説明

血糖値を調節するためのGLP−1アゴニストとガストリンとの合わせた使用

本発明は、治療有効量のGLP−1アゴニストおよびガストリン化合物を含む、ある状態および/または疾患を予防および/または治療するための組成物、結合体、および方法に関する。GLP−1アゴニストおよびガストリン化合物の組み合わせは、糖尿病、高血圧、慢性心不全、体液うっ滞状態、肥満症、代謝症候群ならびに関連疾患および障害を含むがそれらに限定されない、GLP−1アゴニストまたはガストリン化合物のどちらかがそれに対して治療作用を有することが証明されている状態および/または疾患を予防および/または治療する際に、有益な効果、特に持続性の有益な効果を提供する。GLP−1アゴニストおよびガストリン化合物の組み合わせは、予想外の相加作用または相乗作用を提供するように選択することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、一般に、GLP−1アゴニストおよびガストリン化合物を含む組成物、結合体、方法、およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)は、下部消化管からの生理的インクレチンホルモンである。GLP−1は、グルコース依存性インスリン分泌の刺激、グルカゴン分泌および胃内容排出の阻害、食物摂取の阻害、グルコース利用率の増強、β細胞の維持、β細胞アポトーシスの阻害、ならびにβ細胞増殖の誘導を含む重要な生理的活性を有する。(GLP−1の概観については、非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4およびhttp://www.glucagon.comを参照されたい)。GLP−1は上述した活性を有するために、糖尿病、肥満症、胃潰瘍、高血圧、慢性心不全、体液うっ滞状態、代謝症候群、ならびに関連疾患および障害を含む多数の状態および疾患を治療するために高度に望ましい治療薬である。
【0003】
本明細書における参考文献についての言及は、そのような参考文献を本発明の先行技術として利用できると是認するものではない。
【非特許文献1】Nauck,M.A.、「Acta Diabetol」、1998年、第35巻、p.117−129
【非特許文献2】Holst J.J.、「Deabetes Metab Res Rev」、2002年、第18巻、p.430−441
【非特許文献3】Reimer,R.A.ら、「Endocrinology」、第142巻、第10号、p.4522−4528
【非特許文献4】Drucker,D.J.、「Molecular Endocrinology」、2003年、第17巻、第2号、p.161−171
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
(発明の概要)
GLP−1アゴニストおよびガストリン化合物の組み合わせは、糖尿病、高血圧、慢性心不全、体液うっ滞状態、肥満症、代謝症候群ならびに関連疾患および障害を含むがそれらに限定されない、GLP−1アゴニストまたはガストリン化合物がそれに対して治療作用を有することが証明されている状態および/または疾患を予防および/または治療する際に有益な効果を提供する。GLP−1アゴニストおよびガストリン化合物の組み合わせは、予想外の相加作用または相加作用より大きな作用、すなわち相乗作用を提供するように選択することができる。
【0005】
最高治療有効性を達成するために様々な機序を使用するGLP−1アゴニストおよびガストリン化合物を含む組成物、結合体、または方法は、高用量または長期単剤療法(すなわち、各化合物単独を用いる療法)の結果として生じる可能性がある副作用のリスクを減少させながら治療に対する忍容を向上させることができる。本発明の組成物、結合体、または方法は、各化合物の有害な毒性作用を減少させながら一方または両方の化合物を低用量で使用することを許容するであろう。最適量より少ない用量は安全域を増加させることができ、予防および治療を達成するために必要な薬物の費用を減少させることもできる。本発明の所定の態様では、単回で併用投与できるという便宜性の上昇がコンプライアンス強化を生じることができる。組成物、結合体、または併用療法の他の長所には、分解および代謝に対するより高い安定性、長期の作用持続、および/または特に低用量での長期の作用持続または有効性を含むことができる。
【0006】
大まかに言うと、本発明は、有益な効果を提供する治療有効量のGLP−1アゴニストおよびガストリン化合物を含む、ある状態および/または疾患を予防および/または治療するための組成物、結合体、および方法に関する。
【0007】
本発明の組成物、結合体、または方法は、治療に続く、または治療終結後の持続性の有益な効果を提供することができる。持続適有効性は、GLP−1またはガストリン単独と比較して、C−ペプチド産生の上昇、膵インスリン産生の上昇、および/またはほぼ正常な血糖値によって証明できる。
【0008】
1つの態様では、本発明は、各化合物単独に比較して有益な効果を提供するGLP−1アゴニストおよびガストリン化合物を含む組成物、好ましくは薬学的組成物を企図している。また別の態様では、本発明は、治療後に有益な効果、好ましくは持続性の有益な効果を提供するGLP−1アゴニストおよびガストリン化合物を含む薬学的組成物を提供する。薬学的組成物は、任意で薬学的に受容可能なキャリア、賦形剤、またはビヒクルを含むことができる。
【0009】
本発明は、別個の容器中に含まれており、どちらも任意で薬学的に受容可能なキャリア、賦形剤、またはビヒクルを備える、GLP−1アゴニストおよびガストリン化合物を含む、有益な効果、特に持続性の有益な効果を提供するために同時または連続投与が予定されている薬学的組成物をさらに企図している。
【0010】
本発明は、有益な効果、好ましくは本明細書で考察する持続性の有益な効果を提供するためにガストリン化合物と相互作用する、またはガストリン化合物と結合されたGLP−1アゴニストを含む結合体をさらに企図している。
【0011】
本発明は、有益な効果、好ましくは持続性の有益な効果を備える組成物および結合体を生じさせる、本発明の組成物および結合体を調製するための方法をさらに企図している。
【0012】
本発明の1つの態様では、治療後に、有益な効果、好ましくは持続性の有益な効果を提供するために適合させたGLP−1アゴニストおよびガストリン化合物の安定性薬学的組成物を調製するための方法であって、GLP−1アゴニスト、ガストリン化合物、およびGLP−1アゴニストを物理的に安定化させるために有効な薬学的に受容可能なキャリア、賦形剤、またはビヒクルを含む組成物を調製する工程を含む方法が提供される。
【0013】
本発明のまた別の態様では、GLP−1アゴニストの安定性薬学的組成物を調製するための方法であって、GLP−1アゴニスト、ガストリン化合物、およびGLP−1アゴニストを物理的に安定化させるために有効で、有益な効果、好ましくは持続性の有益な効果を提供するために適合させた薬学的に受容可能なキャリア、賦形剤、またはビヒクルを混合する工程を含む方法が提供される。
【0014】
本発明は、被験体における本明細書で考察した状態および/または疾患を予防および/または治療するための併用療法であって、有益な効果を提供するために治療有効量の少なくとも1つのGLP−1アゴニストおよびガストリン化合物を該被験体に投与する工程を含む併用療法に関する。1つの態様では、本発明は、治療後の持続性の有益な効果を提供する併用療法または介入を提供する。
【0015】
本発明は、本明細書に記載した状態および/または疾患の疾患重症度、疾患症状、および/または再発の周期性を予防する、および/または改善するための、本発明のGLP−1アゴニストおよびガストリン化合物、組成物、または結合体の使用にさらに関する。本発明は、本発明のGLP−1アゴニスト、ガストリンおよびガストリン化合物、組成物または結合体を使用する、被験体における疾患および/または状態の予防および/または治療にさらになお関する。
【0016】
1つの態様では、本発明は、被験体における本明細書で考察した状態および/または疾患を予防および/または介入するための方法であって、本発明の少なくとも1つのGLP−1アゴニストおよび少なくとも1つのガストリン化合物、または組成物もしくは結合体の投与を含む方法を提供する。GLP−1アゴニストおよびガストリン化合物、組成物または結合体は、被験体に直接的に投与する、または細胞(例、幹細胞または前駆細胞)と接触させて被験体に投与することができる。
【0017】
他の態様では、本発明は、被験体における本明細書で考察した状態および/または疾患を予防および/または介入するための方法であって、有益な効果を提供するためにそれを必要とする被験体への少なくとも1つのGLP−1アゴニストおよび少なくとも1つのガストリン化合物の投与を含む方法を提供する。
【0018】
また別の態様では、本発明は、被験体における本明細書で考察した状態および/または疾患を予防および/または介入するための方法であって、それを必要とする被験体へ少なくとも1つのGLP−1アゴニストおよび少なくとも1つのガストリン化合物を共投与する工程を含む方法を提供する。
【0019】
特定の態様では、本発明は、被験体における膵島細胞新生を誘導する方法であって、膵島前駆細胞を、該被験体における膵島前駆細胞の増殖を増加させるために十分な量で本発明のGLP−1アゴニストおよびガストリン化合物、組成物または結合体を接触させ、それにより膵島細胞新生を誘導する工程を含む方法に関する。
【0020】
また別の態様では、本発明は、それを必要とする患者における糖尿病を治療するための方法であって、該患者の膵島前駆細胞から成熟インスリン分泌細胞への分化を達成するため、および/または現存する膵島細胞中のインスリン合成を刺激するために十分な量でガストリン化合物およびGLP−1アゴニストまたはガストリン化合物およびGLP−1アゴニストを含む組成物を投与する工程による方法に関する。
【0021】
本発明は、本発明のGLP−1アゴニストおよびガストリン化合物、または本発明の組成物もしくは結合体を用いて細胞を治療するための方法を提供する。特別には、本発明は幹細胞または前駆細胞をインスリン分泌細胞内へ拡大かつ分化させるため、インスリン分泌細胞の増殖を強化するため、および/または膵島細胞もしくは前駆細胞を維持するための方法に関する。細胞は、培養内または被験体内でGLP−1アゴニストおよびガストリン化合物と接触させることができる。
【0022】
1つの態様では、ある状態および/または疾患を治療するための方法であって、それにより有益な効果、好ましくは持続性の有益な効果を生成するために、それを必要とする被験体へ複数の細胞とともにGLP−1アゴニストおよびガストリン化合物、本発明の組成物もしくは結合体を投与する工程を含む方法が提供される。1つの実施形態では、化合物/組成物/結合体は全身性投与される。
【0023】
また別の態様では、本発明は、本明細書で考察した状態および/または疾患を有する被験体を治療するための方法であって、複数の細胞をエックスビボでGLP−1アゴニストおよびガストリン化合物、または本発明の組成物もしくは結合体と接触させる工程、任意で前記細胞を培養する工程、およびそれを必要とする前記被験体へ前記細胞を投与する工程を含む工程を提供する。
【0024】
同様に本発明の特定の態様では、膵島内の膵β細胞数を増加させるために十分な量のGLP−1アゴニストおよびガストリン化合物、または本発明の組成物もしくは結合体へ培養内で曝露させられていた膵島細胞を糖尿病患者へ移植する工程による、それを必要とする被験体における糖尿病を治療するための方法および組成物が提供される。任意で膵β細胞の集団は、移植に先行してβ細胞の集団を拡大させるために十分な時間にわたり培養内で増殖させることができる。
【0025】
本発明は、ある状態および/または疾患を予防および/または治療するための1つまたは複数の薬剤を調製するための、少なくとも1つのGLP−1アゴニストおよび少なくとも1つのガストリン化合物の組み合わせを含む組成物の使用をさらに企図している。本発明は、ある状態および/または疾患を治療するための薬剤を製造するための、ガストリン化合物と組み合わせたGLP−1アゴニストの使用をさらに企図している。本発明は、ある状態および/または疾患を治療する目的で薬剤を製造するための、ガストリン化合物と組み合わせて使用すべきGLP−1アゴニストの使用をさらに企図している。
【0026】
1つの態様では、本発明は、ある状態および/または疾患を予防および/または治療するための薬剤を調製するための、相乗作用的有効量の少なくとも1つのGLP−1アゴニストおよび少なくとも1つのガストリン化合物の使用にさらに関する。また別の態様では、本発明は、GLP−1(7−37)またはエキセンディンに比較して持続性作用プロファイルを有する薬剤を調製するためのGLP−1アゴニストおよびガストリン化合物の使用に関する。本発明は、ある状態および/または疾患を予防および/または治療するための薬剤の調製における本発明の薬学的組成物および結合体の使用をさらに提供する。本薬剤は、有益な効果、好ましくな治療後に持続性の有益な効果を提供する。
【0027】
本発明は個別に、または結合体として投与できる活性物質の組み合わせを含む予防および/または治療のための方法に関するので、本発明は、GLP−1アゴニストおよびガストリン化合物を含むキットおよびキット形にある本発明の薬学的組成物、または結合体もさらに提供する。本発明のこれらやその他の態様、特徴、および長所は、当業者には以下の詳細な説明から明白になるはずである。
【0028】
本発明は、以下の図面を参照するとより明確に理解されるであろう。
【0029】
(用語の解説)
本明細書における終点による数値範囲の列挙には、その範囲内に含まれるすべての数および分数が含まれている(例えば、1〜5には、1、1.5、2、2.75、3、3.90、4、および5が含まれる)。さらに、すべての数およびその分数は用語「約」によって修飾されると見なされることも理解されたい。さらに、「1つの」および「その」には、その内容が明白に他のことを指示しない限り複数の対象を含むと理解されたい。そこで、例えば、「1つの化合物」を含有する組成物との言及には、2つ以上の化合物の混合物が含まれる。用語「約」は、言及される数の+または−0.1〜50%、5〜50%、または10〜40%、好ましくは10〜20%、より好ましくは10%もしくは15%を意味する。
【0030】
本明細書に記載した選択した化合物は1つまたは複数の不斉中心を含有しており、エナンチオマー、ジアステレオマー、および(R)−または(S)−のような絶対立体化学によって定義できる他の立体異性体形を生じさせることができる。このため、本発明はすべてのそのような可能性のあるジアステレオマーおよびエナンチオマーならびにそれらのラセミ体および光学純粋形を含んでいる。光学的に活性な(R)−および(S)−異性体は、キラルシントンもしくはキラル試薬を用いて調製できる。または従来型技術を用いて分解することができる。本明細書に記載した化合物が幾何学的不斉中心を含有している場合、そして他に特に規定しない限りは、化合物にはEおよびA両方の幾何異性体が含まれることが意図されている。すべての互変異性体形は本発明の範囲内に含まれることが意図されている。
【0031】
用語「被験体」、「個体」または「患者」は、本明細書に記載した状態および/または疾患に罹患している、または有することが疑われる、または素因がある、哺乳動物などの温血動物を含む動物を意味している。好ましくは、これらの用語はヒトに関する。これらの用語にはさらにまた、ウマ、ウシ、ヒツジ、家禽類、サカナ、ブタ、ネコ、イヌ、および動物園の動物を含む、食用、競技用、またはペットとして飼育された家畜が含まれる。被験体/個体/患者に使用するための本方法は、予防的ならびに治療的使用を企図している。治療のための典型的被験体には、本明細書で考察した状態および/または疾患に罹患しやすい、罹患している、または罹患していたヒトが含まれる。
【0032】
用語「薬学的に受容可能なキャリア、賦形剤、またはビヒクル」は、有効成分の有効性または活性を妨害しない、そしてそれが投与される宿主にとって毒性ではない媒質を意味する。キャリア、賦形剤、またはビヒクルには、希釈剤、結合剤、接着剤、潤滑剤、崩壊剤、バルク剤、湿潤化剤もしくは乳化剤、pH緩衝剤、ならびに特定の組成物を調製するために必要になることのある吸収剤などの様々な物質が含まれる。活性物質のためのそのような媒質および物質の使用は、当技術分野においてよく知られている。本発明の所定の態様では、キャリア、賦形剤、またはビヒクルは、GLP−1アゴニストを安定化させるために選択される。
【0033】
「薬学的に受容可能な塩」には、本発明において使用するのに適する化合物中に存在する可能性がある酸性基または塩基性基の塩が含まれる。薬学的に受容可能な塩の例には、カルボン酸基のナトリウム、カルシウムおよびカリウム塩ならびにアミノ基の塩酸塩が含まれる。その他の薬学的に受容可能なアミノ基の塩には、臭化水素酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、リン酸塩、リン酸水素塩、リン酸二水素塩、酢酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、乳酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩(メシレート)およびp−トルエンスルホン酸塩(トシレート)が含まれる。
【0034】
用語「予防および/または治療する工程」、「予防および/または治療」、または「予防および/または介入」は、ある状態および/または疾患が開始する前または後のどちらかにおける被験体への生物活性物質の投与を意味する。治療は、短期的または長期的いずれかの方法で実施できる。特別には、予防には、本明細書で考察した状態および/または疾患を発症するリスク状態にある患者の、該状態および/または疾患の臨床的開始前の管理およびケアが含まれる。治療または介入は、診断時以降の被験体の管理およびケアを意味する。予防、治療、または介入の目的は、該状態および/または疾患と闘うことであり、症状または合併症の開始を予防または遅延させるための活性化合物の投与、または症状もしくは合併症の緩和、または該状態および/または疾患を排除する、もしくは部分的に排除することを含んでいる。
【0035】
「有益な効果」は、GLP−1アゴニストおよびガストリン化合物の組み合わせ、またはその組成物もしくは結合体の、該化合物のいずれか一方単独の作用より大きい作用を意味する。有益な効果には、好都合の薬物学的および/または治療的作用、ならびに改良された薬物動態特性および生物活性が含まれる。有益な効果は、相加作用または相乗作用であってよい。本発明の好ましい実施形態では、有益な効果には、膵島炎症の減少もしくは欠如、疾患進行の低下、生存率の上昇、または状態および/または疾患の排除もしくは部分的排除作用が含まれるがそれらに限定されない。特に好ましい実施形態では、有益な効果は「持続性の有益な効果」であるが、このとき有益な効果は治療終結後の長期間にわたり持続する。1つの実施形態では、上記の作用の1つまたは複数は、治療終結後に長期間にわたり持続する。有益な効果は、治療後に少なくとも約2、4、6、8、10、2〜4週間、2〜6週間、2〜8週間、2〜12週間、2〜24週間、2週間〜12カ月間、および2週間〜18カ月間持続する可能性がある。有益な効果が持続する期間は、治療の期間および時機と相関することがある。被験体は、約2〜8週間、2〜12週間、2〜16週間、2週間〜6カ月間、2週間〜12カ月間にわたって持続的に、または定期的に治療することができる。持続性の有益な効果は、C−ペプチド産生の上昇、膵インスリン産生の上昇、および/または治療後の長期間にわたるほぼ正常もしくは低血糖値のうちの1つまたは複数として発現することがある。
【0036】
有益な効果は、化合物各々の作用に比較して2つの化合物の作用についての統計解析による統計的有意な作用であってよい。2つの化合物についての各化合物単独と比較した「統計的有意な」または「統計的に相違する」作用もしくはレベルは、標準より高い、または低いレベルを表すことがある。本発明の実施形態では、差は、各化合物単独を用いて入手される作用と比較して1.5、2、3、4、5、もしくは6倍以上(分の1以下)であることがある。
【0037】
GLP−1アゴニストおよびガストリン化合物の「相加作用」は、2つの別個の化合物の作用の和に等しい作用を意味する。
【0038】
GLP−1アゴニストおよびガストリン化合物の「相乗作用」は、2つの別個の化合物の作用の和の結果として生じる相加作用より大きい作用を意味する。
【0039】
「併用療法」、「併用治療」、および「組み合わせて投与する」は、本明細書では互換的に使用し、有効成分が治療されている患者へ同時に投与されることを意味する。組み合わせて投与する場合は、各成分は同時に、または相違する時点に任意の順序で連続的に投与されてよい。このため、各成分は個別に、しかし所望の作用、特に有益な効果、相加作用、または相乗作用を提供するために十分に近い時間に投与されてよい。第1化合物は、第2化合物を用いた治療を追加して含むレジメンで投与されてよい。所定の実施形態では、この用語は、各々がこれらの化合物の一方を含有する2種の薬剤の個別投与ならびに2種の化合物が1つの調製物中に結合されているかどうか、またはそれらが2つの別個の調製物であるかどうかにかかわらず、同時投与を含む、1年以内のGLP−1アゴニストおよびガストリン化合物の患者への投与を意味する。
【0040】
「医薬」は、患者へ医薬上活性な化合物(例えば、GLP−1アゴニストおよびガストリン化合物)を投与するのに適している薬学的組成物を意味する。
【0041】
「治療有効量」は、1つまたは複数の望ましい有益な効果、好ましくは1つまたは複数の持続性の有益な効果を導く、本発明の活性化合物(例、GLP−1アゴニストおよびガストリン化合物)、組成物または結合体の量または用量を意味する。「治療有効量」は、治療を実施しない場合に比較して有効である被験体の予防および/または治療のために十分な用量を提供できる。
【0042】
「相乗的有効量」は、相乗作用、特に相乗的に有益な効果を提供する、本発明の活性化合物(例、GLP−1アゴニストおよびガストリン化合物)、組成物または結合体の用量に関する。
【0043】
「最適量より少ない用量」または「最適量より少ない服用量」は、単剤療法において使用する場合のその化合物にとっての最適用量または服用量より少ない活性化合物の用量または服用量を意味する。
【0044】
用語「結び付けた」、「結合した」、「相互作用する」、「相互作用」または「相互作用している」は、分子間の何らかの物理的関連を意味する。これらの用語は、例えば、静電性、疎水性、イオン性、水素結合相互作用、または共有的相互作用に起因する2つの分子間の好ましくは安定性関連を意味する。所定の相互作用もしくは関連分子は、それらの1つまたは複数が活性化された後にしか相互作用しない。
【0045】
本発明の状況では、「GLP−1アゴニスト」は、ヒトGLP−1レセプターを完全に、または部分的に活性化する、ペプチドおよび非ペプチド化合物を含む、任意の化合物を意味すると理解されている。好ましい実施形態では、「GLP−1アゴニスト」は、好ましくは当技術分野において知られている方法によって測定した親和性定数(K)または例えば100nM未満などの1μM未満の力価(EC50)を備える(例えば、国際公開公報第98/08871号を参照)GLP−1レセプターへ結合し、インスリン分泌促進活性を示す任意のペプチドおよび非ペプチド小分子であるが、このときインスリン分泌促進活性は当業者には知られているインビボまたはインビトロアッセイで測定できる。例えば、GLP−1アゴニストを動物へ投与し、インスリン濃度を経時的に測定することができる。
【0046】
1つの実施形態では、GLP−1アゴニストは、GLP−1(7−36)−アミド、GLP−1(7−37)、GLP−1(7−36)−アミドアナログ、GLP−1(7−37)アナログ、またはこれらのいずれかの誘導体からなる群から選択される。
【0047】
本出願では、「アナログ」という名称は、親ペプチドの1つまたは複数のアミノ酸残基がまた別のアミノ酸残基と置換されている、および/または親ペプチドの1つまたは複数のアミノ酸残基が欠失している、および/または1つまたは複数のアミノ酸残基が親ペプチドへ付加されているペプチドを表すために使用する。そのような付加は、親ペプチドのN末端もしくはC末端のいずれか、または両方でおこることがある。典型的には、「アナログ」は、6個以下のアミノ酸が置換および/または付加されている、および/または親ペプチドから欠失しているペプチド、より好ましくは3個以下のアミノ酸が置換および/または付加されている、および/または親ペプチドから欠失しているペプチド、および最も好ましくは1個のアミノ酸が置換および/または付加されている、および/または親ペプチドから欠失しているペプチドである。
【0048】
本特許出願では、「誘導体」は、例えばエステル、アルキルもしくは親油性官能基をペプチドもしくはそのアナログの1つまたは複数のアミノ酸残基上に導入することによって化学修飾されているペプチドもしくはそのアナログを表すために使用する。
【0049】
GLP−1アゴニストを同定するための方法は、国際公開公報第93/19175号(Novo Nordisk A/S社)に記載されており、本発明によって使用できる適切なGLP−1アナログおよび誘導体の例には、国際公開公報第99/43705号(Novo Nordisk A/S社)、国際公開公報第99/43706号(Novo Nordisk A/S社)、国際公開公報第99/43707号(Novo Nordisk A/S社)、国際公開公報第98/08871号(Novo Nordisk A/S社)、国際公開公報第99/43708号(Novo Nordisk A/S社)、国際公開公報第99/43341号(Novo Nordisk A/S社)、国際公開公報第87/06941号(The General Hospital Corporation)、国際公開公報第90/11296号(The General Hospital Corporation)、国際公開公報第91/11457号(Buckleyら)、国際公開公報第98/43658号(Eli Lilly社)、欧州特許出願第0708179号(Eli Lilly社)、欧州特許出願第0699686号(Eli Lilly社)、国際公開公報第01/98331号(Eli Lilly社)の中で挙げられたものが含まれる。
【0050】
1つの実施形態では、GLP−1アゴニストは、親油性置換基を含む、GLP−1(7−36)−アミド、GLP−1(7−37)、GLP−1(7−36)−アミドアナログまたはGLP−1(7−37)アナログの誘導体である。
【0051】
本発明のこの実施形態では、GLP−1誘導体は、好ましくは親ペプチドへ付着した3つの親油性置換基、より好ましくは2つの親油性置換基、および最も好ましくは1つの親油性置換基(すなわち、GLP−1(7−36)−アミド、GLP−1(7−37)、GLP−1(7−36)−アミドアナログまたはGLP−1(7−37)アナログ)を有するが、このとき各親油性置換基は、好ましくは4〜40個の炭素原子、より好ましくは8〜30個の炭素原子、よりいっそう好ましくは8〜25個の炭素原子、さらにいっそう好ましくは12〜25個の炭素原子、および最も好ましくは14〜18個の炭素原子を有する。
【0052】
1つの実施形態では、親油性置換基は、部分的または完全に水素化されたシクロペンタノフェナトレン骨格を含む。
【0053】
また別の実施形態では、親油性置換基は直鎖状または分枝状アルキル基である。
【0054】
さらにまた別の実施形態では、親油性置換基は直鎖状または分枝状脂肪酸のアシル基である。好ましくは、親油性置換基は、式CH(CHCO−(式中、nは4〜38の整数、好ましくは12〜38の整数である)を有するアシル基であり、最も好ましくはCH(CH12CO−、CH(CH14CO−、CH(CH16CO−、CH(CH18CO−、CH(CH20CO−およびCH(CH22CO−である。より好ましい実施形態では、親油性置換基はテトラデカノイルである。最も好ましい実施形態では、親油性置換基はヘキサデカノイルである。
【0055】
本発明のさらに別の実施形態では、親油性置換基は、カルボン酸基などの負荷電している基である。例えば、親油性置換基は、直鎖状または分枝状アルカンである式HOOC(CHCO−(式中、mは4〜38の整数、好ましくは12〜38の整数である)のa,w−ジカルボン酸のアシル基であってよく、最も好ましくはHOOC(CH14CO−、HOOC(CH16CO−、HOOC(CH18CO−、HOOC(CH20CO−もしくはHOOC(CH22CO−である。
【0056】
本発明のGLP−1誘導体では、親油性置換基は、親GLP−1ペプチドの以下のアミノ酸の官能基の1つへ付着させることのできる官能基を含有している:
(a)N末端アミノ酸のα−炭素へ付着させたアミノ基、
(b)C末端アミノ酸のα−炭素へ付着させたカルボキシル基、
(c)任意のLys残基のε−アミノ基、
(d)任意のAspおよびGlu残基のR基のカルボキシル基、
(e)任意のTyr、SerおよびThr残基のR基のヒドロキシル基、
(f)任意のTrp、Asn、Gln、Arg、およびHis残基のR基のアミノ基、または
(g)任意のCys残基のR基のチオール基。
【0057】
1つの実施形態では、親油性置換基が任意のAspおよびGlu残基のR基のカルボキシル基へ付着させられている。
【0058】
また別の実施形態では、親油性置換基は、C末端アミノ酸のα−炭素へ付着させたカルボキシル基へ付着させられている。
【0059】
最も好ましい実施形態では、親油性置換基は任意のLys残基のε−アミノ基へ付着させられている。
【0060】
本発明の好ましい実施形態では、親油性置換基は、スペーサーによって親GLP−1ペプチドへ付着させられている。スペーサーは、1つは親油性置換基の官能基へ付着させるため、もう1つは親GLP−1ペプチドの官能基へ付着させるための、少なくとも2つの官能基を含有していなければならない。
【0061】
1つの実施形態では、スペーサーはCysまたはMetを除くアミノ酸残基、またはGly−Lysなどのジペプチドである。本発明のためには、「Gly−Lysなどのジペプチド」というフレーズは、CysまたはMet以外の2つのアミノ酸の任意の組み合わせ、好ましくはC末端アミノ酸残基がLys、HisもしくはTrp、好ましくはLysであり、N末端アミノ酸残基がAla、Arg、Asp、Asn、Gly、Glu、Gln、Ile、Leu、Val、Phe、Pro、Ser、Tyr、Thr、Lys、HisおよびTrpであるジペプチドを意味する。好ましくは、親ペプチドのアミノ基は、アミノ酸残基もしくはジペプチドスペーサーのカルボキシル基とアミド結合を形成し、そしてアミノ酸残基もしくはジペプチドスペーサーのアミノ基は親油性置換基のカルボキシル基とアミド結合を形成する。
【0062】
好ましいスペーサーは、リシル、グルタミル、アスパラギル、グリシル、β−アラニルおよびγ−アミノブタノイルであり、それらの構成成分各々は個別実施形態である。最も好ましいスペーサーは、グルタミルおよびβ−アラニルである。スペーサーがLys、GluまたはAspである場合は、それらのカルボキシル基はアミノ酸残基のアミノ基とアミド結合を形成し、それらのアミノ基は親油性置換基のカルボキシル基とアミド結合を形成することができる。Lysがスペーサーとして使用された場合、一部の例ではLysのe−アミノ基と親油性置換基との間にまた別のスペーサーを挿入することができる。1つの実施形態では、そのようなまた別のスペーサーは、Lysのe−アミノ基および親油性置換基内に存在するアミノ基とアミド結合を形成するコハク酸である。また別の実施形態では、そのようなまた別のスペーサーはLysのe−アミノ基とのアミド結合および親油性置換基内に存在するカルボキシル基とまた別のアミド結合を形成するGluまたはAspであるので、つまり親油性置換基はNアシル化リシン残基である。
【0063】
また別の実施形態では、スペーサーは非分枝状アルカンである、1〜7個のメチレン基を有するa,w−ジカルボン酸基であり、このスペーサーは親ペプチドのアミノ基および親油性置換基のアミノ基との間で架橋を形成する。好ましくは、スペーサーはコハク酸である。
【0064】
また別の実施形態では、付着させたスペーサーを備える親油性置換基は、式CH(CHNH−CO(CHCO−(式中、pは8〜33、好ましくは12〜28の整数であり、およびqは1〜6の整数、好ましくは2である)の基である。
【0065】
また別の実施形態では、付着させたスペーサーを備える親油性置換基は、式CH(CHCO−NHCH(COOH)(CHCO−(式中、rは4〜24、好ましくは10〜24の整数である)の基である。
【0066】
また別の実施形態では、付着させたスペーサーを備える親油性置換基は、式CH(CHCO−NHCH((CHCOOH)CO−(式中、sは4〜24、好ましくは10〜24の整数である)の基である。
【0067】
また別の実施形態では、親油性置換基は式COOH(CHCO−(式中、tは6〜24の整数である)の基である。
【0068】
また別の実施形態では、付着させたスペーサーを備える親油性置換基は、式−NHCH(COOH)(CHNH−CO(CHCH(式中、uは8〜18の整数である)の基である。
【0069】
また別の実施形態では、付着させたスペーサーを備える親油性置換基は、式CH(CHCO−NH−(CH−CO(式中、vは4〜24の整数であり、およびzは1〜6の整数である)の基である。
【0070】
また別の実施形態では、付着させたスペーサーを備える親油性置換基は、−NHCH(COOH)(CHNH−COCH((CHCOOH)NH−CO(CHCH(式中、wは10〜16の整数である)の基である。
【0071】
また別の実施形態では、付着させたスペーサーを備える親油性置換基は、−NHCH(COOH)(CHNH−CO(CHCH(COOH)NHCO(CHCH(式中、xは0または1〜22、好ましくは10〜16の整数である)の基である。
【0072】
さらにまた別の実施形態では、GLP−1アゴニストはArg34,Lys26(Nε−(γ−Glu(Nα−ヘキサデカノイル)))−GLP−1(7−37)である。
【0073】
さらにまた別の実施形態では、GLP−1アゴニストは、
【0074】
【化1】

からなる群から選択される。
【0075】
さらにまた別の実施形態では、GLP−1アゴニストは、
【0076】
【化2】

からなる群から選択される。
【0077】
さらにまた別の実施形態では、GLP−1アゴニストは、
【0078】
【化3】

からなる群から選択される。
【0079】
さらにまた別の実施形態では、GLP−1アゴニストは安定性GLP−1アナログ/誘導体である。本出願を通して、「安定性GLP−1アナログ/誘導体」は、以下で記載する方法によって決定されるような、ヒトにおける少なくとも10時間のインビボ血漿排泄半減期を示すGLP−1アナログまたはGLP−1アナログの誘導体を意味する。安定性GLP−1アナログ/誘導体の例は、国際公開公報第98/08871号および国際公開公報第99/43706号に見いだすことができる。ヒトにおける化合物の血漿排泄半減期の決定方法は以下のとおりである:化合物を等張性バッファー(pH7.4)であるPBSまたは任意の他の適切なバッファー中に溶解させる。用量を末梢に、好ましくは腹部または大腿上部へ注射する。活性化合物を決定するための血液サンプルを頻回な間隔で、そして最終排泄部分をカバーするために十分な期間にわたり採取する(例えば、投与前、投与1、2、3、4、5、6、7、8、10、12、24時間後(第2日)、36時間後(第2日)、48時間後(第3日)、60時間後(第3日)、72時間後(第4日)および84時間後(第4日))。活性化合物の濃度の決定は、Wilken et al., Diabetologia 43(51):A143, 2000に記載されたとおりに実施する。誘導薬物動態パラメーターは、市販されているソフトウェアWinNonlinバージョン2.1(Pharsight社、米国ノースカロライナ州カリー)を用いて、ノンコンパートメント法を使用して各個別被験体について濃度−時間データから計算する。末端排泄速度定数は、濃度−時間曲線の最終対数−線形部分での対数線形回帰によって推定し、排泄半減期を計算するために使用する。
【0080】
安定性GLP−1アナログおよび誘導体は、国際公開公報第98/08871号(親油性置換基を備えるアナログ)および国際公開公報第02/46227号(血清アルブミンまたはIgのFc部分へ融合したアナログ)に開示されている。
【0081】
また別の実施形態では、GLP−1アゴニストは、上述したようにヒトにおいて少なくとも10時間の半減期を有するように調製される。これは、おそらく当技術分野において知られている徐放性調製物によって入手できよう。
【0082】
さらにまた別の実施形態では、GLP−1アゴニストは、エキセンディン−4もしくはエキセンディン−3、エキセンディン−4もしくはエキセンディン−3のアナログまたはこれらのいずれかの誘導体である。
【0083】
本発明の範囲内に含まれるエキセンディンならびにそのアナログ、誘導体、およびフラグメントの例は、国際公開公報第97/46584号、米国特許第5,424,286号および国際公開公報第01/04156号に開示されている。米国特許第5,424,286号は、エキセンディンポリペプチドを用いてインスリン放出を刺激するための方法を記載している。開示されたエキセンディンポリペプチドには、
【0084】
【化4】

;(式中、X=PまたはY)、および
【0085】
【化5】

;(式中、X1X2=SD(エキセンディン−3)もしくはGE(エキセンディン−4))が含まれる)。国際公開公報第97/46584号は、エキセンディンペプチドの短縮型を記載している。開示されたペプチドは、インスリンの分泌および生合成を増加させるが、グルカゴンの分泌および生合成は減少させる。国際公開公報第01/04156号はエキセンディン−4アナログおよび誘導体ならびにこれらの分子の調製について記載している。血清アルブミンまたはIgのFc部分への融合によって安定化させられたエキセンディン−4アナログについては国際公開公報第02/46227号に開示されている。
【0086】
1つの実施形態では、エキセンディン−4アナログは
【0087】
【化6】

である。
【0088】
さらにまた別の実施形態では、GLP−1アゴニストは安定性エキセンディン−4アナログ/誘導体である。本明細書で使用する用語「安定性エキセンディン−4アナログ/誘導体」は、「安定性GLP−1アナログ/誘導体」について上述した方法によって決定されるような、ヒトにおける少なくとも10時間のインビボ血漿排泄半減期を示すエキセンディン−4(1−39)アナログまたはエキセンディン−4(1−39)アナログの誘導体を意味する。
【0089】
さらにまた別の実施形態では、GLP−1アゴニストは、Aib8,35GLP−1(7−36)−アミド(Aib=a−アミノイソブチル酸)である。
【0090】
さらにまた別の実施形態では、GLP−1アゴニストはSer38、Lys39,40,41,42,43,44−エキセンディン−4(1−39)−アミドである。
【0091】
さらにまた別の実施形態では、GLP−1アゴニストは国際公開公報第00/42026号に開示された非ペプチド小分子GLP−1アゴニストから選択される。
【0092】
GLP−1アゴニストのアミノ酸部分は、固相合成法、自然源からのGLP−1アゴニストの精製、組み換えテクノロジー、またはこれらの方法の組み合わせなどの当技術分野において知られている様々な方法によって調製できる。例えば、米国特許第5,188,666号、第5,120,712号、第5,523,549号、第5,512,549号、第5,977,071号、第6,191,102号、Dugas and Penney 1981, Merrifield, 1962, Stewart and Young 1969およびその中で言及された参考文献を参照されたい。GLP−1アゴニスト誘導体は、適切なバックボーンの適切な誘導体化によって、例えばペプチド合成およびペプチド化学の分野において知られている方法を用いる組み換えDNAテクノロジーまたはペプチド合成法(例、メリフィールド型固相合成法)によって生成できる。
【0093】
「ガストリン化合物」は、ガストリン/CCKレセプターと完全または部分的に結び付く、および/または活性化する、ペプチドおよび非ペプチド化合物を含む任意の化合物を意味する。本発明の態様では、当技術分野において知られている方法によって測定した場合にガストリン/CCKレセプターで例えば約〜0.7nMのIC50のような適切なIC50を有するガストリン化合物が選択される(例えば、インビトロ細胞増殖アッセイについて記載しているSingh et al(1995)J. Biol. Chem. 270:8429−8438,およびKopin et al(1995)J. Biol. Chem. 270:5019−5023、およびレセプター結合アッセイについて記載しているSingh et al(1995)J. Biol. Chem. 270:8429−8438,およびKopin et al(1995)J. Biol. Chem. 270:5019−5023を参照されたい)。ガストリン化合物は、さらにまた本明細書で考察するような活性、半減期などの他の基準に基づいて選択することもできる。
【0094】
「ガストリン化合物」には、非限定的に、ガストリン−71、ガストリン−52、ガストリン−34(ビッグガストリン)、ガストリン−17(リトルガストリン)、ガストリン−14、およびガストリン−8(ミニガストリン)、ペンタガストリン、テトラガストリン、ならびにそれらのフラグメント、アナログ、および誘導体などの様々な形態のガストリンが含まれる。ビッグガストリン−34(Bonato et al, 1986, Life Science 39:959)およびリトルガストリン−17(Bentley et al(1966)Nature 209:583)を含むガストリンの配列は当技術分野において知られており、一部は配列番号11〜18に示した。特別には、ガストリンの配列には、配列番号15のガストリン−71、配列番号16のガストリン−52、配列番号11もしくは12のガストリン−34(ビッグガストリン)、配列番号13もしくは14のガストリン−17(リトルガストリン)、配列番号17のガストリン−14、および配列番号18もしくは19のガストリン−6が含まれる。ガストリン−34は、本質的にはガストリン−17のN末端でのアミノ酸配列の伸長である。ビッグガストリンは、インビボで開裂されるとガストリン−17を放出する。ガストリンのN末端のGlpは、グルタミン酸塩の天然環化形であるピログルタミン酸塩である。ピログルタミン酸塩を有するガストリンの末端へシステインまたはリシンが付加されている種々の実施形態では、ピログルタミン酸塩はグルタミン酸塩と置換されている、またはピログルタミン酸塩が欠失している。本発明では、本明細書に記載した配列番号6〜9に示したように、第15位でメチオニンまたはロイシンが存在するガストリン−34またはガストリン−17を使用できる。
【0095】
本発明において使用できるガストリン化合物の例には、米国特許第6,288,301号に開示された化合物が含まれる。本発明の一部の適用では、A71378(Lin et al., Am. J. Physiol. 258(4 Pt 1):G648, 1990)などのガストリンレセプターのペプチドまたは非ペプチドアゴニストまたは部分アゴニストであるガストリン化合物を選択できる。本発明の一部の適用では、CCK 58、CCK 33、CCK 22、CCK 12およびCCK 8などのコレシストキニン(CCK)を含むがそれらに限定されないガストリン/CCKレセプターであるガストリン化合物が選択されてよい。
【0096】
所定の態様では、ガストリン化合物は、例えば60%の配列同一性、または70%の配列同一性、または80%の配列同一性を共有するような、内因性哺乳動物ガストリンとアミノ酸配列を共有する活性アナログ、フラグメントまたはその他の修飾形であってよい。そのような化合物には、内因性ガストリン、コレシストキニンまたは組織貯蔵部位からの同様の活性ペプチドの分泌を増加させる物質もまた含まれる。これらの例は、ガストリン放出ペプチド、胃酸分泌を阻害するオメプラゾール、およびCCK刺激を増加させるダイズトリプシン阻害因子である。
【0097】
「ガストリン化合物」には、ガストリン−71[配列番号15]、ガストリン−52[配列番号16]、ガストリン−34(ビッグガストリン)[配列番号11もしくは12]、ガストリン−17(リトルガストリン)[配列番号13もしくは14]、ガストリン−14[配列番号17]、ガストリン−8、ガストリン−6[配列番号18]、ペンタガストリン、およびテトラガストリンの修飾形を含むがそれらに限定されないガストリンの修飾形が含まれる。修飾されたガストリンは、好ましくはTrpMetAspPhe−NH[配列番号26]またはTrpLeuAspPhe−NH[配列番号27]を含む。
【0098】
本発明の態様では、修飾されたガストリンは少なくとも配列番号11もしくは12のアミノ酸1〜34、18〜34、もしくは29〜34または配列番号13もしくは14のアミノ酸1〜17、2〜17、12〜17、もしくは14〜17を含む。
【0099】
本発明において使用するための修飾されたガストリン化合物は、参照して本明細書に全体として組み込まれるPCT/CA03/01778、米国特許出願第10/719,450号、および米国特許出願第60/519,933号に記載された修飾されたガストリン化合物を含む。
【0100】
特別には、修飾されたガストリンは、ガストリンの(C末端から)最小6アミノ酸の配列、特に配列番号11もしくは12のアミノ酸残基1〜34、18〜34、もしくは29〜34、または配列番号13もしくは14のアミノ酸残基1〜17、2〜17、12〜17、もしくは14〜17を含み、さらに付加反応を受けることのできる反応性基を含むガストリン誘導体またはアナログであってよい。反応性基の例には、非限定的に、チオール基、α−アミノ基、ε−アミノ基、カルボキシル基または芳香環基が含まれる。反応性基は、一般に架橋剤および/またはスペーサー領域を介して直接的または間接的に、ガストリン配列をキャリアへ結合させることができる。
【0101】
反応性基は、例えばシステインまたはリシンを付加することによって、反応性基を含むアミノ酸を付加する、または置換することによって導入できる。このため、修飾されたガストリンは、少なくとも1つの反応性アミノ酸(例、システインまたはリシン)が付加または置換されているガストリン配列(例、ガストリン−34またはガストリン−17)を含んでいてよい。反応性アミノ酸の付加は、末端領域、特にN末端領域であってよい。
【0102】
修飾されたガストリンは、さらにまた任意でスペーサーを含んでいてよい。スペーサーは、反応性基、例えば反応性基を含むアミノ酸と相互作用することができる。スペーサーは、1つまたは複数のアミノ酸、ペプチド、ペプチドミメティック、または小有機分子であってよい。スペーサーは、少なくとも1つのアミノ酸、好ましくは少なくとも2つ、3つ、4つ、または5つのアミノ酸を含んでいてよく、所定の実施形態では、非限定的にアラニンまたはグリシンを含む数個のアミノ酸の配列である。スペーサーは、代替アミノ酸(例、グリシンおよび/またはアラニン)、非代替アミノ酸、ランダム配列または特定配列を含んでいてよい。例えば、スペーサーは、ガストリン配列のアミノ酸の一部として合成できる、またはガストリン配列のアミノ酸へ化学的に付着させられてもよい。
【0103】
修飾されたガストリンは、さらにまた任意で架橋剤を含んでいてよい。架橋剤は、ガストリン、スペーサーおよび/または反応性基と直接的または間接的に相互作用するためにホモ二官能またはヘテロ二官能部分を含んでいてよい。架橋剤は、ガストリン配列もしくはスペーサーと相互作用することができる、または修飾されたガストリンの末端(特に、N末端)で反応性基へ付加されてもよい。
【0104】
架橋剤は、直接的またはスペーサーを介してガストリン配列をキャリアと結合させることのできる任意の物質であってよい。ホモ二官能性架橋剤の例には、非限定的に、ビスイミデート(例、アセトイミデートメチル塩酸塩)、二官能性ハロゲン化アリール(例、1,5−ジクロロ−2,4−ジニトロベンゼン)、二官能性アシル化剤(例、ジイソシアネート)、二官能性ハロゲン化スルホニル(例、フェノール−2,4−ジスルホニル−クロリド)、二官能性アシルアジド(例、タートリルジアジド)、ジアルデヒド(例、グルタルアルデヒド)、およびジケトン(例、2,5−ヘキサンジオン)などのアミノ基特異的ホモ二官能性架橋剤が含まれる。ヘテロ二官能性架橋剤の例には、アミノ基およびスルフヒドリル基特異的二官能性試薬(例、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオプロピオネート)、カルボキシル基およびスルフヒドリル基もしくはアミノ基に特異的な二官能性試薬(例、p−ニトロフェニルジアゾアセテート)、ならびにカルボニル基およびスルフヒドリル基特異的二官能性試薬(例、1−(アミノオキシ)−4−[3−ニトロ−2−ピリジル)ジチオ)]ブタン)が含まれる。
【0105】
修飾されたガストリンは、ポリマーであってよいキャリアを任意で含むことができる。キャリアは、アミノ酸のポリマー(タンパク質)、糖(多糖)、ヌクレオシド、合成ポリマーおよびそれらの混合物であってよい。タンパク質キャリアは、循環系中で見いだされるタンパク質であってよい。循環系、特にヒト循環系中で見いだされるタンパク質キャリアの例には、非限定的に、血清などの血漿成分、アルブミン(特に、ヒト血清アルブミン)などの精製された血清タンパク質、トランスフェリン、または免疫グロブリン、グリコホリンAおよびAE−1などの赤血球タンパク質、レクチンなどの糖結合タンパク質、不活化酵素リン酸塩および硫酸塩結合タンパク質、ならびに脂質結合タンパク質が含まれる。その他の適切なポリマーキャリアの例には、非限定的に、セルロースおよびその誘導体、デンプンおよびその誘導体、ヘパリンおよびその誘導体、ならびにポリエチレングリコール(PEG)およびデキストランなどの合成ポリマーおよびその誘導体が含まれる。キャリアは、ガストリンまたはスペーサーへ反応性基によって付着させられてよく、またはキャリア、ガストリン、および/またはスペーサーへ導入されてもよい。例えば、キャリアは、存在する可能性がある、またはガストリンまたはスペーサーの化学修飾によって付加されてよいガストリンまたはスペーサー上の反応性基(例えば、チオール基、α−アミノ基およびε−アミノ基、カルボキシル基または芳香族基など)へ共有結合させることができる。
【0106】
本発明の所定の態様では、修飾されたガストリンは、配列番号11、12、13、14、17、または18のガストリンおよびキャリアを含んでいてよい。
【0107】
1群の修飾されたガストリン化合物には、アミノ末端からZ−Y−X−AA−AA−AA−AA−AA−AA(式中、AAはTyrまたはPheであり、AAはGly、Ala、またはSerであり、AAはTrp、Val、またはIleであり、AAはMetまたはLeuであり、AAはAspまたはGluであり、そしてAAはPheまたはTyrであり、さらにAAは任意でアミド化されている;Zはキャリア、特にポリマーであり、該ポリマーがタンパク質である場合はZはアミノ酸配列である;Yはセリンおよびアラニンを含むがそれらに限定されない小さな中性アミノ酸のm個のアミノ酸残基を含む任意のスペーサー領域であり、そしてXは、ガストリン化合物がガストリンCCKレセプターへ結合することを前提とした、配列番号11もしくは12の残基1〜28(=n)または配列番号13もしくは14の残基1〜11の任意の連続部分である)の配列を含むアミノ酸配列を有する化合物が含まれる。一般に、mは0〜約20残基である。1つの態様では、Zはタンパク質、特に循環系のタンパク質、より特別には血清タンパク質、さらにより特別にはアルブミン、最も特別にはヒト血清アルブミンである。
【0108】
実施形態では、Xは配列番号11の18位から28位までの1つまたは複数のアミノ酸残基である。このため、ガストリン化合物はXが存在することによって18〜28位、19〜28位、20〜28位、21〜28位などの任意のガストリン配列を有していてよい。ガストリン化合物は、任意で長さがmのアミノ酸スペーサー(Y)を含有しており、mは0〜約20残基である。
【0109】
実施形態では、Xは配列番号13もしくは14の1〜11位または2〜11位までの1つまたは複数のアミノ酸残基である。このため、ガストリン化合物はXが存在することによって2〜11位、3〜11位、4〜11位、5〜11位などの任意のガストリン配列を有していてよい。ガストリン化合物は、任意で長さがmのアミノ酸スペーサー(Y)を含有しており、mは0〜約20残基である。
【0110】
ガストリン化合物は、式X−AA−AA−AA−AA−AA−AA(式中、スペーサー(Y)は存在せず、mは0であり、さらにキャリアZとの相互作用または結合のために二官能性架橋剤をさらに含むが、このときZはデキストランまたはPEGなどの非タンパク質性ポリマーをさらに含む)の修飾されたガストリン化合物を含んでいる。
【0111】
特に本明細書で記載する修飾されたガストリン化合物は、アミノ末端システインまたはリシン残基をさらに含んでいてよい。
【0112】
本明細書で記載する修飾されたガストリン化合物の一部の実施形態では、ガストリン成分は少なくとも配列番号11もしくは12のアミノ酸残基29〜34を含有しており、ポリマー、脂質または炭水化物と結び付いている。ポリマーは、合成または天然型ポリマーであってよい。用語「ポリマー」にはアミノ酸のタンパク質ポリマーが含まれ、合成ポリマーには限定されない。ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)またはデキストランであってよい。修飾されたガストリン化合物は、配列番号11もしくは12もしくは「ビッグ」ガストリン−34に基づいていてよく、各々32位でメチオニンまたはロイシンである残基を有していてよい。
【0113】
また別の好ましいガストリン化合物は、構造式C−Y−X(式中、CはCysまたはLysであり、Yは小さな中性アミノ酸のm個のアミノ酸残基を含む任意のスペーサー領域であり、そしてXは、少なくともガストリン−17(配列番号13もしくは14)の12〜17位または少なくともガストリン−34(配列番号11もしくは12)の29〜34位を含む少なくとも6個のアミノ酸残基である)を含んでいる。この修飾されたガストリン化合物は、架橋剤の一方の反応性部分がCへ共有結合し、他方の反応性部分がポリマーまたはタンパク質へ共有結合する二官能性架橋剤をさらに含んでいてよい。
【0114】
本発明の特定の態様では、修飾されたガストリン化合物中のAA−AA−AA−AA−AA−AAは、Tyr−Gly−Trp−Met−Asp−Phe[配列番号23]またはTyr−Gly−Trp−Leu−Asp−Phe[配列番号24]である。
【0115】
ガストリン化合物は、タンパク質の化学においてよく知られている、固相合成法(Merrifield, 1964, J. Am. Chem. Assoc. 85:2149−2154)または均質溶液中での合成法(Houbenweyl, 1987, Methods of Organic Chemistry, ed. E. Wansch, Vol. 15 I and II, Thieme, Stuttgart)などの技術を用いた化学合成法によって合成できる。合成は、手動方法を用いて、または自動化によって実施できる。自動合成法は、例えばApplied Biosystems 431Aペプチド合成装置(Perkin Elmer社)を用いて実施できる。ガストリン化合物は、市販入手源から入手することもできる。例えば、15位にメチオニンまたはロイシンを備える合成ヒトガストリン−17は、Bachem AG社(スイス国ブーベンドルフ)およびResearch Plus社(米国ニュージャージー州)から入手できる。
【0116】
「ガストリン/CCKレセプター」は、非限定的にCCK−8、脱硫CCK−8、CCK−33、CCK−4を含むコレシストキニン(CCK)、または非限定的に脱硫もしくは硫化ガストリン−17を含むガストリン、もしくはペンタガストリン、または他のCCKもしくはガストリンアナログもしくはファミリーメンバーに特徴的な結合親和性を示すGタンパク質結合レセプターファミリーのメンバーである。CCK/ガストリンレセプタータンパク質の例は、CCKおよびCCK/ガストリンレセプター、特にCCK/ガストリンレセプターである。
【0117】
「状態および/または疾患」は、それに対してGLP−1アゴニストまたはガストリン化合物の一方または両方が有益な効果または治療作用を提供する1つまたは複数の病理的症状または症候群を意味する。状態および/または疾患は、血糖値の減少、胃酸分泌の阻害、β細胞のアポトーシスの阻害、β細胞の増殖または分化の刺激、および体重の減少を必要とすることがある。状態および/または疾患の例には、異脂肪血症、高血糖症、重症低血糖症性エピソード、脳卒中、左室肥大症、不整脈、菌血症、敗血症、過敏成長症候群、機能性消化不良、糖尿病、術後の異化作用の変化、ストレス性高血糖症、呼吸窮迫症候群、胃潰瘍、心筋梗塞、グルコース寛容減損、高血圧、慢性心不全、体液うっ滞状態、代謝症候群および関連疾患および障害、肥満症、糖尿病合併症ならびにアルツハイマー病、パーキンソン病、およびその他の老化関連性の組織変性病を含む血糖値上昇ならびに例えばグルコース寛容減損および非糖尿病性肥満患者における上昇したレプチンのアテローム発生作用に起因して組織が損傷している他の疾患の症状が含まれるがそれらに限定されない。
【0118】
本明細書で使用する用語「糖尿病」は、実験動物モデルを含む、およびI型やII型糖尿病、初期糖尿病、およびインスリンが軽度に減少もしくは軽度に上昇した血糖値を特徴とする前糖尿病状態などのヒトの形態を含む、任意の哺乳動物において発現した糖尿病の症状を意味する。「前糖尿病状態」は、インスリンもしくは血糖値によって症状を示している、および/または家族歴、遺伝的素因、またはII型糖尿病のケースでは肥満に起因する糖尿病または関連状態に対する感受性を示している被験体を表しており、以前に糖尿病または関連状態を有していた被験体、および再発のリスクに曝されている被験体が含まれる。
【0119】
「インスリン分泌促進活性」は、細胞によるグルコース取り込みを生成または増加させるために上昇した血中グルコースレベルまたは減少した血清グルコースもしくは血中グルコースレベルに反応してインスリン分泌を刺激する物質の能力を意味する。インスリン分泌促進活性についてアッセイするためには、当技術分野において知られている方法を使用できる。例えば、GLP−1レセプター結合活性もしくはガストリンレセプター結合活性、レセプター活性化(Gelfandらの欧州特許第619,322号および米国特許第5,120,712号に記載された方法を参照されたい)、および/またはインスリンもしくはC−ペプチドレベルを測定するインビトロおよびインビボ法を使用できる。本明細書に記載した化合物、組成物または結合体は、該化合物、組成物もしくは結合体の存在下で膵島細胞がインスリンを分泌する場合は、バックグラウンドレベルまたは該化合物、組成物もしくは結合体の不在下のレベルを超えるインスリン分泌促進活性を有する。化合物は動物に投与することができ、インスリン濃度を経時的に監視できる。
【0120】
「膵島細胞新生」は、非限定的方法で再生する能力を有する幹細胞の特徴を有する、または有していない可能性がある、分化による新規β細胞の形成を意味する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0121】
(発明の実施形態の詳細な説明)
本発明は、有益な効果を提供するためにGLP−1アゴニストおよびガストリン化合物を利用する組成物、結合体、および方法に関する。特別には、本発明は、GLP−1アゴニストおよびガストリン化合物を含む、本明細書で考察した状態および/または疾患を予防、介入および/または治療するための組成物、結合体、および方法に関する。本発明の態様では、本発明の組成物、結合体および方法は、GLP−1アゴニストおよび/またはガストリン化合物単独に比較して増強された有益な効果、特に持続性の有益な効果を提供する。有益な効果は、相加作用または相乗作用であってよい。
【0122】
本発明の態様では、状態および/または疾患が糖尿病である場合は、本発明の組成物、併用療法、または結合体の有益な効果、特に持続性の有益な効果は以下のうちの1つまたは複数として発現する可能性がある:
a)糖尿病の症状を有する被験体への投与後に活性化合物の不在下または各化合物単独について測定されたレベルに比較した膵インスリンレベルの上昇。好ましくは、化合物は組み合わせると、被験体において膵インスリンレベルの少なくとも約0.05%、0.1%、0.5%、1%、2%、5%、10%、15%、20%、30%、33%、35%、40%、45%、または50%の上昇を誘導する。
【0123】
b)糖尿病の症状を有する被験体への投与後に膵島炎症の症状の減少または欠如。
【0124】
c)糖尿病の症状を有する被験体において活性化合物の不在下または各化合物単独について測定されたレベルに比較した血糖値の減少。好ましくは、化合物は、血糖値の少なくとも約1%、2%、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%の減少を誘導する。最も好ましくは、化合物は、正常被験体において一般的なレベルとほぼ同じまたは近い血糖値を生じさせる。
【0125】
d)糖尿病の症状を有する被験体において活性化合物の不在下または各化合物単独について測定されたレベルに比較したC−ペプチドレベルの上昇。好ましくは、化合物は組み合わせると、C−ペプチドレベルの少なくとも約0.05%、0.1%、0.5%、1%、2%、5%、10%、15%、20%、30%、33%、35%、40%、45%、または50%の上昇を誘導する。
【0126】
e)長期間にわたるほぼ正常値での血糖値の維持。
【0127】
f)長期間にわたるほぼ正常値でのヘモグロビンA1cもしくはグリケート化ヘモグロビンの維持、特にヘモグロビンA1c率を6〜8%、より特別には約7%で維持する。
【0128】
g)β細胞の破壊の減少。好ましくは、化合物は、少なくとも約1%、2%、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%の減少を誘導する。
【0129】
h)β細胞機能の上昇。好ましくは、化合物は、β細胞機能における少なくとも約1%、2%、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%の上昇を誘導する。
【0130】
i)糖尿病の被験体における疾患の減少、予防または進行速度の緩徐化。
【0131】
j)糖尿病の症状を伴う重症高血糖症およびケトアシドーシスの発生の減少または予防。
【0132】
k)糖尿病の症状を有する被験体における生存率の上昇。
【0133】
本発明の実施形態では、有益な効果または持続性の有益な効果は、本質的にa)からk)のうちの2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、または11を含む、またはそれらからなる。特定の実施形態では、有益な効果または持続性の有益な効果は、本質的にa)、b)、およびc);a)、b)、c)、およびd);a)、b)、c)、d)、およびe);a)、b)、c)、d)、e)、およびf);a)、b)、c)、d)、e)、f)、およびg);a)、b)、c)、d)、e)、f)、g)およびh);a)、b)、c)、d)、e)、f)、g)、h)およびi);a)、b)、c)、d)、e)、f)、g)、h),i)およびj);a)、d)、およびe);a)、d)、e)、およびh);a)、d)、e)、h)、およびi);a)、d)、e)、h)、i)およびj);a)、b)、c)、d)、e)、h)、i)およびj);a)、b)、c)、d)、e)、h)、i)、j)およびk);b)、c)、d)、およびe);b)、c)、d)、e)、h)、i)、およびj);ならびに、b)、h)、i)およびj)を含む、またはそれらからなる。
【0134】
これらの有益な効果または持続性の有益な効果のうちの1つまたは複数は、糖尿病患者もしくは疾患モデル、例えば糖尿病の症状を有する非肥満性(NOD)マウスにおいて、当業者に知られている標準方法を用いて証明することができる。例えば、膵インスリンレベル、グルコースレベル、C−ペプチドレベルおよびヘモグロビンA1cをアッセイするために市販されている方法およびキットを使用できる。
【0135】
本発明における特定実施形態のためには、ガストリン化合物は、特に有益な効果を提供するために、インスリン分泌促進活性、GLP−1アゴニストの活性を増強する能力(特にGLP−1アゴニストのインスリン分泌促進作用を増強するため)、および/またはGLP−1アゴニストの物理的または化学的安定性を増加させる能力を含む特徴に基づいて選択することができる。ガストリン化合物は、さらにまたβ細胞の増殖/分化を刺激する能力、ならびにβ細胞のインビボ半減期に基づいて選択することもできる。
【0136】
本発明の1つの態様では、本発明の方法、組成物、および結合体において使用するガストリン化合物は、ポリマーに結び付いているガストリン−17ならびにそのアナログおよび誘導体である。特定の態様では、ガストリン化合物は、アミノ酸15位でLeu残基を備える17アミノ酸残基を有する合成ヒトガストリンI[配列番号14]である。
【0137】
本発明のまた別の態様では、本発明の方法、組成物、および結合体において使用するガストリン化合物は、ガストリン−34ならびにそのアナログおよび誘導体である。特定の態様では、ガストリン化合物は32位でメチオニンまたはロイシンを備える合成ヒトガストリン−34[配列番号11もしくは12]である。
【0138】
本発明のまた別の態様では、本発明の方法、組成物および結合体において使用されるガストリン化合物は、血清タンパク質、特にアルブミンもしくは免疫グロブリン、より特別にはヒト血清アルブミンと直接的または間接的に相互作用する、または結び付いているガストリン−34もしくはガストリン−17またはそれらの部分である。
【0139】
本発明の特定の態様では、ガストリン化合物は、配列番号11もしくは12の2〜34アミノ酸残基、および任意でN末端システインおよび/またはキャリアを有する合成ヒトガストリン−34;アミノ酸15位でLeu残基を備える1〜17アミノ酸残基[配列番号14]、および任意でN末端システイン残基を有する合成ヒトガストリン;ならびに任意でスペーサー[例、Gly−Ala−Gly−Ala−Gly−Ala−Gly−Ala−Gly−Ala、すなわち(GA)][配列番号25]を介して結合されたN末端システイン残基(例、PEGまたはヒト血清アルブミン)および/またはキャリアとともに配列番号13もしくは14のアミノ酸残基2〜17または5〜17を有する合成ヒトガストリン、特に[Gly−Ala−Gly−Ala−Gly−Ala−Gly−Ala−Gly−Ala、すなわち(GA)]スペーサーを介して結合されたヒト血清アルブミン(HSA)ポリマー、および任意でN末端システイン残基とともに配列番号13もしくは14のアミノ酸残基2〜17または5〜17を有する合成ヒトガストリンを含んでいる。
【0140】
GLP−1アゴニストは、本発明における特定の適用のために以下の特徴のうちの1つまたは複数に基づいて選択できる:好ましくは約1μM未満、より好ましくは約100nM未満の親和性定数KでGLP−1レセプターへ結合する能力;結果としてインスリン分泌促進活性を生じさせるシグナル伝達経路を開始させる能力;インスリン分泌促進活性;β細胞の増殖/分化の刺激;DP IV開裂に対する抵抗性;および、従来方法を用いてヒトにおける少なくとも約15分間〜24時間、好ましくは2〜10時間または2〜8時間のインビボ半減期(例えば、米国特許出願第2003/0144206号に記載された方法を参照されたい)。
【0141】
本発明の態様では、GLP−1アゴニストは天然短縮型GLP−1ポリペプチド(GLP−1(7−36)もしくは((GLP−1(7−37))、またはそれらのアナログもしくは誘導体である。これらの天然短縮型GLP−1アゴニストの配列は、配列番号4、5、および6に示した。
【0142】
本発明の所定の態様では、GLP−1アゴニストは、1〜20位、好ましくは1〜15位、より好ましくは1〜10位、最も好ましくは1〜5位のアミノ酸残基が配列番号1、2または3の配列とは相違するように修飾された配列番号1、2または3のアミノ酸配列を有していてよい。
【0143】
本発明のある実施形態では、GLP−1アゴニストは、GLP−1(7−37)もしくはGLP−1(7−36)におけるアミノ酸残基とは相違する10個未満のアミノ酸残基を有する、GLP−1(7−37)もしくはGLP−1(7−36)におけるアミノ酸残基とは相違する5個未満のアミノ酸残基を有する、GLP−1(7−37)もしくはGLP−1(7−36)におけるアミノ酸残基とは相違する3個未満のアミノ酸残基を有する、好ましくはGLP−1(7−37)もしくはGLP−1(7−36)におけるアミノ酸残基とは相違するアミノ酸残基を1個だけ有するGLP−1(7−37)もしくはGLP−1(7−36)のアナログである。
【0144】
本発明において特別な有用性を有する可能性があるGLP−1アゴニストには、1つまたは複数のアミノ酸がGLP−1(7−37)もしくはGLP−1(7−36)のN末端および/またはC末端へ付加されているポリペプチドが含まれる。好ましくは、約1〜6個のアミノ酸をN末端へ付加することができる、および/または1〜8個のアミノ酸をC末端へ付加することができる。所定の適用では、39個までのアミノ酸を有するGLP−1アゴニストが選択される。伸長したGLP−1アゴニストの1〜6位のアミノ酸は、それらが親GLP−1(7−37)もしくはGLP−1(7−36)の対応する位置で同一である、またはアミノ酸の保存的置換であるように選択することができる。伸長したGLP−1アゴニストの38〜45位のアミノ酸は、それらがエキセンディン−3またはエキセンディン−4(各々配列番号7および8)の対応する位置で同一である、またはアミノ酸の保存的置換であるように選択することができる。
【0145】
本発明の態様では、8位アナログを含むGLP−1アゴニストが利用されるが、このときそのようなアナログまたはそのフラグメントについてのバックボーンはアラニン以外のアミノ酸を含有している。8位のアミノ酸は、グリシン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、またはメチオニンから選択されてよい。
【0146】
ある実施形態では、GLP−1アゴニストは、GLP−1(1−37)のインスリン分泌促進アナログ、例えば、Met−GLP−1(7−37)(式中、8位のアラニンはメチオニンと置換されており、1〜6位のアミノ酸残基は欠失している)、およびArg34−GLP−1(7−37)(式中、34位のバリンはアルギニンと置換されており、1〜6位のアミノ酸残基は欠失している)である。
【0147】
また別の実施形態では、配列GLP−1(7−37)OHおよびGLP−1(7−36)−アミドを有する、そして対応する8位アナログを有するGLP−1アゴニストが選択されるが、このときそのようなアナログのためのバックボーンはアラニン以外のアミノ酸を含有する。8位のアミノ酸は、グリシン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、またはメチオニン、好ましくはバリンまたはグリシンから選択されてよい。アナログは、追加して(a)グルタミン酸、リシン、アスパラギン酸、アルギニン、および好ましくはグルタミン酸またはリシンから選択される22位のアミノ酸;(b)グルタミン酸、アスパラギン酸、セリン、またはヒスチジンから選択される30位のアミノ酸;(c)リシン、アルギニン、トレオニン、グルタミン酸、アスパラギン酸、セリン、トリプトファン、チロシン、フェニルアラニン、またはヒスチジンから選択された37位のアミノ酸;および/または(d)アラニン、リシン、アルギニン、トリプトファン、チロシン、フェニルアラニン、またはヒスチジンから選択された27位のアミノ酸を含むことができる。
【0148】
本発明において使用するための1群のGLP−1アナログおよび誘導体は、米国特許第5,545,618号および米国特許出願第20040018975号に記載されたGLP−1アゴニストを含む。アナログには、7〜10位でアミノ酸置換を有する、および/またはC末端で短縮している、および/または塩基性ペプチド内で様々な他のアミノ酸置換を含有する活性GLP−1ペプチド、7−34、7−35、7−36および7−37が含まれる。好ましいアナログには、7および8位にD−アミノ酸置換および/または7位でN−アルキル化もしくはN−アシル化アミノ酸を備えるアナログが含まれるが、それはそれらが特にインビボでの分解に抵抗性であるためである。
【0149】
本発明の態様では、GLP−1アゴニストは、GLP−1(1−38)、GLP−1(1−39)、GLP−1(1−40)、GLP−1(1−41)、GLP−1(7−38)、GLP−1(7−39)、GLP−1(7−40)、およびGLP−1(7−41)からなる群を含む、またはそれらから選択されたペプチドを含む。
【0150】
本発明のまた別の態様では、GLP−1アゴニストの少なくとも1つのアミノ酸は、直接的または間接的(例えば、γ−Gluまたはβ−Alaなどのスペーサーを介して)に付着させられた少なくとも1つの置換基を有する。置換基は、一般に、親GLP−1アゴニストの作用プロファイルをより長く持続させるため、GLP−1アゴニストを代謝的および物理的により安定性にさせるため、および/またはGLP−1アゴニストの溶解度を上昇させるように選択される。特定の置換基の例は、アミド、炭水化物、および親油性置換基である。親油性置換基には、1つのω−カルボン酸基を有する基であるアルキル基、直鎖状もしくは分枝状脂肪酸のアシル基またはテトラデカノイル、ヘキサデカノイルなどのアルカンが含まれるが、それらに限定されない。本発明の特定の組成物、結合体および治療は、国際公開公報第99/43341号(Novo Nordisk社)および米国特許出願第2003/0119734号(Novo Nordisk社)に記載されたような親油性置換基を備えるGLP−1アゴニストを使用する。
【0151】
本発明の特別の態様では、GLP−1アゴニストは、GLP−1(7−36)−アミドまたはTyr31−エキセンディン−4(1−31)−アミドである。
【0152】
本発明の所定の態様は、親油性置換基を含むGLP−1(7−36)またはGLP−1(7−37)の誘導体であるGLP−1アゴニストを提供する。ある実施形態では、GLP−1アゴニストはArg34Lys26(Nε−(γ−Glu(Nα−ヘキサデカノイル)))−GLP−1(7−37)である。
【0153】
本発明の実施形態では、GLP−1アゴニストは、
【0154】
【化7】

【0155】
【化8】

からなる群を含む、またはそれらから選択される。
【0156】
特定の実施形態では、GLP−1アゴニストは、
【0157】
【化9】

からなる群を含む、またはそれらから選択される。
【0158】
また別の特定の実施形態では、GLP−1アゴニストは、
【0159】
【化10】

からなる群を含む、またはそれらから選択される。
【0160】
また別の特定の実施形態では、GLP−1アゴニストは、
【0161】
【化11】

からなる群を含む、またはそれらから選択される。
【0162】
本発明のさらに別の実施形態では、GLP−1アゴニストは、エキセンディン(例、エキセンディン−3およびエキセンディン−4)またはそれらのアナログ、誘導体、もしくはフラグメントである。本発明に利用できるエキセンディンの例には、非限定的に、国際公開公報第9746584号、米国特許第5,424,286号および国際公開公報第01/04156号に開示されたエキセンディンが含まれる。米国特許第5,424,286号は、インスリン放出を刺激するためのエキセンディンポリペプチドの使用について記載している。この米国特許に記載されたエキセンディンポリペプチドには、
【0163】
【化12】

(式中、X=PまたはY)、および
【0164】
【化13】

;(式中、X=SD(エキセンディン−3)またはGE(エキセンディン−4)が含まれる。国際公開公報第9746584号は、インスリンの分泌および生合成を増加させるが、グルカゴンを減少させる短縮型エキセンディンペプチドについて記載している。国際公開公報第01/04156号は、エキセンディン−4のアナログおよび誘導体ならびにそれらの調製法について記載している。
【0165】
また別の実施形態では、GLP−1アゴニストは、エキセンディン−4(1−39)のインスリン分泌促進アナログ、特にSerAsp−エキセンディン−4(1−39)であり、このとき2および3位にあるアミノ酸残基はセリンおよびアスパラギン酸と各々置換されている(この特定のアナログは、当技術分野においてエキセンディン−3(配列番号7)としても知られている)。
【0166】
本発明の所定の態様では、GLP−1アゴニストは、安定性GLP−1アゴニスト、特に安定性GLP−1アナログもしくは誘導体、または安定性エキセンディン−4もしくはエキセンディン−3アナログもしくは誘導体である。
【0167】
GLP−1アゴニストまたはガストリン化合物単独と比較して、有益な効果、特に統計的有意に有益な効果または持続性の有益な効果を提供する、本発明の薬学的組成物を選択できる。糖尿病の状態に関する有益な効果は、本明細書に記載した1つまたは複数の、特にa)からj)で上述した有益な効果のうちの1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、または10個の有益な効果によって証明できる。
【0168】
以下:
【0169】
【化14】

からなる群から選択されたGLP−1アゴニスト、ならびに任意で血清タンパク質と結び付けたガストリン化合物(例、配列番号11、12、13もしくは14)を含む、有益な効果、特に統計的有意に有益な効果または持続性の有益な効果を備える薬学的組成物が提供される。
【0170】
ある態様では、GLP−1(7−36)[配列番号5]およびガストリン−17(leu)[配列番号14]を含む、統計的有意に有益な効果または持続性の有益な効果を備える薬学的組成物が提供される。
【0171】
ある態様では、Arg34Lys26(Nε(γ−Glu(Nα−ヘキサデカノイル)−GLP−1(7−37)およびガストリン−17(leu)[配列番号14]を含む、統計的有意に有益な効果または持続性の有益な効果を備える薬学的組成物が提供される。
【0172】
また別の態様では、Aib8,35GLP−1(7−36)−アミドまたはSer38,Lys39,40,41,42,43,44−エキセンディン−4(1−39)−アミドおよびガストリン−17(leu)[配列番号14]を含む、統計的有意に有益な効果または持続性の有益な効果を備える薬学的組成物が提供される。
【0173】
以下:
【0174】
【化15】

からなる群から選択されたGLP−1アゴニスト、ならびにアミノ末端からZ−Y−X−AA−AA−AA−AA−AA−AA(式中、AAはTyrまたはPheであり、AAはGly、Ala、またはSerであり、AAはTrp、Val、またはIleであり、AAはMetまたはLeuであり、AAはAspまたはGluであり、およびAAはPheまたはTyrである;Zはポリマーであり、該ポリマーがタンパク質の場合はZはアミノ酸配列である;Yはセリンおよびアラニンを含むがそれらに限定されない小さな中性アミノ酸のm個のアミノ酸残基を含む任意のスペーサー領域であり、そしてXは配列番号11もしくは12の残基1〜28、または配列番号13もしくは14の残基1〜11の任意の連続部分であり、好ましくはAA−AA−AA−AA−AA−AAはTyr−Gly−Trp−Met−Asp−PheまたはTyr−Gly−Trp−Leu−Asp−PheAである)を含むアミノ酸配列を有するガストリン化合物、を含む、有益な効果、特に統計的有意に有益な効果または持続性の有益な効果を備える薬学的組成物が提供される。特定の実施形態では、Zは血清タンパク質、とくにヒト血清アルブミンである。
【0175】
本発明の所定の態様では、GLP−1アゴニストの薬学的に受容可能な塩および/またはガストリン化合物の薬学的に受容可能な塩が利用される。
【0176】
特定の態様における本発明は、ある状態および/または疾患、好ましくは糖尿病を治療する目的で持続性の有益な効果を提供するために被験体へ投与するために適合させられている薬学的組成物を提供する。糖尿病を予防および/または治療するための実施形態では、組成物は、被験体への投与がほぼ正常な血糖値を生じさせ、これが治療停止後の長期間にわたって被験体において持続するような形態にある。
【0177】
本発明は、ガストリン化合物と結合された、または相互作用するGLP−1アゴニストを含む結合体を提供するが、この相互作用は、例えばアミノ基またはカルボキシル基を介して発生する。本発明は、本発明の単離された共有結合結合体、および本発明の共有結合結合体を含む組成物にさらに関する。GLP−1アゴニストは、ガストリン化合物のOHとCOOHとの間のエステル結合によって種へ結合体させることができる。GLP−1アゴニストおよびガストリン化合物の結合体は、中間スペーサーまたはリンカーと結合体させることができる。適切なスペーサーまたはリンカーは、1つまたは複数のそのような成分を含む単糖もしくは二糖、アミノ酸、硫酸塩、コハク酸塩、酢酸塩、またはオリゴマーもしくはポリマースペーサーまたはリンカーであってよい。
【0178】
本発明は、向上した薬物動態特性、生物活性、および有益な効果を備える結合体を生じさせる、結合体を調製する方法をさらに提供する。本方法は、GLP−1アゴニストをガストリン化合物と一緒に、これら2つの化合物の共有結合の形成を許容する条件下でインキュベートする工程を含む。本方法はこのため、ガストリン化合物に共有結合または結合させられたGLP−1アゴニストを含む共有結合結合体を調製するための製法であって:GLP−1アゴニストをガストリン化合物と一緒に、GLP−1アゴニストとガストリン化合物との間の共有結合または結合を形成させるために十分な条件ならびにpHおよび時間下でインキュベートする工程と;および共有結合結合体を単離する工程と、を含む製法を企図している。GLP−1アゴニストおよびガストリン化合物を含む結合体を調製するための上記の製法は、GLP−1アゴニストへ共有結合した実質的な量のGLP−1アゴニストを備える結合体を提供する。
【0179】
任意でスペーサーまたはリンカーを用いてガストリン化合物と結合体したGLP−1アゴニストを含む、N末端またはC末端融合タンパク質もしくはキメラタンパク質は、組み換え技術を通してGLP−1アゴニストのN末端またはC末端配列をガストリン化合物の配列と融合させる工程によって調製することもできる。
【0180】
本発明は、本明細書に記載した製法によって調製した結合体に関する。本発明は、本発明の結合体および薬学的に受容可能なキャリア、賦形剤、もしくはビヒクルを含む医薬調製物または組成物にさらに関する。
【0181】
本発明は、GLP−1アゴニスト単独に比較して有益な効果、好ましくは持続性の有益な効果を提供する、ガストリン化合物へ共有結合したGLP−1アゴニストを含む実質的に純粋な共有結合結合体の医薬調製物または組成物にさらに関する。ある実施形態では、中間スペーサーまたはリンカーを使用せずにガストリン化合物へ共有結合したGLP−1アゴニストを含む本質的に共有結合結合体からなる医薬調製物が提供される。また別の実施形態では、中間スペーサーまたはリンカーを使用してガストリン化合物へ共有結合したGLP−1アゴニストを含む本質的に共有結合結合体からなる医薬調製物が提供される。
【0182】
本発明の態様では、GLP−1アゴニストおよびガストリン化合物を含む組成物または結合体は、GLP−1アゴニストもしくはガストリン化合物単独の活性またはGLP−1(7−37)OHの活性と比較して、治療後により大きな持続性のインスリン分泌促進活性を有する。
【0183】
本発明は、被験体における状態および/または疾患を予防、治療および/または介入するための方法であって、有益な効果、特に持続性の有益な効果を提供するために、本発明のガストリン化合物およびGLP−1アゴニストまたは薬学的組成物を投与する工程を含む方法を提供する。
【0184】
有益な効果、特に統計的有意に有益な効果または持続性の有益な効果を提供する本発明の方法では、GLP−1アゴニストは、
【0185】
【化16】

からなる群から選択することができ、そしてガストリン化合物は任意で血清タンパク質と結び付けた、配列番号11、12、13もしくは14を含むことができる。
【0186】
本発明の所定の方法では、GLP−1(7−36)[配列番号5]およびガストリン−17(Ieu)[配列番号14]が投与される。
【0187】
本発明の他の方法では、Arg34Lys26(Nε(γ−Glu(Nα−ヘキサデカノイル)−GLP−1(7−37)およびガストリン−17(Ieu)[配列番号14]が投与される。
【0188】
本発明の所定の別の態様では、Aib8,35GLP−1(7−36)−アミドまたはSer38,Lys39,40,41,42,43,44−エキセンディン−4(1−39)−アミドおよびガストリン−17(leu)[配列番号14]が投与される。
【0189】
有益な効果、特に統計的有意に有益な効果または持続性の有益な効果を提供する本発明の所定の別の方法では、GLP−1アゴニストは、
【0190】
【化17】

からなる群から選択することができ、そしてガストリン化合物はアミノ末端からZ−Y−X−AA−AA−AA−AA−AA−AA(式中、AAはTyrまたはPheであり、AAはGly、Ala、またはSerであり、AAはTrp、Val、またはIleであり、AAはMetまたはLeuであり、AAはAspまたはGluであり、およびAAはPheまたはTyrである;Zはポリマーであり、該ポリマーがタンパク質の場合はZはアミノ酸配列である;Yはセリンおよびアラニンを含むがそれらに限定されない小さな中性アミノ酸のm個のアミノ酸残基を含む任意のスペーサー領域であり、そしてXは配列番号11もしくは12の残基1〜28、または配列番号13もしくは14の残基1〜17の任意の連続部分であり、好ましくはAA−AA−AA−AA−AA−AAはTyr−Gly−Trp−Met−Asp−PheまたはTyr−Gly−Trp−Leu−Asp−Pheである)を含むアミノ酸配列を含んでいる。特定の実施形態では、Zは血清タンパク質、とくにヒト血清アルブミンである。
【0191】
1つの態様では、本発明は、被験体における本明細書で考察した状態および/または疾患を予防および/または介入するための方法であって、少なくとも1つのGLP−1アゴニストおよび少なくとも1つのガストリン化合物の投与を含む方法を提供する。GLP−1アゴニストおよびガストリン化合物は、被験体に直接的に投与する、または細胞(例、幹細胞または前駆細胞)と接触させて被験体に投与することができる。
【0192】
本発明は、被験体における本明細書で考察した状態および/または疾患を予防および/または治療するための、有益な効果を提供するために治療有効量の少なくとも1つのGLP−1アゴニストおよびガストリン化合物を該被験体に投与する工程を含む併用療法をさらに提供する。本発明の1つの態様では、治療後の持続性の有益な効果を提供する併用療法または介入を提供する。
【0193】
特別には、本発明は、被験体における状態および/または疾患を予防または治療するための、有益な効果、好ましくは持続性の有益な効果を提供するために治療有効量の少なくとも1つのGLP−1アゴニストおよび少なくとも1つのガストリン化合物を該被験体に投与する工程を含む併用療法を提供する。
【0194】
本発明は、糖尿病の症状を有する被験体へ投与すると、血糖値の減少および/または膵インスリンの増加として発現する、有益な効果、好ましくは持続性の有益な効果を生成する、少なくとも1つのガストリン化合物と組み合わせて治療有効量の少なくとも1つのGLP−1アゴニストを投与する工程を含む治療方法にさらに関する。
【0195】
本発明の1つの態様では、治療有効量のGLP−1アゴニストおよびガストリン化合物は、被験体へ投与する前に組み合わせられる。ある実施形態では、治療有効量のGLP−1アゴニストおよびガストリン化合物は、生理的に許容されるpHで混合される。
【0196】
1つの実施形態では、本発明は、被験体におけるβ細胞増殖を刺激するための方法であって、治療有効量の本発明の組成物もしくは結合体を投与する工程、またはGLP−1アゴニストおよびガストリン化合物を組み合わせて投与する工程を含む方法を提供する。
【0197】
また別の実施形態では、本発明は、被験体におけるβ細胞の数および/またはサイズを増加させるための方法であって、治療有効量の本発明の組成物もしくは結合体を投与する工程、またはGLP−1アゴニストおよびガストリン化合物を組み合わせて投与する工程を含む方法を提供する。
【0198】
別の実施形態では、本発明は、I型またはII型糖尿病を予防または治療するための方法であって、治療有効量の本発明の組成物もしくは結合体を投与する工程、またはGLP−1アゴニストおよびガストリン化合物を組み合わせて投与する工程を含む方法を提供する。
【0199】
さらに別の実施形態では、本発明は、II型糖尿病に罹患している患者における疾患の進行を緩和するため、または重症度の低い病期にするための方法であって、治療有効量の本発明の組成物もしくは結合体を投与する工程、またはGLP−1アゴニストおよびガストリン化合物を組み合わせて投与する工程を含む方法を提供する。
【0200】
本発明は、グルコース寛容減損の進行または非インスリン依存性II型糖尿病からインスリン依存性II型糖尿病への進行を遅延させる方法であって、治療有効量の本発明の組成物もしくは結合体を投与する工程、またはGLP−1アゴニストおよびガストリン化合物を組み合わせて投与する工程を含む方法に関する。
【0201】
本発明は、被験体のインスリン合成能力を上昇させる方法であって、治療有効量の本発明の組成物もしくは結合体を投与する工程、またはGLP−1アゴニストおよびガストリン化合物を組み合わせて投与する工程を含む方法にさらに関する。
【0202】
本発明は、被験体における膵島細胞新生を誘導する方法であって、膵島前駆細胞を、該被験体における膵島前駆細胞の増殖を増加させるために十分な量でGLP−1アゴニストおよびガストリン化合物、または本発明の組成物もしくは結合体を接触させ、それにより膵島細胞新生を誘導する工程を含む方法にさらに関する。
【0203】
本発明は、糖尿病患者における膵島移植片の機能的なβ細胞質量を拡大させる方法であって、患者に治療有効量のGLP−1アゴニストおよびガストリン化合物、または本発明の組成物もしくは結合体を投与する工程を含む方法を企図している。
【0204】
1つの態様では、本発明は、それを必要とする患者における糖尿病を治療するための、該患者の膵島前駆細胞から成熟インスリン分泌細胞への分化を達成するため、および/または現存する膵島細胞中のインスリン合成を刺激するために十分な量でガストリン化合物およびGLP−1アゴニストを含む組成物を投与する工程による方法を提供する。本組成物は、全身性で投与できる、または発現ベクター中に1つまたは複数の核酸構築物を含有する宿主細胞によってインサイチューで発現させることができるが、このとき該核酸構築物はガストリン化合物のためのコーディング配列もしくはGLP−1アゴニストのためのコーディング配列または両方の化合物のためのコーディング配列を、膵島前駆細胞中で機能的である転写および翻訳調節領域と一緒に含んでいる。
【0205】
本発明は、本発明のGLP−1アゴニストおよびガストリン化合物、または本発明の組成物もしくは結合体を用いて細胞を、好ましくは培養内の細胞を治療するための方法を提供する。本発明は、本発明のGLP−1アゴニストおよびガストリン化合物、または本発明の組成物もしくは結合体を用いる細胞療法をさらに提供する。一般的培養方法および細胞療法の説明についてはPCT/CA03/33595を参照されたい。
【0206】
1つの態様では、本発明は、幹細胞もしくは前駆細胞をインスリン分泌細胞へ拡大および分化させるための方法であって、幹細胞もしくは前駆細胞をGLP−1アゴニストおよびガストリン化合物、または本発明の組成物もしくは結合体と、幹細胞もしくは前駆細胞を拡大および分化させるために十分な量で接触させるステップを含む方法に関する。拡大および分化の量は、化合物、組成物もしくは結合体の非存在下で達成された量と比較して有意に相違する可能性があり、詳細には、この量はGLP−1アゴニストまたはガストリン化合物単独を用いて達成された量と比較して有意に大きい可能性がある。1つの実施形態では、幹細胞もしくは前駆細胞は培養内で化合物、組成物もしくは結合体と接触させられる。また別の実施形態では、幹細胞もしくは前駆細胞は被験体内で化合物、組成物もしくは結合体と接触させられる。化合物、組成物もしくは結合体は、被験体の幹細胞を拡大および分化させるために、被験体への幹細胞の移植前、移植中、または移植後に被験体へ投与することができる。幹細胞は、膵島、臍帯、胚、または幹細胞系から入手できる。本方法は、追加して免疫抑制剤を投与する工程を含むことができる。
【0207】
本発明は、培養内でのインスリン分泌細胞の増殖を強化するための方法であって、細胞の増殖を強化するために十分な量で、該細胞を本発明のGLP−1アゴニストおよびガストリン化合物、組成物もしくは結合体と接触させる工程を含む方法にさらに関する。増殖の量は、化合物、組成物もしくは結合体の非存在下で達成された量と比較して有意に相違する可能性がある。1つの実施形態では、増殖の量はGLP−1アゴニストまたはガストリン化合物単独と比較して有意に大きい。
【0208】
本発明は、培養内で膵島細胞もしくは前駆細胞を維持するための方法であって、培養内で細胞を維持するために十分な量にあるGLP−1アゴニストおよびガストリン化合物、または本発明の組成物もしくは結合体の存在下で該細胞を培養する工程を含む方法にさらに関する。細胞は、化合物、組成物もしくは結合体の非存在下、またはGLP−1アゴニストまたはガストリン化合物単独の存在下で培養された細胞と比較して有意に長期間にわたり培養内で維持することができる。本発明のGLP−1アゴニストおよびガストリン化合物または組成物もしくは結合体の存在下で細胞を培養する工程は、移植が意図された細胞を調製および維持する際に特に有用であろう。
【0209】
1つの態様では、本発明は、ある状態および/または疾患を治療する方法であって、それにより有益な効果、好ましくは持続性の有益な効果を生成するために、それを必要とする被験体へ複数の細胞とともにGLP−1アゴニストおよびガストリン化合物、本発明の組成物もしくは結合体を投与する工程を含む方法を提供する。
【0210】
本明細書で考察した状態および/または疾患を有する被験体を治療するための方法は、複数の細胞をエックスビボでGLP−1アゴニストおよびガストリン化合物、または本発明の組成物もしくは結合体と接触させる工程、任意で前記細胞を培養する工程、およびそれを必要とする前記被験体へ前記細胞を投与する工程を含んでいる。
【0211】
上述した細胞療法の実施形態では、細胞は膵管細胞であり、本発明において使用される化合物/組成物/結合体の量は、一般に被験体におけるインスリン分泌細胞の量を増加させるために有効である。細胞は、自家細胞(すなわち、同一被験体由来)、もしくは同一種のまた別の個体、または相違する種由来であってよい。
【0212】
本発明は、被験体における糖尿病を治療するための方法であって、被験体に膵島細胞調製物を移植する工程と、そして治療有効量のGLP−1アゴニストおよびガストリン化合物、または本発明の組成物もしくは結合体を投与する工程を含む方法を企図している。
【0213】
本発明の細胞療法では、ある状態および/または疾患に罹患した個体へ投与される細胞数は、該状態および/または疾患の重症度、投与様式、および/または投与部位によって変動するであろう。一般に、治療有効量の細胞は安全かつ有効な量、特に1つまたは複数の有益な効果、特に持続性の有益な効果、または相乗作用を提供するために必要な量である。
【0214】
細胞は、当業者には明白な様々な手段を用いて被験体へ投与できる。適切な方法には、被験体における標的部位への細胞の注射が含まれる。細胞は、被験体への注射または移植を容易にするために送達器具内へ挿入することができる。送達器具の例には、チューブ、例えば被験体の体内へ細胞および液体を注入するためのカテーテルが含まれる。細胞は、様々な相違する形態で送達するために調製できる。例えば、細胞は溶液もしくはゲル中に懸濁させることができる、またはその中では細胞が生育性のままである薬学的に受容可能なキャリア、賦形剤、もしくは希釈剤と混合することができる。薬学的に受容可能なキャリア、賦形剤、および希釈剤には、食塩液、緩衝水溶液、溶媒および/または分散媒が含まれる。そのようなキャリアおよび希釈剤の使用は、当技術分野においてよく知られている。溶液は一般に無菌であり、しばしば等張性であろう。好ましくは、製造および保管の条件下で安定性であり、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどの使用を通して微生物の汚染作用から保護されている細胞溶液が選択される。
【0215】
細胞の投与様式には、非限定的に、全身性の心臓内、冠動脈内、静脈内、皮内もしくは動脈内注射および予定活性部位、または活性部位の近位の組織もしくは器官内への直接的注射が含まれる。細胞調製物は、例えば注入もしくはボーラス注射のための任意の便宜的経路によって投与でき、そして他の生物活性物質と一緒に投与できる。一部の態様における投与は、好ましくは全身性である。細胞調製物は、例えば注入もしくはボーラス注射のための任意の便宜的経路によって投与でき、そして他の生物活性物質と一緒に投与できる。
【0216】
本発明の方法は、血中グルコース、血清グルコース、血中グリコシル化ヘモグロビン、膵β細胞質量、血清中インスリン、膵インスリンレベル、形態測定学により決定したβ細胞質量、インスリン分泌細胞の量、およびインスリン分泌細胞の糖反応性、などのマーカーのうちの1つまたは複数を測定または監視する工程をさらに含むことができる。
【0217】
本発明は、ある状態および/または疾患を治療する際の有益な効果、好ましくは持続性の有益な効果を提供するための薬剤を調製するための少なくとも1つのGLP−1アゴニストおよび少なくとも1つのガストリン化合物の組み合わせを含む組成物の使用をさらに企図している。1つの態様では、本発明は、ある状態および/または疾患を治療する際の、有益な効果、好ましくは持続性の有益な効果を提供するための薬剤を調製するための治療有効量の少なくとも1つのGLP−1アゴニスト、および少なくとも1つのガストリン化合物の使用にさらに関する。1つの実施形態では、本発明は、治療後の被験体におけるβ細胞の数および/またはサイズを増加させる(好ましくは持続的に増加させる)ための薬剤を調製するためのGLP−1アゴニストおよびガストリン化合物の使用を提供する。また別の実施形態では、本発明は、治療後のβ細胞増殖を刺激(好ましくは持続性に刺激)するための薬剤を調製するためのGLP−1アゴニストおよびガストリン化合物の使用を提供する。本発明のさらにまた別の実施形態では、本発明は、I型またはII型糖尿病を治療するための薬剤を調製するためのGLP−1およびガストリンの使用を提供する。
【0218】
本発明は、状態および/または疾患の治療において、有益な効果、好ましくは持続性の有益な効果のための薬剤の調製における本発明の薬学的組成物および結合体の使用をさらに提供する。
【0219】
本発明の化合物、組成物および結合体の治療有効性および毒性は、細胞培養内での標準的な医薬方法によって、またはED50(集団の50%において治療上有効な用量)もしくはLD50(集団の50%にとって致死的な用量)統計量などの統計パラメーターを計算する工程などの実験動物を用いて決定できる。治療指数は、治療作用対毒性作用の用量比であり、これはED50/LD50比として表すことができる。大きな治療指数を示す薬学的組成物が好ましい。
【0220】
本発明の化合物、組成物、薬剤、および結合体は、活性物質と被験体または患者の身体内での薬剤の作用部位との接触を生じさせる任意の手段によって投与できる。有効成分は、所望の有益な効果を提供するために、同時にもしくは連続的に、および任意の順序で相違する時点に投与することができる。化合物、結合体および組成物は、局所的または全身性で送達するために持続性放出に合わせて調製できる。これは、本発明の組成物、結合体、および治療法の作用を最適化する投与の形態および経路を選択するために熟練の医師または獣医の能力の範囲内に含まれる。
【0221】
組成物は、錠剤、カプセル剤(その各々が徐放性または持続放出性調製物を含む)、ピル剤、散剤、顆粒剤、エリキシル剤、着色剤、懸濁剤、シロップ剤、および乳剤などの経口剤形で投与できる。それらは、静脈内(ボーラスもしくは点滴)、腹腔内、皮下、または筋肉内の形式で投与することもできるが、それらはすべて医薬分野の当業者にはよく知られている剤形を利用する。本発明の組成物は、適切な鼻腔内ビヒクルの局所使用による鼻腔内経路、または例えば従来型の皮膚パッチを用いる経皮経路によって投与することができる。経皮的送達系を用いた投与のための投与プロトコールは、投与レジメンを通して間欠的ではなくむしろ連続的であってよい。
【0222】
特定の投与経路は、非経口投与、好ましくは末梢非経口投与である。非経口投与は、一般に、無菌シリンジまたは注入ポンプなどの他の機械的器具による身体内への用量の注射を意味すると理解されている。本発明のために、非経口投与経路には、静脈内、筋肉内、皮下、および腹腔内投与経路が含まれる。非経口投与のためには、本明細書に記載した化合物もしくは結合体は、適切なpHで蒸留水と合わせることができる。
【0223】
本発明は、相加的もしくは相乗的に有効な量、または治療有効量のGLP−1アゴニストおよびガストリン化合物、または本発明の結合体もしくは組成物を提供するための量を送達する相加的もしくは相乗的活性を提供する併用療法が含まれる。このため、本発明において使用するのに適する薬学的組成物には、有効成分が相乗的有効量もしくは治療有効量で含有される組成物が含まれる。
【0224】
本発明の投与レジメンは、薬剤の薬物動態特性ならびにそれらの投与様式および経路;患者の種、年齢、性別、健康状態、医学的状態、および体重、症状の性質や程度、併用療法の種類、治療の頻度、投与経路、患者の腎および肝機能、ならびに所望の作用などの知られている因子に依存して変動するであろう。ある状態の進行を予防する、対抗する、または阻止するために必要とされる薬物の有効量は、熟練の医師または獣医であれば容易に決定することができる。
【0225】
本発明の組成物、薬剤、または治療は、単位用量の少なくとも1つのGLP−1アゴニストおよび単位用量の少なくとも1つのガストリン化合物を含んでいてよい。「単位用量」は、単一の、すなわち患者へ投与することのできる、そして活性物質それ自体または1つまたは複数の固体もしくは液体の医薬賦形剤、キャリア、もしくはビヒクルとの混合物のいずれかを含む物理的および化学的に安定性の単位用量であり続けながら、容易に取り扱いかつ包装できる1回量を意味する。
【0226】
1つの態様では、治療後の長期間にわたり糖レベルを減少もしくは低下させることにガストリン化合物もしくはGLP−1アゴニストいずれか単独の用量と比較して有効である治療上有効である最適量より少ない用量のGLP−1アゴニストおよびガストリン化合物を含む薬学的組成物が提供される。
【0227】
また別の態様では、ある状態および/または疾患、特に糖尿病の長期または短期療法のための形態で治療上有効な最適量より少ない用量のGLP−1アゴニストおよびガストリン化合物を含む、改良された薬学的組成物が提供される。
【0228】
1つの実施形態では、本組成物は、ある状態および/または疾患を治療する目的で、有益な効果、好ましくは持続性の有益な効果を提供するために必要とされる各化合物の用量と同量、または少なくとも1.1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10分の1である用量でGLP−1アゴニストおよびガストリン化合物を含む。
【0229】
1つの態様では、本発明は、1単位当たり0.5〜6000、100〜1500、100〜6000、1000〜6000、2000〜6000、および3000〜6000μgのGLP−1アゴニストおよび1単位当たり0.5〜6000、100〜3000、100〜6000、1000〜6000、2000〜6000、および3000〜6000μgのガストリン化合物を含む薬学的組成物を提供する。
【0230】
また別の態様では、本発明は、0.1〜20、0.1〜30、0.1〜40、0.1〜50、および0.1〜60μg/kg/日のGLP−1ならびに0.1〜20、0.1〜30、0.1〜40、0.1〜50、および0.1〜60μg/kg/日のガストリン化合物を含む薬学的組成物を提供する。
【0231】
本発明の組成物もしくは調製物は、被験体へ2週間〜12カ月間、2週間〜6カ月間、2〜16週間、2〜12週間、および/または2〜8週間にわたり持続的に、または定期的に投与することができる。
【0232】
1つの実施形態では、本発明の組成物中でのGLP−1アゴニスト対ガストリン化合物の比率は、GLP−1アゴニストおよび/またはガストリン化合物の活性を増強させるため、および有益な効果、好ましくは持続性の有益な効果を提供するために選択される。
【0233】
GLP−1アゴニストおよびガストリン化合物は、有益な効果、特に持続性の有益な効果を提供するため、および/または相加作用もしくは相乗作用を生成するために、一方または両方の化合物の活性を強化するために選択された比率であってよい。実施形態では、GLP−1アゴニスト対ガストリン化合物の比率は、1:1〜1:110、1:1〜1:100、1:1〜1:75、1:1〜1:50、1:1〜1:25、1:1〜1:10、1:1〜1:5、および1:1であってよい。他の特定の実施形態では、GLP−1アゴニスト対ガストリン化合物の比率は、1:1〜1:110、1:1〜1:100、1:1〜1:75、1:1〜1:50、1:1〜1:25、1:1〜1:10、および1:1〜1:5であってよい。
【0234】
GLP−1アゴニストは、約1:1〜1:150、特に1:1〜1:50の治療有効量の比率でガストリン化合物と組み合わせて使用されてよい。また別の実施形態では、ガストリン化合物は、約1:1〜1:150、特に1:1〜1:50の治療有効量の比率でGLP−1アゴニストと組み合わせて使用されてよい。
【0235】
本発明の組成物またはその分画は、典型的には予定投与形態に基づいて選択された、および従来型の医薬の慣習と一致する適切な医薬上の希釈剤、賦形剤、ビヒクルまたはキャリアを含んでいる。キャリア、ビヒクルなどは、相加的、相乗的有効量または治療有効量の活性化合物を提供するように適合させることができる。
【0236】
適切な医薬希釈剤、賦形剤、ビヒクル、およびキャリアは、標準的な教科書であるRemington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Companyの中に記載されている。例えば、カプセル剤もしくは錠剤の形状で経口投与するためには、活性化合物は、ラクトース、デンプン、スクロース、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、グルコース、カルシウム、硫酸塩、リン酸二カルシウム、マンニトール、ソルビトールなどの薬学的に受容可能な経口用の非毒性不活性キャリアと合わせることができる。液剤形で経口投与するためには、薬物成分は、エタノール、グリセロール、水などの薬学的に受容可能な、任意の経口用の非毒性不活性キャリアと合わせることができる。適切な結合剤(例、ゼラチン、デンプン、トウモロコシ甘味料、グルコースを含む天然糖;天然および合成ガム、およびろう)、潤滑剤(例、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、および塩化ナトリウム)、崩壊剤(例、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、およびキサンタンガム)、矯味剤、および着色剤もまたそれらの組成物もしくは成分内で合わせることができる。
【0237】
本発明の1つの態様では、薬学的組成物は、約7から10のpHを有する。
【0238】
本発明の組成物を非経口投与するための調製物は、水溶液、シロップ、水性もしくは油性懸濁液および綿実油、ヤシ油もしくは落花生油などの食用油との乳濁液を含んでいてよい。水性懸濁液のために使用できる分散剤もしくは懸濁化剤には、トラガカントなどの合成もしくは天然ガム、アルギン酸塩、アカシア、デキストラン、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、ゼラチン、メチルセルロース、およびポリビニルピロリドンが含まれる。
【0239】
非経口投与するための組成物は、水、等張食塩液、等張グルコース液、緩衝液などの無菌の水性もしくは非水性溶剤、または治療上有効な薬剤を非経口投与するために便宜的に使用される他の溶剤を含むことができる。非経口投与することが企図される組成物は、安定剤、緩衝液、もしくは保存料、例えばメチルヒドロキシ安息香酸などの抗酸化物質などの従来型添加物、または類似の添加物をさらに含んでいてよい。
【0240】
1つの実施形態では、結晶質もしくは非晶質GLP−1アゴニストおよび結晶質もしくは非晶質ガストリン化合物を含む固形の薬学的組成物(例、錠剤、カプセル剤、粉末化もしくは微粉化形)が提供される。
【0241】
また別の実施形態では、本発明は、GLP−1アゴニストおよびガストリン化合物の薬学的に受容可能な塩を含む液剤調製物、ならびに安定しており、かつ非経口投与に適する懸濁液を提供するために復元できる凍結乾燥薬剤調製物に関する。
【0242】
特定の実施形態では、本発明は、GLP−1アゴニストおよびガストリン化合物の薬学的に受容可能な塩ならびに可溶化を実行する溶媒系を含む水性組成物に関する。本発明は、少なくとも1つの可溶化剤とともにGLP−1アゴニストおよびガストリン化合物の薬学的に受容可能な塩の水性調製物を含む薬物をさらに提供する。
【0243】
本発明の組成物は、例えば細菌保持フィルターを通しての濾過、組成物への滅菌剤の添加、組成物の照射、または組成物の加熱によって滅菌することができる。または、本発明の化合物、結合体、および組成物は、使用直前に無菌溶媒中で容易に溶解させられる、例えば凍結乾燥粉末のような無菌固形調製物として提供されてよい。
【0244】
本明細書に記載した調製物に加えて、組成物はデポー製剤として調製することもできる。そのような長時間作用型調製物は、移植(例えば、皮下もしくは筋肉内)または筋肉内注射によって投与されてよい。そこで、例えば適切なポリマーもしくは疎水性材料(例えば、許容される油中の乳濁剤として)、もしくはイオン交換樹脂と一緒に、または例えばやや溶けにくい塩のようなやや溶けにくい誘導体としてのフラクションを調製できる。
【0245】
本発明の組成物およびそれらの成分は、標的を定められる薬物キャリアとして可溶性ポリマーを含んでいてよい。
【0246】
薬学的組成物が調製された後、それらは適切な容器内に入れて、適応状態の治療についてラベル表示することができる。本発明の組成物の投与については、そのようなラベル表示は、投与の量、頻度、および方法を含むであろう。
【0247】
本発明は、非限定的に免疫抑制剤、肥満抑制薬、抗糖尿病薬、食欲調節薬、降圧薬、ある状態および/または疾患、特に糖尿病および肥満の結果として生じる、またはそれらに関連する合併症を治療および/または予防するための薬剤、抗嘔吐薬、鎮痛薬、および副作用を治療または予防する一般的医薬品を含む1つまたは複数の追加の治療薬と組み合わせて本発明の組成物を使用する方法をさらに含んでいる。
【0248】
本発明は個別に、または結合体として投与できる活性物質の組み合わせを含む治療方法に関するので、本発明は、GLP−1アゴニストおよびガストリン化合物を含むキットおよびキット形にある薬学的組成物または結合体にもさらに関する。本発明は、1つの箱の中にGLP−1アゴニストを含む1つのボトルおよびガストリンを含むもう1つのボトルを含む医薬キットにさらに関する。キットは、本発明の結合体または組成物を含有する容器を収容し、さらに被験体へ結合体または組成物を投与するための取扱説明書を収容する包装を含んでいてよい。
【0249】
以下では、特定の実施例によって本発明をより詳細に説明しよう。以下の実施例は、例示する目的で提供するものであり、決して本発明を限定することは意図していない。当業者であれば、本質的に同一の結果を生み出すように変更または修飾できる様々な非臨界的パラメーターを容易に認識できるであろう。
【実施例】
【0250】
(実施例1 急性糖尿病性NODマウスにおけるGLP−1(Bachem社、GLP−1(7−36)−アミド、ヒト)と組み合わせたガストリンの作用)
本実施例では、糖尿病性NODマウスにおける糖尿病を逆転させるための、GLP−1およびガストリンを用いる全身性療法後のインビボでのβ細胞新生を刺激することによる方法および組成物を示す。雌性NODマウス(12〜16週齢)は、糖尿病発現後2日間以内に始めて、ビヒクル(PBS)単独、GLP−1(300μg/kg/日)、またはGLP−1(300μg/kg/日)+ガストリン(3μg/kg/日)を用いて18日間にわたり1日2回の腹腔内注射によって処置した。糖尿病の発現は、空腹時血糖(FBG)値(6.0mM未満の正常FBGに比較して9〜15mM)によって決定した。マウスは、尿糖については1日1回、そしてFBG値については週1回監視した。
【0251】
処置開始時に、空腹時血糖値の範囲は11〜14mMであった。18日間にわたる処置後、FBGは、ビヒクル処置マウス群では24±1mM、GLP−1単独処置マウス群では13±2mM、ならびにGLP−1およびガストリンの併用処置マウス群では6±1mMであった(平均値±SE、処置群ではn=4(マウス);対照群ではn=6(マウス))。
【0252】
18日間の処置を停止した後、FBGをさらに6週間にわたり週1回監視した。処置完了から1週間後、併用療法で注射されたマウスのFBG値は正常値に戻り、それらは処置6週間後の試験終了までの全期間を通してそのようなレベルで維持された。これと比較して、未処置群の動物は、5週間後に疾患重症度のために致死させなければならなかった。GLP−1単独処置マウス群は処置中止後2週間までFBG値の一過性の改善を示したが、その後の空腹時血糖値は漸進的に上昇し、試験終了時には未処置ビヒクル群で観察されたレベルと同様となった。
【0253】
試験結果は図1に示した。
【0254】
これらの結果は、糖尿病性NODマウスへの短期間のGLP−1アゴニストおよびガストリン併用療法は糖尿病を効果的に治療するために高血糖症を正常化し、そしてβ細胞新生およびインスリン産生の刺激を示す空腹時血糖値への持続性作用を有したことを証明している。
【0255】
(実施例2 急性糖尿病性NODマウスにおけるGLP−1と組み合わせたガストリン(GI)の作用)
(目的:)
NODマウスは、膵島β細胞の自己免疫性破壊の結果としてインスリン依存型糖尿病を自然に発生する。本試験の目的は、GLP−1およびガストリン(G1)を用いて膵島β細胞を再生させることによってNODマウスにおける糖尿病を治療することであった。
【0256】
(方法:)
雌性NODマウス(12〜16週齢)を、ビヒクル(PBS)、または300μg/kg/日のGLP−1と3μg/kg/日のガストリン(GI)を組み合わせて用いて腹腔内注射(i.p.)によって18日間にわたり処置した。動物に糖尿病発現後2〜5日間以内に始めて18日間にわたり1日2回注射した。空腹時血糖(FBG)値は、糖尿病の発現時に9〜15mMであった(正常FBGは6.0mM未満)。尿中グルコースレベルについては1日1回、そしてFBG値については処置中、そして処置中止後にもさらに6週間にわたり週1回、マウスを監視した。膵インスリンレベルを各群について決定し、さらに膵組織の組織学的分析を実施した。膵組織を固定し、インスリン産生細胞について染色した。β細胞質量は、形態測定学的分析によって決定した。
【0257】
(結果:)
18日間にわたる1日1回の処置後に、30μg/kg/日のGLP−1および3μg/kg/日のG1の組み合わせで処置した動物では、空腹時血糖値は6.1±0.7mMであったが、ビヒクル処置群における空腹時血糖値は24.4±1.5mMであった。これに比較して、GLP−1単独処置群の動物は12.5±2.2mMの空腹時血糖値を有していた。これらのデータは、GLP−1およびガストリン併用療法がNODマウスにおける血糖値を制御することに関してGLP−1単独より有効であったことを示している。
【0258】
全処置は18日後に中止したが、FBGはさらに6週間にわたり週1回監視した。処置完了から1週間後、併用療法で注射されたマウスにおけるFBG値は正常値(6mM未満)となり、試験終了までの全期間を通してそのようなレベルを維持し、処置6週間後のFBG値は4.3±0.2mMであった。これに比較して、GLP−1処置群動物は最高血糖値(30mM超)に達し、糖尿病性合併症に罹患していた。未処置群の動物は、処置5週間後に疾患重症度のために致死させなければならなかった(図1および図2)。
【0259】
これらのデータは、GLP−1およびガストリンの組み合わせは処置6週間後でさえ正常血糖値を回復させることに有効であったが、他方GLP−1処置群動物は重症高血糖症を発症したことを示している。
【0260】
図3は、非糖尿病性動物は膵臓当たり約10μgのインスリンを有するが、他方上昇した血糖値を備える急性糖尿病性の動物は0.5〜1.0μgの膵インスリンを有することを例示している。これらのデータは、NODマウスが血糖値を調節するためにそれらの膵インスリンの10%未満しか必要としないことを示している。糖尿病の発症5週間後、未処置群動物は最低レベルの膵インスリンを有しており、この段階で動物は30〜32mMの血糖値を有し、糖尿病性合併症に罹患していた。GLP−1処置群は未処置動物群より高い1.0〜1.5μgの膵インスリンレベルを有しており、これはGLP−1がNODマウスモデルにおいていくらか膵島細胞再生を刺激することを示唆している。
【0261】
注目すべきことに、GLP−1およびガストリン処置動物群は膵臓当たり8μgを超えるインスリンを有していたていたが、これはGLP−1群より有意に高いだけではなく、正常な非糖尿病性膵インスリンレベルの80%を超えている。これらの試験は、GLP−1およびガストリン併用療法が、処置後の長期間にわたり疾患を逆転させることのできる膵島再生を刺激することに極めて強力であることを示している。
【0262】
GLP−1およびガストリン併用群は、膵インスリン含量を糖尿病の発症後および処置前に測定した低レベルから血糖正常マウスにおいて測定したレベルに類似するレベルへ回復させることができた。NODマウスにおける高血糖症の矯正は、図4に示したように、膵インスリン含量の上昇と有意に相関していた(r=0.90)。
【0263】
図5は、インスリン染色細胞(茶褐色に)は処置前の急性糖尿病性NODマウスにおいてはほとんど見られないことを示している。これらの膵島細胞の数は、未処置群では経時的にさらに減少する。組織学的検査は、GLP−1およびガストリン併用処置マウス群において膵管に隣接して、単核白血球によって取り囲まれているが浸潤はされていない、大きな、強度にインスリンが染色された膵島を明らかにした。
【0264】
β細胞質量は実験の進行中(8週間)に0.41mgから0.01mgへ減少したが、他方GLP−1およびガストリン併用処置動物群ではβ細胞質量は1.05mgへ増加した。非糖尿病性動物におけるβ細胞質量は、1.0〜1.5mgの範囲内にあると報告されている。GLP−1およびガストリン併用処置は、NODマウスにおけるβ細胞質量を、処置終了6週間後に試験した場合でさえほぼ正常レベルへ有意に増加させる。
【0265】
図6は、ビヒクルならびにGLP−1およびガストリンを用いて処置されたNODマウスにおける膵管からの膵島細胞の染色を示している。これらのデータは、膵管中の膵島細胞クラスターのβ細胞質量が実験の進行(8週間)中に0.06から0.01へ減少するが、他方これらのβ細胞質量のクラスターはGLP−1およびガストリン併用処置NODマウス群においては0.17mgへ上昇したことを証明している。これらのデータは、GLP−1およびガストリン併用処置がNODマウスにおいて膵管中で膵島前駆細胞を含む膵島細胞新生を誘導することを示している。
【0266】
これを要約すると、これらの試験はGLP−1およびガストリン併用処置がNODマウスモデルにおいてこれらの疾患モデルにおいて進行する可能性のある破壊を圧倒するために十分に膵島細胞再生を誘導し、膵臓内の島細胞の最終的な蓄積をもたらすことを示している。
【0267】
(結論:)
糖尿病性NODマウスに対する短期間のGLP−1およびガストリン処置は高血糖症を正常化させ、処置後少なくとも6週間にわたり空腹時血糖値に持続性の作用を及ぼす。さらに、これらのデータは、GLP−1およびガストリンが、正常レベルの80〜90%に近い膵インスリンレベルを刺激することができるが、他方GLP−1単独は穏当な作用しか有していないことを示している。
【0268】
さらにその上、膵の組織学的分析は、炎症性細胞に取り囲まれているにもかかわらず、膵島細胞が正常に見え、極めて多数のインスリン産生細胞を有することを示している。膵臓の形態測定学的分析は、GLP−1およびガストリン処置が膵臓中のβ細胞質量を増加させることを証明し、そして膵管中のβ細胞質量を増加させることによって細胞新生を誘導する徴候を示している。GLP−1およびガストリン処置は、NODマウスモデルにおいて正常血糖値および膵インスリンレベルを回復させることのできる膵島再生の強力な誘導因子である。
【0269】
(実施例3 発症早期糖尿病を有するNODマウスにおける糖尿病進行を防止する際のGLP−1と組み合わせたPCT/CA03/01778記載の修飾されたガストリン化合物/結合体)
GLP−1および未修飾ガストリンならびにGLP−1および修飾されたガストリン化合物/結合体の併用療法の作用を発症早期糖尿病を有するNODマウスにおいて試験し、GLP−1およびガストリン処置療法の投与が重症高血糖症を予防するかどうか、ならびに発症早期糖尿病を有するNODマウスにおける膵インスリン含量を増加させるかどうかを決定する。使用するGLP−1は、ヒト/マウスGLP−1のGLP−1生物活性フラグメント(それからフラグメントがプロセシングされる前駆物質に比較して7〜36位で残基を有する;Bachem H6795から入手した)である。使用するガストリン化合物/結合体は以下のとおりである:化合物B − アミノ酸15位でLeu残基を備える17アミノ酸残基を有する合成ヒトガストリンIとしてのガストリン、化合物E − 2〜17アミノ酸残基を有する合成ヒトガストリンIとしてのガストリン、化合物Q − (GA)(すなわち、Gly−Ala−Gly−Ala−Gly−Ala−Gly−Ala−Gly−Ala)を介して結合されたHSAポリマーを備える2〜17アミノ酸残基を有する合成ヒトガストリンIとしてのガストリン。
【0270】
非肥満性糖尿病性(NOD)雌性マウス(12〜14週齢)を糖尿病発症の進行について監視し(空腹時血糖値は8.0〜15mmoL/L)、そして症状出現後48時間以内に、4群のマウスを各々以下のとおりに処置する:1群はビヒクル単独で処置する;もう1つの群には100μg/kg/日のGLP−1を投与し、残りの群はGLP−1(100μg/kg/日)およびガストリン化合物(3μg/kg/日のガストリン同等量)の組み合わせを投与するが、各処置は1日1回腹腔内経路を介して投与する。
【0271】
療法は14日間〜18日間にわたり投与する。動物は空腹時血糖(FBG)値について週1回監視する。FBG値は食物が除去されてから約12時間後に、および最終ペプチドもしくはビヒクル注射の24時間後に測定する。処置の中止後、処置の終了後に高血糖症の防止が持続するかどうかを決定できるように、全マウスをFBG値について次の4週間(第2〜6週間)にわたり監視する。14〜18日間後に、処置を停止する。
【0272】
プロトコールには、6週間後に再びデータ取得のためにこれらのマウスをサンプリングする工程、FBGおおび血漿C−ペプチドをアッセイするために採血する工程、および膵島インスリン値を決定するためにマウスを致死させて膵島炎症(インスリン炎)について評価付けする工程が含まれる。処置の開始から、マウスはインスリン置換療法も免疫抑制療法も受けない。以下のパラメーターについて評価する:生存率、膵インスリンレベル、膵島炎症の存在および空腹時血糖値。
【0273】
長い半減期を有する修飾されたガストリン化合物/結合体(化合物EまたはQ)と組み合わせたGLP−1は、糖尿病性動物におけるより一層の血糖値低下を提供することができる。
【0274】
(実施例4)
標準Fmoc合成を用いて、2つの相違する「反応性」ガストリン化合物を生成する:化合物Aは、N末端で追加のシステインを有する修飾されたガストリン−17である;化合物Bは、N末端で追加のシステインを備えるスペーサー領域として交互のグリシンおよびアラニン(各々5アミノ酸)の追加の10アミノ酸を有する修飾されたガストリン−17ペプチドである。
【0275】
非肥満性糖尿病性(NOD)雌性マウスを糖尿病の発症(6.6mmoL/Lより高い空腹時血糖(FBG)値であると決定された)について監視し、糖尿病が発症したら、4つの群に分割する。マウスは、14日間にわたり1日1回、腹腔内注射(i.p.)を介して投与する、対照としてのビヒクル;またはガストリン−17、化合物A、もしくは化合物Bのいずれかで処置する(3つのガストリン処置群全てにおいて、同じモル濃度の有効成分、すなわちガストリンが使われるものとする)。
【0276】
空腹時血糖(FBG)値および膵インスリンレベルを測定かつ決定する。さらに、ガストリンの血清中半減期ならびにガストリンの循環血清中レベルを測定する。
【0277】
3つのガストリン処置群のうち、化合物Aまたは化合物Bのどちらかで処置されるNODマウスの両群は血清中ガストリンのより高い循環中レベルを維持するであろう。さらに、測定されたガストリンの半減期は、非修飾ガストリンに比較して化合物AまたはBのどちらかで処置されたマウスでは長くなるであろう。
【0278】
さらに、次第に増加する高FBG値を記録するビヒクル処置対照群に比較して、全3つの処置動物群は減少したFBG値を有することもまた予想されている。化合物Aまたは化合物Bのどちらかで処置された動物は、未修飾ガストリンを用いて処置した動物に比較していっそう低いFBG値ならびに上昇した膵インスリンレベルを有する可能性がある。
【0279】
本発明は、本明細書に記載した特定の実施形態による範囲内に限定するべきではないが、それは、そのような実施形態は本発明の1つの態様の単独の例示としてのみ意図されており、任意の機能的に同等の実施形態は本発明の範囲内に含まれるためである。実際に、本明細書に示して記載した修飾ならびに本発明の様々な修飾は、上述した説明および添付の図面から当業者には明白になるであろう。そのような修飾は、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されている。
【0280】
本明細書で言及するすべての刊行物、特許および特許出願は、各個別刊行物、特許または特許出願が詳細かつ個別にその全体が参照して組み込まれると指示されているのと同程度に参照してその全体が本明細書に組み込まれる。本明細書における参考文献についての言及は、そのような参考文献を本発明の先行技術として利用できるという是認ではない。
【0281】
【表1−1】

【0282】
【表1−2】

【0283】
【化18】

【0284】
【化19】

【0285】
【化20】

【0286】
【化21】

【図面の簡単な説明】
【0287】
【図1】急性糖尿病性NODマウスにおける空腹時血糖値へGLP−1アゴニストおよびガストリン化合物(INT−2)を用いる膵島細胞新生療法が及ぼす作用を示したグラフである。この図は、GLP−1(300μg/kg)およびガストリン(3μg/kg)の併用療法がNODマウスにおいて高血糖症を逆転させて死亡を防止することを例示している。
【図2】GLP−1(300μg/kg)およびガストリン(3μg/kg)の組み合わせを用いて治療した急性糖尿病性NODマウスにおける個々の空腹時血糖値を示したグラフである。
【図3】GLP−1およびガストリンの併用療法はNODマウスモデルにおいて膵インスリンレベルを回復させる。
【図4】膵インスリン含量と空腹時血糖値との相関を示しているグラフである。
【図5】ビヒクルおよびGLP−1およびガストリンを用いて治療された急性糖尿病性NODマウスにおけるインスリン染色細胞を示した図である。
【図6】ビヒクルおよびGLP−1およびガストリンを用いて治療されたNODマウスにおける膵管からの膵島細胞の染色を示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各化合物単独に比較して有益な効果を提供するGLP−1アゴニストおよびガストリン化合物、ならびに必要に応じて薬学的に受容可能なキャリア、賦形剤、またはビヒクルを含有する、薬学的組成物。
【請求項2】
被験体において投与後の長期間にわたって持続する正常血糖値を提供する形態にある、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項3】
GLP−1アゴニストおよびガストリン化合物を必要とする被験体の長期療法または短期療法のための形態で治療有効量のGLP−1アゴニストおよびガストリン化合物を含有する、請求項1または2のいずれかに記載の薬学的組成物。
【請求項4】
前記治療有効量が、糖尿病を治療するために投与される各化合物単独の量に比較して最適量より少ない、請求項3に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
GLP−1アゴニストのガストリン化合物に対する比率がGLP−1アゴニストまたはガストリン化合物の活性を増大するように選択される、請求項1〜4のいずれかに記載の薬学的組成物。
【請求項6】
GLP−1アゴニストのガストリン化合物に対する比率が、約1:1〜1:110、1:1〜1:100、1:1〜1:75、1:1〜1:50、1:1〜1:25、1:1〜1:10、1:1〜1:5、および1:1である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項7】
GLP−1アゴニストに対するガストリン化合物の比率が、約1:1〜1:110、1:1〜1:100、1:1〜1:75、1:1〜1:50、1:1〜1:25、1:1〜1:10、および1:1〜1:5である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項8】
前記GLP−1アゴニストが、約1:1.5〜1:150、好ましくは1:2〜1:50の間の治療有効量の比率でガストリン化合物と組み合わせて使用される、請求項1〜7のいずれかに記載の薬学的組成物。
【請求項9】
前記GLP−1アゴニストおよび前記ガストリン化合物が、状態および/または疾患を治療するために必要とされる各化合物単独の用量に比較して少なくとも約1.1〜1.4分の1、1.5分の1、2分の1、3分の1、4分の1、5分の1、6分の1、7分の1、8分の1、9分の1、もしくは10分の1である用量で存在する、請求項1〜8のいずれかに記載の薬学的組成物。
【請求項10】
薬学的に受容可能な賦形剤、キャリア、またはビヒクル中に追加量の前記GLP−1アゴニストおよび前記ガストリン化合物を含有する、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項11】
薬学的に受容可能な賦形剤、キャリア、またはビヒクル中に相乗的有効量の前記GLP−1アゴニストおよび前記ガストリン化合物を含有する、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項12】
0.1〜20μg/kg/日、0.1〜30μg/kg/日、0.1〜40μg/kg/日、0.1〜50μg/kg/日、および0.1〜60μg/kg/日の間のGLP−1アゴニストならびに0.1〜20μg/kg/日、0.1〜30μg/kg/日、0.1〜40μg/kg/日、0.1〜50μg/kg/日、および0.1〜60μg/kg/日のガストリン化合物を含有する、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項13】
前記有益な効果が、以下:膵島炎症の減少もしくは欠如、疾患進行の低下、生存率の上昇、または疾患もしくは状態の症状の減少のうちの1つ以上である、請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項14】
前記有益な効果が治療終結後の長期間にわたり持続する有益な効果である、請求項1〜13のいずれかに記載の薬学的組成物。
【請求項15】
前記有益な効果が、治療後に少なくとも約2週間、4週間、5週間、6週間、もしくは10週間、2〜4週間、2〜8週間、2〜12週間、2〜24週間、2週間〜12カ月間、および2週間〜18カ月間持続する、請求項14に記載の薬学的組成物。
【請求項16】
前記持続性の有益な効果が、C−ペプチド産生の上昇、膵インスリン産生の上昇、および治療後の長期間にわたるほぼ正常もしくは低血糖値として現れ得る、請求項15に記載の薬学的組成物。
【請求項17】
前記有益な効果が膵インスリンレベルの少なくとも約0.5%、1%、2%、5%、10%、15%、20%、30%、33%、35%、40%、45%、または50%の上昇である、請求項1〜16のいずれかに記載の薬学的組成物。
【請求項18】
前記有益な効果が血糖値の少なくとも約2%、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%の減少である、請求項1〜17のいずれかに記載の薬学的組成物。
【請求項19】
前記有益な効果が、治療後に少なくとも2週間、4週間、6週間、8週間、もしくは10週間、2〜4週間、2〜6週間、2〜8週間、2〜12週間、2〜24週間、2週間〜12カ月間、および2週間〜18カ月間の期間にわたる血糖値の減少である、請求項1〜18のいずれかに記載の薬学的組成物。
【請求項20】
前記GLP−1アゴニストが、GLP−1(1−37)、GLP−1(7−36)−アミド、そのフラグメント、アナログ、および誘導体、ならびにGLP−1の活性代謝産物およびプロドラッグである、請求項1〜19のいずれかに記載の薬学的組成物。
【請求項21】
前記GLP−1が、配列番号5のGLP−1(7−36)または配列番号14のガストリン−17(leu)である、請求項1〜20のいずれかに記載の薬学的組成物。
【請求項22】
前記GLP−1アゴニストが式GLP−1(7−R)の親ポリペプチドを含み、ここで、Rは、36、37、38、39、40、41、42、43、44、および45であり、そして任意で5個、10個、または15個までのアミノ酸残基が任意のa−アミノ酸残基と置換されている、請求項1〜21のいずれかに記載の薬学的組成物。
【請求項23】
前記GLP−1アゴニストが表1に列挙したGLP−1のアナログまたは誘導体である、請求項1〜22のいずれかに記載の薬学的組成物。
【請求項24】
前記ガストリン化合物が、ガストリン−71(配列番号15)、ガストリン−52(配列番号16)、ガストリン−34(ビッグガストリン)(配列番号11もしくは配列番号12)、ガストリン−17(リトルガストリン)(配列番号13もしくは配列番号14)、ガストリン−14(配列番号17)、ガストリン−8、ガストリン−6(配列番号18もしくは配列番号19)、ペンタガストリン、およびテトラガストリンである、請求項1〜23のいずれかに記載の薬学的組成物。
【請求項25】
前記ガストリン化合物が、式Z−Y−X−AA−AA−AA−AA−AA−AAの化合物であり、ここで、AAはTyrまたはPheであり、AAはGly、Ala、またはSerであり、AAはTrp、Val、またはIleであり、AAはMetまたはLeuであり、AAはAspまたはGluであり、そしてAAは必要に応じてアミド化されたPheまたはTyrであり;Zはキャリア、好ましくはポリマーであり、より好ましくはタンパク質であり;Yはセリンおよびアラニンを含むがそれらに限定されない小さな中性アミノ酸のm個のアミノ酸残基を含む任意のスペーサー領域であり、そしてXは、配列番号11もしくは12の残基1〜28または配列番号13もしくは14の残基1〜11の任意の連続部分であり、好ましくはAA−AA−AA−AA−AA−AAは、Tyr−Gly−Trp−Met−Asp−PheまたはTyr−Gly−Trp−Leu−Asp−Pheである、化合物である、請求項1〜24のいずれかに記載の薬学的組成物。
【請求項26】
前記GLP−1アゴニストが、Gly8−GLP−1(7−37)、Val8GLP−1(7−37)、Val8Asp22GLP−1(7−37)、Val8Glu22GLP−1(7−37)、Val8Lys22GLP−1(7−37)、Val8His22GLP−1(7−37)、Arg34Lys26(Ne(g−Glu(Na−ヘキサデカノイル)))−GLP−1(7−37)、G1y8−GLP−1(7−36)アミド、Val8GLP−1(7−36)アミド、Val8Asp22GLP−1(7−36)アミド、Val8Glu22GLP−1(7−36)アミド、Val8Lys22GLP−1(7−36)アミド、およびVal8His22GLP−1(7−36)アミドからなる群より選択され、そして前記ガストリン化合物が配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号17または配列番号18を含むガストリンである、請求項1〜25のいずれかに記載の薬学的組成物。
【請求項27】
前記GLP−1アゴニストがArg34Lys26(Ne(g−Glu(Na−ヘキサデカノイル)))−GLP−1(7−37)であり、前記ガストリン化合物が15Leuガストリン−17(配列番号14)である、請求項1〜26のいずれかに記載の薬学的組成物。
【請求項28】
前記ガストリン化合物が血清タンパク質、好ましくはヒト血清アルブミンと結合している、請求項27に記載の薬学的組成物。
【請求項29】
GLP−1アゴニスト、ガストリン化合物、ならびにGLP−1アゴニストを物理的に安定化させるために有効で、有益な効果、好ましくは持続性の有益な効果を提供するために適合させた薬学的に受容可能なキャリア、賦形剤、またはビヒクルを混合する工程を包含する、GLP−1アゴニストの安定性薬学的組成物を調製するための方法。
【請求項30】
有益な効果、特に持続性の有益な効果を提供するためにガストリン化合物に結合したGLP−1アゴニストを含む結合体。
【請求項31】
前記GLP−1アゴニストが、Gly8−GLP−1(7−37)、Val8GLP−1(7−37)、Val8Asp22GLP−1(7−37)、Val8Glu22GLP−1(7−37)、Val8Lys22GLP−1(7−37)、Val8His22GLP−1(7−37)、Arg34Lys26(Ne(g−Glu(Na−ヘキサデカノイル)))−GLP−1(7−37)、G1y8−GLP−1(7−36)アミド、Val8GLP−1(7−36)アミド、Val8Asp22GLP−1(7−36)アミド、Val8Glu22GLP−1(7−36)アミド、Val8Lys22GLP−1(7−36)アミド、およびVal8His22GLP−1(7−36)アミドからなる群より選択され、そして前記ガストリン化合物が必要に応じて血清タンパク質と結合した配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号17、または配列番号18を含むガストリンである、請求項30に記載の結合体。
【請求項32】
被験体における状態および/または疾患を治療または予防するための方法であって、持続性の有益な効果を生成するために、該被験体へ治療有効量のGLP−1アゴニストおよびガストリン化合物、または請求項1〜28、30および31のいずれかに記載の組成物もしくは結合体を投与する工程を包含する、方法。
【請求項33】
前記持続性の有益な効果が、治療後少なくとも2週間、4週間、6週間、8週間、もしくは10週間、2〜4週間、2〜6週間、2〜8週間、2〜12週間、2〜24週間、2週間〜12カ月間、および2週間〜18カ月間にわたる血糖値の減少である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
糖尿病の症状を有する被験体への投与の際に持続性の有益な効果を提供する少なくとも1つのガストリン化合物の投与と組み合わせて、該被験体へ治療有効量の少なくとも1つのGLP−1アゴニストを投与する工程を包含する、治療方法。
【請求項35】
少なくとも1つのガストリン化合物の投与と組み合わせた少なくとも1つのGLP−1アゴニストの投与が糖尿病の少なくとも1つの症状への持続性の有益な効果を提供する、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
治療有効量の前記GLP−1アゴニストおよび前記ガストリン化合物が前記被験体への投与前に組み合わせられる、請求項34または35に記載の方法。
【請求項37】
治療有効量の前記GLP−1アゴニストおよび前記ガストリン化合物が前記被験体へ連続的に投与される、請求項34または35に記載の方法。
【請求項38】
GLP−1アゴニストおよびガストリン化合物の治療有効量が相乗的有効量である、請求項29、32〜37のいずれかに記載の方法。
【請求項39】
GLP−1アゴニスト、ガストリン化合物、ならびにGLP−1アゴニストを物理的に安定化させるために有効で、有益な効果、好ましくは持続性の有益な効果を提供するために適合させた薬学的に受容可能なキャリア、賦形剤、またはビヒクルを混合する工程を包含する、GLP−1アゴニストの安定な薬学的組成物を調製する方法。
【請求項40】
状態および/または疾患を治療する方法であって、有益な効果、好ましくは持続性の有益な効果を生成するために、治療を必要とする被験体へ複数の細胞とともに、GLP−1アゴニストおよびガストリン化合物、または請求項1〜28、30および31のいずれかに記載の組成物もしくは結合体を投与する工程を包含する、方法。
【請求項41】
前記状態および/または疾患が、異脂肪血症、高血糖症、重症低血糖性エピソード、脳卒中、左室肥大症、不整脈、菌血症、敗血症、過敏性腸症候群、呼吸窮迫症候群、機能性消化不良、糖尿病、術後の異化作用の変化、ストレス誘導性高血糖症、胃潰瘍、心筋梗塞、グルコース寛容減損、高血圧、アルツハイマー病およびその他の中枢神経変性状態および末梢神経変性状態、慢性心不全、体液うっ滞状態、代謝性症候群、ならびに関連疾患、障害および肥満症である、請求項29、32〜40のいずれかに記載の方法。
【請求項42】
前記状態および/または疾患が糖尿病である、請求項40または41に記載の方法。
【請求項43】
被験体における膵島細胞新生を誘導するための方法であって、膵島前駆細胞を、該被験体における膵島前駆細胞の増殖を増加させるために十分な量でGLP−1アゴニストおよびガストリン化合物、または請求項1〜28、30および31のいずれかに記載の組成物もしくは結合体と接触させ、それにより膵島細胞新生を誘導する工程を包含する、方法。
【請求項44】
幹細胞をインスリン分泌細胞へ拡大かつ分化させるための方法であって、該幹細胞を有効量のGLP−1アゴニストおよびガストリン化合物または請求項1〜28、30および31のいずれかに記載の組成物もしくは結合体と接触させる工程を包含する、方法。
【請求項45】
前記GLP−1アゴニストが、Gly8−GLP−1(7−37)、Val8GLP−1(7−37)、Val8Asp22GLP−1(7−37)、Val8Glu22GLP−1(7−37)、Val8Lys22GLP−1(7−37)、Val8His22GLP−1(7−37)、Arg34Lys26(Ne(g−Glu(Na−ヘキサデカノイル)))−GLP−1(7−37)、G1y8−GLP−1(7−36)アミド、Val8GLP−1(7−36)アミド、Val8Asp22GLP−1(7−36)アミド、Val8Glu22GLP−1(7−36)アミド、Val8Lys22GLP−1(7−36)アミド、およびVal8His22GLP−1(7−36)アミドからなる群から選択され、そして前記ガストリン化合物が血清タンパク質と結合した配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号17、または配列番号18を含むガストリンである、請求項29および32〜44のいずれかに記載の方法。
【請求項46】
前記GLP−1アゴニストがArg34Lys26(Ne(g−Glu(Na−ヘキサデカノイル)))−GLP−1(7−37)であり、前記ガストリン化合物が15Leuガストリン−17(配列番号14)である、請求項29および32〜45のいずれかに記載の方法。
【請求項47】
状態および/または疾患を治療するための医薬を調製するための少なくとも1つのGLP−1アゴニストおよび少なくとも1つのガストリン化合物の組み合わせを含有する、組成物の使用。
【請求項48】
状態および/または疾患を治療するための医薬を製造するためのガストリン化合物と組み合わせて使用されるGLP−1アゴニストの使用。
【請求項49】
前記GLP−1アゴニストが、Gly8−GLP−1(7−37)、Val8GLP−1(7−37)、Val8Asp22GLP−1(7−37)、Val8Glu22GLP−1(7−37)、Val8Lys22GLP−1(7−37)、Val8His22GLP−1(7−37)、Arg34Lys26(Ne(g−Glu(Na−ヘキサデカノイル)))−GLP−1(7−37)、G1y8−GLP−1(7−36)アミド、Val8GLP−1(7−36)アミド、Val8Asp22GLP−1(7−36)アミド、Val8Glu22GLP−1(7−36)アミド、Val8Lys22GLP−1(7−36)アミド、およびVal8His22GLP−1(7−36)アミドからなる群より選択され、そして前記ガストリン化合物が配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号17、または配列番号18を含むガストリンである、請求項47または48に記載の使用。
【請求項50】
前記GLP−1アゴニストがArg34Lys26(Ne(g−Glu(Na−ヘキサデカノイル)))−GLP−1(7−37)であり、前記ガストリン化合物が15Leuガストリン−17(配列番号14)である、請求項47〜49のいずれかに記載の使用。
【請求項51】
前記状態および/または疾患が、異脂肪血症、高血糖症、重症低血糖性エピソード、脳卒中、左室肥大症、不整脈、菌血症、敗血症、過敏性腸症候群、機能性消化不良、呼吸窮迫症候群、糖尿病、術後の異化作用の変化、ストレス誘導性高血糖症、胃潰瘍、心筋梗塞、グルコース寛容減損、高血圧、アルツハイマー病およびその他の中枢神経変性疾患および末梢神経変性状態、慢性心不全、体液うっ滞状態、代謝性症候群、ならびに関連疾患、障害および肥満症である、請求項47〜50のいずれかに記載の使用。
【請求項52】
請求項1〜28、30および31のいずれかに記載の組成物または結合体のキット形。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−519642(P2007−519642A)
【公表日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−549818(P2006−549818)
【出願日】平成17年1月28日(2005.1.28)
【国際出願番号】PCT/CA2005/000099
【国際公開番号】WO2005/072045
【国際公開日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(504430972)ワラタ ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (15)
【Fターム(参考)】