衛生洗浄装置
【課題】少ない使用水量で刺激感と量感をともに高めた心地良い衛生洗浄装置の提供。
【解決手段】洗浄ノズル82と、洗浄水加圧装置74を備え、第1吐水工程は、所定の位置で、第1の時間幅の間で後から吐出された洗浄水が、第1吐水工程の初めに吐出された洗浄水に追いつき合体し、第1の水塊が形成されるよう第1の時間幅の間で後から吐出される洗浄水の圧力を、第1吐水工程の初めの吐出圧力より高くし、第2吐水工程では、吐水孔から所定の位置で、第2の時間幅の間で後から吐出された洗浄水が、第2吐水工程の初めの洗浄水に追いついて合体し、第2の水塊が形成されるよう第2の時間幅の間で後から吐出される洗浄水の圧力を、第2吐水工程の初めに吐出される洗浄水の圧力より高くした。更に第1と、第2吐水工程における洗浄水の圧力変化を異ならせた。更に第1吐水工程の単位時間当たりの洗浄水の圧力増加量を第2吐水工程よりも小さくした。
【解決手段】洗浄ノズル82と、洗浄水加圧装置74を備え、第1吐水工程は、所定の位置で、第1の時間幅の間で後から吐出された洗浄水が、第1吐水工程の初めに吐出された洗浄水に追いつき合体し、第1の水塊が形成されるよう第1の時間幅の間で後から吐出される洗浄水の圧力を、第1吐水工程の初めの吐出圧力より高くし、第2吐水工程では、吐水孔から所定の位置で、第2の時間幅の間で後から吐出された洗浄水が、第2吐水工程の初めの洗浄水に追いついて合体し、第2の水塊が形成されるよう第2の時間幅の間で後から吐出される洗浄水の圧力を、第2吐水工程の初めに吐出される洗浄水の圧力より高くした。更に第1と、第2吐水工程における洗浄水の圧力変化を異ならせた。更に第1吐水工程の単位時間当たりの洗浄水の圧力増加量を第2吐水工程よりも小さくした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、一般に、衛生洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
洗浄水による洗浄を行うことで人体局部を清潔にできることから、衛生洗浄装置の普及が急速に進んでいる。
ここで、使用水量を少なくしても心地良い洗浄感が得られるように、給水源より得られる吐水圧よりも高い圧力が間欠的に発生するような脈動推移を起こさせる圧力発生部を備えた衛生洗浄装置が提案されている(特許文献1を参照)。
この特許文献1に開示がされた衛生洗浄装置によれば、圧力の脈動推移を起こすことにより、速度が増加し、かつ脈動流が繰返し現れるような吐水を行なうことができる。
【0003】
そのため、吐水後に速度の異なる部位が合体した大きな吐水群を人体局部に着水させることができる。すなわち、速い速度を持つ部位が、その前に吐水された遅い速度を持つ部位に追いつくことで大きな吐水群が形成され、吐水時は少ない水量であっても人体局部に着水する時点では大きな吐水群となっているため少ない水量でも心地良い洗浄感を与えることができるという優れた技術を開示したものである。
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された技術においては、刺激感(速い速度の洗浄水で強く洗浄されている感じ)と量感(大量の洗浄水で洗浄されている感じ)とがトレードオフの関係になってしまうという問題があった。具体的には、吐水の速度差によって大きな吐水群としていくことで吐水の速度が低下してしまうため量感は向上するものの刺激感が低下し、反対に刺激感を高めると量感が低下するものとなっており、より高い洗浄感を与えるためには更なる改良が望まれるものであった。本発明者らは、より高い洗浄感を少ない洗浄水量で提供することができないかを鋭意研究開発を行っていたものである。
【0005】
なお、ここで、本発明者らは、量感と刺激感を両立させた高い洗浄感を実現するために、特許文献2のような技術の検討も行なってきた。
【0006】
特許文献2には、オリフィス部から噴出された洗浄水は吐水孔に向かってまっすぐに噴出され、空気吸引部を通過し、吐水孔から吐水される衛生洗浄装置が開示されている(特許文献2の[請求項1]、[0006]〜[0014]段落、図2等を参照)。
この特許文献2に開示された衛生洗浄装置によれば、噴流による空気の吸込効果(エジェクタ効果)により吸い込まれた空気によって連続吐水される洗浄水の表面が乱され、洗浄水に細い部位と太い部位とが形成される。洗浄水が太くなった部位は、言い換えると洗浄水が密となり、人体局部に着水した際に量感を感じさせる吐水となっている。さらに、エジェクタ効果を生じさせるオリフィス部から吐水孔に向けてまっすぐに噴出されるので、洗浄水がノズル内壁面に衝突することによるエネルギー損失を低減できる、すなわち洗浄水の減速による刺激感の低下を抑制することができるものである。従来の連続吐水の衛生洗浄装置と比して、量感と刺激感を両立した高い洗浄感を与えることができる優れた技術である。
【0007】
しかしながら、この特許文献2に開示がされた技術において、連続吐水を行なう構成であるために使用される水量が多く必要であるという問題に加え、エジェクタ効果を生じさせる装置が必要となるために装置の大型化やコストの面で課題があった。また、エジェクタ効果によって洗浄水の表面の乱れを生じさせることで量感を作り出し、給水圧によって得られる洗浄水の速度低下の程度を抑えることで刺激感を作り出す構成であるため、量感と刺激感のメリハリを高くつけることに限界があり、高いレベルでの洗浄感を与えるという観点においても改良が望まれるものであった。
【0008】
また、同じく特許文献2には、オリフィス部から噴出された洗浄水は吐水孔に向かってまっすぐに噴出され、共振室を通過し、吐水孔から吐水される衛生洗浄装置が開示されている(特許文献2の[請求項8]、[0026]〜[0027]段落、図13等を参照)。
この特許文献2に開示された衛生洗浄装置によれば、オリフィス部から洗浄水が噴出されると共振室内が負圧となり、洗浄水が共振室の負圧に引っ張られて円錐状に断面積が広がった吐水となる。一方で、共振室内が一定以上の負圧になると吐水孔から大気が引き込まれて共振室内が正圧となり、吐水はオリフィス部から噴出されたままの直線状の吐水となる。この円錐状に断面積が広がった吐水が人体局部に着水すると量感を感じ、直線状の吐水が人体局部に着水すると刺激感を感じるものであるが、円錐状に断面積が広がった吐水と直線状の吐水とが交互に繰り返し行なわれることで、従来の連続吐水の衛生洗浄装置と比して、量感と刺激感を両立した高い洗浄感を与えることができる優れた技術である。
【0009】
しかしながら、この特許文献2に開示がされた技術においては、連続吐水を行なう構成であるために使用される水量が多く必要であるという問題に加え、共振室の負圧によって洗浄水の断面積を広げることで量感を作り出し、給水圧によって得られる洗浄水の速度低下の程度を抑えることで刺激感を作り出す構成であるため、量感と刺激感のメリハリを高くつけることに限界があり、高いレベルでの洗浄感を与えるという観点においても改良が望まれるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第3264274号公報
【特許文献2】特開2002−155567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の態様は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、少ない使用水量で刺激感と量感をともに高めることができ、今までにない高いレベルの心地良い洗浄感を与えることができる優れた衛生洗浄装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の発明は、給水された洗浄水を人体に向けて吐水する衛生洗浄装置であって、前記洗浄水を人体に向けて吐出させる吐水孔を有する洗浄ノズルと、前記洗浄水を加圧して前記吐水孔から吐出させる加圧装置と、を備え、第1の時間幅を有する第1の吐水工程と、第2の時間幅を有する第2の吐水工程と、を実行する衛生洗浄装置であって、前記第1の吐水工程においては、前記吐水孔から所定の位置において、前記第1の時間幅の間で後から吐出された洗浄水が、前記第1の吐水工程の初めに吐出された洗浄水に追いついて合体し、第1の水塊が形成されるように、前記加圧装置は、前記第1の時間幅の間で後から吐出される洗浄水の圧力を、前記第1の吐水工程の初めに吐出される洗浄水の圧力よりも高くし、前記第2の吐水工程においては、前記吐水孔から所定の位置において、前記第2の時間幅の間で後から吐出された洗浄水が、前記第2の吐水工程の初めに吐出された洗浄水に追いついて合体し、第2の水塊が形成されるように、前記加圧装置は、前記第2の時間幅の間で後から吐出される洗浄水の圧力を、前記第2の吐水工程の初めに吐出される洗浄水の圧力よりも高くするものであり、かつ、前記第1の水塊が前記第2の水塊よりも大きくなるように、前記加圧装置は、前記第1の吐水工程における洗浄水の圧力変化と、前記第2の吐水工程における洗浄水の圧力変化と、を異ならせるものであり、かつ、前記第2の水塊が前記第1の水塊よりも速くなるように、前記加圧装置は、前記第1の吐水工程における洗浄水の最大圧力よりも前記前記第2の吐水工程における洗浄水の最大圧力を高くするものであって、前記第1の吐水工程による吐水と前記第2の吐水工程による吐水とが前記吐水孔から交互に吐水され、さらに、前記第1の吐水工程における単位時間当たりの前記洗浄水の圧力の増加量は、前記第2の吐水工程における単位時間当たりの前記洗浄水の圧力の増加量よりも小さいことを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0013】
この衛生洗浄装置によれば、後に吐水された洗浄水が先に吐水された洗浄水に追いつく追いつき量を第2の吐水工程よりも第1の吐水工程で多くなるようにすることで所定位置における第1の水塊を第2の水塊よりも断面積が大きくなるようにするとともに、第1の吐水工程における洗浄水の最大圧力よりも第2の吐水工程における洗浄水の最大圧力が高くなるようにすることで所定位置における第2の水塊の速度が第1の水塊の速度よりも速くなるように、吐水孔から吐出される洗浄水を加圧する。これにより、「断面積が大きく速度の遅い第1の水塊」すなわち量感を与える「大玉」と、「断面積が小さく速度の速い第2の水塊」すなわち刺激感を与える「速玉」と、を生成するという技術を採用している。また、「刺激感」を高めた吐水と、「量感」を高めた吐水と、が吐水孔から交互に吐水される構成であるため、使用水量を大きく抑えた上で「量感」と「刺激感」とが両立された心地良い洗浄感を提供することができる。
【0014】
なお、ここで言う、「交互に吐水」とは、第1の吐水工程による吐水と第2の吐水工程による吐水とを、完全に順番に吐水させるものに限定されるものではなく、第1の吐水工程による吐水と第2の吐水工程による吐水との間に、第1の吐水工程による吐水あるいは第2の吐水工程による吐水を挟んで吐水させるものも交互と表現させているものである。
【0015】
また、この衛生洗浄装置によれば、第1の吐水工程においては、洗浄水の圧力を比較的ゆっくり増加させることにより、吐水孔から吐水される洗浄水の速度(初速)は、比較的ゆっくり増加する。そのため、所定位置において、後に吐水された洗浄水が先に吐水された洗浄水に追いつく追いつき量を、より大きくすることができる。そのため、量感を感じさせるための大玉をより大きく生成することができる。
【0016】
一方、第2の吐水工程においては、洗浄水の圧力を比較的速く増加させることにより、吐水孔から吐水される洗浄水の速度(初速)は、比較的速く増加する。そのため、水量は少ないながらも、比較的速い速度の水塊を生成することができる。
【0017】
つまり、量感を感じさせるための大玉を生成する工程において、十分な追いつき量を確保することで吐水断面積をより大きくすることができる。また、刺激感を感じさせるための速玉を生成する工程において、水量は少ないながらも、比較的速い速度の水塊を生成することができる。そのため、全体として使用水量を少なくしつつ、確実に量感と刺激感を両立させた快適性の高い洗浄を実現することができる。
【0018】
また、第2の発明は、第1の発明において、前記所定の位置において、前記第2の水塊が前記第1の水塊に追いつかないように第1の吐水工程と第2の吐水工程との間に所定の待ち時間を設けることを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0019】
この衛生洗浄装置によれば、人体に着水する前に速度の速い第2の水塊すなわち速玉が速度の遅い第1の水塊すなわち大玉に追い付いてしまうことを防止するようにしている。 言い換えると、「大玉」と「速玉」とを別のタイミングで人体に着水させることができるので、少ない水量でも刺激感と量感とを兼ね備えた極めて良好な洗浄感を与えるができる。
【0020】
また、第3の発明は、第2の発明において、前記所定の待ち時間において、前記洗浄水の圧力が減少することを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0021】
この衛生洗浄装置によれば、大玉と速玉とを分離させて生成させる、すなわち水玉同士が繋がっていない状態を作り出すので、人体に大玉と速玉とを分離して別々に着水させることが可能となる。そのため、より十分な量感と強さ感とを使用者に感じさせることができる。
【0022】
また、第4の発明は、第1の発明において、前記第1の吐水工程の少なくとも一部において、給水圧よりも低い圧力領域で前記洗浄水を前記吐水孔から吐水させることを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0023】
この衛生洗浄装置によれば、大玉の生成が給水圧よりも低い圧力領域で行われるので、吐水孔から吐出される洗浄水の初速度そのものが遅い速度となる。そのため、洗浄水の追いつき量を多くすることが可能となり、十分な量感を使用者に感じさせることができる。
【0024】
また、第5の発明は、第4の発明において、前記第2の吐水工程の少なくとも一部において、給水圧よりも高い圧力領域で前記洗浄水を前記吐水孔から吐水させることを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0025】
この衛生洗浄装置によれば、速玉の生成が給水圧よりも高い圧力領域で行われるので、吐水孔から吐出される洗浄水の初速度そのものが速い速度となる。そのため、刺激感の高い速玉を生成することが可能となり、十分な量感と刺激感とを有する洗浄感を実現することができる。
【0026】
また、第6の発明は、第1の発明において、前記第1の吐水工程において、前記第1の吐水工程の後半部分における前記単位時間当たりの洗浄水の圧力の増加量は、前記第1の吐水工程の前半部分における前記単位時間当たりの洗浄水の圧力の増加量よりも大きいことを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0027】
この衛生洗浄装置によれば、吐水孔から吐出される洗浄水の初速の増加に伴い、その初速の増加率も増加させることで、後に吐水された洗浄水が先に吐水された洗浄水に追いつく追いつき量をより多くすることができる。そのため、量感を感じさせるための大玉をより大きくすることができ、量感のより高い洗浄を実現することができる。
【0028】
また、第7の発明は、第1の発明において、前記加圧装置は、前記洗浄水に圧力を付与する加圧機と、前記加圧機と前記吐水孔との間に設けられ、前記洗浄水の圧力を蓄圧する蓄圧機と、を有し、前記第2の吐水工程において前記加圧機から前記洗浄水に付与される圧力の一部を前記蓄圧機に蓄圧し、前記蓄圧された圧力を前記第1の吐水工程において前記洗浄水に付与することを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0029】
この衛生洗浄装置によれば、より速度の速い吐水を行う第2の吐水工程において圧力機を作動させて第2の水塊を形成させるとともにその圧力の一部を蓄圧機に蓄圧しておき、蓄圧の圧力によって第1の吐水工程における第1の水塊の形成を行うことが可能となる。そのため、追いつき量をより多くすることができる。これにより、量感を感じさせるための大玉をより大きくすることができ、量感のより高い洗浄を実現することができる。また、加圧機の仕事量を低減することが可能となり、加圧機の耐久性を向上させることができる。
【0030】
また、第8の発明は、第6または第7の発明において、前記加圧装置は、前記洗浄水に圧力を付与する加圧機と、前記加圧機と前記吐水孔との間に設けられ、前記洗浄水の圧力を蓄圧する蓄圧機と、を有し、前記第1の吐水工程において、吐水開始時点では前記蓄圧機による前記圧力の付与が前記洗浄水に行われ、前記第1の吐水工程における前記第1の時間幅の後半に、前記加圧機は前記洗浄水に圧力を付与することを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0031】
この衛生洗浄装置によれば、蓄圧力の開放にさらに圧力機による加圧を加えることで、吐水孔から吐出される洗浄水の初速が高くなってきたときに、その初速増加率も高く維持することが可能となる。そのため、追いつき量を多くすることができ、量感のより高い洗浄を実現することができる。
【0032】
また、蓄圧機による加圧と加圧機による加圧の双方が洗浄水に付与できるので、第1の吐水工程における初速の増加率の調整が容易にでき、追いつき量を多くすることが可能となる。
【発明の効果】
【0033】
本発明の態様によれば、極めて少ない使用水量で刺激感と量感を今までにない高い次元で兼ね備えた吐水を行うことが可能となり、極めて高い節水性能を備えた上で極めて高い洗浄感を提供できる衛生洗浄装置を提供できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】第1の実施形態に係る衛生洗浄装置の概略構成を水路系を中心に表したブロック図である。
【図2】脈動発生機器の概略構成断面図である。
【図3】洗浄水の圧力変動の様子を例示するための模式図である。
【図4】洗浄ノズルを例示するための模式図である。
【図5】脈動発生コイルに印加される電圧波形を例示するための模式図である。
【図6】吐水孔から吐出された直後の洗浄水の速度(初速)を示すタイミングチャートである。
【図7】吐水孔からの洗浄水吐水の様子を模式的に例示をするための図である。
【図8】吐水が人体局部に当たるときの荷重の変化を示したタイミングチャートである。
【図9】速度(初速)波形と追付き曲線とを示したタイミングチャートである。
【図10】脈動推移の速度波形と生成される吐水群の形状の一例を示す図である。
【図11】吐水群の組合せを例示するための模式図である。
【図12】洗浄水の圧力変動の様子を例示するためのグラフ図である。
【図13】電圧印加のタイミング、プランジャの動作、圧力波形、吐水された洗浄水の状態を例示するための模式図である。
【図14】第2の実施形態に係る衛生洗浄装置において、蓄圧部が設けられている場合を例示するための模式図である。
【図15】第3の実施形態に係る衛生洗浄装置において、残留電荷消費回路と蓄圧部とが設けられている場合を例示するための模式図である。
【図16】第4の実施形態に係る衛生洗浄装置において、洗浄水の圧力変動および脈動発生機器に印加される電圧波形を示すタイミングチャートである。
【図17】第4の実施形態に係る衛生洗浄装置において、吐水孔から吐出された直後の洗浄水の速度(初速)を示すタイミングチャートである。
【図18】第5の実施形態に係る衛生洗浄装置において、洗浄水の圧力変動および脈動発生機器に印加される電圧波形を示すタイミングチャートである。
【図19】第5の実施形態に係る衛生洗浄装置において、吐水孔から吐出された直後の洗浄水の速度(初速)を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について例示をする。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る衛生洗浄装置の概略構成を水路系を中心に表したブロック図である。
【0036】
図1に示すように、衛生洗浄装置1の水路系は、衛生洗浄装置1のケーシングの外部の供給源(図示せず)から給水される入水側弁ユニット50と熱交換ユニット60と、脈動発生ユニット(加圧装置)70とを備える。すなわち、衛生洗浄装置1の水路系には、衛生洗浄装置1のケーシングの外部の供給源(図示せず)側から順に、入水側弁ユニット50と、熱交換ユニット60と、脈動発生ユニット70とが設けられている。
【0037】
そして、脈動発生ユニット70から洗浄ノズル82に、脈動発生ユニット70により付与された脈動を保った洗浄水が導かれ、当該ノズル82から吐水される。これらの各ユニットは、衛生洗浄装置1のケーシングに収納されている。また、制御部10には、電磁弁53、入水温センサ62a、ヒータ61、出水温センサ62b、フロートスイッチ63、脈動発生機器(加圧機)74、流量調節兼流路切替弁81、洗浄ノズル82および制御ボタン(図示せず)が接続されている。なお、制御ボタンには、強い刺激感のある「ハードなおしり洗浄」、「ソフトなおしり洗浄」(以下、「やわらか洗浄」と呼ぶ)、「ビデ洗浄」の各洗浄モードを選択する洗浄ボタン、洗浄水の水勢を変化させるための水勢変更ボタン、洗浄水の温度を選択できる温度調整ボタン、洗浄を停止するための停止ボタンが含まれる。
【0038】
これら各ユニットは、脈動発生ユニット70を挟んでそれぞれ給水管路で接続されている。即ち、入水側弁ユニット50と熱交換ユニット60は、給水管路55で接続されている。
【0039】
入水側弁ユニット50は、給水源(例えば、水道管)から洗浄水(例えば、水道水)が直接給水されている。この入水側弁ユニット50に導かれた洗浄水は、入水側弁ユニット50のストレーナ51でゴミなどが捕捉されて、逆止弁52に流れ込む。そして、電磁弁53にて管路が開かれると、洗浄水は調圧弁54に流れ込み、所定の圧力(例えば、給水圧:0.110MPa)に調圧された状態で、瞬間式加熱方式の熱交換ユニット60に流入する。このように調圧を受けて流入する洗浄水の流量は200〜600cc/min程度となるようにされている。なお、便器洗浄用の洗浄水を貯留する洗浄水タンク(図示せず)から分岐して入水側弁ユニット50に配管することもできる。
【0040】
上記した入水側弁ユニット50の下流の熱交換ユニット60は、ヒータ61を内蔵する熱交換部62を備える。この熱交換ユニット60は、熱交換部62へ流入する洗浄水の温度と熱交換部62から流出する洗浄水の温度とを入水温センサ62aと出水温センサ62bで検出しつつ、その検出温度を基にして、洗浄水の設定温度の洗浄水に加熱するようにヒータ61の加熱動作を制御する。すなわち、熱交換ユニット60においては、洗浄水の温度が所定の設定温度となるようにヒータ61による加熱が行われる。この場合、入水温センサ62aからの検出温度と、出水温センサ62bからの検出温度とに基づいて、洗浄水の温度が所定の設定温度となるように、制御部10によりヒータ61の加熱動作が制御される。
【0041】
そして、このようにして温水化された洗浄水は、後述する脈動発生ユニット70に流入し脈動を付加された後、洗浄ノズル82に流入する。なお、脈動とは、脈動発生ユニットによって生じる圧力変動のことであり、圧力変動を起こす装置類を脈動発生ユニットと呼んでいる。
【0042】
また、この熱交換ユニット60は、熱交換部62内の水位を検出するフロートスイッチ63を有する。このフロートスイッチ63は、ヒータ61が水没する所定の水位以上になるとその旨の信号を出力するように構成されている。そして、制御部10は、この信号を入力している状況下でヒータ61を通電制御するので、水没していないヒータ61に通電してしまうというような事態、いわゆるヒータ61の空焚きを防止することができる。なお、熱交換ユニット60のヒータ61は、制御部10にてフィードフォワード制御とフィードバック制御を組合せながら最適に制御される。
【0043】
更に、この熱交換ユニット60は、熱交換部62からの洗浄水出口、即ち、熱交換部62下流の管路の熱交換部接続箇所に、バキュームブレーカ64と安全弁65とを備える。バキュームブレーカ64は、負圧となった管路内に大気を導入して、熱交換部下流の管路内の洗浄水を断ち切り、熱交換部下流側から洗浄水の逆流を防止する。すなわち、バキュームブレーカ64は、負圧となった管路内に大気を導入して熱交換部下流の管路内にある洗浄水を洗浄ノズル82から排出させる。そのため、管路内が負圧となった場合であっても、熱交換部下流側から熱交換部62に洗浄水が逆流することを防止することができる。また、安全弁65は、給水管路67内の水圧が所定値を超えると開弁し、捨水配管66へ洗浄水を排出することにより、異常時の機器の破損、ホースの外れ等の不具合を防止している。
【0044】
続いて、脈動発生機器74の構造について例示をする。
図2は、脈動発生機器74の概略構成断面図である。なお、前述したように、ここでいう脈動発生機器は、圧力変動を起こす加圧機ということもできる。
【0045】
図2に示すように、脈動発生機器74は、給水管路67、75に接続されるシリンダ74bと、シリンダ74bの内部に進退自在に設けられたプランジャ74cと、プランジャ74cの内部に設けられた逆止弁74gと、励磁電圧を制御することでプランジャ74cを進退させる脈動発生コイル74dと、を備えている。そして、プランジャ74cの位置が、洗浄ノズルの側(下流側)に変化した場合には洗浄水の圧力が増加し、洗浄ノズルとは反対の側(上流側)に変化した場合には洗浄水の圧力が減少するように逆止弁が配設されている。
【0046】
そして、このプランジャ74cを脈動発生コイル74dの励磁を制御することにより上流側・下流側に進退させる。すなわち、洗浄水に脈動を付加する場合(洗浄水に圧力変動を生じさせる場合)には、脈動発生コイル74dに流す励磁電圧を制御することにより、プランジャ74cをシリンダ74bの軸方向(上流方向・下流方向)に進退させる。
【0047】
この場合、プランジャ74cは、脈動発生コイル74dの励磁により図示する原位置(プランジャ原位置)から下流側74hに移動する。そして、コイルの励磁が消えると、復帰スプリング74fの付勢力によって、原位置に復帰する。この際、緩衝スプリング74eによってプランジャ74cの復帰の動作が緩衝される。プランジャ74cは、その内部にダックビル式の逆止弁74gを備え、上流側への逆流を防止している。したがって、プランジャ原位置から下流側へ移動する際には、シリンダ74b内の洗浄水を加圧して給水管路75に押し流せるようになっている。この際、プランジャ原位置と、下流側に移動した位置とは常に一定であることから、プランジャ74cが動作する際に給水管路75に送られる洗浄水の量は一定となる。
その後、原位置に復帰する際には、逆止弁74gを経てシリンダ74b内に洗浄水が流れ込む。そのため、次回のプランジャ74cの下流側移動の際には、改めて、一定量の洗浄水が給水管路75に送られることになる。
【0048】
この場合、脈動発生機器74には給水管路67を経て、前述した給水圧の洗浄水が給水されている。よって前述したように、プランジャ74cの原位置復帰の間に逆止弁74gを経てシリンダ74b内に流れ込んだ洗浄水は、逆止弁74gによる圧力損失や下流側の洗浄水の引き込みの影響を受けて1次圧のままではないものの、給水管路75に送られる。すなわち、プランジャ74cが原位置に復帰するまでの間に逆止弁74gを介してシリンダ74b内に流れ込んだ洗浄水は、給水管路75に向けて流出する。この場合、給水管路75に流出する洗浄水の圧力は、逆止弁74gによる圧力損失や下流側の洗浄水の引き込みの影響を受けて、1次圧(前記の給水圧)とは異なるものとなる。
【0049】
この様子を図でもって表す。
図3は、洗浄水の圧力変動の様子を例示するための模式図である。
図3に示す様に、洗浄水は、脈動発生機器74への導入水圧Pin(給水圧)を基準に脈動した圧力で脈動発生機器74から給水管路75、ひいては洗浄ノズル82に送られ、人体局部に向けて吐水される。
【0050】
次に、水撃低減用アキュームレータ73について例示をする。水撃低減用アキュームレータ73は、ハウジング73aと、ハウジング内のダンパ室73bと、このダンパ室に配置されたダンパ73cとを有する。
このような構成を有する水撃低減用アキュームレータ73は、ダンパ73cの作用により脈動発生ユニット70の上流側の給水管路67にかかる水撃を低減する。このため、熱交換部62の洗浄水温度分布に及ぼす水撃の影響を緩和することができ、洗浄水の温度を安定化することができる。この場合、水撃低減用アキュームレータ73は脈動発生機器74に近接配置したり当該機器74と一体的に配置することが、脈動発生機器74で発生された脈動を上流側に伝播することを速やかにかつ効果的に回避できる観点から好ましい。すなわち、水撃低減用アキュームレータ73を脈動発生機器74に近接配置したり、水撃低減用アキュームレータ73と脈動発生機器74とを一体化したりすることが好ましい。その様にすれば、脈動発生機器74において発生した脈動が上流側に伝播することを速やか、かつ効果的に抑制することができる。
【0051】
次に、流量調節兼流路切替弁81について例示をする。流量調節兼流路切替弁81には、給水管路86を介して洗浄ノズル82が接続されている。そして、脈動発生機器74から送られた洗浄水の供給先を、洗浄ノズル82の各流路83、84、85(図4を参照)に切替、かつその流量を調節する。すなわち、流量調節兼流路切替弁81は、脈動発生機器74から送られてきた洗浄水が、洗浄ノズル82に設けられた各流路83、84、85毎に供給されるように流路の切替を行う。また、その際、流路断面積を調節することで流量調節を行う。
【0052】
次に、洗浄ノズル82について例示をする。図4(a)、(b)に洗浄ノズルの構造図を示す。洗浄ノズル82内にある複数の洗浄流路83、84、85は、それぞれ洗浄ノズル先端近傍にある「おしり」(人体局部)に向って洗浄水を吐出するおしり洗浄用の吐水孔401とビデ洗浄用の吐水孔402に連通する。吐水孔401、402の上流には洗浄流路83、85を通水する洗浄水を旋回させながら旋回流として吐水孔から吐水させるために洗浄水渦室301、302を設けてある。
【0053】
すなわち、洗浄ノズル82の先端近傍には、「おしり」(人体局部)に向って洗浄水を吐出するおしり洗浄用の吐水孔401と、ビデ洗浄用の吐水孔402とが設けられている。吐水孔401の上流側には洗浄水渦室301が連通するようにして設けられている。吐水孔402の上流側には洗浄水渦室302が連通するようにして設けられている。
【0054】
洗浄流路83は、円筒状を呈する洗浄水渦室302の接線方向に接続されている。また、洗浄流路85は、円筒状を呈する洗浄水渦室301の接線方向に接続されている。洗浄流路84は、洗浄水渦室301の軸中心に向けて接続されている。接線方向から通水された洗浄水は、洗浄水渦室301、302の内壁を沿うように旋回し、旋回した洗浄水は、旋回流として吐水孔401、402から吐水される。
【0055】
なお、洗浄流路84は洗浄水渦室301の上方に連通し、吐水孔401と連通している。すなわち、洗浄流路83は、洗浄水渦室302の下部に接続されている。また、洗浄流路84は、洗浄水渦室301の上部に接続され、洗浄流路85は、洗浄水渦室301の下部に接続されている。
【0056】
また、吐水孔401、402の径は、φ0.5mmからφ1.8mm程度の範囲であり、流量によって最適な径を選択している。たとえば、流量430ml/minの場合、おしり洗浄用の吐水孔401の径は、φ0.9mm程度であり、ビデ洗浄用の吐水孔402の径はφ1.4mm程度に設定されている。
【0057】
ここで、本実施形態における洗浄水の吐水の様子について例示をする。図5は、洗浄水吐水に際して脈動を発生させる脈動発生機器74の脈動発生コイル74dの励磁の様子を示す電圧波形の図(脈動発生コイル74dに印加される電圧波形を例示するための模式図)であり、図6は、吐水孔から吐出された直後の洗浄水の速度(初速)を示すタイミングチャート、図7は、吐水孔40からの洗浄水吐水の様子を模式的に例示するための図である。
【0058】
制御部10は、脈動発生コイル74dを励磁して脈動発生機器74において脈動を発生させるに当たり、パルス状の信号を出力する。そして、このパルス信号を、脈動発生コイル74dに接続され、これをオンさせるためのスイッチングトランジスタ(図示せず)に出力する。すなわち、脈動発生コイル74dには、回路の開閉を行うスイッチングトランジスタ(図示せず)が接続されている。制御部10から出力されたパルス信号は、スイッチングトランジスタに入力される。
【0059】
よって、脈動発生コイル74dは、パルス信号に従ったスイッチングトランジスタのON・OFFにより繰返し励磁し、前述したようにプランジャ74cを周期的に往復動(進退)させる。すなわち、入力されたパルス信号に基づいてスイッチングトランジスタが開閉動作(ON・OFF動作)することで、脈動発生コイル74dが繰返し励磁される。そして、脈動発生コイル74dを繰返し励磁させることで、プランジャ74cを周期的に往復動(進退)させる。
これにより、脈動発生機器74から吐水孔401には、圧力が周期的に上下変動する脈動流の状態で洗浄水が供給され、この脈動流の洗浄水が各吐水孔から吐水される。
【0060】
なお、脈動発生コイル74dに印加されるパルス状の電圧は、図5に例示をする。また、それによって、吐水孔から吐出された直後の洗浄水の速度(初速)のタイミングチャートを図6に例示をする。なお、図6は、図3の圧力値を基に、速度V=C・ΔP1/2(Cは流量係数)の式に基いて算出された波形である。
【0061】
図5より、脈動発生機器74の脈動発生コイル74dに印加されるパルス状の電圧は、1周期中において、ON時間の異なる2つの矩形波が組み合わさった電圧波形となっている。この制御によって起る吐水孔から吐出された直後の洗浄水の速度変化を、脈動発生機器74のプランジャ74cの動作に基いて例示をする。脈動発生機器74の脈動発生コイル74dには、図5に示す電圧波形の電圧が印加されている。
【0062】
ON時間をT1として、脈動発生機器74の脈動発生コイル74dに電圧を印加すると電流が流れるので、脈動発生コイル74dが励磁されてプランジャ74cが磁化される。そして、プランジャ74cが磁化されると、プランジャ74cは脈動発生コイル74dの側、すなわち下流側へ引き付けられる。
【0063】
この下流側への引き付けによって、復帰スプリング74fが圧縮されて弾性エネルギーを蓄えると同時に、洗浄水を加圧し、最も高い圧力P4に達するその際、吐水孔401から吐水される洗浄水の速度は最も高くなる(V4)。すなわち、プランジャ74cが下流側へ引き付けられると、復帰スプリング74fが圧縮されて弾性エネルギーが蓄えられる。また、同時にプランジャ74cにより洗浄水が加圧される。なお、洗浄水の圧力が最も高い圧力P4(図3を参照)に達した際には、吐水孔401から吐出される洗浄水の速度は最も高くなる(図6におけるV4)。
【0064】
その後、T2において電圧が切れると脈動発生コイル74dの励磁が消えて、復帰スプリング74fの付勢力を受けて、原位置へ復帰する。すなわち、OFF時間をT2として電圧の印加を停止すると、脈動発生コイル74dの励磁が解かれるので復帰スプリング74fの付勢力によりプランジャ74cが原位置へ戻される。
【0065】
同時に圧力は低下し、最低圧力P1(図3を参照)に達する。その際、吐水孔401から吐水される洗浄水の速度も低くなり、最も低い速度域V1まで下降する。
その後、圧力は給水圧Pinまで復帰しようとし、速度も給水圧時の速度Vinまで復帰しようとする。この復帰のタイミングに、T1よりも短いON時間のT3の矩形波を加えることにより、脈動発生コイル74dを励磁させ、プランジャ74cを下流側へ引き付けることで、洗浄水を再度加圧する。すなわち、この復帰のタイミングにおいて、ON時間がT1よりも短いT3の矩形波電圧を脈動発生コイル74dに印加する。そして、脈動発生コイル74dを励磁し、プランジャ74cを下流側へ引き付けることで、洗浄水を再度加圧する。
【0066】
このとき、圧力が復帰途中であることと、T3の時間がT1よりも短いことにより、洗浄水は最高圧P4までは高まらないものの、給水圧よりも高い第2のピーク圧力P2まで達する。したがって、速度も給水圧時の速度よりも速い第2のピーク速度V2が現れることになる。また、第2のピーク速度V2と、再度プランジャが励磁されるタイミングにおける速度V3までの間には、入水圧時の速度Vin付近で吐水される期間が一定時間生じることになる。
【0067】
ここで、脈動発生コイル74dに印加する電圧波形のタイミングは、脈動の周波数50Hzであり、T1を4.8msec(ミリ秒)、T2を7msec、T3を1msec、T4を7.2msecで設定してある。すなわち、脈動の周波数を50Hz、ON時間T1を4.8msec、OFF時間T2を7msec、ON時間T3を1msec、OFF時間T4を7.2msecとしている。ただし、周波数、T1、T2、T3、T4の時間幅はこの限りではなく、5Hz以上の不感帯周波数域における繰返し周波数であればよく、T1、T2、T3、T4の時間幅もその周期(脈動周期MT)に基いて設定されていてもよい。なお、不感帯周波数とは、人が刺激変化と認識できる周波数よりも高い周波数、すなわち、人が意図的な繰返し吐水と知覚できない周波数である。
【0068】
本実施形態に係る衛生洗浄装置では、図3の「F1」に示す領域(圧力P1と圧力P2との間:第1の時間幅)における圧力の立ち上がり勾配すなわち単位時間あたりの洗浄水の圧力の増加量は、図3の「F2」に示す領域(圧力P3と圧力P4との間:第2の時間幅)における圧力の立ち上がり勾配すなわち単位時間あたりの洗浄水の圧力の増加量よりも小さい。言い換えれば、図3の「F2」に示す領域における単位時間あたりの洗浄水の圧力の増加量は、図3の「F1」に示す領域における単位時間あたりの洗浄水の圧力の増加量よりも大きい。
【0069】
あるいは、図6の「G1」に示す領域(速度V1と速度V2との間:第1の時間幅)における速度(初速)の立ち上がり勾配すなわち単位時間あたりの洗浄水の速度(初速)の増加量は、図6の「G2」に示す領域(速度V3と速度V4との間:第2の時間幅)における速度(初速)の立ち上がり勾配すなわち単位時間あたりの洗浄水の速度(初速)の増加量よりも小さい。言い換えれば、図6の「G2」に示す領域における単位時間あたりの洗浄水の速度(初速)の増加量は、図6の「G1」に示す領域における単位時間あたりの洗浄水の速度(初速)の増加量よりも大きい。
【0070】
これによれば、図3の「F1」に示す領域においては、洗浄水の圧力を圧力P1から圧力P2へ比較的ゆっくり増加させることにより、吐水孔から吐水される洗浄水の速度(初速)は、速度V1から速度V2へ比較的ゆっくり増加する。そのため、所定位置において、後に吐水された洗浄水(例えば速度V2で吐水された洗浄水)が先に吐水された洗浄水(例えば速度V1で吐水された洗浄水)に追いつく追いつき量を、より大きくすることができる。そのため、量感を感じさせるための大きな吐水群をより大きく生成することができる。
【0071】
一方、図3の「F2」に示す領域においては、洗浄水の圧力を圧力P3から圧力P4へ比較的速く増加させることにより、吐水孔から吐水される洗浄水の速度(初速)は、速度V3から速度V4へ比較的速く増加する。そのため、水量は少ないながらも、比較的速い速度の吐水群を生成することができる。
【0072】
つまり、本実施形態では、量感を感じさせるための「吐水断面積が大きく速度の遅い吐水群」を生成する工程において、十分な追いつき量を確保することで吐水断面積をより大きくすることができる。また、刺激感を感じさせるための「吐水断面積が小さく速度の速い吐水群」を生成する工程において、水量は少ないながらも、比較的速い速度の吐水群を生成することができる。そのため、全体として使用水量を少なくしつつ、確実に量感と刺激感を両立させた快適性の高い洗浄を実現することができる。
【0073】
また、図3の「F11」に示す領域(圧力P1と圧力P2との間の前半部分)における単位時間あたりの洗浄水の圧力の増加量は、図3の「F12」に示す領域(圧力P1と圧力P2との間の後半部分)における単位時間あたりの洗浄水の圧力の増加量よりも小さい。言い換えれば、図3の「F12」に示す領域における単位時間あたりの洗浄水の圧力の増加量は、図3の「F11」に示す領域における単位時間あたりの洗浄水の圧力の増加量よりも大きい。
【0074】
あるいは、図6の「G11」に示す領域(速度V1と速度V2との間の前半部分)における単位時間当たりの洗浄水の速度(初速)の増加量は、図6の「G12」に示す領域(速度V1と速度V2との間の後半部分)における単位時間あたりの洗浄水の速度(初速)の増加量よりも小さい。言い換えれば、図6の「G12」に示す領域における単位時間あたりの洗浄水の速度(初速)の増加量は、図6の「G11」に示す領域における単位時間あたりの洗浄水の速度(初速)の増加量よりも大きい。
【0075】
これによれば、吐水孔から吐出される洗浄水の初速の増加に伴い、その初速の増加率も増加させることで、後に吐水された洗浄水が先に吐水された洗浄水に追いつく追いつき量をより多くすることができる。そのため、量感を感じさせるための大きな吐水群をより大きくすることができ、量感のより高い洗浄を実現することができる。
【0076】
続いて、上記によって作られた速度波形によって得られる洗浄水の状態について例示をする。
図7は、脈動流の洗浄水を仮定の吐水孔40から吐水した場合に、その吐水された洗浄水が増幅される過程を例示するための模式図である。
ここで、図3と図6の図を用いて、圧力変動と速度変化の関係について例示をする。脈動発生機器74により圧力が脈動すると、速度Vも同様に変動して脈動する。すなわち、吐水される洗浄水は、圧力変動がPmaxになると、速度も最大速度Vmaxになり、瞬間の速度が時間とともに変動する。また、図3の脈動流の洗浄水の圧力波形における各部位をP1、P2、P3、P4、P5とすると、速度も図6上のV1、V2、V3、V4、V5がそれぞれの番号同士で対応する。
【0077】
よって、吐水直後から図7の(a)〜(d)へと移行するにつれて、速度V2は速度V1より速度が速いから、速度V1で吐水された洗浄水は速度V2で吐水された洗浄水及びこれらの間にある洗浄水に追いつかれて合体され、吐水断面積の大きな吐水群となる(図7(b)を参照)。
【0078】
このように、速度波形の立ち上がりの勾配部分においては、速い速度で吐水された洗浄水がその前の遅い速度で吐水された洗浄水と順次合体することにより、大きな塊(吐水群)となって、人体局部(洗浄面)に着水することになる。ここで、図7の(a)、(b)に示すように、遅い側の速度域での速度の立ち上がり勾配部分では、全体の速度が遅いので、人体局部に着水する前に、V2がV1と合体して吐水断面積の大きな吐水群を作ることができる。
【0079】
すなわち、速度V1と速度V2との間における速度の立ち上がり勾配部分(第1の吐水工程)においては、全体の速度が遅い。そのため、速度V1で吐水された洗浄水が人体局部に着水する前に、速度V2で吐水された洗浄水が速度V1で吐水された洗浄水に追いつくことができる。その結果、人体局部に着水する前に、速度V2で吐水された洗浄水と速度V1で吐水された洗浄水とが合体して吐水断面積の大きな吐水群(第1の水塊)を作ることができる。
この洗浄水(吐水断面積の大きな吐水群)は、人体局部に当たるときには、着水の断面積(量感)が大きい状態になっている。
【0080】
一方で、図7の(c)、(d)に示すように、V3、およびV4の速い側の速度域での速度の立ち上がり勾配では、全体の速度が速いので、人体局部に着水するまでの短い時間では、距離が縮まりにくいため、人体局部に着水する時点では、V4はV3とほとんど合体せずに速く吐水断面積の小さい吐水群として着水することになる。
すなわち、速度V3と速度V4との間における速度の立ち上がり勾配部分(第2の吐水工程)においては、全体の速度が速い。そのため、速度V3で吐水された洗浄水が人体局部に着水する前に、速度V4で吐水された洗浄水が速度V3で吐水された洗浄水に追いつきにくい。その結果、人体局部に着水する前に、速度V3で吐水された洗浄水と速度V4で吐水された洗浄水とがほとんど合体せず、吐水断面積の小さな吐水群(第2の水塊)として着水することになる。この洗浄水(吐水断面積の小さな吐水群)は、人体局部に当たるときには、衝突エネルギー(刺激感)における速度成分が大きい状態になっている。
【0081】
また、このとき、V2とV4のタイミングに十分開きがある、言い換えれば、V2とV4にピークが現れるように制御することで、V2によって生成される吐水群と、V4によって生成される吐水群は、V4が吐水された段階で十分な時間の開きが生じる。
すなわち、OFF時間T4(待ち時間)を設けることで、速度V2で吐水された洗浄水と速度V4で吐水された洗浄水との間に十分な時間の開きを設けることができる。
その結果、速度V2で生成された吐水断面積が大きく速度V4よりは速度の遅い吐水群と、速度V4で生成された吐水断面積が小さく速度の速い吐水群とは、お互いに干渉することなく、人体局部に異なる速度をもって独立して着水することができる。
【0082】
また、速度V4から速度V1に移行するタイミングでは、速度が減速していくため、合体による吐水群は生成されず、洗浄感には寄与しない領域となる。したがって、この領域を減らすことは、洗浄感を高めるとともに、より少ない水量で吐水することにも繋がる。
【0083】
なお、ここでいう吐水群とは、吐水孔から吐水される洗浄水の進行方向に対し直角に切断したときの断面積が、吐水後に追付くことにより、吐水孔から吐水された直後の断面積よりも大きくなれば、吐水群という。すなわち、吐水群とは、後から吐水された洗浄水が追いつくことにより吐水断面積(洗浄水の進行方向に対し直角に切断したときの断面積)が、吐水直後の吐水断面積よりも大きくなったものをいう。
【0084】
ここで、吐水後に洗浄水が追い付くことにより、吐水断面積が増え、吐水断面積の異なる吐水群が形成されると、人体局部に当たるときの荷重は、吐水断面積が増えない(吐水群が形成されない)吐水と比べ、人体局部で当たるときの荷重は大きくなる。
【0085】
図8は、本実施例における吐水が、人体局部に当たるときの荷重の変化を示したタイミングチャートである。これより、一つの周期(脈動周期MT)において、2つのタイミングで荷重が大きくなっていることがわかる。これより、1つの周期において、2つ吐水群が形成され、それらが独立して当たっていることがわかる。
【0086】
図8に例示をしたものでは、先に吐水断面積の大きく速度の遅い吐水群があたり、あとから吐水断面積が小さくて速度の速い吐水群が当たっている。したがって、使用者は、速度と大きさの異なる2つの吐水群を独立して感じることができ、この場合、大きくて遅い吐水群で量感を感じ、小さくて速い吐水群で刺激感を感じることができる。
【0087】
なお、この荷重の変化について、それぞれの「山部分」を積分した値がM・Vすなわち衝撃力となるが、この値が十分大きくなれば、「当たる感覚」を得ることができる。また、ここでいう吐水群とは、ある衝撃力を持って人体局部に着水するものをいう。
【0088】
ここで、脈動流となって吐水された洗浄水は、この場合の速度波形では、速度V2の遅くて大きい吐水群と、速度V4の速くて小さい吐水群とがそれぞれ脈動周期MTごとに現れるので、遅くて大きい吐水群と、速くて小さい吐水群とが交互に現れる。つまり、脈動周期MTの半分の間隔で吐水群が現れることになる。したがって、周期(脈動周期MT)が長くても、より連続感のある快適な洗浄感をえることができ、断続感がきらいな人にとってもより快適な洗浄を提供できる。しかも、このそれぞれの吐水群は、速度V4で吐水された洗浄水に、それぞれ遅れて速度V5および速度V1で吐水された洗浄水が繋がれたような状態となる。
【0089】
次に、このような吐水の状態により得られる効果について例示をする。ここで、速度の遅い側で吐水断面積の大きい吐水群が生成される過程について例示をする。吐水群は、洗浄水が吐水孔40から吐水され、人体局部に当たるまでの時間間隔において、速度の速い吐水による洗浄水が、速度の遅い吐水による洗浄水に追いつくことで生成される。
【0090】
このとき、速度が速い領域で吐水群を生成しようとすると、吐水孔40から人体局部に到着するまでの時間は短い。たとえば、速度が15m/secのときに、60mm先の人体局部に到達する時間は、4msecである。一方、速度が遅い領域で考えた場合、吐水孔40から人体局部に到着するまでの時間は、速度が速い領域の場合と比べ、長くなる。たとえば、速度が7.5m/secの時には、人体局部に到達する時間は、8msecである。このときに、同じ量の速度差がある場合には、人体局部に到達するまでの時間が長いほうが、追いつける洗浄水の量は多いことになる。すなわち、洗浄水の速度の低い側で吐水群を生成したほうが、効率よくより吐水断面積の大きな吐水群を生成することが可能である。
【0091】
このように生成した吐水群は、より吐水断面積の大きな吐水群となっているため、吐水断面積Sは通常よりも大きくなる。したがって、洗浄水量が少ないにもかかわらず、吐水断面積の大きな吐水が当たっており多い流量で洗浄されているような洗浄感、すなわち量感がある。つまり、吐水断面積の大きな吐水群が当たるようにすれば、使用する洗浄水自体の量を少なくした場合であっても多い流量で洗浄されているような洗浄感、すなわち量感を得ることができる。
【0092】
一方で、吐水断面積が小さく速度の速い吐水群は、速い速度V4で先にでた洗浄水になかなか追いつくことができず、吐水断面積の大きい吐水群を形成する前に人体局部に着水するため、吐水断面積が小さく、量感は乏しくなる。しかし、先にでた洗浄水に追いつかないということは、遅い速度の洗浄水に運動エネルギーを吸収されることなく人体局部に着水できるので、刺激感を維持したまま着水することができる。
【0093】
このときの刺激感に関わる衝撃力は、速度が大きくなるため、衝撃力も大きくなる。すなわち、量感は小さくなるものの刺激感は高めることができる。したがって、大きくて遅い吐水群で量感を出し、小さくて速い吐水群で刺激感をだすことで、量感と刺激感を両立させた快適性の高い洗浄を実現することができる。
【0094】
なお、大きくて遅い吐水群および小さくて速い吐水群はそれぞれ十分な衝撃力を持っているため、脈動周期MTに対して、約半分の周期の脈動に感じることができ、この感覚は、人間が識別できる感覚にくらべて十分短いため、洗浄の連続感とともに、刺激感と量感とを実感することができる。
【0095】
次に、吐水群生成の現象について例示をする。
図9は、速度(初速)波形と、追付き曲線を示したタイミングチャートである。まず、追付き曲線について例示をする。追付き曲線とは、吐水されたタイミングと吐水された速度がそれぞれ異なる洗浄水であっても、この曲線上に載っていれば60mm先の人体局部に同時に着水することを示している。すなわち、追付き曲線とは、所定の距離(本実施の形態においては60mmとした)にある着水位置に同時に着水させる際の速度と吐水タイミングとの関係を表すための仮想曲線である。
【0096】
本実施形態では、速度V1と速度V2との間における洗浄水の速度(初速)の波形は、速度V2を基点として重ねられた追付き曲線(すなわち、速度V2を基準に求められた追付き曲線)に略沿っている。そのため、量感を感じさせるための「吐水断面積が大きく速度の遅い吐水群」を生成する工程において、吐水されたタイミングと吐水された速度がそれぞれ異なる洗浄水を所定の距離にある着水位置に同時に着水させることができる。これにより、水量は少ないながらも、多い水量で洗っているのと同じ感覚を与えることができる。つまり、使用水量を少なくしつつ、確実に量感を与えることができる。
【0097】
これに対して、この追付き曲線よりも遅い速度を持つ洗浄水は、後から来る速い速度の洗浄水に追付かれ、合体して同時に人体局部に着水することになる。したがって、この場合には、この追付き曲線よりも遅い速度の領域は、V2の速度を持つ洗浄水に全て追付かれることになり、積分した値が体積となる吐水群が生成され人体局部に着水することになる。この場合、吐水群の速度は、12m/secであり、吐水群量は、21μリットルと大きな吐水群となる。
【0098】
一方、図6に関して前述したように、速度V3と速度V4との間における単位時間あたりの洗浄水の速度(初速)の増加量は、速度V1と速度V2との間における単位時間あたりの洗浄水の速度(初速)の増加量よりも大きい。この場合、吐水群の量は少ないものの、その分、追付く量が少ないため、遅い速度に速度が吸収されて遅くなることがなくなる。すなわち、吐水群の洗浄水量は少なくなるものの、遅い速度の洗浄水に速い速度の洗浄水の運動エネルギーが吸収されることが少なくなる。つまり、吐水断面積は小さいが速い吐水群が生成される。
【0099】
この場合、吐水群の速度は14m/secであり、その洗浄水量は6μリットルである。これらのことより、つまり、刺激感が減衰せずに人体局部に着水することになる。これらのことより、吐水断面積の大きい吐水群では、洗浄水量が多くなるため多い水量で洗っているのと同じ感覚を得ることができる。また、吐水断面積が小さく速い速度の吐水群では、減速せずに人体局部に着水するために、刺激感を感じることができる。かつ、この吐水群(吐水断面積が小さく速い速度の吐水群)を速い周波数で人体局部に当てることによって、刺激感と量感を同時に感じることができる。
【0100】
ここで、吐水断面積は、大きい吐水群で、およそ12.6mm2となり、小さい吐水群で3.8mm2となっていて、吐水断面積が異なっている。このように、追付くことにより生成される吐水群の吐水断面積が相対的に異なる吐水群を生成ことで、刺激感と量感の異なる吐水群を生成し、個別に当てることで、刺激感と量感とを両立させることができる。
【0101】
なお、洗浄水の追付きにより、およそ吐水孔の径で換算される吐水断面積よりも大きくなれば、吐水群となる。また、追付きによって生成される吐水群の吐水断面積が相対的に異なる吐水群が人体局部に着水する地点で生成されれば、異なる吐水群を生成したことになる。すなわち、人体局部に着水するまでの間に、吐水断面積が相対的に異なる吐水群が後から吐水された洗浄水の追付きによって生成されれば、異なる吐水群が生成されたことになる。
【0102】
さらに、5Hz以上の不感帯周波数域において、それぞれの吐水群を少なくとも1回着水させることで、刺激感と量感とを同時に感じさせることができる。すなわち、脈動周波数は5Hz以上であればよい。
【0103】
次に、本実施の形態における洗浄感について例示をする。
本発明者は、洗浄感が刺激感と量感とで表される感覚であると考え、それらは、吐水のもつ衝撃力M・Vに依存すると考えた。
【0104】
ここで、刺激感とは、速い吐水が人体局部に当たることで、痛みに近い刺激を感じることであり、速度Vに依存する。
【0105】
一方、量感は、吐水断面積S(重さM)の大きな吐水が十分な力を持って当たることで、太い水流が当たっていると感じる感覚であり、吐水の着水面積が大きいほど量感があると感じる。これらの物理量を全て満足させることで、快適な洗浄が実現可能である。
【0106】
しかしながら、省エネルギーの観点から、現在主流となっている瞬間式熱交換器による温水生成では、洗浄水量が500ml/min以下になる。そのため、これらの物理量を全て満足させることは困難である。そこで、これらの物理量を全て満足させるため、吐水群の生成を検討した。
【0107】
図10には、脈動推移の速度波形と生成される吐水群の形状の一例を示す。なお、その関係は一例であり、速度域の違いなどで、必ずしもこの関係で生成されるものではない。[I]の速い吐水群は、速度の立ちあがり勾配を追付き曲線の勾配よりも緩やかにすることで、追付く量を少なくした吐水群であり、速度は速いが洗浄水量が少ない。すなわち、刺激感はあるが、量感の少ない吐水群が生成される。
【0108】
[II]の大きい吐水群は、速度の立ち上がり勾配を追付き曲線の勾配に近くすることで、徐々に追付くことでまとまる吐水群である。この場合、速度は減速するので、刺激感はあまりないが、洗浄水量が多く、衝撃力も大きい吐水群が生成される。
【0109】
[III]の分散した吐水群は、速度の立ち上がり勾配を追付き曲線の勾配よりも急にすることで、遅い速度と速い速度との速度差が大きい状態で追付かせ、速い速度の吐水が先にある遅い速度の吐水を弾き飛ばすように吐水を分散させる吐水群である。この場合、見かけの吐水断面積が大きくなることで量感の多い吐水群が生成される。以上のように、異なる脈動流の生成によって、異なる種類の吐水群で異なる特徴を持った吐水を生成することができる。
【0110】
すなわち、異なる脈動流によって異なる形状と特徴を有する吐水群を生成することができる。しかしながら、一方で、刺激感や量感にかかわる物理量のいずれかがかけることになっていた。
【0111】
そこで、この種類の異なる吐水群を、意図的な繰返し吐水に基づく振動に人の知覚が追従できなくなる約5Hz以上の不感帯周波数域内において、少なくとも1回ずつ人体局部に着水させることで、それぞれの吐水が独立して、それぞれ物理量、感覚を作りだすが、それらが不感帯周波数域内で着水するため、全ての物理量を備える、すなわち、刺激感と量感がある吐水として感じさせることができる。
【0112】
つまり、人が意図的な繰返し吐水と知覚できない約5Hz以上の不感帯周波数域内において、異なる吐水群を少なくとも1回ずつ人体局部に着水させるようにした。この場合、異なる吐水群は、独自の物理量、感覚をそれぞれ独立して作り出すが、異なる吐水群は不感帯周波数域内において着水するため、全ての物理量を備える、すなわち、刺激感と量感とを備えた吐水がされていると感じさせることができる。
【0113】
以上のように、吐水群の大きさや、速さ、追付き量を変えることにより、異なる物理量の吐水群を形成して、感覚の異なる吐水群を生成する。そして、この様な吐水群を独立させながら、短時間に人体局部に着水させることで、複数の感覚を備える吐水を実現している。
【0114】
ここで、その組合せの例について例示をする。図11には、吐水群の組合せの例の模式図を示している。図11(a)には、t1の時に「大きな吐水群」が、t2の時に「速い吐水群」が交互に生成し、独立して人体局部に着水させる様子を示している。
【0115】
このような吐水では、まず、吐水の追付く量を多くすることで、「大きな吐水群」が生成される。この場合(図11(a)のt1の場合)、速い速度の部分は追付くことで減衰し、速度が遅くなるので、刺激感は乏しくなる。しかしながら、吐水群の吐水断面積の大きさが大きくなり、ある程度の面積を持ち、かつ衝撃力が大きくなっているので、量感を感じさせることができる。
【0116】
また、図11(a)のt2の場合は、「速い吐水群」は、あとから追付く量を少なくすることで、吐水群の吐水断面積の大きさは小さいものの、吐水の速度の減速がない分、刺激感を維持した吐水とすることができる。そのため、刺激感を感じさせることができる。
【0117】
この2種類の吐水群を不感帯周波数域内(5Hz以上)でそれぞれを少なくとも1回ずつ着水させることで、刺激感と量感とを兼ね備えた吐水と感じさせることができる。
【0118】
図11(b)には、「分散した吐水群」と、「大きな吐水群」が交互に生成される様子を示している。この場合、「分散した吐水群」により非常に高い量感が得られる。その上、あとから、追付く量の多い「大きな吐水群」が生成されるので、衝撃力を十分もった吐水群を人体局部に当てることができる。そのため、体積を持ちある程度の速度を持つので、吐水の重さを感じさせることができる。なお、この場合、「大きな吐水群」は、「分散した吐水群」よりも速い速度で人体局部に当たるので、「分散した吐水群」よりも刺激感を与える吐水となる。そのため、「分散した吐水群」と「大きな吐水群」とによっても、刺激感と量感とを兼ね備えた吐水と感じさせることができる。
【0119】
図11(c)には、分散した吐水群と速い吐水群が交互に生成されているようすを示している。分散した吐水群で大きな量感を得るとともに、速い吐水群で刺激感を感じさせることができる。なお、これらの吐水群は、3つが組み合わさって生成されてもよく、それによって、非常に量感を高く、かつ刺激感の吐水が実現できる。
【0120】
すなわち、吐水群は、図7において例示をした形態だけではなく、図11(a)〜(c)に例示をした形態であってもよい。また、図11(a)〜(c)に例示をした3つの形態が組み合わさって形成されるようにしてもよい。「速い吐水群」や、「大きな吐水群」や、「分散した吐水群」等の異なる物理量の吐水群を組み合わせるようにすれば、非常に高い量感と刺激感を有する吐水をさせることができる。
【0121】
また、この場合、吐水群が形成される順番は例示をした以外の順番でも良いし、毎回順番が変わっても良い。また、吐水群が人体局部に着水するタイミングもかならずしも規則的である必要はなく、その間隔が異なっていてもよい。この場合、例えば、あらかじめ、脈動周期が変化するような周波数のテーブルを用意しておき、不感帯周波数域内において、周波数を変動させてもよい。また、不感帯周波数域内においてランダムに変動させてもよい。また、散発的に脈動を発生させてもよい。
【0122】
このように、本実施の形態においては、異なる吐水群により異なる感覚を生成し、不感帯周波数域内で複数の吐水群を当てて、異なる感覚をそれぞれの吐水群で生成することができる。すなわち、異なる物理量の吐水群を形成し、不感帯周波数域内において複数の吐水群を個別的に人体局部に当てることで、それぞれの吐水群により異なる感覚を感じさせることができる。
【0123】
なお、これらは、吐水群の一例であり、組合せも一例にすぎない。この場合、異なる吐水群により、異なる感覚を作り、足らない感覚、物理量を補うことで高い洗浄感を実現させる点が重要である。すなわち、異なる吐水群により異なる感覚を作りだすことで足らない感覚や物理量を補って、高い洗浄感を感じさせることができればよい。
【0124】
図12は、洗浄水の圧力変動の様子を例示するためのグラフ図である。
なお、図12(a)は、図3に対応するものであり、圧力波形を実測したものである。この場合、洗浄水の圧力は、吐水口401もしくは402、または、これらに連通する洗浄水渦室301もしくは302において測定した。つまり、本願明細書において「圧力」とは、吐水孔401もしくは402、または、これらに連通する洗浄水渦室301もしくは302において測定された洗浄水の圧力、すなわち洗浄ノズル82から吐出される直前の洗浄水の圧力をいうものとする。また、圧力計としては応答性が高いものを用い、高いサンプリング周期で測定するようにした。また、図12(b)は、図5に対応するものであり、脈動発生コイル74dに印加されたパルス状の電圧の波形を表したものである。
図13は、電圧印加のタイミング、プランジャの動作、圧力波形、吐水された洗浄水の状態を例示するための模式図である。なお、「吐水された洗浄水の状態」欄における上段の図は吐水直後の状態を表し、下段の図は人体局部に着水する直前の状態を表している。また、図中のa、b、c、d、eは、圧力a、b、c、d、eの場合にそれぞれ吐水された洗浄水を表している。
【0125】
図13[I]に示すように、給水圧近傍からの積極的な加圧により高い圧力の領域を形成し、高い圧力の領域において「吐水断面積が小さく速度の速い吐水群」の生成が行われるようにしている。高い圧力の領域においては速度を速くすることができるので、人体局部に到達するまでの時間を短くすることができる。そのため、先に吐水された洗浄水に後から吐水された洗浄水が追い付くことが抑制される。その結果、「吐水断面積が小さく速度の速い吐水群」の生成が容易となる。
【0126】
この場合、ON時間をT1として図示しない脈動発生コイル74dに電圧を印加すると脈動発生コイル74dに電流が流れるので、脈動発生コイル74dが励磁されてプランジャ74cが磁化される。そして、プランジャ74cが磁化されると、プランジャ74cは脈動発生コイル74dの側、すなわち下流側へ引き付けられる。この下流側への引き付けによって洗浄水が加圧され、給水圧(例えば、0.110MPa程度)近傍の圧力aから最も高い圧力bにまで上昇する。
すなわち、図12に示すように、ON時間をT1として脈動発生コイル74dに電圧を印加すると、洗浄水の圧力は給水圧近傍の圧力P3から最も高い圧力P4にまで上昇する。この際、圧力が変動すると速度も対応するようにして変動する。
【0127】
ここで、前述したように、圧力P3(圧力a)に対応する速度V3と、圧力P4(圧力b)に対応する速度V4との間における速度の立ち上がり勾配部分においては、全体の速度が速い。
そのため、図13[I]の「吐水された洗浄水の状態」欄に示すように、先に速度V3で吐水された洗浄水aに、後から速度V4で吐水された洗浄水bが追いつきにくい。その結果、速度V3で吐水された洗浄水aと、速度V4で吐水された洗浄水bとがほとんど合体せず、吐水断面積の小さな吐水群として人体局部に着水することになる。この場合、速度V3、速度V4が速いので、吐水断面積が小さく速度の速い吐水群が生成されることになる。
【0128】
図13[II]に示すように、ON時間T1の後、電圧印加を停止すると、復帰スプリング74fの付勢力によってプランジャ74cが原位置に復帰する。そのため、洗浄水の圧力は、圧力bから圧力cへと低下する。
この場合、圧力bにおいて先に吐水された洗浄水の速度は、圧力cにおいて後から吐水された洗浄水の速度よりも速い。
そのため、図13[II]の「吐水された洗浄水の状態」欄に示すように、後から吐水された洗浄水が追い付くことができず、それぞれが人体局部に着水することになる。この場合、図13[I]の場合と比べて洗浄水の速度、量が少なくなるので、刺激感と量感とを高めることに対する寄与が少なくなる。
【0129】
図13[III]に示すように、給水圧よりも低い圧力の領域にある時に「吐水断面積が大きく速度の遅い吐水群」の生成が開始される。すなわち、圧力cにおいて吐水が開始される。
この場合、図13[II]に例示をしたように、復帰スプリング74fの付勢力によってプランジャ74cが原位置に復帰する際に洗浄水が引き込まれることで、圧力cが給水圧よりも低くなる。そのため、給水圧よりも低い圧力の領域を容易に形成することができる。給水圧よりも低い圧力の領域においては速度を遅くすることができるので、人体局部に到達するまでの時間を長くすることができる。そのため、先に吐水された洗浄水に後から吐水された洗浄水が追い付く量を多くすることができるので、「吐水断面積が大きく速度の遅い吐水群」の生成が容易となる。
【0130】
また、図13[IV]に示すように、「吐水断面積が大きく速度の遅い吐水群」の生成が行われる工程の後半において、ON時間をT3として脈動発生コイル74dに電圧を印加する。ON時間をT3として脈動発生コイル74dに電圧を印加した場合においても、プランジャ74cが引き付けられることで洗浄水が加圧され、圧力が上昇する。ただし、圧力が復帰途中であることと、T3の時間がT1よりも短いことにより、圧力は圧力bまでは高まらず、給水圧よりも少し高い第2のピークである圧力dまで上昇する。
すなわち、図12に示すように、ON時間をT3として脈動発生コイル74dに電圧を印加すると、洗浄水の圧力は圧力P4までは高まらず、給水圧よりも少し高い第2のピークである圧力P2まで上昇する。
【0131】
ここで、前述したように、圧力P1(圧力c)に対応する速度V1と、圧力P2(圧力d)に対応する速度V2との間における速度の立ち上がり勾配部分においては、全体の速度が遅い。また、速度V2は速度V1より速度が速い。
そのため、図13[III]、[IV]の「吐水された洗浄水の状態」欄に示すように、先に速度V1で吐水された洗浄水cに、後から速度V2で吐水された洗浄水dが追いつくことができる。その結果、速度V1で吐水された洗浄水cと、速度V2で吐水された洗浄水dとが合体し、吐水断面積の大きな吐水群となる。この場合、速度V1、速度V2は、速度V3、速度V4より速度が遅い。そのため、吐水断面積が大きく、かつ速度の遅い吐水群が生成されることになる。
【0132】
次に、図13[V]に示すように、ON時間T3の後、電圧印加を停止すると、復帰スプリング74fの付勢力によってプランジャ74cが原位置に復帰する。この場合、ON時間T3におけるプランジャ74cの引き付け量が少ないので、復帰スプリング74fの付勢力による移動量も少なくなる。そのため、ほぼ原位置近傍で静止する様な状態となる。 前述したように、圧力dは給水圧よりも少し高い程度であり、圧力eは給水圧程度であるため、この領域の圧力は給水圧近傍に維持されることになる。
【0133】
この場合、圧力dにおいて先に吐水された洗浄水dの速度と、圧力eにおいて後から吐水された洗浄水eの速度とはほぼ同等となる。
そのため、図13[V]の「吐水された洗浄水の状態」欄に示すように、後から吐水された洗浄水eが追い付くことができず、それぞれが人体局部に着水することになる。
【0134】
ここで、OFF時間T4を設けることで、洗浄水c〜洗浄水dと、洗浄水a〜洗浄水bと、の間に十分な時間の開きを設けることができる。そのため、洗浄水c〜洗浄水dにより生成された「吐水断面積が大きく速度の遅い吐水群」と、洗浄水a〜洗浄水bにより生成された「吐水断面積が小さく速度の速い吐水群」とを、互いに干渉することなく、人体局部に異なる速度をもって独立して着水させることができる。
このことは、1つの周期の中で異なる吐水群を均等なタイミングでつくることに繋がるので、不感帯周波数域よりも低い周波数においても断続感の少ない快適な洗浄を実現することが可能となる。また、それぞれを不感帯周波数域内で着水させるようにすれば、刺激感と量感とを備えた吐水がされていると感じさせることもできる。
【0135】
また、給水圧近傍からの積極的な加圧を行うことで圧力b(圧力P4)をより高めるようにすれば、その後に形成される圧力c(圧力P1)をより低くすることができる。そのため、前述した「給水圧よりも低い圧力の領域」の形成を容易とすることができる。
また、圧力が給水圧へと復帰する際に積極的な加圧を行うようにすれば、迅速、かつ安定的に給水圧近傍の圧力を得ることができる。
【0136】
次に、第2の実施形態に係る衛生洗浄装置について例示をする。
図14は、蓄圧部が設けられている場合を例示するための模式図である。なお、前述したものと同様の構成要素には同じ符号を付し、それらの説明は省略する。
本実施形態の脈動発生ユニット70は、脈動発生機器74と蓄圧部(蓄圧機)75a、86aとを有する。図14に示すように、脈動発生機器74と流量調節兼流路切替弁81とは蓄圧部75aで接続されている。また、流量調節兼流路切替弁81と洗浄ノズル82とは蓄圧部86aで接続されている。
【0137】
蓄圧部75a、86aは、水圧を受けると弾性変形するものとすることができる。例えば、樹脂やゴムなどから形成されたチューブなどとすることができる。
水圧を受けて蓄圧部75a、86aに蓄えられた弾性エネルギーは、洗浄水の加圧を補助するために利用することができる。特に、圧力の低い領域においては洗浄水の加圧を効果的に行うことができる。例えば、図14の「B」に示す領域においては洗浄水の加圧を効果的に行うことができる。
【0138】
この場合、蓄圧部75a、86aの加圧作用を利用すれば、「B」に示す領域における電圧印加の時間を「C」に示すように短くすることができる。そのため、消費電力を低減させたり、脈動発生機器74の発熱量を低減させたりすることができる。
なお、図14に例示をしたものは、蓄圧部75aと蓄圧部86aとを設けるようにしたが、少なくともいずれかが設けられるようにすることができる。
また、蓄圧部75a、86aに蓄えられる弾性エネルギーは、材料のバネ定数などを適宜選択することで変更することができる。
【0139】
次に、第3の実施形態に係る衛生洗浄装置について例示をする。
図15は、残留電荷消費回路と蓄圧部とが設けられている場合を例示するための模式図である。なお、前述したものと同様の構成要素には同じ符号を付し、それらの説明は省略する。
本実施形態の脈動発生ユニット70は、脈動発生機器74と蓄圧部(蓄圧機)75a、86aとを有する。本実施の形態においては、図15中の「D」に示す領域に対応するタイミングにおいて、残留電荷消費回路78の作用により残留磁気を低減させることができる。また、「B」に示す領域においては、蓄圧部75a、86aの作用により洗浄水の加圧を効果的に行うことができる。また、「E1」、「E2」に示す領域においては、脈動発生機器74の作用により洗浄水の加圧を積極的に行うことができる。
また、変形例として、洗浄ノズル82の先端部(図4中の洗浄水渦室301、302)から空気を混入させることができるように、図示しない空気混入部を設けるようにしても良い。空気混入部は、強制的に空気を導入するエアポンプによって加圧された空気が、洗浄ノズル82の先端に連結されたチューブから混入されるようなものとすることができる。この場合、脈動発生機器によって生じる圧力変動(図6を参照)に合わせてエアポンプを制御することによって、加圧された空気が混入されるタイミングを合わせるようにすることができる。
【0140】
例えば、速度の遅い領域の立ちあがり勾配の範囲において空気が混入されるように、脈動発生機器に加わる電圧波形に基づいて、エアポンプを同期制御するようにすることができる。これによって、大きい吐水群が生成されるタイミングにおいて空気が混入されると、吐水群は分散されて、広範囲に広がる。つまり、空気によって見かけの吐水断面積が増大し、結果、量感が高くなる。
【0141】
一方、速度の速い領域においては、空気を混入させないようにすれば、速い速度の洗浄水が分散されることなく吐水され、速度を維持したまま人体局部に着水する。これによっても、より量感の高い状態で、刺激感と量感を両立させることができる。なお、空気混入部を洗浄ノズル82の先端に設けているため、空気を効率よく混入させることが可能となる。また、速度の速い領域では必要以上に空気が混入しないため、空気のダンパー効果によって刺激感が減衰することを防ぐこともできる。
【0142】
なお、空気混入部の配設位置は、洗浄ノズル82の先端に限ったものではなく、洗浄ノズル82の上流側の配管に空気が混入できるように設けてもよい。また、空気混入部は、必ずしも強制混入できるものである必要はなく、自然吸入を用いたものであっても良い。なお、自然吸入を用いる場合には、洗浄水内に気泡として空気を混入させることになる。洗浄水内に気泡として空気を混入させれば、吐水群の体積を増大させることが可能となる。その結果、量感をより高めた状態で、刺激感と量感を両立させることが可能となる。
【0143】
以上例示をしたように、先に吐水された洗浄水に後から吐水された洗浄水が追い付く量を異ならせることで、「吐水断面積が大きく速度の遅い吐水群」と「吐水断面積が小さく速度の速い吐水群」とを生成するようにしている。
すなわち、制御部10は、第1の吐水工程(「吐水断面積が大きく速度の遅い吐水群」を生成する工程)において第1の制御と、第2の吐水工程(「吐水断面積が小さく速度の速い吐水群」を生成する工程)において第2の制御と、を実行し、第1の吐水工程による洗浄水の吐水と、第2の吐水工程による洗浄水の吐水と、が同一の吐水孔から行なわれ、第1の吐水工程においては、吐水孔から所定の位置において、先に吐水された洗浄水が後から吐水された洗浄水に追いつかれる追付き量が、第2の吐水工程の場合よりも多くなるように吐水時の初速が第2の吐水工程より低くされ、第2の吐水工程においては、吐水孔から所定の位置において、先に吐水された洗浄水が後から吐水された洗浄水に追いつかれる追付き量が、第1の吐水工程の場合よりも少なくなるように吐水時の初速が第1の吐水工程より高くされ、第1の吐水工程と、第2の吐水工程と、が交互に実行されることで第1の吐水工程による洗浄水の吐水と第2の吐水工程による洗浄水の吐水が同一の吐水孔から交互に吐水されるように構成されている。
【0144】
そのため、「吐水断面積が大きく速度の遅い吐水群」により量感を感じさせることができる。また、「吐水断面積が小さく速度の速い吐水群」により刺激感を感じさせることができる。
その結果、限られた水量であっても、多くの水量で洗浄されているような量感と刺激感とを感じさせることができる快適性の高い衛生洗浄装置を実現することができる。
この場合、人が意図的な繰返し吐水と知覚できない約5Hz以上の不感帯周波数域内において、前述した「異なる吐水群」を少なくとも1回ずつ人体局部に着水させるようにすれば、刺激感と量感とを備えた吐水がされていると感じさせることができる。
【0145】
また、第1の吐水工程においては、給水圧より低い圧力領域を形成し、給水圧より低い圧力領域で洗浄水を吐水させることで吐水時の初速を下げて、追付き量を増加させ、第2の吐水工程においては、給水圧より高い圧力領域で洗浄水を吐水させることで吐水時の初速を第1の吐水工程の場合より高めるように構成されている。
【0146】
また、前記加圧機は単一の加圧部を有するものであって、制御部10は、前記第1の吐水工程において、加圧機による第1の加圧を行い、前記第2の吐水工程において、加圧機による第2の加圧を行うようになっている。この様にすれば、1つの加圧部を有する脈動発生機器74により「吐水断面積が大きく速度の遅い吐水群」と「吐水断面積が小さく速度の速い吐水群」とを生成することができる。そのため、脈動発生機器74の構造を一層簡単にすることができる。また、1つの加圧部を有する脈動発生機器74を用いて給水圧より少なくとも低い圧力領域で前記第1の加圧を行い、給水圧より少なくとも高い圧力領域で第2の加圧を行うという簡単な制御構成で吐水時の初速を適切な値に設定することができる。すなわち、第1の加圧による吐水と第2の加圧による吐水とにおける吐水時の初速にメリハリのある速度差を設定することができる。
【0147】
また、「吐水断面積が大きく速度の遅い吐水群」を生成する制御と、「吐水断面積が小さく速度の速い吐水群」を生成する制御との間に「所定の待ち時間」を設けている。すなわち、OFF時間T4を設けている。そのため、速度V2で吐水された洗浄水と、速度V4で吐水された洗浄水と、の間に十分な時間の開きを設けることができる。その結果、「異なる吐水群」を、互いに干渉することなく、人体局部に異なる速度をもって独立して着水させることができる。このことは、1つの周期の中で異なる吐水群を均等なタイミングでつくることに繋がるので、不感帯周波数域よりも低い周波数においても断続感の少ない快適な洗浄を実現することが可能となる。また、それぞれを不感帯周波数域内で着水させるようにすれば、刺激感と量感とを備えた吐水がされていると感じさせることもできる。
【0148】
また、給水圧よりも低い圧力の領域にある時に「吐水断面積が大きく速度の遅い吐水群」の生成が開始されるようにしている。そのため、速度を遅くすることができるので、先に吐水された洗浄水に後から吐水された洗浄水が追い付く量を多くすることができる。その結果、「吐水断面積が大きく速度の遅い吐水群」の生成が容易となる。
また、ボトム速度V1から戻る際(圧力が給水圧へと復帰する際)の反動により形成された給水圧よりも高い領域をさらに利用することで、「吐水断面積が大きく速度の遅い吐水群」の生成のための吐水の時間を長くすることができる。そのため、「吐水断面積が大きく速度の遅い吐水群」の大きさをさらに大きくすることができる。
【0149】
一方、給水圧近傍からの積極的な加圧により高い圧力の領域を形成し、高い圧力の領域において「吐水断面積が小さく速度の速い吐水群」の生成が行われるようにしている。そのため、速度を速くすることができるので、先に吐水された洗浄水に後から吐水された洗浄水が追い付くことを抑制することができる。その結果、「吐水断面積が小さく速度の速い吐水群」の生成が容易となる。
【0150】
また、給水圧近傍からの積極的な加圧を行うことで圧力P4をより高め、その後に形成される圧力P1をより低くするようにしている。そのため、前述した「給水圧よりも低い圧力の領域」の形成を容易とすることができる。
また、圧力が給水圧へと復帰する際に積極的な加圧を行うようにしている。そのため、迅速、かつ安定的に給水圧近傍の圧力を得ることができる。
【0151】
脈動発生機器74と、洗浄ノズル82と、の間に設けられた洗浄水からの圧力を蓄圧する蓄圧部をさらに備え、蓄圧部は、前記第2の吐水工程において洗浄水からの圧力を蓄圧し、前記第1の吐水工程において蓄圧された圧力を洗浄水に付与するようにしている。この場合、第2の吐水工程において、給水圧より少なくとも高い圧力領域で洗浄水を吐水させる第2の加圧を行い、この第2加圧によって蓄圧部に洗浄水からの圧力を蓄圧し、給水圧より洗浄水の圧力が低下した状態において蓄圧部に蓄圧された圧力が洗浄水に付与されるようにすることができる。
この様にすれば、第2の吐水工程において「吐水断面積が小さく速度の速い吐水群」を生成する際の高い圧力の一部を蓄圧し、「吐水断面積が大きく速度の遅い吐水群」を生成する際に蓄圧された圧力を利用するようにすることができる。その結果、「吐水断面積が大きく速度の遅い吐水群」を確実かつ効率的に生成することができる。
【0152】
蓄圧部は、洗浄水圧が給水圧よりも低くなった際に蓄圧された圧力を洗浄水に付与するようにすることができる。この様な蓄圧部は材料のバネ定数などを適宜選択することで形成することができる。この様な蓄圧部を設けるようにすれば、より低い洗浄水圧において蓄圧された圧力を洗浄水に付与することができるので、より低い圧力、すなわち、より遅い速度において吐水を開始させることができる。そのため、追付き量を増加させることができるので、より大きな「吐水断面積が大きく速度の遅い吐水群」を生成することができる。
【0153】
また、蓄圧部は、脈動発生機器74と、洗浄ノズル82と、を接続する給水管路を弾性変形可能なホースとすることで形成されているものとすることができる。 このようにすれば、弾性変形可能なホースという簡単な構成により蓄圧部を形成することができる。
【0154】
また、第1の吐水工程において、給水圧より少なくとも低い圧力領域で洗浄水を吐水させる第1の加圧を行い、蓄圧部による圧力の付与が行われるとともに、第1の加圧が行われるようにすることができる。この様にすれば、蓄圧部による加圧と第1の加圧の双方で「吐水断面積が大きく速度の遅い吐水群」を生成することができるので、所定の大きさの「吐水断面積が大きく速度の遅い吐水群」をより確実に生成することができる。
【0155】
また、第1の加圧は、第1の吐水工程により吐水が行われる工程の後半において行われるようにすることができる。第1の加圧を工程の後半に行うことで、蓄圧部による加圧とのタイミングをずらすことができる。すなわち、蓄圧部による加圧と第1の加圧とを並列的ではなく直列的に行うようにすることができる。そのため、洗浄水の速度が上昇することを抑制することができ、速度が低い吐水をより長い時間行うことができる。その結果、所定の大きさの「吐水断面積が大きく速度の遅い吐水群」をより確実に生成することができる。
【0156】
また、加圧機による第1の加圧が行われる時間を加圧機による第2の加圧が行われる時間より短くなるように制御することができる。その様にすれば、第1の制御における加圧機による加圧時間を短くすることができるので、制御時間短縮による装置寿命の延命を図ることができる。
【0157】
また、洗浄ノズル82の内圧力が給水圧となった際に、前記待ち時間を終了させるようにすることができる。
そのようにすれば、待ち時間の後に行われる前記第2の吐水工程を圧力が安定した状態から開始させることができる。そのため、第2の吐水工程における加圧エネルギーを洗浄水の加速に効率よく使うことができるので、「吐水断面積が小さく速度の速い吐水群」の速度を確実に高めることができる。
【0158】
また、前記第1の吐水工程によって形成された第1の水塊による着水と、前記第2の吐水工程よって形成された第2の水塊による着水と、の相互の間隔が同じになるような待ち時間が設定されているようにすることができる。
そのようにすれば、「吐水断面積が大きく速度の遅い吐水群」と「吐水断面積が小さく速度の速い吐水群」とが人体局部へ着水する時間間隔が等しくなるので、より連続感を感じさせることができる。
【0159】
また、1つの加圧部を有する脈動発生機器74を用い、その動作タイミングを制御することで「異なる吐水群」を生成するようにしている。また、「異なる吐水群」の生成の条件が適正となるように制御している。そのため、衛生洗浄装置1の小型化、簡素化、低価格化などを図ることができる。
【0160】
次に、第4の実施形態に係る衛生洗浄装置について例示をする。
図16は、洗浄水の圧力変動および脈動発生機器に印加される電圧波形を示すタイミングチャートである。
また、図17は、吐水孔から吐出された直後の洗浄水の速度(初速)を示すタイミングチャートである。
なお、図16の上段は、洗浄水の圧力変動を例示するタイミングチャートである。また、図16の下段は、脈動発生機器に印加される電圧波形を例示するタイミングチャートである。
【0161】
前述したものと同様の構成要素には同じ符号を付し、それらの説明は省略する。
【0162】
本実施形態において、脈動発生機器74の脈動発生コイル74dに印加されるパルス状の電圧は、図16に表したように、1周期中において、ON時間の異なる2つの矩形波が組み合わさった電圧波形となっている。この制御によって起る吐水孔から吐出された直後の洗浄水の圧力変化および速度変化を、脈動発生機器74のプランジャ74cの動作に基いて例示をする。脈動発生機器74の脈動発生コイル74dには、図16に示す電圧波形の電圧が印加されている。
【0163】
ON時間をT1として、脈動発生機器74の脈動発生コイル74dに電圧を印加すると電流が流れるので、脈動発生コイル74dが励磁されてプランジャ74cが磁化される。そして、プランジャ74cが磁化されると、プランジャ74cは脈動発生コイル74dの側、すなわち下流側へ引き付けられる。
【0164】
この下流側への引き付けによって、復帰スプリング74fが圧縮されて弾性エネルギーを蓄えると同時に、洗浄水を加圧し、最も高い圧力P4に達する。その際、吐水孔401から吐水される洗浄水の速度は最も高くなる(V4)。すなわち、プランジャ74cが下流側へ引き付けられると、復帰スプリング74fが圧縮されて弾性エネルギーが蓄えられる。また、同時にプランジャ74cにより洗浄水が加圧される。なお、洗浄水の圧力が最も高い圧力P4に達した際には、吐水孔401から吐出される洗浄水の速度は最も高くなる(V4)。
【0165】
その後、T2において電圧が切れると脈動発生コイル74dの励磁が消えて、復帰スプリング74fの付勢力を受けて、原位置へ復帰する。すなわち、OFF時間をT2として電圧の印加を停止すると、脈動発生コイル74dの励磁が解かれるので復帰スプリング74fの付勢力によりプランジャ74cが原位置へ戻される。同時に圧力は低下し、最低圧力P1に達する。その際、吐水孔401から吐水される洗浄水の速度も低くなり、最も低い速度域V1まで下降する。
【0166】
その後、圧力は給水圧Pinまで復帰しようとし、速度も給水圧時の速度Vinまで復帰しようとする。この復帰のタイミングに、T1よりも短いON時間のT3の矩形波を加えることにより、脈動発生コイル74dを励磁させ、プランジャ74cを下流側へ引き付けることで、洗浄水を再度加圧する。すなわち、この復帰のタイミングにおいて、ON時間がT1よりも短いT3の矩形波電圧を脈動発生コイル74dに印加する。そして、脈動発生コイル74dを励磁し、プランジャ74cを下流側へ引き付けることで、洗浄水を再度加圧する。
【0167】
このとき、圧力が復帰途中であることと、T3の時間がT1よりも短いことにより、洗浄水は最高圧P4までは高まらないものの、給水圧よりも高い第2のピーク圧力P2まで達する。したがって、速度も給水圧時の速度よりも速い第2のピーク速度V2が現れることになる。また、第2のピーク速度V2と、再度プランジャが励磁されるタイミングにおける速度V3までの間には、入水圧時の速度Vin付近で吐水される期間が一定時間生じることになる。
【0168】
ここで、本実施形態に係る衛生洗浄装置では、図16の「F1」に示す領域(圧力P1と圧力P2との間)における圧力の立ち上がり勾配すなわち単位時間あたりの洗浄水の圧力の増加量は、図16の「F2」に示す領域(圧力P3と圧力P4との間)における圧力の立ち上がり勾配すなわち単位時間あたりの洗浄水の圧力の増加量よりも小さい。言い換えれば、図16の「F2」に示す領域における単位時間あたりの洗浄水の圧力の増加量は、図16の「F1」に示す領域における単位時間あたりの洗浄水の圧力の増加量よりも大きい。
【0169】
あるいは、図17の「G1」に示す領域(速度V1と速度V2との間)における速度(初速)の立ち上がり勾配すなわち単位時間あたりの洗浄水の速度(初速)の増加量は、図17の「G2」に示す領域(速度V3と速度V4との間)における速度(初速)の立ち上がり勾配すなわち単位時間あたりの洗浄水の速度(初速)の増加量よりも小さい。言い換えれば、図17の「G2」に示す領域における単位時間あたりの洗浄水の速度(初速)の増加量は、図17の「G1」に示す領域における単位時間あたりの洗浄水の速度(初速)の増加量よりも大きい。
【0170】
これによれば、図16の「F1」に示す領域においては、洗浄水の圧力を圧力P1から圧力P2へ比較的ゆっくり増加させることにより、吐水孔から吐水される洗浄水の速度(初速)は、速度V1から速度V2へ比較的ゆっくり増加する。そのため、所定位置において、後に吐水された洗浄水(例えば速度V2で吐水された洗浄水)が先に吐水された洗浄水(例えば速度V1で吐水された洗浄水)に追いつく追いつき量を、より大きくすることができる。そのため、量感を感じさせるための大きな吐水群をより大きく生成することができる。
【0171】
一方、図16の「F2」に示す領域においては、洗浄水の圧力を圧力P3から圧力P4へ比較的速く増加させることにより、吐水孔から吐水される洗浄水の速度(初速)は、速度V3から速度V4へ比較的速く増加する。そのため、水量は少ないながらも、比較的速い速度の吐水群を生成することができる。
【0172】
つまり、本実施形態では、量感を感じさせるための「吐水断面積が大きく速度の遅い吐水群」を生成する工程において、十分な追いつき量を確保することで吐水断面積をより大きくすることができる。また、刺激感を感じさせるための「吐水断面積が小さく速度の速い吐水群」を生成する工程において、水量は少ないながらも、比較的速い速度の吐水群を生成することができる。そのため、全体として使用水量を少なくしつつ、確実に量感と刺激感を両立させた快適性の高い洗浄を実現することができる。
【0173】
また、図17の「G2」に示す領域における洗浄水の速度(初速)の波形は、速度V2を基点として重ねられた追付き曲線(すなわち、速度V2を基準に求められた追付き曲線)に略沿っている。そのため、量感を感じさせるための「吐水断面積が大きく速度の遅い吐水群」を生成する工程において、吐水されたタイミングと吐水された速度がそれぞれ異なる洗浄水を所定の距離にある着水位置に同時に着水させることができる。これにより、水量は少ないながらも、多い水量で洗っているのと同じ感覚を与えることができる。つまり、使用水量を少なくしつつ、確実に量感を与えることができる。
【0174】
なお、本実施形態においても、図14および図15に関して前述した蓄圧部75a、86aと、脈動発生機器74と、を組み合わせることができる。これによれば、水圧を受けて蓄圧部75a、86aに蓄えられた弾性エネルギーを、洗浄水の加圧を補助するために利用することができる。特に、圧力の低い領域においては洗浄水の加圧を効果的に行うことができる。例えば、図16の「F1」の示す領域の前半部分においては、洗浄水の加圧を効果的に行うことができる。
【0175】
この場合、蓄圧部75a、86aの加圧作用を利用すれば、図16の「F1」の示す領域における電圧印加の時間T3を短くすることができる。そのため、消費電力を低減させたり、脈動発生機器74の発熱量を低減させたりすることができる。また、蓄圧部75a、86aの他の効果についても、図14および図15に関して前述した蓄圧部75a、86aの効果と同様の効果が得られる。
【0176】
次に、第5の実施形態に係る衛生洗浄装置について例示をする。
図18は、洗浄水の圧力変動および脈動発生機器に印加される電圧波形を示すタイミングチャートである。
また、図19は、吐水孔から吐出された直後の洗浄水の速度(初速)を示すタイミングチャートである。
なお、図18の上段は、洗浄水の圧力変動を例示するタイミングチャートである。また、図18の下段は、脈動発生機器に印加される電圧波形を例示するタイミングチャートである。
前述したものと同様の構成要素には同じ符号を付し、それらの説明は省略する。
【0177】
本実施形態においては、洗浄水の圧力が最低圧力P1から給水圧Pinまで復帰しようとし、速度が給水圧時の速度Vinまで復帰しようとするときには、矩形波電圧を脈動発生コイル74dには印加しない。すなわち、図16に表した時間T3の矩形波電圧に相当する電圧を印加しない。その他の脈動発生機器74の動作や、脈動発生機器74の脈動発生コイル74dに印加されるパルス状の電圧は、図16および図17に関して前述した実施形態に係る衛生洗浄装置と同様である。
【0178】
本実施形態では、洗浄水の圧力が最低圧力P1から給水圧Pinまで復帰しようとするタイミングにおいては電圧は印加されないが、洗浄水の圧力は、緩衝スプリング74eの付勢力および洗浄水の流入により、給水圧と同等あるいは給水圧を超えて第2のピーク圧力P2まで達する。したがって、速度も給水圧時と同等あるいは給水圧時よりも速い第2のピーク速度V2が現れることになる。また、第2のピーク速度V2と、再度プランジャ74cが励磁されるタイミング(速度がV3となった時点)との間には、入水圧時の速度Vin付近で吐水される期間が一定時間生じることになる。
【0179】
ここで、本実施形態に係る衛生洗浄装置では、図18の「F1」に示す領域(圧力P1と圧力P2との間)における圧力の立ち上がり勾配すなわち単位時間あたりの洗浄水の圧力の増加量は、図18の「F2」に示す領域(圧力P3と圧力P4との間)における圧力の立ち上がり勾配すなわち単位時間あたりの洗浄水の圧力の増加量よりも小さい。言い換えれば、図18の「F2」に示す領域における単位時間あたりの洗浄水の圧力の増加量は、図18の「F1」に示す領域における単位時間あたりの洗浄水の圧力の増加量よりも大きい。
【0180】
あるいは、図19の「G1」に示す領域(速度V1と速度V2との間)における速度(初速)の立ち上がり勾配すなわち単位時間あたりの洗浄水の速度(初速)の増加量は、図19の「G2」に示す領域(速度V3と速度V4との間)における速度(初速)の立ち上がり勾配すなわち単位時間あたりの洗浄水の速度(初速)の増加量よりも小さい。言い換えれば、図19の「G2」に示す領域における単位時間あたりの洗浄水の速度(初速)の増加量は、図19の「G1」に示す領域における単位時間あたりの洗浄水の速度(初速)の増加量よりも大きい。
【0181】
これによれば、図16および図17に関して前述したように、量感を感じさせるための「吐水断面積が大きく速度の遅い吐水群」を生成する工程において、十分な追いつき量を確保することで吐水断面積をより大きくすることができる。また、刺激感を感じさせるための「吐水断面積が小さく速度の速い吐水群」を生成する工程において、水量は少ないながらも、比較的速い速度の吐水群を生成することができる。そのため、全体として使用水量を少なくしつつ、確実に量感と刺激感を両立させた快適性の高い洗浄を実現することができる。
【0182】
また、図19の「G2」に示す領域における洗浄水の速度(初速)の波形は、速度V2を基点として重ねられた追付き曲線(すなわち、速度V2を基準に求められた追付き曲線)に略沿っている。そのため、量感を感じさせるための「吐水断面積が大きく速度の遅い吐水群」を生成する工程において、吐水されたタイミングと吐水された速度がそれぞれ異なる洗浄水を所定の距離にある着水位置に同時に着水させることができる。これにより、水量は少ないながらも、多い水量で洗っているのと同じ感覚を与えることができる。つまり、使用水量を少なくしつつ、確実に量感を与えることができる。
【0183】
なお、本実施形態においても、図14および図15に関して前述した蓄圧部75a、86aと、脈動発生機器74と、を組み合わせることができる。これによれば、水圧を受けて蓄圧部75a、86aに蓄えられた弾性エネルギーを、洗浄水の加圧を補助するために利用することができる。特に、圧力の低い領域においては洗浄水の加圧を効果的に行うことができる。例えば、図18の「F1」の示す領域の前半部分においては、洗浄水の加圧を効果的に行うことができる。また、蓄圧部75a、86aの他の効果についても、図14および図15に関して前述した蓄圧部75a、86aの効果と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0184】
1 衛生洗浄装置、10 制御部、50 入水側弁ユニット、60 熱交換ユニット、70 脈動発生ユニット、74 脈動発生機器、74a 脈動発生機器、74b シリンダ、74c プランジャ、74d 脈動発生コイル、75a 蓄圧部、80 洗浄ノズルユニット、82 洗浄ノズル、86a 蓄圧部、401 吐水孔、402 吐水孔
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、一般に、衛生洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
洗浄水による洗浄を行うことで人体局部を清潔にできることから、衛生洗浄装置の普及が急速に進んでいる。
ここで、使用水量を少なくしても心地良い洗浄感が得られるように、給水源より得られる吐水圧よりも高い圧力が間欠的に発生するような脈動推移を起こさせる圧力発生部を備えた衛生洗浄装置が提案されている(特許文献1を参照)。
この特許文献1に開示がされた衛生洗浄装置によれば、圧力の脈動推移を起こすことにより、速度が増加し、かつ脈動流が繰返し現れるような吐水を行なうことができる。
【0003】
そのため、吐水後に速度の異なる部位が合体した大きな吐水群を人体局部に着水させることができる。すなわち、速い速度を持つ部位が、その前に吐水された遅い速度を持つ部位に追いつくことで大きな吐水群が形成され、吐水時は少ない水量であっても人体局部に着水する時点では大きな吐水群となっているため少ない水量でも心地良い洗浄感を与えることができるという優れた技術を開示したものである。
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された技術においては、刺激感(速い速度の洗浄水で強く洗浄されている感じ)と量感(大量の洗浄水で洗浄されている感じ)とがトレードオフの関係になってしまうという問題があった。具体的には、吐水の速度差によって大きな吐水群としていくことで吐水の速度が低下してしまうため量感は向上するものの刺激感が低下し、反対に刺激感を高めると量感が低下するものとなっており、より高い洗浄感を与えるためには更なる改良が望まれるものであった。本発明者らは、より高い洗浄感を少ない洗浄水量で提供することができないかを鋭意研究開発を行っていたものである。
【0005】
なお、ここで、本発明者らは、量感と刺激感を両立させた高い洗浄感を実現するために、特許文献2のような技術の検討も行なってきた。
【0006】
特許文献2には、オリフィス部から噴出された洗浄水は吐水孔に向かってまっすぐに噴出され、空気吸引部を通過し、吐水孔から吐水される衛生洗浄装置が開示されている(特許文献2の[請求項1]、[0006]〜[0014]段落、図2等を参照)。
この特許文献2に開示された衛生洗浄装置によれば、噴流による空気の吸込効果(エジェクタ効果)により吸い込まれた空気によって連続吐水される洗浄水の表面が乱され、洗浄水に細い部位と太い部位とが形成される。洗浄水が太くなった部位は、言い換えると洗浄水が密となり、人体局部に着水した際に量感を感じさせる吐水となっている。さらに、エジェクタ効果を生じさせるオリフィス部から吐水孔に向けてまっすぐに噴出されるので、洗浄水がノズル内壁面に衝突することによるエネルギー損失を低減できる、すなわち洗浄水の減速による刺激感の低下を抑制することができるものである。従来の連続吐水の衛生洗浄装置と比して、量感と刺激感を両立した高い洗浄感を与えることができる優れた技術である。
【0007】
しかしながら、この特許文献2に開示がされた技術において、連続吐水を行なう構成であるために使用される水量が多く必要であるという問題に加え、エジェクタ効果を生じさせる装置が必要となるために装置の大型化やコストの面で課題があった。また、エジェクタ効果によって洗浄水の表面の乱れを生じさせることで量感を作り出し、給水圧によって得られる洗浄水の速度低下の程度を抑えることで刺激感を作り出す構成であるため、量感と刺激感のメリハリを高くつけることに限界があり、高いレベルでの洗浄感を与えるという観点においても改良が望まれるものであった。
【0008】
また、同じく特許文献2には、オリフィス部から噴出された洗浄水は吐水孔に向かってまっすぐに噴出され、共振室を通過し、吐水孔から吐水される衛生洗浄装置が開示されている(特許文献2の[請求項8]、[0026]〜[0027]段落、図13等を参照)。
この特許文献2に開示された衛生洗浄装置によれば、オリフィス部から洗浄水が噴出されると共振室内が負圧となり、洗浄水が共振室の負圧に引っ張られて円錐状に断面積が広がった吐水となる。一方で、共振室内が一定以上の負圧になると吐水孔から大気が引き込まれて共振室内が正圧となり、吐水はオリフィス部から噴出されたままの直線状の吐水となる。この円錐状に断面積が広がった吐水が人体局部に着水すると量感を感じ、直線状の吐水が人体局部に着水すると刺激感を感じるものであるが、円錐状に断面積が広がった吐水と直線状の吐水とが交互に繰り返し行なわれることで、従来の連続吐水の衛生洗浄装置と比して、量感と刺激感を両立した高い洗浄感を与えることができる優れた技術である。
【0009】
しかしながら、この特許文献2に開示がされた技術においては、連続吐水を行なう構成であるために使用される水量が多く必要であるという問題に加え、共振室の負圧によって洗浄水の断面積を広げることで量感を作り出し、給水圧によって得られる洗浄水の速度低下の程度を抑えることで刺激感を作り出す構成であるため、量感と刺激感のメリハリを高くつけることに限界があり、高いレベルでの洗浄感を与えるという観点においても改良が望まれるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第3264274号公報
【特許文献2】特開2002−155567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の態様は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、少ない使用水量で刺激感と量感をともに高めることができ、今までにない高いレベルの心地良い洗浄感を与えることができる優れた衛生洗浄装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の発明は、給水された洗浄水を人体に向けて吐水する衛生洗浄装置であって、前記洗浄水を人体に向けて吐出させる吐水孔を有する洗浄ノズルと、前記洗浄水を加圧して前記吐水孔から吐出させる加圧装置と、を備え、第1の時間幅を有する第1の吐水工程と、第2の時間幅を有する第2の吐水工程と、を実行する衛生洗浄装置であって、前記第1の吐水工程においては、前記吐水孔から所定の位置において、前記第1の時間幅の間で後から吐出された洗浄水が、前記第1の吐水工程の初めに吐出された洗浄水に追いついて合体し、第1の水塊が形成されるように、前記加圧装置は、前記第1の時間幅の間で後から吐出される洗浄水の圧力を、前記第1の吐水工程の初めに吐出される洗浄水の圧力よりも高くし、前記第2の吐水工程においては、前記吐水孔から所定の位置において、前記第2の時間幅の間で後から吐出された洗浄水が、前記第2の吐水工程の初めに吐出された洗浄水に追いついて合体し、第2の水塊が形成されるように、前記加圧装置は、前記第2の時間幅の間で後から吐出される洗浄水の圧力を、前記第2の吐水工程の初めに吐出される洗浄水の圧力よりも高くするものであり、かつ、前記第1の水塊が前記第2の水塊よりも大きくなるように、前記加圧装置は、前記第1の吐水工程における洗浄水の圧力変化と、前記第2の吐水工程における洗浄水の圧力変化と、を異ならせるものであり、かつ、前記第2の水塊が前記第1の水塊よりも速くなるように、前記加圧装置は、前記第1の吐水工程における洗浄水の最大圧力よりも前記前記第2の吐水工程における洗浄水の最大圧力を高くするものであって、前記第1の吐水工程による吐水と前記第2の吐水工程による吐水とが前記吐水孔から交互に吐水され、さらに、前記第1の吐水工程における単位時間当たりの前記洗浄水の圧力の増加量は、前記第2の吐水工程における単位時間当たりの前記洗浄水の圧力の増加量よりも小さいことを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0013】
この衛生洗浄装置によれば、後に吐水された洗浄水が先に吐水された洗浄水に追いつく追いつき量を第2の吐水工程よりも第1の吐水工程で多くなるようにすることで所定位置における第1の水塊を第2の水塊よりも断面積が大きくなるようにするとともに、第1の吐水工程における洗浄水の最大圧力よりも第2の吐水工程における洗浄水の最大圧力が高くなるようにすることで所定位置における第2の水塊の速度が第1の水塊の速度よりも速くなるように、吐水孔から吐出される洗浄水を加圧する。これにより、「断面積が大きく速度の遅い第1の水塊」すなわち量感を与える「大玉」と、「断面積が小さく速度の速い第2の水塊」すなわち刺激感を与える「速玉」と、を生成するという技術を採用している。また、「刺激感」を高めた吐水と、「量感」を高めた吐水と、が吐水孔から交互に吐水される構成であるため、使用水量を大きく抑えた上で「量感」と「刺激感」とが両立された心地良い洗浄感を提供することができる。
【0014】
なお、ここで言う、「交互に吐水」とは、第1の吐水工程による吐水と第2の吐水工程による吐水とを、完全に順番に吐水させるものに限定されるものではなく、第1の吐水工程による吐水と第2の吐水工程による吐水との間に、第1の吐水工程による吐水あるいは第2の吐水工程による吐水を挟んで吐水させるものも交互と表現させているものである。
【0015】
また、この衛生洗浄装置によれば、第1の吐水工程においては、洗浄水の圧力を比較的ゆっくり増加させることにより、吐水孔から吐水される洗浄水の速度(初速)は、比較的ゆっくり増加する。そのため、所定位置において、後に吐水された洗浄水が先に吐水された洗浄水に追いつく追いつき量を、より大きくすることができる。そのため、量感を感じさせるための大玉をより大きく生成することができる。
【0016】
一方、第2の吐水工程においては、洗浄水の圧力を比較的速く増加させることにより、吐水孔から吐水される洗浄水の速度(初速)は、比較的速く増加する。そのため、水量は少ないながらも、比較的速い速度の水塊を生成することができる。
【0017】
つまり、量感を感じさせるための大玉を生成する工程において、十分な追いつき量を確保することで吐水断面積をより大きくすることができる。また、刺激感を感じさせるための速玉を生成する工程において、水量は少ないながらも、比較的速い速度の水塊を生成することができる。そのため、全体として使用水量を少なくしつつ、確実に量感と刺激感を両立させた快適性の高い洗浄を実現することができる。
【0018】
また、第2の発明は、第1の発明において、前記所定の位置において、前記第2の水塊が前記第1の水塊に追いつかないように第1の吐水工程と第2の吐水工程との間に所定の待ち時間を設けることを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0019】
この衛生洗浄装置によれば、人体に着水する前に速度の速い第2の水塊すなわち速玉が速度の遅い第1の水塊すなわち大玉に追い付いてしまうことを防止するようにしている。 言い換えると、「大玉」と「速玉」とを別のタイミングで人体に着水させることができるので、少ない水量でも刺激感と量感とを兼ね備えた極めて良好な洗浄感を与えるができる。
【0020】
また、第3の発明は、第2の発明において、前記所定の待ち時間において、前記洗浄水の圧力が減少することを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0021】
この衛生洗浄装置によれば、大玉と速玉とを分離させて生成させる、すなわち水玉同士が繋がっていない状態を作り出すので、人体に大玉と速玉とを分離して別々に着水させることが可能となる。そのため、より十分な量感と強さ感とを使用者に感じさせることができる。
【0022】
また、第4の発明は、第1の発明において、前記第1の吐水工程の少なくとも一部において、給水圧よりも低い圧力領域で前記洗浄水を前記吐水孔から吐水させることを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0023】
この衛生洗浄装置によれば、大玉の生成が給水圧よりも低い圧力領域で行われるので、吐水孔から吐出される洗浄水の初速度そのものが遅い速度となる。そのため、洗浄水の追いつき量を多くすることが可能となり、十分な量感を使用者に感じさせることができる。
【0024】
また、第5の発明は、第4の発明において、前記第2の吐水工程の少なくとも一部において、給水圧よりも高い圧力領域で前記洗浄水を前記吐水孔から吐水させることを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0025】
この衛生洗浄装置によれば、速玉の生成が給水圧よりも高い圧力領域で行われるので、吐水孔から吐出される洗浄水の初速度そのものが速い速度となる。そのため、刺激感の高い速玉を生成することが可能となり、十分な量感と刺激感とを有する洗浄感を実現することができる。
【0026】
また、第6の発明は、第1の発明において、前記第1の吐水工程において、前記第1の吐水工程の後半部分における前記単位時間当たりの洗浄水の圧力の増加量は、前記第1の吐水工程の前半部分における前記単位時間当たりの洗浄水の圧力の増加量よりも大きいことを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0027】
この衛生洗浄装置によれば、吐水孔から吐出される洗浄水の初速の増加に伴い、その初速の増加率も増加させることで、後に吐水された洗浄水が先に吐水された洗浄水に追いつく追いつき量をより多くすることができる。そのため、量感を感じさせるための大玉をより大きくすることができ、量感のより高い洗浄を実現することができる。
【0028】
また、第7の発明は、第1の発明において、前記加圧装置は、前記洗浄水に圧力を付与する加圧機と、前記加圧機と前記吐水孔との間に設けられ、前記洗浄水の圧力を蓄圧する蓄圧機と、を有し、前記第2の吐水工程において前記加圧機から前記洗浄水に付与される圧力の一部を前記蓄圧機に蓄圧し、前記蓄圧された圧力を前記第1の吐水工程において前記洗浄水に付与することを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0029】
この衛生洗浄装置によれば、より速度の速い吐水を行う第2の吐水工程において圧力機を作動させて第2の水塊を形成させるとともにその圧力の一部を蓄圧機に蓄圧しておき、蓄圧の圧力によって第1の吐水工程における第1の水塊の形成を行うことが可能となる。そのため、追いつき量をより多くすることができる。これにより、量感を感じさせるための大玉をより大きくすることができ、量感のより高い洗浄を実現することができる。また、加圧機の仕事量を低減することが可能となり、加圧機の耐久性を向上させることができる。
【0030】
また、第8の発明は、第6または第7の発明において、前記加圧装置は、前記洗浄水に圧力を付与する加圧機と、前記加圧機と前記吐水孔との間に設けられ、前記洗浄水の圧力を蓄圧する蓄圧機と、を有し、前記第1の吐水工程において、吐水開始時点では前記蓄圧機による前記圧力の付与が前記洗浄水に行われ、前記第1の吐水工程における前記第1の時間幅の後半に、前記加圧機は前記洗浄水に圧力を付与することを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0031】
この衛生洗浄装置によれば、蓄圧力の開放にさらに圧力機による加圧を加えることで、吐水孔から吐出される洗浄水の初速が高くなってきたときに、その初速増加率も高く維持することが可能となる。そのため、追いつき量を多くすることができ、量感のより高い洗浄を実現することができる。
【0032】
また、蓄圧機による加圧と加圧機による加圧の双方が洗浄水に付与できるので、第1の吐水工程における初速の増加率の調整が容易にでき、追いつき量を多くすることが可能となる。
【発明の効果】
【0033】
本発明の態様によれば、極めて少ない使用水量で刺激感と量感を今までにない高い次元で兼ね備えた吐水を行うことが可能となり、極めて高い節水性能を備えた上で極めて高い洗浄感を提供できる衛生洗浄装置を提供できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】第1の実施形態に係る衛生洗浄装置の概略構成を水路系を中心に表したブロック図である。
【図2】脈動発生機器の概略構成断面図である。
【図3】洗浄水の圧力変動の様子を例示するための模式図である。
【図4】洗浄ノズルを例示するための模式図である。
【図5】脈動発生コイルに印加される電圧波形を例示するための模式図である。
【図6】吐水孔から吐出された直後の洗浄水の速度(初速)を示すタイミングチャートである。
【図7】吐水孔からの洗浄水吐水の様子を模式的に例示をするための図である。
【図8】吐水が人体局部に当たるときの荷重の変化を示したタイミングチャートである。
【図9】速度(初速)波形と追付き曲線とを示したタイミングチャートである。
【図10】脈動推移の速度波形と生成される吐水群の形状の一例を示す図である。
【図11】吐水群の組合せを例示するための模式図である。
【図12】洗浄水の圧力変動の様子を例示するためのグラフ図である。
【図13】電圧印加のタイミング、プランジャの動作、圧力波形、吐水された洗浄水の状態を例示するための模式図である。
【図14】第2の実施形態に係る衛生洗浄装置において、蓄圧部が設けられている場合を例示するための模式図である。
【図15】第3の実施形態に係る衛生洗浄装置において、残留電荷消費回路と蓄圧部とが設けられている場合を例示するための模式図である。
【図16】第4の実施形態に係る衛生洗浄装置において、洗浄水の圧力変動および脈動発生機器に印加される電圧波形を示すタイミングチャートである。
【図17】第4の実施形態に係る衛生洗浄装置において、吐水孔から吐出された直後の洗浄水の速度(初速)を示すタイミングチャートである。
【図18】第5の実施形態に係る衛生洗浄装置において、洗浄水の圧力変動および脈動発生機器に印加される電圧波形を示すタイミングチャートである。
【図19】第5の実施形態に係る衛生洗浄装置において、吐水孔から吐出された直後の洗浄水の速度(初速)を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について例示をする。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る衛生洗浄装置の概略構成を水路系を中心に表したブロック図である。
【0036】
図1に示すように、衛生洗浄装置1の水路系は、衛生洗浄装置1のケーシングの外部の供給源(図示せず)から給水される入水側弁ユニット50と熱交換ユニット60と、脈動発生ユニット(加圧装置)70とを備える。すなわち、衛生洗浄装置1の水路系には、衛生洗浄装置1のケーシングの外部の供給源(図示せず)側から順に、入水側弁ユニット50と、熱交換ユニット60と、脈動発生ユニット70とが設けられている。
【0037】
そして、脈動発生ユニット70から洗浄ノズル82に、脈動発生ユニット70により付与された脈動を保った洗浄水が導かれ、当該ノズル82から吐水される。これらの各ユニットは、衛生洗浄装置1のケーシングに収納されている。また、制御部10には、電磁弁53、入水温センサ62a、ヒータ61、出水温センサ62b、フロートスイッチ63、脈動発生機器(加圧機)74、流量調節兼流路切替弁81、洗浄ノズル82および制御ボタン(図示せず)が接続されている。なお、制御ボタンには、強い刺激感のある「ハードなおしり洗浄」、「ソフトなおしり洗浄」(以下、「やわらか洗浄」と呼ぶ)、「ビデ洗浄」の各洗浄モードを選択する洗浄ボタン、洗浄水の水勢を変化させるための水勢変更ボタン、洗浄水の温度を選択できる温度調整ボタン、洗浄を停止するための停止ボタンが含まれる。
【0038】
これら各ユニットは、脈動発生ユニット70を挟んでそれぞれ給水管路で接続されている。即ち、入水側弁ユニット50と熱交換ユニット60は、給水管路55で接続されている。
【0039】
入水側弁ユニット50は、給水源(例えば、水道管)から洗浄水(例えば、水道水)が直接給水されている。この入水側弁ユニット50に導かれた洗浄水は、入水側弁ユニット50のストレーナ51でゴミなどが捕捉されて、逆止弁52に流れ込む。そして、電磁弁53にて管路が開かれると、洗浄水は調圧弁54に流れ込み、所定の圧力(例えば、給水圧:0.110MPa)に調圧された状態で、瞬間式加熱方式の熱交換ユニット60に流入する。このように調圧を受けて流入する洗浄水の流量は200〜600cc/min程度となるようにされている。なお、便器洗浄用の洗浄水を貯留する洗浄水タンク(図示せず)から分岐して入水側弁ユニット50に配管することもできる。
【0040】
上記した入水側弁ユニット50の下流の熱交換ユニット60は、ヒータ61を内蔵する熱交換部62を備える。この熱交換ユニット60は、熱交換部62へ流入する洗浄水の温度と熱交換部62から流出する洗浄水の温度とを入水温センサ62aと出水温センサ62bで検出しつつ、その検出温度を基にして、洗浄水の設定温度の洗浄水に加熱するようにヒータ61の加熱動作を制御する。すなわち、熱交換ユニット60においては、洗浄水の温度が所定の設定温度となるようにヒータ61による加熱が行われる。この場合、入水温センサ62aからの検出温度と、出水温センサ62bからの検出温度とに基づいて、洗浄水の温度が所定の設定温度となるように、制御部10によりヒータ61の加熱動作が制御される。
【0041】
そして、このようにして温水化された洗浄水は、後述する脈動発生ユニット70に流入し脈動を付加された後、洗浄ノズル82に流入する。なお、脈動とは、脈動発生ユニットによって生じる圧力変動のことであり、圧力変動を起こす装置類を脈動発生ユニットと呼んでいる。
【0042】
また、この熱交換ユニット60は、熱交換部62内の水位を検出するフロートスイッチ63を有する。このフロートスイッチ63は、ヒータ61が水没する所定の水位以上になるとその旨の信号を出力するように構成されている。そして、制御部10は、この信号を入力している状況下でヒータ61を通電制御するので、水没していないヒータ61に通電してしまうというような事態、いわゆるヒータ61の空焚きを防止することができる。なお、熱交換ユニット60のヒータ61は、制御部10にてフィードフォワード制御とフィードバック制御を組合せながら最適に制御される。
【0043】
更に、この熱交換ユニット60は、熱交換部62からの洗浄水出口、即ち、熱交換部62下流の管路の熱交換部接続箇所に、バキュームブレーカ64と安全弁65とを備える。バキュームブレーカ64は、負圧となった管路内に大気を導入して、熱交換部下流の管路内の洗浄水を断ち切り、熱交換部下流側から洗浄水の逆流を防止する。すなわち、バキュームブレーカ64は、負圧となった管路内に大気を導入して熱交換部下流の管路内にある洗浄水を洗浄ノズル82から排出させる。そのため、管路内が負圧となった場合であっても、熱交換部下流側から熱交換部62に洗浄水が逆流することを防止することができる。また、安全弁65は、給水管路67内の水圧が所定値を超えると開弁し、捨水配管66へ洗浄水を排出することにより、異常時の機器の破損、ホースの外れ等の不具合を防止している。
【0044】
続いて、脈動発生機器74の構造について例示をする。
図2は、脈動発生機器74の概略構成断面図である。なお、前述したように、ここでいう脈動発生機器は、圧力変動を起こす加圧機ということもできる。
【0045】
図2に示すように、脈動発生機器74は、給水管路67、75に接続されるシリンダ74bと、シリンダ74bの内部に進退自在に設けられたプランジャ74cと、プランジャ74cの内部に設けられた逆止弁74gと、励磁電圧を制御することでプランジャ74cを進退させる脈動発生コイル74dと、を備えている。そして、プランジャ74cの位置が、洗浄ノズルの側(下流側)に変化した場合には洗浄水の圧力が増加し、洗浄ノズルとは反対の側(上流側)に変化した場合には洗浄水の圧力が減少するように逆止弁が配設されている。
【0046】
そして、このプランジャ74cを脈動発生コイル74dの励磁を制御することにより上流側・下流側に進退させる。すなわち、洗浄水に脈動を付加する場合(洗浄水に圧力変動を生じさせる場合)には、脈動発生コイル74dに流す励磁電圧を制御することにより、プランジャ74cをシリンダ74bの軸方向(上流方向・下流方向)に進退させる。
【0047】
この場合、プランジャ74cは、脈動発生コイル74dの励磁により図示する原位置(プランジャ原位置)から下流側74hに移動する。そして、コイルの励磁が消えると、復帰スプリング74fの付勢力によって、原位置に復帰する。この際、緩衝スプリング74eによってプランジャ74cの復帰の動作が緩衝される。プランジャ74cは、その内部にダックビル式の逆止弁74gを備え、上流側への逆流を防止している。したがって、プランジャ原位置から下流側へ移動する際には、シリンダ74b内の洗浄水を加圧して給水管路75に押し流せるようになっている。この際、プランジャ原位置と、下流側に移動した位置とは常に一定であることから、プランジャ74cが動作する際に給水管路75に送られる洗浄水の量は一定となる。
その後、原位置に復帰する際には、逆止弁74gを経てシリンダ74b内に洗浄水が流れ込む。そのため、次回のプランジャ74cの下流側移動の際には、改めて、一定量の洗浄水が給水管路75に送られることになる。
【0048】
この場合、脈動発生機器74には給水管路67を経て、前述した給水圧の洗浄水が給水されている。よって前述したように、プランジャ74cの原位置復帰の間に逆止弁74gを経てシリンダ74b内に流れ込んだ洗浄水は、逆止弁74gによる圧力損失や下流側の洗浄水の引き込みの影響を受けて1次圧のままではないものの、給水管路75に送られる。すなわち、プランジャ74cが原位置に復帰するまでの間に逆止弁74gを介してシリンダ74b内に流れ込んだ洗浄水は、給水管路75に向けて流出する。この場合、給水管路75に流出する洗浄水の圧力は、逆止弁74gによる圧力損失や下流側の洗浄水の引き込みの影響を受けて、1次圧(前記の給水圧)とは異なるものとなる。
【0049】
この様子を図でもって表す。
図3は、洗浄水の圧力変動の様子を例示するための模式図である。
図3に示す様に、洗浄水は、脈動発生機器74への導入水圧Pin(給水圧)を基準に脈動した圧力で脈動発生機器74から給水管路75、ひいては洗浄ノズル82に送られ、人体局部に向けて吐水される。
【0050】
次に、水撃低減用アキュームレータ73について例示をする。水撃低減用アキュームレータ73は、ハウジング73aと、ハウジング内のダンパ室73bと、このダンパ室に配置されたダンパ73cとを有する。
このような構成を有する水撃低減用アキュームレータ73は、ダンパ73cの作用により脈動発生ユニット70の上流側の給水管路67にかかる水撃を低減する。このため、熱交換部62の洗浄水温度分布に及ぼす水撃の影響を緩和することができ、洗浄水の温度を安定化することができる。この場合、水撃低減用アキュームレータ73は脈動発生機器74に近接配置したり当該機器74と一体的に配置することが、脈動発生機器74で発生された脈動を上流側に伝播することを速やかにかつ効果的に回避できる観点から好ましい。すなわち、水撃低減用アキュームレータ73を脈動発生機器74に近接配置したり、水撃低減用アキュームレータ73と脈動発生機器74とを一体化したりすることが好ましい。その様にすれば、脈動発生機器74において発生した脈動が上流側に伝播することを速やか、かつ効果的に抑制することができる。
【0051】
次に、流量調節兼流路切替弁81について例示をする。流量調節兼流路切替弁81には、給水管路86を介して洗浄ノズル82が接続されている。そして、脈動発生機器74から送られた洗浄水の供給先を、洗浄ノズル82の各流路83、84、85(図4を参照)に切替、かつその流量を調節する。すなわち、流量調節兼流路切替弁81は、脈動発生機器74から送られてきた洗浄水が、洗浄ノズル82に設けられた各流路83、84、85毎に供給されるように流路の切替を行う。また、その際、流路断面積を調節することで流量調節を行う。
【0052】
次に、洗浄ノズル82について例示をする。図4(a)、(b)に洗浄ノズルの構造図を示す。洗浄ノズル82内にある複数の洗浄流路83、84、85は、それぞれ洗浄ノズル先端近傍にある「おしり」(人体局部)に向って洗浄水を吐出するおしり洗浄用の吐水孔401とビデ洗浄用の吐水孔402に連通する。吐水孔401、402の上流には洗浄流路83、85を通水する洗浄水を旋回させながら旋回流として吐水孔から吐水させるために洗浄水渦室301、302を設けてある。
【0053】
すなわち、洗浄ノズル82の先端近傍には、「おしり」(人体局部)に向って洗浄水を吐出するおしり洗浄用の吐水孔401と、ビデ洗浄用の吐水孔402とが設けられている。吐水孔401の上流側には洗浄水渦室301が連通するようにして設けられている。吐水孔402の上流側には洗浄水渦室302が連通するようにして設けられている。
【0054】
洗浄流路83は、円筒状を呈する洗浄水渦室302の接線方向に接続されている。また、洗浄流路85は、円筒状を呈する洗浄水渦室301の接線方向に接続されている。洗浄流路84は、洗浄水渦室301の軸中心に向けて接続されている。接線方向から通水された洗浄水は、洗浄水渦室301、302の内壁を沿うように旋回し、旋回した洗浄水は、旋回流として吐水孔401、402から吐水される。
【0055】
なお、洗浄流路84は洗浄水渦室301の上方に連通し、吐水孔401と連通している。すなわち、洗浄流路83は、洗浄水渦室302の下部に接続されている。また、洗浄流路84は、洗浄水渦室301の上部に接続され、洗浄流路85は、洗浄水渦室301の下部に接続されている。
【0056】
また、吐水孔401、402の径は、φ0.5mmからφ1.8mm程度の範囲であり、流量によって最適な径を選択している。たとえば、流量430ml/minの場合、おしり洗浄用の吐水孔401の径は、φ0.9mm程度であり、ビデ洗浄用の吐水孔402の径はφ1.4mm程度に設定されている。
【0057】
ここで、本実施形態における洗浄水の吐水の様子について例示をする。図5は、洗浄水吐水に際して脈動を発生させる脈動発生機器74の脈動発生コイル74dの励磁の様子を示す電圧波形の図(脈動発生コイル74dに印加される電圧波形を例示するための模式図)であり、図6は、吐水孔から吐出された直後の洗浄水の速度(初速)を示すタイミングチャート、図7は、吐水孔40からの洗浄水吐水の様子を模式的に例示するための図である。
【0058】
制御部10は、脈動発生コイル74dを励磁して脈動発生機器74において脈動を発生させるに当たり、パルス状の信号を出力する。そして、このパルス信号を、脈動発生コイル74dに接続され、これをオンさせるためのスイッチングトランジスタ(図示せず)に出力する。すなわち、脈動発生コイル74dには、回路の開閉を行うスイッチングトランジスタ(図示せず)が接続されている。制御部10から出力されたパルス信号は、スイッチングトランジスタに入力される。
【0059】
よって、脈動発生コイル74dは、パルス信号に従ったスイッチングトランジスタのON・OFFにより繰返し励磁し、前述したようにプランジャ74cを周期的に往復動(進退)させる。すなわち、入力されたパルス信号に基づいてスイッチングトランジスタが開閉動作(ON・OFF動作)することで、脈動発生コイル74dが繰返し励磁される。そして、脈動発生コイル74dを繰返し励磁させることで、プランジャ74cを周期的に往復動(進退)させる。
これにより、脈動発生機器74から吐水孔401には、圧力が周期的に上下変動する脈動流の状態で洗浄水が供給され、この脈動流の洗浄水が各吐水孔から吐水される。
【0060】
なお、脈動発生コイル74dに印加されるパルス状の電圧は、図5に例示をする。また、それによって、吐水孔から吐出された直後の洗浄水の速度(初速)のタイミングチャートを図6に例示をする。なお、図6は、図3の圧力値を基に、速度V=C・ΔP1/2(Cは流量係数)の式に基いて算出された波形である。
【0061】
図5より、脈動発生機器74の脈動発生コイル74dに印加されるパルス状の電圧は、1周期中において、ON時間の異なる2つの矩形波が組み合わさった電圧波形となっている。この制御によって起る吐水孔から吐出された直後の洗浄水の速度変化を、脈動発生機器74のプランジャ74cの動作に基いて例示をする。脈動発生機器74の脈動発生コイル74dには、図5に示す電圧波形の電圧が印加されている。
【0062】
ON時間をT1として、脈動発生機器74の脈動発生コイル74dに電圧を印加すると電流が流れるので、脈動発生コイル74dが励磁されてプランジャ74cが磁化される。そして、プランジャ74cが磁化されると、プランジャ74cは脈動発生コイル74dの側、すなわち下流側へ引き付けられる。
【0063】
この下流側への引き付けによって、復帰スプリング74fが圧縮されて弾性エネルギーを蓄えると同時に、洗浄水を加圧し、最も高い圧力P4に達するその際、吐水孔401から吐水される洗浄水の速度は最も高くなる(V4)。すなわち、プランジャ74cが下流側へ引き付けられると、復帰スプリング74fが圧縮されて弾性エネルギーが蓄えられる。また、同時にプランジャ74cにより洗浄水が加圧される。なお、洗浄水の圧力が最も高い圧力P4(図3を参照)に達した際には、吐水孔401から吐出される洗浄水の速度は最も高くなる(図6におけるV4)。
【0064】
その後、T2において電圧が切れると脈動発生コイル74dの励磁が消えて、復帰スプリング74fの付勢力を受けて、原位置へ復帰する。すなわち、OFF時間をT2として電圧の印加を停止すると、脈動発生コイル74dの励磁が解かれるので復帰スプリング74fの付勢力によりプランジャ74cが原位置へ戻される。
【0065】
同時に圧力は低下し、最低圧力P1(図3を参照)に達する。その際、吐水孔401から吐水される洗浄水の速度も低くなり、最も低い速度域V1まで下降する。
その後、圧力は給水圧Pinまで復帰しようとし、速度も給水圧時の速度Vinまで復帰しようとする。この復帰のタイミングに、T1よりも短いON時間のT3の矩形波を加えることにより、脈動発生コイル74dを励磁させ、プランジャ74cを下流側へ引き付けることで、洗浄水を再度加圧する。すなわち、この復帰のタイミングにおいて、ON時間がT1よりも短いT3の矩形波電圧を脈動発生コイル74dに印加する。そして、脈動発生コイル74dを励磁し、プランジャ74cを下流側へ引き付けることで、洗浄水を再度加圧する。
【0066】
このとき、圧力が復帰途中であることと、T3の時間がT1よりも短いことにより、洗浄水は最高圧P4までは高まらないものの、給水圧よりも高い第2のピーク圧力P2まで達する。したがって、速度も給水圧時の速度よりも速い第2のピーク速度V2が現れることになる。また、第2のピーク速度V2と、再度プランジャが励磁されるタイミングにおける速度V3までの間には、入水圧時の速度Vin付近で吐水される期間が一定時間生じることになる。
【0067】
ここで、脈動発生コイル74dに印加する電圧波形のタイミングは、脈動の周波数50Hzであり、T1を4.8msec(ミリ秒)、T2を7msec、T3を1msec、T4を7.2msecで設定してある。すなわち、脈動の周波数を50Hz、ON時間T1を4.8msec、OFF時間T2を7msec、ON時間T3を1msec、OFF時間T4を7.2msecとしている。ただし、周波数、T1、T2、T3、T4の時間幅はこの限りではなく、5Hz以上の不感帯周波数域における繰返し周波数であればよく、T1、T2、T3、T4の時間幅もその周期(脈動周期MT)に基いて設定されていてもよい。なお、不感帯周波数とは、人が刺激変化と認識できる周波数よりも高い周波数、すなわち、人が意図的な繰返し吐水と知覚できない周波数である。
【0068】
本実施形態に係る衛生洗浄装置では、図3の「F1」に示す領域(圧力P1と圧力P2との間:第1の時間幅)における圧力の立ち上がり勾配すなわち単位時間あたりの洗浄水の圧力の増加量は、図3の「F2」に示す領域(圧力P3と圧力P4との間:第2の時間幅)における圧力の立ち上がり勾配すなわち単位時間あたりの洗浄水の圧力の増加量よりも小さい。言い換えれば、図3の「F2」に示す領域における単位時間あたりの洗浄水の圧力の増加量は、図3の「F1」に示す領域における単位時間あたりの洗浄水の圧力の増加量よりも大きい。
【0069】
あるいは、図6の「G1」に示す領域(速度V1と速度V2との間:第1の時間幅)における速度(初速)の立ち上がり勾配すなわち単位時間あたりの洗浄水の速度(初速)の増加量は、図6の「G2」に示す領域(速度V3と速度V4との間:第2の時間幅)における速度(初速)の立ち上がり勾配すなわち単位時間あたりの洗浄水の速度(初速)の増加量よりも小さい。言い換えれば、図6の「G2」に示す領域における単位時間あたりの洗浄水の速度(初速)の増加量は、図6の「G1」に示す領域における単位時間あたりの洗浄水の速度(初速)の増加量よりも大きい。
【0070】
これによれば、図3の「F1」に示す領域においては、洗浄水の圧力を圧力P1から圧力P2へ比較的ゆっくり増加させることにより、吐水孔から吐水される洗浄水の速度(初速)は、速度V1から速度V2へ比較的ゆっくり増加する。そのため、所定位置において、後に吐水された洗浄水(例えば速度V2で吐水された洗浄水)が先に吐水された洗浄水(例えば速度V1で吐水された洗浄水)に追いつく追いつき量を、より大きくすることができる。そのため、量感を感じさせるための大きな吐水群をより大きく生成することができる。
【0071】
一方、図3の「F2」に示す領域においては、洗浄水の圧力を圧力P3から圧力P4へ比較的速く増加させることにより、吐水孔から吐水される洗浄水の速度(初速)は、速度V3から速度V4へ比較的速く増加する。そのため、水量は少ないながらも、比較的速い速度の吐水群を生成することができる。
【0072】
つまり、本実施形態では、量感を感じさせるための「吐水断面積が大きく速度の遅い吐水群」を生成する工程において、十分な追いつき量を確保することで吐水断面積をより大きくすることができる。また、刺激感を感じさせるための「吐水断面積が小さく速度の速い吐水群」を生成する工程において、水量は少ないながらも、比較的速い速度の吐水群を生成することができる。そのため、全体として使用水量を少なくしつつ、確実に量感と刺激感を両立させた快適性の高い洗浄を実現することができる。
【0073】
また、図3の「F11」に示す領域(圧力P1と圧力P2との間の前半部分)における単位時間あたりの洗浄水の圧力の増加量は、図3の「F12」に示す領域(圧力P1と圧力P2との間の後半部分)における単位時間あたりの洗浄水の圧力の増加量よりも小さい。言い換えれば、図3の「F12」に示す領域における単位時間あたりの洗浄水の圧力の増加量は、図3の「F11」に示す領域における単位時間あたりの洗浄水の圧力の増加量よりも大きい。
【0074】
あるいは、図6の「G11」に示す領域(速度V1と速度V2との間の前半部分)における単位時間当たりの洗浄水の速度(初速)の増加量は、図6の「G12」に示す領域(速度V1と速度V2との間の後半部分)における単位時間あたりの洗浄水の速度(初速)の増加量よりも小さい。言い換えれば、図6の「G12」に示す領域における単位時間あたりの洗浄水の速度(初速)の増加量は、図6の「G11」に示す領域における単位時間あたりの洗浄水の速度(初速)の増加量よりも大きい。
【0075】
これによれば、吐水孔から吐出される洗浄水の初速の増加に伴い、その初速の増加率も増加させることで、後に吐水された洗浄水が先に吐水された洗浄水に追いつく追いつき量をより多くすることができる。そのため、量感を感じさせるための大きな吐水群をより大きくすることができ、量感のより高い洗浄を実現することができる。
【0076】
続いて、上記によって作られた速度波形によって得られる洗浄水の状態について例示をする。
図7は、脈動流の洗浄水を仮定の吐水孔40から吐水した場合に、その吐水された洗浄水が増幅される過程を例示するための模式図である。
ここで、図3と図6の図を用いて、圧力変動と速度変化の関係について例示をする。脈動発生機器74により圧力が脈動すると、速度Vも同様に変動して脈動する。すなわち、吐水される洗浄水は、圧力変動がPmaxになると、速度も最大速度Vmaxになり、瞬間の速度が時間とともに変動する。また、図3の脈動流の洗浄水の圧力波形における各部位をP1、P2、P3、P4、P5とすると、速度も図6上のV1、V2、V3、V4、V5がそれぞれの番号同士で対応する。
【0077】
よって、吐水直後から図7の(a)〜(d)へと移行するにつれて、速度V2は速度V1より速度が速いから、速度V1で吐水された洗浄水は速度V2で吐水された洗浄水及びこれらの間にある洗浄水に追いつかれて合体され、吐水断面積の大きな吐水群となる(図7(b)を参照)。
【0078】
このように、速度波形の立ち上がりの勾配部分においては、速い速度で吐水された洗浄水がその前の遅い速度で吐水された洗浄水と順次合体することにより、大きな塊(吐水群)となって、人体局部(洗浄面)に着水することになる。ここで、図7の(a)、(b)に示すように、遅い側の速度域での速度の立ち上がり勾配部分では、全体の速度が遅いので、人体局部に着水する前に、V2がV1と合体して吐水断面積の大きな吐水群を作ることができる。
【0079】
すなわち、速度V1と速度V2との間における速度の立ち上がり勾配部分(第1の吐水工程)においては、全体の速度が遅い。そのため、速度V1で吐水された洗浄水が人体局部に着水する前に、速度V2で吐水された洗浄水が速度V1で吐水された洗浄水に追いつくことができる。その結果、人体局部に着水する前に、速度V2で吐水された洗浄水と速度V1で吐水された洗浄水とが合体して吐水断面積の大きな吐水群(第1の水塊)を作ることができる。
この洗浄水(吐水断面積の大きな吐水群)は、人体局部に当たるときには、着水の断面積(量感)が大きい状態になっている。
【0080】
一方で、図7の(c)、(d)に示すように、V3、およびV4の速い側の速度域での速度の立ち上がり勾配では、全体の速度が速いので、人体局部に着水するまでの短い時間では、距離が縮まりにくいため、人体局部に着水する時点では、V4はV3とほとんど合体せずに速く吐水断面積の小さい吐水群として着水することになる。
すなわち、速度V3と速度V4との間における速度の立ち上がり勾配部分(第2の吐水工程)においては、全体の速度が速い。そのため、速度V3で吐水された洗浄水が人体局部に着水する前に、速度V4で吐水された洗浄水が速度V3で吐水された洗浄水に追いつきにくい。その結果、人体局部に着水する前に、速度V3で吐水された洗浄水と速度V4で吐水された洗浄水とがほとんど合体せず、吐水断面積の小さな吐水群(第2の水塊)として着水することになる。この洗浄水(吐水断面積の小さな吐水群)は、人体局部に当たるときには、衝突エネルギー(刺激感)における速度成分が大きい状態になっている。
【0081】
また、このとき、V2とV4のタイミングに十分開きがある、言い換えれば、V2とV4にピークが現れるように制御することで、V2によって生成される吐水群と、V4によって生成される吐水群は、V4が吐水された段階で十分な時間の開きが生じる。
すなわち、OFF時間T4(待ち時間)を設けることで、速度V2で吐水された洗浄水と速度V4で吐水された洗浄水との間に十分な時間の開きを設けることができる。
その結果、速度V2で生成された吐水断面積が大きく速度V4よりは速度の遅い吐水群と、速度V4で生成された吐水断面積が小さく速度の速い吐水群とは、お互いに干渉することなく、人体局部に異なる速度をもって独立して着水することができる。
【0082】
また、速度V4から速度V1に移行するタイミングでは、速度が減速していくため、合体による吐水群は生成されず、洗浄感には寄与しない領域となる。したがって、この領域を減らすことは、洗浄感を高めるとともに、より少ない水量で吐水することにも繋がる。
【0083】
なお、ここでいう吐水群とは、吐水孔から吐水される洗浄水の進行方向に対し直角に切断したときの断面積が、吐水後に追付くことにより、吐水孔から吐水された直後の断面積よりも大きくなれば、吐水群という。すなわち、吐水群とは、後から吐水された洗浄水が追いつくことにより吐水断面積(洗浄水の進行方向に対し直角に切断したときの断面積)が、吐水直後の吐水断面積よりも大きくなったものをいう。
【0084】
ここで、吐水後に洗浄水が追い付くことにより、吐水断面積が増え、吐水断面積の異なる吐水群が形成されると、人体局部に当たるときの荷重は、吐水断面積が増えない(吐水群が形成されない)吐水と比べ、人体局部で当たるときの荷重は大きくなる。
【0085】
図8は、本実施例における吐水が、人体局部に当たるときの荷重の変化を示したタイミングチャートである。これより、一つの周期(脈動周期MT)において、2つのタイミングで荷重が大きくなっていることがわかる。これより、1つの周期において、2つ吐水群が形成され、それらが独立して当たっていることがわかる。
【0086】
図8に例示をしたものでは、先に吐水断面積の大きく速度の遅い吐水群があたり、あとから吐水断面積が小さくて速度の速い吐水群が当たっている。したがって、使用者は、速度と大きさの異なる2つの吐水群を独立して感じることができ、この場合、大きくて遅い吐水群で量感を感じ、小さくて速い吐水群で刺激感を感じることができる。
【0087】
なお、この荷重の変化について、それぞれの「山部分」を積分した値がM・Vすなわち衝撃力となるが、この値が十分大きくなれば、「当たる感覚」を得ることができる。また、ここでいう吐水群とは、ある衝撃力を持って人体局部に着水するものをいう。
【0088】
ここで、脈動流となって吐水された洗浄水は、この場合の速度波形では、速度V2の遅くて大きい吐水群と、速度V4の速くて小さい吐水群とがそれぞれ脈動周期MTごとに現れるので、遅くて大きい吐水群と、速くて小さい吐水群とが交互に現れる。つまり、脈動周期MTの半分の間隔で吐水群が現れることになる。したがって、周期(脈動周期MT)が長くても、より連続感のある快適な洗浄感をえることができ、断続感がきらいな人にとってもより快適な洗浄を提供できる。しかも、このそれぞれの吐水群は、速度V4で吐水された洗浄水に、それぞれ遅れて速度V5および速度V1で吐水された洗浄水が繋がれたような状態となる。
【0089】
次に、このような吐水の状態により得られる効果について例示をする。ここで、速度の遅い側で吐水断面積の大きい吐水群が生成される過程について例示をする。吐水群は、洗浄水が吐水孔40から吐水され、人体局部に当たるまでの時間間隔において、速度の速い吐水による洗浄水が、速度の遅い吐水による洗浄水に追いつくことで生成される。
【0090】
このとき、速度が速い領域で吐水群を生成しようとすると、吐水孔40から人体局部に到着するまでの時間は短い。たとえば、速度が15m/secのときに、60mm先の人体局部に到達する時間は、4msecである。一方、速度が遅い領域で考えた場合、吐水孔40から人体局部に到着するまでの時間は、速度が速い領域の場合と比べ、長くなる。たとえば、速度が7.5m/secの時には、人体局部に到達する時間は、8msecである。このときに、同じ量の速度差がある場合には、人体局部に到達するまでの時間が長いほうが、追いつける洗浄水の量は多いことになる。すなわち、洗浄水の速度の低い側で吐水群を生成したほうが、効率よくより吐水断面積の大きな吐水群を生成することが可能である。
【0091】
このように生成した吐水群は、より吐水断面積の大きな吐水群となっているため、吐水断面積Sは通常よりも大きくなる。したがって、洗浄水量が少ないにもかかわらず、吐水断面積の大きな吐水が当たっており多い流量で洗浄されているような洗浄感、すなわち量感がある。つまり、吐水断面積の大きな吐水群が当たるようにすれば、使用する洗浄水自体の量を少なくした場合であっても多い流量で洗浄されているような洗浄感、すなわち量感を得ることができる。
【0092】
一方で、吐水断面積が小さく速度の速い吐水群は、速い速度V4で先にでた洗浄水になかなか追いつくことができず、吐水断面積の大きい吐水群を形成する前に人体局部に着水するため、吐水断面積が小さく、量感は乏しくなる。しかし、先にでた洗浄水に追いつかないということは、遅い速度の洗浄水に運動エネルギーを吸収されることなく人体局部に着水できるので、刺激感を維持したまま着水することができる。
【0093】
このときの刺激感に関わる衝撃力は、速度が大きくなるため、衝撃力も大きくなる。すなわち、量感は小さくなるものの刺激感は高めることができる。したがって、大きくて遅い吐水群で量感を出し、小さくて速い吐水群で刺激感をだすことで、量感と刺激感を両立させた快適性の高い洗浄を実現することができる。
【0094】
なお、大きくて遅い吐水群および小さくて速い吐水群はそれぞれ十分な衝撃力を持っているため、脈動周期MTに対して、約半分の周期の脈動に感じることができ、この感覚は、人間が識別できる感覚にくらべて十分短いため、洗浄の連続感とともに、刺激感と量感とを実感することができる。
【0095】
次に、吐水群生成の現象について例示をする。
図9は、速度(初速)波形と、追付き曲線を示したタイミングチャートである。まず、追付き曲線について例示をする。追付き曲線とは、吐水されたタイミングと吐水された速度がそれぞれ異なる洗浄水であっても、この曲線上に載っていれば60mm先の人体局部に同時に着水することを示している。すなわち、追付き曲線とは、所定の距離(本実施の形態においては60mmとした)にある着水位置に同時に着水させる際の速度と吐水タイミングとの関係を表すための仮想曲線である。
【0096】
本実施形態では、速度V1と速度V2との間における洗浄水の速度(初速)の波形は、速度V2を基点として重ねられた追付き曲線(すなわち、速度V2を基準に求められた追付き曲線)に略沿っている。そのため、量感を感じさせるための「吐水断面積が大きく速度の遅い吐水群」を生成する工程において、吐水されたタイミングと吐水された速度がそれぞれ異なる洗浄水を所定の距離にある着水位置に同時に着水させることができる。これにより、水量は少ないながらも、多い水量で洗っているのと同じ感覚を与えることができる。つまり、使用水量を少なくしつつ、確実に量感を与えることができる。
【0097】
これに対して、この追付き曲線よりも遅い速度を持つ洗浄水は、後から来る速い速度の洗浄水に追付かれ、合体して同時に人体局部に着水することになる。したがって、この場合には、この追付き曲線よりも遅い速度の領域は、V2の速度を持つ洗浄水に全て追付かれることになり、積分した値が体積となる吐水群が生成され人体局部に着水することになる。この場合、吐水群の速度は、12m/secであり、吐水群量は、21μリットルと大きな吐水群となる。
【0098】
一方、図6に関して前述したように、速度V3と速度V4との間における単位時間あたりの洗浄水の速度(初速)の増加量は、速度V1と速度V2との間における単位時間あたりの洗浄水の速度(初速)の増加量よりも大きい。この場合、吐水群の量は少ないものの、その分、追付く量が少ないため、遅い速度に速度が吸収されて遅くなることがなくなる。すなわち、吐水群の洗浄水量は少なくなるものの、遅い速度の洗浄水に速い速度の洗浄水の運動エネルギーが吸収されることが少なくなる。つまり、吐水断面積は小さいが速い吐水群が生成される。
【0099】
この場合、吐水群の速度は14m/secであり、その洗浄水量は6μリットルである。これらのことより、つまり、刺激感が減衰せずに人体局部に着水することになる。これらのことより、吐水断面積の大きい吐水群では、洗浄水量が多くなるため多い水量で洗っているのと同じ感覚を得ることができる。また、吐水断面積が小さく速い速度の吐水群では、減速せずに人体局部に着水するために、刺激感を感じることができる。かつ、この吐水群(吐水断面積が小さく速い速度の吐水群)を速い周波数で人体局部に当てることによって、刺激感と量感を同時に感じることができる。
【0100】
ここで、吐水断面積は、大きい吐水群で、およそ12.6mm2となり、小さい吐水群で3.8mm2となっていて、吐水断面積が異なっている。このように、追付くことにより生成される吐水群の吐水断面積が相対的に異なる吐水群を生成ことで、刺激感と量感の異なる吐水群を生成し、個別に当てることで、刺激感と量感とを両立させることができる。
【0101】
なお、洗浄水の追付きにより、およそ吐水孔の径で換算される吐水断面積よりも大きくなれば、吐水群となる。また、追付きによって生成される吐水群の吐水断面積が相対的に異なる吐水群が人体局部に着水する地点で生成されれば、異なる吐水群を生成したことになる。すなわち、人体局部に着水するまでの間に、吐水断面積が相対的に異なる吐水群が後から吐水された洗浄水の追付きによって生成されれば、異なる吐水群が生成されたことになる。
【0102】
さらに、5Hz以上の不感帯周波数域において、それぞれの吐水群を少なくとも1回着水させることで、刺激感と量感とを同時に感じさせることができる。すなわち、脈動周波数は5Hz以上であればよい。
【0103】
次に、本実施の形態における洗浄感について例示をする。
本発明者は、洗浄感が刺激感と量感とで表される感覚であると考え、それらは、吐水のもつ衝撃力M・Vに依存すると考えた。
【0104】
ここで、刺激感とは、速い吐水が人体局部に当たることで、痛みに近い刺激を感じることであり、速度Vに依存する。
【0105】
一方、量感は、吐水断面積S(重さM)の大きな吐水が十分な力を持って当たることで、太い水流が当たっていると感じる感覚であり、吐水の着水面積が大きいほど量感があると感じる。これらの物理量を全て満足させることで、快適な洗浄が実現可能である。
【0106】
しかしながら、省エネルギーの観点から、現在主流となっている瞬間式熱交換器による温水生成では、洗浄水量が500ml/min以下になる。そのため、これらの物理量を全て満足させることは困難である。そこで、これらの物理量を全て満足させるため、吐水群の生成を検討した。
【0107】
図10には、脈動推移の速度波形と生成される吐水群の形状の一例を示す。なお、その関係は一例であり、速度域の違いなどで、必ずしもこの関係で生成されるものではない。[I]の速い吐水群は、速度の立ちあがり勾配を追付き曲線の勾配よりも緩やかにすることで、追付く量を少なくした吐水群であり、速度は速いが洗浄水量が少ない。すなわち、刺激感はあるが、量感の少ない吐水群が生成される。
【0108】
[II]の大きい吐水群は、速度の立ち上がり勾配を追付き曲線の勾配に近くすることで、徐々に追付くことでまとまる吐水群である。この場合、速度は減速するので、刺激感はあまりないが、洗浄水量が多く、衝撃力も大きい吐水群が生成される。
【0109】
[III]の分散した吐水群は、速度の立ち上がり勾配を追付き曲線の勾配よりも急にすることで、遅い速度と速い速度との速度差が大きい状態で追付かせ、速い速度の吐水が先にある遅い速度の吐水を弾き飛ばすように吐水を分散させる吐水群である。この場合、見かけの吐水断面積が大きくなることで量感の多い吐水群が生成される。以上のように、異なる脈動流の生成によって、異なる種類の吐水群で異なる特徴を持った吐水を生成することができる。
【0110】
すなわち、異なる脈動流によって異なる形状と特徴を有する吐水群を生成することができる。しかしながら、一方で、刺激感や量感にかかわる物理量のいずれかがかけることになっていた。
【0111】
そこで、この種類の異なる吐水群を、意図的な繰返し吐水に基づく振動に人の知覚が追従できなくなる約5Hz以上の不感帯周波数域内において、少なくとも1回ずつ人体局部に着水させることで、それぞれの吐水が独立して、それぞれ物理量、感覚を作りだすが、それらが不感帯周波数域内で着水するため、全ての物理量を備える、すなわち、刺激感と量感がある吐水として感じさせることができる。
【0112】
つまり、人が意図的な繰返し吐水と知覚できない約5Hz以上の不感帯周波数域内において、異なる吐水群を少なくとも1回ずつ人体局部に着水させるようにした。この場合、異なる吐水群は、独自の物理量、感覚をそれぞれ独立して作り出すが、異なる吐水群は不感帯周波数域内において着水するため、全ての物理量を備える、すなわち、刺激感と量感とを備えた吐水がされていると感じさせることができる。
【0113】
以上のように、吐水群の大きさや、速さ、追付き量を変えることにより、異なる物理量の吐水群を形成して、感覚の異なる吐水群を生成する。そして、この様な吐水群を独立させながら、短時間に人体局部に着水させることで、複数の感覚を備える吐水を実現している。
【0114】
ここで、その組合せの例について例示をする。図11には、吐水群の組合せの例の模式図を示している。図11(a)には、t1の時に「大きな吐水群」が、t2の時に「速い吐水群」が交互に生成し、独立して人体局部に着水させる様子を示している。
【0115】
このような吐水では、まず、吐水の追付く量を多くすることで、「大きな吐水群」が生成される。この場合(図11(a)のt1の場合)、速い速度の部分は追付くことで減衰し、速度が遅くなるので、刺激感は乏しくなる。しかしながら、吐水群の吐水断面積の大きさが大きくなり、ある程度の面積を持ち、かつ衝撃力が大きくなっているので、量感を感じさせることができる。
【0116】
また、図11(a)のt2の場合は、「速い吐水群」は、あとから追付く量を少なくすることで、吐水群の吐水断面積の大きさは小さいものの、吐水の速度の減速がない分、刺激感を維持した吐水とすることができる。そのため、刺激感を感じさせることができる。
【0117】
この2種類の吐水群を不感帯周波数域内(5Hz以上)でそれぞれを少なくとも1回ずつ着水させることで、刺激感と量感とを兼ね備えた吐水と感じさせることができる。
【0118】
図11(b)には、「分散した吐水群」と、「大きな吐水群」が交互に生成される様子を示している。この場合、「分散した吐水群」により非常に高い量感が得られる。その上、あとから、追付く量の多い「大きな吐水群」が生成されるので、衝撃力を十分もった吐水群を人体局部に当てることができる。そのため、体積を持ちある程度の速度を持つので、吐水の重さを感じさせることができる。なお、この場合、「大きな吐水群」は、「分散した吐水群」よりも速い速度で人体局部に当たるので、「分散した吐水群」よりも刺激感を与える吐水となる。そのため、「分散した吐水群」と「大きな吐水群」とによっても、刺激感と量感とを兼ね備えた吐水と感じさせることができる。
【0119】
図11(c)には、分散した吐水群と速い吐水群が交互に生成されているようすを示している。分散した吐水群で大きな量感を得るとともに、速い吐水群で刺激感を感じさせることができる。なお、これらの吐水群は、3つが組み合わさって生成されてもよく、それによって、非常に量感を高く、かつ刺激感の吐水が実現できる。
【0120】
すなわち、吐水群は、図7において例示をした形態だけではなく、図11(a)〜(c)に例示をした形態であってもよい。また、図11(a)〜(c)に例示をした3つの形態が組み合わさって形成されるようにしてもよい。「速い吐水群」や、「大きな吐水群」や、「分散した吐水群」等の異なる物理量の吐水群を組み合わせるようにすれば、非常に高い量感と刺激感を有する吐水をさせることができる。
【0121】
また、この場合、吐水群が形成される順番は例示をした以外の順番でも良いし、毎回順番が変わっても良い。また、吐水群が人体局部に着水するタイミングもかならずしも規則的である必要はなく、その間隔が異なっていてもよい。この場合、例えば、あらかじめ、脈動周期が変化するような周波数のテーブルを用意しておき、不感帯周波数域内において、周波数を変動させてもよい。また、不感帯周波数域内においてランダムに変動させてもよい。また、散発的に脈動を発生させてもよい。
【0122】
このように、本実施の形態においては、異なる吐水群により異なる感覚を生成し、不感帯周波数域内で複数の吐水群を当てて、異なる感覚をそれぞれの吐水群で生成することができる。すなわち、異なる物理量の吐水群を形成し、不感帯周波数域内において複数の吐水群を個別的に人体局部に当てることで、それぞれの吐水群により異なる感覚を感じさせることができる。
【0123】
なお、これらは、吐水群の一例であり、組合せも一例にすぎない。この場合、異なる吐水群により、異なる感覚を作り、足らない感覚、物理量を補うことで高い洗浄感を実現させる点が重要である。すなわち、異なる吐水群により異なる感覚を作りだすことで足らない感覚や物理量を補って、高い洗浄感を感じさせることができればよい。
【0124】
図12は、洗浄水の圧力変動の様子を例示するためのグラフ図である。
なお、図12(a)は、図3に対応するものであり、圧力波形を実測したものである。この場合、洗浄水の圧力は、吐水口401もしくは402、または、これらに連通する洗浄水渦室301もしくは302において測定した。つまり、本願明細書において「圧力」とは、吐水孔401もしくは402、または、これらに連通する洗浄水渦室301もしくは302において測定された洗浄水の圧力、すなわち洗浄ノズル82から吐出される直前の洗浄水の圧力をいうものとする。また、圧力計としては応答性が高いものを用い、高いサンプリング周期で測定するようにした。また、図12(b)は、図5に対応するものであり、脈動発生コイル74dに印加されたパルス状の電圧の波形を表したものである。
図13は、電圧印加のタイミング、プランジャの動作、圧力波形、吐水された洗浄水の状態を例示するための模式図である。なお、「吐水された洗浄水の状態」欄における上段の図は吐水直後の状態を表し、下段の図は人体局部に着水する直前の状態を表している。また、図中のa、b、c、d、eは、圧力a、b、c、d、eの場合にそれぞれ吐水された洗浄水を表している。
【0125】
図13[I]に示すように、給水圧近傍からの積極的な加圧により高い圧力の領域を形成し、高い圧力の領域において「吐水断面積が小さく速度の速い吐水群」の生成が行われるようにしている。高い圧力の領域においては速度を速くすることができるので、人体局部に到達するまでの時間を短くすることができる。そのため、先に吐水された洗浄水に後から吐水された洗浄水が追い付くことが抑制される。その結果、「吐水断面積が小さく速度の速い吐水群」の生成が容易となる。
【0126】
この場合、ON時間をT1として図示しない脈動発生コイル74dに電圧を印加すると脈動発生コイル74dに電流が流れるので、脈動発生コイル74dが励磁されてプランジャ74cが磁化される。そして、プランジャ74cが磁化されると、プランジャ74cは脈動発生コイル74dの側、すなわち下流側へ引き付けられる。この下流側への引き付けによって洗浄水が加圧され、給水圧(例えば、0.110MPa程度)近傍の圧力aから最も高い圧力bにまで上昇する。
すなわち、図12に示すように、ON時間をT1として脈動発生コイル74dに電圧を印加すると、洗浄水の圧力は給水圧近傍の圧力P3から最も高い圧力P4にまで上昇する。この際、圧力が変動すると速度も対応するようにして変動する。
【0127】
ここで、前述したように、圧力P3(圧力a)に対応する速度V3と、圧力P4(圧力b)に対応する速度V4との間における速度の立ち上がり勾配部分においては、全体の速度が速い。
そのため、図13[I]の「吐水された洗浄水の状態」欄に示すように、先に速度V3で吐水された洗浄水aに、後から速度V4で吐水された洗浄水bが追いつきにくい。その結果、速度V3で吐水された洗浄水aと、速度V4で吐水された洗浄水bとがほとんど合体せず、吐水断面積の小さな吐水群として人体局部に着水することになる。この場合、速度V3、速度V4が速いので、吐水断面積が小さく速度の速い吐水群が生成されることになる。
【0128】
図13[II]に示すように、ON時間T1の後、電圧印加を停止すると、復帰スプリング74fの付勢力によってプランジャ74cが原位置に復帰する。そのため、洗浄水の圧力は、圧力bから圧力cへと低下する。
この場合、圧力bにおいて先に吐水された洗浄水の速度は、圧力cにおいて後から吐水された洗浄水の速度よりも速い。
そのため、図13[II]の「吐水された洗浄水の状態」欄に示すように、後から吐水された洗浄水が追い付くことができず、それぞれが人体局部に着水することになる。この場合、図13[I]の場合と比べて洗浄水の速度、量が少なくなるので、刺激感と量感とを高めることに対する寄与が少なくなる。
【0129】
図13[III]に示すように、給水圧よりも低い圧力の領域にある時に「吐水断面積が大きく速度の遅い吐水群」の生成が開始される。すなわち、圧力cにおいて吐水が開始される。
この場合、図13[II]に例示をしたように、復帰スプリング74fの付勢力によってプランジャ74cが原位置に復帰する際に洗浄水が引き込まれることで、圧力cが給水圧よりも低くなる。そのため、給水圧よりも低い圧力の領域を容易に形成することができる。給水圧よりも低い圧力の領域においては速度を遅くすることができるので、人体局部に到達するまでの時間を長くすることができる。そのため、先に吐水された洗浄水に後から吐水された洗浄水が追い付く量を多くすることができるので、「吐水断面積が大きく速度の遅い吐水群」の生成が容易となる。
【0130】
また、図13[IV]に示すように、「吐水断面積が大きく速度の遅い吐水群」の生成が行われる工程の後半において、ON時間をT3として脈動発生コイル74dに電圧を印加する。ON時間をT3として脈動発生コイル74dに電圧を印加した場合においても、プランジャ74cが引き付けられることで洗浄水が加圧され、圧力が上昇する。ただし、圧力が復帰途中であることと、T3の時間がT1よりも短いことにより、圧力は圧力bまでは高まらず、給水圧よりも少し高い第2のピークである圧力dまで上昇する。
すなわち、図12に示すように、ON時間をT3として脈動発生コイル74dに電圧を印加すると、洗浄水の圧力は圧力P4までは高まらず、給水圧よりも少し高い第2のピークである圧力P2まで上昇する。
【0131】
ここで、前述したように、圧力P1(圧力c)に対応する速度V1と、圧力P2(圧力d)に対応する速度V2との間における速度の立ち上がり勾配部分においては、全体の速度が遅い。また、速度V2は速度V1より速度が速い。
そのため、図13[III]、[IV]の「吐水された洗浄水の状態」欄に示すように、先に速度V1で吐水された洗浄水cに、後から速度V2で吐水された洗浄水dが追いつくことができる。その結果、速度V1で吐水された洗浄水cと、速度V2で吐水された洗浄水dとが合体し、吐水断面積の大きな吐水群となる。この場合、速度V1、速度V2は、速度V3、速度V4より速度が遅い。そのため、吐水断面積が大きく、かつ速度の遅い吐水群が生成されることになる。
【0132】
次に、図13[V]に示すように、ON時間T3の後、電圧印加を停止すると、復帰スプリング74fの付勢力によってプランジャ74cが原位置に復帰する。この場合、ON時間T3におけるプランジャ74cの引き付け量が少ないので、復帰スプリング74fの付勢力による移動量も少なくなる。そのため、ほぼ原位置近傍で静止する様な状態となる。 前述したように、圧力dは給水圧よりも少し高い程度であり、圧力eは給水圧程度であるため、この領域の圧力は給水圧近傍に維持されることになる。
【0133】
この場合、圧力dにおいて先に吐水された洗浄水dの速度と、圧力eにおいて後から吐水された洗浄水eの速度とはほぼ同等となる。
そのため、図13[V]の「吐水された洗浄水の状態」欄に示すように、後から吐水された洗浄水eが追い付くことができず、それぞれが人体局部に着水することになる。
【0134】
ここで、OFF時間T4を設けることで、洗浄水c〜洗浄水dと、洗浄水a〜洗浄水bと、の間に十分な時間の開きを設けることができる。そのため、洗浄水c〜洗浄水dにより生成された「吐水断面積が大きく速度の遅い吐水群」と、洗浄水a〜洗浄水bにより生成された「吐水断面積が小さく速度の速い吐水群」とを、互いに干渉することなく、人体局部に異なる速度をもって独立して着水させることができる。
このことは、1つの周期の中で異なる吐水群を均等なタイミングでつくることに繋がるので、不感帯周波数域よりも低い周波数においても断続感の少ない快適な洗浄を実現することが可能となる。また、それぞれを不感帯周波数域内で着水させるようにすれば、刺激感と量感とを備えた吐水がされていると感じさせることもできる。
【0135】
また、給水圧近傍からの積極的な加圧を行うことで圧力b(圧力P4)をより高めるようにすれば、その後に形成される圧力c(圧力P1)をより低くすることができる。そのため、前述した「給水圧よりも低い圧力の領域」の形成を容易とすることができる。
また、圧力が給水圧へと復帰する際に積極的な加圧を行うようにすれば、迅速、かつ安定的に給水圧近傍の圧力を得ることができる。
【0136】
次に、第2の実施形態に係る衛生洗浄装置について例示をする。
図14は、蓄圧部が設けられている場合を例示するための模式図である。なお、前述したものと同様の構成要素には同じ符号を付し、それらの説明は省略する。
本実施形態の脈動発生ユニット70は、脈動発生機器74と蓄圧部(蓄圧機)75a、86aとを有する。図14に示すように、脈動発生機器74と流量調節兼流路切替弁81とは蓄圧部75aで接続されている。また、流量調節兼流路切替弁81と洗浄ノズル82とは蓄圧部86aで接続されている。
【0137】
蓄圧部75a、86aは、水圧を受けると弾性変形するものとすることができる。例えば、樹脂やゴムなどから形成されたチューブなどとすることができる。
水圧を受けて蓄圧部75a、86aに蓄えられた弾性エネルギーは、洗浄水の加圧を補助するために利用することができる。特に、圧力の低い領域においては洗浄水の加圧を効果的に行うことができる。例えば、図14の「B」に示す領域においては洗浄水の加圧を効果的に行うことができる。
【0138】
この場合、蓄圧部75a、86aの加圧作用を利用すれば、「B」に示す領域における電圧印加の時間を「C」に示すように短くすることができる。そのため、消費電力を低減させたり、脈動発生機器74の発熱量を低減させたりすることができる。
なお、図14に例示をしたものは、蓄圧部75aと蓄圧部86aとを設けるようにしたが、少なくともいずれかが設けられるようにすることができる。
また、蓄圧部75a、86aに蓄えられる弾性エネルギーは、材料のバネ定数などを適宜選択することで変更することができる。
【0139】
次に、第3の実施形態に係る衛生洗浄装置について例示をする。
図15は、残留電荷消費回路と蓄圧部とが設けられている場合を例示するための模式図である。なお、前述したものと同様の構成要素には同じ符号を付し、それらの説明は省略する。
本実施形態の脈動発生ユニット70は、脈動発生機器74と蓄圧部(蓄圧機)75a、86aとを有する。本実施の形態においては、図15中の「D」に示す領域に対応するタイミングにおいて、残留電荷消費回路78の作用により残留磁気を低減させることができる。また、「B」に示す領域においては、蓄圧部75a、86aの作用により洗浄水の加圧を効果的に行うことができる。また、「E1」、「E2」に示す領域においては、脈動発生機器74の作用により洗浄水の加圧を積極的に行うことができる。
また、変形例として、洗浄ノズル82の先端部(図4中の洗浄水渦室301、302)から空気を混入させることができるように、図示しない空気混入部を設けるようにしても良い。空気混入部は、強制的に空気を導入するエアポンプによって加圧された空気が、洗浄ノズル82の先端に連結されたチューブから混入されるようなものとすることができる。この場合、脈動発生機器によって生じる圧力変動(図6を参照)に合わせてエアポンプを制御することによって、加圧された空気が混入されるタイミングを合わせるようにすることができる。
【0140】
例えば、速度の遅い領域の立ちあがり勾配の範囲において空気が混入されるように、脈動発生機器に加わる電圧波形に基づいて、エアポンプを同期制御するようにすることができる。これによって、大きい吐水群が生成されるタイミングにおいて空気が混入されると、吐水群は分散されて、広範囲に広がる。つまり、空気によって見かけの吐水断面積が増大し、結果、量感が高くなる。
【0141】
一方、速度の速い領域においては、空気を混入させないようにすれば、速い速度の洗浄水が分散されることなく吐水され、速度を維持したまま人体局部に着水する。これによっても、より量感の高い状態で、刺激感と量感を両立させることができる。なお、空気混入部を洗浄ノズル82の先端に設けているため、空気を効率よく混入させることが可能となる。また、速度の速い領域では必要以上に空気が混入しないため、空気のダンパー効果によって刺激感が減衰することを防ぐこともできる。
【0142】
なお、空気混入部の配設位置は、洗浄ノズル82の先端に限ったものではなく、洗浄ノズル82の上流側の配管に空気が混入できるように設けてもよい。また、空気混入部は、必ずしも強制混入できるものである必要はなく、自然吸入を用いたものであっても良い。なお、自然吸入を用いる場合には、洗浄水内に気泡として空気を混入させることになる。洗浄水内に気泡として空気を混入させれば、吐水群の体積を増大させることが可能となる。その結果、量感をより高めた状態で、刺激感と量感を両立させることが可能となる。
【0143】
以上例示をしたように、先に吐水された洗浄水に後から吐水された洗浄水が追い付く量を異ならせることで、「吐水断面積が大きく速度の遅い吐水群」と「吐水断面積が小さく速度の速い吐水群」とを生成するようにしている。
すなわち、制御部10は、第1の吐水工程(「吐水断面積が大きく速度の遅い吐水群」を生成する工程)において第1の制御と、第2の吐水工程(「吐水断面積が小さく速度の速い吐水群」を生成する工程)において第2の制御と、を実行し、第1の吐水工程による洗浄水の吐水と、第2の吐水工程による洗浄水の吐水と、が同一の吐水孔から行なわれ、第1の吐水工程においては、吐水孔から所定の位置において、先に吐水された洗浄水が後から吐水された洗浄水に追いつかれる追付き量が、第2の吐水工程の場合よりも多くなるように吐水時の初速が第2の吐水工程より低くされ、第2の吐水工程においては、吐水孔から所定の位置において、先に吐水された洗浄水が後から吐水された洗浄水に追いつかれる追付き量が、第1の吐水工程の場合よりも少なくなるように吐水時の初速が第1の吐水工程より高くされ、第1の吐水工程と、第2の吐水工程と、が交互に実行されることで第1の吐水工程による洗浄水の吐水と第2の吐水工程による洗浄水の吐水が同一の吐水孔から交互に吐水されるように構成されている。
【0144】
そのため、「吐水断面積が大きく速度の遅い吐水群」により量感を感じさせることができる。また、「吐水断面積が小さく速度の速い吐水群」により刺激感を感じさせることができる。
その結果、限られた水量であっても、多くの水量で洗浄されているような量感と刺激感とを感じさせることができる快適性の高い衛生洗浄装置を実現することができる。
この場合、人が意図的な繰返し吐水と知覚できない約5Hz以上の不感帯周波数域内において、前述した「異なる吐水群」を少なくとも1回ずつ人体局部に着水させるようにすれば、刺激感と量感とを備えた吐水がされていると感じさせることができる。
【0145】
また、第1の吐水工程においては、給水圧より低い圧力領域を形成し、給水圧より低い圧力領域で洗浄水を吐水させることで吐水時の初速を下げて、追付き量を増加させ、第2の吐水工程においては、給水圧より高い圧力領域で洗浄水を吐水させることで吐水時の初速を第1の吐水工程の場合より高めるように構成されている。
【0146】
また、前記加圧機は単一の加圧部を有するものであって、制御部10は、前記第1の吐水工程において、加圧機による第1の加圧を行い、前記第2の吐水工程において、加圧機による第2の加圧を行うようになっている。この様にすれば、1つの加圧部を有する脈動発生機器74により「吐水断面積が大きく速度の遅い吐水群」と「吐水断面積が小さく速度の速い吐水群」とを生成することができる。そのため、脈動発生機器74の構造を一層簡単にすることができる。また、1つの加圧部を有する脈動発生機器74を用いて給水圧より少なくとも低い圧力領域で前記第1の加圧を行い、給水圧より少なくとも高い圧力領域で第2の加圧を行うという簡単な制御構成で吐水時の初速を適切な値に設定することができる。すなわち、第1の加圧による吐水と第2の加圧による吐水とにおける吐水時の初速にメリハリのある速度差を設定することができる。
【0147】
また、「吐水断面積が大きく速度の遅い吐水群」を生成する制御と、「吐水断面積が小さく速度の速い吐水群」を生成する制御との間に「所定の待ち時間」を設けている。すなわち、OFF時間T4を設けている。そのため、速度V2で吐水された洗浄水と、速度V4で吐水された洗浄水と、の間に十分な時間の開きを設けることができる。その結果、「異なる吐水群」を、互いに干渉することなく、人体局部に異なる速度をもって独立して着水させることができる。このことは、1つの周期の中で異なる吐水群を均等なタイミングでつくることに繋がるので、不感帯周波数域よりも低い周波数においても断続感の少ない快適な洗浄を実現することが可能となる。また、それぞれを不感帯周波数域内で着水させるようにすれば、刺激感と量感とを備えた吐水がされていると感じさせることもできる。
【0148】
また、給水圧よりも低い圧力の領域にある時に「吐水断面積が大きく速度の遅い吐水群」の生成が開始されるようにしている。そのため、速度を遅くすることができるので、先に吐水された洗浄水に後から吐水された洗浄水が追い付く量を多くすることができる。その結果、「吐水断面積が大きく速度の遅い吐水群」の生成が容易となる。
また、ボトム速度V1から戻る際(圧力が給水圧へと復帰する際)の反動により形成された給水圧よりも高い領域をさらに利用することで、「吐水断面積が大きく速度の遅い吐水群」の生成のための吐水の時間を長くすることができる。そのため、「吐水断面積が大きく速度の遅い吐水群」の大きさをさらに大きくすることができる。
【0149】
一方、給水圧近傍からの積極的な加圧により高い圧力の領域を形成し、高い圧力の領域において「吐水断面積が小さく速度の速い吐水群」の生成が行われるようにしている。そのため、速度を速くすることができるので、先に吐水された洗浄水に後から吐水された洗浄水が追い付くことを抑制することができる。その結果、「吐水断面積が小さく速度の速い吐水群」の生成が容易となる。
【0150】
また、給水圧近傍からの積極的な加圧を行うことで圧力P4をより高め、その後に形成される圧力P1をより低くするようにしている。そのため、前述した「給水圧よりも低い圧力の領域」の形成を容易とすることができる。
また、圧力が給水圧へと復帰する際に積極的な加圧を行うようにしている。そのため、迅速、かつ安定的に給水圧近傍の圧力を得ることができる。
【0151】
脈動発生機器74と、洗浄ノズル82と、の間に設けられた洗浄水からの圧力を蓄圧する蓄圧部をさらに備え、蓄圧部は、前記第2の吐水工程において洗浄水からの圧力を蓄圧し、前記第1の吐水工程において蓄圧された圧力を洗浄水に付与するようにしている。この場合、第2の吐水工程において、給水圧より少なくとも高い圧力領域で洗浄水を吐水させる第2の加圧を行い、この第2加圧によって蓄圧部に洗浄水からの圧力を蓄圧し、給水圧より洗浄水の圧力が低下した状態において蓄圧部に蓄圧された圧力が洗浄水に付与されるようにすることができる。
この様にすれば、第2の吐水工程において「吐水断面積が小さく速度の速い吐水群」を生成する際の高い圧力の一部を蓄圧し、「吐水断面積が大きく速度の遅い吐水群」を生成する際に蓄圧された圧力を利用するようにすることができる。その結果、「吐水断面積が大きく速度の遅い吐水群」を確実かつ効率的に生成することができる。
【0152】
蓄圧部は、洗浄水圧が給水圧よりも低くなった際に蓄圧された圧力を洗浄水に付与するようにすることができる。この様な蓄圧部は材料のバネ定数などを適宜選択することで形成することができる。この様な蓄圧部を設けるようにすれば、より低い洗浄水圧において蓄圧された圧力を洗浄水に付与することができるので、より低い圧力、すなわち、より遅い速度において吐水を開始させることができる。そのため、追付き量を増加させることができるので、より大きな「吐水断面積が大きく速度の遅い吐水群」を生成することができる。
【0153】
また、蓄圧部は、脈動発生機器74と、洗浄ノズル82と、を接続する給水管路を弾性変形可能なホースとすることで形成されているものとすることができる。 このようにすれば、弾性変形可能なホースという簡単な構成により蓄圧部を形成することができる。
【0154】
また、第1の吐水工程において、給水圧より少なくとも低い圧力領域で洗浄水を吐水させる第1の加圧を行い、蓄圧部による圧力の付与が行われるとともに、第1の加圧が行われるようにすることができる。この様にすれば、蓄圧部による加圧と第1の加圧の双方で「吐水断面積が大きく速度の遅い吐水群」を生成することができるので、所定の大きさの「吐水断面積が大きく速度の遅い吐水群」をより確実に生成することができる。
【0155】
また、第1の加圧は、第1の吐水工程により吐水が行われる工程の後半において行われるようにすることができる。第1の加圧を工程の後半に行うことで、蓄圧部による加圧とのタイミングをずらすことができる。すなわち、蓄圧部による加圧と第1の加圧とを並列的ではなく直列的に行うようにすることができる。そのため、洗浄水の速度が上昇することを抑制することができ、速度が低い吐水をより長い時間行うことができる。その結果、所定の大きさの「吐水断面積が大きく速度の遅い吐水群」をより確実に生成することができる。
【0156】
また、加圧機による第1の加圧が行われる時間を加圧機による第2の加圧が行われる時間より短くなるように制御することができる。その様にすれば、第1の制御における加圧機による加圧時間を短くすることができるので、制御時間短縮による装置寿命の延命を図ることができる。
【0157】
また、洗浄ノズル82の内圧力が給水圧となった際に、前記待ち時間を終了させるようにすることができる。
そのようにすれば、待ち時間の後に行われる前記第2の吐水工程を圧力が安定した状態から開始させることができる。そのため、第2の吐水工程における加圧エネルギーを洗浄水の加速に効率よく使うことができるので、「吐水断面積が小さく速度の速い吐水群」の速度を確実に高めることができる。
【0158】
また、前記第1の吐水工程によって形成された第1の水塊による着水と、前記第2の吐水工程よって形成された第2の水塊による着水と、の相互の間隔が同じになるような待ち時間が設定されているようにすることができる。
そのようにすれば、「吐水断面積が大きく速度の遅い吐水群」と「吐水断面積が小さく速度の速い吐水群」とが人体局部へ着水する時間間隔が等しくなるので、より連続感を感じさせることができる。
【0159】
また、1つの加圧部を有する脈動発生機器74を用い、その動作タイミングを制御することで「異なる吐水群」を生成するようにしている。また、「異なる吐水群」の生成の条件が適正となるように制御している。そのため、衛生洗浄装置1の小型化、簡素化、低価格化などを図ることができる。
【0160】
次に、第4の実施形態に係る衛生洗浄装置について例示をする。
図16は、洗浄水の圧力変動および脈動発生機器に印加される電圧波形を示すタイミングチャートである。
また、図17は、吐水孔から吐出された直後の洗浄水の速度(初速)を示すタイミングチャートである。
なお、図16の上段は、洗浄水の圧力変動を例示するタイミングチャートである。また、図16の下段は、脈動発生機器に印加される電圧波形を例示するタイミングチャートである。
【0161】
前述したものと同様の構成要素には同じ符号を付し、それらの説明は省略する。
【0162】
本実施形態において、脈動発生機器74の脈動発生コイル74dに印加されるパルス状の電圧は、図16に表したように、1周期中において、ON時間の異なる2つの矩形波が組み合わさった電圧波形となっている。この制御によって起る吐水孔から吐出された直後の洗浄水の圧力変化および速度変化を、脈動発生機器74のプランジャ74cの動作に基いて例示をする。脈動発生機器74の脈動発生コイル74dには、図16に示す電圧波形の電圧が印加されている。
【0163】
ON時間をT1として、脈動発生機器74の脈動発生コイル74dに電圧を印加すると電流が流れるので、脈動発生コイル74dが励磁されてプランジャ74cが磁化される。そして、プランジャ74cが磁化されると、プランジャ74cは脈動発生コイル74dの側、すなわち下流側へ引き付けられる。
【0164】
この下流側への引き付けによって、復帰スプリング74fが圧縮されて弾性エネルギーを蓄えると同時に、洗浄水を加圧し、最も高い圧力P4に達する。その際、吐水孔401から吐水される洗浄水の速度は最も高くなる(V4)。すなわち、プランジャ74cが下流側へ引き付けられると、復帰スプリング74fが圧縮されて弾性エネルギーが蓄えられる。また、同時にプランジャ74cにより洗浄水が加圧される。なお、洗浄水の圧力が最も高い圧力P4に達した際には、吐水孔401から吐出される洗浄水の速度は最も高くなる(V4)。
【0165】
その後、T2において電圧が切れると脈動発生コイル74dの励磁が消えて、復帰スプリング74fの付勢力を受けて、原位置へ復帰する。すなわち、OFF時間をT2として電圧の印加を停止すると、脈動発生コイル74dの励磁が解かれるので復帰スプリング74fの付勢力によりプランジャ74cが原位置へ戻される。同時に圧力は低下し、最低圧力P1に達する。その際、吐水孔401から吐水される洗浄水の速度も低くなり、最も低い速度域V1まで下降する。
【0166】
その後、圧力は給水圧Pinまで復帰しようとし、速度も給水圧時の速度Vinまで復帰しようとする。この復帰のタイミングに、T1よりも短いON時間のT3の矩形波を加えることにより、脈動発生コイル74dを励磁させ、プランジャ74cを下流側へ引き付けることで、洗浄水を再度加圧する。すなわち、この復帰のタイミングにおいて、ON時間がT1よりも短いT3の矩形波電圧を脈動発生コイル74dに印加する。そして、脈動発生コイル74dを励磁し、プランジャ74cを下流側へ引き付けることで、洗浄水を再度加圧する。
【0167】
このとき、圧力が復帰途中であることと、T3の時間がT1よりも短いことにより、洗浄水は最高圧P4までは高まらないものの、給水圧よりも高い第2のピーク圧力P2まで達する。したがって、速度も給水圧時の速度よりも速い第2のピーク速度V2が現れることになる。また、第2のピーク速度V2と、再度プランジャが励磁されるタイミングにおける速度V3までの間には、入水圧時の速度Vin付近で吐水される期間が一定時間生じることになる。
【0168】
ここで、本実施形態に係る衛生洗浄装置では、図16の「F1」に示す領域(圧力P1と圧力P2との間)における圧力の立ち上がり勾配すなわち単位時間あたりの洗浄水の圧力の増加量は、図16の「F2」に示す領域(圧力P3と圧力P4との間)における圧力の立ち上がり勾配すなわち単位時間あたりの洗浄水の圧力の増加量よりも小さい。言い換えれば、図16の「F2」に示す領域における単位時間あたりの洗浄水の圧力の増加量は、図16の「F1」に示す領域における単位時間あたりの洗浄水の圧力の増加量よりも大きい。
【0169】
あるいは、図17の「G1」に示す領域(速度V1と速度V2との間)における速度(初速)の立ち上がり勾配すなわち単位時間あたりの洗浄水の速度(初速)の増加量は、図17の「G2」に示す領域(速度V3と速度V4との間)における速度(初速)の立ち上がり勾配すなわち単位時間あたりの洗浄水の速度(初速)の増加量よりも小さい。言い換えれば、図17の「G2」に示す領域における単位時間あたりの洗浄水の速度(初速)の増加量は、図17の「G1」に示す領域における単位時間あたりの洗浄水の速度(初速)の増加量よりも大きい。
【0170】
これによれば、図16の「F1」に示す領域においては、洗浄水の圧力を圧力P1から圧力P2へ比較的ゆっくり増加させることにより、吐水孔から吐水される洗浄水の速度(初速)は、速度V1から速度V2へ比較的ゆっくり増加する。そのため、所定位置において、後に吐水された洗浄水(例えば速度V2で吐水された洗浄水)が先に吐水された洗浄水(例えば速度V1で吐水された洗浄水)に追いつく追いつき量を、より大きくすることができる。そのため、量感を感じさせるための大きな吐水群をより大きく生成することができる。
【0171】
一方、図16の「F2」に示す領域においては、洗浄水の圧力を圧力P3から圧力P4へ比較的速く増加させることにより、吐水孔から吐水される洗浄水の速度(初速)は、速度V3から速度V4へ比較的速く増加する。そのため、水量は少ないながらも、比較的速い速度の吐水群を生成することができる。
【0172】
つまり、本実施形態では、量感を感じさせるための「吐水断面積が大きく速度の遅い吐水群」を生成する工程において、十分な追いつき量を確保することで吐水断面積をより大きくすることができる。また、刺激感を感じさせるための「吐水断面積が小さく速度の速い吐水群」を生成する工程において、水量は少ないながらも、比較的速い速度の吐水群を生成することができる。そのため、全体として使用水量を少なくしつつ、確実に量感と刺激感を両立させた快適性の高い洗浄を実現することができる。
【0173】
また、図17の「G2」に示す領域における洗浄水の速度(初速)の波形は、速度V2を基点として重ねられた追付き曲線(すなわち、速度V2を基準に求められた追付き曲線)に略沿っている。そのため、量感を感じさせるための「吐水断面積が大きく速度の遅い吐水群」を生成する工程において、吐水されたタイミングと吐水された速度がそれぞれ異なる洗浄水を所定の距離にある着水位置に同時に着水させることができる。これにより、水量は少ないながらも、多い水量で洗っているのと同じ感覚を与えることができる。つまり、使用水量を少なくしつつ、確実に量感を与えることができる。
【0174】
なお、本実施形態においても、図14および図15に関して前述した蓄圧部75a、86aと、脈動発生機器74と、を組み合わせることができる。これによれば、水圧を受けて蓄圧部75a、86aに蓄えられた弾性エネルギーを、洗浄水の加圧を補助するために利用することができる。特に、圧力の低い領域においては洗浄水の加圧を効果的に行うことができる。例えば、図16の「F1」の示す領域の前半部分においては、洗浄水の加圧を効果的に行うことができる。
【0175】
この場合、蓄圧部75a、86aの加圧作用を利用すれば、図16の「F1」の示す領域における電圧印加の時間T3を短くすることができる。そのため、消費電力を低減させたり、脈動発生機器74の発熱量を低減させたりすることができる。また、蓄圧部75a、86aの他の効果についても、図14および図15に関して前述した蓄圧部75a、86aの効果と同様の効果が得られる。
【0176】
次に、第5の実施形態に係る衛生洗浄装置について例示をする。
図18は、洗浄水の圧力変動および脈動発生機器に印加される電圧波形を示すタイミングチャートである。
また、図19は、吐水孔から吐出された直後の洗浄水の速度(初速)を示すタイミングチャートである。
なお、図18の上段は、洗浄水の圧力変動を例示するタイミングチャートである。また、図18の下段は、脈動発生機器に印加される電圧波形を例示するタイミングチャートである。
前述したものと同様の構成要素には同じ符号を付し、それらの説明は省略する。
【0177】
本実施形態においては、洗浄水の圧力が最低圧力P1から給水圧Pinまで復帰しようとし、速度が給水圧時の速度Vinまで復帰しようとするときには、矩形波電圧を脈動発生コイル74dには印加しない。すなわち、図16に表した時間T3の矩形波電圧に相当する電圧を印加しない。その他の脈動発生機器74の動作や、脈動発生機器74の脈動発生コイル74dに印加されるパルス状の電圧は、図16および図17に関して前述した実施形態に係る衛生洗浄装置と同様である。
【0178】
本実施形態では、洗浄水の圧力が最低圧力P1から給水圧Pinまで復帰しようとするタイミングにおいては電圧は印加されないが、洗浄水の圧力は、緩衝スプリング74eの付勢力および洗浄水の流入により、給水圧と同等あるいは給水圧を超えて第2のピーク圧力P2まで達する。したがって、速度も給水圧時と同等あるいは給水圧時よりも速い第2のピーク速度V2が現れることになる。また、第2のピーク速度V2と、再度プランジャ74cが励磁されるタイミング(速度がV3となった時点)との間には、入水圧時の速度Vin付近で吐水される期間が一定時間生じることになる。
【0179】
ここで、本実施形態に係る衛生洗浄装置では、図18の「F1」に示す領域(圧力P1と圧力P2との間)における圧力の立ち上がり勾配すなわち単位時間あたりの洗浄水の圧力の増加量は、図18の「F2」に示す領域(圧力P3と圧力P4との間)における圧力の立ち上がり勾配すなわち単位時間あたりの洗浄水の圧力の増加量よりも小さい。言い換えれば、図18の「F2」に示す領域における単位時間あたりの洗浄水の圧力の増加量は、図18の「F1」に示す領域における単位時間あたりの洗浄水の圧力の増加量よりも大きい。
【0180】
あるいは、図19の「G1」に示す領域(速度V1と速度V2との間)における速度(初速)の立ち上がり勾配すなわち単位時間あたりの洗浄水の速度(初速)の増加量は、図19の「G2」に示す領域(速度V3と速度V4との間)における速度(初速)の立ち上がり勾配すなわち単位時間あたりの洗浄水の速度(初速)の増加量よりも小さい。言い換えれば、図19の「G2」に示す領域における単位時間あたりの洗浄水の速度(初速)の増加量は、図19の「G1」に示す領域における単位時間あたりの洗浄水の速度(初速)の増加量よりも大きい。
【0181】
これによれば、図16および図17に関して前述したように、量感を感じさせるための「吐水断面積が大きく速度の遅い吐水群」を生成する工程において、十分な追いつき量を確保することで吐水断面積をより大きくすることができる。また、刺激感を感じさせるための「吐水断面積が小さく速度の速い吐水群」を生成する工程において、水量は少ないながらも、比較的速い速度の吐水群を生成することができる。そのため、全体として使用水量を少なくしつつ、確実に量感と刺激感を両立させた快適性の高い洗浄を実現することができる。
【0182】
また、図19の「G2」に示す領域における洗浄水の速度(初速)の波形は、速度V2を基点として重ねられた追付き曲線(すなわち、速度V2を基準に求められた追付き曲線)に略沿っている。そのため、量感を感じさせるための「吐水断面積が大きく速度の遅い吐水群」を生成する工程において、吐水されたタイミングと吐水された速度がそれぞれ異なる洗浄水を所定の距離にある着水位置に同時に着水させることができる。これにより、水量は少ないながらも、多い水量で洗っているのと同じ感覚を与えることができる。つまり、使用水量を少なくしつつ、確実に量感を与えることができる。
【0183】
なお、本実施形態においても、図14および図15に関して前述した蓄圧部75a、86aと、脈動発生機器74と、を組み合わせることができる。これによれば、水圧を受けて蓄圧部75a、86aに蓄えられた弾性エネルギーを、洗浄水の加圧を補助するために利用することができる。特に、圧力の低い領域においては洗浄水の加圧を効果的に行うことができる。例えば、図18の「F1」の示す領域の前半部分においては、洗浄水の加圧を効果的に行うことができる。また、蓄圧部75a、86aの他の効果についても、図14および図15に関して前述した蓄圧部75a、86aの効果と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0184】
1 衛生洗浄装置、10 制御部、50 入水側弁ユニット、60 熱交換ユニット、70 脈動発生ユニット、74 脈動発生機器、74a 脈動発生機器、74b シリンダ、74c プランジャ、74d 脈動発生コイル、75a 蓄圧部、80 洗浄ノズルユニット、82 洗浄ノズル、86a 蓄圧部、401 吐水孔、402 吐水孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水された洗浄水を人体に向けて吐水する衛生洗浄装置であって、
前記洗浄水を人体に向けて吐出させる吐水孔を有する洗浄ノズルと、
前記洗浄水を加圧して前記吐水孔から吐出させる加圧装置と、
を備え、
第1の時間幅を有する第1の吐水工程と、第2の時間幅を有する第2の吐水工程と、を実行する衛生洗浄装置であって、
前記第1の吐水工程においては、前記吐水孔から所定の位置において、前記第1の時間幅の間で後から吐出された洗浄水が、前記第1の吐水工程の初めに吐出された洗浄水に追いついて合体し、第1の水塊が形成されるように、前記加圧装置は、前記第1の時間幅の間で後から吐出される洗浄水の圧力を、前記第1の吐水工程の初めに吐出される洗浄水の圧力よりも高くし、
前記第2の吐水工程においては、前記吐水孔から所定の位置において、前記第2の時間幅の間で後から吐出された洗浄水が、前記第2の吐水工程の初めに吐出された洗浄水に追いついて合体し、第2の水塊が形成されるように、前記加圧装置は、前記第2の時間幅の間で後から吐出される洗浄水の圧力を、前記第2の吐水工程の初めに吐出される洗浄水の圧力よりも高くするものであり、
かつ、前記第1の水塊が前記第2の水塊よりも大きくなるように、前記加圧装置は、前記第1の吐水工程における洗浄水の圧力変化と、前記第2の吐水工程における洗浄水の圧力変化と、を異ならせるものであり、
かつ、前記第2の水塊が前記第1の水塊よりも速くなるように、前記加圧装置は、前記第1の吐水工程における洗浄水の最大圧力よりも前記前記第2の吐水工程における洗浄水の最大圧力を高くするものであって、
前記第1の吐水工程による吐水と前記第2の吐水工程による吐水とが前記吐水孔から交互に吐水され、
さらに、前記第1の吐水工程における単位時間当たりの前記洗浄水の圧力の増加量は、前記第2の吐水工程における単位時間当たりの前記洗浄水の圧力の増加量よりも小さいことを特徴とする衛生洗浄装置。
【請求項2】
前記所定の位置において、前記第2の水塊が前記第1の水塊に追いつかないように第1の吐水工程と第2の吐水工程との間に所定の待ち時間を設けることを特徴とする請求項1記載の衛生洗浄装置。
【請求項3】
前記所定の待ち時間において、前記洗浄水の圧力が減少することを特徴とする請求項2記載の衛生洗浄装置。
【請求項4】
前記第1の吐水工程の少なくとも一部において、給水圧よりも低い圧力領域で前記洗浄水を前記吐水孔から吐水させることを特徴とする請求項1記載の衛生洗浄装置。
【請求項5】
前記第2の吐水工程の少なくとも一部において、給水圧よりも高い圧力領域で前記洗浄水を前記吐水孔から吐水させることを特徴とする請求項4記載の衛生洗浄装置。
【請求項6】
前記第1の吐水工程において、前記第1の吐水工程の後半部分における前記単位時間当たりの洗浄水の圧力の増加量は、前記第1の吐水工程の前半部分における前記単位時間当たりの洗浄水の圧力の増加量よりも大きいことを特徴とする請求項1記載の衛生洗浄装置。
【請求項7】
前記加圧装置は、
前記洗浄水に圧力を付与する加圧機と、
前記加圧機と前記吐水孔との間に設けられ、前記洗浄水の圧力を蓄圧する蓄圧機と、
を有し、
前記第2の吐水工程において前記加圧機から前記洗浄水に付与される圧力の一部を前記蓄圧機に蓄圧し、前記蓄圧された圧力を前記第1の吐水工程において前記洗浄水に付与することを特徴とする請求項1記載の衛生洗浄装置。
【請求項8】
前記加圧装置は、
前記洗浄水に圧力を付与する加圧機と、
前記加圧機と前記吐水孔との間に設けられ、前記洗浄水の圧力を蓄圧する蓄圧機と、
を有し、
前記第1の吐水工程において、吐水開始時点では前記蓄圧機による前記圧力の付与が前記洗浄水に行われ、前記第1の吐水工程における前記第1の時間幅の後半に、前記加圧機は前記洗浄水に圧力を付与することを特徴とする請求項6または7に記載の衛生洗浄装置。
【請求項1】
給水された洗浄水を人体に向けて吐水する衛生洗浄装置であって、
前記洗浄水を人体に向けて吐出させる吐水孔を有する洗浄ノズルと、
前記洗浄水を加圧して前記吐水孔から吐出させる加圧装置と、
を備え、
第1の時間幅を有する第1の吐水工程と、第2の時間幅を有する第2の吐水工程と、を実行する衛生洗浄装置であって、
前記第1の吐水工程においては、前記吐水孔から所定の位置において、前記第1の時間幅の間で後から吐出された洗浄水が、前記第1の吐水工程の初めに吐出された洗浄水に追いついて合体し、第1の水塊が形成されるように、前記加圧装置は、前記第1の時間幅の間で後から吐出される洗浄水の圧力を、前記第1の吐水工程の初めに吐出される洗浄水の圧力よりも高くし、
前記第2の吐水工程においては、前記吐水孔から所定の位置において、前記第2の時間幅の間で後から吐出された洗浄水が、前記第2の吐水工程の初めに吐出された洗浄水に追いついて合体し、第2の水塊が形成されるように、前記加圧装置は、前記第2の時間幅の間で後から吐出される洗浄水の圧力を、前記第2の吐水工程の初めに吐出される洗浄水の圧力よりも高くするものであり、
かつ、前記第1の水塊が前記第2の水塊よりも大きくなるように、前記加圧装置は、前記第1の吐水工程における洗浄水の圧力変化と、前記第2の吐水工程における洗浄水の圧力変化と、を異ならせるものであり、
かつ、前記第2の水塊が前記第1の水塊よりも速くなるように、前記加圧装置は、前記第1の吐水工程における洗浄水の最大圧力よりも前記前記第2の吐水工程における洗浄水の最大圧力を高くするものであって、
前記第1の吐水工程による吐水と前記第2の吐水工程による吐水とが前記吐水孔から交互に吐水され、
さらに、前記第1の吐水工程における単位時間当たりの前記洗浄水の圧力の増加量は、前記第2の吐水工程における単位時間当たりの前記洗浄水の圧力の増加量よりも小さいことを特徴とする衛生洗浄装置。
【請求項2】
前記所定の位置において、前記第2の水塊が前記第1の水塊に追いつかないように第1の吐水工程と第2の吐水工程との間に所定の待ち時間を設けることを特徴とする請求項1記載の衛生洗浄装置。
【請求項3】
前記所定の待ち時間において、前記洗浄水の圧力が減少することを特徴とする請求項2記載の衛生洗浄装置。
【請求項4】
前記第1の吐水工程の少なくとも一部において、給水圧よりも低い圧力領域で前記洗浄水を前記吐水孔から吐水させることを特徴とする請求項1記載の衛生洗浄装置。
【請求項5】
前記第2の吐水工程の少なくとも一部において、給水圧よりも高い圧力領域で前記洗浄水を前記吐水孔から吐水させることを特徴とする請求項4記載の衛生洗浄装置。
【請求項6】
前記第1の吐水工程において、前記第1の吐水工程の後半部分における前記単位時間当たりの洗浄水の圧力の増加量は、前記第1の吐水工程の前半部分における前記単位時間当たりの洗浄水の圧力の増加量よりも大きいことを特徴とする請求項1記載の衛生洗浄装置。
【請求項7】
前記加圧装置は、
前記洗浄水に圧力を付与する加圧機と、
前記加圧機と前記吐水孔との間に設けられ、前記洗浄水の圧力を蓄圧する蓄圧機と、
を有し、
前記第2の吐水工程において前記加圧機から前記洗浄水に付与される圧力の一部を前記蓄圧機に蓄圧し、前記蓄圧された圧力を前記第1の吐水工程において前記洗浄水に付与することを特徴とする請求項1記載の衛生洗浄装置。
【請求項8】
前記加圧装置は、
前記洗浄水に圧力を付与する加圧機と、
前記加圧機と前記吐水孔との間に設けられ、前記洗浄水の圧力を蓄圧する蓄圧機と、
を有し、
前記第1の吐水工程において、吐水開始時点では前記蓄圧機による前記圧力の付与が前記洗浄水に行われ、前記第1の吐水工程における前記第1の時間幅の後半に、前記加圧機は前記洗浄水に圧力を付与することを特徴とする請求項6または7に記載の衛生洗浄装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図8】
【図12】
【図2】
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【図7】
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【図18】
【図19】
【図8】
【図12】
【公開番号】特開2011−21464(P2011−21464A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−24888(P2010−24888)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
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