説明

衛生器具

【課題】無動力で持続的に広範囲にわたって、塵埃、人毛、獣毛、臭気成分などの浮遊成分を捕集でき、また芳香等の浮遊成分を発散させることができる衛生器具を提供する。
【解決手段】衛生器具1は、塵埃、人毛、獣毛などを捕集する捕集体2と、捕集体2を収容する外郭体3とからなる。外郭体3は、塵埃が通過可能な通気穴31をもつ、転動自在な球体又は多面体からなる。外郭体3の中に収容されるのは、捕集体2の代わりに、消臭剤又は芳香剤でもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床上、空気中に浮遊する塵埃、臭気成分などを捕捉する捕集体、又は/及び芳香成分などを空気中に発散させる発散体を備えた衛生器具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般家屋、マンション等の住宅内の衛生を維持するにあたっては、掃除器具、捕集フィルタ、消臭剤、芳香剤などが用いられる。
【0003】
掃除器具は、箒やロール巻きした粘着テープなどによる手動、又は電気掃除器具による電動のものがある。
【0004】
また、捕集フィルタとしては、特許文献1に示されているように、電子機器の冷却用空気吹き出し口に取り付けて、電子機器から吹き出される空気中の塵を除去するものがある。
【0005】
消臭剤、芳香剤は、所定場所に設置することで、消臭、芳香といった機能を持続的に発揮する。
【特許文献1】実開62−59119号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の掃除器具では、手動又は電動により、断続的に、スポット的になされていた。このため、手動、電動を問わず、手間と労力、移動時間がかかっていた。また、電動掃除器具にあっては、イニシャルコストが高く、またランニングコストも大きかった。
【0007】
また、上記特許文献1の捕集フィルタは、電子機器に固定されているため、電子機器に吸引され又は吹き出される空気の中のみの塵を除去するものである。このため、電子機器から吸引又は吹き出されない空気の塵までは除去することはできない。したがって、住宅の室内全体に浮遊する塵埃を除去するものではない。また、電子機器を停止させると、空気の吹き出しも停止するため、フィルタによる空気の中の塵の捕集も停止する。このため、特に床上にある塵埃類の除去は不可能である。したがって、無動力では、フィルタの塵除去性能は発揮されない。また、空調装置などの電子機器は、所定箇所に設置されているため、任意な場所で広範囲に空気中の塵埃などを捕集することは困難である。
【0008】
また、消臭剤や芳香剤は、所定の場所に設置されていたため、狭いスペースのみでその性能を発揮させるにすぎなかった。
【0009】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、無動力で持続的に広範囲にわたって、塵埃、獣毛、人毛、臭気成分などの浮遊成分を捕捉でき、また芳香等の浮遊成分を発散させることができる衛生器具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、第1の発明に係る衛生器具は、空気中に浮遊する塵埃、人毛、獣毛、及び臭気成分のうち少なくとも1種からなる浮遊物を捕捉する捕集体と、該捕集体を収容する外郭体とからなり、該外郭体は、前記浮遊物が通過可能な網目状の通気穴をもつ球体又は多面体からなる転動自在な転動体であることを特徴とする。
【0011】
第2の発明に係る衛生器具は、空気中に浮遊可能な芳香成分からなる浮遊物を発散させる発散体と、該発散体を収容する外郭体とからなり、該外郭体は、前記浮遊物が通過可能な網目状の通気穴をもつ球体又は多面体からなる転動自在な転動体であることを特徴とする。
【0012】
第3の発明に係る衛生器具は、衛生機能を発揮する衛生体と、該衛生体を収容する外郭体とからなり、該外郭体は、網目状の通気穴をもつ球体又は多面体からなる転動自在な転動体であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
前記第1の発明に係る衛生器具によれば、捕集体を外郭体に収容している。外郭体は、浮遊物が通過可能な通気穴をもち、球体又は多面体からなる転動自在な転動体である。このため、衛生器具を床などに放置しておくと、自然の空気の些細な流れ、設置面の傾斜などによって無動力で転動して、回転移動することができる。外郭体は、転動すると、不動時に比べて、通気穴からの空気の取込み量が多くなり、外郭体の中の捕集体は空気の中の浮遊物と接触する機会が多くなる。このため、効果的に浮遊物を捕捉することができる。また、外郭体は、転動により、床上を広範囲のスペースで移動する。このため、広範囲のスペースで浮遊物を捕捉することができる。また、静止状態にあっても、外郭体の周辺を浮遊する浮遊物は、通気穴から内部空間に入り込み、捕集体によって捕捉される。したがって、本発明の衛生器具によれば、持続的に、無動力で、広範囲のスペースの浮遊物を吸着することができる。
【0014】
また、捕集体は、外郭体の内部空間に収容されているため、捕集体が塵埃、獣毛、人毛などの捕捉で汚れても、外郭体には吸着しない。このため、衛生器具に手などが触れたときに、手などを汚すことはない。
【0015】
さらに、衛生器具は、転動自在な球体又は多面体であるため、手や足などで、遊び感覚で転動させることができる。また、外郭体の意匠性を高いものとすることで、部屋のインテリアとしても使用できる。このため、単なる掃除器具だけにとどまらず、遊び感覚とインテリア感覚との双方を持ち合わせたものとすることができる。
【0016】
前記第2の発明によれば、芳香成分からなる浮遊物を発散させる発散体を、浮遊物の通過可能な通気穴をもつ外郭体に収容している。外郭体は、転動自在な球体又は多面体からなる。このため、外郭体を、床などに放置しておくと、自然の空気の些細な流れ、設置面の傾斜などによって、無動力で転動することができる。それゆえ、外郭体は、不動時に比べて、通気穴からの空気の取込量が多くなり、発散体の空気との接触量が多くなる。ゆえに、効果的に芳香を発散させることができる。また、外郭体は、転動により、床上を広範囲に移動することができる。ゆえに、室内の広範囲のスペースにわたって芳香を発散させることができる。また、静止状態にあっても、発散体は、芳香成分を発散し続け、通気穴を通じて周囲に漂わせる。したがって、本発明の衛生器具によれば、持続的に、無動力で、広範囲のスペースに芳香成分からなる浮遊物を発散することができる。
【0017】
また、発散体は、外郭体の内部空間に収容されているため、発散体に塵埃などが付着して汚れても、外郭体には吸着しない。このため、衛生器具に手などが触れたときに、手などを汚すことはない。
【0018】
さらに、衛生器具は、転動自在な球体又は多面体であるため、手や足などで、遊び感覚で転動させることができる。また、外郭体の意匠性を高いものとすることで、部屋のインテリアとしても使用できる。このため、単なる発散器具だけにとどまらず、遊び感覚とインテリア感覚との双方を持ち合わせたものとすることができる。
【0019】
前記第3の発明によれば、衛生機能を有する衛生体を、網目状の通気穴をもつ外郭体に収容している。衛生機能を有する衛生体とは、たとえば、前記のような捕集体、又は発散体、その他、空気を媒介して周囲環境に衛生的な機能を発揮し得るものを含む。外郭体は、球体又は多面体からなる転動自在な転動体である。このため、前記第1、第2の発明と同様に、外郭体を、床などに放置しておくと、自然の空気の些細な流れ、設置面の傾斜などによって、無動力で転動することができる。ゆえに、室内の広範囲のスペースにわたって衛生機能を発揮させることができる。また、静止状態にあっても、衛生体は、衛生機能を発揮し続け、通気穴を通じて周囲に影響を与える。したがって、本発明の衛生器具によれば、持続的に、無動力で、広範囲のスペースに衛生機能を発揮することができる。
【0020】
さらに、衛生器具は、転動自在な球体又は多面体であるため、手や足などで、遊び感覚で転動させることができる。また、外郭体の意匠性を高いものとすることで、部屋のインテリアとしても使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(第1の発明)
第1の発明において、外郭体は、転動自在な球体又は多面体であり、内部に捕集体を収容する内部空間をもつ。外郭体は、空気の流れや設置面の傾斜によって外郭体が回転して移動しやすい、球体または多面体である。球体は、どの方向にも転動し得る形状である。多面体は、転動しやすければその面数は問わない。この場合の多面体は、面数の多いほど、転動しやすくなる。その面数は、5以上であることが好ましく、たとえば、8,16、または32、あるいは32よりも大きいことが望ましい。面数は多くなるほど、転動しやすくなる。これより、外郭体は効果的に転動することができる。そして、外郭体は、浮遊物が通過可能な大きさの通気穴をもつ。通気穴は、外郭体の内部空間に多くの浮遊物を通過させるように、外郭体の全体に形成されていることがよい。
【0022】
外郭体には、網目状や格子状の通気穴が形成されている。これにより、外郭体に多数の通気穴が形成されて、多くの浮遊物を内部空間に取り込むことができ、捕集体の浮遊物との接触機会を多くすることができる。通気穴の大きさは、浮遊物が通過可能で、且つ捕集体が飛び出さない程度とする。
【0023】
通気穴は、外郭体が転動できる形状を維持できる範囲で比較的大きな穴で形成される。通気穴の形状は、円、楕円、三角形、四角形、五角形、六角形などの多角形などである。通気穴の直径は20〜80mmであることが好ましい。通気穴が四角形の場合、その一辺の長さは10〜60mmであることが好ましい。通気穴が小さすぎると、浮遊物を通過させにくくなり、大きすぎると外郭体の剛性が低下しすぎて転動しやすい形状を維持しにくくなるからである。
【0024】
前記外郭体は、開口をもつ本体部と、該開口を開閉可能に被覆する蓋部とをもつことが好ましい。開口は、捕集体の脱着可能な大きさであるとよい。これにより、捕集体の交換ができ、メンテナンス性が向上する。
【0025】
外郭体は、複数の分割体からなることが好ましい。分割体は、外郭体を互いに同一形状に4つに分割されたものであることが望ましい。これにより、外郭体を大きく開口させることができ、捕集体の交換が容易となる。また、外郭体を成形する際に用いる金型を小さくすることができ、金型コストを抑えることができる。また、外郭体は、互いに同一形状の2つの分割体から構成されていてもよい。
【0026】
本体部の開口の周縁、及び蓋部の周縁には、蓋部で開口を閉止したときに互いに係止し合う接合用リブを設けるとよい。これにより、蓋部による本体部の開口の閉止状態を保持することができる。また、接合リブによって、外郭体の剛性が向上し、転動体の形状を保持することができる。
【0027】
外郭体の素材は、プラスチック材、金属、セラミックなどの無機物など、特に限定しない。この中、前記外郭体は、プラスチック材からなることが好ましく、プラスチック材の中でも、特に軟質のウレタン、塩化ビニル、ゴム類などが望ましい。プラスチック材は、成形しやすいだけでなく、その形状を維持できる程度の剛性はあるが比較的軟質で、軽量である。このため、転動しやすく、また転動中に床などの他の物への損傷を抑制できる。
【0028】
前記浮遊物が塵埃、人毛、獣毛である場合、前記捕集体は、塵埃を捕集し、人毛、獣毛を捕絡する捕集体である。かかる捕集体は、マイナスに帯電する静電気特性をもつ熱可塑性樹脂を用いて網目状構造に形成され網目を通過する空気との摩擦によってマイナスに帯電し得る空気摩擦ネットからなることが好ましい。外郭体が転動することによって、内部空間に収容されている空気摩擦ネットからなる捕集体が、空気と摩擦し、静電気を発生させる。塵埃、人毛、獣毛等は、静電気によって帯電し、捕集体に引き寄せられる。それゆえ、塵埃、人毛、獣毛等の捕集性能が向上する。空気摩擦ネットは、実用新案登録第3131820号、特許第3959485号公報に示されている捕集ネットを用いると良い。空気摩擦ネットの素材は、JISL1094:1997年法に準ずる測定で、初期摩擦帯電圧(絶対値を意味する。以下、同様。)が0.5kV以上であり、且つ半減期が50秒間以上であることが好ましい。これにより、空気との摩擦によって、塵埃、人毛、獣毛を引き寄せるに十分な静電気を発生させることができる。空気摩擦ネットの素材は、前記の静電気特性をもつ熱可塑性樹脂であるとよい。熱可塑性樹脂の多くは、静電気を発生させることがあることは公知であるが、その中でも、ポリエチレン、ポリプロピレン、軟質ポリ塩化ビニル、硬質ポリ塩化ビニル、ポリエステル、アクリルや、ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEという。)などのフッ素樹脂などを用いることがよく、更には、硬質ポリ塩化ビニル、PTFEが好ましい。
【0029】
また、空気摩擦ネットの網目は、少なくとも外郭体の通気穴の大きさよりも小さく、一辺が2mmから10mm、好ましくは3〜5mmの大きさであることがよい。網目の中には、斜め状に、クロス状に、又は平行状に網目を仕切る仕切糸を有する場合がある。この場合には、網目を通過する空気との摩擦が多くなり、更に静電気が発生し易くなる。
【0030】
前記捕集体は、更に、前記空気摩擦ネットに粘着剤が塗布されてなる粘着剤層をもつことが好ましい。空気摩擦ネットの静電気により引き寄せられた塵埃、人毛、獣毛は、捕集体の粘着剤層に付着して確実に捕集される。このため、効果的に塵埃、人毛、獣毛の捕捉性能を発揮することができる。空気摩擦ネットと粘着剤層とをもつ捕集体は、実用新案登録第3131820号に示されている捕集ネットを用いると良い。粘着剤の素材は、JISL1094:1997年法に準ずる測定で、初期摩擦帯電圧が0.5kV以上であり、且つ半減期が50秒間以上であることが好ましい。これにより、空気摩擦ネットと相俟って、塵埃、人毛、獣毛を引き寄せるに十分な静電気を発生させることができる。かかる粘着剤の素材としては、アクリル系樹脂であるとよい。
【0031】
また、前記浮遊物が塵埃、獣毛及び人毛の少なくとも一種からなる場合、前記捕集体には、消臭剤又は/及び芳香剤が付与されていてもよい。この場合には、塵埃等を捕集する捕集機能に、消臭機能又は/及び芳香機能を併せて発揮することができる。
【0032】
浮遊物が臭気成分である場合、捕集体は、臭気成分を吸収し得る消臭剤である。消臭剤としては、活性炭などの公知のものを用いることができる。
【0033】
捕集体は、ネット、固形物、粉粒体、流動体、液体など、種々の形態があり、これらの形態に応じて、外郭体の内部空間に収容するとよい。いずれの形態でも、通気穴と対面するように捕集体を配置して、捕集体が、通気穴を通じて外郭体の内部空間に入り込んだ空気と接触しやすくするとよい。
【0034】
捕集体がネットである場合、ネットの周縁部を、外郭体の分割体の開口の間で挟持して、ネットを外郭体に固定するとよい。また、ネットの周縁部を外郭体の内周面に固定してもよい。たとえば、外郭体の内周面に係止部を固定し、該係止部に、ネットの周縁部に固定した被係止部を係止して、外郭体の内周面にネットを固定することができる。ネットは、1枚だけを外郭体に収容してもよいが、2枚以上を収容してもよい。ネットは、外郭体の内周面に沿った形状の2つの分体を十字形状に組み合わせたもの、球状、三角錐形状、矩形のシート状など、どのような形状でもよい。
【0035】
捕集体が固形物である場合、固形物の形状に応じて外郭体の内周面に固定することが好ましい。たとえば、固形物が棒状体の場合には、その両端を外郭体の内周面に固定するとよい。固形物が球体、多面体である場合には、その表面に保持具を固定し、保持具を、外郭体の内周面に固定された係止部に係止するとよい。
【0036】
捕集体が、比較的大きい粉粒体である場合、多孔ケースの中に、粉粒体を充填する。多孔ケースは、粉粒体は通り抜けできないが浮遊物の通過は可能な大きさの多数の孔をもつとよい。多孔ケースは、保持具を用いて外郭体の内周面に保持するとよい。
【0037】
捕集体が、比較的小さい粉粒体である場合、例えば、該粉粒体にバインダー又は液体を含浸させてネット、不織布、織布などの多孔体の表面に付着させ、その多孔体を外郭体の中に固定するとよい。
【0038】
捕集体が、流動体又は液体である場合、開口をもつケースに捕集体を充填した後、開口を微細な孔をもつ通気性基材で塞ぐ。通気性基材は、捕集体が漏出せず、空気や微細な浮遊物が通過可能なものであることがよく、たとえば、ネット、不織布、織布などである。
【0039】
捕集体は、外郭体の中に固定してもよいし、固定しなくてもよい。捕集体を外郭体の中に固定する場合には、衛生器具の重心が外郭体の中心に位置するように、捕集体を固定するとよい。これにより、衛生器具が転動しやすくなる。捕集体を外郭体の中に非固定状態で収容する場合には、外郭体の転動を妨げないように配慮する必要がある。たとえば、捕集体は比較的軽量であるとよい。外郭体の中で捕集体が移動しても、衛生器具の重心はさほど変位せず、衛生器具の転動を妨げないからである。また、捕集体自体が不安定で転がりやすい形状、たとえば、球体であるとよい。捕集体自体が外郭体の内部空間内で転がることにより、衛生器具の重心が変位しやすく、衛生器具を転動させやすいからである。
【0040】
本発明の衛生器具は、たとえば、一般住宅、集合住宅、オフィスなどの部屋や廊下の床の上に置く。衛生器具の外形は転動自在な球体又は多面体であるため、僅かな空気流れによって転動し、空気流れの向きにしたがって床の上を絶え間なく、又は間隙的に移動する。
(第2の発明)
第2の発明における外郭体は、第1の発明における外郭体と同様のものを用いることができる。
【0041】
発散体は、空気中に浮遊可能な芳香成分からなる浮遊物を発散させる芳香剤である。芳香剤としては、公知の芳香剤を用いることができる。発散体の形態は、捕集体と同様に種々のものがあり、その形態に応じて捕集体と同様な手法で外郭体に収容する。発散体は、捕集体と同様に、外郭体の中に固定しても固定しなくてもよいが、外郭体の転動を妨げないように配慮する必要がある。
【0042】
発散体を備えた衛生器具は、捕集体を備えた衛生器具と同様に、床上に置いて使用する。
(第3の発明)
第3の発明における衛生機能を有する衛生体は、前記捕集体、発散体のほか、空気を媒介して衛生機能を周囲環境に発揮させ得るものを含む。外郭体については、前記第1と同様である。衛生体を備えた衛生器具は、捕集体を備えた衛生器具と同様に、床の上に置いて使用する。
【実施例】
【0043】
(実施例1)
本例の衛生器具1は、図1に示すように、空気中に浮遊する塵埃を捕集する捕集体2と、内部空間30に捕集体2を収容するとともに塵埃が通過可能な通気穴31をもつ外郭体3とからなる。外郭体3は、球体であって、転動自在な転動体である。また、外郭体3は、骨格部32の間に多数の通気穴31を網目状に形成した網目状構造をもつ。骨格部32は、経線及び緯線に沿って等間隔に区画することにより、略正方形状の通気穴31を形成している。外郭体3は、直径160mmの球体である。通気穴31は、一辺が約40mmの略正方形状である。骨格部32の幅は、5mmであり、厚みは、3mmである。
【0044】
外郭体3は、図2に示すように、球体を互いに直交する2つの面で分割した互いに同一形状の4つの分体33から構成されている。各分体33は、水平方向(経線)に平行な開口部33aと、この開口aに対して垂直方向(緯線)に開口する開口部34とを有し、各開口部33a、34aの内周面には、それぞれ接合用リブ43,44が設けられている。接合リブ43,44は、分体33の開口33a、34aの内周面に対して凹凸嵌合している。
【0045】
外郭体3及び接合用リブ43,44の素材は、PP(ポリプロピレン),ABS(アクリルブタジエンスチレン樹脂)などのプラスチック材からなり、一体成形される。外郭体3を形成するにあたっては、金型を用いた射出成形法により4つの分体33を成形し、これらの内周面にそれぞれ嵌合機能を有する接合用リブ43,44を一体的に形成し、その後接合用リブ43,44を互いに凹凸嵌合する。
【0046】
図3に示すように、捕集体2は、塵埃を捕集し、人毛、獣毛等を捕絡する捕集ネット29をもつ。捕集ネット29は、空気摩擦ネット75と、空気摩擦ネット75に粘着剤が塗布されてなる粘着剤層76とからなる。空気摩擦ネット75は、網目状構造に形成され網目を通過する空気との摩擦によってマイナスに帯電し得るものである。空気摩擦ネット75は、硬質ポリ塩化ビニルからなり、粘着剤層76はアクリル系粘着剤からなり、いずれも、マイナスに帯電する静電気特性をもつ熱可塑性樹脂を素材とする。硬質ポリ塩化ビニル、アクリル系粘着剤は、1.0mm厚の板状としJISL1094:1997年法に準ずる帯電測定を行ったところ、初期摩擦帯電圧が10.0kVであり、且つ半減期が120秒間であった。
【0047】
空気摩擦ネット75は、硬質ポリ塩化ビニルを素材とするモノフィラメント(500デニール)をラッセル式編機により網目状に編んで形成されたものである。空気摩擦ネット75の網目構造は、緩やかなループ71を鎖状につなぎ合わせた複数の縦編み部72と、隣り合う縦編み部72を水平状に連結して縦編み部72の間に網目70を形成する横糸部73と、網目70の略中央にモノフィラメントを斜め状に横切らせて形成された仕切糸74とをもつ。縦編み部72の太さDは、1.1mm±0.2mm、網目70の寸法Lは5mm±1mmである。
【0048】
粘着剤層76は、空気摩擦ネット75のフィラメント表面に形成されている。空気摩擦ネット75の縦編み部72では、緩やかなループ71が形成されていて、そのループ71のいくつかの中には粘着剤層76が被膜状に形成されている。粘着剤層76は、ループ71の中だけでなく、縦編み部72、横糸部73及び仕切糸74を構成するフィラメントの表面にも形成されている。
【0049】
図2に示すように、捕集体2は、円形分体27aと、半円分体27bとからなる。円形分体27a、半円分体27bは、外周端が外郭体3の内周面に沿った形状をもち、フレーム51に固定されている。
【0050】
本例の衛生器具1を組み付けるに当たっては。まず、外郭体の2つの分体33、33の間に捕集体の半円分体27bを配置する。分体33の緯線方向の開口34aに固定されている接合用リブ44で半円分体27bを挟む。捕集体2は半円分体27bを2つもつため、2つの半円分体27bについて接合用リブ44で挟む。次に、半円分体27bが挟み込まれていないもう一方の経線方向の開口33aの間に、捕集体の円形分体27aを配置する。分体33の開口33aに固定されている接合用リブ43で円形分体27aを挟む。捕集体2の円形分体27a及び半円分体27bのフレーム51には、貫通孔が開口している。この貫通孔に、相対する接合用リブ43,44のうち一方の接合リブ43,44に形成された凸状嵌合部が嵌着される。さらに、貫通孔を貫通した凸状嵌合部は、他方の接合リブ43,44に形成された凹状の被嵌合部に嵌合する。これにより、外郭体3の4つの分体33が一体に組み付けられると共に、分体33の相対する開口の間に捕集体2が固定される。
【0051】
本例の衛生器具1は、たとえば、室内の床の上に置く。外郭体3の形状が床面のいずれの方向にも転動しやすい球体であり、また、捕集体2の中心が、外郭体3の中心に一致するように固定されているため、衛生器具1の重心が外郭体3のほぼ中心に位置する。このため、衛生器具1は、僅かな空気の流れや設置面の傾斜によって、無動力で転動する。衛生器具1は、転動すると、不動時に比べて、通気穴31からの空気の取込み量が多くなる。これにより、外郭体3の中の捕集体2は、空気の中の塵埃、人毛、獣毛と接触する機会が多くなる。このため、効果的に塵埃などを捕集することができる。また、外郭体3は、転動により、床上を広範囲のスペースを移動する。したがって、広範囲のスペースで、床上や空中を浮遊する、綿埃、人毛、獣毛、塵埃などの塵埃を捕集することができる。また、静止状態にあっても、外郭体3の周辺を浮遊する塵埃等は、通気穴から内部空間30に入り込み、捕集体2によって捕集される。したがって、本例の衛生器具1によれば、持続的に、無動力で、広範囲のスペースの塵埃等を捕集することができる。
【0052】
また、捕集体2は、外郭体3の内部空間30に収容されている。空気摩擦ネット75の静電気及び粘着剤層76の粘着によって捕集体2は塵埃等で汚れても、外郭体3は汚れない。このため、衛生器具1に手などが触れたときに、手などを汚すことはない。
【0053】
また、図3に示すように、捕集体2は、空気摩擦ネット75に粘着剤層76を形成したものである。このため、外郭体3の転動により、空気摩擦ネット75が空気と摩擦して、静電気を発生させる。これにより、空気中の塵埃等9が空気摩擦ネット75に引き寄せられて、粘着剤層76に捕集される。それゆえ、効果的に塵埃等9を吸着することができる。
【0054】
(実施例2)
本例は、図4に示すように、捕集体2が球体である点が、実施例1と相違する。図4、図5に示すように、捕集体2は、直径100mmの球体である。捕集体2は、捕集ネット29を、多孔質の半球枠体(図示略)の外周面に固定して半球分体28,28を形成し、半球分体28,28の開口28a、28aを、互いに係止して、球状に一体化したものである。捕集体2は、実施例1と同様に、空気摩擦ネットと粘着剤層とからなる。半球分体28は、外郭体3よりも小さいが、その網目状の通気穴31よりも大きい。半球分体28は、運搬、保存時にはコンパクト化のためその形状のままとし、外郭体3に収容して使用するとき、開口28a同士を凹凸嵌合して、球状にする。
【0055】
球状の捕集体2は、外郭体3の中に、非固定状態で収容する。捕集体2は球状で不安定な形状であるため、僅かな空気流れや斜面で外郭体3の内部空間30内で転がり、衛生器具1の重心を変化させることになる。このため、衛生器具1が転動しやすくなり、内部空間30に配置された捕集体2の空気との接触機会が多くなる。ゆえに、空気摩擦量を増大させることができ、より多くの塵埃等を捕集することができる。
【0056】
(実施例3)
本例は、図6に示すように、捕集体2が三角錐(ピラミッド)形状である点が、実施例1と相違する。三角錐形状の捕集体2は、実施例1と同様の捕集ネットをもつ。図7、図8に示すように、捕集体2は、捕集ネット29を平面状に展開可能な三角錐形状のフレーム52に固定して形成されている。フレーム52は、運搬、保存時にはその形状のままとし、外郭体3の中に収容して使用するときに、図8に示す点線に沿って折り曲げて三角錐形状に組み立てる。フレーム52の4つの頂点には、それぞれ被係止部2bが固定されている。被係止部2bは、外郭体3の係止部に係止されることにより、捕集体2を外郭体3に固定している。本例においても、実施例1と同様の効果を得ることができる。
【0057】
(実施例4)
本例は、図9に示すように、捕集体2がシート状である点が、実施例1と相違する。シート状の捕集体2は、実施例1と同様の捕集ネット29を、一辺が外郭体3の直径以下となる略正方形のフレーム53に固定したものである。フレーム53の4つのコーナー部53aには、それぞれ被係止部が固定されている。被係止部2bは、外郭体3の被係止部に係止されることにより、捕集体2は外郭体3に対して固定されている。本例においても、実施例1と同様の効果を得ることができる。
【0058】
(実施例5)
本例は、図10に示すように、捕集体2がリング状体25を呈しており、外郭体3に内接している点が、実施例1と相違する。捕集体2を外郭体3に収容するに当たっては、まず、図11に示すように、実施例1と同様の捕集ネット29、即ち粘着剤が付与された空気摩擦ネットを準備し、この捕集ネット29から2つの帯状体25aを形成する。帯状体の幅は、60〜70mmとする。次に、図12に示すように、一方の帯状体25aの長手方向の両端を接着してリング状体25となす。次に、他方の帯状体25aを一方のリング状体25の中に通した後に、両端を接着してリング状体25とする。リング状体25の外周長さは、外郭体3の内周長さと同じか又は若干長くする。そして、外郭体3は、半球体に分割された分割体として成形し、この分割体の中に前記の2つのリング状体25を収容し、分割体の内面に沿わせる。次に、分割体の開口部分を互いに凹凸嵌合して一体化する。リング状体25は、ネットのもつ剛性によって、外郭体3の内面に沿って保持される。以上により、本例の衛生器具が得られる。
【0059】
本例の衛生器具においては、実施例1と同様の効果を発揮する。更に、外郭体3の内面に捕集体2が内接しているため、外郭体3の外部にあって外郭体3の内部に入りにくい毛類も十分に捕絡することができる。
【0060】
(実施例6)
本例は、図13に示すように、実施例1の塵埃、人網、獣毛を捕集する捕集体の代わり、消臭剤6を外郭体3に収容している。消臭剤6は、活性炭であり、微細な粒状体である。消臭剤6は、外郭体3よりも小さい球状のケース54の中に収容されている。ケース54の全周面には消臭剤6よりも小さい通気性の小孔54aが多数形成されている。小孔54aからケース54の中に臭気成分が入り込み、内部の消臭剤6により吸着される。ケース54の互いに反対極に位置する部分には、棒状の保持具55の一端が固定されている。保持具55の他端は、外郭体3の接合用リブ44の内周面に固定されている。ケース54の中心は、外郭体3の中心と一致させる。
【0061】
本例においては、球状の外郭体3は、僅かな空気流れや設置面の傾斜により、床の上を転動する。このため、外郭体3の中に収容された消臭剤6は、室内の広範囲にわたって、消臭性能を発揮することができる。また、衛生器具1の転動により、消臭材6は臭気成分と接触する機会が多くなり、効果的に消臭性能を発揮することができる。
【0062】
(実施例7)
本例は、実施例1の塵埃の捕集体の代わりに、図14に示すように、芳香剤8を外郭体3に収容している。芳香剤8は、液状で、芳香を発する公知のものである。芳香剤8は、開口をもつ球状のケース56に充填される。芳香剤8が充填されたケース56は、その開口を通気性基材57で塞ぐ。通気性基材57は、不織布で、液状の芳香剤の漏出はしないが、空気中に発散された芳香成分は通過可能な微細孔57aをもつ。ケース56は、実施例6と同様の保持具55によって外郭体3に固定される。
【0063】
本例においては、衛生器具1が転動することで、広範囲のスペースにわたって、芳香発散性能を発揮できる。また、衛生器具1の転動により、芳香剤8は、空気と接触する機会が多くなり、効果的に芳香性能を発揮することができる。
【0064】
(実施例8)
本例は、実施例7の芳香剤と実施例6の消臭剤とを同一のケースの中に充填している。ケースは、実施例7と同様で、実施例6の保持具55で外郭体3の中に収容、固定している。この場合には、外郭体3の転動によって、芳香性能と消臭性能の両方を、広範囲に且つ効果的に発揮することができる。
【0065】
(実施例9)
本例は、ネット状の捕集体に、芳香剤と消臭剤を付与した点が、実施例1と相違する。捕集体は、実施例1と同様に空気摩擦ネットに粘着剤が付与されている。更に、空気摩擦ネットの材料には、芳香剤及び消臭剤が練り込まれており、芳香剤及び消臭剤を包含した状態でモノフィラメントが成形され、網目状に編成されている。本例の衛生器具は、塵埃、毛類などの捕集機能だけでなく、芳香発散や、消臭機能をもあわせて発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の実施例1に係る衛生器具の正面図である。
【図2】実施例1に係る、衛生器具の組み付け方法を示すための、衛生器具の分解斜視図である。
【図3】実施例1に係る空気摩擦ネットの作用を示す説明図である。
【図4】実施例2に係る衛生器具の正面図である。
【図5】実施例2に係る、捕集体を構成する半球分体の斜視図である。
【図6】実施例3に係る衛生器具の正面図である。
【図7】実施例3に係る捕集体の正面図である。
【図8】実施例3に係る捕集体の展開図である。
【図9】実施例4に係る衛生器具の正面図である。
【図10】実施例5に係る衛生器具の正面図である。
【図11】実施例5に係る、帯状の空気摩擦ネットの平面図である。
【図12】実施例5に係る、リング状体の斜視図である。
【図13】実施例6に係る衛生器具の正面図である。
【図14】実施例7に係る衛生器具の正面図である。
【符号の説明】
【0067】
1:衛生器具、2:捕集体、2b:被係止部、3:外郭体、6:消臭剤、7:消臭剤、8:芳香剤、25:リング状体、27a:円形分体、27b:半円分体、28:半球分体、29:捕集ネット、30:内部空間、31:通気穴、32:骨格部、33:分体、33a、34a:開口、43,44:接合用リブ、51、52、53:フレーム、54、56:ケース、55:保持具、57:通気性基材、70:網目、71:ループ、72:縦編み部、73:横糸部、74:橋渡し部、75:空気摩擦ネット、76:粘着剤層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気中に浮遊する塵埃、人毛、獣毛、及び臭気成分のうち少なくとも1種からなる浮遊物を捕捉する捕集体と、該捕集体を収容する外郭体とからなり、
該外郭体は、前記浮遊物が通過可能な網目状の通気穴をもつ球体又は多面体からなる転動自在な転動体であることを特徴とする衛生器具。
【請求項2】
空気中に浮遊可能な芳香成分からなる浮遊物を発散させる発散体と、該発散体を収容する外郭体とからなり、
該外郭体は、前記浮遊物が通過可能な網目状の通気穴をもつ球体又は多面体からなる転動自在な転動体であることを特徴とする衛生器具。
【請求項3】
前記外郭体は、開口をもつ本体部と、該開口を開閉可能に被覆する蓋部とをもつことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の衛生器具。
【請求項4】
前記外郭体は、複数の分割体を一体的に組み付けてなることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の衛生器具。
【請求項5】
前記浮遊物が塵埃、獣毛及び人毛の少なくとも一種からなる場合、前記捕集体は、マイナスに帯電する静電気特性をもつ熱可塑性樹脂を用いて網目状構造に形成され網目を通過する空気との摩擦によってマイナスに帯電し得る空気摩擦ネットからなることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の衛生器具。
【請求項6】
前記捕集体は、更に、前記空気摩擦ネットに粘着剤が塗布されてなる粘着剤層をもつことを特徴とする請求項5記載の衛生器具。
【請求項7】
前記浮遊物が塵埃、獣毛及び人毛の少なくとも一種からなる場合、前記捕集体には、消臭剤又は/及び芳香剤が付与されていることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の衛生器具。
【請求項8】
衛生機能を発揮する衛生体と、該衛生体を収容する外郭体とからなり、
該外郭体は、網目状の通気穴をもつ球体又は多面体からなる転動自在な転動体であることを特徴とする衛生器具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2009−112903(P2009−112903A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−286459(P2007−286459)
【出願日】平成19年11月2日(2007.11.2)
【出願人】(393005015)株式会社メイテック (7)
【Fターム(参考)】