部を緑で表示し、「中」重症度を有する狭窄患部を黄で表示し、「高」重症度を有する狭窄患部を赤で表示する緑黄赤色方式を実装することができる。狭窄患部の重症度を低、中又は高と分類するための閾値を、プラーク沈着からの冠動脈又は冠静脈の閉塞百分率を閾値設定として用いて設定することができる。
【0018】
本発明の一実施形態によれば、表示器42に冠動静脈枝50の3D画像を表示した後に、図2に示す操作者コンソール40は、3D画像に示されている着目部位52の利用者選択を可能にする。すなわち、利用者は操作者コンソール40を介して、冠動静脈枝50の3D画像において強調されている血管構造の検出された狭窄患部52をクリックする又は選択することができる。特定の強調部位52を選択すると、選択された狭窄部位についてのさらに詳細な情報が提供される。例えば図4に示すように、特定の狭窄患部の利用者選択によって、狭窄の特定の測定データ54のような狭窄の重症度についてのデータの詳細表示、及び狭窄部位の接近視覚化像(1又は複数)56が得られる。接近像(1又は複数)56は、狭窄部位の像を最適化するように利用者によって回転/平行移動させられ得る。上では、操作者コンソール40が、利用者対話(相互作用)及び冠動静脈枝の3D画像に示されている着目部位の選択を可能にするものとして記載されているが、他の選択手段も提供され得ることを認められよう。例えば、表示器42はグラフィック・ユーザ・インタフェイス(GUI)の形態にあってもよいし、接触感受型画面の形態にあってもよく、かかる表示器42によって、利用者は冠動静脈枝の3D画像において強調部位を選択することができる。
【0019】
図5には、図1及び図2のCTシステム10のコンピュータ36によって実装され得るような狭窄状態の自動診断のためのコンピュータ実装型手法60が本発明の一実施形態に従って示されている。本発明の各実施形態によれば、CTシステム10は手法60に従って動作させられて、血管について正確な血管狭窄の視覚化及び診断が下され得るように、プラーク沈着から部分的に狭窄した(すなわち閉塞した)冠動脈又は冠静脈のような血管構造を含む患者の着目部位のCT画像を得る。
【0020】
ステップ62では、心臓部位のような着目部位のCT画像データがCTシステムによって取得される。画像データは、任意数のCT心画像取得手法の一つを介して取得され得る。例えば、データ収集のタイミングを心臓サイクルの所望の時相に近くなるように選択した状態で、2回以上の心臓サイクルからの投影データをCTシステム10によって少なくとも180°+ファン角度の角度範囲のX線ビームについて収集することができる。CT画像データの取得後に、ステップ64において幾つかの公知の画像再構成方法の一つを適用して、着目部位の三次元(3D)画像を形成する。実施形態の一例によれば、心臓部位の画像の運動誘発型ボケ及び他の運動アーティファクトを最小化するように、運動推定及び補正を行なう画像再構成手法を用いる。
【0021】
再構成される3D画像は、血管枝のみならず骨のような他の構造も表示することが認められる。従って、ステップ66では、さらに画像処理を行なって幾つかの公知の手法の一つに従ってCT画像データから冠動静脈枝/血管枝の分離3D画像を形成する。例えば、多数の血管セグメント分割手法及びアルゴリズムの一つを用いて大動脈及び冠動静脈をCT画像データから抽出することができる。実装され得る血管セグメント分割アルゴリズム及び手法の例としては、パターン認識手法、モデル型アプローチ、追跡型アプローチ、人工知能型アプローチ、及びニューラル・ネットワーク型アプローチ等がある。このように、冠動静脈枝の抽出の手法は、閾値処理に続いて連結成分解析を行なうステップ、又は血管表面での凹凸形状を抽出する3D表面表現のように血管輪郭を抽出する陽解法血管モデル化を行なうステップ等を含み得る。
【0022】
冠動静脈枝画像を形成することに加えて、ステップ68において画像の大動脈及び冠動静脈をラベルする。一実施形態によれば、事前に取得した画像(1又は複数)のセグメント分割を行なって冠動静脈枝を生成したら、生成された冠動静脈枝を、冠動静脈枝の各分枝のラベル付けを可能にするように1又は複数の冠動静脈枝モデルと比較する。取得された冠動静脈枝は、これら取得された冠動静脈枝に対して最も近い類似性を有するモデル冠動静脈枝に対応するラベルに基づいてラベルされる。次いで、ラベルされた冠動静脈枝を図2に示すCTシステム10の表示器42に表示することができる。
【0023】
手法60は続けて、ステップ70において各々の大動脈及び冠動静脈の管腔面を決定する。一実施形態によれば、管腔面は、血液密度及び形状制約を用いた方法によって決定される。すなわち、管腔は例えば、動脈を流れる血液の密度に基づいて測定され得る既知の密度を有し、管腔面の密度は血管構造に存在し得る石灰化及び軟質プラークの密度とは異なる。認められるように、3D画像を構成するボクセルの強度値(すなわちCT数又はハンスフィールド数)は組織密度に比例している。従って、管腔、血管壁、石灰化、及びプラークは、それぞれの強度値に基づいて互いから区別され得る。このようにして、管腔面、石灰化、及び軟質プラークの分離は、各々の構造を画定する強度閾値の利用によって達成される。
【0024】
一実施形態によれば、管腔面の決定は、別個の強度に基づく所謂シード(種)・ピクセルを選択することを含んでおり、シード・ピクセルは血管腔に含まれると確実に判明している容積画像データのピクセルとする。シード・ピクセルを用いて、上述の閾値処理手順によって容積画像データの大雑把なセグメント分割を行なう。すなわち、初期画像ピクセルの分布に基づいて選択されるCT数閾値を用いて血管を残部組織から分割することにより血管内部を大雑把に指定する。一般的には、セグメント分割動作の望ましい結果は、相対的に低い強度ピクセルの領域から高強度ピクセルの領域を区別すること又は反対である。セグメント分割動作の結果は、大雑把にセグメント分割された管腔セグメントである。
【0025】
この工程の一部として、閾値規準を満たすピクセルに対して連結性規準を適用する。当業者には認められるように、連結性規準は、大雑把にセグメント分割された管腔セグメントの近傍に位置しないピクセルがセグメント分割工程の出力に含まれないことを保証する。閾値数値は望ましくは、血管の撮像部分の長さに沿って連続的な経路を保ちつつ血管が隣接した物質(例えば器官組織)からセグメント分割され得るように、利用者によって選択される。さらに具体的には、血管の内部の点が選択され、血管(動脈等)を上述のように残部組織(例えば動脈によって供給される器官の構造を含む)から適当にセグメント分割するように閾値限度が選択される。閾値を管腔の最大ピクセル輝度の大部分として選択すると、管腔の外部の領域は大雑把なセグメント分割動作によって排除される。一方、閾値はまた好ましくは、大雑把な管腔セグメントが撮像部分の長さに沿って連続となることを保証するように選択される。
【0026】
大雑把なセグメント分割は、血管腔の初期決定を提供するが、望ましくは境界的なピクセルを排除するように設計される。次いで、管腔面に(局所的な管腔中心線に直交する方向に)位置する輪郭ボクセルを検出することにより、大雑把なセグメント分割結果からピクセルのさらに正確な分類が行なわれる。すなわち、ボクセルが、管腔面に属しない少なくとも一つのボクセルに隣接している場合には、これらのボクセルを管腔面の輪郭ボクセルに位置するものと看做すことができる。一実施形態によれば、輪郭ボクセルは、輪郭ボクセルを検出するために連結性規準及び血管腔の所謂マスクを実装したモルフォロジ演算を用いて検出される。管腔面のさらに一層正確な決定は、さらなる処理の実行によって達成され得る。一実施形態によれば、管腔面のボクセル下(sub-voxel)分解を輪郭平滑化及び長手方向平滑化の適用と併用して、さらに正確な管腔面検出を達成することができる。
【0027】
管腔面検出の一部として、追尾用管腔中心線も任意の適当な中心線推定方法に従って決定される。冠動静脈枝の各々の血管についての管腔中心線の大雑把な推定は管腔の3D画像から決定され得るが、管腔面の推定後に管腔中心線をあらためて中心決定することが望ましい。血管腔面の正確な識別によって、管腔の真の中心線を画定し、中心線の追尾を妨げる可能性のある血管の任意の石灰化及びプラークの影響を打ち消すことが可能になる。管腔面を示す血管の断面図を図6に掲げる。実行されるステップ70(図5)に従って、管腔面82が、追尾中心線84と共に検出される。
【0028】
図5に戻り、手法60はステップ72に続き、検出された管腔面は、理想的な又は「健全な」管腔面を生成するように歪処理される。健全な又は無狭窄の管腔と記述され得るものをモデル化した理想的な管腔面を生成するために管腔面を締め付けるように加えられる力等によって、検出される管腔面に対して輪郭画定又は形状修正を行なう。理想的な又は健全な管腔面についての測定を取得して、検出される管腔面との後の比較に用いるために記憶する。
【0029】
このように、冠動静脈枝の各々の血管についての理想的な管腔面の生成の後に、手法60はステップ74に続き、各々の血管について理想的な管腔面に対して検出された管腔面の比較を行なう。一実施形態によれば、この比較は、血管に存在する狭窄度の決定を可能にする。すなわち、検出された血管腔面の半径/直径測定及び理想的な血管腔面の半径/直径測定を含めた各々の血管についての理想的な管腔面に対する検出された管腔面の比較、並びに狭窄に起因する血管の閉塞百分率の決定に基づいて、狭窄の程度の測定を決定することができる。
【0030】
各々の血管についての理想的な管腔面に対する検出された管腔面の比較に基づいて、ステップ76において、懸念され得る狭窄部位を自動的に識別し、各々の識別された狭窄部位についての狭窄重症度を決定する。本発明の一実施形態によれば、識別及び重症度決定は、狭窄測定/計算(すなわち血管の管腔半径/直径測定及び/又は閉塞百分率)を1又は複数の予め決められた閾値に対して比較することにより為される。懸念可能性のある部位として識別された血管セグメントについての狭窄の重症度は、一実施形態によれば、「低」、「中」、又は「高」と単純に分類することができるが、他のさらに複雑な重症度分類を用いてもよいことが認められよう。重要なこととして、ステップ62〜76の各々は、利用者による入力又は計算を行なうことなくコンピュータ36によって自動的に行なわれることが特記される。
【0031】
手法60の次のステップでは、ステップ78において、識別された狭窄部位が冠動静脈枝の3D表示画像において強調される。上述のように、血管構造において識別/検出されて重要であると看做されるあらゆる狭窄部位が強調されて、利用者/操作者に対して評価し易い態様でかかるデータを提供する。一実施形態によれば、狭窄部位を表わす強調部位は、検出される狭窄患部の重症度に基づいて緑色、黄色、又は赤色の何れかで表示され得る。緑で表示される狭窄患部は「低」重症度を有し、黄で表示される狭窄患部は「中」重症度を有し、赤で表示される狭窄患部は「高」重症度を有する。
【0032】
本発明の一実施形態によれば、手法60はステップ80に続き、利用者指定の狭窄部位についての詳細情報を提供する。すなわち、操作者コンソール40(図2)によるかかる部位のクリック/選択等によって、表示されている3D冠動静脈枝において識別された1又は複数の強調狭窄部位の利用者選択が可能になる。特定の強調部位の選択は、狭窄の測定の表示及び狭窄部位の接近視覚化像のように、選択された狭窄部位についてのさらに詳細な情報を提供する。
【0033】
開示された方法及び装置の技術的寄与は、診断時間を最短にするように効率のよい態様で血管の病理学的状態を自動的に識別して表示するコンピュータ実装型方法及び装置を提供することである。開示された方法及び装置は、血管の狭窄のレベルを自動的に定量化して診断するコンピュータ実装型方法及び装置を提供する。
【0034】
当業者は、本発明の各実施形態が、コンピュータ・プログラムを記憶したコンピュータ可読の記憶媒体に結び付けられて制御され得ることを認められよう。コンピュータ可読の記憶媒体は、電子的構成要素、ハードウェア構成要素、及び/又はコンピュータ・ソフトウェア構成要素の1又は複数のような複数の構成要素を含んでいる。これらの構成要素は、連鎖を成す1若しくは複数の具現化形態又は実施形態の1若しくは複数の部分を実行するソフトウェア、ファームウェア、及び/又はアセンブリ言語のような命令を一般に記憶する1又は複数のコンピュータ可読の記憶媒体を含み得る。これらコンピュータ可読の記憶媒体は一般的には、非一時的であり且つ/又は有形である。かかるコンピュータ可読の記憶媒体の例としては、コンピュータの記録可能なデータ記憶媒体及び/又は記憶装置等がある。コンピュータ可読の記憶媒体は例えば磁気式、電気式、光学式、生物式、及び/又は原子式のデータ記憶媒体の1又は複数を用いていてよい。さらに、かかる媒体は、例えばフロッピィ・ディスク、磁気テープ、CD−ROM、DVD−ROM、ハード・ディスク・ドライブ、及び/又は電子メモリの形態を取り得る。列挙されていない他の形態の非一時的であり且つ/又は有形であるコンピュータ可読の記憶媒体を本発明の各実施形態と共に用いてもよい。
【0035】
多数のかかる構成要素がシステムの具現化形態において結合され又は分割され得る。さらに、かかる構成要素は、当業者には認められるように多数のプログラミング言語の任意のもので書かれ又は具現化された一組及び/又は一連のコンピュータ命令を含み得る。
【0036】
従って、本発明の一実施形態によれば、CTシステムが、走査される患者を収容する開口を有する回転式ガントリと、回転式ガントリに配置されており、複数の血管を含む患者の着目部位へ向けてX線を投射するように構成されているX線源と、回転式ガントリに配置されており、X線源によって放出されて着目部位によって減弱されたX線を受光するように配置されているX線検出器と、X線検出器に接続されて動作するデータ取得システム(DAS)とを含んでいる。このCTシステムはまた、着目部位についてのCT画像データを取得し、CT画像データから複数の血管の3D(三次元)画像を再構成し、複数の血管の病理学的状態を自動的に検出して、病理学的状態の重症度を3D画像に指示した状態で3D画像において複数の血管の病理学的状態を識別するようにプログラムされているコンピュータを含んでいる。
【0037】
本発明のもう一つの実施形態によれば、コンピュータ・プログラムを記憶した非一時的なコンピュータ可読の記憶媒体が提供され、コンピュータ・プログラムはコンピュータによって実行されると、計算機式断層写真法(CT)システムのX線源に、走査手順の間に患者へ向けてX線を放出させて、走査から、患者の大動脈及び冠動静脈を含めて心臓部位を含む患者の着目部位についてのCT画像データを取得することをコンピュータに行なわせる命令を含んでいる。命令はまた、CT画像データから患者の大動脈及び冠動静脈を含む冠動静脈枝の3D画像を形成して表示し、大動脈及び冠動静脈の各々の管腔面を検出して、理想的な管腔面をモデル化するために大動脈及び冠動静脈の各々の管腔面を歪処理することをコンピュータに行なわせる。命令はさらに、それぞれの検出された管腔面と理想的な管腔面との比較に基づいて大動脈及び冠動静脈の各々の狭窄状態を決定して、冠動静脈枝の3D画像において大動脈及び冠動静脈の各々の狭窄状態を指示することをコンピュータに行なわせる。
【0038】
本発明のさらにもう一つの実施形態によれば、計算機式断層写真法(CT)撮像の方法が、血管構造を内部に含む患者の着目部位についてのCT画像データを取得するステップと、着目部位の血管構造に対応するボクセルを識別するためにCT画像データを解析するステップと、識別されたボクセルから患者の3D動脈枝画像を形成するステップとを含んでいる。この方法はまた、動脈枝の各々の血管の管腔面を検出するステップと、理想的な管腔面をモデル化するために各々の血管の管腔面を歪処理するステップとを含んでいる。この方法はさらに、それぞれの検出された管腔面と理想的な管腔面との比較に基づいて血管の狭窄部位を識別するステップと、識別された狭窄部位の各々の狭窄重症度を3D動脈枝画像に指示するステップとを含んでいる。
【0039】
この書面の記載は、最適な態様を含めて発明を開示し、また任意の装置又はシステムを製造して利用すること及び任意の組み込まれた方法を実行することを含めてあらゆる当業者が発明を実施することを可能にするように実例を用いている。特許付与可能な発明の範囲は特許請求の範囲によって画定されており、当業者に想到される他の実例を含み得る。かかる他の実例は、特許請求の範囲の書字言語に相違しない構造要素を有する場合、又は特許請求の範囲の書字言語と非実質的な相違を有する等価な構造要素を含む場合には、特許請求の範囲内にあるものとする。
【符号の説明】
【0040】
10:計算機式断層写真法(CT)イメージング・システム
12:ガントリ
14:X線源
16:投射X線
18:検出器アセンブリ
20:複数の検出器
22:患者
24:回転中心
26:制御機構
28:X線発生器
30:ガントリ・モータ制御器
32:データ取得システム(DAS)
34:画像再構成器
36:コンピュータ
38:大容量記憶装置
40:操作者コンソール
42:表示器
44:テーブル・モータ制御器
46:電動テーブル
48:ガントリ開口
50:冠動静脈枝
52:強調部位
54:測定データ
56:狭窄部位の接近像
60:狭窄状態の自動診断のためのコンピュータ実装型手法
82:管腔面
84:追尾中心線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走査される患者を収容する開口を有する回転式ガントリ(12)と、
該回転式ガントリ(12)に配置されて、複数の血管を含む前記患者の着目部位へ向けてX線を投射するように構成されているX線源(14)と、
前記回転式ガントリ(12)に配置されて、前記X線源(14)により放出されて前記着目部位により減弱されたX線(16)を検出するように配置されているX線検出器(18)と、
該X線検出器(18)に接続されて動作するデータ取得システム(DAS)(32)と、
コンピュータ(36)と
を備えた計算機式断層写真法(CT)システム(10)であって、前記コンピュータ(36)は、
前記着目部位についてのCT画像データを取得し、
該CT画像データから前記複数の血管の三次元(3D)画像を再構成し、
前記複数の血管の病理学的状態を自動的に検出して、
前記病理学的状態の重症度を前記3D画像に指示した状態で前記3D画像において前記複数の血管の前記病理学的状態を識別するようにプログラムされている、計算機式断層写真法(CT)システム(10)。
【請求項2】
前記コンピュータ(36)は、
前記複数の血管の各々の管腔面を検出し、
理想的な管腔面をモデル化するために前記複数の血管の各々の前記管腔面を歪処理し、
前記複数の血管のプラーク物質を識別するために、前記複数の血管の各々の前記検出された管腔面を前記理想的な管腔面に対して比較して、
前記3D画像において、前記識別されたプラーク物質に基づいて前記複数の血管の狭窄患部を自動的に強調する
ようにさらにプログラムされている、請求項1に記載の計算機式断層写真法(CT)システム(10)。
【請求項3】
前記コンピュータ(36)は、
前記識別されたプラーク物質に基づいて前記複数の血管の各々の狭窄患部の重症度を決定して、
前記狭窄患部の前記決定された重症度に基づいて複数の予め決められた色の一つで前記複数の血管の前記狭窄患部を強調する
ようにさらにプログラムされている、請求項2に記載の計算機式断層写真法(CT)システム(10)。
【請求項4】
前記コンピュータ(36)は、前記狭窄患部の前記決定された重症度に基づいて緑色、黄色、及び赤色の一つで前記狭窄患部を強調するようにさらにプログラムされている、請求項3に記載の計算機式断層写真法(CT)システム(10)。
【請求項5】
前記コンピュータ(36)は、
前記CT画像データから冠動静脈枝の3D画像を再構成して、
前記冠動静脈枝の前記3D画像において大動脈及び冠動静脈を自動的に識別してラベルする
ようにさらにプログラムされている、請求項4に記載の計算機式断層写真法(CT)システム(10)。
【請求項6】
前記コンピュータ(36)は、血液密度解析及び形状制約の少なくとも一方を用いて前記複数の血管の各々の前記管腔面を分離するようにさらにプログラムされている、請求項2に記載の計算機式断層写真法(CT)システム(10)。
【請求項7】
前記コンピュータ(36)は、
前記複数の血管の各々について前記管腔面の中心線を決定し、
該中心線に直交する方向に前記複数の血管の各々について前記管腔面に位置する輪郭ボクセルを検出して、
前記複数の血管の各々について前記管腔面の前記輪郭ボクセルに輪郭平滑化及び長手方向平滑化を適用する
ようにさらにプログラムされている、請求項6に記載の計算機式断層写真法(CT)システム(10)。
【請求項8】
前記コンピュータ(36)は、前記理想的な管腔面を生成するように前記管腔面の輪郭を画定し形状を修正するための力を前記複数の血管の各々に加えるようにさらにプログラムされている、請求項2に記載の計算機式断層写真法(CT)システム(10)。
【請求項9】
前記複数の血管の前記3D再構成画像を表示するように構成されている画像表示器をさらに含んでいる請求項1に記載の計算機式断層写真法(CT)システム(10)。
【請求項10】
前記3D表示画像において前記識別された病理学的状態の利用者選択を提供するように構成されている利用者入力装置をさらに含んでおり、識別された病理学的状態の利用者選択により、病理学的状態関連の測定データ及び前記利用者選択の病理学的状態に関連する接近視覚化像が前記画像表示器に表示される、請求項9に記載の計算機式断層写真法(CT)システム(10)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−59620(P2013−59620A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−194633(P2012−194633)
【出願日】平成24年9月5日(2012.9.5)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】