説明

血行促進エアゾール組成物

【課題】簡単に使用でき、形成される泡の状態が良好で皮膚へ塗布した際の刺激がなく、良好な泡状態が維持される間に塗布部位に対して優れた血行促進効果を発揮するエアゾール組成物を提供する。
【解決手段】水、親水性界面活性剤、増粘剤、油成分を含む原液と、炭酸ガスとをエアゾール用バルブ及びノズルを備えた耐圧容器に封入してなるエアゾール組成物を提供する。上記耐圧容器からの噴射により形成されたエアゾール組成物の泡は、泡状態が良好で皮膚へ塗布した際の刺激がなく、皮膚に塗布後20秒以内に皮膚と接触した箇所の泡が消泡し始めるが、少なくとも1分間は泡状態を維持し、その泡状態が維持される間に塗布部位に対して優れた血行促進効果を発揮する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭酸ガスを配合したエアゾール組成物であって、更に詳しくは、炭酸ガスを配合することによって血行促進効果を発揮するエアゾール組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、炭酸ガスの血行促進作用を利用した提案は数多くされている。例えば、特許文献1では、炭酸ガス難透過性の包装ピロー内に、炭酸ガスとともにシート状貼付剤を密閉してなる身体貼布用シート材であって、そのシート状貼付剤を構成する液又はゲルの溶存炭酸ガス量やpH、包装ピローに対する充填比を調整することによって、保存時の炭酸ガスの揮散を防止し、かつ使用時の炭酸ガスの揮散を抑えつつ皮膚に血行促進効果を付与する身体貼布用シート材が提案されている。しかしながら、この身体貼布用シート材を実際に製造することはかなり困難である。
【0003】
炭酸ガスを配合したエアゾール組成物についても数多く提案されている。特許文献2では血行促進剤を含有する養毛・育毛料に、特許文献3では水性化粧料に、特許文献4では多価アルコールにそれぞれ血管拡張作用を有する炭酸ガスを配合したエアゾール組成物が提案されているが、皮膚に塗布した際の血管拡張作用に伴う皮膚紅潮は確認されていない。また、特許文献4においては、化粧料に粘度を持たせて炭酸ガスの残留性を高くさせた提案もされているが、化粧料が高粘度の場合には、二重構造のエアゾール容器を用いる必要があり、コストが高くなるという問題もある。
【0004】
また、特許文献5は特定の非イオン界面活性剤、低粘度の油剤、エタノール、水の比率一定量比とすることで炭酸ガスの残留性を高めたエアゾール組成物が提案されているが、必須成分にエタノールを20%以上含有するため皮膚に長時間塗布したときに強い刺激が感じられるほか、血管拡張作用に伴う皮膚紅潮は確認されていない。特許文献6は親油性界面活性剤、油成分、水からなる乳化原液と炭酸ガスを含む圧縮ガスからなるエアゾール組成物が提案されているが、この組成物から形成された泡は硬いため、その泡を皮膚に塗布しても炭酸ガスが皮膚へ浸透しにくく炭酸ガスによる血行促進効果は得られない。特許文献7、8では炭酸ガスを皮膚上に長時間作用させて皮膚紅潮及び血行促進効果が得られる泡沫状皮膚塗布剤が提案されているが、必須成分に炭素数が3〜5から選ばれる炭化水素が含まれるため、この泡沫状皮膚塗布剤から形成された泡を皮膚に塗布した場合の皮膚刺激性は強いものであり、また、上記の炭化水素を配合せず炭酸ガスのみを配合した比較例(特許文献7においては比較例2、特許文献8においては比較例1)においては、泡を形成するがだれてしまい皮膚の上で安定なものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−170937号公報
【特許文献2】特公昭63−47684号公報
【特許文献3】特公平3−14284号公報
【特許文献4】特開平11−171755号公報
【特許文献5】特許第3944124号公報
【特許文献6】特許第4384767号公報
【特許文献7】特開2009−269914号公報
【特許文献8】特許第3929936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明はこのことに鑑み、簡単に使用でき、形成される泡の状態が良好で皮膚へ塗布した際に皮膚への刺激がなく、良好な泡状態が維持される間に塗布部位に対して優れた血行促進効果を発揮する血行促進エアゾール組成物を提供することを課題とする。より望ましくは、血行促進効果が皮膚紅潮等のように容易に視認されうる血行促進エアゾール組成物の提供を図らんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本願の請求項1に記載の発明は、水、親水性界面活性剤、増粘剤、油成分を含む原液と、炭酸ガスとをエアゾール用バルブ及びノズルを備えた耐圧容器に封入してなるエアゾール組成物において、上記耐圧容器からの噴射により形成された泡を皮膚に塗布した後、20秒以内に皮膚と接触した箇所の泡が消泡し始め、少なくとも1分間は泡状態を維持するものであり、その泡状態が維持される間に塗布部位に対して血行促進効果を発揮することを特徴とする血行促進エアゾール組成物を提供する。
【0008】
また、本願の請求項2に記載の発明は、上記親水性界面活性剤のHLBが10〜19であり、かつ上記原液中の上記親水性界面活性剤含有量が0.1〜15重量%であり、上記原液中の上記油成分含有量が3〜30重量%であり、上記エアゾール組成物中の上記炭酸ガス含有量が500〜5000ppmであることを特徴とする請求項1に記載の血行促進エアゾール組成物を提供する。
【0009】
また、本願の請求項3に記載の発明は、上記エアゾール組成物の噴射剤が、上記炭酸ガスのみから構成されていることを特徴とする請求項2に記載の血行促進エアゾール組成物を提供する。
【0010】
また、本願の請求項4に記載の発明は、上記原液の粘度が、20℃において50〜500mPa・sであることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の血行促進エアゾール組成物を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本願発明は、水、親水性界面活性剤、増粘剤、油成分を含む原液と、炭酸ガスとをエアゾール用バルブ及びノズルを備えた耐圧容器に封入することにより、上記耐圧容器からの噴射により良好な泡を形成し、その泡を皮膚に塗布した際に皮膚への刺激もなく、塗布後炭酸ガスを含む泡が少なくとも1分間は維持され、その泡状態が維持される間に塗布部位に対して炭酸ガスによる優れた血行促進効果を発揮する血行促進エアゾール組成物を提供することができたものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本願発明に係る血行促進エアゾール組成物について説明する。
【0013】
本願発明に係る血行促進エアゾール組成物は、水、親水性界面活性剤、増粘剤、油成分を含む原液と、炭酸ガスとをエアゾール用バルブ及びノズルを備えた耐圧容器に封入してなる組成物である。以下、水、親水性界面活性剤、増粘剤、油成分を含む原液を水性原液と称する。
【0014】
本願発明に係る血行促進エアゾール組成物には、水が配合される。この水は通常エアゾール組成物に用いられる水であれば特に制限されず、例えば、精製水、イオン交換水、蒸留水などが挙げられる。
【0015】
本願発明に係る血行促進エアゾール組成物には、親水性界面活性剤が配合される。この親水性界面活性剤は、上記水に後述する油成分を乳化させるものである。
この親水性界面活性剤としては、例えばポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンラノリンアルコールなどが挙げられ、その親水性・新油性バランス(以下、HLBとする)が10〜19、好ましくは12〜19、更に好ましくは14〜18の範囲のものである。HLBが10未満であると良好な泡状態を形成しない。これらの親水性界面活性剤は、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、比較的高いHLBを有する親水性界面活性剤と、比較的低いHLBを有する親水性界面活性剤とを混合して用いてもよい。
【0016】
また、これらの親水性界面活性剤の含有量は、後述する油成分を充分に乳化するために、水性原液に対して0.1〜15重量%の範囲が好ましく、水性原液に対して2〜10重量%の範囲がより好ましい。
【0017】
本願発明に係る血行促進エアゾール組成物には、水性原液の粘度を調整するための増粘剤が配合される。
この増粘剤としては、特に限定されないが、例えばポリアクリル系樹脂、ポリビニル系樹脂、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、カルボキシメチルセルロースエステル、カルボキシメチルセルロースナトリウム、デンプンリン酸エステルナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、メチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム、セルロースエステル、アルギン酸、カゼイン、グアーガム、グルテン、デンプンなどが挙げられる。これらの増粘剤は1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0018】
また、20℃における水性原液の粘度は、50〜500mPa・sの範囲が好ましく、更に好ましくは200〜300mPa・sの範囲である。粘度が500mPa・sを超えると容器内に付着した内容物が最後まで吐出せず、残量が多くなる。また、粘度が50mPa・s未満であると、水性原液と炭酸ガスとが封入されたエアゾール用バルブ及びノズルを備えた耐圧容器からの噴射により形成された泡を皮膚に塗布した時に泡が垂れ落ち、良好な泡状態を維持せず泡が炭酸ガスを保持しなくなる。
【0019】
本願発明に係る血行促進エアゾール組成物には、油成分が配合される。この油成分は、皮膚のエモリエント性を高め使用感を向上させたり、光沢を付与するものである。
この油成分は、水に溶けない液状の成分のことをいい、特に限定されないが、ノルマルパラフィン、イソパラフィン、流動パラフィン、スクワラン、ワセリンなどの炭化水素、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、ステアリン酸イソセチル、乳酸セチルなどのエステル油、ジメチルシリコーン、環状シリコーンなどのシリコーン油、オリーブ油、ナタネ油、ヒマシ油、ツバキ油、アマニ油、ホホバ油などの油脂、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコールなどの直鎖アルコールや、モノステアリルグリセリンエーテル、ラノリンアルコール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノールなどの分岐鎖アルコールなどの高級アルコールなどが例示できる。また、これらの油成分の含有量は、水性原液に対して3〜30重量%の範囲が好ましく、更に好ましくは5〜15重量%の範囲である。
【0020】
本願発明に係るエアゾール組成物を構成する水性原液は、水、親水性界面活性剤、増粘剤、油成分とからなるが、本願発明の目的を逸脱しない範囲において、上記成分のほかに、例えば、グリセリンやソルビット液などの保湿剤やエタノールやイソプロパノールなどのアルコール類、香料、dl-α-トコフェロールなどの酸化防止剤、p−ヒドロキシ安息香酸エステルなどの防腐殺菌剤、美白剤や肌荒れ防止剤などの薬剤などを配合することができる。
【0021】
本願発明に係る血行促進エアゾール組成物は、上述の通り、水性原液と、炭酸ガスとをエアゾール用バルブ及びノズルを備えた耐圧容器に封入してなる組成物であり、本願発明には炭酸ガスが必須成分である。通常噴射剤としてエアゾール製品に用いられる圧縮空気、窒素、酸素などの圧縮ガスは、水性原液に対する溶解性が低いため泡の生成力が弱く良好な泡が形成されず、血行促進効果も得られない。また、同じく通常噴射剤としてエアゾール製品に用いられるLPG(液化石油ガス)などの液化ガスは、血行促進効果が得られないだけではなく、皮膚に対して刺激を与える。
【0022】
また、エアゾール組成物中の炭酸ガスの含有量は、噴射剤として機能させるために、そして、優れた血行促進効果を発揮させるために、500〜5000ppmの範囲が好ましい。エアゾール製品に関して、炭酸ガスのみを使用したエアゾール製品では原液の内容量は容器の満中量に対して40〜70%である。本願発明において使用する水性原液に溶存している炭酸ガスが500ppmであれば容器内の圧力は35℃で0.2MPaであり、5000ppmであれば容器内の圧力は0.98MPaとなる。日本エアゾール協会の自主基準では圧縮ガスのみを使用したエアゾール製品は、35℃における圧力が1.0MPa未満であれば高圧ガス保安法の適用を受けないと定めている。炭酸ガス含有量が500ppm未満であれば35℃での容器内の圧力が0.2MPa未満となり、エアゾール製品を最後まで使用できず、また、5000ppmを超えると容器内の圧力が1.0MPa以上となり、高圧ガス保安法の適用を受け、エアゾール製品とはならない。よって、後述する耐圧容器の圧力は、35℃において0.2〜1.0MPa未満の範囲であることが好ましく、0.4〜0.8MPaの範囲であることがより好ましい。また、炭酸ガスによる血行促進効果を発揮させるためには、エアゾール組成物のpHは、炭酸ガスが溶存した状態で7.0以下であればよく、肌に使用する製品であることからpH3.0〜7.0の範囲であることが好ましく、pH4.0〜6.0の範囲であることがより好ましい。上記範囲内にpHを調製するために、クエン酸ナトリウムなどのpH調整剤を配合してもよい。また、皮膚への刺激を与えず、かつ本願発明において弊害を生じない範囲において、炭酸ガスに加えて、通常噴射剤としてエアゾール製品に用いられるLPG(液化石油ガス)を噴射剤として用いてもよく、圧縮空気、窒素、酸素などの圧縮ガスについても、本願発明の目的を逸脱しない範囲において、炭酸ガスに加えて噴射剤として用いてもよい。
【0023】
上記水性原液と、上記炭酸ガスとは、エアゾール用バルブ及びノズルを備えた耐圧容器に封入される。その封入方法には特に制限はなく、例えば、水性原液の各成分を撹拌混合し、乳化させて調整したのち、耐圧容器に充填し、さらに圧縮炭酸ガスを耐圧容器に封入する方法などを採用することができる。また、用いられる耐圧容器は、封入される炭酸ガスの内圧に耐え封入された内容物を泡状にして吐出できるものであればよく、アルミやブリキなどの金属製のほか、ポリアセタールやポリカーボネート等の合成樹脂などの容器を利用することができる。さらに、吐出口となるノズル径やノズルの長さについても特に制限はなく、封入された内容物を泡状にして吐出できるのに適した種々の大きさや長さのものを使用することができる。
【0024】
本願発明に係る血行促進エアゾール組成物は良好な泡を形成し、皮膚に塗布した後20秒以内に皮膚と接触した箇所の泡が消泡し始めるが、形成した良好な泡状態を少なくとも1分間は維持する。よって、形成された泡に含まれる炭酸ガスも少なくとも1分間は保持され、その間に塗布された皮膚に対して血行促進効果を発揮する。また、本願発明に係る血行促進エアゾール組成物を皮膚に対して継続的に使用することによって、皮膚の血流改善効果も期待できる。
【0025】
本願発明に係る血行促進エアゾール組成物は、例えば、化粧水や乳液、美容液、クレンジング剤などの基礎化粧料、シャンプーやコンディショナー、育毛剤などの頭髪・頭皮用化粧料、ボディソープなどのボディケア化粧料などとして使用することができる。
【実施例】
【0026】
以下に実施例を挙げて本願発明を詳細に説明するが、本願発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0027】
(実施例1〜3)
表1に示す各成分を撹拌混合し、乳化させて水性原液を調製し、エアゾール用バルブ及びノズルを備えた耐圧容器に充填した後、同じく表1に示す配合割合により炭酸ガスを封入して血行促進エアゾール組成物を得た。得られた血行促進エアゾール組成物を、下記に示す方法により、泡安定性、皮膚刺激、皮膚紅潮について評価した。
【0028】
【表1】

【0029】
(粘度測定)
水性原液の粘度測定には、B形粘度計(形式BM)(株式会社東京計器製)を用いた。測定温度は20℃とし、No.2ローターを使用し、ローター回転数30rpmで測定開始後60秒の粘度を測定した。
(pH測定)
本願発明に係る血行促進エアゾール組成物のpH測定には、pHMETER(M−13型)(HORIBA製)を用いた。測定温度は20℃とした。
【0030】
(評価方法)
20〜50代の男女20名で下記試験を実施して評価した。
(1)泡安定性
皮膚上に3cmφとなるように耐圧容器からの噴射により形成された各試料の泡を塗布し、室温(23〜27℃)で2分間放置して泡の状態を評価した。
◎:泡を形成し、2分間その泡状態を維持する
○:泡を形成するが、1分以上2分未満でたれてしまう
△:泡を形成するが、1分未満でたれてしまう
×:泡を形成しない
(2)皮膚刺激
皮膚上に3cmφとなるように耐圧容器からの噴射により形成された各試料の泡を塗布し、2分間放置して拭き取った。その後、皮膚への刺激に関してモニター調査を行った。
◎:18名以上が刺激はないと回答した。
○:14〜17名が刺激はないと回答した。
△:10〜13名が刺激はないと回答した。
×:9名以下が刺激はないと回答した。
(3)皮膚紅潮
皮膚上に3cmφとなるように耐圧容器からの噴射により形成された各試料の泡を塗布、2分間放置して、拭き取った後の皮膚の状態(皮膚紅潮)を目視で観察した。皮膚紅潮により血行促進効果を評価した。
◎:18名以上が紅潮を認めた
○:14〜17名が紅潮を認めた
△:10〜13名が紅潮を認めた
×:9名以下が紅潮を認めた
【0031】
(比較例1〜5)
実施例1〜実施例3の比較のために、炭酸ガスのほかにLPG(液化石油ガス)を加えて配合したもの、増粘剤を配合しなかったもの、エタノールを配合したもの、油成分や親水性界面活性剤の量を増減させたものを上記実施例1〜実施例3と同様の方法で調製し、これを比較例1〜比較例5とした。これらの比較例1〜比較例5の成分及び試験結果を表1に示す。
【0032】
表1に示すように、実施例1〜3は、室温(23〜27℃)での泡安定性が良好であり、かつ皮膚紅潮が認められたことから、炭酸ガスによる血行促進効果を確認することができた。また、皮膚刺激性については認められなかった。実施例1と実施例2においては水性原液に対する油成分の配合割合に差があるが、油成分に対して適量の親水性界面活性剤を配合することによって良好な結果が得られた。
実施例1の炭酸ガスのほかにLPG(液化石油ガス)を加えて配合した比較例1は、室温(23〜27℃)での泡安定性が良好であったが皮膚紅潮が認められず、LPGによる皮膚刺激性が被験者の半数以上で認められた。また、エタノールを水性原液中の半分以上配合し、かつ増粘剤を配合しなかった比較例3は、泡を形成せず、増粘剤の有無や油成分、親水性界面活性剤の量を増減させた比較例2、比較例4〜比較例5は、皮膚刺激性は認められなかったものの泡安定性が悪く、かつ皮膚紅潮が認められなかった。
よって、水、親水性界面活性剤、増粘剤、油成分を含む水性原液と炭酸ガスとをエアゾール用バルブ及びノズルを備えた耐圧容器に封入してなるエアゾール組成物は、泡の状態が良好であり、かつ皮膚への刺激がなく、皮膚に塗布した後20秒以内に皮膚と接触した箇所の炭酸ガスを含む泡が消泡し始めるが、少なくとも1分間は泡状態が保持され、その間に炭酸ガスが皮膚の内部に浸透することによって優れた血行促進効果が得られることが確認できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水、親水性界面活性剤、増粘剤、油成分を含む原液と、炭酸ガスとをエアゾール用バルブ及びノズルを備えた耐圧容器に封入してなるエアゾール組成物において、
上記耐圧容器からの噴射により形成された泡を皮膚に塗布した後、20秒以内に皮膚と接触した箇所の泡が消泡し始め、少なくとも1分間は泡状態を維持するものであり、
その泡状態が維持される間に塗布部位に対して血行促進効果を発揮することを特徴とする血行促進エアゾール組成物。
【請求項2】
上記親水性界面活性剤のHLBが10〜19であり、かつ上記原液中の上記親水性界面活性剤含有量が0.1〜15重量%であり、
上記原液中の上記油成分含有量が3〜30重量%であり、
上記エアゾール組成物中の上記炭酸ガス含有量が500〜5000ppmであることを特徴とする請求項1に記載の血行促進エアゾール組成物。
【請求項3】
上記エアゾール組成物の噴射剤が、上記炭酸ガスのみから構成されていることを特徴とする請求項2に記載の血行促進エアゾール組成物。
【請求項4】
上記原液の粘度が、20℃において50〜500mPa・sであることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の血行促進エアゾール組成物。

【公開番号】特開2012−97013(P2012−97013A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−244906(P2010−244906)
【出願日】平成22年11月1日(2010.11.1)
【出願人】(393008821)日進化学株式会社 (16)
【Fターム(参考)】