血糖計
【課題】必要且つ十分な精度のサンプリングクロックの周波数を設定し、必要最小限の時間だけ供給する、測定精度と低消費電力を両立した血糖計を提供する。
【解決手段】A/D変換器からデジタルデータを取得するためのクロックは、要求される分解能と血糖値の測定曲線の傾きに基づいて決定する。血糖計の動作モードに応じてサンプリングクロックを適切に設定し、特に測定開始を決定するモードでは高速のクロックパルスを連続して生成し、点着を検出した時点からタイマ等の計測動作を開始すると共に、クロックパルスの生成を間歇的なものに切り替えるように、クロック生成部を構成する。
【解決手段】A/D変換器からデジタルデータを取得するためのクロックは、要求される分解能と血糖値の測定曲線の傾きに基づいて決定する。血糖計の動作モードに応じてサンプリングクロックを適切に設定し、特に測定開始を決定するモードでは高速のクロックパルスを連続して生成し、点着を検出した時点からタイマ等の計測動作を開始すると共に、クロックパルスの生成を間歇的なものに切り替えるように、クロック生成部を構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血糖計に適用して使用するのに好適な技術に関する。
より詳細には、血糖計に必要な測定精度を確保しつつ、電力消費を極力低減した血糖計に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、糖尿病は膵臓のインスリン分泌異常やインスリンに対する感受性低下に起因する。特にインスリン分泌が停止した1型の糖尿病患者では食事前に血糖値を測定し、その値に応じてインスリンを投与する必要がある。
従来、家庭内で患者自ら或はその家族が血糖値を簡便に測定するために、出願人は、小型で自己測定を目的とした血糖値測定装置(以下「血糖計」)を開発し、製造販売している。また、出願人は病棟向けに複数の患者に対応可能な各種の管理機能を備えた血糖計の開発を進めている。
【0003】
血糖計は、血液を試薬に接触させて生じる生化学反応により、グルコース値を色濃度や電気信号に変換する原理を用いて、血糖値を測定する機器である。この生化学反応は反応が安定するまでに時間がかかる。
ところで、病棟では多数の患者を相手に血糖値の計測を迅速に行わなくてはならない。つまり、生化学反応が安定するまで待っていられない、という事情がある。そこで、生化学反応が安定するまで待つのではなく、反応途中の生化学反応の過渡応答に基づいて、より迅速に血糖値を求める方法が考えられている。例えば、特許文献1や特許文献2に示されるように、所定の計算式等に基づいて反応終点を予測する方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−144750号公報
【特許文献2】特開2006−71421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
生化学反応の過渡応答に基づいて迅速に血糖値を求める場合、厳密な時間の管理が必要になる。生化学反応の開始である、血液が試薬に接触した瞬間から、所定の計測時間を正確に計測しなければならない。
グルコース値を色濃度で観測する方式の場合、LED等の発光素子を用いて試薬が含まれている試験紙に光を照射し、その反射光をフォトダイオード等の受光素子で検出し、A/D変換器でデジタルデータに変換する。A/D変換器に供給するサンプリングクロックの周波数が低いと、血液が試薬に接触した瞬間を正確に検出することができなくなる。したがって、反応開始を正確に検出するために、サンプリングクロックの周波数を十分高く設定する必要がある。しかし、A/D変換器は携帯型電子機器である血糖計にとって電力消費が大きい部品である。このため、サンプリングクロックの周波数はできるだけ低い方が望ましい。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、必要且つ十分な精度のサンプリングクロックの周波数を設定し、必要最小限の時間だけ供給する、測定精度と低消費電力を両立した血糖計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の血糖計は、測定チップが装着された状態で血液を測定チップに付着させて血液中のグルコース量に応じた信号を出力する血糖値測定部と、信号をデジタルデータに変換するA/D変換器と、デジタルデータに基づいて測定チップに血液が付着したか否かを判定する点着判定部と、デジタルデータに基づいて血糖値を得る測定処理部と、A/D変換器からデジタルデータを取得するためのクロックであり、クロックの周期が、要求分解能を血糖値反応曲線の所定の時間における傾きで除算した値以下であるクロックを生成するクロック生成部とを具備する。
【0008】
A/D変換器からデジタルデータを取得するためのクロックは、要求される分解能と血糖値の測定曲線の傾きに基づいて決定する。
血糖計の動作モードに応じてサンプリングクロックを適切に設定し、特に測定開始を決定するモードでは高速のクロックパルスを連続して生成し、点着を検出した時点からタイマ等の計測動作を開始すると共に、クロックパルスの生成を間歇的なものに切り替えるように、クロック生成部を構成する。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、必要且つ十分な精度のサンプリングクロックの周波数を設定し、必要最小限の時間だけ供給する、測定精度と低消費電力を両立した血糖計を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態の例である、血糖計の外観斜視図である。
【図2】本発明の実施形態の例である、血糖計の上面図である。
【図3】光学測定部の模式図である。
【図4】血糖計の内部ブロック図である。
【図5】血糖計の機能ブロック図である。
【図6】制御部が低速クロック生成部又は高速クロック生成部を制御する状態を示す表である。
【図7】高速クロック生成部の機能ブロック図である。
【図8】低速クロック生成部の機能ブロック図である。
【図9】低速クロック生成部及び高速クロック生成部が生成するクロックパルスを示すタイムチャートである。
【図10】高速シーケンサが生成するタイミングパルス及びサンプリングクロックを示すタイムチャートである。
【図11】低速シーケンサが生成するタイミングパルス及びサンプリングクロックを示すタイムチャートである。
【図12】血糖値を測定する際に、検量線データを用いて算出した測定値を時間の経過と共に示す血糖値反応曲線のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を、図1乃至図12を参照して説明する。
【0012】
図1は、本発明の実施形態の例である、血糖計の外観斜視図である。
図2は、本発明の実施形態の例である、血糖計の上面図である。
【0013】
血糖計101は、医師や看護師或いは患者本人等が、携帯電話のように手に持って操作して、血糖値を計測するための携帯型機器であり、このために片手で容易に持てる形状及び重量で形成されている。
血糖計101は、単に血糖値を測定するだけでなく、付加的な機能として、患者の氏名やIDを確認し、患者毎に測定値データを格納し、必要である場合には患者毎に投与するべき適切な薬剤の確認等を行うことができる。
【0014】
血糖計101の筐体102は、細長い合成樹脂の容器である。筐体102の長手方向の先端には、血糖値等を測定する金属でできた円筒形状の光学測定部103が設けられている。血糖値測定部ともいえる光学測定部103の内部には、後述するLEDとフォトダイオードが内蔵されている。
光学測定部103は血糖測定チップ(以下「測定チップ」)の着脱が可能なように形成されている。使用済みの測定チップは、イジェクトレバー104を操作することで光学測定部103から取り外すことができる。
また、筐体102の前面には測定結果や確認事項等を表示する、LCDよりなる表示パネル105が設けられている。表示パネル105の横には、複数のボタンを有する操作パネル106が設けられている。
血糖計101の内部には、この他に筐体102に内蔵される図示しないリチウムイオンバッテリや、バーコードを読み取る図示しないバーコードリーダユニット、患者データや計測した血糖値データ等の送受信を行う図示しないIrDAインターフェース等を有するが、本発明に直接的には関係しないので詳細は割愛する。
【0015】
図2には、血糖計101の外観からは直接的には見えないものの、測定器本体の内部にはプリント基板である回路基板202が内蔵されている。回路基板202には周知のマイコンが実装されている。マイコンはリチウムイオンバッテリの電力で動作し、操作パネル106から操作命令信号を受け、光学測定部103の内部のLEDを駆動し、フォトダイオードを通じて所定の血糖値測定を行い、表示パネル105に測定結果等を表示する。
【0016】
血糖計101の基本的な血糖測定の仕組みは、従来技術と同様である。以下、概略を簡単に説明する。
光学測定部103に測定チップ308を取り付け、測定対象者の血液を測定チップ308に吸引させる。この測定チップ308には、ポリエーテルサルホン等の多孔質膜でできた試験紙511が内蔵されている。そして、測定チップ308に吸引された血液は、試験紙511に到達すると、試験紙511に含まれている試薬と反応して、発色する。この発色反応には数秒から10数秒前後の時間を要するが、この反応は、周囲の気温によって影響を受ける。
発光素子であるLEDが発光する光を試験紙511に当て、試験紙511からの反射光を受光素子であるフォトダイオードにて受光する。そして、所定の反応時間を経過した後に、受光素子から得られたアナログの受光強度信号をデジタル値に変換した後、このデジタル値を血糖値に変換して表示パネル105に表示する。
なお、血糖値計側の仕組みは、発色試薬を利用した前記光学測定方式に限らず、電気化学センサー方式など、従来から血糖測定に使用され得る仕組みを採用することができる。
【0017】
前述のように、血糖値を測定する際、気温の高低によって試験紙511に含まれている試薬の反応時間が変化する。このため、血糖計101内部のマイコンの構成要素であるROMには、周囲の気温に対する反応の補正値が記憶されている。そして、ROMに格納されているマイコンのプログラムは、血糖値計測時の気温を検出して適切な計測値を算出するように構成されている。
ところが、測定中に気温が変化してしまうと、この補正値が正しく導き出せない。このため、誤った血糖値を導き出してしまう虞が極めて高い。つまり、測定中に気温が変化してはならない。勿論、測定の直前においても、気温に変化が生じていれば、その変化が落ち着くまで血糖値計測処理は控えなければならない。
【0018】
血糖計101の周囲の気温が安定していることを正しく検出するために、血糖計101には二つの温度計測素子が設けられている。
一つは、血糖計101の筐体の中心部分から離れ、筐体から熱的に独立した位置に設けられ、外気の温度(以下「外気温」)を計測する外気温センサである。
もう一つは、血糖計101の筐体の中心部分に設けられ、筐体内部の温度(以下「内部温」)を計測する内部温センサである。
この二つの温度センサが、ある一定時間を経過しても変化せず、且つ温度センサ同士の値の差が小さければ、血糖計101の筐体全体が外気温に「馴染んだ」、つまり外気温と血糖計101の筐体内部との温度差が、血糖値を正しく測定するに必要な程度に十分小さくなったことと判断できる。
【0019】
回路基板202には、内部温センサである内部温サーミスタ203が、マイコン等を構成する他の回路部品と同様に実装されている。
一方、外気温センサである外気温サーミスタ307は光学測定部103の中に設けられている。
図3は、光学測定部103の概略図である。
ステンレス等の金属製の筒302の中には、赤LED303と、緑LED309と、フォトダイオード304が基台305に設けられている。
基台305は、防塵のために薄いガラス板でできたガラス窓306によって外気から遮断されている。ガラス窓306には白金のワイヤーが印刷されており、これが外気温サーミスタ307を構成する。
筒302の内部には、測定チップ308を脱着可能にするための図示しない保持機構が組み込まれている。測定チップ308は装着されると試験紙511がガラス窓306に相対するように配置される。
【0020】
赤LED303は、測定チップ308に装着されている試験紙511に、赤色の光を照射する。赤LED303は、後述する全ての動作モードにおいて発光駆動される。
緑LED309は、測定チップ308に装着されている試験紙511に、緑色の光を照射する。緑LED309は、後述する複数の動作モードのうち、測定精度を要求されるモードにおいて発光駆動される。
【0021】
外気温サーミスタ307は、外気温を迅速且つ適切に計測するために、熱容量を小さくする必要がある。このため、外気温サーミスタ307を構成するガラス板は、直径6mm、厚み0.5mmという大きさで構成されている。このガラス板の熱容量はおよそ4mJ/Kである。
【0022】
[ハードウェア]
図4は血糖計101の内部ブロック図である。
血糖計101は、マイコンよりなるシステムであり、CPU402、ROM403及びRAM404と、それらを接続するバス405から構成されている。バス405には、上記の構成以外に、主にデータ入力機能を提供する部分と、データ出力機能を提供する部分も接続されている。
【0023】
血糖計101のデータ入力機能に該当する部位には、血糖計101にとって重要な血糖値測定データを得るための光学測定部103と、温度データを得るための内部温サーミスタ203及び外気温サーミスタ307、リアルタイムクロック407、そして操作パネル106であるボタン操作部408がある。
【0024】
光学測定部103を構成する赤LED303には、赤LED303を発光駆動するためのドライバ410が接続されている。
光学測定部103を構成する緑LED309には、緑LED309を発光駆動するためのドライバ424が接続されている。
ドライバ410及びドライバ424はD/A変換器411によって時分割にて駆動制御される。時分割駆動の詳細については後述する。
【0025】
光学測定部103を構成するフォトダイオード304には、I/V変換器416を介してA/D変換器413が接続されている。
赤LED303及び緑LED309は、適切な強度の光を測定チップ308内の試験紙511に照射する必要があるので、予め後述する不揮発性ストレージ414に記憶してある発光強度データに基づいて発光するように制御される。
つまり、血糖計101を構成するマイコンを動作させる、ROM403に格納されているプログラムは、発光強度データを不揮発性ストレージ414から読み出し、D/A変換器411でアナログの電圧信号に変換後、ドライバ410で電力増幅して、赤LED303を発光駆動する。同様に、プログラムは発光強度データを不揮発性ストレージ414から読み出し、D/A変換器411でアナログの電圧信号に変換後、ドライバ424で電力増幅して、緑LED309を発光駆動する。
【0026】
赤LED303及び緑LED309が発する光は、測定チップ308の試験紙511に照射され、試験紙511で反射した反射光はフォトダイオード304で検出される。
フォトダイオード304が受光した光の強度によって変化する、フォトダイオード304の信号電流は、I/V変換器416で信号電圧に変換され、さらに、A/D変換器413によって数値データに変換される。そして、この変換された数値データがRAM404及び不揮発性ストレージ414の所定領域に記録される。
【0027】
また、血糖計101は内部温サーミスタ203と外気温サーミスタ307を備えており、これらのサーミスタの抵抗変化によって、血糖計101が存在する環境の外気温と、血糖計101自体の内部温を測定できる。前述のフォトダイオード304と同様に、サーミスタの抵抗値はA/D変換器413によって数値化され、数値データはRAM404及び不揮発性ストレージ414の所定領域に記録される。なお、受光強度と気温を同時に測定する必要はないので、A/D変換器413はフォトダイオード304とサーミスタとで時分割で共用されている。
【0028】
リアルタイムクロック407は周知の日時データ出力機能を提供するICであり、多くのマイコンやパソコン等に標準搭載されているものである。
本発明の実施の形態の血糖計101では、患者データと血糖値を測定した時点の日時情報を紐付けて、不揮発性ストレージ414に記憶する必要があるので、リアルタイムクロック407が設けられている。
【0029】
血糖計101のデータ出力機能としては、表示パネル105であるLCD表示部415がある。
LCD表示部415には、ROM403に格納され、CPU402によって実行されるプログラムによって、様々な画面が表示される。
【0030】
血糖計101内部のマイコンを構成する要素のうち、データ入出力機能の他に、データ記憶機能を提供する、EEPROMよりなる不揮発性ストレージ414がある。この不揮発性ストレージ414には、患者の情報や血糖計101の設定データ、精度試験データ等が格納される。不揮発性ストレージ414に格納されたデータは、図示しない赤外線インターフェース或は無線インターフェース等を通じて、外部機器とやり取りされる。
【0031】
[ソフトウェア]
図5は血糖計101の機能ブロック図である。マイコンが提供する機能に着目した図である。
赤LED303は、分圧抵抗R502とスイッチ503を通じて電源電圧が印加されている。
スイッチ503は、低速シーケンサ504及び高速シーケンサ505がそれぞれ出力する発光制御信号によってオン・オフ制御される。ORゲート506は、低速シーケンサ504及び高速シーケンサ505が出力する発光制御信号をまとめてスイッチ503に与える。つまり、赤LED303は、低速シーケンサ504及び高速シーケンサ505によって発光制御される。
【0032】
緑LED309も同様に、分圧抵抗R507とスイッチ508を通じて電源電圧が印加されている。
スイッチ508は、高速シーケンサ505が出力する発光制御信号によってオン・オフ制御される。つまり、緑LED309は、赤LED303と違い、高速シーケンサ505によってのみ発光制御される。
【0033】
なお、スイッチ503は、実際はD/A変換器411とドライバ410に相当する。スイッチ508も同様に、実際はD/A変換器411とドライバ424に相当する。つまり、スイッチ503及びスイッチ508は単純にオン・オフ制御するだけではなく、マイコンによってドライバの抵抗値が制御される。
図5では、紙面及び説明の都合上、敢えて電流制御の説明を省略している。
【0034】
赤LED303及び緑LED309が発する光は、測定チップ308の試験紙511に照射され、試験紙511で反射された反射光はフォトダイオード304で検出される。
フォトダイオード304のアノードには、分圧抵抗R510を通じて電源電圧が印加されている。フォトダイオード304は測定チップ308内部の試験紙511から赤LED303及び緑LED309の反射光を受光すると、信号電流が変化する。この信号電流はI/V変換器416を経てA/D変換器413bでデジタルデータに変換される。
【0035】
A/D変換器413bは、ORゲート512を介して低速シーケンサ504及び高速シーケンサ505のいずれかから出力されるサンプリングクロックによって、フォトダイオード304の信号電流からI/V変換器416によって変換された電圧をデジタルデータに変換する。
【0036】
A/D変換器413bから出力されるデジタルデータは、チップ装着判定部513、基準値測定部514、点着判定部515、測定処理部516、そしてチップ離脱判定部517に入力される。
制御部518は、現在の動作モードを判定して、動作モードに応じて、チップ装着判定部513、基準値測定部514、点着判定部515、測定処理部516及びチップ離脱判定部517を選択的に駆動制御する。
【0037】
血糖計101の最初の状態では、制御部518はチップ装着判定部513を動作させる。
チップ装着判定部513は、A/D変換器413bから出力されるデジタルデータを受けて、光学測定部103に測定チップ308が装着されたか否かを判定する、プログラムの機能(サブルーチン或は関数)である。
チップ装着判定部513は、光学測定部103に測定チップ308が装着されたと判定すると、その旨を制御部518に報告する。
なお、チップ装着判定部513が動作しているときは、制御部518は低速クロック生成部519を制御して、赤LED303のみを発光駆動する。
【0038】
チップ装着判定部513が、光学測定部103に測定チップ308が装着されたと判定したことを制御部518に報告したら、制御部518は次に基準値測定部514を動作させる。
基準値測定部514も、チップ装着判定部513と同様にプログラムの機能である。
基準値測定部514は、光学測定部103に装着された測定チップ308の試験紙511に、赤LED303及び緑LED309の光をそれぞれ照射する。そして、A/D変換器413bから出力されるデジタルデータを受けて、試験紙511に血液が点着する以前の状態(初期状態)の反射光データを取得して、RAM404に記憶する。
基準値測定部514は、初期状態の反射光データをRAM404に記憶させたら、動作の完了を制御部518に報告する。
なお、基準値測定部514が動作しているときは、制御部518は高速クロック生成部520を制御して、赤LED303及び緑LED309を発光駆動する。
【0039】
基準値測定部514が、初期状態の反射光データをRAM404に記憶させたことを制御部518に報告したら、制御部518は次に点着判定部515を動作させる。
点着判定部515も、チップ装着判定部513及び基準値測定部514と同様にプログラムの機能である。
点着判定部515は、光学測定部103に装着された測定チップ308の試験紙511に、赤LED303及び緑LED309の光をそれぞれ照射する。そして、A/D変換器413bから出力されるデジタルデータを受けて、反射光量の変化により、試験紙511に血液が点着したか否かを判定する。
点着判定部515は、試験紙511に血液が点着したと判断したら、その旨を制御部518に報告すると共に、高速クロック生成部520へ新たな制御信号を出力し、測定処理部516にも制御信号を出力する。
なお、点着判定部515が動作しているときは、制御部518は高速クロック生成部520を制御して、赤LED303及び緑LED309を発光駆動する。
【0040】
測定処理部516は、点着判定部515が試験紙511に血液が点着したと判定したことによって出力される制御信号を受けると、測定処理を開始する。
測定処理部516も、チップ装着判定部513、基準値測定部514及び点着判定部515と同様にプログラムの機能である。
測定処理部516は、点着判定部515から出力される制御信号によって起動する。測定処理部516は、起動すると内部の図示しないタイマを動作させ、予め決められた時間を計時する。その時間は例えば9秒である。測定処理部516は、タイマが計時を完了する迄、光学測定部103に装着された測定チップ308の試験紙511に、赤LED303及び緑LED309の光をそれぞれ照射する。そして、タイマが計時を完了したら、A/D変換器413bから出力されるデジタルデータを受けて、血糖値を算出する。測定処理部516は、算出した血糖値をLCD表示部に表示すると共に、不揮発性ストレージに記憶する。そして、制御部518に処理の終了を報告する。
なお、測定処理部516が動作しているときは、制御部518は高速クロック生成部520を制御して、赤LED303及び緑LED309を発光駆動する。
【0041】
測定処理部516が、測定処理を完了したことを制御部518に報告したら、制御部518は次にチップ離脱判定部517を動作させる。
チップ離脱判定部517も、チップ装着判定部513、基準値測定部514、点着判定部515及び測定処理部516と同様にプログラムの機能である。
チップ離脱判定部517は、A/D変換器413bから出力されるデジタルデータを受けて、反射光量の変化から、光学測定部103から測定チップ308が離脱されたか否かを判定する。
チップ離脱判定部517は、光学測定部103から測定チップ308が離脱されたと判定すると、その旨を制御部518に報告する。
なお、チップ離脱判定部517が動作しているときは、制御部518は低速クロック生成部519を制御して、赤LED303のみを発光駆動する。
【0042】
制御部518は、チップ装着判定部513、基準値測定部514、点着判定部515、測定処理部516、そしてチップ離脱判定部517の動作制御を行うと共に、それぞれ動作する際に適切なLED発光制御を実行する。
具体的には、制御部518は、チップ装着判定部513及びチップ離脱判定部517を動作させている時には、低速クロック生成部519を制御して、低速シーケンサ504から赤LED303とA/D変換器413bを動作させるクロックを出力させる。
また、制御部518は、基準値測定部514、点着判定部515及び測定処理部516を動作させている時には、高速クロック生成部520を制御して、高速シーケンサ505から赤LED303と緑LED309、そしてA/D変換器413bを動作させるクロックを出力させる。
【0043】
図6は制御部518が低速クロック生成部519又は高速クロック生成部520を制御する状態を示す表である。
制御部518は、最初にチップ装着判定部513を動作させ、低速クロック生成部519を制御する。低速クロック生成部519は1秒毎に64Hzのクロックで16サンプルのクロックパルスを生成して、低速シーケンサ504に与える。低速シーケンサ504は入力されたクロックに応じて、赤LED303を発光制御するパルスと、A/D変換器413bを動作制御するサンプリングクロックを生成する。
チップ装着判定部513は、A/D変換器413bから16サンプル分のデータを受け取ると、平均値を算出する。この平均値を所定の閾値と比較して、測定チップ308が光学測定部103に装着されたか否かを判定する。
【0044】
制御部518は、次に基準値測定部514を動作させ、高速クロック生成部520を制御する。高速クロック生成部520は0.5秒毎に512Hzのクロックで128サンプルのクロックパルスを生成して、高速シーケンサ505に与える。高速シーケンサ505は入力されたクロックに応じて、赤LED303を発光制御するパルスと、緑LED309を発光制御するパルスと、A/D変換器413bを動作制御するサンプリングクロックを生成する。
基準値測定部514は、A/D変換器413bから128サンプル分のデータを受け取ると、平均値を算出する。この平均値を所定の閾値と比較して、測定チップ308の試験紙511に血液が点着する以前の状態の基準値を取得して、RAM404に記憶する。
【0045】
制御部518は、次に点着判定部515を動作させ、高速クロック生成部520を制御する。高速クロック生成部520は512Hzのクロックのクロックパルスを連続的に生成して、高速シーケンサ505に与える。高速シーケンサ505は入力されたクロックに応じて、赤LED303を発光制御するパルスと、緑LED309を発光制御するパルスと、A/D変換器413bを動作制御するサンプリングクロックを生成する。
点着判定部515は、A/D変換器413bからデータを受け取ると、128サンプルの移動平均値を連続的に算出する。この移動平均値を所定の閾値と比較して、測定チップ308の試験紙511に血液が点着したか否かを判定する。
点着判定部515は、試験紙511に血液が点着したと判定したら、制御信号を測定処理部516及び高速クロック生成部520に出力する。
【0046】
高速クロック生成部520は、点着判定部515から制御信号を受け取ると、それまで512Hzのクロックのクロックパルスを連続的に生成していた状態から、1秒毎に512Hzのクロックで128サンプルのクロックパルスを生成する、間歇動作に切り替わる。高速シーケンサ505は入力されたクロックに応じて、赤LED303を発光制御するパルスと、緑LED309を発光制御するパルスと、A/D変換器413bを動作制御するサンプリングクロックを生成する。
一方、測定処理部516は、点着判定部515から制御信号を受け取ると、測定処理を開始する。この後、測定処理部516は、A/D変換器413bから128サンプル分のデータを受け取ると、平均値を算出する。この平均値を所定時間が経過するまでRAM404に順次記憶する。最終的には、不揮発性ストレージ414に格納されている検量線データを用いて、血糖値を計算する。
【0047】
制御部518は、次にチップ離脱判定部517を動作時は、低速クロック生成部519を制御する。低速クロック生成部519は1秒毎に64Hzのクロックで16サンプルのクロックパルスを生成して、低速シーケンサ504に与える。低速シーケンサ504は入力されたクロックに応じて、赤LED303を発光制御するパルスと、A/D変換器413bを動作制御するサンプリングクロックを生成する。
チップ離脱判定部517は、A/D変換器413bから16サンプル分のデータを受け取ると、平均値を算出する。この平均値を所定の閾値と比較して、測定チップ308が光学測定部103から離脱されたか否かを判定する。
【0048】
チップ装着判定部513及びチップ離脱判定部517は、光学測定部103に対する測定チップ308の装着又は離脱を検出する機能ブロックである。したがって、A/D変換器413bは「測定チップ308の有無」だけが判れば良いので、低速のクロックを用いて赤LED303のみ発光させて、少ないサンプルデータで判定する。
これに対し、基準値測定部514、点着判定部515及び測定処理部516は、試験紙511に血液が点着する以前の状態の反射光の光量、試験紙511に血液が点着した瞬間の判断、そして試験紙511に血液が点着して所定時間を経過するまでの連続的に変化する反射光の光量という、具体的な数値データの取得を必要とする機能ブロックである。したがって、A/D変換器413bは精度が要求されるので、高速のクロックを用いて赤LED303及び緑LED309の両方を発光させて、低速の時より多いサンプルデータを取得する。
【0049】
図7は高速クロック生成部520の機能ブロック図である。
512Hzクロック生成器702は、512Hzのクロックパルスを生成する。
ループカウンタ703は512Hzのクロックパルスを計数し、0から511までの数(512)を計数する。このループカウンタ703には256/512切替制御信号が制御部518から与えられており、この制御信号によって0から511までの数、又は0から255までの数(256)を計数する。なお、リセット端子に信号が与えられている時は、ループカウンタ703は計数動作を行わず、0を出力し続ける。
ループカウンタ703の出力データ線はデジタルコンパレータ704のマイナス側入力端子に接続される。デジタルコンパレータ704のプラス側入力端子には、ROM403に格納されている数値データ「127」が閾値705として与えられており、デジタルコンパレータ704は閾値705とループカウンタ703の計数値との比較結果をANDゲート706に出力する。
【0050】
ANDゲート706はデジタルコンパレータ704が論理の「真」(高電位)を出力している時に、512Hzクロック生成器702のクロックパルスを出力する。
つまり、ループカウンタ703が最大値512を計数する状態のとき、ループカウンタ703が0から127まで計数している間はデジタルコンパレータ704は論理の真を出力する。一方、ループカウンタ703が128から511まで計数している間はデジタルコンパレータ704は論理の偽を出力する。したがって、1秒毎に128個のクロックパルスがANDゲート706から出力される。これは測定処理部516が動作している時の、高速クロック生成部520の動作である。
同様に、ループカウンタ703が最大値256を計数する状態のとき、ループカウンタ703が0から127まで計数している間はデジタルコンパレータ704は論理の真を出力する。一方、ループカウンタ703が128から255まで計数している間はデジタルコンパレータ704は論理の偽を出力する。したがって、0.5秒毎に128個のクロックパルスがANDゲート706から出力される。これは基準値測定部514が動作している時の、高速クロック生成部520の動作である。
そして、ループカウンタ703にリセット信号を供給し続けている状態のとき、ループカウンタ703は0を出力し続けるので、デジタルコンパレータ704は論理の真を出力し続ける。したがって、512Hzクロック生成器702のクロックパルスが連続的にANDゲート706から出力される。これは点着判定部515が動作している時の、高速クロック生成部520の動作である。
【0051】
図8は低速クロック生成部519の機能ブロック図である。
64Hzクロック生成器802は、64Hzのクロックパルスを生成する。
ループカウンタ803は64Hzのクロックパルスを計数し、0から63までの数(64)を計数する。
ループカウンタ803の出力データ線はデジタルコンパレータ804のマイナス側入力端子に接続される。デジタルコンパレータ804のプラス側入力端子には、ROM403に格納されている数値「16」が閾値805として与えられており、デジタルコンパレータ804は閾値805とループカウンタ803の計数値との比較結果をANDゲート806に出力する。
【0052】
低速クロック生成部519は、図7の高速クロック生成部520の、クロックの周波数と、ループカウンタの計数値と、閾値の数値と、ループカウンタにリセット端子及び計数切替制御線がないこと以外は、回路構成は類似する。
ANDゲート806はデジタルコンパレータ804が論理の「真」(高電位)を出力している時に、64Hzクロック生成器802のクロックパルスを出力する。
ループカウンタ803が0から16まで計数している間はデジタルコンパレータ804は論理の真を出力する。一方、ループカウンタ803が17から63まで計数している間はデジタルコンパレータ804は論理の偽を出力する。したがって、1秒毎に16個のクロックパルスがANDゲート806から出力される。これはチップ装着判定部513及びチップ離脱判定部517が動作している時の、低速クロック生成部519の動作である。
【0053】
図9(a)、(b)、(c)及び(d)は、低速クロック生成部519及び高速クロック生成部520が生成するクロックパルスを示すタイムチャートである。
図9(a)は低速クロック生成部519が生成するクロックパルスである。0.25秒の間は16個のパルスを出力し、0.75秒の間はパルスを出力しない。これを繰り返す。したがって、1秒毎の周期である。
【0054】
図9(b)は、制御部518が基準値測定部514を動作させている時の、高速クロック生成部520が生成するクロックパルスである。0.25秒の間は128個のパルスを出力し、0.25秒の間はパルスを出力しない。これを繰り返す。したがって、0.5秒毎の周期である。
図9(c)は、制御部518が測定処理部516を動作させている時の、高速クロック生成部520が生成するクロックパルスである。0.25秒の間は128個のパルスを出力し、0.75秒の間はパルスを出力しない。これを繰り返す。したがって、1秒毎の周期である。
図9(d)は、点着判定部515が動作している時の、高速クロック生成部520が生成するクロックパルスである。図9(b)及び(c)と同じ512Hzのクロックを連続的に出力する。
【0055】
図10(a)、(b)、(c)及び(d)は、高速シーケンサ505が生成するタイミングパルス及びサンプリングクロックを示すタイムチャートである。
図10(a)は、高速シーケンサ505に入力される、高速クロック生成部520が生成するクロックパルスである。
図10(b)は、高速シーケンサ505が出力する、赤LED303の発光駆動を制御する、赤LED発光制御信号である。
図10(c)は、高速シーケンサ505が出力する、緑LED309の発光駆動を制御する、緑LED発光制御信号である。
図10(d)は、高速シーケンサ505が出力する、A/D変換器413bに供給する、サンプリングクロックである。
【0056】
高速シーケンサ505は、高速クロック生成部520が生成するクロックパルスのアップエッジで起動する(t1001)。高速シーケンサ505は、クロックパルスのアップエッジに呼応して、図10(b)に示す時間幅(t1001からt1003まで)の、赤LED発光制御信号を生成する。
次に、高速シーケンサ505は赤LED発光制御信号の立ち上がり(t1001)から少し遅れて、図10(d)に示すサンプリングクロックを生成する(t1002)。A/D変換器413bはこれを受けて、赤LED303が発光している状態における、試験紙511の反射光の信号電圧をデータ化する。
次に、高速シーケンサ505は赤LED発光制御信号の立ち下がり(t1003)から少し遅れて、図10(d)に示すサンプリングクロックを生成する(t1004)。A/D変換器413bはこれを受けて、赤LED303が発光していない状態における、試験紙511の反射光の信号電圧をデータ化する。
次に、高速シーケンサ505は図10(c)に示す時間幅(t1005からt1007まで)の、緑LED発光制御信号を生成する。
次に、高速シーケンサ505は緑LED発光制御信号の立ち上がり(t1005)から少し遅れて、図10(d)に示すサンプリングクロックを生成する(t1006)。A/D変換器413bはこれを受けて、緑LED309が発光している状態における、試験紙511の反射光の信号電圧をデータ化する。
次に、高速シーケンサ505は緑LED発光制御信号の立ち下がり(t1007)から少し遅れて、図10(d)に示すサンプリングクロックを生成する(t1008)。A/D変換器413bはこれを受けて、緑LED309が発光していない状態における、試験紙511の反射光の信号電圧をデータ化する。
【0057】
以上の説明で判るように、高速シーケンサ505は、高速クロック生成部520が生成するクロックパルスのアップエッジに呼応して、赤LED303及び緑LED309を交互に発光させ、その間にA/D変換器413bを二回ずつ駆動させる。A/D変換器413bは、赤LED303及び緑LED309の、点灯している時と消灯している時の、夫々の状態をサンプリングして、データを出力する。
【0058】
図11(a)、(b)及び(c)は、低速シーケンサ504が生成するタイミングパルス及びサンプリングクロックを示すタイムチャートである。
図11(a)は、低速シーケンサ504に入力される、低速クロック生成部519が生成するクロックパルスである。
図11(b)は、低速シーケンサ504が出力する、赤LED303の発光駆動を制御する、赤LED発光制御信号である。
図11(c)は、低速シーケンサ504が出力する、A/D変換器413bに供給する、サンプリングクロックである。
【0059】
低速シーケンサ504は、低速クロック生成部519が生成するクロックパルス(図11(a))のアップエッジで起動する(t1101)。低速シーケンサ504は、クロックパルスのアップエッジに呼応して、図11(b)に示す時間幅(t1101からt1103まで)の、赤LED発光制御信号を生成する。
次に、低速シーケンサ504は赤LED発光制御信号の立ち上がり(t1101)から少し遅れて、図11(c)に示すサンプリングクロックを生成する(t1102)。A/D変換器413bはこれを受けて、赤LED303が発光している状態における、試験紙511の反射光の信号電圧をデータ化する。
次に、低速シーケンサ504は赤LED発光制御信号の立ち下がり(t1103)から少し遅れて、図11(c)に示すサンプリングクロックを生成する(t1104)。A/D変換器413bはこれを受けて、赤LED303が発光していない状態における、試験紙511の反射光の信号電圧をデータ化する。
【0060】
以上の説明で判るように、低速シーケンサ504は、低速クロック生成部519が生成するクロックパルスのアップエッジに呼応して、赤LED303を発光させ、その間にA/D変換器413bを二回ずつ駆動させる。A/D変換器413bは、赤LED303の、点灯している時と消灯している時の、夫々の状態をサンプリングして、データを出力する。
【0061】
[動作]
血糖計は、先に説明したように血液を所定の試薬に反応させ、その変化を検出し、血糖値を算出する。精密に計測するならば、血液の試薬との反応時間を十分確保すれば、反応が最終的に安定し、血糖値を単純な反射光の強弱のみで検出することができる。しかし、病院内での血糖値測定作業は多数の患者を相手にするため、血糖値測定作業は迅速に行われなければならない。そこで、血糖計101では、検量線データを用いて、血液の試薬との反応の途中で血糖値を算出する、短時間での血糖値測定を実現している。
【0062】
短時間に血糖値を測定するために、血糖計101は試験紙511に対する血液の点着のタイミングを正確に取得する必要がある。取得した点着のタイミングが、本来のタイミングと時間軸上のズレがあれば、それは誤差となって現れる。この測定誤差を、許容範囲内に収めなければならない。
例えば、本実施形態の血糖計101の測定時間は9秒と設定されているが、仮にサンプリングクロックが1Hzであった場合、最大で2秒の誤差が生じることとなってしまう。前述の通り、血液の試薬との反応の途中で血糖値を算出するので、2秒を経過すればそれだけ反応も進行してしまい、大きな誤差を生じることとなる。
誤差を低減するには、サンプリングクロックを高い周波数に設定すればよい。しかし、サンプリングクロックの周波数を上げる、ということは、A/D変換器413bをそれだけ多く稼動させることとなる。一般に、A/D変換器は電力消費が大きいので、電池駆動の携帯型機器で高いサンプリングクロックを設定することは、電池の消耗を早め、稼働時間を短縮してしまうので好ましくない。
【0063】
そこで、本実施形態では、血液の試験紙511への点着を確認する段階においてのみ、サンプリングクロックを高める手法を採用した。そして、血液の試験紙511への点着を確認した瞬間から、測定処理のためのタイマを起動するように測定処理部516を制御すると共に、A/D変換器413bのサンプリングクロックを与えるように、高速クロック生成部520を構成した。
【0064】
図12は、血糖値を測定する際に、検量線データを用いて算出した測定値を時間の経過と共に示すグラフである。本実施形態の血糖計は、このグラフの0秒の時点の値から9秒の時点の値までを取得することとなる。
測定誤差は、測定終了時点である9秒の時点のグラフの傾きに依存する。このことを考慮すると、サンプリング時間間隔(サンプリングクロックの周波数の逆数)Tsampleと、グラフの傾きΔfと、血糖計に要求される分解能εとは、以下の式の関係になる。
【0065】
【数1】
【0066】
上記式によれば、測定時間によって傾きが異なる反応曲線で、それぞれの測定時間における最適なサンプリング時間間隔の最大値(クロック周波数の最小値)を求めることができる。
本実施形態の血糖計101は、表示される血糖値の最小値を1mg/dLとしている。通常、電子式測定機器の分解能は、表示値に対して10倍以上を要求されるので、要求される分解能を0.1mg/dL、傾きを40mg/dl/secとすると、サンプリング時間間隔は0.0025秒、サンプリングクロックの周波数(サンプリング時間間隔の逆数)は400Hzとなる。なお、デジタル機器の設計の都合上、二進法で扱いやすい数字として、本実施形態の血糖計101は、512Hzを採用している。
【0067】
本実施形態においては、血糖計を開示した。
血糖計の動作モードに応じてサンプリングクロックを適切に設定し、特に測定開始を決定するモードでは高速のクロックパルスを連続して生成し、点着を検出した時点からタイマ等の計測動作を開始すると共に、クロックパルスの生成を間歇的なものに切り替えるように、クロック生成部を構成した。クロックパルスは要求される分解能と血糖値の測定曲線の傾きに基づいて決定した。
このように血糖計を構成することで、必要な精度を備えつつ、電力消費を極力低減した血糖計を実施できる。
【0068】
以上、本発明の実施形態例について説明したが、本発明は上記実施形態例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、他の変形例、応用例を含む。
【符号の説明】
【0069】
101…血糖計、102…筐体、103…光学測定部、104…イジェクトレバー、105…表示パネル、106…操作パネル、202…回路基板、203…内部温サーミスタ、256…最大値、302…筒、304…フォトダイオード、305…基台、306…ガラス窓、307…外気温サーミスタ、308…測定チップ、402…CPU、403…ROM、404…RAM、405…バス、407…リアルタイムクロック、408…ボタン操作部、410…ドライバ、411…D/A変換器、413…A/D変換器、413b…A/D変換器、414…不揮発性ストレージ、415…LCD表示部、424…ドライバ、503…スイッチ、504…低速シーケンサ、505…高速シーケンサ、506…ORゲート、508…スイッチ、511…試験紙、512…ORゲート、513…チップ装着判定部、514…基準値測定部、515…点着判定部、516…測定処理部、517…チップ離脱判定部、518…制御部、519…低速クロック生成部、520…高速クロック生成部、R502、R507、R510…分圧抵抗、702…512Hzクロック生成器、703…ループカウンタ、704…デジタルコンパレータ、705…閾値、706…ANDゲート、802…64Hzクロック生成器、803…ループカウンタ、804…デジタルコンパレータ、805…閾値、806…ANDゲート
【技術分野】
【0001】
本発明は、血糖計に適用して使用するのに好適な技術に関する。
より詳細には、血糖計に必要な測定精度を確保しつつ、電力消費を極力低減した血糖計に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、糖尿病は膵臓のインスリン分泌異常やインスリンに対する感受性低下に起因する。特にインスリン分泌が停止した1型の糖尿病患者では食事前に血糖値を測定し、その値に応じてインスリンを投与する必要がある。
従来、家庭内で患者自ら或はその家族が血糖値を簡便に測定するために、出願人は、小型で自己測定を目的とした血糖値測定装置(以下「血糖計」)を開発し、製造販売している。また、出願人は病棟向けに複数の患者に対応可能な各種の管理機能を備えた血糖計の開発を進めている。
【0003】
血糖計は、血液を試薬に接触させて生じる生化学反応により、グルコース値を色濃度や電気信号に変換する原理を用いて、血糖値を測定する機器である。この生化学反応は反応が安定するまでに時間がかかる。
ところで、病棟では多数の患者を相手に血糖値の計測を迅速に行わなくてはならない。つまり、生化学反応が安定するまで待っていられない、という事情がある。そこで、生化学反応が安定するまで待つのではなく、反応途中の生化学反応の過渡応答に基づいて、より迅速に血糖値を求める方法が考えられている。例えば、特許文献1や特許文献2に示されるように、所定の計算式等に基づいて反応終点を予測する方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−144750号公報
【特許文献2】特開2006−71421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
生化学反応の過渡応答に基づいて迅速に血糖値を求める場合、厳密な時間の管理が必要になる。生化学反応の開始である、血液が試薬に接触した瞬間から、所定の計測時間を正確に計測しなければならない。
グルコース値を色濃度で観測する方式の場合、LED等の発光素子を用いて試薬が含まれている試験紙に光を照射し、その反射光をフォトダイオード等の受光素子で検出し、A/D変換器でデジタルデータに変換する。A/D変換器に供給するサンプリングクロックの周波数が低いと、血液が試薬に接触した瞬間を正確に検出することができなくなる。したがって、反応開始を正確に検出するために、サンプリングクロックの周波数を十分高く設定する必要がある。しかし、A/D変換器は携帯型電子機器である血糖計にとって電力消費が大きい部品である。このため、サンプリングクロックの周波数はできるだけ低い方が望ましい。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、必要且つ十分な精度のサンプリングクロックの周波数を設定し、必要最小限の時間だけ供給する、測定精度と低消費電力を両立した血糖計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の血糖計は、測定チップが装着された状態で血液を測定チップに付着させて血液中のグルコース量に応じた信号を出力する血糖値測定部と、信号をデジタルデータに変換するA/D変換器と、デジタルデータに基づいて測定チップに血液が付着したか否かを判定する点着判定部と、デジタルデータに基づいて血糖値を得る測定処理部と、A/D変換器からデジタルデータを取得するためのクロックであり、クロックの周期が、要求分解能を血糖値反応曲線の所定の時間における傾きで除算した値以下であるクロックを生成するクロック生成部とを具備する。
【0008】
A/D変換器からデジタルデータを取得するためのクロックは、要求される分解能と血糖値の測定曲線の傾きに基づいて決定する。
血糖計の動作モードに応じてサンプリングクロックを適切に設定し、特に測定開始を決定するモードでは高速のクロックパルスを連続して生成し、点着を検出した時点からタイマ等の計測動作を開始すると共に、クロックパルスの生成を間歇的なものに切り替えるように、クロック生成部を構成する。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、必要且つ十分な精度のサンプリングクロックの周波数を設定し、必要最小限の時間だけ供給する、測定精度と低消費電力を両立した血糖計を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態の例である、血糖計の外観斜視図である。
【図2】本発明の実施形態の例である、血糖計の上面図である。
【図3】光学測定部の模式図である。
【図4】血糖計の内部ブロック図である。
【図5】血糖計の機能ブロック図である。
【図6】制御部が低速クロック生成部又は高速クロック生成部を制御する状態を示す表である。
【図7】高速クロック生成部の機能ブロック図である。
【図8】低速クロック生成部の機能ブロック図である。
【図9】低速クロック生成部及び高速クロック生成部が生成するクロックパルスを示すタイムチャートである。
【図10】高速シーケンサが生成するタイミングパルス及びサンプリングクロックを示すタイムチャートである。
【図11】低速シーケンサが生成するタイミングパルス及びサンプリングクロックを示すタイムチャートである。
【図12】血糖値を測定する際に、検量線データを用いて算出した測定値を時間の経過と共に示す血糖値反応曲線のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を、図1乃至図12を参照して説明する。
【0012】
図1は、本発明の実施形態の例である、血糖計の外観斜視図である。
図2は、本発明の実施形態の例である、血糖計の上面図である。
【0013】
血糖計101は、医師や看護師或いは患者本人等が、携帯電話のように手に持って操作して、血糖値を計測するための携帯型機器であり、このために片手で容易に持てる形状及び重量で形成されている。
血糖計101は、単に血糖値を測定するだけでなく、付加的な機能として、患者の氏名やIDを確認し、患者毎に測定値データを格納し、必要である場合には患者毎に投与するべき適切な薬剤の確認等を行うことができる。
【0014】
血糖計101の筐体102は、細長い合成樹脂の容器である。筐体102の長手方向の先端には、血糖値等を測定する金属でできた円筒形状の光学測定部103が設けられている。血糖値測定部ともいえる光学測定部103の内部には、後述するLEDとフォトダイオードが内蔵されている。
光学測定部103は血糖測定チップ(以下「測定チップ」)の着脱が可能なように形成されている。使用済みの測定チップは、イジェクトレバー104を操作することで光学測定部103から取り外すことができる。
また、筐体102の前面には測定結果や確認事項等を表示する、LCDよりなる表示パネル105が設けられている。表示パネル105の横には、複数のボタンを有する操作パネル106が設けられている。
血糖計101の内部には、この他に筐体102に内蔵される図示しないリチウムイオンバッテリや、バーコードを読み取る図示しないバーコードリーダユニット、患者データや計測した血糖値データ等の送受信を行う図示しないIrDAインターフェース等を有するが、本発明に直接的には関係しないので詳細は割愛する。
【0015】
図2には、血糖計101の外観からは直接的には見えないものの、測定器本体の内部にはプリント基板である回路基板202が内蔵されている。回路基板202には周知のマイコンが実装されている。マイコンはリチウムイオンバッテリの電力で動作し、操作パネル106から操作命令信号を受け、光学測定部103の内部のLEDを駆動し、フォトダイオードを通じて所定の血糖値測定を行い、表示パネル105に測定結果等を表示する。
【0016】
血糖計101の基本的な血糖測定の仕組みは、従来技術と同様である。以下、概略を簡単に説明する。
光学測定部103に測定チップ308を取り付け、測定対象者の血液を測定チップ308に吸引させる。この測定チップ308には、ポリエーテルサルホン等の多孔質膜でできた試験紙511が内蔵されている。そして、測定チップ308に吸引された血液は、試験紙511に到達すると、試験紙511に含まれている試薬と反応して、発色する。この発色反応には数秒から10数秒前後の時間を要するが、この反応は、周囲の気温によって影響を受ける。
発光素子であるLEDが発光する光を試験紙511に当て、試験紙511からの反射光を受光素子であるフォトダイオードにて受光する。そして、所定の反応時間を経過した後に、受光素子から得られたアナログの受光強度信号をデジタル値に変換した後、このデジタル値を血糖値に変換して表示パネル105に表示する。
なお、血糖値計側の仕組みは、発色試薬を利用した前記光学測定方式に限らず、電気化学センサー方式など、従来から血糖測定に使用され得る仕組みを採用することができる。
【0017】
前述のように、血糖値を測定する際、気温の高低によって試験紙511に含まれている試薬の反応時間が変化する。このため、血糖計101内部のマイコンの構成要素であるROMには、周囲の気温に対する反応の補正値が記憶されている。そして、ROMに格納されているマイコンのプログラムは、血糖値計測時の気温を検出して適切な計測値を算出するように構成されている。
ところが、測定中に気温が変化してしまうと、この補正値が正しく導き出せない。このため、誤った血糖値を導き出してしまう虞が極めて高い。つまり、測定中に気温が変化してはならない。勿論、測定の直前においても、気温に変化が生じていれば、その変化が落ち着くまで血糖値計測処理は控えなければならない。
【0018】
血糖計101の周囲の気温が安定していることを正しく検出するために、血糖計101には二つの温度計測素子が設けられている。
一つは、血糖計101の筐体の中心部分から離れ、筐体から熱的に独立した位置に設けられ、外気の温度(以下「外気温」)を計測する外気温センサである。
もう一つは、血糖計101の筐体の中心部分に設けられ、筐体内部の温度(以下「内部温」)を計測する内部温センサである。
この二つの温度センサが、ある一定時間を経過しても変化せず、且つ温度センサ同士の値の差が小さければ、血糖計101の筐体全体が外気温に「馴染んだ」、つまり外気温と血糖計101の筐体内部との温度差が、血糖値を正しく測定するに必要な程度に十分小さくなったことと判断できる。
【0019】
回路基板202には、内部温センサである内部温サーミスタ203が、マイコン等を構成する他の回路部品と同様に実装されている。
一方、外気温センサである外気温サーミスタ307は光学測定部103の中に設けられている。
図3は、光学測定部103の概略図である。
ステンレス等の金属製の筒302の中には、赤LED303と、緑LED309と、フォトダイオード304が基台305に設けられている。
基台305は、防塵のために薄いガラス板でできたガラス窓306によって外気から遮断されている。ガラス窓306には白金のワイヤーが印刷されており、これが外気温サーミスタ307を構成する。
筒302の内部には、測定チップ308を脱着可能にするための図示しない保持機構が組み込まれている。測定チップ308は装着されると試験紙511がガラス窓306に相対するように配置される。
【0020】
赤LED303は、測定チップ308に装着されている試験紙511に、赤色の光を照射する。赤LED303は、後述する全ての動作モードにおいて発光駆動される。
緑LED309は、測定チップ308に装着されている試験紙511に、緑色の光を照射する。緑LED309は、後述する複数の動作モードのうち、測定精度を要求されるモードにおいて発光駆動される。
【0021】
外気温サーミスタ307は、外気温を迅速且つ適切に計測するために、熱容量を小さくする必要がある。このため、外気温サーミスタ307を構成するガラス板は、直径6mm、厚み0.5mmという大きさで構成されている。このガラス板の熱容量はおよそ4mJ/Kである。
【0022】
[ハードウェア]
図4は血糖計101の内部ブロック図である。
血糖計101は、マイコンよりなるシステムであり、CPU402、ROM403及びRAM404と、それらを接続するバス405から構成されている。バス405には、上記の構成以外に、主にデータ入力機能を提供する部分と、データ出力機能を提供する部分も接続されている。
【0023】
血糖計101のデータ入力機能に該当する部位には、血糖計101にとって重要な血糖値測定データを得るための光学測定部103と、温度データを得るための内部温サーミスタ203及び外気温サーミスタ307、リアルタイムクロック407、そして操作パネル106であるボタン操作部408がある。
【0024】
光学測定部103を構成する赤LED303には、赤LED303を発光駆動するためのドライバ410が接続されている。
光学測定部103を構成する緑LED309には、緑LED309を発光駆動するためのドライバ424が接続されている。
ドライバ410及びドライバ424はD/A変換器411によって時分割にて駆動制御される。時分割駆動の詳細については後述する。
【0025】
光学測定部103を構成するフォトダイオード304には、I/V変換器416を介してA/D変換器413が接続されている。
赤LED303及び緑LED309は、適切な強度の光を測定チップ308内の試験紙511に照射する必要があるので、予め後述する不揮発性ストレージ414に記憶してある発光強度データに基づいて発光するように制御される。
つまり、血糖計101を構成するマイコンを動作させる、ROM403に格納されているプログラムは、発光強度データを不揮発性ストレージ414から読み出し、D/A変換器411でアナログの電圧信号に変換後、ドライバ410で電力増幅して、赤LED303を発光駆動する。同様に、プログラムは発光強度データを不揮発性ストレージ414から読み出し、D/A変換器411でアナログの電圧信号に変換後、ドライバ424で電力増幅して、緑LED309を発光駆動する。
【0026】
赤LED303及び緑LED309が発する光は、測定チップ308の試験紙511に照射され、試験紙511で反射した反射光はフォトダイオード304で検出される。
フォトダイオード304が受光した光の強度によって変化する、フォトダイオード304の信号電流は、I/V変換器416で信号電圧に変換され、さらに、A/D変換器413によって数値データに変換される。そして、この変換された数値データがRAM404及び不揮発性ストレージ414の所定領域に記録される。
【0027】
また、血糖計101は内部温サーミスタ203と外気温サーミスタ307を備えており、これらのサーミスタの抵抗変化によって、血糖計101が存在する環境の外気温と、血糖計101自体の内部温を測定できる。前述のフォトダイオード304と同様に、サーミスタの抵抗値はA/D変換器413によって数値化され、数値データはRAM404及び不揮発性ストレージ414の所定領域に記録される。なお、受光強度と気温を同時に測定する必要はないので、A/D変換器413はフォトダイオード304とサーミスタとで時分割で共用されている。
【0028】
リアルタイムクロック407は周知の日時データ出力機能を提供するICであり、多くのマイコンやパソコン等に標準搭載されているものである。
本発明の実施の形態の血糖計101では、患者データと血糖値を測定した時点の日時情報を紐付けて、不揮発性ストレージ414に記憶する必要があるので、リアルタイムクロック407が設けられている。
【0029】
血糖計101のデータ出力機能としては、表示パネル105であるLCD表示部415がある。
LCD表示部415には、ROM403に格納され、CPU402によって実行されるプログラムによって、様々な画面が表示される。
【0030】
血糖計101内部のマイコンを構成する要素のうち、データ入出力機能の他に、データ記憶機能を提供する、EEPROMよりなる不揮発性ストレージ414がある。この不揮発性ストレージ414には、患者の情報や血糖計101の設定データ、精度試験データ等が格納される。不揮発性ストレージ414に格納されたデータは、図示しない赤外線インターフェース或は無線インターフェース等を通じて、外部機器とやり取りされる。
【0031】
[ソフトウェア]
図5は血糖計101の機能ブロック図である。マイコンが提供する機能に着目した図である。
赤LED303は、分圧抵抗R502とスイッチ503を通じて電源電圧が印加されている。
スイッチ503は、低速シーケンサ504及び高速シーケンサ505がそれぞれ出力する発光制御信号によってオン・オフ制御される。ORゲート506は、低速シーケンサ504及び高速シーケンサ505が出力する発光制御信号をまとめてスイッチ503に与える。つまり、赤LED303は、低速シーケンサ504及び高速シーケンサ505によって発光制御される。
【0032】
緑LED309も同様に、分圧抵抗R507とスイッチ508を通じて電源電圧が印加されている。
スイッチ508は、高速シーケンサ505が出力する発光制御信号によってオン・オフ制御される。つまり、緑LED309は、赤LED303と違い、高速シーケンサ505によってのみ発光制御される。
【0033】
なお、スイッチ503は、実際はD/A変換器411とドライバ410に相当する。スイッチ508も同様に、実際はD/A変換器411とドライバ424に相当する。つまり、スイッチ503及びスイッチ508は単純にオン・オフ制御するだけではなく、マイコンによってドライバの抵抗値が制御される。
図5では、紙面及び説明の都合上、敢えて電流制御の説明を省略している。
【0034】
赤LED303及び緑LED309が発する光は、測定チップ308の試験紙511に照射され、試験紙511で反射された反射光はフォトダイオード304で検出される。
フォトダイオード304のアノードには、分圧抵抗R510を通じて電源電圧が印加されている。フォトダイオード304は測定チップ308内部の試験紙511から赤LED303及び緑LED309の反射光を受光すると、信号電流が変化する。この信号電流はI/V変換器416を経てA/D変換器413bでデジタルデータに変換される。
【0035】
A/D変換器413bは、ORゲート512を介して低速シーケンサ504及び高速シーケンサ505のいずれかから出力されるサンプリングクロックによって、フォトダイオード304の信号電流からI/V変換器416によって変換された電圧をデジタルデータに変換する。
【0036】
A/D変換器413bから出力されるデジタルデータは、チップ装着判定部513、基準値測定部514、点着判定部515、測定処理部516、そしてチップ離脱判定部517に入力される。
制御部518は、現在の動作モードを判定して、動作モードに応じて、チップ装着判定部513、基準値測定部514、点着判定部515、測定処理部516及びチップ離脱判定部517を選択的に駆動制御する。
【0037】
血糖計101の最初の状態では、制御部518はチップ装着判定部513を動作させる。
チップ装着判定部513は、A/D変換器413bから出力されるデジタルデータを受けて、光学測定部103に測定チップ308が装着されたか否かを判定する、プログラムの機能(サブルーチン或は関数)である。
チップ装着判定部513は、光学測定部103に測定チップ308が装着されたと判定すると、その旨を制御部518に報告する。
なお、チップ装着判定部513が動作しているときは、制御部518は低速クロック生成部519を制御して、赤LED303のみを発光駆動する。
【0038】
チップ装着判定部513が、光学測定部103に測定チップ308が装着されたと判定したことを制御部518に報告したら、制御部518は次に基準値測定部514を動作させる。
基準値測定部514も、チップ装着判定部513と同様にプログラムの機能である。
基準値測定部514は、光学測定部103に装着された測定チップ308の試験紙511に、赤LED303及び緑LED309の光をそれぞれ照射する。そして、A/D変換器413bから出力されるデジタルデータを受けて、試験紙511に血液が点着する以前の状態(初期状態)の反射光データを取得して、RAM404に記憶する。
基準値測定部514は、初期状態の反射光データをRAM404に記憶させたら、動作の完了を制御部518に報告する。
なお、基準値測定部514が動作しているときは、制御部518は高速クロック生成部520を制御して、赤LED303及び緑LED309を発光駆動する。
【0039】
基準値測定部514が、初期状態の反射光データをRAM404に記憶させたことを制御部518に報告したら、制御部518は次に点着判定部515を動作させる。
点着判定部515も、チップ装着判定部513及び基準値測定部514と同様にプログラムの機能である。
点着判定部515は、光学測定部103に装着された測定チップ308の試験紙511に、赤LED303及び緑LED309の光をそれぞれ照射する。そして、A/D変換器413bから出力されるデジタルデータを受けて、反射光量の変化により、試験紙511に血液が点着したか否かを判定する。
点着判定部515は、試験紙511に血液が点着したと判断したら、その旨を制御部518に報告すると共に、高速クロック生成部520へ新たな制御信号を出力し、測定処理部516にも制御信号を出力する。
なお、点着判定部515が動作しているときは、制御部518は高速クロック生成部520を制御して、赤LED303及び緑LED309を発光駆動する。
【0040】
測定処理部516は、点着判定部515が試験紙511に血液が点着したと判定したことによって出力される制御信号を受けると、測定処理を開始する。
測定処理部516も、チップ装着判定部513、基準値測定部514及び点着判定部515と同様にプログラムの機能である。
測定処理部516は、点着判定部515から出力される制御信号によって起動する。測定処理部516は、起動すると内部の図示しないタイマを動作させ、予め決められた時間を計時する。その時間は例えば9秒である。測定処理部516は、タイマが計時を完了する迄、光学測定部103に装着された測定チップ308の試験紙511に、赤LED303及び緑LED309の光をそれぞれ照射する。そして、タイマが計時を完了したら、A/D変換器413bから出力されるデジタルデータを受けて、血糖値を算出する。測定処理部516は、算出した血糖値をLCD表示部に表示すると共に、不揮発性ストレージに記憶する。そして、制御部518に処理の終了を報告する。
なお、測定処理部516が動作しているときは、制御部518は高速クロック生成部520を制御して、赤LED303及び緑LED309を発光駆動する。
【0041】
測定処理部516が、測定処理を完了したことを制御部518に報告したら、制御部518は次にチップ離脱判定部517を動作させる。
チップ離脱判定部517も、チップ装着判定部513、基準値測定部514、点着判定部515及び測定処理部516と同様にプログラムの機能である。
チップ離脱判定部517は、A/D変換器413bから出力されるデジタルデータを受けて、反射光量の変化から、光学測定部103から測定チップ308が離脱されたか否かを判定する。
チップ離脱判定部517は、光学測定部103から測定チップ308が離脱されたと判定すると、その旨を制御部518に報告する。
なお、チップ離脱判定部517が動作しているときは、制御部518は低速クロック生成部519を制御して、赤LED303のみを発光駆動する。
【0042】
制御部518は、チップ装着判定部513、基準値測定部514、点着判定部515、測定処理部516、そしてチップ離脱判定部517の動作制御を行うと共に、それぞれ動作する際に適切なLED発光制御を実行する。
具体的には、制御部518は、チップ装着判定部513及びチップ離脱判定部517を動作させている時には、低速クロック生成部519を制御して、低速シーケンサ504から赤LED303とA/D変換器413bを動作させるクロックを出力させる。
また、制御部518は、基準値測定部514、点着判定部515及び測定処理部516を動作させている時には、高速クロック生成部520を制御して、高速シーケンサ505から赤LED303と緑LED309、そしてA/D変換器413bを動作させるクロックを出力させる。
【0043】
図6は制御部518が低速クロック生成部519又は高速クロック生成部520を制御する状態を示す表である。
制御部518は、最初にチップ装着判定部513を動作させ、低速クロック生成部519を制御する。低速クロック生成部519は1秒毎に64Hzのクロックで16サンプルのクロックパルスを生成して、低速シーケンサ504に与える。低速シーケンサ504は入力されたクロックに応じて、赤LED303を発光制御するパルスと、A/D変換器413bを動作制御するサンプリングクロックを生成する。
チップ装着判定部513は、A/D変換器413bから16サンプル分のデータを受け取ると、平均値を算出する。この平均値を所定の閾値と比較して、測定チップ308が光学測定部103に装着されたか否かを判定する。
【0044】
制御部518は、次に基準値測定部514を動作させ、高速クロック生成部520を制御する。高速クロック生成部520は0.5秒毎に512Hzのクロックで128サンプルのクロックパルスを生成して、高速シーケンサ505に与える。高速シーケンサ505は入力されたクロックに応じて、赤LED303を発光制御するパルスと、緑LED309を発光制御するパルスと、A/D変換器413bを動作制御するサンプリングクロックを生成する。
基準値測定部514は、A/D変換器413bから128サンプル分のデータを受け取ると、平均値を算出する。この平均値を所定の閾値と比較して、測定チップ308の試験紙511に血液が点着する以前の状態の基準値を取得して、RAM404に記憶する。
【0045】
制御部518は、次に点着判定部515を動作させ、高速クロック生成部520を制御する。高速クロック生成部520は512Hzのクロックのクロックパルスを連続的に生成して、高速シーケンサ505に与える。高速シーケンサ505は入力されたクロックに応じて、赤LED303を発光制御するパルスと、緑LED309を発光制御するパルスと、A/D変換器413bを動作制御するサンプリングクロックを生成する。
点着判定部515は、A/D変換器413bからデータを受け取ると、128サンプルの移動平均値を連続的に算出する。この移動平均値を所定の閾値と比較して、測定チップ308の試験紙511に血液が点着したか否かを判定する。
点着判定部515は、試験紙511に血液が点着したと判定したら、制御信号を測定処理部516及び高速クロック生成部520に出力する。
【0046】
高速クロック生成部520は、点着判定部515から制御信号を受け取ると、それまで512Hzのクロックのクロックパルスを連続的に生成していた状態から、1秒毎に512Hzのクロックで128サンプルのクロックパルスを生成する、間歇動作に切り替わる。高速シーケンサ505は入力されたクロックに応じて、赤LED303を発光制御するパルスと、緑LED309を発光制御するパルスと、A/D変換器413bを動作制御するサンプリングクロックを生成する。
一方、測定処理部516は、点着判定部515から制御信号を受け取ると、測定処理を開始する。この後、測定処理部516は、A/D変換器413bから128サンプル分のデータを受け取ると、平均値を算出する。この平均値を所定時間が経過するまでRAM404に順次記憶する。最終的には、不揮発性ストレージ414に格納されている検量線データを用いて、血糖値を計算する。
【0047】
制御部518は、次にチップ離脱判定部517を動作時は、低速クロック生成部519を制御する。低速クロック生成部519は1秒毎に64Hzのクロックで16サンプルのクロックパルスを生成して、低速シーケンサ504に与える。低速シーケンサ504は入力されたクロックに応じて、赤LED303を発光制御するパルスと、A/D変換器413bを動作制御するサンプリングクロックを生成する。
チップ離脱判定部517は、A/D変換器413bから16サンプル分のデータを受け取ると、平均値を算出する。この平均値を所定の閾値と比較して、測定チップ308が光学測定部103から離脱されたか否かを判定する。
【0048】
チップ装着判定部513及びチップ離脱判定部517は、光学測定部103に対する測定チップ308の装着又は離脱を検出する機能ブロックである。したがって、A/D変換器413bは「測定チップ308の有無」だけが判れば良いので、低速のクロックを用いて赤LED303のみ発光させて、少ないサンプルデータで判定する。
これに対し、基準値測定部514、点着判定部515及び測定処理部516は、試験紙511に血液が点着する以前の状態の反射光の光量、試験紙511に血液が点着した瞬間の判断、そして試験紙511に血液が点着して所定時間を経過するまでの連続的に変化する反射光の光量という、具体的な数値データの取得を必要とする機能ブロックである。したがって、A/D変換器413bは精度が要求されるので、高速のクロックを用いて赤LED303及び緑LED309の両方を発光させて、低速の時より多いサンプルデータを取得する。
【0049】
図7は高速クロック生成部520の機能ブロック図である。
512Hzクロック生成器702は、512Hzのクロックパルスを生成する。
ループカウンタ703は512Hzのクロックパルスを計数し、0から511までの数(512)を計数する。このループカウンタ703には256/512切替制御信号が制御部518から与えられており、この制御信号によって0から511までの数、又は0から255までの数(256)を計数する。なお、リセット端子に信号が与えられている時は、ループカウンタ703は計数動作を行わず、0を出力し続ける。
ループカウンタ703の出力データ線はデジタルコンパレータ704のマイナス側入力端子に接続される。デジタルコンパレータ704のプラス側入力端子には、ROM403に格納されている数値データ「127」が閾値705として与えられており、デジタルコンパレータ704は閾値705とループカウンタ703の計数値との比較結果をANDゲート706に出力する。
【0050】
ANDゲート706はデジタルコンパレータ704が論理の「真」(高電位)を出力している時に、512Hzクロック生成器702のクロックパルスを出力する。
つまり、ループカウンタ703が最大値512を計数する状態のとき、ループカウンタ703が0から127まで計数している間はデジタルコンパレータ704は論理の真を出力する。一方、ループカウンタ703が128から511まで計数している間はデジタルコンパレータ704は論理の偽を出力する。したがって、1秒毎に128個のクロックパルスがANDゲート706から出力される。これは測定処理部516が動作している時の、高速クロック生成部520の動作である。
同様に、ループカウンタ703が最大値256を計数する状態のとき、ループカウンタ703が0から127まで計数している間はデジタルコンパレータ704は論理の真を出力する。一方、ループカウンタ703が128から255まで計数している間はデジタルコンパレータ704は論理の偽を出力する。したがって、0.5秒毎に128個のクロックパルスがANDゲート706から出力される。これは基準値測定部514が動作している時の、高速クロック生成部520の動作である。
そして、ループカウンタ703にリセット信号を供給し続けている状態のとき、ループカウンタ703は0を出力し続けるので、デジタルコンパレータ704は論理の真を出力し続ける。したがって、512Hzクロック生成器702のクロックパルスが連続的にANDゲート706から出力される。これは点着判定部515が動作している時の、高速クロック生成部520の動作である。
【0051】
図8は低速クロック生成部519の機能ブロック図である。
64Hzクロック生成器802は、64Hzのクロックパルスを生成する。
ループカウンタ803は64Hzのクロックパルスを計数し、0から63までの数(64)を計数する。
ループカウンタ803の出力データ線はデジタルコンパレータ804のマイナス側入力端子に接続される。デジタルコンパレータ804のプラス側入力端子には、ROM403に格納されている数値「16」が閾値805として与えられており、デジタルコンパレータ804は閾値805とループカウンタ803の計数値との比較結果をANDゲート806に出力する。
【0052】
低速クロック生成部519は、図7の高速クロック生成部520の、クロックの周波数と、ループカウンタの計数値と、閾値の数値と、ループカウンタにリセット端子及び計数切替制御線がないこと以外は、回路構成は類似する。
ANDゲート806はデジタルコンパレータ804が論理の「真」(高電位)を出力している時に、64Hzクロック生成器802のクロックパルスを出力する。
ループカウンタ803が0から16まで計数している間はデジタルコンパレータ804は論理の真を出力する。一方、ループカウンタ803が17から63まで計数している間はデジタルコンパレータ804は論理の偽を出力する。したがって、1秒毎に16個のクロックパルスがANDゲート806から出力される。これはチップ装着判定部513及びチップ離脱判定部517が動作している時の、低速クロック生成部519の動作である。
【0053】
図9(a)、(b)、(c)及び(d)は、低速クロック生成部519及び高速クロック生成部520が生成するクロックパルスを示すタイムチャートである。
図9(a)は低速クロック生成部519が生成するクロックパルスである。0.25秒の間は16個のパルスを出力し、0.75秒の間はパルスを出力しない。これを繰り返す。したがって、1秒毎の周期である。
【0054】
図9(b)は、制御部518が基準値測定部514を動作させている時の、高速クロック生成部520が生成するクロックパルスである。0.25秒の間は128個のパルスを出力し、0.25秒の間はパルスを出力しない。これを繰り返す。したがって、0.5秒毎の周期である。
図9(c)は、制御部518が測定処理部516を動作させている時の、高速クロック生成部520が生成するクロックパルスである。0.25秒の間は128個のパルスを出力し、0.75秒の間はパルスを出力しない。これを繰り返す。したがって、1秒毎の周期である。
図9(d)は、点着判定部515が動作している時の、高速クロック生成部520が生成するクロックパルスである。図9(b)及び(c)と同じ512Hzのクロックを連続的に出力する。
【0055】
図10(a)、(b)、(c)及び(d)は、高速シーケンサ505が生成するタイミングパルス及びサンプリングクロックを示すタイムチャートである。
図10(a)は、高速シーケンサ505に入力される、高速クロック生成部520が生成するクロックパルスである。
図10(b)は、高速シーケンサ505が出力する、赤LED303の発光駆動を制御する、赤LED発光制御信号である。
図10(c)は、高速シーケンサ505が出力する、緑LED309の発光駆動を制御する、緑LED発光制御信号である。
図10(d)は、高速シーケンサ505が出力する、A/D変換器413bに供給する、サンプリングクロックである。
【0056】
高速シーケンサ505は、高速クロック生成部520が生成するクロックパルスのアップエッジで起動する(t1001)。高速シーケンサ505は、クロックパルスのアップエッジに呼応して、図10(b)に示す時間幅(t1001からt1003まで)の、赤LED発光制御信号を生成する。
次に、高速シーケンサ505は赤LED発光制御信号の立ち上がり(t1001)から少し遅れて、図10(d)に示すサンプリングクロックを生成する(t1002)。A/D変換器413bはこれを受けて、赤LED303が発光している状態における、試験紙511の反射光の信号電圧をデータ化する。
次に、高速シーケンサ505は赤LED発光制御信号の立ち下がり(t1003)から少し遅れて、図10(d)に示すサンプリングクロックを生成する(t1004)。A/D変換器413bはこれを受けて、赤LED303が発光していない状態における、試験紙511の反射光の信号電圧をデータ化する。
次に、高速シーケンサ505は図10(c)に示す時間幅(t1005からt1007まで)の、緑LED発光制御信号を生成する。
次に、高速シーケンサ505は緑LED発光制御信号の立ち上がり(t1005)から少し遅れて、図10(d)に示すサンプリングクロックを生成する(t1006)。A/D変換器413bはこれを受けて、緑LED309が発光している状態における、試験紙511の反射光の信号電圧をデータ化する。
次に、高速シーケンサ505は緑LED発光制御信号の立ち下がり(t1007)から少し遅れて、図10(d)に示すサンプリングクロックを生成する(t1008)。A/D変換器413bはこれを受けて、緑LED309が発光していない状態における、試験紙511の反射光の信号電圧をデータ化する。
【0057】
以上の説明で判るように、高速シーケンサ505は、高速クロック生成部520が生成するクロックパルスのアップエッジに呼応して、赤LED303及び緑LED309を交互に発光させ、その間にA/D変換器413bを二回ずつ駆動させる。A/D変換器413bは、赤LED303及び緑LED309の、点灯している時と消灯している時の、夫々の状態をサンプリングして、データを出力する。
【0058】
図11(a)、(b)及び(c)は、低速シーケンサ504が生成するタイミングパルス及びサンプリングクロックを示すタイムチャートである。
図11(a)は、低速シーケンサ504に入力される、低速クロック生成部519が生成するクロックパルスである。
図11(b)は、低速シーケンサ504が出力する、赤LED303の発光駆動を制御する、赤LED発光制御信号である。
図11(c)は、低速シーケンサ504が出力する、A/D変換器413bに供給する、サンプリングクロックである。
【0059】
低速シーケンサ504は、低速クロック生成部519が生成するクロックパルス(図11(a))のアップエッジで起動する(t1101)。低速シーケンサ504は、クロックパルスのアップエッジに呼応して、図11(b)に示す時間幅(t1101からt1103まで)の、赤LED発光制御信号を生成する。
次に、低速シーケンサ504は赤LED発光制御信号の立ち上がり(t1101)から少し遅れて、図11(c)に示すサンプリングクロックを生成する(t1102)。A/D変換器413bはこれを受けて、赤LED303が発光している状態における、試験紙511の反射光の信号電圧をデータ化する。
次に、低速シーケンサ504は赤LED発光制御信号の立ち下がり(t1103)から少し遅れて、図11(c)に示すサンプリングクロックを生成する(t1104)。A/D変換器413bはこれを受けて、赤LED303が発光していない状態における、試験紙511の反射光の信号電圧をデータ化する。
【0060】
以上の説明で判るように、低速シーケンサ504は、低速クロック生成部519が生成するクロックパルスのアップエッジに呼応して、赤LED303を発光させ、その間にA/D変換器413bを二回ずつ駆動させる。A/D変換器413bは、赤LED303の、点灯している時と消灯している時の、夫々の状態をサンプリングして、データを出力する。
【0061】
[動作]
血糖計は、先に説明したように血液を所定の試薬に反応させ、その変化を検出し、血糖値を算出する。精密に計測するならば、血液の試薬との反応時間を十分確保すれば、反応が最終的に安定し、血糖値を単純な反射光の強弱のみで検出することができる。しかし、病院内での血糖値測定作業は多数の患者を相手にするため、血糖値測定作業は迅速に行われなければならない。そこで、血糖計101では、検量線データを用いて、血液の試薬との反応の途中で血糖値を算出する、短時間での血糖値測定を実現している。
【0062】
短時間に血糖値を測定するために、血糖計101は試験紙511に対する血液の点着のタイミングを正確に取得する必要がある。取得した点着のタイミングが、本来のタイミングと時間軸上のズレがあれば、それは誤差となって現れる。この測定誤差を、許容範囲内に収めなければならない。
例えば、本実施形態の血糖計101の測定時間は9秒と設定されているが、仮にサンプリングクロックが1Hzであった場合、最大で2秒の誤差が生じることとなってしまう。前述の通り、血液の試薬との反応の途中で血糖値を算出するので、2秒を経過すればそれだけ反応も進行してしまい、大きな誤差を生じることとなる。
誤差を低減するには、サンプリングクロックを高い周波数に設定すればよい。しかし、サンプリングクロックの周波数を上げる、ということは、A/D変換器413bをそれだけ多く稼動させることとなる。一般に、A/D変換器は電力消費が大きいので、電池駆動の携帯型機器で高いサンプリングクロックを設定することは、電池の消耗を早め、稼働時間を短縮してしまうので好ましくない。
【0063】
そこで、本実施形態では、血液の試験紙511への点着を確認する段階においてのみ、サンプリングクロックを高める手法を採用した。そして、血液の試験紙511への点着を確認した瞬間から、測定処理のためのタイマを起動するように測定処理部516を制御すると共に、A/D変換器413bのサンプリングクロックを与えるように、高速クロック生成部520を構成した。
【0064】
図12は、血糖値を測定する際に、検量線データを用いて算出した測定値を時間の経過と共に示すグラフである。本実施形態の血糖計は、このグラフの0秒の時点の値から9秒の時点の値までを取得することとなる。
測定誤差は、測定終了時点である9秒の時点のグラフの傾きに依存する。このことを考慮すると、サンプリング時間間隔(サンプリングクロックの周波数の逆数)Tsampleと、グラフの傾きΔfと、血糖計に要求される分解能εとは、以下の式の関係になる。
【0065】
【数1】
【0066】
上記式によれば、測定時間によって傾きが異なる反応曲線で、それぞれの測定時間における最適なサンプリング時間間隔の最大値(クロック周波数の最小値)を求めることができる。
本実施形態の血糖計101は、表示される血糖値の最小値を1mg/dLとしている。通常、電子式測定機器の分解能は、表示値に対して10倍以上を要求されるので、要求される分解能を0.1mg/dL、傾きを40mg/dl/secとすると、サンプリング時間間隔は0.0025秒、サンプリングクロックの周波数(サンプリング時間間隔の逆数)は400Hzとなる。なお、デジタル機器の設計の都合上、二進法で扱いやすい数字として、本実施形態の血糖計101は、512Hzを採用している。
【0067】
本実施形態においては、血糖計を開示した。
血糖計の動作モードに応じてサンプリングクロックを適切に設定し、特に測定開始を決定するモードでは高速のクロックパルスを連続して生成し、点着を検出した時点からタイマ等の計測動作を開始すると共に、クロックパルスの生成を間歇的なものに切り替えるように、クロック生成部を構成した。クロックパルスは要求される分解能と血糖値の測定曲線の傾きに基づいて決定した。
このように血糖計を構成することで、必要な精度を備えつつ、電力消費を極力低減した血糖計を実施できる。
【0068】
以上、本発明の実施形態例について説明したが、本発明は上記実施形態例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、他の変形例、応用例を含む。
【符号の説明】
【0069】
101…血糖計、102…筐体、103…光学測定部、104…イジェクトレバー、105…表示パネル、106…操作パネル、202…回路基板、203…内部温サーミスタ、256…最大値、302…筒、304…フォトダイオード、305…基台、306…ガラス窓、307…外気温サーミスタ、308…測定チップ、402…CPU、403…ROM、404…RAM、405…バス、407…リアルタイムクロック、408…ボタン操作部、410…ドライバ、411…D/A変換器、413…A/D変換器、413b…A/D変換器、414…不揮発性ストレージ、415…LCD表示部、424…ドライバ、503…スイッチ、504…低速シーケンサ、505…高速シーケンサ、506…ORゲート、508…スイッチ、511…試験紙、512…ORゲート、513…チップ装着判定部、514…基準値測定部、515…点着判定部、516…測定処理部、517…チップ離脱判定部、518…制御部、519…低速クロック生成部、520…高速クロック生成部、R502、R507、R510…分圧抵抗、702…512Hzクロック生成器、703…ループカウンタ、704…デジタルコンパレータ、705…閾値、706…ANDゲート、802…64Hzクロック生成器、803…ループカウンタ、804…デジタルコンパレータ、805…閾値、806…ANDゲート
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定チップが装着された状態で血液を前記測定チップに付着させて血液中のグルコース量に応じた信号を出力する血糖値測定部と、
前記信号をデジタルデータに変換するA/D変換器と、
前記デジタルデータに基づいて前記測定チップに血液が付着したか否かを判定する点着判定部と、
前記デジタルデータに基づいて血糖値を得る測定処理部と、
前記A/D変換器から前記デジタルデータを取得するためのクロックであり、前記クロックの周期が、要求分解能を血糖値反応曲線の所定の時間における傾きで除算した値以下であるクロックを生成するクロック生成部と
を具備する血糖計。
【請求項2】
前記血糖値測定部は、前記測定チップに光を照射する発光素子と、前記A/D変換器に接続されて前記測定チップから得られる反射光を受光して電気信号に変換する受光素子とを具備し、
前記クロック生成部は、前記点着判定部が前記測定チップに血液が付着したと判定するまでは前記クロックを連続的に出力し、前記点着判定部が前記測定チップに血液が付着したと判定したら前記クロックを間歇的に出力するものであり、
前記測定処理部は、前記点着判定部が前記測定チップに血液が付着したと判定したら血糖値の測定処理に要する所定時間の計測を開始するものである、
請求項1記載の血糖計。
【請求項3】
更に、
前記測定チップが前記血糖値測定部に装着されたか否かを判定するチップ装着判定部と、
前記チップ装着判定部が前記測定チップが前記血糖値測定部に装着されたと判断したら、前記測定チップに前記血液が付着していない状態で前記A/D変換器から基準値となる前記デジタルデータを取得する基準値測定部と、
前記測定処理部が測定処理を終了した後、前記測定チップが前記血糖値測定部から離脱されたか否かを判定するチップ離脱判定部と、
を具備し、
前記点着判定部は前記基準値測定部が前記基準値を取得した後に実行されるものである、
請求項2記載の血糖計。
【請求項1】
測定チップが装着された状態で血液を前記測定チップに付着させて血液中のグルコース量に応じた信号を出力する血糖値測定部と、
前記信号をデジタルデータに変換するA/D変換器と、
前記デジタルデータに基づいて前記測定チップに血液が付着したか否かを判定する点着判定部と、
前記デジタルデータに基づいて血糖値を得る測定処理部と、
前記A/D変換器から前記デジタルデータを取得するためのクロックであり、前記クロックの周期が、要求分解能を血糖値反応曲線の所定の時間における傾きで除算した値以下であるクロックを生成するクロック生成部と
を具備する血糖計。
【請求項2】
前記血糖値測定部は、前記測定チップに光を照射する発光素子と、前記A/D変換器に接続されて前記測定チップから得られる反射光を受光して電気信号に変換する受光素子とを具備し、
前記クロック生成部は、前記点着判定部が前記測定チップに血液が付着したと判定するまでは前記クロックを連続的に出力し、前記点着判定部が前記測定チップに血液が付着したと判定したら前記クロックを間歇的に出力するものであり、
前記測定処理部は、前記点着判定部が前記測定チップに血液が付着したと判定したら血糖値の測定処理に要する所定時間の計測を開始するものである、
請求項1記載の血糖計。
【請求項3】
更に、
前記測定チップが前記血糖値測定部に装着されたか否かを判定するチップ装着判定部と、
前記チップ装着判定部が前記測定チップが前記血糖値測定部に装着されたと判断したら、前記測定チップに前記血液が付着していない状態で前記A/D変換器から基準値となる前記デジタルデータを取得する基準値測定部と、
前記測定処理部が測定処理を終了した後、前記測定チップが前記血糖値測定部から離脱されたか否かを判定するチップ離脱判定部と、
を具備し、
前記点着判定部は前記基準値測定部が前記基準値を取得した後に実行されるものである、
請求項2記載の血糖計。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−64596(P2011−64596A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−216140(P2009−216140)
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】
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