説明

血糖を制御するための医薬組成物及びその方法

【課題】本発明は、従来の糖尿病の薬物療法にある欠点を解決するための、血糖を制御するための遠赤外線放出物質を含む医薬組成物及びその方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明による医薬組成物は、インスリン抵抗性を有する被験者の血糖を制御するための医薬組成物であり、前記医薬組成物は、80−99.9%重量%の酸化鉱物を含む遠赤外線放出物質を含み、前記酸化鉱物は、60−95重量%の酸化アルミニウムを含む。本発明による血糖を制御するための方法は、遠赤外線放出物質を用意する工程と、室温において前記遠赤外線物質をインスリン抵抗性を有する被験者から所定の距離の位置に配置する工程とを含み、前記位置は遠赤外線の放射範囲内であることを特徴とする方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血糖を制御するための遠赤外線放出物質及びその方法に関し、特に、インスリン抵抗性を有する患者の血糖を制御するための遠赤外線放出物質及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病患者のうち、およそ90%〜95%はインスリン非依存型の又は2型の糖尿病患者である。この種の患者では、体内の細胞が正常にインスリンを利用することができず、更にインスリンの過剰分泌が生じる。このような症状はインスリン抵抗性とよばれる。2型糖尿病の患者では、インスリンが正常に作用することがでず、血液内のブドウ糖の含有量が高くなり、長期間、多くの合併症を発症する場合がある。例えば、心臓血管、並びに、目及び腎臓の病気などがその例である。
【0003】
一般に、患者の血糖を効果的に制御し、正常な状態又は正常に近い状態にするために、ダイエットのほか、経口血糖降下薬又はインスリンを利用する必要がある。糖尿病の状態に依存して、経口血糖降下薬は徐々に効力を失い、更に、全ての患者にとってインスリンが有効であるわけではない。それ故に、より効果的な方法が発見され、血糖を制御する必要がある。
【0004】
遠赤外線は、およそ4〜1000μmの波長を有する電磁波である。4〜16μmの波長を有する遠赤外線は、動植物の生長を増進する効果があるため、当該分野において「育成光線」とも呼ばれる。遠赤外線が人体の病気を治療する効果を有することは、医学的にすでに確認されている。しかしながら、従来の研究では、遠赤外線が血糖を制御できるかどうかは確認されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、このような従来の糖尿病の薬物療法が有する欠点を解決するために鋭意研究が重ねられ、その結果、本発明は、血糖を制御するための遠赤外線放出物質を含む医薬組成物及びその方法を提供する。遠赤外線の放射は、物理性がある方法を属するため、経口薬に起因する副作用を回避することができる。本発明による遠赤外線放射物質は、容易に携帯されるという長所を有し、繰り返し血糖を制御することで、インスリンが作用する時間が足りないという欠点を改善することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記目的を達成するために以下のように定義される。
【0007】
一実施態様において、本発明による医薬組成物は、インスリン抵抗性を有する被験者の血糖を制御するための医薬組成物であり、前記医薬組成物は、80−99.9重量%の酸化鉱物を含む遠赤外線放出物質を含み、前記酸化鉱物は、60−95重量%の酸化アルミニウムを含むことを特徴とする医薬組成物である。
【0008】
一実施態様において、本発明による医薬組成物は、医薬的に許容可能な担体であり、前記インスリン抵抗性は、2型糖尿病、手術後症候群、重篤な疾病、火傷、外傷後症候群、関連する合併症、及びこれらの組み合わせから成る群より1つ選ばれたものであり、前記遠赤外線放出物質が放射する遠赤外線は、波長6−14μmの範囲において放射率が0.9以上のようなものであり、前記遠赤外線放出物質は、室温において血糖を減少させ、1−20重量%の酸化鉄、1−10重量%の酸化マグネシウム、及び1−30重量%の炭酸カルシウムを含むことを特徴とする医薬組成物である。
【0009】
一実施態様において、本発明による組成物は、被験者の血糖を制御するための組成物であって、前記組成物が、遠赤外線を放射し、被験者の血糖を減少させる遠赤外線放出物質を含み、前記遠赤外線放出物質が酸化鉱物を含むことを特徴とする組成物である。
【0010】
一実施態様において、本発明による組成物は、前記被験者はインスリン抵抗性を有し、前記酸化鉱物は60−95重量%の酸化アルミニウムを含み、前記組成物は医薬組成物であり、前記組成物は医薬的に許容可能な担体であり、前記組成物は前記遠赤外線放出物質が混合される基材を含み、前記基材が、金属、ガラス、セラミック及び重合体から成る群から選択される少なくとも1つであることを特徴とする組成物である。
【0011】
一実施態様において、本発明による血糖を制御するための方法は、遠赤外線放出物質を用意する工程と、室温において前記遠赤外線物質をインスリン抵抗性を有する被験者から所定の距離の位置に配置する工程とを含み、前記位置は遠赤外線の放射範囲内であることを特徴とする血糖を制御するための方法である。
【0012】
一実施態様において、本発明による血糖を制御するための方法は、前記遠赤外線放出物質が放射する遠赤外線は、波長6−14μmの範囲で放射率が0.9以上のようなものであり、前記酸化鉱物は、0−95重量%の酸化アルミニウムを含み、前記遠赤外線放出物質は、更に1−20重量%の酸化鉄、1−10重量%の酸化マグネシウム、及び1−30重量%の炭酸カルシウムを含み、前記インスリン抵抗性は、2型糖尿病、手術後症候群、重篤な疾病、火傷、外傷後症候群、関連する合併症、及びこれらの組み合わせから成る群より1つ選ばれたものであることを特徴とする血糖を制御するための方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明による血糖を制御するための医薬組成物及びその方法により、従来の糖尿病の薬物療法における欠点を解決し、経口薬に起因する副作用を回避し、更に、繰り返し血糖を制御することで、インスリンが作用する時間が足りないという欠点を改善することを目的とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明を実施例に基づいて詳述するが、これらはあくまで例示に過ぎず、本発明の範囲はこれらの実施形態に限定されない。本発明の範囲は特許請求の範囲に記載され、更に、特許請求の範囲の記載と均等な意味を含み、及び範囲内における全ての変更を含む。
【0015】
〈例1〉
最初に、本発明の第1の実施例について説明する。本実施例における遠赤外線放出物質の材料は、機器技術研究センター(儀器科技研究中心)と台北医学大学との共同開発によって達成されたものであり、高い有効性で遠赤外線を放出するセラミック粉末である。前記セラミック粉末の生物に対する効果は、既に多数の実験によって証明されている。前記遠赤外線放出物質は、複数の天然鉱物を含み、主要材料として80−99.9重量%の酸化鉱物を含む。前記酸化鉱物は、60−95重量%の酸化アルミニウム、1−20重量%の酸化鉄、1−10重量%の酸化マグネシウム、及び1−30重量%の炭酸カルシウムを含む。その他の成分として、二酸化チタン、二ホウ化チタンまたはその他の天然鉱物、例えば二酸化ケイ素、水酸化亜鉛、酸化亜鉛、カーバイドなどを含む。遠赤外線放出物質が放射する遠赤外線は、黒体放射を基準として遠赤外線分光放射計を利用して測定した場合、波長6−14μmの範囲において放射率が0.9以上となるような結果を有するものである。前記放射する遠赤外線は、米国AATCC試験法100により、黄色ブドウ球菌及び大腸菌に対する殺菌効果が99.9%以上となるものである。
【0016】
〈例2〉
本発明による医薬組成物は、インスリン抵抗性を有する被験者の血糖を制御するためのものであり、例1に示すような成分及び性質を有する遠赤外線放出物質を含む。前記インスリン抵抗性は、遺伝要因および非遺伝要因の疾患を含み、例えば、2型糖尿病、手術後症候群、重篤な疾病、火傷、外傷後症候群および関連する合併症などである。本発明による医薬組成物は、何れかの方法によって被験者に投与されるために、医薬的に許容可能な担体を含み、その例として、例えば、賦形剤、接着剤および補助剤を含む。遠赤外線を放射する遠赤外線放出物質を含む医薬組成物は、インスリン抵抗性を有する被験者の血糖を減少させて正常値とする。本実施例にかかる医薬組成物は、室温において被験者の血糖を減少させる効果を有し、容易に携帯される長所を有し、経口薬および注射液を使用することなく、インスリン抵抗性を有する被験者の血糖を制御する方法を提供するものである。
【0017】
〈例3〉
第3の実施例として、本発明は、被験者の血糖を制御するための組成物であって、前記組成物は、遠赤外線を放射して被験者の血糖を減少させる遠赤外線放出物質を含む組成物である。遠赤外線放出物質は、第1の実施例に示される成分及び性質と同様であり、ここでは省略する。本実施例において、インスリン抵抗性は、2型糖尿病、手術後症候群、重篤な疾病、火傷、外傷後症候群および関連する合併症である。本実施例による組成物と、前述の実施例との区別は、本実施例による組成物は医薬組成物としての機能のほか、基材を混合することで、またはその基材を表面に分布することで、別の形態としての機能を有する。本発明による前記基材は、金属、ガラス、セラミック及び重合体から成る群から選択される少なくとも1つである。一例として、前記遠赤外線放出物質を陶製瓦に混合すると、前記陶製瓦は、被験者の血糖を減少するための建材となる。従って、前記建材を利用して作られる建物で被験者を囲むことにより、被験者の血糖を制御することができる。また、前記遠赤外線放出物質を重合体に混合することで、被験者の血糖を減少するための着物を製造することができる。被験者が前記着物を身につけることは、遠赤外線放射物質を携帯することと同様の効果を有する。
【0018】
〈例4〉
文献によると、火傷、手術または外傷の後、患者はインスリン抵抗性及び高血糖の症状を示すため、火傷、手術または外傷は、患者の血糖および生存率に影響を与える。従って、第4の実施例として、皮膚に火傷を負ったマウスを動物モデルとして用い、本発明による血糖を制御するための組成物の効果を証明する。
【0019】
7週齢のオスのマウス(BALB/c)を選択し、無作為に対照群および実験群として、それぞれ13個体ずつ分配する。実験開始の1日前に、マウスに麻酔を行い、背にある毛を剃る。30x25mmの穴を開けた熱遮断板を、毛を剃ったマウスの背にあて、0.3mlのアルコール(95%)により、剃った部分を15秒間点火することで、マウスに30%の火傷を負わせる。その直後、1mlの(薬用)塩水を腹腔内に注射して水を補充する。その後、2つの群にわけ、実験群では遠赤外線を放出するセラミック粉末を、遠赤外線が放出される範囲内となるように、マウスの周囲に配置する。火傷を負わせたマウスに水を供給しつつ24時間絶食させ、絶食の終了後、直ちに食料を供給する。火傷を負わせて2日後、4日後、7日後および14日後において、所定の数のマウスを屠殺し血糖を測定する。
【0020】
表1は、火傷を負わせた2日後、4日後、7日後および14日後に測定した、マウスの血糖値を示す表である。1回につき1群あたり3個体のマウスを測定に用いたが、14日目において、対照群のマウスでは既に2個体が死んだため、残りの2個体の血糖値を測定する。一方で、実験群では、4個体の血糖値を測定した。図1は表1の結果をグラフ化したものである。図1中、それぞれの点は、その日に測定された平均血糖値を表す。図1において、上に位置する曲線は対照群の血糖値であり、下に位置する曲線は実験群の血糖値である。図1において、対照群の血糖値では、火傷後、有意な変化はみられない。それに対して、実験群では、血糖値が時間と共に減少している。表2に示されるように、p<0.05の場合、実験群では、対照群よりも安定的に、統計的に有意な血糖値が得られる。
【表1】

【表2】

【0021】
火傷を負わせたマウスの生存率を考えると、火傷後1日目および2日目において、対照群ではそれぞれ1個体のマウスが死亡した。一方、実験群では、100%の生存率が得られたため、本発明による遠赤外線放出物質による、火傷後の患者の生存率を増大する効果が証明される。この火傷モデルを利用してインスリン抵抗性を模倣する結果によって、本発明による遠赤外線放射物質が、高血糖の問題を改善し、血糖を適切に制御できることが示される。今後は、遠赤外線放出物質を含む組成物により、インスリン抵抗性疾患を用いて、例えば2型糖尿病患者の血糖を正常値にする方法、または、血糖を減少する薬およびインスリンによる治療に置き換えて治療する方法が提供される。
【0022】
以上の説明を通して、当業者であれば本発明の技術思想を逸脱しない範囲で多様な変更及び修正が可能であることが分かる。従って、本発明の技術的範囲は、明細書の詳細な説明に記載された内容に限定されず、特許請求の範囲によって定めてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施例による、対照群および実験群の血糖値の測定結果を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インスリン抵抗性を有する被験者の血糖を制御するための医薬組成物であって、
前記医薬組成物は、80−99.9重量%の酸化鉱物を含む遠赤外線放出物質を含み、
前記酸化鉱物は、60−95重量%の酸化アルミニウムを含む、
ことを特徴とする医薬組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の医薬組成物であって、
医薬的に許容可能な担体であり、
前記インスリン抵抗性は、2型糖尿病、手術後症候群、重篤な疾病、火傷、外傷後症候群、関連する合併症、及びこれらの組み合わせから成る群より1つ選ばれたものであり、
前記遠赤外線放出物質が放射する遠赤外線は、波長6−14μmの範囲において放射率が0.9以上のようなものであり、
前記遠赤外線放出物質は、室温において血糖を減少させ、1−20重量%の酸化鉄、1−10重量%の酸化マグネシウム、及び1−30重量%の炭酸カルシウムを含む、
ことを特徴とする医薬組成物。
【請求項3】
被験者の血糖を制御するための組成物であって、
前記組成物が、遠赤外線を放射し、被験者の血糖を減少させる遠赤外線放出物質を含み、
前記遠赤外線放出物質が酸化鉱物を含む、
ことを特徴とする組成物。
【請求項4】
請求項3に記載の組成物であって、
前記被験者はインスリン抵抗性を有し、
前記酸化鉱物は60−95重量%の酸化アルミニウムを含み、
前記組成物は医薬組成物であり、
前記組成物は医薬的に許容可能な担体であり、
前記組成物は前記遠赤外線放出物質が混合される基材を含み、
前記基材が、金属、ガラス、セラミック及び重合体から成る群から選択される少なくとも1つである、
ことを特徴とする組成物。
【請求項5】
遠赤外線放出物質を用意する工程と、
室温において前記遠赤外線物質をインスリン抵抗性を有する被験者から所定の距離の位置に配置する工程とを含み、前記位置は遠赤外線の放射範囲内である、
ことを特徴とする血糖を制御するための方法。
【請求項6】
請求項5に記載の血糖を制御するための方法であって、
前記遠赤外線放出物質が放射する遠赤外線は、波長6−14μmの範囲で放射率が0.9以上のようなものであり、
前記酸化鉱物は、60−95重量%の酸化アルミニウムを含み、
前記遠赤外線放出物質は、更に1−20重量%の酸化鉄、1−10重量%の酸化マグネシウム、及び1−30重量%の炭酸カルシウムを含み、
前記インスリン抵抗性は、2型糖尿病、手術後症候群、重篤な疾病、火傷、外傷後症候群、関連する合併症、及びこれらの組み合わせから成る群より1つ選ばれたものである、
ことを特徴とする血糖を制御するための方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−108060(P2009−108060A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−276781(P2008−276781)
【出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【出願人】(508217973)台北医学大学 (2)
【出願人】(508007880)財團法人國家実験研究院 (2)
【Fターム(参考)】