説明

血管障害性マーカー抑制組成物

【課題】優れた血管内皮細胞の保護作用を有することに加え、安全性及び実用性が高いことから飲食品、飼料、医薬部外品、医薬品等に幅広く使用可能な血管障害性マーカー抑制組成物を提供すること。
【解決手段】アムラ果実、アムラ果汁、アムラ果実の抽出物及びアムラ果汁の抽出物からなる群から選択される少なくとも1つを、有効成分として含有することを特徴とする血管障害性マーカー抑制組成物。アムラとは、エンビリカ・オフィシナル(Emblica officinale)、または、フィランサス・エンブリカ(Phyllanthus emblica)という学名をもつ植物のことであり、原産地がインドであると考えられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管内皮障害に伴って量的に変化するマーカータンパク質の量を調節する組成物、及びそれを含有する飲食品、飼料、医薬部外品、医薬品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、日本人の死因別統計によると、動脈硬化性の血栓塞栓症である心血管障害と脳血管障害を合わせた患者の死亡総数は、死因第1位の悪性腫瘍患者の数を凌いでいる。一旦、発症した血栓症患者のQOLの維持は難しく、医療経済悪化の一因にもなっており、その対策には、血栓症の発症を阻止し、予防することが最も重要であると考える。
血栓とは血管の中にできる血液の固まりのことをいう。血栓は、血小板血栓からフィブリン血栓へと進行することが知られている。血小板血栓は、プラークの破裂等さまざまな原因によって活性化された血小板が、血管内膜へ接着及び凝集することにより引き起こされる。フィブリン血栓は、フィブリノーゲン等の種々の凝固系因子が関与することにより引き起こされる。身体が正常なときには、線溶酵素が血栓のもととなるフィブリンを溶解することにより、血栓が予防される。しかし、線溶酵素が不足すると、フィブリンを溶解できなくなって血栓が形成される。
【0003】
形成された血栓は、血管に沈着して血管の断面積を減少させ、血液の循環を阻害する。すると、血液が細胞及び組職に対して栄養分や酸素を正常に供給できなくなることに加え、血液が細胞及び組織から老廃物を排出できなくなる。よって、老廃物の蓄積等といった問題点が発生するようになる。
血管の中で血栓が引き起こす症状は、広義の血栓症(以下、単に「血栓症」と記載した場合には広義の血栓症をいう)と呼ばれる。また、血栓が原因となって起こる病態は、狭義の血栓症と塞栓症とに分けられる。狭義の血栓症とは、血栓が形成箇所で血流を部分的にあるいは完全に閉塞することにより引き起こされる病態のことを指す。塞栓症とは、血栓が形成箇所から剥がれて血流によって移動し、他の箇所で血流を部分的にあるいは完全に閉塞することによって起こる病態のことを指す。
【0004】
このような血栓症は、血栓が生じた血管の部位に応じて、多様な疾病を誘発する。その中でも特に脳血管や心臓血管において血栓が生じると、脳卒中、脳出血、脳梗塞、心不全症、心筋梗塞、心臓麻痺等といった深刻な症状をもたらす。この場合には、半身不随、さらには死亡の原因となることもある。
心疾患、脳血管疾患等の疾病を引き起こす重大な血栓は、血流の鬱血帯下で形成されるフィブリン血栓とは機序の点で異なり、動脈等の比較的速く豊富な血流の存在下で形成されていると考えられる。血流の存在下では、凝固因子は活性化されても血液によって希釈されてしまうため、血栓の形成には至らない。しかし、損傷血管壁に粘着及び凝集して局所濃度を高める成分である血小板が、血栓の形成に関してより重要な役割を果たす。
【0005】
血管内皮細胞が障害を受けて剥離すると、血管内皮細胞下組織のコラーゲンが露出する。すると、血管内皮細胞で合成されるフォンヴィレブランド因子(von Willebrand factor:vWF:VII因子)が作用して、コラーゲンとvWF受容体(GpIb)との間に架橋を形成(粘着)する。さらに、血小板が例えばトロンビンのようなアゴニストによって活性化され、フィブリノーゲン受容体(GpIIb−IIIa)によりフィブリノーゲンを介して他の血小板と結合する。その結果、血小板凝集を引き起し、血小板血栓が形成される。従って、vWFによるコラーゲンとGpIbとの間の架橋形成、またはフィブリノーゲンとその他の血清蛋白質とが、GpIIb−IIIaとの結合を抑制できるかどうかが、血栓形成を予防する一つの重要な要件となる。
vWFは障害血管壁の血栓形成に重要な働きをする血漿糖蛋白質であり、2つの重要な止血機能を担っている。1つは血小板上のリガンドとして障害血管内皮細胞下に血小板を粘着させ、血小板血栓の最初のステップを引き起こす。もう1つは血液凝固第8因子と結合し、キャリア蛋白として第8因子を安定化させる作用とともに、血小板血栓部位への凝固血栓誘導作用を持っている。また、vWFは血管内皮傷害や機能障害の指標として検査され、抗原量の増加が脳梗塞、心筋梗塞をはじめとした疾患で上昇したり、さらに心血管系イベントのリスクファクターであることが示されている。
【0006】
また、近年、トロンビンと強い親和性を有するトロンボモジュリン(thrombomodulin : TM)と呼ばれる糖蛋白質が,血管内皮細胞の膜表面に発現する抗血栓性因子として発見された。TM は抗血栓性に機能するだけでなく、線溶系も阻害しフィブリンを安定化する方向に作用することも明らかになり、TMの生理的役割は血液の凝固および線溶系の両者を調節する重要な因子として位置づけられつつある。また、内皮細胞の障害によって、血液中に分泌されるために内皮細胞の機能障害性マーカーとなっている。
現在、血栓症を解決するために、血栓の生成を抑制する抗血栓剤及び血栓形成予防剤の研究開発と、生成された血栓を溶解させる血栓溶解剤の研究開発とが、主に行われている。
【0007】
血小板凝集及び血栓形成予防剤としては、アスピリン、チクロピジン、ヒルジン(トロンビン阻害剤)、トロンボキサンA2シンターゼ抑制剤などが製品化されている。
トロンビンは、他の経路とはほとんど無関係に血小板の凝集を起こす。しかし、血小板が他のメカニズムによってあらかじめ活性化されていないと、実質的に有効な量のトロンビンが存在することはない。ヒルジンは、非常に効果的な抗血栓剤である。しかし、トロンビン阻害剤は、抗血小板剤及び抗凝血剤の両方として機能するため、やはり過剰な出血を起こす可能性がある。
【0008】
アスピリンなどは、心筋梗塞などの疾患予防のための抗血小板療法用薬剤として広く用いられている。しかし、アスピリンはADP(アデノシン2リン酸)によって誘起される血小板の凝集に対しては効果がないことに加え、胃腸障害などの副作用を引き起こす。このため、食品、医薬部外品、医薬品などの分野においては、安全性が高く、安価で、実用性の高い抗血小板凝集療法用薬剤が求められている。かかる事情のもと、最近では、医薬品による治療よりは食生活を通じて病気を予防し、体質を改善または体を活性化させる機能を持った成分に対する研究も注目されるようになってきている。そして、このような条件を満たしうる成分は、おそらく人間が従来からの食生活において使用してきた天然物(例えば天然植物)のなかに存在するものと考えられる。
従来、血栓症を改善しうる天然物由来の成分としては、例えば、タマネギの薄皮(例えば、特許文献1参照)、キウイフルーツ抽出物(例えば、特許文献2参照)、ナットウキナーゼ(例えば、特許文献3参照。)等が知られている。さらにこのほか、多価不飽和脂肪酸、グルコサミン等の成分も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−171934号公報(第2頁)
【特許文献2】特開2003−171294号公報(第2頁−5頁)
【特許文献3】特開2004−65047号公報(第3頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
タマネギの薄皮、ナットウキナーゼ、多価不飽和脂肪酸、グルコサミンは、風味や性状等に関して難点があり、幅広く食品等に応用できないという欠点があるため、実用性の観点から問題がある。また、ナットウキナーゼは、血栓溶解効果を有するものの、同時に凝固因子の産生に寄与するビタミンKを含んでいる。また、キウイフルーツ抽出物は、中性域での活性が弱いため、実用性の観点から問題がある。
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、優れた血管内皮細胞の保護作用を有することに加え、安全性及び実用性が高いことから飲食品、飼料、医薬部外品、医薬品等に幅広く使用可能な血管障害性マーカー抑制組成物を提供することにある。また、本発明の別の目的は、上記の優れた血管障害性マーカー抑制組成物を含有する飲食品、飼料、医薬部外品、医薬品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで本願発明者らは、様々な天然植物のなかから抗凝固成分を探す目的で、多角的に研究、検討した結果、「アムラ」と呼ばれる植物の果実や果汁にマーカータンパク質の量的変化を小さくする作用があることを新規に知見した。そこで、本願発明者らはこの新規な知見をさらに発展させ、下記の発明を完成させるに到った。
【0012】
即ち、請求項1に記載の発明は、アムラ果実、アムラ果汁、アムラ果実の抽出物及びアムラ果汁の抽出物からなる群から選択される少なくとも1つを、有効成分として含有することを特徴とする血管障害性マーカーの量的変化を小さくする作用をその要旨とする。この組成物は高い血管内皮細胞の保護作用を示し、障害血管壁の血栓形成を予防することができる。しかも、この組成物は、長期にわたり人間に摂取されてきた実績のある天然植物に由来するものであって、仮に大量に摂取したとしても強い副作用を誘発するおそれがなく、安全性が高い。また、アムラは酸味を有するが、タマネギや納豆などに由来する成分とは異なり、風味に関して難点が少なく、同様に性状についても難点が少ない。そのため、当該組成物は、実用性が高く、飲食品、飼料、医薬部外品、医薬品等に幅広く使用することができる。
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記抽出物は、アムラ果実及びアムラ果汁からなる群から選択される少なくとも1つを、非有機溶媒で抽出したものであることをその要旨とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2において、前記抽出物の有機溶媒による分画物を、前記有効成分として含有することをその要旨とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項において、前記抽出物を酵素で処理して分解したものを精製して得た分画物を、前記有効成分として含有することをその要旨とする。
請求項5に記載の発明は、請求項4において、前記酵素は加水分解酵素であることをその要旨とする。
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の血管障害性マーカー抑制組成物を含有することを特徴とする飲食品をその要旨とする。
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の血管障害性マーカー抑制組成物を含有することを特徴とする飼料をその要旨とする。
請求項8に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の血管障害性マーカー抑制組成物を含有することを特徴とする医薬部外品をその要旨とする。
請求項9に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の血管障害性マーカー抑制組成物を含有することを特徴とする医薬品をその要旨とする。
【発明の効果】
【0013】
従って、請求項1乃至5に記載の発明によると、優れた血管内皮細胞の保護作用することに加え、安全性及び実用性が高いことから飲食品、飼料、医薬部外品、医薬品等に幅広く使用可能な血管障害性マーカー抑制組成物を提供することができる。
また、請求項6乃至9に記載の発明によると、上記の優れた血管障害性マーカー抑制組成物を含有する飲食品、飼料、医薬部外品、医薬品をそれぞれ提供することができる。このため、血管内皮細胞の保護することにより血栓の生成を抑制し、脳卒中、脳出血、脳梗塞、心不全症、心筋梗塞、心臓麻痺等のような心血関係疾患を予防することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】LPS刺激HUVECにおけるvWF発現抑制効果の結果を示すグラフ。
【図2】LPS刺激HUVECにおけるvWF発現抑制効果の結果を示すグラフ。
【図3】LPS刺激HUVECにおけるvWF発現抑制効果の結果を示すグラフ。
【図4】LPS刺激HUVECにおけるvWF発現抑制効果の結果を示すグラフ。
【図5】LPS刺激HUVECにおけるvWF発現抑制効果の結果を示すグラフ。
【図6】LPS刺激HUVECにおけるvWF発現抑制効果の結果を示すグラフ。
【図7】LPS刺激HUVECにおけるvWF発現抑制効果の結果を示すグラフ。
【図8】LPS刺激HUVECにおけるvWF発現抑制効果の結果を示すグラフ。
【図9】血管障害性マーカー抑制組成物投与のLDLコレステロールの結果を示すグラフ。
【図10】血管障害性マーカー抑制組成物A投与のTMの抑制効果を示すグラフ。
【図11】血管障害性マーカー抑制組成物A投与のvWFの抑制効果を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を具体化した一実施形態の血管障害性マーカー抑制組成物、及びそれを含有する飲食物、飼料、医薬部外品、医薬品を詳細に説明する。
本発明の血管障害性マーカー抑制組成物に用いる「アムラ」とは、エンビリカ・オフィシナリス(Emblica officinalis)、または、フィランサス・エンブリカ(Phyllanthus emblica)という学名をもつ植物である。アムラは、トウダイグサ科コミカンソウ亜科に属する落葉の亜高木であり、インドからマレーシア地域及び中国南部にかけて分布しており、インドが原産地と考えられている。また、アムラは、各地方または言語により各々固有の名称を有しており、例えば、余柑子、油甘、奄摩勒、エンブリック・ミロバラン、アーマラキー、マラッカノキ、マラッカツリー、インディアングーズベリー、アロンラ、アミラ、アミラキ、アミラキャトラ、ネリカイ、ネルリ、タシャ、カユラカ、ケムラカ、ナックホンポン等とも称されている。
インドの伝承医学「アユルヴェーダ」において、アムラは、あらゆる病気の予防薬、治療薬として最もよいとされる三果のうちのひとつに挙げられている。しかしながら、アムラが血管障害性マーカー抑制作用を有するという事実に関する具体的な報告はこれまでになく、本願発明者が鋭意研究の末に今回新規に知見したものである。
【0016】
血管障害性マーカー抑制組成物に使用されるアムラの部位としては、特に限定されないが、果実が好ましく用いられる。アムラ果実の形態は、特に限定するものではなく、未熟果実、完熟果実、乾燥果実等のいずれでもよい。なお、果実を絞って得られる果汁の使用も同様に好ましい。果汁の形態は、特に限定するものではなく、液状、粉末状のいずれでもよい。果汁を用いるメリットは、水不溶性成分の含有量が少ないのでそのまま使用でき、当該成分を除去する工程の省略が可能な点である。
【0017】
生果実または乾燥果実等のように、水不溶性成分を含むものを使用する場合には、抽出を行って水不溶性成分を除去しておくことが、血管障害性マーカー抑制作用を上げるうえで好ましい。
【0018】
生果実を使用する場合には、あらかじめ種子を除去した後、必要に応じて水を添加したうえで、抽出を行う。なお、抽出効率を高めるために、ミキサー等により破砕、均質化したものを抽出原料として使用することが好ましい。乾燥果実を使用する場合についても基本的には同様のことがいえるが、抽出効率を高めるために、40メッシュ以下の粒度になるように粉砕しておくことが好ましい。なお、果汁も抽出原料として好適に使用される。
【0019】
抽出に使用する溶媒や温度条件等については、特に限定されるものではなく、任意に選択、設定することができる。抽出溶媒としては、水、塩基、酸等といった非有機溶媒や、親水性溶媒、アセトン等といった有機溶媒を選択することができる。親水性溶媒としては、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール及びブチルアルコールからなる低級アルコール群から選択される1種類以上が、操作性、抽出効率の点から好ましい。ただし、有機溶媒による抽出よりもむしろ非有機溶媒による抽出が好ましく、なかでも水、塩基及び酸のいずれかを選択することがよい。
【0020】
酸または塩基を抽出溶媒に使用する場合、抽出物を中和させることが好ましい。中和反応によって生成された塩は、透析法やゲル濾過等、公知の方法により、取り除くことができる。ただし、水を抽出溶媒として用いた場合には、上記のような中和反応は必要なく、生成された塩を取り除く必要もない。よって、工数減及び低コスト化の観点から、水を用いることが最も好ましい。
【0021】
このとき使用する酸としては、特に限定するものではなく、大部分の酸を使うことができる。ただし、入手のしやすさ及び操作性の観点から、塩酸または硫酸の使用、あるいは塩酸及び硫酸の併用が好ましい。
【0022】
また、塩基としては、特に限定するものではなく、大部分の塩基を使うことができる。ただし、入手のしやすさ及び操作性の観点から、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムの使用、あるいは水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムの併用が好ましい。
【0023】
抽出に使用される酸または塩基の濃度は、抽出物を酵素処理する前であっても後であっても特に限定するものではない。酸または塩基の強さによって変化するが、操作性及び抽出効率の観点から、0.01モル濃度〜0.5モル濃度の酸または塩基を使用することが好ましい。
【0024】
上記の抽出においては酵素処理を併用することが好ましく、この処理によれば収率や風味を改善することができ、また血管内皮細胞の保護作用の高い成分を得ることができる。なお、酵素処理は抽出前に行ってもよく、抽出時に行ってもよい。酵素処理をするときのpHは、使用する酵素の至適pH及びpH安定性を指標にして、適宜設定することができる。また、酵素処理をするときの温度に関しても、使用する酵素の至適温度及び温度安定性を指標にして、適宜設定することができる。
【0025】
本発明の酵素処理に用いる酵素は、特に限定されるべきではないが、食品工業分野でよく用いられる加水分解酵素であることが好ましい。この種の酵素は使用実績があり、安全性等の観点からも好ましいからである。上記酵素の具体例としては、例えば、ペクチナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ、タンナーゼ、デキストラナーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、トリプシン、パパイン等の加水分解酵素が挙げられる。これらのなかでも好ましくは、ペクチナーゼ、プロテアーゼ、タンナーゼ、セルラーゼから選択される1種類を使用する、または2種類以上を組み合わせて使用することである。これによれば抽出効率をさらに向上させることが可能となる。なお、酵素処理は、アムラ果実やアムラ果汁に対して行ってもよい。
【0026】
さらに、上記の抽出において、抽出残渣に対して再度抽出工程を1回またはそれ以上繰り返すことが好ましく、この方法によれば抽出効率を向上させることができる。この場合の抽出に用いる溶媒は、同じものであっても異なるものであってもよい。
【0027】
上記の抽出物は、そのままでも使用できるが、濾過、遠心分離及び分留といった処理を行って、不溶性物質及び溶媒を取り除くことがより好ましい。このような処理を行うことで、血管内皮保護効果が高くなり、応用範囲も広くなる。
【0028】
不溶性物質及び溶媒を取り除いた後、果汁または抽出液をそのまままたは濃縮した後に有機溶媒を用いて分配を行い、それぞれの溶媒可溶画分を得る。これら溶媒可溶画分は、さらに血管内皮保護効果が高くなるので好ましい。有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等の低級アルコール、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジエチルエーテル、メチルエーテル、メチルイソブチルケトン、ヘキサン、アセトン、クロロホルムなどが使用できる。また、可溶画分の純度を上げるためには、他の疎水性溶媒による分配を組み合わせることもできるが、この場合にはエチルアルコールの使用が好ましい。これら溶媒の濃度としては、特に限定するものではないが、収率及び効果の観点から、終濃度として20%〜80%(v/v)が好ましく、20%〜60%(v/v)がさらに好ましい。
【0029】
さらに純度を高めるために、例えば、フェノール系、スチレン系、アクリル酸系、エポキシアミン系、ピリジン系、メタクリル系などを母体とする疎水性樹脂を用いたクロマトグラフィーやカラムによる精製を行ってもよい。その場合、樹脂吸着後の溶離液としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコールなどの低級アルコール及びアセトンを、単独または水溶液として使用できる。
【0030】
抽出物及び画分はそのままで使用することも可能であるが、必要に応じて噴霧乾燥や凍結乾燥等の手段により乾燥粉末化させて使用することも可能である。
本発明において「血管障害性マーカー抑制」とは、フォンヴィレブランド因子(von Willebrand factor:vWF)、トロンボモジュリン(thrombomodulin : TM)のいずれかの発現を抑制する(言い換えると血管内皮細胞の保護する)ことをいう。なお、血管内皮細胞の保護作用については、例えば、アムラ添加区及びアムラ無添加区の血管内皮細胞をそれぞれリポポリサッカライド(以下LPSという)(1μg/mL)で刺激し、障害血管壁の血栓形成に重要な働きをするvWFの発現を測定することによって、確認することができる。ちなみに本発明者は、アムラ添加区ではアムラ無添加区に比べて測定値が低くなるためアムラに血管内皮細胞の保護作用があることを、新規に知見した。
【0031】
本発明の血管障害性マーカー抑制組成物は、飲食品、飼料、医薬部外品、医薬品等に幅広く応用できるが、特に人が手軽に摂食できる飲食品に応用することが好ましい。
本発明における飲食品とは、溶液、懸濁物、粉末、固体成形物等、経口摂取可能な形態であればよく、特に限定するものではない。飲食物の具体例としては、例えば、即席麺、レトルト食品、缶詰、電子レンジ食品、即席スープ・みそ汁類、フリーズドライ食品等の即席食品類、清涼飲料、果汁飲料、野菜飲料、豆乳飲料、コーヒー飲料、茶飲料、粉末飲料、濃縮飲料、栄養飲料、アルコール飲料等の飲料類、パン、パスタ、麺、ケーキミックス、から揚げ粉、パン粉等の小麦粉製品、飴、キャラメル、チューイングガム、チョコレート、クッキー、ビスケット、ケーキ、パイ、スナック、クラッカー、和菓子、デザート菓子等の菓子類、ソース、トマト加工調味料、風味調味料、調理ミックス、たれ類、ドレッシング類、つゆ類、カレー・シチューの素等の調味料、加工油脂、バター、マーガリン、マヨネーズ等の油脂類、乳飲料、ヨーグルト類、乳酸菌飲料、アイスクリーム類、クリーム類等の乳製品、冷凍食品、魚肉ハム・ソーセージ、水産練り製品等の水産加工品、畜肉ハム・ソーセージ等の畜産加工品、農産缶詰、ジャム・マーマレード類、漬け物、煮豆、シリアル等の農産加工品、栄養食品、錠剤、カプセル等を挙げることができる。
【0032】
本発明の血管障害性マーカー抑制組成物の飲食品としての摂取量は、病気の状態、病人の体重、年齢、体質、体調等によって調整されるべきであるが、一般に1日あたり血管障害性マーカー抑制組成物として0.05g〜20g、好ましくは0.1g〜5gの範囲で適宜設定することができる。上記飲食物は、病気の状態や食品等の形態によって、1日1ないし数回にわけて摂取することができる。
【0033】
本発明において、血管障害性マーカー抑制組成物またはそれを含有する飲食品等に加工する際に、各種栄養成分を強化することができる。
強化できる栄養成分としては、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ナイアシン(ニコチン酸)、パントテン酸、葉酸等のビタミン類、リジン、スレオニン、トリプトファン等の必須アミノ酸類や、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅等のミネラル類、及び、例えば、α−リノレン酸、EPA、DHA、月見草油、オクタコサノール、カゼインホスホペプチド(CPP)、カゼインカルシウムペプチド(CCP)、水溶性食物繊維、不溶性食物繊維、オリゴ糖等の人の健康に寄与する物質類、その他の食品や食品添加物として認可されている有用物質の1種または2種以上が使用できる。
【0034】
本発明における飼料とは、ヒト以外の生物に摂食させるための食べ物のことをいい、その形態については特に限定されない。飼料を適用しうる生物としては特に限定されないが、例えば、養殖動物やペット動物などが挙げられる。養殖動物としては、例えば、ウマ、ウシ、ブラ、ヒツジ、ヤギ、ラクダ、ラマなどの家畜や、マウス、ラット、モルモット、ウサギなどの実験動物や、ニワトリ、アヒル、七面鳥、ダチョウなどの家禽などがある。ペット動物としては、例えば、イヌ、ネコなどがある。
【0035】
本発明における医薬部外品及び医薬品とは、経口投与または非経口投与に適した賦形剤、その他の添加剤を用い、常法に従って経口製剤または注射剤として調製されたものをいう。好ましい医薬部外品及び医薬品の態様は経口製剤であり、最も好ましいのは経口固形製剤である。経口固形製剤は、容易に服用でき、かつ保存、持ち運びに便利だからである。
【0036】
経口固形製剤としては、例えば、錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤、徐放剤等がある。本発明の経口固形製剤は、適宜の薬理学的に許容され得る坦体、賦形剤(例えばデンプン、乳糖、白糖、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムなど)、結合剤(例えばデンプン、アラビアガム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロース、アルギン酸、ゼラチン、ポリビニルピロリドンなど)、滑沢剤(例えばステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムなど)、崩壊剤(例えばカルボキシメチルセルロース、タルクなど)、などを血管障害性マーカー抑制組成物と混合して固形化することにより得られる。
【0037】
また、経口液状製剤とは、製薬学的に許容される乳濁剤、溶液剤、懸濁剤、シロップ剤、エリキシル剤等を含み、一般的に用いられる不活性な希釈剤、例えば精製水、エチルアルコールを含むものをいう。本発明の経口液状製剤は、血管障害性マーカー抑制組成物及び希釈剤のほかに、湿潤剤、懸濁剤のような補助剤、甘味剤、風味剤、芳香剤、防腐剤等をさらに含有していてもよい。
【0038】
非経口投与に適した注射剤は、無菌の水性または非水性の溶液剤、懸濁剤、乳濁剤等を含んでいる。水性の溶液剤、懸濁剤の希釈剤としては、例えば、注射用蒸留水及び生理食塩水がある。非水溶性の溶液剤、懸濁剤の希釈剤としては、例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物油、エチルアルコールのようなアルコール類、ポリソルベート80等がある。この注射剤は、さらに防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、安定化剤(例えばラクトース)、溶解補助剤(例えば、グルタミン酸、アスパラギン酸)のような補助剤を含んでもよい。これらは、例えばバクテリア保管フィルターを通す濾過、殺菌剤の配合または照射によって無菌化される。また、これらは、無菌の固体組成物を製造し、その使用前に無菌水または無菌の注射用溶媒に溶解して、使用することもできる。
【0039】
本発明の血管障害性マーカー抑制組成物の医薬品としての投与量は、投与ルート、疾患の症状、投与対象の年齢、性別等を考慮して個々の場合に応じて適宜決定されるが、通常、成人1人当たりアムラ抽出物を約40mg/日〜3g/日、好ましくは100mg/日〜500mg/日である。
【0040】
以下、本発明を実施例にて詳細に説明するが、以下の実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0041】
実施例1 血管障害性マーカー抑制組成物の調製1
アムラ果実を粉砕後篩別して40メッシュ以下にし、その粉末80gに、蒸留水2Lを加え、55℃で3時間抽出を行った。その後、抽出液を遠心分離(3000rpm、10分間)し、その上清を濾過し、抽出液と残渣とを分離した。その残渣に蒸留水2Lを加え、同条件でもう1回繰り返し抽出を行い、それぞれの抽出液を合わせた後、凍結乾燥し、本発明の血管障害性マーカー抑制組成物A,35.0gを得た。収率は43.8%であった。
【0042】
試験例1 血管内皮細胞の保護作用の確認1
本試験では、血管障害性マーカー抑制組成物Aの活性を以下のようにして確認した。まず、血管内皮細胞であるHUVECを24well plateに播種し、同細胞を充分に培養した。培養後の細胞に対して、所定濃度(3、10、30、100μg/mL)に希釈した血管障害性マーカー抑制組成物AとLPS (1μg/mL)を4時間処理した。処理後、HUVEC上に発現した障害血管壁の血栓形成に重要な働きをするvWFの活性を定量した。
【0043】
以下にHUVECを用いたLPS誘導性vWFの発現に及ぼすアムラの効果に関する実験方法の詳細を示す。
【0044】
1.細胞がコンフルエントになるまで培養した後、培養液を取り除き、PBS(−)にて洗浄する。洗浄後、4種類の濃度に希釈した血管障害性マーカー抑制組成物AとLPS (1μg/mL)を培養液と混合し、各wellに添加した(培養反応)。また、コントロールとして、蒸留水と培養液との混合物を各wellに添加した区を設ける。
2.添加4時間後に、培養液を回収し、抗vWFポリクローナル抗体を固相化したELISAプレートで2時間処理した後、抗vWF HRP抗体を加え1時間反応させた。
3.さらに基質(3,3‘,5,5’−テトラメチルベンジジンホウ酸塩)と混合した後、分光光度計(測定450nm)にて測定した。
なお、vWFの活性は、非刺激細胞の測定値を100%としたときの割合(%)として算出する。その結果を図1のグラフに示す。
【0045】
その結果、本発明の血管障害性マーカー抑制組成物はLPS誘導性のvWFの発現を濃度依存的に抑制する、ということを確認できた。
【0046】
実施例2 血管障害性マーカー抑制組成物の調製2
アムラ乾燥果実を粉砕後篩別して40メッシュ以下にし、その粉末80gに、蒸留水2Lを加え、55℃で3時間の抽出を行った。その後、抽出液を遠心分離(3000rpm、10分間)し、その上清を濾過し、抽出液と残渣とを分離した。その残渣に蒸留水2Lを加え、同条件でもう1回繰り返し抽出し、それぞれの抽出液を合わせて減圧濃縮し、200mLとした。この濃縮液にエチルアルコールを加え、1Lになるように調製(最終エチルアルコール濃度80%)した後、4℃で24時間静置後、不溶性成分を沈殿させた。沈澱物を遠心分離で除去し、その上清を減圧濃縮した後、水1Lに再溶解させた。さらに、これを濾過して不溶性成分を除去した後、その濾液を凍結乾燥して、本発明の血管障害性マーカー抑制組成物B,12.5g(収率15.6%)を得た。
【0047】
同様にして、エチルアルコールの終濃度を20%に設定して、本発明の血管障害性マーカー抑制組成物C、13.6g(収率17.0%)を得た。また、エチルアルコールの終濃度を40%に設定して組成物D、20.8g(収率26.0%)を得るとともに、終濃度を60%に設定して組成物E、21.2g(収率26.5%)を得た。
【0048】
実施例3 血管障害性マーカー抑制組成物の調製3
アムラ乾燥果実を粉砕後篩別して40メッシュ以下にし、その粉末80gに、蒸留水2Lを加え、55℃で3時間の抽出を行った。その後、抽出液を遠心分離(3000rpm、10分間)し、その上清を濾過し、抽出物と残渣とを分離した。その残渣に蒸留水2Lを加え、同条件でもう1回繰り返し抽出し、それぞれの抽出液を合わせた後、凍結乾燥し、乾燥物約37.0gを得た。その乾燥物35gにエチルアルコール1Lを加え、4℃で24時間静置後、不溶性成分を沈殿させた。沈澱物を遠心分離で除去し、その上清を減圧濃縮した後、水1Lに再溶解させた。さらに、これを濾過して不溶性成分を除去した後、その濾液を凍結乾燥して、本発明の血管障害性マーカー抑制害組成物F,3.5gを得た。
【0049】
実施例4 血管障害性マーカー抑制組成物の調製4
アムラ乾燥果実を粉砕後篩別して40メッシュ以下にし、その粉末80gに、蒸留水2L加え、55℃で3時間の抽出を行った。その後、抽出液を遠心分離し、その上清を濾過し、抽出液と残渣とを分離した。その残渣に蒸留水2Lを入れ、同条件でもう1回繰り返し抽出を行い、それぞれの抽出液を合わせて減圧濃縮し、200mLとした。この濃縮液に酢酸エチルを加え、500mLになるように調製(最終酢酸エチル濃度60%)し、よく攪拌後、4℃で24時間静置した。その後、酢酸エチル層を分離し、これを減圧濃縮した後、その濾液を凍結乾燥して、本発明の血管障害性マーカー抑制組成物G,12.5gを得た。
【0050】
実施例5 血管障害性マーカー抑制組成物の調製5
アムラ乾燥果実を粉砕後篩別して40メッシュ以下にし、その粉末100gに、蒸留水2Lを加え、さらにペクチナーゼ0.1g及びタンナーゼ0.1gを加えて、55℃で2時間の抽出を行った。その後、90℃で30分間酵素失活させた。その後、酵素処理液を遠心分離(3000rpm、10分間)し、その上清を濾過し、さらにその濾液をスプレードライして、本発明の血管障害性マーカー抑制組成物H,45gを得た。
【0051】
試験例2 血管内皮細胞の保護作用の確認2
実施例2で得られた血管障害性マーカー抑制組成物B、C、D、E、実施例3で得られた血管障害性マーカー抑制組成物F、実施例4で得られた血管障害性マーカー抑制組成物G及び実施例5で得られた血管障害性マーカー抑制組成物Hについて、試験例1と同じ方法で血管障害性マーカー抑制作用性を算出した。その結果を図2〜図8のグラフに示す。
図2〜図8のグラフに示すように、どの血管障害性マーカー抑制組成物B〜Fも高い血管障害性マーカー抑制作用を示した。
【0052】
実施例6 血管障害性マーカー抑制組成物含有食品(錠剤)の調製
アムラ配合血管障害性マーカー抑制組成物の1例として、表1に示す原料を混合後カプセルに包括し、血管障害性マーカー抑制組成物含有食品を調製した。
【0053】
比較例1 対照錠剤の製造
対照錠剤の1例として、表1に示す原料を混合後カプセルに包括し、錠剤を製造した。
【0054】
【表1】

【0055】
試験例3 血管内皮細胞の保護作用の確認3
本試験では、血管障害性マーカー抑制組成物Aの活性を以下のようにして確認した。
被験者の選定
被験者は、下記の除外規定に当てはまらない者で、血中トリグリセリド値が高め(103〜250mg/ml)またはHDLコレステロール値が低め(54mg/ml未満)を示す20〜75歳の男女8名ずつ合計16名を選出し、無作為に2群に割り付け、その群間で年齢、身長、体重、BMI、中性脂肪、HDLコレステロール、HbA1cにおいて差がないことを確認した。試験はヘルシンキ宣言の主旨に従い、被験者には本試験の目的、試験方法などについて十分な説明を行い、書面にて同意を得た後に実施した。摂取開始日における被験者背景を表2に示す。
【0056】
【表2】

【0057】
除外規定として以下に示した11項目を考慮し、試験者を選択した。
1.アレルギーの既往症またはアレルギー性疾患(アトピーを含む)を罹患している者
2.脳血管障害の症候のある者
3.心不全患者および心筋梗塞の既往のある者
4.心房細動および重篤な不整脈のある者
5.高度の腎機能障害のある者(血清クレアチニン4.0mg/dL以上)
6.高度の肝機能障害のある者
7.コントロール困難な糖尿病患者
8.高度の貧血(ヘモグロビン量7g/dL未満)のある者
9.妊婦、授乳婦および妊娠している可能性のある者
10.何らかの内服薬を定期的に服用している者または血液流動性に影響のあるサプリメントを服用している者
11.その他、試験担当医師が本試験の対象として不適当と判断した者
【0058】
試験期間は4週間、被験食またはプラセボを朝食および夕食後に各2カプセルずつ、計1日4カプセル(250mg×4カプセル)摂取させた。5週間のウォッシュアウト期間を経た後に、再び4週間、被験食またはプラセボを朝食および夕食後に各2カプセルずつ、計1日4カプセル(250mg×4カプセル)摂取させた。摂取終了3週後の測定をもって試験期間を終了した。試験開始日より試験終了日までの期間は暴飲暴食を避け、それ以外の日常生活について変えることのないよう指導した。
【0059】
摂取開始2週間前より摂取終了3週後まで毎日、被験食およびプラセボの摂取時間、薬物・サプリメント類の服用・摂取状況、食事(飲酒)の内容および時間、睡眠時間を日誌に記載させた。
【0060】
採血は、前日の夜10時以降の飲食(水を除く)を避け、検査日当日は、喫煙・激しい運動を避け、検査終了まで絶食とし、看護師により実施された。採血回数は、検査当日(被験食摂取2週後と摂取4週後およびプラセボ摂取2週後と摂取4週後)の被験食およびプラセボ摂取前と摂取4時間後の2回行った。
【0061】
血液学検査として赤血球数(RBC)、ヘマトクリット値(Ht)、ヘモグロビン量(Hb)、平均赤血球血色素量(MCH)、平均赤血球容積(MCV)、平均赤血球血色素濃度(MCHC)、白血球数(WBC)、血小板数(Plt)を測定した。
【0062】
血液生化学検査としてGOT(AST)、GPT(ALT)、γ−GTP、総蛋白、アルブミン、A/G比、中性脂肪(TG)、総コレステロール(T−Cho)、HDLコレステロール(HDL−Cho)、LDLコレステロール(LDL−Cho)、ALP、尿酸、グルコース、HbA1c、総ビリルビン、尿素窒素(BUN)、クレアチニン、Na、Cl、K、CaおよびPを測定した。
【0063】
血管障害性指標検査として血液通過速度、PT、APTT、血小板凝集能、TM、vWF、80H−dG、TBARS、アディポネクチンを測定した。
統計学的検討は総コレステロール、HDLコレステロール、LDLコレステロールおよび血管障害性指標検査値において正規分布に従う場合、二元配置分散分析(ANOVA)を行い、摂取期間と被験食およびプラセボ群の交互性について解析した。摂取前値との比較においては、正規分布に従っていた場合はDunnettの多重比較検定を、従わなかった場合はWilcoxonの符号付順位和検定の後、Bonferroniの多重比較を実施した。身長、体重、BMI、血液学検査値、血液生化学検査値、尿定量検査値は、被験食とプラセボとの間の検定として、正規分布に従っていた場合はt検定を、従わなかった場合はWilcoxon順位和検定の後、Bonferroniの多重比較を実施した。尿定性検査結果については、χ検定の後、Bonferroniの多重比較を実施する。なお、統計ソフトは株式会社SPSS製SPSS Ver13.0を使用し、有意水準を両側検定で5%以下とする。
【0064】
被験者対象として被験者背景を表2に示し、試験期間中の第I期摂取2週後でカプセルが飲めなかった1名、第I期後観察後に引越しの為試験の継続が不可能になった1名の計2名を脱落とした。
【0065】
群間での比較では、いずれの項目に関しても被験食群とプラセボ群での有意差はなかった。群内での推移では、摂取2週前に比べて摂取4週後でプラセボ群のヘモグロビン値が有意に低下した。MCHとMCHCにおいては、プラセボ群と被験食群のどちらも摂取2週前に比べて摂取2週後、4週後、摂取終了3週後に有意に低下した。しかし、いずれも軽微な変動であり、基準値を逸脱するものはなかった。
【0066】
本試験において、LDLコレステロールが図9に示すように被験食群の摂取2週後でプラセボ群に対し有意に低値を示した。また、有意差はなかったものの摂取前に比べて被験食群は摂取2週後以降、低値を示していた。血管障害性指標については、図10に示すように被験食群で摂取2週前に比べてTMが、図11に示すように摂取4週後と摂取終了3週後に、vWFが摂取2週後と摂取終了3週後にそれぞれ有意な低下を示した。
【0067】
本試験の被験食群において、摂取前に比べ摂取後の測定日で、TMとvWFが有意な低下を示したことから、アムラ配合血管障害性マーカー抑制組成物は血管内皮細胞の保護作用を有することが示唆された。
【0068】
実施例7 血管障害性マーカー抑制組成物含有食品(錠菓)の調製
実施例1で得られた血管障害性マーカー抑制組成物A,5g、乳糖30g、DHA含有粉末油脂(サンコートDY−5;太陽化学株式会社製)12g、ショ糖脂肪酸エステル4g、ヨーグルト香料4gを混合した。そして、この混合物をロータリー式打錠機で加圧成形し、1錠が300mgの本発明の血管障害性マーカー抑制組成物含有飲食品(錠菓)を得た。また、これに対する比較例として、血管障害性マーカー抑制組成物Aをデキストリンに代替し、乳糖などの他の成分を含有する飲食品(錠菓)を、同様の方法により得た。
【0069】
そして、これら2種の錠菓について、5名のパネラーによる官能検査を行った結果、色、匂い及び味のいずれにおいても両者に有意差が認められなかった。また、これら2種の錠菓を常温で長期間(1ヶ月間,3ヶ月間,6ヶ月間)保存したところ、両者とも色、匂い及び味について特に目立った変化は認められず、いずれも保存性に優れていた。
【0070】
実施例8 血管障害性マーカー抑制組成物含有飲料の調製
実施例2で得られた血管障害性マーカー抑制組成物B,5g、1/5濃縮グレープフルーツ透明果汁2.1g、エリスリトール30g、クエン酸結晶2.5g、クエン酸三ナトリウム0.5g、L−アスコルビン酸0.5g、乳酸カルシウム1.93g、CCP0.15g、グレープフルーツ香料1.0を水に混合溶解し、全量を1000mLとした。それを100mLの瓶に充填し、キャップで密栓した後、90℃、30分間加熱殺菌をして、本発明の血管障害性マーカー抑制組成物含有飲食品(飲料)を得た。また、これに対する比較例として、血管障害性マーカー抑制組成物Bのみを含有しない反面、他の成分を含有する飲食品(飲料)を、同様の方法により得た。
【0071】
そして、これら2種の飲料について、5名のパネラーによる官能検査を行った結果、色、匂い及び味のいずれにおいても両者に有意差が認められなかった。また、これら2種の飲料を冷蔵庫で長期間(1ヶ月間,3ヶ月間,6ヶ月間)保存したところ、両者とも色、匂い及び味について特に目立った変化は認められず、いずれも保存性に優れていた。
【0072】
実施例9 血管障害性マーカー抑制組成物含有飲料(野菜果汁混合飲料)の調製
実施例2で得られた血管障害性マーカー抑制組成物C,0.2g、グアーガム分解物(サンファイバーR;太陽化学株式会社製)3gを市販の野菜果汁混合飲料100mLに添加混合溶解して、本発明の血管障害性マーカー抑制組成物含有飲食品(野菜果汁混合飲料)を得た。また、これに対する比較例として、血管障害性マーカー抑制組成物Cを含有せず、グアーガム分解物を含有する飲食品(野菜果汁混合飲料)を、同様の方法により得た。
【0073】
そして、これら2種の野菜果汁混合飲料について、5名のパネラーによる官能検査を行った結果、色、匂い及び味のいずれにおいても両者に有意差が認められなかった。また、これら2種の飲料を冷蔵庫で1ヶ月間保存したところ、両者とも色、匂い及び味について特に目立った変化は認められず、いずれも保存性に優れていた。
【0074】
実施例10 血管障害性マーカー抑制組成物含有クッキーの調製
実施例2で得られた血管障害性マーカー抑制組成物D,4g、市販のケーキミックス粉200gを容器に入れた後、バター35gを入れ、木杓子で混ぜ合わせた。それに溶き卵25gを加えて、なめらかな生地になるまで良く練った。小麦粉を振った台の上に生地を取り出し、さらに小麦粉を振って麺棒で5mmの厚さに伸ばし、丸型で抜き、それを170℃のオーブンで10分間焼いて、1個約5gの本発明の血管障害性マーカー抑制組成物含有クッキーを得た。
【0075】
実施例11 血管障害性マーカー抑制組成物含有ヨーグルトの調製
実施例5で得られた血管障害性マーカー抑制組成物H,1g、市販の脱脂乳(明治乳業社製、蛋白質含量34%)95g、及び市販の無塩バター(雪印乳業社製)35gを温水0.8Lに溶解し、均質化し、全量を1Lに調整した。次いで、これを90℃で15分間加熱殺菌した後、冷却し、市販の乳酸菌スターター(ハンゼン社製)3g(ストレプトコッカス・サーモフィラス2g及びラクトバシラス・ブルガリクス1g)を接種した。さらに、これを均一に混合し、100mLの容器に分注・充填した後、密封して37℃で20時間発酵させた後、冷却することで、本発明の血管障害性マーカー抑制組成物含有ヨーグルトを得た。
【0076】
実施例12 血管障害性マーカー抑制組成物含有経口流動食の調製
カゼインナトリウム(DMV社製)50g、卵白酵素分解物(太陽化学社製)42.5g、デキストリン(松谷化学社製)100gを水1Lに溶解させ、水相をタンク内に調製した。これとは別に、MCT(花王社製)45g、パーム油(不二製油社製)17.5g、サフラワー油(太陽油脂社製)35g、レシチン(太陽化学社製)0.7g、消泡剤(太陽化学社製)1gを混合溶解し、油相を調製した。タンク内の水相に油相を添加し、攪拌して混合した後、70℃に加温し、さらに、ホモゲナイザーにより14.7MPaの圧力で均質化した。次いで、90℃で10分間殺菌した後、濃縮し、噴霧乾燥して、中間製品粉末約260gを調製した。この中間製品粉末200gに、実施例2で得られた血管障害性マーカー抑制組成物C,4g、デキストリン(松谷化学社製)156g、グアーガム分解物(サンファイバーR;太陽化学株式会社製)18g、少量のビタミン・ミネラル、及び粉末香料を添加し、均一に混合して、血管障害性マーカー抑制組成物を含有する経口流動食約380gを得た。
【0077】
実施例13 血管障害性マーカー抑制組成物含有錠剤の調製
実施例3で得られた血管障害性マーカー抑制組成物F,10g、結晶セルロース5g、トウモロコシデンプン13.8g、乳糖32.5g、ヒドロキシプロピルセルロース3.3gを混合し、顆粒化した。この顆粒化物にステアリン酸マグネシウム1.0gを加え、均一に混合し、この混合物をロータリー式打錠機で加圧成形することにより、一錠が130mgの本発明の血管障害性マーカー抑制組成物含有錠剤を得た。
【0078】
実施例14 血管障害性マーカー抑制組成物含有錠剤の調製
実施例3で得られた血管障害性マーカー抑制組成物F,10g、結晶セルロース5g、トウモロコシデンプン13.8g、乳糖32.5g、ヒドロキシプロピルセルロース3.3gを混合し、顆粒化した。この顆粒化物にステアリン酸マグネシウム1.0gを加え、均一に混合し、この混合物をロータリー式打錠機を用いて加圧成形することにより、一錠が130mgの本発明の血管障害性マーカー抑制組成物含有錠剤を得た。
【0079】
実施例15 血管障害性マーカー抑制組成物含有ドリンク剤の調製
実施例4で得られた血管障害性マーカー抑制組成物G,55gに、ブドウ糖528g、果糖85.4g、粉末クエン酸15.8g、クエン酸ナトリウム11.2g、乳酸カルシウム1.3g、塩化マグネシウム1.3g、粉末天然香料13.2g、ビタミンCを添加し、さらに水を加えて11リットルとした。この液体を乾熱滅菌済の110ml褐色瓶に充填して、アルミキャップで密封した後、120℃、30分間の滅菌を行い、ドリンク剤100本を得た。
【0080】
実施例16 血管障害性マーカー抑制組成物含有カプセル剤の調製
実施例4で得られた血管障害性マーカー抑制組成物G,50gに、銅クロロフィリン酸ナトリウム1gを加えて熱殺菌した後、それを日本薬局カプセル(#1)に1カプセルあたり0.4g充填し、カプセル剤100個を得た。
【0081】
実施例17 血管障害性マーカー抑制組成物含有豚繁殖用飼料の調製
【0082】
実施例2で得られた血管障害性マーカー抑制組成物B,5重量部に対し、とうもろこし40.0重量部、マイロ28.0重量部、大豆油かす11.0重量部、ふすま6.0重量部、魚粉5.0重量部、動物性油脂2.0重量部、ビタミン・ミネラル類3.0重量部を配合して、豚繁殖用飼料20kgを調製した。
【0083】
本発明の実施態様及び目的生成物を挙げれば以下の通りである。
(1)アムラ果実、アムラ果汁、アムラ果実の抽出物及びアムラ果汁の抽出物からなる群から選択される少なくとも1つを、有効成分として含有することを特徴とする血管障害性マーカー抑制組成物。
(2)上記(1)において、前記抽出物は、アムラ果実及びアムラ果汁からなる群から選択される少なくとも1つの原料を、水、塩基、酸及び親水性溶媒からなる群から選択される少なくとも1つにより抽出したものであることを特徴とする血管障害性マーカー抑制組成物。
(3)上記(1)において、前記抽出物は、アムラ果実及びアムラ果汁からなる群から選択される少なくとも1つの原料を、水により抽出したものであることを特徴とする血管障害性マーカー抑制組成物。
(4)上記(2)において、親水性溶媒がメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール及びブチルアルコールからなる群から選択される少なくとも1種類以上の低級アルコールであることを特徴とする血管障害性マーカー抑制組成物。
(5)上記(1)において、前記抽出物の有機溶媒による分画物を前記有効成分として含有するとともに、前記有機溶媒が、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジエチルエーテル、メチルエーテル、メチルイソブチルケトン、ヘキサン及びクロロホルムからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする血管障害性マーカー抑制組成物。
(6)上記(1)において、前記抽出物のエチルアルコールによる分画物を、前記有効成分として含有することを特徴とする血管障害性マーカー抑制組成物。
(7)上記(1)において、前記抽出物のエチルアルコールによる沈殿分画成分を、前記有効成分として含有することを特徴とする血管障害性マーカー抑制組成物。
(8)上記(1)において、前記抽出物を20%〜80%のエチルアルコールで分画したときの可溶画分を、前記有効成分として含有することを特徴とする血管障害性マーカー抑制組成物。
(9)上記(1)において、前記抽出物を20%〜60%のエチルアルコールで分画したときの可溶画分を、前記有効成分として含有することを特徴とする血管障害性マーカー抑制組成物。
(10)上記(1)において、疎水性樹脂を用いたクロマトグラフィーまたはカラムにより前記抽出物を高純度化したものを、前記有効成分として含有することを特徴とする血管障害性マーカー抑制組成物。
【0084】
(11)上記(10)において、疎水性樹脂が、フェノール系、スチレン系、アクリル酸系、エポキシアミン系、ピリジン系及びメタクリル系からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を母体とすることを特徴とする血管障害性マーカー抑制組成物。
(12)上記(1)において、ペクチナーゼ、プロテアーゼ、タンナーゼ及びセルラーゼからなる群から選択される少なくとも1種の酵素で前記抽出物を処理して分解したものを精製して得た分画物を、前記有効成分として含有することを特徴とする血管障害性マーカー抑制組成物。
(13)アムラを有効成分として含有することを特徴とする血管障害性マーカー抑制組成物。
(14)アムラの可食部を有効成分として含有することを特徴とする血管障害性マーカー抑制組成物。
(15)アムラ由来の物質を有効成分として含有することを特徴とする血管障害性マーカー抑制組成物。
(16)上記(1)乃至(15)のいずれか1項に記載の血管障害性マーカー抑制組成物を含有することを特徴とする飲食品。
(17)上記(1)乃至(15)のいずれか1項に記載の血管障害性マーカー抑制組成物を含有することを特徴とする飼料。
(18)上記(1)乃至(15)のいずれか1項に記載の血管障害性マーカー抑制組成物を含有することを特徴とする医薬部外品。
(19)上記(1)乃至(15)のいずれか1項に記載の血管障害性マーカー抑制組成物を含有することを特徴とする医薬品。
(20)アムラ果実、アムラ果汁、アムラ果実の抽出物及びアムラ果汁の抽出物からなる群から選択される少なくとも1つを、有効成分として含有する血管障害性マーカー抑制組成物を用いる血管内皮細胞の保護方法。
【0085】
(21)アムラを有効成分として含有する血管障害性マーカー抑制組成物を用いる血管内皮細胞の保護方法。
(22)アムラの可食部を有効成分として含有する血管障害性マーカー抑制組成物を用いる血管内皮細胞の保護方法。
(23)アムラ由来の物質を有効成分として含有する血管障害性マーカー抑制組成物を用いる血管内皮細胞の保護方法。
(24)アムラ果実、アムラ果汁、アムラ果実の抽出物及びアムラ果汁の抽出物からなる群から選択される少なくとも1つを、有効成分として含有する血管障害性マーカー抑制組成物を用いる血管内皮細胞の保護方法。
(25)アムラ果実、アムラ果汁、アムラ果実の抽出物及びアムラ果汁の抽出物からなる群から選択される少なくとも1つを、有効成分として含有する血管障害性マーカー抑制組成物を用いる血管内皮細胞の保護方法。
(26)アムラ果実、アムラ果汁、アムラ果実の抽出物及びアムラ果汁の抽出物からなる群から選択される少なくとも1つを、有効成分として含有する血管障害性マーカー抑制組成物を用いる血管内皮細胞の保護方法。
(27)上記(25)または(26)において、前記生物はヒトを除く生物であることを特徴とする血管内皮細胞の保護方法。
(28)アムラを有効成分として含有する血管障害性マーカー抑制組成物の製造方法であって、アムラ果実及びアムラ果汁からなる群から選択される少なくとも1つを抽出して得た抽出物を用いることを特徴とする血管障害性マーカー抑制組成物の製造方法。
(29)アムラを有効成分として含有する血管障害性マーカー抑制組成物の製造方法であって、アムラ果実及びアムラ果汁からなる群から選択される少なくとも1つの原料を、水、塩基、酸及び親水性溶媒からなる群から選択される少なくとも1つにより抽出し、これにより得られた抽出物を用いることを特徴とする血管障害性マーカー抑制組成物の製造方法。
(30)アムラを有効成分として含有する血管障害性マーカー抑制組成物の製造方法であって、アムラ果実及びアムラ果汁からなる群から選択される少なくとも1つの原料を、水により抽出して得た抽出物を用いることを特徴とする血管障害性マーカー抑制組成物の製造方法。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明の血管障害性マーカー抑制組成物は、血管内皮細胞を保護する効果が高いため、飲食品等に利用して血栓の生成を抑制することで、脳卒中、脳出血、脳梗塞、心不全症、心筋梗塞、心臓麻痺等のような心血関係疾患を予防することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管内皮細胞障害によって血液中に分泌される内皮細胞の機能障害のマーカータンパク質についてその量的変化を小さくする方向に調節する組成物であって、アムラ果実、アムラ果汁、アムラ果実の抽出物及びアムラ果汁の抽出物からなる群から選択される少なくとも1つを有効成分として含有することを特徴とし、マーカータンパク質がフォンヴィレブランド因子又はトロンボモジュリンである血管障害性マーカー抑制組成物。
【請求項2】
請求項1記載の抽出物は、アムラ果実及びアムラ果汁からなる群から選択される少なくとも1つを、非有機溶媒で抽出したものであることを特徴とする請求項1に記載の血管障害性マーカー抑制組成物。
【請求項3】
請求項1記載の抽出物の有機溶媒による分画物を、前記有効成分として含有することを特徴とする請求項1または2記載の血管障害性マーカー抑制組成物。
【請求項4】
請求項1記載のアムラ果実、アムラ果汁、もしくはその抽出物を酵素で処理したものを精製して得た分画物を、前記有効成分として含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の血管障害性マーカー抑制組成物。
【請求項5】
請求項4記載の酵素が加水分解酵素であることを特徴とする請求項4に記載の血管障害性マーカー抑制組成物。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の血管障害性マーカー抑制組成物を含有することを特徴とする飲食品。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の血管障害性マーカー抑制組成物を含有することを特徴とする飼料。
【請求項8】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の血管障害性マーカー抑制組成物を含有することを特徴とする医薬部外品。
【請求項9】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の血管障害性マーカー抑制組成物を含有することを特徴とする医薬品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−162444(P2011−162444A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−23289(P2010−23289)
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(000204181)太陽化学株式会社 (244)
【Fターム(参考)】