説明

衛生洗浄装置

【課題】 高精度に室温を検知して便座の温度制御を高精度に行うことにより、省エネルギーを達成することができる衛生洗浄装置を提供する。
【解決手段】 第1遠隔器600の内蔵電池601で駆動される第1室温検知器602は、人体検出器600aにより使用者の退室が検出されると、電源供給が停止される。制御部90は、便座ヒータ450の目標温度を、停止前に検知された温度T1に基づいて決定し、その後、第2室温検知器で検知された温度T2に基づいて前記目標温度を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛生洗浄装置に関し、特に外部から供給される水を加熱して温水を生成する加熱器と温水を噴出する温水噴出部とを有する便座本体と、便座を電気的に加熱する便座ヒータとを備えた衛生洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、衛生洗浄装置においては、使用者に不快感を与えないようにするために、使用者が直接接触する箇所の温度を適切な温度に調整するためのさまざまな機能を有する衛生洗浄装置が提案されている。例えば、下記特許文献1には、冬場等の室温が低い場合においても使用者が不快に感じることなく便座に着座することができるように、便座温度を制御する構成が開示されている。
【0003】
特許文献1に記載の衛生洗浄装置においては、便座の内部に設けられ、便座の温度を検知する便座温度検知手段と、トイレ室内の温度を検知する室温検知手段と、便座の内部に設けた便座ヒータと、便座ヒータの通電を制御する制御部とを備えている。
【0004】
このような構成において、制御部は、便座温度検知手段で検知された便座の温度と室温検知手段で検知された室温とに基づいて便座ヒータの通電量を制御する。また、使用者の入退室を検知する人体検知手段を備えた構成においては、省電力のために、使用者が検知されない状態では通電量の小さい低い温度(待機温度)に設定しておき、使用者が検知されたことをもって待機温度から使用者が便座に着座した際に冷たく感じない設定温度まで便座温度を上昇させる制御も行われている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−210230号公報
【特許文献2】特開2007−83026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、便座本体に室温検知手段を設けた場合、衛生洗浄装置の使用中は便座本体内に設けられた温水生成用の加熱器や乾燥装置等からの熱の影響を受け易く、高精度な室温検知が困難である。
【0007】
本発明は、以上のような課題を解決すべくなされたものであり、高精度に室温を検知して便座の温度制御を高精度に行うことにより、省エネルギーを達成することができる衛生洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る衛生洗浄装置の代表的な態様は、便座と、外部から供給される水を加熱して温水を生成する加熱器と、前記温水を外部へ噴出する温水噴出部とを有する便座本体と、前記便座の内部に設けられ、前記便座を電気的に加熱する便座ヒータと、前記便座本体とは別体にトイレ室に設けられ、周囲の温度T1を検知する第1室温検知器を有し、前記第1室温検知器で検知された周囲の温度T1を前記便座本体に送信する遠隔器と、前記便座本体に設けられ、周囲の温度T2を検知する第2室温検知器と、前記便座ヒータの温度T3を検知するヒータ温度検知器と、前記トイレ室から使用者が退室したことを検出する退室検出器と、前記温度T3に基づいて、前記便座ヒータへの通電量を制御するとともに、前記退室検出器で退室を検出すると待機状態にあると判定する制御部と、を備え、前記遠隔器は内蔵電池により駆動され、前記第1室温検知器も前記内蔵電池から電力供給がなされるとともに、前記退室検出器が退室を検出した場合には、前記内蔵電池からの電力供給が停止されるよう構成され、前記制御部は、前記内蔵電池から前記第1室温検知器への電力供給が停止されると、前記待機状態での前記便座ヒータの目標温度を、前記第1室温検知器への電力供給が停止される前に検知した前記温度T1に基づいて決定し、その後の前記目標温度を、前記温度T2に基づいて決定するよう構成される。
【0009】
本発明に係る他の態様は、前記代表的な態様に加えて、前記遠隔器は、前記退室検出器を有し、当該退室検出器は、前記トイレ室への人体の存否を検出する人体検出器で構成され、前記人体検出器が人体の存在を検出すれば、前記内蔵電池から前記第1室温検知器への電力供給を開始し、人体の存在を検出しなくなれば、前記内蔵電池からの電力供給を停止するよう構成される。
【0010】
本発明に係るさらに他の態様は、前記他の態様に加えて、前記制御部は、前記人体検出器が人体の存在を検出すると、前記便座の着座面の温度を、待機状態における待機温度Tpから所定の温度TUまで昇温するように前記便座ヒータの通電量を制御するよう構成され、前記待機温度Tpは、前記便座ヒータにおいて前記人体検出器により人体の存在が検出されてから着座するまでの間に、少なくとも使用者が便座に接触しても冷たく感じることのない冷感限界温度Tcまで上昇可能な温度として設定されているよう構成される。
【0011】
本発明に係る他の態様は、前記代表的な態様に加えて、前記遠隔器は、前記内蔵電池が所定の電圧未満となると電池切れ信号を前記制御部へ送信するように構成され、前記制御部は、前記電池切れ信号を受信すると、前記温度T3に基づいて、前記便座の着座面の温度が所定の温度TUとなるように前記便座ヒータへの通電量を制御するよう構成される。
【発明の効果】
【0012】
本発明は以上に説明したように構成され、電池駆動されることによって室温の検知を行う構成において、高精度に室温を検知して便座の温度制御を高精度に行うことにより、省エネルギーを達成することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態1における衛生洗浄装置を示す外観斜視図である。
【図2】図1に示す衛生洗浄装置の制御構成を示すブロック図である。
【図3】図1の衛生洗浄装置における便座温度制御の流れを示すフローチャートである。
【図4】便座ヒータ加熱時における時間と便座温度との関係を示す図である。
【図5】第1室温検知器を用いた温度制御を行うか否かを判定する制御の流れを示すフローチャートである。
【図6】室温制御の可否を判定するための制御の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0015】
図1は本発明の実施の形態1における衛生洗浄装置を示す外観斜視図であり、図2は図1に示す衛生洗浄装置の制御構成を示すブロック図である。
【0016】
図1及び図2に示すように、衛生洗浄装置100は、便座400を有する便座本体200を有している。便座本体200には、便座400及び便蓋500が取り付けられており、便蓋500が便座400に対して開閉可能となっている。便座本体200は、便座400がトイレ室(toilet)内に設置された便器700上に位置した状態で固定され、便座400は、便座本体200が固定された状態で便蓋500とともに便器700に対して開閉可能となっている。さらに、便座本体200には、外部から供給される水を加熱して温水を生成する加熱器210及び温水を外部へ噴出する温水噴出部220を含む洗浄水供給機構と用便後の局部を温水を用いて洗浄するための洗浄ノズル40とを含む洗浄装置が設けられている。なお、便座本体200は、洗浄後の局部を乾燥させるための乾燥装置が設けられてもよい。さらに、便座本体200には、制御部90が設けられ、洗浄装置の動作制御や便座400の温度制御等の衛生洗浄装置100の各部の動作制御を行う。なお、制御部90は、1つの制御部を有し、当該1つの制御部が集中制御することとしてもよいし、複数の制御部を有し、それぞれが分散制御することとしてもよい。
【0017】
図2に示すように、便座400には、内部に便座ヒータ450が設けられており、便座400を電気的に加熱することにより便座表面を暖める。さらに、便座400の内部には、便座ヒータ450の温度を検知するヒータ温度検知部401aが設けられており、ヒータ温度検知部401aで検知された便座温度を制御部90に送っている。ヒータ温度検知部401aは例えばサーミスタにより実現される。
【0018】
衛生洗浄装置100は、便座本体200とは別体にトイレ室に設けられ、トイレ室への入室及び退室を検出する人体検出器600aを有している。人体検出器600aは、トイレ室の入口等に取り付けられており、電池駆動されることによりトイレ室への使用者の存否を検出する。より具体的には、人体検出器600aは、内蔵電池601で駆動される第1遠隔器600(本発明に係る遠隔器に相当する)に設けられている。人体検出器600aは、例えば反射型の赤外線センサである。この場合、人体検出器600aが人体で反射された赤外線を検知することにより、使用者がトイレ室に存在することを検出し、赤外線が反射されなくなったことを検知することにより、使用者が存在しなくなったことを検出する。人体検出器600aは、予め設定された時間間隔でトイレ室内における人体の存否を検出するように構成されている。なお、人体検出器600aは、これに限られず、例えば、赤外線焦電センサでもよいし、トイレ室の入口付近に投光器と受光器とを有し、受光器への投光が1回遮られた場合に入室を検出し、再度光が遮られた場合に退室を検出する光電管式の検出器としてもよい。また、トイレ室からの退室を、後述する着座センサ610による離座の検出に基づいて検出してもよく、あるいは、衛生洗浄装置100が使用されなくなったことを示す第2遠隔器300における所定の操作に基づいて検出してもよい。
【0019】
第1遠隔器600は、人体検出器600aで検出された人体検出情報を便座本体200へ送る送信器603と図示されない制御器(例えば、マイクロコンピュータで構成される)とを有しており、この制御器によってその動作が制御される。第1遠隔器600は、人体検出器600aが人体を検出している間は人体の存在を示す人体検出信号S1を予め設定された時間間隔で便座本体200に送信(例えば、30秒毎に送信)し、人体検出器600aが人体の存在を検出していない間は人体検出信号S1を便座本体200に送信しないように構成されている。なお、人体検出器600aが人体の存在を検出した場合、第1遠隔器600は、人体検出情報とともに後述する第1室温検知器602で検知された周囲の温度T1を含む温度情報及び内蔵電池601の電圧状態に応じた電池情報を含む信号を入室信号として便座本体200へ送信している。便座本体200には、第1遠隔器600からの信号を受信する受信部403が設けられている。
【0020】
さらに、衛生洗浄装置100は、第1遠隔器600に設けられた第1室温検知器602を有している。第1室温検知器602は、内蔵電池601を電源として動作する。第1遠隔器600は、前述した通り、人体検出情報とともに第1室温検知器602の周囲の温度T1を温度情報として送信器603を用いて便座本体200へ送っている。
【0021】
なお、人体検出器600aが赤外線焦電センサである場合、検出精度は室温によって変化するため、室温検知器602又はその他の室温検知器で検知した周囲の温度を用いて人体検出器600aの検出結果を制御(例えば、補正)してもよい。
【0022】
第1遠隔器600は、人体検出器600aが人体の存在を検出した場合に、内蔵電池601から第1室温検知器602への電力供給を開始し、人体検出器600aが人体の存在を検出しなくなった場合、内蔵電池601から第1室温検知器602への電力供給を停止する。より具体的には、第1遠隔器600は、人体検出器600aが退室を検出した場合、内蔵電池601から人体検出器600a以外(例えば第1室温検知器602及び第1遠隔器600の制御部等)への電力供給を停止する。
【0023】
便座本体200には、周囲の温度T2を検知する第2室温検知器620が設けられている。第2室温検知器620は、便座本体200の所定箇所(例えば便座400の側方に設けられた袖(腕)部分)に設けられており、検知された周囲の温度を制御部90に伝達可能に構成されている。さらに、第2室温検知器620は、便座本体200の電源を用いて動作する。第2室温検知器620のその他の構成は、第1室温検知器602と同様の構成を有している。第2室温検知器620は、制御部90と接続されており、第2室温検知器620で検知された周囲の温度T2を制御部90へ送っている。
【0024】
なお、本実施形態における衛生洗浄装置100は、便座温度の設定や洗浄開始又は停止等の各種操作を行う第2遠隔器300を有している。第2遠隔器300は、内蔵電池(図示せず)で駆動される。便座本体200の受信部403は、第2遠隔器300からの信号も受信可能となっている。
【0025】
制御部90は、例えばマイクロコンピュータ及びその周辺回路等で構成されている。制御部90は、人体検出器600aによって検出された人体の存否の検出結果に基づいて、人体がトイレ室内に存在する使用状態及び人体がトイレ室内に存在しない待機状態の何れであるかを判定する。さらに、制御部90は、第1室温検知器602で検知された周囲の温度T1と、第2室温検知器620で検知された周囲の温度T2と、ヒータ温度検知部401aで検知された便座ヒータ450の温度T3との少なくとも何れか1つの温度に基づいて便座ヒータ450への通電量を制御している。具体的には、便座本体200は、制御部90に接続され、便座ヒータ450を駆動するヒータ駆動部402を有しており、制御部90は、ヒータ駆動部402を制御することにより、便座ヒータ450への通電量を制御する。
【0026】
本実施形態において、便座本体200には、正面上部に使用者の着座を検知する着座センサ610が設けられている。着座センサ610は、例えば反射型の赤外線センサである。この場合、着座センサ610が人体で反射された赤外線を検知することにより、使用者が便座400に着座しようとして接近したことを検知する。着座センサ610は、人体で反射された赤外線を検知した後、赤外線を検知しなくなった場合、使用者が便座400から立ち上がって立ち去ったことを検知する。
【0027】
ここで、本実施形態における便座温度制御の流れについて説明する。図3は図1の衛生洗浄装置における便座温度制御の流れを示すフローチャートである。
【0028】
まず、図3に示すように、制御部90は、人体検出器600aが人体の存在を検出するか否か(すなわち、人体検出器600aから人体検出信号S1が送られているか否か)を監視する(ステップS1)。
【0029】
人体検出器600aが人体の存在を検出した場合には(ステップS1でYes)、制御部90は、人体が前記トイレ室内に存在する使用状態であると判定し、第1遠隔器600から送信された人体検出信号S1に含まれる、第1室温検知器602で検知された周囲の温度T1を記憶部に記憶する(ステップS2)。より具体的には、第1室温検知器602は、人体検出器600aが使用者の入室を検出した際、内蔵電池601によって駆動され、周囲の温度T1を検知する。そして、第1遠隔器600の送信器603により人体検出器600aで検出された人体検出情報及び第1室温検知器602で検知された周囲の温度T1の情報を含む人体検出信号S1が便座本体200に送られる。制御部90は、人体検出信号S1を受信した場合、人体検出信号S1に含まれる第1室温検知器602の周囲の温度T1の情報を記憶部に記憶する。
【0030】
さらに、制御部90は、使用状態であると判定した際、便座400の着座面の温度が所定の温度TU(例えば、冷感限界温度Tc又は使用者が設定した温度)となるように便座ヒータ450への通電量を制御する(ステップS3)。
【0031】
ここで、人体検出器600aが人体の存在を検出した際の便座温度制御について説明する。図4は便座ヒータ加熱時における時間と便座温度との関係を示す図である。
【0032】
使用者が便座400に着座していない待機状態においては、便座400を暖める必要はないため、便座ヒータ450の通電量は0でも構わないが、図4に示すように、室温が低い場合(図3の例においては5℃)、便座400の着座面の温度Txは室温と略同じ温度となる。特に、便座400が金属により形成されている場合は、顕著である。このような状態において、人体検出器600aが人体を検出すると、便座本体200へ人体検出信号S1を送信する。便座本体200の制御部90は、人体検出器600aから送られてきた人体検出信号S1によって、待機状態から使用状態となったと判定した際に、便座400の着座面の温度Txを所定の温度TUまで上昇させるように便座ヒータ450の通電量を制御する(時刻ta)。このとき制御部90は、ヒータ温度検知部401aの測定温度値、及び予め記憶された便座設定温度に基づいたヒータ制御パターンを用いて便座ヒータ450の通電量を制御する。制御部90は、ヒータ制御パターンおよび制御部90に内蔵されたタイマ(図示せず)による時間情報に基づいてヒータ駆動部402の駆動時間及び駆動熱量を制御する。これにより、便座400の着座面の温度Txが設定された温度TUへ上昇する。
【0033】
ここで、時刻tbにおいて使用者がトイレ室に入室してから便座400の着座面に着座する。従って、時刻tbから時刻tcまでの間に便座400の着座面の温度Txを所定の設定温度TUまで上昇させる必要がある。ここで、所定の設定温度TUは、少なくとも使用者が便座400に接触しても冷たく感じることのない冷感限界温度Tc(金属製の便座400においては26℃から32℃が好ましく、29℃がより好ましい)とするのが好ましい。ところが、室温が低い場合、図4において破線で示すように、時刻taにおいて室温と略同じ温度から冷感限界温度Tcまで上げるには、時刻tbより遅い時刻tcまでかかってしまう。従って、使用者が便座400に着座した際の時刻tbにおいては、まだ冷感限界温度Tcには達しておらず、使用者が冷たいと感じてしまい、使用者に不快感を与える結果となる。
【0034】
そこで、便座本体200の制御部90は、使用者の存在が検出されていない待機状態における便座温度を、予め設定された待機温度Tp(図4の例においては18℃)に設定している。これは、人体の存在を検出した時刻taから使用者が便座400に着座する時刻tbまでの間に便座400の温度を冷感限界温度Tcまで上昇可能な温度を待機温度Tpとして設定することを意味する。従って、図3において実線で示すように、使用者が入室してから便座400に着座するまでの間に待機温度から冷感限界温度Tcへの温度上昇制御を行うことができるため、使用者が冷たいと感じることを防止することができる。なお、時刻taから時刻tbまでの時間は、使用者がトイレ室に入室してから着座するまでに要する時間を考慮して実験やシミュレーション等により適宜定められる。例えば、時刻taから時刻tbまでの時間は、6秒に設定される。
【0035】
時刻tb以降の使用状態において、制御部90は、便座400の着座面の温度Txが所定の温度TUとなるように、便座400の着座面の温度Txと便座ヒータ450の温度T3との温度差ΔTを考慮して、便座ヒータ450への通電量を制御する。使用者が実際に着座する便座400の着座面は、ヒータ温度検知部401aが設けられる便座400の内部に比べて外気にさらされている分、熱が逃げ易いため、ヒータ温度検知部401aで検知された便座ヒータ450の温度T3と便座400の着座面の温度Txとは一致せず、温度差ΔTが生じるため、便座400の着座面の温度Txと便座ヒータの温度T3との温度差ΔTを考慮して、便座ヒータの通電量を制御することにより、便座の着座面の温度Txを所望の温度TUに高精度に制御することができる。
【0036】
続いて、再び図3を参照すると、人体検出器600aが人体の存在を検出しなくなった場合には(ステップS1でNo)、制御部90は、人体が前記トイレ室内に存在しない待機状態であると判定し、使用状態から待機状態へ変化した時点t0からの時間を制御部90の内部タイマ又は外部の計時器(何れも図示せず)を用いて計時し、第1待機時間t1が経過するか否かを判定する(ステップS4)。本実施形態において、制御部90は、前記人体検出信号S1が受信されなくなった時点を、前記使用状態から前記待機状態へ変化した時点t0として判定する。これにより、使用状態から待機状態へ変化した時点t0を高精度に判定することができる。
【0037】
そして、制御部90は、使用状態から待機状態へ変化した時点t0から第1待機時間t1以内においては(ステップS4でNo)、遠隔器600から送信された周囲の温度T1を便座ヒータ450への通電量を制御するための室温として用いる(ステップS5)。すなわち、ステップS2において記憶部に記憶された周囲の温度T1に関する最新の情報を用いて便座400の着座面の温度が待機温度Tpとなるように、便座ヒータ450への通電量を制御する。
【0038】
上述した通り、ヒータ温度検知部401aで検知された便座ヒータ450の温度T3と便座400の着座面の温度Txとは一致せず、温度差ΔTが生じる。さらに、この温度差ΔTは、室温に応じて変化する。すなわち、例えば同じ待機温度Tpに設定していても室温が高ければ便座400の着座面の温度Txは維持温度Tpより高くなる。従って、第1室温検知器602で検知された周囲の温度T1に応じて便座ヒータ450の通電量を制御することにより、便座400の着座面の温度を同じ待機温度Tpに保持することができる。
【0039】
このように待機温度Tpを一定に保持するために、便座ヒータ450の通電量を室温の変化に応じて精密に制御することにより、無駄な通電を防ぎ、省エネルギー化することができる。また、待機温度Tpを一定に保持することにより、便座400の温度上昇制御後(時刻tb後)の便座400の着座面の温度Txも室温によらず一定に制御することができる。
【0040】
より具体的には、制御部90は、使用状態から待機状態へ変化した時点t0から第1待機時間t1以内において、第1遠隔器600から送信された周囲の温度T1が基準温度Ts以上である場合(T1≧Tsの場合)、第1遠隔器600から送信された周囲の温度T1が基準温度Ts未満である場合(T1<Tsの場合)に比べて通電量が小さくなるように便座ヒータ450への通電量の制御を行う。例えば、便座400の着座面の温度Txを前述の待機温度Tp=18℃に保持したい場合、第1室温検知器602で検知された周囲の温度T1が基準温度Ts(例えば12℃)未満の温度であれば、ヒータ温度検知部401aで検知される温度が20.5℃となるように制御する。また、第1室温検知器602で検知された周囲の温度T1が基準温度Ts(例えば12℃)以上の温度から室温の上限温度(例えば19.5℃)までの間の温度であれば、ヒータ温度検知部401aで検知される温度が20.5℃未満の所定の温度(例えば19.5℃)となるように制御する。
【0041】
このように、第1室温検知器602で検知された周囲の温度T1に応じて便座ヒータ450への通電量を制御することにより、便座400の着座面の温度を高精度に制御することができるとともに、便座ヒータ450への通電量を抑えて省エネルギー化することができる。しかも、基準温度Tsを予め設定しておき、当該基準温度Tsと第1室温検知器602で検知された周囲の温度T1との単純な比較を行うだけの構成ですむため、複雑な制御回路(制御器)を不要とすることができる。従って、単純な構成且つ省コストで上記温度制御を実現することができる。
【0042】
なお、本実施形態においては室温に応じて2段階に制御する例について説明したが、より多くの段階に分けて制御してもよいし、室温に対してリニアに制御することとしてもよい。室温に対してリニアに制御する構成とすることにより、制御は複雑となるものの、前座ヒータ450の通電量をきめ細かに制御することができるため、省エネルギー化をより達成させることができる。
【0043】
基準温度Tsは、得られる省エネルギー効果と制御回路の複雑さとの兼ね合いから実験又はシミュレーション等の結果に応じて決定される。
【0044】
また、制御部90は、使用状態から待機状態へ変化した時点t0から第1待機時間t1経過後においては(ステップS4でYes)、第2室温検知器620で検知された周囲の温度T2を記憶部に記憶し(ステップS6)、第2室温検知器620で検知された周囲の温度T2を便座ヒータ450への通電量を制御するための室温として用いる(ステップS7)。より具体的には、制御部90は、使用状態から待機状態へ変化した時点t0から第1待機時間t1経過後において、第1遠隔器600から送信された周囲の温度T1が基準温度Ts以上である場合(T1≧Tsの場合)、第1遠隔器600から送信された周囲の温度T1が基準温度Ts未満である場合(T1<Tsの場合)に比べて通電量が小さくなるように便座ヒータ450への通電量の制御を行う。
【0045】
ここで、第1待機時間t1は、第2室温検知器620が検知した温度において、加熱器210や乾燥装置等による熱の影響が消える時間以降の時間が予め設定される。すなわち、第2室温検知器620の周囲の温度T2がトイレ室内の室温と略同じ状態になるまでは、第2室温検知器620で検知した周囲の温度T2は信頼性が低くなるため採用しない。第1待機時間t1の具体的な長さは、便座本体200が設置される周囲の使用環境(平均
の室温等)や第2室温検知器620の便座本体200内における配置条件に基づいて実験
や経験則により定められる。例えば、第2室温検知器620で検知される周囲の温度T2を採用しない時間を1時間に設定し、余白時間の5分を加えた1時間5分経過後に第2室温検知器620で検知される周囲の温度T2を採用することとしてもよい。
【0046】
上記構成によれば、トイレ室内に人体が存在しなくなってから第1待機時間t1以内においては、制御部90が第1室温検知器602で検知された周囲の温度T1を室温として用いることで、高精度な温度制御を行うことができる。さらに、トイレ室内に人体が存在しなくなってから第1待機時間t1を経過した後は、便座本体200に設けられた第2室温検知器620で検知された周囲の温度T2を室温として用いることで、第2室温検知器620で検知された周囲の温度T2が衛生洗浄装置100の使用時に生じた加熱器210や乾燥装置等の熱の影響を受けることを防止することができるため、高精度な温度制御を行うことができる。このように、高精度に室温を検知して便座の温度制御を高精度に行うことにより、省エネルギーを達成することができる。
【0047】
なお、本実施形態においては、第1室温検知器602で検知された周囲の温度T1に関する温度情報が、人体検出器600aが人体の存在を検出した場合に便座本体200に送信される人体検出信号に含まれており、人体の存在を検出したときの温度情報を用いて制御部90が温度制御を行う構成について説明したが、例えば、図3のステップS5において第1室温検知器602で検知された周囲の温度T1が必要になったときに、人体検出器600aの検出結果に拘わらず、第1室温検知器602で検知された周囲の温度T1を含む温度情報を、制御部90が第1遠隔器600に温度情報の送信を要求する又は第1遠隔器600が温度情報を定期的に送信することにより、第1遠隔器600より送信させることとしてもよい。このように第1室温検知器602で検知された周囲の温度T1をリアルタイムで検知する構成としてもよいが、この場合でも、制御部90は、人体検出器600aが人体の存在を検出してから第1待機時間t1を経過するまでの間については、第2室温検知器620で検知された周囲の温度T2を、温度情報として採用しない。前述の通り、第2室温検知器620で検知された周囲の温度は、人体検出器600aが人体の存在を検出してから第1待機時間t1を経過するまでの間については、室温としての信頼性が低いためである。
【0048】
本実施形態において、第1遠隔器600は、人体検出器600aが人体の存在を検出した場合、内蔵電池601から第1室温検知器602への電力供給を開始し、人体検出器600aが人体の存在を検出しなくなった場合、内蔵電池601から第1室温検知器602への電力供給を停止するように構成されている。
【0049】
室温検出器は、便座ヒータ等で生じる熱の影響を防止するために、便座本体とは別体に設けられることが好ましい。また、人体検出器も、使用者の入室又は退室を高精度に検出するため、便座を有する便座本体とは別体に設けられることが好ましい。このような場合には、室温検知器及び人体検出器は、設置の自由度を上げるために電池駆動とされ、無線送信により検知した温度情報及び人体検出情報を便座本体へ送信することが好ましい。しかしながら、室温検知器が電池を電源としている場合、人体検出器で人体の存在が検出されていない時にも室温検知手段が検知した温度情報を定期的に便座本体に送る構成とすると、電池の消費が激しくなってしまい、電池寿命が短くなる。
【0050】
そこで、本実施形態のように、人体検出器600aが人体の存在を検出している間だけ、内蔵電池601から第1室温検知器602へ電力供給を行うことで、第1室温検知器602が利用されない間は、第1室温検知器602への電力供給が停止されるため、第1室温検知器602の電源である内蔵電池601の消費を有効に抑制しつつ、第1室温検知器602及び第2室温検知器620のそれぞれで検知される周囲の温度T1,T2のうち信頼の高い温度を室温として用いて、高精度な温度制御を行うことにより無駄なエネルギー消費を抑えることができる。
【0051】
本実施形態において、衛生洗浄装置100は、便座400の昇温状態を報知する報知手段として報知器280を有している。これにより、便座400の昇温制御開始直後から点滅を開始し、便座400に着座しても冷たくない冷感限界温度Tc以上に昇温した場合は連続して点灯し、使用者に便座400の昇温の状態を報知する。また、便座ヒータ450やサーミスタ401aの断線などの異常時にも使用者に対して報知を行うこととしてもよい。
【0052】
さらに、図3のステップS3において、制御部90は、使用状態から待機状態へ変化した時点t0から第1待機時間t1以内において、第1室温検知器602で検知された周囲の温度T1及び第2室温検知器620で検知された周囲の温度T2の何れもが基準温度Ts以上である場合に、便座ヒータ450への通電量を小さくする制御を行うこととしてもよい。
【0053】
図5は第1室温検知器を用いた温度制御を行うか否かを判定する制御の流れを示すフローチャートである。本例においては、図3に示す制御のステップS5において、制御部90は、第2室温検知器620で検知された周囲の温度T2を取得して記憶部に記憶する。図5に示すように、制御部90は、記憶部に記憶された、第1室温検知器602で検知された周囲の温度(第1室温)T1が基準温度Ts以上か否かを判定する(ステップS31)。第1室温T1が基準温度Ts以上である場合(ステップS31でYes)、制御部90は、第2室温検知器620で検知された周囲の温度(第2室温)T2が基準温度Ts以上か否かを判定する(ステップS32)。第2室温T1が基準温度Ts以上である場合(ステップS32でYes)、制御部90は、同じ目標温度に対して便座ヒータ450への通電量を小さくする制御を行う(ステップS33)。第1室温T1が基準温度Ts以上であっても、第2室温T2が基準温度Tsに満たない場合(ステップS32でNo)、制御部90は、便座ヒータ450への通電量を小さくすることなく通常の通電量に制御する(ステップS34)。例えば、待機温度18℃に設定されている場合、制御部90は、通常制御時においては、ヒータ温度検知部401aで検知される目標温度を20.5℃に設定し、第1室温T1及び第2室温T2がともに基準温度Ts(例えば12℃)以上であれば、ヒータ温度検知部401aで検知される目標温度を19.5℃に設定する。なお、本実施形態においては、第1室温T1の基準温度及び第2室温T2の基準温度が何れも同じ温度Tsである例について説明したが、それぞれの基準温度が異なっていてもよい。特に、第2室温T2は第1室温T1より高い温度となり易いことが想定されるため、第2室温T2の基準温度を第1室温T1の基準温度より高くすることとしてもよい。
【0054】
このように、第1室温検知器602で検知された周囲の温度T1が基準温度Ts以上であっても、第2室温検知器620で検知された周囲の温度T2が基準温度Ts未満の場合は、便座ヒータ450への通電量を小さくする制御を行わないため、第1室温検知器602で検知された周囲の温度が誤って高い温度に検知された場合であっても、便座ヒータ450への通電量が減少して便座400の温度が下がり過ぎることがなく、使用者に冷たく感じさせることを防止することができる。
【0055】
なお、制御部90は、第1室温検知器602及び第2室温検知器620の何れかを用いる場合においても、双方ともで温度検知を行い、第1室温検知器602及び第2室温検知器620の何れかから温度情報が得られない場合、第1室温検知器602及び第2室温検知器620で検知された周囲の温度T1,T2を用いずに便座ヒータ450への通電量を制御してもよい。
【0056】
このように、第1室温検知器602及び第2室温検知器620の双方ともにおいて周囲の温度が検知可能な状態にあるときのみに室温を用いた便座ヒータ450への通電量制御が行われるため、便座ヒータ450の通電量制御に誤った温度情報が使用されることを防止することができ、衛生洗浄装置100の信頼性を高くすることができる。
【0057】
さらに、同じ目標温度(待機温度)に対して便座ヒータ450の通電量を室温の変化に応じて制御するか否かを予め判定することとしてもよい。図6は室温制御の可否を判定するための制御の流れを示すフローチャートである。
【0058】
図6に示すように、まず、制御部90は、第1室温検知器602に異常がないか否かを判定する(ステップSA1)。具体的には、制御部90は、入室信号を受信した際、入室信号に含まれる第1室温検知器602で検知された周囲の温度T1に関する温度情報を読み出し、当該周囲の温度T1が所定の温度範囲内にあるか否かを判定する。ここで、所定の温度範囲は、通常想定され得る温度範囲を意味し、当該所定温度範囲を外れることは第1室温検知器602が故障したことを意味する。第1室温検知器602に異常がない場合には(ステップSA1でNo)、制御部90は、人体検出器600a以外で入室検出が行われたか否かを判定する(ステップSA2)。すなわち、人体検出器600aに異常がないか否かを判定する。具体的には、人体検出器600aからの入室信号を受信する前に、着座センサ610が便座400への着座を検出したり、洗浄装置や乾燥装置のオン又はオフ操作等の各種操作入力が行われたりした場合は、制御部90は、人体検出器600a以外で入室が検出されたものと判定する。さらに、人体検出器600aに異常がない場合には(ステップSA2でNo)、制御部90は、第1室温検知器602が電池切れ状態となっていないか否かを判定する(ステップSA3)。具体的には、第1遠隔器600は、内蔵電池601の電圧Vが所定の電圧値V1未満となるか否かを監視し、所定の電圧値V1未満となった場合、電池切れ状態になったものとして送信器603に電池切れ状態を示す電池切れ信号を送信するよう制御する。制御部90は、このような電池切れ信号を受信したか否かを判定し、受信していない場合には(ステップSA3でYes)、室温制御が可能であると判定し、図4及び図5の制御を行う(ステップSA4)。すなわち、ステップSA1からステップSA3の判定においてすべてNoとなった場合、制御部90は、室温制御を行う。一方、ステップSA1からステップSA3の何れかの判定において、Yesとなった場合、制御部90は、室温制御が不能であると判定し、図4及び図5の制御は行わない(ステップSA5)。このとき、制御部90は、ヒータ温度検知部401aで検知された便座400の温度のみに基づいて便座ヒータ450への通電量を制御する。このような室温制御可否判定において、制御部90は、所定の期間ごとに、その期間内で第1室温検知器602の異常が生じたか否か、人体検出器600aの異常が生じたか否か及び第1室温検知器602が電池切れ状態となったか否かを判定し、何れかに該当した場合に、それ以降の期間では室温制御を行わないこととすることが好ましい。
【0059】
このように、第1室温検知器602又は人体検出器600aが異常である場合には、これらから送られてくる信号に基づいて室温制御が行われないため、便座400の温度が実際の室温とは異なる温度に基づいて制御されることを防止し、使用者に不快感を与えることを防止することができる。
【0060】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変更、修正が可能である。
【0061】
例えば、人体検出器600aにおける人体検出態様は、本実施形態に限られない。例えば、人体検出器は、予め設定された時間間隔でトイレ室内における人体の存否を検出するように構成されており、第1遠隔器600は、人体検出器がトイレ室内に人体の存在を検出していない間は予め設定された時間間隔で人体の不在を示す人体不在信号S2を便座本体200に送信し、人体検出器がトイレ室内に人体の存在を検出している間は人体不在信号S2を便座本体200には送信しないように構成してもよい。この場合、制御部90は、人体不在信号S2が送信された時点を、使用状態から待機状態へ変化した時点t0として判定すればよい。
【0062】
あるいは、前記人体検出器は、予め設定された時間間隔でトイレ室内における人体の存否を検出するように構成されており、第1遠隔器600は、人体検出器がトイレ室内に人体の存在を検出している間は予め設定された時間間隔で人体の存在を示す人体検出信号S1を便座本体200に送信し、人体検出器がトイレ室内に人体の存在を検出していない間は予め設定された時間間隔で人体の不在を示す人体不在信号S2を便座本体に送信するように構成してもよい。この場合、制御部90は、人体検出信号S1の代わりに人体不在信号S2が送信された時点を、使用状態から待機状態へ変化した時点t0として判定すればよい。
【0063】
また、上記実施形態においては、第1遠隔器600及び第2遠隔器300と便座本体200との間を無線で通信する構成としたが有線で通信する構成としてもよい。
【0064】
また、上記実施形態においては、第1遠隔器600及び第2遠隔器300が内蔵電池601で駆動される構成としたが、商用電源で駆動される構成としてもよい。
【0065】
このように、本発明に係る衛生洗浄装置の代表的な態様は、便座と、外部から供給される水を加熱して温水を生成する加熱器と、前記温水を外部へ噴出する温水噴出部とを有する便座本体と、前記便座の内部に設けられ、前記便座を電気的に加熱する便座ヒータと、前記便座ヒータの温度T3を検知するヒータ温度検知部と、前記便座本体とは別体にトイレ室に設けられ、周囲の温度T1を検知する第1室温検知器、及び前記トイレ室の人体の存否を検出する人体検出器を有し、前記第1室温検知器で検知された周囲の温度T1と前記人体検出器によって検出された人体の存否の検出結果を前記便座本体に送信する遠隔器と、前記便座本体に設けられ、周囲の温度T2を検知する第2室温検知器と、前記遠隔器から送信された人体の存否の検出結果に基づいて、人体が前記トイレ室内に存在する使用状態及び人体が前記トイレ室内に存在しない待機状態の何れであるかを判定し、前記遠隔器から送信された周囲の温度T1、前記第2室温検知器で検知された周囲の温度T2、及び前記ヒータ温度検知部で検知された前記便座ヒータの温度T3の少なくとも何れか1つの温度に基づいて、前記便座ヒータへの通電量を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記使用状態から前記待機状態へ変化した時点t0から第1待機時間t1以内において、前記遠隔器から送信された周囲の温度T1を前記便座ヒータへの通電量を制御するための室温として用い、前記第1待機時間t1経過後において、前記第2室温検知器で検知された周囲の温度T2を前記便座ヒータへの通電量を制御するための室温として用いるよう構成される。
【0066】
上記構成によれば、トイレ室内に人体が存在しなくなってから第1待機時間t1以内においては、制御部が第1室温検知器で検知された周囲の温度T1を室温として用いることで、高精度な温度制御を行うことができる。さらに、トイレ室内に人体が存在しなくなってから第1待機時間t1を経過した後は、便座本体に設けられた第2室温検知器で検知された周囲の温度T2を室温として用いることで、第2室温検知器で検知された周囲の温度T2が衛生洗浄装置の使用時に生じた便座ヒータの熱等の影響を受けることを防止することができるため、高精度な温度制御を行うことができる。このように、高精度に室温を検知して便座の温度制御を高精度に行うことにより、省エネルギーを達成することができる。
【0067】
本発明に係る他の態様は、前記代表的な態様に加えて、前記制御部は、前記使用状態から前記待機状態へ変化した時点t0から前記第1待機時間t1以内において、前記遠隔器から送信された周囲の温度T1が基準温度Ts以上である場合、前記遠隔器から送信された周囲の温度T1が基準温度Ts未満である場合に比べて通電量が小さくなるように前記便座ヒータへの通電量の制御を行う。
【0068】
これにより、第1室温検知器で検知された周囲の温度T1に応じて便座ヒータへの通電量を制御することにより、便座の温度を高精度に制御することができるとともに、便座ヒータへの通電量を抑えて省エネルギー化することができる。しかも、基準温度Tsを予め設定しておき、当該基準温度Tsと第1室温検知器で検知された周囲の温度T1とを比較するため、単純な構成で上記温度制御を行うことができ、省コストで実現することができる。
【0069】
本発明に係るさらに他の態様は、前記代表的な態様に加えて、前記制御部は、前記使用状態において、前記便座の着座面の温度Txが所定の温度TUとなるように、前記便座の着座面の温度Txと前記便座ヒータの温度T3との温度差ΔTを考慮して、前記便座ヒータへの通電量を制御する。
【0070】
使用者が実際に着座する便座の着座面の温度Txは、便座ヒータの温度T3とは異なっているため、便座の着座面の温度Txと便座ヒータの温度T3との温度差ΔTを考慮して、便座ヒータの通電量を制御することにより、便座の着座面の温度Txを所望の温度TUに高精度に制御することができる。
【0071】
本発明に係るさらに他の態様は、前記代表的な態様に加えて、前記人体検出器は、予め設定された時間間隔で前記トイレ室内における人体の存否を検出するように構成されており、前記遠隔器は、前記人体検出器が人体を検出している間は人体の存在を示す人体検出信号S1を予め設定された時間間隔で前記便座本体に送信し、前記人体検出器が人体の存在を検出していない間は前記人体検出信号S1を前記便座本体に送信しないように構成されており、前記制御部は、前記人体検出信号S1が受信されなくなった時点を、前記使用状態から前記待機状態へ変化した時点t0として判定する。
【0072】
これにより、使用状態から待機状態へ変化した時点t0を高精度に判定することができる。
【0073】
本発明に係るさらに他の態様は、前記代表的な態様に加えて、前記制御部は、前記使用状態から前記待機状態へ変化した時点t0から第1待機時間t1以内において、前記第1室温検知器で検知された周囲の温度T1及び前記第2室温検知器で検知された周囲の温度T2の何れもが基準温度Ts以上である場合、前記遠隔器から送信された周囲の温度T1が基準温度Ts未満である場合に比べて通電量が小さくなるように前記便座ヒータへの通電量の制御を行う。
【0074】
これにより、第1室温検知器で検知された周囲の温度T1が基準温度Ts以上であっても、第2室温検知器で検知された周囲の温度T2が基準温度Ts未満の場合は、便座ヒータへの通電量を小さくさせる制御を行わないため、第1室温検知器で検知された周囲の温度T1が誤って高い温度に検知された場合であっても、便座ヒータへの通電量が減少して便座の温度が下がり過ぎることがなく、使用者に冷たく感じさせることを防止することができる。
【0075】
本発明に係るさらに他の態様は、前記代表的な態様に加えて、前記制御部は、前記第1室温検知器及び前記第2室温検知器の何れかから温度情報が得られない場合、前記第1室温検知器及び前記第2室温検知器で検知された周囲の温度T1,T2を用いずに前記便座ヒータへの通電量を制御する。
【0076】
これにより、第1室温検知器及び第2室温検知器の双方ともにおいて周囲の温度T1,T2が検知可能な状態にあるときのみに室温を用いた便座ヒータへの通電量制御が行われるため、便座ヒータの通電量制御に誤った温度情報が使用されることを防止することができ、衛生洗浄装置の信頼性を高くすることができる。
【0077】
本発明に係るさらに他の態様は、前記代表的な態様に加えて、前記遠隔器は、前記第1室温検知器及び前記人体検出器を駆動する内蔵電池を有し、前記人体検出器が人体の存在を検出した場合、前記内蔵電池から前記第1室温検知器への電力供給を開始し、前記人体検出器が人体の存在を検出しなくなった場合、前記内蔵電池から前記第1室温検知器への電力供給を停止する。
【0078】
室温検出器は、便座ヒータ等で生じる熱の影響を防止するために、便座本体とは別体に設けられることが好ましい。また、人体検出器も、使用者の入室又は退室を高精度に検出するためには、便座を有する便座本体とは別体に設けられることが好ましい。このような場合には、室温検知器及び人体検出器は、設置の自由度を上げるために電池駆動とされ、無線送信により検知した温度情報及び人体検出情報を便座本体へ送信することが考えられる。しかしながら、室温検知器が電池を電源としている場合、人体検出器で人体の存在が検出されていない時にも室温検知手段が検知した温度情報を定期的に便座本体に送る構成とすると、電池の消費が激しくなってしまい、電池寿命が短くなる。
【0079】
上記態様とすることで、第1室温検知器が利用されない間は、第1室温検知器への電力供給が停止されるため、第1室温検知器の電源である内蔵電池の消費を有効に抑制しつつ、第1室温検知器及び第2室温検知器のそれぞれで検知される周囲の温度T1,T2のうち信頼の高い温度を室温として用いて、高精度な温度制御を行うことにより無駄なエネルギー消費を抑えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の衛生洗浄装置は、高精度に室温を検知して便座の温度制御を高精度に行うことにより、省エネルギーを達成するために有用である。
【符号の説明】
【0081】
40 洗浄ノズル
90 制御部
100 衛生洗浄装置
200 便座本体
210 加熱器
220 温水噴出部
280 報知器
300 第2遠隔器
400 便座
401a ヒータ温度検知部
402 ヒータ駆動部
403 受信部
450 便座ヒータ
500 便蓋
600 第1遠隔器(遠隔器)
600a 人体検出器(退室検出器)
601 内蔵電池
602 第1室温検知器
603 送信器
610 着座センサ
620 第2室温検知器
700 便器



【特許請求の範囲】
【請求項1】
便座と、外部から供給される水を加熱して温水を生成する加熱器と、前記温水を外部へ噴出する温水噴出部とを有する便座本体と、
前記便座の内部に設けられ、前記便座を電気的に加熱する便座ヒータと、
前記便座本体とは別体にトイレ室に設けられ、周囲の温度T1を検知する第1室温検知器を有し、前記第1室温検知器で検知された周囲の温度T1を前記便座本体に送信する遠隔器と、
前記便座本体に設けられ、周囲の温度T2を検知する第2室温検知器と、
前記便座ヒータの温度T3を検知するヒータ温度検知器と、
前記トイレ室から使用者が退室したことを検出する退室検出器と、
前記温度T3に基づいて、前記便座ヒータへの通電量を制御するとともに、前記退室検出器で退室を検出すると待機状態にあると判定する制御部と、
を備え、
前記遠隔器は内蔵電池により駆動され、
前記第1室温検知器も前記内蔵電池から電力供給がなされるとともに、前記退室検出器が退室を検出した場合には、前記内蔵電池からの電力供給が停止されるよう構成され、
前記制御部は、前記内蔵電池から前記第1室温検知器への電力供給が停止されると、前記待機状態での前記便座ヒータの目標温度を、前記第1室温検知器への電力供給が停止される前に検知した前記温度T1に基づいて決定し、その後の前記目標温度を、前記温度T2に基づいて決定することを特徴とする、
衛生洗浄装置。
【請求項2】
前記遠隔器は、前記退室検出器を有し、
当該退室検出器は、前記トイレ室への人体の存否を検出する人体検出器で構成され、
前記人体検出器が人体の存在を検出すれば、前記内蔵電池から前記第1室温検知器への電力供給を開始し、人体の存在を検出しなくなれば、前記内蔵電池からの電力供給を停止することを特徴とする、
請求項1に記載の衛生洗浄装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記人体検出器が人体の存在を検出すると、前記便座の着座面の温度を、待機状態における待機温度Tpから所定の温度TUまで昇温するように前記便座ヒータの通電量を制御するよう構成され、
前記待機温度Tpは、前記便座ヒータにおいて前記人体検出器により人体の存在が検出されてから着座するまでの間に、少なくとも使用者が便座に接触しても冷たく感じることのない冷感限界温度Tcまで上昇可能な温度として設定されていることを特徴とする、
請求項2に記載の衛生洗浄装置。
【請求項4】
前記遠隔器は、前記内蔵電池が所定の電圧未満となると電池切れ信号を前記制御部へ送信するように構成され、
前記制御部は、前記電池切れ信号を受信すると、前記温度T3に基づいて、前記便座の着座面の温度が所定の温度TUとなるように前記便座ヒータへの通電量を制御することを特徴とする、
請求項1から3のいずれか1項記載の衛生洗浄装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−143264(P2011−143264A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−63067(P2011−63067)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【分割の表示】特願2009−209944(P2009−209944)の分割
【原出願日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】