説明

衛生洗浄装置

【課題】設定流量が少ない場合は、脈動感が少なく、やさしい洗浄感を実現し、設定流量が多い場合は、刺激感をともなったしっかりした洗浄感を実現し、使用者に幅広い洗浄感を提供する。
【解決手段】供給源からの洗浄水を熱交換器12へ流通させる前流路202に設けられた固定オリフィス9の上流側に分岐接続された第1のバキュームブレーカ31と、熱交換器12と人体洗浄ノズル30との間に設けられた後流路203に分岐接続された第2のバキュームブレーカ61と、熱交換器12と第2のバキュームブレーカ61との間にあって洗浄水に脈動を生起させる脈動発生手段14と、人体洗浄ノズル30から吐出する洗浄水の流量を設定する流量設定手段307,308とにより、設定流量が少ない脈動刺激が少なくやさしい洗浄感から設定流量が多く脈動刺激感をともなった強い洗浄感まで、使用者の好みの幅広い洗浄感が選択可能な衛生洗浄装置を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体の局部を洗浄する衛生洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の衛生洗浄装置は、使用者が設定した洗浄流量が少ない場合は、ノズルへ供給する洗浄水の圧力変動の振幅を大きくすることにより、洗浄時の刺激感を強め、逆に、使用者が設定した洗浄流量が多い場合は、ノズルへ供給する洗浄水の圧力変動の振幅を小さくすることにより脈動感を弱める構成のものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−311201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の構成では、洗浄の設定流量が少ない場合に、圧力変動幅を大きくして刺激感が強められているので使用者は洗浄圧力を強く感じ、逆に、設定流量が多い場合に、圧力変動幅を小さくして刺激感が弱められているので使用者は洗浄圧力を弱く感じることになり、使用者からすると、設定できる洗浄感の強弱の幅を狭く感じる結果となっており、使用者の多岐にわたる好みには応じることができないという課題を有していた。
【0005】
特に痔疾などで、弱い洗浄感を望む使用者に対して、洗浄レベルを一番下げても強いと感じる場合には対応ができないため、弱い洗浄感も含めた洗浄強度の調整範囲の拡大を実現する必要があった。噴流が人体に当たった時に感ずる強さは、噴流の面圧に加えて、噴流の強さの変動が大きな要素となる。噴流の強さに変動がなく一様な強さで人体に当たった場合、この強さの感覚はすぐに飽和してしまい、強さを感じなくなる。噴流の強さの変動があった場合には強さの感覚が常に更新されることになり、洗浄感として強く感じる。また噴流の強さが変動することにより、人体の洗浄面での流速が変動することになり、混合効果が増加して洗浄効果を高めることができる。したがって洗浄強度の調節には、面圧(流量)に加えて、圧力変動幅が重要な調節要素となり、洗浄強度の調節に圧力変動幅も同時に調整可能とすることが課題であった。
【0006】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、設定流量が少ない場合は、脈動感が少なく、よりやさしい洗浄感を実現し、逆に設定流量が多い場合は、刺激感をともなったしっかりした洗浄感を実現することで、使用者に幅広い洗浄感を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記従来の課題を解決するために、本発明の衛生洗浄装置は、供給源から供給される洗浄水を人体に供給する衛生洗浄装置であって、
洗浄水を吐出して人体を洗浄する人体洗浄ノズルと、
洗浄水を加熱する熱交換器と、
前記供給源と前記熱交換器との間に設けられ前記供給源からの洗浄水を前記熱交換器へ流通させる前流路と、
前記熱交換器と前記人体洗浄ノズルとの間に設けられ前記熱交換器からの洗浄水を前記人体洗浄ノズルへ流通させる後流路と、
前記前流路に設けられた固定オリフィスと、
前記前流路の前記固定オリフィスの上流側に分岐接続された第1のバキュームブレーカと、
前記後流路に分岐接続された第2のバキュームブレーカと、
前記後流路の前記熱交換器と前記第2のバキュームブレーカとの間にあって前記洗浄水に脈動を生起させる脈動発生手段と、
前記人体洗浄ノズルから吐出する洗浄水の流量を設定する流量設定手段と、
を備えたものである。
【0008】
この場合、熱交換器と第2のバキュームブレーカとの間の脈動発生手段としては、容積型ポンプがあり、容積型ポンプは吐出流量が周期的に変動する特性があり、この変動する流量に対応して容積型ポンプの出口圧力は変化し脈動が発生することになる。この容積型ポンプの出口圧力の脈動時の最低圧力は、容積型ポンプの入口圧力とほぼ等しくなり、また脈動時の最高圧力は流量を一定になるように制御した場合変わらないので、脈動幅としては小さくなることになる。この動作は容積型ポンプに限らず、他の脈動発生手段たとえば電磁ポンプを駆動して脈動を発生させる手段においても同様の作用となる。
【0009】
これによって、本発明に係る衛生洗浄装置においては、給水された洗浄水は、流量設定手段により設定された設定流量に基づいて流量制御され、脈動発生手段に入水する前の洗浄水の入水圧力は、前流路に設けられた固定オリフィスにより、設定流量が少ないときは、容積型ポンプの入口圧力が高くなり、設定流量が多い時は容積型ポンプの入口圧力が低くなるため、弱洗浄のときは、脈動の振幅が小さく、強洗浄の時は脈動の振幅が大きくなる。
【0010】
さらに、熱交換器の上流側である前流路に分岐接続された第1のバキュームブレーカと、熱交換器の下流側である後流路に分岐接続された第2のバキュームブレーカとにより、人体洗浄ノズル等からの汚水の逆流が防止されるとともに、熱交換器内の洗浄水が人体洗浄ノズル等から不用意に流失して空焚きになることが防止される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の衛生洗浄装置は、設定流量が少ない場合は、脈動感が小さく、よりやさしい洗浄感を実現でき、逆に設定流量が多い場合は、脈動感が大きく、刺激感をともなったしっかりした洗浄が実現できて、使用者に幅広い洗浄感を提供することができ、さらに熱交換器の空焚きを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態1における衛生洗浄装置を適用したトイレ装置の斜視図
【図2】同実施の形態1における衛生洗浄装置の遠隔操作装置の正面図
【図3】同実施の形態1における衛生洗浄装置の模式図
【図4】同実施の形態1における衛生洗浄装置の本体部の内部の斜視図
【図5】同実施の形態1における衛生洗浄装置の入水圧力調整手段である減圧弁の断面図
【図6】同実施の形態1における衛生洗浄装置の固定オリフィスとバキュームブレーカの断面図
【図7】同実施の形態1における衛生洗浄装置の容積型ポンプの断面図
【図8】同実施の形態1における衛生洗浄装置の設定流量毎の脈動振幅を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0013】
第1の発明は、供給源から供給される洗浄水を人体に供給する衛生洗浄装置であって、洗浄水を吐出して人体を洗浄する人体洗浄ノズルと、
洗浄水を加熱する熱交換器と、
前記供給源と前記熱交換器との間に設けられ前記供給源からの洗浄水を前記熱交換器へ流通させる前流路と、
前記熱交換器と前記人体洗浄ノズルとの間に設けられ前記熱交換器からの洗浄水を前記人体洗浄ノズルへ流通させる後流路と、
前記前流路に設けられた固定オリフィスと、
前記前流路の前記固定オリフィスの上流側に分岐接続された第1のバキュームブレーカと、
前記後流路に分岐接続された第2のバキュームブレーカと、
前記後流路の前記熱交換器と前記第2のバキュームブレーカとの間にあって前記洗浄水に脈動を生起させる脈動発生手段と、
前記人体洗浄ノズルから吐出する洗浄水の流量を設定する流量設定手段と、
を備えたものである。
【0014】
この場合、熱交換器と第2のバキュームブレーカとの間の脈動発生手段としては、容積型ポンプがあり、容積型ポンプは吐出流量が周期的に変動する特性があり、この変動する流量に対応して容積型ポンプの出口圧力は変化し脈動が発生することになる。この容積型ポンプの出口圧力の脈動時の最低圧力は、容積型ポンプの入口圧力とほぼ等しくなり、また脈動時の最高圧力は流量を一定になるように制御した場合変わらないので、脈動幅としては小さくなることになる。この動作は容積型ポンプに限らず、他の脈動発生手段たとえば電磁ポンプを駆動して脈動を発生させる手段においても同様の作用となる。
【0015】
これによって、本発明に係る衛生洗浄装置においては、給水された洗浄水は、流量設定手段により設定された設定流量に基づいて流量制御され、脈動発生手段に入水する前の洗浄水の入水圧力は、前流路に設けられた固定オリフィスにより、設定流量が少ないときは、容積型ポンプの入口圧力が高くなり、設定流量が多いときは容積型ポンプの入口圧力が低くなるため、弱洗浄のときは、脈動の振幅が小さく、強洗浄のときは脈動の振幅が大きくなる。
【0016】
なぜならば、前流路に設けられた固定オリフィスは流量が少ないほど圧損が小さく、流量が多いほど圧損が大きくなることから、設定流量が少ないときは固定オリフィスでの圧損が小さいため、容積型ポンプの入口に供給される洗浄水の圧力は高く、設定流量が多いときは固定オリフィスでの圧損が大きいため、容積型ポンプの入口に供給される洗浄水の圧力は低くなるためである。
【0017】
さらに、熱交換器の上流側である前流路に分岐接続された第1のバキュームブレーカと、熱交換器の下流側である後流路に分岐接続された第2のバキュームブレーカとにより、人体洗浄ノズル等からの汚水の逆流が防止されるとともに、熱交換器内の洗浄水が人体洗浄ノズル等から不用意に流失して空焚きになることが防止される。
【0018】
これによって、設定流量が少ない場合は、脈動感が小さく、よりやさしい洗浄感を実現でき、逆に設定流量が多い場合は、脈動感が大きく、刺激感をともなったしっかりした洗浄が実現できて、使用者に幅広い洗浄感を提供することができ、さらに熱交換器の空焚きを防止できる。
【0019】
第2の発明は、特に、第1の発明に係る衛生洗浄装置の構成において、前記第1のバキュームブレーカは、
前記前流路から洗浄水が流入する流入口と、
前記固定オリフィスを介して前記熱交換器へ洗浄水を流出する流出口と、
前記固定オリフィスの前記流入口側の分岐管路に設けられたバキュームブレーカ弁と、
前記分岐管路の前記バキュームブレーカ弁よりも前記流入口側である一次側に設けられた
排出口と、
前記分岐管路の前記バキュームブレーカ弁の二次側に設けられた吸気口と、
を備え前記第1のバキュームブレーカは前記固定オリフィスと一体に形成されたものであってもよい。
【0020】
この場合、給水された洗浄水は、流量が少ない場合ほど固定オリフィス通過後の圧力が大きく、流量が多い場合ほど固定オリフィス通過後の圧力は小さくなる。
【0021】
また、第1のバキュームブレーカは、上流側である前流路が負圧になり、人体洗浄ノズルから汚水が逆流しようとした場合に、吸気口から外気を取り入れて前流路の負圧を解除して、汚水が逆流する危険を防止するように作用する。
【0022】
また、第1のバキュームブレーカと一体に形成された固定オリフィスは、前流路が負圧になり、人体洗浄ノズルから汚水が逆流しようとした場合に、固定オリフィスにより流路が減縮されていることにより、逆流しようとする流量が抑制されるように作用する。
【0023】
これによって、第1のバキュームブレーカが外気を取り入れて負圧を解除し、逆流が防止されるだけでなく、人体洗浄ノズルから汚水が逆流しようとした場合でも、固定オリフィスが流路を減縮した構成であるので、第1のバキュームブレーカ内に流れ込む汚水量を抑制することで、より逆流する危険の防止効果を高めることができる。
【0024】
また、第1のバキュームブレーカが固定オリフィスと一体に形成されていることにより、配管ホースが不要で簡素化でき、かつ、コンパクトで省スペースになるだけでなく、配管ホースが内圧で伸縮することよるバキュームブレーカ動作の遅延や誤作動を防止でき、固定オリフィスおよびバキュームブレーカの機能を確実にすることができる。
【0025】
第3の発明は、特に、第1の発明または第2の発明に係る衛生洗浄装置の構成において、脈動発生手段は、容積型ポンプとしてもよい。
【0026】
この場合、給水された洗浄水を、流量設定手段により設定された流量に基づいた圧力で脈動発生手段により加圧して脈動を生起させることができる。
【0027】
この脈動を生起させる脈動発生手段として容積型ポンプを用いたことで、容積型ポンプ入口での圧力がある一定以上になると、容積型ポンプの出口圧力の脈動時の最低圧力は、容積型ポンプの入口圧力とほぼ等しくなり、容積型ポンプの出口圧力の脈動時の最高圧力は変わらないため、圧力脈動幅としては小さくなり、容積型ポンプ入口での圧力がある一定以下となると、圧力脈動幅は大きくなり、容積型ポンプの流量を制御することで、容積型ポンプの入口圧力も連動して変化し、洗浄水の脈動幅が変化する。
【0028】
これによって、容積型ポンプの吐出流量を制御することで、脈動の振幅も同時に制御することができる。すなわち、脈動発生手段である容積型ポンプより生起される洗浄水の脈動は、設定流量が少ないときは、容積型ポンプの入口圧力が高くなり、設定流量が多いときは容積型ポンプの入口圧力が低くなるため、弱洗浄のときは、脈動の振幅が小さく、強洗浄のときは脈動の振幅が大きくなる。したがって、設定流量が少ない場合は、入水圧力調整手段の下流側にある容積型ポンプ入口の圧力が高くなり、脈動の振幅が小さくなることによって、よりやさしい洗浄感を実現することになり、逆に設定流量が多い場合は、容積型ポンプ入口での圧力が低くなり、脈動の振幅が大きくなることによって、刺激感をともなったしっかりした洗浄が実現でき、使用者により幅広い洗浄感を与えることができる。
【0029】
第4の発明は、特に、第1から第3の発明のいずれかに係る衛生洗浄装置の構成において、前記後流路に設けられるバッファタンクをさらに備え、前記第2のバキュームブレーカは前記バッファタンクに設けてもよい。
【0030】
この場合、バッファタンクは熱交換器で加熱された洗浄水の温度緩衝部として作用する。それにより、人体洗浄ノズルに供給される洗浄水の温度むらの発生を抑制することができる。また、バッファタンクと第2のバキュームブレーカとを一体的に設けることができるので、衛生洗浄装置の小型化が可能になる。
【0031】
第5の発明は、特に、第1から第4の発明のいずれかに係る衛生洗浄装置の構成において、前記前流路の前記第1のバキュームブレーカよりも上流側に設けられ前記供給源から給水された洗浄水を減圧する減圧弁を備えてもよい。
【0032】
この場合、減圧弁は供給源から供給される洗浄水の圧力を減圧し、その下流側に配置される固定オリフィスに供給される給水圧力が、常にほぼ一定となるように作用するため、第1の発明の作用効果の一つである弱洗浄のときは脈動の振幅が小さく、脈動感が小さく、よりやさしい洗浄感を実現でき、強洗浄のときは脈動の振幅が大きく、脈動感が大きく、刺激感をともなったしっかりした洗浄が実現できる作用効果を、供給源の供給水圧が異なる場合や変動する場合においても、安定して得ることができる。
【0033】
第6の発明は、特に、第5の発明に係る衛生洗浄装置の構成において、前記前流路の前記減圧弁よりも上流側に設けられ前記供給源から供給される洗浄水の供給状態を切替える止水電磁弁を備えてもよい。これにより、衛生洗浄装置を長期間に亘り安心して使用することができる。
【0034】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態に係る衛生洗浄装置を便器に装着した状態を示すトイレ装置全体図である。図1に示すように、便器700上に衛生洗浄装置100が装着される。衛生洗浄装置100は、本体部200、遠隔操作装置300、便座部400および蓋部500により構成される。本体部200には、便座部400および蓋部500が開閉自在に取り付けられる。また、本体部200には、図3に示す洗浄水供給機構が設けられるとともに、制御部4が内蔵される。
【0035】
図1では、本体部200の正面上部に設けられる着座センサ610が示されている。この着座センサ610は、例えば反射型の赤外線センサである。この場合、着座センサ610は、人体から反射された赤外線を検出することにより便座部400上に使用者が存在することを検知する。
【0036】
図2は、図1の遠隔操作装置300の正面図である。遠隔操作装置300は、コントローラ本体部301の上部には、ワイド洗浄スイッチ305、リズム洗浄スイッチ306、水勢設定スイッチ307,308、ムーブ洗浄スイッチ309、洗浄位置設定スイッチ310、311が設けられ、コントローラ本体部301の下部には、洗浄動作の停止を指示する停止スイッチ302、おしりスイッチ303、ビデスイッチ304が設けられている。遠隔操作装置300には、上記各スイッチに対応した信号を発するようにされている。例えば、使用者がおしり洗浄ボタン303またはビデ洗浄ボタン304を押下操作することにより本体部200の人体洗浄ノズル30が移動して洗浄水が噴出する。
【0037】
図3は、本発明の実施の形態に係る衛生洗浄装置100の本体部200の構成を示す模式図である。
【0038】
図3に示すように、本体部200は、制御部4、分岐水栓5、ストレーナ6、止水電磁弁7、減圧弁8、固定オリフィス9、流量センサ11、熱交換器12、温度センサ13a、13b、容積型ポンプ14、バッファタンク15、切替弁16、人体洗浄ノズル30、第1のバキュームブレーカ31、第2のバキュームブレーカ61、便器ノズル40および便器ノズルモータ40mを含む。また、人体洗浄ノズル30はおしりノズル1、ビデノズル2およびノズル洗浄用ノズル3を含み、切替弁16は切替弁モータ16mを含む。
【0039】
図3に示すように、水の供給源である水道配管201に分岐水栓5が介挿される。また、分岐水栓5と熱交換器12との間に接続され前流路と称する配管202には、ストレーナ6、止水電磁弁7、減圧弁8、固定オリフィス9および流量センサ11が順に介挿される。さらに、熱交換器12と切替弁16との間に接続され後流路と称する配管203に、温度センサ13a、13b、容積型ポンプ14およびバッファタンク15が順に介挿されている。
【0040】
第1のバキュームブレーカ31は、減圧弁8と固定オリフィス9の間の配管(前流路)202から分岐される形態で分岐管路204が構成され、熱交換器12および便器ノズル40の洗浄水噴出口よりも上方の位置に配置される。第1のバキュームブレーカ31には、分岐配管205の一端が接続される。分岐配管205は第1のバキュームブレーカ31を介して連結される。便器ノズル40は、分岐配管205の他端に接続される。便器ノズルモータ40mは、便器ノズル40の近傍に取り付けられる。
【0041】
なお、固定オリフィス9は、図6に示すように第1のバキュームブレーカ31の前流路から洗浄水が流入する流入口71と熱交換器12へ洗浄水を流出する流出口72との間に一体的に形成されている。そして、第1のバキュームブレーカ31は、固定オリフィス9の流入口71側の分岐管路204にバキュームブレーカ弁77が設けられ、分岐管路204のバキュームブレーカ弁77よりも流入口71側である一次側に排出口73と、そのバキュームブレーカ弁77の二次側に吸気口74が設けられている。
【0042】
もう一つの第2のバキュームブレーカ61は、バッファタンク15に設けられ、熱交換器12のケーシングの上壁面よりも高い位置に配置される。
【0043】
次に、本体部200における洗浄水の流れおよび制御部4による本体部200の各構成部の制御について説明する。
【0044】
まず、水道配管201を流れる浄水が、洗浄水として分岐水栓5によりストレーナ6に供給される。ストレーナ6により洗浄水に含まれるごみや不純物等が除去される。
【0045】
次に、止水電磁弁7により洗浄水の供給状態が切り替えられ、減圧弁8により配管202内を流れる洗浄水の圧力を一定圧力に減圧し、さらに固定オリフィス9を通過することでさらに減圧される。止水電磁弁7の動作は、制御部4により制御される。
【0046】
配管202において、流量センサ11は、配管202内を流れる洗浄水の流量を計測し、制御部4に計測流量値を与える。熱交換器12は、配管202内を通して供給される洗浄水を所定の温度に加熱する。熱交換器12の動作は、流量センサ11により計測された計測流量値に基づいて制御部4により制御される。
【0047】
続いて、熱交換器12により加熱された洗浄水が、容積型ポンプ14によりバッファタンク15を通して切替弁16に圧送される。容積型ポンプ14の動作は、制御部4により制御される。
【0048】
バッファタンク15は、加熱された洗浄水の温度緩衝部として作用する。これにより、切替弁16に圧送される洗浄水の温度むらの発生が抑制される。なお、熱交換器12とバッファタンク15との合計の容量は、15cc〜30ccであることが好ましく、20cc〜25ccであることがより好ましい。
【0049】
切替弁16においては、切替弁モータ16mが動作することにより、容積型ポンプ14から圧送された洗浄水が、おしりノズル1、ビデノズル2およびノズル洗浄ノズル3のいずれかに供給される。これにより、おしりノズル1、ビデノズル2およびノズル洗浄ノズル3のいずれかから洗浄水が噴出する。切替弁モータ16mの動作は、制御部4により制御される。
【0050】
おしりノズル1およびビデノズル2は、使用者の局部の洗浄を行うために用いられる。ノズル洗浄ノズル3は、おしりノズル1およびビデノズル2の、便器700内に突出する部分を洗浄するために用いられる。
【0051】
熱交換器12と便器ノズル40との間に第1のバキュームブレーカ31が設けられ、熱交換器12と人体洗浄ノズル30との間にはもう一つの第2のバキュームブレーカ61が設けられている。それにより、熱交換器12内の洗浄水が分岐管路204、分岐配管205および便器ノズル40を介して外部に流出することならびに配管203(後流路)および人体洗浄ノズル30を介して外部に流出することが防止される。その結果、熱交換器12の空焚きが防止される。
【0052】
また、第1のバキュームブレーカ31により、便器ノズル40側からの汚水等の逆流が防止されるとともに、もう一つの第2のバキュームブレーカ61により人体洗浄ノズル30側から汚水等の逆流が防止される。
【0053】
図4は、本体200の内部の一実施例を示したものである。
【0054】
次に、減圧弁8について説明する。図5は減圧弁の断面図である。
【0055】
減圧弁8は、ダイヤフラム押さえ44と、減圧スプリング46と、ダイヤフラム押さえ44内壁を摺動するスプリング受け45と、ダイヤフラム47と、ダイヤフラムワッシャ48と、減圧弁流入部41と流出部43と平面台座部52とダイヤフラムワッシャ受け53とを有する弁本体42と、ダイヤフラム軸51と、ダイヤフラム軸51が摺動するダイヤフラム軸受け49と、からなる。
【0056】
減圧弁8は、止水電磁弁7の下流側に配置され、その下流側に配置される固定オリフィスに供給される給水圧力が常にほぼ一定となるように減圧弁流出部43の2次圧を調整する。
【0057】
次に、固定オリフィス9について説明する。図6は、内部に固定オリフィスを構成した第1のバキュームブレーカ31の断面図である。
【0058】
固定オリフィス9は第1のバキュームブレーカ31の流出口72の一部として構成する。第1のバキュームブレーカ31は、流入口71と流出口72と固定オリフィス9を有するバキュームアダプタ75と、便器ノズル用の排出口73と吸気口74を有するバキュームフタ76と、バキュームブレーカ弁77と、からなる。
【0059】
第1のバキュームブレーカ31は減圧弁8の下流側に配置され、減圧弁8によって一定圧力に減圧された洗浄水が、流入口71から第1のバキュームブレーカ31内に供給され
る。そして、切替弁16が開いている場合は、固定オリフィス9を通って、流出口72に流れる。このとき、流量が少ないほど固定オリフィス9による圧損が小さく、流出口72での圧力が高くなり、流量が多いほど固定オリフィス9による圧損が大きく、流出口72での圧力が低くなる。そのため、設定流量を変化させると、容積型ポンプ14入口での圧力が変化することになる。
【0060】
また、切替弁16が閉じている場合は、便器ノズル用の排出口73に洗浄水が供給される。
【0061】
さらに、通常時は、洗浄水がバキュームブレーカ弁77を水圧によって押し上げているため、吸気口74への流路は閉じられているが、上流側が負圧になった場合には、バキュームブレーカ弁77が下がり、吸気口74から外気を取り入れて上流側の負圧を解除して、人体洗浄ノズル30から汚水が逆流する危険を防止することができる。
【0062】
万一、人体洗浄ノズル30から汚水が逆流しようとした場合でも、流出口72から流入する汚水を固定オリフィス9によって流路を減縮するため、汚水の逆流を抑制することができる。
【0063】
次に、容積型ポンプ14について説明する。図7は、容積型ポンプ14の断面図である。
【0064】
容積型ポンプ14は、本体部81内に、円柱状空間82が形成され、円柱状空間82内には圧送ピストン83が設けられ、圧送ピストン83により円柱状空間82がポンプ室82aとポンプ室82bとに分割される。本体部81の一側部には洗浄水の流入部84が設けられ、他側部には洗浄水の流出部85が設けられている。流入部84には配管203(後流路)を介して熱交換器12が接続され、流出部85には配管203(後流路)を介して切替弁16が接続される。
【0065】
そして、モータ86の回転軸にギヤ87が取り付けられ、ギヤ87にギヤ88が噛み合っており、ギヤ88に連接されるリンク機構89により圧送ピストン83を往復運動に変換する。モータ86が回転するとギヤ87、ギヤ88、リンク機構89を介して圧送ピストン83が往復動する。
【0066】
そこで、圧送ピストン83が下方向に移動し、ポンプ室82aの容積を増加させた場合、ポンプ室82aの圧力が流入部84よりも圧力が低くなるため、流入部84aより洗浄水がポンプ室82aに供給される。一方、圧送ピストン83が上方向に移動し、ポンプ室82aの容積を減少させた場合、ポンプ室82aの圧力が流出部85よりも圧力が高くなるため、ポンプ室82aより洗浄水が流出部85aに吐出される。
【0067】
これにより、ポンプ室82a内の洗浄水が流出部85aから吐出されるときに、ポンプ室82b内に流入部84bからの洗浄水が供給され、ポンプ室82a内の洗浄水が流入部84aから供給されるときに、ポンプ室82b内の洗浄水が流出部85bから吐出される。
【0068】
したがって、圧送ピストン83が上下運動を行うことにより、ポンプ室82aまたはポンプ室82b内の洗浄水に対して交互に圧力が加えられ、さらに、圧送ピストン83が往復する速度が一回転中で変化することにより、流入部84の洗浄水が周期的な脈動が与えられ、脈動圧の変化としては、脈動時の最低圧力はポンプの流入圧にほぼ等しくなり、また脈動圧の最大圧力はポンプの負荷、ポンプの容積変化の速度に対応した圧力となり、流出部85から吐出される。
【0069】
容積型ポンプ14においては、流入部84での圧力が上昇すると、ポンプの負荷が低減し、脈動の最低圧力は上昇し、脈動の最高圧力は負荷一定とすると、ほぼ変化がないため、脈動幅としては小さくなり、条件によってはほぼ脈動がない状態まで制御することができる。したがって、流入部84での圧力が固定オリフィス9の特性から、流量が増えると、流入部84の圧力が低下し、流量が減ると流入部圧力84の圧力が上がる特性があるため、容積型ポンプの流量を制御することによって、流量が少ない時に流入部84の圧力を上げて、脈動を小さくし、流量が多い時に流入部84の圧力を下げて脈動を大きくすることができる。
【0070】
これにより、設定流量が少ない場合は、容積型ポンプ14入口での圧力が大きく、脈動がなくなるため、よりやさしい洗浄感を実現することになり、逆に設定流量が多い場合は、容積型ポンプ14入口での圧力が小さく、脈動を制御することによって、刺激感をともなったしっかりした洗浄が実現でき、使用者により幅広い洗浄感を提供することができる。
【0071】
以上説明したような、脈動発生手段を圧送ピストン83の駆動量に応じた容積の洗浄水を送出できる容積型ポンプ14にすることにより、モータ86の回転数を可変制御することによって、特に流量制御弁を設けなくても流量制御ができる。例えば、モータ86の回転数を低速回転にした場合、人体洗浄ノズル30に供給される洗浄水の流量は少なくなるとともに、脈動の圧力振幅が小さくなり刺激感の少ないやさしい噴流で洗浄できる。また、モータ86の回転数を高速回転にした場合、人体洗浄ノズル30に供給される洗浄水の流量は多くなるとともに、脈動の圧力振幅が大きくなり刺激感をともなった強い噴流で洗浄できる。
【0072】
つまり、脈動発生手段を、容積型ポンプとしたことにより、流量制御弁なしに人体洗浄ノズルから吐出する流量制御が可能で、かつ、設定流量が多いほど人体洗浄ノズルから吐出する洗浄水の脈動の振幅を増幅させることができる。
【0073】
図8は、人体洗浄ノズル30から吐出される洗浄水の圧力変動を示したものである。
【0074】
おしりスイッチ303またはビデスイッチ304の操作により給水された洗浄水は、入水圧力にかかわらず減圧弁8によってほぼ一定圧力に減圧され、固定オリフィス9によってさらに減圧される。ここで、水勢設定スイッチ307,308によって洗浄流量が最も少なく(Lv1)設定されたときには、固定オリフィス9を通る流量が少なく圧損が小さいため、容積型ポンプ14入口での圧力が高くなり、加圧機能が働かずに人体洗浄ノズルから吐出される。したがって、図8に示すように、容積型ポンプ14出口での圧力変動の振幅がなく、使用者にとって洗浄流量が少なく、脈動もないため、よりやさしい洗浄感を与える。
【0075】
逆に、水勢設定スイッチ307,308によって洗浄流量を多く(Lv2以上)設定するほど、固定オリフィス9を通る流量が多く圧損が大きくなるため、容積型ポンプ14入口での圧力が低くなり、容積型ポンプ14の動作を洗浄流量に合わせて回転数を大きくして、人体洗浄ノズルから吐出する。したがって、図8に示すように、洗浄流量を多くするほど容積型ポンプ14出口での圧力変動の振幅が大きくなり、使用者にとって洗浄流量が多くなるにつれて、脈動も大きくなるため、より刺激感をともなったしっかりした洗浄感が得られる。
【0076】
このように、流量設定手段である水勢設定スイッチ307,308によって、使用者が洗浄流量の少ないLv1の洗浄強さに設定した場合には、脈動をなくして、よりやさしい
洗浄感を実現し、Lv4やLv5のように洗浄強さのレベルが高く、かつ洗浄流量が多い設定流量が指示されるにしたがって、脈動を大きくして、刺激感を伴った洗浄感を実現することで、使用者により幅広い洗浄感を提供することができる。
【0077】
以上のように実施の形態1は、供給源である水道配管201から供給される洗浄水を人体に供給する衛生洗浄装置であって、洗浄水を吐出して人体を洗浄する人体洗浄ノズル30と、洗浄水を加熱する熱交換器12と、供給源からの洗浄水を熱交換器12へ流通させる前流路202と、熱交換器12と人体洗浄ノズル30との間に設けられ熱交換器12からの洗浄水を人体洗浄ノズル30へ流通させる後流路203と、前流路202に設けられた固定オリフィス9と、前流路202の固定オリフィス9の上流側に分岐接続された第1のバキュームブレーカ31と、後流路203に分岐接続された第2のバキュームブレーカ61と、後流路203の熱交換器12と第2のバキュームブレーカ61との間にあって洗浄水に脈動を生起させる脈動発生手段である容積型ポンプ14と、人体洗浄ノズル30から吐出する洗浄水の流量を設定する流量設定手段307,308と、を備えたものである。
【0078】
そして、熱交換器12と第2のバキュームブレーカ61との間に設けられた容積型ポンプ14は、吐出流量が周期的に変動する特性があり、この変動する流量に対応して容積型ポンプ14の出口圧力、すなわち流出部85の圧力は変化し脈動が発生することになる。この容積型ポンプ14の出口圧力の脈動時の最低圧力は、容積型ポンプ14の入口圧力、すなわち流入部84の圧力とほぼ等しくなり、また脈動時の最高圧力は流量を一定になるように制御した場合変わらないので、脈動幅としては小さくなることになる。この動作は容積型ポンプに限らず、他の脈動発生手段たとえば電磁ポンプを駆動して脈動を発生させる手段においても同様の作用となる。
【0079】
これによって、実施の形態1の衛生洗浄装置においては、給水された洗浄水は、流量設定手段307,308により設定された設定流量に基づいて流量制御され、脈動発生手段である容積型ポンプ14に入水する前の洗浄水の入水圧力は、前流路202に設けられた固定オリフィス9により、設定流量が少ないときは、容積型ポンプ14の入口圧力が高くなり、設定流量が多いときは容積型ポンプ14の入口圧力が低くなるため、弱洗浄のときは、脈動の振幅が小さく、強洗浄のときは脈動の振幅が大きくなる。
【0080】
なぜならば、前流路202に設けられた固定オリフィス9は流量が少ないほど圧損が小さく、流量が多いほど圧損が大きくなることから、設定流量が少ないときは固定オリフィス9における圧損が小さいため、容積型ポンプ14の入口に供給される洗浄水の圧力は高く、設定流量が多いときは固定オリフィス9における圧損が大きいため、容積型ポンプ14の入口に供給される洗浄水の圧力は低くなるためである。
【0081】
さらに、熱交換器12の上流側である前流路202に分岐接続された第1のバキュームブレーカ31と、熱交換器12の下流側である後流路203に分岐接続された第2のバキュームブレーカ61とにより、人体洗浄ノズル30や便器ノズル40からの汚水の逆流が防止されるとともに、熱交換器12内の洗浄水が人体洗浄ノズル30や便器ノズル40から不用意に流失して空焚きになることが防止される。
【0082】
これによって、設定流量が少ない場合は、脈動感が小さく、よりやさしい洗浄感を実現でき、逆に設定流量が多い場合は、脈動感が大きく、刺激感をともなったしっかりした洗浄が実現できて、使用者に幅広い洗浄感を提供することができ、さらに熱交換器の空焚きを防止できる。
【0083】
また、実施の形態1の衛生洗浄装置において、第1のバキュームブレーカ31は、前流
路202から洗浄水が流入する流入口71と、固定オリフィス9を介して熱交換器12へ洗浄水を流出する流出口72と、固定オリフィス9の流入口71側の分岐管路204に設けられたバキュームブレーカ弁77と、分岐管路204のバキュームブレーカ弁77よりも流入口71側である一次側に設けられた排出口73と、分岐管路204のバキュームブレーカ弁77の二次側に設けられた吸気口74とを備えており、第1のバキュームブレーカ31は図6のように固定オリフィス9と一体に形成されている。
【0084】
この構成で、流量が少ない場合ほど固定オリフィス9での圧力損失が小さく、流量が多い場合ほど固定オリフィス9での圧力損失が大きくなることから、固定オリフィス9通過後の流出口72における洗浄水の圧力は、流量が少ない場合ほど固定オリフィス9通過後の圧力が高く、流量が多い場合ほど固定オリフィス9通過後の圧力は低くなる。
【0085】
また、第1のバキュームブレーカ31は、上流側である前流路202が負圧になり、人体洗浄ノズル30から汚水が逆流しようとした場合に、吸気口74から外気を取り入れて前流路202の負圧を解除して、汚水が逆流する危険を防止するように作用する。
【0086】
また、第1のバキュームブレーカ31と一体に形成された固定オリフィス9は、前流路202が負圧になり、人体洗浄ノズル30から汚水が逆流しようとした場合に、固定オリフィス9で流路が減縮されていることにより、逆流しようとする流量が抑制されるように作用する。
【0087】
これによって、第1のバキュームブレーカ31が外気を取り入れて負圧を解除し、逆流が防止されるだけでなく、人体洗浄ノズル30から汚水が逆流しようとした場合でも、固定オリフィス9が流路を減縮した構成であるので、第1のバキュームブレーカ31内に流れ込む汚水量を抑制することで、より汚水が逆流する危険の防止効果を高めることができる。
【0088】
また、第1のバキュームブレーカ31が固定オリフィス9と一体に形成されていることにより、配管ホースが不要で簡素化でき、かつ、コンパクトで省スペースになるだけでなく、配管ホースが内圧で伸縮することよるバキュームブレーカ動作の遅延や誤作動を防止でき、固定オリフィスおよびバキュームブレーカの機能を確実にすることができる。
【0089】
また、実施の形態1の衛生洗浄装置において、脈動発生手段は、容積型ポンプ14で構成されており、給水された洗浄水を、流量設定手段307,308により設定された流量に基づいた圧力で脈動発生手段である容積型ポンプ14により加圧して脈動を生起させることができる。
【0090】
この脈動を生起させる脈動発生手段として容積型ポンプ14を用いたことで、容積型ポンプ14入口圧力すなわち流入部84での圧力がある一定以上になると、容積型ポンプ14の出口圧力すなわち流出部85での脈動時の最低圧力は、容積型ポンプ14の入口圧力とほぼ等しくなり、容積型ポンプ14の出口圧力の脈動時の最高圧力は変わらないため、圧力脈動幅としては小さくなり、容積型ポンプ14入口での圧力がある一定以下となると、圧力脈動幅は大きくなり、容積型ポンプ14の流量を制御することで、容積型ポンプ14の入口圧力も連動して変化し、洗浄水の脈動幅が変化する。
【0091】
これによって、容積型ポンプ14の吐出流量を制御することで、脈動の振幅も同時に制御することができる。すなわち、脈動発生手段である容積型ポンプ14より生起される洗浄水の脈動は、設定流量が少ないときは、容積型ポンプの入口圧力が高くなり、設定流量が多いときは容積型ポンプの入口圧力が低くなるため、弱洗浄のときは、脈動の振幅が小さく、強洗浄のときは脈動の振幅が大きくなる。したがって、設定流量が少ない場合は、
入水圧力調整手段の下流側にある容積型ポンプ入口の圧力が高くなり、脈動の振幅が小さくなることによって、よりやさしい洗浄感を実現することになり、逆に設定流量が多い場合は、容積型ポンプ入口での圧力が低くなり、脈動の振幅が大きくなることによって、刺激感をともなったしっかりした洗浄が実現でき、使用者により幅広い洗浄感を与えることができる。
【0092】
また、実施の形態1の衛生洗浄装置において、後流路203にはバッファタンク15を備え、第2のバキュームブレーカ61はバッファタンク15に設けた構成であり、バッファタンク15は熱交換器12で加熱された洗浄水の温度緩衝部として作用する。
【0093】
これにより、人体洗浄ノズル30に供給される洗浄水の温度むらの発生を抑制することができ、バッファタンク15と第2のバキュームブレーカ61とを一体的に設けることができるので、衛生洗浄装置の小型化が可能になる。
【0094】
また、実施の形態1の衛生洗浄装置において、前流路202の第1のバキュームブレーカ31よりも上流側に設けられ供給源である水道配管201から給水された洗浄水を減圧する減圧弁8を備えた構成である。
【0095】
この減圧弁8は、供給源である水道配管201から供給される洗浄水の圧力を減圧し、その下流側に配置される固定オリフィス9に供給される給水圧力が、常にほぼ一定となるように作用するため、本実施の形態1の衛生洗浄装置の作用効果の一つである弱洗浄のときは脈動の振幅が小さく、脈動感が小さく、よりやさしい洗浄感を実現でき、強洗浄のときは脈動の振幅が大きく、脈動感が大きく、刺激感をともなったしっかりした洗浄が実現できる作用効果を、供給源の供給水圧が異なる場合や変動する場合においても、安定して得ることができる。
【0096】
また、前流路202の減圧弁8よりも上流側に設けられ供給源である水道配管201から供給される洗浄水の供給状態を切替える止水電磁弁7を備えているので、使用者が衛生洗浄装置を使用しないときは、止水電磁弁7が閉じられることにより、衛生洗浄装置を使用していないときに、減圧弁8および熱交換器12に不必要な水圧負荷が作用することをなくすることができ、長期間安心して使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0097】
以上のように、本発明にかかる衛生洗浄装置は、設定流量が少ない場合は、脈動感が少なく、よりやさしい洗浄感を実現でき、逆に設定流量が多い場合は、刺激感をともなったしっかりした洗浄が実現できて、使用者に幅広い洗浄感を提供することができ、さらに熱交換器の空焚きを防止できるので、温水洗浄便座のみならず顔や頭、手、足などの衛生洗浄装置、あるいはペット等の動物、または生き物以外の洗浄の用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0098】
7 止水電磁弁
8 減圧弁
9 固定オリフィス
12 熱交換器
14 容積型ポンプ(脈動発生手段)
15 バッファタンク
30 人体洗浄ノズル
31 第1のバキュームブレーカ
61 第2のバキュームブレーカ
71 流入口
72 流出口
73 排出口
74 吸気口
77 バキュームブレーカ弁
202 配管(前流路)
203 配管(後流路)
204 分岐管路
205 分岐配管
307,308 水勢設定スイッチ(流量設定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給源から供給される洗浄水を人体に供給する衛生洗浄装置であって、
洗浄水を吐出して人体を洗浄する人体洗浄ノズルと、
洗浄水を加熱する熱交換器と、
前記供給源と前記熱交換器との間に設けられ前記供給源からの洗浄水を前記熱交換器へ流通させる前流路と、
前記熱交換器と前記人体洗浄ノズルとの間に設けられ前記熱交換器からの洗浄水を前記人体洗浄ノズルへ流通させる後流路と、
前記前流路に設けられた固定オリフィスと、
前記前流路の前記固定オリフィスの上流側に分岐接続された第1のバキュームブレーカと、
前記後流路に分岐接続された第2のバキュームブレーカと、
前記後流路の前記熱交換器と前記第2のバキュームブレーカとの間にあって前記洗浄水に脈動を生起させる脈動発生手段と、
前記人体洗浄ノズルから吐出する洗浄水の流量を設定する流量設定手段と、
を備えた衛生洗浄装置。
【請求項2】
前記第1のバキュームブレーカは、
前記前流路から洗浄水が流入する流入口と、
前記固定オリフィスを介して前記熱交換器へ洗浄水を流出する流出口と、
前記固定オリフィスの前記流入口側の分岐管路に設けられたバキュームブレーカ弁と、
前記分岐管路の前記バキュームブレーカ弁よりも前記流入口側である一次側に設けられた排出口と、
前記分岐管路の前記バキュームブレーカ弁の二次側に設けられた吸気口と、
を備え前記第1のバキュームブレーカは前記固定オリフィスと一体に形成された請求項1に記載の衛生洗浄装置。
【請求項3】
前記脈動発生手段は、容積型ポンプとした請求項1または2に記載の衛生洗浄装置。
【請求項4】
前記後流路に設けられるバッファタンクをさらに備え、
前記第2のバキュームブレーカは前記バッファタンクに設けられた請求項1〜3のいずれか1項に記載の衛生洗浄装置。
【請求項5】
前記前流路の前記第1のバキュームブレーカよりも上流側に設けられ前記供給源から給水された洗浄水を減圧する減圧弁を備えた請求項1〜4のいずれか1項に記載の衛生洗浄装置。
【請求項6】
前記前流路の前記減圧弁よりも上流側に設けられ前記供給源から供給される洗浄水の供給状態を切替える止水電磁弁を備えた請求項5に記載の衛生洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−202101(P2012−202101A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−67236(P2011−67236)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】