説明

衛生洗浄装置

【課題】衛生洗浄装置のケーシング内で結露した水滴をケーシング外に漏らさない衛生洗浄装置を提供することを目的とする。
【解決手段】給水源から供給される洗浄水を人体に噴射する衛生洗浄装置において、便器の取付面に設置され、底板部と、底板部の周縁から上方に延びる立壁部とから構成される下ケースと、下ケースを上側から覆う上ケースと、を有するケーシングと、人体に洗浄水を噴射する洗浄ノズルと、給水源から洗浄ノズルまでの流路に設けられ、給水源から供給される洗浄水を加熱する加熱手段と、を備え、洗浄ノズル及び加熱手段はケーシング内に収容されたものであって、ケーシングは、下ケースの立壁部の上面と上ケースの一部とが接合することで接合部が形成され、接合部を形成する立壁部の上面の少なくとも一部に、立壁部の厚み方向に延びる縁起り溝が形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛生洗浄装置に係り、特に、腰掛便器に腰かけた使用者の「おしり」などを水や温水などで洗浄する衛生洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図1に従来の衛生洗浄装置の斜視図を示す。
図1に示す衛生洗浄装置1は、給水源(図示せず)から供給される洗浄水を人体に向けて噴射する洗浄ノズル(図示せず)を進退自在に収容したケーシング6と、ケーシング6に回動自在に軸支された便座2と、便座2を覆う便蓋4とから構成されている。なお、この衛生洗浄装置1は通常、腰掛便器の上面後部に設置して使用される。
図2には図1の衛生洗浄装置のケーシング6を後方から見た斜視図を示す。この図2では、便座2と便蓋4を省略しケーシング6のみを示している。図2に示すとおり、ケーシング6は下ケース10と上ケース8とから構成されている。そして、下ケース10と上ケース8とからなる筺体構造の内部には、洗浄ノズル(図示せず)や熱交換器(図示せず)などの機能部が内蔵されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭64−083735
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記したケーシング6では、その内部に貯湯タンクや熱交換器等が配置されており、季節によってはトイレ室内の大気の温度とケーシング6内部の温度との温度差が大きくなる。また、洗浄ノズルから温水を噴射して人体洗浄を行うこともあり、その温水から発生した湯気(湿潤空気)がケーシング6内部に侵入することもある。その結果、ケーシング6内部で結露することがある。
【0005】
特に上ケース8の内壁で結露した水滴は、量が増したり外部から振動が加わる等すると、上ケース8の内壁に沿って流下する。そして、その水滴は、下ケース10と上ケース8との接合部18に進入し、そこで毛細管現象により接合部18に沿って流れることがある(図2の矢印A〜Cの水の流れ)。
そして、矢印A〜Cで流れてきた水(水滴)は、接合部18に形成された開口部12に到達することで、矢印Dのようにケーシング6外に流出することがあり、衛生洗浄装置1が取り付けられている便器本体または床面が濡れる恐れがあった。ここで、開口部12は、ケーシング6内部から電源コード等を外に引き出すための開口部等のことを指している。
また、上記のような開口部が無い場合であっても、ケーシング6の角部(コーナー部)などでは、接合部に沿って流れてきた水が滞留し、量が増すことで、そこから流出してしまうこともある。
【0006】
そこで、本発明は、上述した従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、衛生洗浄装置のケーシング内で結露した水滴をケーシング外に漏らさないことを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、以下のような手段を採用している。すなわち、本発明は、給水源から供給される洗浄水を人体に噴射する衛生洗浄装置において、便器の取付面に設置され、底板部と、底板部の周縁から上方に延びる立壁部とから構成される下ケースと、下ケースを上側から覆う上ケースと、を有するケーシングと、人体に洗浄水を噴射する洗浄ノズルと、給水源から洗浄ノズルまでの流路に設けられ、給水源から供給される洗浄水を加熱する加熱手段と、を備え、洗浄ノズル及び加熱手段はケーシング内に収容されたものであって、ケーシングは、下ケースの立壁部の上面と上ケースの一部とが接合することで接合部が形成され、接合部を形成する立壁部の上面の少なくとも一部に、立壁部の厚み方向に延びる縁起り溝が形成されていることを特徴とする。
【0008】
このように構成された本発明においては、接合部を形成する立壁部の上面の少なくとも一部に、立壁部の厚み方向に延びる縁起り溝が形成されているので、上ケースの内壁で結露した水滴が下ケースと上ケースの接合部に侵入し、その接合部に沿って流れようとしても、その流れを遮断することができる。したがって、接合部に開口部が設けられている場合であっても、その開口部から水滴が流出することがない。また、ケーシングの角部の接合部などから水滴が流出することがない。よって、機外漏水を防ぐことが出来る。
【0009】
本発明は、好ましくは、立壁部の内壁に、縁起り溝と連通し縁切り溝より下方に延びる案内溝が形成されていることを特徴とする。
【0010】
このように構成された本発明においては、下ケースの立壁部の内壁に縁起り溝に溜まった水を下方に案内する案内溝が形成されているため、縁切り溝に溜まった水を下ケースの内側下方に案内することができる。したがって、より確実に機外漏水を防ぐことができる。
【0011】
本発明は、好ましくは、立壁部の上面において縁切り溝の外側に、縁切り溝に溜まった水が立壁部の外へ流出することを防止する流出防止壁が設けられていることを特徴とする。
【0012】
このように構成された本発明においては、縁切り溝の外側に、縁切り溝に溜まった水が立壁部の外へ流出することを防止する流出防止壁が設けられているため、縁切り溝に溜まった水が立壁部の外へ流出することがなく、縁切り溝に溜まった水が所定量に達すると、自然に下ケースの内側下方に流下する。したがって、より確実に機外漏水を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、下ケースと上ケースの接合部に沿って流れようとする水の流れを遮断して、機外漏水を確実に防止できる衛生洗浄装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】従来の衛生洗浄装置の斜視図である。
【図2】図1のケーシングの後方からの斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態の下ケースを表す斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態の上ケースを表す斜視図である。
【図5】図3の領域Aにおいて、上ケースを取り外した状態を示す斜視図である。
【図6】図5の下ケース接合面の拡大図である。
【図7】図3の領域Aにおいて、上ケースを取り付けた状態を示す図である。
【図8】本発明の縁起り溝20の原理を示す模式図である。
【図9】図3の領域Bにおいて、上ケースを取り外した状態を示す斜視図である。
【図10】図3の領域Bにおいて、上ケースを取り付けた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
まず、図3、図4により、本発明の実施形態による衛生洗浄装置の下ケースと上ケースを説明する。図3は、下ケースを示す斜視図であり、図4は、上ケースを示す斜視図である。
【0016】
本実施形態の衛生洗浄装置における下ケース、上ケースは、図3に示す下ケース10の上に洗浄ノズルや熱交換器等の機能部(図示しない)を取り付け、その上方を覆うように図4の上ケース8が取り付けられるものであり、下ケース10と上ケース8とで筺体構造を形成するものである。
【0017】
図3に示すように下ケース10は、便器(図示しない)のケーシング取り付け面の上側に設置される底板部15と、底板部15の周囲を取り囲むように形成される立壁部17とから形成されている。立壁部17の上面は、後述する上ケース8の一部と接合する下ケース接合面16になっている。
【0018】
次に、図4に示すように上ケース8は、天井壁部7と、天井壁部7の周縁から下方に延びる側壁部5とから形成される。そして、側壁部5の下面は、前述の下ケース接合面16と接合する上ケース接合面14が形成されている。
【0019】
次に、図5、図6、図7により、下ケース接合面の詳細構造を説明する。
図5は、図3の領域Aの拡大斜視図であり、上ケースの取り付け前を示している。また、図6は、図5の下ケース接合面をさらに拡大した図である。さらに、図7は、図3の領域Aにおいて上ケースの取り付け後を示すものであり、上ケースと下ケースとから構成される筺体構造の内側より見た図である
【0020】
図5、図6に示すように立壁部17の上面は、下ケース接合面16になっており、その下ケース接合面16には、立壁部17の厚さ方向全域に亘って延びる縁切り溝20が形成されている。さらに、立壁部17の内壁には、縁切り溝20に連なり縁切り溝20より下方に延びる案内溝22が形成されている。なお、図5には、複数の縁切り溝20及び案内溝22が形成されているが、代表してそれぞれ一つに符号を付している。
なお、上ケース8の側壁部5の下面は、上ケース接合面14になっているが、その接合面より外側には、接合面よりさらに下方まで延びるオーバーラップ部19が設けられている。このオーバーラップ部19は、接合部18が外から見えないようにするためのものである。
図7に示すように、この上ケース8の取り付け後は、下ケース接合面16と上ケース接合面14とが接合する接合部18に、縁切り溝20により空間(隙間)が確保される。この空間により、接合部18に沿って流れる水を遮断できる。この原理については次に説明する。
【0021】
図8は、縁切り溝の原理を示すものであり、接合部を内側から見た図である。
図8に示すように、下ケース10の立壁部17の上面は下ケース接合面16になっている。そして、その下ケース接合面16には、立壁部17の厚み方向に延び、断面形状を略半円形状とする縁切り溝20が形成されている。なお、本実施形態では、縁切り溝20の断面形状を略半円形状にしているが、本発明はこれに限らず接合部18に空間を形成できるものであればどのような形状でもよい。
そして、立壁部17の内壁には、その縁切り溝20に連なり下方に延びる案内溝22が形成されている。この案内溝22の断面形状も、本実施形態では略三角形状に形成しているが、本発明はこれに限らず立壁部17の内壁に凹みをもたせたものであれば、どのような形状でもよい。
【0022】
図8のような構造では、まず、上ケース8の内壁に結露により水滴が発生すると、その水滴が重力または振動により下方に流下する(矢印E)。そして、その水滴が下ケース接合面16と上ケース接合面14との間の微小隙間(接合部18)に侵入する。そして、この微小隙間(接合部18)に侵入した水滴は、毛細管現象により微小隙間(接合部18)に沿って移動する(矢印F)。そして、その水滴が、縁切り溝20に到達すると、縁切り溝20に入り込みそこで滞留する(矢印G)。その後、縁切り溝20に滞留した水滴は、立壁部17内壁の案内溝22に沿って下方に流下する(矢印H)。
【0023】
このような構成により、上ケース8の側壁部5内壁で結露した水滴が微小隙間(接合部18)に侵入し、その微小隙間(接合部18)に沿って流れたとしても、縁切り溝20によりそれを遮断することができ、且つ遮断した水滴は案内溝22により下ケース10の内側下方まで案内することができる。
そして、下ケース10の内側下方まで案内された水滴は、下ケース10の底板部15に設けられた排水経路(図示しない)で便器に排水されるか、または下ケースの底板部15上で蒸発する。
したがって、接合部の一部に開口部が形成されていたとしても、結露した水滴がその接合部に沿って流れ、開口部から流出することがない。また、ケーシングの角部等に形成された接合部に水滴が多量に流れこみ、そこからケーシング外部へ流出することがない。なお、図8に示した図では、下ケース接合面16は、左側下方に傾斜する傾斜面として説明したが、仮に傾斜していない面であっても、毛細管現象により水滴が微小隙間(接合部18)に沿って流れるため、このような縁切り溝20及び案内溝22は有効に作用する。
【0024】
次に、図9、10により、図3の領域Bについて説明する。
図9は、下ケースに上ケースを取り付ける前の図であり、図10は上ケースを取り付けた後の図である。
【0025】
図9に示すように立壁部17の上面は、縁切り溝20が形成された下ケース接合面16と、さらにその下ケース接合面16より外側に位置する流出防止壁24が形成されている。なお、この流出防止壁24の上端は下ケース接合面16より上方に位置している。
このように構成することで、立壁部17の内壁に案内溝を形成しない場合であっても、縁切り溝20に滞留した水滴が流出防止壁24より外側へ流出することがなく、縁切り溝20に滞留した水滴が所定量に達すると、自然に立壁部17の内壁に沿って流下することになる。したがって、立壁部17の内壁に案内溝を形成せずとも、縁切り溝20に滞留した水滴が立壁部17の内壁を伝って、下ケース10の下方まで流下することになる。そして、流下した水滴は、下ケース10の底板部15に設けられた排水経路(図示しない)で便器に排水されるか、または下ケースの底板部15で蒸発する。よって、接合部の一部に開口部が形成されていたとしても、結露した水滴がその接合部に沿って流れ、開口部から流出することがない。また、ケーシングの角部等に形成された接合部に水滴が多量に流れこみ、そこからケーシング外部へ流出することがない。なお、図8には、複数の縁切り溝20及び案内溝22が形成されているが、代表してそれぞれ一つに符号を付している。
【0026】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、
これらの具体例に限定されるものではない。例えば、衛生洗浄装置を構成する各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
なお、本実施形態において説明は省略したが、例えば、上ケースの天井部において、側壁部の近傍に、下方へ垂下するリブ等を設けても良い。このような構成とすることで、上ケースの天井部で結露した水滴は、側壁部へ流れずにリブを伝ってそのまま落下するため、接合部へ侵入する水滴の量をかなり抑えることができる。
【符号の説明】
【0027】
1 衛生洗浄装置
2 便座
4 便蓋
5 側壁部
6 ケーシング
7 天井壁部
8 上ケース
10 下ケース
12 開口部
14 上ケース接合面
15 底板部
16 下ケース接合面
17 立壁部
18 接合部
19 オーバーラップ部
20 縁切り溝
22 案内溝
24 流出防止壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水源から供給される洗浄水を人体に噴射する衛生洗浄装置において、
便器の取付面に設置され、底板部と、底板部の周縁から上方に延びる立壁部とから構成される下ケースと、
前記下ケースを上側から覆う上ケースと、を有するケーシングと、
人体に洗浄水を噴射する洗浄ノズルと、
給水源から洗浄ノズルまでの流路に設けられ、給水源から供給される洗浄水を加熱する加熱手段と、を備え、
前記洗浄ノズル及び加熱手段は前記ケーシング内に収容されたものであって、
前記ケーシングは、前記下ケースの立壁部の上面と上ケースの一部とが接合することで接合部が形成され、
前記接合部を形成する立壁部の上面の少なくとも一部に、立壁部の厚み方向に延びる縁起り溝が形成されていることを特徴とする衛生洗浄装置。
【請求項2】
前記立壁部の内壁に、前記縁起り溝と連通し前記縁切り溝より下方に延びる案内溝が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の衛生洗浄装置。
【請求項3】
前記立壁部の上面において縁切り溝の外側に、前記縁切り溝に溜まった水が前記立壁部の外へ流出することを防止する流出防止壁が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の衛生洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−96090(P2013−96090A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237639(P2011−237639)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】