説明

血管系の健康改善に有用な熱処理されたカカオ製品

本発明は、水溶液中でポリフェノールを熱処理することによって得られる、フラバノール、プロシアニジン、およびそれらの誘導体などのポリフェノールを含む組成物、および、フラバノール、プロシアニジン、およびそれらの誘導体のエピマーを含む組成物、ならびにそれを利用したNO応答性の疾病または障害の治療または予防上の処置に関する。本発明はまた、エピカテキンおよびカテキンの総量は変化せず、また新しい2量体が存在し、3量体よりも高度のオリゴマーが存在しない、改質されたモノマーまたはオリゴマーの特性を特徴とする、熱処理したカカオ粉末およびカカオ抽出物に関する。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は、「血管系の健康改善用製剤(Formulations for Vascular Health Improvement)」として2005年6月29日に出願した、米国仮特許出願第60/695,361号の優先権を主張する国際特許出願である。
【技術分野】
【0002】
本発明は、ポリフェノール含有生成物を熱処理することによって得られる、フラバン−3−オール、プロシアニジンおよびそれらの誘導体といったポリフェノールを含む組成物、フラバン−3−オールとプロシアニジンのエピマーを含む組成物、ならびにそれを利用したNO応答性の疾病または障害の治療および予防方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ポリフェノール類は、多様性に富む化合物群である(非特許文献1)。それらは、様々な植物で広く産生され、食物連鎖の一部に組み込まれているものもある。時には、それらは人間の食物の重要な化合物群を意味する。例えば、フラバノールとプロシアニジンは、一酸化窒素(NO)に効果があることが示されている(例えば、特許文献1)。NOは、血小板凝集能、単球の接着性と走化性、および、アテロームの発生過程に決定的に関与する血管平滑筋組織の拡散を阻害することが知られている。産生が、阻害剤またはアテローム性動脈硬化症などの病理状態によって阻害されることにより、NOの血中濃度が低下する場合、血管筋は適度には弛緩しない。 結果として生じる血管収縮が血圧を上昇させ、ある種の高血圧症に関与するであろう。高血圧症は、脳梗塞、心臓発作、心不全、および腎不全を含む血管系の疾患の主要原因である。
【0004】
NO応答性の疾病または障害に悩む多数の人々のことを考慮すると、これらの病状を予防・治療する様々な治療法の発見には、大きな関心が寄せられている。出願人は、本明細書に記載される特定の化合物がこれらの用途に利用できることを見出している。
【特許文献1】米国特許第6,670,390号明細書
【非特許文献1】Ferriera et al, Tetrahedron, 48:10, 1743-1803, 1992
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、熱処理されたフラバノール(単量体)とプロシアニジン(オリゴマー)、および/またはフラバノールとプロシアニジンのエピマー、これらの化合物を含む組成物、ならびにNO応答性の疾病または障害の治療・予防方法に関する。
【0006】
1つの態様では、本発明は、本発明にかかる化合物またはそれらの誘導体をNO応答性の疾病または障害に効果的な量で含む、医薬品、食品、食品添加物、または栄養補助食品に関する。組成物は、随意的に、さらなる治療薬または健康に良い薬剤を含んでも差し支えなく、あるいは、別の治療薬または健康に良い薬剤と併用して投与しても構わない。上記組成物、NO応答性の疾病/障害の治療または予防に用いるラベルおよび/または使用説明書を収容している包装された製品もまた、本発明の範囲内にある。
【0007】
1つの態様では、本発明は、(−)−カテキンを含む飲料を、それを必要としている被験者に投与することによって、血管系の疾患または障害を治療または予防する方法を提供し、その際、被験者はヒトまたは獣動物である。(−)−カテキンは、単量体化合物として、あるいは、本明細書で構造式Eと定義されるオリゴマー化合物および/または本明細書で構造式Aと定義されるオリゴマー化合物を熱処理して得られる化合物の構成成分であるモノマー単位として、飲料中に存在して差し支えない。典型的には、飲料はココアまたはチョコレート含有飲料、もしくはチョコレート風味飲料である。
【0008】
別の態様では、本発明は、本発明にかかる化合物を効果的な量で投与することによる、ヒトまたは獣動物などの哺乳類におけるNO応答性の疾病または障害を予防または治療する方法に関する。
【0009】
さらに別の態様では、本明細書に記載される化合物を調製する方法を提供する。
【0010】
さらに別の態様では、本発明は、(±)−カテキンと(±)−エピカテキン、およびそれらのプロシアニジン・オリゴマーを含み、脱脂粉末に対する総CP含有量が少なくとも15mg/gであり、熱処理されていない高CPカカオ粉末と比較して、単量体とオリゴマーの改質されたHPLC特性を有する、熱処理され、一部または完全に脱脂された高CPカカオ粉末に関する。
【0011】
本発明はまた、乾燥カカオ抽出物に対する総CP含量が、少なくとも175mg/gであり、また、熱処理されていないカカオ抽出物と比較して、改質された特性を有する、乾燥または液体の、熱処理された高CPカカオ抽出物に関する。
【0012】
さらに別の態様では、本発明は、熱処理されていないカカオ製品と比較して、改質された特性を有する、ココア飲料などの熱処理されたカカオ製品に関する。製品は、カカオ粉末、液体または乾燥カカオ抽出物、および/またはカカオマス(チョコレートリカー)などの高CPカカオ成分を有する。製品が低水分含量である場合、その製品は、製品に対して、少なくとも約6mg/gの総カカオポリフェノール(CP)を含む。製品は、カテキン1に対するエピカテキンの比が1以上であることが好ましい。製品が、飲料などの高水分含量製品の場合、その製品は、製品に対し約0.2mg/gの総カカオポリフェノールを含む。
【0013】
改質された特性を有する高CPカカオ粉末、高CPカカオ抽出物、高CPカカオ製品を、一部または完全に脱脂したカカオ粉末の水分散液、もしくは、未発酵または発酵が不十分なカカオ豆から調製した乾燥カカオ抽出物を、加熱することにより調製する。カカオ成分は、約37℃〜約200℃で、(−)−エピカテキンをエピマー化するのに十分な時間およびpHで、例えば、約0.5分〜数日間、加熱されることが好ましい。それらは、約72℃〜約160℃で約1分〜約6.0時間、加熱されることが好ましい。 それらは、約100℃〜約140℃で約1分〜約4時間、加熱されることがさらに好ましい。
本明細書中に引用するすべての特許、特許出願および引用文献を、参照することにより本明細書中に援用する。一致しない場合には、本明細書の開示が適用される。
【0014】
本発明は、熱処理されたフラバノール(単量体)およびプロシアニジン(オリゴマー)、および/またはフラバノールとプロシアニジンのエピマー、こういった化合物を含む組成物、およびNO応答性の疾病または障害の治療・予防方法に関する。
【0015】
最新の命名法に従い、本明細書では、「フラバノール」という用語は、例えばカテキン、エピカテキンなどの単量体を称する。カテキンとエピカテキンのオリゴマーは、プロシアニジンと称される。しかしながら、本発明の開示の目的には、これらの用語は同義的に用いて差し支えない。さらには、当然のことながら、本明細書におけるポリフェノールについての言及は、フラバノールとプロシアニジンの組合せ、またはそれらについて個別に、適用される。
【0016】
本発明は、第1化合物と、下記構造式Aを有する第2化合物、もしくは医薬品的に認容可能なそれらの塩または誘導体(例えば、酸化生成物、メチル誘導体、グルクロン酸誘導体)を熱処理することによって入手し、または入手可能な第1化合物を効果的な量で含む組成物に関し:
【化1】

【0017】
ここで、
nは、2〜18の整数であり、
RとXはそれぞれ、αまたはβ型の立体化学を有し、
Rは、OH、O−糖またはO−没食子酸塩であり、
C−4、C−6、C−8置換基は、それぞれX、Z、Yであり、モノマー単位の結合は、C−4、C−6またはC−8で生じ、
C−4、C−6またはC−8のいずれも別のモノマー単位と結合しない場合は、各X、YまたはZは、水素または糖であり、
前記糖は、随意的に、例えばエステル結合を介してなど、いずれかの位置でフェノール部分に置換される。
【0018】
本明細書では、「熱処理によって得られた化合物」、「熱処理によって入手できる化合物」または「化合物は熱処理される」という語句は、化合物が水の存在下、十分な時間で十分に加熱され、化合物の化学構造および/または機能に改変を生じさせた/させることを意味する。温度が低いほど、変化を生じさせるのに要する加熱の時間が長くなる。例えば、変化を、加熱温度を周囲温度から140℃まで上昇させ、pHを約3.8〜約7まで上昇させ、および/または加熱時間を増大させることによって、最大化させてもよい。平衡に到達させるためには、温度および/またはpHを上昇させる必要がある。こういった温度および時間は、少なくとも40℃であり、少なくとも50℃であることがより好ましく、少なくとも10時間であり、少なくとも24時間であることがより好ましく、少なくとも48時間であることがさらに好ましいであろう。もしくは、少なくとも60℃、少なくとも70℃、少なくとも80℃、少なくとも90℃、少なくとも100℃、少なくとも110℃、または、少なくとも120℃で、それぞれ、少なくとも5分、もしくは少なくとも10分、15分、または20分間であろう。例えば、化合物は、120度で10分間、処理されて構わない。別の熱処理の例を実施例1に記載する。他の温度/時間/pHの組合せもまた効果的であり、当業者は、本明細書が提供する指針を用いて、必要以上の実験をすることなくそれらを決定するであろう。HPLC/MS分析などの既知の技術を、例えば実施例1に記載されるような化合物の変化のモニタに用いてもよい。
【0019】
上記構造式中のモノマー単位は、4→6および4→8の連結による結合でも構わない。(4→8)の連結のみのオリゴマーは直鎖状であり、少なくとも1つの(4→6)結合が存在する場合は、分岐鎖オリゴマーとなる。非天然の連結(6→6)、(6→8)、(8→8)のうち少なくとも1つを含む熱処理されたオリゴマーもまた、本発明の範囲にある。このような連結を有するオリゴマーは、米国特許第6,156,912号明細書に記載のように調製して差し支えなく、ここに参照することより、本明細書に援用する。
【0020】
糖は、グルコース、ガラクトース、ラムノース、キシロース、およびアラビノースからなる群より選択されて差し支えない。糖は、単糖もしくは二糖であることが好ましい。フェノール部分は、コーヒー酸、ケイヒ酸、クマリン酸、フェルラ酸、没食子酸、ヒドロキシ安息香酸およびシナピン酸からなる群より選択される。
【0021】
誘導体の例として、エステル、酸化生成物、メチル誘導体、グルクロン酸化生成物が挙げられる。酸化生成物は、米国特許第5,554,645号明細書に記載のように調製して差し支えなく、ここに参照することより、本明細書に援用する。例えば没食子酸とのエステルなどのエステルは、米国特許第6,420,572号明細書に記載のように調製してよく、ここに参照することより、本明細書に援用する。3’O−メチル−、4’O−メチル−、および3’O,4’O−ジメチル−誘導体などのメチル誘導体は、例えば、クレン-オリーブ(Cren-Olive)らの2002, J. Chem. Soc. Perkin Trans. 1, 821-830に記載のとおりに調製して差し支えない。グルクロン酸化生成物は、ユー(Yu)らの"A novel and effective procedure for the preparation of glucuronides." Organic Letters, 2(16) (2000) 2539-41およびスペンサー(Spencer)らの2001, Free Radical Biol. Med. 31(9),1139-46に記載のとおりに調製して差し支えない。
【0022】
連結、糖、フェノール部分、および誘導体に関する上記の開示は、本明細書に開示されるすべての化合物に適用可能であるが、簡潔な記載とするため、ここでは繰り返さない。
【0023】
本明細書に記載される構造式AまたはEの化合物に関しては、これら化合物の例として、整数nが3〜18、2〜12、3〜12、2〜5、4〜12、5〜12、3〜10、4〜10、または5〜10の化合物が挙げられる。nが2である化合物AまたはEもまた、本発明の範囲内にある。
【0024】
1つの実施の形態では、本発明は第1化合物、および、構造式Aを有する第2化合物を熱処理することにより入手し、または入手可能な第1化合物、またはそれらの医薬品的に認容可能な塩または誘導体(酸化生成物、メチル誘導体、グルクロン酸誘導体を含む)を効果的な量で含む組成物に関し:
【化2】

【0025】
ここで、
nは、2〜18の整数であり、
RおよびXはそれぞれ、αまたはβ型の立体化学を有し、
Rは、OHであり、
C−4、C−6、C−8の置換基は、それぞれX、Z、Yであり、モノマー単位の結合は、C−4、C−6、C−8で生じ、
C−4、C−6、C−8のいずれも別のモノマー単位と結合しない場合、各X、Y、Zは水素である。
【0026】
ある実施の形態では、化合物は、熱処理されたプロシアニジンの2量体または3量体、すなわち、構造式Aにおいて、n=2またはn=3である。熱処理する前のこれら2量体または3量体のモノマー単位は、すべて(−)−エピカテキンである。これら2量体の例として、(−)−エピカテキン−(4β→8)−(−)−エピカテキンおよび(−)−エピカテキン−(4β→6)−(−)−エピカテキンがある。
【0027】
熱処理に用いられる2量体または3量体もしくは他のオリゴマーを、単離・精製により、または当技術分野で既知の方法で合成することにより調製して差し支えなく、あるいは、例えばフラバノールおよび/または他のプロシアニジンとの混合物として扱っても良い。これら混合物は、例えば、植物の抽出物(例えばカカオ抽出物)、植物源(例えばココア)から単離された2量体または他のオリゴマー画分、もしくは、カカオ粉末などのココア材料でもよい。カカオ抽出物は、例えば、米国特許第5,554,645号明細書に記載のように調製して差し支えなく、カカオ粉末は、当技術分野で既知のように調製して差し支えなく、フラバノール/プロシアニジンをある程度保有するカカオ粉末については、米国特許第6,015,913号明細書に記載のように調製してよい。精製された個々の2量体、2量体混合物または合成化合物を熱処理する場合、それらの純度は、例えば、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約92%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%であって構わない。上記純度は、構造式Aの化合物、本明細書に記載されているその塩および誘導体に用いて差し支えない。
【0028】
実施例1に開示される2量体(例えば図4を参照)、および、例えばココアまたはチョコレート飲料などの飲料のようなこれら2量体を含む組成物もまた、本発明の範囲内にある。図4を参照すると、577m/zの擬分子イオンの抽出イオンクロマトグラム(EIC)は、処理済の飲料において検出された2量体を示している。新しい2量体の溶離時間は、12.6、14.5(最大ピーク)、16.9、18.8、および22.6分である。上記分離に効果的に使用されるHPLC法は、次のとおりである:
固定相:ハイパーシル(Hypersil) ODS 100×4.6mm 粒径5μm
移動相A:0.1% HOAc/水
移動相B:0.1% HOAc/MeOH
流速:1.0ml/分

【0029】
熱処理された(+)−カテキンと(−)−エピカテキン、およびそれらの誘導体(没食子酸誘導体を除く)、ならびに、例えばココアまたはチョコレート飲料などの飲料等、フラバノールを含む組成物もまた、本発明の範囲内にある。
【0030】
本発明は、さらに、次の構造式Eを有する化合物、およびその化合物を効果的な量で含む組成物、もしくはそれらの医薬的に認容可能な塩または誘導体を含む組成物(酸化生成物、メチル誘導体、グルクロン酸誘導体を含む)に関し:
【化3】

【0031】
ここで、
nは、2〜18の整数であり、
RおよびXはそれぞれ、αまたはβ型の立体化学を有し、
Rは、OH、O−糖またはO−没食子酸塩であり、
C−4、C−6、C−8の置換基はそれぞれX、Z、Yであり、モノマー単位の結合はC−4、C−6またはC−8で生じ、
C−4、C−6またはC−8のいずれも別のモノマー単位と結合しない場合は、各X、YまたはZは、水素または糖であり、
前記糖は、随意的に、例えばエステル結合でなど、いずれかの位置においてフェノール部分で置換され、
少なくともモノマー単位の1つが次の構造式:
【化4】

【0032】
を有する。
【0033】
構造式Aの化合物では、上記構造式中のモノマー単位は、上述の連結によって結合されてもよい。上記構造式Aの化合物では、糖、フェノール部分、誘導体は、上記のとおりである。
【0034】
別の実施の態様では、本発明は、構造式Eを有する化合物またはそれらの医薬品的に認容可能な塩または誘導体(酸化生成物、メチル誘導体、グルクロン酸誘導体を含む)、その化合物を効果的な量で含む組成物に関し:
【化5】

【0035】
ここで、
nは、2〜18の整数であり、
RおよびXはそれぞれ、αまたはβ型の立体化学を有し、
Rは、OHであり、
C−4、C−6、C−8の置換基は、それぞれX、Z、Yであり、モノマー単位の結合は、C−4、C−6、C−8で生じ、
C−4、C−6またはC−8のいずれも別のモノマー単位と結合しない場合、各X、Y、Zは水素であり、
少なくともモノマー単位の1つが次の構造式:
【化6】

【0036】
を有する。
【0037】
構造式Eの化合物の例として、整数nが3〜18、2〜12、3〜12、2〜5、4〜12、5〜12、4〜10、または5〜10の化合物が挙げられる。いくつかの実施の形態では、化合物は、エピマーの形態中に少なくとも1つのモノマー単位を有するプロシアニジンの2量体または3量体である。ある実施の形態では、化合物Eは、2量体または3量体、すなわち、n=2またはn=3である。
【0038】
例えば、本発明は、次の構造式Eを有する化合物またはそれらの医薬品的に認容可能な塩または誘導体(酸化生成物、メチル誘導体、グルクロン酸誘導体を含む)、およびその化合物を効果的な量で含む組成物に関し:
【化7】

【0039】
ここで、
nは2であり、
RおよびXはそれぞれ、αまたはβ型の立体化学を有し、
Rは、OH、O−糖またはO−没食子酸塩であり、
C−4、C−6、C−8の置換基は、それぞれX、Z、Yであり、モノマー単位の結合は、C−4、C−6またはC−8で生じ、
C−4、C−6またはC−8のいずれも別のモノマー単位と結合しない場合は、各X、YまたはZは、水素または糖であり、
前記糖は、随意的に、例えばエステル結合によって、いずれかの位置がフェノール部分に置換され、
少なくともモノマー単位の1つが(−)−カテキンである。
【0040】
別の例では、本発明は、構造式Eを有する化合物またはそれらの医薬品的に認容可能な塩または誘導体(酸化生成物、メチル誘導体、グルクロン酸誘導体を含む)、およびその化合物を効果的な量で含む組成物に関し:
【化8】

【0041】
ここで、
nは2であり、
RおよびXはそれぞれ、αまたはβ型の立体化学を有し、
Rは、OHであり、
C−4、C−6、C−8の置換基は、それぞれX、Z、Yであり、モノマー単位の結合は、C−4、C−6、C−8で生じ、
C−4、C−6またはC−8のいずれも別のモノマー単位と結合しない場合、各X、Y、Zは水素であり、
少なくともモノマー単位の1つが(−)−カテキンである。
【0042】
当技術分野で既知のように、エピマーとは、例えば2以上の不斉炭素原子のうちの1つなど、2以上の四面体の立体中心の1つのみが逆配置になっているジアステレオ異性体のことである。本明細書に記載される化合物の種類については、エピマーは、不斉炭素中心C−2およびC−3のうちの1つが逆転した立体配置を有している。
【0043】
本明細書では、エピマーという用語は、C−2の炭素原子の立体化学がβとなるように、環のC−2炭素原子が反転している化合物に適用する。天然に存在するフラバノールおよびプロシアニジンでは、典型的に、C−2炭素原子がαの立体化学を有する。
【0044】
本発明は、フラバノールの(+)−カテキンおよび(−)−カテキンの炭素2(C−2)エピマー、すなわち、(+)−カテキンおよび(−)−カテキン、ならびにそれらの誘導体(例えば、メチル誘導体、グルクロン酸誘導体、および没食子酸を除く酸化生成物)およびそれらの化合物を含む組成物も包含している。
【0045】
使用方法
本明細書に記載されるいずれかの化合物および/または組成物について、本願に記載される方法を実施して差し支えない。
【0046】
本明細書では、「血管系の疾病または障害」とは、心臓および脳を含む脈管系に影響を及ぼす疾病または障害のことをいう。これらの状態の例として、アテローム性動脈硬化症、血栓症、高血圧症(例えば、二次性および肺高血圧症など)、循環器疾患(CVD)、冠動脈疾患(CAD)(心筋虚血、心筋梗塞症、安定および不安定狭心症、急性閉塞または再狭窄を含む)、糖尿病(I型およびII型)(例えば、糖尿病の血管合併症)、認知機能障害または認知障害および/または循環器系障害(脳についてのものも含む)、心臓麻痺、脳血管障害(脳梗塞、初期または再発性の一過性脳虚血発作、または、例えば冠動脈血管形成術または経皮冠動脈インターベンション後などの虚血性合併症を含む)、鬱血性心不全、腎不全、腎臓病、末梢血管障害、さらに具体的にはレイノー病などの末梢血管の血管収縮(例えば腕または脚の血管など)に関連する疾病および疾患、末梢動脈障害、間欠性跛行、脈管炎(例えば、微小血管の)、血管けいれん、静脈血栓症、静脈機能不全、リンパ腺機能不全、重症虚血肢、急性虚血肢、アテローム塞栓症、および下肢動脈血行不全が挙げられる。
【0047】
「NO応答性の疾病または障害」とは、NOでの治療に反応を示す健康状態のことをいう。これらの状態の例として、限定はしないが、NO媒介性またはNO依存性の疾病および障害が挙げられ、その疾病/障害の病理は、NO経路の機能異常に起因する。例えば、病状として、高血圧症(例えば原発性、二次性、肺高血圧症など)、循環器系疾患、冠動脈疾患、糖尿病(I型およびII型)(例えば糖尿病の血管合併症)、鎌状赤血球貧血、認知機能障害または認知障害、および/または循環器系障害(脳についてのものも含む)、心臓麻痺、脳梗塞、鬱血性心不全、腎不全、腎臓病が挙げられる。高血圧は、心臓麻痺、脳梗塞、鬱血性心不全、腎不全の危険性を増大させることから、血管緊張を低下させる上記化合物を単独または他の血管系(心臓血管を含む)を保護する薬剤と共に使用して、これらの病状を抑制することができる。特に好ましい被験者として、高血圧症と、糖尿病、肥満症、悪影響を与える脂質状態(例えば高濃度コレステロール)および/または喫煙者の組合せが挙げられ、それら患者では、心臓麻痺と脳梗塞の危険性が数倍に増加する。一般に、少なくとも1つの循環器系疾患の危険因子(米国心臓病協会で認識されるような)を有する被験者に対して、本明細書に記載の治療をしても差し支えない。
【0048】
本明細書では、「治療」は、例えば、疾患の進行を遅らせ、生存期間を延長し、死亡の危険性を低下し、および/または疾病のパラメーターをある程度改善させることによって、循環器系疾患などの現存の病状を改善することを意味する。
【0049】
「予防する」という用語は、病気の発症の低減を含めた、病気の発現に関する危険性を低下させることを意味する。
【0050】
本明細書では、「血管系を保護または治療する薬剤」という用語は、脈管系の治療または保護に効果的な本発明にかかる化合物以外の薬剤のことをいう。これらの薬剤の例として、抗血小板治療薬(例えばアスピリンなどのCOX阻害剤)、NO調節剤、コレステロール低減剤(例えば、ステロール、スタノール)がある。
【0051】
よって、本発明は、(i)血管系の疾病または障害の治療または予防方法、または(ii)NO応答性の疾病または障害の治療または予防方法、または(iii)本明細書に記載のいずれかの化合物(例えば構造式AまたはEの化合物、またはそれらの医薬的に認容可能な塩または誘導体(酸化生成物、メチル誘導体、グルクロン酸誘導体を含む))を、効果的な量で治療を必要とする被験者に投与することによる、抗血小板の治療方法に関する。
【0052】
例えば、上記方法は、nが2である構造式Aの化合物のいずれかを投与することによって実践して差し支えない。
【0053】
本発明にかかる化合物は、他の血管/心臓の保護薬、および/またはNO調節剤との併用療法への使用にも適している。これら薬剤の例は当業者にとって明らかであろうし、例えばB型プロシアニジンおよびA型プロシアニジンが挙げられる。これら化合物は本発明にかかる化合物との混合剤として、または別々に投与して構わない。
【0054】
A型プロシアニジンは、天然由来もしくは合成によって調製して差し支えない。例えばA型プロシアニジンは、ルー(Lou)らのPhytochemistry, 51: 297-308 (1999)またはカーチェシー(Karchesy)とヘミングウェイ(Hemingway)のAgric, Food Chem., 34:966-970 (1986)に記載されるように、ピーナツの皮から単離してもよく、ここにそれぞれの該当箇所を引用することにより本明細書に援用する。上記化合物の他の供給源としては、例えば、ここにそれぞれの該当箇所を引用することにより本明細書に援用する、フー(Foo)らのJ. Nat. Prod., 63: 1225-1228、プライア(Prior)らのJ. Agricultural Food Chem., 49(3): 1270-76 (2001) に記載されるクランベリー、ここにそれぞれの該当箇所を引用することにより本明細書に援用するゴムカズラ(Ecdysanthera utilis)(Lie-ChwenらのJ. Nat. Prod., 65:505-8 (2002))、セイヨウトチノキ(Aesculus hippocastanum) (米国特許第4,863,956号明細書) が挙げられる。ここにそれぞれの該当箇所を引用することにより本明細書に援用する、近藤らのTetrahedron Lett, 41: 485 (2000)に記載される中立条件下で、1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジル(DPPH)ラジカルを使用した酸化を経て、B型のプロシアニジンからA型の化合物を得てもよい。
【0055】
天然および合成のB型プロシアニジンの入手方法は、当技術分野で周知であり、例えば、ロマンツィク(Romanczyk)らの米国特許第6,670,390号明細書、ロマンツィクらの米国特許第6,207,842号明細書、ロマンツィクらの米国特許第6,420,572号明細書、およびロマンツィクらの米国特許第6,156,912号明細書に記載されている。
【0056】
本発明の方法は、ヒトまたはイヌ、ネコ、ウマなどの獣動物に用いて差し支えない。
【0057】
したがって、次の用途は本発明の範囲内にある。(i)血管系の疾病または障害の治療または予防、または(ii)NO応答性の疾病の治療または予防、または(iii)抗血小板の治療用の薬品、食品、栄養補給食品または栄養補助食品の製造における、本明細書に記載のいずれかの化合物、それらの医薬品的に認容可能な塩または誘導体の利用。本明細書に引用する特定の状態のすべてが、これら用途の範囲内にある。
【0058】
上記方法に使用する効果的な量は、本明細書が提供する指針および当技術分野における一般常識を利用する当業者によって決定されて構わない。例えば、効果的な量は、哺乳動物の体内(例えば、血液)で生理的に適切な濃度を達成するなどであって差し支えない。これら生理的に適切な濃度は、少なくとも約20ナノモル(nM)であって差し支えなく、少なくとも約100nMであることが好ましく、少なくとも500nMであることがさらに好ましい。1つの実施の形態では、ヒトなどの哺乳動物の血中濃度は、少なくとも約1マイクロモルに到達する。本明細書で定義される構造式Anの化合物は、約50mg/日から約1000mg/日で投与されて差し支えなく、約100〜150mg/日から約900mg/日が好ましく、約300mg/日から約500mg/日が最も好ましい。しかしながら、上記の量よりも多く使用しても差し支えない。
【0059】
化合物は、急性投与しても差し支えなく、または治療/予防投与は、投薬計画、すなわち、例えば毎日、1ヶ月毎、2ヶ月に1回、半年に1回、年1回などの効果的な期間で、あるいは、必要に応じて、熟練した開業医がこういった期間を決定するなど、他の投薬計画に基づいて継続されてもよい。投薬は、少なくとも治療/予防の効果が現れるのに必要とされる期間、継続されて構わない。組成物は、哺乳動物の体内における効果的な化合物の濃度を維持するため、毎日投与されるのが好ましく、例えば朝晩など、1日に2、3回投与されることが最も好ましい。最も有益な結果を得るためには、組成物は、少なくとも約30日、もしくは少なくとも約60日間投与されて差し支えない。これらの投薬計画を周期的に繰り返しても良い。本明細書が提供する指針および当技術分野における一般常識に基づいて、当業者は、急性および/または慢性投与に適した化合物を選択することができる。例えば、単回投与および/または投与直後(例えば投与の2時間後)に効果を示す化合物は、即時の急性期反応が必要な場合に使用されて構わない。反復投与後に効果が現れる化合物は、それに応じて使用して差し支えない。よって、こういった投与(例えば、急性、慢性)に適合する投薬形態は、本発明の範囲内にある。
【0060】
治療に必要とされる最小限の投薬量または上記治療方法に用いる最適な投薬量を決定するためのアッセイもまた、本発明の範囲内にある。実施例に記載の方法、または本明細書で引用する疾病または障害の治療への化合物の有効性を予測する既知の他の用量反応法(dose response method)を用いても構わない。少なくとも治療に効果的な最少の投薬量、または最適な量を輸送するのに適合する投薬形態も本発明の範囲内にある。
【0061】
組成物および剤形
本発明は、医薬品、食品、食品添加物、栄養補助食品として処方されて構わない、本明細書記載の組成物に関する。
【0062】
本明細書では、「医薬品(pharmaceutical)」とは、薬効のある薬(medicinal drug)のことである。メリアム・ウェブスター・カレッジ英英辞典(Merriam- Webster's Collegiate Dictionary)第10版(1993)を参照。医薬品を薬剤(medicament)と称してもよい。本明細書では、「栄養補助食品」は、次の食品成分を1種類以上有するまたは含む食物の補給を目的とする製品(タバコ以外)である:ビタミン、ミネラル、ハーブまたは他の植物、アミノ酸、1日の総摂取量を増やすことによって食品を補うことを目的とする、ヒトに用いられる食品中の物質、または濃縮物、代謝産物、構成物質、抽出物またはそれら成分の組合せ。「食品」は、成長、修復、生命過程を維持し、エネルギーを与える生命体の体内に利用される、タンパク質、炭水化物および/または脂肪を含む物質である。食品は、また、ミネラル、ビタミン、香辛料などの補助的な物質を含んでもよい。メリアム・ウェブスター・カレッジ英英辞典第10版(1993)を参照。食品という用語には、ヒトまたは動物の消費に適合した飲料が含まれる。「食品添加物」は、米国食品医薬品局(FDA)の21 C.F.R. 170.3(e)(l)によって定義されており、直接添加物および間接添加物を含む。
【0063】
組成物は、基材、希釈剤、または賦形剤を含んでもよい。
【0064】
使用目的に応じて、ヒトまたは獣動物の用途、食品、食品添加物、栄養補助食品または医薬品用途に適するように、基材、希釈剤、または賦形剤を選択して差し支えない。組成物は、随意的に、さらなるがん治療薬および/または心臓血管治療薬を含んでもよい。組成物は、年齢、性別、体重、遺伝的特徴、個々の被験者または患者の状態、および、投薬経路などの要因を考慮して、こういった追加的な薬剤と共に併用投与または連続投与することができる。
【0065】
ヒトまたは獣動物用の本発明にかかる組成物の例として、例えばカプセル、錠剤、丸薬などの固形剤または液剤などの経口投薬用の食用組成物、ならびに、噛み砕けるタイプの固形剤またはドリンク剤(例えば、ココアまたはチョコレート風味の固形または液体の組成物)、懸濁液、シロップ剤、またはエリキシル剤などの、例えば、口、鼻、肛門、膣などの開口部への投与用の液体製剤(ココアまたはチョコレート風味の組成物を含む)、および、滅菌懸濁液または乳濁液などの、非経口、皮下、皮内、筋肉または静脈内投与(例えば注入投与(injectable administration))用の製剤が挙げられる。しかしながら、組成物中の活性成分は、血流に投与された場合に血中タンパク質が沈殿することで凝固が起こるなど、タンパク質と複合体を形成するであろう。熟練した技術者は、このことを考慮すべきである。これら組成物では、活性カカオ抽出物を、滅菌水、生理食塩水、グルコース、DMSO、エタノールなどの適切な基材、希釈剤または賦形剤と混合して差し支えない。
【0066】
本発明にかかる化合物は、例えば、天然由来(例えば、テオブロマ(Theobroma)属、ヘルラニア(Herrania)属)のプロシアニジンなど、異なる供給源に由来した熱処理化合物、または合成的に調製されたものから調製されて差し支えない。
【0067】
本発明に用いられる出発物質(フラバノールおよびプロシアニジン)の調製方法は、当技術分野で周知である(例えば、ここに引用することにより本明細書に援用される、米国特許第5,554,645号、同第6,420,572号、同第6,156,912号、同第6,476,241号、および同第6,864,377号の各明細書)。ポリフェノールは、例えばカカオ豆などの天然供給源、または別の天然供給源のポリフェノール、あるいは合成的に調製されたポリフェノールであって差し支えない。当業者は、利用可能性またはコストに基づき、天然または合成ポリフェノールを選択して構わない。
【0068】
フラバノールおよび/またはプロシアニジン誘導体もまた、出発物質として有用である。これらとして、没食子酸エステル(例えば没食子酸エピカテキンおよび没食子酸カテキン)など、単量体またはオリゴマーのエステル、例えば上記構造式のX、Yおよび/またはZの位置が、単糖または二糖部分(例えばβ−D−グルコース)などの糖部分で誘導体化された化合物、グリコシル化された単量体およびオリゴマーならびにそれらの混合物、結腸フローラの代謝によって生成するプロシアニジンの酵素開裂生成物を除く硫酸化、グルクロン酸化、およびメチル化された形態などのプロシアニジン単量体およびオリゴマーの代謝産物が挙げられる。
【0069】
本発明の化合物を、C−2原子の立体化学がαのフラバノール、プロシアニジンまたはそれらの誘導体から、C−2原子の周りが回転することによってC−2原子の立体化学がβになるように、熱処理(水溶液中)して調製してもよい。この手法は、特に、例えば(−)−エピカテキンおよび(+)−カテキンなど、フラバノールのエピマーの調製に適している。
【0070】
フラバノールのエピマーの調製は、次のスキーム1:

【0071】
にしたがって(および、ここに開示を引用することにより本明細書に援用される、Freudenberg, K. and Purrmann, L. (1924). Raumisomere Catechin IV. Liebig's Annalen, 437, 472-85; Fredenberg, K., Bohme, L. and Purrmann, L. (1922). Raumisomere Catechin II. Ber. Dscht. Chem. Ges., 55, 1734-47に記載のとおりに)、実施してもよい。
【0072】
温度が低く、曝露が長くなると、エピマー化が生じる。例えば、こういった温度および時間は、少なくとも40℃、さらに好ましくは少なくとも50℃で、少なくとも10時間、さらに好ましくは少なくとも24時間、またはさらに好ましくは少なくとも48時間であって差し支えなく、もしくは、少なくとも60℃、少なくとも70℃、少なくとも80℃、少なくとも90℃、少なくとも100℃、少なくとも110℃、または少なくとも120℃で、それぞれ、少なくとも5分、あるいは、少なくとも10分、15分または20分間であって構わない。例えば、化合物は、120℃で10分間、または120℃で20分間、処理されて差し支えない。他の温度/時間の組合せもまた効果的であり、当業者は、当技術分野における一般知識および本明細書が提供する指針を用いて、必要以上の実験をせずにこれらを決定して差し支えない。HPLC/MS分析などの既知の技術を、反応の成功をモニタするのに利用してもよい。
【0073】
エピマー化された化合物を、例えば、天然由来(例えば、テオブロマ(Theobroma)属、ヘルラニア(Herrania)属)または合成により調製された(当技術分野で周知のように得られる。米国特許第5,554,645号、同第6,420,572号、同第6,156,912号、同第6,476,241号、および同第6,864,377号の各明細書を参照)プロシアニジンなど、別の供給源に由来する熱処理化合物から調製して、または、商業的供給源からフラバノールを購入することにより調達して差し支えない。
【0074】
フラバノールのエピマーを出発物質として、プロシアニジンのエピマーを、米国特許第6,420,572号、同第6,156,912号、同第6,476,241号、および同第6,864,377号の各明細書、ならびに国際公開第04/030440号パンフレット(ここにこれらの開示を引用することにより本明細書に援用される)に記載の方法に従って調製して差し支えない。
【0075】
例えば、以下の出発物質をプロシアニジンのエピマーの合成に利用してもよい:
【化9】

【0076】
4β−8連結(表1に記載)を有するプロシアニジン・エピマーを、次に、以下のスキームに従って調製して差し支えない(ベンジル化、ヒドロキシエトキシル化、カップリング、および脱ベンジル化の各工程は、先に引用した米国特許明細書に記載されているとおりである)。出発物質に応じて手法を選択し、様々な組合せのエピマー化プロシアニジンを調製して差し支えない。
【0077】

【0078】

【0079】

【0080】

【0081】
当業者は、当技術分野における知識および本明細書の指針を利用して、本発明にかかる化合物の他の調製方法を想定するであろう。
【0082】
本明細書に記載の化合物を含む食品、および随意的に、別の心臓/血管保護薬は、ヒトまたは獣動物用に適していて差し支えなく、ペットフードも含まれる。
【0083】
食品は、菓子類などの水分含量の低い食品、またはココア飲料のような水分含量の高い食品であって構わない。典型的には、タンパク質が25%まで、好ましくは5〜20%、最も好ましくは1〜15%含まれ、脂肪が60%まで、好ましくは1〜50%、最も好ましくは5〜45%含まれ、炭水化物が70%まで、好ましくは1〜60%、最も好ましくは5〜50%含まれる。一部の食品では、必ずしもタンパク質、脂肪、および炭水化物を含むとは限らないであろう。食品の水分活性は、約0.2〜0.95であり、0.4〜約0.5が好ましい。
【0084】
食品は、ブラックチョコレート、低脂肪チョコレートおよびチョコレート・コーティングされている飴を含む、ミルク、スウィート、およびセミスウィートチョコレートなどの、米国同一性規格(SOI)および非米国同一性規格(non-SOI)のチョコレートなどの菓子類であって構わない。他の例として、焼き菓子(例えば、ブラウニー、ベークドスナック、クッキー、ビスケット)、香辛料、グラノーラ・バー、トフィーチュー(toffee chew)、食事代替バー(meal replacement bar)、スプレッド、シロップ、混合粉末飲料、ココア、チョコレートで風味付けされた飲料、プリン、餅、混合米、香味ソース(savory sauce)などが挙げられる。必要に応じて、食品にチョコレートまたはココアの風味付けをしてもよい。食品は、例えばピーナツ、クルミ、アーモンド、ヘーゼルナッツなどのナッツ類を含んでいる、チョコレートおよびグラノーラ・バーなどのキャンディー・バーであって差し支えない。
【0085】
(−)−カテキンおよび/または本明細書に記載される2量体を含む、ココア飲料などの飲料もまた、本発明の範囲内にある。例えば飲料に、 (−)−カテキンに対する(−)−エピカテキンの比が、例えば少なくとも1:2もしくは少なくとも1:3など、(−)−エピカテキンよりも(−)−カテキンを多く含めることができる。
【0086】
カカオ材料
熱処理されたカカオ材料は、高CP食品に利用される。水分含量の低い製品の場合、それらの製品には、製品1gあたりのカカオポリフェノールが、少なくとも約6mg含まれ、約8mg含まれることが好ましく、約10mgがさらに好ましく、製品中のエピカテキンのカテキンに対する比は1より大きいのに対して1である。それらには、製品1gあたりのカカオポリフェノールが少なくとも約10mg含まれることが好ましく、約12mgがさらに好ましく、約14mgが最も好ましく、製品中のエピカテキンのカテキンに対する比は0.66より大きいのに対して1である。それらには、製品1gあたりのカカオポリフェノールが少なくとも約12mg含まれることが好ましく、約14mgがさらに好ましく、約16mgが最も好ましく、製品中のエピカテキンのカテキンに対する比は0.54より大きいのに対して1である。それらには、製品1gあたりのカカオポリフェノールが少なくとも約13mg含まれることがさらになお好ましく、約15mgがさらに好ましく、約17mgが最も好ましく、製品中のエピカテキンのカテキンに対する比は0.42より大きいのに対して1である。
【0087】
高CPカカオ材料は、(±)−カテキンと(±)−エピカテキン、およびそれらのプロシアニジン・オリゴマーを含む、熱処理され、一部または完全に脱脂された高CPカカオ粉末であって、脱脂カカオ粉末1gあたりの総CP含有量が少なくとも25mg、好ましくはカカオポリフェノールが約12〜約25mg含まれる。
【0088】
製品が飲料などの水分含有量の高い食品の場合、それらには、製品1gあたりの総カカオポリフェノールが、少なくとも約0.2mg含まれ、0.2〜0.4mg含まれることが好ましく、0.4〜0.8mg含まれることがさらに好ましく、0.8〜1.2mg含まれることが最も好ましい。
【0089】
水分含有量の高い食品におけるカテキンに対するエピカテキン含有量は、製品のカカオポリフェノール含有量に応じて変化する。典型的には、約0.2〜0.4mgを含む製品では、1より大きいのに対して1の比を有し、約0.4〜0.8mgを含む製品では、0.42に対して1の比を有し、約0.8〜1.2mgを含む製品では、約0.54に対して約1の比を有し、約1〜1.2mg以上を含む製品では、約0.66に対して約1の比を有する。
【0090】
材料には、乾燥カカオ抽出物1gあたりの総CP含有量が、少なくとも約200mg、好ましくは約250〜約500mg、最も好ましくは約350〜約500mgである、乾燥または液体の熱処理された高CPカカオ抽出物も含まれる。抽出物は、熱処理されていないカカオ抽出物と比べて、性質が改質されている。成分には、熱処理されていないココア飲料製品に比べて、改質された性質を有するココア飲料などの熱処理されたカカオ製品も含まれる。製品は、カカオ粉末、および/または、液体または乾燥のカカオ抽出物および/またはカカオマスなどの高CPカカオ材料を含む。製品が、飲料などの水分含量の高い製品の場合、製品には、製品1gあたりの総カカオポリフェノールが、少なくとも約0.2mg含まれる。カカオポリフェノール含有量は、約0.2〜5mgが好ましく、約0.6〜約2.0mgがさらに好ましく、約0.6〜約2.0mgが最も好ましい。
【0091】
この高CPカカオ粉末、カカオ抽出物、カカオ製品では、エピカテキンとカテキンの総量は熱処理によっては実質的に変化しないが、(−)−カテキンに対する(+)−カテキンの比は、カカオ固形物で90:10から4:96へと、カカオ抽出物で90:10から34:66へと変化する。興味深いことに、(+)−エピカテキンに対する(−)−エピカテキンの比は、熱処理によっても変わらないか、わずかに変わるのみである。
【0092】
改質された性質を有する高CPカカオ粉末、高CPカカオ抽出物、および高CPカカオ製品は、好ましくは未発酵または発酵が不十分なカカオ豆から調製された、一部または完全に脱脂されたカカオ粉末または乾燥ココアの水分散液を加熱することにより調製される。カカオ材料またはカカオ製品は、(−)−エピカテキンをエピマー化するのに十分な時間、pHおよび温度で加熱される。典型的には、材料または製品は、pHが約3.8〜約8、温度が約37℃〜約200℃で、約0.5分〜数日間、加熱される。それらは、pHが約5〜約7.5、温度が約72℃〜約160℃で、約1分〜約6時間、加熱されるのが好ましい。それらは、pHが約6〜約7.4、温度が約100℃〜約140℃で、約1〜約4時間、加熱されるのが最も好ましい。
【0093】
材料はまた、熱処理されたカカオマスを含んでもよい。カカオマスは、脱脂されたカカオ・リカー1gに対するカカオポリフェノールを、少なくとも約10mg、好ましくは約20〜約50mg、さらに好ましくは約13〜約17mg含む。
【0094】
本発明にかかる化合物を随意的に別のNO−調節剤または心臓/血管治療薬と共に含む医薬品を、経口、舌下、頬内、経鼻、直腸、静脈内、非経口、局所など様々な方法で投与して差し支えない。当業者は、構造式Aの化合物、および随意的に別の心臓/血管保護薬の輸送を最大にするのに適した投与形態を決定できるであろう。よって、各種の投与に適した投薬形態は本発明の範囲内にあり、錠剤、カプセル、ゼラチンカプセル(ジェルキャップ)、大量投薬または単位投薬用の粉末または顆粒、乳濁液、懸濁液、ペースト、クリーム、ゲル、泡またはゼリーなど、固形、液体および半固体の投薬形態を含む。徐放性の投薬形態もまた、本発明の範囲内にある。適切な医薬的に認容可能な基材、希釈剤、または賦形剤は、一般に、当技術分野で知られており、当業者によって容易に決定することができる。例えば錠剤は、効果的な量のポリフェノール含有組成物および随意的にソルビトール、ラクトース、セルロース、または第二リン酸カルシウムなどの基材を含んで差し支えない。
【0095】
ココアフラバノールおよび/またはプロシアニジン(および随意的に別のNO調整剤、または心臓/血管治療薬)を含む栄養補助食品を、当技術分野で既知の方法を用いて調製して差し支えなく、例えば、第二リン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、硝酸カルシウム、ビタミン、およびミネラルなどの栄養素を含んでもよい。
【0096】
本発明にかかる組成物(例えば、食品、栄養補助食品、医薬品)および本発明にかかる化合物の存在を示し、および/または心臓/血管の問題を治療する目的で、または本明細書に記載される予防治療として、組成物の用途を示すラベルを含む包装された製品などの製造品もまた、本発明の範囲内にある。ラベルおよび/または使用説明書は、本願に記載される用途のいずれの方法を参照しても構わない。
【0097】
本発明は、本明細書に記載される組成物のいずれかを含む製品を製造し、組成物を包装して製品とし、本明細書に記載される用途のいずれかの組成物/製品の用途を指導または宣伝する方法に関する。このような指示、指導または宣伝には、広告も含まれる。
【0098】
少なくとも1つの本発明にかかる化合物、および少なくとも1つの追加的な化学療法薬および/または心臓/血管薬(すなわち、本発明にかかる化合物以外)を含む併用療法の用途に適合した製品(包装された製品またはキット)もまた、本発明の範囲内にあり、ここで、化学療法薬および/または心臓/血管薬は、別包装で、または本発明にかかる化合物と混合して提供されて差し支えない。
【0099】
以下の手順は、高CP製品の調製および試験に用いられた。
【0100】
試料の調製
実施例1では、飲料を、凍結乾燥し、アセトン/水/酢酸混合液(CHCOCH:H0:HOAc=79.5:20:0.51)で2回抽出し、50℃で15分間、超音波で分解し、583.3/s(35000rpm)で6分間、遠心分離した。減圧下または真空下で、集めた上清から溶媒を回収し、凍結乾燥した。得られた物質を位相HPLC解析に用いた。
【0101】
実施例3および4では、ココア飲料の試料の調製を修正し、水分含量の高い製品の分析をより良い状態で提供した。試料の調製は、32〜35gの飲料を取り、それを定量的に100ml容量フラスコに移し、0.5mlの氷酢酸を加え、アセトンを加えることから構成された。この手法により、70:29.5:0.5のアセトン:水:酢酸(v/v/v)からなる他のカカオ試料に使用する抽出溶媒と遜色ない溶液が生じる。飲料試料は、分析前に脱脂されなかった。飲料中の水分は、抽出溶媒の水分画分を作成するのに用いられた。
【0102】
順相クロマトグラフィー−HPLC/MS分析〜アダムソン(Adamson)らの方法
実施例1では、アダムソンらの公表されている順相HPLC法(J. Agric. Food Chem., 1999, 47 pp. 4184-4186)を用いた。条件は次のとおりであった:
a)カラム:Phenomenex Lichrosphereシリカ
サイズ:25cm×4.6mm
粒径:5μm
孔隙サイズ:100Å
b)移動相:
A.ジクロロメタン
B.メタノール
C.水:酢酸(1:1)
勾配条件:
初期: 82%A/14%B/4%C
時間=30分 67.6%A/28.4%B/4%C
時間=50分 53.2%A/42.8%B/4%C
時間=51分 10%A/86%B/4%C
時間=56分 82%A/14%B/4%C
再平衡化−7分
c)流速:1.0ml/分
d)カラム温度:37℃
e)注入量:5.0ml
f)検出:蛍光:励起波長276nm:発光波長−316nm
順相クロマトグラフィー〜ジオール法
他の実施例に用いられた順相クロマトグラフィーは、一般にジオール法と称されるハロゲンを使用しない(halogen free)方法であった。本方法は、M.A.ケルム(M. A. Kelm)らの"High Performance Liquid Chromatography Separation and Purification of Cacao (Theobroma cacao L.) Procyanidins According to Degree of Polymerization Using a Diol Stationary Phase" (J. Agr. & Food Chem. 2006 Mar 8;54(5):1571- 6)に開示されている。
【0103】
条件は、次のとおりであった:
分析的順相HPLC法
名称:CPDIOL-3.M
カラム: Intersil Diol 250×4.6mm
移動相A 98:2 アセトニトリル:酢酸
移動相B 95:3:2 メタノール:HO:酢酸
流速:

【0104】
使用したカラムは250×4.6mm,i.d.,5μmのDevelosil diol(Phenomenex社(アメリカ合衆国カリフォルニア州トランス)製)であった。二成分の移動相は、(A)CHCN:HOAc(98:2,v/v)および(B)CHOH:HO:HOAc(95:3:2)で構成された。分画は、30℃、流速1.0ml/分で、次に示すように、直線的勾配で行われた:0〜35分,0〜40%B;35〜45分,40%B 定組成;45〜46分,40〜0%B,0%Bで4分保持。溶離液は、励起276nmおよび発光316nmでの蛍光検出によってモニタされた。
【0105】
逆相高圧液体クロマトグラフィー〜C18法
フォトダイオードアレイ、蛍光検出器と一体となったAgilent 1100 LC機器および四重極(quadrapole)MSが、単量体およびプロシアニジンの分離および検出、ならびに未発酵のカカオ豆、カカオ抽出物、加熱調理されていない、および加熱調理されたカカオ粉末、およびココア飲料中のエピカテキンのカテキンに対する比の決定に用いられた。Hypersil ODS(C18、100×4.6mm、5μm)カラムが用いられた。移動相は、A(1%酢酸/水)およびB(0.1%酢酸/メタノール)から成り、直線的な勾配を用いて、10〜25%B(v/v)を20分間、次に、10分間でBを100%まで増加させ、100%Bを10分間保った。流速は1.0ml/分に設定した。カラム温度は20℃に設定した。UV検出器を280nmに設定してピーク強度を記録し、UVスペクトルは200〜600nmについて記録した。イオン化技術は、電気スプレイ(ESI)で行い、質量スペクトルデータはすべて陰イオンの形態で取得した。定量的な作業として、このクロマトグラフィーおよびFLD検出を用いて、較正曲線を確立した。溶離液は、励起276nmおよび発光316nmでの蛍光検出によってモニタされた。
【0106】
分取用高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)〜ジオール法
分取用HPLC法を実施例5の単量体および2量体の画分の物理的分離に用いた。個々のフラバン−3−オール単量体および/またはプロシアニジン・オリゴマーの分離および溶離のための改良法は、(A)単量体および/またはオリゴマーを含む液体を、極性結合したジオール固定相に導入し、(B)重合度に基づき、個々の単量体および/またはオリゴマーを分離し、カラムに2成分の移動相AおよびBを通し、(C)単量体および2量体の画分を拭くむ個々の画分を溶離する、各工程を有してなる。
【0107】
固定相は、約3μm〜約10μmの粒径を有する。分取用のジオールカラムを、次のやや修正された条件とともに用いた:
移動相A:99:9 アセトニトリル:酢酸
移動相B:95:4:1 メタノール:水:酢酸
カラム:Devosil 100DIOL−10
流速:55ml/分

【実施例】
【0108】
実施例1:ココア飲料のプロシアニジン化学のLCMS研究および大動脈環アッセイにおける飲料画分の試験
本実施例は、2種類のココア飲料(異なる方法にしたがって調製)およびそれらの各カカオ粉末の液体クロマトグラフィー質量分析(LCMS)について述べる。単量体、2量体、3量体に着目した質的な違いを、様々な試料について評価した。大動脈輪アッセイは、飲料抽出物を出発物質として用いた、機能性画分/化合物の確認に用いられた。
【0109】
2種類の飲料を、次の方法に従って調製した。
【0110】
キーレイ(Kealey)らの米国特許第6,015,913号明細書に記載の方法に従って調製した高ポリフェノールカカオ粉末を、両方の飲料の調製に使用した。
【0111】
カカオ粉末およびそれらの単量体、2量体、3量体の代表的なHPLC特性を図1、2、3、5に示す。
【0112】
ココア飲料Aは、次のように調製された:(i)カカオ粉末を80℃で20分間、水と混合し(この工程は粉末中に残存する胞子を復元し、UHTの間に破壊する)、(ii)その混合物を140℃で6〜7秒間、UHT処理にさらし、(iii)混合物を85mlの容器に詰め、水の最高温度である115℃で10分間(総処理時間19分)、最大圧力の2.6×10Pa(2.6bar)でレトルトにかけた。熱伝達を補助するため、回転を適用した。本明細書に記載される機能的および/または構造的効果を達成できる処理の変動のいずれもが利用可能である。
【0113】
ココア飲料Bは次のように調製された。高ポリフェノール、粉ミルク、砂糖、増粘剤、乳濁剤、混合ビタミン、バニラフレーバー、容器に入った飲料水(22℃)を、周囲温度で混合し、高圧ポンプを用いて均質化し、UHT処理(160℃で15秒)し、無菌包装した。この飲料の調製に用いられる典型的な装置として、ウォーキシャ(Waukesha)容積移送式ポンプを通る連絡配管を備えたBreddo Likwifier (Division of American Ingredients Co.社(アメリカ合衆国ミズーリ州カンザスシティ)製)、およびSilverson 275/400ミキサー(Silverson Machines 社(イギリス、チェシャムバックス、ウォーターサイド)製)が挙げられる。得られた飲料には、約170mgのフラバノールおよびプロシアニジンが含まれていた。
【0114】
両方の飲料の抽出物およびそれら個々のカカオ粉末を、図7に示すように調製した。要約すれば、飲料を凍結乾燥し、アセトン/水/酢酸の混合液(CHOH:HO:HOAc=79.5:20:0.5)で2回抽出し、50℃で15分間、超音波で分解し、58.3/s(3500rpm)で6分間、遠心分離にかけ、減圧下または真空下で回収した上清から溶媒を除去し、凍結乾燥した。得られた物質をHPLC分析に使用した。
【0115】
LCMS結果
各飲料からの抽出物およびそれらの個々のカカオ粉末をNPおよびRP−LCMS調査にかけた。試験試料のNP−HPLCクロマトグラムを図1および2に表す。
【0116】
図1を参照すると、ココア飲料AのNP−HPLCクロマトグラムは、飲料を調製したカカオ粉末で観察されるものとは、著しく異なっていた。カカオ粉末は、単量体〜10量体の個々の群を含むが(図1、上部パネル)、ココア飲料AのNP−HPLCクロマトグラムは、大部分が単量体〜3量体であった(図1、下部パネル)。
【0117】
よって、ココア飲料Aでは、エピカテキンおよびカテキンのピーク面積は、カカオ粉末と比較して、逆転されていた。すなわち、ココア飲料Aは、カテキンよりもエピカテキンを多く含むカカオ粉末とは対照的に、エピカテキンよりもカテキンを多く含んでいた。典型的には、カカオ粉末では、(+)−カテキンに対する(−)−エピカテキンの比は約9:1である。それに対して、ココア飲料Aに見られるエピカテキンのカテキンに対する比はおおよそ1:3であり、キラル分離は、カテキンの大部分が(−)−カテキンであり、(−)−カテキンに対する(+)−カテキンの比は約1:44であることを示した。(+)−エピカテキンは観察されなかった。
【0118】
図2を参照すると、ココア飲料Bもまた、それから調製されたカカオ粉末よりもカテキンを多く含むが、ココア飲料Bに見られるエピカテキンのカテキンに対する比は、おおよそ1:1であった。
【0119】
2量体における差異もまた、かなり明らかである。図1および2に示す抽出イオンクロマトグラム(EIC)は、これらのピークと2量体の同一性を示唆している(m/z577)。ココア飲料AおよびBの調製に使用したカカオ粉末のEIC(図3および5)は、ココア中に典型的な2量体が存在することを示している(B2およびB5の2量体)。図4および6を参照すると、2量体B5のピークは、両方の飲料において、ほとんど消滅している。しかしながら、最も重要なことに、ココア飲料Aは、出発ココア物質には見られなかった多くの2量体(〜4−5量体)を含んでいた(図4)。最も注目に値するのは、その分解パターン(示されていない)が他のB型2量体と一致する、14.5分の大きいピークである。ココア飲料Bもまた、小さいけれども、さらなる2量体のピークを含んでいた。
【0120】
大動脈輪アッセイ結果
ココア飲料A抽出物について、スキーム1に示される分画に誘導されたバイオアッセイを行った。画分96A〜96Eを以下に記載のとおり試験した。5つの画分(9A〜9E)を、分取用のRP HPLCを用いて生物活性画分96Eから入手し、アッセイを待った。画分9A、9B、9C、9D、9Eを、それぞれ、プロシアニジンなし/B型3量体/A型3量体、B型3量体(主成分)/B型四量体(微量成分)、B型2量体(主成分)/B型3量体(微量成分)、B型2量体/B型3量体、およびB型3量体で構成されていると、LCMSで暫定的に特徴付けた。
【0121】
Karim M., McCormick K., Kappagoda CT.の"Effects of Cocoa Procyanidins on Endothelium Dependent Relaxation", Journal of Nutrition 2000; 130:2105S-2108Sに記載のように、大動脈輪培養物を得た。大動脈輪を10mlの酸素を豊富に含んだクレプス緩衝液(oxygenated Krebs' buffer)にマウントし、一定に保ち、最初にノルエピネフリン(10−6M)で輪をあらかじめ収縮させ、次に内皮細胞活性(endothelium viability)についてアセチルコリン(10−6M)を用いて試験した。次に、輪を洗浄し、基準張力まで戻した。基準に戻るとすぐに、輪をノルエピネフリン(10−6M)で収縮させた。収縮が定常状態になったら輪にカタラーゼ(400U/ml)を与え、安定化させるためさらに時間をおいた後、試験化合物の累積濃度(10mg/ml〜500mg/ml)を加えた。別の2つの輪も、時間的対照(アセチルコリン、10−9M〜10−4M)および媒体対照(エタノールまたはDMSO)として試験した。Nω−ニトロ−L−アルギニンメチルエステル(L−NAME)の効果を適切にするため、カタラーゼおよび試験化合物を加える前に、NOS阻害剤を加えた(10−5M)。さらに、内皮依存性の弛緩の試験のため、試験化合物を加える前に、選び出された輪の内皮を剥離した。
【0122】
大動脈輪の弛緩を張力の低下(g)として測定し、ノルエピネフリンに対する収縮応答の百分率として表した。すべての薬物濃度は、組織バスバッファ(tissue bath buffer)中の最終濃度として表されている。グループ・データは、n実験の±SEMとして表される。
【0123】
アセチルコリンは、10−6Mの最大弛緩を達成した。DMSOは、高濃度で(50%または100%DMSOで800〜1000μl)弛緩反応を生じた。これらは、試験化合物の400μg/mlおよび500μg/mlの投与による濃度である。試験化合物のすべてが500μg/ml(n=1)での弛緩反応を生じ、これは対応する媒体対照と同様か劣っており、結果として、この用量の試験化合物によって得られる弛緩は、反応を生じないとみなされた。10μg/ml〜300μg/mlの範囲の濃度では、50%または100%DMSO(n=2)媒体対照のどちらにおいても、顕著な弛緩は観察されなかった。残りの実験(n=2)では、試験化合物は50%エタノールで調製された。容器に媒体対照として等量の50%エタノールを与えた場合には、弛緩反応は観察されなかった。
【0124】
次の結果には、50%DMSO中で調製された試験化合物を用いた1つの実験および50%エタノールを用いた2つの実験が含まれる。MK−1312−96Eのみが、200μg/mlの最終実験槽濃度(final bath concentration)で顕著な最大弛緩反応を生じさせた(33.6%±3.0,n=3;p<0.05,ボンフェローニの補正を伴う分散分析(ANOVA))。また、MK−1312−96Eの最大弛緩反応とアセチルコリンの最大弛緩反応(学生のt−検定)との間に顕著な差異はなかった。MK−1312−96Dは、200μg/mlの実験槽濃度において弛緩反応(20.3%,±8.7,n=3)を生ずるように見受けられたが、この効果は、統計的に有意ではなかった。MK−1312−96A(100%DMSOに化合物を溶解)、MK−1312−96B、MK−1312−96Cでは反応しなかった。内皮が剥離されるか、試験化合物を加える前にL−NAMEを与えられた容器では、これらの化合物の弛緩反応はすべて無効か、顕著に阻害された。
【0125】
結論として、MK−1312−96Eは、一酸化窒素が介在するこのインビトロでの急性内皮機能障害(acute endothelium function)モデルでは、内皮依存性の弛緩反応を生ずることが可能である。
【0126】
上記のバイオアッセイおよび分画法は、純粋な活性化合物または化合物群が分離されるまで、繰り返される。NMRおよびMSは、生理活性化合物の構造解明の達成に利用される。
【0127】
実施例2:一部が脱脂された高CPカカオ粉末におけるプロシアニジン化学のLCMS検査
高CPカカオ粉末(50g)を、水冷式の冷却器を備えた1Lの丸底フラスコ内で、500mlの脱イオン水(pH5.3)に懸濁した。マントル・ヒーター(heat mantel)を熱源として使用し、混合物を還流した。試料を、30分、7.75時間、24時間置いた。加熱調理していない高CPカカオ粉末の順相HPLC/FLDでのトレースを図10に示す。分離はジオール法によって行った。図11は、加熱調理済みの高CPカカオ粉末の順相HPLCトレースを示す(アダムソンらの方法)。図12A〜Dは、加熱調理前および30分、7.75時間、24時間加熱調理後のトレースを示す。
【0128】
処理前の高CPカカオ粉末の総CP含有量は、〜57mg/gまたは〜6%であった。CP含有量は、内部標準のクロマトグラフ測定系を利用して測定した。測定されたポリフェノールは、単量体〜10量体である。一旦加熱調理されたものの総CP含有量は30mg/gに低減した。このデータから決定される単量体の含有量は、加熱調理されていない高CPカカオ粉末中に存在する単量体で13.79mg/g(1.4質量%単量体)であり、単量体の量は加熱調理後も変化せず、15.8mg/g(1.6質量%)の量であったことを示している。
【0129】
逆相RP−HPLC(C18)を用いた評価法もまた、行われた。較正曲線を標準として、確立させた。加熱調理されていない高CPカカオ粉末の単量体の量を、順相の条件下で決定される量と適正に一致させた。対照として、加熱処理された高CPカカオ粉末から、単量体画分を分取用のジオールカラムを用いて分離した。加熱処理された高CPカカオ粉末から分離した精製画分の逆相分析は、エピカテキンおよびカテキンのきれいなトレースを示した。加熱調理されていない、および加熱調理された高CPカカオ粉末中のカテキンおよびエピカテキン含有量を、表1に示す。
【表1】

【0130】
実施例3:エピカテキンのカテキンに対する比の調査
C18 HPLCの手法を用いて、エピカテキンのカテキンに対する比を測定した。試験を行った様々なカカオ製品には、未発酵のカカオ豆、2種類の高CPカカオ抽出物、加熱調理されていない、および加熱調理された高CPカカオ粉末、およびココア飲料Aが含まれる。カカオ抽出物Aは、水性エタノール(25%水/75%エタノール,v/v)で未発酵のカカオ豆を抽出することにより調製された。カカオ抽出物Bは、水性アセトン(20%水/80%エタノール,v/v)で未発酵のカカオ豆を抽出することにより調製された。比を表2に示す。
【表2】

【0131】
例えば、カカオ抽出物などの熱処理されていない製品ではエピカテキン含有量はカテキン含有量よりも大きく、これは、未発酵のカカオ豆と一致する。高CPカカオ粉末では、エピカテキンのカテキンに対する比は79:21である。ココア飲料Aなどの高度に加工された試料では、エピカテキンのカテキンに対する比は〜35:65に達する。ココア飲料Aは、調製の間にいくつかの高温処理を受けた(実施例1を参照)。この〜35:65というエピカテキンのカテキンに対する比は、エピマー化反応の間のこれら2種類のジアステレオマーの熱力学的な平衡である(カテキンが、元来、より安定な形態である)。よって、加工度が、エピカテキンのカテキンへの転化度に、ある種の洞察を提供している。加工度が小さいか未加工の場合のエピカテキンのカテキンに対する比は〜95:5である。加工、特に高温処理がさらに進むと、比は、加熱調理されていない高CPカカオ粉末のように、〜80:20にシフトする。加工度が高い場合、その比は平衡点に達する。
【0132】
実施例4:キラル含有量の調査
立体異性体の比を決定するため、キラル・クロマトグラフィーを行った。(+/-)−カテキンの比を、ある一連のクロマトグラフの条件下で得、(+/-)−エピカテキンの比を、別の一連のクロマトグラフの条件下で得た。
【0133】
様々なカカオ試料中に見られるエピカテキンおよびカテキンを、立体化学構造についてさらに分析した。キラル含有量を表3に示す。
【表3】

【0134】
カテキンは、カカオ豆中の微量成分であり、(+)−カテキンの(−)−カテキンに対する天然の比は、90:10である。カテキンでは、豆中の優勢な型は(+)−カテキンである。2種類のカカオ抽出物では、比はカカオ豆のデータとは異なり、(+/-)−カテキンは、約40:60の比に変化する。すなわち、(−)−立体異性体が増加する。おそらく、その転化が立体特異的であることから、(−)−カテキンの供給源は、(−)−エピカテキンの(−)−カテキンへの転化である。優勢な型が(−)−カテキンとなるまで、さらなる加工によって転化が促進される。ココア飲料Aなどの高度に加工されたカカオ試料では、(−)−カテキンが優勢な型になるまで、加工によってその含有量が高められる。これは、ココア飲料Aを調製する熱処理条件の下、(−)−カテキンが(−)−エピカテキンの転化によって生じることから、予想された転化反応と一致する。(−)−エピカテキンは、微量の被加工物質において観察される唯一の異性体である。立体異性体、(+)−エピカテキンは、高度に加工されたカカオ試料ではごく少量観察される。これは、(+)−エピカテキンが(+)−カテキンから生成されると予想され、(+)−エピカテキンが、より不安定な立体異性体であるという事実と一致する。立体異性体の比を決定するため、キラル・クロマトグラフィーを行った。(+/-)−カテキンの比を、ある一連のクロマトグラフ条件下で取得し、(+/-)−エピカテキンの比を、別の一連のクロマトグラフ条件下で取得した。
【0135】
加工された物質中、すなわち、加熱調理された高CPカカオ粉末およびココア飲料A中に、様々な量で存在する、4種類すべての立体異性体についての結果を示す。
【0136】
実施例5:単量体および2量体の分離
全部で1.02gの高CPカカオ粉末を15mlの75:25(アセトニトリル:酢酸=99:1):(メタノール:水:酢酸=95:4:1)溶液に溶解し、58.3/s(3500rpm)で5分間遠心分離し、0.45μmのフィルタで濾過した。数回のHPLC操作を行い、加熱処理されたカカオ粉末を精製した(操作1:注入2.0ml、操作2:注入5.0ml、操作3:注入5.0ml、操作4:注入4.0ml)。〜12.4分で溶離したすべての単量体ピークおよび〜27.5分で溶離したすべての2量体ピークを合わせて、減圧濃縮し、凍結乾燥した。単量体および2量体の収量は、それぞれ6mgと4mgであった。試料を、続く分析的な分離に適した移動相に溶解した。図13は加熱調理された高CPカカオ粉末から分離された単量体画分のトレースを示す。
【0137】
実施例6:加熱調理されていない高CPカカオ粉末、加熱調理された高CPカカオ粉末、および合成(−)−エピカテキン−(4β,8)−(−)−カテキン2量体の比較
1mg未満の合成(−)−エピカテキン−(4β,8)−(−)−カテキン2量体を、脱イオン水中に10%エタノールおよび0.1%酢酸を含む混合液に溶かした。2量体は、天然のB2の2量体、すなわち、(−)−エピカテキン−(4β,8)−(−)−エピカテキンのエピマー2量体である。
【0138】
全部で0.3gの加熱調理された高CPカカオ粉末を、2mlの脱イオン水中に10%エタノールおよび0.1%酢酸を含む混合液に溶かし、5分間超音波で分解し、75.0/s(4500rpm)で5分間遠心分離し、45μmのフィルタで濾過した。次に、200μlの試料をLC/MS分析に用いた。
【0139】
全部で0.3gの加熱調理された高CPカカオ粉末を、2mlの脱イオン水中に10%エタノールおよび0.1%酢酸を含む混合物に溶かし、5分間超音波で分解し、75.0/s(4500rpm)で5分間遠心分離し、45μmのフィルタで濾過した。次に、200μlの試料を取り、1mg未満の合成(−)−エピカテキン−(4β,8)−(−)−カテキンを加えた。
【0140】
全部で0.33gの加熱調理されていない高CPカカオ粉末を、2mlの脱イオン水中に10%エタノールおよび0.1%酢酸を含む混合物に溶かし、5分間超音波で分解し、75.0/s(4500rpm)で5分間遠心分離し、045μmのフィルタで濾過した。200μlの試料をLC/MS分析に用いた。
【0141】
基本標準資料(MSD)の設定は、イオン化モード:API−ES、モード:スキャン、極性:陰性、質量幅:100〜1500、フラグメンター(Fragmentor):70、閾値:150、ステップ間隔:0.20、毛細血管電圧 (Capillary voltage):3000、乾燥ガス:10L/分、噴霧器圧力3.45×10Pa(50psig)、乾燥ガス温度:345℃であった。
【0142】
HPLC分析は、2量体の領域で顕著な変化があったことを示した。図14A〜14Dを参照。2量体B2のこれら条件下での保持時間は、12.7分であり、2量体B5では24.5分、エピマー化されたB2の2量体では6.8分であった。図14A〜Dは、合成エピマー化B2の2量体(A)、加熱処理されていない高CPカカオ粉末(B)、加熱処理された高CPカカオ粉末(C)、および強化された、加熱処理された高CPカカオ粉末(D)の逆相分離のトレースを示す。加熱処理された高CPカカオ粉末では、2量体B5がほとんど消え、2量体B2がまだ存在し、保持時間〜6.8分に新しい2量体が存在している。合成エピマー化B2の2量体で強化したものでは、同一のピークの領域で増加を示した(14D参照)。
【0143】
2量体画分を、分取用のジオールカラムを用いて加熱調理された高CPカカオ粉末から分離した。予想どおり、単量体を示したこの精製画分のRP−HPLC/FLDおよびMS(単一イオン・モニタモード,m/z=577)のトレースは、ここには示さなかった。しかしながら、新しい2量体は、明確に示された。新しい2量体は、これらのクロマトグラフ条件下において、B2、B5およびエピマー化B2とは一致しない保持時間を持つ。B2とB5の2量体のエピマーの可能性の考察には、さらなる6種類の異性体が含まれ、新しい2量体がカカオ中に通常存在するB2とB5の2量体のエピマーの可能性がある。
【0144】
本発明は、ある特定の実施形態に関して述べてきたが、当然のことながら、多くの修正および変更が、本発明から離れることなく当業者によって成しうるであろう。したがって、忠実な精神および本発明の範囲内であろうこれら修正および変化のすべてを対象とすることが、添付の特許請求の範囲において意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0145】
【図1】図1は、ココア飲料Aおよびその飲料の調製に用いたカカオ粉末のNP−HPLC−MSデータを表す。
【図2】図2は、ココア飲料Bおよびその飲料の調製に用いたカカオ粉末のNP−HPLC−MSデータを表す。
【図3】図3は、ココア飲料Aの調製に用いたカカオ粉末のNP−HPLC−MSデータおよび単量体、2量体、および3量体のEICを表す。
【図4】図4は、ココア飲料AのRP−HPLC−MSデータおよび単量体、2量体、および3量体のEICを表す。
【図5】図5は、ココア飲料Bの調製に用いたカカオ粉末のRP−HPLC−MSデータおよび単量体、2量体、および3量体のEICを表す。
【図6】図6は、ココア飲料BのRP−HPLC−MSデータおよび単量体、2量体および3量体のEICを表す。
【図7】図7は、ココア飲料Aの画分によるバイオアッセイのスキームを表す。
【図8】図8は、あらかじめ収縮させた大動脈輪における試験化合物が媒介する、用量依存性の弛緩を表す。
【図9】図9は、あらかじめ収縮させた大動脈輪におけるココア飲料Aの画分の効果を表す。
【図10】図10は、加熱調理していない高CPカカオ粉末のNP−HPLC/FLDデータを表す。
【図11】図11は、加熱調理した高CPカカオ粉末のNP−HPLC/FLDデータを表す。
【図12】図12A〜Dは、30分間、7.75時間、24時間に亘り、加熱調理した高CPカカオ粉末のNP−HPLC/FLDデータを表す。
【図13】図13は、加熱調理した高CPカカオ粉末から分画した単量体画分のHPLCデータを表す。
【図14】図14A〜Dは、合成的にエピマー化したB22量体(A)、加熱調理していない高CPカカオ粉末(B)、加熱調理した高CPカカオ粉末(C)および、強化された加熱調理した高CPカカオ粉末(D)のRP−HPLCデータを表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱脂カカオ粉末1gあたり少なくとも約25mgの総カカオポリフェノール含量を有する、熱処理され、一部または完全に脱脂されたカカオ粉末であって、前記カカオポリフェノールが、(±)-カテキン、(±)-エピカテキン、およびそれらのプロシアニジン・オリゴマーを含み、エピカテキンのカテキンに対する比が約1より大きいのに対して約1である改質された単量体の性質を特徴とするカカオ粉末。
【請求項2】
前記総カカオポリフェノール含有量が約20〜約50mg/gであり、前記比が約0.42に対して約1よりも大きいことを特徴とする請求項1記載のカカオ粉末。
【請求項3】
脱脂カカオ固形物に基づいて、1gあたり少なくとも約10mgの総カカオポリフェノール含量を有する熱処理されたカカオマスであって、前記カカオポリフェノールが、(±)-カテキン、(±)-エピカテキン、およびそれらのプロシアニジン・オリゴマーを含み、エピカテキンのカテキンに対する比が約1より大きいのに対して約1である改質された単量体の性質を特徴とするカカオマス。
【請求項4】
前記総カカオポリフェノール含有量が約12〜約25であり、前記比が約0.42よりも大きいのに対して約1であることを特徴とする請求項3記載のカカオマス。
【請求項5】
熱処理されたカカオ抽出物であって、前記抽出物中の総カカオポリフェノール含有量が、乾燥抽出物1gあたり少なくとも約200mgであり、前記カカオポリフェノールが、(±)-カテキン、(±)-エピカテキン、およびそれらのプロシアニジン・オリゴマーを含み、エピカテキンのカテキンに対する比が約1より大きいのに対して約1である改質された単量体の性質を特徴とする抽出物。
【請求項6】
前記総カカオポリフェノール含有量が約250〜約500mgであり、前記比が約0.42に対して約1であることを特徴とする請求項5記載の抽出物。
【請求項7】
熱処理された水分含有量の低いカカオ製品であって、
高CPカカオ粉末、液体または乾燥の高CPカカオ抽出物、高CPカカオマス、およびそれらの混合物からなる群より選択されるカカオ成分を含み、
前記製品が、製品1gあたり少なくとも約6.0mgの総カカオポリフェノール含有量を有し、前記カカオポリフェノールが、(±)-カテキン、(±)-エピカテキン、およびそれらのプロシアニジン・オリゴマーを含み、エピカテキンのカテキンに対する比が1より大きいのに対して1である改質された単量体の性質を特徴とするカカオ製品。
【請求項8】
前記製品が、約49mgまでの総カカオポリフェノール含有量を有することを特徴とする請求項7記載のカカオ製品。
【請求項9】
熱処理された水分含有量の高いカカオ製品であって、
高CPカカオ粉末、液体または乾燥の高CPカカオ抽出物、高CPカカオマス、およびそれらの混合物からなる群より選択されるカカオ成分を含み、
前記製品が、製品1gあたり少なくとも約0.2mgの総カカオポリフェノール含有量を有し、前記カカオポリフェノールが、(±)-カテキン、(±)-エピカテキン、およびそれらのプロシアニジン・オリゴマーを含み、エピカテキンのカテキンに対する比が1より大きいのに対して1である、改質された単量体の性質を特徴とする、
カカオ製品。
【請求項10】
前記製品が、約5mgまでの総カカオポリフェノール含有量を有することを特徴とする請求項9記載の製品。
【請求項11】
エピカテキンおよびカテキンの総量が、前記カカオ粉末、カカオ抽出物、カカオマス、またはカカオ製品中に初めに存在する量と実質的に変わらないことを特徴とする、請求項1記載のカカオ粉末、請求項3記載のカカオマス、請求項5記載のカカオ抽出物、もしくは請求項7または9記載のカカオ製品。
【請求項12】
同一のクロマトグラム条件下で既知の2量体B2およびB5と異なる溶離時間を有する4種類のさらなる2量体が存在することを特徴とする、請求項1記載のカカオ粉末、請求項3記載のカカオマス、請求項5記載のカカオ抽出物、もしくは請求項7または9記載のカカオ製品。
【請求項13】
未発酵または発酵が不十分なカカオ豆から調製したカカオ粉末を、(−)−エピカテキンをエピマー化するのに十分な時間およびpHで、約37℃〜約190℃で加熱することによって調製することを特徴とする請求項1記載のカカオ粉末。
【請求項14】
未発酵または発酵が不十分なカカオ豆から調製したカカオマスを、(−)−エピカテキンをエピマー化するのに十分な時間およびpHで、約37℃〜約190℃で加熱することによって調製されることを特徴とする請求項3記載のカカオマス。
【請求項15】
乾燥カカオ抽出物を水または水性の有機溶媒中に溶解し、前記溶液を、約4.0〜約8.0のpHで約0.5分〜数日間、約37℃〜約190℃で加熱することによって調製されることを特徴とする請求項5記載のカカオ抽出物。
【請求項16】
水とカカオ粉末から実質的になるココア飲料であって、
前記飲料が、該飲料を調製するカカオ粉末とは対照的にエピカテキンよりもカテキンを多く含み、該飲料中のエピカテキンのカテキンに対する比がおおよそ1:3であるココア飲料。
【請求項17】
前記飲料中の前記カテキンの大部分が(−)−カテキンであることを特徴とする請求項16記載のココア飲料。
【請求項18】
(−)−カテキンと、同一のクロマトグラム条件下で2量体B2およびB5と異なる溶離時間を有する2量体とを含むココア飲料を、ヒトまたは獣動物に投与することによる、血管系の疾患または障害の治療または予防方法であって、
前記血管系の疾患または障害が、アテローム性動脈硬化症、血栓症、高血圧症(例えば、初期、二次性および肺高血圧症など)、循環器疾患(CVD)、冠動脈疾患(CAD)(心筋虚血、心筋梗塞症、安定および不安定狭心症、急性閉塞または再狭窄を含む)、糖尿病(I型およびII型)(例えば、糖尿病の血管合併症)、認知機能障害または認知障害および/または循環器系障害(脳についてのものも含む)、心臓麻痺、脳血管障害(脳梗塞、初期および/または再発性の一過性脳虚血発作、または、例えば冠動脈血管形成術または経皮冠動脈インターベンション後などの虚血性合併症を含む)、鬱血性心不全、腎不全、腎臓病、末梢血管障害、さらに具体的にはレイノー病などの末梢血管の血管収縮(例えば腕または脚の血管など)に関連する疾病および疾患、末梢動脈障害(PAD)、間欠性跛行、脈管炎(例えば、微小血管の)、血管けいれん、静脈血栓症、静脈機能不全、重症虚血肢、急性虚血肢、アテローム塞栓症、および下肢動脈血行不全からなる群から選択されることを特徴とする治療または予防方法。
【請求項19】
前記飲料がココア飲料であることを特徴とする請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記飲料がココア飲料であり、前記血管系の疾患または障害が、アテローム性動脈硬化症、血栓症、高血圧症(例えば、初期、二次性および肺高血圧症など)、循環器疾患(CVD)、冠動脈疾患(CAD)(心筋虚血、心筋梗塞症、安定および不安定狭心症、急性閉塞または再狭窄を含む)、糖尿病(I型およびII型)(例えば、糖尿病の血管合併症)、認知機能障害または認知障害および/または循環器系障害(脳についてのものも含む)、心臓麻痺、脳血管障害(脳梗塞、初期および/または再発性の一過性脳虚血発作、または、例えば冠動脈血管形成術または経皮冠動脈インターベンション後などの虚血性合併症を含む)、鬱血性心不全、腎不全、腎臓病、末梢血管障害、さらに具体的にはレイノー病などの末梢血管の血管収縮(例えば腕または脚の血管など)に関連する疾病および疾患、末梢動脈障害(PAD)、間欠性跛行、脈管炎(例えば、微小血管の)、血管けいれん、静脈血栓症、静脈機能不全、重症虚血肢、急性虚血肢、アテローム塞栓症、および下肢動脈血行不全のからなる群から選択されることを特徴とする請求項19記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公表番号】特表2009−501161(P2009−501161A)
【公表日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−520292(P2008−520292)
【出願日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際出願番号】PCT/US2006/025422
【国際公開番号】WO2007/002851
【国際公開日】平成19年1月4日(2007.1.4)
【出願人】(390037914)マース インコーポレーテッド (80)
【氏名又は名称原語表記】MARS INCORPORATED
【復代理人】
【識別番号】100116540
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 香
【復代理人】
【識別番号】100139723
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 洋
【Fターム(参考)】