説明

衛生洗浄装置

【課題】広範囲に飛散しやすい男子小用による便器の汚れを低減させる衛生洗浄装置を提供する。
【解決手段】洗浄水を噴出する複数の噴出口31と前記噴出口に洗浄水を供給する流路28を有するノズル本体22と、ノズル本体22の少なくとも一部を覆いノズル本体22の噴出口31に対応する噴出開口36を有する筒状のノズルカバー23と、前記ノズル本体22とノズルカバー23を洗浄するノズル洗浄手段と、ノズルガイド19を有するノズル装置15と、便器10内に放尿標的を表示する標的表示手段70を備えることにより、男子小用時に便器外への尿の飛散が抑制できトイレ空間を清潔に維持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便器内に男子小用時の放尿標的を表示するための標的表示手段を備えた衛生洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来この種の衛生洗浄装置は、局部を洗浄するための洗浄水を噴出するノズル装置の側方に標的表示手段を設置し、便器の斜め後方より便器の略中央部に向けて光を照射し放尿標的を投影表示するものである(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図28は、特許文献1に記載された従来の衛生洗浄装置を示す平面図である。図28に示すように、便器1の後方上面に設置した衛生洗浄装置2の本体3の中央にはノズル装置4が設置してあり、ノズル装置4の側方に標的表示手段5が設置してあり、標的表示手段5から照射された光により便器1の中央に放尿標的6を投影表示している。
【特許文献1】特開平6−336754号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の衛生洗浄装置では、ノズル装置と標的表示手段を横方向に並べて設置してあり、標的表示手段から投影表示される放尿標的は便器の形状により位置がずれ、便器の横方向の中心に表示されないことがあり、放尿標的に向かって放尿した場合尿が便器の外に飛散することがある。この課題を解決するためには標的表示手段に投影方向を調節する調節機能を付加することが必須用件となり、構造の複雑さとコストの高騰につながる。
【0005】
特に、お尻洗浄ノズルとビデ洗浄ノズルの2本を備えた高機能のノズル装置を使用した場合は、標的表示手段の設置位置が横方向に大きくずれるため投影した放尿標的の表示位置がずれるとともに、放尿標的の形状が歪むという課題をあわせて有していた。
【0006】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、1本のノズルで複数の洗浄機能を備えた高機能で且つ小型のノズル装置と標的表示手段を組み合わせて配置することにより、標的表示手段の構造の簡素化と放尿標的の歪みの低減を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
洗浄水を噴出する複数の噴出口と前記噴出口に洗浄水を供給する流路を有するノズル本体と、ノズル本体の少なくとも一部を覆いノズル本体の噴出口に対応する噴出開口を有する筒状のノズルカバーと、前記ノズル本体とノズルカバーを洗浄するノズル洗浄手段と、標的表示手段とを備えたものである。
【0008】
これにより、ノズル装置は小型になり標的表示手段は便器の横方向の中心に近い位置に設置可能となり、投影方向の調節機能がなくても放尿標的の表示の歪みを低減することができ、男子小用時の放尿を便器の中央部に誘導することで便器外への尿の飛散を抑制でき清潔に維持することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の衛生洗浄装置は、男子小用時の放尿を便器中央部に誘引し便器および便器周辺を清潔に維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
第1の発明は、洗浄水を噴出する複数の噴出口と前記噴出口に洗浄水を供給する流路を有するノズル本体と、前記ノズル本体の少なくとも一部を覆いノズル本体の少なくとも1個の噴出口に対応する噴出開口を有する筒状のノズルカバーと、前記ノズル本体とノズルカバーの外面を洗浄するノズル洗浄手段と、前記ノズル本体とノズルカバーとを収納するノズルガイドを有するノズル装置と、便器内に男子小用時の放尿標的を表示するための標的表示手段を備えることにより、ノズル装置は小型になり標的表示手段は便器の横方向の中心に近い位置に設置可能となり、投影方向の調節機能がなくても放尿標的の表示の歪みを低減することができ、男子小用時の放尿を便器の中央部に誘導することで便器外への尿の飛散を抑制でき清潔に維持することができる。
【0011】
第2の発明は、特に第1の発明において、標的表示手段は便器内の貯留水部分に放尿標的を表示することにより、放尿標的に向けて放尿した尿は直接便器に当たらず貯留水に当たることとなり、反射により周囲に飛散する尿を低減することができるため、周囲に飛散する尿を最小限に低減することができる。
【0012】
第3の発明は、特に第1または第2の発明において、ノズル装置と標的表示手段はともに便器の左右方向の略中央に対応する位置に配設したことにより、ノズル装置は局部洗浄に最適な中央に設置できるとともに、標的表示手段も放尿表示が一番歪まない中央に設置することなり、両方の機能を最適な位置に配置することにより、機能の最適な発揮と使い勝手の向上を図ることができる。
【0013】
第4の発明は、特に第1〜3のいずれか1つの発明において、標的表示手段はノズル装置から流出する洗浄水で洗浄する構成とすることにより、標的表示手段は洗浄水で洗浄されることとなり、標的表示手段の掃除の手間が省けるとともに、標的表示手段の汚損を防止することができるので放尿標的を適切に表示することができる。
【0014】
第5の発明は、特に第1〜4のいずれか1つの発明において、人体を検知する人体検知手段と、便座の開閉を検知する便座開閉検知手段とを備え、人体検知手段が人体を検知し、かつ便座開閉検知手段が便座の開成を検知したときに放尿標的を表示することにより、男子使用者がトイレに入室し、必要な時だけ標的表示するため、省エネの効果がある。
【0015】
第6の発明は、特に第5の発明において、標的表示手段は便器内の略全面を照射する照明機能を備え、人体検知手段が人体を検知し、かつ便座開閉検知手段が便座の閉成を検知したときに前記便器内照明機能を作動させることにより、使用者がトイレに入室すると便器内照明機能が作動して便器内を照明することなり、夜間にトイレの照明を点灯しなくても便器の位置を認識して用便することが可能となり、使用者の覚醒から開放を減少することにより、用便後の睡眠を確保しやすくできる。
【0016】
以下本発明の実施の形態について、図面を参照にしながら説明する。なお、本実施の形態によって発明が限定されるものではない。
【0017】
(実施の形態1)
図1は本発明の第1の実施の形態における衛生洗浄装置を便器に設置した状態の斜視図を示すものであり、図2は衛生洗浄装置のノズル装置と標的表示手段の設置部の断面図を示すものである。
【0018】
図1に示すように便器10の上面に設置した衛生洗浄装置11の後部に配設した本体12には加熱手段を内蔵した便座13と便蓋14が回動自在に枢支してある。
【0019】
本体12内にはノズル装置15に洗浄水を供給する洗浄水供給手段(図示せず)と、使用者の便座への着座を検知する着座検知手段(図示せず)と、便座3および便蓋4の回動位置を検出する回動検知手段(図示せず)と、洗浄後の局部を乾燥する乾燥装置(図示せず)と、用便時の臭気を脱臭する脱臭装置(図示せず)と、これらの機能を制御する制御制御手段(図示せず)等が配設してある。
【0020】
また、図2に示すように本体12の底板12aには人体の局部を洗浄するノズル装置15と、ノズル装置の下方には便器10の貯留水面に標的を表示する標的表示手段70設置してある。ノズル装置15と標的表示手段70の設置位置は便器10の左右方向の略中心軸に対応する位置となるように配置してある。
【0021】
また、トイレの壁面には衛生洗浄装置を操作するリモコン90と、トイレ空間への使用者の入室を検知する人体検知手段91が前記リモコン90とは別に設置してある。
【0022】
図3は本実施の形態におけるノズル装置全体の外観の斜視図を示すものであり、図4はノズル装置全体の上ケースを外した状態の斜視図を示し、図5はノズル装置のお尻洗浄位置での斜視図を示し、図6はノズル装置のビデ洗浄位置での斜視図を示し、図7はノズル装置の先端部の詳細断面図を示すものである。
【0023】
図3に示すように、樹脂材料で成型したケーシング16は上下に分離可能な上ケース17と下ケース18を組み合わせた構成であり、ケーシング16の中央部には略円筒形のノズルガイド19が形成してありノズルガイド19の一端には先端開口20が設けてある。ノズルガイド19内には円筒形のノズルユニット21が摺動自在に設置してあり、図3に示すように、ノズルユニット21をノズルガイド19内に収容した収納位置と、図6に示すように、ノズルユニ21が先端開口20より突出した洗浄位置間を進退可能となっている。
【0024】
ノズルユニット21は略円筒形のノズル本体22と、ノズル本体を収容する略円筒形状のノズルカバー23と、ノズル本体22でノズルカバー23を牽引する連結手段24で構成している。
【0025】
ノズル本体22の元部分は外径が大きい大径部25と先端部分は外径が小さいビデノズル部26から構成してあり、大径部25とビデノズル部25の中心位置は異なりビデノズル部26は大径部25の下部に配置してある。また、大径部25は前記ノズルカバー23の内径より僅かに小さい外径であり、ノズル本体22とノズカバー23が互いにスムーズに摺動可能な寸法関係となっている。ノズル本体22は樹脂材料で成型したものであるがビデノズル部26はその全体をステンレス製のカバー27で覆ってある。
【0026】
図8は図7のAA断面を示し、図9はBB断面を示すものである。図8に示すように、ノズル本体22の内部には、お尻洗浄流路28と、ビデ洗浄流路流路29と、ノズル洗浄流路30の3本の流路が形成してある。
【0027】
お尻洗浄流路28は元の部分から大径部25の先端部近傍まで配置してあり、図7に示すように、その先端は大径部25の上面に設けたお尻洗浄噴出口31に連接している。ビデ洗浄流路29は元の部分からビデノズル部26の略先端部まで配置してあり、その先端はビデノズル部26の上面に設けたビデ洗浄噴出口32に連接している。ノズル洗浄流路30は元の部分から大径部25の略先端部まで配置してあり、図9に示すように、その先端は大径部25の外側面と下方に設けたノズル洗浄噴出口33に連接している。
【0028】
ノズル本体22内に3本の流路を配設するために、図8に示すようにお尻洗浄流路28
とノズル洗浄流路30はノズル本体22の中心に対して左右対称に配置してあり、お尻洗浄流路28はノズル本体22の中心から水平方向にずれた場所に位置してある。
【0029】
一方、図9に示すようにお尻洗浄噴出口31はノズル本体22の中心に配置してあり、図11に示すようにお尻洗浄流路28はお尻洗浄噴出口31の近傍で湾曲した湾曲部28bを介してお尻洗浄噴出口に連接している。
【0030】
図11は湾曲部28bの詳細を示ものであり、湾曲部28bの流路の中央より湾曲の中心寄りに同心の整流壁28cが配置してある。整流壁28cは厚みが0.5mmで上流側の端部と下流側の端部を薄く尖った形状にしており、流路の底から天井に亘って垂直に設置してある。
【0031】
上記構成の湾曲部28bを形成するために、本実施の形態においてはノズル本体22のお尻洗浄噴出口31の近傍は上下別部品で形成している。図11に示すようにお尻洗浄流路28と整流壁28cを一体で成型したノズル本体基材22aと、お尻洗浄噴出口31を備えお尻洗浄流路の開放した部分を覆うようにノズル蓋22bを上方から接着した構成となっている。
【0032】
お尻噴出口31は1個の開口を備えたており、図9に示すように元の部分は開口面積の大きい大孔部31aと先端部分は開口面積の小さい小孔部31bからなる二段形状で形成しており、大孔部31aの開口面積は小孔部31bの約2倍になっている。
【0033】
大孔部31aと小孔部31bが切り替わる角の部分は直角に切り立ったエッジ形状で形成している。エッジ形状で形成することにより、流れの剥離が起こりやすくなり洗浄水が断続流となる。断続的に洗浄水が局部に当たることで、洗浄力が高まるとともに人体に強い洗浄であるという感覚が生じるため、実際に局部にかかる荷重よりも強く感じ、高い満足感を与える効果が生まれる。
【0034】
小孔部31bの厚みが薄い方が剥離が起こりやすく断続流になるが、洗浄噴流の進行方向規制が弱くなるため拡散しやすくなる。逆に厚みを厚くした場合、噴流の拡散は抑えられるが断続感は少なくなるため、本実施の形態においては噴流の拡散と断続感のバランスの最適値として小孔部31bの厚みを0.5mmとしている。
【0035】
ビデ洗浄噴出口32は複数の開口で構成している。またノズル洗浄噴出口33は下方に向けて設けた内部洗浄噴出口33aと側面上方に設けた外部洗浄噴出口33bを備えており、2つのノズル洗浄噴出口33の噴出方向はノズル本体22の直径方向に対しオフセットした方向に設定してある。
【0036】
お尻洗浄流路28と、ビデ洗浄流路流路29と、ノズル洗浄流路30の元の部分には、いずれも洗浄水を供給する洗浄水供給口28a、29a、30aが設置してあり、洗浄水供給手段とホース(図示せず)を介して連通してある。また、ノズル本体22の下面には略全長に亘って歯型状のラック34が形成してある。
【0037】
図12に示すようにノズルカバー23はステンレスの薄板を円筒状に形成したノズルカバー本体23aと樹脂成型品のカバー後端部材23bで構成している。カバー後端部材23bは下部が解放した略半円筒形状の両側部に水平方向に張り出した連結突起48と位置決め突起51とを備えている。ノズルカバー本体23aとカバー後端部材23bとの接合は、図12、図13に示すようにノズルカバー本体23aとカバー後端部材23bの重合部23cを重合し、カバー後端部材23bの両側の開放端の近傍に設けた固定突起23dとノズルカバー本体23aに設けた固定穴23eを嵌合することにより固定している。固
定穴3eの内径寸法は固定突起23dの外形寸法より多少大きく形成してあり、ノズルカバー本体23aあるいはカバー後端部材23bの寸法に多少誤差が生じても組立が可能な構成となっている。
【0038】
また、カバー後端部材23bの重合部23cの寸法は他の部分より小さくノズルカバー本体23aの内面と略等しい寸法に成型してあり、カバー後端部材23bとノズルカバー本体23aは密接して重合する構成となっている。
【0039】
一方、図4に示すようにカバー後端部材23bの上面中央には前方に突出した突起23fが設けてあり、ノズルカバー本体23aの後端部に設けた凹部23gと係合することにより左右方向の移動を規制する構成となっている、突起23fと凹部23gは略同寸法に形成することにより、前記のようにノズルカバー本体23aあるいはカバー後端部材23bの寸法に多少誤差が生じても、ノズルカバー本体23aとカバー後端部材23bを適切な位置に位置決めをした状態で接着剤や接合部材を使用することなく確実に接合している。
【0040】
上記のようにノズルカバー本体23aとカバー後端部材23bを接合して構成したノズルカバー23の先端面では閉塞面をなし、後端面は開放面となっており、後端面よりノズル本体が挿入可能な形状をなしている。先端面にはノズル本体22のビデノズル部26が貫通可能なビデノズル出入口35が設けてあり、ノズル本体22のビデノズル部26のみがビデノズル出入口35より突出可能な構成となっており、ノズル本体22のビデノズル部26はノズルカバー23のビデノズル出入口35より略全体を突出した状態と収容した状態の間を移動可能となっている。
【0041】
ノズルカバー23の上面には、ノズル本体22をノズルカバー23に収容した状態で、ノズル本体22のお尻洗浄噴出口31とノズル洗浄噴出口33に対応する位置にそれぞれお尻洗浄開口36とノズル洗浄開口37が設けてあり、お尻洗浄噴出口31とノズル洗浄噴出口33から噴出した洗浄水はお尻洗浄開口36とノズル洗浄開口37に直接接触することなく通過して噴射される。
【0042】
ノズルカバー23の下面後方には、ノズル本体22のラック34に対応する位置にスリット状のラック開口38が設けてあり、下面前方にはノズルカバー23内の洗浄水を排出する排水口39が設けてある。
【0043】
ノズル本体22とノズルカバー23と連結手段24からなるノズルユニット21を収容するケーシング16のノズルガイド19は、その後部はノズルカバー23の外径より僅かに大きい内径となっており、ノズルカバー23とノズルガイド19がスムーズに摺動可能な寸法関係となっている。
【0044】
ノズルガイド19の先端開口20の近傍には内径の大きい洗浄拡大部40が設置してあり、洗浄拡大部40はノズルユニット21の収納位置においてノズル洗浄噴出口33およびお尻洗浄噴出口31を十分にカバーする奥行きとなっている。洗浄拡大部40の内径はノズルカバー23の外面と略全周に亘り僅かな隙間を形成する寸法となっており、前記隙間にノズル洗浄用の洗浄水が流通可能な構成となっている。また、洗浄拡大部40の下部には洗浄水を排出する排水口41が設置してある。
【0045】
また、ノズルガイド19の先端開口20の上部に枢支し上下に回動自在なノズルシャタ42が設けてあり、ノズルユニット21をノズルガイド19に収納した状態で先端開口20を閉塞することができる。ノズルシャタ42はノズルユニット21が洗浄位置に進出するときは、ノズルユニット21の先端で押進することにより上方に開成し、ノズルユニッ
ト21が収納位置に収納したときはノズルシャタ42の自重で下方に回動し閉塞する構成である。
【0046】
図14、図15、図16はノズル装置の駆動の状態を示す断面図であり、図14は収納状態を示し、図15はお尻洗浄状態を示し、図16はビデ洗浄の状態を示すものである。
【0047】
図に示すように、ケーシング16の下部にはノズル駆動手段43が設置してある。ノズル駆動手段43は駆動モータ44とウォームギア(図示せず)と変速ギア45とピニオンギア46を備え、ピニオンギア46はノズルカバー23のラック開口38を介してノズル本体22の下面に設置したラック34と噛合する位置に設置してある。駆動モータ44の回転はウォームギアと変速ギア45を介して回転数を落としてピニオンギア46に伝達され、ピニオンギア46が回転することにより、ラック34を有するノズル本体22が摺動可能な構成となっている。駆動モータ44は制御手段(図示せず)に接続してあり、制御手段により運転が制御される。また、駆動モータ44の後部には駆動モータ44の回転数を検知する回転検知センサ47が設置してある。
【0048】
図17〜図22はノズル本体22とノズルカバー23を牽引移動させる連結手段の詳細を示す断面図である。
【0049】
図に示すように、ノズル本体22とノズルカバー23にはノズル本体22の移動によりノズルカバー23を牽引移動させる連結手段24が設置してある。連結手段24はカバー後端部材23bの一方の側面に設置した連結受部48と、ノズル本体22の後端部に設置した連結部材49で構成している。
【0050】
図21、図22に示すように、樹脂材料で成型した連結受部48はカバー後端部材23bの一方の側面にノズルカバー23と平行に設置してある。連結受部48の下面には前後に間隔を開けて2ヶ所に前凹陥部48aと後凹陥部48bを設けており、前凹陥部48aと後凹陥部48bの間隔はノズル本体22のビデノズル部26の長さと略等しい寸法となっている。
【0051】
連結部材49はノズル本体22の後端部の側面に設けてある。ノズル本体22と一体に成型した連結部材本体49aには前記連結受部48に対向する連結片50が設けてあり、連結片50は弾性を有する金属材料で形成し、一端を連結部材49に固定した片持構造で先端に連結突起50aを形成した構成となっており、連結突起50aは前記連結受部48の前凹陥部48aと後凹陥部48bに嵌入する形状となっている。連結突起50aが前凹陥部48aまたは後凹陥部48bに嵌入することにより連結部材49と連結受部48が連結し、ノズル本体22とノズルカバー23が連動可能となる。
【0052】
また、カバー後端部材23bの連結受部48を設けた反対の側面には位置決め突起51が設けてあり、位置決め突起51はケーシング16のノズルガイド19側部に設けた前ストッパ52と後ストッパ53に当接することによりノズルカバー23の摺動範囲を規制する手段となっている。また、位置決め突起51の中央部には前後方向に長い摺動規制溝51aが形成してあり、図17〜図20にしめすように連結部材本体49aに設けた摺動規制突起49bが装入してあり、摺動規制溝51a内を摺動規制突起49bが移動することにより、連結部材49と連結受部48相互の摺動範囲を規制する作用を備えている。なお、摺動規制突起49bの移動範囲は前記前凹陥部48aと後凹陥部48bの離間距離より僅かに長くなっており、ノズル本体22に強い力が加えられ、前凹陥部48aあるいは後凹陥部48bから逆方向に連結突起50aが飛び出すことを規制することができる。
【0053】
一方、図2に示すように、標的表示手段70は本体12の底板12aに設置してあり、
その設置位置はノズル装置15のノズルガイド19の先端より僅かに後退した位置であり、ノズルガイド19の排水口41が標的表示手段70の前端部の上方に位置しており、ノズルガイド19の排水口41から排出した洗浄水で標的表示手段70を洗浄できる構成となっている。
【0054】
図23は標的表示手段70の外観の斜視図を示し、図24は断面図を示すものである。
【0055】
標的表示手段70は透明な樹脂材料で成型した標的表示ケース71の内部に光源としてLED72が挿設してある。標的表示ケース71は中央に後方が開口した略円筒系の光源収納部71aが配置してあり、光源収納部71aの前端部は略球面形状のレンズ部71bとなっており、LED72の光を収束して図の放射範囲Aで示す範囲に放射する機能を備えている。光源収納部71aの両側部には係止爪71cが設けてあり、係止爪71cを本体12の底板12aに設けた固定孔に嵌合することにより、標的表示手段70を底板12aに固定できる構成となっている。
【0056】
また、光源収納部71aにLED72を挿入した状態で光源収納部71aの後部71dにはシリコン樹脂を充填して光源収納部71a内に水が入らないように防水処理を施してある。
【0057】
以上のように構成された衛生洗浄装置について、以下その動作、作用を説明する。
【0058】
まず、使用者がトイレ空間に入室すると人体検知手段91が人体の入室を検知し、使用者が便蓋14を開け、さらに、使用者が男子であり小用を足そうと便座13を起立させると、便座13が開成した状態となり、便座13の開成を回動検知手段により検知し、標的表示手段70が点灯して貯留水面に放尿標的を表示する。前期貯留水面とは便器の一部に防臭を目的として常時水を貯留している部分の水面である。
【0059】
用便が終了し便座13を便器10の上に倒置すると便座13が閉成状態となり、回動検知手段が検知して標的表示手段70は消灯する。また、用便終了後便座13を閉成しないで、使用者がトイレ空間から退出した場合も、人体検知手段91が人体の退出を検知して所定時間後に標的表示手段70を消灯する。
【0060】
一方、便座13を便器10の上に倒置して閉成した状態で便座13に着座して使用する場合は、標的表示手段70は点灯しない。この状態でノズル装置15はノズルを使用しない収納状態であり、ノズル本体22はノズルガイ19ドの最も後部に位置し、ノズルカバー23も摺動範囲の最も後部に位置しており、ノズルカバー23に設けた位置決め突起51はノズルガイド19側部に設けた後ストッパ53に当接した状態であり、ノズル本体22、ノズルカバー23ともに最も後退した位置に配置されている。この時、連結片50の連結突起50aは図21に示すように連結受部48の後凹陥部48bに嵌入した状態になっており、図17に示すように摺動規制突起49bは摺動規制溝51aの後端部近傍に配置している。
【0061】
使用者が用便を終了して、操作手段で洗浄の操作することにより、制御手段が制御を開始し、駆動モータ44の回転がピニオンギア46に伝えられることによりピニオンギア46と噛み合ったラック34を有するノズル本体22を後方に移動させようとするが、ノズル本体22はこれ以上後方に移動できないため、その前後方向の位置は変化しない。この位置を原点としてこれ以降のノズル本体22の位置は駆動モータ44の回転数を回転数検知センサ47で検知することで、ノズル本体22の移動量を推定しながら位置制御することが可能となる。
【0062】
次に駆動モータ44を逆回転させてノズル本体22を前方に移動させる。このときノズルカバー23は連結片50の連結突起50aが連結受部48の後凹陥部48bに嵌入した状態が保たれていることによってノズル本体22に牽引され一体化した状態で前方に移動する。
【0063】
使用者の操作がお尻洗浄の操作であった場合は図5、図15、図18に示すように、前方に移動したノズル本体22およびノズルカバー23は、あらかじめ設定しておいた制御シーケンスに従い、原点状態からの駆動モータ44の回転数が設定値に達すると停止する。このとき、ノズルカバー23に設けた位置決め突起51はノズルガイド19の側部に設けた前ストッパ52に接触する手前で停止した状態であり、この位置がおしり洗浄の標準位置となる。
【0064】
この状態で、制御手段は洗浄水供給手段を制御し、お尻洗浄流路28に通水することでお尻洗浄が開始される。お尻洗浄流路28に流入した洗浄水は直線部から湾曲部28bを通過してお尻洗浄噴出口31から噴出するが、一般的に湾曲部28bを通過して噴出させると、洗浄水は湾曲部28bで乱れ速度勾配を発生し、お尻洗浄噴出口31からの噴出方向が不安定になり局部に向けて適切に噴出できなくなる。
【0065】
湾曲部28bにおいては、外周側の流速が速くなり、内周側の流速が遅くなる。この時、お尻洗浄流路28の内側の壁で流れがよどむため乱流が発生する。
【0066】
この現象を解消するために、本実施の形態においては湾曲部28bに整流壁28cを設けることにより外周側の流れと内周側の流れを分離することにより整流効果発生し乱流を低減することができる。整流壁28cの設置位置を実験により検証した結果の湾曲部28bの流路中央からやや内側に備えることで整流効果を最大にすることが判明し本実施の形態においてはその位置に設置している。
【0067】
湾曲部28bを通過した洗浄水は噴出口31から着座した使用者の局部に向けて噴出するが、本実施の形態の噴出口31は大孔部31aと小さい小孔部31bの2段形状とし、開口面積を変えることで流速を変化させ乱流を発生させることにより、洗浄水が断続流となって噴出し局部に当たり、使用者には実際に局部にかかる荷重よりも強く感じる効果が生まれる。
【0068】
通水流路の切替および流量の調節は洗浄水供給手段に設けられた流量調整弁によって行われる。この時、お尻洗浄噴出口31とビデ洗噴出口32の上部はノズルカバー23によって覆われている状態であり、お尻洗浄によって生じた汚水が直接かからないため、お尻洗浄噴出口31とビデ洗浄噴出口32は清潔に保たれる。
【0069】
また流量調節弁のシール性が不十分である場合、お尻洗浄流路28とビデ洗浄流路29の流量切替が完全に行われずお尻洗浄中にもビデ洗浄噴出口29から微小量の水が噴出してしまうが、ビデ洗浄噴出口29の上部がノズルカバー23で覆われているため、その水がノズルの外部に噴出される恐れがない。
【0070】
お尻洗浄を行っている状態で駆動モータ44を正転、逆転を交互に繰り返すように駆動させると、ノズル本体22とノズルカバー23は標準位置に対して前後に揺動した状態となり、洗浄水は人体の局所のより広い範囲を同時に洗浄できる。
【0071】
お尻洗浄の停止を操作すると、駆動モータ44は逆回転し、ノズル本体22およびノズルカバー23は後方へ移動し、元の収納状態に戻る。
【0072】
次にビデ洗浄を選択した場合、お尻洗浄と同様にノズル本体22の原点位置を確認した後、前方へ移動するように駆動モータ44が回転し、ノズル本体22とノズルカバー23を前方に移動させるのはおしり洗浄の場合と同じであるが、ビデ洗浄の場合はお尻洗浄位置を越えてさらにノズル本体22を前方に移動させてゆく。
【0073】
このとき、図19に示すようにノズルカバー23に設けた位置決め突起51はノズルガイド19の側部に設けた前ストッパ52に当接し、ノズルカバー23はこれ以上前に移動することができない。さらにノズル本体22を前方に移動させると連結片50の連結突起50aが後凹陥部48bから外れる。このような動作が可能となるためには連結突起50aを外すのに要する荷重値よりもノズルを前後方向に移動させる駆動モータ44の駆動トルクが大きいことが条件となる。
【0074】
連結突起50aが後凹陥部48bから外れたことで、ノズル本体22とノズルカバー23は分離された状態となり、前ストッパ52によって移動が規制されたノズルカバー23に対して、ノズル本体22だけが前方に移動し、ノズル本体22のビデノズル部26がノズルカバー23の先端面に設けられたビデノズル出入口35から進出し始める。
【0075】
さらにノズル本体22を前方に移動させると連結突起50aは前凹陥部48aにはまり込んでゆく。連結突起50aが前凹陥部48aに完全に嵌入すると、図19に示すようにノズル本体22のビデノズル部26がビデノズル出入口35から完全に進出した状態となる。この時点でノズル本体22の前方移動が終了するように、あらかじめ制御シーケンスによって駆動モータ44の回転数による位置制御が行われる。この時駆動モータ44の誤作動によりノズル本体22をもっと前方に移動させようとした場合は、摺動規制突起49bが摺動規制溝51aの前端に当接しそれ以上前方への移動を規制することにより、連結突起50aが前凹陥部48aから飛び出すことがない。
【0076】
このように連結突起50aが前凹陥部48aに嵌入した状態で駆動モータ44をわずかに逆回転させることでノズル本体22を後方に移動させ、ビデ洗浄の標準位置まで移動させた時点で駆動モータ44を停止させる。この状態が図20に示すビデ洗浄の標準位置となる。
【0077】
上記ビデ洗浄の標準位置にノズル本体22が到達した時点で、制御手段は洗浄水供給手段を制御しビデ洗浄流路29に通水を開始することでビデ洗浄が開始される。通水流路の切替および流量の調節は洗浄水供給手段の流量調整弁によって行われる。この時、お尻洗浄噴出口31の上部はノズルカバー23によって覆われている状態であり、ビデ洗浄によって生じた汚水がお尻洗浄噴出口31に直接かからないため、お尻洗浄噴出口31は清潔に保たれる。また流量調節弁のシール性が不十分である場合、お尻洗浄流路28とビデ洗浄流路29の流量切替が完全に行われずビデ洗浄中にもお尻洗浄噴出口31から微小量の水が噴出してしまうが、お尻洗浄噴出口31の上部がノズルカバー23で覆われているため、その水がノズルの外部に噴出される恐れがない。
【0078】
ビデ洗浄を行っている状態で駆動モータ44を正転、逆転を交互に繰り返すように駆動させると、ノズル本体22とノズルカバー23は標準位置に対して前後に揺動した状態となり、洗浄水は人体の局所のより広い範囲を同時に洗浄できる。
【0079】
ビデ洗浄の停止を操作すると、駆動モータ44は逆回転し、ノズル本体22およびノズルカバー23は後方へ移動を開始する。収納のために後方へ移動する途中過程において、ノズルカバー23に設けた位置決め突起51はノズルガイドの側部に設けた後ストッパ53に当接し、ノズルカバー23はこれ以上後に移動することができない。さらにノズル本体22を後方に移動させると連結片50の連結突起50aが前凹陥部48aから外れる。
このような動作が可能となるためには連結突起50a解除に要する荷重値よりもノズル本体22を前後方向に移動させる駆動モータ44の駆動トルクが大きいことが条件となる。
【0080】
連結突起50aが前凹陥部48aから外れたことで、ノズル本体22とノズルカバー23は分離された状態となり、後ストッパー53によって移動を規制されたノズルカバー23に対して、ノズル本体22だけが後方に移動することで、ノズル本体22のビデノズル部26がノズルカバー23の前端面に設けたビデノズル出入口35の内部へと収納し始める。さらにノズル本体22を後方に移動させると連結突起50aは後凹陥部48bにはまり込んでゆく。連結突起50aが後凹陥部48bに完全に嵌入すると、ノズル本体22のビデノズル部26がビデノズル出入口35に対して完全に収納された状態となる。この時点でノズル本体22はノズルガイド19の後端に当接し、これ以上後方へ移動できない。駆動モータ44の回転は、あらかじめ設定された制御シーケンスに基づき、駆動モータ44の回転数による位置制御によって停止させる。
【0081】
前記お尻洗浄およびビデ洗浄が終了し、ノズル本体22が収納位置に停止した時点で、制御手段はノズル洗浄の制御を開始する。制御手段は洗浄水供給手段を制御し、ノズル洗浄流路30に通水を開始することでノズル洗浄が開始される。通水流路の切替および流量の調節は洗浄水供給手段の流量調整弁によって行われる。
【0082】
ノズル洗浄流路30に通水すると、ノズル本体22の大径部25の前端部に設けた2個のノズル洗浄噴出口33から洗浄水が噴出する。外側面に設けた外部洗浄噴出口33bから噴出した洗浄水はノズルカバ−23に設けたノズル洗浄開口37を介してノズルカバー23の外側に噴出し、ノズルカバー23を覆うノズルガイド19の洗浄拡大部40の内壁に当たり、はね返る洗浄水によってノズルカバ−23の外周壁およびお尻洗浄噴出口31を洗浄する。また下方に向けて設けた内部洗浄噴出口33aから噴出した洗浄水はノズル本体22のビデノズル部26の側部に流れ、ビデノズル部26の表面およびビデ洗浄噴出32口を洗浄する。
【0083】
この時、図9に示すように内部洗浄噴出口33aと外部洗浄噴出口33bおよびノズル洗浄開口37をノズ本体22の直径方向からオフセットした方向に設定してあるため、噴出した洗浄水はノズルガイド19およびノズルカバ−23の円周方向に旋回循環する旋回流となり、ノズル本体22、ノズルカバー23の汚れを効果的に除去することができる。洗浄し終わった洗浄水はノズルカバー22とノズルガイド19の下部に設けた排水口39、41から排出し、排水溝39から流出した洗浄水は標的表示手段70のレンズ部71bの外面を通過し、標的表示手段70のレンズ部71bを洗浄した後便器10内に流出する。
【0084】
以上のように、本実施の形態においては、洗浄水を噴出するお尻洗浄噴出口とビデ洗浄噴出口とノズル洗浄噴出口とそれぞれの噴出口に洗浄水を供給する流路を備えたノズル本体と、ノズル本体を覆いお尻洗浄噴出口に対応する噴出開口を有する筒状のノズルカバーと、ノズル本体とノズルカバーを連結する連結手段と、ノズル本体とノズルカバーとを収納するノズルガイドと、ノズル本体の進退を駆動する駆動手段とを備えた構成とすることにより、噴出口と流路はノズル本体に集約して設け、ノズルカバーは簡単な構成とすることができるためノズル装置全体として小型で簡単な構成とすることができる。
【0085】
しかもノズル本体とノズルカバーを相互に摺動することにより、対応する噴出口と噴出開口の位置合わせをすることにより、お尻洗浄噴出口からの洗浄水は噴出開口を介して噴出することとなり、洗浄水噴出時にはノズル本体特にビデ洗浄噴出口とお尻洗浄噴出口の近傍はノズルカバーで覆われており、洗浄により汚れた洗浄水でノズル本体が汚染されることがなく衛生的である。
【0086】
また、便座の開閉に連動して表示する標的表示手段を設けたことにより、男子小用時の放尿位置を誘導することができるので、便器内周辺部および便器外への尿の飛散を抑制することができるので、便器および便器周辺のトイレ空間を衛生的に維持することができる。
【0087】
また、ノズルカバーはステンレスで形成したノズルカバー本体と樹脂成型によるカバー後端部材を固定突起23dと固定穴の嵌合により固定することにより、接着剤や接合部材を使用することなく簡単な構成で確実に接合している。しかもノズルカバーをステンレスで形成したことにより、汚れが付着し難くまた付着した汚れを洗浄により容易に落とすことができる。
【0088】
また、ビデ洗浄時はビデノズル部がノズルカバーの前端面より突出した状態で洗浄水を噴出するため、洗浄対象に近づけて洗浄水を噴射することができ、しかも繊細な噴射形態が望まれるビデ洗浄をビデ洗浄噴出口から直接行うことができるため最適な噴射形態を得ることができる。
【0089】
また、ノズルカバーは収納位置とお尻洗浄位置の間を連結手段を介してノズル本体と連動するため、ノズル本体のみを駆動手段で駆動するだけで、ノズル本体とノズルカバーの両方を連度して摺動するとともに、ビデ洗浄位置へはノズル本体のみを単独で摺動することができることなり1個の駆動手段で2個の駆動対象をそれぞれの最適位置まで駆動できるため、装置の小型化と低コスト化を図ることができる。
【0090】
また、ノズル本体に設けたノズル洗浄噴出口の外噴洗浄出口より噴出した洗浄水はノズル洗浄開口を介してノズルガイドの洗浄拡大部に噴出しノズルガイドで反射してノズルカバーの外面とノズルガイドの内面を洗浄し、内部洗浄噴出口より噴出した洗浄水はノズルカバーで反射して主としてビデノズル部の外面とノズルカバーの内面を洗浄することができ、しかもノズルとノズルカバーの洗浄と同時に標的表示手段の洗浄も行うので、お尻洗浄とビデ洗浄において汚水や汚物で汚染されるノズル本体とノズルカバーと標的表示手段のセルフクリーニング機構を小型で簡単な構成で実現し、衛生的なノズル装置の提供と、標的表示手段の投影機能を維持することができる。
【0091】
また、流路の湾曲部に整流壁を設けたことにより、流路内の乱流を抑制することにより、お尻洗浄噴出口からの噴出方向を安定させることができ、局部に向けて適切に洗浄水を噴出することができる。しかも、整流壁の上流側の端部と下流側の端部を薄く尖った形状にすることにより洗浄水の流れをスムーズに分流し再び混合することができる。特に下流側を薄く尖った形状とすることにより分かれた噴流がスムーズに混合されるため整流効果が増す。逆に整流部の下流側をエッジを残した形状にした場合は、分かれた洗浄水が合流する際に衝突する事で渦が発生するとともに、エッジでの流れの剥離が起こりやすくなるため断続流となる。
【0092】
また、お尻洗浄噴出口を大孔部と小孔部の2段形状とすることにより、洗浄水が断続流となって噴出し局部に当たり、実際に局部にかかる荷重よりも強く感じるため、使用者は高い洗浄感を得ることができる。
【0093】
なお、本実施の形態においてはノズル駆動手段としては駆動モータとウォームギアと変速ギアとピニオンギアを備えたギアを介した伝達機構を採用したが、これに限るものではなく、ベルトやチェーン等の伝達機構を使用してもよい。
【0094】
また、本実施の形態においてはノズルカバーとビデノズル部をカバーする部材をステン
レスで形成したが、これらの材料はこれに限るものではなく、他の耐食性を備えた金属材料やセラミック等の無機材料あるいは樹脂材料でもよい、特にこれらの材料に抗菌あるいは殺菌性能や撥水性能等を付加したものを使用することにより、より清潔性を高めることができる。
【0095】
また、本実施の形態においては、連結手段の連結片は弾性を有する金属材料で形成したが、これに限るものではなく弾性を有する樹脂材料でもよく、樹脂材料を使用した場合、連結手段の連結部材を一体で成型することが可能となり安価に作ることが可能となる。
【0096】
また、本実施の形態においては、整流壁の厚さを0.5mmとしたが、これに限るものではなく、一般的にノズル本体基材と一体に樹脂成型で構成するためには厚さを0.5〜1.0mm程度の厚さが必要であり、一方、流路の圧力損失を抑えるために整流壁はできるだけ薄く形成することが望ましく、そのため本実施の形態においては最小厚さの0.5mmを採用した。整流壁をより薄く成型する方法としては整流壁を金属等で別部材として形成してお尻洗浄流路の湾曲部に配設する方法等が考えられる。
【0097】
また、本実施の形態においては、小孔部の厚みを0.5mmとしたが、これに限るものではなく、0.5〜1.5mmの範囲の厚みにすることにより洗浄水の断続流が得られることを確認しており、厚みを選択することにより希望する断続流に得ることができる。また、大孔部の開口面積を小孔部の約2倍としたが、この点に関しても1.5〜2.5倍の範囲で断続流を得られることを確認しており、開口面積を変えることにより最適な断続流を得ることができる。
【0098】
また、着座検知手段としては、赤外線により使用者の便座への着座の有無を検知するものの他に、方式としては便座3の静電容量を検知するもの、超音波等を用いて使用者の便座3への着座を検知するもの、便座着座部の圧力を検知するものでもよい。
【0099】
また、人体検知手段は赤外線による人体検知としているが、トイレ空間内に設置した光センサや床に設置した重量センサ、超音波やマイクロウエーブ等または画像処理を用いて人体の動きを検知してもよい。
【0100】
なお、標的指示の光源として、本実施の形態ではLEDにより構成しているが、白熱
ランプ、蛍光ランプ、放電ランプなどにより構成してもよい。
【0101】
(実施の形態2)
図24は本発明の第2の実施の形態のノズルカバーの外面を洗浄するカバー洗浄流路とカバー洗浄噴出口の要部の断面斜視図を示し、図25はノズルカバーの内面とビデノズル洗浄するノズル洗浄流路とノズル洗浄噴出口の要部の断面斜視図を示すものである。
【0102】
本実施の形態が第1の実施の形態と異なる点は、実施の形態1においてはノズルカバーの外面はノズル本体に設けたノズル洗浄流路に連通するノズル洗浄噴出口33の外部洗浄噴出口33bから噴出する洗浄水がノズルカバーのノズル洗浄開口を介してノズルカバー23の外側に噴出し、ノズルカバー23を覆うノズルガイド19の洗浄拡大部40の内壁に当たり、はね返る洗浄水によってノズルカバ−23の外周壁およびお尻洗浄噴出口31を洗浄する。また内部洗浄噴出口33aから噴出した洗浄水はノズル本体22のビデノズル部26の側部に流れ、ビデノズル部26の表面およびビデ洗浄噴出32口を洗浄する構成である。
【0103】
これに対し、本実施の形態においては、図24に示すようにケーシング55の上ケース56の上部にカバー洗浄流路57とカバー洗浄噴出口58を設け、前記カバー洗浄噴出口
58はノズルガイド19の洗浄拡大部40に向けて開放している。カバー洗浄噴出口58はノズルガイド19の中心軸の略上方の位置に設置してある。
【0104】
一方図24に示すようにノズル本体59に設けたノズル洗浄流路30は下方に向けて開口したノズル洗浄噴出口60に連通している。なお、ノズル洗浄噴出口60の噴出方向はノズル本体59の直径方向に対しオフセットした方向に設定してある。
【0105】
以上のように構成された本実施の形態におけるノズル装置について、以下その動作、作用を説明する。
【0106】
ノズル本体59が収納位置に停止した状態で、制御手段はノズル洗浄の制御を開始する。制御手段は洗浄水供給手段を制御し、ノズル洗浄流路30とカバー洗浄流路57に通水を開始することでノズル洗浄が開始される。通水流路の切替および流量の調節は洗浄水供給手段の流量調整弁によって行われる。
【0107】
ノズル洗浄流路30に通水した洗浄水は、ノズル本体59の前端部に設けたノズル洗浄噴出口60から洗浄水が下方に向けて噴出し、ノズル本体59のビデノズル部26の側部に流れ、ビデノズル部26の表面およびビデ洗浄噴出32口とノズルカバー23の内面を洗浄する。
【0108】
一方カバー洗浄流路57に通水した洗浄水はカバー洗浄噴出口58から下方に向けて噴出し、ノズルカバー23の外面に当たりノズルカバー23の外周とノズルガイド19の洗浄拡大部40の内壁との隙間を流れながらノズルカバ−23の外周壁とノズルガイドの内周壁とお尻洗浄噴出口31を洗浄する。
【0109】
洗浄し終わった洗浄水はノズルカバー22とノズルガイド19の下部に設けた排水口39、41から排出する。
【0110】
本実施の形態においては、ノズルの洗浄に使用する流路と噴出口をノズルカバーの内部と外部に独立して設けたことにより、ノズルカバーの外周面とノズルカバーの内部に収容されるビデノズル部をそれぞれ最適な洗浄方法で効果的に洗浄することが可能となり、ノズルをより衛生的に使用することができる。
【0111】
なお、本実施の形態においては、ノズル洗浄流路とカバー洗浄流路への洗浄水の通水を同時に行う構成としたが、これに限るものではなく、ノズル洗浄流路とカバー洗浄流路へ個別に通水してもよい。例えば、お尻洗浄が終了した後はカバー洗浄流路にのみ通水しノズルカバーの外周面とお尻洗浄噴出口を洗浄し、ビデ洗浄が終了した後はノズル洗浄流路にのみ通水しビデノズル部とノズルガイドの内周壁を洗浄することにより洗浄水を無駄に使用することを抑制することが可能となる。
【0112】
(実施の形態3)
図27は本発明の第3の実施の形態における衛生洗浄装置の断面である。本実施の形態は、実施の形態1および2と基本的な構成は同じで、異なるのは標的表示手段が放尿標的の表示機能に加え、便器内を照明する照明機能を備えている点である。 図27に示すように、本実施の形態の標的表示手段75は透明な樹脂材料で成型した標的表示ケース76には光源として上下に2個のLED72が挿設してある。標的表示ケース76の上部には後方が開口した略円筒系の標的光源収納部76aが配置してあり、その下方には照明光源収納部76bが配置してある。
【0113】
標的光源収納部76aの前端部は略球面形状の集束レンズ部76cとなっており、LE
D72の光を図の放射範囲Aで示すように収束して放射する機能を備えている。一方、照明光源収納部の前端部は略球面形状の拡散レンズ部76dとなっており、LED72の光を図の放射範囲Bで示すように拡散して放射する機能を備えている。
【0114】
本実施の形態の標的表示手段75も実施の形態1と同様に係止爪により底板12aに固定できる構成となっている。
【0115】
また、標的光源収納部76a照明光源収納部76bにLED72を挿入した状態で後部にシリコン樹脂を充填して防水処理を施す点も実施の形態1と同様である。
【0116】
上記構成の標的表示手段75を備えた衛生洗浄装置は、まず使用者がトイレ空間に入室すると人体検知手段91が人体の入室を検知し、使用者が便蓋14を開けると標的表示手段75の照明光源収納部76bのLED72が点灯し便器10内の略全面を薄明るい光で照明する。
【0117】
さらに、使用者が男子であり小用を足そうと便座13を開けると、便座13が開成した状態となり、便座13の開成を回動検知手段により検知し、標的表示手段76の照明機能のLED72が消灯するとともに、標的光源収納部76aのLED72が点灯して貯留水面に放尿標的を表示する。
【0118】
用便が終了し便座13を便器10の上に倒置すると便座13が閉成状態となり、回動検知手段が検知して標的光源収納部76aのLED72は消灯し、照明光源収納部76bのLED72が点灯する。使用者がトイレ空間を退出すると、人体検知手段91が人体の退出を検知して所定時間後に標的表示手段76を消灯する。また、男子小用終了後に便座13を閉成しないで、使用者がトイレ空間から退出した場合も、人体検知手段91が人体の退出を検知して所定時間後に標的表示手段70を消灯する。
【0119】
一方、便座13を便器10の上に倒置して閉成した状態で便座13に着座して使用する場合は、標的表示手段70の照明光源収納部76bのLED72は消灯する。
【0120】
このように、本実施の形態の標的表示手段は放尿標的を表示するとともに、便器内を薄明るい光で照明することにより、夜間に用便を行う場合に、トイレ空間の照明を点灯しなくても便器を視認して用便を行うことができるので、使用者の睡眠からの覚醒を抑制することが可能となり、夜間の用便を安全にかつ安心して行うことができる。
【0121】
なお、本実施の形態においては光源のLEDを2個使用し予め異なるレンズ機能を備えた光源収納部に配置し、光源への通電を切り替えることにより照明機能と放尿標的の表示を切り替えたが、これに限るものではなく、例えば、1個のLEDを使用して複数のレンズを切替設置することにより、照明機能と放尿標的の表示を切り替えることが考えられる。
【0122】
なお、標的指示の光源として、本実施の形態ではLEDにより構成しているが、白熱ランプ、放電ランプなどにより構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0123】
以上のように、本発明にかかる衛生洗浄装置は、標的表示手段により排尿を便器内に誘導することができ、清潔性、清掃性の向上が実現できるので、一般の洋式便器の家庭用に限らず、公衆用の設備に設置することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】本発明の実施の形態1における衛生洗浄装置の斜視図
【図2】本発明の実施の形態1における衛生洗浄装置の要部断面図
【図3】本発明の実施の形態1におけるノズル装置の収納状態を示す斜視図
【図4】本発明の実施の形態1におけるノズル装置の上ケースを外した斜視図
【図5】本発明の実施の形態1におけるノズル装置のお尻洗浄状態を示す斜視図
【図6】本発明の実施の形態1におけるノズル装置のビデ洗浄状態を示す斜視図
【図7】本発明の実施の形態1におけるノズル装置のノズルユニットの要部断面図
【図8】本発明の実施の形態1におけるノズル装置のノズルユニットの要部断面図
【図9】本発明の実施の形態1におけるノズル装置のノズルユニットの要部断面図
【図10】本発明の実施の形態1におけるノズル装置のノズル本体の要部斜視図
【図11】本発明の実施の形態1におけるノズル装置のノズル本体の要部分解斜視図
【図12】本発明の実施の形態1におけるノズル装置のノズルカバーの斜視図
【図13】本発明の実施の形態1におけるノズル装置のノズルカバーの分解斜視図
【図14】本発明の実施の形態1におけるノズル装置の収納状態を示す縦断面図
【図15】本発明の実施の形態1におけるノズル装置のお尻洗浄状態を示す縦断面図
【図16】本発明の実施の形態1におけるノズル装置のビデ洗浄状態を示す縦断面図
【図17】本発明の実施の形態1におけるノズル装置の収納状態を示す横断面図
【図18】本発明の実施の形態1におけるノズル装置のお尻洗浄状態を示す横断面図
【図19】本発明の実施の形態1におけるノズル装置の最前位置状態を示す横断面図
【図20】本発明の実施の形態1におけるノズル装置のビデ洗浄状態を示す横斜視図
【図21】本発明の実施の形態1におけるノズル装置の連結手段を示す断面図
【図22】本発明の実施の形態1におけるノズル装置の連結手段を示す断面図
【図23】本発明の実施の形態1における標的表示手段の斜視図
【図24】本発明の実施の形態1における標的表示手段の断面図
【図25】本発明の実施の形態2におけるノズル装置のノズルユニットの要部断面斜視図
【図26】本発明の実施の形態2におけるノズル装置のノズルユニットの要部断面斜視図
【図27】本発明の実施の形態3における衛生洗浄装置の要部断面図
【図28】従来の衛生洗浄装置の平面図
【符号の説明】
【0125】
10 便器
13 便座
15 ノズル装置
19 ノズルガイド
22、59 ノズル本体
23 ノズルカバー
28 お尻洗浄流路(流路)
29 ビデ洗浄流路(流路)
30 ノズル洗浄流路(流路)
31 お尻洗浄噴出口(噴出口)
32 ビデ洗浄噴出口(噴出口)
33 ノズル洗浄噴出口(噴出口)
36 お尻洗浄開口(噴出開口)
37 ノズル洗浄開口(噴出開口)
57 カバー洗浄流路(流路)
58 カバー洗浄噴出口(噴出口)
70 標的表示手段
91 人体検知手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄水を噴出する複数の噴出口と前記噴出口に洗浄水を供給する流路を有するノズル本体と、前記ノズル本体の少なくとも一部を覆いノズル本体の少なくとも1個の噴出口に対応する噴出開口を有する筒状のノズルカバーと、前記ノズル本体とノズルカバーの外面を洗浄するノズル洗浄手段と、前記ノズル本体とノズルカバーとを収納するノズルガイドを有するノズル装置と、便器内に男子小用時の放尿標的を表示するための標的表示手段を備えたことを特徴とする衛生洗浄装置。
【請求項2】
標的手段は便器内の貯留水部分に放尿標的を表示する請求項1に記載の衛生洗浄装置。
【請求項3】
ノズル装置と標的表示手段はともに便器の左右方向の略中央に対応する位置に配設した請求項1または2に記載の衛生洗浄装置。
【請求項4】
ノズル装置から流出する洗浄水で標的表示手段を洗浄する構成の請求項1〜3のいずれか1項に記載の衛生洗浄装置。
【請求項5】
人体を検知する人体検知手段と、便座の開閉を検知する便座開閉検知手段とを備え、人体検知手段が人体を検知し、かつ便座開閉検知手段が便座の開成を検知したときに放尿標的を表示する請求項1〜4のいずれか1項に記載の衛生洗浄装置。
【請求項6】
標的表示手段は便器内の略全面を照射する照明機能を備え、人体検知手段が人体を検知し、かつ便座開閉検知手段が便座の閉成を検知したときに前記便器内照明機能を作動させることを特徴とする請求項5に記載の衛生洗浄装置。

【図2】
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【図24】
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【図27】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図25】
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【図26】
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【図28】
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