説明

衛生物品に係るウエブ部材の起毛状態の検査装置、及び検査方法

【課題】清掃用シート等の衛生物品に係るウエブ部材の起毛状態を検査する検査装置などを提供する。
【解決手段】衛生物品に係るウエブ部材の起毛状態の検査装置である。前記ウエブ部材は、少なくとも片面に、該片面から剥がれて起毛可能な部分を所定の配置パターンで離散的に有し、前記起毛可能な部分が剥がれて起毛した際には前記片面上に新たな露出部分を生じる。前記検査装置は、前記片面を撮像して前記片面の平面画像のデータを平面画像データとして生成する撮像処理部と、前記平面画像データに基づいて二値化画像を生成する際に、前記二値化画像において二値のうちの一方の値によって特定される画像に、前記平面画像のうちで前記新たな露出部分が撮像されている領域が含まれるように二値化処理を行う二値化処理部と、前記画像の大きさを示す値に基づいて、前記起毛状態の良否判定を行う良否判定処理部と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、清掃用シート等の衛生物品に係るウエブ部材の起毛状態を検査する装置、及び検査する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、柄の先端の板材に取り付けて、床面の拭き掃除等に使用する清掃用シートが提供されている。この清掃用シートは、ゴミなどの掻き取り効果を高めるべく、少なくとも拭き取り時に主使用面となる片面には、当該片面から剥がれて起毛可能な繊維状部分が、所定の配置パターンで離散的に複数配置されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−245670号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かかる清掃用シートの製造ラインの最終工程の辺りには、清掃用シートの搬送方向と逆向きに回転する上下一対のブラシロールが配置されている。そして、これらブラシロール同士の間のロール間隙に清掃用シートを搬送方向に通過させることにより、上述の起毛可能な部分を片面から剥がして起毛状態にし、しかる後に、清掃用シートは製品寸法に分断などされて出荷される。
【0005】
ここで、当該ブラシロールを長期間使用していると、ブラシロールの外周面たるブラシの先端に清掃用シートの繊維状部分が付着し、これにより、ブラシロールの起毛効果が低下する。そして、これをそのまま放置していると、不十分な起毛状態の清掃用シートが出荷され、当然ながら、かかる清掃用シートは本来の掻き取り効果を発揮し難く、ユーザーからクレームが出される虞もある。
【0006】
そのため、ブラシロールを通過後の清掃用シートに対し、起毛状態の検査を行う必要があるが、上述の特許文献1には、清掃用シートの起毛状態を検査する装置や方法については開示されておらず、当該検査装置や検査方法が待望されていた。
【0007】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、清掃用シート等の衛生物品に係るウエブ部材の起毛状態を検査する検査装置及び検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための主たる発明は、
衛生物品に係るウエブ部材の起毛状態の検査装置であって、
前記ウエブ部材は、少なくとも片面に、該片面から剥がれて起毛可能な部分を所定の配置パターンで離散的に有し、前記起毛可能な部分が剥がれて起毛した際には前記片面上に新たな露出部分を生じ、
前記検査装置は、
前記片面を撮像して前記片面の平面画像のデータを平面画像データとして生成する撮像処理部と、
前記平面画像データに基づいて二値化画像を生成する際に、前記二値化画像において二値のうちの一方の値によって特定される画像に、前記平面画像のうちで前記新たな露出部分が撮像されている領域が含まれるように二値化処理を行う二値化処理部と、
前記画像の大きさを示す値に基づいて、前記起毛状態の良否判定を行う良否判定処理部と、を有することを特徴とする衛生物品に係るウエブ部材の起毛状態の検査装置である。
【0009】
また、
衛生物品に係るウエブ部材の起毛状態の検査方法であって、
前記ウエブ部材は、少なくとも片面に、該片面から剥がれて起毛可能な部分を所定の配置パターンで離散的に有し、前記起毛可能な部分が剥がれて起毛した際には前記片面上に新たな露出部分を生じ、
前記検査方法は、
前記片面を撮像して前記片面の平面画像のデータを平面画像データとして生成することと、
前記平面画像データに基づいて二値化画像を生成する際に、前記二値化画像において二値のうちの一方の値によって特定される画像に、前記平面画像のうちで前記新たな露出部分が撮像されている領域が含まれるように二値化処理を行うことと、
前記画像の大きさを示す値に基づいて、前記起毛状態の良否判定を行うことと、を有することを特徴とする衛生物品に係るウエブ部材の起毛状態の検査方法である。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、清掃用シート等の衛生物品に係るウエブ部材の起毛状態を検査する検査装置及び検査方法を提供可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1Aは、非起毛状態のウエブ製品1の平面図であり、図1Bは、図1A中のB−B矢視図である。
【図2】図2Aは、起毛状態のウエブ製品1の平面図であり、図2Bは、図2A中のB−B矢視図である。
【図3】非起毛状態のウエブ製品1の拡大図である。
【図4】半製品1aを起毛処理中のブラシロール50a,50bの概略側面図である。
【図5】ウエブ製品1の製造ライン10の概略側面図である。
【図6】起毛状態検査工程S60に配された起毛状態検査装置60の説明図である。
【図7】図7Aは、二値化処理前の平面画像であり、図7Bは、同平面画像に対して二値化処理を行って生成された二値化画像である。
【図8】図8Aは、坪量分布検査装置80で生成された二値化画像であって、坪量の分布に問題が無い場合の二値化画像の一例であり、図8Bは、坪量の分布に問題が有る場合の二値化画像の一例である。
【図9】切断線C4の目標形成範囲C4Mを示す半製品1aの拡大平面図である。
【図10】切断線検査装置90で設定される検査ウインドウW1,W2a,W2bを説明するための平面画像の拡大図である。
【図11】検査ウインドウW1に基づいて生成された二値化画像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0013】
衛生物品に係るウエブ部材の起毛状態の検査装置であって、
前記ウエブ部材は、少なくとも片面に、該片面から剥がれて起毛可能な部分を所定の配置パターンで離散的に有し、前記起毛可能な部分が剥がれて起毛した際には前記片面上に新たな露出部分を生じ、
前記検査装置は、
前記片面を撮像して前記片面の平面画像のデータを平面画像データとして生成する撮像処理部と、
前記平面画像データに基づいて二値化画像を生成する際に、前記二値化画像において二値のうちの一方の値によって特定される画像に、前記平面画像のうちで前記新たな露出部分が撮像されている領域が含まれるように二値化処理を行う二値化処理部と、
前記画像の大きさを示す値に基づいて、前記起毛状態の良否判定を行う良否判定処理部と、を有することを特徴とする衛生物品に係るウエブ部材の起毛状態の検査装置。
このような衛生物品に係るウエブ部材の起毛状態の検査装置によれば、生成された片面の平面画像データを二値化処理して二値化画像が生成され、この二値化画像において二値のうちの一方の値によって特定される画像には、平面画像のうちで新たな露出部分が撮像されている領域が含まれている。そして、当該画像の大きさは、直接的には、新たな露出部分の大きさを示しているのであるが、この新たな露出部分は、起毛可能な部分が起毛する際にウエブ部材の片面から剥がれることで生じている。そのため、当該画像の大きさは、間接的には、ウエブ部材の片面において起毛状態にある領域の大きさを示していると捉えることができる。よって、この画像の大きさを示す値に基づいて起毛状態の良否判定を行うことにより、ウエブ部材の起毛状態を検査可能となる。
【0014】
かかる衛生物品に係るウエブ部材の起毛状態の検査装置であって、
前記ウエブ部材は、搬送方向に沿って連続する連続ウエブと、前記連続ウエブの少なくとも片面を覆って設けられた繊維状部材と、を有し、
前記繊維状部材は繊維方向を前記搬送方向に沿わせて配置されており、
前記連続ウエブと前記繊維状部材とを接合する接合部が、前記搬送方向に間欠的に形成されており、
前記搬送方向に隣り合う前記接合部同士の間の切断位置で前記繊維状部材を切断して、前記接合部を基端部として前記繊維状部材の切断端部が起立可能に構成することにより、前記起毛可能な部分が形成されており、
前記ウエブ部材のうちで前記繊維状部材側の面を撮像して前記繊維状部材の平面画像のデータを第2平面画像データとして生成する第2撮像処理部と、
前記第2平面画像データに基づいて二値化画像を生成する際に、前記二値化画像において二値のうちの一方の値によって特定される画像に、前記切断位置での切断による切断痕が撮像されている領域が含まれるように二値化処理を行う第2二値化処理部と、
前記画像に基づいて、前記切断位置が、前記搬送方向に関して目標形成範囲に位置しているか否かの判定を行う第2良否判定処理部と、を有するのが望ましい。
このような衛生物品に係るウエブ部材の起毛状態の検査装置によれば、ウエブ部材の起毛状態を、起毛可能な部分の長さの観点から検査することができる。詳しくは次の通りである。先ず、得られた二値化画像においては、切断痕が撮像されている領域が一方の画像に含まれており、この画像に基づいて、切断位置が搬送方向に関して目標形成範囲に位置しているか否かを判定する。ここで、繊維状部材のうちで切断位置と接合部との間の部分が起毛可能な部分となる。そのため、上記の切断位置の良否判定は、間接的に、起毛可能な部分の搬送方向の長さが目標どおりか否かを判定していると言うこともできる。よって、上述の検査装置によれば、起毛可能な部分の長さの観点で起毛状態を検査することができる。
【0015】
かかる衛生物品に係るウエブ部材の起毛状態の検査装置であって、
前記第2撮像処理部は、前記繊維状部材における前記起毛可能な部分が前記起毛状態になる前に、前記ウエブ部材のうちで前記繊維状部材側の面を撮像して前記第2平面画像データを生成するのが望ましい。
このような衛生物品に係るウエブ部材の起毛状態の検査装置によれば、繊維状部材における起毛可能な部分が起毛していない状態で、第2撮像処理部は繊維状部材側の面を撮像する。よって、切断痕が起毛によって覆われない状態で、切断痕を撮像することができて、これにより、第2平面画像データの二値化画像に係り、切断痕の鮮明な画像を得ることができる。その結果、この切断痕の画像に基づいてなされる上記切断位置の良否判定の精度向上を図れる。
【0016】
かかる衛生物品に係るウエブ部材の起毛状態の検査装置であって、
前記繊維状部材は、前記連続ウエブの搬送方向の所定位置において前記連続ウエブの片面に重ね合わせられることにより、前記連続ウエブの片面を覆った状態となって前記連続ウエブと一体に前記搬送方向に搬送され、
前記繊維状部材は、前記搬送方向と直交する方向に幅方向を有し、
前記連続ウエブに重ね合わせられる前の前記繊維状部材を片面側から撮像して該繊維状部材の平面画像のデータを、第3平面画像データとして生成する第3撮像処理部と、
前記第3平面画像データに基づいて二値化画像を生成する際に、前記二値化画像において二値のうちの一方の値で特定される画像に、前記繊維状部材のうちで所定値以下の坪量の部分が撮像されている領域が含まれるように二値化処理を行う第3二値化処理部と、
前記画像に基づいて、前記繊維状部材の坪量が前記幅方向に関して均等か否かの判定を行う第3良否判定処理部と、を有するのが望ましい。
このような衛生物品に係るウエブ部材の起毛状態の検査装置によれば、連続ウエブに重ね合わせられる前の繊維状部材を撮像して生成された第3平面画像データに基づいて二値化処理を行い、二値化画像に基づいて、坪量が幅方向に均等か否かの判定を行う。よって、この二値化画像は、繊維状部材のみが撮像された平面画像に基づいて生成されており、これにより、連続ウエブが厚み方向に重なって撮像されている等といった外乱が一切無い状態で、繊維状部材の坪量が目標範囲を外れる領域を確実に二値化画像における一方の画像に含めることができる。よって、繊維状部材の坪量が幅方向に関して均等か否かの判定を正確に行うことができる。
【0017】
また、第3良否判定処理部は、繊維状部材の坪量が幅方向に関して均等か否かの判定を行う。よって、この判定結果に基づいて、繊維状部材の幅方向の分布を適宜調整などすることにより、繊維状部材の坪量を幅方向に関して概ね均等にした状態で同繊維状部材を連続ウエブに供給可能となる。これにより、起毛状態の良否判定に供する二値化画像において、例えば坪量の小さい部分が撮像されている領域を、起毛による新たな露出部分が撮像されている領域と同じ画像に含めてしまって起毛状態の良否判定を誤判定してしまう事態を有効に防止することができて、結果、ウエブ部材の起毛状態の良否判定の精度向上を図れる。
【0018】
かかる衛生物品に係るウエブ部材の起毛状態の検査装置であって、
前記ウエブ部材は、搬送方向に沿って連続する連続体であり、
前記ウエブ部材の前記片面のうちで前記搬送方向と直交する幅方向の両端部には、前記起毛可能な部分は設けられておらず、前記両端部には、厚みが薄くなった溶着部が形成されており、
前記二値化処理部は、前記平面画像のうちで前記両端部が撮像されている領域以外の領域を、前記二値化処理の対象として前記二値化画像を生成するのが望ましい。
このような衛生物品に係るウエブ部材の起毛状態の検査装置によれば、二値化処理の際に、平面画像のうちで両端部が撮像されている領域、つまり溶着部が撮像されている領域を除外して二値化画像を生成する。よって、二値化画像において、溶着部が撮像されている領域を、起毛による新たな露出部分が撮像されている領域と同じ画像に含めてしまって起毛状態の良否判定を誤判定してしまう事態を有効に防止することができて、結果、ウエブ部材の起毛状態の良否判定の精度向上を図れる。
【0019】
また、
衛生物品に係るウエブ部材の起毛状態の検査方法であって、
前記ウエブ部材は、少なくとも片面に、該片面から剥がれて起毛可能な部分を所定の配置パターンで離散的に有し、前記起毛可能な部分が剥がれて起毛した際には前記片面上に新たな露出部分を生じ、
前記検査方法は、
前記片面を撮像して前記片面の平面画像のデータを平面画像データとして生成することと、
前記平面画像データに基づいて二値化画像を生成する際に、前記二値化画像において二値のうちの一方の値によって特定される画像に、前記平面画像のうちで前記新たな露出部分が撮像されている領域が含まれるように二値化処理を行うことと、
前記画像の大きさを示す値に基づいて、前記起毛状態の良否判定を行うことと、を有することを特徴とする衛生物品に係るウエブ部材の起毛状態の検査方法。
このような衛生物品に係るウエブ部材の起毛状態の検査方法によれば、生成された片面の平面画像データを二値化処理して二値化画像が生成され、この二値化画像において二値のうちの一方の値によって特定される画像には、平面画像のうちで新たな露出部分が撮像されている領域が含まれている。そして、当該画像の大きさは、直接的には、新たな露出部分の大きさを示しているのであるが、この新たな露出部分は、起毛可能な部分が起毛する際にウエブ部材の片面から剥がれることで生じている。そのため、当該画像の大きさは、間接的には、ウエブ部材の片面において起毛状態にある領域の大きさを示していると捉えることができる。よって、この画像の大きさを示す値に基づいて起毛状態の良否判定を行うことにより、ウエブ部材の起毛状態を検査可能となる。
【0020】
===本実施形態===
本実施形態に係るウエブ部材1aの起毛状態の検査装置60は、ウエブ製品1の製造ライン10に配置され、ウエブ製品1に分断前の半製品1aの起毛状態を検査する。なお、ウエブ部材1aとしての半製品1aは、製造ライン10の搬送方向に連続した連続体であり、この半製品1aを製品単位に分断したものがウエブ製品1である。
【0021】
図1Aは、非起毛状態のウエブ製品1の平面図であり、図1Bは、図1A中のB−B矢視図である。図2Aは、起毛状態のウエブ製品1の平面図であり、図2Bは、図2A中のB−B矢視図である。図3は、非起毛状態のウエブ製品1の拡大図である。
【0022】
このウエブ製品1は、例えば清掃用シートに供される。ウエブ製品1の平面形状は、図1Aに示すように長手方向と幅方向とを有した略矩形状をなしている。また、図1Bに示すように厚み方向については、基材シート2と、基材シート2の両面をそれぞれ層状に覆いつつ対応する各面に溶着等で固定された一対の長繊維状部材4,4とを有した略三層構造である。
【0023】
なお、この例では、幅方向の寸法に関して、基材シート2の方が長繊維状部材4よりも大きくなっており、そのため幅方向の両端部には、長繊維状部材4に覆われていない部分2n,2nが所定幅で帯状に存在しているが、全幅に亘って覆われていても良い。また、この例では、この長繊維状部材4で覆われていない各帯状部分2n,2nは、それぞれ、その厚み方向の両側から一対の帯状の不織布製のサイドシート6,6で覆われていて、これらサイドシート6,6は基材シート2に、波形配置のドット状溶着部J6,J6…によって溶着固定されているが、かかるサイドシート6,6については無くても良い。更には、この例では、サイドシート6の一部は、長繊維状部材4の幅方向の端部4fにオーパーラップしていて同端部を覆っているが、覆っていなくても良い。
【0024】
ここで、図3の拡大図に示すように、ウエブ製品1の両面の各長繊維状部材4,4は、基材シート2から剥がれて起毛可能な部分4kk(以下、起毛可能部分4kkとも言う)を所定の配置パターンで離散的に有している。そして、これら起毛可能部分4kk,4kk…が起毛すると、図2A及び図2Bに示すようにウエブ製品1の各面上に離散的に複数の刷毛部4kが立設したような様となり、これにより、清掃時の掻き取り効果が格段に向上する。なお、長繊維状部材4に起毛可能部分4kk,4kk…を形成するには、長繊維状部材4をミシン目状の切断線C4で切断する必要があり、また、この起毛可能部分4kkを起毛状態にする処理は、ウエブ製品1の製造ライン10の起毛工程S50でなされるが、これらについては後述する。以下、ウエブ製品1の各構成要素2,4について説明する。
【0025】
基材シート2は、ウエブ製品1の平面形状を保つための謂わば保形シートであり、この例では、合成繊維等からなる不織布が使用されている。但し、保形機能を奏し得て且つ柔軟なシート状部材であれば何等これに限らず、場合によってはフィルムや織布でも良い。合成繊維としては、ポリエチレンやポリプロピレン、ナイロン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート等の鞘芯構造の複合繊維や単独繊維等が挙げられる。
【0026】
長繊維状部材4は、繊維方向がウエブ製品1の長手方向を向いた多数の柔軟な長繊維の集合体であり、その通称は「トウ」である。長繊維は、ポリエチレンや、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエステルなどを素材とし、その長さは例えば3〜30mmであり、太さは例えば1〜6デシテックスである。また、基材シート2の片面当たりに積層させるべき長繊維状部材4の坪量の目標値は、それぞれ20〜100g/mの範囲から適宜選択される。
【0027】
かかる基材シート2とその両面の各長繊維状部材4,4とは、図1Aに示すように長繊維状部材4の略全面に亘り所定パターンで形成された複数の接合線J4,J4…(接合部に相当)により互いに一体に接合されている。この例では、接合は熱溶着でなされ、そして、この熱溶着処理の際には、接合の対象部位は厚み方向に押圧される。よって、各接合線4Jは、厚み方向に圧縮された溝状に形成されている。各接合線4Jの平面形状は、それぞれウエブ製品1の幅方向の略全幅に亘る幅寸のV字形である。そして、各接合線4Jは、V字の先端部分を幅方向の中央に位置させながら、互いのV字のとんがり方向を長手方向の一方に揃えた状態で、長手方向に間欠的に所定ピッチで並んで形成されている。
【0028】
ここで、長手方向に隣り合う接合線J4,J4同士の間のV字状の各領域R4には、長繊維状部材4の長繊維が存在しているが、当該長繊維は、上記一対の接合線J4,J4で基材シート2に固定されている。そして、各領域R4には、V字状の接合線J4に沿ってミシン目状の切断線C4が形成されていて、かかる切断線C4により、各領域R4の長繊維は、それぞれ長手方向に二つに分断されている。なお、図3に示すように、当該切断線C4はミシン目状であることから、上記分断は幅方向に間欠的になされており、つまり、分断された部分4cと、分断されていない未分断部分4nとが幅方向に交互に現れるようになっている。そして、分断された部分4cは、接合線J4を基端部として長繊維の分断端部4seが起立可能な状態となっており、これにより、前述の起毛可能部分4kkが形成されている。一方、この起毛可能部分4kkの幅方向の隣に位置する未分断部分4nは、起毛しない起毛不能部分4nとなる。これにより、幅方向に間欠的に起毛可能部分4kk,4kk…が並んだ状態になっている。
【0029】
また、分断された部分4cには、切断線C4を挟みつつ起毛可能部分4kk1,4kk2が長手方向に隣接して二つ形成されているが、このうちの一方の起毛可能部分4kk2は実質的には起毛しないので、もう一方の起毛可能部分4kk1のみが実質的な意味での起毛可能部分4kkとなる。この理由は、製造ライン10では、起毛処理が、次のようにして行われるからである。図4は、その説明用の概略側面図である。先ず、半製品1aの搬送方向と逆向きに回転する上下一対のブラシロール50a,50b同士の間のロール間隙に半製品1aを通すが、この半製品1aがブラシロール50a,50bを通過する際には、切断線C4を挟んで長手方向に並ぶ一対の起毛可能部分4kk1,4kk2のうちで搬送方向の上流側の起毛可能部分4kk1だけが起毛され、下流側の起毛可能部分4kk2は起毛されないからである。そして、これにより、長手方向に関しても起毛可能部分4kk1と起毛しない部分4kk2とが交互に現れることになり、このことに、前述の幅方向に交互に起毛可能部分4cと起毛不能部分4nとが現れるということが組み合わされて、その結果として、長手方向及び幅方向の両方向に関して間欠的に起毛可能部分4kk,4kk…が形成された状態になっている。つまり、図3で前述したようにウエブ製品1の両面にはそれぞれ離散的に起毛可能部分4kk,4kkが形成された状態になっている。
【0030】
なお、起毛可能部分4kkが起毛した際には、図4に示すように、基材シート2から長繊維状部材4の長繊維が部分的に剥がれて長繊維の接合線J4たる基端部を支点として分断端部4seが基材シート2の各面の略法線方向に起立する。そして、このときには、この起立する長繊維に覆われて隠れていた基材シート2の部分2exが、新たに露出されて外方から見える状態になる。よって、図2A中ドット模様で示すように、この基材シート2の新たな露出部分2ex,2ex…の状態を見ることにより、起毛可能部分4kkの起毛状態を間接評価可能であり、もって、本実施形態に係る起毛状態の検査装置60では、この新たな露出部分2ex,2ex…の状態を見ることで、起毛状態を良否判定している。これについては後述する。
【0031】
図5は、ウエブ製品1の製造ライン10の概略側面図である。製造ライン10では、基材シート2(連続ウエブに相当)が、適宜なリール装置12から繰り出され、これにより、基材シート2は、搬送方向に連続する連続シートの状態で所定の搬送路を連続して搬送されている。この搬送路には、長繊維状部材4が合流する長繊維状部材合流位置P4とサイドシート6,6,6,6が合流するサイドシート合流位置P6とが設定されている。そして、長繊維状部材合流位置P4では、長繊維状部材4の生成工程S4,S4で生成された長繊維状部材4,4(繊維状部材に相当)が、搬送方向に連続する連続体の状態で、基材シート2の両面たる上面及び下面にそれぞれ供給されて積層される。また、サイドシート合流位置P6では、サイドシート6の生成工程(不図示)で生成されたサイドシート6,6,6,6が、搬送方向に連続する連続シートの状態で、基材シート2の両面たる上面及び下面における幅方向の両端部にそれぞれ供給されて重ね合わせられる。そして、以降、これら基材シート2、長繊維状部材4,4、及びサイドシート6,6,6,6は略一体となって搬送路を搬送されるが、ここで、この搬送路には、更に、メインシール工程S20、サイドシール工程S30、起毛カット工程S40、起毛工程S50、起毛状態検査工程S60、エンドカット工程S70等が設定されており、これら工程を通過して、前述の単票状のウエブ製品1が製造される。
【0032】
以下、各工程S20〜S70について説明するが、以下の説明では、基材シート2と長繊維状部材4,4とサイドシート6,6,6,6とが略一体となった連続体のことを「半製品1a」と言う。ちなみに、この半製品1aが連続する連続方向は、前述したウエブ製品1の長手方向と揃っている。よって、搬送方向も、ウエブ製品1の長手方向に揃っており、また、半製品1aの幅方向も、ウエブ製品1の幅方向に揃っている。なお、この幅方向のことを「CD方向」とも言う。
【0033】
メインシール工程S20では、基材シート2の両面たる上面及び下面に、それぞれ長繊維状部材4,4を前述のV字形状の接合線J4,J4…で熱溶着して接合する。この熱溶着処理は、搬送方向に沿って回転する上下一対のシールロール20a,20b同士の間のロール間隙に半製品1aを通すことにより行われる。例えば、上シールロール20aは、その外周面に、前述のV字形の複数の接合線J4,J4…に対応した形状の複数の凸部(不図示)を有し、下シールロール20bは、各凸部を受ける平滑な外周面を有している。よって、これら一対のロール20a,20b同士の間のロール間隙を半製品1aが通過する際に、半製品1aのうちで凸部が当接する部位が選択的に厚み方向に圧縮されて溶融し、半製品1aにはV字形の複数の接合線J4,J4…が所定ピッチで形成される。そして、これら接合線J4,J4…により、基材シート2とその上面及び下面の各長繊維状部材4,4とは一体に接合される。
【0034】
サイドシール工程S30では、基材シート2とサイドシート6,6,6,6とを、熱溶着して接合する。サイドシート6,6,6,6は、基材シート2の両面たる上面及び下面においてCD方向の両端部にそれぞれ重ね合わせられている。そして、この熱溶着処理も、上述のメインシール工程S20の場合と同様に、搬送方向に沿って回転する上下一対のシールロール30a,30b同士の間のロール間隙に半製品1aを通すことにより行われる。例えば、上シールロール30aは、その外周面におけるCD方向の両端部に、前述の波形配置のドット状溶着部J6,J6…に対応した形状の複数の凸部(不図示)を有し、下シールロール30bは、各凸部を受ける平滑な外周面を有している。よって、これら一対のロール30a,30b同士の間のロール間隙を半製品1aが通過する際に、半製品1aのうちで凸部が当接する部位が選択的に厚み方向に圧縮されて溶融し、半製品1aには前述の波形配置のドット状溶着部J6,J6…が形成される。そして、これら溶着部J6,J6…により、基材シート2と各サイドシート6,6,6,6とが一体に接合される。
【0035】
起毛カット工程S40では、長繊維状部材4における接合線J4,J4同士の間のV字状の各領域R4に、ミシン目状の切断線C4を形成し、これにより前述の起毛可能部分4kk,4kk…を形成する。切断処理は、搬送方向に沿って回転する上下一対のカッターロール40a,40b同士の間のロール間隙に半製品1aを通すことにより行われる。例えば、上カッターロール40aは、その外周面に、前述のV字形のミシン目状の切断線C4,C4…に対応したカッター刃(不図示)を有し、下カッターロール40bは、その外周面に、カッター刃を受ける受け刃(不図示)を有している。よって、これら一対のロール40a,40b同士の間のロール間隙を半製品1aが通過する際に、半製品1aのうちでカッター刃が当接する部位が選択的に切断されて、半製品1aにおける上述の接合線J4,J4同士の間のV字状の各領域R4,R4には、それぞれV字形のミシン目状の切断線C4,C4…が1本ずつ形成される。そして、これら切断線C4,C4…により、各領域R4,R4…には複数の起毛可能部分4kk,4kk…が形成される。
【0036】
起毛工程S50では、長繊維状部材4における起毛可能部分4kk,4kk…を起毛状態にする。この起毛処理は、搬送方向と逆方向に回転する上下一対のブラシロール50a,50b同士の間のロール間隙に半製品1aを通すことにより行われる。例えば、上下のブラシロール50a,50bは、それぞれ外周面にブラシの先端が位置するようにブラシ部材が放射状に回転軸に植設されたロールである。よって、これら一対のロール50a,50b同士の間のロール間隙を半製品1aが通過する際に、長繊維状部材4における起毛可能部分4kk,4kk…が基材シート2から剥がされて起立する。詳しくは、図4に示すように、基材シート2の上面に積層された長繊維状部材4については、各起毛可能部分4kkが基材シート2の上面の略法線方向たる上方に起立し、他方、基材シート2の下面に積層された長繊維状部材4については、各起毛可能部分4kkが基材シート2の下面の略法線方向たる下方に起立する。そして、これにより、半製品1aは、その上面及び下面の両面に離散的に刷毛部4kが立設したような起毛状態になる(例えば、図2A及び図2Bを参照)。
【0037】
起毛状態検査工程S60では、半製品1aの起毛状態を検査する。この検査は、起毛状態検査装置60によって行われる。そして、この検査結果が不良判定の場合には、検査装置60は、例えば起毛不良警報を出す等して作業者に報知する。なお、この検査装置60については後述する。
【0038】
エンドカット工程S70では、搬送方向に連続する半製品1aを、製品単位に分断し、これにより、単票状のウエブ製品1が生成される。この分断処理は、搬送方向に回転する上下一対のカッターロール70a,70b同士の間のロール間隙に半製品1aを通すことにより行われる。
【0039】
そして、以上の工程を経て生成されたウエブ製品1は、所定枚数に集積等された後に、集積単位で梱包等されて出荷される。
【0040】
ところで、本実施形態では、上述の製造ライン10の各工程S20〜S70の動作は、同期信号によって互いに連動して行われるようになっている。同期信号は、例えばウエブ製品1の一つ分に相当する搬送量を単位搬送量として0°〜360°の各回転角度値を、搬送量に比例して割り当ててなる回転角度信号である。つまり、ウエブ製品1の一つ分に相当する長さの半製品1aが搬送されると、0°から360°までの回転角度値が出力され、当該一つ分の搬送の都度、0°から360°までの回転角度値の出力が周期的に繰り返される。そして、この同期信号が、各工程S20〜S70の動作の駆動源となる各サーボモータのアンプに送信され、当該同期信号に基づいて各サーボモータが位置制御を行うことで、半製品1aにおける加工すべき目標位置にそれぞれ加工を施すようになっている。
【0041】
ここで、この同期信号は、例えばメインシール工程S20のシールロール20a,20bに設けられたロータリー式エンコーダによって生成されている。つまり、シールロール20aの回転動作に基づいて同期信号が生成されている。そして、これにより、起毛カット工程S40のカッターロール40a,40bやエンドカット工程S70のカッターロール70a,70b等の装置は全て、上記シールロール20a,20bの回転動作を基準として、これに同期・連動して回転動作している。そのため、半製品1a上にあっては、シールロール20a,20bが形成する接合線J4が加工位置の基準になっている。例えば、切断線C4と接合線J4との間の間隔の大きさが目標値よりもずれている場合には、カッターロール40a,40bの方で間隔の大きさが目標値に揃うように切断線C4の形成位置を調整する。すなわち、カッターロール40a,40bの回転動作に係る回転角度値の位相を変更することにより、切断線C4の形成位置を接合線J4に対して搬送方向にずらして間隔の大きさを目標値に揃える。
【0042】
図6は、起毛状態検査工程S60に配された起毛状態検査装置60の説明図である。この検査装置60は、起毛工程S50とエンドカット工程S70との間に配置されている。
【0043】
この検査装置60は、半製品1aにおけるウエブ製品1に相当する単位1b毎に、長繊維状部材4の起毛可能部分4kk,4kk…が起毛されているか否かを検査する。ここで、この検査装置60では、起毛可能部分4kkの起毛状態を、当該起毛可能部分4kkの起毛によって生じる基材シート2の新たな露出部分2exを検出することによって間接的に評価する。すなわち、図2A及び図2Bに示すように、長繊維状部材4に離散的に形成された各起毛可能部分4kk,4kk…の起毛に伴って生じた新たな露出部分2ex,2ex…の面積を求め、この面積が所定の良否判定用閾値よりも小さい場合には、起毛不良と判定する。そして、その場合には、検査装置60は、自身が具備するモニタ等の警報出力部68に起毛不良警報を出力して、製造ライン10の作業者に知らせる。すると、作業者は、製造ライン10を停止し、ブラシロール50a,50bの外周面に付着した繊維等の異物を除去等することで、ブラシロール50a,50bの起毛能力を回復する。そして、製造ライン10を再稼働して製造を再開する。なお、以下では、連続体様の半製品1aにおいてウエブ製品1に相当する単位1bのことを「単位半製品1b」と言う。
【0044】
検査装置60は、起毛状態検査工程S60における半製品1aの搬送路の所定位置に設けられた撮像処理部としてのカメラ62と、同搬送路をカメラ62とで上下から挟むような位置に配置された照明部材64と、画像処理部66と、を有する。
【0045】
カメラ62は、例えばCCD(電荷結合素子)カメラである。そして、半製品1aの片面に対向して配置されており、これにより、撮像位置PSを通過する半製品1aの片面を撮像し、平面画像のデータを生成する。撮像動作は、同期信号に基づいてなされ、これにより、単位半製品1bを、その平面中心がほぼ平面画像の平面中心に揃うように撮像する。ここで、同期信号とは、既述のように単位半製品1bの一つ分に相当する搬送量を単位搬送量として0°〜360°の各回転角度値を、搬送量に比例して割り当ててなる回転角度信号である。よって、上述のように単位半製品1bの平面中心と平面画像の平面中心とが一致するような撮像タイミングに対応した同期信号の位相を、所定の回転角度値として見つけ出し、その位相たる所定の回転角度値で撮像動作を行うように予め設定しておけば、以降に撮像位置PSを通過する全ての単位半製品1bに対して、上述のように、単位半製品1bの平面中心と平面画像の平面中心が揃うように撮像することができる。
【0046】
そして、このような撮像タイミングに調整されたカメラ62は、単位半製品1b毎に撮像を繰り返し行い、撮像の都度、撮像された平面画像のデータを平面画像データとして生成する。そして、生成の都度、平面画像データを画像処理部66へ送信する。すると、画像処理部66では、平面画像データに基づいて、単位半製品1bにおける長繊維状部材4の起毛状態の良否判定を単位半製品1b毎に行う。これにより、ウエブ製品1は全数検査されることになる。但し、何等これに限るものではなく、例えば単位半製品1bの幾つかおきに撮像しても良い。そして、その場合には単位半製品1bの幾つかおきに平面画像データが生成されるため、単位半製品1bも幾つかおきに良否判定されることになる。なお、良否判定の詳細については後述する。
【0047】
照明部材64は、例えば白色LEDライトや蛍光灯などの適宜なライトであり、その光源の種類は、その場の撮像状況に応じて適宜選定される。また、上述したように、照明部材64の配置位置は、半製品1aを上下からカメラ62とで挟む位置に設定されており、これにより、カメラ62は、厚み方向に半製品1aを透過した透過光を受光することで撮像する。
【0048】
画像処理部66は、適宜なコンピュータを本体とし、プロセッサとメモリとを有する。そして、メモリに予め格納された二値化処理プログラム等の各種処理プログラムをプロセッサが読み出して実行することにより、二値化処理などの種々の処理を行う。
【0049】
画像処理部66では、送信された平面画像データに対して二値化処理を行って二値化画像を生成する。このとき、画像処理部66は、二値化画像において二値(例えば0と1)のうちの一方の値たる「1」によって特定される画像に、平面画像のうちで基材シート2の新たな露出部分2exが撮像されている領域が含まれるように二値化処理する。これにより、単位半製品1bの平面画像のなかから、起毛可能部分4kk,4kk…の起毛により新たに露出された基材シート2の部分2ex,2ex…が撮像されている領域A2exが、「1」で特定される画像として取り出される。以下、この二値化画像のうちで、「1」で特定される画像、つまり新たな露出部分2exが撮像されている領域A2exが含まれている画像のことを「白画像」とも言い、他方、「0」で特定される画像のことを「黒画像」とも言う。
そして、画像処理部66は、この白画像の面積を、規定の良否判定用閾値と大小比較して、起毛状態の良否判定を行う。以下では、これを「良否判定処理」と言う。また、上述の「1」で特定される画像たる白画像が、請求項に係る「二値化画像において二値のうちの一方の値によって特定される画像」に相当し、白画像の面積が、請求項に係る「画像の大きさを示す値」に相当する。
【0050】
なお、前述の二値化処理プログラムと同じように、良否判定処理の実行プログラムも、予め画像処理部66のメモリ内に格納されている。そして、プロセッサが、これらを読み出して実行することにより、画像処理部66は、二値化処理を実行する「二値化処理部」及び良否判定処理を実行する「良否判定処理部」として機能する。以下、これら二値化処理及び良否判定処理について詳しく説明する。
【0051】
図7A及び図7Bは、二値化処理の説明図である。図7Aには、二値化処理前の平面画像を示し、図7Bには、同平面画像に対して二値化処理を行って生成された二値化画像を示している。図7A中では、平面画像上において新たな露出部分2exが撮像されている領域A2exをドット模様で示している。
【0052】
先ず、二値化処理の説明の前に、図7Aを参照しながら平面画像及び平面画像データについて説明する。
平面画像は、例えばCD方向をX方向とし、搬送方向をY方向として撮像されており、また、平面画像は、単位半製品1bの全域が一画像として撮像されている。
【0053】
かかる平面画像は、X方向及びY方向の両方向にそれぞれ所定の解像度に基づく所定ピッチで格子状に並ぶ多数の画素の集合体である。換言すると、平面画像は、X方向に一直線に所定ピッチで並ぶ複数の画素からなる画素列が、Y方向に複数列所定ピッチで並んで構成される。そして、平面画像データは、各画素に対応させてそれぞれ色情報を有している。例えば、平面画像データがグレースケールの場合には、画素毎に色情報として明度のみを有している。そして、その場合には、単位半製品1bにおいて透光性の高い領域に対応する各画素は明るくなるので、その画素の明度は高い値になっているが、他方、透光性の低い領域に対応する各画素は暗くなるので、その画素の明度は低い値になっている。
【0054】
ここで、単位半製品1bにおいて起毛可能部分4kkが剥がれて生じた新たな露出部分2exは、長繊維状部材4の長繊維がほぼ剥がれた概ね基材シート2のみの状態にあり(図4及び図2Aを参照)、当該部分2exは、厚み方向の透光性が高い状態になっている。よって、後述するように、明度が所定値以上の画素に注目することで、図7Aの平面画像上において、新たな露出部分2exが撮像されている領域A2exの画素を特定することができる。なお、以下では、平面画像データがグレースケールのデータであるものとして説明する。
【0055】
二値化処理では、予め定められた二値化用閾値を用いる。そして、この二値化用閾値以上の明度の画素を白に割り振り、他方、二値化用閾値未満の明度の画素を黒に割り振る。これを、平面画像データの全ての画素について行い、これにより、図7Aに示す平面画像のうちで新たな露出部分2exが撮像されている領域A2exは、図7Bに示すように二値のうちの「1」で特定される白画像に含められる。
【0056】
但し、図7Bを参照してわかるように、この白画像には、新たな露出部分2exが撮像されている領域A2ex以外に、V字形状の接合線J4の撮像部分AJ4や、サイドシート6に付与された波形配置のドット状溶着部J6の撮像部分AJ6等も含まれている。この理由は、これら接合線J4や溶着部J6にあっては、溶着処理時の圧縮による薄厚化が原因で透光性が高くなっているからである。よって、この白画像には、上述のような誤差が含まれているが、この誤差の影響については、次の良否判定処理のところで排除するようになっている。これについては後述する。
【0057】
次に、画像処理部66は、良否判定処理へ移行する。そして、この良否判定処理では、先ず、図7Bの二値化画像上での白画像の面積を求める。ここで、画素の平面サイズは、XY方向の各解像度などに基づいて予めわかっている。よって、この画素の平面サイズに、白画像に割り振られた画素の数たる画素数を乗算することにより、白画像の面積が算出される。
【0058】
そうしたら、画像処理部66は、算出された白画像の面積を、予めメモリに格納された良否判定用閾値と大小比較する。そして、白画像の面積が良否判定用閾値以上の場合には、画像処理部66は、「新たな露出部分2exは十分に多く全体として単位半製品1bは正常に起毛している」と判定する。一方、良否判定用閾値未満の場合には、「新たな露出部分2exが少なく全体として単位半製品1bは正常に起毛していない」と判定し、そして、モニタ等の警報出力部68に起毛不良警報を出して、製造ライン10の作業者に知らせる。
【0059】
ここで、この良否判定用閾値は、メモリ内に予め格納された固定値である。そして、この良否判定用閾値は、次のような製造ライン10での実験的手法により求められる。先ず、正常な起毛状態にあるウエブ製品1のサンプルを何枚か用意する。次に、これらサンプルを検査装置60の上記CCDカメラ62で撮像して、サンプル毎に二値化処理を行い、サンプル毎に白画像の面積を求める。そして、これら全サンプルの白画像の面積の平均値及び標準偏差σを算出し、当該平均値よりも3σだけ小さい値を、上記の良否判定用閾値として用いる。
【0060】
なお、このような求め方によれば、前述した接合線J4や溶着部J6起因の白画像における誤差の影響を概ね排除することができる。詳しく説明すると、この良否判定用閾値の算出に供した各サンプルの白画像の面積にも、新たな露出部分2exが撮像されている領域A2ex以外に、V字形状の接合線J4の撮像部分AJ4やサイドシート6上の波形配置のドット状溶着部J6の撮像部分AJ6等も含まれており、その分だけ過大な値になっている。よって、このように求められた良否判定用閾値を用いれば、前述の単位半製品1bの二値化画像に係る白画像の誤差は、良否判定用閾値に内在する上記の誤差と相殺され、これにより、適正な良否判定を下すことができる。ちなみに、検査装置60が不良判定を多発する場合には、良否判定用閾値を、より小さな値に変更しても良い。
【0061】
ところで、場合によっては、単位半製品1bの平面画像において二値化処理を行う対象範囲を、図7Aの平面画像よりも小さい領域に限定しても良い。例えば、単位半製品1bの平面画像のうちで単位半製品1bの幅方向の両端部のサイドシート6,6が撮像されている領域A6,A6以外の領域A4のみを、二値化処理の対象にしても良い。そして、そのようにすれば、サイドシート6に波形配置で形成されたドット状溶着部J6,J6…起因の上記誤差の影響も受けなくなり、その結果として、起毛状態の良否判定の精度を向上することができる。以下、これについて図7Aを参照しながら説明する。
【0062】
この例では、画像処理部66は、二値化処理の際に検査ウインドウWを用いる。検査ウインドウWは、二値化処理の際に平面画像において参照する領域を区画して限定するツールであり、つまり、二値化処理の際には、検査ウインドウW内に属する画素のみを参照し、検査ウインドウW外の画素については参照しないようにすることができる。この例では、検査ウインドウWは、長繊維状部材4が撮像されている領域A4とほぼ同じ平面サイズの矩形フレームに設定されている。よって、平面画像のうちで、幅方向の両端部のサイドシート6,6が撮像されている領域A6,A6以外の領域A4のみを、二値化処理の対象とすることができる。
【0063】
なお、このような検査ウインドウW内に限った画素の参照は、例えば次のようにして実現される。先ず、平面画像の各画素には、XY座標が付与されていて、これらXY座標はメモリに記録されている。また、画像処理部66は、このXY座標を指定することで、検査ウインドウW内に属する画素の色情報にアクセス可能に構成されている。よって、検査ウインドウW内に位置すべき画素のXY座標のデータを、予めメモリ内に記録しておけば、上述の検査ウインドウW内に限った画素の参照を実現可能となる。
【0064】
ところで、上述の説明では、長繊維状部材4の生成工程S4について述べていなかった。そのため、図5を参照しながら、この生成工程S4について説明する。
【0065】
先ず、長繊維状部材4の材料たるトウ4tが、製造ライン10に搬入される。この搬入時点の長繊維状部材4たるトウ4tにあっては、例えば幅寸が10〜60mmの繊維の束が、長手方向に関してつづら折り状に多段に折り畳まれた状態になっている。よって、多段の各折り畳み部が一段ずつ真っ直ぐに延ばされながら、トウ4tは、連続して搬送路に投入される。
【0066】
一方、搬送路には、開繊工程S4tが設定されている。そして、この開繊工程S4tを通過中に、トウ4tの幅寸が、半製品1aでの長繊維状部材4の幅寸になるまでトウ4tはCD方向に分散される。そして、前述の合流位置P4へ搬送される。なお、基材シート2の両面にそれぞれ長繊維状部材4,4を供給することから、このような生成工程S4,S4は、基材シート2の上面用及び下面用にそれぞれ設けられている。
【0067】
ここで、上述の開繊工程S4tにおいて、長繊維状部材4のCD方向の坪量の分布が均等にならない場合がある。そして、その場合には、単位半製品1bにおいて長繊維状部材4の坪量が小さい部分が局所的に生じることになるが、かかる坪量の小さい部分は、厚み方向の透光性が高いために、平面画像においては明度の高い領域として撮像される。よって、前述の二値化処理の際に、新たな露出部分2exの撮像部分A2exと同じ白画像に含められてしまい、これが誤差となって、起毛状態の良否判定を誤判定してしまう虞がある。
【0068】
そこで、これを防ぐ目的で、本実施形態では、図5に示すように、長繊維状部材4の搬送路のうちで開繊工程S4tと基材シート2の搬送路への合流位置P4との間の位置に、長繊維状部材4のCD方向の坪量の分布を検査する坪量分布検査装置80を設置して、坪量の分布が、上述の誤差を引き起こさない程度に、均等になっているか否かを検査している。
【0069】
図5に示すように、坪量分布検査装置80,80は、長繊維状部材4の生成工程S4,S4毎にそれぞれ設けられている。また、各検査装置80,80の基本構成は、前述の起毛状態検査装置60とほぼ同じである。すなわち、第3撮像処理部としてのCCDカメラ82と、照明部材84と、第3画像処理部86(第3二値化処理部及び第3良否判定処理部に相当)とを有する。カメラ82は、厚み方向に長繊維状部材4を透過してなる透過光を受光することで撮像する。そして、同カメラ82は、同期信号等に基づく適宜な撮像タイミングで長繊維状部材4の片面を撮像し、その平面画像のデータを第3平面画像データとして生成する。この第3平面画像データを受信した第3画像処理部86は、この第3平面画像データに対して二値化処理を施す。
【0070】
ここで、長繊維状部材4において坪量が小さい領域については透光性が高く、坪量が大きい領域については透光性が低くなっているので、平面画像上においては、長繊維状部材4の坪量が小さい領域に対応する画素の明度は高く、坪量が大きい領域に対応する画素の明度は低くなる。
【0071】
一方、この二値化処理でも、予め定められた二値化用閾値を用いる。そして、この二値化用閾値以上の明度の画素を白に割り振り、他方、二値化用閾値未満の明度の画素を黒に割り振る。そのため、かかる二値化用閾値を、例えば前述の新たな露出部分2exの撮像部分A2exの明度と等しい値に設定すれば、上記の誤差になり得るような小さい坪量の部分(「繊維状部材のうちで所定値以下の坪量の部分」に相当)が撮像されている領域(「繊維状部材のうちで所定値以下の坪量の部分が撮像されている領域」に相当)は、二値のうちの「1」で特定される白画像に含められる。一方、このような領域が皆無の場合には、平面画像の全画素が黒画像に含められて、図8Aに示すように二値化画像には白画像が皆無の状態になる。
【0072】
そうしたら、第3画像処理部86は、良否判定処理へ移行する。そして、良否判定処理では、例えば二値化画像中の白画像の有無をチェックする。そして、図8Aのように白画像が無い場合には、「上記の誤差を引き起こすことは無い程度に坪量分布は均等である」と判定する。一方、図8Bに示すように白画像が有る場合には、「上記の誤差を引き起こし得る程度に坪量分布は不均等である」と判定し、そして、モニタ等の警報出力部88に坪量分布異常警報を出して、製造ライン10の作業者に知らせる。すると、作業者は、製造ライン10を停止し、開繊工程S4tで適宜な調整作業を行い、これにより、長繊維状部材4の幅方向の坪量分布は略均等に均される。そして、このような調整後、製造ライン10を再稼働して製造を再開する。
【0073】
なお、上述の例では、良否判定の際に、二値化画像中の白画像の有無をチェックしていたが、何等これに限るものではない。例えば、良否判定用閾値を用いて良否判定を行っても良い。すなわち、予めメモリ内に格納された良否判定用閾値と、図8Bに示す白画像の面積とを比較し、白画像の面積が良否判定用閾値未満の場合には、「上記の誤差を引き起こすことは無い程度に坪量分布は均等である」と判定し、他方、白画像の面積が良否判定用閾値以上の場合には、「上記の誤差を引き起こし得る程度に坪量分布は不均等である」と判定するようにしても良い。
【0074】
ところで、上述の説明では、起毛カット工程S40で形成される切断線C4の目標形成範囲C4Mについても述べていなかった。そのため、ここで説明する。
【0075】
図9は、切断線C4の目標形成範囲C4Mを示す半製品1aの拡大平面図である。図9に示すように、切断線C4は、搬送方向に隣り合う接合線J4,J4同士の中間位置MJ4を含め同中間位置MJ4よりも搬送方向の下流側の位置を目標形成範囲C4Mとして形成される。この理由は次の通りである。前述したように、搬送方向に隣り合う接合線J4,J4同士の間のV字状の領域R4にミシン目状の切断線C4が形成されることで、各領域R4の長繊維は長手方向に二つに分断され、そして、これら分断された部分のうちの上流側に位置する部分4kk1が起毛可能領域4kkになり、下流側に位置する部分4kk2は起毛しない部分になる。ここで、起毛可能部分4kkが起毛状態になった際のゴミの掻き取り効果は、同起毛可能部分4kkの起毛高さの大小に左右され、つまり、起毛高さが高いほど掻き取り効果は大きくなる。一方、起毛高さは、起毛可能部分4kkの長手方向の長さ、つまり搬送方向の長さで決まり、そして、この長さは、切断線C4とその上流側に位置する接合線J4との間の搬送方向の間隔寸法D4kkと略同値である。よって、大きな起毛高さを確保する目的で、上記したように切断線C4の目標形成範囲C4Mを、接合線J4,J4同士の中間位置MJ4含め同中間位置MJ4よりも搬送方向の下流側の位置としている。
【0076】
但し、メインシール工程S20のシールロール20a,20bに対する起毛カット工程S40のカッターロール40a,40bの同期不良等に起因して、実際の切断線C4(切断痕に相当)の形成位置(切断位置に相当)が上記の目標形成範囲C4Mから搬送方向にずれる場合がある。そして、例えば、この形成位置が目標形成範囲C4Mよりも上流側にずれた場合には、目標の起毛高さを確保できず、また、逆に下流側にずれた場合には、切断線C4の下流側に位置する接合線J4と一致などしてしまい、その場合には起毛可能部分4kkが形成されなくなる虞もある。
【0077】
そこで、このような問題を解決する目的で、本実施形態では、図5に示すように、切断線C4の形成位置を検査する切断線検査装置90を、起毛カット工程S40と起毛工程S50との間に設置している。なお、起毛工程S50よりも上流側にこの検査装置90を配置している理由は、起毛工程S50の後では、切断線C4が起毛により覆われて隠れる等して鮮明な切断線C4を撮像し難いためである。
【0078】
図5に示すように、切断線検査装置90の基本構成は、前述の起毛状態検査装置60
や坪量分布検査装置80とほぼ同じである。すなわち、第2撮像処理部としてのCCDカメラ92と、照明部材94と、第2画像処理部96(第2二値化処理部及び第2良否判定処理部に相当)とを有する。カメラ92は、厚み方向に単位半製品1bを透過してなる透過光を受光することで撮像する。そして、同カメラ92は、前述の起毛状態検査装置60と同様の撮像タイミングで、すなわち単位半製品1bの平面中心がほぼ平面画像の平面中心に揃うようなタイミングで単位半製品1bの片面を単位半製品1b毎に撮像し、その平面画像のデータを第2平面画像データとして生成する。この第2平面画像データを受信した第2画像処理部96は、この第2平面画像データに対して検査ウインドウW1を用いて二値化処理を施す。
【0079】
図10の平面画像の拡大図に、検査ウインドウW1を併せて示す。検査ウインドウW1は、切断線C4の撮像部分AC4の一部PAC4と、その上流の接合線J4の撮像部分AJ4の一部PAJ4とがそれぞれ一つずつ入るような平面サイズに設定されている。よって、図11に示すような、切断線C4の撮像部分AC4の一部PAC4と接合線J4の撮像部分AJ4の一部PAJ4とが白画像に含まれた二値化画像が生成される。すなわち、切断線C4は、単位半製品1bを厚み方向に貫通してなる孔状に形成されているため、切断線C4の透光性は高く、平面画像上においては、切断線C4に対応する画素の明度は、接合線J4に対応する画素の明度よりも高い。よって、所定の二値化用閾値に基づいて生成された二値化画像の白画像には、検査ウインドウW1内の接合線J4の撮像部分AJ4の一部PAJ4(切断痕が撮像されている領域に相当)と切断線C4の撮像部分AC4の一部PAC4との両者が含められることになる。
【0080】
そうしたら、良否判定処理へ移行する。良否判定処理では、白画像における切断線C4の対応部分PAC4と同接合線J4の対応部分PAJ4との間の搬送方向の間隔DC4の値に基づいて、切断線C4の切断位置が目標形成範囲C4Mに位置しているか否か判定する。
【0081】
そのため、先ず、第2画像処理部96は、この間隔DC4の値を求める。この間隔DC4の値については、例えば、切断線C4の対応部分PAC4を構成する複数の画素のY座標の平均値から、接合線J4の対応部分PAJ4を構成する複数の画素のY座標の平均値を減算してなる減算値として求めることができる。なお、切断線C4の対応部分PAC4を構成する画素と、接合線J4の対応部分PAJ4を構成する画素との区別については、例えば予め接合線J4の対応部分PAJ4に係る画素が存在すべきX座標やY座標の各範囲がわかっているので、この範囲内のものを接合線J4の対応部分PAJ4に係る画素とし、それ以外を切断線C4の対応部分PAC4に係る画素として区別することができる。
【0082】
そうしたら、この求められた間隔DC4の値を、良否判定用閾値と比較する。良否判定用閾値は、数値範囲として予めメモリに格納されている。良否判定用閾値の数値範囲の下限値は、例えば、互いに隣り合う接合線J4,J4の撮像部分AJ4,AJ4同士の間の間隔DJの大きさの半分の値であり、上限値は、同間隔DJの大きさの0.9倍の値などの如く同間隔DJの大きさよりも若干小さい値である(図10を参照)。
【0083】
そして、上記の間隔DC4の値が、この数値範囲内に入っている場合には、「切断線C4は目標形成範囲C4Mに位置している」と判定し、他方、同数値範囲から外れている場合には、「切断線C4は目標形成範囲C4Mから外れている」と判定する。
【0084】
ちなみに、判定結果が後者の場合には、第2画像処理部96は、起毛カット工程S40のカッターロール40a,40bのサーボモータのアンプに向けて、その回転動作に係る回転角度値の位相の修正指示信号を送信する。すると、これを受信したアンプは、間隔DC4の値が上記数値範囲内に入るように、カッターロール40a,40bの回転動作に係る回転角度値の位相を変更する。
【0085】
なお、第2画像処理部96が行うべき二値化処理及び良否判定処理の他の例としては、例えば次が挙げられる。
先ず、図10に示すように、矩形輪郭で互いに同じ平面サイズの一対の検査ウインドウW2a,W2bを、搬送方向の二箇所に設ける。ここで、一方の検査ウインドウW2aは、切断線C4の目標形成範囲C4Mよりも上流側に位置する接合線J4の撮像部分AJ4に同検査ウインドウW2aの平面中心が一致するように設定され、もう一方の検査ウインドウW2bは、切断線C4の目標形成範囲C4Mよりも下流側に位置する接合線J4の撮像部分AJ4に同検査ウインドウW2bの平面中心が一致するように設定される。また、これら両者の検査ウインドウW2a,W2bには切断線C4の目標形成範囲C4Mが入らないように、各検査ウインドウW2a,W2bの平面サイズは設定されている。
【0086】
よって、実際の切断線C4の形成位置が目標形成範囲C4Mに位置している場合には、切断線C4の撮像部分AC4は、二つの検査ウインドウW2a,W2bのどちらかにも入らないようになるので、そのときには、二つの二値化画像における白画像には、接合線J4の撮像部分AJ4の一部PAJ4のみが含まれて、切断線C4の撮像部分AC4は一部も含まれない状態になる。一方、実際の切断線C4の形成位置が目標形成範囲C4Mから搬送方向に外れた場合には、切断線C4の撮像部分AC4は、二つの検査ウインドウW2a,W2bのどちらかに入るので、そのときには、二つの二値化画像のどちらかの白画像に切断線C4の撮像部分AC4の一部PAC4が含まれることになる。そのため、この後になされる良否判定処理では、この白画像の面積の変化に着目して、切断線C4の形成位置の良否判定を行うことになる。
【0087】
すなわち、切断線C4の形成位置の良否判定処理では、先ず、二つの二値化画像の白画像の面積をそれぞれ求める。そして、各面積を、予め設定された良否判定用閾値と大小比較し、この良否判定用閾値よりもどちらか一方の面積が大きい場合には、「目標形成範囲C4Mから切断線C4の形成位置が外れている」と判定し、それ以外の場合には、「切断線C4は目標形成範囲C4Mに位置している」と判定する。但し、この処理例では、図10を参照してわかるように、目標形成範囲C4Mを、接合線J4,J4同士の間の中間位置MJ4を中心とする所定範囲とする場合に成立する方法であって、前述のように、目標形成範囲C4Mが、搬送方向の下流側にシフトしている場合には適用できない方法であるので、前述の方法の方が好ましい。
【0088】
===その他の実施の形態===
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更や改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれるのはいうまでもない。例えば、以下に示すような変形が可能である。
【0089】
上述の実施形態では、平面画像データの一例として、各画素の色情報が明度のみを有したグレースケールのデータを示したが、何等これに限るものではない。例えば、各画素の色情報が明度、色相、及び彩度を有したカラー画像データであっても良い。そして、その場合には、前述の二値化処理として、カラー二値化処理を行うこともできる。
ちなみに、カラー二値化処理とは、平面画像のカラー画像データから、特定の色情報を有する画素を抽出する処理のことである。ここで、色情報は、前述のように明度、色相、及び彩度の三要素をそれぞれ数値で有している。よって、明度、色相、及び彩度のそれぞれについて、抽出すべき画素の色情報の数値範囲を、二値化用閾値として画像処理部66,86,96のメモリに予め設定しておけば、各画像処理部66,86,96は、その設定された色情報の画素を平面画像から抽出することができる。
すなわち、上述の二値化用閾値の三つの数値範囲を、平面画像のうちで新たな露出部分2exが撮像されている領域A2exに固有な色に基づいて予め設定しておけば、画像処理部66,86,96は、平面画像データに記録されている平面画像の各画素の色情報を参照し、そして、上述の二値化用閾値の三つの数値範囲を全て満たす画素を例えば白の画素に割り振り、満たさない画素を例えば黒の画素に割り振る。そして、この割り振り動作を、平面画像データの全ての画素について行い、これにより、平面画像のうちで新たな露出部分2exが撮像されている領域A2exが、白の画素の領域として抽出される。この方法によれば、上記露出部分2exが撮像されている領域A2exに固有な色に基づいて、平面画像から同領域を抽出するので、その抽出精度を高めることができる。なお、上述したこと以外の内容は、グレースケールを例に既述した内容と同じなので、その説明については省略する。
【0090】
上述の実施形態では、各画像処理部66,86,96は、それぞれ二値化画像における白画像の面積に基づいて良否判定を行っていたが、何等これに限るものではない。つまり、白画像の大きさを示す値であれば、面積以外の指示値を用いても良い。例えば、白画像の画素数で良否判定をしても良い。そして、その場合には、良否判定用閾値として、それぞれ画素数で表現された固定値が予め各画像処理部66,86,96のメモリに設定される。
【0091】
上述の実施形態では、ウエブ部材の一例として、基材シート2の両面にそれぞれ長繊維状部材4,4が積層された半製品1aを示したが、何等これに限るものではなく、例えば、長繊維状部材4を基材シート2の片面だけに積層したものをウエブ部材としても良い。つまり、もう一方の片面には積層しなくても良い。
【0092】
上述の実施形態では、起毛状態検査装置60と切断線検査装置90とを別々に設けていたが、場合によっては、起毛状態検査装置60が切断線検査装置90を兼ねるように構成して、切断線検査装置90を省略しても良い。
【0093】
上述の実施形態では、接合線J4の平面形状がV字形状であったため、これに沿って形成される切断線C4もV字状に形成され、その結果、各起毛可能部分4kk,4kk…もV字状に並んで配されていたが、当該起毛可能部分4kk,4kk…の配置パターンは何等これに限るものではない。すなわち、複数の起毛可能部分4kk,4kk…が離散的に配置されるような配置パターンであれば、上記以外でも良い。例えば、千鳥配置パターンでも良いし、格子パターンでも良い。
【符号の説明】
【0094】
1 ウエブ製品、1a 半製品(ウエブ部材)、1b 単位半製品、
2 基材シート(連続ウエブ)、2ex 新たな露出部分、2n 帯状部分、
4 長繊維状部材(繊維状部材)、4J 接合線(接合部)、
4f 端部、4k 刷毛部、
4kk 起毛可能部分(起毛可能な部分)、
4kk1 起毛可能部分、4kk2 起毛しない部分、
4c 起毛可能部分、4n 起毛不能部分(未分断部分)、
4se 分断端部、
4t トウ、
6 サイドシート、
10 製造ライン、12 リール装置、
20a 上シールロール、20b 下シールロール、
30a 上シールロール、30b 下シールロール、
40a 上カッターロール、40b 下カッターロール、
50a 上ブラシロール、50b 下ブラシロール、
60 起毛状態検査装置(検査装置)、
62 CCDカメラ(撮像処理部)、64 照明部材、
66 画像処理部(二値化処理部、良否判定処理部)、
68 警報出力部、
70a 上カッターロール、70b 下カッターロール、
80 坪量分布検査装置、
82 CCDカメラ(第3撮像処理部)、84 照明部材、
86 第3画像処理部(第3二値化処理部、第3良否判定処理部)、
88 警報出力部、
90 切断線検査装置、
92 CCDカメラ(第2撮像処理部)、94 照明部材、
96 第2画像処理部(第2二値化処理部、第2良否判定処理部)、
S4 長繊維状部材の生成工程、S4t 開繊工程、
S20 メインシール工程、S30 サイドシール工程、
S40 起毛カット工程、S50 起毛工程、S60 起毛状態検査工程、
S70 エンドカット工程、
P4 合流位置、P6 合流位置、PS 撮像位置、
A2ex 撮像部分(新たな露出部分が撮像されている領域)、
A4 領域、A6 領域、R4 領域、
C4 切断線、C4M 目標形成範囲、
J4 接合線、J6 溶着部、
W 検査ウインドウ、W1 検査ウインドウ、
W2a 検査ウインドウ、W2b 検査ウインドウ、
AC4 切断線の撮像部分、
PAC4 一部(対応部分、切断痕が撮像されている領域)、
AJ4 接合線の撮像部分、PAJ4 一部(対応部分)、
AJ6 ドット状溶着部の撮像部分、
MJ4 中間位置、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
衛生物品に係るウエブ部材の起毛状態の検査装置であって、
前記ウエブ部材は、少なくとも片面に、該片面から剥がれて起毛可能な部分を所定の配置パターンで離散的に有し、前記起毛可能な部分が剥がれて起毛した際には前記片面上に新たな露出部分を生じ、
前記検査装置は、
前記片面を撮像して前記片面の平面画像のデータを平面画像データとして生成する撮像処理部と、
前記平面画像データに基づいて二値化画像を生成する際に、前記二値化画像において二値のうちの一方の値によって特定される画像に、前記平面画像のうちで前記新たな露出部分が撮像されている領域が含まれるように二値化処理を行う二値化処理部と、
前記画像の大きさを示す値に基づいて、前記起毛状態の良否判定を行う良否判定処理部と、を有することを特徴とする衛生物品に係るウエブ部材の起毛状態の検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の衛生物品に係るウエブ部材の起毛状態の検査装置であって、
前記ウエブ部材は、搬送方向に沿って連続する連続ウエブと、前記連続ウエブの少なくとも片面を覆って設けられた繊維状部材と、を有し、
前記繊維状部材は繊維方向を前記搬送方向に沿わせて配置されており、
前記連続ウエブと前記繊維状部材とを接合する接合部が、前記搬送方向に間欠的に形成されており、
前記搬送方向に隣り合う前記接合部同士の間の切断位置で前記繊維状部材を切断して、前記接合部を基端部として前記繊維状部材の切断端部が起立可能に構成することにより、前記起毛可能な部分が形成されており、
前記ウエブ部材のうちで前記繊維状部材側の面を撮像して前記繊維状部材の平面画像のデータを第2平面画像データとして生成する第2撮像処理部と、
前記第2平面画像データに基づいて二値化画像を生成する際に、前記二値化画像において二値のうちの一方の値によって特定される画像に、前記切断位置での切断による切断痕が撮像されている領域が含まれるように二値化処理を行う第2二値化処理部と、
前記画像に基づいて、前記切断位置が、前記搬送方向に関して目標形成範囲に位置しているか否かの判定を行う第2良否判定処理部と、を有することを特徴とする衛生物品に係るウエブ部材の起毛状態の検査装置。
【請求項3】
請求項2に記載の衛生物品に係るウエブ部材の起毛状態の検査装置であって、
前記第2撮像処理部は、前記繊維状部材における前記起毛可能な部分が前記起毛状態になる前に、前記ウエブ部材のうちで前記繊維状部材側の面を撮像して前記第2平面画像データを生成することを特徴とする衛生物品に係るウエブ部材の起毛状態の検査装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載の衛生物品に係るウエブ部材の起毛状態の検査装置であって、
前記繊維状部材は、前記連続ウエブの搬送方向の所定位置において前記連続ウエブの片面に重ね合わせられることにより、前記連続ウエブの片面を覆った状態となって前記連続ウエブと一体に前記搬送方向に搬送され、
前記繊維状部材は、前記搬送方向と直交する方向に幅方向を有し、
前記連続ウエブに重ね合わせられる前の前記繊維状部材を片面側から撮像して該繊維状部材の平面画像のデータを、第3平面画像データとして生成する第3撮像処理部と、
前記第3平面画像データに基づいて二値化画像を生成する際に、前記二値化画像において二値のうちの一方の値で特定される画像に、前記繊維状部材のうちで所定値以下の坪量の部分が撮像されている領域が含まれるように二値化処理を行う第3二値化処理部と、
前記画像に基づいて、前記繊維状部材の坪量が前記幅方向に関して均等か否かの判定を行う第3良否判定処理部と、を有することを特徴とする衛生物品に係るウエブ部材の起毛状態の検査装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかに記載の衛生物品に係るウエブ部材の起毛状態の検査装置であって、
前記ウエブ部材は、搬送方向に沿って連続する連続体であり、
前記ウエブ部材の前記片面のうちで前記搬送方向と直交する幅方向の両端部には、前記起毛可能な部分は設けられておらず、前記両端部には、厚みが薄くなった溶着部が形成されており、
前記二値化処理部は、前記平面画像のうちで前記両端部が撮像されている領域以外の領域を、前記二値化処理の対象として前記二値化画像を生成することを特徴とする衛生物品に係るウエブ部材の起毛状態の検査装置。
【請求項6】
衛生物品に係るウエブ部材の起毛状態の検査方法であって、
前記ウエブ部材は、少なくとも片面に、該片面から剥がれて起毛可能な部分を所定の配置パターンで離散的に有し、前記起毛可能な部分が剥がれて起毛した際には前記片面上に新たな露出部分を生じ、
前記検査方法は、
前記片面を撮像して前記片面の平面画像のデータを平面画像データとして生成することと、
前記平面画像データに基づいて二値化画像を生成する際に、前記二値化画像において二値のうちの一方の値によって特定される画像に、前記平面画像のうちで前記新たな露出部分が撮像されている領域が含まれるように二値化処理を行うことと、
前記画像の大きさを示す値に基づいて、前記起毛状態の良否判定を行うことと、を有することを特徴とする衛生物品に係るウエブ部材の起毛状態の検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−64614(P2013−64614A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202189(P2011−202189)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】