説明

衛星測位装置

【課題】複数の方式を選択的に採用する衛星測位装置において、消費電力を低減することを目的とする。
【解決手段】衛星測位装置10は、占有周波数帯域の中心周波数が所定の第1周波数である衛星信号、および占有周波数帯域の中心周波数が所定の第2周波数である各衛星信号を受信する。そして、第1周波数の衛星信号の受信状況に基づいて、多周波数を用いたリアルタイムキネマティック測位が可能であるか否かを判定する。多周波RTK測位が可能であると判定したときは、第1周波数および第2周波数の各衛星信号に基づいて多周波RTK測位を行う。一方、多周波RTK測位が不可能であると判定したときは、多周波RTK測位を行う構成部の電源供給を遮断する。多周波RTK測位を行う構成部の電源供給を遮断されているときは単独測位を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛星信号の受信状況に応じた方式で測位を行う衛星測位装置に関する。
【背景技術】
【0002】
衛星から送信された衛星信号を受信し測位を行う衛星測位装置が広く用いられている。衛星測位装置には、単独測位方式によるもの、相対測位方式によるもの等がある。
【0003】
単独測位方式は、衛星測位装置が単独で測位を行う方式である。単独測位方式による衛星測位装置は、複数の衛星から送信された各衛星信号に基づいて各衛星までの距離を求め、各衛星信号に含まれる衛星の位置情報と、各衛星までの距離に基づいて衛星測位装置の位置を求める。
【0004】
相対測位方式は、衛星測位装置が衛星信号の他、地球に設けられた基準局から送信された測位補正信号を受信して測位を行う方式である。相対測位方式による衛星測位装置は、複数の衛星から送信された各衛星信号、および基準局から送信された測位補正信号を受信する。そして、予め定められた基準点を原点とする位置ベクトルを衛星信号および測位補正信号に基づいて求め、基準点の位置と求められた位置ベクトルとに基づいて衛星測位装置の位置を求める。相対測位方式による衛星測位装置は、単独測位方式による衛星測位装置に比して構成が複雑になるものの、測位精度が高いという利点がある。このような測位方式は、リアルタイムキネマティック測位方式と称される。
【0005】
また、衛星測位装置には、単一の周波数の衛星信号を用いるものと、周波数の異なる複数の衛星信号を用いるものとがある。相対測位方式を採用し多周波数を用いる衛星測位装置は、相対測位方式を採用し単一周波数を用いる衛星測位装置に比して測位に要する時間が短い。そのため、相対測位方式を採用し多周波数を用いる衛星測位装置は、車両、携帯電話端末等の移動体に搭載され、移動体の位置をリアルタイムに求める目的に用いることができる。多周波数を用いる相対測位方式を多周波リアルタイムキネマティック方式と呼び、以下、多周波RTK測位とする。
【0006】
なお、特許文献1には、本願発明が解決しようとする課題に関連して、方式の異なる2つの測位手段を選択的に用いる車載用ナビゲーション装置につき記載されている。
【0007】
【特許文献1】特開2005−16955号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
単一周波数の相対測位方式では、多周波RTK測位方式に比して測位に要する時間が長い。さらに、単一周波数または多周波数を用いる単独測位方式と比較しても、単一周波数の相対測位方式の方が測位に要する時間が長い。そのため、移動体搭載用とする等、迅速に測位を行う場合には、多周波RTK測位方式または単独測位方式の衛星測位装置を用いることが好ましい。
【0009】
また、多周波数方式の衛星測位装置は、単一周波数方式の衛星測位装置に比して高い受信品質が要求される。そのため、電波状況が良好でない場合には、単一周波数方式の衛星測位装置の方が、多周波数方式の衛星測位装置に比して、測位を容易に行うことができる。したがって、多周波RTK測位方式の衛星測位装置と、単一周波数を用いる単独測位方式の衛星測位装置とを組み合わせる構成が考えられる。この構成においては、多周波RTK測位方式による測位が可能であるか否かに応じて、多周波RTK測位方式の衛星測位装置または単独測位方式の衛星測位装置のいずれかを選択して測位を行う。
【0010】
しかし、このような構成では、2つの衛星測位装置を用いるため消費電力が増加するという問題が生じる。
【0011】
本発明はこのような課題に対してなされたものである。すなわち、複数の方式を選択的に採用する衛星測位装置において、消費電力を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、衛星から送信され、複数の周波数のそれぞれにおける衛星信号を受信する受信部と、前記複数の周波数のうちのいずれかに対する受信状況を検出する受信状況検出部と、前記受信状況が所定の条件を満たすときに各周波数における衛星信号に基づいて測位を行う多周波数測位部と、前記受信状況が所定の条件を満たさないときに、前記複数の周波数のうちの1つの周波数の衛星信号に基づいて測位を行う単一周波数測位部と、前記受信状況が所定の条件を満たさないときに、前記多周波数測位部の測位処理を停止する停止制御部と、を備えることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る衛星測位装置においては、各周波数に対応して設けられ、受信された衛星信号をベースバンド信号に変換するためのローカル信号を生成するローカル信号生成部と、前記複数の周波数に対して共通に設けられ、各周波数に対応するローカル信号によって、各周波数における衛星信号をベースバンド信号に変換する信号変換部と、を備え、前記多周波数測位部および前記単一周波数測位部は、ベースバンド信号に変換された衛星信号に基づいて測位を行い、前記停止制御部は、前記受信状況が所定の条件を満たさないときに、前記単一周波数測位部による処理に用いられない衛星信号に対する前記信号変換部による処理を停止することが好適である。
【0014】
また、本発明は、衛星から送信され、複数の周波数のそれぞれにおける衛星信号を受信する受信部と、 各周波数に対応して設けられ、衛星信号をベースバンド信号に変換するためのローカル信号を生成するローカル信号生成部と、前記複数の周波数に対して共通に設けられ、各周波数に対応するローカル信号によって、各周波数における衛星信号をベースバンド信号に変換する信号変換部と、ベースバンド信号に変換された各衛星信号に基づいて測位を行う多周波数測位部と、を備えることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る衛星測位装置においては、基準局から送信された測位補正信号を受信する基準信号受信部を備え、前記多周波数測位部は、前記測位補正信号を用いてリアルタイムキネマティック測位を行い、前記停止制御部は、前記受信状況が所定の条件を満たさないときに、前記基準信号受信部における受信処理を停止することが好適である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、複数の方式を選択的に採用する衛星測位装置において、消費電力を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1に本発明の第1実施形態に係る衛星測位装置10の構成を示す。衛星測位装置10は、占有周波数帯域の中心周波数が所定の第1周波数である衛星信号、および占有周波数帯域の中心周波数が所定の第2周波数である衛星信号を受信する。そして、第1周波数の衛星信号の受信状況に基づいて、多周波RTK測位が可能であるか否かを判定する。多周波RTK測位が可能であると判定したときは、第1周波数および第2周波数の各衛星信号に基づいて多周波RTK測位を行う。一方、多周波RTK測位が不可能であると判定したときは、多周波RTK測位を行う構成部の電源供給を遮断する。衛星測位装置10では、多周波RTK測位を行う構成部の電源供給が遮断されているときは単独測位方式による測位を行うことができる。
【0018】
衛星測位装置10は、GNSS(Global Navigation Satellite System)に用いることができる。例えば、GPSで用いられる信号には、L1信号、L2信号、およびL5信号がある。また、Galileoで用いられる信号にはE5a信号がある。L1信号、L2信号、L5信号の占有周波数帯域の中心周波数は、それぞれ、1575.42MHz、1227.6MHz、1176.45MHzであり、占有周波数帯域幅はいずれも16MHzである。また、E5a信号の占有周波数帯域の中心周波数は、1176.45MHzであり、占有周波数帯域幅は16MHzである。
【0019】
本実施形態では、第1周波数は、L1信号、L2信号、L5信号、またはE5a信号のうちのいずれかの占有周波数帯域中心周波数とする。また、第2周波数は、L1信号、L2信号、L5信号、またはE5a信号のうち、第1周波数とは異なるいずれかの占有周波数帯域中心周波数とする。
【0020】
衛星測位装置10の具体的な構成について説明する。前段RF増幅器14は、衛星信号用アンテナ12を介して衛星信号を受信する。そして、受信した衛星信号を増幅して第1周波数RFフィルタ16および第2周波数RFフィルタ30に出力する。
【0021】
第1周波数RFフィルタ16は、第1周波数の衛星信号の占有周波数帯域を通過周波数帯域とする。第1周波数RFフィルタ16は、入力信号の通過周波数帯域外の成分を低減して第1周波数RF増幅器18に出力する。第1周波数RF増幅器18は、第1周波数RFフィルタ16の出力信号を増幅し、第1直交検波部20に出力する。第1ローカル信号発振器22は第1ローカル信号を生成し、第1直交検波部20に出力する。第1直交検波部20は、第1周波数RF増幅器18の出力信号から、第1ローカル信号の位相を基準とした同相成分信号Iおよび直交成分信号Qをベースバンド信号として抽出する。そして、同相成分信号Iおよび直交成分信号Qをディジタル信号に変換し、第1信号処理部24に出力する。
【0022】
第1信号処理部24は、第1直交検波部20の出力信号に基づいて、衛星信号用アンテナ12で受信された衛星信号の搬送波の位相を第1搬送波位相B1として求め、RTK測位部28に出力する。
【0023】
このような構成によれば、第1周波数の衛星信号を受信して増幅し、その衛星信号の搬送波の位相を第1搬送波位相B1として求めることができる。第1信号処理部24は、5個以上の衛星から送信され、衛星信号用アンテナ12で受信された第1周波数の衛星信号のそれぞれに対して第1搬送波位相B1を求め、RTK測位部28に出力する。このようにして求められた第1搬送波位相B1はRTK測位部28における多周波RTK測位に用いられる。
【0024】
第1信号処理部24は、第1搬送波位相B1を求める他、第1直交検波部20の出力信号に基づいて衛星までの擬似距離を求める。ここで、擬似距離は、1つの衛星信号に含まれる情報に基づいて計算によって求められる距離であり、実際の距離に対し誤差を含む。第1信号処理部24は、4個以上の衛星からそれぞれ送信され、衛星信号用アンテナ12で受信された第1周波数の衛星信号のそれぞれに対して擬似距離を求める。そして、各衛星信号に含まれる情報と各衛星に対して求められた擬似距離とに基づいて衛星測位装置10の位置を求め、求められた結果を単独測位位置情報Aとして測位結果処理部26に出力する。
【0025】
単独測位位置情報Aは、単独測位方式によって求められた位置情報であり、測位結果として用いることが可能である。しかし、単独測位方式では、多周波RTK測位方式で得られる程度の測位精度を確保することが困難である。そこで、衛星測位装置10では、次に説明するように、第1搬送波位相B1の他、第2周波数の衛星信号に基づいて求められる第2搬送波位相B2および基準局から送信される情報を併せて用い、多周波RTK測位を行う。単独測位位置情報Aは、多周波RTK測位が不可能である場合の測位結果として用いることができる。
【0026】
第2周波数RFフィルタ30は、第2周波数の衛星信号の占有周波数帯域を通過周波数帯域とする。第2周波数RFフィルタ30は、前段RF増幅器14から出力された信号の通過周波数帯域外の成分を低減して第2周波数RF増幅器32に出力する。第2周波数RF増幅器32は、第2周波数RFフィルタ30の出力信号を増幅し、第2直交検波部34に出力する。第2ローカル信号発振器36は、第2ローカル信号を生成し、第2直交検波部34に出力する。第2直交検波部34は、第2周波数RF増幅器32の出力信号から、第2ローカル信号の位相を基準とした同相成分信号Iおよび直交成分信号Qをベースバンド信号として抽出する。そして、同相成分信号Iおよび直交成分信号Qをディジタル信号に変換し、第2信号処理部38に出力する。
【0027】
第2信号処理部38は、第2直交検波部34の出力信号に基づいて、衛星信号用アンテナ12で受信された衛星信号の搬送波の位相を第2搬送波位相B2として求め、第2搬送波位相をRTK測位部28に出力する。
【0028】
このような構成によれば、第2周波数の衛星信号を受信して増幅し、その衛星信号の搬送波の位相を第2搬送波位相B2として求めることができる。第2信号処理部38は、5個以上の衛星から送信され、衛星信号用アンテナ12で受信された第2周波数の衛星信号のそれぞれに対して第2搬送波位相B2を求め、RTK測位部28に出力する。
【0029】
なお、ここでは、第1直交検波部20および第2直交検波部34が同相成分信号Iおよび直交成分信号Qを抽出する構成とした。このような構成の他、第1直交検波部20および第2直交検波部34に代えて、第1周波数RF増幅器18および第2周波数RF増幅器32の各出力信号を低域周波数側に周波数変換するミキサを設け、ミキサの処理によって得られた中間周波数信号を第1信号処理部24および第2信号処理部38に入力するスーパーへテロダイン方式を採用してもよい。
【0030】
基準信号受信部42は、基準局から送信された測位補正信号を基準アンテナ40を介して受信する。基準信号受信部42は、測位補正情報を測位補正信号から抽出し、RTK測位部28に出力する。この測位補正情報は、第1搬送波位相B1および第2搬送波位相B2を求める元となった衛星信号について基準局で求められた位相、基準局の位置情報等を含む。
【0031】
RTK測位部28は、第1搬送波位相B1、第2搬送波位相B2、および測位用基準情報に基づいて、多周波RTK測位を行い衛星測位装置10の位置情報を求め、求められた結果をRTK測位位置情報Cとして測位結果処理部26に出力する。
【0032】
測位結果処理部26は、単独測位位置情報AまたはRTK測位位置情報Cの少なくともいずれかを用いた処理を実行する。例えば、位置情報を記憶、表示等する。また、衛星測位装置10が自動車等の移動体に搭載される場合には、測位情報に基づいた走行支援等を行う。
【0033】
多周波RTK測位には、単独測位に比して高い受信品質が要求される。そこで、本実施形態に係る衛星測位装置10は、第1信号処理部24の処理状態に基づいて第1周波数の衛星信号の受信状態を検出し、多周波RTK測位が可能であるか否かを判定するモニタ部44を備える。そして、多周波RTK測位が不可能である旨の判定をしたときは、多周波RTK測位を行う構成部の電源供給を遮断する。
【0034】
モニタ部44は、次の(1)〜(5)の条件がすべて成立する場合には、多周波RTK測位が可能である旨の判定をし、(1)〜(5)の条件のうちいずれかが成立しない場合には、多周波RTK測位が不可能である旨の判定をする。
(1)衛星信号が受信された衛星の数が5個以上であること。
(2)衛星までの距離を衛星信号の位相の累積値で換算し、その位相累積値を2πで除したときの整数部分(整数バイアス値)に1以上の誤差がないこと。すなわち、サイクルスリップがないこと。
(3)衛星信号用アンテナ12における受信信号レベルが所定値以上、例えば、−140dBm以上であること。
(4)第1信号処理部24における受信信号の信号対雑音比が所定値以上であること。
(5)衛星信号を受信している衛星の仰角が所定角度以上、例えば、10°以上であること。
【0035】
モニタ部44は、多周波RTK測位が可能である旨の判定をしたときは、電源オン情報を、第2周波数RF増幅器32、第2直交検波部34、第2ローカル信号発振器36、第2信号処理部38、基準信号受信部42、およびRTK測位部28に出力する。これらの構成部は、電源オン情報に基づいて電源供給がなされる状態に制御される。これによって、衛星測位装置10は多周波RTK測位を行う状態となる。測位結果処理部26は、RTK測位位置情報Cを用いた処理を実行する。
【0036】
一方、モニタ部44は、多周波RTK測位が不可能である旨の判定をしたときは、電源オフ情報を、第2周波数RF増幅器32、第2直交検波部34、第2ローカル信号発振器36、第2信号処理部38、基準信号受信部42、およびRTK測位部28に出力する。これらの構成部は、電源オフ情報に基づいて電源供給がなされない状態に制御される。これによって、衛星測位装置10は多周波RTK測位を行わない状態となる。測位結果処理部26は、単独測位位置情報Aを用いた処理を実行する。
【0037】
このような構成によれば、衛星信号の受信状況が多周波RTK測位を行うことが可能な程度に良好でないときは、多周波RTK測位方式に代えて単独測位方式による測位結果を用いることができる。これによって、高層ビルが隣接する市街地や、山岳地帯等、衛星信号の受信状況が良好でない地域において、測位処理が中断されることを回避することができる。
【0038】
さらに、多周波RTK測位を行わない場合には、第2周波数RF増幅器32、第2直交検波部34、第2ローカル信号発振器36、第2信号処理部38、基準信号受信部42、およびRTK測位部28の電源供給が遮断される、これによって、多周波RTK測位を行わないときの消費電力を低減することができる。
【0039】
なお、上記では、2つの周波数の衛星信号を受信する場合について説明した。このような構成の他、3以上の周波数の衛星信号を受信する構成としてもよい。この場合、受信周波数を追加した数だけ、第2周波数RFフィルタ30、第2周波数RF増幅器32、第2直交検波部34、第2ローカル信号発振器36、および第2信号処理部38と同一の構成部を追加する。多周波RTK測位が可能である旨の判定をモニタ部44がしたときは、RTK測位部28は、3以上の周波数のそれぞれの衛星信号に基づいて多周波RTK測位を行う。そして、多周波RTK測位が不可能である旨の判定をモニタ部44がしたときは、第2周波数RFフィルタ30、第2周波数RF増幅器32、第2直交検波部34、第2ローカル信号発振器36、および第2信号処理部38と同一の構成部への電源供給を遮断する。
【0040】
また、判定条件には、上記(1)〜(5)の総てを含める必要はなく、これらのうちのいずれかを採用することができる。また、その他の条件を追加してもよい。
【0041】
次に、第2実施形態に係る衛星測位装置について説明する。図2に第2実施形態に係る衛星測位装置46の構成を示す。衛星測位装置46は、前段RF増幅器14、後段RF増幅器48、共用直交検波部50を第1および第2周波数に対し共通化したものである。図1の衛星測位装置10の構成部と同一の構成部については同一の符号を付して説明を簡略化する。
【0042】
前段RF増幅器14は、衛星信号用アンテナ12を介して衛星信号を受信する。そして、受信した衛星信号を増幅して第1周波数RFフィルタ16および第2周波数RFフィルタ30に出力する。
【0043】
第1周波数RFフィルタ16および第2周波数RFフィルタ30は、入力信号の通過周波数帯域外の成分を低減して後段RF増幅器48に出力する。後段RF増幅器48は、第1周波数RFフィルタ16および第2周波数RFフィルタ30の各出力信号を増幅し、共用直交検波部50に出力する。
【0044】
共用直交検波部50に入力された信号は、同相ミキサ52および直交ミキサ64に入力される。第1ローカル信号発振器60は、第1ローカル信号を同相ミキサ52および90°移相器62に出力する。90°移相器62は、第1ローカル信号の位相を90°遅らせた信号を、直交第1ローカル信号として直交ミキサ64に出力する。ここで、第1ローカル信号の周波数は、予め定められた中間周波数fIFだけ第1周波数より低い周波数とする。
【0045】
第2ローカル信号発振器72は、第2ローカル信号を同相ミキサ52および90°移相器74に出力する。90°移相器74は、第2ローカル信号の位相を90°遅らせた信号を、直交第2ローカル信号として直交ミキサ64に出力する。ここで、第2ローカル信号の周波数は、予め定められた中間周波数fIFだけ第2周波数より低い周波数とする。
【0046】
同相ミキサ52は、後段RF増幅器48の出力信号と第1ローカル信号とを掛け合わせた信号、および後段RF増幅器48の出力信号と第2ローカル信号とを掛け合わせた信号を同相ローパスフィルタ54に出力する。
【0047】
これによって、同相ミキサ52からは、後段RF増幅器48の出力信号と第1ローカル信号との周波数差の周波数を有する信号、および後段RF増幅器48の出力信号と第2ローカル信号との周波数差の周波数を有する信号が同相ローパスフィルタ54に出力される。
【0048】
後段RF増幅器48の出力信号は、第1周波数の衛星信号および第2周波数の衛星信号を含む。また、第1ローカル信号の周波数は、中間周波数fIFだけ第1周波数より低い周波数であり、第2ローカル信号の周波数は、中間周波数fIFだけ第2周波数より低い周波数である。したがって、第1周波数の衛星信号および第2周波数の衛星信号は、同一周波数帯域の信号に変換されて同相ローパスフィルタ54に出力される。
【0049】
同相ローパスフィルタ54は、入力信号成分のうちカットオフ周波数fc以上の周波数の成分を低減してIF増幅器56に出力する。
【0050】
直交ミキサ64は、後段RF増幅器48の出力信号と直交第1ローカル信号を掛け合わせた信号、および後段RF増幅器48の出力信号と直交第2ローカル信号を掛け合わせた信号を直交ローパスフィルタ66に出力する。同相ミキサ52の原理と同様の原理により、第1周波数の衛星信号および第2周波数の衛星信号は、同一周波数帯域の信号に変換されて直交ローパスフィルタ66に出力される。
【0051】
直交ローパスフィルタ66は、入力信号成分のうちカットオフ周波数fc以上の周波数の成分を低減してIF増幅器68に出力する。
【0052】
このような構成によれば、後段RF増幅器48の出力信号に含まれる第1周波数の衛星信号の同相成分および第2周波数の衛星信号の同相成分は、同一周波数帯域に重畳された上で不要な信号が低減され同相ローパスフィルタ54から出力される。また、後段RF増幅器48の出力信号に含まれる第1周波数の衛星信号の直交成分および第2周波数の衛星信号の直交成分は、同一周波数帯域に重畳された上で不要な信号が低減され直交ローパスフィルタ66から出力される。
【0053】
例えば、L1信号およびL2信号を受信するものとした設計例について採り上げる。この場合、第1周波数をL1信号の周波数1575.42MHzとし、第2周波数をL2信号の周波数1227.6MHzとする。ここで、中間周波数fIFを1MHzとした場合には、第1ローカル信号の周波数を1574.42MHzとし、第2ローカル信号の周波数を1226.6MHzとする。
【0054】
同相ミキサ52および直交ミキサ64においては、L1信号の占有周波数帯域の中心周波数からfIF=1MHzだけ低い周波数の成分はゼロ周波数成分に変換される。L1信号の占有周波数帯域幅は16MHzであるため、ゼロ周波数成分に変換される成分の周波数よりも高域側の周波数成分は、0Hz以上9MHz以下の周波数帯域の成分に変換され、ゼロ周波数成分に変換される成分の周波数よりも低域側の周波数成分は、0Hz以上8MHz以下の周波数帯域の成分に変換される。
【0055】
L2信号もL1信号と同様に、L2信号の占有周波数帯域の中心周波数からfIF=1MHzだけ低い周波数の成分はゼロ周波数成分に変換される。ゼロ周波数成分に変換される成分の周波数よりも高域側の周波数成分は、0Hz以上9MHz以下の周波数帯域の成分に変換され、ゼロ周波数成分に変換される成分の周波数よりも低域側の周波数成分は、0Hz以上8MHz以下の周波数帯域の成分に変換される。
【0056】
したがって、同相ミキサ52からは、0Hz〜9MHzの周波数帯域にL1信号の同相成分およびL2信号の同相成分が周波数変換された信号が出力され、直交ミキサ64からは、0Hz〜9MHzの周波数帯域にL1信号の直交成分およびL2信号の直交成分が周波数変換された信号が出力される。
【0057】
この場合、同相ローパスフィルタ54および直交ローパスフィルタ66のカットオフ周波数fcは、周波数変換されたL1信号およびL2信号の占有周波数帯域の上限9MHzと同一か、それよりやや高い周波数とすることが好ましい。
【0058】
IF増幅器56は、同相ローパスフィルタ54から出力された同相成分信号Iを増幅し、A/Dコンバータ58に出力する。A/Dコンバータ58は、同相成分信号Iをディジタル信号に変換し、第1信号処理部24および第2信号処理部38に出力する。
【0059】
IF増幅器68は、直交ローパスフィルタ66から出力された直交成分信号Qを増幅し、A/Dコンバータ70に出力する。A/Dコンバータ70は、直交成分信号Qをディジタル信号に変換し、第1信号処理部24および第2信号処理部38に出力する。
【0060】
このような構成によれば、第1周波数RFフィルタ16および第2周波数RFフィルタ30の各出力信号は合成され増幅された上で後段RF増幅器48から共用直交検波部50に出力される。さらに、共用直交検波部50は、第1周波数および第2周波数の各衛星信号に対して共通の構成によって直交検波を行う。後段RF増幅器48および共用直交検波部50を第1および第2周波数に対して共通化することで、衛星測位装置46を小型化し、消費電力を低減することができる。
【0061】
第1信号処理部24は、共用直交検波部50から出力された信号から、第1周波数の衛星信号に基づいて得られた信号を抽出する。第1信号処理部24は、5個以上の衛星から送信され、衛星信号用アンテナ12で受信された第1周波数の衛星信号のそれぞれについて第1搬送波位相B1を求め、RTK測位部28に出力する。
【0062】
また、第1信号処理部24は、第1搬送波位相B1を求める他、4個以上の衛星からそれぞれ送信され、衛星信号用アンテナ12で受信された第1周波数の衛星信号のそれぞれに対して擬似距離を求める。そして、各衛星信号に含まれる情報と各衛星に対して求められた擬似距離とに基づいて衛星測位装置46の位置を求め、求められた結果を単独測位位置情報Aとして測位結果処理部26に出力する。
【0063】
第2信号処理部38は、共用直交検波部50から出力された信号から、第2周波数の衛星信号に基づいて得られた信号を抽出する。第2信号処理部38は、5個以上の衛星から送信され、衛星信号用アンテナ12で受信された第2周波数の衛星信号のそれぞれについて第2搬送波位相B2を求め、RTK測位部28に出力する。
【0064】
RTK測位部28は、第1搬送波位相B1、第2搬送波位相B2、および基準信号受信部42から出力された測位用基準情報に基づいて、多周波RTK測位を行い衛星測位装置46の位置情報を求め、測位結果をRTK測位位置情報Cとして測位結果処理部26に出力する。
【0065】
モニタ部44は、第1信号処理部24の処理状態に基づいて、第1周波数の衛星信号の受信状態を検出し、多周波RTK測位が可能であるか否かの判定をする。モニタ部44は、多周波RTK測位が可能である旨の判定をしたときは、電源オン情報を、第2ローカル信号発振器72、90°移相器74、第2信号処理部38、基準信号受信部42、およびRTK測位部28に出力する。これらの構成部は、電源オン情報に基づいて電源供給がなされる状態に制御される。これによって、衛星測位装置46は、多周波RTK測位を行う状態となる。測位結果処理部26は、RTK測位位置情報Cを用いた処理を実行する。
【0066】
一方、モニタ部44は、多周波RTK測位が不可能である旨の判定をしたときは、電源オフ情報を、第2ローカル信号発振器72、90°移相器74、第2信号処理部38、基準信号受信部42、およびRTK測位部28に出力する。これらの構成部は、電源オフ情報に基づいて電源供給がなされない状態に制御される。これによって、衛星測位装置46は、多周波RTK測位を行わない状態となる。測位結果処理部26は、単独測位位置情報Aを用いた処理を実行する。
【0067】
このような構成によれば、衛星信号の受信状況が多周波RTK測位を行うことが可能な程度に良好でないときは、多周波RTK測位方式に代えて単独測位方式による測位結果を用いることができる。これによって、受信状況が良好でない地域において、測位処理が中断されることを回避することができる。
【0068】
さらに、多周波RTK測位を行わない場合には、第2ローカル信号発振器72、90°移相器74、第2信号処理部38、基準信号受信部42、およびRTK測位部28の電源供給が遮断される、これによって、多周波RTK測位を行わないときの消費電力を低減することができる。
【0069】
なお、上記では、2つの周波数の衛星信号を受信する場合について説明した。このような構成の他、3以上の周波数の衛星信号を受信する構成としてもよい。この場合、受信周波数を追加した数だけ、第2ローカル信号発振器72、90°移相器74、および第2信号処理部38と同一の構成部を追加する。多周波RTK測位が可能である旨の判定をモニタ部44がしたときは、RTK測位部28は、3以上の周波数のそれぞれの衛星信号に基づいて多周波RTK測位を行う。そして、多周波RTK測位が不可能である旨の判定をモニタ部44がしたときは、第2ローカル信号発振器72、90°移相器74、および第2信号処理部38と同一の構成部への電源供給を遮断する。
【0070】
米国および欧州における衛星測位システム(GPS/Galileo)では、多周波数化が予定されている。本発明に係る衛星測位装置は、このような多周波数化に対応した衛星測位装置として好適である。本発明によれば、多周波RTK測位方式によって高精度の測位を行う他、衛星信号の受信状況が良好でない場合には、単一周波数を用いた単独測位方式による測位を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】第1実施形態に係る衛星測位装置の構成を示す図である。
【図2】第2実施形態に係る衛星測位装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0072】
10,46 衛星測位装置、12 衛星信号用アンテナ、14 前段RF増幅器、16 第1周波数RFフィルタ、18 第1周波数RF増幅器、20 第1直交検波部、22,60 第1ローカル信号発振器、24 第1信号処理部、26 測位結果処理部、28 RTK測位部、30 第2周波数RFフィルタ、32 第2周波数RF増幅器、34 第2直交検波部、36,72 第2ローカル信号発振器、38 第2信号処理部、40 基準アンテナ、42 基準信号受信部、44 モニタ部、48 後段RF増幅器、50 共用直交検波部、52 同相ミキサ、54 同相ローパスフィルタ、56,68 IF増幅器、58,70 A/Dコンバータ、62,74 90°移相器、64 直交ミキサ、66 直交ローパスフィルタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
衛星から送信され、複数の周波数のそれぞれにおける衛星信号を受信する受信部と、
前記複数の周波数のうちのいずれかに対する受信状況を検出する受信状況検出部と、
前記受信状況が所定の条件を満たすときに各周波数における衛星信号に基づいて測位を行う多周波数測位部と、
前記受信状況が所定の条件を満たさないときに、前記複数の周波数のうちの1つの周波数の衛星信号に基づいて測位を行う単一周波数測位部と、
前記受信状況が所定の条件を満たさないときに、前記多周波数測位部の測位処理を停止する停止制御部と、
を備えることを特徴とする衛星測位装置。
【請求項2】
請求項1に記載の衛星測位装置において、
各周波数に対応して設けられ、受信された衛星信号をベースバンド信号に変換するためのローカル信号を生成するローカル信号生成部と、
前記複数の周波数に対して共通に設けられ、各周波数に対応するローカル信号によって、各周波数における衛星信号をベースバンド信号に変換する信号変換部と、
を備え、
前記多周波数測位部および前記単一周波数測位部は、
ベースバンド信号に変換された衛星信号に基づいて測位を行い、
前記停止制御部は、
前記受信状況が所定の条件を満たさないときに、前記単一周波数測位部による処理に用いられない衛星信号に対する前記信号変換部による処理を停止することを特徴とする衛星測位装置。
【請求項3】
衛星から送信され、複数の周波数のそれぞれにおける衛星信号を受信する受信部と、
各周波数に対応して設けられ、衛星信号をベースバンド信号に変換するためのローカル信号を生成するローカル信号生成部と、
前記複数の周波数に対して共通に設けられ、各周波数に対応するローカル信号によって、各周波数における衛星信号をベースバンド信号に変換する信号変換部と、
ベースバンド信号に変換された各衛星信号に基づいて測位を行う多周波数測位部と、
を備えることを特徴とする衛星測位装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−156626(P2010−156626A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−335649(P2008−335649)
【出願日】平成20年12月29日(2008.12.29)
【出願人】(000004330)日本無線株式会社 (1,186)
【Fターム(参考)】