説明

衛生洗浄装置

【課題】 便座暖房機能および貯湯式の局部洗浄機能の双方を備えた衛生洗浄装置において、便座の加温および温水の加熱のいずれも効率よく行うことにより、当該衛生洗浄装置の使用の快適性を損なうことなく省エネルギー効果をより一層向上させる。
【解決手段】 制御部は、トイレ室への入室が検知されていない間は待機モードを実行し、トイレ室への入室が検知されれば、待機モードから着座準備モードに切り替え、温水ヒータの通電を遮断して温水ヒータの動作を停止させるとともに、便座ヒータを最大出力とするように通電率を変化させる。これにより便座温度は急速に暖められるので、便座温度は、冷感限界である境界値に迅速に上昇する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便座暖房機能および局部洗浄機能を備えた衛生洗浄装置に関し、特に、省エネルギー効果をより一層向上させる制御をことができる衛生洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種のトイレ装置のうち、便座暖房機能および局部洗浄機能を備えた衛生洗浄装置では、便座の暖房および洗浄水の加熱の双方でヒータを用いている。つまり、一つの製品において少なくとも2個の加熱部を備えていることから、その消費電力が大きくなる傾向にある。例えば、「温水洗浄便座」(衛生洗浄機能を備えているトイレ装置の一般的な名称)は、一般家庭で用いられる家電製品のうち6番目に消費電力量が大きいものであることが知られている(資源エネルギー庁 平成16年度(2004年度)電力需要の概要より)。
【0003】
さらに、衛生洗浄装置は、全体的な消費電力だけでなく、待機時の消費電力も大きくなる傾向にある。トイレは時間的に見れば不規則に使用されるものであることから、衛生洗浄装置においては、暖められた便座や加熱した洗浄水を常時保温することが求められる。さらに、トイレの一日当たりの総使用時間は概ね1時間程度とされ、残りの23時間は、事実上の待機状態となっている。したがって、衛生洗浄装置は、トイレを使用するわずかな時間のために、待機状態を長期間維持しなければならないことになる。実際、「温水洗浄便座」は、一般家庭で用いられる家電製品のうち、待機時の消費電力量についても6番目に大きいものとなっている(財団法人省エネルギーセンター 平成19年度(2007年度)待機時消費電力調査報告書より)。
【0004】
そこで、従来から、衛生洗浄装置の省エネルギー化を図る技術が種々提案されている。例えば、特許文献1には、局部洗浄装置において、トイレの使用時間帯以外(待機時)に、便座ヒータまたは温水ヒータのいずれか一方あるいはその両方を非通電状態に維持する技術が開示されている。この技術では、制御部に前記非通電維持信号が入力されると、便座ヒータおよび温水ヒータの少なくとも一方は非通電状態が維持されるが、人体がトイレに入室したことが入退室検知センサにより検知されると、制御部は、便座ヒータを通電状態に復帰させ、さらに、人体が便座に着座したことが着座検知センサにより検知されると、温水ヒータを通電状態に復帰させる制御を行う。この制御は「節電モード」として設定され、操作部によって通常モードと切り替え可能となっている。
【0005】
前記節電モードによれば、待機状態では、便座ヒータおよび温水ヒータをそれぞれ非通電の状態で維持することができるため、待機時の消費電力量を節約することができる。また、使用時には、使用者の入室と同時に便座ヒータが通電状態に復帰するので、使用者は着座時に便座を冷たく感じることがないとともに、使用者の着座時に温水ヒータが通電状態に復帰するので、入室から洗浄までの間に洗浄水は十分に加温され、使用者は洗浄時に洗浄水を冷たく感じることがない。それゆえ、消費電力を節約できるだけでなく、使用者にとっての快適性も損なうことなく維持することができる。
【0006】
しかも、この技術では、節電モードにおいて、便座ヒータを完全な非通電状態に切り替えなくてもよいことが開示されている。すなわち、使用者が入室してから着座するまでは10秒前後であるとされ、この場合、入室してから便座ヒータを通電状態とすると、便座が十分に加温されていない可能性がある。これは、便座本体がポリプロピレン等の樹脂材料で形成されていることから、便座の熱容量が大きいためである。そこで、特許文献1では、節電モードにおいて、退室時に温水ヒータのみを非通電状態とし、便座ヒータは、使用者が冷たく感じない最低限の温度(たとえば20℃前後)に維持される制御も開示されている。
【0007】
このように、特許文献1に開示の技術では、使用者の入室をトリガーとして便座の加温を開始し、使用者の着座をトリガーとして洗浄水の加熱を開始している。また、使用者の入室をトリガーとしたときの問題点である、着座までの時間が短いため便座が十分に暖まらないおそれがある点についても、前記のとおり解消可能である。それゆえ、特許文献1に開示の技術は、2個の加熱部を効率よく動作させることができ、優れた省エネルギー効果を挙げることができる。
【0008】
ところで、衛生洗浄装置(温水洗浄便座)は、貯湯式と瞬間式とに大きく分類することができる。貯湯式の衛生洗浄装置は、温水タンクの中に貯水した洗浄水を温水ヒータにより加熱する方式である。温水タンクの容量に合わせて多量の温水を洗浄水として用いることができる反面、温水タンクで多量の洗浄水を一定温度に維持する消費電力が大きくなる。瞬間式の衛生洗浄装置は、温水タンクを備えず、使用する時点で洗浄水を加熱して温水とする方式である。温水タンクを備えないため、年間の消費電力量は「貯湯式」より小さくできる反面、洗浄水を急激に加熱するときの消費電力が大きくなるため、独立の電源が必要となる場合がある。なお、特許文献1には、貯湯式の局部洗浄装置が開示されている。
【特許文献1】特開2005−009078号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
いわゆる京都議定書で各国に義務付けられた二酸化炭素の排出削減目標を達成すべく、官民挙げてさらなる省エネルギー化が推進されている。衛生洗浄装置(温水洗浄便座)は、前記のとおり、全体の消費電力も待機時の消費電力も大きいことに加え、その普及率は、平成4年(1992年)3月時の14.2%から平成15年(2003年)の51.7%へと、急速に増加している(環境省 環境白書平成16年版より)ことから、さらなる省エネルギー化が求められる。
【0010】
前述した従来の技術は、十分に省エネルギー効果を実現できるものであるが、近年のさらなる省エネルギー化の要求に鑑みると、貯湯式の衛生洗浄装置においても、使用の快適性を維持しつつ、さらなる省エネルギー化を実現するための検討の余地が見出される。
【0011】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであって、便座暖房機能および貯湯式の局部洗浄機能の双方を備えた衛生洗浄装置において、便座の加温および温水の加熱のいずれも効率よく行うことにより、当該衛生洗浄装置の使用の快適性を損なうことなく省エネルギー効果をより一層向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る衛生洗浄装置は、前記の課題を解決するために、着座部と、当該着座部を暖める便座ヒータと、から少なくとも構成され、起立位置および倒伏位置の間で回動可能に設けられ、倒伏位置で使用者が着座する便座部と、洗浄用の温水を貯蔵する温水タンクと、当該温水タンク内の前記温水を加熱する温水ヒータと、を有し、前記便座部に着座した使用者の局部を前記温水洗浄する洗浄部と、トイレ室への使用者の入室を検知する入室検知器と、前記着座部の温度である便座温度を計測する便座温度計測器と、前記温水の水温を計測する水温計測器と、制御器と、を備え、前記制御器は、便座部に使用者が着座したときには、前記便座温度が予め設定された暖房値となるように、前記便座ヒータを動作させるとともに、前記着座した使用者の局部を洗浄するときには、温水の水温が予め設定された給湯値となるように、前記温水ヒータを動作させ、前記入室検知器により入室が検知された時点では、前記温水ヒータを、前記入室が検知される前の出力よりも低い出力で動作させるか前記温水ヒータの動作を停止させるとともに、前記便座ヒータを、前記入室が検知される前の出力よりも高い出力で動作させる、着座準備モードを実行するよう構成されている。
【0013】
あるいは、本発明に係る衛生洗浄装置は、前記の課題を解決するために、起立位置および倒伏位置の間で回動可能に設けられる便蓋と、着座部と、当該着座部を暖める便座ヒータと、から少なくとも構成され、起立位置および倒伏位置の間で回動可能に設けられ、倒伏位置で使用者が着座する便座部と、洗浄用の温水を貯蔵する温水タンクと、当該温水タンク内の前記温水を加熱する温水ヒータと、を有し、前記便座部に着座した使用者の局部を前記温水洗浄する洗浄部と、前記便蓋が起立位置にあることを検知する便蓋位置検知器と、前記着座部の温度である便座温度を計測する便座温度計測器と、前記温水の水温を計測する水温計測器と、制御器と、を備え、前記制御器は、便座部に使用者が着座したときには、前記便座温度が予め設定された暖房値となるように、前記便座ヒータを動作させるとともに、前記着座した使用者の局部を洗浄するときには、温水の水温が予め設定された給湯値となるように、前記温水ヒータを動作させ、前記便蓋位置検知器により便蓋が起立位置にあることが検知された時点では、前記温水ヒータを、前記起立位置にあることが検知される前の出力よりも低い出力で動作させるか前記温水ヒータの動作を停止させるとともに、前記便座ヒータを、前記起立位置にあることが検知される前の出力よりも高い出力で動作させる、着座準備モードを実行するよう構成されてもよい。
【0014】
前記各構成によれば、使用者の入室または使用者による便蓋を開く動作をトリガーとして便座ヒータの初期動作を開始するとともに、この初期動作中では、温水ヒータの出力を抑えたり動作そのものを停止したりするので、便座部を急速暖房するために独立した電源を準備することなく、便座ヒータに大きな電力を投入することができる。しかも、便座として、例えば、着座部が金属である金属便座を用いたり、樹脂製の着座部であっても熱伝導率や熱容量、便座ヒータの出力等を適宜調整したりすることによって、便座ヒータの出力を大きくすれば、着座部の温度を迅速に暖房値まで到達させることができる。さらに、貯湯式であるため温水タンク中に一定量の温水が蓄積されているので、便座部を急速暖房している間に温水ヒータの動作を停止したとしても、水温はほとんど低下することはない。それゆえ、温水タンク内の温水への影響がほとんどない状態で、迅速に便座部を暖めることができるので、入室検知前または便蓋の起立位置の検知前に便座温度をより低く設定することができるとともに、洗浄時の温水も快適な水温を維持することができる。したがって、衛生洗浄装置に供給される総電力を効率的に使用することができ、省エネルギー効果をより一層向上できるとともに、使用時の快適性も良好なものとすることができる。
【0015】
前記衛生洗浄装置においては、前記便座温度において、前記入室が検知される前、または、前記便蓋が起立位置にあることが検知される前の温度を待機値と定義するとともに、前記待機値よりも高く前記暖房値よりも低い値であり、かつ、前記使用者が前記便座部に着座したときに冷感を感じない下限値を、境界値と定義した場合、前記制御器は、前記着座準備モードを開始してから、前記便座温度が前記境界値に達するまでの間、前記便座ヒータを最大出力で動作させるとともに、前記境界値を超えてから前記暖房値に達するまでの間、前記便座ヒータを、前記最大出力よりも低く前記入室が検知される前、または、前記便蓋が起立位置にあることが検知される前の出力よりも高い出力である中間出力で動作させるよう構成されていることが好ましい。
【0016】
前記構成によれば、着座準備モードの第一段階として、境界値に達するまでは最大出力で便座ヒータを動作させることになる。それゆえ、使用者の入室または便座を開く動作の後、着座するまでの時間が通常より短いとしても、便座部は急速に暖房されるため、使用者は着座したときに冷感を感じることがない。また、この第一段階では、温水ヒータの出力は最低レベルに抑えられるか動作が停止しているので、より大きな電力を便座ヒータに集中して供給することができる。さらに、第二段階として、境界値を超えてから暖房値に達するまでは、最大出力ほどではないが、より高い出力で便座ヒータを動作させるので、便座温度は良好に上昇する。それゆえ、第二段階に入れば、使用者がいつ着座しても便座部を暖かいと感じることができ、良好な快適性を得ることができる。しかも、第二段階では、便座ヒータへの供給電力は第一段階よりも抑えられているので、必要に応じて、温水ヒータをより高い出力で動作させることもできる。したがって、水温の待機値を低く設定しても、第二段階から温水ヒータを動作させることで、洗浄時の水温を給湯値までより確実に高めることができる。
【0017】
前記衛生洗浄装置においては、前記便座部が起立位置にあることを検知する便座位置検知器と、計時器と、をさらに備え、前記制御器は、予め設定された着座準備時間に達したことが前記計時器により計測された後、または、前記便座温度が前記境界値に達したことが前記便座温度計測器により計測された後に、前記便座部が起立状態にあることが前記便座位置検知器により検知されたときには、前記着座準備モードの実行を中止するよう構成されていることが好ましい。
【0018】
前記構成によれば、着座準備モードを開始してから所定時間(着座準備時間)経過した後、または、前記便座温度が境界値に達した後で、便座部が起立状態にあれば、男子小用等で使用され、便座部への着座がないと判定できる。つまり、所定の条件を満たした上で便座位置検知器により便座部が起立状態にあると判定されれば、便座部を暖める必要がないので、着座準備モードを中止して便座ヒータの出力を低下させることができる。それゆえ、便座ヒータを無駄に動作させることがなく、省エネルギー効果の低下を回避することができる。なお、着座準備モードの中止に伴い、必要に応じて、温水ヒータの出力も低下させたり停止させたりすることができるので、省エネルギー効果をより一層高めることができる。また、使用者が途中で便座部を倒伏状態として着座したとしても、便座部はすでにある程度暖められているので、使用者にとっては快適性が損なわれることがほとんどない。それゆえ、急な着座にも十分対応することができる。
【0019】
前記衛生洗浄装置においては、前記制御器は、前記着座準備モードを開始した直後には、前記便座ヒータを、先に前記中間出力で動作させてから、前記最大出力で動作させるよう構成されていることがより好ましい。
【0020】
前記構成によれば、着座準備モードを開始した直後、一度、中間出力で便座ヒータを動作させてから最大出力で動作させることになる。それゆえ、大きな突入電流の発生を回避することができる。
【0021】
前記衛生洗浄装置においては、前記便座部への使用者の着座を検知する着座検知器を、さらに備え、前記制御器は、前記着座検知器により着座が検知されたときに、前記水温が前記給湯値未満であれば、前記洗浄水ヒータを、前記入室が検知される前、または、前記便蓋が起立位置にあることが検知される前の出力を超える出力で動作させるよう構成されていることが好ましい。
【0022】
前記構成によれば、使用者の便座への着座をトリガーとして、温水ヒータで温水タンク内の温水を加熱するか否かを判定することになる。それゆえ、着座時点で水温が給湯値に達していれば、温水ヒータに加熱動作を行わせずに済むので、温水ヒータを無駄に動作させることを回避できる。また、着座時点で水温が給湯値未満であれば温水ヒータを動作させるが、着座後の局部の洗浄までは、使用者の排泄を挟むため、基本的にある程度の時間が生ずる。それゆえ、使用のタイミングに合わせて適切に温水を加熱することになり、水温が低くても十分な加熱時間を確保できる。その結果、省エネルギー効果を確保しつつ、使用時の快適性を良好なものとすることができる。
【0023】
前記衛生洗浄装置においては、前記制御器は、前記着座準備モードを開始した後、前記便座温度が前記暖房値に達した後には、当該暖房値を維持するように前記便座ヒータを動作させる、着座モードを実行し、当該着座モードでは、前記着座検知器により着座が検知された後に、予め設定された着座初期時間に達したことが前記計時器により計測されたときには、前記便座ヒータの出力をさらに低下させるよう構成されていることが好ましい。
【0024】
前記構成によれば、着座準備モードから着座モードに切り替ってから、一定時間(着座初期時間)が経過した後、便座ヒータの出力を弱めるので、便座温度を若干下げることができる。着座の初期は、便座部はできるだけ暖かい方が好ましいが、ある程度暖まってくれば、使用者の着座感も慣れてくることに加え、着座部の大部分が臀部で覆われて着座部からの放熱も少なくなる。それゆえ、便座温度を少し下げることで、より快適性を向上できる上に、省エネルギー効果も向上できる。
【発明の効果】
【0025】
以上のように、本発明では、便座暖房機能および貯湯式の局部洗浄機能の双方を備えている構成の衛生洗浄装置において、便座の加温および温水の加熱のいずれも効率よく行うことができ、当該衛生洗浄装置の使用の快適性を損なうことなく省エネルギー効果をより一層向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0027】
(実施の形態1)
[衛生洗浄装置の構成]
まず、本発明の実施の形態1に係る衛生洗浄装置の構成について、図1ないし図4(a),(b)に基づいて説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る衛生洗浄装置50aの外観構成を模式的に示す斜視図であり、図2は、図1に示す衛生洗浄装置50aが備える本体部51の内部構成を示す斜視図である。また、図3は、図1に示す衛生洗浄装置50aが備える便座部53の内部構成を示す分解斜視図であり、図4(a),(b)は、図3に示す便座部53が備える便座ヒータ33の具体的構成を示す平面図である。
【0028】
図1に示すように、本実施の形態に係る衛生洗浄装置50aは、本体部51、操作部52、便座部53、便蓋54、リモートコントローラ55、入室センサ56、および着座センサ57を備えている。衛生洗浄便座50aの本体部51、便座部53および便蓋部54は、一体的に組み付けられて便器60(図中点線で示す。)の上面に設置される。以下、便座部53に着座した使用者から見て前方を前、後方を後ろ、左右側方を左右として説明する。また、便座部53と便蓋部54とは、それぞれ起立位置と倒伏位置との間で、それぞれ別個にかつ両者一緒に回動可能に設けられるが、以下では、便宜上、これらが倒伏位置から起立位置へ向かって回動することを「開く」といい、起立位置から倒伏位置へ向かって回動することを「閉じる」という。
【0029】
本体部51は、筐体および底板を備えている。筐体は中空で下面が開放された箱状に形成されており、本体部51の右側部には操作部52が設けられている。図2に示すように、本体部51内には、洗浄ノズル11、温水タンク12、および乾燥ユニット20、並びに、図示されない各種駆動部、ヒータ調節部、制御部等が収容されている。なお、図2では、筐体を外した状態を図示しており、底板511の上面に洗浄ノズル11、温水タンク12、乾燥ユニット20等が固定されている。そして、この上に、図示されない筐体が被せられて底板511に固定されることにより、本体部51が構成される。筐体および底板の具体的構成は特に限定されず、本発明の技術分野で公知の構成を好適に用いることができる。各種駆動部、ヒータ調節部、制御部等については、衛生洗浄装置50aの制御系統とともに説明する。
【0030】
操作部52は、本体部51の右側に位置し、衛生洗浄装置50aに備えられた機能のうち主要な一部を操作する。なお、操作部52には、使用者に操作上の各種情報を表示する表示部が備えられていてもよい。本実施の形態では、操作部52は、図1に示すように、本体部51に一体化されているが、これに限定されず、別体であってもよい。
【0031】
洗浄ノズル11は、便座部53に着座した使用者の局部を温水で洗浄するものであり、図2に示すように、使用していない状態では本体部51に収容されているが、使用時には、ノズル駆動部(図2では、洗浄ノズル11の下側に隠れている。)により本体部51から突出し、先端側から臀部に向かって温水を噴射するよう構成されている。
【0032】
温水タンク12は、洗浄用の温水を内部に貯蔵するものであり、図2には図示されない温水ヒータが設けられている。温水ヒータは、温水タンク12内の温水を加熱する。温水タンク12は、図2では、その一部が図示される温水配管121により洗浄ノズル11に接続され、温水タンク12内の温水が洗浄ノズル11に供給される。また、図2に示すように、温水タンク12は、その前側右下方に開閉弁122が設けられ、さらに、この開閉弁122に給水接続部123が設けられている。給水接続部123は図示されない給水配管により水道に接続され、これにより加熱される前の洗浄用の水が温水タンク12に供給される。温水タンク12の容量は特に限定されないが、一般的には、0.8〜1.4リットルの範囲内が好ましい。
【0033】
なお、前記洗浄ノズル11、ノズル駆動部、温水タンク12、温水ヒータ等によって、局部洗浄機能を行う洗浄ユニットが構成される。
【0034】
乾燥ユニット20は、後述するように、乾燥ヒータ、乾燥ファン、およびこれらの駆動部等により構成され、洗浄後の局部を乾燥するための温風を送風する。また、排泄中の臭気成分を脱臭する脱臭機構も兼ね備えていてもよい。
【0035】
これら洗浄ユニットおよび乾燥ユニット20の具体的な構成は特に限定されず、少なくとも洗浄ユニットに温水タンク12が含まれる貯湯式の構成であれば、公知の構成を用いることができる。なお、温水タンク12の具体的な形状や大きさ等ももちろん限定されないことはいうまでもない。また、本体部51内には、これら以外の機能ユニットが内蔵されていてもよい。
【0036】
便座部53は、便蓋54とともに、便座・便蓋開閉部を介して本体部51に回動自在に取り付けられており、倒伏状態で使用者が着座する。便座部53は、図3に示すように、上部便座筐体31、下部便座筐体32、および便座ヒータ33から少なくとも構成されている。
【0037】
上部便座筐体31の上面は使用者が着座したときの着座面となるので、上部便座筐体31は着座部に相当する。上部便座筐体31の材質は、本実施の形態では、金属であればよいが、本実施の形態では、アルミニウムまたはその合金が用いられる。また、上部便座筐体31の表面には、公知の塗装技術やコーティング技術により防錆防傷層が形成されている。上部便座筐体(着座部)31が金属であれば、熱伝導率が良好であり、かつ、その厚みを薄くしても着座部としての強度を保持することができるので、着座部の熱容量を小さくすることもできる。
【0038】
なお、上部便座筐体31の材質は金属に限定されず、樹脂製であってもよい。樹脂として熱伝導率の高い材料が選択されることで、上部便座筐体31が金属である場合と同様に、暖房を迅速に進行させることができる。さらに、上部便座筐体31が樹脂製であっても、当該樹脂の熱伝導率および熱容量に応じて、後述する便座ヒータ33として、適切な昇温能力を有するヒータを採用して組み合わせることにより迅速な暖房を実現することができる。
【0039】
下部便座筐体32は、合成樹脂製であり、便座部53のベースとなる。下部便座筐体32の上面に上部便座筐体31が重ねられ、それぞれの内周縁および外周縁で接合されることにより、内部には水等の浸入が阻止される密閉された空洞部が形成される。この空洞部内には、面形状の便座ヒータ33が設けられる。本実施の形態では、便座部53は略楕円形状であり、便座ヒータ33は、図3および図4(a),(b)に示すように、この楕円形状に対応した略馬蹄形状となっている。なお、便座ヒータ33は、略楕円形状であってもよい。
【0040】
便座ヒータ33は、図4(a),(b)に示すように、金属箔部331の表面に所定のパターンで線状ヒータ332が配設された構成となっている。線状ヒータ332は、例えば、図4(a)に示す構成では、便座ヒータ33の後ろ側の中央部から前側の両端部(略馬蹄形状において切り欠かれた部位)まで、便座部53の形状に合わせて略前後方向に蛇行するパターンで配設されている。また、線状ヒータ332のヒータの端部333は、便座ヒータ33の後ろ右側に位置し、それぞれ始端側および終端側のそれぞれがリード線334に接続されている。このリード線334を介して本体部51から通電される。あるいは、図4(b)に示す構成では、線状ヒータ332は、前面にわたって、便座部53の形状に合わせて略左右方向に蛇行するパターンで配設されている。線状ヒータ332の配設パターンは、これらの構成に限定されず、他のパターンであってもよいし、これらを部分的に組み合わせたパターンであってもよい。
【0041】
なお、便座ヒータ33は、線状ヒータ332に限定されず、公知の面ヒータ、ランプヒータ(輻射熱加熱器)等も好ましく用いることができる。本実施の形態では、便座部53は急速に便座温度を上昇させる加熱方式(瞬間式)の便座であることが好ましいが、便座ヒータ33として、前記各種ヒータを用いることで、急速な便座の加熱が可能となる。
【0042】
便蓋54は、便座部53の後側に、便座部53とともに、便座・便蓋開閉ユニット62を介して本体51に回動自在に取り付けられている。便蓋54の具体的な構成は特に限定されない。すなわち、衛生洗浄装置50aの非使用状態では、便座部53および便蓋54はいずれも閉じており、便器60の上面に、便座部53、便蓋54の順で重ねられた状態となる。このとき、便蓋54は、便座部53を覆うような形状となっていればよい。便蓋54の材質も特に限定されず、例えば、プロピレン樹脂等の公知の樹脂材料で形成されている。
【0043】
リモートコントローラ55は、トイレ室内において便座53に着座した使用者が操作可能な位置に設置される。このリモートコントローラ55には、衛生洗浄便座50aに備えられた機能を操作するための操作部が設けられている。リモートコントローラ55は、本体部51に内蔵されている制御部と無線通信可能に構成されており、リモートコントローラ55の操作部にて入力された操作信号は本体部51の制御部へ送信され、制御部59では受信した操作信号に応じた衛生洗浄装置50aの動作制御を行う。
【0044】
入室センサ56は、トイレ室内に使用者が入室したことを検知し、トイレ室の壁面等に設置される。本実施の形態において、入室センサ56は焦電型の赤外センサで構成され、人体の表面から輻射される物体の表面温度に比例して輻射される赤外線を検出する。これによ、入室センサ56は、人体のトイレ室への入室に伴う当該入室センサ56の検知範囲内での赤外線の変化量を検出し、この検出信号を本体部51の制御部へ出力する。本体部51の制御部では、入室センサ56から入力された検出信号から、トイレ室内に使用者が入室したことが検知される。なお、入室センサ56は、トイレ室内での人体の存在を検知する人体センサとして機能するので、使用者が退室したことも検知できる。
【0045】
着座センサ57は、便座部53に使用者が着座したことを検出するものであり、本体部51の前部に設けられている。本実施の形態において、着座センサ57は反射型の赤外センサで構成されており、着座センサ57は、赤外線を本体部51の前面から便座部53の上方へ向けて投射するとともに便座部53に着座した人体で反射された赤外線を検出して、この検出信号を本体部51の制御部へ出力する。制御部では、着座センサ56から入力された検出信号から、便座部53上に使用者が着座していることが検知される。
【0046】
[衛生洗浄装置の制御系統]
次に、本実施の形態に係る衛生洗浄装置50aの制御系統について、前記洗浄ユニット、乾燥ユニット20、便座部53、便蓋54等の基本動作とともに図5に基づいて説明する。図5は、前記衛生洗浄装置50aの制御構成を示すブロック図である。
【0047】
衛生洗浄装置50aの制御系統は、図5に示すように、洗浄ユニット10、乾燥ユニット20、便座・便蓋開閉ユニット30、便座ヒータ調節部34、便座開閉センサ37、操作部52、入室センサ56、着座センサ57、制御部58、記憶部61、およびタイマー62等から構成されている。
【0048】
制御部58は、衛生洗浄装置50aの動作を制御するものであり、例えば、公知のマイクロコンピュータのCPUで構成される。なお、前記制御部58は単独の制御器のみならず複数の制御器からなる制御器群であってもよい。また、記憶部61は、例えば、マイクロコンピュータの内部メモリで構成されるが、図示されない他の外部メモリや記憶装置で構成されてもよい。タイマー62は、公知のタイマー回路として構成されてもよいし、CPUが記憶部61に格納されるプログラムに従って動作することにより実現される構成、すなわち制御部58の機能構成であってもよい。
【0049】
入室センサ56、着座センサ57、および便座開閉センサ37は、いずれも制御部58における各種制御に用いられる検知結果を入力する入力器である。前記のとおり、入室センサ56からはトイレ室への使用者の入退室が検知され、制御部58に入力される。着座センサ30からは使用者が便座部53に着座したことが検知され、制御部58に入力される。便座開閉センサ37では、便座部53の開閉位置が検知され、制御部58に入力される。
【0050】
なお、本実施の形態では、衛生洗浄装置50aが備える入力器は前記3種類のセンサであるが、もちろんこれに限定されず、他のセンサあるいは他の入力装置をさらに備えてもよいし、一部のセンサが備えられていなくてもよいし、一部のセンサが他のセンサあるいは他の入力装置に置き換えられてもよい。
【0051】
また、便座開閉センサ37は、便座部53が開いた位置、すなわち起立位置を検知するように構成されてもよいし、便座部53が閉じた位置、すなわち倒伏位置を検知するよう構成されてもよい。本実施の形態では、後述するように、男性小用時に便座ヒータ53を制御する関係上、起立位置を検知するよう構成されている。なお、図5では、便座開閉センサ37が図5には図示されない便座部53の位置を検知する構成となっていることを、便座・便蓋開閉ユニット30と便座開閉センサ37とを点線で結ぶことで図示している。
【0052】
操作部52は、いずれも衛生洗浄装置50aにおける各種の操作を行うための操作器であり、各種の操作信号を入力すれば、これら操作信号が制御部58に出力されるとともに、制御部58の制御により生成した各種の制御信号が、必要に応じて操作部52に対して入力される。なお、図5には図示されないが、リモートコントローラ55も同様に制御系統を構成する。
【0053】
洗浄ユニット10は、前記のとおり、洗浄ノズル11、温水タンク12、温水ヒータ13、温水ヒータ調節部14、ノズル駆動部15、水温計16等から構成されている。制御部58によりノズル駆動部15が制御され、ノズル駆動部15により洗浄ノズル11が駆動される。また、制御部58により温水ヒータ調節部14が制御され、温水ヒータ調節部14により温水ヒータ13の出力が調節される。温水ヒータ13により温水タンク12内に貯蔵される温水が加熱されるが、温水の水温は水温計16により計測され、制御部58に出力される。制御部58は、この水温に基づいて、温水ヒータ調節部14を制御し、これにより温水ヒータ13の出力が調節される。もちろん洗浄ユニット10には他の構成が含まれていてもよい。また、洗浄ユニット10の具体的な構成は特に限定されず、貯湯式の衛生洗浄装置で公知の温水ヒータ、調節部、洗浄ノズル装置、水温計等であればよい。
【0054】
乾燥ユニット20は、図5では図示されないが、本実施の形態では、乾燥ファン、ファン駆動部、乾燥ヒータ、および乾燥ヒータ調節部等から構成されている。制御部58によりファン駆動部が制御され、ファン駆動部により乾燥ファンが駆動される。また、制御部58により乾燥ヒータ調節部が制御され、乾燥ヒータ調節部により乾燥ヒータの出力が調節される。乾燥ユニット20の具体的な構成も特に限定されず、公知の乾燥ユニットの構成であればよい。また、前記のとおり、乾燥ユニット20には、脱臭機能が含まれても良い。
【0055】
便座・便蓋開閉ユニット30は、本実施の形態では、開閉駆動部36および便座・便蓋開閉部35から構成されている。前記便座開閉センサ37は必要に応じて便座・便蓋開閉ユニット30に含まれてもよい。制御部58により開閉駆動部36が制御され、開閉駆動部36により便座・便蓋開閉部35が動作し、便座部53、便蓋54が自動で開閉される。もちろん便座部53および便蓋54は手動で開閉できるよう構成されてもよい。
【0056】
便座部53および便蓋54のうち、少なくとも便蓋54は、入室センサ56および着座センサ57による使用者の検知よって自動で開閉される。入室センサ56により使用者のトイレ室への入室が検知されれば、制御部58により開閉駆動部36が制御され、便座・便蓋開閉部35が動作し、使用者の入室とほぼ同時に便蓋54が自動で開かれる。また、使用者が便座部53に着座した状態から立ち上がり、着座センサ57による着座が検知されなくなれば、制御部58により開閉駆動部36が制御され、便座・便蓋開閉部35が動作し、便蓋54が自動で閉じられる。
【0057】
便座ヒータ調節部34は、制御部58により制御され、便座部53が備える便座ヒータ33の出力を調節する。また、便座部53には、便座部53の温度(より具体的には着座部である上部便座筐体31の温度。以下、便座温度とする。)を計測する便座温度計36が設けられている。便座温度計36により計測された便座温度は、制御部58に出力され、制御部58は、この便座温度に基づいて、便座ヒータ調節部34を制御し、これにより便座ヒータ33の出力が調節される。また、便座温度計36は制御部58の制御により便座温度を監視するよう構成されてもよい。便座ヒータ調節部34、便座温度計36の具体的な構成も特に限定されず、公知の構成が用いられる。
【0058】
ここで、衛生洗浄装置50aは、加熱機構として、温水ヒータ13、乾燥ヒータ、および便座ヒータ33の3種類のヒータを備えているが、これらのうち、温水ヒータ13および便座ヒータ33については、少なくとも入室センサ56による入室の検知をトリガーとして、制御部58によりその出力や動作が制御される。
【0059】
[便座温度および温水の水温の調節]
次に、本実施の形態において、制御部58の制御により、便座温度および温水の水温を調節するための温水ヒータ13および便座ヒータ33の動作について、図5および図6に基づいて具体的に説明する。図6は、図5に示す衛生洗浄装置50aにおける便座温度の変化と、温水ヒータ13および便座ヒータ33への通電率の変化とを示すタイミングチャートである。
【0060】
図6においては、上段が、時間経過に対する便座温度の変化を示すラインチャートであり、縦軸が便座温度、横軸が時間である。縦軸の単位は「℃」であるが、横軸は、主として、使用者の動作を基準として時間の経過を説明するので、個別に説明しない限り、特定の時間の単位は用いていない。また、図6の下段は、便座ヒータ33および温水ヒータ13の通電率を示すチャートであり、上側のチャートが便座ヒータ33の通電率を示し、下側のチャートが温水ヒータ13の通電率を示す。そして、これらチャートの横軸は時間となっており、上段のラインチャートの横軸と対応付けられている。
【0061】
まず、本実施の形態では、使用者が便座部53に着座したときには、便座温度は所定の「暖房値」となるように設定され、使用者が排泄後に局部を洗浄するときには、温水の水温が予め設定された「給湯値」となるように設定されている。これら暖房値および給湯値は、操作部52により設定および変更することができる。なお、あるデータ値が「設定」されるとは、制御部58が記憶部61に当該データ値を設定値として記憶することを意味する。当該データ値は、デフォルトで、または操作部52を用いて入力されることによって制御部58に与えられる。
【0062】
具体的には、暖房値の標準として、例えば便座温度36℃が設定され、これが「中」レベルとなっている。そして、「中」レベルより2℃高い便座温度38℃が「高」レベルとして設定され、「中」レベルより2℃低い便座温度34℃が「低」レベルとして設定されている。また、給湯値の上限値として、例えば水温40℃が設定され、操作部52の操作により36〜40℃の範囲内で給湯値を変更することが可能となっている。
【0063】
また、本実施の形態では、使用者が衛生洗浄装置50aを使用していないときに、便座温度および水温のいずれも、前記暖房値および給湯値よりも低い「待機値」となるように設定されている。具体的には、便座温度の待機値は、暖房値の標準36℃に対して18℃が設定され、水温の待機値は、給湯値40℃に対して33℃が設定されている。なお、水温の待機値については、トイレ室の室温との相対関係で設定され、トイレ室の室温10℃以下で33℃が設定され、室温が10〜25℃の範囲内であれば、温水ヒータ13の出力性能に合わせて33℃以下に変更され、室温25℃以上では温水ヒータ13の動作が停止され、室温と同程度とするよう構成することができる。
【0064】
さらに、本実施の形態では、便座温度については、暖房値と待機値との間に「境界値」が設定されている。この「境界値」は、使用者が便座部53に着座したときに冷感を感じない下限値であり、具体的には、例えば、便座温度29〜30℃の範囲内として設定される。図6では、境界値を30℃と設定している。
【0065】
前記のとおり便座温度および水温について前記各設定温度が設定された上で、トイレ室が無人の状態にあると、洗浄ユニット10および便座部53では、温水の水温および便座温度のいずれも待機値が維持されるよう制御部58により制御される。それゆえ、図6の下段に示すように、温水ヒータ13は、所定値(例えば400W)の通電率で維持され、また、便座ヒータ33は、一定周期で50Wの通電期間と休止期間とが繰り返される(50W温調制御)。図6の上段に示すように、便座温度は、待機値18℃が維持される。また、図6には水温は記載されていないが、前記のとおり待機値33℃が維持される。このように、水温および便座温度が待機値を維持するような制御モードを待機モードと定義する。
【0066】
なお、本実施の形態では、便座部53の着座部(上部便座筐体31)が金属であるので、熱伝導率が高く、かつ、厚みを薄くしても十分な強度を保持することができるため、一般的な樹脂製の着座部よりも熱容量を小さくすることができる。それゆえ、便座ヒータ33による暖房は一般的な樹脂製の便座よりも迅速に進行するので、便座温度の待機値は18℃以下に設定することができる。例えば、待機値を10℃と設定しておけば、待機モードでは、トイレ室の室温が10℃以下であれば便座ヒータ33を待機出力で動作させればよく、10℃を超えていれば便座ヒータ33の動作を停止してもよい。
【0067】
なお、着座部の材質が樹脂であっても、前記のとおり、熱伝導率の高い樹脂を選択したり、樹脂製の着座部の熱伝導率および熱容量に応じた昇温能力を有する便座ヒータ33を選択したりすることで、着座部が金属である場合と同様の迅速な暖房を実現することができる。また、この場合、着座部の加温の程度に合わせて待機温度を適切な値に設定することで、暖房のより迅速に進めることができる。
【0068】
また、図6の下段に示す例では、温水ヒータ13の通電率は、400Wが継続的に維持されているが、待機モードでは、制御部58は、温水ヒータ13を断続的に動作するよう制御するよう構成されている。具体的には、前記のとおり、水温の待機値が33℃であるので、水温計16の計測値が33℃以上であれば、制御部58は温水ヒータ13の400Wの通電を遮断して動作を停止させる。この状態では、温水は自然に放熱されるが、水温計16の計測値が33℃未満となれば、制御部58は温水ヒータ13を動作させる。このように、水温に基づいて温水ヒータ13を適宜ONまたはOFFすることで、加熱と自然放熱とを繰り返し、水温の待機値33℃を維持する。
【0069】
この温水ヒータ13のより具体的な制御は限定されないが、温水ヒータ13のONおよびOFFの切り替えのタイミングは10秒を目安とすればよい。例えば、水温計16の計測値が33℃未満であれば、制御部58は温水ヒータ13をONするが、一度ONした後には、不用意な連続のONおよびOFF(チャタリング)を防止するために、最低10秒間はヒータをOFFするよう制御することが好ましい。そして、OFF状態が10秒経過した後に、再び水温計16の計測値を確認し、33℃よりも低くければ温水ヒータ13をONし、高ければOFFを継続する。
【0070】
次に、使用者がトイレ室に入室すると、入室センサ56が入室を検知し、制御部58に検知結果を出力する。制御部58は、図6の下段に示すように、便座ヒータ33に対して、50W温調制御から、600Wの通電に上昇させ、その0.5秒後に、さらに1200Wの通電に上昇させる制御を行う。一方、温水ヒータ13に対しては、通電が遮断される制御を行う。つまり、待機モードでは、温水ヒータ13および便座ヒータ33は、それぞれ待機値を維持する出力(待機出力)となるように、制御部58により通電が制御されていたが、トイレ室への入室が検知されると、制御部58は、温水ヒータ13の通電を遮断して、温水ヒータ13の動作を停止させ、代わりに、便座ヒータ33の通電率を最大レベルまで上昇させて、最大出力で動作させる。
【0071】
このように、使用者の入室をトリガーとして開始された便座ヒータ33の初期動作中に、温水ヒータ13の動作を停止することで、便座ヒータ33に最大電力を投入することができる。それゆえ、図6の上段に示すように、便座温度を急速に上昇させることができる。このとき、便座部53の着座部(上部便座筐体31)は金属製であるため、便座ヒータ33の出力を大きくすることで、迅速かつ効率的に便座温度を上昇させることができる。
【0072】
なお、入室が検知された後、便座ヒータ33に対して1200Wの通電を行ってもよいが、本実施の形態では、一度、600Wの通電を行ってから1200Wの通電を行っている。このように、便座ヒータ33を最大出力で動作させる前に、中間出力で動作させることで、大きな突入電流の発生を回避することができる。
【0073】
すなわち、便座ヒータ33として用いられる各種のヒータは、低温状態での抵抗値が低く、高温状態での抵抗値が高い特性を示すものが存在する。このような種類のヒータに対して一度に大電力を投入すると突入電流が発生する。発生した大きな突入電流は、家庭内の同一配線上に配備されたコンセントに接続された他の機器に対して電源電圧変動を引き起こす可能性がある。したがって、大きな突入電流の発生は回避されるべきものである。本実施の形態では、前記のように、着座モードを開始した直後には、便座ヒータ33を、先に前記中間出力で動作させてから、前記最大出力で動作させるよう構成することで、大きな突入電流の発生を有効に回避することができる。
【0074】
ここで、制御部58は、図6の下段に示すように、便座温度が暖房値に達するまで、便座ヒータ33に対して1200Wの通電を継続してもよいが、前記のとおり、便座温度の境界値30℃に達した時点で、600Wの通電に低下させている。つまり、制御部58は、便座温度計36により便座温度が30℃に達したことが計測されれば、便座ヒータ33の通電率を1200Wから600Wに低下させる。このときの便座温度の変化について見れば、図6の上段の実線に示すように、入室の検知後、6秒後に便座温度が境界値に達し、その後は、さらに9.5秒後(入室の検知から15秒後)に便座温度が暖房値の「高」レベルである38℃に達している。
【0075】
また、図6の下段では、制御部58は、温水ヒータ13に対しては、通電を遮断した状態から、元の通電状態に戻す制御を行っているが、これは、前記のとおり、水温の待機値33℃を維持する動作が継続していることを示している。
【0076】
このように、本実施の形態では、制御部58は、便座温度が境界値に達するまでの間、便座ヒータ33を最大出力で動作させ、境界値を超えてから暖房値に達するまでの間は、便座ヒータ33を、中間出力で動作させるよう制御している。これにより、最大出力での動作時(第一段階とする。)では、温水ヒータ13の動作は停止しているので、より大きな電力を便座ヒータ33に集中して供給することができる。それゆえ、使用者の入室後、着座するまでの時間が通常より短いとしても、便座部53は急速に暖房されるため、使用者は着座したときに冷感を感じることがない。また、短時間で急速に境界値まで便座が暖められるので、全体的な消費電力は小さいものとなる。
【0077】
その後、便座ヒータ33の中間出力での動作時(第二段階とする。)には、最大出力ほどではないが、より高い出力で便座ヒータ33を動作させるので、便座温度は暖房値まで迅速かつ良好に上昇する。それゆえ、第二段階に入れば、使用者がいつ着座しても便座部53を暖かいと感じることができ、良好な快適性を得ることができる。
【0078】
さらに、第一段階で温水ヒータ13の動作が停止していても、洗浄ユニット10は貯湯式であるため、温水タンク12中の温水の水温はほとんど低下しない。これは、温水タンク12中に一定量の温水が貯蔵されることから、この温水全体の熱容量が大きくなり、数秒程度の経過時間では、水温に変化は生じないためである。それゆえ、温水タンク12内の温水への影響がほとんどない状態で、迅速に便座部53を暖めることができるとともに、温水も洗浄時点で快適な水温を維持することができる。したがって、便座ヒータ33の制御が第二段階に入った時点でも、温水ヒータ13の動作を待機出力に戻さなくてもよく、動作の停止を継続してもよいし、待機出力未満の出力で動作させてもよい。
【0079】
その後、前記のとおり、図6の上段の実線で示すように、境界値に達してから9.5秒後(入室の検知から15秒後)には、便座温度は、暖房値の「高」レベルである38℃に到達する。制御部58は、便座温度計36により便座温度が38℃に達したことが計測されれば、図6の下段に示すように、便座ヒータ33への通電制御を600Wの通電から50W温調制御に戻す。なお、温水ヒータ13への通電は、境界値に達して以降は、元の通電状態が継続される。このとき、図6の上段に示すように、使用者は、トイレ室に入室した後、脱衣の状態にあって、いまだ着座していない。それゆえ、使用者が便座部53に着座する前に、便座温度を暖房値まで上昇させることになる。このように、トイレ室への入室から便座温度が暖房値に到達するまでの制御モードを、着座準備モードと定義する。
【0080】
ここで、制御部58は、入室センサ56による入室の検知の後、便座温度が境界値に達した時点、または、予め設定された着座準備時間に達した時点で、便座部53が開いた位置(起立位置)にあるか否かも判定するよう構成されている。男子小用のように、使用者が衛生洗浄装置50aを使用するものの着座はしない場合があるため、着座がないときには便座部53の暖房を中止することで、省エネルギー効果を高めることができる。つまり、本実施の形態では、便座温度の境界値への到達または着座準備時間の到達を第一の中止条件とし、便座部が起立位置にあることを第二の中止条件として、これら双方の中止条件が満たされれば、着座準備モードの実行を中止する制御を行うことが好ましい。
【0081】
具体的には、まず、第一の中止条件が便座温度の境界値への到達である場合には、入室の検知の後、制御部58は、便座温度計36に便座温度を監視させる。便座温度計36により便座温度が境界値に達したことが検出されれば、制御部58は、便座開閉センサ37に対して便座部53が起立位置にあるか否かを検知させる(第二の中止条件の判定)。また、第一の中止条件が着座準備時間の到達である場合には、入室の検知の後、制御部58は、タイマー62に着座準備時間の計測を開始させる。着座準備時間が例えば7秒と設定されていれば、入室から7秒後、制御部58は、便座開閉センサ37に対して便座部53が起立位置にあるか否かを検知させる(第二の中止条件の判定)。
【0082】
起立位置でないことが検知されれば着座の準備状態にあると判定されるので、前記のとおり、便座ヒータ33による便座部53の暖房を継続すればよいが、起立位置であることが検知されれば、使用者は着座しないと判定さえるので、図6の上段の点線(i)(第一の中止条件が便座温度の境界値である場合)または点線(ii)(第一の中止条件が着座準備時間である場合)で示すように、着座準備モードを中止し、便座部53の暖房を停止する。
【0083】
このように、着座準備モードを開始してから、便座温度が所定値(境界値)に達した後か、または、所定時間(着座準備時間)が経過した後、便座部53が起立状態にあれば、便座部への着座がないと判定できるので、便座部53を暖める必要がない。それゆえ、着座準備モードを中止して待機モードに切り替えることにより、便座ヒータ33の出力を低下させることができる。それゆえ、便座ヒータ33を無駄に動作させることがなく、省エネルギー効果の低下を回避することができる。
【0084】
なお、着座準備モードの中止に伴い、必要に応じて、温水ヒータ13の出力も低下させたり停止させたりすることができるので、省エネルギー効果をより一層高めることができる。また、使用者が途中で便座部53を閉じて着座したとしても、図6の上段に示すように、便座部53はすでに境界値まで暖められているので、使用者にとって快適性が損なわれることがほとんどない。それゆえ、急な着座にも十分対応することができる。
【0085】
また、第一の条件は、前記便座温度が所定値に到達することや所定時間へ到達することに限定されず、他の条件を採用してもよい。また、便座温度の所定値は境界値に限定されず、境界値より高くても低くてもよい。ただし境界値を閾値とすることで、使用者が途中で着座する事態にも対応できるとともに、過剰な暖房を回避できるので好ましい。
【0086】
次に、便座温度が暖房値に達して以降は、制御部58の制御モードは着座準備モードから着座モードに切り替る。着座モードでは、制御部58は、便座温度を暖房値に維持し、温水の水温も給湯値に維持する制御を行う。そして、図6の上段の実線に示すように、着座モードに入ってから、使用者が便座部53に着座すると、着座センサ57により着座が検知され制御部58に出力される。このように、使用者が着座する前に着座モードに切り替っていれば、使用者が着座した時点では、便座部53は十分に暖まっているので、使用者は十分な快適性を得ることができる。
【0087】
ここで、図6には示さないが、着座の検知に伴い、制御部58は、温水タンク12内の温水の水温を水温計16で計測し、この水温が給湯値未満であれば、温水ヒータ13の動作を、待機出力から給湯出力に変更する。つまり、本実施の形態では、温水ヒータ13は、400Wの通電による動作(ON)と通電の遮断(OFF)との切り替えのみが行われる構成であるので、待機出力では、水温の待機値33℃が維持できるように、ONまたはOFFが適宜切り替えられる。さらに給湯出力では、水温を待機値33℃から給湯値40℃まで上昇させるために、ONの時間を長くすることになる。
【0088】
一般に、着座から局部の洗浄の開始までの時間は、300秒前後が目安とされている。そして、温水ヒータ13の供給電力が400Wであれば、300秒で水1リットルの温度を20℃上昇させることができる。つまり、1リットルの洗浄水を1℃昇温させるには15秒を要する。これに基づけば、水温の待機値が33℃であって給湯値が40℃であれば、1リットルの洗浄水を7℃昇温させればよく、それゆえ、温水ヒータ13を105秒動作させればよいことになる。したがって、温水ヒータ13の出力を待機出力から給湯出力に変更するトリガーは、着座の検知で十分であることになる。逆に、着座が検知されるまでは、温水ヒータ13の出力を低下させたり動作を停止したりすれば、省エネルギー効果をより一層向上させることができる。
【0089】
また、この制御では、使用者の着座をトリガーとして、温水ヒータ13で温水タンク12内の温水を加熱するか否かを判定することになる。それゆえ、着座時点で水温が給湯値に達していれば、温水ヒータ13に加熱動作を行わせずに済むので、温水ヒータ13を無駄に動作させることを回避できる。つまり、使用のタイミングに合わせて適切に温水を加熱することができるため、省エネルギー効果を確保しつつ、使用時の快適性を良好なものとすることができる。
【0090】
さらに、前記着座モードでは、使用者が便座部53から離れるまで、便座ヒータ33および温水ヒータ13をそのままの出力で動作させてもよいが、本実施の形態では、着座が検知された後に、予め設定された着座初期時間に達すれば、便座ヒータ33の出力を少し低下させるよう構成されている。具体的には、着座センサ57により着座が検知されれば、制御部58が、タイマー62に着座初期時間の計測を開始させる。着座初期時間が例えば10分と設定されていれば、着座から10分後、制御部58は、図6の上段の実線に示すように、2分の時間をかけて便座温度を「高」レベルから「中」レベル(36℃)に低下させるよう便座ヒータ33の出力を調節する。
【0091】
着座の初期は、便座部53はできるだけ暖かい方が好ましいが、ある程度暖まってくれば、使用者の着座感も慣れてくることに加え、着座面の大部分が臀部で覆われて当該着座面からの放熱も少なくなる。それゆえ、便座温度を少し下げることで、着座の快適性を向上させ、かつ、省エネルギー効果も向上できる。さらに、低温やけどが発生するリスクも低減することができる。
【0092】
その後、排泄が終わり、使用者の操作部52の操作により洗浄ユニット10で局部洗浄が行われるが、その間、制御部58は、図6の下段に示すように、便座ヒータ33および温水ヒータ13の通電状態を維持し、図6の上段の実線に示すように、便座温度も「中」レベルが維持される。そして、着座センサ57により、使用者が便座部53から離れたこと(脱座)が検知されれば、図6の上段の実線に示すように、制御部58は、便座温度を暖房値の「中」レベルから、待機値(18℃)まで低下させるよう、便座ヒータ13の出力を調節する。なお、着座センサ57により脱座が検知されるまで、制御部58は着座モードによる制御を行う。その後、制御部58は、制御モードを着座モードから待機モードに切り替え、便座温度および温水の水温がそれぞれ待機値を維持するように、便座ヒータ33および温水ヒータ13に対する制御を行う。
【0093】
[温水ヒータおよび便座ヒータの制御]
次に、前述した温度調節を具体的に実行する制御部58による制御の一例を、図7および図8に基づいて説明する。図7は、図6に示すタイミングチャートを実行する制御部58の制御の一例を示すフローチャートであり、着座準備モードを中止する第一の中止条件が、便座温度の境界値への到達である場合の制御に対応する。また、図8も、図6に示すタイミングチャートを実行する制御部58の制御の一例を示すフローチャートであるが、着座準備モードを中止する第一の中止条件が、着座準備時間への到達である場合の制御に対応する。
【0094】
まず、図7に示す制御について説明する。ステップS101として、制御部58は、入室センサ56によりトイレ室への入室が検知されたか否かを判定する。入室が検知されないとき(ステップS101でNO)には、このステップS101を繰り返す。入室が検知されたとき(ステップS101でYES)には、ステップS102に進み、待機モードから着座準備モードの第一段階に切り替え、便座ヒータ33を最大出力で動作させるとともに、温水ヒータ13の動作を停止する。
【0095】
次に、ステップS103に進み、制御部58は、便座温度計36により計測される便座温度が境界値に達しているか否かを判定する。境界値に達していなければ(ステップS103でNO)、このステップS103を繰り返す。境界値に達していれば(ステップS103でYES)、ステップS104に進み、着座準備モードの第一段階から第二段階に切り替え、便座ヒータの出力を低下させて中間出力で動作させるとともに、温水ヒータ13を通常動作に復帰させる。なお、この制御では、このステップS103での判定が、着座準備モードを中止する場合の第一の中止条件の判定に対応する。
【0096】
次に、ステップS105に進み、制御部58は、便座開閉センサ37により便座部53が開いているか否かを判定する。便座部53が開いていないとき(ステップS105でNO)には、そのまま着座準備モードを継続し、ステップS106に進む。便座部53が開いているとき(ステップS105でNO)には、着座準備モードを中止し、後述のステップS112に進む。つまり、このステップS105での判定が、着座準備モードを中止する場合の第二の中止条件の判定に対応する。
【0097】
ステップS106では、制御部58は、便座温度が暖房値の「高」レベルに達しているか否かを判定する。暖房値に達していなければ(ステップS106でYES)、このステップS106を繰り返し、暖房値に達していれば(ステップS106でYES)、ステップS107に進み、着座準備モードから着座モードに切り替え、便座ヒータ33を定常出力(暖房値を維持する出力)で動作させる。
【0098】
次に、ステップS108では、制御部58は、着座センサ57により使用者の着座が検知されたか否かを判定する。着座が検知されないとき(ステップS108でNO)には、このステップS108を繰り返す。なお、このとき、着座が一定時間検知されない場合には、着座モードを中止するステップを追加してもよい。着座が検知されたとき(ステップS108でYES)には、ステップS109に進み、タイマー62により着座初期時間の計測を開始させる。
【0099】
ステップS109では、制御部58は、タイマー62により着座初期時間の到達が計測されたか否かを判定する。着座初期時間に達していなければ(ステップS109でNO)、このステップS109を繰り返す。着座初期時間に達していれば(ステップS109でYES)、ステップS110に進み、便座ヒータ33の出力を弱め、便座温度を「高」レベルから「中」レベルまで低下させる。
【0100】
次に、ステップS111では、制御部58は、着座センサ57により脱座が検知されたか否かを判定する。脱座が検知されないとき(ステップS111でNO)には、このステップS111を繰り返す。脱座が検知されたとき(ステップS111でYES)、またはステップS105で便座部53が開いていることが検知されたとき(ステップS105でNO)には、ステップS112に進み、着座モードから待機モードに切り替え、便座ヒータ33および温水ヒータ13を待機出力で動作させる。その後、ステップS101に戻り、使用者の入室を待機する。
【0101】
次に、図8に示す制御について説明する。この制御では、ステップS201からステップS204までは、それぞれ、図7に示す制御におけるステップS101からステップS104までと同一であるので、その説明を省略する。そして、ステップS204の後にステップS205に進み、制御部58は、タイマー62により着座準備時間の到達が計測されたか否かを判定する。図8に示す制御においては、このステップS205での判定が、着座準備モードを中止する場合の第一の中止条件の判定に対応する。
【0102】
着座準備時間に達していなければ(ステップS205でNO)、このステップS205を繰り貸す。着座準備時間に達していれば(ステップS205でYES)、ステップS206に進み、制御部58は、便座開閉センサ37により便座部53が開いているか否かを判定する。このステップS206での判定は、図7に示すステップS105での判定と同様であり、着座準備モードを中止する場合の第二の中止条件の判定に対応する。
【0103】
便座部53が開いていないとき(ステップS206でNO)には、そのまま着座準備モードを継続し、ステップS207に進む。便座部53が開いているとき(ステップS206でNO)には、着座準備モードを中止し、ステップS213に進む。その後、ステップS207からステップS213までは、それぞれ、図7に示すステップS106からステップ112までと同一であるので、その説明を省略する。
【0104】
[変形例]
前述した実施の形態では、着座準備モードの第一段階では、温水ヒータ13への通電は完全に遮断されるため、温水ヒータ13の動作は停止しているが、これに限定されず、温水ヒータ13は、待機出力よりも低い出力で動作させてもよい。具体的には、位相制御やいわゆる歯抜け制御(交流電源において半サイクルまたは1サイクルを最小単位として電源のONおよびOFFを行う制御)等により、温水ヒータの通電率を下げることで待機出力よりも低い出力で動作させることができる。本発明では、着座準備モードの第一段階において、便座ヒータ33に対して最大電力を供給できるように構成すればよく、温水ヒータ13の動作は停止してもよいし、より低い通電率となるように電力を供給してもよい。
【0105】
また、前述した実施の形態では、着座準備モードの第二段階では、温水ヒータ13への通電率は、待機モードと同じレベルに戻しているが、温水タンク12内の温水をより短時間で給湯値まで加熱する場合には、第二段階または着座モードにおいて、温水ヒータ13の通電率をより高めてもよい。この場合、水温の待機値をより低く設定することができるので、状況に応じて、待機モードの消費電力をより低くすることもできる。また、前記第二段階では、便座ヒータ33への通電率は600Wとなっているが、もちろんこれに限定されず、温水ヒータ13への通電率と対比させて適宜変更してもよい。
【0106】
さらに、便座温度および温水の水温に関して設定される、待機値、境界値、暖房値、給湯値等の設定温度は、操作部52による操作で適宜変更することができる。例えば、前述した実施の形態では、暖房値の標準として「中」レベルの35℃が設定されているが、これを「低」レベルの34℃に変更してもよい。この場合、着座準備モードでは、暖房値「中」レベルまで便座温度を上昇させてから、着座初期時間の経過後、「低」レベルに便座温度を下降させる制御とすることができる。
【0107】
また、前述した実施の形態では、トイレ室からの退室の検知は、制御に利用していないが、これを制御に利用してもよいことはいうまでもない。例えば、使用者がトイレ室から退室するまでは、使用者が再び着座する可能性があると想定し、着座センサ57による脱座の検知後、便座温度を待機値まで下げるのではなく、境界値を維持し、入室センサ56で退室が検知されれば、便座温度を待機値まで下げるよう便座ヒータ33を制御してもよい。
【0108】
加えて、前述した実施の形態では、待機モードでは、入室が検知されていない間、温水の水温が待機値を維持するよう温水ヒータ13を動作させ、便座温度が待機値を維持するよう便座ヒータ33を動作させる制御となっている。本発明はこれに限定されず、制御部58に自己学習機能を持たせ、一日のうち、トイレ室の使用がほとんどない時間帯には、より消費電力を抑える節電モードを実施するように構成されてもよい。
【0109】
例えば、1日を複数の時間帯に分割し、着座センサ57により検出された着座の時間を、着座履歴情報として、前記時間帯に振り分けて記憶部61に記憶させ、複数日に記憶された着座履歴情報から、節電可能な時間帯を決定する。この時間帯では、制御部58は待機モードから節電モードに切り替え、便座ヒータ33および温水ヒータ13の通電を遮断して動作を停止してもよい。あるいは、制御部58は、節電モードにおいて、便座ヒータ33および温水ヒータ13の動作を停止させないが、待機値の温度をさらに下げるように自動的に調節することで、待機時の消費電力を抑えるように構成してもよい。衛生洗浄装置に関する制御技術において、使用者の使用時間帯を予測して、時間帯で設定温度を自動的に調節したり補正したりする具体的な技術としては、本出願人による先行する特許出願の公開特許公報である特開2001−200568号公報、特開2003−105838号公報(本明細書中に参考として援用される)に見出される。
【0110】
また、本実施の形態では、制御部58による動作モードとして、着座準備モードおよび着座モードに対する待機モードが設定されているが、これに限定されず、明確な動作モードではない待機状態または休止状態であってもよい。すなわち、本実施の形態では、待機モードは、入室センサ56により入室が検知されていない間では、温水の水温が待機値となるよう温水ヒータ13を動作させるとともに、便座温度が待機値を維持するよう便座ヒータ33を動作させる動作モードであって、前記待機値は、温水の水温の待機値が給湯値よりも低い温度として設定され、便座温度の待機値が、暖房値より低い温度として設定されているが、このような待機値を明確に設定せずに、温水ヒータ13や便座ヒータ33の出力を単に低下させたり停止させたりするような制御であってもよい。
【0111】
(実施の形態2)
前記実施の形態1に係る衛生洗浄装置50aは、図1および図5に示すように、入力器の一つとして入室センサ56を備えていたが、本実施の形態に係る衛生洗浄装置50bは、入室センサ56に代えて便蓋開閉センサを備える構成となっている。この衛生洗浄装置50bの制御に関して、図9ないし図11に基づいて説明する。
【0112】
図9は、本実施の形態に係る衛生洗浄装置50bの制御構成を示すブロック図であり、図10は、図9に示す衛生洗浄装置50bにおける便座温度の変化と、温水ヒータ13および便座ヒータ33への通電率の変化とを示すタイミングチャートであり、図11は、図10に示すタイミングチャートを実行する制御部58の制御の一例を示すフローチャートであり、着座準備モードを中止する第一の中止条件が、便座温度の境界値への到達である場合の制御に対応する。
【0113】
図9に示すように、本実施の形態に係る衛生洗浄装置50bは、前記実施の形態1に係る衛生洗浄装置50aと基本的には同じ構成を有している。ただし、図9に示すように、本実施の形態では、便蓋54の開閉を検知する便蓋開閉センサ58が備えられ、入室センサ56は備えられていない。なお、図9でも、図5と同様に、便蓋開閉センサ38が図9には図示されない便蓋54の位置を検知する構成となっていることを、便座・便蓋開閉ユニット30に便蓋開閉センサ38を点線で結ぶことで図示している。
【0114】
便蓋開閉センサ38は、便蓋54が開いた位置、すなわち起立位置を検知するように構成されていることが好ましい。もちろん倒伏位置を検知するよう構成されてもよいが、便蓋54が起立位置となれば、使用者が衛生洗浄装置50bの使用を開始したと判断されるので、本実施の形態では、起立位置を検知するよう構成されている。
【0115】
また、便蓋開閉センサ38は、便蓋54の角度を測定するセンサであってもよい。すなわち、便座部53の着座面と便蓋54とで形成される角度(便蓋角度)が所定角度以上であれば開と判定し、所定角度よりも小さければ閉と判定するように設定される構成であってもよい。さらに、便蓋開閉センサ38は、前期便蓋角度の時間変化を捉える構成であってもよい。すなわち、便蓋54の開閉の変化方向が、「閉」(倒伏位置)から「開」(起立位置)となる方向で、かつ便蓋角度が所定角度以上となったことによって、便蓋54が「開状態」にあると判断し、便蓋54の開閉の変化方向が「開」(起立位置)から「閉」(倒伏位置)となる方向で、かつ便蓋角度が所定角度より小さくなったことによって、便蓋54が「閉状態」にあると判断するような構成としてもよい。
【0116】
また、図10に示すように、本実施の形態に係る衛生洗浄装置50bにおいても、便座温度の変化、温水ヒータ13および便座ヒータ33への通電率の変化は、前記実施の形態1に係る衛生洗浄装置50aと同一であるが、待機モードから着座準備モードへの移行は、便蓋開閉センサ38による便蓋54を開く動作がトリガーとなる。つまり、便蓋開閉センサ58により便蓋54が開いた状態(便蓋54が倒伏位置から起立位置になった状態)が検知された場合に、制御部58は、使用者による衛生洗浄装置50bの使用が開始されたと判定して、便座ヒータ33の初期動作を開始させるとともに、温水ヒータ13の出力を低下または停止させるよう制御する。
【0117】
前記実施の形態1では、便蓋54は、入室センサ56で使用者の入退室が検知されることにより、制御部58の制御によって自動的に開閉するよう構成されているので、使用者の入室が着座準備モードの開始のタイミングとなるが、本実施の形態では、便蓋54が自動開閉しない構成となっているので、便蓋54の使用者による開閉を、衛生洗浄装置50bの使用状態の判定基準とすることができる。
【0118】
図10に示す温度調節を具体的に実行する制御部58による制御の一例は、図11に示すように、前記実施の形態1における図7(または図8)に示す制御の一例と同様である。ただし、図11に示す制御では、ステップS301において、使用者の入室を検知するのではなく、便蓋開閉センサ38により、使用者が便蓋54を開くことで、便蓋54が起立位置となったことを検知し、待機モードから着座準備モードに入るよう構成されている。なお、ステップS302からステップS312までは、図7に示すステップS102からステップS112までと同一であるので、その説明は省略する。
【0119】
なお、本実施の形態では、図10および図11に示すように、着座準備モードの中止に関して、第一の中止条件が、便座温度の境界値への到達である場合を例示しているが、もちろんこれに限定されず、前記実施の形態1と同様に、第一の中止条件が、着座準備時間の到達であってもよいことは言うまでもない。
【0120】
このように、本発明に係る衛生洗浄装置においては、着座準備モードを開始するための条件は、実施の形態1で説明した使用者の入室の判定に限定されず、本実施の形態で説明した便蓋54が開いていることの判定であってもよい。
【0121】
なお、本発明は以上の実施の形態の記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲内で種々の変更が可能であり、異なる実施の形態や複数の変形例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施の形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明は、便座暖房機能および貯湯式の局部洗浄機能を有する衛生洗浄装置の分野に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】本発明の実施の形態1に係る衛生洗浄装置の外観構成を模式的に示す斜視図である。
【図2】図1に示す衛生洗浄装置が備える本体部の内部構成を示す斜視図である。
【図3】図1に示す衛生洗浄装置が備える便座部の内部構成を示す分解斜視図である。
【図4】(a)および(b)は、図3に示す便座部が備える便座ヒータの具体的構成を示す平面図である。
【図5】図1に示す衛生洗浄装置の制御構成を示すブロック図である。
【図6】図1に示す衛生洗浄装置における便座温度の変化と、便座ヒータおよび温水ヒータへの通電率の変化とを示すタイミングチャートである。
【図7】図1に示す衛生洗浄装置において、図6に示すタイミングチャートを実行する制御部の制御の一例を示すフローチャートである。
【図8】図1に示す衛生洗浄装置において、図6に示すタイミングチャートを実行する制御部の制御の他の例を示すフローチャートである。
【図9】本発明の実施の形態2に係る衛生洗浄装置の制御構成を示すブロック図である。
【図10】図9に示す衛生洗浄装置における便座温度の変化と、便座ヒータおよび温水ヒータへの通電率の変化とを示すタイミングチャートである。
【図11】図9に示す衛生洗浄装置において、図10に示すタイミングチャートを実行する制御部の制御の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0124】
10 洗浄ユニット(洗浄部)
12 温水タンク
13 温水ヒータ
16 水温計(水温計測器)
31 上部便座筐体(着座部)
33 便座ヒータ
36 便座温度計(便座温度計測器)
37 便座開閉センサ(便座位置検知器)
38 便蓋開閉センサ(便蓋位置検知器)
50a 衛生洗浄装置
50b 衛生洗浄装置
53 便座部
56 入室センサ(入室検知器)
57 着座センサ(着座検知器)
58 制御部(制御器)
62 タイマー(計時器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座部と、当該着座部を暖める便座ヒータと、から少なくとも構成され、起立位置および倒伏位置の間で回動可能に設けられ、倒伏位置で使用者が着座する便座部と、
洗浄用の温水を貯蔵する温水タンクと、当該温水タンク内の前記温水を加熱する温水ヒータと、を有し、前記便座部に着座した使用者の局部を前記温水洗浄する洗浄部と、
トイレ室への使用者の入室を検知する入室検知器と、
前記着座部の温度である便座温度を計測する便座温度計測器と、
前記温水の水温を計測する水温計測器と、
制御器と、を備え、
前記制御器は、便座部に使用者が着座したときには、前記便座温度が予め設定された暖房値となるように、前記便座ヒータを動作させるとともに、前記着座した使用者の局部を洗浄するときには、温水の水温が予め設定された給湯値となるように、前記温水ヒータを動作させ、
前記入室検知器により入室が検知された時点では、前記温水ヒータを、前記入室が検知される前の出力よりも低い出力で動作させるか前記温水ヒータの動作を停止させるとともに、前記便座ヒータを、前記入室が検知される前の出力よりも高い出力で動作させる、着座準備モードを実行するよう構成されている、衛生洗浄装置。
【請求項2】
起立位置および倒伏位置の間で回動可能に設けられる便蓋と、
着座部と、当該着座部を暖める便座ヒータと、から少なくとも構成され、起立位置および倒伏位置の間で回動可能に設けられ、倒伏位置で使用者が着座する便座部と、
洗浄用の温水を貯蔵する温水タンクと、当該温水タンク内の前記温水を加熱する温水ヒータと、を有し、前記便座部に着座した使用者の局部を前記温水洗浄する洗浄部と、
前記便蓋が起立位置にあることを検知する便蓋位置検知器と、
前記着座部の温度である便座温度を計測する便座温度計測器と、
前記温水の水温を計測する水温計測器と、
制御器と、を備え、
前記制御器は、便座部に使用者が着座したときには、前記便座温度が予め設定された暖房値となるように、前記便座ヒータを動作させるとともに、前記着座した使用者の局部を洗浄するときには、温水の水温が予め設定された給湯値となるように、前記温水ヒータを動作させ、
前記便蓋位置検知器により便蓋が起立位置にあることが検知された時点では、前記温水ヒータを、前記起立位置にあることが検知される前の出力よりも低い出力で動作させるか前記温水ヒータの動作を停止させるとともに、前記便座ヒータを、前記起立位置にあることが検知される前の出力よりも高い出力で動作させる、着座準備モードを実行するよう構成されている、衛生洗浄装置。
【請求項3】
前記便座温度において、前記入室が検知される前、または、前記便蓋が起立位置にあることが検知される前の温度を待機値と定義するとともに、前記待機値よりも高く前記暖房値よりも低い値であり、かつ、前記使用者が前記便座部に着座したときに冷感を感じない下限値を、境界値と定義した場合、
前記制御器は、前記着座準備モードを開始してから、前記便座温度が前記境界値に達するまでの間、前記便座ヒータを最大出力で動作させるとともに、前記境界値を超えてから前記暖房値に達するまでの間、前記便座ヒータを、前記最大出力よりも低く前記入室が検知される前、または、前記便蓋が起立位置にあることが検知される前の出力よりも高い出力である中間出力で動作させるよう構成されている、請求項1または2に記載の衛生洗浄装置。
【請求項4】
前記便座部が起立位置にあることを検知する便座位置検知器と、計時器と、をさらに備え、
前記制御器は、予め設定された着座準備時間に達したことが前記計時器により計測された後、または、前記便座温度が前記境界値に達したことが前記便座温度計測器により計測された後に、前記便座部が起立状態にあることが前記便座位置検知器により検知されたときには、前記着座準備モードの実行を中止するよう構成されている、請求項1から3のいずれか1項に記載の衛生洗浄装置。
【請求項5】
前記制御器は、前記着座準備モードを開始した直後には、前記便座ヒータを、先に前記中間出力で動作させてから、前記最大出力で動作させるよう構成されている、請求項3または4に記載の衛生洗浄装置。
【請求項6】
前記便座部への使用者の着座を検知する着座検知器を、さらに備え、
前記制御器は、前記着座検知器により着座が検知されたときに、前記水温が前記給湯値未満であれば、前記洗浄水ヒータを、前記入室が検知される前、または、前記便蓋が起立位置にあることが検知される前の出力を超える出力で動作させるよう構成されている、請求項1から5のいずれか1項に記載の衛生洗浄装置。
【請求項7】
前記制御器は、前記着座準備モードを開始した後、前記便座温度が前記暖房値に達した後には、当該暖房値を維持するように前記便座ヒータを動作させる、着座モードを実行し、
当該着座モードでは、前記着座検知器により着座が検知された後に、予め設定された着座初期時間に達したことが前記計時器により計測されたときには、前記便座ヒータの出力をさらに低下させるよう構成されている、請求項3から5のいずれか1項に記載の衛生洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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