説明

衛生洗浄装置

【課題】漏電遮断手段が作動した状態では人体が感電する可能性のある部位は商用電源から確実に遮断し、安全性の高い衛生洗浄装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本体101と、本体101に一体に形成した操作部105と、便座102と、便蓋103と、洗浄手段104と、便座ヒータ117と、温水ヒータ116と、少なくとも前記便座ヒータ117と温水ヒータ116への電力の供給を遮断する遮断手段121と、電気負荷を制御する制御手段113と、漏電検知手段111と、漏電検知手段111の表示部122とテスト用スイッチ123を備え、漏電を検知したときは電気負荷を商用電源より遮断するとともに、本体101または操作部102に設けた表示部122により漏電していることにより、安全性の確保と危険性排除の対応をスムーズに行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛生洗浄装置の漏電遮断器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の衛生洗浄装置は、洗浄水を所定温度に加熱する洗浄水用ヒータを2本の接続線を介して商用電源に接続し、接続線に漏電制御部を設け、漏電状態が検出されるとリレー回路のリレー接点が遮断される。電子制御部はリレー接点より商用電源側に接続された電源回路部により定電圧が供給されており、漏電遮断装置が開いても電子制御部は通電されているから、他の処理を実行することができるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図6は、特許文献1に記載された従来の衛生洗浄装置の回路図を示すものである。図6に示すように、商用電源Vに接続した接続線L1、L2はリレー接点1a、1bを介して洗浄水ヒータ2と便座用ヒータ3に接続してある。また、前記接続線L1、L2の途中に交流器3と漏電制御部4が配置してあり、漏電制御部4の制御によりリレー接点1a、1bが開閉する。電子制御部5は接続線L1、L2のリレー接点1a、1bより商用電源V側で分岐した電源回路部6に接続してあり、温水用のサーミスタ7と便座用サーミスタ8が接続してある。電源回路部6と電子制御部5はリレー接点1a、1bが開いた状態でも通電が継続される構成である。
【特許文献1】特開平7−200072号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の構成においては、衛生洗浄装置に漏電が発生し漏電制御部がリレー接点を遮断した状態では、洗浄水用ヒータへの通電は遮断されるが、電子制御部はリレー接点より商用電源側に接続されているため遮断されることがなく、遮断されない回路の漏電に対する安全性を確保することができない。特に人体が直接接触する便座内の便座用ヒータや便座用サーミスタ、あるいは洗浄水中に設置する温水用サーミスタ等は洗浄水用ヒータと同様に使用者が感電する危険性が高い。
【0005】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、漏電遮断手段が作動した状態では人体が感電する可能性のある部位は商用電源から確実に遮断し、安全性が確実に確保される部位のみを継続して通電することにより、安全性の高い衛生洗浄装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本体と、本体に一体に形成した操作部と、便座と、便蓋と、洗浄手段と、便座ヒータと、温水ヒータと、少なくとも前記便座ヒータと温水ヒータへの電力の供給を遮断する遮断手段と、電気負荷を制御する制御手段と、漏電検知手段と、漏電検知手段の表示部とテスト用スイッチを備え、漏電検知手段が漏電を検知した時は、遮断手段を遮断して電気負荷と商用電源との接続を遮断するとともに、前記表示部を表示するものである。
【0007】
これにより、漏電を検知したときは電気負荷を商用電源より遮断するとともに、本体または操作部に設けた表示部により漏電していることを使用者に報知することができるため、安全性の確保と危険性排除の対応をスムーズに行うことができる。
【発明の効果】
【0008】
以上のように、本発明の衛生洗浄装置は、漏電時の安全性を確保するとともに、使用者
に対する漏電表示の視認性が高く、危険性排除の対応が容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
便器上に設置する本体と、前記本体に一体に形成した操作部と、前記本体に回動自在に枢支した便座と便蓋と、洗浄水で局部を洗浄する洗浄手段と、前記便座を加熱する便座ヒータと、前記洗浄水を加熱する温水ヒータと、少なくとも前記便座ヒータと温水ヒータへの電力の供給を遮断する遮断手段と、前記便座ヒータと温水ヒータを含む電気負荷を制御する制御手段と、前記電気負荷の漏電を検知する漏電検知手段と、前記本体または操作部の表面部に配置した前記漏電検知手段の表示部とテスト用スイッチを備え、前記漏電検知手段が漏電を検知した時は、前記遮断手段を遮断して前記電気負荷と商用電源との接続を遮断するとともに、前記表示部を表示することにより、衛生洗浄装置に漏電が発生した場合、漏電検知手段が漏電を検知し、便座ヒータと温水ヒータを含む電気負荷を商用電源から遮断するとともに、本体または操作部に設けた表示部により衛生洗浄装置が漏電している旨を使用者に報知することとなり、漏電時の安全性を確保するとともに、使用者に対する漏電表示の視認性が高く、危険性排除の対応が容易になる。
【0010】
第2の発明は、特に、第1の発明において、制御手段を絶縁トランスを介して商用電源と直接接続しない状態で電力供給が可能な構成とし、遮断手段を遮断した状態において制御手段に電力が供給可能とすることにより、制御手段は常に商用電源より絶縁した状態で通電しており、他の電気負荷が漏電した場合でも制御手段の安全性を確保することができるため、漏電を検知して遮断手段を遮断した状態でも制御手段に通電することが可能なり、制御手段の先に接続する機能を継続して使用することができる。
【0011】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明において、衛生洗浄装置から離れた位置から操作するリモコンを備え、前記リモコンに少なくとも漏電検知手段の表示部を設置したことにより、通常使用者が使い易くかつ視認性の高い位置に設置するリモコンに表示部を配置したこととなり、表示部の視認性をより高めることができ、危険性の排除の対応がより容易にできる。
【0012】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0013】
(実施の形態1)
図1(a)は、本発明の実施の形態1における衛生洗浄装置の外観斜視図を示し、図1(b)は、図1(a)におけるA部の詳細を示す平面図である。
【0014】
図1(a)に示す衛生洗浄装置100は便器(図示せず)の上面に設置して使用するものであり、衛生洗浄装置100の後部に配設した本体101は便器にボルト(図示せず)で固定して使用する。本体101の前面には便座102と便蓋103が設けてあり、本体101内に設置した便座便蓋開閉モータ115の駆動力により回動する。
【0015】
本体101の下部には、収納位置と洗浄位置の間を進退自在な洗浄ノズルから洗浄水を噴出して局部を洗浄する洗浄手段104が設置してある。
【0016】
本体101の側面には操作部105が本体101と一体に設置してある。操作部105の上面には衛生洗浄装置100の各機能を操作したり各機能の設定を行う複数のスイッチ106と表示ランプ107を配置してある。図1(b)に示すように操作部105の後端部には漏電表示部である漏電表示LED122と、プッシュスイッチで構成された漏電遮断器のテスト用スイッチ123が配置してある。
【0017】
漏電表示LED122とテスト用スイッチ123は操作部105の後端に配置し、しか
もスイッチの押圧面積を小さくすることで、ユーザーが誤って操作することを防止することができる。また、テスト用スイッチ123の操作に要する押圧は、他のスイッチ106の操作に要する押圧の3〜5倍に設定してあり、操作部105の清掃等で触れた場合でも容易にご操作が発生しないようになっている。
【0018】
図2は本発明の実施の形態1における衛生洗浄装置100の回路構成図である。
【0019】
電源コンセント108に接続された電源プラグ109から入力された電源ライン110は往復電流の差を検知するZCT(零相変流器)111を通して、電源回路112に入力される。電源回路112は、衛生洗浄装置の制御回路113や脱臭ファン114や便座便蓋電動開閉モータ115などのDC電源電圧を発生させている。制御回路113は脱臭ファン114や便座便蓋電動開閉モータ115のほか、湯水ヒータ116や、便座ヒータ117をON、OFFするトライアック118、119も制御している。ZCT111の電圧出力は漏電検知回路120に入力され、漏電検知回路120は漏電遮断用の3接点を備えたリレー121を制御している。
【0020】
以上のように構成された衛生洗浄装置について、以下その動作、作用を説明する。
【0021】
衛生洗浄装置100で漏電が発生すると、電源ライン110の往復電流に差が発生することによりZCT111に出力電圧が発生し、漏電検知回路120は漏電遮断用のリレー121を制御して電源ライン110と電源回路112から温水ヒータ116や、便座ヒータ117と制御回路113を遮断する。また、リレー121の接点のうち、電源ライン110の一方のラインを開閉する接点は接続が切り替わり漏電表示LED122に電流が流れて点灯することにより使用者に衛生洗浄装置が漏電していることを表示することができる。
【0022】
一方、漏電表示LED122が点灯していない状態で、漏電のテスト用スイッチ123を押すとZCTに通されたテスト電流ライン124へ電流が流れることにより電源ライン110の往復電流に差が発生した時と同様にZCT111には出力電圧が発生し、漏電が起きたときと同様にリレー121が作動し漏電表示LED122が点灯することにより漏電遮断器が正常に作動することが確認できる。この時、例えばZCT111が破損していたり、漏電検知回路120が断線している場合は漏電表示LED122は点灯しないため漏電遮断器に異常があることが判る。
【0023】
(実施の形態2)
図3は、本発明の実施の形態2における衛生洗浄装置の回路構成図である。実施の形態1と同一符号のものは同一の構成とし説明を省略する。
【0024】
本実施の形態の衛生洗浄装置が実施の形態1と異なっている点は、電源回路201が絶縁トランスを202用いた電源回路であり、漏電が発生していない場合は、2接点を備えたリレー203により電源ライン110と電源回路201から温水ヒータ116や、便座ヒータ117と制御回路113とを接続されている。
【0025】
上記構成の衛生洗浄装置100において漏電が発生した場合には、実施の形態1と同様にZCT111に電圧出力が発生し漏電検知回路120により2接点を備えたリレー203により、電源ライン110から温水ヒータ116や便座ヒータ117は遮断されるが、制御回路113は絶縁トランス202により、電源ライン110から絶縁された状態で電力が供給される。そのため、温水ヒータ116や、便座ヒータ117等は停止するが、制御回路113のみで動作する脱臭ファン114や便座便蓋電動開閉モータ115は動作することができ、ユーザーは漏電した場合でも、用便に最低限必要な便座102と便蓋10
3の開閉は可能でありトイレ機能の最低限の機能を使用することが可能となる。
【0026】
また、実施の形態1と同様にリレー203の接点のうち、電源ライン110の一方のラインを開閉する接点は接続が切り替わり漏電表示LED122に電流が流れて点灯することにより使用者に衛生洗浄装置が漏電していることを表示することができる。
【0027】
また、実施の形態1と同様に、使用者が漏電のテスト用スイッチ123を押すことにより、漏電遮断器のテストを行うことができる。
【0028】
(実施の形態3)
図4(a)は、本発明の実施の形態3における衛生洗浄装置の外観斜視図を示し、図4(b)はリモコンの正面図を示し、図5は本実施の形態の回路図を示すものである。実施の形態1または2と同一符号のものは同一の構成とし説明を省略する。
【0029】
本実施の形態における衛生洗浄装置が実施の形態2と異なっている点は、本体101と一体に設けた操作部105とは別に、トイレの壁面等に設置して使用するリモコン301を備えており、リモコン301と衛生洗浄装置の本体101との間で、赤外線を用いた、双方向の通信手段を備えている点である。
【0030】
リモコン301の前面には操作部105と同様に衛生洗浄装置100の各機能を操作または設定を行う複数のリモコンスイッチ303とリモコン表示部304が配置してあり、その下端部にはリモコン漏電表示部305と、漏電遮断器のテストを行うリモコンテスト用スイッチ306が配置してある。
【0031】
リモコンテスト用スイッチ306は操作部105に設置したテスト用スイッチ123と同様に押圧面積を小さくするとともに、操作に要する押圧を他のリモコンスイッチ303の操作に要する押圧の3〜5倍に設定することにより、容易にご操作が発生しないようになっている。
【0032】
リモコン301の回路の構成は図5に示すように、リモコン制御部302とリモコン通信部308が電池によるリモコン電源部で作動する構成となっている。
【0033】
衛生洗浄装置の本体側の回路構成図で実施の形態2と異なっている点は、リモコンと赤外線による通信を行う通信部309を備えた点と、リモコン301からのテスト用信号により漏電状態を発生させるための短絡回路310とリレー203が作動して電源ライン110から温水ヒータ116や便座ヒータ117が遮断されたことを検知するゼロクロス検知回路311を備えた点である。
【0034】
上記構成の衛生洗浄装置で漏電が発生すると、実施の形態2と同様にZCT111に電圧出力が発生し漏電検知回路120により2接点を備えたリレー203により、電源ライン110から温水ヒータ116や便座ヒータ117は遮断されるが、制御回路113は絶縁トランス202により、電源ライン110から絶縁された状態で電力が供給される。そのため、温水ヒータ116や、便座ヒータ117等は停止するが、制御回路113のみで動作する脱臭ファン114や便座便蓋電動開閉モータ115は動作することができる。
【0035】
また、実施の形態2と同様にリレー203の接点のうち、電源ライン110の一方のラインを開閉する接点は接続が切り替わり漏電表示LED122に電流が流れて点灯し、漏電の表示を行う。
【0036】
また、ゼロクロス検知回路311は電力供給が遮断されたことを検知し、検知情報を制
御回路113に送ることにより、制御回路113はリモコン301のリモコン漏電表示部305を点灯させる情報を通信部309に送り、赤外線通信によりリモコン通信部308で受信し、リモコン制御部302はリモコン漏電表示部305を点灯させる。
【0037】
一方、使用者がリモコン301のリモコンテスト用スイッチ306を押すと、リモコン制御部302はモコン通信部308からテスト情報が本体側の通信部309を介して制御回路113に送られ、制御回路113は短絡回路310を接続することにより、漏電状態を発生させ、漏電遮断器のテストを行う。また、本体のテスト用スイッチ123による漏電遮断器のテストは実施の形態1および2と同様に行うことができる。
【0038】
上記リモコンおよび本体側による漏電テストのいずれの場合も、操作部105の漏電表示部LED122とリモコン漏電表示部305の両方が点灯する。
【0039】
以上のように本実施の形態においては、通常使用者が操作しやすい位置に設置するリモコンに漏電表示部とテスト用スイッチを設けたことにより、異常を容易に視認することができるとともに、使い勝手を向上することができる。
【0040】
なお、本実施の形態においては、本体とリモコン間は赤外線を用いて通信を行ったが、これに限るものではなく、双方向の通信手段としては電波による無線通信や、ワイヤードで接続された電気的信号を用いても良い。
【0041】
また、本実施の形態においては、リモコンと本体の操作部の両方に漏電テスト用スイッチと漏電表示部を設置したが、これは必須要素ではなく、リモコンのみにテスト用スイッチと漏電表示部を設けた構成でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明にかかる漏電遮断器は使用者の視認性と使い勝手が向上するものであるので、他の水回り機器等への用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】(a)本発明の実施の形態1における衛生洗浄装置の外観を示す斜視図(b)図1(a)に示すA部の詳細を示す平面図
【図2】本発明の実施の形態1における衛生洗浄装置の回路構成図
【図3】本発明の実施の形態2における衛生洗浄装置の回路構成図
【図4】(a)本発明の実施の形態3における衛生洗浄装置の外観を示す斜視図(b)図1(a)に示すリモコンの詳細を示す正面図
【図5】本発明の実施の形態3における衛生洗浄装置の操作部の図
【図6】従来の衛生洗浄装置の漏電遮断器の図
【符号の説明】
【0044】
100 衛生洗浄装置
101 本体
102 便座
103 便蓋
104 洗浄手段
105 操作部
111 ZCT(漏電検知手段)
113 制御回路(制御手段)
116 温水ヒータ
117 便座ヒータ
121、203 リレー(遮断手段)
122 漏電表示LED(表示部)
123 テスト用スイッチ
202 絶縁トランス
301 リモコン
305 リモコン漏電表示部(表示部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器上に設置する本体と、前記本体に一体に形成した操作部と、前記本体に回動自在に枢支した便座と便蓋と、洗浄水で局部を洗浄する洗浄手段と、前記便座を加熱する便座ヒータと、前記洗浄水を加熱する温水ヒータと、少なくとも前記便座ヒータと温水ヒータへの電力の供給を遮断する遮断手段と、前記便座ヒータと温水ヒータを含む電気負荷を制御する制御手段と、前記電気負荷の漏電を検知する漏電検知手段と、前記本体または操作部の表面部に配置した前記漏電検知手段の表示部とテスト用スイッチを備え、前記漏電検知手段が漏電を検知した時は、前記遮断手段を遮断して前記電気負荷と商用電源との接続を遮断するとともに、前記表示部を表示する衛生洗浄装置。
【請求項2】
制御手段は絶縁トランスを介して商用電源と直接接続しない状態で電力供給が可能な構成とし、遮断手段を遮断した状態において制御手段に電力が供給可能な請求項1に記載の衛生洗浄装置。
【請求項3】
衛生洗浄装置から離れた位置から操作するリモコンを備え、前記リモコンに少なくとも漏電検知手段の表示部を設置した請求項1または2に記載の衛生洗浄装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−82044(P2008−82044A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−264047(P2006−264047)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】