説明

衛生洗浄装置

【課題】 着座センサの検出不良に由来する動作の不具合に有効に対応することができ、かつ、部材点数の削減および低コスト化も可能とする衛生洗浄装置を提供する。
【解決手段】 本発明に係る衛生洗浄装置は着座センサおよびリモコン操作部を備えなくてもよく、固定操作部52には、ノズル洗浄部の洗浄動作すなわちノズル駆動運転を許可する運転許可スイッチ21と、ノズル駆動運転が許可されたことを表示する運転中表示LED22aが設けられている。制御部は、運転許可スイッチ21により運転許可の指令が入力されない状態では、通常洗浄開始スイッチ23bまたはビデ洗浄開始スイッチ23dが操作されてもノズル洗浄部の動作を禁止し、運転許可スイッチ21により運転許可の指令が入力されたときには、ノズル洗浄部の動作を許可し、当該ノズル洗浄部を制御するとともに、運転中表示LED22aを点灯させるよう構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便器上に配置されて使用される衛生洗浄装置に関する。
【0002】
より詳しくは、本発明は、人体の局部等を洗浄する洗浄動作について禁止状態から許可状態に切り換え可能とする衛生洗浄装置に関し、特に、操作部としてリモートコントローラ(リモコン操作部)を備えず、かつ、便座部への使用者の着座を検出する着座検出器も備えない構成において、禁止されている洗浄動作を使用者の操作により許可できるように構成されている衛生洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0003】
人体の局部等を洗浄する衛生洗浄装置の技術分野においては、従来から、誤操作を防止する技術が種々提案されている。一般的な衛生洗浄装置では、操作部の誤操作を防止するために安全機構が設けられていることが多い。具体的には、例えば、着座センサにより使用者が便座部に着座したことを検出し、着座状態であるときのみに、洗浄ノズルによる洗浄動作等が可能となる構成が挙げられる。この構成では、使用者が着座していない状態では洗浄ノズルから洗浄水は噴出しないので、誤操作により洗浄水がいきなり噴出されて、床または着衣等を濡らすような事態を防止することが可能となる。
【0004】
さらに、使用者が着座していないときの一般的な誤操作だけでなく、高齢者または子供等に特有の誤操作にも対処することができる技術も提案されている。例えば、特許文献1には、「手元操作部とリモコン操作部とを有し、それら操作部における操作によってノズルより洗浄水を噴出して人体局部を洗浄する局部洗浄装置」において「所定の箇所にロックスイッチを設け」る技術が開示されている。
【0005】
具体的には、使用者が高齢者であると、便座部から立ち上がるときに、身体を支えるために手元操作部に手をかけてしまったり、使用者が子供であると、便座部に着座した状態で手元操作部を不用意にいじったりすることが想定される。このような状況では、「手元操作部」のスイッチ等が誤って押され、洗浄水の噴出等の動作が誤って行われるおそれがある。そこで、特許文献1では、ロックスイッチの操作により「手元操作部」における操作を効かなくする構成の「局部洗浄装置」が開示されている。ここで、当該「局部洗浄装置」は、リモコン操作部を必須構成として備えているので、「手元操作部」の操作がロックされていても、「リモコン操作部」を操作することで、所定の動作(洗浄水の噴射等)を行うことが可能となっている。
【0006】
さらに、特許文献1には、「手元操作部」が主操作部および副操作部に分けられており、当該副操作部にロックスイッチを設けることで、主操作部の操作のみを効かなくする構成も開示されている。前記副操作部は、蓋が設けられるとともに、操作スイッチとして比較的頻繁に操作されないものが設けられればよい。これにより、通常は、副操作部の蓋は閉じられているので、主操作部の操作を効かなくすることで、誤操作を防止できるとともに、手元操作部のみで主操作部を操作可能としたり操作不可としたりすることができる。
【0007】
加えて、特許文献1においては、副操作部に設けられるスイッチとして、温水温度および便座温度を調節するためのスイッチ等が例示されている。それゆえ、副操作部の蓋を閉じておけば、誤操作による洗浄水の噴出等を防止できるだけでなく、便座温度や洗浄水温度の設定が誤って変更されてしまうことも防止できる。
【0008】
また、特許文献1には、専用のロックスイッチを敢えて設けない構成も開示されている。具体的には、副操作部の特定の複数のスイッチ、例えば温水温度調節用および便座温度調節用のスイッチを同時に所定時間、継続して押し続けることで、主操作部の操作を効かなくする構成が例示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平09−219126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、前記着座センサには、着座の未検出または誤検出等の検出不良が生ずることが知られている。例えば、幼児のように、使用者の体格または体重が極端に小さい場合には、使用者の着座が検出できないことがある。また、使用者の着座位置によっては、着座センサが着座を検出できないこともある。さらには、例えば、着座センサが光学式である場合、検出用光を出射する窓部が汚れていることにより、使用者が着座していないにもかかわらず、着座したと誤検出することもありうる。
【0011】
使用者の着座が適切に検出できなければ、使用者が操作部を適切に操作しても洗浄動作を実行させることができない。また、着座センサに誤検出が発生すれば、前記のような使用者の誤操作等により、洗浄水がいきなり噴出される等の不具合が生じることになる。つまり、着座センサの検出不良が生じれば、衛生洗浄装置の操作性が低下する。
【0012】
ここで、特許文献1に開示される、ロックスイッチを備える技術は、高齢者または子供等に特有の誤操作に対処することを課題とする技術である。それゆえ、この技術では、着座センサの検出不良に由来する前記操作性の低下に十分対応できる技術とはなっていない。また、特許文献1に開示される技術では「リモコン操作部」を設けることが必須となっているが、衛生洗浄装置の基本的な操作は「リモコン操作部」によって行うように構成すれば、「手元操作部」を設ける必要性が低下する。したがって、「リモコン操作部」を設けないで、「手元操作部」のみを設ける構成の衛生洗浄装置においては、特許文献1に開示される技術を適用することはできない。
【0013】
また、仮に衛生洗浄装置から着座センサを省いてしまえば、着座センサの検出不良そのものが発生しないことになる。しかしながら、着座センサが設けられていなければ、使用者が着座していないときの誤操作による不具合を防止することができず、それゆえ、前述の背景技術の冒頭において説明したような基本的な課題に立ち返ることになってしまう。
【0014】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであって、着座センサの検出不良に由来する洗浄機能の操作性の低下に有効に対応することができ、かつ、部材点数の削減および低コスト化も可能とする衛生洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る衛生洗浄装置は、前記の課題を解決するために、使用者が着座する便座部を支持する本体部と、当該本体部内に設けられ、洗浄水を噴出する洗浄動作を行うノズル洗浄部と、前記本体部に一体的に設けられ、前記ノズル洗浄部を操作する洗浄操作器を有する固定操作部と、前記ノズル洗浄部を少なくとも制御する制御部と、を備える衛生洗浄装置であって、前記ノズル洗浄部の前記洗浄動作を許可する許可指令を前記制御部に入力する洗浄許可操作器と、前記洗浄動作が許可されたことを報知する洗浄許可報知器とをさらに備え、前記制御部は、前記洗浄許可操作器からの前記許可指令の入力がない場合には、前記洗浄操作器が操作されても前記ノズル洗浄部の前記洗浄動作を禁止する一方、前記洗浄許可操作器から前記許可指令の入力があった場合には、前記ノズル洗浄部の前記洗浄動作を許可し、前記洗浄操作器からの操作指令に従って前記ノズル洗浄部を制御するとともに、前記洗浄許可報知器を動作させるよう構成されている。
【0016】
前記構成によれば、固定操作部により操作を行う衛生洗浄装置において、通常では洗浄動作が実行できないように前記ノズル洗浄部が「ロック」されているとともに、この「ロック」は使用者によって意識的に解除され、かつ、解除されていることが洗浄許可報知器によって使用者に報知される。それゆえ、洗浄動作が操作可能であるか否かが明らかな状態で、使用者は前記「ロック」の解除または維持を判断することが可能となるので、着座検出器(着座センサ等)を設けなくても、使用者が着座していないときの誤操作による不具合を防止することができる。加えて、洗浄動作の操作の必要があるときに前記「ロック」を解除して、操作を可能とするので、前記「ロック」が維持されているときに、固定操作部とは別の遠隔操作部(リモコン操作部)等で洗浄動作を操作可能とする必要性もなくなる。
【0017】
したがって、着座検出器を備えないことにより着座検出器の検出不良そのものが発生せず、かつ、着座検出器を備えないことによる誤操作による不具合も発生しなくなるので、洗浄機能の操作性が低下することがなく、良好な操作性を確保することができる。しかも、着座検出器および遠隔操作部を備えなくてもよい構成となるので、部材点数を少なくして低コスト化することができる。
【0018】
前記衛生洗浄装置においては、前記洗浄許可報知器の具体的構成は特に限定されないが、好ましい一例として、前記使用者に視覚情報を表示する表示器であり、当該表示器は、前記固定操作部に設けられている構成を挙げることができる。洗浄許可の報知は音声によるものでもよいが、視覚情報を伝達する表示器を用いれば、前記「ロック」の解除の状態を、使用者に対してより適切に報知することができる。
【0019】
前記衛生洗浄装置においては、前記固定操作部の具体的構成、および、前記表示器が設けられる位置は特に限定されないが、好ましい一例として、前記固定操作部は、前記本体部における前記便座部に着座した使用者から見て右側の部位から、前記使用者から見て前側に延びるように設けられており、前記固定操作部の上面は、前記使用者が操作を行うための操作面となっており、前記洗浄許可操作器および前記表示器は、前記操作面に設けられている構成を挙げることができる。この構成において、前記固定操作部の操作面の具体的な構成も特に限定されないが、例えば、前記洗浄操作器が、前記洗浄許可操作器および前記表示器とともに前記固定操作部の前記操作面に設けられている構成を挙げることができる。
【0020】
前記構成によれば、一般的な使用者にとって操作しやすい位置に固定操作部が設けられ、かつ、固定操作部が便器の側方に沿って配置しているので、衛生洗浄装置の占有面積が大きくなることがない。しかも、このような固定操作部の操作面に前記表示器が設けられているので、使用者にとっては、表示器を確認して前記「ロック」の解除を行い、さらに、この解除を確認した上で、洗浄操作器を操作して洗浄動作を実行させることが可能となる。それゆえ、衛生洗浄装置の操作性をより向上することができる。
【0021】
前記構成においては、前記表示器としてはどのような構成であっても採用することができるが、代表的な一例として、前記表示器が発光体であり、前記洗浄許可操作器および前記洗浄操作器の少なくとも一方に隣接して前記発光体が配置されている構成を挙げることができる。あるいは、前記洗浄許可操作器および前記洗浄操作器の少なくとも一方に、前記発光体が一体化して設けられている構成も挙げることができる。
【0022】
前記構成であれば、例えば、発光ダイオード(LED)等の簡素かつ小さな部材を表示器として用いることができるので、低コスト化を図ることができる。また、前記各操作器の近傍に発光体を配置させたり、前記各操作器に発光体を一体化させることで当該操作器そのものを発光させたりするため、単に「ロック」が解除されたことだけでなく、洗浄操作器が操作可能になったことも、使用者に分かりやすく表示することができる。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本発明では、着座センサの検出不良に由来する洗浄機能の操作性の低下に有効に対応することができ、かつ、部材点数の削減および低コスト化も可能とする衛生洗浄装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態1に係る衛生洗浄装置の構成の一例を示す模式的斜視図である。
【図2】図1に示す衛生洗浄装置の制御系統の要部を示すブロック図である。
【図3】図1に示す衛生洗浄装置が備える固定操作部の操作面の構成を示す平面図である。
【図4】図1に示す衛生洗浄装置の制御の一例を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施の形態2に係る衛生洗浄装置の制御系統の要部を示すブロック図である。
【図6】(a)〜(c)は、図5に示す衛生洗浄装置が備える固定操作部の操作面のうち、洗浄操作面の構成の一例をそれぞれ示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0026】
(実施の形態1)
[衛生洗浄装置の構成]
図1は本発明の実施の形態1に係る衛生洗浄装置の構成の一例を示す模式的斜視図である。図1に示すように、本実施の形態に係る衛生洗浄装置50Aは、本体部51、固定操作部52、便座部53、便蓋54、および入室センサ55を備えている。なお、衛生洗浄装置50Aは、操作部としてリモートコントローラ(リモコン操作部)は備えていない。衛生洗浄装置50Aの本体部51、便座部53および便蓋54は、一体的に組み付けられて便器60の上面に設置される。以下、便座部53に着座した使用者から見て前方を前、後方を後ろ、左右側方を左右として説明する。また、便座部53と便蓋54とは、それぞれ起立位置と倒伏位置との間で、それぞれ別個にかつ両者一緒に回動可能に設けられるが、以下では、便宜上、これらが倒伏位置から起立位置へ向かって回動することを「開く」といい、起立位置から倒伏位置へ向かって回動することを「閉じる」という。
【0027】
本体部51は、内部が中空の筐体となっており、図1には図示されない、洗浄ユニット、乾燥ユニット、便座・便蓋開閉ユニット、制御部、便座ヒータ調節部等が収容されている。本体部51の具体的形状等は特に限定されないが、本実施の形態では、横長の形状を有し、その長手方向が便器60の後側で左右方向に横断するように便器60に配置されている。本体部51の前側上方には、便蓋54が回動自在に取り付けられており、前方下方には、便座部53が回動自在に取り付けられている。
【0028】
本体部51内に収容されている各種ユニットの具体的な構成は特に限定されない。例えば、前記洗浄ユニットは、少なくともノズル洗浄部および温水生成部から構成され、便座部53に着座した使用者の局部等を温水で洗浄する。このうちノズル洗浄部は、図1に示すように、温水を噴出する洗浄ノズル11を備えている。また、乾燥ユニットは、温風ヒータ、温風ファン、送風ダクト等から構成され、洗浄後の局部等に温風を送風して乾燥させる。便座・便蓋開閉ユニットは、モータを含む駆動機構等から構成され、便座部53および便蓋54を自動で開閉する。これら洗浄ユニット、乾燥ユニット、便座・便蓋開閉ユニット等部の具体的な構成は特に限定されず、本発明の技術分野で公知の構成を好適に用いることができる。また、本体部51内には、これら以外の機能ユニット、例えば脱臭ユニット等が内蔵されていてもよい。なお、洗浄ユニットを構成するノズル洗浄部および温水生成部、並びに、便座ヒータ調節部については、後に詳述する。
【0029】
固定操作部52は、本体部51の右側面から前側に延伸するように設けられ、その形状は例えば柱状であって、その上面が操作面となっている。操作面には、衛生洗浄装置50Aが有する各種機能、すなわち、前記機能ユニットを操作するためのスイッチ類、並びに、操作状況を表示する表示部等が設けられている。固定操作部52の具体的構成については、後に詳述する。なお、固定操作部52の外形は柱状に限定されず、少なくとも、本体部51の右側の部位から前側に延びるように設けられていればよい。
【0030】
便座部53は、本体部51に取り付けられた状態で、起立位置および倒伏位置の間で回動自在となっており、倒伏位置(閉じた状態)で使用者が着座する。便蓋54も、本体部51に取り付けられた状態で、起立位置および倒伏位置の間で回動自在となっており、使用時には起立位置(開いた状態)とし、未使用時には倒伏位置(閉じた状態)とする。本実施の形態では、便座部53および便蓋54は、いずれも本体部51内の便座・便蓋開閉ユニットにより自動的に開閉するよう構成されているが、手動で開閉することも可能であり、さらに、便座・便蓋開閉ユニットを備えず、手動でのみ開閉する構成であってもよい。
【0031】
便座部53は内部に図示されない便座ヒータを備え、当該便座部53を加温するよう構成されている。すなわち、本実施の形態の係る衛生洗浄装置50Aは、暖房便座機能を備えている。便座ヒータを含む便座部53の具体的構成は特に限定されず、公知の構成を好適に用いることができる。また、便蓋54の具体的構成も特に限定されず、公知の構成を好適に用いることができる。
【0032】
入室センサ55は、衛生洗浄装置50Aが設置されたトイレ室内に使用者が入室したことを検出するものであり、トイレ室の壁面等に設置される。本実施の形態において、入室センサ55は、例えば、焦電型の赤外センサで構成され、人体の表面から輻射される物体の表面温度に比例して輻射される赤外線を検出する。これにより、入室センサ55は、人体のトイレ室への入室に伴う当該入室センサ55の検出範囲内での赤外線の変化量を検出し、この検出信号を本体部51の制御部へ出力する。本体部51の制御部では、入室センサ55から入力された検出信号から、トイレ室内に使用者が入室したことが検知される。なお、入室センサ55は、トイレ室内での人体の存在を検知する人体センサとして機能するので、使用者が退室したことも検知できる。
【0033】
なお、一般的な衛生洗浄装置においては、固定操作部52以外の操作部としてリモートコントローラ等の遠隔操作部、および、便座部53への使用者の着座を検出する着座センサを備えていることが多い。しかしながら、本実施の形態に係る衛生洗浄装置は、これら遠隔操作部および着座センサを備えていない構成となっている。
【0034】
[衛生洗浄装置の制御系統]
次に、本実施の形態に係る衛生洗浄装置50Aの基本的な制御系統について、本体部51、固定操作部52、便座部53等の基本動作とともに図2に基づいて説明する。図2は、本実施の形態に係る衛生洗浄装置50Aの制御系統の要部を示すブロック図である。
【0035】
衛生洗浄装置50Aの制御系統は、図2に示すように、本体部51内に収容される制御部56、ノズル洗浄部57a、温水生成部57b、および便座ヒータ調節部15、固定操作部52に設けられる運転許可スイッチ21、運転中表示LED22a、洗浄動作操作スイッチ23、温水温度調節スイッチ24、便座温度調節スイッチ25、便座部53に内蔵されている便座ヒータ31、図2には図示されない乾燥ユニット、便座・便蓋開閉ユニット、入室センサ55等から構成されている。なお、ノズル洗浄部57aおよび温水生成部57bにより洗浄ユニットが構成されている。
【0036】
制御部56は、衛生洗浄装置50Aの全体動作を制御するものである。なお、制御部56は単独の制御器のみであってもよいし、複数の制御器からなる制御器群であってもよい。制御部56は、本実施の形態では、ノズル駆動許可判定部56a、演算部56b、記憶部56cから少なくとも構成されている。ノズル駆動許可判定部56aは、後述するように、運転許可スイッチ21からの許可指令に基づき、ノズル洗浄部57aの動作を許可するか否かを判定する。演算部56bは、固定操作部52からの操作指令に基づき、洗浄ユニット、乾燥ユニット等の各種機能ユニットを制御するための演算を行う。記憶部56cは、演算部56bの演算に用いられる各種のプログラム、温水温度や便座温度等、機能ユニットに設定される設定値等の各種情報を記憶し、演算部56bからこれらプログラムおよび各種情報が読み出され、必要に応じて書き込まれるよう構成されている。
【0037】
演算部56bは、例えば、マイクロコンピュータのCPUで構成され、記憶部56cは、マイクロコンピュータの内部メモリ等により構成される。ノズル駆動許可判定部56aは、公知の判定回路として構成されてもよいし、演算部56bを構成するCPUが記憶部56cに格納されるプログラムに従って動作することにより実現される構成、すなわち制御部56の機能構成であってもよい。
【0038】
洗浄ユニットは、前記のとおり、ノズル洗浄部57aおよび温水生成部57bから構成され、ノズル洗浄部57aは、洗浄ノズル11およびノズル駆動部12から少なくとも構成されている。制御部56は、固定操作部52の洗浄動作操作スイッチ23の操作指令に基づき、ノズル駆動部12を制御し、ノズル駆動部12は、洗浄ノズル11により所定の洗浄動作が行われるように、当該洗浄ノズル11を進退させるよう駆動する。
【0039】
所定の洗浄動作としては、本実施の形態では、例えば、通常洗浄動作、ビデ洗浄動作、これら各洗浄動作における「ムーブ洗浄」(洗浄ノズル11の温水噴出口を進退移動させる等して局部全体に移動させながら温水を噴出する洗浄)または「リズム洗浄」(所定のパターンで温水の洗浄強度が変動するように温水に空気を混入させたり流水量を変化させたりする洗浄)等が挙げられる。これら洗浄動作においては、洗浄ノズル11はノズル駆動部12に駆動されることで、本体部51から突出するように前進し、所定の洗浄位置に洗浄ノズル11の先端部(洗浄水の噴出口が形成されている)に到達する。さらに、例えばムーブ洗浄では、先端部が前後移動するように洗浄ノズル11がノズル駆動部12により駆動される。洗浄が終了すれば、突出した洗浄ノズル11が後退して本体部51内に収容されるように、ノズル駆動部12により駆動される。このようなノズル駆動部12による洗浄ノズル11の進退の駆動を「ノズル駆動」と称し、ノズル洗浄部57aにおいてノズル駆動動作が実施されることを「ノズル駆動運転」と称する。
【0040】
温水生成部57bは、温水ヒータ13、温水ヒータ調節部14、図示されない温水タンクおよび水温計から少なくとも構成されている。制御部56は、記憶部56cに記憶されている設定温度に基づき、温水ヒータ調節部14を制御し、温水ヒータ調節部14により温水ヒータ13の出力が調節される。温水ヒータ13により温水タンク内に貯蔵される洗浄水が加熱され温水となるが、その水温は水温計により計測され、水温データとして制御部56に出力される。制御部56は、計測された水温データに基づき、温水ヒータ調節部14を制御し、温水タンク内の水温を設定温度に調節する。また、固定操作部52の温水温度調節スイッチ24が操作されることで、記憶部56cに記憶されている設定温度が変更されたときには、変更後の温度に合わせて温水ヒータ調節部14が制御される。
【0041】
なお、本実施の形態における温水生成部57bは、温水タンクを備える形式、すなわち「貯湯式」であるが、本発明はこれに限定されず、温水生成部57bは「瞬間式」であってもよい。「瞬間式」とは、温水タンクを備えない代わりに、温水ヒータ13を有する熱交換器を備える方式である。「貯湯式」は予め温水を生成して温水タンクに貯蔵しておくが、「瞬間式」は、熱交換器に流入する洗浄水を加熱して温水とすることで、使用する時点で温水を生成する。本発明においては、温水生成部57bは、上記いずれの方式であってもよい。
【0042】
洗浄ユニットを構成するノズル洗浄部57aおよび温水生成部57bの具体的な構成は特に限定されず、公知の構成を好適に用いることができる。また、洗浄ユニットは、ノズル洗浄部57aおよび温水生成部57b以外の構成要素を備えていてもよい。
【0043】
便座ヒータ調節部15は、制御部56により制御され、便座部53が備える便座ヒータ31の出力を調節する。なお、便座部53には、図示されない便座温度計が設けられてもよい。この便座温度計は、便座部53の温度(便座温度)を計測し、制御部56に出力する。制御部56は、この便座温度に基づいて、便座ヒータ調節部15を制御し、これにより便座ヒータ31の出力が調節される。また、固定操作部52の便座温度調節スイッチ25が操作されることで、記憶部56cに記憶されている設定温度が変更されたときには、変更後の温度に合わせて便座ヒータ調節部15が制御される。便座ヒータ調節部15、便座温度計の具体的な構成も特に限定されず、公知の構成が用いられる。
【0044】
固定操作部52は、上記洗浄ユニット、便座ヒータ調節部15、および説明を省略するその他の機能ユニットを操作するための操作スイッチと、表示部とが設けられている。操作スイッチとしては、図2には、運転許可スイッチ21、洗浄動作操作スイッチ23、温水温度調節スイッチ24、および便座温度調節スイッチ25が示されているが、これら以外の操作スイッチが設けられてもよいことはいうまでもない。また、表示部としては、運転中表示LED22aが示されているが、これ以外の表示部が設けられてもよいことはいうまでもない。
【0045】
操作スイッチのうち、運転許可スイッチ21および洗浄動作操作スイッチ23は、制御部56のノズル駆動判定部56aを介して演算部56bに操作指令を入力するよう構成されているが、これら以外の操作スイッチ、例えば、温水温度調節スイッチ24、便座温度調節スイッチ25等は、演算部56bに直接操作指令を入力するよう構成されている。運転中表示LED22aは、演算部56bの演算により点灯したり消灯したりするよう構成されているが、図示されない他の表示部も同様に構成されている。これら操作スイッチおよび表示部については、本実施の形態に係る衛生洗浄装置50Aの制御とともに説明する。
【0046】
[衛生洗浄装置の制御の一例]
次に、本実施の形態に係る衛生洗浄装置50Aの制御の一例について、特に、ノズル洗浄部57aの動作の許可および禁止に重点をおいて、図2に加えて、図3および図4を参照して説明する。図3は、本実施の形態に係る衛生洗浄装置50Aが備える固定操作部52の操作面の構成を示す平面図である。図4は、本実施の形態に係る衛生洗浄装置50Aの制御の一例を示すフローチャートである。
【0047】
図3に示すように、固定操作部52は、衛生洗浄装置50Aを操作するための各種操作スイッチを、押面を押すことにより操作するボタン型のメンブレンスイッチとして備えている。なお、以下の説明では、これらボタン型のメンブレンスイッチを、便宜上、「押ボタン」と称する。
【0048】
また、固定操作部52は、これら押ボタンの操作による衛生洗浄装置50Aの状態を表示する表示部も備えている。図3の向かって左側は、衛生洗浄装置50Aの前側に相当し、向かって右側は衛生洗浄装置50Aの後ろ側に相当する。また、固定操作部52における図3の向かって右下側の部位は、図3に破線で示すように、本体部51につながって固定されている。図1に示すように、固定操作部52は、本体部51の右側に固定されているので、衛生洗浄装置50Aに着座した使用者から見れば、図中上側が使用者の右手に近い位置となる。使用者は、便座部53に着座した状態で、図中上側(衛生洗浄装置50Aの右側)に向かって顔を向けて固定操作部52を操作することになるので、固定操作部52においては、各押ボタンおよび表示部は、図3に示すように、衛生洗浄装置50Aの右側に向かって配置されている。
【0049】
本実施の形態における固定操作部52は、その操作面が、衛生洗浄装置50Aの前側の約三分の二の領域と後ろ側の約三分の一の領域とに分かれており、前側の領域が洗浄操作面52a、後ろ側の領域が基本操作面52bとなっている。洗浄操作面52aには、前側から順に、押ボタンである運転許可スイッチ21、洗浄停止スイッチ23a、通常洗浄開始スイッチ23b、リズム洗浄スイッチ23c、ビデ洗浄開始スイッチ23d、弱洗浄スイッチ23eおよび強洗浄スイッチ23fが配置されている。また、運転許可スイッチ21の図中向かって右上の箇所には、表示部である運転中表示LED22aが配置されている。
【0050】
また、基本操作面52bには、前側右(図中向かって左上側)に表示部である温水温度表示部27aが配置され、その後ろ側横(図中向かって右側)には、押ボタンである温水温度調節スイッチ24および節電スイッチ26a、表示部である電源投入表示LED27cがこの順で配置されている。そして、前側左すなわち温水温度表示部27aの左側(図中下側)には、表示部である便座温度表示部27bが配置され、その後ろ側横には、押ボタンである便座温度調節スイッチ25および8時間自動電源遮断スイッチ26b、表示部である自動電源遮断動作中LED27d、並びに、押ボタンである漏電テストスイッチ26cが配置されている。
【0051】
洗浄操作面52aに設けられている各押ボタンのうち、洗浄停止スイッチ23a、通常洗浄開始スイッチ23b、リズム洗浄スイッチ23c、ビデ洗浄開始スイッチ23d、弱洗浄スイッチ23eおよび強洗浄スイッチ23fは、図2に示す制御系統における洗浄動作操作スイッチ23に対応する。通常洗浄開始スイッチ23bおよびビデ洗浄スイッチ23dは、ノズル洗浄部57aにおける洗浄動作を開始させる洗浄開始スイッチである。通常洗浄開始スイッチ23bを1回押せば、ノズル洗浄部57aは、制御部56の制御により前記通常洗浄動作を行い、さらにもう1回押せば、通常洗浄のムーブ洗浄動作を行う。さらに、通常洗浄動作が実行されている間に、リズム洗浄スイッチ23cを押せば、制御部56の制御によりノズル洗浄部57aは前記リズム洗浄を行う。また、ビデ洗浄スイッチ23dを1回押せば、ノズル洗浄部57aは前記ビデ洗浄動作を行い、さらにもう1回押せば、ビデ洗浄のムーブ洗浄動作を行う。
【0052】
弱洗浄スイッチ23eおよび強洗浄スイッチ23fは、いずれもノズル洗浄の強度、すなわち、洗浄ノズル11から噴出する温水の水圧を調節するためのスイッチであり、弱洗浄スイッチ23eを押せば、制御部56は、洗浄強度の設定値を低下させ、強洗浄スイッチ23fを押せば、洗浄強度の設定値を上昇させるよう調節する。洗浄強度の調節の程度および段階については適宜設定されるものであり、特に限定されない。
【0053】
基本操作面52bに設けられている各押ボタンは、ノズル洗浄部57aの操作およびノズル洗浄部57aの動作の許可または禁止の操作以外の操作、すなわち、電源投入および遮断、各種温度調節等、衛生洗浄装置50Aの基本的な操作を行うものである。温水温度調節スイッチ24を押せば、制御部56は、温水温度の設定値を変化させる。変化の程度は、温水温度調節スイッチ24の前側横に位置する温水温度表示部27aで表示される。図3に示す例では、温水温度表示部27aは、3つのLEDを配列して構成され、変更された温水温度が「低」から「高」まで三段階の設定値のいずれであるかを表示する。同じく、便座温度調節スイッチ25を押せば、制御部56は、便座温度の設定値を変化させる。その前側横に位置する便座温度表示部27bは、変更された便座温度が「低」から「高」まで三段階の設定値のいずれであるかを表示する。
【0054】
節電スイッチ26aを押せば、制御部56が節電モードに移行する。節電モードでは、衛生洗浄装置50Aの使用が一定時間なければ、衛生洗浄装置50Aの構成要素の一部の通電を遮断する等の節電動作が行われる。8時間自動電源遮断スイッチ26bを押せば、8時間後に自動で電源が遮断される。漏電テストスイッチ26cを押せば、衛生洗浄装置50Aに組み込まれている漏電遮断回路が有効に機能するか否かを試験するための漏電テストが行われる。電源投入表示LED27cは衛生洗浄装置50Aへの電源の投入状況を表示するものであり、例えば緑色に点灯していれば衛生洗浄装置50Aに電源が投入されている通常モードにあり、オレンジ色に点灯していれば節電モードにあることが表示される。自動電源遮断動作中表示LED27dは、自動電源遮断の制御が行われていることを表示するものである。
【0055】
なお、節電スイッチ26a、8時間自動電源遮断スイッチ26b、および漏電テストスイッチ26cは、図2に示す制御系統には図示されないが、衛生洗浄装置50Aの基本操作を行うための基本操作スイッチとなっている。また、温水温度表示部27a、便座温度表示部27b、電源投入表示LED27c、および自動電源遮断動作中LED27dは、前記基本操作スイッチの操作に基づく衛生洗浄装置50Aの状態を表示する基本表示部となっている。基本操作スイッチおよび基本表示部の具体的な構成はこれらに限定されず、他の操作スイッチまたは表示部が設けられてもよいし、一部の操作スイッチまたは表示部が設けられていなくてもよい。あるいは、基本表示部として、液晶表示パネル等の画像表示部がまとめて1個設けられる構成であってもよい。
【0056】
上記構成の固定操作部52を備える衛生洗浄装置50Aの制御について、運転許可スイッチ21および運転中表示LED22aの機能、動作等とともに具体的に説明する。なお、図4のフローチャートでは、制御上のステップと使用者の行為とを区別するために、ステップについては単線の枠で、使用者の行為については二重線の枠で示し、使用者の行為とステップとの対応は破線で示している。
【0057】
まず、衛生洗浄装置50Aに電源が投入された状態であれば、図4のフローチャートに示すように、制御部56は、ノズル洗浄部57aにおけるノズル駆動運転を禁止するよう制御している(ステップS101)。そして、使用者がトイレ室に入室したことが、入室センサ55(図1参照)で検出されれば(ステップS102)、制御部56は、便座・便蓋開閉ユニットを制御して便蓋54を倒伏位置から起立位置に開かせる(ステップS103)。その後、使用者が着座してから(使用者の行為U01)、制御部56のノズル駆動許可判定部56aは、運転許可スイッチ21が押されてON操作されたか否かを判定する(ステップS104)。なお、本実施の形態に係る衛生洗浄装置50Aは、前記のとおり着座センサを備えていないので、この時点で制御部56は、使用者が着座しているか否かについては判断しない。
【0058】
図2に示すように、ノズル駆動許可判定部56aは、運転許可スイッチ21および洗浄動作操作スイッチ23から操作指令が入力されるように構成され、運転許可スイッチ21から、ノズル駆動運転を許可する指令(許可指令)が入力されれば、ノズル駆動運転が許可されたと判断して、洗浄動作操作スイッチ23からの操作指令を演算部56bに入力するが、前記許可指令が入力されなければ、洗浄動作操作スイッチ23からの操作指令は演算部56bに入力されない。それゆえ、運転許可スイッチ21がON操作されていなければ(ステップS104でNO)、制御部56は、ノズル駆動運転を禁止する制御を維持し(ステップS105)、例えば、洗浄動作操作スイッチ23のうち通常洗浄開始スイッチ23bがON操作されても、洗浄動作が行われないよう制御される(ステップS106)。その後、制御部56のノズル駆動許可判定部56aは、再び運転許可スイッチ21がON操作されたか否かの判定を継続する(ステップS104に戻る)。
【0059】
ところで、使用者は、着座(行為U01)した後、排便することになる(行為U02)が、この排便は、通常、着座してから運転許可スイッチ21がONされるまでの間(すなわち、ステップS104の判定の間)に行われる。これは、本実施の形態に係る衛生洗浄装置50Aでは、運転許可スイッチ21をON操作しない限り、ノズル洗浄部57aによる洗浄動作が行われないためである。それゆえ、排便が完了した後、使用者が運転許可スイッチ21をON操作すれば(ステップS104でYES)、制御部56のノズル駆動許可判定部56aはノズル駆動運転を許可する判定を行うとともに、演算部56bは、所定の演算を行って運転中表示LED22aを点灯させる(ステップS107)。これによって、洗浄動作操作スイッチ23が操作可能になっていることが使用者に報知される。この状態で、例えば通常洗浄開始スイッチ23bがON操作されれば、通常洗浄開始の操作指令はノズル駆動許可判定部56aを経由して演算部56bに入力されるので、制御部56は、ノズル洗浄部57aに通常洗浄動作を開始させる制御を行う(ステップS108)。
【0060】
その後、洗浄停止スイッチ23aが操作されれば、制御部56は、ノズル洗浄部57aの通常洗浄動作を停止させる制御を行う(ステップS109)。洗浄動作が終われば、使用者は便座から起立する(使用者の行為U03)ので、制御部56は、便座・便蓋開閉ユニットを制御して便蓋54を起立位置から倒伏位置に閉じさせる(ステップS110)。なお、このステップS110において、制御部56の制御により便蓋54が起立位置から倒伏位置に閉じられる前に、使用者が手動で便蓋54を起立位置から倒伏位置に閉じてもよい。
【0061】
その後、使用者がトイレ室から退室したことが、入室センサ55(図1参照)で検出されれば(ステップS111)、制御部56のノズル駆動許可判定部56aは、運転許可スイッチ21がOFF操作されたか否かを判定する(ステップS112)。
【0062】
OFF操作されていれば(ステップS112でYES)、制御部56は、ノズル洗浄部57aにおけるノズル駆動運転を禁止する制御に移行する(ステップS113)が、OFF操作されていなければ(ステップS112でNO)、制御部56は、所定時間(例えば、3分後)が経過した後に自動で運転許可スイッチ21をOFF操作させる制御を行い(ステップS114)、その後、ノズル洗浄部57aにおけるノズル駆動運転を禁止する制御に移行する(ステップS113)。これで、一連の制御は終了するが、電源が投入されている間は、当該制御は繰り返して実行される。
【0063】
このように、本実施の形態に係る衛生洗浄装置50Aにおいては、運転許可スイッチ21が操作されない限り、ノズル洗浄部57aが「ロック」されている(ノズル駆動運転が禁止されている)ことになるので、当該ノズル洗浄部57aの「ロック」は、常に、使用者によって意識的に解除される(ノズル駆動運転が許可される)ことになる。
【0064】
それゆえ、洗浄動作が操作可能であるか否かが明らかな状態で、使用者は前記「ロック」の解除または維持を判断することが可能となるので、着座センサを設けなくても、使用者が着座していないときの誤操作による不具合を防止することができる。しかも、洗浄動作の操作の必要があるときに前記「ロック」を解除して、操作を可能とするので、前記「ロック」が維持されているときに、固定操作部とは別の遠隔操作部(リモコン操作部)等で洗浄動作を操作可能とする必要性もなくなる。
【0065】
したがって、前記のとおり、着座センサを備えないことにより着座センサの検出不良そのものが発生しなくなり、かつ、着座センサを備えないことにより誤操作による不具合(不用意な洗浄水の噴出等)も発生しなくなるので、洗浄機能の操作性が低下することがなく、良好な操作性を確保することができる。しかも、着座センサおよびリモコン操作部を備えなくてもよい構成となるので、部材点数を少なくして低コスト化することができる。
【0066】
[変形例]
本実施の形態では、衛生洗浄装置50Aが入室センサ55を備えているが、入室センサ55を備えていない構成であってもよい。この構成であれば、図4に示すフローチャートのうち、ステップS102およびステップS111が省略された制御が行われる。また、衛生洗浄装置50Aは、便座・便蓋開閉ユニットを備えているが、これを備えていない構成であってもよい。この構成であれば、図4に示すフローチャートのうち、ステップS103およびステップS110が省略された制御が行われる。
【0067】
また、図4に示すフローチャートのうち、ステップS109の洗浄動作停止のステップが終了すると同時に、運転許可スイッチ21を自動的にOFF操作させる制御が行われる構成であってもよい。この構成であれば、ステップS112およびS114が省略された制御が行われる。なお、この構成であれば、運転許可スイッチ21をOFF操作しなくても、自動的にノズル駆動運転を禁止する制御に移行するが、もちろん、運転許可スイッチ21をOFF操作して積極的にノズル駆動運転を禁止することもできる。
【0068】
あるいは、ステップS109で洗浄動作停止のステップが終了した後、使用者が再度の洗浄を行うことを希望したために、ステップS108を再度行う場合もあり得る。そこで、ステップS109の洗浄動作停止のステップが複数回繰り返されたことを基準として、運転許可スイッチ21を自動的にOFF操作させる制御が行われる構成であってもよい。例えば、排便後、平均的な洗浄回数がどの程度の範囲内となるかを予め調査しておき、2回を超えて洗浄する頻度が少なければ、ステップS109が2回繰り返されれば、自動的にノズル駆動運転を禁止するよう制御すればよい。
【0069】
また、固定操作部52の具体的構成も特に限定されず、前述のとおり、基本表示部として単一の画像表示部が設けられている構成であってもよいが、当該画像表示部が、運転中表示LED22aの機能を兼ねており、それゆえ運転中表示LED22aが設けられていなくてもよい。すなわち、運転許可スイッチ21がON操作されれば、画像表示部にノズル駆動運転を許可した旨のメッセージあるいは図形表示等が表示されるように構成されてもよい。なお、本実施の形態では、前述した各操作スイッチは、ボタン型のメンブレンスイッチとして構成されているが、操作スイッチの種類によっては、平坦なメンブレンスイッチではなく他の押ボタン型スイッチが採用されてもよいし、押ボタン型のスイッチではなくではなく切換スイッチが採用されてもよいし、画像表示部がタッチパネルであれば、タッチパネル上に押ボタンを表示する構成であってもよいし、その他の公知のスイッチであってもよい。
【0070】
ここで、画像表示部がタッチパネルであれば、各操作スイッチだけでなく、運転許可スイッチ21も、機械的または電気的構成の押ボタンまたは切換スイッチではなく、タッチパネル上で表示される押ボタンとすることができる。ただし、運転許可スイッチ21のみを、敢えて独立した押ボタンあるいは切換スイッチ等としておくこともできる。本実施の形態においては、運転許可スイッチ21は、ノズル駆動運転を許可するために最初に操作すべきスイッチであるため、他の操作スイッチとは、独立させて使用者に分かりやすく配置しておくことで、操作性の向上を図ることができる。
【0071】
さらに、本実施の形態では、運転許可スイッチ21は、ノズル駆動運転を許可する構成となっているが、本発明はこれに限定されず、ノズル洗浄部57aによる洗浄動作を許可できる洗浄許可操作器が設けられていればよい。例えば、衛生洗浄装置50Aが「ノズル掃除機能」を備えている構成であれば、図3には図示されないが、固定操作部52の基本操作面52bにノズル掃除スイッチが設けられ、ノズル掃除スイッチを操作すれば、ノズル駆動部12により洗浄ノズル11が本体部51から突出するよう駆動される。この洗浄ノズル11の突出は、局部等の洗浄動作を目的とする「洗浄動作」ではなく、洗浄ノズル11を清掃することを目的とする「ノズル掃除動作」であるので、洗浄ノズル11の先端の噴出口から洗浄水は噴出しない。
【0072】
前記構成であれば、制御部56は、ノズル駆動許可判定部56aに代えて、洗浄動作許可判定部を有することになるので、運転許可スイッチ21が操作されれば、洗浄動作の許可指令が演算部56bに入力されることになる。また、ノズル掃除スイッチが操作されれば、演算部56bは、ノズル駆動部12を制御して、洗浄ノズル11を突出させるように「ノズル駆動」を行うが、洗浄動作の許可指令は入力されていないので、洗浄動作は行わない。したがって、この変形例においては、運転許可スイッチ21は、ノズル駆動運転の許可ではなく、洗浄動作の許可を行う操作スイッチとなる。
【0073】
このように、本発明では、固定操作部52および制御系統の具体的な構成に応じて、結果的に、禁止されている洗浄動作を許可する操作スイッチを備えていればよく、前述したノズル駆動運転を許可する構成に限定されない。なお、ノズル駆動部12による洗浄ノズル11の駆動(ノズル駆動)を禁止すれば、ノズル洗浄部57aの洗浄動作そのものが禁止されるので、ノズル駆動運転を許可すれば、洗浄動作が許可されることは言うまでもない。
【0074】
あるいは、運転許可スイッチ21を設けずに、洗浄動作操作スイッチ23のうち、複数のスイッチを同時に操作することによって、運転許可スイッチ21と同じくノズル駆動運転の許可指令(または洗浄動作の許可指令)を制御部56に入力できるように構成してもよい。例えば、洗浄停止スイッチ23aおよび通常洗浄開始スイッチ23bを同時に押すことで、運転許可スイッチ21と同一に機能するよう構成することができる。
【0075】
さらには、本実施の形態では、ノズル駆動運転が許可されたことは、運転中表示LED22aという発光体により使用者に報知されるが、もちろんこれに限定されず、発光体以外の公知の表示器(前記タッチパネル等の画像表示装置等)が用いられてもよいし、表示器ではなく音声を発する報知器が用いられてもよいし、これらの組合せが用いられてもよい。つまり、使用者に対してノズル駆動運転(または洗浄動作)が許可されたことを報知できるのであれば、報知を行う手段については特に限定されない。なお、本実施の形態のようなLEDを用いれば、部材の寸法が小さいため、固定操作部52のコンパクト化を図ることができる上に、安価かつ低消費電力でもあるため、製造コストおよびランニングコストの増加を抑制することができる。
【0076】
(実施の形態2)
前記実施の形態1に係る衛生洗浄装置50Aは、ノズル駆動運転が許可されれば、運転許可スイッチ21の近傍に設けられた運転中表示LED22aが点灯して、ノズル駆動運転が許可されていることを表示するよう構成されているが、本実施の形態に係る衛生洗浄装置は、さらに、操作可能であることを表示する表示部が洗浄動作操作スイッチ23の近傍に設けられているか、洗浄動作操作スイッチ23と一体化されている構成となっている。当該構成について、図5および図6(a)〜(c)を参照して説明する。図5は、実施の形態に係る衛生洗浄装置50Bの制御系統の要部を示すブロック図である。図6(a)〜(c)は、本実施の形態に係る衛生洗浄装置50Bが備える固定操作部52の操作面のうち、洗浄操作面52aの構成の一例を示す平面図である。
【0077】
図5に示すように、本実施の形態に係る衛生洗浄装置50Bは、前記実施の形態1に係る衛生洗浄装置50Aと基本構成は同一であるが、洗浄動作操作スイッチ23の近傍に操作可能表示LED22bが設けられ、演算部56bの演算により操作可能表示LED22bが点灯または消灯することにより、洗浄動作操作スイッチ23が操作可能であるか否かが使用者に報知されるように構成されている。
【0078】
操作可能表示LED22bの具体的構成は特に限定されないが、例えば、図6(a)に示すように、押ボタンとして構成されている通常洗浄開始スイッチ23bの図中上側(衛生洗浄装置50Bの右側)に、通常洗浄開始可能表示LED22b−1が設けられ、ビデ洗浄開始スイッチ23dの図中上側(衛生洗浄装置50Bの右側)に、ビデ洗浄開始可能表示LED22b−2が設けられている構成が挙げられる。
【0079】
これら通常洗浄開始可能表示LED22b−1およびビデ洗浄開始可能表示LED22b−2は、運転許可スイッチ21が操作され、ノズル駆動運転が許可された時点で、運転中表示LED22aが点灯すると同時に、点滅して表示される構成となっている。この点滅表示により、これら操作スイッチが操作可能であることが使用者に報知される。また、例えば、通常洗浄開始スイッチ23bが操作されれば、通常洗浄開始可能表示LED22b−1が点滅から継続点灯に切り換わるように構成されてもよい。ビデ洗浄についても同様である。なお、操作可能であることを示す点滅表示の制御は、図4に示すフローチャートにおけるステップS107で実行されればよく、点滅から継続点灯に切り換わる制御は、ステップS108で実行されればよい。
【0080】
また、図6(b)に示すように、押ボタンの内側にLED等の発光素子を設け、押ボタンの押面が透光性を有するように構成することもできる。この例では、図3または図6(a)における通常洗浄開始スイッチ23bに代えて、押ボタン全体が発光する発光型の通常洗浄開始スイッチ23gが設けられるとともに、ビデ洗浄開始スイッチ23dに代えて、発光型のビデ洗浄開始スイッチ23hが設けられている。これらスイッチは、運転許可スイッチ21が操作されノズル駆動運転が許可されたと同時に、発光するように構成されればよい。図6(b)では、運転中表示LED22a、発光型の通常洗浄開始スイッチ23g、発光型のビデ洗浄開始スイッチ23hのいずれについても、図中で縦方向に二点鎖線で二分割されており、図中向かって左側(図中、offと記載)が、ノズル駆動運転が禁止されて(運転許可スイッチ21がOFF操作のままで)消灯していることを示し、図中向かって右側(図中、onと記載)が、ノズル駆動運転が許可されて(運転許可スイッチ21がON操作されて)点灯または発光していることを示している。
【0081】
図6(b)に示す押ボタン(操作スイッチ)の構成は、当該押ボタンの押面が透光性を有していればよい。一般的には、押ボタンの枠を除いて、洗浄操作面52aと同様の色で着色され、内部の発光素子が光れば、その光が押面から透けて見えるように構成されればよく、押面が透明である必要はない。また、押ボタンの押面が、洗浄操作面52aとは異なる色で着色されてもよい。
【0082】
さらに、図6(c)に示すように、押ボタンの内側に発光素子を設ける点は同じでも、押ボタンの周囲のみを発光させる構成も挙げることができる。この例では、図3または図6(a)における通常洗浄開始スイッチ23bに代えて、押ボタンの枠に沿って周囲が発光する型(周囲発光型)の通常洗浄開始スイッチ23iが設けられるとともに、ビデ洗浄開始スイッチ23dに代えて、同じく周囲発光型のビデ洗浄開始スイッチ23jが設けられている。図6(c)においても、運転中表示LED22a、周囲発光型の通常洗浄開始スイッチ23i、周囲発光型のビデ洗浄開始スイッチ23jのいずれについても、図中で縦方向に二点鎖線で二分割されており、図中向かって左側(図中、offと記載)が、ノズル駆動運転が禁止されて(運転許可スイッチ21がOFF操作のままで)消灯していることを示し、図中向かって右側(図中、onと記載)が、ノズル駆動運転が許可されて(運転許可スイッチ21がON操作されて)点灯または発光していることを示している。
【0083】
また、図示されないが、通常洗浄開始スイッチ23bおよびビデ洗浄開始スイッチ23dの文字の部分(「おしり」、「ビデ」)等が発光するように構成されてもよい。
【0084】
このように、本実施の形態に係る衛生洗浄装置50Bでは、ノズル駆動運転が許可されたときに、複数種類の洗浄動作操作スイッチ23のいずれが操作可能であるのかを表示するように構成しているので、使用者にとって、より一層使いやすいものとなっている。
【0085】
ここで、本実施の形態に係る衛生洗浄装置50Bおよび前記実施の形態1に係る衛生洗浄装置50Aにおいては、着座センサおよびリモコン操作部(遠隔操作部)を備えていないが、本発明はこれに限定されず、これらを備えていてもよい。ただし、前述したように、本発明の基本構成を備えている限り、着座センサおよびリモコン操作部の装備を省略することができ、部材点数の減少、製造コストの低下を図ることができるので、少なくとも着座センサは備えていないことが好ましく、リモコン操作部も備えていないことがより好ましい。
【0086】
なお、本発明は上記の各実施の形態の記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲内で種々の変更が可能であり、異なる実施の形態や複数の変形例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施の形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明は、着座検出器および遠隔操作部を備えなくてもよい衛生洗浄装置の分野に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0088】
12 ノズル駆動部
21 運転許可スイッチ(洗浄許可操作器)
22a 運転中表示LED(洗浄許可報知器、表示器、発光体)
23 洗浄動作操作スイッチ(洗浄操作器)
23a 洗浄停止スイッチ(洗浄操作器)
23b 通常洗浄開始スイッチ(洗浄操作器)
23d ビデ洗浄開始スイッチ(洗浄操作器)
50A 衛生洗浄装置
50B 衛生洗浄装置
51 本体部
52 固定操作部
52a 洗浄操作面(操作面)
52b 基本操作面(操作面)
56 制御部
57a ノズル洗浄部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者が着座する便座部を支持する本体部と、
当該本体部内に設けられ、洗浄水を噴出する洗浄動作を行うノズル洗浄部と、
前記本体部に一体的に設けられ、前記ノズル洗浄部を操作する洗浄操作器を有する固定操作部と、
前記ノズル洗浄部を少なくとも制御する制御部と、
を備える衛生洗浄装置であって、
前記ノズル洗浄部の前記洗浄動作を許可する許可指令を前記制御部に入力する洗浄許可操作器と、
前記洗浄動作が許可されたことを報知する洗浄許可報知器と、
をさらに備え、
前記制御部は、前記洗浄許可操作器からの前記許可指令の入力がない場合には、前記洗浄操作器が操作されても前記ノズル洗浄部の前記洗浄動作を禁止する一方、
前記洗浄許可操作器から前記許可指令の入力があった場合には、前記ノズル洗浄部の前記洗浄動作を許可し、前記洗浄操作器からの操作指令に従って前記ノズル洗浄部を制御するとともに、前記洗浄許可報知器を動作させるよう構成されている、
衛生洗浄装置。
【請求項2】
前記洗浄許可報知器は、前記使用者に視覚情報を表示する表示器であり、当該表示器は、前記固定操作部に設けられている、
請求項1に記載の衛生洗浄装置。
【請求項3】
前記固定操作部は、前記本体部における前記便座部に着座した使用者から見て右側の部位から、前記使用者から見て前側に延びるように設けられており、
前記固定操作部の上面は、前記使用者が操作を行うための操作面となっており、
前記洗浄許可操作器および前記表示器は、前記操作面に設けられている、
請求項2に記載の衛生洗浄装置。
【請求項4】
前記洗浄操作器は、前記洗浄許可操作器および前記表示器とともに前記固定操作部の前記操作面に設けられている、
請求項3に記載の衛生洗浄装置。
【請求項5】
前記表示器が発光体であり、前記洗浄許可操作器および前記洗浄操作器の少なくとも一方に隣接して前記発光体が配置されている、
請求項3に記載の衛生洗浄装置。
【請求項6】
前記表示器が発光体であり、
前記洗浄許可操作器および前記洗浄操作器の少なくとも一方に、前記発光体が一体化して設けられている、
請求項3に記載の衛生洗浄装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−58237(P2011−58237A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−208024(P2009−208024)
【出願日】平成21年9月9日(2009.9.9)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】