衛生設備の放水水栓
放水ハウジング(1)と、放水ハウジング(1)内に配置された、面状に広がった水流出噴流(19)用の噴流形成器とを有する、衛生設備の放水水栓、特に槽充填水栓が開示される。放水ハウジング(1)は、水流出噴流(19)に対して実質的に垂直に延びる細長い供給路(21)を含み、供給路(21)は、貫流方向に漏斗状に先細りになっており、かつ中間壁(37)によって仕切られている。中間壁(37)は、複数の貫流孔(51)を備え、貫流孔(51)を介して、供給路(21)が、供給路(21)に対して実質的に平行な細長い分配室(11)に接続されている。分配室(11)は、放水部に通じる少なくとも1つの水流出路(9)を有している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放水ハウジングと、放水ハウジング内に配置された、面状に広がった水流出噴流用の噴流形成器とを有する、衛生設備の放水水栓、特に槽充填水栓に関する。
【背景技術】
【0002】
市場で公知の放水水栓では、見栄え上、及び/又は機能上の理由から、均一に広がった均質な水の噴流を放水部で形成するために、このような噴流形成器が用いられている。
【0003】
例えば、公知の槽充填水栓は、視覚的に好ましいデザインを有し、さらに、浴槽を迅速に充填できるように流出水の体積流量を多量にできる広い槽流入部を備えている。
【0004】
公知の噴射シャワーの場合にも、ガラス製にすることができる開口した平坦な放水部の全幅にわたって均一な水の噴流を形成することが望ましい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
面状に広がった噴流を実現するために、従来は、閉じた平坦な長方形の放水部の、開口した放水部への移行部に長方形のフィルタが嵌め込まれている。当然、このようなフィルタは非常に汚れやすい。
【0006】
面状に広がった噴流の形成を安定させるために、従来は、開口した放水部内を噴流が流れる前に、十分に長い距離にわたって広い噴流を案内する必要があった。しかし、埋込み型水栓、例えば、埋込み型槽水栓又は埋込み型噴射シャワーの場合、作り付け壁に対して垂直な方向には、限られた空間しか利用できない。
【0007】
本発明の課題は、作り付け壁に対して垂直な方向の奥行きができるだけ小さく、視覚的に好ましいデザインに形成され、面状に広がった均質な水流出噴流を形成できる冒頭に述べた種類の衛生設備の放水水栓を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、本発明によれば、放水ハウジングが、水流出噴流に対して実質的に垂直に延びる細長い供給路を含み、供給路が、貫流方向に漏斗状に先細りになっており、かつ中間壁によって仕切られており、中間壁が複数の貫流孔を備え、貫流孔を介して、供給路が、供給路に対して実質的に平行な細長い分配室に接続され、分配室が、放水部に通じる水流出路を有することによって解決される。
【0009】
本発明によれば、供給路及び分配室は、水流出噴流に対して横方向に配置され、この結果、放水ハウジングは小さな奥行きを有している。先細りになっていることによって、水が、放水ハウジングにおける水流の最初の方向転換の際に中間壁に沿って、すなわち水流出噴流に対して横方向に均一に分配され、水圧が供給路に沿ってほぼ一定に保たれることが達成される。そこから、水は、貫流孔を通って、水流出噴流に対して横方向に分配室の長さにわたって均一に分配室に流れる。分配室の1つ又は複数の水流出路で、放水部の方向への水流の2回目の方向転換が行われる。
【0010】
水流出噴流の均質性を向上させるために、供給路、中間壁及び分配室は、水流出噴流の幅とほぼ同じ長さにすることができ、また貫流孔は、中間壁の全面にわたって分布させることができる。
【0011】
好ましくは、貫流孔は、互いにずらして、平行な複数の線上に位置させることができ、これによって、貫流孔の、中間壁の面にわたる特に均一な分布を実現可能である。
【0012】
さらに、貫流孔は蜂の巣状に形成することができる。このようにして、中間壁の全面にわたって、ほぼ均一な貫流を実現することができ、それによって、水流が安定させられる。
【0013】
別の有利な実施態様では、供給路及び分配室は長方形の断面を有することができ、貫流孔は中間壁を通って垂直に延び、水流出路は貫流孔に対し垂直に延びることができる。長方形の供給路及び長方形の分配室は、特にスペースを節約するように互いに対向させて配置することができる。貫流孔の垂線な配置によって、流れ方向が90°方向転換され、水が中間壁に対して垂直に分配室内を流れ、この結果、分配室の長手方向の流れ及び流れのみだれが大幅に回避されることが達成される。分配室から、水は、貫流孔に対して垂直に延びる水流出路を通って放水部へと流れ、水流は、ここで、新たに90°だけ水流出噴流の面へと方向転換される。
【0014】
特に、放水部で隙間のないウォーターカーテンを形成可能にするために、特に長方形の複数の水流出路を互いに並べて配置することができる。長方形状とすることによって、ほとんど隙間なく並べることが可能になる。
【0015】
放水部への移行部での流速を高めるために、少なくとも1つの水流出路は、水流方向に、特に段状又は漏斗状の少なくとも1つの狭隘部を備えることができる。
【0016】
中間壁は、放水ハウジング内に簡単に組み込むことができる嵌め込み部であることができる。このようにして、様々な配置及び/又は大きさの貫流孔を有する中間壁を、放水ハウジングにモジュール式に嵌め込むことができる。同様に、例えば洗浄の目的で、中間壁を簡単に取り外すことができる。
【0017】
放水ハウジングは、放水部に向かって少なくとも1つの光窓を有する少なくとも1つの照明手段収容室を有することができる。照明手段収容室に、流出する水、及び/又は、特に透明な、例えばガラス製の放水部を照明するための照明手段を配置することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
図1〜図11に、不図示の槽充填水栓の、全体を参照番号1で示した細長い直方体状の放水ハウジングが示されている。
【0020】
放水ハウジング1は、その長手方向が水平に、例えば図示していない埋込み型収容部内に配置されている。放水ハウジング1は、作り付け壁に対して垂直な方向に短く形成されており、すなわち、図9〜図11の左側から右側への水平方向の奥行が、図7と図8の右側から左側への水平方向の長さよりも明らかに短い。放水ハウジング1の鉛直方向の高さは、その水平方向の奥行にほぼ相当している。
【0021】
放水ハウジング1は、水平方向に延びる板状の不図示の放水部用の、図1の左側の鉛直な外壁3に沿って形成され水平に延び前方に開口したU字形の細長い収容部5を備えている。収容部5は、複数の水流出路9と一体に形成されたほぼ長方形の細長い放水片7によって上方を区切られている。水流出路9は、放水ハウジング1の内部の分配室11から延びている。放水片7は、図3と図5で見ることができ、長手方向に、U字形の収容部5の下脚よりも幾分短い。放水片7の側面の、収容部5の側面13に対する間隔は、放水片7の下面の、収容部5の水平な下面15に対する間隔にほぼ相当している。
【0022】
完全に組み立てが完成した状態では、収容部5と放水片7との間に、不図示の板状の放水部が嵌め込まれ、収容部5の水平な下面15に設けられた複数のクランプ突起17によって固定される。この際、放水部に形成された上方に突出する突出部が放水片7の側方の表面を包み込む。
【0023】
全体として、放水ハウジング1は、図1の矢印19で示されており、不図示の放水部に供給可能な水平方向に広がった水流出噴流用の噴流形成器の機能を果たす。水流出噴流19の幅は、両外側の水流出路9の間隔によって、すなわち、ほぼ、放水片7の、放水ハウジング1の長手方向の長さによって与えられる。
【0024】
放水ハウジング1の内部は、長手方向に、互いに平行に延び断面がそれぞれ長方形の3つの部屋に実質的に分割され、すなわち、図1と図10の断面の右下部の供給路21と、図1と図10の上部の分配室11と、これら両方から空間的に分離された、図1の左側下部の照明手段収容室23とに分割されている。供給路21、分配室11及び照明手段収容室23は、放水ハウジング1の長手方向に、水流出噴流19の幅とほぼ同じ長さ、すなわち、放水片7とほぼ同じ長さである。
【0025】
放水ハウジング1は、図1の背後側の、放水部の収容部5と反対側の側面を、取外し可能な長方形の後壁25で閉じられている。後壁25は、後側から見て左側に供給管27を備えている。供給管27は、不図示の水道管を介して同様に不図示の混合水栓に接続される。
【0026】
放水ハウジング1内には、供給管27の後に、放水ハウジング1の内部の鉛直方向の全高さにわたって延びる前室29が配置されている。前室29の、水平方向の、放水ハウジング1の長手方向の長さは、放水ハウジング1の内部の水平方向の長さの約15分の1である。前室29の水平方向の奥行は、放水ハウジング1の水平方向の奥行の約半分である。
【0027】
前室29から、図1の下部で、長方形の断面を有する供給路21が延びている。供給路21の水平方向の奥行は前室29の奥行に相当している。供給路21の、前室29に対向する端部で、供給路21は、図4、7及び8で見える鉛直な隔壁31によって仕切られている。隔壁31とそれに隣接する、放水ハウジング1の側壁との間に、ほぼ直方体形状の閉じた中空室33があり、この中空室33は、放水ハウジング1の内部の鉛直方向の全高さにわたって、また、放水ハウジング1の内部の水平方向の長さの約30分の1にわたって延びている。供給路21の鉛直方向の高さは、前室29に隣接する端部で、前室29の内部の鉛直方向の高さの約3分の1である。
【0028】
供給路21の底部は、上り勾配くさび状部35によって形成され、上り勾配くさび状部35の上面は前室29から斜め上方に延び、供給路21の端部の、中空室33に対する隔壁31の所で供給路21の天井で終端している。
【0029】
供給路21の天井は、嵌め込み部として実現されて取り出し可能であり、ほぼ正方形の断面を有する細長い中間壁37によって形成されている。中間壁37は、供給路21の水平方向の全長にわたって延びて、同程度の長さの分配室11から供給路21を分離している。中間壁37は、放水ハウジング1の背面から、中間壁37の短い側部を中空室33の隔壁31の、図4と図8で見える水平な案内溝39に差し込まれ、また中間壁37の、対向する側の短い側部を、前室29の鉛直な境界壁43の、図1と図4で見える水平な案内溝41に差し込まれている。図4では、分かりやすくするために、中間壁37は示されていない。両方の案内溝39と41は、同一の高さにあり、したがって、中間壁37の全体は水平に延びている。
【0030】
供給路21の、後壁25と反対側の鉛直な境界壁45には、中間壁37用の狭い水平な案内路47と49が設けられている。下方の案内路49は、図8で見ることができ、両方の案内溝39と41のそれぞれの下面の間を延びている。上方の案内路47は、下方の案内路49に対して平行に、中間壁37の鉛直方向の高さに相当する間隔を置いて延びている。
【0031】
中間壁37は、図1で見ることができ、真っ直ぐな複数の貫流孔51を備えている。貫流孔51は、中間壁37を通って垂直に、すなわち鉛直方向に延び、供給路21を分配室11と接続している。貫流孔51は、中間壁37の水平方向の全長にわたって、互いにずれた複数の列を形成するように配置されている。貫流孔51は、ミリメートル範囲の直径をそれぞれ有している。
【0032】
分配室11は、放水ハウジング1の水平な奥行の方向に2つの領域に分割されている。後壁25に面する領域は、中間壁37の上方にあり、中間壁37の水平方向の長さを有している。放水部に面する領域は、放水ハウジング1の長手方向に対して横方向に延びる鉛直な複数の隔壁53を備え、隔壁53は、ほぼ正方形の、互いに隣接する2つの水流出路9を互いに分離している。すなわち、水流出路9は貫流孔51に対して垂直に延びている。
【0033】
各々の水流出路9は、長さのほぼ半分の所に、放水片7を貫通する狭隘部55に通じる斜めの段部を備えている。
【0034】
分配室11の、隔壁53を備える領域の下で、供給路21と同一の高さに、図では見えない照明手段が格納された直方体形状の照明手段収容室23がある。照明手段は、図2で見える電子制御器57を介して制御可能である。電子制御器57は、制御回線61を介して、槽充填水栓の不図示の運転装置に機能的に接続されている。制御回線61は、放水ハウジング1の、中空室33を備える側面の開口部59から、シールされて延びている。開口部59は、照明手段収容室23の断面全体にわたって広がっている。
【0035】
照明手段収容室23は、放水部に向かって、細長い光窓61を備えている。光窓61は、放水片7の下面と、放水部の収容部5の水平な下面15との間の領域の、図1で見える鉛直な外壁3の、光を透過する部分である。照明手段によって放射された光は、光窓61を通って、透明な材料から形成された放水部の正面に、又は水流出噴流19に達する。この光は、放水部を通って伝播し、好ましくは給水装置の正面で、部分的に上方及び下方の主面においても放出され、それによって、水流出噴流19を照明する。
【0036】
本発明は、槽充填水栓と関連する用途に限定されない。むしろ、本発明は、他の衛生設備の放水水栓、例えば噴射シャワーにも使用することができる。
【0037】
放水ハウジング1は、水平に配置する代わりに、斜めに配置することもできる。水流出噴流19は、水平方向に広げる代わりに、斜めに広げることもできる。
【0038】
中間壁37は、嵌め込み部とする代わりに、放水ハウジング1にとれないように結合することもできる。
【0039】
分配室11は、複数の水流出路9の代わりに、広い単一の水流出路のみを有することもできる。
【0040】
貫流孔51は、複数の線上に配置する代わりに、蜂の巣状に形成するか、又は不規則に配置することもできる。
【0041】
供給路21及び/又は分配室11は、長方形の代わりに、他の形状、例えば、他の多角形、円形又は楕円形の断面を有するようにすることもできる。
【0042】
貫流孔51は、中間壁37を通って垂直に延ばす代わりに斜めに延ばすこともできる。同様に、水流出路9は、貫流孔51に対して斜めに延ばすこともできる。
【0043】
貫流孔51は、長方形の代わりに、他の形状、例えば、多角形、円形又は楕円形とすることができる。
【0044】
段状の狭隘部55の代わりに、水流出路9は、狭隘部を備えないか、あるいは他の種類の、例えば漏斗状の狭隘部を備えることもできる。
【0045】
照明手段収容室23を省略することもできる。複数の照明手段収容室を放水ハウジング1の様々な箇所に設けることもできる。各々の照明手段収容室23は、様々な方向の複数の光窓を備えることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】放水側から見て右側前方から斜めに見た放水ハウジングの一部を断面した模式的な斜視図である。
【図2】図1の放水ハウジングの背面から見た模式図である。
【図3】図1の放水ハウジングの左側前方から斜めに見た模式図である。
【図4】後壁を取り除いた状態の、図1の放水ハウジングの背面から見た模式図である。
【図5】図1の放水ハウジングの模式的な正面図である。
【図6】図5の放水ハウジングの領域VIの詳細を示す模式図である。
【図7】後壁のない状態の図5の放水ハウジングのVII−VII線に沿った模式的な長手方向断面図である。
【図8】図5の放水ハウジングの模式的な背面図である。
【図9】図5の放水ハウジングの右側の模式的な側面図である。
【図10】図5の放水ハウジングのX−X線に沿った模式的な断面図である。
【図11】図5の放水ハウジングの左側の模式的な側面図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、放水ハウジングと、放水ハウジング内に配置された、面状に広がった水流出噴流用の噴流形成器とを有する、衛生設備の放水水栓、特に槽充填水栓に関する。
【背景技術】
【0002】
市場で公知の放水水栓では、見栄え上、及び/又は機能上の理由から、均一に広がった均質な水の噴流を放水部で形成するために、このような噴流形成器が用いられている。
【0003】
例えば、公知の槽充填水栓は、視覚的に好ましいデザインを有し、さらに、浴槽を迅速に充填できるように流出水の体積流量を多量にできる広い槽流入部を備えている。
【0004】
公知の噴射シャワーの場合にも、ガラス製にすることができる開口した平坦な放水部の全幅にわたって均一な水の噴流を形成することが望ましい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
面状に広がった噴流を実現するために、従来は、閉じた平坦な長方形の放水部の、開口した放水部への移行部に長方形のフィルタが嵌め込まれている。当然、このようなフィルタは非常に汚れやすい。
【0006】
面状に広がった噴流の形成を安定させるために、従来は、開口した放水部内を噴流が流れる前に、十分に長い距離にわたって広い噴流を案内する必要があった。しかし、埋込み型水栓、例えば、埋込み型槽水栓又は埋込み型噴射シャワーの場合、作り付け壁に対して垂直な方向には、限られた空間しか利用できない。
【0007】
本発明の課題は、作り付け壁に対して垂直な方向の奥行きができるだけ小さく、視覚的に好ましいデザインに形成され、面状に広がった均質な水流出噴流を形成できる冒頭に述べた種類の衛生設備の放水水栓を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、本発明によれば、放水ハウジングが、水流出噴流に対して実質的に垂直に延びる細長い供給路を含み、供給路が、貫流方向に漏斗状に先細りになっており、かつ中間壁によって仕切られており、中間壁が複数の貫流孔を備え、貫流孔を介して、供給路が、供給路に対して実質的に平行な細長い分配室に接続され、分配室が、放水部に通じる水流出路を有することによって解決される。
【0009】
本発明によれば、供給路及び分配室は、水流出噴流に対して横方向に配置され、この結果、放水ハウジングは小さな奥行きを有している。先細りになっていることによって、水が、放水ハウジングにおける水流の最初の方向転換の際に中間壁に沿って、すなわち水流出噴流に対して横方向に均一に分配され、水圧が供給路に沿ってほぼ一定に保たれることが達成される。そこから、水は、貫流孔を通って、水流出噴流に対して横方向に分配室の長さにわたって均一に分配室に流れる。分配室の1つ又は複数の水流出路で、放水部の方向への水流の2回目の方向転換が行われる。
【0010】
水流出噴流の均質性を向上させるために、供給路、中間壁及び分配室は、水流出噴流の幅とほぼ同じ長さにすることができ、また貫流孔は、中間壁の全面にわたって分布させることができる。
【0011】
好ましくは、貫流孔は、互いにずらして、平行な複数の線上に位置させることができ、これによって、貫流孔の、中間壁の面にわたる特に均一な分布を実現可能である。
【0012】
さらに、貫流孔は蜂の巣状に形成することができる。このようにして、中間壁の全面にわたって、ほぼ均一な貫流を実現することができ、それによって、水流が安定させられる。
【0013】
別の有利な実施態様では、供給路及び分配室は長方形の断面を有することができ、貫流孔は中間壁を通って垂直に延び、水流出路は貫流孔に対し垂直に延びることができる。長方形の供給路及び長方形の分配室は、特にスペースを節約するように互いに対向させて配置することができる。貫流孔の垂線な配置によって、流れ方向が90°方向転換され、水が中間壁に対して垂直に分配室内を流れ、この結果、分配室の長手方向の流れ及び流れのみだれが大幅に回避されることが達成される。分配室から、水は、貫流孔に対して垂直に延びる水流出路を通って放水部へと流れ、水流は、ここで、新たに90°だけ水流出噴流の面へと方向転換される。
【0014】
特に、放水部で隙間のないウォーターカーテンを形成可能にするために、特に長方形の複数の水流出路を互いに並べて配置することができる。長方形状とすることによって、ほとんど隙間なく並べることが可能になる。
【0015】
放水部への移行部での流速を高めるために、少なくとも1つの水流出路は、水流方向に、特に段状又は漏斗状の少なくとも1つの狭隘部を備えることができる。
【0016】
中間壁は、放水ハウジング内に簡単に組み込むことができる嵌め込み部であることができる。このようにして、様々な配置及び/又は大きさの貫流孔を有する中間壁を、放水ハウジングにモジュール式に嵌め込むことができる。同様に、例えば洗浄の目的で、中間壁を簡単に取り外すことができる。
【0017】
放水ハウジングは、放水部に向かって少なくとも1つの光窓を有する少なくとも1つの照明手段収容室を有することができる。照明手段収容室に、流出する水、及び/又は、特に透明な、例えばガラス製の放水部を照明するための照明手段を配置することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
図1〜図11に、不図示の槽充填水栓の、全体を参照番号1で示した細長い直方体状の放水ハウジングが示されている。
【0020】
放水ハウジング1は、その長手方向が水平に、例えば図示していない埋込み型収容部内に配置されている。放水ハウジング1は、作り付け壁に対して垂直な方向に短く形成されており、すなわち、図9〜図11の左側から右側への水平方向の奥行が、図7と図8の右側から左側への水平方向の長さよりも明らかに短い。放水ハウジング1の鉛直方向の高さは、その水平方向の奥行にほぼ相当している。
【0021】
放水ハウジング1は、水平方向に延びる板状の不図示の放水部用の、図1の左側の鉛直な外壁3に沿って形成され水平に延び前方に開口したU字形の細長い収容部5を備えている。収容部5は、複数の水流出路9と一体に形成されたほぼ長方形の細長い放水片7によって上方を区切られている。水流出路9は、放水ハウジング1の内部の分配室11から延びている。放水片7は、図3と図5で見ることができ、長手方向に、U字形の収容部5の下脚よりも幾分短い。放水片7の側面の、収容部5の側面13に対する間隔は、放水片7の下面の、収容部5の水平な下面15に対する間隔にほぼ相当している。
【0022】
完全に組み立てが完成した状態では、収容部5と放水片7との間に、不図示の板状の放水部が嵌め込まれ、収容部5の水平な下面15に設けられた複数のクランプ突起17によって固定される。この際、放水部に形成された上方に突出する突出部が放水片7の側方の表面を包み込む。
【0023】
全体として、放水ハウジング1は、図1の矢印19で示されており、不図示の放水部に供給可能な水平方向に広がった水流出噴流用の噴流形成器の機能を果たす。水流出噴流19の幅は、両外側の水流出路9の間隔によって、すなわち、ほぼ、放水片7の、放水ハウジング1の長手方向の長さによって与えられる。
【0024】
放水ハウジング1の内部は、長手方向に、互いに平行に延び断面がそれぞれ長方形の3つの部屋に実質的に分割され、すなわち、図1と図10の断面の右下部の供給路21と、図1と図10の上部の分配室11と、これら両方から空間的に分離された、図1の左側下部の照明手段収容室23とに分割されている。供給路21、分配室11及び照明手段収容室23は、放水ハウジング1の長手方向に、水流出噴流19の幅とほぼ同じ長さ、すなわち、放水片7とほぼ同じ長さである。
【0025】
放水ハウジング1は、図1の背後側の、放水部の収容部5と反対側の側面を、取外し可能な長方形の後壁25で閉じられている。後壁25は、後側から見て左側に供給管27を備えている。供給管27は、不図示の水道管を介して同様に不図示の混合水栓に接続される。
【0026】
放水ハウジング1内には、供給管27の後に、放水ハウジング1の内部の鉛直方向の全高さにわたって延びる前室29が配置されている。前室29の、水平方向の、放水ハウジング1の長手方向の長さは、放水ハウジング1の内部の水平方向の長さの約15分の1である。前室29の水平方向の奥行は、放水ハウジング1の水平方向の奥行の約半分である。
【0027】
前室29から、図1の下部で、長方形の断面を有する供給路21が延びている。供給路21の水平方向の奥行は前室29の奥行に相当している。供給路21の、前室29に対向する端部で、供給路21は、図4、7及び8で見える鉛直な隔壁31によって仕切られている。隔壁31とそれに隣接する、放水ハウジング1の側壁との間に、ほぼ直方体形状の閉じた中空室33があり、この中空室33は、放水ハウジング1の内部の鉛直方向の全高さにわたって、また、放水ハウジング1の内部の水平方向の長さの約30分の1にわたって延びている。供給路21の鉛直方向の高さは、前室29に隣接する端部で、前室29の内部の鉛直方向の高さの約3分の1である。
【0028】
供給路21の底部は、上り勾配くさび状部35によって形成され、上り勾配くさび状部35の上面は前室29から斜め上方に延び、供給路21の端部の、中空室33に対する隔壁31の所で供給路21の天井で終端している。
【0029】
供給路21の天井は、嵌め込み部として実現されて取り出し可能であり、ほぼ正方形の断面を有する細長い中間壁37によって形成されている。中間壁37は、供給路21の水平方向の全長にわたって延びて、同程度の長さの分配室11から供給路21を分離している。中間壁37は、放水ハウジング1の背面から、中間壁37の短い側部を中空室33の隔壁31の、図4と図8で見える水平な案内溝39に差し込まれ、また中間壁37の、対向する側の短い側部を、前室29の鉛直な境界壁43の、図1と図4で見える水平な案内溝41に差し込まれている。図4では、分かりやすくするために、中間壁37は示されていない。両方の案内溝39と41は、同一の高さにあり、したがって、中間壁37の全体は水平に延びている。
【0030】
供給路21の、後壁25と反対側の鉛直な境界壁45には、中間壁37用の狭い水平な案内路47と49が設けられている。下方の案内路49は、図8で見ることができ、両方の案内溝39と41のそれぞれの下面の間を延びている。上方の案内路47は、下方の案内路49に対して平行に、中間壁37の鉛直方向の高さに相当する間隔を置いて延びている。
【0031】
中間壁37は、図1で見ることができ、真っ直ぐな複数の貫流孔51を備えている。貫流孔51は、中間壁37を通って垂直に、すなわち鉛直方向に延び、供給路21を分配室11と接続している。貫流孔51は、中間壁37の水平方向の全長にわたって、互いにずれた複数の列を形成するように配置されている。貫流孔51は、ミリメートル範囲の直径をそれぞれ有している。
【0032】
分配室11は、放水ハウジング1の水平な奥行の方向に2つの領域に分割されている。後壁25に面する領域は、中間壁37の上方にあり、中間壁37の水平方向の長さを有している。放水部に面する領域は、放水ハウジング1の長手方向に対して横方向に延びる鉛直な複数の隔壁53を備え、隔壁53は、ほぼ正方形の、互いに隣接する2つの水流出路9を互いに分離している。すなわち、水流出路9は貫流孔51に対して垂直に延びている。
【0033】
各々の水流出路9は、長さのほぼ半分の所に、放水片7を貫通する狭隘部55に通じる斜めの段部を備えている。
【0034】
分配室11の、隔壁53を備える領域の下で、供給路21と同一の高さに、図では見えない照明手段が格納された直方体形状の照明手段収容室23がある。照明手段は、図2で見える電子制御器57を介して制御可能である。電子制御器57は、制御回線61を介して、槽充填水栓の不図示の運転装置に機能的に接続されている。制御回線61は、放水ハウジング1の、中空室33を備える側面の開口部59から、シールされて延びている。開口部59は、照明手段収容室23の断面全体にわたって広がっている。
【0035】
照明手段収容室23は、放水部に向かって、細長い光窓61を備えている。光窓61は、放水片7の下面と、放水部の収容部5の水平な下面15との間の領域の、図1で見える鉛直な外壁3の、光を透過する部分である。照明手段によって放射された光は、光窓61を通って、透明な材料から形成された放水部の正面に、又は水流出噴流19に達する。この光は、放水部を通って伝播し、好ましくは給水装置の正面で、部分的に上方及び下方の主面においても放出され、それによって、水流出噴流19を照明する。
【0036】
本発明は、槽充填水栓と関連する用途に限定されない。むしろ、本発明は、他の衛生設備の放水水栓、例えば噴射シャワーにも使用することができる。
【0037】
放水ハウジング1は、水平に配置する代わりに、斜めに配置することもできる。水流出噴流19は、水平方向に広げる代わりに、斜めに広げることもできる。
【0038】
中間壁37は、嵌め込み部とする代わりに、放水ハウジング1にとれないように結合することもできる。
【0039】
分配室11は、複数の水流出路9の代わりに、広い単一の水流出路のみを有することもできる。
【0040】
貫流孔51は、複数の線上に配置する代わりに、蜂の巣状に形成するか、又は不規則に配置することもできる。
【0041】
供給路21及び/又は分配室11は、長方形の代わりに、他の形状、例えば、他の多角形、円形又は楕円形の断面を有するようにすることもできる。
【0042】
貫流孔51は、中間壁37を通って垂直に延ばす代わりに斜めに延ばすこともできる。同様に、水流出路9は、貫流孔51に対して斜めに延ばすこともできる。
【0043】
貫流孔51は、長方形の代わりに、他の形状、例えば、多角形、円形又は楕円形とすることができる。
【0044】
段状の狭隘部55の代わりに、水流出路9は、狭隘部を備えないか、あるいは他の種類の、例えば漏斗状の狭隘部を備えることもできる。
【0045】
照明手段収容室23を省略することもできる。複数の照明手段収容室を放水ハウジング1の様々な箇所に設けることもできる。各々の照明手段収容室23は、様々な方向の複数の光窓を備えることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】放水側から見て右側前方から斜めに見た放水ハウジングの一部を断面した模式的な斜視図である。
【図2】図1の放水ハウジングの背面から見た模式図である。
【図3】図1の放水ハウジングの左側前方から斜めに見た模式図である。
【図4】後壁を取り除いた状態の、図1の放水ハウジングの背面から見た模式図である。
【図5】図1の放水ハウジングの模式的な正面図である。
【図6】図5の放水ハウジングの領域VIの詳細を示す模式図である。
【図7】後壁のない状態の図5の放水ハウジングのVII−VII線に沿った模式的な長手方向断面図である。
【図8】図5の放水ハウジングの模式的な背面図である。
【図9】図5の放水ハウジングの右側の模式的な側面図である。
【図10】図5の放水ハウジングのX−X線に沿った模式的な断面図である。
【図11】図5の放水ハウジングの左側の模式的な側面図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放水ハウジングと、該放水ハウジング内に配置された、面状に広がった水流出噴流用の噴流形成器とを有する、衛生設備の放水水栓、特に槽充填水栓において、
前記放水ハウジング(1)が、前記水流出噴流(19)に対して実質的に垂直に延びる細長い供給路(21)を含み、該供給路(21)が貫流方向に漏斗状に先細りになっており、かつ中間壁(37)によって仕切られており、該中間壁(37)は複数の貫流孔(51)を備え、該貫流孔(51)を介して、前記供給路(21)が、該供給路(21)に対して実質的に平行な細長い分配室(11)と接続されており、該分配室(11)が、放水部に通じる水流出路(9)を有することを特徴とする、衛生設備の放水水栓。
【請求項2】
前記供給路(21)、前記中間壁(37)及び前記分配室(11)が前記水流出噴流(19)の幅とほぼ同じ長さであり、前記貫流孔(51)が前記中間壁(37)の全面にわたって分布させられていることを特徴とする、請求項1に記載の、衛生設備の放水水栓。
【請求項3】
前記貫流孔(51)が、互いにずらされて、平行な複数の線上に配置されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の、衛生設備の放水水栓。
【請求項4】
前記貫流孔(51)が蜂の巣状に形成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の、衛生設備の放水水栓。
【請求項5】
前記供給路(21)及び前記分配室(11)が長方形の断面を有し、前記貫流孔(51)が前記中間壁(37)を通って垂直に延びており、前記水流出路(9)が前記貫流孔(51)に対して垂直に延びていることを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載の、衛生設備の放水水栓。
【請求項6】
特に長方形の複数の前記水流出路(9)が互いに並んで配置されていることを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載の、衛生設備の放水水栓。
【請求項7】
少なくとも1つの前記水流出路(9)が、水流方向に、特に段状又は漏斗状の少なくとも1つの狭隘部(55)を備えることを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載の、衛生設備の放水水栓。
【請求項8】
前記中間壁(37)が嵌め込み部であることを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載の、衛生設備の放水水栓。
【請求項9】
前記放水ハウジング(1)が、前記放水部に向かって少なくとも1つの光窓(61)を有する少なくとも1つの照明手段収容室(23)を有することを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載の、衛生設備の放水水栓。
【請求項1】
放水ハウジングと、該放水ハウジング内に配置された、面状に広がった水流出噴流用の噴流形成器とを有する、衛生設備の放水水栓、特に槽充填水栓において、
前記放水ハウジング(1)が、前記水流出噴流(19)に対して実質的に垂直に延びる細長い供給路(21)を含み、該供給路(21)が貫流方向に漏斗状に先細りになっており、かつ中間壁(37)によって仕切られており、該中間壁(37)は複数の貫流孔(51)を備え、該貫流孔(51)を介して、前記供給路(21)が、該供給路(21)に対して実質的に平行な細長い分配室(11)と接続されており、該分配室(11)が、放水部に通じる水流出路(9)を有することを特徴とする、衛生設備の放水水栓。
【請求項2】
前記供給路(21)、前記中間壁(37)及び前記分配室(11)が前記水流出噴流(19)の幅とほぼ同じ長さであり、前記貫流孔(51)が前記中間壁(37)の全面にわたって分布させられていることを特徴とする、請求項1に記載の、衛生設備の放水水栓。
【請求項3】
前記貫流孔(51)が、互いにずらされて、平行な複数の線上に配置されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の、衛生設備の放水水栓。
【請求項4】
前記貫流孔(51)が蜂の巣状に形成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の、衛生設備の放水水栓。
【請求項5】
前記供給路(21)及び前記分配室(11)が長方形の断面を有し、前記貫流孔(51)が前記中間壁(37)を通って垂直に延びており、前記水流出路(9)が前記貫流孔(51)に対して垂直に延びていることを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載の、衛生設備の放水水栓。
【請求項6】
特に長方形の複数の前記水流出路(9)が互いに並んで配置されていることを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載の、衛生設備の放水水栓。
【請求項7】
少なくとも1つの前記水流出路(9)が、水流方向に、特に段状又は漏斗状の少なくとも1つの狭隘部(55)を備えることを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載の、衛生設備の放水水栓。
【請求項8】
前記中間壁(37)が嵌め込み部であることを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載の、衛生設備の放水水栓。
【請求項9】
前記放水ハウジング(1)が、前記放水部に向かって少なくとも1つの光窓(61)を有する少なくとも1つの照明手段収容室(23)を有することを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載の、衛生設備の放水水栓。
【図1】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2009−520891(P2009−520891A)
【公表日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−546154(P2008−546154)
【出願日】平成18年10月21日(2006.10.21)
【国際出願番号】PCT/EP2006/010174
【国際公開番号】WO2007/079799
【国際公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【出願人】(591136469)ハンザ メタルベルケ アクチェンゲゼルシャフト (7)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年10月21日(2006.10.21)
【国際出願番号】PCT/EP2006/010174
【国際公開番号】WO2007/079799
【国際公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【出願人】(591136469)ハンザ メタルベルケ アクチェンゲゼルシャフト (7)
【Fターム(参考)】
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