説明

衛生紙用柔軟剤

【課題】紙に良好な柔らかさ、なめらかさとしっとり感をバランスよく付与することができ、かつ紙力の低下を抑制することができる衛生紙用柔軟剤の提供。
【解決手段】式(1)で表されるアルキレンオキシド誘導体1〜50質量%、およびグリセリン50〜99質量%からなる衛生紙用柔軟剤。
RO(EO)m (PO)n H ・・・(1)
(Rは水素原子または炭素数1〜4の炭化水素基である。EOはオキシエチレン基、POはオキシプロピレン基を示す。mはオキシエチレン基の平均付加モル数で40〜300であり、nはオキシプロピレン基の平均付加モル数で20〜150であり、かつm/n=30/70〜95/5である。EOとPOとはランダム付加である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は衛生紙用柔軟剤に関する。より詳細には、紙に良好な柔らかさ、なめらかさとしっとり感をバランスよく付与することができ、かつ紙力の低下を抑制することができる衛生紙用柔軟剤に関する。
【背景技術】
【0002】
衛生紙、とりわけティシューペーパー、トイレットペーパーは、肌に直接触れて使用されるので、より良好な柔らかさとなめらかさが求められている。さらに近年では、花粉症患者の増加から、柔らかさ、なめらかさを有し、さらにしっとり感のある紙が求められている。
【0003】
特許文献1には、柔らかさおよびしっとり感を向上させるために、多価アルコールを繊維ウェブに含有させることが開示されている。しかし、この方法では柔らかさおよびしっとり感の向上は得られるものの、なめらかさの向上に関しては十分でなく、また、紙力の低下が大きいという問題もある。特許文献2には、柔らかさとなめらかさを向上させるために、モノステアリルトリメチルアンモニウム塩とジグリセリンをティシューペーパーに含有させることが記載されている。しかしながら、この方法ではなめらかさと柔らかさの向上は得られるが、十分な紙力を得られない場合がある。さらに、特許文献3には、柔らかさを向上させるために、多価アルコールのアルキレンオキシド付加物を含有する処理剤で紙類を処理することが開示されている。しかしながら、この方法では柔らかさの向上は得られるものの、しっとり感に関しては十分でない場合があり、さらに十分な紙力が得られない場合があるという問題がある。特許文献4には、柔らかさを向上させるために、二塩基酸とジオールのエステル化物を含有する処理剤で紙類を処理することが開示されている。しかしこの方法は柔らかさを十分満足させるものではなかった。
【0004】
このように、これらの方法では、十分な紙力を維持させながら、紙に良好な柔らかさ、なめらかさとしっとり感をバランスよく付与するという点において必ずしも十分とはいえない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−156596号公報
【特許文献2】特開平7−109693号公報
【特許文献3】特開2004−84116号公報
【特許文献4】特開2003−138498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、紙に良好な柔らかさ、なめらかさとしっとり感をバランスよく付与することができ、かつ紙力の低下を抑制することができる衛生紙用柔軟剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記従来の課題を解決するために鋭意検討した結果、特定のアルキレンオキシド誘導体とグリセリンを組み合わせた衛生紙用柔軟剤が上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、式(1)で表されるアルキレンオキシド誘導体1〜50質量%、およびグリセリン50〜99質量%からなる衛生紙用柔軟剤である。
【0009】
RO(EO)m (PO)n H ・・・(1)
(Rは水素原子または炭素数1〜4の炭化水素基である。EOはオキシエチレン基、POはオキシプロピレン基を示す。mはオキシエチレン基の平均付加モル数で40〜300であり、nはオキシプロピレン基の平均付加モル数で20〜150であり、かつm/n=30/70〜95/5である。EOとPOとはランダム付加である。)
【発明の効果】
【0010】
本発明の衛生紙用柔軟剤によれば、良好な柔らかさ、なめらかさとしっとり感をバランスよく有し、かつ十分な紙力を有する紙を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明の衛生紙用柔軟剤は、アキレンオキシド誘導体(a)、およびグリセリン(b)からなる。
【0012】
〔アルキレンオキシド誘導体(a)〕
本発明に用いるアルキレンオキシド誘導体(a)は下記式(1)で表される。
【0013】
RO(EO)m (PO)n H ・・・(1)
【0014】
式(1)中のRは水素原子または炭素数1〜4の炭化水素基である。炭化水素基は直鎖でも分岐鎖でも良く、飽和でも不飽和でも良い。炭素数1〜4の炭化水素基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、アリル基等が挙げられる。
【0015】
EOはオキシエチレン基、POはオキシプロピレン基を示し、mはオキシエチレン基の平均付加モル数で40〜300であり、好ましくは60〜250である。mが40未満の場合は十分ななめらかさが得られない場合があり、また十分な紙力が得られない場合がある。nはオキシプロピレン基の平均付加モル数で20〜150であり、好ましくは35〜130である。nが20未満の場合は十分な柔らかさが得られない場合がある。m+nは60〜450であり、好ましくは95〜380である。m+nが60未満の場合は十分な紙力が得られない場合がある。またm/n=30/70〜95/5であり、好ましくは50/50〜85/15である。m/nが30/70未満では十分なしっとり感が得られない場合があり、95/5を超えると十分な柔らかさが得られない場合がある。さらに、EOとPOとはランダム付加である。
【0016】
なお、アルキレンオキシド誘導体(a)の使用に際しては、単独若しくは2種以上の混合物として用いることができる。式(1)で表されるアルキレンオキシド誘導体(a)は、公知の方法により製造することができ、また工業的に入手可能なものを用いることができる。
【0017】
〔グリセリン(b)〕
本発明に用いるグリセリン(b)は、工業的に入手可能なものを用いることができ、油脂を原料として加水分解により得られる天然グリセリンでも、石油を原料として得られる合成グリセリンでも良い。また油脂の由来はヤシ油などの植物由来でも、牛脂などの動物由来でもよい。
【0018】
〔衛生紙用柔軟剤〕
本発明の衛生紙用柔軟剤は、アルキレンオキシド誘導体(a)およびグリセリン(b)からなり、アルキレンオキシド誘導体(a)1〜50質量%、好ましくは5〜25質量、およびグリセリン(b)50〜99質量%、好ましくは75〜95質量%からなる。なお、アルキレンオキシド誘導体(a)とグリセリン(b)の総量は100質量%である。
【0019】
アルキレンオキシド誘導体(a)が1質量%未満であり、グリセリン(b)が99質量%を超える場合には十分ななめらかさが得られない場合があり、また十分な紙力が得られない場合がある。アルキレンオキシド誘導体(a)が50質量%を超え、グリセリン(b)が50質量%未満である場合には十分なしっとり感が得られない場合がある。
【0020】
本発明の衛生紙用柔軟剤は、取扱いを良くするために、水などの溶媒を用いて希釈して使用することができる。また、本衛生紙用柔軟剤には、油性成分、界面活性剤、防腐剤などの紙用添加剤として用いられる他の成分を配合してもよい。本発明の衛生紙用柔軟剤が塗布される衛生紙としては、ティシューペーパー、トイレットペーパー、キッチンペーパー等が挙げられる。
【0021】
本発明の衛生紙用柔軟剤の具体的な塗布方法としては、転写印刷方式、コーター、スプレーなどが挙げられる。好ましくは転写印刷方式である。本発明の衛生紙用柔軟剤を衛生紙原紙に塗布してから2枚重ねの加工を行ってもよく、あるいは2枚重ねの加工を行った後に塗布を行ってもよい。衛生紙に塗布する柔軟剤(有効分)の量は、紙に対して、10〜30質量%が好ましい。
【実施例】
【0022】
以下、本発明を実施例および比較例により具体的に説明する。
【0023】
〔柔軟剤希釈液1の調製例〕
攪拌機、冷却管、温度計を備えた500mLの4つ口フラスコに表1に示すアルキレンオキシド誘導体1を13g、グリセリンを87g、イオン交換水を300g仕込み50℃で30分間撹拌し、有効分が25質量%である柔軟剤希釈液1を得た。
【0024】
〔柔軟剤希釈液2〜14の調製例〕
表1に示すアルキレンオキシド誘導体2〜10を表2に示す割合で用いて、柔軟剤希釈液1の調製例と同様の操作を行い、有効分が25質量%である柔軟剤希釈液2〜14を得た。
【0025】
【表1】

【0026】
〔柔軟紙の調製〕
柔軟剤希釈液1をハンドスプレーにてティシューペーパー1枚(市販されている2枚1組を1枚とする)に噴霧し、柔軟剤希釈液1を塗布したティシューペーパーを合計30枚用意した。噴霧前後のティシューの質量差から求めた柔軟剤希釈液1の平均塗布量は噴霧前のティシュー質量に対して79.2質量%(有効分19. 8質量%)であった。同様に、柔軟剤希釈液2〜14についても、それぞれの希釈液をティシューペーパー1枚に噴霧し、噴霧したティシューペーパーを合計30枚ずつ用意し、各希釈液について柔軟剤の平均塗布量を求め、その結果を表2および表3に記載した。各柔軟剤が塗布されたティシューを室温23℃、湿度30%の恒温恒湿室で48時間保管した後に以下の評価を行った。
【0027】
〔柔らかさ、なめらかさおよびしっとり感の評価〕
調湿したティシュー3枚を重ねて女性評価者が片手で握り、柔らかさ、なめらかさおよびしっとり感についてそれぞれ以下の評価基準に従い官能評価を行った。評価者10人の評価値合計を求めて、評価値合計が20点以上であり、かつ1点をつけた評価者がいないものをそれぞれ良好である(○)と評価し、それ以外を不良(×)と評価した。その結果を表2および表3に記載した。
【0028】
(柔らかさ官能評価) (評価値)
・非常に柔らかい:3点
・柔らかい:2点
・やや硬い:1点
(なめらかさ官能評価) (評価値)
・非常になめらかである:3点
・なめらかである:2点
・なめらかでない:1点
(しっとり感官能評価) (評価値)
・非常にしっとりしている:3点
・しっとりしている:2点
・しっとりしていない:1点
【0029】
〔紙力の評価〕
調湿したティシューを120×15mmに裁断し、引張圧縮試験機((株)今田製作所製、SV−201−0−SH)を用いて紙の繊維方向の引張り強度を測定した。各例で5回測定を行って平均を求め、その平均値を表2および表3に記載した。柔軟剤塗布前のティシューの引張り強度(2. 0N)に対して紙力低下が25%以下(1. 5N以上)である場合を紙力良好(○)と評価し、紙力低下が25%を超える(1. 5N未満)場合を紙力不十分(×)と評価した。
【0030】
(引張り強度)・紙力低下が25%以下(1. 5N以上):紙力良好(○)
・紙力低下が25%を超える(1. 5N未満):紙力不十分(×)
【0031】
【表2】

【0032】
【表3】

【0033】
表2に示すように実施例1〜8の衛生紙用柔軟剤では、いずれも30%の低湿度の条件下においても、良好な柔らかさ、なめらかさおよびしっとり感がバランスよく向上され、かつ十分な紙力を有する紙を得ることができる。
【0034】
これに対して比較例1では、本発明のアルキレンオキシド誘導体(a)を用いず、グリセリンのみを塗布しているので、十分ななめらかさと十分な紙力が得られていない。比較例2では、アルキレンオキシド誘導体7のmおよびm/nのモル比が本発明の範囲を外れているので、十分な柔らかさが得られていない。比較例3では、アルキレンオキシド誘導体8のm/nのモル比が本発明の範囲を外れているので、十分なしっとり感が得られていない。比較例4では、アルキレンオキシド誘導体9のmおよびnの付加モル数が本発明の範囲の下限値より小さいので、十分ななめらかさと十分な紙力が得られていない。比較例5では、アルキレンオキシド誘導体(a)およびグリセリン(b)の質量比が本発明の範囲を外れているので、十分なしっとり感が得られていない。比較例6では、エステル化物を用いているので、十分な柔らかさが得られていない。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の衛生紙用柔軟剤は、十分な紙力を維持させながら、紙に良好な柔らかさ、なめらかさとしっとり感をバランスよく付与することができるので、肌に直接触れて使用される衛生紙、とりわけティシューペーパー、トイレットペーパー、キッチンペーパーなどに好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表されるアルキレンオキシド誘導体1〜50質量%、およびグリセリン50〜99質量%からなる衛生紙用柔軟剤。
RO(EO)m (PO)n H ・・・(1)
(Rは水素原子または炭素数1〜4の炭化水素基である。EOはオキシエチレン基、POはオキシプロピレン基を示す。mはオキシエチレン基の平均付加モル数で40〜300であり、nはオキシプロピレン基の平均付加モル数で20〜150であり、かつm/n=30/70〜95/5である。EOとPOとはランダム付加である。)

【公開番号】特開2013−83018(P2013−83018A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223993(P2011−223993)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000004341)日油株式会社 (896)
【Fターム(参考)】