説明

血管造影剤注入器サブアッセンブリ

【課題】必要に応じて医療の専門家及び専門職に受け入れる、安全で効果的に使用でき、更に費用対効果に優れ、特に、同じリザーバー供給源を使って複数の患者に注入することのできる造影剤のリザーバーを備えた注入器システムを提供する。
【解決手段】複数回使用部分44と1回使用部分46を含み、1回使用部分46と複数回使用部分44とから成る構成要素は、安全で、効果的で、無菌で、使い易い個別のキット構成で使用者に提供される。1回使用構成要素46から成る個別キットは、心臓病、X線透視、超音波、磁気画像化、コンピュータ断層撮影又は同様の処置に用いられる。1回使用構成要素46のこの多機能設計態様は、装置の使用者に、追加的な経費節約と、安全の利点を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外科処置中に用いられる流体管理及び構成要素検知システムに関する。更に特定すると、注入処置中に、注入器構成要素と造影剤のような流体とを検知し、モニターするのに用いられる注入器システム及び装置に関する。
【発明の背景】
【0002】
血管造影法は、特に、心臓又は血管構造内の異常を画像化し、診断し、治療するのに用いられる処置である。最近は、放射線専門医、心臓専門医及び血管外科医も血管造影処置を用いて、心臓の血管及び動脈の手術の侵襲度が最小限となるようにしている。医師は、血管造影を行う際、カテーテルを挿入し、造影材を患者の静脈又は動脈へ注入する。注入が行われる静脈又は動脈と流体接続されている血管構造は、これによって造影材で満たされることになる。次に、造影材が注入された患者の身体領域はX線エネルギーを使って撮影され、放射線は患者の組織を通過し、造影材によって吸収される。結果として得られた血管の画像即ち放射線画像外郭は、フィルム又はビデオテープに記録され、及び/又は、X線透視モニターに表示される。画像は、例えば、バルーンを血管系に挿入して膨らませ狭窄を開く血管形成のような、診断及び介入処置等多くの目的に用いられる。
【0003】
当該技術分野では、血管造影処置を実行するのに用いられる様々な手動及び自動注入システムが知られている。現在のシステムの大多数は、注射器、及びカテーテルと作動的に接続されているその他の使い捨て構成要素(マニホルドチューブ、スパイク等)を含んでいる。注射器は、真空にして、造影剤をそのチャンバ内に吸い込ませる。残っている空気は、注射器を患者のカテーテルに接続する前に、チャンバから排気される。システムが完全にセットされ、準備が整うと、注射器は患者カテーテルと接続され、造影剤が目標領域に注入される。
【0004】
造影剤注入の量と流量は、患者のパラメータ(心臓/心室/血管のサイズ、患者の体重及び身体状態等)及び行われる治療又は診断のタイプによって様々である。これらのパラメータが多様であるために、特定の患者及び/又は処置に必要な造影剤の正確な量を見積もるのは難しいことが多い。その結果、注射器のチャンバに充填されている量が、特定の患者及び/又は処置に対して少なすぎたり多すぎたりする可能性がある。
【0005】
チャンバに充填されている量が不足する場合、十分な量の造影剤が患者に注入されないため、最適な画像が得られず、処置を繰り返さなければならなくなる。これは、造影剤のコストが高いために費用が嵩むだけでなく、追加的放射線曝露及び患者に注入される造影剤投与の点で患者に害を及ぼす可能性もある。逆に、注射器に充填されている量が多すぎる場合、画像化処置終了後に、造影剤の過剰分が注射器内に残ることになる。患者の汚染と製品の不純化を避けるため、残った造影材は単純に廃棄される。注射器を過充填すれば、画像処置を繰り返さなければならないという問題は回避できるが、過充填は、造影剤を無駄にし、病院と医療施設に負担を負わせることになる。
【0006】
一般的には、造影剤は、50ml、100ml、250ml又は500mlの容量を有する流体容量コンテナで供給される。それに対して、患者の処置は、処置毎に、数十ミリリットルという少量の流体から数百ミリリットルという大量の流体までを必要とする特徴がある。コンテナの容量の制限と患者の処置に関する多様性とが相まって、結果的に流体を無駄にすることが多い。例えば、処置が150mlの流体を必要とし、250mlのコンテナーが用いられる場合、処置の終了時にコンテナ内に残っている流体は、交叉汚染及び流体結晶化問題の可能性があるので廃棄される。廃棄された未使用部分は流体を無駄にするだけでなく、病院の経費増大にも大きく関係する。
【0007】
医療機関は、経費の問題に加えて、画像化処置、更に限定すると、流体を調剤するのに用いられる注入器システムに関連する汚染問題にも直面している。例えば、画像化処置の間に用いられる注射器、チューブ及び付随する注入器構成要素は、患者と流体連通関係にある。その結果、これらの器具は、患者及び/又は製品の汚染、即ち侵襲的な処置の間に用いられる全ての製品に立ちはだかる可能性のある危険を回避するために、各診療後に廃棄しなければならない。1回使用後にこれらの器具を廃棄するもう1つの理由は、大部分の画像化構成要素が、最新式の洗浄及び再滅菌処置には適合しない材料から作られており、従って再使用することはできないからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
現在入手可能な注入器システムは、必要に応じて医療の専門家及び専門職に受け入れられてはいるが、安全で効果的に使用でき、更に費用対効果に優れた注入器システムであることが望ましい。特に、同じリザーバー供給源を使って複数の患者に注入することのできる造影剤のリザーバーを備えた注入器システムであることが望ましい。更に、システムが、様々なリザーバー/コンテナ設計と、様々な量、濃度、粘度などを有する流体とを包含することが望ましい。各使用の間、造影剤/流体供給源が汚染とは無縁であることも重要である。更に、1回使用、複数回使用、及び滅菌可能の様々なアクセサリ構成要素を備えた注入器システムであることが望ましい。更に、システムは、X線処置、CTスキャン、磁気共鳴映像、超音波映像、血管形成、食塩水離解などの診断処置及び非診断処置の両方に使え、造影剤、食塩水、洗浄流体などの様々な流体を使用できることが望ましい。
【0009】
以上の点に鑑み、本発明の目的は、現在の流体注入治療に関連した障害及び欠点を解決する注入器サブアッセンブリを提供することである。
【0010】
本発明の更なる目的は、費用対効果に優れ、安全で、使用して効果的な注入器サブアッセンブリを提供することである。
本発明の更なる目的は、同じリザーバー供給源を使って複数の患者に注入を行うことのできる造影剤のリザーバーを備えた注入器システムを提供することである。
【0011】
本発明の更なる目的は、様々なリザーバー/コンテナ設計、及び様々な量、濃度、粘度などを有する流体を包含できるシステムを提供することである。
本発明の更なる目的は、各使用の間、造影剤/流体供給源が汚染されることのないシステムを提供することである。
【0012】
本発明は、注入器システムと共に使用される注入器サブアッセンブリを利用することによって、これらの目的及び本明細書に特に記載されていない目的への取り組みを試みており、注入器サブアッセンブリは、1回使用部分と複数回使用部分をと備えている。特に、1回使用部分は、複数回使用部分と流体的に接続されており、1回使用部分はカテーテル接続部に接続されている高圧チューブを含んでいて、複数回使用部分は、流体供給源リザーバーと接続されている注射器を含んでいる。更に、本システムの注射器と高圧チューブは、所定の作動期間流体連通するように構成されている。
【0013】
本発明の別の実施形態は、高圧チューブの長さが、チューブの長さに沿う圧力降下に関係付けられている注入器サブアッセンブリを考慮している。
本発明の別の実施形態は、約5回まで再使用が可能な複数回使用部分を考慮している。
【0014】
本発明の別の実施形態は、各使用毎に複数回使用部分を洗浄又は殺菌することなく、1人又は複数の患者に再使用できる複数回使用部分を考慮している。
本発明の別の実施形態は、サブアッセンブリの使用者にキットとして提供される1回使用部分を考慮している。
【0015】
本発明の別の実施形態は、サブアッセンブリの使用者にキットとして提供される複数回使用部分を考慮している。
本発明は、更に、血管造影剤注入器システムに使用する注射器であって、遠位端と、近位端と、ポンプ室とを有する注射器本体を備えている注射器を考慮している。更に、注射器プランジャは、注射器のポンプ室内に配置されており、注射器本体の遠位端から近位端までの経路に沿って動くことができる。更に、注射器プランジャは、ユーザーインタフェースアッセンブリに接続され、ユーザーインタフェースアッセンブリによって制御されており、注射器本体が使用最大回数使用されると、注射器プランジャは注射器本体から自動的に接続解除される。
【0016】
本発明は、患者に注入されるか、又はシステムによって分配される流体の量を追跡する血管造影剤注入器システムも考慮しており、前記注入器システムは、ユーザーインタフェースアッセンブリと、注入処置中に用いられる流体を保持するリザーバーを備えている。更に、本システムは、リザーバー及び患者と流体的に接続されている注射器を含んでおり、注射器は、注射器内で移動可能な注射器プランジャを含んでいる。更に、本システムは、注射器を注射器システムの適所に保持する注射器ホルダーも含んでおり、注射器ホルダーは、注射器プランジャの移動によって注射器により分配された流体の量を追跡する少なくとも1つの電子装置を含んでいる。
【0017】
本発明は、注入器サブアッセンブリとユーザーインタフェースサブアッセンブリとを備えた血管造影剤注入器システムも考慮しており、ユーザーインタフェースサブアッセンブリは、システムのエラー状態又はパワーダウンからの復旧に備えた再開特性を含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の好適な実施形態による血管造影剤注入器システムの斜視図である。
【図2】本発明の好適な実施形態による、血管造影剤注入器システムの注入器サブアッセンブリの斜視図である。
【図3】本発明の好適な実施形態による、血管造影剤注入器システムの注射器本体の断面図である。
【図4】本発明の好適な実施形態による、血管造影剤注入器システムの注射器本体及び注射器ホルダーの斜視図である。
【図5】本発明の好適な実施形態による、一部が注射器ホルダー内に配置されている注射器本体の斜視図である。
【図6】本発明の好適な実施形態による、一部が注射器ホルダー内に配置されている注射器本体の斜視図である。
【図7】本発明の好適な実施形態によるリザーバーの斜視図である。
【図8】本発明の好適な実施形態による、システムに用いられる流体の量を追跡するのに用いられるセンサーの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1に示すように、本発明による、医師の対話式制御の下に放射線造影材を血管内に注入するのに用いられる、血管造影剤注入器システム10のある実施形態は、注入器サブアッセンブリ12と、ユーザーインタフェースサブアッセンブリ14とを含んでいる。互換性のあるユーザーインタフェースサブアッセンブリ14の例として、1997年10月24日出願の米国特許出願第08/957,228号を挙げ、その全体を本出願の参考文献として援用する。
【0020】
注入器サブアッセンブリ12は、注射器本体18を収容するために使われる注射器ホルダー16を含んでいる。注射器本体18内には、脱着可能な注射器プランジャ20が配置されている。注射器プランジャ20は、注射器本体18の近位端21に向けて動かされると、注射器本体18内に圧力差を作り出し、それによって造影材が、放射線造影材リザーバー(ボトル)22から、ワンウェイバルブ24を通って注射器本体18内に吸引される。注射器プランジャ20が注射器本体18の遠位端25に向かって動かされると、造影材は、注射器本体18を出て連結ルアー50を通り、患者マニホルド(チェックバルブ)26に入る。造影材は、患者マニホルド26から患者ポート33に入り、高圧管28を通って3方コック32へ流れ、カテーテル接続部30へ向かう。
【0021】
図2に示すように、本発明の注入器サブアッセンブリ12のある好適な実施形態は、複数回使用部分44と1回使用部分46を含んでいる。1回使用部分46と複数回使用部分44とから成る構成要素は、安全で、効果的で、無菌で、使い易い個別のキット構成で使用者に提供される。1回使用構成要素46から成る個別キットは、心臓病、X線透視、超音波、磁気画像化、コンピュータ断層撮影又は同様の処置に用いられる。1回使用構成要素46のこの多機能設計態様は、装置の使用者に、追加的な経費節約と、安全の利点を提供する。
【0022】
特に、1つのキットを様々な処置に用いることができれば、所与の処置の間に互換性のない構成要素を利用する可能性が大幅に低減され、又は完全に除去される。更に、1回使用の多機能キットは、特に、多くの施設で医療を行う医師のために構成要素の標準化を配慮しており、病院及び健康管理施設に配備されるべき構成要素の数を減らすので、経費面でも利点があり、使用者にも便利である。
【0023】
1回使用キット46の構成要素は、特にPVC、ABS、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリカーボネートなど熱可塑性の、及び/又はポリイソプレン、ニトリルゴム、EPDM、シリコンゴム及びその他の類似材料のようなエラストマー熱硬化性のような様々な材料から製造される。従って、各患者の処置又は利用が済むと、1回使用構成要素46は、血管造影システム10から簡単に取り外し、便利よく廃棄される。
【0024】
これに対し、複数回使用キット44から成る構成要素は、1人又はそれ以上の患者、又は1回又はそれ以上の医療行為に再利用することができる。ある好適な実施形態では、複数回使用キット44の構成要素は、1回利用キットと同じか又は類似の材料で作られており約5回迄再利用することができる。複数回使用構成要素44は、再利用可能なので、病院又は医療施設にとって、1回使用構成要素46よりも費用対効果に優れている。
【0025】
図2に示すように、1回使用部分46又はキットから成る構成要素には、患者マニホルド26、患者ポート33、高圧チューブ28、カレーテル接続部30、3方コック32、患者投薬ポート34、圧力変換器36、食塩水チェックバルブ38、食塩水チューブ40、食塩水スパイク52が含まれる。
【0026】
患者マニホルド26は、通常は圧力変換器36と患者ポート33とを接続しているばね付勢スプールバルブを含んでいる。しかし、注入処置の間は、注射器内の造影材からの圧力が、患者マニホルド26のスプールバルブを付勢して、注射器本体18の下部ポート50が患者ポート33と接続するように状態を変える。スプールバルブを駆動するのに必要な圧力は、可変で、ばねの特性を上げ下げすることにより、装置の製造者が設定できる。
【0027】
患者マニホルド26は、流体の流れの方向を制御することに加えて、注入処置の間、患者及び/又はシステムの汚染を防ぐための機構としても機能する。患者マニホルド26は、圧力ポート33と、圧力変換器36と、注射器18とに流体接続部を提供する。従って、患者マニホルド26は、チェックバルブとして作用して、患者流体の注射器及び/又は圧力変換器36への逆流を防ぐので、様々なシステム構成要素間に汚染の無い流体流動経路が維持される。
【0028】
本発明の高圧チューブ28は、患者ポート33を3方向コック32に接続している。ある好適な実施形態では、高圧チューブ28はPVC製である。しかし、強化ウレタンのような代替材料を用いてもよい。高圧チューブ28の長さは、本発明のシステムで用いる場合、患者ポート33と止めコック32との間の圧力降下量に直接関係している。ある好適な実施形態では、高圧チューブ28の長さは111.76±0.32cmである。しかし、指定された処置を行う間にシステムが適切な圧力を維持できれば、様々な長さの高圧チューブ28を使うことができる。
【0029】
図2に示すように、本発明の3方向コック32は、患者へ出入りする流体の流れを調整する。止めコック32は、その第1位置即ちオフ位置では、流体が患者内へ出入りしないようにする。止めコック32が第2位置に合わせられているときは、止めコック32は開いており、流体を、高圧チューブ28から、止めコック32を経由し、カテーテル接続部30を通して患者へ流す。このように止めコック32を回すと、1つのポートを選択的に閉塞し、残りの2つのポート間が連通するようになる。
【0030】
場合によっては、患者のカテーテル部位以外に別の注入部位を設けることなく患者に薬剤を注入するか、又は患者から流体を吸引することが望ましいこともある。これらの状況では、止めコック32は第3位置まで回される。止めコック32を第3位置まで開けると、薬剤を、止めコック32を通して患者投薬ポート34内に注入し、カテーテル接続部30を通して患者へ注入できるようになる。患者投薬ポート34は、血液採取及び同様の処置のように、患者から流体を吸引するのに用いることもできる。
【0031】
医療処置中に、食塩水灌流後に放射線造影材注入が続くような、2タイプ以上の流体注入が必要であることも多い。この処置の場合、食塩水は、食塩水供給源42から食塩水チューブ40へ送られ、食塩水チェックバルブ38を経由して圧力変換器36へ送られる。圧力変換器36は、閉じ込められた空気を取り除き/追放して、圧力変換器36のドーム室を食塩水で灌流できるようになっている。次に食塩水は、圧力変換器36から、患者マニホルド26を通って患者ポート33へ流れ、高圧チューブ28を通過する。一旦食塩水が高圧チューブ28へ入ると、食塩水は上記のように造影材と同じ流動経路を進む。
【0032】
ある好適な実施形態では、1回使用部分46の構成要素は、使い捨て可能で、各患者又は各医療行為後に交換される1回限りの使用品である。しかし、別の実施形態では、各患者/医療行為後にこれらの構成要素を洗浄し、再殺菌して、再利用してもよい。
【0033】
図2に示すように、複数回使用部分44又はキットは、注射器本体18と、ワンウェイバルブ24と、流体/造影剤コンテナースパイク48と、連結ルアー50と、食塩水チューブ40と、食塩水スパイク52とを備えている。複数回使用部分44は、造影剤供給源の殺菌を維持し、患者への汚染侵入を防ぎながら、複数の患者/医療行為に対して造影剤の連続使用に備えている。
【0034】
図3に示すように、ある好適な実施形態では、注入器サブアッセンブリ12の注射器本体18は円筒形であるが、楕円形又は様々な形の他の代替形状を用いてもよい。注射器本体18の形状は、内側表面54にエッジが無く即ち滑らかで障害が無く、注射器本体18の内側表面54と注射器プランジャ20のワイパーとの間に優れた流体密封を形成できることから、円筒形が好適である。更に、内側表面54の環状形状は、洗浄し易く、装置を使用している間に内側表面54に材料の堆積するのが防げる。
【0035】
注射器本体18の縦横比は様々である。縦横比は、一般的には注射器プランジャ20である注射器18の移動する構成要素の、力とストロークの関数であるのが望ましい。注射器プランジャ20が注射器本体18と適切に嵌合しており、その内を移動できるのであれば、注射器本体18の内径は一定でなくてもよい。同様に、注射器本体18の外径も、注射器本体18を注射器ホルダー16又は他の類似の保持装置内にはめ込むことができるのであれば、どの様な大きさであってもよい。
【0036】
本発明の装置に関して、注射器18が均一の密封力によって対称を保つのであれば、他の注射器外形、形状を用いてもよい。これらの属性は、注射器の性能を高めるだけではなく、そのような注射器の製造も容易にする。更に、注射器本体18は、60mlから250mlまでの範囲の流体容量を有するのが望ましい。しかし、最終的な注射器の容量、設計及び配置は、駆動モード、或いは、その他の設計びシステムの制約に基づいて決められることになる。
【0037】
注射器ホルダー16が提供する構造的支持のお陰で、注射器本体18に必要な構造強度は、妥当でありながら最小となる。注射器本体18の遠位部分25は、注射器本体18のこの部分に構造的な一体性と強度を与え、注射器プランジャ20の軸力を上手く統制するために、リブ64のような強化構造を含んでいる。
【0038】
ある好適な実施形態では、注射器本体18は透明又は半透明であり、ポリカーボネートで作られている。透明な材料であれば、装置の使用者は、注射器本体18内の造影剤又は流体を観察し、システム内の気泡の存在を目視で検知できる。代わりに、PET、不純物除去ポリプロピレン、SAN、非晶質ナイロン、スチレン、強化ガラス、アクリルのような他の互換材料か、又は、同様の強度及び透明特性を有する他の材料を用いてもよい。更に、注射器本体18を構成している材料は、何回かの連続再使用後に注射器本体18を洗浄及び再滅菌できる材料であることが望ましい。この材料の選好は主に使用者の好み次第であり、病院又は健康医療施設の出費を抑えるためには、注射器本体18は、1回使用型よりも再利用可能型の方が一般的には望ましい。
【0039】
図3に示すように、注射器18の構造は、注射器本体18の近位端21が、注射器プランジャ20を挿入できるように開いている。注射器プランジャ20は、ユーザーインタフェースサブアッセンブリ14内に配置されているモーターに接続され、そのモーターによって駆動されるので、注射器本体18は、注射器本体18の開口端がユーザーインタフェースサブアッセンブリ14と隣接するように注射器ホルダー16内に配置される。
【0040】
注射器本体18の遠位部25は閉じており、上部ポート58と下部ポート60を備えている。上部ポート58は長さ約10mmで、内径と外径は様々である。注射器18の上部ポート58は、ポートの垂直位置を確実にするため、注射器本体18の遠位端25に対して10度の角度をなしている。これに対し、下部ポート60は、注射器本体18と並行に配置されており、注射器本体18の長手方向中心軸よりも約16.5mm下に長手方向軸中心を有している。
【0041】
図1−3に示すように、上部ポート58には、放射線材料リザーバー22に挿入されている造影剤コンテナースパイク48のワンウェイバルブ24が取り付けられている。使用中は、造影材がリザーバー22から吸引され、チェックバルブ24と上部ポート58を経由して、注射器本体18のポンプ室へ送られる。チェックバルブ24はワンウェイバルブであり、室内の下部着座位置に配置される錘玉(図示せず)を含んでいるのが望ましい。
【0042】
注射器プランジャ20が造影剤を下部ポート60内へ送る際には、注射器本体18内に残っている空気は全て上部ポート58から排出される。チェックバルブ24内の錘玉は十分に重いので、錘玉を上部着座位置まで持ち上げることなく空気を注射器本体18からリザーバー22へ流すことができる。一旦全ての空気が注射器本体18から除去されると、造影材は上部ポート58へ流れ込み始めることになる。造影剤の比重は、錘玉の流体力学的相互作用と一緒になって、錘玉を上部着座位置まで持ち上げ、上部ポート58からリザーバー22への経路を実質的に遮断するので、造影剤が注射器本体18からリザーバー22へ逆流することはない。
【0043】
流体の流れを調整し、及び/又はシステムと患者の汚染を防ぐ血管造影剤注入器システム10の重要な特徴は、患者バルブ26と、チェックバルブ38と、ワンウェイバルブ24と、高圧チューブ28と、止めコック32とであるが、それらに限定されるものではない。先に述べたように、患者バルブ26は、患者流体の注射器18への逆流を阻止する。従って、患者バルブ26は、注射器18を確実に無菌に維持する。
【0044】
更に、食塩水チェックバルブ38も、流体の流れを制御して、汚染のない流体流路を維持する。特に、チェックバルブ38は、流体が食塩水供給源に逆流するのを阻止するように作用し、システムを確実に無菌状態にして患者の安全を確保する。
【0045】
患者バルブ26の機能と同様に、ワンウェイバルブ24も、造影材が注射器本体18からリザーバー22供給源へ逆流するのを防ぐように設計されている。ワンウェイバルブ24は、それを行いながら、同時に、注射器本体18とリザーバー22との間の空気の流れと圧力を管理している。特に、ワンウェイバルブ24は、掃気作用中に、何時全ての空気がシステムから除去されたかを受動的に理解し、更に、注射器圧力をリザーバー圧とは別のレベルに維持する。
【0046】
本発明の3方向コック32は、流体流量を制御するだけでなく、注入器システム10を使用する間の患者のトラウマを最小とするよう設計されている。3方向コック32は、患者に出入りする流体の流れを制御可能に調整する3つの個別の位置を含んでいる。第1位置では、3方向コック32は、流体が患者に出入りするのを防ぐ。しかし、この特別の装置では、薬剤及び/又は流体を、それぞれ、患者投薬ポート34を通して高圧チューブ28へ注入するか、高圧チューブ28から吸引することができるようになっている。
【0047】
第2位置では、3方向コック32は開いて、流体を、高圧チューブ28からコック32を経由し、カテーテル接続部30を通して患者内へ流せるようになっている。造影剤を患者内へ注入する必要のある画像化処置の間は、コック32は、通常はその第2位置にある。
【0048】
コック32の第3位置は、患者投薬ポート34から、カテーテル接続部30を経由し、最終的に患者へ通じる流体流路を提供する。装置のオペレーターが、薬剤及び/又は流体を、患者へ又は患者からそれぞれ注入又は吸引できるのは、コック32の第3位置である。この特別な特徴により、患者に別の注入部位を作る必要無しに、追加の診断又は処置が可能となる。従って、これら補足的な処置から、患者に追加のトラウマが起こることはない。
【0049】
システム及び/又は患者の汚染を低減又は取り除く本発明の装置のもう1つの特徴は、高圧チューブ28である。高圧チューブ28は十分な長さがあり、比較的大量の流体が、カテーテル接続部30を患者ポート33から分離するように設計されている。流体の量とチューブの長さが、患者側から注射器本体18への起こりうる汚染の移行を防ぐか、又は大幅に低減する。従って、患者バルブ26、チェックバルブ38、ワンウェイバルブ24、高圧チューブ28及び3方向コック32は、システム10の残りの構成要素の特別な設計と相まって、1つ又はそれ以上の注入処置の間に起こるシステムと患者の汚染を大幅に低減するか、又は阻止する。
【0050】
図1−3では、注射器本体18の下部ポート60は、本発明の装置である1回使用部分46を複数回使用部分44と接続したり切断したりするのに用いられる連結ルアー50を含んでいる。好適な実施形態では、連結ルアー50は、使用済み及び/又は汚染された1回使用構成要素46を、迅速且つ容易に取り外し、無菌の構成要素と取り替えられるようにするロックカラーを備えた回転式ポリカーボネート高圧ルアーである。代わりに、血管造影剤注入器システム10の1回使用部分46と複数回使用部分44との間に接続を形成するのに、別の類似の高圧性能コネクタを用いてもよい。
【0051】
連結ルアー50の内径は約2.2mmである。1回使用部分46と複数回使用部分44との間の流体流の制約を低減するために、連結ルアー50の直径はできるだけ大きいのが望ましい。好適な実施形態では、流体経路がよく見え、その経路内に含まれる空気を簡単に検知できるように、連結ルアー50は、ポリカーボネート、ABS又は他の類似材料の様な透明又は半透明の材料で作られている。
【0052】
図3では、注射器本体18の閉じられている遠位端25は、円錐形端壁62を形成している。円錐形端壁62は、垂直から約126度の角度をなして傾斜しており、約6.35±0.25mmの半径を有する丸まった頂点を含んでいる。端壁62の円錐形は、システム10のセットアップ手続き及びポンプ作用の間に、流体及び気体を適切なポート58、60へ送るのに役立つ。
【0053】
1つ又はそれ以上のリブ64が、端壁62の外側表面に配置されている。リブ64は、厚さが約2.54±0.13mmで、約2.54mm間隔で配置されている。図3に示すように、リブ64は、注射器本体18の長手方向軸に対し垂直に伸張するフランジ66を含んでいる。リブ64の厚さは、フランジ66と一緒にして、約3.56±0.13mmである。リブ64とフランジ66は、端壁62の外側表面に配置され、平面68を形成している。
【0054】
ある好適実な施形態では、端壁62を横切って横方向に伸張する7つのリブ64がある。リブ64は、人目を引く装飾的な外観を注射器本体18に与えることに加えて、構造的な補強機能を提供する。注入処置の間に、注射器プランジャ20と造影剤によって加えられる力に耐えるために、注射器本体18の遠位端25には、追加の構造的保全性が必要である。
【0055】
リブ64とフランジ66との組み合わせは、適切な注射器本体18とアクセサリーとが本発明の血管造影剤注入器システム10と共に用いられるのを保証するための位置決め用の造形又は構造としても用いられる。例えば、図4及び5に示すある実施形態では、注射器本体18のフランジ66、リッジ67及び切り込み69は、注射器ホルダー16に配置されている補完切り込み68及び突起70と噛み合う。更に、注射器本体18の上部ポート58は、本発明の追加のはめ合い又は位置決め用の造形として、注射器ホルダー16の溝71に係合する。
【0056】
好適な位置決め造形としては、切り込みと突起の組合せでもよいが、位置決め又は割出しの形態としてもよい。例えば、ある実施形態では、位置決め造形は、注射器本体18のフランジ66、リッジ67及び上部ポート58と、注射器ホルダー16のはめ合い切り込み68だけである。別の実施形態では、位置決め造形は、単に、注射器本体18と注射器ホルダー16とに配置されている切込み69と突起70である。位置決め造形の数、様式、形状及び位置は、いろいろ変化してもよく、全て本発明の範囲内にある。更に、正しい注射器本体18が本発明の血管造影剤システム10と共に用いられるのを保証するため、当該技術分野では既知である、同様の機械的割出し又は位置決め構造を用いてもよい。
【0057】
注射器本体18と注射器ホルダー16との間の機械的はめ合いは、装置の利用者が適合しない注射器をシステム10に取り付けるのを防ぐ。更に、注射器の設計と実行される処置の間には直接的関係があるので、本発明の位置決め造形は、間違ったキット構成が誤った注入器システムのセットアップと共に用いられるのを防ぐ。
【0058】
システム10が正しくセットアップされ、使用されるのを保証するために、機械的手段に加えて、電気的手段を用いることもできる。例えば、図6に示す本発明のある実施形態では、注射器本体18上の突起及び/又は切り込みは、注射器ホルダー16上のスイッチ又はセンサー72と接触する。スイッチ又はセンサー72は、適切な注射器本体18が使用されていることを示すデジタル又はアナログ信号のような信号を、ユーザーインタフェースサブアッセンブリ14(図示せず)へ送る。装置のオペレータがシステム10に適合しない注射器18を用いようとすれば、センサー72は、システムに適合する注射器18が注射器ホルダー16に配置されるまで、システム10が機能しないようにする。
【0059】
センサー72は、注射器18が1回使用注射器か、又は複数回使用注射器かを区別するのにも用いられる。注射器18が1回使用であれば、システム10の造形は、注射器18が単一の患者又は医療行為を超えて用いられないようにする。これに対し、注射器18が再使用可能であれば、システム10は使用回数を追跡又は計数し、注射器18が最大使用回数に達するとシャットダウンする。次に、システム10は、オペレーターに注射器18を変えるよう警告し、使用済み注射器18が取り外されて新しい注射器18がシステム10に装着されるまで、装置が続けて作動しないようにする。本発明による装置のある実施形態では、注射器18が最大使用回数分使用されると、注射器プランジャ20は注射器18から自動的に外す。使用済みの/汚染された注射器18は、注射器プランジャ20及びシステム10が続けて作動する前に、新しい殺菌済み注射器18と交換しなければならない。
【0060】
本発明のある実施形態は、センサー又はスイッチを利用して、注射器プランジャ20の運動を通して注射器の使用を追跡する。例えば、注射器ホルダー16の長さに沿って配置されているセンサーは、注射器プランジャ20が、注入処置の間に注射器18の近位端21から遠位端25まで動くときの移動を感知し、追跡する。システム10は、注射器プランジャ20の動きを追跡すると共に、オペレータの入力する情報を使って、患者に注入される流体の量を追跡することができる。処置が完了すると、システムオペレータは、例えば「医療終了」キー又はボタンを押すことにより、医療行為を終える。このように、システム10は、これを注射器18の1回の使用として追跡及び/又は計数する。システム10は、注射器18の5回使用(又は最大使用回数)後に、注射器18は最大使用回数まで使用されたことをオペレータに通知する。この時点で、オペレータは注射器18を新しい殺菌済み注射器と取り替えてもよいし、システムのメッセージを無視して、現在の注射器18を使い続けることもできる。
【0061】
別の実施形態では、システム10が注射器再使用の最大使用回数に達すると、システム10は作動を停止し、インタフェースサブアッセンブリ14のディスプレイを通して、注射器18を新しい殺菌済み注射器18と取り替えられなければならないことをオペレータに通知する。注射器18が交換された後、システム10は作動を続ける。従って、本発明のこの実施形態では、オペレータは、システムメッセージを無視又は見過ごすことができないので、現在ある注射器18を取り替えなければならない。
【0062】
本発明の更に別の実施形態では、注射器プランジャ20の動きを制御するモーターの回転数を追跡又はモニターするため、システム10にセンサーを配置することができる。この実施形態によれば、モーターの各回転が、注射器本体18内を移動するプランジャ20の特定の距離と直接的に関係付けられている。更に、プランジャの運動量は、注射器18によって注入即ち押し出される流体の特定の量と対応している。先に述べたように、システムオペレータは、注入処置が完了すると、「医療終了」キーを押すことにより、医療行為を終了する。その結果、システム10は、オペレータが「医療終了」機能を実行する回数を計数することにより、完了した医療行為/処置の数を追跡することができる。
【0063】
スイッチとセンサーは、連結ルアー50、高圧チューブ28、食塩水スパイク52などの血管造影システム10のアクセサリ構成要素と組み合わせて使用することもできる。注射器ホルダー16の場合と同様に、スイッチとセンサーは、本発明の装置にはシステムに適合するアクセサリしか用いられていないことを保証する。加えて、スイッチとセンサーは、医療行為回数又は患者数を追跡又は計数して、推奨使用回数を超えるアクセサリの再使用を防ぐ。アクセサリに関するデータ又は情報は、インタフェースサブアッセンブリ14を通してオペレータに伝えられる。
【0064】
センサーとスイッチに加えて、他の電気及び/又はソフトウェア手段を、本発明の装置10に用いてもよい。例えば、ある別の実施形態では、小さな記憶装置又は識別チップが、注射器ホルダー16のケーブル又はセンサー内に配置されている。チップは、インタフェースサブアッセンブリ14と通信して、システムに適合する注射器18又はキットが装着されているかどうか確認する。センサーの場合と同様に、チップは、インタフェースサブアッセンブリ14と共に、システムに適合する注射器18又はキットが装着されるまで、システム10が機能しないようにする。
【0065】
更に別の実施形態では、注射器本体18にバーコードが付けられている。システム10の注射器ホルダー16又は他の好適な位置に配置されているバーコードリーダーは、注射器本体18上のバーコードを読み取る。次に、バーコード情報は、ユーザーインタフェースサブアッセンブリ14により処理され、オペレーターに表示される。バーコードリーダーが適切なバーコードを読み取るまで、言い換えると、適合する注射器本体18が注射器ホルダー16内に装着されるまで、システム10を駆動して注入処置を開始することはできない。適合しない注射器18が用いられるのを防ぐことに加え、バーコード及びバーコードリーダーは、1回使用又は複数回使用の注射器18又はキットがシステム10に適切に接続されているかどうかを示すのにも用いられる。
【0066】
スイッチ、センサー及び記憶装置/識別チップに加えて、アンテナのような他の類似装置、光学又は類似装置を用いて、特定の構成要素の使用回数を追跡し、本発明の血管造影剤システム10に正しい構成要素が用いられていることを確かめることもできる。
【0067】
本発明に用いられているアンテナ装置の一例は、商店で用いられている従来型の盗難よけタグ装置と同じである。本発明のある実施形態では、アンテナは注射器本体18上に配置されており、共振回路は注射器ホルダー16上に配置されている。注射器本体18が注射器ホルダー16内に配置されている場合は、共振回路は、システムに正しい注射器本体18が用いられていることを示す信号をアンテナから受信するので、システムを作動することができる。しかし、注射器本体18がアンテナを備えていなかったり、アンテナが正しくない信号を出す場合、共振回路は、適切な注射器が装着されるまでシステムが作動しないようにする。
【0068】
本発明の別の実施形態では、注射器ホルダー16内に注射器本体18が在ることを検知するために光学スイッチ又は検知器が用いられている。具体的には、注射器ホルダー16から検知器に放出された光線は、注射器ホルダー16が空であることを示す信号をユーザーインタフェースへ送る。注射器本体18がホルダー16内に配置されると、注射器本体18は光線を阻止して、注射器ホルダー16が装填されたことを示す。別の実施形態では、注射器本体18は、光線によって起動されるスイッチも含んでいる。従って、注射器本体18が注射器ホルダー16内に配置されると、スイッチは、注射器ホルダー16が装填され、適切な型式の注射器18がシステムに用いられていることを、ユーザーインタフェースへ信号送信する。
【0069】
上記実施形態のアンテナと光学装置の例だけを詳細に述べているが、他の現行のアンテナと光学装置を血管造影システムに用いることもでき、これも本発明の範囲内にある。
【0070】
本発明の注入器システム10は、使用者の利便性及び使用者/患者の安全に目を向けた追加的特徴も含んでいる。具体的には、注入器システム10は、操作ミスという形で用いられないようにする多数の安全特性を有している。そのような特性の1つが再開機能である。正常な作動の間、及び処置完了時、システム10は、システムオペレータにより、「医療終了」行為の完了を含む適切なシャットダウンの一連の段階を使ってシャットダウンされる。この手続きに続いて、システム10の次のパワーアップをしなければ、使用者はシステム10を再始動することができず、新しい使い捨て構成要素をシステムに装着する必要がある。
【0071】
それに対し、ある種のエラー、電圧低下又は電力損失に遭遇した結果システムの作動が中断されたり、システムが不適切にシャットダウンされた場合は、システム10の知能は、シャットダウン状況にアクセスして、オペレーターに、システム10の再始動に関する2つの選択肢を提供する。言い換えると、システムオペレーターが「医療終了」行為を実行することなくシステムシャットダウンした後でシステム10を再開するには、オペレーターが「再始動」又は「再開」を選択する必要がある。先に述べたように、「再始動」特性は新しい手続き又は作動を始めることと同じであり、現在の構成要素を取り外し、新しい使い捨て構成要素をシステムに装着しなければならない。
【0072】
これに対し、「再開」特性は、不適切なパワーダウンに遭遇した後で、処置又は医療行為を続けるかどうかという選択肢をオペレーターに提供する。従って、再開特性を使えば、使用者は、システムの構成要素を取り替える必要無しに、ユーザーインタフェースのメインスクリーンへ戻って処置を続けることができる。しかし、注入流体及び最終注入値に関する入力パラメータ及び医療行為の総計は失われており、ゼロに再設定される。
【0073】
再開機能は、更に、処置が完了する前に、オペレーターが使い捨てシステム構成要素を間違って取り外すことを防ぐ。一般的に、医療行為の最後に、システム10は、オペレーターに、新たな処置又は医療行為の開始前に使い捨て構成要素を取り外すことを要求する。しかし処置が終了する前にシステムがシャットダウンした(先述のように)場合、オペレーターは、システム10の再開特性を作動させることにより単純に処置を続けることができる。再開機能を使えば、システム10は機能し、オペレーターは、システムの標準的な初期化を実行したり、又は全ての使い捨て構成要素を交換するよう要求されることなく、処置を続けることができる。
【0074】
本発明の注入器システム10のもう1つの画期的な特徴は、ワンショット補充オプションである。本発明のある実施形態では、ワンショット補充オプションを使えば、装置の製造者又はオペレーターは、様々な注入処置中によく選択される所定の流体増分又は量に相当する独自のキーストロークを事前にプログラムできるようになる。次に、これらの事前にプログラムされたキーストロークは、ユーザーインタフェースサブアッセンブリ14のメモリシステム内に保存及び記憶される。この特性により、システム10は、1つのキーストロークによる要求に応じて、オペレーターの選択した特定のキーに対応する特定量の流体を、注射器18に自動的に補充できるようになる。つまり、ワンショット補充オプションを使えば、装置10のオペレーターは、1つのキーストロークを使って、特定量の流体を注射器18に迅速且つ効率的に充填できるようになる。
【0075】
別の実施形態では、ワンショット補充特性は、自動モード又は手動モードを通して、システムオペレーターが利用できる。自動モードでは、オペレータが、システム10のボタンを押すことによってワンショット補充オプションを起動させる。他の従来型又は最新式のトリガ装置を本発明と共に用いてもよいが、ワンショット補充特性は、利便性と簡潔さという精神で、起動の方法としてのボタンと関連して説明することとする。起動させると、ワンショット補充特性は、注射器18を、最大量になるまで、又は、リザーバー/ボトル22内に残っている流体の量に相当する量になるまで自動的に満たす。従って、流体充填量は、注射器18の容量と、残っているリザーバー22の供給量とに依って決まる。
【0076】
これに対し、ワンショット補充特性の手動モードでは、オペレーターは、注射器18の充填量を手で制御することができる。この作動モードでは、オペレーターは、ワンショット補充ボタンを押し、注射器18に所望の流体量が充填されるまで、そのまま保持していなければならない。このように、オペレーターは、注射器18を様々な特注量まで正確且つ効率的に充填することができる。従って、本発明のこの特別な特性は、使用者の利便性を高めるだけでなく、患者と医療施設両方の経費を節減する。
【0077】
本発明の装置は、ワンショット補充特性に対する追加的変更も含んでいる。本システムは、補充量を制御することに加えて、オペレーターが、補充機能が起こる特定の回数を事前にプログラムできるようにする。例えば、患者マニホルド26は、食塩水注入の間は開いており、食塩水が食塩水サブアッセンブリ37から高圧チューブ28へ流れるようにしている。この構成では、患者マニホルド26は、注射器18の流体流路に関しては閉じている。このため、オペレーターは、ワンショット補充特性を事前にプログラムして、食塩水がシステム10により注入されているときに注射器18が自動的に補充されるようにすることができる。
【0078】
別の例では、オペレーターは、一日の内の特定の時間中にワンショット補充オプションが起こるよう事前プログラムすることができる。代わりに、リザーバー22内の流体の供給が設定最小量に達すると、ワンショット補充オプションが自動的に発生するように事前にプログラムすることもできる。特定的に開示してはいないが、他の類似の事前プログラミングも、本発明の範囲内に含まれる。
【0079】
注入システム10のもう1つの特性は、注入器システム10が、システム10から注入された流体の量を自動的にモニター又は追跡する、その流体管理システムである。従来型の注入器システムでは、造影剤ボトル/バッグのような流体供給リザーバーを保持するために、I.V.ポール又は類似の装置を必要とする。これらの装置は容易に入手できるが、通常、利用しづらく、傾きがちで、供給リザーバーが注入器システムから外れることも多い。
【0080】
これに対し、本発明の注入器システム10は、流体の供給源を支持又は保持するよう特別に構成されている構成要素を含んでいる。図1に示す本発明のある実施形態では、その構成要素は、多量の流体を収容するリザーバー22である。図7に示すもう1つの実施形態でも、その構成要素はリザーバー22であるが、この実施形態では、リザーバー22は、注入処置の間に用いられる様々な流体を収容するボトル、バッグ等の様々なコンテナを受け入れるように設計されている。このように、本発明のリザーバー22は、各システム流体の更に制御された配置に配慮し、システム全体の利便性及び装置使用者の安全性に寄与している。
【0081】
システム全体の流体工学、特に本発明の流体感知及び流体追跡特性は、システム10が、使用した流体の量を効率的且つ効果的に管理できるようにしている。例えば、従来型の注入システムでは、何時ボトル22を交換する必要があるかの判定を、オペレーターの能力に頼っている。処置の間に流体が無くなって処置を繰り返さなければならなくなることを避けるために、オペレーターはボトル22を早めに交換することが多い。この行為により、無駄になる造影剤又は他の注入流体が高価であるために、病院又は医療施設の経費は嵩むことになる。この特定の問題は、正確にモニターし、効率的に流体の使用を管理する以下の流体感知及び流体追跡特性によって解決される。
【0082】
本発明の装置のある実施形態では、システム10は、1つ又はそれ以上の処置又は使用に対して、造影剤が放射線造影材料リザーバー/ボトル/バッグ22から使用できるようにする特性を含んでいる。リザーバー22とシステム10は、患者を汚染することなく、或いはボトル22又は注射器18内の供給源の滅菌を危うくすることもなく、複数の使用者を造影材供給源に接続することができるように、十分なサイズで、最適な構造となるように設計されている。特に、システム10は、注射器18が、放射線造影材料リザーバー/ボトル22から「無制限に」又は連続して造影剤を引き込めるように設計されている。ボトル22が空の場合、装置の使用者は、単純に空のボトル22を捨てて、造影剤の詰まったボトル22を造影剤コンテナスパイク48に取り付ければよい。この時点で、オペレーターは、現在継続中の処置を続けてもよいし、新しい処置を始めてもよい。更に、継続中の処置に関しては、本システムはボトル交換処理の間に無菌の流体経路を維持できるので、関連するシステムの構成要素を外したり交換したりする必要はない。
【0083】
図8に示すもう1つの実施形態では、モーター上に配置されているエンコーダー又はセンサー74は、電位差計に取り付けられているギアアッセンブリ76と組み合わされて、モーターの回転数によって、システム10に使用されている流体の量を追跡する。このデータを、オペレーターの入力する注入流体のボトルサイズ/量に関する追加的情報と共に用いて、システム10は、ボトル22内に残っている流体の量を連続して正確に計算できるようになっている。代わりに、システム10は、完全に自動化して、バーコードと、バーコードリーダー、センサー又は同様の装置とを使ってボトルのサイズ/量も検知し、次にその情報をシステム10が自動的に処理するようにしてもよい。
【0084】
流体の量と使用状況は、別の方法で追跡してもよい。例えば、図7に示す本発明の別の実施形態では、IR(赤外線)検知器エミッタの対、又はセンサー76が、造影剤コンテナチューブに沿って配置されている。システム10を使用している間、センサー76は、スパイク48又はチューブ内の流体の存在を感知し、コンテナ22が空の場合、及び/又は、全ての空気がシステムから掃気されている場合、ユーザーインタフェースサブアッセンブリ14(図示せず)を通して、システム10のオペレーターに警告する。更に、バルブ24とスパイク48(図示せず)との間のチューブ内に気泡がある場合にも、センサー76はオペレーターに警告する。ユーザーインタフェースサブアッセンブリ14は、システムのディスプレイを通して、流体の状態をオペレーターに知らせる。
【0085】
本発明の別の実施形態では、センサー又は同様の装置が、供給リザーバー22に沿って様々な高さに配置されている。センサーは、リザーバー22内の流体の水位を連続的に追跡し、この情報をユーザーインタフェースサブアッセンブリ14へ送る。次に、システム10がこの情報を処理して、システムのディスプレイを通してオペレーターへ知らせる。代わりに、この特性は、ユーザーにボトル22内に残っている流体の量を気付かせるため、視覚的及び/又は聴覚的な警告を含んでいてもよい。その結果、システム10は、ボトル22を交換すべきタイミングを正確に且つ効果的に制御できる。
使用方法
本発明のシステム10は、最初に使用する前に、装置の使用者又はオペレーターが適切にセットアップしなければならない。システム10のオペレーターは、最初に、年齢、性別、身長、体重などの患者のパラメータをユーザーインタフェースサブアッセンブリ14へ入力する。次に、オペレーターは、放射線学、心臓学など、実行される処置のタイプを選択する。次に、オペレーターには、ディスプレイを通して、選択された特定の処置と一般的に関係する目標領域の選択が提示される。例えば、オペレーターが心臓学的処置を選択した場合、オペレーターには、ディスプレイを通して、右冠状動脈、左冠状動脈、左心室、大動脈などを含む目標領域の選択が与えられる。オペレーターは、注入型式を選択した後、システム10によって実行される造影剤注入又は食塩水灌流のような特定の機能を入力する。患者及びシステムの全情報が注入器システム10のユーザーインタフェースサブアッセンブリ14にプログラムされた後、装置のオペレーターは、システム10を作動させる。
【0086】
システム10は、一旦起動されると、一連の段階を通して使用者を案内し、構成要素及び/又はアクセサリをシステムに装着し、空気を掃気し、システム10に流体を充填するように導く。このシステムのセットアップと充填は、患者のカテーテルをカテーテル接続部30と接続する前に完了しなければならない。システム充填の間、注射器プランジャ20は、装置の使用者が入力したパラメータに基づいて、適切な量の流体を注射器本体18へ自動的に吸入する。次に、注射器プランジャ20は、注射器本体18内の流体を、注射器18の遠位端25に向かって押す。流体が注射器18の下部ポート60へ流れ込むと、過剰の空気が上部ポート58を通して放出される。注射器本体18から全ての空気が取り除かれると、ワンウェイバルブ24の錘玉は、流体によってシール位置まで押し出され、流体がサプライリザーバー22へ逆流するのを実質的に阻止する。流体は、注射器本体18の下部ポート60を出ると、患者マニホルド26へ流れ込む。流体からの圧力が患者マニホルド26のスプールバルブに力を掛けるので、バルブは、注射器本体18の下部ポート50が患者ポート33と連通するように状態を変更する。次に、流体は患者ポート33から高圧チューブ28へ流れ込み、3方向コック32を経由してカテーテル接続部30へ送られて、システムの充填は完了する。
【0087】
次に、システム10は、ユーザーインタフェースサブアッセンブリ14のディスプレイを通して、システムの使用準備が整ったことを使用者に通知する。使用者は、患者のカテーテルをカテーテル接続部30に接続し、システム10を作動させて注入処置を開始する。次に、ある量の流体が、使用者の制御による一定流量、又は制御に比例する可変流量の何れかで患者に注入される。流体の流量及び量の数値は、入力されたパラメータに基づいてシステム10が計算した好適なデフォルト値である。好ましければ、使用者は、ユーザーインタフェースサブアッセンブリ14に手動で数を入力することにより、流体の流量及び量に関して異なる値を入力することもできる。
【0088】
注入処置の終わりに、使用者は医療行為/処置を終結する。本発明のある実施形態では、患者を装置から切り離した後、注射器プランジャ20は、システム10から自動的に切り離される。
【0089】
以上、本発明の原理を包含する実施形態に関して説明してきた。これらの実施形態は、様々な型式の装置を使って、変更、修正及び/又は実施することができる。当業者には、本明細書で示され、説明されている代表的な実施形態及び利用法に厳密に従うことなく、且つ上記特許請求の範囲で述べている本発明の範囲から逸脱することなく、本発明に様々な修正及び変更を加えうることを、容易に理解頂けよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
注入器システムで用いられる注入器サブアッセンブリにおいて、
1回使用部分と、
複数回使用部分とを備えており、
前記1回使用部分は前記複数回使用部分と流体接続されており、前記1回使用部分は、カテーテル接続部に接続されている高圧チューブを含み、前記1回使用部分は複数回使用部分の殺菌を確実にするため患者バルブを含み、前記複数回使用部分は流体供給リザーバーに接続されている注射器を含んでおり、前記注射器及び前記高圧チューブは、所定の作動の期間、流体連通している、注射器サブアッセンブリ。
【請求項2】
前記1回使用部分は、前記高圧チューブを前記カテーテル接続部に接続している3方向コックを含んでいる、請求項1に記載の注射器サブアッセンブリ。
【請求項3】
前記3方向コックは、患者投薬ポートを含んでいる、請求項2に記載の注射器サブアッセンブリ。
【請求項4】
前記高圧チューブの長さは、前記長さに沿った圧力降下と関係付けられている、請求項1に記載の注射器サブアッセンブリ。
【請求項5】
前記高圧チューブはPVC製である、請求項1に記載の注射器サブアッセンブリ。
【請求項6】
前記1回使用部分は、前記注射器を前記高圧チューブに接続する患者マニホルドを含んでいる、請求項1に記載の注射器サブアッセンブリ。
【請求項7】
前記患者マニホルドは、通常は圧力変換器を患者ポートに接続する、ばね付勢されたスプールバルブを含んでいる、請求項6に記載の注射器サブアッセンブリ。
【請求項8】
前記1回使用部分は、前記患者マニホルドに接続されている圧力変換器を含んでいる、請求項6に記載の注射器サブアッセンブリ。
【請求項9】
前記1回使用部分は、前記圧力変換器に取り付けられている食塩水サブアッセンブリを含んでいる、請求項8に記載の注射器サブアッセンブリ。
【請求項10】
前記食塩水サブアッセンブリは、食塩水チェックバルブ、食塩水チューブ、食塩水スパイク及び食塩水供給源を含んでいる、請求項9に記載の注射器サブアッセンブリ。
【請求項11】
前記複数回使用部分は、前記注射器を前記流体供給リザーバーに接続しているワンウェイバルブを含んでいる、請求項1に記載の注射器サブアッセンブリ。
【請求項12】
前記複数回使用部分は、前記ワンウェイバルブを前記流体供給リザーバーに接続している流体コンテナスパイクを含んでいる、請求項11に記載の注射器サブアッセンブリ。
【請求項13】
前記ワンウェイバルブは、下部位置に着座しているときは空気が前記注射器本体から流れるようにし、上部位置に着座しているときは流体が前記注射器本体から前記流体供給リザーバーへ流れるのを防ぐようにする錘玉を含んでいる、請求項11に記載の注射器サブアッセンブリ。
【請求項14】
前記複数回使用部分は、約5回まで再使用できる、請求項1に記載の注射器サブアッセンブリ。
【請求項15】
前記複数回使用部分は、各使用と使用の間に前記複数回使用部分を洗浄又は殺菌することなく、1人又はそれ以上の患者に再使用できる、請求項1に記載の注射器サブアッセンブリ。
【請求項16】
前記1回使用部分は、前記患者又は医療行為に用いられた後で、洗浄及び殺菌される、請求項1に記載の注射器サブアッセンブリ。
【請求項17】
前記1回使用部分は、洗浄及び殺菌された後に再使用される、請求項16に記載の注射器サブアッセンブリ。
【請求項18】
前記注射器は透明である、請求項1に記載の注射器サブアッセンブリ。
【請求項19】
前記注射器はポリカーボネート製である、請求項1に記載の注射器サブアッセンブリ。
【請求項20】
前記注射器は、前記供給リザーバーから流体を繰り返し吸入する、請求項1に記載の注射器サブアッセンブリ。
【請求項21】
前記1回使用部分は、前記サブアッセンブリの使用者にキットとして提供される、請求項1に記載の注射器サブアッセンブリ。
【請求項22】
前記複数回使用部分は、前記サブアッセンブリの使用者にキットとして提供される、請求項1に記載の注射器サブアッセンブリ。
【請求項23】
前記1回使用部分の前記患者バルブは、前記複数回使用部分の注射器への患者流体の逆流を阻止する、請求項1に記載の注射器サブアッセンブリ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−104801(P2010−104801A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−297139(P2009−297139)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【分割の表示】特願2001−572161(P2001−572161)の分割
【原出願日】平成13年3月28日(2001.3.28)
【出願人】(500165186)アシスト・メディカル・システムズ・インコーポレーテッド (12)
【Fターム(参考)】