説明

衛生材料用ポリオレフィン系長繊維不織布

【課題】特定の処理剤を付与することにより、瞬間透水性、耐久透水性、濡れ戻り性を併せ持ち、安全性にも優れた衛生性材料用ポリオレフィン系長繊維不織布を提供する。
【解決手段】グリセリン縮合物、ポリエーテル変性シリコーン、ポリオキシアルキレンひまし油エーテル又はポリオキシアルキレン硬化ひまし油エーテルを併用した処理剤を特定の割合で配合し、ポリオレフィン系長繊維不織布に実質的に0.2〜0.8重量%付与固定化することにより、その相乗効果が発揮される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛生材料用ポリオレフィン系長繊維不織布に関し、詳しくは衛生材料用ポリオレフィン系長繊維不織布に対して、特定の処理剤を付与することにより、良好な瞬間透水性と耐久透水性、濡れ戻り性を併せ持った衛生材料用ポリオレフィン系長繊維不織布に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維等のポリオレフィン系繊維は、疎水性繊維であるため生理用ナプキンや紙オムツ等の表面素材として使用すると肌に接触した部分に湿潤感がなく肌触りが快適であるため、かかる用途に広く利用されている。ところで、紙オムツ、生理用ナプキン等の着用時の発汗、尿、体液等による不快感の回避は、それら製品の肌触り部の濡れ易さ、それもその濡れ易さが短時間で瞬時に発揮させることが重要であると考えられている。そのため肌触り部を構成しているポリオレフィン系繊維には、短時間内で瞬時での透水性が要求されると同時に、紙オムツ等では本人自身が排泄物を処理することができない幼児、老人、病人等が着用するため、1回の着用で必ずしも1回の排泄物が処理されるとは限られず、数回の排泄に対する不快感の回避が必要とされ、そこで上記透水性の耐久性(繰り返しの透水性)、および濡れもどりの少ないこと(濡れもどり性)等がまた強く要求されている。当然、瞬時の透水性、耐久性の付与により、衛生材料で最も不快とされる表面材上から尿等の洩れもなくなる。
本発明は、その疎水特性から本来親水性に極めて劣るポリオレフィン系繊維について、上記のようなる要求に応える親水性改良剤を付与した繊維から構成されてなる衛生材料用ポリオレフィン系長繊維不織布に関する。
【0003】
従来、ポリオレフィン系繊維の親水性付与には、1)低分子量親水性化合物の付与、2)親水性高分子樹脂の付与等がなされている。ところが、低分子量親水性化合物では、疎水性の繊維表面への付与剤の濡れが悪くて付着しにくく期待する透水性が得られにくいばかりでなく、浸透性の強い処理剤である程度の透水性が得られる場合でも耐久性は全く得られず、しかも皮膚への刺激性の強いものが多いという問題点があった。また、親水性高分子樹脂では、概して思ったより耐久性が不充分であって、ある程度の耐久性が得られる付与剤を用いた場合には透水性が不充分となったり、付与剤が樹脂であるため不織布製造工程で各種の障害を引き起こすという問題点があった。
【0004】
例えば、特許文献1には、ポリグリセリン脂肪酸エステルあるいは、ポリグリセリン脂肪酸エステルとポリオキシアルキレン変性シリコーンによる親水性処理剤が付与されたポリオレフィン系繊維が示唆されている。ポリグリセリン脂肪酸エステルは、一旦付着させると脱落しにくい特徴を有するが、この処理剤そのものでは、現在の衛生材料用途に要求される瞬間透水性・耐久透水性には不充分なレベルにある。また、ポリグリセリン脂肪酸エステルとポリオキシアルキレン変性シリコーンとの混合した親水性処理剤についても開示されているが、ポリグリセリン脂肪酸エステル単体に比べると瞬間透水性・耐久透水性は改善されるものの、それでも不充分な性能レベルにある。さらに、これら化合物は、いずれも繊維への浸透性が低いため、均一な繊維への付着が難しく、透水性能がばらつきやすい問題がある。
【0005】
また、特許文献2には、ポリグリセリン脂肪酸エステルとポリオキシアルキレン変性シリコーン、アルキルイミダゾリウムアルキルサルフェート、アルカノイルアミド、ポリエーテルエステルの混合した繊維処理剤を付着させた耐久親水性繊維が示唆されている。処理剤に含有される、アルカノイルアミド、ポリエーテルエステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルおよびポリオキシアルキレン変性シリコーンは、耐久親水性の向上を狙った処理剤であるが、一方で、衛生材料用途で長時間快適に使用を継続するために要求される、濡れ戻り性を悪くする問題がある。さらに、ポリエーテルエステルは繊維への浸透性に対して温度依存性が高く、処理剤温度の僅かな変化に対して付着のばらつきを起こしやすい問題があるため、処理剤付着工程で厳密な温度管理を要求される欠点がある。
このように、従来の繊維への親水性付与技術では、製造工程性に優れ、かつ衛生材料用途で要求される、瞬間透水性、耐久透水性、および濡れ戻り性のいずれについても高い性能レベルで満足する処理剤を得ることは難しい。従って、衛生材料用途において、これらの3つを、高い性能レベルで併せ持つ、高性能の処理剤が望まれている。
【0006】
【特許文献1】特許第2657998号公報
【特許文献2】特許第3314775号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、叙上の如き従来の問題点を解決して、瞬間透水性、耐久透水性、濡れ戻り性のいずれについても高い性能レベルを有する処理剤を付与した繊維から構成されてなる衛生材料用ポリオレフィン系長繊維不織布を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、前記課題を解決するためにポリオレフィン系長繊維不織布用親水性改良剤について鋭意検討した結果、単独化合物では強い疎水性と強い親水性を持つものはその両性能のバランスをうまくとることが難しく、親水性で透水性能の優れた化合物と、ポリオレフィンとの親和性が高い化合物を併用することで、その相乗効果が期待できることを知見し、特定の処理剤を含有させることが前述の要求に応え得る処理剤であることを知見し、下記構成の処理剤を固定化した繊維から構成されてなる衛生材料用ポリオレフィン系長繊維不織布が、優れた瞬間透水性、耐久透水性、および濡れ戻り性を有することを見出し本発明を完成するに到った。
【0009】
すなわち、本発明は下記の通りである。
(1)下記のA成分、B成分及びC成分を含有し、3成分の構成割合が、A成分が15〜45重量%、B成分が20〜50重量%、C成分が5〜35重量%からなる処理剤を、0.2〜0.8重量%固定化してなることを特徴とする衛生材料用ポリオレフィン系長繊維不織布。
A成分:
一般式1で示される、水酸基の10〜85モル%をエステル化したグリセリン縮合物。
【化1】

(式中、R1 :炭素数7〜21アルキル基又はアルケニル基、R2 、R3 :水素又は炭素数7〜21アルカノイル基又はアルケノイル基、n=2〜12の整数。)
【0010】
B成分:
一般式2で示されるポリエーテル変性シリコーン。
【化2】

(式中、R4 :エチレン基又はプロピレン基、R5 :水素或いは炭素数1〜12のアルコキシ基又はカルボキシ基、a=7〜100、b=1〜10、c=2〜100、d=20〜80。)
【0011】
C成分:
オキシアルキレンが20〜45重量%であるポリオキシアルキレンひまし油エーテル又はポリオキシアルキレン硬化ひまし油エーテル。
(2)第4成分として、下記のD、E、F成分のいずれかを、それら成分と(A成分+B成分+C成分)合計との重量比率で5/95〜30/70の割合で添加し、0.2〜0.8重量%固定化してなる衛生材料用ポリオレフィン系長繊維不織布。
D成分:一般式3で示されるアルキロールアミド化合物。
【化3】

(式中、R:炭素数11〜17のアルキル基又はアルケニル基。)
【0012】
E成分:一般式4で示されるアルキルアミノオキシド化合物。
【化4】

(式中、R:炭素数11〜17のアルキル基。)
F成分:一般式4で示されるアルキルアンモニウムホスフェート化合物。
【化5】

(式中、R:炭素数8〜12のアルキル基。)
【0013】
(3)ポリオレフィン系長繊維不織布がポリプロピレン長繊維不織布であることを特徴とする上記(1)〜(2)に記載の衛生材料用ポリオレフィン系長繊維不織布。
(4)ポリオレフィン系長繊維不織布が捲縮を有するポリオレフィン系長繊維不織布であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の衛生材料用ポリオレフィン系長繊維不織布。
(5)長繊維不織布が部分的に熱圧着されてなることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の衛生材料用ポリオレフィン系長繊維不織布。
(6)長繊維不織布が少なくとも捲縮を有する層との積層体からなることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載の衛生材料用ポリオレフィン系長繊維不織布。
(7)処理剤を付与する前のポリオレフィン系不織布にコロナ放電処理もしくは常圧プラズマ放電処理を行い、該不織布の濡れ張力を35〜55mN/mの範囲に処理した後、処理剤を繊維に固定化することを特徴とする上記の(1)〜(6)のいずれかに記載の衛生材料用ポリオレフィン系長繊維不織布。
【発明の効果】
【0014】
特定のポリグリセリン縮合物と特定のポリエーテル変性シリコーンとポリオキシアルキレンひまし油エーテルとを併用した処理剤を付与することにより、親水性で透水性能の優れた化合物とポリオレフィンとの親和性が高い化合物とを併用することとなり、その相乗効果が発揮され、その結果、瞬間透水性、濡れ戻り性、耐久透水性を改善し、更に少量の処理剤でこれら特性を併せ持った性能を付与することができ、安全性にも優れた衛生材料用ポリオレフィン系長繊維不織布を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明について詳述する。本発明の最良の形態を成すための技術上のポイントは、単独の化合物では衛生材料用途に求められる瞬間透水性、耐久透水性、濡れ戻り性を高い性能レベルで実現できないために、個々の化合物の特性を組み合わせることで相乗効果を実現したことにある。
本発明で用いた処理剤の各成分の作用効果は、表1に示す通りである。すなわち、A成分であるポリグリセリン縮合物は、水への難溶解性を示し他の処理剤と組み合わせた際に他剤の溶解性も抑制すると共に、濡れ戻り性に優れた特性を示す。また、B成分であるポリエーテル変性シリコーンは、瞬間透水性と耐久透水性に優れた特性を示す。更に、C成分であるポリオキシアルキレンひまし油エーテル又はポリオキシアルキレン硬化ひまし油エーテルは、繊維に対して浸透性が高いことから均一な付着性に優れ、濡れ戻り性、耐久透水性に優れた特性を示す。
【0016】
これら化合物を以下に示す配合比で組み合わせることにより、瞬間透水性、耐久透水性、濡れ戻り性が、高い性能レベルで実現可能となる。
図1〜図3に示した通り、瞬間透水性、耐久透水性、濡れ戻り性の3つの特性は、一般的には、お互いに二律背反の関係にある。例えば、図3に示す耐久透水性と濡れ戻り性は、耐久透水性を良くすると、濡れ戻り性は悪化するという関係があるし、図2で示した様に、瞬間透水性を良くすると、濡れ戻り性は悪化するという関係にある。
しかしながら、本発明は、図1〜図3において、丸く囲った領域の範囲を模式的に示したものであり、瞬間透水性、耐久透水性、濡れ戻り性が、三者ともに優れた性能を有し、それぞれ、高い性能レベルで実現可能としたものである。
【0017】
本発明の衛生材料用ポリオレフィン系長繊維不織布に付与する処理剤は、A成分であるポリグリセリン縮合物とB成分であるポリエーテル変性シリコーンとC成分であるポリオキシアルキレンひまし油エーテル又はポリオキシアルキレン硬化ひまし油エーテルとを、3成分の構成割合で、A成分が15〜45重量%、B成分が20〜50重量%、C成分が5〜35重量%の割合で含有する処理剤が、不織布への処理剤の浸透性レベルが高く、付着ムラ(透水性能のばらつきが)が少なく、かつ瞬間透水性と耐久性と濡れ戻り性のバランスが取れていて好ましい。より好ましくは、A成分が25〜45重量%、B成分が30〜45重量%、C成分が10〜20重量%の割合で含有する処理剤である。
A成分は15重量%より少ないと濡れ戻り性が悪くなる。逆に45重量%より多いと不織布への処理剤の浸透性が悪くなり付着ムラになりやすく、また、瞬間透水性、耐久透水性が悪くなる。B成分は20重量%より少ないと瞬間透水性・耐久透水性が悪くなる。逆に50重量%より多くなると濡れ戻り性が悪くなる。C成分は5%より少ないと不織布への処理剤浸透性効果が小さくなるため付着ムラを起こしやすく、耐久透水性も悪くなる。逆に35重量%より多くなると瞬間透水性が悪くなる。
【0018】
前記一般式1で示されるA成分としてのポリグリセリン縮合物は、グリセリンの触媒存在下における加熱脱水又はグリセリンとグリシドールとの開環付加反応等によって得られるポリグリセリンと、脂肪酸とのエステルである。該ポリグリセリン縮合物としては、前記ポリグリセリン中の全水酸基を完全にエステル化したものも含まれるが、該全水酸基の10〜85%をエステル化した部分エステルが好ましい。上記ポリグリセリン縮合物の脂肪酸部分の炭素数は7〜21であるが、好ましくは14〜18である。またポリグリセリン部分を形成するグリセリンの縮合度nは2〜12であるが、好ましくは4〜8である。通常、グリセリンをアルカリ触媒下に脱水縮合させて得られるポリグリセリンには、副生物として環状ポリグリセリンが存在するが、本発明では、該環状ポリグリセリンを一部に含有したポリグリセリンから得られるポリグリセリン縮合物であっても支障はない。
本発明で使用されるポリグリセリン縮合物の具体例を挙げると、ジグリセリンモノラウリン酸エステル、ジグリセリンモノオレイン酸エステル、テトラグリセリンモノラウリン酸エステル、テトラグリセリンモノステアリン酸エステル、テトラグリセリンジステアリン酸エステル、ヘキサグリセリンモノラウリン酸エステル、ヘキサグリセリンモノミリスチン酸エステル、ヘキサグリセリンモノステアリン酸エステル、ヘキサグリセリンジステアリン酸エステル、ヘキサグリセリンジオレイン酸エステル、デカグリセリントリステアリン酸エステル等がある。
【0019】
前記一般式2で示されB成分としてのポリエーテル変性シリコーンは、ジメチルハイドロジェンポリシロキサンに、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのブロック又はランダム共重合ポリエーテル、炭素数1〜12のアルコールへのエチレンオキシド付加物、炭素数1〜12アルコールへのプロピレンオキシドのブロック又はランダム共重合体付加物等のモノアリルエーテルを付加して得られる変性シリコーンである。本発明において、上記ポリエーテル変性シリコーンの特徴は、その構造に基づいて水溶性が小さいことにある。即ち、それ自体の水への溶解性ができるだけ小さいか、または他の乳化剤の補助でやっと乳化する程度の溶解性を示すものである。
実際、得られた変性シリコーンに最小限の水溶性を持たせて満足の行く透水性を得るためには、一般式2のbは1〜10の範囲であり、bが1以上である必要があるが、逆にbが10を超えて大きいと、得られる変性シリコーンの水溶性が大きくなり過ぎて、透水性の面では満足に行くものの、耐久性が不十分となってしまう。また、同様に、得られる変性シリコーンに最小限の親水性を持たせて満足のゆく透水性を得るためには、前記一般式2におけるdが20〜80の範囲であることが好ましく、20未満であると満足な透水性を付与することができず、逆に80より大きいと、得られる変性シリコーンの特に耐久性が大きく損なわれてしまう。この場合、オキシエチレン単位とオキシプロピレン単位のモル比も影響し、オキシエチレン単位が1/4以上であることが好ましい。更に、一般式2におけるaは7〜100の範囲であり、該値が7未満であと耐久性が悪く、逆に100を超えると透水性が悪くなってしまう。
【0020】
B成分としてのポリオキシアルキレンひまし油エーテル又はポリオキシアルキレン硬化ひまし油エーテルには、ひまし油または硬化ひまし油にエチレンオキサイドが付加したアルキレンオキサイド付加物、ひまし油または硬化ひまし油にプロピレンオキサイドが付加したアルキレンオキサイド付加物、ひまし油または硬化ひまし油にエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドが付加したアルキレンオキサイド付加物、またはこれらの混合物が挙げられる。またオキシアルキレンが20〜45重量%の範囲のポリオキシアルキレン付加物であり、30〜40重量%であるポリオキシアルキレン付加物が好ましい。
【0021】
本発明の衛生材料用ポリオレフィン系長繊維不織布に付与する処理剤は、前述の如くそれぞれ所定の割合で含有してなるものであるが、さらに本発明の効果を損なわない範囲で、所望の目的に応じて他の化合物、例えば、乳化剤、平滑剤、帯電防止剤、消泡剤としての各種界面活性剤を適宜含有させることができる。
処理剤を付与するに際しては、原液をそれぞれ、あるいは混合して直接付与することも有効であるが、あらかじめ混合し、水等の溶媒で希釈して付与するのが好ましい。
処理剤を塗布する方法としては、通常希釈した処理剤を用いて、浸漬法、噴霧法、コーティング(キスコーター、グラビヤコーター)法等の既知の方法が採用でき、あらかじめ混合し、水等の溶媒で希釈して塗布するのが好ましい。付与に際しては、必要に応じて、繊維ウエブの表裏に付着量に差をつけてもよい。
処理剤を水等の溶媒で希釈して塗布すると、乾燥工程を必要とする場合がある。その際の乾燥方法としては、対流伝熱、伝導伝熱、放射伝熱等を利用した既知の方法が採用でき、熱風や赤外線による乾燥あるいは熱接触による乾燥方法等で良い。
【0022】
以下の付与において、主にコーティング法で付与する場合には、特に高速での付与では布への浸透が均一である必要があり、その際処理剤成分であるポリグリセリン縮合物やポリエーテル変性シリコーンが布への浸透性が弱いことから、浸透性を上げるために、該処理剤に、更に浸透剤として、一般式3で示されるD成分としてのアルキロールアミド化合物、あるいは同4のE成分としてのアルキルアミノキシド化合物、あるいは同5のF成分としてのアルキルアンモニウムホスフェート化合物等を(A成分+B成分+C成分)合計との重量比率で5/95〜30/70の重量割合で添加する、好ましくは10/90〜20/80重量割合で添加することができる。これらの浸透剤が5重量%より少ないと、その効果が小さなる。一方、30重量%より多くなると、浸透性は高くなるものの、濡れ戻り性が悪くなるため、好ましくない。
処理剤の付与量は、不織布に対して、0.2〜0.8重量%の範囲であることが必要であり、人体に直接接することから、必要最小限に設定することが好ましい。必要に応じて、例えば、表面材の中央部等の液透過の必要部のみに付与することも有用である。
衛生材料用途では、人体に直接接することから、高い安全性が求められている。本発明の不織布は細胞毒性試験結果(IC50)が70%以上を満足することから、衛生材料用途として好ましい不織布である。
【0023】
衛生材料用ポリオレフィン系長繊維不織布を構成するポリオレフィン系繊維としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレンおよびそれらのモノマーと他のα−オレフィンとの共重合体などの樹脂から成る繊維があげられる。ポリプロピレンは、一般的なチーグラナッタ触媒により合成されるポリマーでも良いし、またメタロセンに代表されるシングルサイト活性触媒により合成されたポリマーであっても良い。他のα−オレフィンとしては、炭素数3〜10のものであり、具体的にはプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキサン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテンなどが挙げられる。これらは1種類単独でも2種類以上を組み合わせても良い。あるいはポリオレフィン系樹脂を表面層とする芯−鞘繊維などが挙げられるが、強度が強く使用時において破断しにくく、且つ衛生材料の生産時における寸法安定性に優れることからポリプロピレン繊維を用いることが好ましい。また、その繊維形状も通常の円形繊維のみでなく、捲縮繊維、異形繊維などの特殊形態の繊維も含まれるが、強度、寸法安定性および透過性について使用に耐えるに充分な性能を有すると共に、特に、肌ざわりと濡れもどり性に優れることから捲縮繊維を用いることが好ましい。
【0024】
繊維ウエブの形状は、平坦ウエブと捲縮ウエブの積層等種々の繊維ウエブを積層した不織布、表面層をポリオレフィン繊維ウエブとし、中心層を親水性ウエブ、異種ウエブとする特殊な不織布などが用いられるが、特に捲縮繊維を少なくとも一層とする積層体とした不織布として用いるのが特に好ましい。
繊維ウエブを接合して不織布となす場合の接合手段としては、熱圧着点(ポイントボンディング)法、熱風法、その他、溶融成分での接合(ホットメルト剤)法、などがあるが、安全性および柔軟性の点で部分的に熱圧着されたものが好ましい。
本発明の衛生材料用ポリオレフィン系長繊維不織布は、処理剤を付与する前のポリオレフィン系長繊維不織布にコロナ放電処理もしくは常圧プラズマ放電処理を行い、該不織布の濡れ張力を35〜55mN/mの範囲に処理した後、処理剤を繊維に固定化することで、繊維への処理剤の浸透性を向上させると共に、初期透水性能と耐久性とをより向上させることができるため、コロナ放電処理もしくは常圧プラズマ放電処理を行うことが特に好ましい。
【0025】
前述の表面改質前の濡れ張力が25〜33mN/mの範囲であるポリオレフィン不織布にコロナ放電処理もしくは常圧プラズマ放電処理を行う場合、濡れ張力35〜55mN/m、好ましくは37〜50mN/mにすることが必要である。放電処理後の濡れ張力が、35mN/m未満であるとその後実施する処理剤の繊維との親和性に劣り、処理剤の脱落が起こりやすくなり耐久透水性に問題が生じる。逆に55mN/mを超えて大きいと人体より排出される尿や体液などの濡れ戻り量が多くなる。また、不織布の強度劣化や風合いが硬くなるばかりでなく、繊維中の各種添加剤が分解することが原因だと推定される異臭や、それら分解物の影響と考えられる処理剤との親和性を阻害することがある。加えて、表面改質のためのエネルギーコストが高くなるなどの問題が生じる。また、放電処理を施す際の処理雰囲気は空気中で良い。ただし、放電処理は、濡れ張力の経時変化を生じるため、バッチ処理などで処理剤塗布までに時間を要する場合は、経時変化防止のため窒素雰囲気化で実施すると、濡れ張力の持続性が発現するため好ましい。
また、放電処理時の放電度は、7W/cm2 で以下、好ましくは、5W/cm2 以下である。7W/cm2 を越えると過放電となり、電極よりヒゲ状の放電が多く発生し、処理斑や繊維にダメージを与えることになるため好ましくない。
【実施例】
【0026】
次に、本発明の実施例などによりさらに説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
なお、測定方法及び評価方法は下記の通りである。
(1)不織布に対する処理剤の付着量:
25℃×40%RHの温湿度で24時間調湿した処理剤が付着した不織布試料(W1)について、メタノールを用いて、ソックスレー抽出し、処理剤付着量(W2)を求めた。そして下記の式より、処理剤付着率C%を求めた。
C=W2/W1(%)
【0027】
(2)吸収速度(秒/5cc)と濡れ戻り指数(g):
吸収体として、吸収体の特性を一定化しておくため、特定濾紙(HOLLINGSWORTH&VOSE.COMPANY製“ERT−FE3”10cm角×5枚重ね)を測定器(約800g、10cm角で中央に直径25mmの穴を設け、その中央に向け2本の電極を設けてタイマーに接続したもの)の下部に置く。この吸収体の上に試験布(10cm角)を置く。まず、この上部25mmから5ccの人工尿を滴下する。人工尿は生理食塩水に非イオン活性剤を添加し、25℃において45±3mN/m(乳幼児の尿に相当)に調整し、滴下速度は3.3秒/25ccとした。これを5cc吸収速度(秒/5cc)とした。次いで、このまま人工尿を追加し、吸収体に含まれる液量が一定化するように、全液量が吸収体重量の4倍にする。このまま試験布の上から3600g/10cm角の荷重(乳幼児のオムツに加わる荷重に相当)を3分間かけ、吸収体中の液の分布を一定化する。次いで、試験布の上にあらかじめ秤量した濾紙(HOLLINGSWORTH&VOSE.COMPANY製“ERT−MED”12.5cm角×2枚)を重ね速やかに3600g/10cm角を2分間かけ濾紙の重量増加を測定し、濡れ戻り量(g)を濡れ戻り指数とした。
【0028】
(3)45度傾斜流長(mm):
吸収体としてトイレットペーパーを10枚重ねて、その上に試験布を置き、45度傾斜板上にセットする。布の上方10mmの高さから0.1ccの生理食塩水を滴下する。滴下速度は3.3秒/25ccとした。吸収開始位置より終了までの生理食塩水が流れ落ちた距離を45度傾斜流長とした。これを瞬間透水性の指標とする。
(4)耐久透水指数:
吸収体としてトイレットペーパーを10枚重ねて、その上に試験布を置く。更にその上に直径1.5cmの穴を10箇所開けたステンレス製の板を試験布に置き、それぞれの穴から布に生理食塩水0.3ccを滴下し、10秒以内に吸収される穴の数(A)を数える。更に3分間経過後、同様のことを繰り返す。これを3回行い、3回目に滴下した生理食塩水が10秒以内に吸収された穴の数(B)を数え、B/Aで割合(%)を求める。
【0029】
(5)濡れ張力:
綿棒に浸した濡れ指数標準液(ナカライテスク株式会社製:商品名)を不織布表面に滴下し、2秒経過後に不織布表面上に拡がり、液膜の残らない状態をその不織布の濡れ張力(表面張力)(mN/m)とした。
(6)厚み:
試験片に100g/cm2 の荷重をかけた場合の試料の厚み(mm)。
(7)細胞毒性試験(IC50):
チャイニーズ・ハムスター由来のV79細胞を用いるコロニー形成法により、水抽出液2.0〜100%の濃度範囲で検討し、コロニー形成を50%阻害する濃度(%)をIC50とする。抽出条件および処理条件等は「医療用具の製造(輸入)承認申請に必要な生物学的安全性試験の基本的な考え方について」(平成15年2月13日、医薬審発第0213001号)および「生物学的安全性試験の基本的考え方に関する参考資料について」(平成15年3月19日、医療機器審査No.36)に準拠して実施する。
【0030】
具体的には、以下のとおりである。
(I)被験物質:被験物質である不織布をEOG滅菌(40℃で6時間)した後、7日間以上のばっ気を行う。
(II)細胞:V79細胞はJCRB細胞バンクより1988年9月に入手した。入手した時点で5代のものを、さらに14代まで継代して凍結保存(マイコプラズマ陰性)した。これを解凍後5代で試験に用いた。培養は、ウシ胎児血清(Moregate BioTech)を10vol%含むEagle ’s MEM培地(MEM10培地)を用い、CO2 インキュベーター(CO2 濃度5%、37℃)内で培養した。但し、培養抽出液を用いた細胞毒性試験においては、ウシ胎児血清(5vol%)およびピルビン酸ナトリウム(1mmol/l)を含むEagle ’s MEM培地(MEM5培地)を用いた。
【0031】
(III )抽出液を用いた細胞毒性試験:被験物質0.1gに対して1mlの割合になるよう滅菌済み超純水を加え、37℃、5%CO2 インキュベーターに24時間静置して水抽出したものを用いてM05培地を調整し、これを100%抽出液とした。すなわち、Eagle ’s MEM培地9.6g/lの割合で水抽出液に溶解し、10%炭酸水素ナトリウム溶液(22ml/l)および100mMピルビン酸ナトリウム溶液(10ml/l)を加え、濾過滅菌した後に、ウシ胎児血清を5vol%加えた。対照材料については、高密度ポリエチレンフィルム、0.1%ZDEC含有ポリウレタンフィルム、および0.25%ZDBC含有ポリウレタンフィルムに、0.1g/mlの割合になるようM05培地を37℃、5%CO2 インキュベーターに24時間静置して抽出したものを抽出濃度100%の培地抽出原液とした。これらの抽出原液をM05培地で希釈し、濃度の異なる試験液(被験物質:2.0、5.0、10、20、50、100%、高密度ポリエチレンフィルム:25、50、75、100、0.1%ZDEC含有ポリウレタンフィルム:0.25、0.5、1.0、2.0、3.0、4.0%および0.25%ZDBC含有ポリウレタンフィルム:20、40、50、60、80、100%)を調整した。V79細胞は0.25%トリプトシンを用いて単離した後、細胞濃度103 個/mlの懸濁液とし、この細胞懸濁液0.1ml(100個)を2mlの培地の入っている6ウェルプレート(ウェル直径:35mm)に分注した。翌日、ウェル内の培地を除き、各濃度の試験液および新鮮なM05培地(陰性対照)と交換し、6日間培養した。培養後、培地を除き、メタノールで固定し、10vol%ギムザ液で染色した。ウェルあたりのコロニー数を多目的高速画像解析装置(Model No.:PCA-11、システムサイエンス)で計測し、3ウェルあたりの平均値を求め、陰性対照群(新鮮なM05培地)と比較して各処理群の相対コロニー形成率を算出し、IC50値(コロニー形成を50%阻害する濃度、コロニー形成率50%を挟む2点を通る直線式より算出)を求めた。1用量あたり3ウェルを用いた。
【0032】
<不織布(A)の調整1:>
65mmの押出機でメルトフローレート(MFR)が38のポリプロピレンを押出温度240℃にて1300g/min を定量的に押出し、1540ホールの紡糸口金を用いてフィラメント群を紡出し、これを高速気流牽引装置を使用して3000m/min の速度で牽引し、移動する吸引装置の付いた金網製ウェブコンベアに受けてウエブを作った。このウエブを搬送し、彫刻ロールと平滑ロールを組み合わせた熱圧着ロールにて上下ロール共135℃且つ60kg/cmの圧力で部分圧着して、単糸デニール2.5dtex、目付20g/m2 のスパンボンド不織布(PP不織布)を得た。
<不織布(B)の調整2:>
不織布(A)と同様に押出したポリプロピレンを同ホールのV型異形紡孔を配置した紡糸口金を用いてV型断面フィラメント群を紡出し、これを(A)と同様に牽引して、異形断面糸偏冷却効果で捲縮したフィラメント群からなるウエブを作った。このウエブを(A)と同様に熱圧着して、単糸デニール2.5dtex、目付20g/m2 のスパンボンド不織布(捲縮PP不織布)を得た。
【0033】
<不織布(C)の調整3:>
65mmの押出機でメルトフローレート(MFR)が38のポリプロピレンを押出温度240℃にて1300g/min を定量的に押出し、1540ホールの紡糸口金を用いてフィラメント群を紡出し、これを高速気流牽引装置を使用して3000m/min の速度で牽引し、移動する吸引装置の付いた金網製ウェブコンベアに受けてウエブを作った。このウエブを搬送し、彫刻ロールと平滑ロールを組み合わせた熱圧着ロールにて上下ロール共135℃且つ60kg/cmの圧力で部分圧着した後、室温22℃の雰囲気化にて放電量45W・min/m2 (放電度4.0W/cm2 )の条件でコロナ放電処理を行い、濡れ張力39mN/m、単糸デニール2.5dtex、目付20g/m2 のスパンボンド不織布(PP不織布)を得た。
【0034】
(実施例1)
前記PP不織布(A)(目付20g/m2 )に、ヘキサグリセリンモノステアリン酸エステル40重量%、ポリエーテル変性シリコーンである一般式2のポリエーテル変性シリコーンにおいて、a=22、b=3、c=3、d=23、R4 =C2 4 、R5 =n−C4 9 45重量%、ポリオキシアルキレンひまし油エーテル15重量%との混合物からなる処理剤の1%水溶液を噴霧法により付与し、乾燥して不織布に対して0.5重量%の処理剤を不織布に付与した。得られた不織布の吸収速度は2.0(秒)であり、濡れ戻り指数は0.13gであり、45度傾斜流長は23mmであり、耐久透水指数は80(%)であった。得られた結果を表2に示す。瞬間透水性、耐久性に優れ、また、濡れ戻り量も肌に感じないレベルであった。
【0035】
(比較例1〜3)
処理剤として、ヘキサグリセリンモノステアリン酸エステルとポリエーテル変性シリコーンとポリオキシアルキレンひまし油エーテルとを併用せず、個々の成分を用いた以外は実施例1と同様にして、処理剤で処理したPP不織布を得た。得られたPP不織布の実施例1と同様に各種物性を測定した。得られた結果を表2に示す。ヘキサグリセリンモノステアリン酸エステルでは、濡れ戻り性は優れるものの瞬間透水性や耐久透水性が悪く、また、ポリエーテル変性シリコーンでは、瞬間透水性や耐久透水性は優れるものの濡れ戻り性が悪く、ポリオキシアルキレンひまし油エーテルでは、濡れ戻り性や耐久透水性は優れるものの、瞬間透水性が悪いものであった。
【0036】
(比較例4)
処理剤として、ヘキサグリセリンモノステアリン酸エステル70重量%とポリエーテル変性シリコーン30重量%との混合物からなる処理剤を用いた以外は実施例1と同様にして、処理剤で処理したPP不織布を得た。得られたPP不織布を実施例1と同様に各種物性を測定した。得られた結果を表2に示す。濡れ戻り性は優れるものの、瞬間透水性、耐久透水性に劣るものであった。
(比較例5)
処理剤として、ヘキサグリセリンモノステアリン酸エステル60重量%とポリオキシアルキレンひまし油エーテル40重量%との混合物からなる処理剤を用いた以外は実施例1と同様にして、処理剤で処理したPP不織布を得た。得られたPP不織布を実施例1と同様に各種物性を測定した。得られた結果を表2に示す。濡れ戻り性は優れるものの、瞬間透水性、耐久透水性に劣るものであった。
【0037】
(比較例6)
処理剤として、ポリエーテル変性シリコーン60重量%とポリオキシアルキレンひまし油エーテル40重量%との混合物からなる処理剤を用いた以外は実施例1と同様にして、処理剤で処理したPP不織布を得た。得られたPP不織布を実施例1と同様に各種物性を測定した。得られた結果を表2に示す。耐久透水性は優れるものの、瞬間透水性、濡れ戻り性に劣るものであった。
(実施例2)
前記捲縮PP不織布(B)を用いた以外は実施例1と同様にして、処理剤で処理したPP不織布を得た。得られたPP不織布を実施例1と同様に各種物性を測定した。得られた結果を表2に示す。捲縮PP不織布では柔軟性に優れ、厚みもふっくらとしており、濡れ戻り性に優れた不織布を得た。
【0038】
(実施例3)
不織布(A)を用いて、処理剤に更にジメチロールラウリル酸アミドを20重量%添加した処理剤を2%水溶液にし、グラビアコーティング法によった以外は、実施例1と同様にして処理し、処理剤付与PP不織布を得た。得られた不織布を実施例1と同様に各種物性を測定した。得られた結果を表2に示す。布への浸透性も問題なく、瞬間透水性、耐久性、濡れ戻り量共に良好であった。
(実施例4)
処理剤に更にジメチラウリルアミンオキシドを20重量%添加した以外は、実施例3と同様に処理して、処理剤付与PP不織布を得た。得られた不織布を実施例1と同様に各種物性を測定した。得られた結果を表2に示す。実施例3同様に良好なものであった。
【0039】
(実施例5)
処理剤に更にジメチルラウリルアンモニウムホスフェートを20重量%添加した以外は、実施例3と同様に処理して、処理剤付与PP不織布を得た。得られた不織布を実施例1と同様に各種物性を測定した。得られた結果を表2に示す。実施例3同様に良好なものであった。
(実施例6)
濡れ張力が31mN/mのPP不織布(A)に、室温22℃の雰囲気化にて放電量45W・min/m2 (放電度4.0W/cm2 )の条件でコロナ放電処理し、濡れ張力40mN/mのPP不織布を得た。ヘキサグリセリンモノステアリン酸エステル36重量%、ポリエーテル変性シリコーン40重量%、ポリオキシアルキレンひまし油エーテル14重量%との混合物からなる処理剤に更にジメチロールラウリル酸アミドを10重量%添加した処理剤を2%水溶液にし、グラビアコーティング法によって付与し、乾燥して不織布に対して0.35重量%の処理剤を不織布に付与した。得られたPP不織布を実施例1と同様に各種物性を測定した。得られた結果を表2に示す。コロナ放電処理を行うことで、処理剤付着量が少なく、瞬間透水性、耐久透水性に一段と優れた不織布を得た。
【0040】
図1、2、3には、実施例のデータを指数化した衛生材料用途に要求される透水性能を示す。各指数については以下の通りである。
(I)耐久透水性=耐久透水指数1回目×2回目×3回目/1000
(II)瞬間透水性=5cc透水速度×45度傾斜流長
(III )濡れ戻り性=濡れ戻り指数×100
これらの図に示した様に、従来技術では瞬間透水性、耐久透水性、濡れ戻り性の全てにおいて満足した処理剤は無かったが、本発明では、それら全ての性能を高い性能レベルで実現し得る親水性処理剤であることが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明のポリオレフィン系長繊維不織布は、瞬間透水性、耐久透水性、濡れ戻り性の優れた透水性能を示し、安全性も良好であり、衛生材料として、幅広い用途に、好適に用いることができる。
【表1】

【表2】

【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施例1〜6、比較例1〜6の(I)耐久透水性−(II)瞬間透水性の関係を示す図である。
【図2】本発明の実施例1〜6、比較例1〜6の(III)濡れ戻り性−(II)瞬間透水性の関係を示す図である。
【図3】本発明の実施例1〜6、比較例1〜6の(III)濡れ戻り性−(I)耐久透水性の関係を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも下記のA成分、B成分及びC成分を含有し、3成分の構成割合が、A成分が15〜45重量%、B成分が20〜50重量%、C成分が5〜35重量%からなる処理剤を、0.2〜0.8重量%固定化してなることを特徴とする衛生材料用ポリオレフィン系長繊維不織布。
A成分:
一般式1で示される、水酸基の10〜85モル%をエステル化したグリセリン縮合物。
【化1】

(式中、R1 :炭素数7〜21アルキル基又はアルケニル基、R2 、R3 :水素又は炭素数7〜21アルカノイル基又はアルケノイル基、n=2〜12の整数。)
B成分:
一般式2で示されるポリエーテル変性シリコーン。
【化2】

(式中、R4 :エチレン基又はプロピレン基、R5 :水素或いは炭素数1〜12のアルコキシ基又はカルボキシ基、a=7〜100、b=1〜10、c=2〜100、d=20〜80。)
C成分:
オキシアルキレンが20〜45重量%であるポリオキシアルキレンひまし油エーテル又はポリオキシアルキレン硬化ひまし油エーテル。
【請求項2】
第4成分として、下記のD成分を(A成分+B成分+C成分)合計との重量比率で5/95〜30/70の割合で添加し、0.2〜0.8重量%固定化してなることを特徴とする請求項1に記載の衛生材料用ポリオレフィン系長繊維不織布。
D成分:
一般式3で示されるアルキロールアミド化合物。
【化3】

(式中、R=炭素数11〜17のアルキル基又はアルケニル基。)
【請求項3】
第4成分として、E成分を(A成分+B成分+C成分)合計との重量比率で5/95〜30/70の割合で添加し、0.2〜0.8重量%固定化してなることを特徴とする請求項1に記載の衛生材料用ポリオレフィン系長繊維不織布。
E成分:
一般式4で示されるアルキルアミノキシド化合物。
【化4】

(式中、R:炭素数11〜17のアルキル基。)
【請求項4】
第4成分として、F成分を(A成分+B成分+C成分)合計との重量比率で5/95〜30/70の割合で添加し、0.2〜0.8重量%固定化してなることを特徴とする請求項1に記載の衛生材料用ポリオレフィン系長繊維不織布。
F成分:
一般式5で示されるアルキルアンモニウムホスフェート化合物。
【化5】

(式中、R=炭素数8〜12のアルキル基。)
【請求項5】
ポリオレフィン系長繊維不織布がポリプロピレン長繊維不織布であることを特徴とする請求項1〜4に記載の衛生材料用ポリオレフィン系長繊維不織布。
【請求項6】
ポリオレフィン系長繊維不織布が捲縮を有するポリオレフィン系長繊維不織布であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の衛生材料用ポリオレフィン系長繊維不織布。
【請求項7】
長繊維不織布が部分的に熱圧着されてなることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の衛生材料用ポリオレフィン系長繊維不織布。
【請求項8】
長繊維不織布が少なくとも捲縮を有する層との積層体からなることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の衛生材料用ポリオレフィン系長繊維不織布。
【請求項9】
処理剤を付与する前のポリオレフィン系不織布にコロナ放電処理もしくは常圧プラズマ放電処理を行い、該不織布の濡れ張力を35〜55mN/mの範囲に処理した後、処理剤を繊維に固定化することを特徴とする請求項1〜8記載の衛生材料用ポリオレフィン系長繊維不織布。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−38277(P2008−38277A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−212745(P2006−212745)
【出願日】平成18年8月4日(2006.8.4)
【出願人】(303046303)旭化成せんい株式会社 (548)
【Fターム(参考)】