説明

衛生洗浄装置

【課題】殺菌水の濃度を確保しつつ水の流量や水勢を確保し、洗浄ノズルをより効率的に殺菌することができる衛生洗浄装置を提供することを目的とする。
【解決手段】吐水口を有し、前記吐水口から水を噴射して人体局部を洗浄するノズルと、給水源から供給される水を前記ノズルに導く導水部と、前記導水部の途中に設けられ殺菌水を生成可能な殺菌水供給手段と、前記殺菌水供給手段を流れる水の流量を調整する流量調整手段と、前記導水部を流れる水の流動状態を変動させる流動変動手段と、前記流量調整手段を制御して前記殺菌水供給手段を流れる水の流量が最大流量よりも少ない状態で前記殺菌水供給手段で前記殺菌水を生成させるときは、前記流動変動手段を制御して前記導水部を流れる水の流動状態を変動させる制御を実行する制御部と、を備えたことを特徴とする衛生洗浄装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、一般的に、衛生洗浄装置に関し、具体的には洋式腰掛便器に腰掛けた使用者の「おしり」などを水で洗浄する衛生洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
局部洗浄用の洗浄ノズルは、その洗浄ノズルや温水タンクなどの所定の機能部品を取り付けるケーシングから少なくとも一部を外部に露出(進出)した状態で局部に洗浄水を噴射する。そのため、洗浄ノズルには汚水や汚物が付着するおそれがある。これに対して、局部洗浄を行う前や行った後において、洗浄ノズルに付着した汚水や汚物を洗い流し除去する衛生洗浄装置がある。これにより、洗浄ノズルは清潔に保たれている。
【0003】
しかしながら、洗浄ノズルに付着した汚水や汚物を洗い流した場合でも、トイレ室のような湿潤な環境においては、時間の経過とともに菌が洗浄ノズルに繁殖する場合がある。より具体的には、便器のボウル面などに発生する例えばピンクスライムなどと呼ばれるメチロバクテリウムや、黒かびなどの細菌が洗浄ノズルに付着し、その洗浄ノズルに菌が繁殖するおそれがある。そして、菌が繁殖することにより、例えばバイオフィルムなどと呼ばれるバクテリアおよびその分泌物の集まり(ぬめり、黒色汚れ)が形成されると、前述したような通常のノズル洗浄では、そのバイオフィルムを除去することが困難となる。
【0004】
これに対して、洗浄水を供給する流路に電解槽が接続され、その電解槽により生成された次亜塩素酸を含む水を定期的に供給することにより、バイオフィルムが形成されないように洗浄ノズルを殺菌する衛生洗浄装置が提案されている(特許文献1)。ここで、次亜塩素酸は、水道水中の塩素イオンを電気分解することにより生成されるが、水道水中の塩素イオンの濃度は、地域により異なっている。そのため、水道水中の塩素イオンの濃度がより低い場合であっても、洗浄ノズルを殺菌するために必要な次亜塩素酸の濃度を確保することが求められている。
【0005】
これに対して、次亜塩素酸を含む水を生成する電気分解装置および電気分解方法が提案されている(特許文献2)。特許文献2には、電流密度と塩素発生効率との関係が記載されており、電流密度が高いほど塩素発生効率が高くなったり、所定範囲内の電流密度において塩素発生効率が極大となるなどの記載がある。しかしながら、電流を上げて塩素発生効率を高めることにより、次亜塩素酸の濃度を確保しようとすると、電気分解槽の電極への負担が大きくなるという点において改善の余地がある。また、電極の寿命を考慮すると、電極への負担が大きくなることは、比較的小さい面積の電極を有する衛生洗浄装置にとってはあまり好ましくない。
【0006】
また、連続式電気分解槽で生成された殺菌水を殺菌水制御回路により適宜タイミングで殺菌水配管を経由して便器に供給し、便器内の細菌を殺菌する殺菌水供給機能付便器ユニットがある(特許文献3)。特許文献3には、連続式電気分解槽の電極間通路を流れる水の流量を調節することにより、殺菌水中の遊離塩素濃度を制御できることが記載されている。そのため、例えば、水道水中の塩素イオンの濃度がより低い場合であっても、供給する水の流量を低減することにより、洗浄ノズルを殺菌するために必要な次亜塩素酸の濃度を確保することができる。一方、水道水中の塩素イオンの濃度がより高い場合であっても、より高濃度の殺菌水を利用したい場合には、供給する水の流量を低減することにより対応することができる。
【0007】
しかしながら、供給する水の流量を低減させると、洗浄ノズルの洗浄を行うときの水の流量も低減してしまう。洗浄ノズルには、一般的に、複数の吐水口と、その複数の吐水口のそれぞれに対応する流路と、が設けられている。そのため、供給する水の流量を低減させた状態において、生成した殺菌水を全ての流路に通水すると、殺菌水の濃度を高めることはできるが、一方で、洗浄ノズルに付着した汚水や汚物を洗い流す力、すなわち汚水や汚物を洗浄ノズルから剥離させる力が不足するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3487447号公報
【特許文献2】国際公開第95/32922号パンフレット
【特許文献3】特開平9−144103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、殺菌水の濃度を確保しつつ水の流量や水勢を確保し、洗浄ノズルをより効率的に殺菌することができる衛生洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明は、吐水口を有し、前記吐水口から水を噴射して人体局部を洗浄するノズルと、給水源から供給される水を前記ノズルに導く導水部と、前記導水部の途中に設けられ殺菌水を生成可能な殺菌水供給手段と、前記殺菌水供給手段を流れる水の流量を調整する流量調整手段と、前記導水部を流れる水の流動状態を変動させる流動変動手段と、前記流量調整手段を制御して前記殺菌水供給手段を流れる水の流量が最大流量よりも少ない状態で前記殺菌水供給手段で前記殺菌水を生成させるときは、前記流動変動手段を制御して前記導水部を流れる水の流動状態を変動させる制御を実行する制御部と、を備えたことを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0011】
この衛生洗浄装置によれば、制御部は、流量調整手段を制御することにより電解槽に供給する水の流量を最大流量よりも少なくして殺菌水を生成した場合には、流動変動手段を制御して導水部を流れる水の流動状態を変動させる。これによれば、ノズルの表面や、導水部の内部には、非定常の流れが生ずる。そのため、ノズルの表面や、導水部の内壁に存在する汚れや細菌等を剥離させる力は、水の流動状態が変動しない場合よりも高くなる。これにより、殺菌水の濃度を確保しつつ、汚水や汚物をノズルから剥離させるために必要な水の流速や流量を確保することができる。つまり、ノズルをより効率的に殺菌することができる。
【0012】
また、第2の発明は、第1の発明において、前記給水源から供給される水を前記ノズルの吐水口に導く第1の流路と、前記給水源から供給される水を前記ノズルの表面に導く第2の流路と、前記給水源から供給される水が前記第1の流路に通水される状態と、前記給水源から供給される水が前記第2の流路に通水される状態と、を切り替え可能な流路切替手段と、をさらに備え、前記制御部は、前記流路切替手段を制御して前記第1および第2の流路のいずれか一方にのみに前記殺菌水を通水させることを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0013】
この衛生洗浄装置によれば、制御部は、流量調整手段を制御することにより殺菌水供給手段に供給する水の流量を最大流量よりも少なくして殺菌水を生成した場合には、流路切替手段を制御することにより第1の流路および第2の流路のいずれか一方にのみ殺菌水を通水することができる。これによれば、制御部は、殺菌水供給手段に供給する水の流量を少なくすることにより殺菌水の濃度を確保しつつ、汚水や汚物をノズルから剥離させる力(水勢)を確保することができる。そのため、ノズルをより効率的に殺菌することができる。また、これにより、使用者のノズルに対する清潔感を向上させることができる。
【0014】
また、第3の発明は、第1または第2の発明において、前記流動変動手段は、前記殺菌水供給手段よりも下流に設けられ、前記水の流れに脈動または加速を与える圧力変調装置であることを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0015】
この衛生洗浄装置によれば、圧力変調装置は、導水部内の水の流れに脈動または加速を与えることができる。これにより、圧力変調装置は、導水部内の水の流れに波状の流動を付与することができる。そのため、殺菌水の濃度を確保しつつ、汚水や汚物をノズルから剥離させる力を確保することができる。
【0016】
また、第4の発明は、第1〜第3のいずれか1つの発明において、前記殺菌水供給手段は、電解槽であることを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0017】
この衛生洗浄装置によれば、殺菌水供給手段は、電解槽である。そのため、電解槽に供給される水の流量を少なくすることにより、電解槽において生成される殺菌水の濃度をより効率的に高めることができる。
【0018】
また、第5の発明は、第4の発明において、前記電解槽に流入する水の塩素イオンの濃度を検出可能なイオン濃度検出手段をさらに備え、前記制御部は、前記イオン濃度検出手段により検出された前記塩素イオンの濃度が所定濃度以下の場合には、前記流量調整手段を制御して前記電解槽を流れる水の流量が最大流量よりも少ない状態で前記電解槽で前記殺菌水を生成させることを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0019】
例えば、電解槽において次亜塩素酸を生成する際には、原料となる水道水中の塩素イオンの濃度は、重要な要素の1つである。そのため、この衛生洗浄装置によれば、制御部は、電解槽に流入する水の塩素イオンの濃度に基づいて次亜塩素酸の濃度を高めるタイミングを図ることにより、より効率的に次亜塩素酸の濃度を高めることができる。
【0020】
また、第6の発明は、第1〜第5のいずれか1つの発明において、前記殺菌水供給手段よりも上流に設けられ、前記給水源から供給される水を加熱可能な加熱手段をさらに備え、前記制御部は、前記殺菌水供給手段で前記殺菌水を生成させるときには、前記加熱手段により前記水を加熱することを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0021】
この衛生洗浄装置によれば、制御部は、殺菌水供給手段で殺菌水を生成させるときには、加熱手段により水を加熱する。これによれば、殺菌水の洗浄力をより向上させることができる。また、殺菌水供給手段が電解槽である場合には、電解槽における電解効率が上がるため、電解槽は、次亜塩素酸の濃度をより高めることができる。
【0022】
また、第7の発明は、第1〜第6のいずれか1つの発明において、前記殺菌水供給手段よりも下流に設けられ、前記殺菌水に空気を混入し気泡を生成可能な気泡混入手段をさらに備えたことを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0023】
この衛生洗浄装置によれば、気泡混入手段は、殺菌水に空気を混入し、殺菌水の内部に気泡を生成することができる。これによれば、空気が混入された殺菌水の見かけ上の流量は、より多くなる。そのため、汚水や汚物をノズルから剥離させるために必要な水の流速や流量を確保することができる。これにより、ノズルの表面や、導水部の内壁に存在する汚れや細菌等を剥離させる力を確保することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の態様によれば、殺菌水の濃度を確保しつつ水の流量や水勢を確保し、洗浄ノズルをより効率的に殺菌することができる衛生洗浄装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態にかかる衛生洗浄装置を備えたトイレ装置を表す斜視模式図である。
【図2】本実施形態にかかる衛生洗浄装置の要部構成を表すブロック図である。
【図3】本実施形態の変形例にかかる衛生洗浄装置の水路系の要部構成を表すブロック図である。
【図4】本実施形態にかかる衛生洗浄装置の水路系の要部構成の具体例を例示するブロック図である。
【図5】本実施形態の電解槽ユニットの具体例を例示する断面模式図である。
【図6】本実施形態の圧力変調装置の内部構造を概略的に表す断面模式図である。
【図7】本実施形態のノズルユニットの具体例を例示する斜視模式図である。
【図8】本実施形態にかかる衛生洗浄装置の動作の具体例を例示するタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本発明の実施の形態にかかる衛生洗浄装置を備えたトイレ装置を表す斜視模式図である。
また、図2は、本実施形態にかかる衛生洗浄装置の要部構成を表すブロック図である。 また、図3は、本実施形態の変形例にかかる衛生洗浄装置の水路系の要部構成を表すブロック図である。
なお、図2は、水路系と電気系の要部構成を併せて表している。
【0027】
図1に表したトイレ装置は、洋式腰掛便器(以下説明の便宜上、単に「便器」と称する)800と、その上に設けられた衛生洗浄装置100と、を備える。衛生洗浄装置100は、ケーシング400と、便座200と、便蓋300と、を有する。便座200と便蓋300とは、ケーシング400に対して開閉自在にそれぞれ軸支されている。
【0028】
ケーシング400の内部には、便座200に座った使用者の「おしり」などの洗浄を実現する局部洗浄機能部などが内蔵されている。また、例えばケーシング400には、使用者が便座200に座ったことを検知する着座検知センサ404が設けられている。着座検知センサ404が便座200に座った使用者を検知している場合において、使用者が例えばリモコンなどの操作部500を操作すると、洗浄ノズル(以下説明の便宜上、単に「ノズル」と称する)473を便器800のボウル801内に進出させることができる。なお、図1に表した衛生洗浄装置100では、ノズル473がボウル801内に進出した状態を表している。
【0029】
ノズル473の先端部には、ひとつあるいは複数の吐水口474が設けられている。そして、ノズル473は、その先端部に設けられた吐水口474から水を噴射して、便座200に座った使用者の「おしり」などを洗浄することができる。なお、本願明細書において「水」という場合には、冷水のみならず、加熱されたお湯も含むものとする。
【0030】
より具体的に説明すると、本実施形態にかかる衛生洗浄装置100は、図2に表したように、水道や貯水タンクなどの給水源10から供給された水を導く導水部20を有する。導水部20の上流側には、電磁弁431が設けられている。電磁弁431は、開閉可能な電磁バルブであり、ケーシング400の内部に設けられた制御部405からの指令に基づいて水の供給を制御する。
【0031】
電磁弁431の下流には、温水ヒータ441が設けられている。温水ヒータ441は、供給された水を加熱し、所定の温水にする。なお、温水温度については、例えば、使用者が操作部500を操作することにより設定することができる。
温水ヒータ441の下流には、電解槽ユニット(殺菌水供給手段)450に流入する水の塩素イオンの濃度を検出可能なイオン濃度検出手段480が設けられている。イオン濃度検出手段480は、電解槽ユニット450にかかる電圧により水道水の水質(例えば、電解槽ユニット450に流入する水の電気伝導度など)を検知し、水道水中の塩素イオンの濃度を検出することができる。イオン濃度検出手段480は、検出した塩素イオンの濃度を検出信号として制御部405に送信することができる。
イオン濃度検出手段480の下流には、殺菌水を生成可能な電解槽ユニット450が設けられている。この電解槽ユニット450については、後に詳述する。
【0032】
電解槽ユニット450の下流には、圧力変調装置(流動変動手段)460が設けられている。この圧力変調装置460は、導水部20内の水の流れに脈動または加速を与え、ノズル473の吐水口474やノズル洗浄室478の吐水部479(図7参照)から吐水される水に脈動を与えることができる。つまり、圧力変調装置460は、導水部20内を流れる水の流動状態を変動させることができる。
圧力変調装置460の下流には、水勢(流量)の調整を行う流量切替弁(流量調整手段)471と、ノズル473やノズル洗浄室478への給水の開閉や切替を行う流路切替弁(流路切替手段)472と、が設けられている。なお、流量切替弁471および流路切替弁472は、図3に表した変形例のように、1つのユニットとして設けられていてもよい。
【0033】
さらに、圧力変調装置460の下流側の導水部20には、気泡混入手段490が接続されている。気泡混入手段490は、導水部20の内部を流れる水または殺菌水の水流のエジェクタ作用により、その水または殺菌水に空気を混入し気泡を生成することができる。空気の混入量は、例えば制御部405が気泡混入手段490の動作を制御することにより行われる。なお、気泡混入手段490が水または殺菌水に空気を混入する方法は、水流のエジェクタ作用を利用する方法だけに限定されるわけではなく、ポンプにより導水部20に空気を導入する方法でもよい。
【0034】
続いて、流量切替弁471および流路切替弁472の下流には、ノズル473およびノズル洗浄室478が設けられている。ノズル473は、ノズルモータ476からの駆動力を受け、便器800のボウル801内に進出したり後退することができる。つまり、ノズルモータ476は、制御部405からの指令に基づいてノズル473を進退させることができる。一方、ノズル洗浄室478は、その内部に設けられた吐水部479(図7参照)から殺菌水あるいは水を噴射することにより、ノズル473の外周表面(胴体)を殺菌あるいは洗浄することができる。
【0035】
ここで、流路切替弁472の下流には、流路切替弁472とノズル473とを接続する第1の流路21が設けられている。第1の流路21は、給水源10から供給される水や、電解槽ユニット450において生成される殺菌水をノズル473に導くことができる。また、流路切替弁472の下流には、流路切替弁472とノズル洗浄室478とを接続する第2の流路22が設けられている。第2の流路22は、給水源10から供給される水や、電解槽ユニット450において生成される殺菌水をノズル洗浄室478に導くことができる。すなわち、制御部405は、流路切替弁472を制御することにより、第1の流路21を通してノズル473の吐水口474に水や殺菌水を導いたり、第2の流路22を通してノズル洗浄室478の吐水部479に水や殺菌水を導くことができる。なお、図3に表したブロック図では、第1の流路は、「ビデ洗浄用」および「おしり洗浄用」の吐水口に通水できるように複数の流路を有する。
【0036】
また、制御部405は、電源回路401から電力を供給され、人体検知センサ403や、着座検知センサ404や、操作部500などからの信号に基づいて、電磁弁431や、温水ヒータ441や、電解槽ユニット450や、圧力変調装置460や、流量切替弁471や流路切替弁472や、ノズルモータ476や、気泡混入手段490の動作を制御することができる。
【0037】
なお、人体検知センサ403は、図1に表したように、ケーシング400の上面に形成された凹設部409に埋め込まれるように設けられ、便座200に近づいた使用者(人体)を検知することができる。また、便蓋300の後部には透過窓310が設けられている。そのため、便蓋300が閉じた状態において、人体検知センサ403は、透過窓310を介して使用者の存在を検知することができる。そして、例えば、人体検知センサ403が使用者を検知すると、制御部405は、人体検知センサ403の検知結果に基づいて便蓋300を自動的に開くことができる。
【0038】
また、ケーシング400には、便座200に座った使用者の「おしり」などに向けて温風を吹き付けて乾燥させる「温風乾燥機能」や「脱臭ユニット」や「室内暖房ユニット」などの各種の機構が適宜設けられていてもよい。この際、ケーシング400の側面には、脱臭ユニットからの排気口407及び室内暖房ユニットからの排出口408が適宜設けられる。ただし、本発明においては、衛生洗浄機能部やその他の付加機能部は必ずしも設けなくてもよい。
【0039】
図4は、本実施形態にかかる衛生洗浄装置の水路系の要部構成の具体例を例示するブロック図である。
また、図5は、本実施形態の電解槽ユニットの具体例を例示する断面模式図である。
また、図6は、本実施形態の圧力変調装置の内部構造を概略的に表す断面模式図である。
また、図7は、本実施形態のノズルユニットの具体例を例示する斜視模式図である。
【0040】
図4に表したように、給水源10から供給された水は、まず、分岐金具410に導かれる。分岐金具410に導かれた水は、連結ホース420および図示しない便器洗浄用のバルブユニットに分配される。但し、本実施形態にかかる衛生洗浄装置100を備えたトイレ装置は、いわゆる「水道直圧式」に限定されるわけではなく、いわゆる「ロータンク式」であってもよい。そのため、トイレ装置が「ロータンク式」である場合には、分岐金具410に導かれた水は、便器洗浄用のバルブユニットの代わりに、図示しないロータンクに導かれる。
【0041】
続いて、連結ホース420に供給された水は、バルブユニット430に導かれる。バルブユニット430は、電磁弁431と、調圧弁432と、入水サーミスタ433と、安全弁434と、水抜栓435と、を有する。調圧弁432は、給水圧が高い場合に、所定の圧力範囲に調整する役割を有する。入水サーミスタ433は、熱交換器ユニット440に導かれる水の温度を検知する。安全弁434は、導水部20の圧力が上昇した時に開いて、水を便器800のボウル801に排出する。安全弁434を設けることにより、例えば調圧弁432の故障などによりその2次側(下流側)の導水部20の圧力が上昇した場合でも、衛生洗浄装置100の内部に漏水が生ずることを防止できる。また、水抜栓435は、導水部20内の水が凍結するおそれがあるときなどに使用され、導水部20内の水を排出できる。なお、電磁弁431は、前述した如くである。
【0042】
続いて、バルブユニット430に供給された水は、熱交換器ユニット440に導かれる。熱交換器ユニット(加熱手段)440は、温水ヒータ441と、バキュームブレーカ442と、を有する。バキュームブレーカ442は、例えばバルブユニット430に負圧が発生した場合などにおいて、ノズル473から汚水が逆流することを防止する。あるいは、バキュームブレーカ442は、導水部20の水抜きの際に外部から空気を取り込んで、熱交換器ユニット440とノズルユニット470との間の導水部20の水抜きを促進させる。そして、バキュームブレーカ442からの水は、便器800のボウル801に排出される。
【0043】
続いて、熱交換器ユニット440に供給され、所定温度に加熱された水は、イオン濃度検出手段480を介して電解槽ユニット450に導かれる。電解槽ユニット450は、図1および図2に関して前述したように、殺菌水を生成することができる。ここで、本実施形態の電解槽ユニット450について、図面を参照しつつ説明する。
【0044】
電解槽ユニット450は、図5に表したように、その内部に陽極板451および陰極板452を有し、制御部405からの通電の制御によって、内部を流れる水道水を電気分解できる。ここで、水道水は、塩素イオンを含んでいる。この塩素イオンは、水源(例えば、地下水や、ダムの水や、河川などの水)に食塩(NaCl)や塩化カルシウム(CaCl)として含まれている。そのため、その塩素イオンを電気分解することにより次亜塩素酸が生成される。その結果、電解槽ユニット450において電気分解された水は、次亜塩素酸を含む液に変化する。
【0045】
次亜塩素酸は、殺菌成分として機能し、その次亜塩素酸を含む溶液すなわち殺菌水は、アンモニアなどによる汚れを効率的に除去あるいは分解したり、殺菌することができる。ここで、本願明細書において「殺菌水」とは、次亜塩素酸などの殺菌成分を水道水(単に「水」ともいう)よりも多く含む溶液をいうものとする。
【0046】
このように、熱交換器ユニット440から供給された水道水は、電解槽ユニット450において電気分解されて次亜塩素酸を含む溶液となり、圧力変調装置460を介してノズルユニット470に導かれる。
【0047】
ここで、本実施形態の圧力変調装置460について、図面を参照しつつ説明する。
圧力変調装置460は、図2に関して前述したように、導水部20内の水の流れに脈動または加速を与えることができる。ここで、本願明細書において「脈動」とは、圧力変調装置460により生ずる圧力の変動のことである。そのため、圧力変調装置460は、導水部20内の水の圧力を変動させる装置である。
【0048】
圧力変調装置460は、図6に表したように、導水部20に接続されるシリンダ461と、シリンダ461の内部に進退自在に設けられたプランジャ462と、プランジャ462の内部に設けられた逆止弁463と、励磁電圧を制御することでプランジャ462を進退させる脈動発生コイル464と、を有する。
【0049】
そして、プランジャ462の位置が、ノズル473の側(下流側)に変化した場合には、圧力変調装置460よりも下流側の水の圧力が増加し、ノズルとは反対の側(上流側)に変化した場合には、圧力変調装置460よりも下流側の水の圧力が減少するように逆止弁が配設されている。言い換えれば、プランジャ462の位置が、ノズル473の側(下流側)に変化した場合には、圧力変調装置460よりも上流側の水の圧力は減少し、ノズルとは反対の側(上流側)に変化した場合には、圧力変調装置460よりも上流側の水の圧力は増加する。
【0050】
そして、脈動発生コイル464の励磁を制御することにより、プランジャ462を上流側・下流側に進退させる。すなわち、導水部20内の水に脈動を付加する場合(導水部20内の水の圧力を変動させる場合)には、脈動発生コイル464に流す励磁電圧を制御することにより、プランジャ462をシリンダ461の軸方向(上流方向・下流方向)に進退させる。
【0051】
この場合、プランジャ462は、脈動発生コイル464の励磁により図示する原位置(プランジャ原位置)から下流側465に移動する。そして、コイルの励磁が消えると、復帰スプリング466の付勢力によって、原位置に復帰する。この際、緩衝スプリング467によってプランジャ462の復帰の動作が緩衝される。プランジャ462は、その内部にダックピル式の逆止弁463を有し、上流側への逆流を防止している。
【0052】
したがって、プランジャ462は、プランジャ原位置から下流側へ移動する際には、シリンダ461内の水を加圧して下流側の導水部20に押し流せるようになっている。言い換えれば、プランジャ462は、プランジャ原位置から下流側へ移動する際には、上流側の導水部20内の水を減圧してシリンダ461内に吸引することができる。この際、プランジャ原位置と、下流側に移動した位置とは常に一定であることから、プランジャ462が動作する際に下流側の導水部20に送られる洗浄水の量は一定となる。
【0053】
その後、原位置に復帰する際には、逆止弁463を経てシリンダ461内に洗浄水が流れ込む。そのため、次回のプランジャ462の下流側移動の際には、改めて、一定量の洗浄水が下流側の導水部20に送られることになる。
【0054】
ノズルユニット470は、図4に表したように、流量切替弁471と、流路切替弁472と、ノズル473と、を有する。本具体例では、流量切替弁471および流路切替弁472は、1つのユニットとして設けられている。そして、流路切替弁472は、電解槽ユニット450から圧力変調装置460を介して供給された殺菌水や水を第1の流路21を通してノズル473の吐水口474に導くことができる。あるいは、流路切替弁472は、電解槽ユニット450から圧力変調装置460を介して供給された殺菌水や水を第2の流路22を通してノズル洗浄室478の吐水部479(図7参照)に導くことができる。ここで、ノズルユニット470について、図面を参照しつつ説明する。
【0055】
本実施形態のノズルユニット470は、図7に表したように、基台としての取付台475と、取付台475に支持されたノズル473と、ノズル473を移動させるノズルモータ476と、を有する。ノズル473は、図7に表した矢印Aのように、ベルトなどの伝動部材477を介してノズルモータ476から伝達される駆動力により、取付台475に対して摺動自在に設けられている。すなわち、ノズル473は、ノズル473自身の軸方向(進退方向)に直進移動することができる。そして、ノズル473は、ケーシング400および取付台475から進退自在に移動できる。
【0056】
また、本実施形態のノズルユニット470には、ノズル洗浄室478が設けられている。ノズル洗浄室478は、取付台475に対して固定され、その内部には第2の流路22に接続された吐水部479を有する。そのため、ノズル洗浄室478は、吐水部479から殺菌水あるいは水を噴射することにより、ノズル473の外周表面(胴体)を殺菌あるいは洗浄することができる。すなわち、制御部405が電解槽ユニット450の陽極板451および陰極板452に通電することにより殺菌水を生成する場合には、ノズル473の胴体は、吐水部479から噴射される殺菌水により殺菌される。一方で、制御部405が電解槽ユニット450の陽極板451および陰極板452に通電しない場合には、ノズル473の胴体は、吐水部479から噴射される水により物理的に洗浄される。
【0057】
より具体的には、ノズル473がケーシング400に収納された状態において、ノズル473の吐水口474の部分はノズル洗浄室478の中にほぼ収容されている。そのため、ノズル洗浄室478は、その内部に設けられた吐水部479から殺菌水あるいは水を噴射することにより、収納された状態のノズル473の吐水口474の部分を殺菌あるいは洗浄することができる。また、ノズル洗浄室478は、ノズル473の進退時において吐水部479から水あるいは殺菌水を噴射することにより、吐水口474の部分だけではなく他の部分の外周表面を殺菌あるいは洗浄することができる。
【0058】
また、本実施形態のノズル473は、ノズル473がケーシング400に収納された状態において、ノズル473自身が有する吐水口474から殺菌水あるいは水を吐水することにより吐水口474の部分を殺菌あるいは洗浄することができる。さらに、ノズル473がケーシング400に収納された状態では、ノズル473の吐水口474の部分はノズル洗浄室478の中にほぼ収容されているため、ノズル473の吐水口474から吐水された殺菌水あるいは水は、ノズル洗浄室478の内壁により反射して吐水口474の部分にかかる。そのため、ノズル473の吐水口474の部分は、ノズル洗浄室478の内壁で反射した殺菌水あるいは水によっても殺菌あるいは洗浄される。
【0059】
ここで、ノズル473を効率的に殺菌するためには、電解槽ユニット450において生成される次亜塩素酸の濃度がより高いことがより好ましい。また、電解槽ユニット450において生成される次亜塩素酸の濃度をより高めることにより、使用者のノズル473に対する清潔感を向上させることができる。このとき、電解槽ユニット450に供給される水の流量をより少なくすると、電解槽ユニット450において生成される次亜塩素酸の濃度をより高めることができる。
【0060】
しかしながら、ノズル473を効率的に殺菌するために電解槽ユニット450において生成される次亜塩素酸の濃度をより高めようとすると、ノズル473に付着した汚水や汚物を洗い流す力、すなわち汚水や汚物をノズル473から剥離させる力が不足するおそれがある。つまり、電解槽ユニット450に供給する水の流量を少なくすると、次亜塩素酸の濃度を高めることはできるが、一方で、汚水や汚物をノズル473から剥離させる力が不足するおそれがある。
【0061】
これは、ノズルユニットが複数の吐水口や吐水部を有する場合において、より顕著となるときがある。より具体的には、本実施形態のノズルユニット470は、第1の流路21に接続された吐水口474と、第2の流路22に接続された吐水部479と、を有する。そこで、制御部405が、流路切替弁472を制御することにより、第1の流路21と第2の流路22との両方に電解槽ユニット450において生成された殺菌水を導くと、汚水や汚物をノズル473から剥離させる力(水勢)がより不足するおそれがある。つまり、ノズルユニットが複数の吐水口や吐水部を有する場合において、制御部が殺菌水を全ての流路に通水すると、汚水や汚物をノズルから剥離させる力が不足するおそれがある。
【0062】
これに対して、本実施形態にかかる衛生洗浄装置100では、制御部405は、流量切替弁471を制御することにより電解槽ユニット450に供給する水の流量を最大流量よりも少なくして殺菌水を生成した場合には、流路切替弁472を制御することにより第1の流路21および第2の流路22のいずれか一方にのみ殺菌水を通水することができる。ここで、本願明細書において「最大流量」とは、衛生洗浄装置100の動作中に導水部20あるいは第1の流路21あるいは第2の流路22を流れうる水の流量の最大値をいうものとする。これによれば、制御部405は、電解槽ユニット450に供給する水の流量を少なくすることにより次亜塩素酸の濃度を確保しつつ、汚水や汚物をノズルから剥離させる力(水勢)を確保することができる。そのため、ノズル473をより効率的に殺菌することができる。また、これにより、使用者のノズル473に対する清潔感を向上させることができる。
【0063】
また、本実施形態にかかる衛生洗浄装置100では、制御部405は、流量切替弁471を制御することにより電解槽ユニット450に供給する水の流量を最大流量よりも少なくして殺菌水を生成した場合には、圧力変調装置460を制御することにより導水部20内を流れる水の流動状態を変動させる。これによれば、ノズル473の表面や、導水部20の内部や、第1および第2の流路21、22の内部には、非定常の流れが生ずる。そのため、ノズル473の表面や、導水部20の内壁や、第1および第2の流路21、22の内壁に存在する汚れや細菌等を剥離させる力は、水の流動状態が変動しない場合よりも高くなる。これにより、殺菌水の濃度を確保しつつ、汚水や汚物をノズル473から剥離させるために必要な水の流速や流量を確保することができる。つまり、ノズル473をより効率的に殺菌することができる。なお、本願明細書において、「ノズル473を殺菌する」という範囲には、ノズル473の表面を殺菌することだけに限定されず、ノズル473の内部に設けられた導水部20および第1ならびに第2の流路21、22の内部を殺菌することも包含されるものとする。ここで、制御部405は、次亜塩素酸の濃度をより高めるために電解槽ユニット450に供給する水の流量を少なくしているにもかかわらず、圧力変調装置460を制御することにより水の流速や流量を確保しているが、これは、ほとんど問題ない。
【0064】
なぜならば、次亜塩素酸の濃度をより高めるための流量の低減量(例えば、約150ml/分程度)に対して、圧力変調装置において確保される流量の増加量(例えば、約20ml/分程度)は小さいため、制御部405が圧力変調装置を制御することにより流量を確保することは、次亜塩素酸の濃度をより高めることに対してあまり影響しないためである。これによれば、制御部405は、電解槽ユニット450に供給する水の流量を少なくすることにより次亜塩素酸の濃度を確保しつつ、汚水や汚物をノズルから剥離させる力(水勢)を確保することができる。
【0065】
また、本実施形態にかかる衛生洗浄装置100では、制御部405は、流量切替弁471を制御することにより電解槽ユニット450に供給する水の流量を最大流量よりも少なくして殺菌水を生成した場合には、熱交換器ユニット440の温水ヒータ441を制御することにより電解槽ユニット450に供給する水を加熱することができる。つまり、制御部405は、電解槽ユニット450に温水を供給することができる。これによれば、電解槽ユニット450における電解効率が上がるため、電解槽ユニット450は、次亜塩素酸の濃度をより高めることができる。これは、水道水中の塩素イオンの濃度がより低い地域において、次亜塩素酸の濃度をより高めるための有効な手段の1つである。なお、制御部405は、電解槽ユニット450に供給する水の流量を最大流量よりも少なくして殺菌水を生成した場合だけに限定されず、最大流量の場合でも温水ヒータ441を制御することにより電解槽ユニット450に供給する水を加熱することができる。これによれば、殺菌水の洗浄力をより向上させることができる。
【0066】
また、本実施形態にかかる衛生洗浄装置100では、制御部405は、気泡混入手段490を制御することにより殺菌水に空気を混入し、殺菌水の内部に気泡を生成することができる。これによれば、空気が混入された殺菌水の見かけ上の流量は、より多くなる。そのため、汚水や汚物をノズル473から剥離させるために必要な水の流速や流量を確保することができる。これにより、ノズル473の表面や、導水部20の内壁や、第1および第2の流路21、22の内壁に存在する汚れや細菌等を剥離させる力を確保することができる。
【0067】
また、本実施形態にかかる衛生洗浄装置100では、イオン濃度検出手段480により検出された塩素イオンの濃度が所定濃度以下の場合には、制御部405は、流量切替弁471を制御することにより電解槽ユニット450に供給する水の流量を最大流量よりも少なくする。そして、電解槽ユニット450に供給する水の流量が最大流量よりも少ない状態で、制御部405は、電解槽ユニット450において殺菌水を生成する。
例えば、電解槽ユニット450において次亜塩素酸を生成する際には、原料となる水道水中の塩素イオンの濃度は、重要な要素の1つである。そのため、制御部405は、電解槽ユニット450に流入する水の塩素イオンの濃度に基づいて次亜塩素酸の濃度を高めるタイミングを図ることにより、より効率的に次亜塩素酸の濃度を高めることができる。
【0068】
なお、図4〜図7に関する説明では、電解槽ユニット450が殺菌水として次亜塩素酸を含む溶液を生成する場合を例に挙げたが、電解槽ユニット450において生成される殺菌水は、これだけに限定されるわけではない。電解槽ユニット450において生成される殺菌水は、例えば、銀イオンや銅イオンなどの金属イオンを含む溶液であってもよい。あるいは、電解槽ユニット450において生成される殺菌水は、電解塩素やオゾンなどを含む溶液であってもよい。あるいは、電解槽ユニット450において生成される殺菌水は、酸性水やアルカリ水であってもよい。これらの場合であっても、本発明の特徴を含む限り、本発明の範囲に包含される。以下では、説明の便宜上、殺菌水が次亜塩素酸を含む溶液である場合を例に挙げて説明する。
【0069】
図8は、本実施形態にかかる衛生洗浄装置の動作の具体例を例示するタイミングチャートである。
まず、着座検知センサ404が便座200に着座した使用者を検知すると(タイミングt1)、制御部405は、流路切替弁472を「原点」から「SC(セルフクリーニング)」に切り替え、「おしり洗浄」および「ビデ洗浄」のための全ての第1の流路21を経由して吐水口474からの吐水を可能とする。このときの流量(水量)は、例えば約450cc/分であり、最大流量に設定されている。
【0070】
続いて、流路切替弁472の切り替えが完了すると(タイミングt2)、制御部405は、電磁弁431を開き、温水ヒータ441を「捨水モード」に設定する。これにより、第1の流路21内の冷水が排水され、温水の準備が行われる。そして、制御部405は、温水ヒータ441を「捨水モード」から「保温制御モード」に設定変更した後に、電磁弁431を閉じる(タイミングt3〜t4)。これは、温水ヒータ441は「OFF」に設定された後でも余熱を発生するためである。すなわち、制御部405が温水ヒータ441を設定変更した後に電磁弁431を閉じるのは、いわゆる「後沸き防止」のためである。
【0071】
続いて、使用者が操作部500に設けられた図示しない「おしり洗浄スイッチ」を押すと(タイミングt5)、制御部405は、流路切替弁472を「原点」から「SC」に切り替え、電磁弁431を開き、温水ヒータ441を「前洗浄モード、本洗浄モード、後洗浄モード」に設定する。これにより、ノズル473の前洗浄が行われる。続いて、制御部405は、流路切替弁472を「SC」から「バイパス2」に切り替え、ノズル洗浄室478に設けられた吐水部479から水を噴射可能とする(タイミングt6)。
【0072】
続いて、制御部405は、ケーシング400に収納されていたノズル473を「おしり洗浄」の位置まで進出させる(タイミングt7〜t8)。このとき、制御部405は、電磁弁431を開いているため、ノズル473の胴体は、吐水部479から噴射される水により洗浄される。
【0073】
続いて、制御部405は、流路切替弁472を「バイパス2」から「おしり水勢5」に切り替え、本洗浄(おしり洗浄)を開始する(タイミングt8〜t10)。なお、例えば、使用者が「おしり洗浄」における水勢を「水勢5」から「水勢3」に操作部500により設定変更した場合には、制御部405は、流量切替弁471を「おしり水勢5」から「おしり水勢3」に切り替える(タイミングt10〜t11)。そして、制御部405は、「水勢3」において本洗浄を継続する(タイミングt11〜t12)。
【0074】
以上のタイミングt1〜t12の動作においては、制御部405は、電解槽ユニット450には通電せず殺菌水を生成しない。そのため、前洗浄(タイミングt5〜t6)および胴体洗浄(タイミングt7〜t8)においては、ノズル473は、水により物理的に洗浄される。そして、これらのタイミングにおける流量(水量)は、例えば約450cc/分であり、最大流量に設定されている。また、「おしり洗浄」(タイミングt8〜t12)においては、便座200に着座した使用者の「おしり」は、ノズル473の吐水口474から噴射された水により洗浄される。
【0075】
使用者が操作部500により図示しない「止スイッチ」を押すと、制御部405は、流路切替弁472を「おしり水勢3」から「バイパス2」に切り替え、ノズル洗浄室478に設けられた吐水部479から水を噴射可能とする(タイミングt12)。また、制御部405は、圧力変調装置460を「後洗浄モード」に設定する(タイミングt12)。続いて、流路切替弁472の切り替えが完了すると(タイミングt13)、制御部405は、電解槽ユニット450への通電を開始し、殺菌水の生成を開始する(タイミングt13)。続いて、制御部405は、「おしり洗浄」の位置に進出していたノズル473をケーシング400に収納する(タイミングt14〜t15)。これにより、ノズル473の胴体は、吐水部479から噴射される殺菌水により殺菌される。
【0076】
このときの流量(水量)は、例えば約280cc/分である。つまり、このときの流量は、最大流量(例えば約450cc/分)よりも少ない。そのため、電解槽ユニット450に最大流量の水を供給する場合と比較すると、電解槽ユニット450において生成される殺菌水の次亜塩素酸の濃度をより高めることができる。また、このとき、制御部405は、流路切替弁472を「バイパス2」に設定しているため、ノズル洗浄室478に設けられた吐水部479からのみ殺菌水を噴射可能としている。すなわち、制御部405は、流路切替弁472を制御することにより、第2の流路22にのみ電解槽ユニット450において生成された殺菌水を通水している。また、制御部405は、圧力変調装置460を「後洗浄モード」に設定することにより導水部20内を流れる水の流動状態を変動させている。
【0077】
続いて、ノズル473がケーシング400に収納された状態において、制御部405は、流路切替弁472を「バイパス2」から「SC」に切り替え(タイミングt15)、「おしり洗浄」および「ビデ洗浄」のための全ての第1の流路21を経由して吐水口474から殺菌水を吐水することにより後洗浄を行う(タイミングt16〜t17)。このときの流量(水量)は、タイミングt12〜t15における動作と同様に、例えば約280cc/分である。つまり、このときの流量は、最大流量(例えば約450cc/分)よりも少ない。そのため、電解槽ユニット450に最大流量の水を供給する場合と比較すると、電解槽ユニット450において生成される殺菌水の次亜塩素酸の濃度をより高めることができる。
【0078】
また、このとき、制御部405は、流路切替弁472を「SC」に設定しているため、ノズル473の吐水口474からのみ殺菌水を吐水可能としている。すなわち、制御部405は、流路切替弁472を制御することにより、第1の流路21にのみ電解槽ユニット450において生成された殺菌水を通水している。また、このときにも、制御部405は、圧力変調装置460を「後洗浄モード」に維持することにより導水部20内を流れる水の流動状態を変動させている。
【0079】
このように、制御部405は、電解槽ユニット450に通電し殺菌水を生成するときには、電解槽ユニット450に供給する水の流量を最大流量よりも少なくすることにより次亜塩素酸の濃度を高めることができる。さらに、タイミングt13〜t15あるいはタイミングt16〜t17に表した動作のように、制御部405は、流路切替弁472を制御することにより、第1の流路21および第2の流路のいずれか一方にのみ電解槽ユニット450において生成された殺菌水を通水している。そのため、制御部405は、電解槽ユニット450に供給する水の流量を最大流量よりも少なくすることにより次亜塩素酸の濃度を確保しつつ、汚水や汚物をノズルから剥離させる力(水勢)を確保することができる。そのため、ノズル473をより効率的に殺菌することができる。また、これにより、使用者のノズル473に対する清潔感を向上させることができる。
【0080】
また、制御部405は、電解槽ユニット450に通電し殺菌水を生成するときには、圧力変調装置460を「後洗浄モード」に設定している。そのため、制御部405は、ノズル473の吐水口474およびノズル洗浄室478の吐水部479から吐水される殺菌水に脈動を与え、その殺菌水の圧力を変調することができる。これにより、制御部405は、電解槽ユニット450に供給する水の流量を最大流量よりも少なくすることにより次亜塩素酸の濃度を確保しつつ、汚水や汚物をノズル473から剥離させるために必要な水の流速や流量を確保することができる。
【0081】
また、制御部405は、電解槽ユニット450に通電し殺菌水を生成するときには、温水ヒータ441を「前洗浄モード、本洗浄モード、後洗浄モード」に設定している。「前洗浄モード、本洗浄モード、後洗浄モード」における設定温度は、待機時や保温時にそれぞれ設定される「凍結防止制御モード」や「保温制御モード」における設定温度よりも高い。そのため、制御部405は、温水ヒータ441を制御することにより、より高い温度の温水を電解槽ユニット450に供給することができる。これにより、電解槽ユニット450は、次亜塩素酸の濃度をより高めることができる。
【0082】
続いて、制御部405は、電磁弁431を閉じ、流路切替弁472を「SC」から「原点」に切り替える(タイミングt17)。また、制御部405は、温水ヒータ441を「凍結防止制御モード」に設定し、圧力変調装置460を「OFF」に設定し、電解槽ユニット450への通電を停止する(タイミングt17)。
【0083】
以上説明したように、本実施形態によれば、制御部405は、流量切替弁471を制御することにより電解槽ユニット450に供給する水の流量を最大流量よりも少なくして殺菌水を生成した場合には、圧力変調装置460を制御することにより導水部20内を流れる水の流動状態を変動させる。また、制御部405は、流量切替弁471を制御することにより電解槽ユニット450に供給する水の流量を最大流量よりも少なくして殺菌水を生成した場合には、流路切替弁472を制御することにより第1の流路21および第2の流路22のいずれか一方にのみ殺菌水を通水することができる。これによれば、制御部405は、電解槽ユニット450に供給する水の流量を最大流量よりも少なくすることにより次亜塩素酸の濃度を確保しつつ、汚水や汚物をノズルから剥離させる力(水勢)を確保することができる。そのため、ノズル473をより効率的に殺菌することができる。
【0084】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、衛生洗浄装置100などが備える各要素の形状、寸法、材質、配置などやノズル473やノズル洗浄室478や第1および第2の流路21、22の設置形態などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0085】
10 給水源、 20 導水部、 21 第1の流路、 22 第2の流路、 100 衛生洗浄装置、 200 便座、 300 便蓋、 310 透過窓、 400 ケーシング、 401 電源回路、 403 人体検知センサ、 404 着座検知センサ、 405 制御部、 407 排気口、 408 排出口、 409 凹設部、 410 分岐金具、 420 連結ホース、 430 バルブユニット、 431 電磁弁、 432 調圧弁、 433 入水サーミスタ、 434 安全弁、 435 水抜栓、 440 熱交換器ユニット、 441 温水ヒータ、 442 バキュームブレーカ、 450 電解槽ユニット、 451 陽極板、 452 陰極板、 460 圧力変調装置、 470 ノズルユニット、 471 流量切替弁、 472 流路切替弁、 473 ノズル、 474 吐水口、 475 取付台、 476 ノズルモータ、 477 伝動部材、 478 ノズル洗浄室、 479 吐水部、 480 イオン濃度検出手段、 490 気泡混入手段、 500 操作部、 800 便器、 801 ボウル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐水口を有し、前記吐水口から水を噴射して人体局部を洗浄するノズルと、
給水源から供給される水を前記ノズルに導く導水部と、
前記導水部の途中に設けられ殺菌水を生成可能な殺菌水供給手段と、
前記殺菌水供給手段を流れる水の流量を調整する流量調整手段と、
前記導水部を流れる水の流動状態を変動させる流動変動手段と、
前記流量調整手段を制御して前記殺菌水供給手段を流れる水の流量が最大流量よりも少ない状態で前記殺菌水供給手段で前記殺菌水を生成させるときは、前記流動変動手段を制御して前記導水部を流れる水の流動状態を変動させる制御を実行する制御部と、
を備えたことを特徴とする衛生洗浄装置。
【請求項2】
前記給水源から供給される水を前記ノズルの吐水口に導く第1の流路と、
前記給水源から供給される水を前記ノズルの表面に導く第2の流路と、
前記給水源から供給される水が前記第1の流路に通水される状態と、前記給水源から供給される水が前記第2の流路に通水される状態と、を切り替え可能な流路切替手段と、
をさらに備え、
前記制御部は、前記流路切替手段を制御して前記第1および第2の流路のいずれか一方にのみに前記殺菌水を通水させることを特徴とする請求項1記載の衛生洗浄装置。
【請求項3】
前記流動変動手段は、前記殺菌水供給手段よりも下流に設けられ、前記水の流れに脈動または加速を与える圧力変調装置であることを特徴とする請求項1または2に記載の衛生洗浄装置。
【請求項4】
前記殺菌水供給手段は、電解槽であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の衛生洗浄装置。
【請求項5】
前記電解槽に流入する水の塩素イオンの濃度を検出可能なイオン濃度検出手段をさらに備え、
前記制御部は、前記イオン濃度検出手段により検出された前記塩素イオンの濃度が所定濃度以下の場合には、前記流量調整手段を制御して前記電解槽を流れる水の流量が最大流量よりも少ない状態で前記電解槽で前記殺菌水を生成させることを特徴とする請求項4記載の衛生洗浄装置。
【請求項6】
前記殺菌水供給手段よりも上流に設けられ、前記給水源から供給される水を加熱可能な加熱手段をさらに備え、
前記制御部は、前記殺菌水供給手段で前記殺菌水を生成させるときには、前記加熱手段により前記水を加熱することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の衛生洗浄装置。
【請求項7】
前記殺菌水供給手段よりも下流に設けられ、前記殺菌水に空気を混入し気泡を生成可能な気泡混入手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の衛生洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図5】
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