説明

衛生洗浄装置

【課題】トイレルーム内の壁面や床面に加え脱臭手段に臭気物質が蓄積されることを抑制し、トイレルーム全体の臭気を長期間に亘り抑制する衛生洗浄装置を提供すること。
【解決手段】便器上に載置される本体200と、便座220と、洗浄手段400と、帯電微粒子水をトイレルーム空間に放出する静電霧化装置800とを含み、静電霧化装置800の吐出口816の近傍に着脱自在な点検蓋840を備えたことにより、静電霧化装置800の吐出口816の近傍が直接小便等で汚染された場合、点検蓋840を取り外して点検蓋840自体と静電霧化装置800の内部を清掃することができるので、静電霧化装置800の内部に汚染物資が蓄積されることがなく、トイレルーム全体の臭気を長期間に亘り抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトイレルーム内の臭気物質の脱臭機能と細菌類の除菌機能を備えた衛生洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、トイレルーム内で発生する各種の臭気物質の脱臭やかび等の発生源となる細菌の除菌の方法としては、排便に伴い便器内で発生する臭気の直接的な脱臭と、トイレルーム内に拡散して壁や床に付着蓄積した臭気物質や細菌の分解除去の両面に対して実施されている。
【0003】
排便に伴う臭気の脱臭方法としては、衛生洗浄装置に内蔵した送風機で吸引した便器内の空気を多孔質の脱臭剤を通過させることにより、臭気物質を分解除去して脱臭した空気をトイレルーム内に放出させている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、トイレルームの壁や床に付着蓄積した臭気物質や細菌類の分解除去の方法としては、トイレルーム内の壁面に静電霧化装置を設置し、空気中の水分を結露させた水に高電圧を印加することにより、ナノメータサイズの帯電微粒子水を生成してトイレルーム内に放出し、壁や床面に付着した臭気物質や菌類を分解することにより脱臭および除菌しているものもある(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
また、便器内の臭気の脱臭とトイレルーム内の臭気物質や菌類の脱臭および分解除去を行うために、便座装置に霧化発生装置を内蔵し、霧化発生装置で発生したナノメータサイズのミストを、便器内とトイレルーム内の両方に放出しているものもある(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−213762号公報
【特許文献2】特開2009−299466号公報
【特許文献3】特開2005−155150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、例えば、特許文献1の構成であれば、排便に伴う便器内で発生する臭気を短時間に脱臭することが可能であるが、便器内から放散した臭気物質や便器外に飛散した小便等から発生する臭気に対する脱臭作用はないため、トイレルームの使用期間が長くなれば臭気物質が蓄積されることにより臭気が強くなる。
【0008】
また、例えば、特許文献2の構成であれば、トイレルームの壁面や床面に付着した臭気物質や細菌の分解除去は可能であるが、便器内で発生する臭気の除去に対しては効果がない。また、特許文献1の構成の衛生洗浄装置と組み合わせて使用した場合においても、2個の装置が独立して動作するため相乗的な効果を期待することができず、無駄なエネルギー消費につながる可能性がある。
【0009】
また、例えば、特許文献3の構成であれば、便器内とトイレルーム内の両方の臭気を脱臭する機能を備えた構成であるが、便器内の臭気とトイレルーム内の臭気では、臭気物質の量および臭気物質の割合が異なり、同一の脱臭手段で脱臭した場合、一方の脱臭性能が
十分に得られず満足できるものではない。また、便器内の脱臭においては、ミストを便器内に放出することにより便器内の臭気物質の一部を便器外に排出してしまうこともあり、臭気物質がトイレルーム内に放散されることも懸念される。
【0010】
上記いずれの背景技術においても、トイレルーム内で行われる正常な用便動作で発生する臭気物質に対して効果が得られるものであるが、異常または異常に近い用便動作に伴って発生する臭気に対しては十分な脱臭効果を発揮することができないことが懸念される。特に子供のいたずらや用便動作の失敗等により脱臭用機器自体が大便または小便で汚染された場合、脱臭用機器自体が臭気の発生源となることも懸念される。
【0011】
上記のように、トイレルーム内全体の脱臭を効果的に実施しようとした場合、排便に伴う臭気と、トイレルームに壁面や床面に付着した臭気と、脱臭用機器に付着した臭気は、臭気物質の量および割合が異なり、また発生時期と脱臭処理すべき時間が異なるため、同一の脱臭手段で実施した場合、十分な効果を得ることができないという課題を有していた。
【0012】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、特にトイレルーム内の壁面や床面また脱臭用機器に臭気物質が付着蓄積されることを抑制するとともに、蓄積された臭気物質に対して脱臭機能をシステム的に作用させることにより、トイレルーム全体の脱臭を長期間に亘り効果的に実施する衛生洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記従来の課題を解決するために、本発明の衛生洗浄装置は、便器上に載置される本体と、本体に起倒自在に枢支された便座と、人体局部を洗浄する洗浄手段と、本体に内蔵され、水を静電霧化して生成した帯電微粒子水を本体よりトイレルーム空間に吐出する静電霧化装置とを含み、静電霧化装置は、本体外部から空気を吸引する吸気口と、帯電微粒子水を含む空気を前記本体外部に吐出する吐出口と、吸気口と吐出口を連通する風路を形成するケースと、吸気口から吸引した空気を送給する送風装置と、帯電微粒子水を生成する静電霧化ユニットとを備え、ケースの吐出口の近傍に着脱自在の点検蓋を備え、点検蓋を取り外した状態で本体の外部から吐出口近傍のケース内部を点検および清掃することが可能な衛生洗浄装置である。
【0014】
これにより、静電霧化装置により帯電微粒子水をトイレルーム空間に放散することにより、トイレルーム空間に浮遊している臭気物質や、壁面、天井面、床面に付着している臭気物質を分解して臭気を除去することができ、また、本体特に静電霧化装置の吐出口が直接小便等で汚染された場合、点検蓋を取り外してケース内部を清掃することができるので、静電霧化装置の内部に汚染物資が蓄積されることがなく、トイレルーム全体の臭気を長期間に亘り抑制することができるものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の衛生洗浄装置は、用便中に発生する臭気とトイレ空間に付着している臭気を効果的に除去し、トイレルーム内の臭気を長期間に亘り抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態1における衛生洗浄装置の外観を示す斜視図
【図2】本発明の実施の形態1における本体のカバーを取り外した状態の平面図
【図3】本発明の実施の形態1における本体のカバーを取り外した状態の側面図
【図4】図2のAAで示す脱臭装置の断面図
【図5】図2のBBで示す静電霧化装置の断面図
【図6】図2のCCで示す静電霧化装置の断面図
【図7】本発明の実施の形態1における静電霧化装置の点検蓋の斜視図
【図8】本発明の実施の形態1における静電霧化装置の静電霧化ユニットの正面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
第1の発明は、 便器上に載置される本体と、前記本体に起倒自在に枢支された便座と、人体局部を洗浄する洗浄手段と、前記本体に内蔵され、水を静電霧化して生成した帯電微粒子水を前記本体よりトイレルーム空間に吐出する静電霧化装置とを含み、前記静電霧化装置は、前記本体外部から空気を吸引する吸気口と、前記帯電微粒子水を含む空気を前記本体外部に吐出する吐出口と、前記吸気口と前記吐出口を連通する風路を形成するケースと、前記吸気口から吸引した空気を送給する送風装置と、帯電微粒子水を生成する静電霧化ユニットとを備え、前記ケースの前記吐出口の近傍に着脱自在の点検蓋を備え、前記点検蓋を取り外した状態で前記本体の外部から前記吐出口近傍の前記ケース内部を点検および清掃することが可能な衛生洗浄装置である。
【0018】
これにより、静電霧化装置により帯電微粒子水をトイレルーム空間に放散することにより、トイレルーム空間に浮遊している臭気物質や、壁面、天井面、床面に付着している臭気物質を分解して臭気を除去することができ、また、本体特に静電霧化装置の吐出口が直接小便等で汚染された場合、点検蓋を取り外してケース内部を清掃することができるので、静電霧化装置の内部に汚染物資が蓄積されることがなく、トイレルーム全体の臭気を長期間に亘り抑制することができるものである。
【0019】
第2の発明は、特に、第1の発明において、前記点検蓋は、前記ケース内を送給される前記帯電微粒子水を含む空気の向きを変更する風向変更部を備えたものである。
【0020】
これにより、風向変更部の形状を変更することにより、吐出口から吐出する帯電微粒子水を含む空気の吐出方向変更することが可能となり、トイレルームの形状や広さに合わせて吐出方向を調整することが可能となる。
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0022】
(実施の形態1)
図1は本実施の形態における衛生洗浄装置を便器上に設置した状態の外観の斜視図を示し、図2は衛生洗浄装置の本体のカバーを取り外した状態の平面図を示し、図3は本体のカバーを取り外した状態の左側の側面図を示すものである。
【0023】
<1>衛生洗浄装置の構成
図1に示すように、衛生洗浄装置100は、本体200、便蓋210、便座220、リモートコントローラ300、人体検知センサ310により構成され、本体200、便蓋210、便座220は一体で構成され便器110の上面に設置される。
【0024】
なお、本実施の形態においては衛生洗浄装置100の本体200の設置側を後方、便座220の設置側を前方とし、後方に向かって右側を右側、後方に向かって左側を左側として各構成要素の配置を説明する。
【0025】
本体200には、便蓋210および便座220が便座便蓋回動機構(図示せず)を介して開閉可能に取り付けられている。図1に示すように便蓋210を開放した状態においては、便蓋210は衛生洗浄装置100の最後部に位置するように起立する。また、便蓋210を閉成すると便座220の上面を隠蔽する。便座220は便座ヒータ(図示せず)を内蔵しており、便座の着座面が快適な温度になるように加熱する。
【0026】
本体200の前面コーナー部には着座検知センサ230が設置してある。この着座検知センサ230は反射型の赤外線センサであり、人体から反射された赤外線を検出することにより便座220上に使用者が存在することを検知する。
【0027】
本体200の右側には本体200と一体に袖部240が突出して形成されており、袖部240の上面には衛生洗浄装置100の各機能を操作する複数の操作スイッチ241と表示装置242が設置されており、袖部240の内部には静電霧化装置800が内蔵されている。
【0028】
リモートコントローラ300には、複数の操作スイッチ301が設けられている。リモートコントローラ300は便座220上に着座した使用者が操作可能なトイレルームの壁面等の場所に取り付けられ、衛生洗浄装置100の各機能の操作を行う。
【0029】
人体検知センサ310はトイレルームの壁面等に取り付けられる。人体検知センサ310は、反射型の赤外線センサであり、人体から反射された赤外線を検出してトイレルーム内に使用者が入室したことを検知する。
【0030】
本発明の衛生洗浄装置100はトイレルームに使用者が存在しない場合は、便座ヒータへの通電を停止、もしくは20℃程度の低温に保温している。トイレルームに使用者が入室すると、人体検知センサ310からの信号を受け、便座ヒータに通電を行う。便座ヒータは800W程度の非常に高出力のヒータであり、使用者がトイレルームに入室してから便座に着座するまでの6秒から10秒程度の間に、便座220の着座面を40℃程度の適温に温める。便座が適温に達した後は、便座ヒータへの通電を50W程度の低ワットに下げ、適温を保つ。使用者がトイレルーム内から出ると、便座ヒータへの通電を停止、もしくは20℃程度の低温保温となる。つまり、トイレルームに使用者がいないときの電力を大幅に削減した便座装置である。
【0031】
図2に示すように、本体200の内部には、中央部に洗浄ノズルユニット400が設置されており、本体200の右側には乾燥装置500と脱臭装置600と制御部700等が設置してある。また、本体200の左側には、洗浄水供給機構450と熱交換器460と静電霧化装置800等が設置してある。洗浄ノズルユニット400と洗浄水供給機構450と熱交換器460とで人体局部を洗浄する洗浄手段を構成している。
【0032】
洗浄水供給機構450と熱交換器460は洗浄ノズルユニット400に接続されており、水道配管から供給される洗浄水を熱交換器460で加熱した温水を洗浄ノズルユニット400に供給し、洗浄ノズル410から使用者の局部に向けて温水を噴出し、使用者の局部を洗浄するものである。
【0033】
洗浄ノズルユニット400は、お尻を洗浄するお尻洗浄ノズル部と女性の局部を洗浄するビデノズル部を有する洗浄ノズル410と、洗浄ノズルを本体200内に収容した収納位置と本体200から突出して洗浄動作を行う洗浄位置との間を進退移動する駆動手段(図示せず)と、熱交換器460からの洗浄水を洗浄ノズル410に切換えて供給する切換弁(図示せず)等が一体に組み込まれている。
【0034】
乾燥装置500は、洗浄ノズルユニット400に近接して設置されている。乾燥装置500の噴出口は、使用者の局部を効果的に乾燥するため可能な限り本体200の中央に配置することが望ましく、ケーシング510の前方を中央に向けて湾曲させた形状を成している。
【0035】
乾燥装置500の後方には制御部700が、側方には脱臭装置600が設置されている。脱臭装置600は、便器110内の臭気を吸引するために、吸込口を本体200の中央に向けて湾曲させて設けてある。
【0036】
制御部700は、リモートコントローラ300に配置され操作スイッチ301と袖部240に配置された操作スイッチ241の操作信号と、人体検知センサ310および着座検知センサ230から送信される信号に基づいて衛生洗浄装置100の各部の動作を制御する。
【0037】
<2>脱臭装置の構成
図4は図2のAAで示す本体に内蔵された脱臭装置の断面図を示すものである。
【0038】
脱臭装置600は風路を形成するダクト610と、ダクト610の内部に配設され臭気を脱臭する脱臭体620と、臭気を吸引するシロッコファンによる送風機630とを主構成部材として構成されている。
【0039】
ダクト610の一端は本体200の便器内に対向する底面に吸気口611を開口し、他端は本体200の後面に排気口612を開口している。ダクト610の吸気口611側から脱臭体620と送風機630が順次配置されている。
【0040】
脱臭体620は本体200の外面から着脱自在に装着されており、脱臭体620はハニカム状の断面形状をしており、臭気物質を含んだ空気がハニカム孔の上流側から下流側に通過する間に臭気物質が孔壁に吸着し脱臭体620の触媒作用により分解除去される。
【0041】
脱臭体は、シリカ、アルミナ、カーボン等を主成分とするものであり、悪臭の代表とされる腐卵臭の主な臭気物質である硫化水素や、タマネギやキャベツ等の腐敗臭の臭気物質であるメチルメルカプタン等の臭気物質を触媒作用により分解除去を行う。
【0042】
<3>静電霧化装置の構成
図5は図2のBBで示す静電霧化装置の断面図であり、静電霧化装置の吸気ダクトスペースの断面図を示すものである。図6は図2のCCで示す静電霧化装置の断面図であり、静電霧化装置の主要部分の断面を示すものである。図7は静電霧化装置のケースに付属する点検蓋の斜視図であり、図8静電霧化装置の静電霧化ユニットの正面図を示すものである。
【0043】
図1および図2に示すように静電霧化装置800は本体200の側部に一体に設けられた袖部240の内部に設置されており、袖部240の底部よりトイレルーム内の空気を吸引し、袖部240の前面下端部より前方に向かって帯電微粒子水を含む空気をトイレルーム空間に吐出する構成となっている。
【0044】
図6に示すように静電霧化装置800は、風路を形成するケース810と、ケース810の内部に配設され外気を吸引するシロッコファンによる送風機820と、帯電微粒子水を生成する静電霧化ユニット830とを主構成部材として構成されている。
【0045】
図5に示すようにケース810は後方の下面に設けた吸気口811から吸引した空気を送給する吸気ダクトスペース812と、図6に示すように送風機820を収容する送風機スペース813と、中央部に静電霧化ユニット830を配置する静電霧化スペース814と、前方下方に略L字型に折れ曲がった吐出ダクトスペース815と、吐出ダクトスペース815の終端は本体200の前方に向けて開放された吐出口816が設けられている。
【0046】
吸気口811の外方には網目状のフィルタ850が着脱可能に設置されており、吸気する空気に含まれる塵埃を除去する構成となっている。また、吐出口816の外方にはルーバ851が設置されており、吐出口816から異物が進入することを抑制する構成となっている。
【0047】
吸気ダクトスペース812と送風機スペース813は左右に重なりあって配置されており、吸気ダクトスペース812を通過して空気は送風機スペース813の略中央から送風機820に吸引される構成となっている。
【0048】
図5に示すように、吸気ダクトスペース812には両側壁から突出した3個の障壁812a、812b、812cが設けられており、3個の障壁812a、812b、812cは中央部で一部が重なり合って状態で設置されており、吸気口811から進入した水や異物が障壁812a、812b、812cに当たることによって直接奥に侵入して送風機820等を損傷したり漏電等の異常が発生すること防止する構成となっている。
【0049】
また図6に示すように、吸気ダクトスペース812と同様に、吐出ダクトスペース815にも両側壁から突出した障壁815a、815bが設けられており、2枚の障壁815a、815bは中央部で一部が重なり合って状態で設置されており、吸気口811から進入した水や異物が直接奥に侵入して静電霧化ユニット830等を損傷したり漏電等の異常が発生することを防止する構成となっている。
【0050】
吸気ダクトスペース812に設けた障壁812a、812b、812cと吐出ダクトスペース815に設けた障壁815a、815bは、いずれもスムーズな送風が行えるように湾曲した形状に形成されている。
【0051】
吐出口816近傍の吐出ダクトスペース815底面には略長方形の点検開口817が設けられており、点検開口817は通常は着脱可能な点検蓋840で閉塞されており、例えば吐出口816から進入した汚水等で吐出ダクトスペース815が汚染された場合には、点検蓋840を取り外して吐出ダクトスペース815と点検蓋840の清掃を行うことができる。点検蓋840を取り外した状態においても、障壁815a、815bにより点検開口817から侵入した水や異物が奥まで侵入することが防止される。
【0052】
図7に示すように、点検蓋840は略長方形の形状であり、後縁部には上下に異なる位置に設けたリブで形成した係合部841と、前縁部には樹脂材料の弾性を利用して変形可能なストッパ842が形成されている。点検蓋840の中央部から後方は上方に向かって湾曲した局面が形成された風向変更部843が形成ており、上方から送給された空気が前方に向かってスムーズに風向が変更されるようになっている。
【0053】
この風向変更部843の形状を変更することにより、吐出口816から吐出する風向を変更することができる。したがって風向変更部843の異なる形状の点検蓋840を複数個あらかじめ準備しておけば、衛生洗浄装置100の設置後トイレルームの形状や広さに合わせて風向きを変更することが可能である。
【0054】
点検蓋840の係合部841を点検開口817の開口縁に係合し、前部を点検開口817に押し付けることによりストッパ842が点検開口817の前縁に係合されることにより、点検開口817を閉塞することができる。また、点検蓋840を取り外す場合はストッパ842を後方に押し込むことによりストッパ842と点検開口817との係合が開放され点検蓋840を取り外すことができる。
【0055】
静電霧化ユニット830は図6に示すように、空気中の水分を結露させて水を生成する
結露水生成部831と、生成された水に電圧を印加する霧化電極832と、霧化電極832に対向して設けられた対極電極833とで構成されている。
【0056】
結露水生成部831は、冷却基板835aと放熱基板835bとを有するペルチェ素子835と、ペルチェ素子835の放熱基板835bに連接されたアルミニウム製の放熱フィン836から成る。ペルチェ素子835には通電用のリード線835cとコネクタ835dが接続されており、コネクタ835dを介して制御部700と電気的に接続されておいる。ペルチェ素子835には制御部700により0〜1V程度の直流電流が印加される。
【0057】
ペルチェ素子835の冷却基板835aには尖鋭形状の霧化電極832が設置されており、ペルチェ素子835の冷却基板835aに結露した水が霧化電極832に搬送される構成となっている。
【0058】
尖鋭形状の霧化電極832と対向する位置に、霧化電極832を包囲するように略ドーム状の対極電極833が配置されており、霧化電極832と対極電極833にはそれぞれ通電用の接続端子832a、833aが設けられており、接続端子832a、833aを介して制御部700と電気的に接続されている。霧化電極832と対極電極833間には制御部700により約3500Vの直流電流が印加される。
【0059】
なお、本実施の形態における静電霧化装置800の静電霧化ユニット830にはペルチェ素子835を備えた結露水生成部831により空気中から水を供給しているが、水の供給はこの方法に限るものではなく、予め貯水した水を霧化電極に供給する構成でも帯電微粒子水の生成は可能である。
【0060】
<4>衛生洗浄装置の動作および作用
次に、上記構成の衛生洗浄装置の動作および作用について説明する。
【0061】
使用者がトイレルームに入室し、人体検知センサ310が人体を検知すると、人体検知センサ310の信号により、制御部700は便座便蓋回動機構を駆動して便蓋210を開放するするとともに、便座220の便座ヒータへの通電を開始して便座220の着座面が着座に適した40℃程度になるように、10秒以内に昇温させる。
【0062】
使用者が、便座220に着座すると、着座検知センサ230が着座を検知し、制御部700が着座信号を受信することにより、本体200の操作スイッチ241およびリモートコントローラの操作スイッチ301により洗浄機能の操作が可能となる。
【0063】
また、制御部700は脱臭装置600の送風機630の駆動を開始し、便器110内の空気を吸気口611から矢印D1に示すようにダクト610内に吸引し、ダクト内を矢印D2の方向に進み、矢印D3で示すように脱臭体620のハニカム孔を通過し、矢印D4で示すように送風機630の吸引口から送風機630内に吸引され、送風機630から吐出された空気は矢印D5で示すように本体200の底板に設けられた排気口612から下方に向かって排出される。排出された空気は本体200の底板と便器110の上面に形成された間隙を通過して、本体200の後方に排気される。
【0064】
この間、脱臭装置600に吸引された臭気物質を含んだ空気は、脱臭体620のハニカム孔を通過する間に、臭気物質がハニカム孔の孔壁に吸着され、脱臭体620の触媒作用により臭気物質が分解除去され、脱臭体620を通過後の空気は臭気物質を除去されたほとんど無臭状態となり、排気口612からトイレルーム内に放出される。
【0065】
上記のように、用便中に便器110内で発生する臭気物質のほとんどは、脱臭装置600により分解除去されトイレルーム全体の臭気が拡散されることを効果的に抑制することができる。
【0066】
使用者が用便を終了し、洗浄手段により局部の洗浄を終了した後に便座220から立ち上がり、トイレルームから退出して人体検知センサ310が人体の検知を終了してから、所定時間経過後(例えば1分後)に、制御部700は脱臭装置600の駆動を停止するとともに静電霧化装置の800の駆動を開始する。
【0067】
制御部700が所定の設定条件により静電霧化装置800の駆動を開始させると、送風機820と、ペルチェ素子835と、霧化電極832と、対極電極833への通電が開始される。
【0068】
送風機820は、本体200の袖部240の底部に設けられた吸気口811からフィルタ850を介してトイレルーム内の空気を吸引して静電霧化ユニット830に向けて送風する。矢印E1で示すように吸気口811から吸引された空気は、矢印E2で示すように障壁812a、812b、912cの隙間を通過して矢印E3で示すように送風機820の吸気口から吸引される。
【0069】
図6に示すように、矢印E4に示すように送風機820から静電霧化ユニット830に向けて送風された空気は、一部はペルチェ素子835の冷却基板835aと霧化電極832と対極電極833の低温部とへ向かって送風される。また一部の空気は静電霧化ユニット830の放熱フィン836を通過して放熱フィン836の放熱により昇温される。静電霧化ユニット830を通過した空気は矢印E5で示すように吐出ダクトスペース815の障壁815a、815bの隙間を通過して下方に送風され、吐出ダクトスペース815の底部に設置された点検蓋840の風向変更部843により前方に風向が変更されて吐出口816よりルーバ851を介してトイレルーム内に放出される。
【0070】
静電霧化ユニット830の低温部に送給された空気はペルチェ素子835の冷却基板835aに接することにより空気中の水分が結露し結露水が生成される。生成された結露水は霧化電極832の表面に送給され、霧化電極832と対極電極833間に約3500Vの高電圧を印加することで、結露水にレイリー分裂を生じさせ、ナノメートルサイズの帯電微粒子水が発生する。すなわち、静電霧化ユニット830を通過後の空気は、ナノメートルサイズの帯電微粒子水が含まれたものであり、吐出口816よりトイレルーム内に帯電微粒子水が放出される。
【0071】
吐出口816より放出された帯電微粒子水はトイレルーム空間に飛散してトイレルーム内に浮遊する臭気物質や、壁面や天井面や床面等に付着する。帯電微粒子水はナノメータサイズと非常に小さく壁表面の細孔内部に入り込むことが可能であることから壁表面に付着した臭気物質やカビ類に対しても脱臭効果や防カビ効果が得られるのである。
【0072】
特に、ナノメータサイズの帯電微粒子水は、アンモニア、アセトアルデヒド、酢酸、メタン、一酸化炭素、一酸化窒素、ホルムアルデヒド等の臭気物質の分解除去と各種菌類への殺菌効果を備えており、トイレルーム内に浮遊および壁面や床面に付着した臭気物質や菌類に対して脱臭と除菌および殺菌の効果を発揮することができる。
【0073】
また、使用者が便座220に着座しない男子小用の場合は、脱臭装置600は駆動されないが、使用者のトイレルームからの退室後は、人体検知センサ310が人体の検知を終了した直後から、静電霧化装置800は駆動を開始し、所定時間後に停止する。
【0074】
一方、男子小用時の異常動作や子供のいたずらにより、便器110の外部に放尿された場合、特に静電霧化装置800の吐出口816は便器110の上面より低い位置に配置されているため、小便がルーバ851を介して吐出口816よりケース810の内部に侵入し吐出口816の近傍に付着して大量の臭気物質で汚染されることがある。
【0075】
このような異常使用がなされ大量の臭気物質が蓄積された場合、静電霧化装置800の通常の機能では短時間に分解することが難しいため、点検蓋840を取り外して点検蓋840を洗浄するとともに、点検開口817より吐出口816近傍のケース810の内部を清掃し、静電霧化装置800の機能を維持することができる。
【0076】
上記のように、本実施の形態における衛生洗浄装置は、使用者が便座に着座する用便および洗浄動作中は便器内の臭気を脱臭装置により脱臭することにより、トイレルーム全体に悪臭が拡散することを抑制し、トイレルームの不使用時には静電霧化装置により帯電微粒子水をトイレルーム空間に放散することにより、トイレルーム空間に浮遊している臭気物質や、壁面、天井面、床面に付着している臭気物質を分解して臭気を除去することができるとともに、トイレルーム内の各種菌類の除菌および殺菌することにより、トイレルーム内の臭気を長期間に亘り抑制して衛生的に維持することができるものである。
【0077】
また、排便時の異常動作により静電霧化装置が汚染された場合、点検蓋を取り外して清掃することにより静電霧化装置の機能を維持することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0078】
以上のように、本発明にかかる衛生洗浄装置は発生直後の臭気物質と蓄積された臭気物質の脱臭と機器本体の臭気発生を抑制することが可能となるので、衛生洗浄装置以外の脱臭装置等の用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0079】
100 衛生洗浄装置
110 便器
200 本体
220 便座
400 洗浄ノズルユニット(洗浄手段)
450 洗浄水供給機構(洗浄手段)
460 熱交換器(洗浄手段)
800 静電霧化装置
810 ケース
811 吸気口
816 吐出口
820 送風機
830 静電霧化ユニット
840 点検蓋
843 風向変更部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器上に載置される本体と、
前記本体に起倒自在に枢支された便座と、
人体局部を洗浄する洗浄手段と、
前記本体に内蔵され、水を静電霧化して生成した帯電微粒子水を前記本体よりトイレルーム空間に吐出する静電霧化装置と、を含み、
前記静電霧化装置は、前記本体外部から空気を吸引する吸気口と、前記帯電微粒子水を含む空気を前記本体外部に吐出する吐出口と、前記吸気口と前記吐出口を連通する風路を形成するケースと、前記吸気口から吸引した空気を送給する送風装置と、帯電微粒子水を生成する静電霧化ユニットと、を備え、
前記ケースの前記吐出口の近傍に着脱自在の点検蓋を備え、前記点検蓋を取り外した状態で前記本体の外部から前記吐出口近傍の前記ケース内部を点検および清掃することが可能な、
衛生洗浄装置。
【請求項2】
前記点検蓋は、前記ケース内を送給される前記帯電微粒子水を含む空気の向きを変更する風向変更部を備えた、
請求項1に記載の衛生洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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