説明

衛生洗浄装置

【課題】洗浄後の局部等を乾燥する乾燥機構を備えた衛生洗浄装置において、使用者に対して過剰な冷たさおよび熱さを与えることなく、短時間で効率よく被洗浄面を乾燥できるようにする。
【解決手段】衛生洗浄装置は、局部等の洗浄の後に、当該局部に温風を送風する温風乾燥部と、当該局部に空気を噴射する空気噴射部とを有する。温風乾燥部は、温風を生成する温風生成部と、温風を局部に向かって送風する温風送風口を有する先端部と、温風生成部からでる温風を先端部に供給する温風供給管とを有する。温風乾燥部の先端部は、その温風送風口から出る温風の進行方向が、ノズルの軸の方向に略平行であり、かつ、空気噴出口から噴出される加圧空気の進行方向と交わるように、ノズルの側面に沿って配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体の局部等を温水等の洗浄水で洗浄する衛生洗浄装置に関し、特に、洗浄後の濡れた局部等の表面を、空気の噴出と温風の送風により乾燥させるための乾燥機構を備えた衛生洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人体の局部等を洗浄する衛生洗浄装置の技術分野においては、使用者の好みに応じた洗浄を実現すべく各種の機能を付与することが提案されている。このような機能を有する衛生洗浄装置であれば、使用者は、快適な局部の洗浄を行うことができる。ただし、局部を洗浄した後、使用者は、トイレットペーパー等の衛生紙を用いて局部に付着した水滴を除去していた。そこで、近年では、衛生紙を用いることなく局部に付着した水滴を除去するために、衛生洗浄装置に乾燥機能を付与することが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、温風を吹き出す乾燥機構に加えて、使用者の被洗浄部位(局部等)に付着している水滴(残留付着水滴)を飛散または拡散させる空気噴射手段を備えた衛生洗浄装置が提案されている。図18は、特許文献1に開示されている衛生洗浄装置の上面図であり、図19は、当該衛生洗浄装置の部分断面図である。
【0004】
図18および図19に示すように、特許文献1に開示されている衛生洗浄装置は、便器501上に配置された便座502、便蓋503、衛生洗浄装置の本体ケース504および水洗タンク(ロータンク)509を備えている。本体ケース504には、温風吹出し装置505、洗浄水噴射ノズル508、洗浄水圧送用ポンプ511、温水タンク512、空気圧縮機513、高圧空気溜め514、電磁弁515が内蔵されている。温風吹出し装置505は、風路506および温風吹出し口507を有し、局部に温風を吹き出すよう構成されている。洗浄水噴射ノズル508は、局部に温水を噴射する。洗浄水送水用ポンプ511および温水タンク512は、洗浄水噴射ノズル508に温水を供給する。空気圧縮機513は空気を圧縮し、高圧空気溜め514は、圧縮された高圧空気を溜めておく。電磁弁515は、高圧空気溜め514に接続されるとともに、高圧ホース517にも接続されている。
【0005】
便座502には、内部に空洞516が設けられ、さらに、便座502の内側の縁部には、複数の空気噴出ノズル518が、空洞516につながるように設けられている。空洞516は、高圧ホース517を介して電磁弁515に接続されている。電磁弁515が開くと、高圧空気溜め514から高圧空気が高圧ホース517を介して空洞516に送出され、空洞516につながる空気噴出ノズル518から高圧空気が噴出される。つまり、前記構成の衛生洗浄装置では、空気圧縮機513、高圧空気溜め514、電磁弁515、高圧ホース517、便座502内の空洞516、空気噴出ノズル518により、空気噴射手段が構成されている。
【0006】
人体510が便座502に着座し、用便の後、洗浄操作を行うと、洗浄水送水用ポンプ511が動作し、温水タンク512を通して洗浄水噴射ノズル508より温水が被洗浄面に噴射され、これにより局部が洗浄される。洗浄の後、乾燥操作により空気圧縮機513が動作し、高圧空気溜め514、電磁弁515、高圧ホース517、空洞516および空気噴出ノズル518を通して高圧空気が局部近傍に噴出され、局部に付着した水滴を吹き飛ばして飛散または拡散させる。つぎに温風吹出し装置505が動作し、風路506を介して温風吹出口507から温風が局部近傍に吹き出され、局部近傍が乾燥される。
【0007】
衛生洗浄装置が乾燥機構のみを備えている構成であれば、温風吹出しによる局部の乾燥には数分間を要することになる。そこで、乾燥時間を短縮するために温風温度を高くするとともに風量を増加させると、使用者にとっての温熱感が強過ぎ、実用に適さないという課題が生じていた。特許文献1に開示される衛生洗浄装置においては、上記のような空気噴射手段を備えることにより、乾燥時間を大幅に短縮することが意図されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭58−218531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、空気噴射手段を備える構成の従来の衛生洗浄装置においては、加圧空気の噴射によって使用者が冷たさを感じるという不具合が生じており、改善の余地があった。
【0010】
例えば、特許文献1に開示される衛生洗浄装置では、空気圧縮機513から高圧空気溜め514に一旦空気を貯留すると、加圧時に加熱された空気は高圧空気溜め514からの放熱によって冷却されてしまう。そのため、高圧空気を空気噴出ノズル518から開放する際に、空気の膨張により熱が奪われて、使用者に極度の冷感を与えてしまう場合がある。さらに、人体局部に付着する水滴が蒸発することから、人体から水の気化熱(潜熱)に相当する熱量が奪われるため、さらに冷たさを感じてしまう。
【0011】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、洗浄後の局部等を乾燥する乾燥機構を備えた衛生洗浄装置において、使用者に対して過剰な冷たさおよび熱さを与えることなく、短時間で効率よく被洗浄面を乾燥できるようにする衛生洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記従来技術の有する課題を解決するために、本発明は、
着座面を有する便座部と、
便座部に着座する使用者の局部に対して洗浄水を噴出する洗浄水噴出部と、
洗浄水噴出部による前記洗浄水の噴出の後に、使用者の前記局部およびその周囲に対して加圧空気を噴出する空気噴出口を先端部に有する筒状のノズルを有する空気噴射部と、
ノズルをその軸の方向に進退可能に支持するノズル支持部と、
ノズル支持部に固定されており、ノズルを軸方向に進退駆動する進退駆動手段と、
温風を生成する温風生成部と、温風を使用者の局部に向かって送風する温風送風口を有する先端部と、温風生成部からでる温風を先端部に供給するための温風供給管と、有する温風乾燥部と、
温風乾燥部が温風を生成し、空気噴射部による空気の噴出の開始と同時又は空気の噴出の開始の前に、温風の送風を開始するように、空気噴射部及び前記温風乾燥部を少なくとも制御する制御部と、
を有しており、
温風乾燥部の先端部は、その温風送風口から出る温風の進行方向が、ノズルの軸の方向に略平行であり、かつ、空気噴出口から噴出される加圧空気の進行方向と交わるように、ノズルの側面に沿って配置されている、
衛生洗浄装置を提供する(請求項1)。
【0013】
上記の構成により、温風乾燥部の先端部に形成された温風送風口からでる温風は、ノズルの側面に沿って進行し、空気噴出口から噴出される加圧空気(の流れ)に合流してその
進行方向を変えて、加圧空気とともに使用者の局部に向かうことになる。
【0014】
そのため、先に述べた従来の衛生洗浄装置に比較して、使用者の局部には加圧空気に加えて温風がピンポイントで効率よく当たることになる。これにより、本発明の衛生洗浄装置によれば、使用者に対して過剰な冷たさおよび熱さを与えることなく、短時間で効率よく被洗浄面を乾燥することができるようになる。
【0015】
また、本発明の衛生洗浄装置は、従来に比較して温風を送風する範囲を狭くして風量を低減することができるので、温風生成部の小型軽量化(温風ファンなどの小型軽量化)、温風生成部の熱量削減(加熱ヒータなどの熱量削減)をすることもできる。
【0016】
ここで、本発明において、「被洗浄面」の範囲は、人体局部およびその周辺のうち使用者の排泄により汚れうる範囲であることが好ましい。この「被洗浄面」の範囲は、使用者の体型の分布、便器の大きさ、便器の形状、洗浄水の吐出量範囲、洗浄水の吐出圧範囲などを考慮して、実験及びシミュレーションのうちの何れかにより予め求めて設定しておいてもよい。また、この「被洗浄面」の範囲は、排泄により汚れうる範囲を検知可能なセンサなど
(排泄物中の水分などを検知する赤外線センサなど)により、使用者が衛生洗浄装置を使用する度毎にセンシングして最適な範囲を求める構成としてもよい。
【0017】
また、ここで、本発明において、「被乾燥面」の範囲は、人体局部及びその周辺のうち洗浄水により洗浄処理された際に洗浄水で濡れうる範囲であることが好ましい。さらに、「被乾燥面」の範囲(面積)が「被洗浄面」の範囲(面積)以上であり、かつ、「被乾燥面」に被洗浄面の全範囲が含まれるよう設定されていることが好ましい。なお、この「洗浄水で濡れうる範囲」には、通常、上述の「被洗浄面」の範囲、すなわち、「人体局部およびその周辺のうち使用者の排泄により汚れうる範囲」が含まれるが、「洗浄水で濡れうる範囲」に「被洗浄面」の範囲が含まれない場合には、「被乾燥面」の範囲は、「洗浄水で濡れうる範囲」と「被洗浄面」の範囲とを含む範囲であることが好ましい。
【0018】
この「被乾燥面」の範囲は、使用者の体系の分布、便器の大きさ、便器の形状、加圧空気の吐出量範囲、加圧空気の吐出圧範囲などを考慮して、実験及びシミュレーションのうちの何れかにより予め求めて設定しておいてもよい。また、この「被乾燥面」の範囲は、洗浄水で濡れうる範囲を検知可能なセンサなど(水分を検知する赤外線センサなど)により、使用者が衛生洗浄装置を使用する度毎にセンシングして最適な範囲を求める構成としてもよい。
【0019】
また、先に述べた本発明の効果をより確実に得る観点から、本発明の衛生洗浄装置においては、ノズル支持部は、ノズルが通過できる内径を有する貫通孔が形成されたノズルガイド部を有しており、温風乾燥部の温風供給管の下流部分の一部がノズルガイド部に接続されており、温風乾燥部の先端部がノズルガイド部内に形成されており、温風送風口がノズルガイド部の貫通孔の近傍に形成されていることが好ましい(請求項2)。
【0020】
本発明の上記目的、他の目的、特徴、及び利点は、添付図面参照の下、以下の好適な実施態様の詳細な説明から明らかにされる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の衛生洗浄装置は、洗浄後の局部等を乾燥する乾燥機構を備えた構成において、使用者に対して過剰な冷たさおよび熱さを与えることなく、短時間で効率よく被洗浄面を乾燥できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態に係る衛生洗浄装置とこれを備えるトイレ装置の外観構成を模式的に示す斜視図
【図2】図1に示した衛生洗浄装置における本体部及び遠隔操作部の制御系統を模式的に示すブロック図
【図3】図1に示した衛生洗浄装置における遠隔操作部の一例を示す正面図
【図4】図1に示した衛生洗浄装置における洗浄水噴出部の模式的な構成と制御系統の概要とを示すブロック図
【図5】図1に示した衛生洗浄装置における温風乾燥部および空気噴射部の模式的な構成と制御系統の概要とを示すブロック図
【図6】図1に示した衛生洗浄装置における共用ノズル部の具体的な構成を示す斜視図
【図7】図1に示した衛生洗浄装置における制御部の具体的な構成と、温風乾燥部および空気噴射部の要部を制御する構成とを示すブロック図
【図8】図1に示した衛生洗浄装置における洗浄動作および乾燥動作の制御の一例を示すタイムチャート
【図9】(a)図1に示した衛生洗浄装置における共用ノズル部による洗浄動作の一例を示す模式的断面図(b)図1に示した衛生洗浄装置における共用ノズル部による空気噴射動作の一例を示す模式的断面図(c)図1に示した衛生洗浄装置における共用ノズル部による空気噴射動作の一例を示す模式的断面図
【図10】(a)図1に示す衛生洗浄装置が備える共用ノズル部による洗浄動作の一例を示す部分断面図(b)図1に示す衛生洗浄装置が備える共用ノズル部による空気噴射動作の一例を示す部分側面図(c)図1に示す衛生洗浄装置が備える共用ノズル部による空気噴射動作の一例を示す部分側面図
【図11】図9(b),(c)および図10(b),(c)に示した共用ノズル部が空気噴射動作を行っている状態において、エア噴出口の移動経路を示す模式図
【図12】図9(b),(c)および図10(b),(c)に示した共用ノズル部が空気噴射動作を行っている状態において、エア噴出口の移動経路を示す模式図
【図13】図1に示した衛生洗浄装置における制御部が、温風乾燥部および空気噴射部の動作を制御する一例を示すフローチャート
【図14】温風の送風が開始してからの温冷感または送風温度との関係を示すグラフ
【図15】本発明の第2実施形態に係る衛生洗浄装置における共用ノズル部の構成を示す部分斜視図
【図16】図6に示したノズル部とノズルガイド部56bの断面図
【図17】図6に示したノズル部20とノズルガイド部56bの側面図
【図18】従来の衛生洗浄装置を示す上面図
【図19】従来の衛生洗浄装置を示す部分断面図
【発明を実施するための形態】
【0023】
第1の発明は、
着座面を有する便座部と、
便座部に着座する使用者の局部に対して洗浄水を噴出する洗浄水噴出部と、
洗浄水噴出部による洗浄水の噴出の後に、使用者の局部およびその周囲に対して加圧空気を噴出する空気噴出口を先端部に有する筒状のノズルを有する空気噴射部と、
ノズルをその軸の方向に進退可能に支持するノズル支持部と、
ノズル支持部に固定されており、ノズルを軸方向に進退駆動する進退駆動手段と、
温風を生成する温風生成部と、温風を使用者の局部に向かって送風する温風送風口を有する先端部と、温風生成部からでる温風を先端部に供給するための温風供給管と、を有する温風乾燥部と、
温風乾燥部が温風を生成し、空気噴射部による空気の噴出の開始と同時又は空気の噴出の開始の前に、温風の送風を開始するように、空気噴射部及び温風乾燥部を少なくとも制
御する制御部と、
を有しており、
温風乾燥部の先端部は、その温風送風口から出る温風の進行方向が、ノズルの軸の方向に略平行であり、かつ、空気噴出口から噴出される加圧空気の進行方向と交わるように、ノズルの側面に沿って配置されている、衛生洗浄装置を提供するものである。
【0024】
これにより、温風乾燥部の先端部に形成された温風送風口からでる温風は、ノズルの側面に沿って進行し、空気噴出口から噴出される加圧空気(の流れ)に誘引され合流してその進行方向を変えて、加圧空気とともに使用者の局部に向かうことになり、使用者の局部に、加圧空気に加えて温風をピンポイントで効率よく当てることが可能となる。したがって、使用者に対して過剰な冷たさおよび熱さを与えることなく、短時間で効率よく被洗浄面を乾燥することができる。
【0025】
また、温風をピンポイントで効率よく当てることが可能なため、温風を送風する範囲を狭くして風量を低減することができる。そのため、温風生成部の小型軽量化(温風ファンなどの小型軽量化および小型化による低騒音化)、温風生成部の熱量削減(加熱ヒータなどの熱量削減および省電力化)をすることもできる。
【0026】
以上のように、第1の発明においては、使用者に冷風感を与えることなく、短時間で効率よい乾燥を行うことができる。また、温風ファン風量削減によるファン小型化および小型化に伴う低騒音化、および、温風生成部の加熱ヒータなどの熱量削減による省電力化により、商品性を向上した衛生洗浄装置を提供することが出来る。
【0027】
第2の発明は、特に第1の発明の衛生洗浄装置のノズル支持部が、ノズルが通過できる内径を有する貫通孔が形成されたノズルガイド部を有しており、温風乾燥部の温風供給管の下流部分の一部がノズルガイド部に接続されており、温風乾燥部の先端部がノズルガイド部内に形成されており、温風送風口がノズルガイド部の貫通孔の近傍に形成されている構成としたものである。これにより、ノズルガイド部と一体で形成される部品点数の増加がなく、低コスト化をはかることが出来る。また、一体で成形されるガイド部品は公知の樹脂材料で形成されるため、特殊な材料による高コスト化を避けることができる。
【0028】
以下、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明では全ての図を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0029】
(第1実施形態)
[衛生洗浄装置およびトイレ装置の全体構成]
まず、本発明の第1実施形態に係る衛生洗浄装置の構成について、図1および図2に基づいて説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る衛生洗浄装置101とこれを備えるトイレ装置100の外観構成を模式的に示す斜視図である。また、図2は、図1に示す衛生洗浄装置101のうち、本体部110および遠隔操作部120の制御系統を模式的に示すブロック図である。
【0030】
トイレ装置100は、トイレットルーム内に設置され、図1に示すように、本実施形態では、主として、衛生洗浄装置101と、入室センサ102と、便器103とから構成されている。
【0031】
便器103は、トイレットルーム内に固定されており、図示されない下水道の配管に接続されている。この便器103に対して衛生洗浄装置101が取り付けられている。
【0032】
入室センサ102は、トイレットルーム内の図示されない入口の壁面等に固定して取り付けられている。この入室センサ102は、衛生洗浄装置101との間で無線により通信が可能となっており、使用者がトイレットルーム内に入室したことを検出し、衛生洗浄装置101に送信する。衛生洗浄装置101は、この入室の検出に基づいて、所定の制御を行うよう構成されている。入室センサ102の具体的な構成は特に限定されず、公知の構成が好適に用いられる。本実施形態では、例えば反射型の赤外線センサが用いられ、人体から反射された赤外線を検出した場合にトイレットルーム内に使用者が入室したことを検出し、本体部110に送信する。
【0033】
図1に示すように、衛生洗浄装置101は、本体部110と、遠隔操作部120と、便座部130と、便蓋部140とから構成されている。
【0034】
図2に示すように、本体部110は、主として、洗浄水噴出部30と、温風乾燥部40と、空気噴射部50と、制御部60Aと、検出センサ部70とから構成されている。
【0035】
洗浄水噴出部30は、遠隔操作部120の操作により、倒伏位置にある便座部130に着座した使用者の局部に対して、洗浄水を噴出し、局部を洗浄する。
【0036】
空気噴射部50は、洗浄水噴出部30により局部を洗浄した後、あるいは同時に空気噴射部による空気の噴出の開始し、局部に加圧空気(あるいは圧縮空気、以降、単に「エア」とする)を噴射し、局部およびその周囲に付着する洗浄水の水滴を除去する。
【0037】
温風乾燥部40は、温風を生成し、空気噴射部50による空気の噴出の開始と同時又は空気の噴出の開始の前に、前記温風の送風を開始する。温風乾燥部40の先端部に形成された温風送風口からでる温風は、ノズルの側面に沿って進行し、エア噴出口から噴出されるエア(の流れ)に誘引され合流してその進行方向を変えて、エアとともに使用者の局部を乾燥する。
【0038】
なお、本実施形態では、使用者の局部およびその周囲のうち、洗浄水噴出部30により洗浄水が噴出される範囲を「被洗浄面」と称し、空気噴射部50によりエアが噴射される範囲を「被乾燥面」と称する。被洗浄面および被乾燥面は、いずれも使用者の局部を中心とした体表面であるが、特に本実施形態においては、「被洗浄面」の範囲は、人体局部およびその周辺のうち使用者の排泄により汚れうる範囲であることが好ましい。この「被洗浄面」の範囲は、使用者の体型の分布、便器の大きさ、便器の形状、洗浄水の吐出量範囲、洗浄水の吐出圧範囲などを考慮して、実験およびシミュレーションのうちの何れかにより予め求めて設定しておいてもよい。また、この「被洗浄面」の範囲は、排泄により汚れうる範囲を検知可能なセンサなど(排泄物中の水分などを検知する赤外線センサなど)により、使用者が衛生洗浄装置を使用する度毎にセンシングして最適な範囲を求める構成としてもよい。
【0039】
また、本実施形態における「被乾燥面」の範囲は、人体局部およびその周辺のうち洗浄水により洗浄処理された際に洗浄水で濡れうる範囲であることが好ましい。さらに、「被乾燥面」の範囲(面積)が「被洗浄面」の範囲(面積)以上であり、かつ、「被乾燥面」に被洗浄面の全範囲が含まれるよう設定されていることが好ましい。なお、この「洗浄水で濡れうる範囲」には、通常、上述の「被洗浄面」の範囲、すなわち、「人体局部およびその周辺のうち使用者の排泄により汚れうる範囲」が含まれるが、「洗浄水で濡れうる範囲」に「被洗浄面」の範囲が含まれない場合には、「被乾燥面」の範囲は、「洗浄水で濡れうる範囲」と「被洗浄面」の範囲とを含む範囲であることが好ましい。
【0040】
この「被乾燥面」の範囲も、「被洗浄面」の範囲を求める場合と同様に、使用者の体系
の分布、便器の大きさ、便器の形状、加圧空気の吐出量範囲、加圧空気の吐出圧範囲などを考慮して、実験およびシミュレーションのうちの何れかにより予め求めて設定しておいてもよい。また、この「被乾燥面」の範囲も、「被洗浄面」の範囲を求める構成と同様に、洗浄水で濡れうる範囲を検知可能なセンサなど(水分を検知する赤外線センサなど)により、使用者が衛生洗浄装置を使用する度毎にセンシングして最適な範囲を求める構成としてもよい。
【0041】
また、図2には詳細に図示されないが、本体部110は、入室センサ102および遠隔操作部120と無線で通信が可能となっている。それゆえ、本体部110が入室センサ102または遠隔操作部120から信号を受信することで、各種の操作情報や入室検出情報が制御部60Aに入力される。また、検出センサ部70からも制御用の各種の検出情報が入力される。制御部60Aは、操作情報および検出情報に基づき、洗浄水噴出部30、温風乾燥部40および空気噴射部50、並びに、検出センサ部70の動作を制御する。
【0042】
本体部110は、本実施形態では、樹脂等で形成されている筐体81内に、洗浄水噴出部30、温風乾燥部40、空気噴射部50、制御部60A、および検出センサ部70が収容されている構成となっている。また、本体部110には、図示されない電源回路部等も収容され、当該電源回路部に給電線82の一方が接続され、当該給電線82の他方には電源プラグ83が接続されている。電源プラグ83は、図1に示すように、コンセントに差し込まれ、これにより、本体部110に対して電力が供給される。
【0043】
本体部110、便座部130および便蓋部140は、一体的に組み付けられて便器103の上面に設置される。便座部130および便蓋140は、本体部110に回動自在に取り付けられており、便座部130が倒伏位置にあって、便蓋部140が起立位置ある状態で、使用者が便座部130に着座する。なお、便座部130および便蓋部140が倒伏位置から起立位置へ向かって回動することを「開く」といい、起立位置から倒伏位置へ向かって回動することを「閉じる」という。
【0044】
便座部130は、本実施形態では、内部に図示されない便座ヒータを備える構成となっている。これにより、便座部130に着座した使用者の臀部を暖めることができる。すなわち、本実施形態における衛生洗浄装置101は、局部の洗浄および乾燥機能に加えて、暖房便座の機能も備えている。便座部130の具体的な構成は特に限定されないが、本実施形態では、金属製の便座となっていると好ましい。この構成であれば、使用者がトイレットルームに入室したと同時に便座ヒータを動作させることで迅速に便座部130を暖めることができるので、待機電力が少なくてすむ。
【0045】
本実施形態では、便座部130が暖房便座であるので、図2には図示されないが、制御部60Aは、便座部130による暖房動作も制御するよう構成されている。特に、便座部130が金属製の便座であれば、入室センサ102による使用者の入室の検出をトリガーとして、便座部130の暖房を開始する制御が行われる。また、遠隔操作部120の操作により、便座部130の暖房温度を変更することもできる。
【0046】
なお、便器103および便蓋部140の具体的構成は特に限定されず、トイレ装置および衛生洗浄装置の分野で公知の形状、材質等のものが用いられる。
【0047】
[衛生洗浄装置の基本構成]
次に、本実施形態に係る衛生洗浄装置101の基本構成について、図1〜図7に基づいて説明する。図3は、図1に示した衛生洗浄装置101における遠隔操作部120の具体的な構成を示す正面図である。また、図4は、図1に示した衛生洗浄装置101における洗浄水噴出部30の模式的な構成と制御系統の概要とを示すブロック図である。さらに、
図5は、図1に示した衛生洗浄装置101における温風乾燥部40および空気噴射部50の模式的な構成と制御系統の概要とを示すブロック図である。また、図6は、図1に示した衛生洗浄装置101における共用ノズル部20と温風乾燥部40の具体的な構成を示す斜視図である。さらに、図7は、図1に示した衛生洗浄装置101おける制御部60Aの具体的な構成と、温風乾燥部40および空気噴射部50の要部を制御する構成とを示すブロック図である。
【0048】
[遠隔操作部]
遠隔操作部120は、図1及び図3に示すように、長方形の板状であって、長辺方向が水平方向に、短辺方向が鉛直方向に沿うように、壁面に固定される。遠隔操作部120の正面には、後述するように、操作用の各種スイッチ、表示部等が設けられている。なお、図示されない背面はトイレットルーム内の壁面に対向する面となる。
【0049】
遠隔操作部120は、図3(a)および(b)に示すように、コントローラ本体部121およびコントローラ蓋部122から少なくとも構成されている。遠隔操作部120の正面は、その長辺方向に沿って上下の領域に2分割され、その上部では、コントローラ本体部121の前面が露出し、その下部では、コントローラ蓋部122によりコントローラ本体部121が覆われている。コントローラ蓋部122は図示されないヒンジ部により、コントローラ本体部121に対して開閉自在に設けられている(図3(a)において矢印で図示)。
【0050】
図3(a)に示すように、遠隔操作部120の正面の上部であるコントローラ本体部121の上部には、乾燥モード選択スイッチ220a,220b,220c、強さ調整スイッチ222,223および位置調整スイッチ225,226が設けられている。乾燥モード選択スイッチ220a,220b,220cのそれぞれの図中向かって左側には、いずれの乾燥モードが選択されているかを示すLED表示部221a,221b,221cが設けられている。また、強さ調整スイッチ222および223の上側には、洗浄強さを段階的に示す洗浄強さ表示部224が設けられ、位置調整スイッチ225および226の上側には、洗浄位置を示す洗浄位置表示部227が設けられている。コントローラ蓋部112が閉じられた状態では、遠隔操作部120の正面の下部であるコントローラ蓋部122の外面には、停止スイッチ211、乾燥スイッチ214、おしりスイッチ212およびビデスイッチ213が設けられている。
【0051】
図3(b)に示すように、コントローラ蓋部122が開かれた状態では、露出しているコントローラ本体部121の下部には、停止スイッチ211、乾燥スイッチ214、おしりスイッチ212およびビデスイッチ213に加えて、便蓋部自動開閉スイッチ231a、便座部自動開閉スイッチ231b、温風温度調整スイッチ240、水温調整スイッチ232、便座温度調整スイッチ233、節電スイッチ234、除菌スイッチ235および便器洗浄スイッチ236が設けられている。温風温度調整スイッチ240、水温調整スイッチ232、および便座温度調整スイッチ233のそれぞれの図中向かって左側には、温風温度、水温、および便座温度のそれぞれの高低を段階的に示す温度手ベル表示部239,237および238が設けられている。
【0052】
前記各スイッチは、便蓋部自動開閉スイッチ231a、便座部自動開閉スイッチ231bおよび便座洗浄スイッチ236を除いて、いずれもボタンスイッチとして構成されている。また、便蓋部自動開閉スイッチ231a、便座部自動開閉スイッチ231bおよび便座洗浄スイッチ236は、つまみ切換スイッチとして構成されている。使用者は、前記各スイッチがボタンスイッチであれば、そのボタンの正面を押すことにより、当該スイッチを操作し、つまみ切換スイッチであれば、つまみを「切」または「入」の位置に切り換えることにより、当該スイッチを操作する。
【0053】
使用者が前記各スイッチを操作することにより、図2に示すように、遠隔操作部120から本体部110に対して、各スイッチの操作内容に応じた所定の信号が送信される。本体部110では、制御部60Aが、受信した信号に基づいて本体部110の動作を制御する。なお、図2には図示されないが、便座部130および便蓋部140が自動開閉機構によって開閉されるように構成されていれば、遠隔操作部120または入室センサ102からの信号を本体部110で受信することにより、制御部60Aの制御によって便蓋部140、あるいは便蓋部140および便座部130が自動的に開閉するよう構成されてもよい。
【0054】
前記各スイッチとそれに対応する衛生洗浄装置101の動作について説明する。例えば、使用者がおしりスイッチ212またはビデスイッチ213を操作すれば、後述する共用ノズル部20から使用者の被洗浄面に洗浄水が噴出される。また、使用者が停止スイッチ211を操作すれば、共用ノズル部20から使用者の被洗浄面への洗浄水の噴出が停止される。
【0055】
また、使用者が乾燥スイッチ214を操作すれば、使用者の被乾燥面に対して、後述する空気噴射部50からエアが噴出されると同時に温風乾燥部40から温風が吹き出される。また、使用者が乾燥モードスイッチ220a,220b,220cを選択操作することにより、使用者の被乾燥面に対して噴出されるエアの噴出条件および温風の送風条件が変更されるので、衛星洗浄装置101の使用状況や使用者の好みにより、いずれかの乾燥モードを任意に選択することができる。例えば、本実施形態では、乾燥モードスイッチ220aを操作することにより、短時間で乾燥を終了したい場合の「急速乾燥運転」を、乾燥モードスイッチ220bを操作することにより、局部を確実に乾燥させてさらっと仕上げる「しっかり乾燥運転」を、乾燥モードスイッチ220cを操作することにより、エアを当てたくない場合に温風だけを吹き出す「温風乾燥運転」を、それぞれ選択できるようになっている。
【0056】
また、使用者は、強さ調整スイッチ222,223を操作することにより、使用者の局部に噴出される洗浄水の流量および圧力等を調整することができる。さらに、使用者は、位置調整スイッチ225,226を操作することにより、共有ノズル部20の先端部の位置を調製することができる。これにより、使用者の局部に対する洗浄水の噴出位置を調整することができる。これらのスイッチが操作される場合であっても、遠隔操作装置120から本体部110に各スイッチに応じた所定の信号が無線送信される。これにより、本体部110の制御部60Aは、受信した信号に基づいて本体部110の動作を制御する。
【0057】
また、使用者は、便蓋部自動開閉スイッチ231aのつまみを操作することにより、便蓋部140の開閉動作を設定することができる。すなわち、便蓋部自動開閉スイッチ231aのつまみがオンの位置にある場合、使用者のトイレットルームへの入室に応じて便蓋部140が自動的に開閉される。便座部自動開閉スイッチ231bについても同様である。また、使用者は、温風温度調整スイッチ240を操作することにより、温風乾燥部40から使用者の局部に吹き出される温風の送風温度を調整することができる。この温風温度調整スイッチ240は、一回押す毎に設定が、「高」、「中」、「低」、「切」と切り替わる。この「切」の設定で運転した場合は、温風乾燥部40が備える温風生成部44がオフとなり送風だけとなる。また、使用者は、水温調整スイッチ232を操作することにより、共用ノズル部20から使用者の局部に噴出される洗浄水の温度を調整することができる。また、使用者は、便座温度調整スイッチ233を操作することにより、便座部130における便座の暖房温度を調整することができる。
【0058】
なお、本体部120に設けられている室温検出部(後述)の検出値に応じて自動的に送
風温度を調節する機能である温風温度自動モードを備え、それを実行させるスイッチを別途も受けてもよい。これにより、使用者が温風温度調整スイッチ240を操作する煩わしさなしに、季節または室温等にかかわらず、自動的に快適な送風温度を得ることもできる。
【0059】
次に、本体部110が備える洗浄水噴出部30、温風乾燥部40、空気噴射部50、および検出センサ部70、並びに制御部60Aについて、それぞれ具体的に説明する。
【0060】
[洗浄水噴出部]
洗浄水噴出部30は、図4に示すように、温水加熱部31、切換弁32、洗浄ノズル部としての共用ノズル部20、開閉弁34、およびノズル移動機構52を備えている。洗浄水噴出部30は、図示されない水道管と洗浄水配管26を介して接続されている。洗浄水配管26は、開閉弁34に接続され、この開閉弁34の開閉により、共用ノズル部20へ洗浄水としての水道水が供給または遮断される。なお、図4では、水道水の供給は矢印W0で示しており、この矢印W0の方向に洗浄水としての水道水が流れる。
【0061】
開閉弁34における洗浄水の流れの下流側には、洗浄水配管26を介して温水加熱部31が接続されている。温水加熱部31は、洗浄水配管26を流れる洗浄水(水道水)を加熱するヒータであり、例えば、ケース内に、洗浄水が流通する蛇行した加熱水路と、この加熱水路全体に接するように配置される平板状セラミック製ヒータとが、ケース内に設けられる構成を挙げることができる。この構成であれば、洗浄水を所定の温度で保持する温水タンクを備える必要がなく、洗浄が必要な際に、洗浄水を瞬間的に所定の温度まで温めることができる。もちろん、温水加熱部31は、温水タンクを備える構成であってもよい。
【0062】
温水加熱部31における洗浄水の流れの下流側には、図1に破線で示すように、切換弁32が接続されている。切換弁32には、図1にも破線で示すように、洗浄水配管26を介して洗浄水配管26を介して共用ノズル部20が接続されているとともに、排水管27を介して図示されない便器103の内部にも接続されている。そして、切換弁32が切り換えられることにより、温水加熱部31から供給される所定の温度に温められた洗浄水(温水)は、共用ノズル部20に供給されるか、または、便器103の内部へ排水される(図4中矢印W2で示す)。
【0063】
共用ノズル部20は、便座部130に着座した使用者の局部(被洗浄面)を温水で洗浄する洗浄ノズル部であり、使用していない状態では本体部110に収納されている。使用時には、ノズル移動機構52により本体部110から突出し、図4では矢印W1で示すように、先端側の洗浄水噴出口22から被洗浄面に向かって温水を噴射する。また、後述するように、共用ノズル部20は、空気噴射部50におけるエアノズル部(図示せず)と一体化されている。ノズル移動機構52は、第1駆動モータ53および第2駆動モータ54(図中それぞれM1およびM2で示す)を含み、共用ノズル部20を移動することにより、使用者の局部に対して共用ノズル部20の先端側の洗浄水噴出口22の位置を相対的に移動させる。さらに、共用ノズル部20には、温風乾燥部40における温風供給口(図示せず)、温風供給管(図示せず)と一体化されている。
【0064】
共用ノズル部20およびノズル移動機構52については、温風乾燥部40、空気噴射部50を説明した後に詳述する。
【0065】
開閉弁34の開閉、温水加熱部31による洗浄水の加熱、切換弁32の切換え、共用ノズル部20を移動させるノズル移動機構52の動作は、制御部60Aにより制御される。図4には図示されないが、温水加熱部31およびノズル移動機構52は、これらを動作さ
せる駆動部を備え、制御部60Aは、これら駆動部に制御信号を出力することにより、温水加熱部31およびノズル移動機構52の動作を制御する。また、開閉弁34および切換弁32においても駆動部が設けられ、制御部60Aは、これら駆動部に制御信号を出力することにより、開閉弁34の開閉および切換弁32の切換えを制御する。
【0066】
[温風乾燥部]
温風乾燥部40は、図5に示すように、エアファン41と、先端部48と、温風供給管43と、温風生成部44とから構成されている。図5では、エアファン41、温風生成部44は、この順で、それぞれが二重線で接続された構成として図示されているが、図1に破線で示すように、エアファン41および温風生成部44は、エアファン41と温風生成部44とが接続されることで一体化された構成となっている。
【0067】
先端部48には使用者の局部に向かって温風を送風する温風送風口42が構成され、温風生成部44にて生成される温風を先端部48に供給するための温風供給管43とで接続されている。
【0068】
エアファン41は、例えば多翼ファンで構成され、自身の回転により、図5において矢印A0で模式的に示すように、外気を取り込んで空気流を形成する。温風生成部44は、例えばエアファン41の吹出口近傍に設けられ、前記空気流を所定の温度まで加熱する。これにより温風が生成され、温風供給管43により先端部48へ導かれ、温風送風口42より、図5において矢印A2で示すように温風が送風される。共用ノズル部20からは後述する空気噴射部50よりエアが噴出される。また、エアファン41および温風生成部44は、空気の噴出の開始と同時又は空気の噴出の開始の前に、温風送風口42より温風の送風を開始するよう制御部60Aで制御されている。
【0069】
温風乾燥部40の先端部48は、その温風送風口42から出る温風の進行方向が、共用ノズル部20の軸方向に略平行であり、かつ、エア噴出口21から噴出されるエアの進行方向(図5中矢印A1)と交わるように、共用ノズル部20の側面に沿って配置されており、温風乾燥部40の先端部48に形成された温風送風口42からでる温風は、ノズルの側面に沿って進行し、後述する空気噴射部50のエア噴出口21から噴出されるエア(の流れ)に合流してその進行方向を変えて、エアとともに使用者の局部に向かうことになる。
【0070】
したがって、使用者の局部にはエアに加えて温風がピンポイントで効率よく当たることになり、使用者に対して過剰な冷たさおよび熱さを与えることなく、短時間で効率よく被洗浄面を乾燥することができるようになる。
【0071】
また、温風をピンポイントで効率よく当てるため、温風を送風する範囲を狭くして風量を低減することができるので、温風生成部の小型軽量化(温風ファンなどの小型軽量化)、温風生成部の熱量削減(加熱ヒータなどの熱量削減)をすることもできる。
【0072】
なお、温風送風口42より送風される温風の風速は、後述する空気噴射部50から噴射されるエアの風速より遅く、本実施形態では、例えば秒速10m以下となっている。
【0073】
[空気噴射部]
空気噴射部50は、図5に示すように、エアポンプ51、ノズル移動機構52、および共用ノズル部20を備えている。エアポンプ51および共用ノズル部20は、図1に破線で示すように、エア配管25で接続されている。エアポンプ51は、図5において矢印A0で模式的に示すように、外気を取り込んで加圧することによりエアを生成し、エア配管25を介して共用ノズル部20に送出する。共用ノズル部20は、エアを噴射するエアノ
ズル部であって、共用ノズル部20の先端側には、洗浄水噴出口22とは別にエア噴射口21が形成されており、このエア噴射口21から、図5において矢印A1で示すようにエアが噴射する。ノズル移動機構52は、前述のとおり、共用ノズル部20を移動することにより、使用者の局部に対して共用ノズル部20の先端側のエア噴射口21の位置を相対的に移動させる。
【0074】
共用ノズル部20のエア噴射口21から噴射されるエアの風速は、局部に到達する時点で、例えば秒速20〜30mの範囲内となるよう設定されており、前述した温風乾燥部40の温風送風口42から送風される温風の風速よりも大きいものとなっている。
【0075】
また、温風乾燥部40の温風送風口42から送風される温風は、局部およびその周囲を乾燥するための空気流であるが、空気噴射部50で噴射されるエアは、局部およびその周囲(被乾燥面)に付着する水滴を除去するための空気流である。したがって、エア噴射口21から噴射されるエアは、前記温風のように局部全体に広がるように送風するのではなく、スポット状に集中させて噴出する必要がある。例えば、本実施形態では、エア噴射口21から噴射されたエアが、被乾燥面に到達した時点で直径約1cm程度の大きさとなるように、諸条件が設定されている。
【0076】
温風乾燥部40の温風送風口42から送風される温風はエア噴射口21より噴出されるエア(の流れ)に合流してその進行方向を変えて、エアとともに使用者の局部に向かうことになる。その際にエアの流れに誘引されて当該使用者の局部に向かう。
【0077】
エアファン41の動作、エアポンプ51の動作、温風生成部44の動作、共用ノズル部20を移動させるノズル移動機構52の動作は、制御部60Aにより制御される。図5には図示されないが、エアファン41、エアポンプ51、温風生成部44は、これらを動作させる駆動部を備え、制御部60Aは、これら駆動部に制御信号を出力することにより、エアファン41、エアポンプ51、温風生成部44、およびノズル移動機構52の動作を制御する。
【0078】
なお、前記のとおり、本実施形態では、エアの風速(流速)を秒速20〜30mの範囲内としているが、水滴を吹き飛ばす効果を得るためには、前記風速は一般に秒速10m以上であることが好ましい。また、エアの噴流が被乾燥面に当接する範囲の大きさは、エア噴出口21の大きさや数に依存するが、これらエア噴出口21の大きさや数は特に限定されず、前記エアポンプ51の能力とエアの風速を考慮して設定すればよい。
【0079】
[検出センサ部]
検出センサ部70は、本実施形態では、図1に示す着座センサ71および図5に示す室温検出部72から構成されている。着座センサ71は、図1に示すように、本体部110の正面上部に設けられ、便座部130に使用者が着座していることを検出する。着座センサ71の具体的な構成は特に限定されないが、本実施形態では、例えば、反射型の赤外線センサが用いられる。着座センサ71が赤外線センサであれば、人体から反射された赤外線を検出することにより便座部130に使用者が着座していることを検出する。
【0080】
室温検出部72は、衛生洗浄装置101が設置されているトイレットルームの室温を検出するものであるが、本実施形態では、後述するように、検出した室温は、制御部60Aによる送風温度補正制御に用いられる。室温検出部72の具体的構成は特に限定されないが、本実施形態では、本体部110に内蔵されるサーミスタとなっている。
【0081】
なお、本実施形態では、検出センサ部70としては、前記着座センサ71および室温検出部72に加えて、後述するノズル移動機構52に設けられ、共用ノズル部20の左右方
向の位置を検出するノズル位置センサ、温水加熱部31に設けられ、図4には図示されない流量センサ、温水加熱部31に設けられ、図示されない出湯温度センサ等が挙げられる。また、検出センサ部70としては、これらに特定されず、他の公知のセンサや検出装置が用いられてもよい。また、本実施形態では、制御部60Aによる送風温度補正制御の制御情報として、室温(乾燥に際しての雰囲気温度)が用いられるため室温検出部72を備えているが、制御部60Aによる制御の種類によっては、検出センサ部70は備えていなくてもよい。
【0082】
[共用ノズル部]
共用ノズル部20は、図6に示すように、ノズル本体20aが円筒形状となっており、先端側の外周面にエア噴射口21および洗浄水噴出口22が形成されている。本実施形態では、エア噴射口21が洗浄水噴出口22よりもノズル本体20aの先端側に形成されている。ノズル本体内20aの内部には、当該ノズル本体の20aの長手方向に沿って延伸するエア空洞部23および洗浄水空洞部24が形成されている。エア空洞部23の一方の端部は、ノズル本体20aの先端側のエア噴射口21につながっており、他方の端部はノズル本体20aの後端側の底面に露出し、この部位でエア配管25に接続されている。洗浄水空洞部24も、一方の端部が先端側の洗浄水噴出口22につながっており、他方の端部が後端側の底面に露出し、この部位で洗浄水配管26に接続されている。
【0083】
したがって、洗浄水噴出部30の温水加熱部31で温められた温水は、洗浄水配管26を介してノズル本体20aの後端側から洗浄水空洞部24に供給され、先端側の洗浄水噴出口22から噴出される。また、空気噴射部50のエアポンプ51で加圧されたエアは、エア配管25を介してノズル本体20aの後端側からエア空洞部23に供給され、先端側のエア噴射口21から噴射される。
【0084】
ノズル本体20aの具体的な形状、寸法、材質等は特に限定されず、衛生洗浄装置やトイレ装置の分野で公知の構成を好適に用いることができる。例えば、図6においてはエア噴射口21が洗浄水噴出口22よりもノズル本体20aの先端側に形成されている態様について説明したが、本発明においては、ノズル本体20aにおけるエア噴射口21と洗浄水噴出口22との位置関係は特に限定されない。例えば、本発明においては、洗浄水噴出口22がエア噴射口21よりもノズル本体20aの先端側に形成されていてもよい。また、例えば、洗浄水噴出口22とエア噴射口21とがノズル本体20aの先端側において、ノズル本体20aの軸心方向でいうところの同じ位置に、軸心方向に垂直に並ぶように配置されていてもよい。
【0085】
また、エア配管25および洗浄水配管26は、エアの圧力および洗浄水の水圧に耐えられる材料で形成されていればよいが、少なくともノズル本体20aに接続される部位の近傍では、ゴム材料等のような柔軟性を有する材料で形成されていることが好ましい。これは、ノズル本体20aが、ノズル移動機構52により進退移動または揺動するため、ノズル本体20aの後端側に接続されるエア配管25および洗浄水配管26には、ねじれまたは屈曲を生じさせるような外力が加えられるためである。
【0086】
また、共用ノズル部20に形成されるエア噴射口21および洗浄水噴出口22は、図6に示すように、それぞれ1つずつであるが、これに限定されず、それぞれ複数形成されていてもよい。例えば、「おしり洗浄」用の洗浄水噴出口と「ビデ洗浄」用の洗浄水噴出口とをノズル本体20aにそれぞれ単独で形成してもよい。なお、単一のエア噴射口21のみからエアを噴射させる構成であれば、エアの流量が小さくても、その流速を大きくすることができるため、空気噴射部50が備えるエアポンプ51が小容量であったとしても十分なエアを噴射することができる。すなわち、エアの噴流が大きいために、被乾燥面に付着した水滴にエアが当たった際に、その水滴を皮膚表面から引き剥がすエネルギーを大き
くすることができる。それゆえ、水滴を効率よく吹き飛ばすことが可能となる。
【0087】
また、本実施形態では、前記のとおり、共用ノズル部20は、洗浄水噴出部30における洗浄ノズル部と空気噴射部50におけるエアノズル部とが一体化された構成となっているが、このような構成に限定されず、洗浄水噴出部30における洗浄ノズル部と空気噴射部50におけるエアノズル部とがそれぞれ独立して、本体部110に設けられていてもよい。あるいは、洗浄ノズル部としては、単一のノズルではなく、「おしり洗浄」用ノズルおよび「ビデ洗浄」用ノズルが設けられる構成であってもよい。もちろん、本実施形態のように、一体化された共用ノズル部20として設けられていることで、ノズルの設置面積を小さくできるとともに、ノズル移動機構52も共用されているので、本体部110の大型化を回避できるとともに部材点数も削減することができ、本体部110の小型化や低コスト化を図ることができる。あるいは、エアノズル部として、複数のノズルを備える構成であってもよい。このような構成であれば、エアの噴流を複数形成できるので、後述するように、被乾燥面の水滴を被乾燥面の中心部に集めやすくなり、乾燥時間をより短縮することができる。
【0088】
[ノズル部周辺配置と移動機構]
ノズル移動機構52は、図6に示すように、本実施形態では、第1駆動モータ53、第2駆動モータ54、ノズル支持部55およびノズル移動部57を備える構成となっている。
【0089】
ノズル支持部55は、本実施形態では、略直角三角形の板状の外形状で、ノズル本体20aの直径以上の厚みを有する構成となっている。直角三角形の底辺に対応する面がノズル支持部55の底面となっており、直角三角形の斜辺に対応する面は、ノズル本体20aを移動可能に載置する載置面56cとなっている。載置面56cは、後側が高く、前側が低くなるように傾斜し、その長手方向に沿って一対のレール部56a,56aが設けられている。また、載置面56cの前側には、上側に突出するノズルガイド部56bが形成されている。ノズルガイド部56bには、ノズル本体20aが通過できる内径の貫通孔56dが形成され、ノズル本体20aが載置面56cの上で前後に移動するときに、当該載置面56cから外れないように、ノズル本体20aを支持する。
【0090】
ノズルガイド部56bには、温風乾燥部40における温風供給管43の下流部分の一部が接続されており、温風乾燥部40における先端部48がノズルガイド部56bに形成されている。先端部48には、温風送風口42が、エア噴射口21および洗浄水噴出口22が設けられているノズル本体20aの先端側に形成されている。
【0091】
なお、温風供給管43は、温風生成部44により温められた温風が通過するため、温風に対する耐圧性及び耐熱性を有する材料で形成されていることが好ましい。
【0092】
また、本実施形態では、上述のとおり、耐圧性及び耐熱性を考慮した温風供給管43で構成しているが、このような構成に限定されず、温風供給管43は、断面が略円形状で可撓性を有する材料で形成してもよい。
【0093】
この構成により、温風生成部44から先端部48まで均一な断面略円形状を保つことができ、温風の送風される温風供給管43の断面形状が略円形状から変形すること、および、送風経路の急な拡大により、温風の流速が低下することを防止することができる。
【0094】
また、温風供給管43は蛇腹状に形成されていてもよい。この構成により、蛇腹形状の細く折り畳んである襞状部による伸縮性が得られ、よりフレキシブルな可撓性が得られる。したがって、流路の急な曲げにより流路が拉げ、流路の断面形状が略円形状から変形す
ることを十分に防止でき、流路の急な曲げによる温風の圧力損失の増大及びエネルギー損失の増大を十分に防止できる。
【0095】
さらに、温風供給管43が、蛇腹形状を有することにより、衛生洗浄装置において、部品配置の自由度が向上する。
【0096】
なお、本実施形態では、図6に示すように、ノズルガイド部56bには、温風供給管43、先端部48、温風送風口42が一体化されて設けられているが、これに限定されない。
【0097】
温風送風口42がノズルガイド部56bの貫通孔56dの近傍に形成されていることにより、ノズルガイド部56bと一体で形成されるため、部品点数の増加がなく、低コスト化をはかることが出来る。また、一体で成形されるガイド部品は公知の樹脂材料で形成されるため特殊な材料による高コスト化を避けることができる。
【0098】
レール部56aおよびノズルガイド部56bは、いずれも公知の樹脂材料等で形成されていればよい。ここで、ノズルガイド部56bは、貫通孔56dの内部でノズル本体20aが前後に移動するだけでなく、共用ノズル部20が揺動するときには、貫通孔56dの内部でノズル本体20aが回転する。そこで、ノズルガイド部56bにおける少なくとも貫通孔56dの内周面となる部位は、当該貫通孔56dの内部でノズル本体20aが前後または回転移動しやすいように、摺動性の良好な材質で形成されていることが好ましい。さらに、貫通孔の直径は、ノズル本体20aが貫通した状態で、当該ノズル本体20aの外周面と貫通孔56dの内周面との間に適度な間隙が得られるような寸法となっていることが好ましい。
【0099】
ノズル支持部55の載置面56cの長さは、ノズル本体20aの長さと同等以上となっている。これは、共用ノズル部20を本体部110内に完全に収納したときに、ノズル本体20aの全体がノズル支持部55の載置面56c上に載置されて支持されるためである。また、載置面56cの上に形成される一対のレール部56a,56aも摺動性の良好な材質で形成されていることが好ましい。これは、後述するように、ノズル本体20aの後端側で当該ノズル本体20aに固定されるノズル支持スライダ58を、レール部56a,56aの間に挟み込ませ、載置面56cの上を長手方向に沿ってスライドさせるためである。なお、本実施形態では、図6に示すように、ノズル支持部55の本体に対して、レール部56a,56aおよびノズルガイド部56bは、一体化されて設けられているが、これに限定されない。
【0100】
ノズル移動部57は、ノズル支持スライダ58、揺動歯車部57a、およびスライダガイド部57bを有している。ノズル支持スライダ58は、前記のとおり、ノズル支持部55の載置面56cで、レール部56a,56aの間にはさみこまれた状態で、載置面56cの上をスライドするよう構成されている。
【0101】
ノズル支持スライダ58は、ノズル本体20aの後端側に固定されるノズル固定部58aと、第2駆動モータ54および揺動歯車部57dを支持する歯車支持部58bと、スライダガイド部57bを貫通させるガイド貫通部58cとから構成されている。ノズル固定部58aは、ノズル本体20aの後端側で当該ノズル本体20aの外周を覆うような直方体状に形成され、当該ノズル固定部58aにノズル本体20aを貫通させることで、当該ノズル本体20aに固定される。また、ノズル固定部58aの下部は、レール部56a・56aの間に、スライド可能にはさみこまれるレール嵌合部となっている(図6には図示されない)。さらに、ノズル本体部20aは、ノズル固定部58aの前側において回転可能となっている。
【0102】
歯車支持部58bは、載置面56c上のノズル固定部58aから載置面56cの外側に向かって延びる板状の部位であって、前面には揺動歯車部57aが支持され、後面には第2駆動モータ54が支持されている。第2駆動モータ54の回転軸は、図6には図示されないが歯車支持部58bを貫通して前面にまで達しており、当該回転軸の先端には、揺動歯車部57aに含まれる第1歯車が固定されている。ガイド貫通部58cは、歯車支持部58bの端部から下側に向かって延びる板状の部位であって、載置面56cの側方に沿って延伸するスライダガイド部57bが貫通されている。
【0103】
スライダガイド部57bは、一方向に延伸する鋼索状であって、ノズル支持部55の一方の側面(図6では手前側の側面)に、載置面56cに沿って傾斜するように設けられている。スライダガイド部57bの両端は、ノズル支持部55の側面から立設して設けられているガイド支持板56e,56fで固定されている。このうち、ガイド支持板56eは、ノズル支持部55の後側でスライダガイド部57bを固定し、その後面に第1駆動モータ53が支持されている。そして、図示されない第1駆動モータ53の回転軸がガイド支持板56eを貫通して前面に達しており、当該前面において、前記回転軸に軸状のスライダガイド部57bが接続されている。つまり、第1駆動モータ53の回転軸が回転するとスライダガイド部57bも回転するように構成されている。また、ガイド支持板56fは、ノズル支持部55の前側で、スライダガイド部57bが回転可能な状態となるように、その端部を支持している。
【0104】
スライダガイド部57bの外周には螺旋状のネジが形成されており、スライダガイド部57bを貫通させるガイド貫通部58cの貫通孔は、このネジに対応するネジ穴となっている。つまり、スライダガイド部57bを第1駆動モータ53により回転可能な「ボルト」であるとすれば、ノズル支持スライダ58のガイド貫通部58cは、当該ボルトに対応する「ナット」に相当する。
【0105】
揺動歯車部57aは、歯車支持部58bの前面に支持され、図6に示す構成では、第1歯車、第2歯車および第3歯車から構成されている。第1歯車は前記のとおり第2駆動モータ54の回転軸に固定されている。この第1歯車に第2歯車が組み合わせられ、さらに第2歯車に第3歯車が組み合わせられている。第3歯車はノズル本体20aの後端の外周面に固定されているので、第3歯車の回転によりノズル本体20aも回転するように構成されている。したがって、ノズル本体20aは、ノズル支持スライダ58に対して回転可能に支持されていることになる。
【0106】
前記構成のノズル移動機構52により共用ノズル部20の移動について、図6に加えて、図2、図4および図5も参照して説明する。遠隔操作部120の操作により、共用ノズル部20を使用して局部の洗浄および乾燥を行う旨の操作指令が制御部60Aに送信されると、制御部60Aは、まず、第1駆動モータ53を正方向に回転させる。第1駆動モータ53の回転軸は、スライダガイド部57bにつながっているので、スライダガイド部57bも正方向に回転する。
【0107】
スライダガイド部57bは、ノズル支持スライダ58のガイド貫通部58cに貫通しており、この貫通状態は「ボルト」および「ナット」の嵌合状態となっている。それゆえ、スライダガイド部57bの回転により、当該スライダガイド部57bに沿ってガイド貫通部58cに対して前進する作用が働く。ガイド貫通部58cはノズル支持スライダ58の一部であるので、ノズル支持スライダ58に対して、載置面56c上で前進する作用が伝達され、それゆえノズル支持スライダ58が載置面56cを前方向にスライドする。
【0108】
ここで、ノズル支持スライダ58は、ノズル固定部58aを介して共用ノズル部20(
ノズル本体20a)の後端に固定されているので、共用ノズル部20は、ノズル支持スライダ58によって後端側から前進する外力が加えられる。それゆえ、共用ノズル部20は、ノズル支持部55の載置面56cを移動して前進し、その先端部が本体部110の外側に露出する。このとき、共用ノズル部20は、後端側がノズル支持スライダ58によって、レール部56a,56aの間から外れないようにガイドされ、先端側は、ノズルガイド部56bでガイドされているので、共用ノズル部20は、載置面56cの上をずれることなく前進する(図6における矢印D1方向)。
【0109】
本体部110の外に露出した共用ノズル部20の先端部には、エア噴射口21および洗浄水噴出口22が形成されている。温風生成部44は、例えばエアファン41の吹出口近傍に設けられ、空気流を所定の温度まで加熱する。これにより温風が生成され、温風供給管43により先端部48へ導かれ、温風送風口42より、図5において矢印A2で示すように温風が送風される。
【0110】
図16は、図6に示す共用ノズル部20とノズルガイド部56bの断面図である。
【0111】
図16で示すように共用ノズル部20のノズルガイド部56bには、エア噴出口21が設けられている。エアポンプ51で生成されたエアは、エア空洞部23を通り、エア噴射口21(図示せず)より噴射される。
【0112】
また、エアの噴出の開始と同時又はエアの噴出の開始前に、温風乾燥部40が起動され、温風供給管43を通り温風が送風される。その後、温風送風口42に充満した温風は、ノズル20のエア噴射部21がある先端方向へと流れる。
【0113】
ノズルガイド部56bに設けられている貫通孔56dは、ノズル本体20aが載置面56cの上で前後に移動可能となるように、貫通孔56dとノズル20との間には、ノズル20が移動する際にガタツキ等の支障が生じない範囲のクリアランスが設けられている。
【0114】
温風送風口42は、温風を共用ノズル部20のエア噴射口21方向に送風させるために、貫通孔56dより、穴径が大きくなるように設けられている。このため、温風供給管43より送風された温風は、温風供給口42で方向を変え、共用ノズル部20のエア噴射口21方向へ送風される。
【0115】
図17は、図6に示す共用ノズル部20とノズルガイド部56bの側面図で温風流れを示したものである。図17で示すように、温風送風口42から出る温風の進行方向(図中矢印A2)は、共用ノズル部20の軸方向に略平行であり、かつ、共用ノズル部20の側面に沿って送風される。
【0116】
その後、温風送風口42から送風される温風は、エア噴出口21から噴出されるエアの噴出方向(図中矢印A1)と交わり、エア噴出口21から噴出されるエアの噴出方向(図中矢印A1)に合流してその進行方向を変えて、エアとともに使用者の局部に向かうことになる。
【0117】
さらに、エアおよび温風が噴射される領域である被乾燥面は、上述のとおり、被洗浄面よりも広い面積となる。それゆえ、制御部60Aは、第2駆動モータ54を所定のパターンで正逆回転させる。第2駆動モータ54の回転軸には、揺動歯車部57aを構成する第1歯車が固定されているので、第2駆動モータ54の回転駆動力は、第1歯車および第2歯車を介して、共用ノズル部20の後端側に固定されている第3歯車に伝達される。これにより、円柱状の共用ノズル部20は、その軸方向に正逆回転(自転)することになるので、先端部のエア噴出口21は、左右に揺動することになる(図6における矢印D3方向
)。
【0118】
その後、洗浄および乾燥動作を終了する旨の操作指令が遠隔操作部120から制御部60Aに送信されると、制御部60Aは、第1駆動モータ53を逆方向に回転させる。これにより、スライダガイド部57bも逆回転するので、ノズル支持スライダ58に対して載置面56c上で後退する作用が働く。それゆえ、共用ノズル部20は、ノズル支持部55の載置面56c上に沿って後退し(図6における矢印D2方向)、その結果、共用ノズル部20は後端側から本体部110内に引き込まれ、本体部110内に収納される。
【0119】
つまり、第1駆動モータ53は、共用ノズル部20を前後方向に移動させるための駆動源であり、ノズル移動部57のうち、スライダガイド部57bおよびノズル支持スライダ58のガイド貫通部58cは、共用ノズル部20を前後に移動させるノズル進退移動部として機能する。また、第2駆動モータ54は、共用ノズル部20を左右方向に移動させるための駆動源であり、ノズル移動部57のうち、揺動歯車部57aは、共用ノズル部20を左右に自転揺動させるノズル揺動部として機能する。
【0120】
本実施形態におけるノズル移動機構52は、前記ノズル進退移動部を備えることによって、共用ノズル部20を本体部110から突出させまた本体部110内に収納させることに加え、共用ノズル部20の先端部を前後に移動させることができ、さらに、前記ノズル揺動部を備えることによって、共用ノズル部20の先端部を左右に移動させることができる。それゆえ、特に、エア噴射口21からのエアの噴射を前後だけでなく左右にも移動させることができるので、使用者の局部とその周囲全体(被乾燥面全体)にわたってエアを噴射することができる。
【0121】
なお、本実施形態では、共用ノズル部20が1本のノズルで構成されているため、ノズル移動機構52も一つのみ設けられているが、複数のノズルが設けられている場合には、ノズル移動機構52もそれに合わせて複数設けられればよい。
【0122】
また、本実施形態では、共用ノズル部20は、ノズル移動機構52によって共有ノズル部20全体が移動される構成となっているが、これに限定されず、エア噴出口21のみ、あるいは、エア噴出口21を含む周囲の部材のみを移動させたり、角度を変更させたりすることで、エアの当接範囲を移動させる構成であってもよい。あるいは、エアノズル部(図示せず)の前方に、エアの噴流の方向をかえる風向変更部が設けられる構成等であってもよい。
【0123】
[衛生洗浄装置の制御系統]
制御部60Aは、図2、図4および図5に示すように、本実施形態に係る衛生洗浄装置101が備える洗浄水噴出部30、温風乾燥部40、空気噴射部50等の動作を制御するが、当該制御部60Aは、本実施形態では、図7に示すように、演算部61、記憶部62、および送風温度補正部63から構成されている。
【0124】
演算部61は、記憶部62に記憶されたプログラムを用いて、衛生洗浄装置101における洗浄および乾燥等の動作を制御するための演算を行う。記憶部62は、前記プログラムに加えて、演算部61での演算に用いられる各種のデータを記憶している。演算部61および記憶部62は、例えば、それぞれ、マイクロコンピュータのCPUおよび内部メモリで構成されている。なお、記憶部62は、独立したメモリとして構成されてもよく、また、記憶部62は、単一である必要はなく、複数の記憶装置(例えば、内部メモリと外付け型のハードディスクドライブ)として構成されてもよい。
【0125】
送風温度補正部63は、温風乾燥部40で生成される温風の温度(送風温度)を補正す
る。より具体的には、送風温度補正部63は、温風乾燥部40による送風の開始時点から第1の所定時間が経過するまでの期間(起動段階)における送風温度を、当初設定されている値(加温値)から、より高い値(起動調整値)に補正する。演算部61は、送風温度補正部63から補正後の送風温度の値を取得し、この補正後の値に基づいて温風乾燥部40の動作を制御する。送風温度補正部63は、公知の温度補正回路を用いて構成されてもよいし、演算部61が記憶部62に格納されるプログラムに従って動作することにより実現される構成、すなわち制御部60Aの機能構成であってもよい。
【0126】
演算部61および送風温度補正部63には、遠隔操作部120から各種の操作指令が入力されるように構成されている。また、演算部61および送風温度補正部63には、室温検出部72からトイレットルームの室温の検出値も入力されるように構成されている。
【0127】
図7では、温風乾燥部40および空気噴射部50についての制御系統を図示している(図5参照)。具体的には、演算部61は、エアファン駆動部45、温風生成部駆動部46、エアポンプ駆動部55および共有ノズル駆動部56を制御し、エアファン駆動部45、温風生成部駆動部46、エアポンプ駆動部55および共有ノズル駆動部56は、演算部61の制御に基づいて、それぞれ、エアファン41、温風生成部44、エアポンプ51、ノズル移動機構52を動作させる。なお、図7には図示されていないが、前記構成の制御部60Aは、洗浄水噴出部30を制御するよう構成されていることはいうまでもない(図4参照)。
【0128】
[衛生洗浄装置による洗浄動作および乾燥動作]
次に、衛生洗浄装置101の具体的な洗浄動作および乾燥動作の制御について、図8ないし図12に基づいて説明する。図8は、衛生洗浄装置101における洗浄動作および乾燥動作の制御の一例を示すタイムチャートである。図9(a)〜(c)は、衛生洗浄装置101が備える共用ノズル部20による洗浄動作(図9(a))および空気噴射動作(図9(b)および(c))の一例を示す模式的断面図である。図10(a)〜(c)は、衛生洗浄装置101が備える共用ノズル部20による洗浄動作(図10(a))および空気噴射動作(図10(b)および(c))の一例を示す部分側面図である。図11および図12は、共用ノズル部20が空気噴射動作を行っているときに、エア噴出口21の移動経路を示す模式図である。
【0129】
なお、本実施形態における乾燥動作は、遠隔操作部120の各スイッチのうち、乾燥モードスイッチ220aが操作されることで「急速乾燥運転」の運転モードが選択され、かつ、温風温度調整スイッチ240が操作され温度設定が「中」レベルに設定されている場合について説明する。この「急速乾燥運転」は、温風乾燥部40により送風される温風をエアにより誘引しながら、空気噴射部50により被乾燥面にエアを噴射する運転モードである。
【0130】
まず、遠隔操作部120がいまだ操作されていない状態(経過時間T0)では、図8の「IV.ノズル前後方向位置」に示すように、共用ノズル部20は本体部110内に収納されている。また、図8の「V.ノズル左右方向位置」に示すように、共用ノズル部20は中心位置となっている。なお、「V.ノズル左右方向位置」とは、ノズル移動機構52に設けられている図示されないノズル左右方向位置センサによって検出され、中心位置にあるときは、共用ノズル部20のエア噴射口21(および洗浄水噴出口22)が形成されている面が、前記ノズル左右方向位置センサの検出基準位置に対応する角度となるように設定されている。この設定角度が左右方向の基準となる中心角度であって、エア噴射口21および洗浄水噴出口22の吐出角度は上方向となるように設定されている。
【0131】
次に、使用者が、遠隔操作部120のおしりスイッチ212を操作すると(経過時間T
1)、図8の「II.開閉弁」に示すように、制御部60Aにより洗浄水噴出部30の開閉弁34が開き、水道水が温水加熱部31に流れ込む。また、温水加熱部31は、図示されない内蔵の流量センサによって水流を検出すると、図8の「I.温水加熱部」に示すように、制御部60Aは温水加熱部31への通電を開始させ、加熱された温水が供給され始める。なお、この時点では、洗浄水噴射部30の切換弁32は、便器103内につながる排水管27側に設定されているので、十分に加熱されていない温水は、便器130内に排出される。
【0132】
次に、温水加熱部31から供給される温水の温度(出湯温度)が予め設定された温度値(例えば36℃)に達すれば(経過時間T2)、図8の「IV.ノズル前後方向位置」に示すように、制御部60Aは、第1駆動モータ53を動作させて共用ノズル部20を前進させ、その先端部を「中心部位置」(例えば前方100mm)に到達させる。
【0133】
その後、図8の「III.切換弁」に示すように、制御部60Aは、切換弁32を共用ノズル部20側の洗浄水配管26に切り換え(経過時間T3)、使用者の被洗浄面に温水を噴出する(「おしり洗浄」運転)。温水加熱部31への電力供給は、出湯温度を検出する図示されない出湯温度センサの検出温度が設定値(例えば40℃)となるように、公知の制御方法(PID制御、FF制御)を用いて行われる。また、温水の流量は、切換弁32の弁開度を調整することによって使用者の好みの量となるように調整されている。
【0134】
この「おしり洗浄」運転では、図9(a)および図10(a)に示すように、共用ノズル部20の洗浄水噴出口22から使用者400の被洗浄面に向かって温水が噴出されているが、被洗浄面の濡れ状態を見れば、洗浄水が直接当たる中心部の局部だけでなく、周辺部へ水滴が流れるため、局部およびその周辺部(図中被洗浄面f)が全体的に濡れている状態となっている。なお、図9(a)では、便座部130および便器103の断面は外形のみであって、例えば、便座部130については内部に暖房ヒータ等を備えている構成であっても図示されない。
【0135】
次に、「おしり洗浄」運転が終了し、使用者が遠隔操作部120の停止スイッチ211を操作すると(経過時間T4)、図8の「III.切換弁」および「I.温水加熱部」に示すように、制御部60Aは、切換弁32を共用ノズル部20側の洗浄水配管26から便器103側の排水管27に切り換え、共用ノズル部20の洗浄水噴出口22からの温水の噴出を停止させると同時に、温水加熱部31への通電を停止し、第1駆動モータ53を逆転させて、共用ノズル部20を収納位置まで後退させる。
【0136】
そして、図8の「II.開閉弁」に示すように、制御部60Aは、開閉弁34を閉じて洗浄水噴出部30への通水を遮断して洗浄動作を終了させる(経過時間T5)。このとき、図8の「IV.ノズル前後方向位置」に示すように、共用ノズル部20は、収納位置(0mm)に戻る。
【0137】
なお、本実施形態では、「おしり洗浄」運転について説明したが、遠隔操作部120のビデスイッチ213を操作して「ビデ洗浄」運転を行う場合においても、基本的なシーケンスは同様である。「ビデ洗浄」運転の場合は、ビデに対応する共用ノズル部20の位置と洗浄水の流量の設定が変更されることになる。
【0138】
次に、使用者が、遠隔操作部120の乾燥スイッチ214を操作すれば(経過時間T6)、図8の「VIII.温風生成部」に示すように、制御部60Aは、温風生成部44に通電し、当該温風生成部44の温度上昇が開始される。このように、エアファン41の動作が開始される前に温風生成部44の動作を開始させることで、放熱が少ない状態で温風生成部44が加熱されるため、当該温風生成部44の温度を高速に上昇させることができ
る。
【0139】
また、このとき(経過時間T6)、図8の「VI.エアポンプ」に示すように、制御部60Aは、温風生成部44の動作の開始と同時にエアポンプ51を短時間(たとえば1秒間)だけ動作させ、エアを共用ノズル部20のエア噴射口21から一瞬噴出させる。この動作によって、共用ノズル部20が本体部110に収納された位置にある状態で、共用ノズル部20の表面に付着した水滴が吹き飛ばされるので、使用者に対して水滴の再付着を防止することができる。
【0140】
次に、図8の「VII.エアファン」に示すように、制御部60Aは、エアファン41の動作を開始させ(経過時間T7)、これにより、温風送風口42から温風が吹き出す。温風の送風温度は、高速で加熱された温風生成部44を通過するため、送風の当初から所定の高い温度まで達している。また、このときの温風生成部44は、後述するように、送風温度補正部63による送風温度の補正がなされた上で、制御部60Aによって制御されているため、高温(例えば60°)の温風が送風されることになる。この温風は、温風送風口42から使用者の被乾燥面のほぼ全面に送風される。
【0141】
その後、図8の「IV.ノズル前後方向位置」に示すように、制御部60Aは、第1駆動モータ53を動作させて、共用ノズル部20を最前進の位置(例えば前方150mm)まで前進させながら、図8の「V.ノズル左右方向位置」に示すように、第2駆動モータ54を動作させて共用ノズル20の左右角度を右端角度(例えば+50°)まで角度変更させる。
【0142】
さらにその後、図8の「VI.エアポンプ」に示すように、制御部60Aは、エアポンプ51動作させ(経過時間T8)、被乾燥面に対してエア噴射口21からエアの噴射を開始させる。そして、図8の「IV.ノズル前後方向位置」および「V.ノズル左右方向位置」に示すように、制御部60Aは、ノズル移動機構52における第2駆動モータ54および第1駆動モータ53の回転方向および回転速度を制御し、共用ノズル部20を、所定範囲内(例えば前方50mmから150mm)で高速に前後に往復移動させるとともに、左右方向の角度範囲を、右端角度から右側所定角度(例えば+50°から+20°)まで中心角度に向けてゆっくりと移動させる。このステップを、空気噴射第1ステップと称する。
【0143】
この空気噴射第1ステップでは、共用ノズル部20からのエアの噴流が、使用者の被乾燥面の右側の所定位置から前後方向に往復移動しながら徐々に中心部に接近してくることになる。このエアの噴流は、図11に示すような軌跡で描かれる。図11は、便座部130および便器103を上から見た図であり、便座部130の開口部から見える便器103の内部には、使用者400の臀部(および脚の付け根)となる仮想領域が破線で示されるとともに、この使用者400となる仮想領域内に、図中二点鎖線で示される正方形状の仮想領域である被乾燥面Fが示される。図11の矢印P1に示すように、エアの噴流が被乾燥面Fに当接する範囲(エア当接範囲)Eは、被乾燥面Fの右端において、前後方向に高速に往復移動する(図中矢印D2およびD1方向、図6参照)ことを周期的に繰り返しながら、被乾燥面Fの中心部Gに向かって徐々に移動する。したがって、エア当接範囲Eは、被乾燥面F内で右から左へのジグザグの移動軌跡を描くように移動することとなる。
【0144】
また、前記空気噴射第1ステップでは、図9(b)に示すように、使用者400の被乾燥面Fの向かって右側に付着した水滴は、共用ノズル部20のエア噴射口21から噴射されたエアの噴流により、中心部方向(図中矢印D3−1方向、図6参照)に集められながら吹き飛ばされることになる。
【0145】
その後、図8の「VI.エアポンプ」に示すように、制御部60Aは、エアポンプ51の動作を一旦停止させ(経過時間T9)、図8の「V.ノズル左右方向位置」に示すように、共用ノズル部20の左右方向の角度範囲を左端角度(例えば−50°)まで変更し、再びエアポンプ51を動作させ(経過時間T10)、エアの噴射を開始する。
【0146】
その後、制御部60Aは、前記空気噴射第1ステップと同様に、共用ノズル部20を、所定範囲内(例えば前方50mmから150mm)で高速に前後に往復移動させるとともに、左右方向の角度範囲を、左端角度から左側所定角度(例えば−50°から−20°)まで中心角度に向けてゆっくりと移動させる。このステップを、空気噴射第2ステップと称する。
【0147】
この空気噴射第2ステップでは、共用ノズル部20からのエアの噴流が、使用者の被乾燥面Fの左側の所定位置から前後方向に往復移動しながら徐々に中心部Gに接近してくることになる。つまり、空気噴射第2ステップでは、図11の矢印P2に示すように、エア当接範囲Eは、被乾燥面Fの左端において、前後方向に高速に往復移動することを周期的に繰り返しながら、被乾燥面Fの中心部Gに向かって徐々に移動するので、言い換えれば、エア当接範囲Eは、中心部Gを基準に、矢印P1で示すジグザグの軌跡と線対称となるような、左から右へのジグザグの移動軌跡を描くように移動することになる。
【0148】
また、前記空気噴射第2ステップでは、図9(c)に示すように、使用者400の被乾燥面Fの向かって左側に付着した水滴は、共用ノズル部20のエア噴射口21から噴射されたエアの噴流により、中心部方向(図中矢印D3−2方向、図6参照)に集められながら吹き飛ばされることになる。
【0149】
前記空気噴射第1ステップおよび第2ステップが行われれば、被乾燥面Fに付着して残る水滴は、中心部Gを中心とした前後の領域のみとなる。
【0150】
つまり、人体の臀部は、肛門および陰部という洗浄中心部に対して左右両側に凸部が形成されているため、便座部130に着座した場合に、前記洗浄中心部(被乾燥面Fの中心部G参照)より、左右両側が低くなる。したがって、洗浄水の濡れは左右に広がりやすくなるため、乾燥運転の開始時に、最初に中心部Gに向かってエアを当ててしまうと、付着した水滴が左右に大きく広がり、被乾燥面Fにおける濡れ面積が拡大してしまう。そこで、制御部60Aが、空気噴射部50に、前述した空気噴射第1ステップおよび第2ステップを実行させれば、被乾燥面Fの水滴が左右に広がることを防止しながら水滴を吹き飛ばすことができるので、効率の良い乾燥が可能となる。
【0151】
また、このように最初に臀部の左右の凸部に向かってエアを噴射すると、使用者は臀部全体において冷たく感じやすいが、本実施形態では、後述するように、送風温度補正部63による送風温度の補正が行われた上で、エアの噴射と同時に、温風乾燥部40に温風を送風させるので、冷感を十分に緩和させ、使用者の快適性を向上させることができる。
【0152】
次に、制御部60Aは、前記空気噴射第2ステップが終了すれば、図8の「IV.ノズル前後方向位置」に示すように、共用ノズル部20を最前進位置まで前進させる(経過時間T11)。そして、制御部60Aは、共用ノズル部20を、最前進位置から中心部方向にゆっくりと後退移動させるとともに、左右方向の角度を右端角度から左端角度まで高速に往復移動させる。このステップを、空気噴射第3ステップと称する。
【0153】
この空気噴射第3ステップでは、共用ノズル部20からのエアの噴流が、使用者の被乾燥面Fの前側の所定位置から左右方向に往復移動しながら徐々に後側の中心部Gに接近してくることになる。つまり、空気噴射第3ステップでは、図12の矢印P3に示すように
、エア当接範囲Eは、被乾燥面Fの上端において、左右方向に高速に往復移動することを周期的に繰り返しながら、被乾燥面Fの中心部Gに向かって徐々に移動する。それゆえ、エア当接範囲Eは、被乾燥面F内で前から後へのジグザグの移動軌跡を描くように移動することとなり、被乾燥面Fの中心部Gより前方に残存する水滴を、中心部G方向に集めながら吹き飛ばすことができる。
【0154】
その後、図8の「VI.エアポンプ」に示すように、制御部60Aは、エアポンプ51の動作を一旦停止させ(経過時間T12)、図8の「IV.ノズル前後方向位置」に示すように、共用ノズル部20の前後方向位置を後方の所定位置(例えば前方50mm)まで移動させ、再びエアポンプ51を動作させ(経過時間T13)、エアの噴射を開始する。
【0155】
その後、制御部60Aは、前記空気噴射第3ステップと同様に、共用ノズル部20を、最後退位置から中心部G方向にゆっくりと前進移動させるとともに、左右方向の角度を右端角度から左端角度まで高速に往復移動させる。このステップを、空気噴射第4ステップと称する。
【0156】
この空気噴射第4ステップでは、共用ノズル部20からのエアの噴流が、使用者400の被乾燥面Fの後側の所定位置から左右方向に往復移動しながら徐々に前側の中心部Gに接近してくることになる。つまり、空気噴射第4ステップでは、図12の矢印P4に示すように、エア当接範囲Eは、被乾燥面Fの下端において、前後方向に高速に往復移動することを周期的に繰り返しながら、被乾燥面Fの中心部Gに向かって徐々に移動するので、言い換えれば、エア当接範囲Eは、中心部Gを基準に、矢印P3で示すジグザグの軌跡と線対称となるような、後から前へのジグザグの移動軌跡を描くように移動することになる。それゆえ、空気噴射第4ステップでは、被乾燥面Fの中心部Gより後方に残存する水滴を、中心部G方向に集めながら吹き飛ばすことができる。
【0157】
前記空気噴射第3ステップおよび第4ステップが行われれば、被乾燥面Fに付着して残る水滴は、中心部G近傍のみとなる。
【0158】
ここで、制御部60Aは、前記空気噴射第1ステップから第4ステップにおいては、被乾燥面Fへのエア当接範囲Eの移動方向は、中心部Gに向けて移動する速度よりも、中心部Gに向かう方向に交差する方向(交差方向)へ移動する速度が十分に速くなるよう、ノズル移動機構52を制御している。それゆえ、被乾燥面Fに衝突して広がるエアは、前記交差方向に対して垂直となる方向へ流れる成分(垂直流)が多くなる。したがって、この交差方向に移動するエア当接範囲Eと中心部Gとの間に付着する水滴は、前記垂直流に押されることで、中心部Gに向かう方向に移動する。したがって、徐々にエア当接範囲Eを中心部Gに接近させれば、水滴は常に中心部Gに向かって集められることになる。それゆえ、空気噴射第1ステップから第4ステップを実行することで、被乾燥面Fに付着する水滴を中心部Gに迅速かつ適切に集めることができる。
【0159】
次に、図8の「VI.エアポンプ」に示すように、制御部60Aは、エアポンプ51の動作を一旦停止させ(経過時間T14)、図8の「IV.ノズル前後方向位置」に示すように、共用ノズル部20の前後方向位置を前方の所定位置(例えば前方130mm)まで移動させ、再びエアポンプ51を動作させ(経過時間T15)、エアの噴射を開始する。
【0160】
その後、制御部60Aは、図8の「IV.ノズル前後方向位置」に示すように、共用ノズル部20を前方の所定位置から後退させる移動を開始させ、中心部Gを通過させ、さらに中心部Gより後方の所定位置(例えば前方50mm)までゆっくりと移動させる。制御部60Aは、図8の「V.ノズル左右方向位置」に示すように、前記後退移動とともに、共用ノズル部20の左右方向の角度を、右端角度から左端角度まで高速に往復駆動させる
(図10(b)および(c)参照)。このステップを、空気噴射第5ステップと称する。
【0161】
この空気噴射第5ステップでは、共用ノズル部20からのエアの噴流が、被乾燥面Fを左右方向に高速に移動する周期移動を繰り返しながら、前方の所定位置から後方の所定位置に向かって徐々に移動し、中心部Gを通過して後方の所定位置まで徐々に移動することになる。したがって、エア当接範囲Eは、被乾燥面Fにおいて、前方から中心部Gを通って後方に移動するために、被乾燥面Fの中心部G近傍に残存する水滴を、ほぼ完全に吹き飛ばすことが可能となる。
【0162】
言い換えれば、空気噴射第1ステップから第4ステップは、大部分の水滴を吹き飛ばしながら残りを中心部Gに集める工程(水滴集中工程)ということができ、空気噴射第5ステップは、最後に中心部G近傍に残った水滴をほぼ完全に吹き飛ばす工程(水滴除去工程)ということができる。なお、本実施形態では、空気噴射第1ステップから第5ステップまでを、前記の順で実行したが、これに限定されず、各ステップの順番を入れ替えても良いし、一部のステップを繰り返しても良いし、一部のステップを省略してもよい。
【0163】
また、前記空気噴射第1ステップから第5ステップまでのエアの噴射は、温風乾燥部40の温風供給管43よりノズルガイド部56bに形成されている先端部48の温風送風口42による温風の送風と同時に行われる。したがって、温風乾燥部40の温風送風口42からの温風は加圧空気の流れに誘引されることになり、当該エアは暖められながら噴射されることになる。温風送風口42がノズルガイド部56bに形成されノズル近傍に配置されていることから、加圧空気(の流れ)に誘引され合流してその進行方向を変えて、加圧空気とともに使用者の局部に向かうことになる。
【0164】
したがって、使用者の局部には加圧空気に加えて温風がピンポイントで効率よく当たることが可能となる。これにより、使用者に対して過剰な冷たさおよび熱さを与えることなく、短時間で効率よく被洗浄面を乾燥することができる。
【0165】
また、温風がピンポイントで効率よく当たることが可能なため、温風を送風する範囲を狭くして風量を低減することができる。そのため、温風生成部の小型軽量化(温風ファンなどの小型軽量化および小型化による低騒音化)、温風生成部の熱量削減(加熱ヒータなどの熱量削減および省電力化)をすることもできる。
【0166】
その後、図8の「VI.エアポンプ」に示すように、制御部60Aは、エアポンプ51を停止し(経過時間T16)、図8の「IV.ノズル前後方向位置」および「V.ノズル左右方向位置」に示すように、共用ノズル部20の前後方向を収納位置に移動させ、左右方向を中心角度に戻させる。
【0167】
このようにして、空気噴射部50による水滴の除去が終了し、事実上乾燥動作が終了したことになるので、使用者400は、遠隔操作部120の停止スイッチ211を操作し、制御部60Aは、この停止指令を受けて、図8の「VIII.ヒータ」に示すように、温風生成部44の運転を停止し(経過時間T17)、最後に、図8「VII.エアファン」に示すように、エアファン41を停止する(経過時間T18)ことによって、温風生成部44の余熱を減少させる。以上により、一連の洗浄動作および乾燥動作の制御が終了する。
【0168】
[温風乾燥部および空気噴射部の動作の制御処理]
次に、制御部60Aによる乾燥運転の制御の一例について、図13に基づいて説明する。まず、制御部60Aは、遠隔操作部120の乾燥スイッチ214が操作されたか否かを判定する(ステップS101)。操作されていなければ(ステップS101のNO)、当
該判定を繰り返し、操作されていれば(ステップS101のYES)、まず、エアファン41よりも先に温風生成部44を動作させ(ステップS102)、その後、エアファン41を動作させる(ステップS103)。
【0169】
本実施形態では、このようにエアファン41よりも先に温風生成部44を動作させることで、放熱の少ない状態で、温風生成部44に大電力を一気に通電することにより、温風生成部44の昇温速度が増大し、それゆえ、温風生成部44の起動時間および加温値Twまでの上昇時間を高速化することができる。
【0170】
次に、制御部60Aは、空気噴射部50を動作させ、被乾燥面にエアを噴射させる(ステップS104)。このエアの噴射は、具体的には、前述したように、空気噴射第1ステップから第5ステップとして実行される(図8、図9(b)および(c)、図10(b)および(c)を参照)。
【0171】
そして、制御部60Aは、遠隔操作部120の停止スイッチ211が操作されたか否かを判定する(ステップS105)。操作されていなければ(ステップS105でNO)、当該判定を繰り返し、操作されていれば(ステップS105でYES)、温風乾燥部40(温風生成部44およびエアファン41)と空気噴射部50の動作を停止し、制御を終了する。
【0172】
なお、前記制御においては、エアファン41および温風生成部44を同時に起動させ、エアファン41による送風量を徐々に上げるというソフトスタートを実行してもよい。言い換えれば、制御部60Aは、エアファン41および温風生成部44のいずれも同時に動作を開始させるが、エアファン41については、温風生成部44において起動段階が開始してから送風量を増加させるように制御してもよい。これによっても、温風生成部44の起動時間および加温値Twまでの上昇時間を高速化することができる。
【0173】
また、本実施形態における乾燥運転は、図13に示すような、温風乾燥部40および空気噴射部50を同時に動作させる運転モード(第1乾燥運転モード)だけではなく、空気噴射部50のみを動作させ、被乾燥面にエアのみを噴射する運転モード(第2乾燥運転モード)、あるいは、温風乾燥部40のみを動作させ、被乾燥面に温風のみを送風する運転モード(第3乾燥運転モード)も選択することができる。これら運転モードの選択は、遠隔操作部120の乾燥モードスイッチ220a,220b,220c、ならびに温風温度調整スイッチ240を操作することにより実現される。
【0174】
具体的には、図3(a)に示す遠隔操作部120において、乾燥モードスイッチ220aを操作すれば、「急速乾燥運転」が選択されるので、図13に示す第1乾燥運転モードが実行され、被乾燥面の乾燥を短時間に終了することができる。また、乾燥モードスイッチ220bを操作すれば、「しっかり乾燥運転」が選択される。この「しっかり乾燥運転」は、基本的に第1乾燥運転モードと同様であるが、運転時間をより長く変更することによって、被乾燥面の水滴を確実に除去する運転モードとなっている。
【0175】
また、乾燥モードスイッチ220cを操作すれば、「温風乾燥運転」が選択されるので、空気噴射部50は動作せずに温風乾燥部40のみが動作し、第3乾燥運転モードが実行される。ただし、第3乾燥運転モードでは、温風のみが被乾燥面に当たるため、送風温度補正部63による目標温度補正処理では、各設定データ(第1〜第4段階における時間設定、送風温度の設定値Ts、過渡係数D)を、第1乾燥運転モードの各設定データから変更させておくことが好ましい。具体的には、第1乾燥運転モードでは、空気噴射部50によるエアが被乾燥面に当たることから、送風温度が高くなるように目標温度(設定値Ts)が補正されるが、空気噴射部50が動作しない第3乾燥運転モードでは、エアによる被
乾燥面の冷却作用が生じないことを考慮して、目標温度(設定値Ts)を低く設定すればよい。
【0176】
また、図3(b)に示す遠隔操作部120の温風温度調節スイッチ240を「切」設定にし、かつ、乾燥モードスイッチ220aを操作すれば、第2乾燥運転モードが選択され、エアのみが被乾燥面に噴射される。この運転モードは、特に夏場など気温が高い場合に選択されるように構成されている。
【0177】
[目標温度補正処理に関する各種条件の評価]
本実施形態においては、使用者にとっての温冷感を判定するために7段階の温冷感指標を作成し、当該温冷感指標に基づいて、送風温度補正部63による目標温度補正処理に関する温度条件および経過時間条件を評価している。この点について、具体的な試験方法およびその結果とともに説明する。図14は、温風の送風が開始してからの温冷感または送風温度との関係を示すグラフであり、上側が温冷感と経過時間との関係を示し、下側が送風温度と経過時間との関係を示す。
【0178】
人間の温冷感は敏感なものであり、非常に微妙な条件によって異なることに加え、個人差も大きなものとなっている。そこで、本発明者らは、温冷感を7段階に分け、この温冷感指標に基づいて、前述した送風温度の好適な値を設定した。具体的には、前記7段階の指標としては、「非常に熱い」を「+3」、「熱い」を「+2」、「温かい」を「+1」、「どちらでもない」を「0」、「涼しい」を「−1」、「冷たい(寒い)」を「−2」、「非常に冷たい(非常に寒い)」を「−3」として評価した。
【0179】
そして、本実施形態に係る衛生洗浄装置101において、モニター項目として、雰囲気温度としての室温、温風送風口42での送風温度(出口温度)、便座部130の本体部110側の縁部における送風温度(便座縁部温度)、肛門近傍の送風温度、臀部の表面温度、肛門近傍の表面温度、温風生成部44の消費電力、および温風生成部44の印加電圧の8項目を選定した。
【0180】
そして、次の手順で、前記モニター項目を測定しながら、同一の評価者により、条件を変更させて送風温度と温冷感との関係を評価する試験を複数回行った。
【0181】
手順は、乾燥運転の開始から送風温度の立ち上がり時間と温冷感との関係を評価するための試験手順である。まず、評価者が便座部130に着座し、皮膚温度の初期値が雰囲気温度に適合するように調整した。次に、「おしり洗浄」を行うことにより、実際の洗浄動作による水滴を被乾燥面に付着させた(洗浄水温度38℃、洗浄水の流量0.5リットル/分で30秒間の洗浄)。その後、共用ノズル部20を肛門位置まで突出させてから、エアポンプ51を動作させ、共用ノズル部20からエアの噴射の待機状態とした。さらにその後、温風乾燥部40の運転を開始し、60秒が経過するか、評価者が熱く感じるか、に至るまで温冷感の評価を行った。
【0182】
また、前記手順で変更した条件は次の通りである。まず、前記出口温度の設定を、30℃、40℃、50℃、60℃、70℃、および80℃にそれぞれ変更した。また、温風生成部44の電力設定を、0W、50W、100W、200W、および400Wのそれぞれで試験を行った。乾燥運転モードとして、温風の送風のみの場合(第3乾燥運転モード)、温風の送風およびエアの噴射の場合(第1乾燥運転モード)、およびエアの噴射のみの場合(第2乾燥運転モード)を設定し、それぞれについても試験を行った。また、比較として、臀部に対してスプレーで水滴を付着させず、乾燥した状態の実験を行った。さらに、1回の評価試験では、開始直後、5秒後、10秒後、20秒後、30秒後、40秒後、50秒後、および60秒後のそれぞれのタイミングで、温冷感の評価を行った。
【0183】
なお、前記いずれの評価試験においても、エアの噴射条件は次の通りである。室温は18〜22℃の範囲内であり、温風の風量は0.3m /分であり、エアの流量は15リットル/分であり、エア噴射口21の直径は1mmであり、エア噴出口21から肛門までの距離は30mmであり、左右方向の揺動角度は±60°とし、前後方向の往復は1秒間に2往復とした。
【0184】
前記の手順で評価した、乾燥運転の開始から送風温度の立ち上がり時間と温冷感との関係を図14のグラフに示す。図14の上下のいずれのグラフにおいても、二点鎖線が、温風生成部44の電力設定が400Wの場合の結果を示し、一点鎖線が、温風生成部44の電力設定が200Wの場合の結果を示し、長破線が、温風生成部44の電力設定が100Wの場合の結果を示し、短破線が、温風生成部44の電力設定が50Wの場合の結果を示す。また、図14の上側のグラフでは、菱形のマークが、400Wの場合の結果を示し、丸のマークが、温風生成部44の電力設定が200Wの場合の結果を示し、正の三角形のマークが、温風生成部44の電力設定が100Wの場合の結果を示し、正方形のマークが、温風生成部44の電力設定が50Wの場合の結果を示し、逆三角形のマークが、温風生成部44の電力設定が100Wの場合、すなわち、温風生成部44が動作していない場合の結果を示す。
【0185】
使用者が少なくとも冷たくないと感じる条件としては、温冷感指標−1以上となる条件であるので、図14に示す結果から、送風温度が5秒(図14で細い破線)で40℃以上、10秒で50℃以上となる条件が導き出された。
【0186】
また、温冷感指標0以上の条件であれば、一般的な使用者の大部分が冷たいと感じないことが想定されるので、より好ましい条件は、送風温度が5秒で50℃以上、10秒で60℃以上、ただし、10秒以内で75℃以下となる条件であった。
【0187】
このように、本実施形態においては、目標温度における加温値Twは、少なくとも40℃以上75℃以下の範囲内となるように設定されることが特に好ましい。また、起動段階および加温段階がいずれも10秒以内となり、かつ、起動段階は加温段階よりも短い時間(5秒以内)となるように設定されていることが特に好ましい。また、送風の開始時点から移行段階が終了するまでの時間が40秒以内となり、かつ、起動段階および加温段階の合計時間が20秒以内となるように設定されていることが特に好ましい。
【0188】
もちろん、これら送風温度および経過時間の条件は、前記範囲内に限定されるものではなく、衛生洗浄装置10の具体的な構成、設置されるトイレットルームの環境等の諸条件に応じて、図14等の結果を参照して適宜設定することができる。
【0189】
以上のように、本実施形態では、共用ノズル部20からエアが被乾燥面に噴射される際に、温風乾燥部40で生成された温風が被乾燥面に吹き付けられており、しかも、この温風は、被乾燥面が濡れた状態であっても使用者が冷たいと感じなくなる温度値(冷感限界値Tc)以上となるように、目標温度補正処理が行われている。それゆえ、より効率のよい乾燥が可能になるとともに、使用者にとっては冷感をほとんど感じることがなく、良好な使用感を得ることができる。
【0190】
なお、本実施形態に係る衛生洗浄装置101は、空気噴射部50がエアポンプ51を備え、温風乾燥部40がエアファン41を備える構成となっているが、本発明は、これに限定されるものではなく、たとえばエアポンプ51がなくエアファン41のみで乾燥する衛生洗浄装置であっても、温風生成部44を備えていれば、本実施形態と同様の構成により同様の効果を得ることができる。
【0191】
また、本実施形態では、室温検出部72によりトイレットルームの室温を検出し、これを被乾燥面近傍の雰囲気温度として利用しているが、これに限定されず、室温検出部72以外に、便器103内部の温度を検出する温度検出部を設け、この温度検出部から得られる温度値を雰囲気温度として利用してもよい。これによって、被乾燥面近傍の雰囲気温度をより正確に検出することができるので、送風温度補正部63による目標温度補正処理および制御部60Aによる温風乾燥部40の制御を、使用者にとってより快適なものとすることができる。
【0192】
(第2実施形態)
本実施形態に係る衛生洗浄装置は、基本的に第1実施形態で説明した衛生洗浄装置101と同様の構成を有しているが、共用ノズル部20におけるノズル揺動部の構成が異なっている。このノズル揺動部の構成について、図15に基づいて説明する。図15は、本実施形態に係る衛生洗浄装置が備える、共用ノズル部の構成を示す部分斜視図である。
【0193】
図15に示す揺動ノズル部80は、上述した第1実施形態のノズル移動機構52が備えるノズル移動部57のように、円柱状のノズルを軸方向に回転(自転)させるのではなく、円柱状のノズルの後端を固定し、先端側を振り回すように揺動する構成となっている。
【0194】
具体的には、ノズル揺動部80は、揺動部支持スライダ83を本体とし、その上面に、ノズル本体20bの後端を固定して支持する円柱状の回転軸部81と第2駆動モータ54とが載置されて固定された構成を有しており、軸部81の側面には、ノズル本体20bの後端との間に、温風乾燥部40aにおける温風供給管43aの下流部分の一部が接続されており、温風乾燥部40aにおける先端部48aが軸部81に形成されている。この先端部48aには、温風供給管44aが接続されている。また、先端部48aには、温風送風口42aが、エア噴射口21及び洗浄水噴出口22が構成されているノズル本体20bの後端側に形成されている。
【0195】
なお、温風乾燥部40aから温風送風口42aへ供給される温風構造、部品構成は第1実施形態と同様であるので、その説明は省略する。
【0196】
また、温風送風口42aは、その温風送風口42aから出る温風の進行方向が、ノズル本体20bの軸の方向に略平行であり、かつ、エア噴出口21から噴出される加圧空気の進行方向と交わるように、ノズル本体20bの後端に配置されている。これにより、温風乾燥部40aの先端部48aに形成された温風送風口42aからでる温風は、ノズルの側面に沿って進行し、エア噴出口から噴出される加圧空気(の流れ)に誘引され合流してその進行方向を変えて、加圧空気とともに使用者の局部に向かうことになる。
【0197】
また、揺動部支持スライダ83の下部には、前記実施形態1におけるノズル支持スライダ58のノズル固定部58aと同様に、レール部56a,56aの間に挟み込ませ、載置面56cの上を長手方向に沿ってスライドさせるレール嵌合部83aが形成されている(図6参照)。なお、揺動部支持スライダ83の上面のうち、回転軸部81が載置される部位は、その下側が前記レール嵌合部となっており、第2駆動モータ54が載置される部位は、載置面56cの上から外れた位置にあり、その下側には、前記のズル支持スライダ58と同様に、スライダガイド部57bを貫通させるガイド貫通部83bが形成されている。
【0198】
回転軸部81は、揺動部支持スライダ83の上面の法線方向に軸方向が位置するように設けられる円柱状であり、その外周の一部に前記のようにノズル本体20bの後端が固定されている。また、回転軸部81の下部の周面には、第2駆動モータ54の回転軸に取り
付けられている駆動歯車82とかみ合う外周歯車部82aが形成されている。また、回転軸部81の軸方向の中心は空洞となっており、ここに揺動部支持スライダ83の上面から垂直に延びる軸心83cが貫通している。なお、ノズル本体20bの内部構造は第1実施形態のノズル本体20aと同様であるので、その説明は省略する。
【0199】
このノズル揺動部80とこれに固定されているノズル本体20bは、第1実施形態におけるノズル支持スライダ58および揺動歯車部57a、並びにノズル本体20aに代えて、ノズル支持部55に設けられる。そして、このノズル揺動部80においては、第1実施形態におけるノズル移動部57とは異なり、ノズル本体20bが回転軸部82に一体的に接続され、このノズル本体20bが、矢印D4に示すように、回転軸部81を起点として振り回されるように往復揺動される。したがって、ノズル本体20bの先端が描く軌跡は扇状になる。
【0200】
ノズル揺動部80においては、ノズル本体20bが進退移動する構成は第1実施形態におけるノズル移動機構52と同様であるが、ノズル本体20bを揺動させるための第2駆動モータ54の回転駆動力は、駆動歯車82および外周歯車部81aを介して回転軸部82に伝達されるので、第1実施形態のようにノズル本体20aを自転させて先端部を揺動させるのではなく、ノズル本体20bを所定の角度まで振り回して揺動させることになる。
【0201】
前記構成によれば、エア噴出口21からのエアの噴流は、被乾燥面に対してほぼ垂直を保持して噴出させることができる。それゆえ、被乾燥面に付着する水滴を被乾燥面から剥離する作用を向上させることができる。また、エアが被乾燥面に当たったときに生じる、水滴を被乾燥面の外側に移動させようとする作用についても、より一層抑制することができる。それゆえ、第1実施形態における空気噴射第1ステップから第4ステップまでの水滴集中工程をより効率的に行うことができる。
【0202】
さらに、第1実施形態のようにノズル本体20aを自転させずに、ノズル本体20bを振り回すように移動させるため、ノズル本体20bの先端部を揺動させてエアの噴流を左右に移動させても、被乾燥面に噴流が当たるまでの距離が大きく離れることがない。それゆえ、流速の大きい噴流を被乾燥面に当てることが可能となり、水滴を除去する能力をさらに一層向上することができる。
【産業上の利用可能性】
【0203】
本発明に係る衛生洗浄装置は、局部等の洗浄後、エアを噴射して水滴を除去するとともに、温風を送風して乾燥する乾燥機構を備える衛生洗浄装置の分野において極めて有用な発明である。
【符号の説明】
【0204】
20 共用ノズル部(乾燥ノズル、洗浄ノズル)
20a ノズル本体
20b ノズル本体
21 エア噴射口(空気噴射口)
22 洗浄水噴出口
30 洗浄水噴出部
40 温風乾燥部
41 エアファン(送風器)
42 温風送風口
42a 温風送風口
43 温風供給管(温風加熱器)
44 温風生成部
44a 温風供給管
48 先端部
48a先端部
50 空気噴射部
52 ノズル移動機構(乾燥ノズル移動機構、洗浄ノズル移動機構)
60A 制御部(制御器)
60B 制御部(制御器)
61 演算部(制御器)
62 記憶部
63 送風温度補正部(送風温度補正器)
64 余熱判定部(余熱判定器)
64a 停止経過時間判定部(余熱判定器)
64b ヒータ余熱温度判定部(余熱判定器)
72 室温検出部(雰囲気温度検出器)
75 面温度検出部(被乾燥面温度検出器)
76 送風温度検出部(送風温度検出器)
77 暦情報生成部(暦情報生成器)
101 衛生洗浄装置
130 便座部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座面を有する便座部と、
前記便座部に着座する使用者の局部に対して洗浄水を噴出する洗浄水噴出部と、
前記洗浄水噴出部による前記洗浄水の噴出の後に、前記使用者の前記局部およびその周囲に対して加圧空気を噴出する空気噴出口を先端部に有する筒状のノズルを有する空気噴射部と、
前記ノズルをその軸の方向に進退可能に支持するノズル支持部と、
前記ノズル支持部に固定されており、前記ノズルを前記軸方向に進退駆動する進退駆動手段と、
温風を生成する温風生成部と、前記温風を前記使用者の前記局部に向かって送風する温風送風口を有する先端部と、前記温風生成部からでる前記温風を前記先端部に供給するための温風供給管と、を有する温風乾燥部と、
前記温風乾燥部が温風を生成し、前記空気噴射部による空気の噴出の開始と同時又は空気の噴出の開始の前に、前記温風の送風を開始するように、前記空気噴射部及び前記温風乾燥部を少なくとも制御する制御部と、
を有しており、
前記温風乾燥部の前記先端部は、その温風送風口から出る前記温風の進行方向が、前記ノズルの前記軸の方向に略平行であり、かつ、前記空気噴出口から噴出される前記加圧空気の進行方向と交わるように、前記ノズルの側面に沿って配置されている、
衛生洗浄装置。
【請求項2】
ノズル支持部は、前記ノズルが通過できる内径を有する貫通孔が形成されたノズルガイド部を有しており、
前記温風乾燥部の前記温風供給管の下流部分の一部が前記ノズルガイド部に接続されており、前記温風乾燥部の前記先端部が前記ノズルガイド部内に形成されており、前記温風送風口が前記ノズルガイド部の前記貫通孔の近傍に形成されている
請求項1に記載の衛生洗浄装置。

【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図15】
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【図17】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図7】
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【図9】
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【図14】
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【図16】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−74575(P2011−74575A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−223994(P2009−223994)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】