説明

衛生洗浄装置及びトイレ装置

【課題】外部からの給水の有無に基づいて水抜きを実行可能とした衛生洗浄装置及びこれを備えたトイレ装置を提供する。
【解決手段】吐水口から水を噴射する吐水ノズルと、給水源から供給される水を前記吐水ノズルに導く第1流路と、前記第1流路に設けられ、前記第1流路の通水を制御するノーマリクローズ型の第1流路開閉弁と、前記第1流路開閉弁と前記吐水ノズルとの間の前記第1流路に設けられ、通水された水を加熱する熱交換ユニットと、前記熱交換ユニットと前記吐水ノズルとの間の前記第1流路に設けられ、前記吐水ノズルへの給水を止水可能な止水弁と、前記第1流路開閉弁の上流側の前記第1流路と、前記第1流路開閉弁の下流側の前記第1流路と、を連結する第2流路と、前記第2流路に設けられ、前記給水源からの水の供給が低下すると閉状態から開状態に遷移する第2流路開閉弁と、を備えたことを特徴とする衛生洗浄装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛生洗浄装置及びトイレ装置に関し、より具体的には、例えば洋式腰掛便器に腰掛けた使用者の「おしり」などを水で洗浄する衛生洗浄装置及びこれを備えたトイレ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
衛生洗浄装置は、洗浄水を噴射する吐水ノズルを進退自在に収容し、腰掛便器の上に設置して使用者の「おしり」などを温水で洗浄することができる。このような衛生洗浄装置は、その内部に水路系を有するため、例えば、保守点検や、寒冷地において凍結を防ぐために、衛生洗浄装置の給水部の水抜きを行う必要がある。特許文献1には、ストレーナの清掃や水抜き等の保守点検が容易にできる給水部を有する衛生洗浄装置が開示されている。
【特許文献1】特開2001−132048号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、外部からの給水の有無に基づいて水抜きを実行可能とした衛生洗浄装置及びこれを備えたトイレ装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一態様によれば、吐水口から水を噴射する吐水ノズルと、給水源から供給される水を前記吐水ノズルに導く第1流路と、前記第1流路に設けられ、前記第1流路の通水を制御するノーマリクローズ型の第1流路開閉弁と、前記第1流路開閉弁と前記吐水ノズルとの間の前記第1流路に設けられ、通水された水を加熱する熱交換ユニットと、前記熱交換ユニットと前記吐水ノズルとの間の前記第1流路に設けられ、前記吐水ノズルへの給水を止水可能な止水弁と、前記第1流路開閉弁の上流側の前記第1流路と、前記第1流路開閉弁の下流側の前記第1流路と、を連結する第2流路と、前記第2流路に設けられ、前記給水源からの水の供給が低下すると閉状態から開状態に遷移する第2流路開閉弁と、を備えたことを特徴とする衛生洗浄装置が提供される。
【0005】
また、本発明の他の一態様によれば、便器と、上記の衛生洗浄装置と、を備えたことを特徴とするトイレ装置が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、外部からの給水の有無に基づいて水抜きを実行可能とした衛生洗浄装置及びこれを備えたトイレ装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の実施の形態にかかるトイレ装置の模式斜視図である。
このトイレ装置は、洋式腰掛便器950と、その上に設置された衛生洗浄装置10と、を有する。洋式腰掛便器950は、いわゆる「ロータンク式」のものでもよく、または水道などの給水源に直結されて洗浄水を流す「直圧式」のものでもよい。また、便器950の排水機構についても、いわゆるサイホン式のトイレであってもよく、排水弁を開いて排水するトイレであってもよく、または便器950に溜まった排水や汚物などを排水弁を開いて負圧側に排出する「真空式」のトイレであってもよい。
【0008】
便器950の上に設置された衛生洗浄装置10は、本体部12と、この本体部12に対して開閉自在に軸支された便座14及び便蓋16と、を備える。ただし便蓋16は、設けなくてもよい。本体部12からは、使用者のスイッチ操作などに応じて吐水ノズル410が便器950のボウル内に伸出し、その先端付近に設けられた吐水口から水を噴射して、使用者の「おしり」などを洗浄可能とされている。なお、本願明細書において「水」という場合には、冷水のみならず、加熱されたお湯も含むものとする。
【0009】
図2は、本発明の第1の実施形態の衛生洗浄装置10の水路系の構成を表すブロック図である。
衛生洗浄装置10は、水道や貯水タンクなどの給水源20に接続されノズルユニット400に至る第1流路110を有する。第1流路110の上流側には、まず止水栓112が設けられている。止水栓112は、手動による開閉が可能とされ、例えば、衛生洗浄装置10の取付・取り外しや保守点検の際などに水路を随時遮断することができる。なお、止水栓112は、衛生洗浄装置10に設けてもよく、または、衛生洗浄装置10とは別体の要素として水道などの給水源20の供給口の側に設けてもよい。
【0010】
止水栓112の下流には、ストレーナ114、調圧弁130、電磁開閉弁(第1流路開閉弁)120が設けられている。ストレーナ114は、例えば80メッシュ程度のフィルタであり、給水に混入した異物を除去する。調圧弁130は、給水圧が高い場合に、所定の圧力範囲に調整する役割を有する。電磁開閉弁120は、例えばノーマリクローズすなわち非通電時において閉状態となる電磁バルブであり、制御部(図7参照)からの指令に基づいて水の供給を制御する。
【0011】
電磁開閉弁120の下流には、安全弁140が設けられている。安全弁140は、水路の圧力が上昇した時に開いて、水を便器950のボウルに排出する。安全弁140を設けることにより、例えば調圧弁130の故障などによりその2次側の水路の圧力が上昇した場合でも、衛生洗浄装置10の内部に漏水が生ずることを防止できる。
【0012】
安全弁140の下流には、熱交換ユニット200が設けられている。熱交換ユニット200は、供給された水をヒータで加熱し、所定の温水にする。熱交換ユニット200の下流には、バキュームブレーカ210、逆止弁220、バキュームブレーカ230から、流調切替弁ユニット(止水弁)300を経てノズルユニット400が接続されている。逆止弁220は、水路の圧力が低下した場合などに、ノズルユニット400から水路への水の逆流を防止する。その前後に設けられたバキュームブレーカ210、230は、水路の水抜きの際に外部から空気を取り込んで、逆止弁220の1次側と2次側の水路の水抜きを促進させる。流調切替弁ユニット300は、ノズルユニット400に設けられている吐水ノズルやノズル洗浄室(図7参照)への給水の開閉や切替及び水勢の調整をする。なお、流調切替弁ユニット300の2次側に、水に脈動を与える脈動ユニットなどを設けてもよい。
【0013】
そして、本実施形態においては、流調切替弁ユニット300によって第1流路110を遮断可能としている。こうすることにより、ノズルユニット400に設けられた吐水ノズル410(図1参照)を使用していない状態において、吐水ノズル410の先端から水が排出されることを防止できる。
【0014】
また、本実施形態においては、以上説明した第1流路110の一部をバイパスする第2流路150が設けられ、この第2流路150に開閉弁(第2流路開閉弁)160が設けられている。図2に表した具体例の場合、第2流路150は、第1流路110のうちの、調圧弁130の1次側(上流側)と、電磁開閉弁120の2次側(下流側)と、を連結している。なお、第2流路150の接続箇所は、図2に表した具体例には限定されず、例えば、ストレーナ114の1次側に接続してもよい。また、例えば安全弁140の2次側に第2流路150を接続してもよい。
【0015】
第2流路150に設けられた開閉弁160は、その1次側(給水源に近い側)の水圧が高い場合には閉状態となり、1次側の水圧が低下すると開状態となる。開閉弁160としては、1次側から所定値以上の水圧を受けると閉状態に遷移する圧応動式の開閉弁を用いることができる。すなわち、給水源20から供給される水圧が所定値以上であれば、開閉弁160は閉状態となり、第2流路150は遮断される。従って、給水源20から供給された水は第1流路110を介してノズルユニット400に供給され、衛生洗浄装置10の通常の動作が可能となる。
【0016】
一方、給水源20から供給される水圧が低下すると、開閉弁160は開状態となる。すると、電磁開閉弁120の1次側と2次側とが連通される。すなわち、図2に矢印Aで表したように、第1流路110の電磁開閉弁120の2次側から第2流路150を介して第1流路110の電磁開閉弁120の1次側へ水抜きをすることができる。従って、電磁開閉弁120の2次側から逆止弁220までの区間に残留する水を第2流路150を介して給水源20の方向に排出できる。例えば、熱交換ユニット200に貯湯タンクを設けた場合には、700ミリリットル程度の水が残留していることもある。本実施形態によれば、このような残留水を第2流路150を介して確実且つ容易に排出できる。なお、本発明は貯湯タンクを用いたものには限定されず、いわゆる瞬間加熱式の熱交換機を有するものも包含する。
【0017】
ここで、本具体例においては、第2流路150を、調圧弁130の1次側と電磁開閉弁120の2次側とに接続している。このようにすると、開閉弁160に対して、給水源20からの1次圧と、調圧弁130により減圧された2次圧と、をそれぞれ印加することができる。従って、両者の圧力差を利用することにより、開閉弁160をより確実且つ円滑に動作させることが可能となる。
【0018】
なお、逆止弁220の2次側に残留する水は、ノズルユニット400の吐水口などから便器950のボウルに適宜排出される。この際にバキュームブレーカ230が空気を取り込むことにより、水抜きが促進される。
【0019】
本実施形態によれば、衛生洗浄装置10への電源の供給の有無に拘わらず、給水源20の水圧が低下した場合に、衛生洗浄装置10の水路に残留する水を給水源20の方向に排出することができる。つまり、使用者による水抜きの操作を必要とせず、また特別な排水機構を設ける必要もなく、すでに設けられている給水管を利用して水抜き排水処理を実行できる。
【0020】
例えば、寒冷地において衛生洗浄装置10への給水を停止した場合や、給水源20の凍結防止のために水抜きをした場合に、給水圧力の低下に対応して衛生洗浄装置10の水抜きを自動的に実行させることができる。つまり、使用者は衛生洗浄装置の止水栓や水抜き弁をわざわざ操作する必要がなく、給水源の停止あるいは水抜きのみを実行すればよく、使い勝手のよい衛生洗浄装置を提供できる。
【0021】
また、例えば、キャンピングカーや列車、航空機などに衛生洗浄装置を搭載した場合、これらを低温環境下で駐車・駐機する際には、給水源を停止させ、また電源の供給も停止する場合が多い。本実施形態によれば、このような場合でも、給水源の水圧の低下に対応して衛生洗浄装置の水抜きを自動的に実行させることができる。従って、これらの場合にもやはり、使用者は衛生洗浄装置の止水栓や水抜き弁をわざわざ操作する必要がなく、給水源の停止や水抜きのみを実行すればよく、使い勝手のよい衛生洗浄装置を提供できる。
【0022】
図3は、本実施形態の衛生洗浄装置10の変型例を表すブロック図である。
本変型例においては、第2流路150は、調圧弁130と電磁開閉弁120との間に接続されている。例えば、調圧弁130の1次側から2次側への水抜きが良好な場合には、図2に関して前述した具体例により、第1流路110の全体の水抜きを円滑に実行できる。一方、調圧弁130の1次側から2次側への水抜きがあまりよくないが、2次側から1次側への水抜きは良好な場合には、図3に表した変型例により、電磁開閉弁120の2次側の水抜きを確実に実行できる。
【0023】
図4は、本実施形態において用いることができる開閉弁160の構造を例示する模式断面図である。
本具体例の開閉弁160は、ハウジング172と、その内部に収容された受圧体173と、受圧体173に接続され図中において矢印A及びBの方向に移動可能に支持された主弁174と、を有する。受圧体173は、例えば略ドーナツ状のダイヤフラムの形態を有する。そして、受圧体173の周縁部173Eは、ハウジング172に対して液密に固定されている。一方、受圧体173の中央付近は、上下からプレート176A、176Bにより狭持され、ナット177により主弁174に固定されている。つまり、受圧体173は、その周囲をハウジング172に支持された状態で、主弁174を矢印A及びBの方向に移動可能に支持している。
【0024】
一方、ハウジング172は、電磁開閉弁120の1次側に接続される第1接続口172Aと、電磁開閉弁120の2次側に接続される第2接続口172Bと、を有する。ハウジング172の中には、第1接続口172Aと第2接続口172Bとを連通する弁内流路172Rが形成されている。
【0025】
弁内流路172Rは、主弁174により開閉可能とされている。主弁174には、ハウジング172のシール面172Sとの当接部の液密にシールするパッキン174Sが設けられている。図4は、主弁174が矢印Bの方向に移動して開いた状態を表す。すなわち、主弁174のパッキン174Sは、ハウジング172のシール面172Sから離れている。この状態においては、弁内流路172Rが開かれている。また、主弁174は、バネ175により矢印Bの方向に付勢されている。
【0026】
一方、ダイヤフラム状の受圧体173は、その一方の面がハウジング内の弁内流路172Rに露出するように設けられている。また、受圧体173の他方の面は、大気側に開放されている。つまり、受圧体173は、弁内流路172Rの一部を構成する要素として設けられている。弁内流路172Rに水が流れ込むと、受圧体173には、弁内流路172Rの水の圧力と、大気圧と、の差圧が負荷される。
【0027】
図5は、開閉弁160の動作を説明するための模式図である。
図5(a)は、第1接続口172Aに所定の水圧が付加された状態を表す。すなわち、図2及び図3に関して前述した具体例において、給水源20から所定の水圧が供給されている場合に相当する。この時、受圧体173は、給水源20から供給される水圧と大気圧との差圧により、バネ175の付勢力に対抗して矢印Aの方向に主弁174を移動させる。すると、主弁174のパッキン174Sがハウジングのシール面172Sに圧接する。その結果として、弁内流路172Rは閉状態となり、第2流路150は遮断される。つまり、図2及び図3に関して前述したように、通常の使用状態となり、給水源20から供給された水は第1流路110を介してノズルユニット400に供給される。主弁174が弁内流路172Rを遮断するために必要な水圧は、衛生洗浄装置10の動作に必要とされる水圧に対応させればよく、例えば、0.05メガパスカル(MPa)程度に設定することができる。
【0028】
一方、図5(b)は、供給水圧が低下した場合を表す。すなわち、給水源20から供給される水圧が低下すると、受圧体173にかかる大気圧との差圧が低下する。すると、バネ175の付勢力により主弁174が矢印Bの方向に移動する。すると、弁内流路172Rが開状態となる。その結果として、図2及び図3に関して前述した第2流路150が開かれる。つまり、供給水圧が低下すると、第2流路150が自動的に開いて、逆止弁220(図2及び図3参照)までの水路の水を給水源20の方向に抜くことができる。
【0029】
図6は、開閉弁160の具体例を表す模式図である。
図6(a)は、バネ175を取り除いた状態を表す。本具体例の場合、例えば、受圧体173をゴムなどからなるダイヤフラムにより形成することができる。そして、バネ175による付勢力が作用しない状態で、受圧体173の弾性力F1により主弁174が閉じた状態となるようにする。
一方、図6(b)は、バネ175を設けた状態を表す。バネ175による付勢力F2が受圧体173に作用する。バネ175の付勢力F2が受圧体173の弾性力(反力)F1よりも大きくなるようにすれば、図6(b)に表したように、主弁174は閉じた状態となる。
【0030】
図6(c)は、弁内流路172Rに水が供給された状態を表す。弁内流路172Rに水が供給されると、受圧体173には、この水圧と、大気圧と、の差圧による力F3が作用する。この力F3は、受圧体173に作用する差圧と受圧体173の受圧面積との積に相当する。受圧体173の弾性力(反力)F1と、差圧による力F3と、の和が、バネ175の付勢力F2よりも大きくなれば、図6(c)に表したように、主弁174を閉じることができる。
【0031】
ここで、主弁174が閉じた状態においては、受圧体173に対して主弁174を閉じさせる方向の水圧が印加されるが、主弁174のパッキン174Sに対しては、主弁174を開く方向の水圧が印加される。従って、力F3を評価する際に、主弁174が閉じた状態での主弁174の受圧面積を差し引いて評価してもよい。
【0032】
本発明者の試作の結果によれば、受圧体173の弾性力(反力)F1と、バネ175の弾性力F2と、のバランスを調節することにより、例えば、弁内流路172Rの水圧が8キロパスカル程度になると主弁174を安定的に閉じることができた。つまり、微小な水圧により主弁174を確実に閉じることが可能である。
【0033】
なお、本実施形態は、これら具体例には限定されない。例えば、バネ175を設けず、受圧体173の弾性力のみによって水圧が所定値以下の場合に主弁174を開くようにしてもよい。また、受圧体173により主弁174を開く方向の弾性力を作用させ、一方バネ175により主弁174を閉じる方向の付勢力を作用させ、これらのバランスにより、弁内流路172Rの水圧が所定値以下であれば、主弁174が開くようにすることもできる。
【0034】
以上、図4乃至図6に関して前述した開閉弁160によれば、例えば電気的な水圧センサや電磁開閉弁を用いることなく第2流路150を開閉できる。つまり、衛生洗浄装置10に対する電源の供給停止や停電に左右されることなく衛生洗浄装置10の水抜きを確実且つ容易に実行できる。
さらに、本実施形態の開閉弁160は、第1接続口172Aに印加される水圧により主弁174を確実に閉じることができる。すなわち、弁内流路172Rを水が流れる必要は必ずしもなく、第1接続口172Aに水圧がかかれば確実に閉じることができる点で有利である。
【0035】
次に、流調切替弁ユニット300を用いて第1流路110を遮断する具体例について説明する。
図7は、本実施形態にかかる衛生洗浄装置のブロック図である。
同図については、図1乃至図6に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
図2及び図3に関して前述したように、第1流路110に、調圧弁130と、電磁弁120と、熱交換ユニット200と、流調切替弁ユニット300と、ノズルユニット400と、が設けられている。なお、図2及び図3に関して前述した止水栓112、ストレーナ114、バキュームブレーカ210、230、安全弁140、逆止弁220なども適宜設けることができる。
【0036】
ノズルユニット400には、吐水ノズル410と、これを伸出・後退させるノズルモータ480と、吐水ノズル410の外周に水を噴射してその胴体を洗浄するノズル洗浄室490と、が設けられている。これら各要素の動作は、制御部500により制御される。また、制御部500には、便座14に使用者が座っていることを検知する着座センサ600からの信号や、リモコンなどによるスイッチ操作の情報などが入力される。
【0037】
そして、本実施形態においては、吐水ノズル410を使用していない時に、吐水ノズル410の吐水口412から水が流れ出ることを防止する。
例えば、何らかの原因により、給水源20からの給水圧力が標準的な圧力よりも低く、開閉弁160の主弁174が完全に閉じないような場合があり得る。開閉弁160の主弁174が完全に閉じないと、電磁弁120が閉じられた状態であっても、第2流路150を介して熱交換ユニット200、流調切替弁ユニット300に水が供給される。このような場合、流調切替弁ユニット300が開いていると、吐水ノズル410の吐水口412などから水が流出することもあり得る。つまり、衛生洗浄装置10に電源を投入していない状態や、吐水ノズル410からの吐水を実行していない状態において、吐水ノズル410の吐水口412から水が排出されることがあり得る。
【0038】
そこで、本実施形態においては、吐水ノズル410からの吐水や、ノズル洗浄室490でのノズル洗浄などを実行していない時には、吐水ノズル410及びノズル洗浄室490の一次側の流路を遮断する。具体的には、例えば、流調切替弁ユニット300の前後いずれかに遮断弁を設けて、吐水ノズル410からの吐水や、ノズル洗浄室490でのノズル洗浄などを実行していない時には、制御部500がこの遮断弁を閉じるようにすればよい。
【0039】
または、流調切替弁ユニット300において、吐水ノズル410からの吐水や、ノズル洗浄室490でのノズル洗浄などを実行していない時には、流路を閉じるようにすればよい。以下、この具体例について説明する。
【0040】
図8は、本実施形態の衛生洗浄装置10において実行される動作を例示するタイミングチャートである。図8においては、電磁弁120と、吐水ノズル410からの吐水状態と、流調切替弁ユニット300の動作状態と、をそれぞれ表した。
【0041】
本実施形態においては、衛生洗浄装置10に電源が投入されていない状態、及び電源が投入され着座センサ600(図7)が使用者の着座を検知していない状態においては、流調切替弁ユニット300は、閉じられた状態にある。つまり、吐水ノズル410とノズル洗浄室490への流路は遮断されている。一方、衛生洗浄装置10に電源が投入され、着座センサ600(図7)が使用者の着座を検知している状態においては、流調切替弁ユニット300は、吐水ノズル410やノズル洗浄室490への流路を必要に応じて開き、これらに供給する水の流量を調整する。
【0042】
図8に表した具体例について説明すると、待機状態においては流調切替弁ユニット300は閉じた状態にある(S0)。つまり、吐水ノズル410とノズル洗浄室490への流路は遮断されている。
そして、着座センサ600が使用者の着座を検知する(S1)と、流調切替弁ユニット300は流路を開いて流量を調整し(S2)、ノズル洗浄室490での吐水ノズル410のセルフクリーニングを実行する(S3)。ここで、便座に座った使用者が、リモコン700(図7参照)の「おしり」、「やわらか」、「ビデ」などのスイッチを操作すると(S4)、セルフクリーニングの後に、流調切替弁ユニット300は流路を遮断する(S5)。そして、吐水ノズル410を所定の位置まで進出させた(S6)後に、流量を所定値に調整し(S7)、電磁弁120を開いて吐水を開始して流量をさらに調整し(S8)、そのまま所定の流量で吐水をする(S9)。
【0043】
そして、使用者がリモコン700の「止」や「乾燥」スイッチを操作する(S10)と、電磁弁120を閉じて流路の水の圧力を低下させ(S11)、流調切替弁ユニット300は流路を遮断する(S12)。そして、吐水ノズル410を収納した(S13)後に、流調切替弁ユニット300は流量を調整して(S14)、ノズル洗浄室490での吐水ノズル410のセルフクリーニングを実行する(S15)。
ここで、使用者が便座から立ち上がり、着座センサ600が非検知となる(S16)と、流調切替弁ユニット300は流路を遮断(S17)し、待機状態となる(S0)。つまり、吐水ノズル410とノズル洗浄室490への流路は遮断される。
以上説明したように、本実施形態によれば、吐水ノズル410やノズル洗浄室490から吐水させていない状態においては、流調切替弁ユニット300は流路110を遮断する。このようにすれば、例えば、何らかの原因により、給水源20からの給水圧力が標準的な圧力よりも低く、開閉弁160の主弁174が完全に閉じないような場合であっても、第2流路150を流れた水が吐水ノズル410やノズル洗浄室490から排出されることを確実に阻止できる。
【0044】
また、本実施形態においては、流調切替弁ユニット300により流路110を閉じた状態とするので、給水源20から水の供給が開始された時に、第2流路に設けられた開閉弁160にも水が流れにくい。これに対して、図4〜図6に関して前述した開閉弁160は、水の流れを必要とせず、第1接続口172Aにかかる水圧のみで確実に主弁174が閉じる。つまり、流調切替弁ユニット300により流路110を閉じた状態としても、給水に応じて第2流路150の開閉弁160を確実に閉じることができる。
【0045】
以上説明した具体例においては、流調切替弁ユニット300を用いて第1流路110を遮断するが、本発明はこれには限定されない。すなわち、前述したように流調切替弁ユニット300とは別に設けた遮断弁を止水弁として用いて、吐水ノズル410やノズル洗浄室490に至る流路を遮断可能としても同様の作用効果が得られ、これも本発明の範囲に包含される。
【0046】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
図9は、本発明の第2の実施の形態にかかる衛生洗浄装置のブロック図である。同図についても、図1乃至図8に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
本実施形態においては、第1流路110に供給検出部550が設けられ、衛生洗浄装置10への給水の状態を検出可能とされている。具体的には、供給検出部550としては、例えば、給水源20から供給される1次圧を検出可能な水圧センサを用いることができる。ただし、供給検出部550は水圧センサには限定されず、また、その配置についても、電磁弁120の1次側には限定されない。すなわち、衛生洗浄装置10に対する給水の状態を検出できればよい。制御部500は、供給検出部550からの信号に基づいて衛生洗浄装置10への給水状態を判定することができる。
【0047】
そして、本実施形態においても、電磁弁120の1次側と2次側をバイパスする第2流路150が設けられ、開閉弁160が設けられている。これら第2流路150及び開閉弁160については、第1実施形態に関して前述したものと同様である。
【0048】
図10は、本実施形態の衛生洗浄装置10の動作を表すフローチャートである。
すなわち、衛生洗浄装置10に電源が投入され、運転が開始されると(ステップS110)、供給検出部550が衛生洗浄装置10に対する水の供給状態を判定する(ステップS120)。例えば、供給検出部550が水圧センサである場合には、給水源20から供給される水の1次圧あるいは調圧弁130により減圧された後の2次圧を測定する。そして、その測定値が所定値以上である場合には、運転と測定を継続する(ステップS120:YES)。一方、供給量が所定値を下回った場合(ステップS120:NO)には、運転を停止する(ステップS130)。すなわち、熱交換ユニット200や流調切替弁ユニット300、ノズルユニット400などの動作を停止させ、逆止弁220(図2及び図3参照)の1次側の水抜きが可能な状態とする。
【0049】
しかる後に、開閉弁160が開き(ステップS140)、第2流路150を介して水抜きが実行される(ステップS150)。この動作は、第1実施形態に関して前述した如くである。
【0050】
本実施形態によれば、供給水圧の低下に伴って開閉弁160が開き水抜きが実行される前に、あるいは同時に衛生洗浄装置10の運転を停止できる。従って、例えば、第2流路150を介した水抜きが開始され熱交換ユニット200に設けられた空焚き防止センサが水位の低下を検出するよりも前に、供給検出部550により水の供給の低下を検出して熱交換ユニット200のヒータなどを停止できる。
【0051】
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。
図11は、本発明の第3の実施の形態にかかる衛生洗浄装置のブロック図である。同図についても、図1乃至図10に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
本実施形態においても、第2実施形態と同様に供給検出部550が設けられている。また、本実施形態においても、電磁弁120の1次側と2次側をバイパスする第2流路150が設けられ、開閉弁160が設けられている。これら第2流路150及び開閉弁160については、第1及び第2実施形態に関して前述したものと同様である。
【0052】
そして、本実施形態においては、第2流路150にさらに遮断弁180が設けられている。遮断弁180は、制御部500からの制御により開閉され、開閉弁160を介した水抜きを許可・禁止する役割を有する。すなわち、第2流路150を介した水抜きを実行させても良い場合には遮断弁180を開き、実行させたくない時には遮断弁180を閉じればよい。
【0053】
図12は、本実施形態の衛生洗浄装置10の動作を表すフローチャートである。
運転開始(ステップS110)から開閉弁160が開くまで(ステップS140)のステップは、図9に関して前述したものと同様である。ただし、ステップS140に至るまでの間に、使用者のスイッチ操作などが適宜実行され、遮断弁180は、開かれた状態と閉じられた状態のいずれかとされている。
【0054】
遮断弁180が開かれた状態にある場合には、開閉弁160が開くと、第2流路150を介した水抜きが実行される(ステップS150)。一方、遮断弁180が閉じられた状態にある場合には、開閉弁160が開いても、第2流路150を介した水抜きは実行されない(ステップS160)。
【0055】
例えば、トイレに設置されている衛生洗浄装置10を取り外す時、衛生洗浄装置10に接続されているトイレの止水栓を閉めて、衛生洗浄装置10への配水管を止水栓から切り離す場合が多い。トイレの止水栓を閉めると供給水圧が低下するので、開閉弁160が開き、第2流路150を介して水抜きが開始される状態となる。しかし、この時、トイレの止水栓は閉まっているので水は排水されない。この水は、衛生洗浄装置10への配水管を止水栓から切り離した時に、配水管から溢れでることとなる。そこで、このような場合に、遮断弁180を閉じておくことにより、水抜きを禁止して配水管からの漏水を防止できる。
【0056】
止水栓から配水管を切り離してバケツなどに導いた後に遮断弁180を開けば、トイレの床に水をこぼすこともなく、衛生洗浄装置10の内部に残留した水をバケツなどに排水できる。
【0057】
また、本実施形態においては、遮断弁180としてノーマリオープン型の開閉弁を用いると、電源を遮断した時には第2流路150を介して確実に水抜きできる。従って、電源を遮断した後に、衛生洗浄装置10の内部に水が閉じ込められることを防止できる。例えば、上述の如くトイレに設置されている衛生洗浄装置10を取り外す場合には、電源を投入した状態で止水栓から配水管を切り離してバケツなどに導いた後に電源を遮断すると、ノーマリオープン型の遮断弁180が自動的に開いて衛生洗浄装置10の内部に残留した水をバケツなどに排水できる。
【0058】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、図1乃至図12に関して前述した各具体例が有する特徴は、技術的に可能な範囲において適宜組み合わせることができ、これらも本発明の範囲に包含される。
例えば、図7、図9あるいは図11に表した具体例において、第2流路150の接続箇所を図3に表したように変更することもでき、これらの変型例も本発明の範囲に包含される。
【0059】
また、衛生洗浄装置の構造や、その初期化動作の内容についても、図1乃至図12に関して前述したものには限定されず、当業者が適宜設計変更することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができるものも本発明の要旨を含む限り、本発明の範囲に包含される。例えば、吐水ノズルは、水圧により進退するものであってもよく、あるいはひとつあるいは複数のシリンダ体の内部にスライド可能とされた多段式の構造を有するものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施の形態にかかるトイレ装置の模式斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の衛生洗浄装置10の水路系の構成を表すブロック図である。
【図3】本実施形態の衛生洗浄装置10の変型例を表すブロック図である。
【図4】本実施形態において用いることができる開閉弁160の構造を例示する模式断面図である。
【図5】開閉弁160の動作を説明するための模式図である。
【図6】開閉弁160の具体例を表す模式図である。
【図7】本実施形態にかかる衛生洗浄装置のブロック図である。
【図8】本実施形態の衛生洗浄装置10において実行される動作を例示するタイミングチャートである。
【図9】本発明の第2の実施の形態にかかる衛生洗浄装置のブロック図である。
【図10】第2実施形態の衛生洗浄装置10の動作を表すフローチャートである。
【図11】本発明の第3の実施の形態にかかる衛生洗浄装置のブロック図である。
【図12】第3実施形態の衛生洗浄装置10の動作を表すフローチャートである。
【符号の説明】
【0061】
10 衛生洗浄装置、 12 本体部、 14 便座、 16 便蓋、 20 給水源、110 第1流路、112 止水栓、114 ストレーナ、120 電磁開閉弁、130 調圧弁、140 安全弁、150 第2流路、150 開閉弁、160 開閉弁、172 ハウジング、172A 接続口、172B 接続口、172R 弁内流路、172S シール面、173 受圧体、173E 周縁部、174 主弁、174S パッキン、175 バネ、176A、176B プレート、177 ナット、180 遮断弁、200 熱交換ユニット、210 バキュームブレーカ、220 逆止弁、230 バキュームブレーカ、300 流調切替弁ユニット(止水弁)、400 ノズルユニット、410 吐水ノズル、412 吐水口、480 ノズルモータ、490 ノズル洗浄室、500 制御部、550 供給検出部、600 着座センサ、700 リモコン、950 便器、950 洋式腰掛便器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐水口から水を噴射する吐水ノズルと、
給水源から供給される水を前記吐水ノズルに導く第1流路と、
前記第1流路に設けられ、前記第1流路の通水を制御するノーマリクローズ型の第1流路開閉弁と、
前記第1流路開閉弁と前記吐水ノズルとの間の前記第1流路に設けられ、通水された水を加熱する熱交換ユニットと、
前記熱交換ユニットと前記吐水ノズルとの間の前記第1流路に設けられ、前記吐水ノズルへの給水を止水可能な止水弁と、
前記第1流路開閉弁の上流側の前記第1流路と、前記第1流路開閉弁の下流側の前記第1流路と、を連結する第2流路と、
前記第2流路に設けられ、前記給水源からの水の供給が低下すると閉状態から開状態に遷移する第2流路開閉弁と、
を備えたことを特徴とする衛生洗浄装置。
【請求項2】
前記第2流路開閉弁は、
前記第1流路開閉弁の前記上流側に接続される第1接続口と、前記第1流路開閉弁の前記下流側に接続される第2接続口と、前記第1接続口と前記第2接続口とを連通する弁内流路と、が設けられたハウジングと、
前記ハウジング内に収容され、前記弁内流路の水圧を一方の主面で受ける受圧体と、
前記ハウジング内において前記受圧体と連動し前記弁内流路を遮断可能に支持された主弁と、
を有し、
前記第1の接続口に付加される水圧が上昇すると前記受圧体が水圧を受け前記主弁を連動させて前記弁内流路を遮断し、
前記第1の接続口に付加される水圧が低下すると前記主弁が前記弁内流路を開くことを特徴とする請求項1記載の衛生洗浄装置。
【請求項3】
前記第2流路開閉弁は、前記弁内流路を開くように前記主弁を付勢する付勢手段をさらに有することを特徴とする請求項2記載の衛生洗浄装置。
【請求項4】
前記受圧体は、他方の主面が大気に臨むように設けられていることを特徴とする2または3に記載の衛生洗浄装置。
【請求項5】
前記熱交換ユニットの下流側の前記第1流路に設けられ、前記吐水ノズルから前記熱交換ユニットへの水の流れを阻止する逆止弁をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の衛生洗浄装置。
【請求項6】
前記給水源からの水の供給を検出する供給検出部と、
前記供給検出部から出力された前記検出の結果に基づいて、前記給水源からの水の供給が低下した時に、前記熱交換ユニット及び前記吐水ノズルの動作を停止させる制御部と、
をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の衛生洗浄装置。
【請求項7】
便器と、
請求項1〜6のいずれか1つに記載の衛生洗浄装置と、
を備えたことを特徴とするトイレ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−285838(P2008−285838A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−129902(P2007−129902)
【出願日】平成19年5月15日(2007.5.15)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】