説明

衛生マスクおよびその基材

【課題】花粉、ダスト及びウイルスを含む飛沫をカットする低圧損で高捕集効率のマスク用基材およびそれを用いた使い捨て衛生マスクを提供する。
【解決手段】外層(A)−内層(B)−外層(A)の少なくとも3層の積層不織布からなる衛生マスク用不織布基材であって、外層(A)は、ポリオレフィン系短繊維またはポリエステル系短繊維で構成される不織布からなり、内層(B)は、ポリプロピレン製スパンボンド不織布とメルトブロー不織布が組み合わされた複合不織布からなり、積層一体化されていることを特徴とする衛生マスク用不織布基材およびそれを用いた使い捨て衛生マスクなどを提供した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不織布を素材に用いた使い捨て衛生マスクおよびその基材に関し、特に低圧損で高捕集効率の花粉、ダスト及び/またはウイルスを含む飛沫をカットする衛生マスクおよびその基材に関する。
【背景技術】
【0002】
衛生マスク用基材として、従来一般には、最外層に保護材としてのスパンボンド不織布、その内層にエレクトレット処理を施したメルトブロー(MB)不織布、口元層(最内層)には、スパンボンドまたはスパンレースまたは乾式製法不織布が用いられている。
特に、花粉、ダストよけのマスクとなると、外出時と室内にて長時間着用することになり、着用の快適性が特に重要視されている。
なかでも、着用感として、呼吸のし易さが最も重要であり、通気抵抗、すなわち圧損の低下が課題であった。通気抵抗が大きいと、息苦しさを与えるとともに、吐気がマスクと顔面の隙間から上昇して、メガネを曇らすことになり、これもマスクの快適な着用感を損ねるものである。
【0003】
また、従来のマスクでは、上述の製法の異なる不織布が単に重ねられて、マスクの顔面覆い部を形成している。しかしながら、これら3層の基材は、それぞれが低目付け重量であり、一体化したものではないため、マスクに必要な「腰」(張り剛性)が出ないという欠点があり、これを解消しようとすると、それぞれの目付け重量を増やすことや、不織布とは異なる補強体を付加するなどの処置がなされてきた。
マスク基材の「腰」が小さいと、使用中の呼吸において、ペコペコと変形しやすく、そのため、鼻孔部や口唇部とマスクの適当な間隔が保てず、吐息の露結水分によりマスクが皮膚に密着してしまうなど、着用の不快感を生ずることにつながっていた。また、呼吸を楽にするために、顔面とマスクの間に適度の空間を設けることが望まれるが、従来のフラットマスクでは、「腰」が不足であり、また、立体形マスクについても同様である。
また、3層がそれぞれ単に重ねただけのマスクでは、使用中に口元層が剥離して口元に吸着し、不快感を与えるという欠点もある。
【0004】
一方、マスクとしてのフィルター効率および圧損においては、内層に使われるメルトブロー(MB)不織布層が支配的な役割を示すが、多くのマスクは、15〜25g/mの範囲の目付け重量のものが用いられている。呼吸を楽にするための低圧損化が強く要望されているが、これには、メルトブロー不織布の目付け重量の減少が有効であるものの、原反生産の巻き取りの上で限界があった。また、このような低目付けの原反に、積層加工、またはエレクトレット処理を施す上で、引張り強度の低さゆえに、巻き取り操作時に不織布の烈断やシワの発生などの不具合が生じ、同様にマスク成形工程での取り扱いにも難点があった。また、マスクの製作工程において、従来は、外層、内層、口元層の3種3層の異なる不織布を扱うことになり、加工作業性において煩雑であり、また、品質管理上の損失も大きく、また生産スピードも上がらないという課題があった。
【0005】
上記の課題の解決、例えば、低圧力損失及び高捕集性(フィルター効率)ために、種々のマスクやマスク用基材が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照。)。その課題解決手段として、形状の面から、例えば、特許文献1では、顔面覆い部中央の上辺または下辺のすくなくとも一方にV字型の切り欠けを設け、該切り欠きの両斜辺を接合して立体性を付与された顔面覆い部と耳かけ部から構成される不織布製マスクであって、顔面覆い部が連続一体の不織布からなり、顔面覆い部の中央上辺に上方に張り出した襟部を設けてなることを特徴とする立体形マスクが開示され、また、各層の接着や接合方法の面から、特許文献2では、装着者の鼻及び口許を覆うマスク本体が、繊維シートそれぞれから形成される内外層と、エレクトレット繊維シートから形成され前記内外層間に一体的に介在する中間層とを含む使い捨てマスクにおいて、前記内外層と前記中間層との各接合面が該各接合面に間欠的に介在するホットメルト接着剤を介して接合し、前記中間層の前記内外層に対する前記各接合面における前記ホットメルト接着剤の付着量が、前記内外層の前記中間層に対する前記各接合面における前記ホットメルト接着剤の付着量よりも少ないことを特徴とする前記マスクが開示され、さらに、各層の構成材料の面から、特許文献3では、顔面の鼻口部を覆うよう装着される立体形状を有するマスクであって、該マスク本体が多層の積層不織布から構成されており、該積層不織布の外層部が熱可塑性合成繊維不織布で、内層部が再生セルロース繊維で、その含有量が15〜40重量%であり、高湿時の保湿率が7〜13%であり、かつ、通気度が10〜100cc/cm/secである衛生マスクが開示されている。
しかしながら、上記提案されたものは、性能は向上しているものの、未だ十分でなく、呼吸を楽にするための低圧損化や、花粉などを効率よく捕集できる高捕集性のマスクが強く要望されているのが、実状である。
【特許文献1】特開2007−54381号公報
【特許文献2】特開2007−37737号公報
【特許文献3】特開2007−276号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、花粉、ダスト及び/またはウイルスを含む飛沫をカットする低圧損で高捕集効率のマスク用基材およびそれを用いた使い捨て衛生マスクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、外層/内層/外層の3層の不織布をエンボス加工で一体化し、マスク用基材に「腰」を付与するとともに、特に内層の不織布基材として、エレクトレット処理されたスパンボンド/メルトブロー(SM)複合不織布やスパンボンド/メルトブロー/スパンボンド(SMS)複合不織布などを用い、さらに、内層のメルトブロー不織布の目付を低減することにより、低圧損化と高捕集性のマスク用基材及びそれを用いたマスクが得られることを見出し、これらの知見に基づき、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、外層(A)−内層(B)−外層(A)の少なくとも3層の積層不織布からなる衛生マスク用不織布基材であって、
外層(A)は、ポリオレフィン系短繊維またはポリエステル系短繊維で構成される不織布からなり、内層(B)は、ポリプロピレン製スパンボンド不織布とメルトブロー不織布が組み合わされた複合不織布からなり、積層一体化されていることを特徴とする衛生マスク用不織布基材が提供される。
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、内層(B)がエレクトレット処理されていることを特徴とする衛生マスク用不織布基材が提供される。
さらに、本発明の第3の発明によれば、第1の発明において、前記積層不織布がエレクトレット処理されていることを特徴とする衛生マスク用不織布基材が提供される。
【0009】
本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、内層(B)は、総目付け重量が25g/m以下、および通気度が60cc/cm/sec以上であって、メルトブロー不織布成分の目付け重量の総和が2〜10g/mの範囲であり、かつ、メルトブロー不織布成分の平均繊維径が3〜15μmの範囲であることを特徴とする衛生マスク用不織布基材が提供される。
また、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、外層(A)は、衛生マスクの最外層と口元層を形成し、最外層と口元層の目付け重量が各々10〜50g/mであり、かつ、最外層と口元層の構成繊維に、繊度が1〜10デシテックスの範囲から選ばれた少なくとも一種の繊維が使用されることを特徴とする衛生マスク用不織布基材が提供される。
【0010】
また、本発明の第6の発明によれば、第1〜5のいずれかの発明において、最外層と口元層の外層(A)の間に、内層(B)を挿入し、熱エンボス、超音波又はホットメルト接着剤を使用して、積層一体化されていることを特徴とする衛生マスク用不織布基材が提供される。
さらに、本発明の第7の発明によれば、第1〜6のいずれかの発明に係る衛生マスク用不織布基材を顔面覆い部に用いることを特徴とする衛生マスクが提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の衛生マスク用不織布基材は、上述のような構成により、「腰」があるため、着用感に優れ、低圧損で高捕集効率であるという効果を発揮する。そのため、衛生マスク用基材として、好適に用いることができ、その結果、それを用いた衛生マスクは、着用感に優れ、低圧損で高捕集効率であるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の衛生マスク用不織布基材は、外層(A)−内層(B)−外層(A)の3層の積層不織布からなる衛生マスク用不織布基材であって、外層(A)は、ポリオレフィン系短繊維またはポリエステル系短繊維で構成される不織布からなり、内層(B)は、ポリプロピレン製スパンボンド不織布とメルトブロー不織布が組み合わされた複合不織布からなり、積層一体化されていることを特徴とするものである。
以下に項目毎に詳細に説明する。
【0013】
1.外層(A)
本発明の外層(A)−内層(B)−外層(A)の少なくとも3層の衛生マスク用不織布基材において、外層(A)は、ポリオレフィン系短繊維またはポリエステル系短繊維で構成される不織布からなる。その外層(A)としては、最外層および口元層の両方を指し、その両方に用いることができるものとする。
また、上記外層(A)の短繊維不織布は、その表面に、親水性の紡糸油剤を使用することによって、不快な静電気の発生を防ぐとともに、呼気に含まれる水分を吸収かつ外部へ発散し、マスク装着の快適さを付与する。
親水性の紡糸油剤としては、例えば、高級アルコール、高級脂肪酸、アルキフェノール、アルキルホスフェート塩、アルキル硫酸塩などが挙げられ、例えば、短繊維不織布の表面に、塗布や噴霧、浸漬などの方法により、付与や付着させることがでる。
【0014】
また、上記のポリオレフィン系短繊維またはポリエステル系短繊維としては、芯部/鞘部が、ポリプロピレン(PP)/ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)/ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)/低融点ポリエチレンテレフタレート(PET)、又はポリプロピレン(PP)/ポリプロピレン(PP)などのほか、PP単体またはPET単体で構成されるレギュラー繊維が用いられる。
これらの繊維の一つ、あるいは混合された繊維をカーディングと熱処理(たとえば、熱エンボスロール)によって不織布を形成するが、「腰」を高めるため、選ばれた繊維の繊度が1〜10デシテックス、好ましくは、2〜6デシテックスの繊維径の中から1種または数種を混合して用いられる。
この外層(A)の短繊維不織布は、繊維径が内層に用いられるメルトブロー(MB)不織布より大きいため、圧損が小さいことに特徴があり、かつ、繊維径が太くできるため、必要な「腰」を付与するのに好適である。
繊度が1デシテックス以下のものを多用すると、通気度が低下し、圧損が上昇するとともに不織布の「腰」が柔らかくなり、また、10デシテックスを超える繊維を多用すると、逆に風合いが硬くなり過ぎ、はなはだしくは繊維が皮膚に接触すると、チクチク感を与え、好ましくない。
【0015】
外層(A)の繊維は、カーディングによるシート化と熱による繊維間の接合により、不織布化される。
本発明においては、その繊維材質および構造としては、ポリオレフィン成分が鞘となる芯鞘複合短繊維が好ましく用いられる。その具体的な例としては、鞘部がPEまたはPPのいずれかから選ばれ、芯部がPP、PETなどから適宜選ばれた複合短繊維が一種または複数種が使われる。
【0016】
2.内層(B)
本発明の外層(A)−内層(B)−外層(A)の少なくとも3層の衛生マスク用不織布基材において、内層(B)は、ポリプロピレン製スパンボンド不織布とメルトブロー不織布が組み合わされた複合不織布からなり、その複合不織布として、具体的には、例えば、スパンボンド/メルトブロー(SM)複合不織布、スパンボンド/メルトブロー/スパンボンド(SMS)複合不織布、スパンボンド/スパンボンド/メルトブロー/スパンボンド(SSMS)複合不織布、スパンボンド/メルトブロー/メルトブロー/スパンボンド(SMMS)複合不織布などが挙げられる。また、複合不織布は、それらの一種でも、それらを組み合わせて用いてもよい。
【0017】
本発明においては、この内層(B)の複合不織布のメルトブロー(MB)不織布成分の目付けを低目付け側に調製することが好ましい。メルトブロー(MB)不織布成分の目付けの総和として、10g/m以下、好ましくは2〜10g/m、特に好ましくは2〜5g/mの目付け重量が選ばれる。
メルトブロー(MB)不織布は、マスクを構成する不織布のなかで、最も繊維径が細いだけに、フィルター効率とともに圧損および通気度を支配する。
本発明においては、特に、花粉除去のためのマスクとしては、メルトブロー(MB)不織布の平均繊維径が3〜15μm、好ましくは4〜8μm、且つ、メルトブロー(MB)不織布成分の目付けの総和が10g/m以下、好ましくは2〜5g/mにあれば、必要十分(99%以上)に、花粉粒子の捕捉が可能となる。
【0018】
また、内層(B)の複合不織布は、呼吸のし易さや、使用中の呼気に於ける変形を考慮すると、総目付け重量が10〜25g/mで、通気度が60cc/cm/sec以上であることが好ましい。
【0019】
また、内層(B)のポリプロピレン製複合不織布は、花粉や微粒子を捕集する機能を向上させるために、エレクトレット化処理したものを用いることが好ましい。エレクトレット化不織布を用いるのは、静電気力によって微細な花粉や粉塵を効率良く捕集することができるためであり、このエレクトレット化は、不織布をアースされた電極上を走行させ、この上から針電極又はワイヤー電極に高電圧を印加することによってコロナ放電を行い達成される。
さらに、エレクトレット化処理は、内層(B)の複合不織布のみでなく、外層(A)−内層(B)−外層(A)の少なくとも3層が積層一体化された積層不織布に施すこともでき、好ましい。すなわち、積層不織布にエレクトレット化処理したものを用いることにより、花粉や微粒子を捕集する機能を向上させることができる。
【0020】
3.衛生マスク用不織布基材およびその製造方法
本発明の衛生マスク用不織布基材は、マスク用基材に「腰」を付与するために、外層/内層/外層の少なくとも3層の不織布が積層一体化されていることを特徴とするものである。
特に、本発明の衛生マスク用不織布基材は、最外層と口元層の外層(A)の間に、内層(B)を連続的に挿入し、熱エンボス、超音波、ホットメルト接着樹脂等を使用して、外層(A)−内層(B)−外層(A)の少なくとも3層を一体化することを特徴とするものである。
【0021】
熱エンボスロールにて、一体化する場合、外層(A)は、既にシート状になっている不織布を使用しても良いし、また、カーディングした繊維で内層(B)をサンドし、後から熱エンボスロールにて、一体化されても良いものとする。
また、超音波、またはホットメルト樹脂にて、一体化する場合、外層(A)は、既にシート状になっている不織布を使用して、内層(B)をサンドして、一体化してもよい。
【0022】
4.衛生マスク
本発明の衛生マスクは、上記の衛生マスク用不織布基材を顔面覆い部に用いることを特徴とするものである。また、その形状は、立体形状(図1)またはフラット状であって、顔面覆い部にプリーツされた部分を有することを特徴とするものである(図2、3)。
【実施例】
【0023】
以下に本発明を実施例で説明するが、本発明は、実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例、比較例で用いた試験方法は以下の通りである。
【0024】
(1)不織布の目付重量:試料長さ方向より、100×100mmの試験片を採取し、水分平衡状態の重さを測定し、1m当たりに換算して求めた。
(2)不織布の通気度:フラジール型通気度試験機を用い、JIS L1096−1979の「一般織物試験方法」に準拠し、傾斜型気圧計は1.27cmに固定して通気度を計測した。
(3)圧力損失:TSI―8130型マスク試験機を用い、通過風速が15.0cm/secの条件にて測定した。
(4)花粉除去率:紡績検査協会にて、ボーケン法JSIF A 030−2004の試験方法にて、粒径20〜40μmのスギ花粉を使用し測定した。
(5)不織布の腰:JIS L 1096 E法(ハンドルオメーター法)に準拠し、剛軟性を測定した。
【0025】
[実施例1]
外層(A)として、20g/mの目付け重量のポリプロピレン(PP)/ポリエチレン(PE)芯鞘複合短繊維を用い、サーマルボンド法にて、不織布を作製し、次に示す内層(B)を両面から挟み込んだ。
また、上記芯鞘複合短繊維は、親水性の油剤を用いた、ESファイバービジョン株式会社のESC023を使用し、繊度は、2デシテックス、カット長51mmのものを用いた。
さらに、内層(B)は、目付け15g/mのポリプロピレン製スパンボンド/メルトブロー/スパンボンド(SMS)複合不織布に、コロナ放電処理によるエレクトレット加工(直流電圧25KV)を施したものを用いた。このSMS複合不織布の各成分は、スパンボンド(S)層[6.25g/m]/メルトブロー(M)層[2.5g/m]/スパンボンド(S)層[6.25g/m]で構成され、総目付け重量15g/mのSMS不織布として、生産されているものである。このSMS不織布の通気度は、200cc/cm/secであった。
この内層(B)を、上記の外層(A)が両側より挟み込み、熱エンボス加工により、外層(A)−内層(B)−外層(A)の3層を積層一体化した。
このマスク基材としての外層(A)−内層(B)−外層(A)積層不織布の全体の通気度は、55cc/cm/secであった。また、花粉除去率は、99.7%であった。
【0026】
[実施例2]
外層(A)として、20g/mの目付け重量のポリプロピレン(PP)/ポリエチレン(PE)芯鞘複合短繊維を用い、サーマルボンド法にて、不織布を作製し、次に示す内層(B)を両面から挟み込み、積層一体化したものに、コロナ放電処理によるエレクトレット加工(直流電圧25KV)を施した。
また、上記芯鞘複合短繊維は、親水性の油剤を用いた、ESファイバービジョン株式会社のESC023を使用し、繊度は、2デシテックス、カット長51mmのものを用いた。
さらに、内層(B)は、目付け24g/mのポリプロピレン製スパンボンド/メルトブロー(SM)複合不織布を用いた。このSM複合不織布の各成分は、スパンボンド(S)層[15g/m]/メルトブロー(M)層[9g/m]で構成され、総目付け重量24g/mのSM不織布として、生産されているものである。このSM不織布の通気度は、75cc/cm/secであった。
この内層(B)を、上記のように、外層(A)が両側より挟み込み、熱エンボス加工により、外層(A)−内層(B)−外層(A)の3層を積層一体化した。
このマスク基材としての外層(A)−内層(B)−外層(A)積層不織布の全体の通気度は、50cc/cm/secであった。また、花粉除去率は、99%以上であった。
【0027】
[実施例3]
外層(A)として、25g/mの目付け重量のポリプロピレン(PP)/ポリエチレン(PE)芯鞘複合短繊維を用い、サーマルボンド法にて、不織布を作製し、次に示す内層(B)を両面から挟み込んだ。
また、上記芯鞘複合短繊維は、親水性の油剤を用いた,ESファイバービジョン株式会社のESC023を使用し、繊度は、2デシテックス、カット長51mmのものを用いた。
さらに、内層(B)は、目付け15g/mのポリプロピレン製スパンボンド/メルトブロー/スパンボンド(SMS)複合不織布に、コロナ放電処理によるエレクトレット加工(直流電圧25KV)を施したものを用いた。このSMS複合不織布の各成分は、スパンボンド(S)層[6.25g/m]/メルトブロー(M)層[2.5g/m]/スパンボンド(S)層[6.25g/m]で構成され、総目付け重量15g/mのSMS不織布として、生産されているものである。このSMS不織布の通気度は、200cc/cm/secであった。
この内層(B)を、上記の外層(A)が両側より挟み込み、熱エンボス加工により、外層(A)−内層(B)−外層(A)の3層を積層一体化した。
このマスク基材としての外層(A)−内層(B)−外層(A)積層不織布の全体の通気度は、55cc/cm/secであった。また、花粉除去率は、99.7%であった。
【0028】
[実施例4、5]
当該マスク基材を用いて、立体形状(図1)、及びプリーツマスク(図2)を作製した。
【0029】
[比較例1〜3]
比較例1〜3として、市販されているマスクについて、そのマスクの素材構成、通気度、花粉捕集効率、及び圧損について評価し、本発明の不織布基材を用いたマスクの実施例と、対比した。その結果を表1、2に示す。
【0030】
[比較例4]
外層(A)として、25g/mの目付け重量のポリプロピレン(PP)/ポリエチレン(PE)芯鞘複合短繊維を用い、サーマルボンド法にて、不織布を作製し、次に示す内層(B)を両面から挟み込んだ。
また、親水性の油剤を用いた短繊維は、ESファイバービジョン株式会社のESC023を使用し、当該短繊維の繊度は、2デシテックス、カット長51mmのものを用いた。
さらに、内層(B)は、目付け15g/mのポリプロピレン製スパンボンド/メルトブロー/スパンボンド(SMS)複合不織布に、エレクトレット処理を施したものを用いた。このSMS複合不織布の各成分は、スパンボンド(S)層[6.25g/m]/メルトブロー(M)層[2.5g/m]/スパンボンド(S)層[6.25g/m]で構成され、総目付け重量15g/mのSMS不織布として、生産されているものである。このSMS不織布の通気度は、200cc/cm/secであった。
この内層(B)を、上記の外層(A)が両側より挟み込み、おのおのが別体の単純積層した不織布を構成した。
このマスク基材として、剛軟性の評価を行い、実施例3と対比した評価結果を表3に示す。
【0031】
【表1】

【0032】
【表2】

【0033】
【表3】

【0034】
表1、2から明らかなように、実施例1、2のマスクは、比較例1〜3に比べて、通気度が高く、圧力損失が低いことが示される。また、花粉(径:約20μm)の除去率は、99%以上であり、花粉除去には、有効であり、息苦しくない快適なマスクを提供できる。
また、表3から明らかなように、3層の不織布が複合一体化されている実施例3は、おのおのが別体で構成されている比較例4に比べ、マスク着用時の型崩れのし難さを示す剛軟性が高いことが示されており、着用試験においても、性能が優れていることが示される。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の衛生マスク用不織布基材は、「腰」があるため、着用感に優れ、低圧損で高捕集効率であり、そのため、衛生マスク用基材として、好適に用いることのできるという特徴を有する。その結果、それを用いた衛生マスクは、着用感に優れ、低圧損で高捕集効率であるという効果を発揮するため、民生用の花粉対策用ばかりでなく、工業的な作業環境での防塵とともに、結核菌などの細菌やウイルスを含む飛沫からの防御性が格段に向上したマスクとすることができる。したがって、民生用、工業用にとどまらず、病院内での感染予防や歯科治療での用途、あるいは防疫業務など広い範囲で使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施例における立体形状のマスクの斜視図である。
【図2】本発明の実施例におけるプリーツマスクの正面図である。
【図3】本発明の実施例におけるプリーツマスクのプリーツ部の図である。
【符号の説明】
【0037】
1 プリーツ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外層(A)−内層(B)−外層(A)の少なくとも3層の積層不織布からなる衛生マスク用不織布基材であって、
外層(A)は、ポリオレフィン系短繊維またはポリエステル系短繊維で構成される不織布からなり、内層(B)は、ポリプロピレン製スパンボンド不織布とメルトブロー不織布が組み合わされた複合不織布からなり、積層一体化されていることを特徴とする衛生マスク用不織布基材。
【請求項2】
内層(B)がエレクトレット処理されていることを特徴とする請求項1に記載の衛生マスク用不織布基材。
【請求項3】
前記積層不織布がエレクトレット処理されていることを特徴とする請求項1に記載の衛生マスク用不織布基材。
【請求項4】
内層(B)は、総目付け重量が25g/m以下、および通気度が60cc/cm/sec以上であって、メルトブロー不織布成分の目付け重量の総和が2〜10g/mの範囲であり、かつ、メルトブロー不織布成分の平均繊維径が3〜15μmの範囲であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の衛生マスク用不織布基材。
【請求項5】
外層(A)は、衛生マスクの最外層と口元層を形成し、最外層と口元層の目付け重量が各々10〜50g/mであり、かつ、最外層と口元層の構成繊維に、繊度が1〜10デシテックスの範囲から選ばれた少なくとも一種の繊維が使用されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の衛生マスク用不織布基材。
【請求項6】
最外層と口元層の外層(A)の間に、内層(B)を挿入し、熱エンボス、超音波又はホットメルト接着剤を使用して、積層一体化されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の衛生マスク用不織布基材。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の衛生マスク用不織布基材を顔面覆い部に用いることを特徴とする衛生マスク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−106468(P2009−106468A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−281149(P2007−281149)
【出願日】平成19年10月30日(2007.10.30)
【出願人】(000201881)倉敷繊維加工株式会社 (41)
【出願人】(391044166)玉川衛材株式会社 (10)
【Fターム(参考)】