説明

衛生洗浄装置

【課題】最適な着座位置に容易に着座可能で、便座以外の箇所に臀部が直接接触することを抑制し、清掃性を損なわず確実に着座検知することができる快適な衛生洗浄装置を提供することを目的とする。
【解決手段】衛生洗浄装置は、本体部200と、便座300とを有する。本体部200は便器700上に載置され洗浄機構を内蔵している。便座300は加熱部を内蔵し本体部200に回動可能に支持されている。そして便座300は、楕円形の環状の着座面311と、着座面311の後方に連続して設けられ、湾曲部を有して斜め上方に延びた背部312とを有する。背部312は着座した使用者の臀部の後方への移動を規制して、使用者の臀部が本体部200へ接触することを抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は人体の局部を洗浄する衛生洗浄装置の便座の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図16は従来の衛生洗浄装置を搭載した便器の斜視図であり、図17は使用者が着座した状態における同衛生洗浄装置の模式図である。この衛生洗浄装置は、本体部2と、蓋3と、便座4と、着座センサ10とを有する。本体部2は便器1の後方に設置されている。本体部2は蓋3および便座4を回動可能に支持している。便座4は略楕円の環状形状であり、便座4の後部の両側に腕部4aが一体に設けられている。便座4は腕部4aを介して本体部2に接続されている。
【0003】
便座4の上面は使用者が着座する着座面4bを形成しており、着座面4bは、着座のしやすさと、使用者の広い範囲の体形に対応するため、外周より内周が低い傾斜面となっている。通常状態においては使用者の臀部が着座面4bの両側部と後部の略馬蹄形状の範囲で接触する。便座4の内部には着座面4bを加熱する加熱部(図示せず)が内蔵されている。また、本体部2の前部には、便座4の後部の外周4cと略相似形の凹陥部2aが形成されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−065546号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、使用者の座り方によっては着座位置が一定に定まらず、後方に着座した場合、使用者の臀部が本体2の凹陥部2aに接触する可能性が高い。着座面4bは加熱部で加熱され快適な温度に昇温されているが、本体2の凹陥部2aには加熱部は配設されておらず、特に冬季の寒い時期は、臀部が冷たい凹陥部2aに直接接触した場合、非常に不快を感じるという課題を有していた。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するもので、最適な着座位置に容易に着座すること可能で、かつ着座面以外の箇所に臀部が直接接触することを抑制し、快適な衛生洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記従来の目的を達成するために、本発明の衛生洗浄装置は、本体部と、便座とを有する。本体部は便器上に載置され洗浄機構を内蔵している。便座は加熱部を内蔵し本体部に回動可能に支持されている。そして便座は、楕円形の環状の着座面と、着座面の後方に連続して設けられ、湾曲部を有して斜め上方に延びた背部とを有する。背部は着座した使用者の臀部の後方への移動を規制することにより、使用者の臀部が本体部へ接触することを抑制する。
【0007】
これにより、使用者が最適な着座位置に着座しない場合や、着座時に不用意に身体を動かした場合でも、臀部が不用意に本体に接触することがない。しかも着座面と背部を連続して形成したことにより、身体が直接接触する部分を容易に清掃することが可能となり、快適で衛生的な便座とすることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、快適で衛生的な衛生洗浄装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明による第1の発明は、便器上に載置し洗浄機構を内蔵した本体部と、加熱部を内蔵し本体部に回動可能に支持された便座とを有する衛生洗浄装置である。便座は環状の着座面と、着座面の後方に連続して設けられ、湾曲部を有して斜め上方に延びた背部を有し、背部が着座した使用者の臀部の後方への移動を規制することにより、使用者の臀部が本体部へ接触することを抑制する。この構造により、使用者が最適な着座位置に着座しない場合や、着座時に不用意に身体を動かした場合でも、臀部が不用意に本体部に接触することがない。しかも着座面と背部を連続して形成したことにより、身体が直接接触する部分を容易に清掃することが可能である。そのため、快適で衛生的な衛生洗浄装置を提供することができる。
【0010】
本発明による第2の発明は、第1の発明において、背部の上縁の幅を着座面の外周の幅と同寸法とした衛生洗浄装置である。この形状により、背部は使用者の臀部後面の全幅に亘って対向し、所定の高さの範囲で後方への移動を規制する。そのため、臀部の本体部への接触をより確実に抑制することができる。
【0011】
本発明による第3の発明は、第1または第2の発明において、便座への着座状態を検知するための非接触式の着座センサを本体部の表面に設けた衛生洗浄装置である。この構成では、背部が使用者の臀部および腰部が着座センサへ接触することを抑制する。これにより、使用者が最適な着座位置に着座しない場合や、着座時に不用意に身体を動かした場合でも、臀部が不用意に本体部の表面に設けられた着座センサに接触しない。そのため、着座センサに臀部等が接触して着座検知が阻害されるようなことがなく確実な着座検知ができる。また着座センサを本体部と略同一面に形成できることから、本体部の清掃性も損なわれない。
【0012】
本発明による第4の発明は、第3の発明において、着座センサがフィルターと発光部と受光部とを有する衛生洗浄装置である。本体部は、使用者が着座状態において使用者の臀部または腰部と対向する前面湾曲部を有する。この前面湾曲部には窓孔が設けられている。フィルターは本体部と実質的に同一表面になるように窓孔に嵌着されている。発光部はフィルターの内側に赤外線を投光し、受光部は使用者に遮光されて反射した赤外線を受光する。この構成により、フィルターの表面と本体部の表面とが同一面で汚れや水滴等を拭き取りにくいような凹凸がない。そのため、本体部およびフィルターの清掃のしやすさと確実な着座検知を確保することができる。
【0013】
本発明による第5の発明は、第1から第4の発明において、便座の着座面は、内周部が外周部より低い傾斜を有する衛生洗浄装置である。そして便座後方中央の着座面の内周部と背部の上縁との高低差を、着座面の側方の内周部と外周部との高低差の3倍以上としている。この構成により、着座した状態で使用者は左右の移動を比較的容易に行うことが可能であり、後方への移動は背部が確実に規制することができる。そのため、快適で使い勝手の良い便座とすることができる。
【0014】
本発明による第6の発明は、第1から第5の発明において、便座の着座面を上方に凸の曲面で形成し、背部を凹の曲面で形成した衛生洗浄装置である。この形状により、臀部が載置される着座面上で使用者は比較的容易に移動することができるとともに、臀部の後方への移動をより確実に規制することができる。
【0015】
本発明による第7の発明は、第1から第6の発明において、背部の上縁を基点とする仰角が45度以下の範囲にのみ本体部を配置した衛生洗浄装置である。この構成により、背部に臀部後面を強く押し付けて着座した場合において、背部の上縁より後方にはみ出した臀部が本体に接触することをより確実に抑制することが可能となる。
【0016】
本発明による第8の発明は、第1から第7の発明において、人体検知センサと制御部とをさらに有する衛生洗浄装置である。人体検知センサは人体を検知する。制御部は人体検知センサの検知信号により、加熱部の昇温駆動を開始する。この構成により、便座の、少なくとも着座面は人体を検知したときのみ昇温駆動される。そのため、エネルギー効率が高くなる。
【0017】
本発明による第9の発明は、第1から第8の発明において、加熱部が着座面と背部とを加熱可能なように構成した衛生洗浄装置である。この構成により、臀部が直接接触する全ての部分を加熱することが可能となり、快適な便座を実現することができる。
【0018】
本発明による第10の発明は、第9の発明において、便座を下部便座ケーシングと上部便座ケーシングで構成した衛生洗浄装置である。下部便座ケーシングは便器上に載置され、上部便座ケーシングは下部便座ケーシングより熱伝導率の大きい材料で構成され、下部便座ケーシングに組み合わせられている。上部便座ケーシングは着座面および背部から下部便座ケーシングに向かって立設したリブを有する。そして背部におけるリブの高さは、着座面におけるリブの高さよりも低い。このように背部におけるリブの高さを低くすることで放熱面積を減少することができ、消費電力を低減することができる。
【0019】
本発明による第11の発明は、第10の発明において、着座面におけるリブの高さを5mm以上、40mm以下とした衛生洗浄装置である。このようなリブの高さにより、着座面における強度を確保しつつ、加熱部によって加熱される上部便座ケーシングが使用者の臀部の触れる範囲をカバーすることができる。そのため臀部が直接接触する全ての部分を加熱することが可能となり、快適な便座を実現することができる。
【0020】
本発明による第12の発明は、第10または第11の発明において、便座が便器上に載置された状態にて、上部便座ケーシングを下部便座ケーシングから水平方向において突出させた衛生洗浄装置である。このような構成により肥満体の使用者が便座に座った場合でも臀部が直接接触する全ての部分を加熱することが可能となり、快適な便座を実現することができる。
【0021】
本発明による第13の発明は、第1から第9の発明において、加熱部が上部便座ケーシングを選択的に暖めるように構成されている場合に第11の発明と同様の構成を適用した衛生洗浄装置である。本発明による第14の発明は、第13の発明において、第12の発明と同様の構成を適用した衛生洗浄装置である。本発明による第15の発明は、第1から第9の発明において、加熱部が上部便座ケーシングを選択的に暖めるように構成されている場合に第12の発明と同様の構成を適用した衛生洗浄装置である。
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、本実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0023】
(実施の形態)
図1は本実施の形態における衛生洗浄装置を便器上に設置し、蓋を開放した状態の外観の斜視図、図2は蓋を閉成した状態の外観の斜視図である。図3は同衛生洗浄装置の平面図、図4は同衛生洗浄装置の側面図である。図5は図3のA−A線における断面図であり、図6は同衛生洗浄装置における着座センサを装着した部分の断面図である。
【0024】
図1に示すように、衛生洗浄装置100は、本体部200と、便座300と、蓋400と、リモートコントローラ500と、人体検知センサ600とを有する。本体部200、便座300、蓋400は一体に構成され、便器700の上面に設置されている。
【0025】
本体部200には、便座300および蓋400が回動機構(図示せず)を介して電動で開閉可能に取り付けられている。図1、図3および図4に示すように蓋400を開放した状態においては、蓋400は衛生洗浄装置100の最後部に位置するように起立する。また、図2に示すように蓋400を閉成すると蓋400は便座300の上面と、図4に示す上部便座ケーシング310の側面とを覆う。
【0026】
また、本体部200には、図示しない洗浄水供給機構(図示せず)、熱交換器(図示せず)、および図5に示す洗浄ノズル201を含む洗浄機構と、乾燥ユニット(図示せず)と、制御部(図示せず)等が内蔵されている。
【0027】
本体部200の前面湾曲部210には非接触式の着座センサ202が設置されている。この例では着座センサ202は反射型の赤外線センサである。すなわち本体部200は、使用者が着座状態において使用者の臀部または腰部と対向する前面湾曲部210を有し、図6に示すように、前面湾曲部210には窓孔211が設けられている。
【0028】
着座センサ202は、フィルター212と、フィルター212の内側に赤外線を投光する発光部213と、使用者に遮光されて反射した赤外線を受光する受光部214とを有する。フィルター212は前面湾曲部210と実質的に同一表面になるように、窓孔211に嵌め込まれている。
【0029】
発光部213は赤外線を発し人体によって反射された赤外線を受光部214が受光検出する。これにより着座センサ202は便座300上に使用者が着座していることを検知する。また、本体部200の側部には操作部203が設けられている。使用者は衛生洗浄装置100の主要な機能を操作部203により操作することができる。
【0030】
この構成では、フィルター212の表面と本体部200の表面とが同一面で汚れや水滴等を拭き取りにくいような凹凸がない。そのため、本体部200およびフィルター212の清掃のしやすさと確実な着座検知を確保することができる。
【0031】
洗浄水供給機構および熱交換器は洗浄ノズル201に接続されている。熱交換器は水道配管から供給される洗浄水を加熱する。そして洗浄水供給機構は温水を洗浄ノズル201に供給する。洗浄ノズル201は使用者の局部に向けて洗浄水を噴出し、使用者の局部を洗浄する。図示しないが、洗浄ノズル201はお尻を洗浄するお尻洗浄ノズル部と女性の局部を洗浄するビデノズル部とを有する。
【0032】
また、乾燥ユニットは洗浄水により濡れた局部に向けて温風を噴出し、局部を乾燥することができる。
【0033】
リモートコントローラ500には、複数の操作スイッチが設けられている。リモートコントローラ500は便座300上に着座した使用者が操作可能なトイレルームの壁面等の場所に取り付けられ、使用者の入力に応じて衛生洗浄装置100の各機能を操作する信号を本体部200へ送る。
【0034】
人体検知センサ600はトイレルームの壁面等に取り付けられる。人体検知センサ600は、例えば反射型の赤外線センサであり、人体から反射された赤外線を検出した場合にトイレルーム内に使用者が入室したことを検知する。
【0035】
本体部200の制御部は、リモートコントローラ500、人体検知センサ600、操作部203および着座センサ202から送信される信号に基づいて、衛生洗浄装置100の各部の動作を制御する。
【0036】
次に便座300の構成について説明する。図7は便座300の組立状態の斜視図を示し、図8は便座300の分解斜視図を示している。図9は図7のB−B線における断面図であり、図10は図7のC−C線における断面図である。
【0037】
便座300は、上部便座ケーシング310と、便座ヒータ350と、下部便座ケーシング320とを主構成部品として構成されている。加熱部である便座ヒータ350は便座300に内蔵されている。以下、着座した使用者から見て前方側を便座300の前部とし、着座した使用者から見て後方側を便座300の後部とする。便座300は、図7に示すように後部に腕部322を有し、腕部322を本体部200の回動機構(図示せず)に結合することにより、回動可能に支持されている。
【0038】
環状の上部便座ケーシング310は、例えば厚さ約1mmのアルミニウム板をプレス加工等により成形して構成されている。図8では略楕円形状に形成されているが、前部が途切れた馬蹄形状でもよい。上部便座ケーシング310の表面にはアルマイト層と表面化粧層が設けられ、裏面には絶縁性と耐熱性を有するポリエステル粉体塗装膜が形成されている。
【0039】
なお、アルミニウム板の代わりに銅やステンレス等の板材あるいはマグネシウム合金の成型品等の熱伝導の良い他の金属を使用してもよい。また、アルミニウム板に施される表面処理は上記仕様に限定されるものではなく、他の化学的な処理やアクリル系やウレタン系の塗料を使用した他の塗装あるいはフィルムをラミネートすること等も選択が可能である。
【0040】
上部便座ケーシング310には、略楕円形の環状の着座面311の後部に背部312が連続して形成されている。なお上部便座ケーシング310を馬蹄形状に形成した場合、着座面311も馬蹄形状になるが、この形状も楕円形状で環状の形状に含まれるものとする。
【0041】
着座面311は内周部311aより外周部311bが高い傾斜を有する。すなわち、着座面311は上方に凸の曲面を有している。図9に示すように、着座面311の側部における、内周部311aと外周部311bとの高低差H1は、例えば約25mmであり、前部ではこれより小さくなっている。
【0042】
背部312と着座面311とは、連続的な凹曲面で繋がっており、背部312の上部は傾斜面となっている。背部312の上縁312aは水平線に近い大きな曲線となっており、背部312の幅は着座面311の横幅と略同寸法となっている。
【0043】
図10に示すように、着座面311の後部における内周部311aと背部312の上縁312aとの高低差H2は約80mmであり、背部312の高低差H2は着座面311側部の高低差H1の約3.2倍となっている。
【0044】
便座ヒータ350は、楕円形の前部の一部が切り取られた略馬蹄状に形成されている。便座ヒータ350は上部便座ケーシング310の裏面に粘着されている。図示しないが、便座ヒータ350は、アルミニウムからなる2枚の金属箔の間に、線状ヒータを蛇行させて配設して構成されている。便座ヒータ350には着座面311と背部312を加熱できるように線状ヒータが配設され、特に着座した使用者の大腿部と臀部が快適に加熱されるように場所によって密度を変えて線状ヒータが配設されている。
【0045】
略楕円形状で環状の下部便座ケーシング320は合成樹脂により形成されている。なお上部便座ケーシング310を馬蹄形状に形成した場合、下部便座ケーシング320も馬蹄形状に形成する。下部便座ケーシング320は樹脂材料を使用した成型品である。下部便座ケーシング320は、本体部分321と一対の腕部322とで構成されている。本体部分321の平面形状は上部便座ケーシング310と略同形状である。腕部322は本体部分321の両側後方に斜め上方に突出している。上部便座ケーシング310と下部便座ケーシング320とは、内周部311aおよび外周部311bで結合されている。この結合部にはゴムまたは樹脂系のパッキンまたは接着シール剤により水密部が構成されている。
【0046】
図5に示すように、本体部200の上面は、背部312の上縁312aより僅かに高く、背部312の上縁312aを基点とする本体部200の上面への仰角Dは38度を成している。非使用時に便座300は、上方より蓋400で覆われる。図2に示すように、蓋400は、特に便座ヒータ350を裏面に粘着した上部便座ケーシング310の上面と側面とを覆うので、待機中の放熱を抑制し、省エネルギー効果を向上することができる。
【0047】
次に使用者が便座300に着座した時の体勢について説明する。図11、図12は使用者が便座に着座した状態を示す模式図である。
【0048】
図11に示すように、使用者が便座300の最適位置に着座すると、使用者の大腿部は着座面311に接触し、臀部の後部は背部312に接触する。着座面311と背部312はともに便座ヒータ350により昇温されており、使用者は冷たさを感じることはない。すなわち、便座ヒータ350は着座面311と背部312とを加熱可能なように構成することが好ましい。この構成により、臀部が直接接触する全ての部分を加熱することが可能となり、快適な便座300を実現することができる。
【0049】
しかしながら使用者が便座300に着座する場合、最初から最適な位置に着座できることは少なく、一旦着座した後に、着座したままで最適な位置に移動するのが一般的である。便座300の着座面311は、図9に示すように外周部より内周部が低い傾斜を有する上方に凸の曲面となっていることが好ましい。このような曲面形状により、使用者は着座したままでも左右の移動を比較的容易に移動することができる。しかも便座300が内周部の低い傾斜を有することにより、使用者は容易に中央に着座することができる。
【0050】
一方、使用者が便座300の後方に移動しようとすると、臀部の後方が背部312に当接する。このように背部312は使用者がそれ以上後方へ移動することを規制する。そのため、臀部が本体部200に接触することがなく、使用者は冷たい等の不快を感じることがない。すなわち、背部312は着座した使用者の臀部の後方への移動を規制することにより、使用者の臀部が本体部200へ接触することを抑制する。しかも着座面311と背部312を連続して形成したことにより、身体が直接接触する部分を容易に清掃することが可能となり、快適で衛生的な便座とすることができる。特に背部312の湾曲部312bを凹の曲面で形成することにより臀部の後方への移動をより確実に規制することができる。
【0051】
また本体部200の表面に着座センサ202が設けられている場合には、背部312が使用者の臀部および腰部が着座センサ202へ接触することを抑制する。これにより、使用者が最適な着座位置に着座しない場合や、着座時に不用意に身体を動かした場合でも、臀部が不用意に着座センサ202に接触しない。そのため、着座センサ202に臀部等が接触して着座検知が阻害されるようなことがなく確実な着座検知ができる。また着座センサ202を本体部200と略同一面に形成できることから、本体部200の清掃性も損なわれない。
【0052】
また背部312の上縁312aは水平線に近い大きな曲線となっており、上縁312aの幅は着座面311の横幅と略同寸法となっていることが好ましい。この形状により、背部312は使用者の臀部後面の全幅に亘って対向し、所定の高さの範囲で後方への移動を規制する。そのため、臀部が本体部200へ接触することをより確実に抑制することができる。なお上縁312aは水平な直線やそれ以外の形状でもよく、図4に示すように、背部312は本体部200の下部の前面傾斜部200a全体を覆っていればよい。このように便座300は、楕円形状で環状の着座面311と、着座面311の後方に連続して設けられ、湾曲部312bを有して斜め上方に延びた背部312とを有する。
【0053】
特に、図9に示す便座300の側部の高低差H1に対し、図10に示す便座300の内周部と背部312の上縁312aとの高低差H2が3倍以上であることが好ましい。このようにすれば着座状態の使用者が後方へ移動することをほとんど規制することができる。なお高低差H2を高低差H1の5倍以下にすれば、便座300の形状がコンパクトになり商品性が高まる。
【0054】
また、無理に後方に移動した場合や、肥満体の人が着座した場合、図12に示すように、身体の一部が背部312より後方に張り出す状態になることがある。このような場合、図5で説明した、背部312の上縁を基点とする仰角Dの45度より上方の範囲に本体部200が配置されていないことが好ましい。すなわち、背部312の上縁を基点とする仰角Dが45度以下の範囲にのみ本体部200を配置することが好ましい。このような構成により、使用者が臀部後面を背部312に押し付けて着座しても本体部200の表面およびほぼ同一面になるように装着した着座センサ202に臀部はほとんど接触しない。
【0055】
本実施の形態においては、便座300の背部312の上縁312aと、本体部200の上面とが成す仰角Dは38度であり、本体部200は45度より上の範囲には存在しない。そのため、身体後部が本体部200に接触することがほとんどない。
【0056】
次に便座300のさらに好ましい形状について図13〜図15を用いて説明する。図13は便座300の側面図、図14、図15は便座300の拡大断面図であり、図14は図9における内周部311a付近、図15は外周部311b付近を示している。
【0057】
図13に示すように、上部便座ケーシング310は着座面311および背部312から下部便座ケーシング320に向かって立設したリブ313を有する。そして背部312におけるリブ313の高さH4は、着座面311におけるリブ313の高さH3よりも低い。便座ヒータ350が着座面311と背部312とを暖める場合、放熱面積が大きいため消費電力が増大する。上部便座ケーシング310は使用者の体重を支えるが、その大半は着座面311で支える。そのため、背部312においてはリブ313の高さH4を着座面311におけるより高さH3より低くしても強度上の問題はない。そして背部312においてリブ313の高さH4を低くすることで放熱面積を減少することができ、消費電力を低減することができる。
【0058】
また着座面311におけるリブ313の高さH3を5mm以上、40mm以下とすることが好ましく、より好ましくは15mm以上、20mm以下である。リブ313の高さH3をこのような範囲にすることにより、着座面311における強度を確保しつつ、便座ヒータ350によって加熱される上部便座ケーシング310が使用者の臀部の触れる範囲をカバーすることができる。そのため臀部が直接接触する全ての部分を加熱することが可能となり、快適な便座を実現することができる。
【0059】
そして図14、図15に示すように便座300が便器700上に載置された状態にて、上部便座ケーシング310を下部便座ケーシング320から水平方向において突出させることが好ましい。このような構成により肥満体の使用者が便座300に座った場合でも臀部が直接接触する全ての部分を加熱することが可能となり、快適な便座を実現することができる。
【0060】
次に衛生洗浄装置100の動作、作用について説明する。非使用時において、蓋400は閉成されており、便座300の上面と上部便座ケーシング310の側面を覆っている。冬季等の室温が低い場合、本体部200に内蔵された制御部の制御により便座ヒータ350が通電される。そのため、便座300が、例えば約18℃となるように温度調整される。このときの温度を待機温度と称する。なお夏季等で室温が高い場合には便座300の温度も高くなるので便座ヒータ350への通電は行われない。
【0061】
ここで、使用者がリモートコントローラ500の便座温度調整スイッチ(図示せず)を操作すると、設定温度が制御部に送信される。制御部は、リモートコントローラ500から受信した設定温度を記憶部(図示せず)に記憶する。
【0062】
また使用者がトイレルームに入室すると、人体検知センサ600が使用者の入室を検知する。それにより、使用者の入室検知信号が制御部に送信される。
【0063】
制御部は人体検知センサ600からの入室検知信号により使用者のトイレルームへの入室を検知すると、制御部は蓋400を開放するとともに、記憶された設定温度に基づいて便座ヒータ350の駆動に関する特定の制御パターンを選択する。選択された制御パターンおよび計時部(図示せず)により得られる時間情報に基づいて、制御部は便座ヒータ350の駆動を制御する。それにより、便座ヒータ350が昇温駆動され、便座300の温度が設定温度へと瞬時に上昇される。このように人体検知センサ600が人体を検知したときのみ着座面311が昇温駆動されれば、エネルギー効率が高くなる。
【0064】
便座ヒータ350の最大容量は、例えば1200Wに設計されている。設定温度へと瞬時に上昇させるために、便座ヒータ350は、少なくとも便座300の表面温度が、使用者が着座した際に冷たいという不快を感じない最低限の温度に達するまでの最大容量で駆動される。この温度を、以下、冷感限界温度と称する。冷感限界温度は、被験者実験により約29℃であることがわかっている。
【0065】
一方、被験者実験から、使用者がトイレルームに入室してから通常の着衣状態から脱衣して便座300に座るまでに要する最短時間の平均値は6秒であることがわかっている。したがって、便座ヒータ350の駆動を開始して冷感限界温度(29℃)に達するまでの時間を、使用者が脱衣して着座するまでの時間より短く設定すればよい。これにより、使用者が便座300に座った際に冷たく感じることがない。
【0066】
冷感限界温度以上に昇温した便座300に使用者が着座すると、着座センサ202は着座した人体を検知し、検知信号を制御部に送信する。これにより、着座状態で使用できる、洗浄機能や乾燥機能の操作が可能となる。
【0067】
例えば、使用者がリモートコントローラ500のお尻洗浄スイッチ(図示せず)を操作すると、洗浄ノズル201のお尻洗浄ノズルが前方に突出し、洗浄水が噴出してお尻洗浄を開始する。次に、終了スイッチ(図示せず)を操作すると、洗浄水の噴出が停止し、お尻洗浄ノズルは元の収納位置に収納される。
【0068】
次に、使用者が乾燥スイッチ(図示せず)を操作すると、制御部は乾燥ユニットを制御する。これにより使用者のお尻に向けて温風が噴出し、洗浄で濡れたお尻を乾燥させることができる。
【0069】
使用者が便座300から立ち上がると、着座センサ202は使用者が離席したことを検知し検知信号を制御部に送信する。この信号により、制御部は所定時間経過後に便座ヒータ350への通電を停止する。
【0070】
使用者がトイレルームから退出すると、人体検知センサ600の人体検知の信号の送信が停止することにより、制御部は所定時間後に蓋400を閉成する。
【0071】
なお以上の説明では、非接触式の着座センサ202として赤外線の反射を利用した構成を説明したが、本発明はこれに限定されない。人体が近接すると静電容量が変化することで着座を検知する方式のセンサを着座センサ202として本体部200の表面に設けてもよい。このようなセンサは、例えば特開平9−117475号公報に開示されている。
【0072】
また以上の説明では、上部便座ケーシング310を金属で、下部便座ケーシング320を樹脂で構成し、上部便座ケーシング310の裏側に便座ヒータ350を粘着させた構成の便座300を説明した。しかしながら本発明はこれに限定されない。便座ヒータ350に代えて熱輻射型のランプヒータを便座300内に配置し、上部便座ケーシング310を金属または樹脂で構成し、裏側に輻射熱吸収層を形成してもよい。このような構成の便座は、例えば特開2000−210230号公報に開示されている。このように便座ヒータの構成は限定されない。
【0073】
この場合でも上部便座ケーシング310の熱伝導率が下部便座ケーシング320の熱伝導率より大きい場合には上部便座ケーシング310に設けられたリブ313の高さを調整することが好ましい。すなわち、上部便座ケーシング310に設けられたリブ313の背部312における高さH3を、着座面311におけるリブ313の高さH4よりも低くすることで消費電力を低減できる。
【0074】
また上部便座ケーシング310の材料に関わらず、上部便座ケーシング310を選択的に暖める場合、着座面311におけるリブ313の高さは5mm以上、40mm以下であることが好ましく、15mm以上、20mm以下がより好ましい。また便座300が便器上に載置されている状態にて、上部便座ケーシング310が下部便座ケーシング320から水平方向に突出していることが好ましい。これにより使用者の臀部等が暖められていない下部便座ケーシング320に接触することを防止できる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
以上のように、本発明による衛生洗浄装置を利用する使用者は、着座面の最適位置に容易に着座することができ、清掃性を損なわずに快適に衛生洗浄装置を使用することができる。本発明による衛生洗浄装置の構成は家具等の着座用具の用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の実施の形態による衛生洗浄装置の蓋開放状態を示す斜視図
【図2】本発明の実施の形態による衛生洗浄装置の蓋閉成状態を示す斜視図
【図3】本発明の実施の形態による衛生洗浄装置の平面図
【図4】本発明の実施の形態による衛生洗浄装置の側面図
【図5】図3のA−A線における断面図
【図6】本発明の実施の形態による衛生洗浄装置の着座センサ装着部分の断面図
【図7】本発明の実施の形態による衛生洗浄装置の便座の組立状態を示す斜視図
【図8】本発明の実施の形態による衛生洗浄装置の便座の分解斜視図
【図9】図7のB−B線における断面図
【図10】図7のC−C線における断面図
【図11】本発明の実施の形態による衛生洗浄装置へ使用者が着座した状態を示す模式図
【図12】本発明の実施の形態による衛生洗浄装置へ使用者が着座した別の状態を示す模式図
【図13】本発明の実施の形態による衛生洗浄装置の便座の側面図
【図14】本発明の実施の形態による衛生洗浄装置の便座の断面の拡大図
【図15】本発明の実施の形態による衛生洗浄装置の便座の断面の拡大図
【図16】従来の衛生洗浄装置の外観を示す斜視図
【図17】従来の衛生洗浄装置の着座状態を示す模式図
【符号の説明】
【0077】
100 衛生洗浄装置
200 本体部
200a 前面傾斜部
201 洗浄ノズル
202 着座センサ
203 操作部
210 前面湾曲部
211 窓孔
212 フィルター
213 発光部
214 受光部
300 便座
310 上部便座ケーシング
311 着座面
311a 内周部
311b 外周部
312 背部
312a 上縁
312b 湾曲部
320 下部便座ケーシング
321 本体部分
322 腕部
350 便座ヒータ(加熱部)
400 蓋
500 リモートコントローラ
600 人体検知センサ
700 便器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器上に載置され洗浄機構を内蔵した本体部と、
加熱部を内蔵し前記本体部に回動可能に支持された便座と、を備え、
前記便座は、
楕円形状で環状の着座面と、
前記着座面の後方に連続して設けられ、湾曲部を有して斜め上方に延びた背部と、を有し、
前記背部が着座した使用者の臀部の後方への移動を規制することにより、前記使用者の臀部が前記本体部へ接触することを抑制する衛生洗浄装置。
【請求項2】
前記背部の上縁の幅は前記着座面の外周の幅と実質的に同寸法である請求項1に記載の衛生洗浄装置。
【請求項3】
前記本体部の表面に設け、前記便座への着座状態を検知するための非接触式の着座センサをさらに備え、
前記背部は前記使用者の臀部および腰部が前記着座センサへ接触することを抑制する請求項1または2に記載の衛生洗浄装置。
【請求項4】
前記本体部は、前記使用者が着座状態において前記使用者の臀部または腰部と対向する前面湾曲部を有し、前記前面湾曲部に窓孔を設け、
前記着座センサは、
前記本体部と実質的に同一表面になるように前記窓孔に嵌着したフィルターと、
前記フィルターの内側に赤外線を投光する発光部と、
前記使用者に遮光されて反射した赤外線を受光する受光部と、を有する請求項3に記載の衛生洗浄装置。
【請求項5】
前記着座面は、内周部が外周部より低い傾斜を有し、前記便座の後方中央の前記着座面の内周部と前記背部の上縁との高低差を、前記着座面の側方の内周部と外周部との高低差の3倍以上とした請求項1から4のいずれか一項に記載の衛生洗浄装置。
【請求項6】
前記着座面を上方に凸の曲面で形成し、前記背部を凹の曲面で形成した請求項1から5のいずれか一項に記載の衛生洗浄装置。
【請求項7】
前記背部の上縁を基点とする仰角が45度以下の範囲にのみ前記本体部を配置した請求項1から6のいずれか一項に記載の衛生洗浄装置。
【請求項8】
人体を検知する人体検知センサと、
前記人体検知センサの検知信号により、前記加熱部の昇温駆動を開始する制御部と、をさらに備えた請求項1から7のいずれか一項に記載の衛生洗浄装置。
【請求項9】
前記加熱部は、前記着座面と前記背部とを加熱可能に構成した請求項1から8のいずれか一項に記載の衛生洗浄装置。
【請求項10】
前記便座は前記便器上に載置される下部便座ケーシングと、前記下部便座ケーシングに組み合わせられ、前記下部便座ケーシングより熱伝導率の大きい材料で構成された上部便座ケーシングとを有し、
前記上部便座ケーシングは前記着座面および前記背部から前記下部便座ケーシングに向かって立設したリブを有し、前記背部における前記リブの高さは、前記着座面における前記リブの高さよりも低い請求項9に記載の衛生洗浄装置。
【請求項11】
前記着座面における前記リブの高さは5mm以上、40mm以下である請求項10に記載の衛生洗浄装置。
【請求項12】
前記便座が前記便器上に載置された状態にて、前記上部便座ケーシングは前記下部便座ケーシングから水平方向において突出している請求項10または11に記載の衛生洗浄装置。
【請求項13】
前記便座は前記便器上に載置される下部便座ケーシングと、前記下部便座ケーシングに組み合わせられた上部便座ケーシングとを有し、前記加熱部は前記上部便座ケーシングを選択的に暖めるように構成され、
前記上部便座ケーシングは前記着座面および前記背部から前記下部便座ケーシングに向かって立設したリブを有し、前記着座面における前記リブの高さは5mm以上、40mm以下である請求項1から9のいずれか一項に記載の衛生洗浄装置。
【請求項14】
前記便座が前記便器上に載置された状態にて、前記上部便座ケーシングは前記下部便座ケーシングから水平方向において突出している請求項13に記載の衛生洗浄装置。
【請求項15】
前記便座は前記便器上に載置される下部便座ケーシングと、前記下部便座ケーシングに組み合わせられた上部便座ケーシングとを有し、前記加熱部は前記上部便座ケーシングを選択的に暖めるように構成され、
前記便座が前記便器上に載置された状態にて、前記上部便座ケーシングは前記下部便座ケーシングから水平方向において突出している請求項1から9のいずれか一項に記載の衛生洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−51781(P2010−51781A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−50047(P2009−50047)
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】